運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-07-08 第16回国会 衆議院 農林委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月八日(水曜日)     午後一時五十分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君    理事 足鹿  覺君 理事 佐竹 新市君    理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    松岡 俊三君       松野 頼三君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       山本 幸一君    稲富 稜人君       川俣 清音君    久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (畜産局長)  大坪 藤市君         食糧庁長官   前谷 重夫君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 七月七日  委員日野吉夫君辞任につき、その補欠として稲  富稜人君が議長の指名で委員選任された。 七月三日  有畜農家創設特別措置法案内閣提出第一五一  号) 同月七日  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六〇号) 同月四日  神辺町外十四箇市町村農業水利改良事業施行促  進に関する請願高津正道紹介)(第二五九  〇号)  川内市地内農作物水害対策確立に関する請願(  尾崎末吉紹介)(第二五九一号) 同月六日  朝倉郡の農作物水害対策確立に関する請願(福  田昌子紹介)(第二七七六号)  県営土地改良事業施行に関する請願船越弘君  紹介)(第二七七七号)  愛媛県の農業災害対策確立に関する請願(中村  時雄君紹介)(第一七七八号) 同月七日  凍霜害対策費増額等請願原茂紹介)(第  二八九七号)  朝倉郡の農作物水害対策確立に関する請願外四  件(熊谷憲一紹介)(第二八九八号)  同(熊谷憲一紹介)(第二九六七号)  高岡村地内国有牧野所属替えに関する請願(  山崎猛紹介)(第二九六八号) の審査を本委員会に付託された。 同月四日  九州各県開拓地風水害対策に関する陳情書  (第六  五八号)  緊急食糧増産に関する陳情書  (第六七六  号)  凍霜害対策に関する陳情書  (第六七七号)  国内油脂原料確保のため菜種増産に関する陳情  書(第六九〇号)  電力会社所管電柱敷地補償料引上げに関する陳  情書  (第六九一号)  殺鼠剤フラトール使用即時停止に関する陳情書  (第六九二号)  電力会社所管電柱敷地補償料引上げに関する陳  情書外一件  (第七一五  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  委員派遣承認申請に関する件  農業共済制度に関する小委員会において参考人  招致に関する件  連合審査会開会申入れに関する件  農業委員会法の一部を改正する法律案内閣提  出第七三号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第七四号)  有畜農家創設特別措置法案内閣提出第一五一  号)  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六〇号)  農政基本施策に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  この際、小委員補欠選任についてお諮りいたします。ただいま肥料に関する小委員が二名、農業共済制度に関する小委員が一名、それぞれ欠員と相なつております。この際その補欠委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、肥料に関する小委員に、足立篤郎君、川俣清音君、農業共済制度に関する小委員稲富稜人君を指名いたします。     —————————————
  4. 井出一太郎

    井出委員長 なおお諮りいたします。ただいま農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律案は、農業共済制度に関する小委員会において審査いたしておりますが、昨日足鹿小委員長より、小委員会決定に基きまして、本案の審査のために、関係農業団体畜産関係者等より、小委員会において参考意見を聴取することにいたしたい、また家畜共済実施状況について、親しく現地の共済団体診療施設等を調査いたしたい、このような申出があります。ついてはこの参考人招致の件及び委員派遣の件について、議長承認方申請するようしかるべくとりはからわれたいとの申出があります。この際この小委員長申出を承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。なお参考人選定の件及び派遣委員選定派遣地派遣期間等は、先ほど理事会で協議いたしました線で、委員長及び小委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  暫時休憩いたします。     午後一時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  7. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより内閣提出辰業委員会法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案一括議題といたし、審査に入ります。  まず両案の趣旨について政府説明を求めます。保利農林大臣。     —————————————
  8. 保利茂

    保利国務大臣 ただいま議題となりました農業委員会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げたいと存じます。  農業委員会法制定せられましてから二年有余市町村農業委員会及び都道府県農業委員会が発足しましてから二年になんなんとしておりますが、その間農業委員会は、農地等利用関係調整、自作農の創設維持農地等交換分合、また農業総合計画の樹立及び実施についての建議、諮問答申等農民代表機関としての職責の完遂に努めて参つたのであります。しかしながら経済情勢の変遷に即応してその使命を達成いたしますためには、おのづからその所掌事務の重点が変化しなければならず、またその事務を完遂するに最も適した構成が考えられなければならないことは申し上げるまでもないことであります。  このような意味におきまして農業委員会制度に関しまして、次のような方針で改正を加えることにいたしたいのであります。すなわち第一に、生産技術指導については、現行農業改良普及制度と相まつて生産技術指導の徹底をはかるために、市町村民業委員会の書記の一部を技術員に切りかえまして、農業委員会技術に従事せしめると同時に、改良普及員事業協同組合の行う生産技術指導に協力せしめることといたし、これとともに委員会組織などにつきまして多少の改正を加えました。第二に、農業委員会制度につきましては、それが真に農民農業代表機関として自主的にも活動し得るように、都道府県農業委員会法人としての都道府県農業委員会議とし、これと同時に、第三に全国的組織を結成し得る道を開くこととしました。以上の考え方に基きまして、本法律案提案いたす次第であります。  以下本法律案主要内容について概略説明申し上げます。  第一は、市町村農業委員会についての改正であります。改正の第一点は、その所掌事務についてでありますが、新たに技術員が設置されますので、その技術員をして協同組合事業農業改良普及員事業等について協力する点を明確にしたことであります。なお、米穀生産者別政府買入れ数量決定について、従来、市町村長は、個々の委員意見を聞くこととなつておりました点は、委員会そのもの意見を聞くように改めることといたしました。第二点は、選挙による委員定数につき、現行の十五人を十人から十五人までの間で市町村条例で定めることといたしますと同時に、選挙方法簡素化したことであります。第三点は、選任による委員を必置の委員といたしまして、農業協同組合及び農業共済組合の推薦した理事二人以内、市町村議会の推薦した学識経験者三人以内を市町村長委員として選任しなければならないことといたしたのであります。また委員の任期を現行の二年から三年に改めることといたしたのであります。  第二は、都道府県農業委員会議についての規定追加であります。現在都道府県にはその附属機関として都道府県農業委員会が置かれていますが、農業及び農民一般的利益代表機能を果すには、行政機関とは別個の人格を持たせる必要がありますので、これにかわり、法人たる都道府県農業委員会議設立することにいたしたのであります。都道府県農業委員会議は、郡市単位の代表者会議において農業委員会委員及び農業協同組合等理事のうちから互選された者と、農業協同組合中央会農業共済組合連合会及び農業協同組合連合会代表者等をもつて構成するものとし、その業務は、従来都道府農業県委員会が所掌していた事務のほか、米穀生産者別政府買入れ数量決定その他農業及び農民に関し、意見を公表し、行政庁に建議し、その諮問答申すること、及び農民及び農民に関する啓蒙宣伝調査研究を行うこと等であります。国が毎年度予算範囲内において都道府県農業委員会議に要する経費負担ないし補助することといたし、なお法人税所得税事業税等各種の税の免除を考え、その健全な発展、公正な活動を期待しておる次第であります。  第三は、全国農業委員会議所に関する規定追加であります。全国農業委員会議所は、都道府県農業委員会議全国農業協同組合中央会全国農業組合連合会その他農業改良発達をはかることを目的とする法人学識経験者等をもつて構成される社団法人でありまして、農業及び農民に関し、意見を公表し、行政庁に建議し、その諮問答申し、また啓蒙宣伝及び調査研究並びにこれらの業務についての都道府県農業委員会議指導連絡を行うことを主たる目的としているのであります。全国農業委員会議所は、設立解散加入脱退の自由な法人でありまして、全国を通じて一個とし、これに対しましては免税措置のほかに、国庫補助をなし得ることといたしまして、全農業、全農民一般的利益代表団体たるにふさわしい公正にして活発な運営を期待しておる次第であります。  以上が本法律案概略でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同を得られますよう切望する次第であります。  次に農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。農業協同組合法制定されましてから今日まで五年有余を経過いたしましたが、この間、農業協同組合は、諸種の悪条件と闘いながら、農業生産力の増進と農民の経済的、社会的地位の向上をはかり、あわせて国民経済発展に寄与するために努力して参つたのであります。しかしながら、はげしい経済的、社会的変動とその間に処する主体的条件の不十分のため、経営不振の状態に陥つた組合も少くなく、そのままに放置しがたい事態に遭遇いたしましたので、適宜必要な指導を行うことにより、組織整備事業振興及び経営健全化をはかつて参りましたが、特に財務処理基準令制定行政庁による、常例検査実施及び農林漁業組合再建整備法制定等によりまして、今日まで相当成果をあげて参つたのであります。それにもかかわらず、今日の組合組織事業及び経営状況を検討いたしますとき、なお整備強化を必要とする部面は少くないのでありまして、今後一般情勢の推移に即応する発展を期するためには、まず組合指導体制確立いたしますとともに、現行組合制度に若干の修正を加える必要があるのであります。これが、この法律案提出いたします理由でありますが、以下その主要な内容につきまして、その概略を御説明申し上げます。  第一は、組合総合指導組織確立であります。今回あらたに、組合総合指導組織として、農業協同組合中央会全国及び都道府県区域に設置することにいたしました。現在、組合指導組織といたしましては、全国及び都道府県区域指導農業協同組合連合会等がありまして、主として会員たる組合のために指導教育事業を行つているのでありますが、その法制上の性格からみましても、またその組織事業及び財務状況から見ましても、指導機関として十分なものでなく、このため農業協同組合系統組織全国的な組織活動に必要な統一性機動性確保し、十分に組合事業振興経営の刷新及び安定をはかりうるような指導教育を行うことが困難な状況にあるのであります。このような指導機関の弱点を克服し、会員たる組合のみならず広く全組合に対する指導教育全国的規模において、統一的かつ効果的に行い、もつて組合の健全な発達をはかるため、農業協同組合中央会を設置いたすことにした次第であります。  都道府県中央会につきましては、会員加入脱退を自由といたしましたが、統一ある全国的組織確立するため、全国中央会につきましては、都道府県中央会及びその正会員たる農業協同組合及び同連合会は、これに当然に加入させますとともに、全国中央会は、都道府県中央会に対して指導連絡を行い、またそのために必要がある場合には、都道府県中央会に対して必要な指示等をすることができることといたしまして、その全国的統一活動を可能ならしめているのであります。しかして政府は、このような中央会活動をより活発かつ効果的にするため、全国中央会及び都道府県中央会事業に要する経費の一部を、毎年度予算範囲内において補助することができることとしたのであります。なお、中央会の設置に関連いたしまして、指導農業協同組合連合会の処置についてでありますが、現にあるものの存続は当分の間これを認めることとし、今後新しいものの設立は認めないことといたしたのであります。  第二は、組合に関する規定整備したことであります、その一は、組合事業に関してでありますが、信用事業を行う組合は、新たに定期積金受入れをも行うことができることとするほか、組合員と同一の世帯に属する者及び営利を目的としない法人の貯金または定期積金受入れにつきましては、員外利用の制限を適用しないこととして、農村の実情に即応するとともに、組合事業分量の拡大をはかろうといたしたのであります。その二は、組合管理に関してでありますが、そのおもなものは、役員責任明確化であります。従来役員責任に関する規定が不明確でありまして、組合運営上における責任体制確立において欠けるところがありましたので、役員組合に対する忠実義務を明文化し、かつ、組合に対する任務を怠つた場合における組合及び第三者に対する連帯損害賠償責任に関する規定を設け、その責任の所在を明瞭にしたのであります。  以上の事項のほか組合運営等に関する諸規定のうち必要なものについて部分的修正を加え、その合理化簡略化をはかつた次第であります。  第三は、行政庁監督権を若干強化したことであります。行政庁監督権は、本来できうる限り小範囲にとどめることが望ましいのでありますが、組合の実状は、いたずらに自主性を形式的にのみ尊重することを許さないものがありますので、必要最小限度において監督権整備強化いたしまして、組合健全化に資しようとしたのであります。すなわち、組合法令等に違反した場合において、行政庁が必要な措置をとるべき旨の命令をしたにもかかわらず、これに従わなかつたときは、行政庁はその組合業務停止または役員の改選を命ずることができることといたしますとともに、組合事業外事業を行つたとき等の特定の場合には、行政庁がその解散を命ずることができることといたしたのであります。  以上がこの法律案の主要な内容でありまして、すべて組合の現状から真にやむを得ないものでありますので、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御協賛あらんことを切に希望する次第であります。     —————————————
  9. 井出一太郎

    井出委員長 次に、内閣提出有畜農家創設特別措置法案及び土地改良法の一部を改正する法律案の両案を順次議題といたし、審査に入ります。両案の趣旨について逐次政府説明を求めます。保利農林大臣
  10. 保利茂

    保利国務大臣 有畜農家創設特別措置法案提案理由を御説明申し上げたいと存じます。  農業経営合理化をはかり、農業生産力を高めるためには、農家家畜を導入し、有畜営農を普及徹底させることが最も有効適切な措置でありますことは、いまさら申し上げるまでもないことでありまして、このために政府におきましては、すでに御承知の通り、昭和二十七年度から有畜農家創設要綱を定め、農業協同組合等に対する家畜導入資金融通のあつせんと、これに対する利子補給を行うことによりまして、有畜農家創設計画的かつ効率的に推進して参つたのであります。しかしながら、過去一年における経験に徴してみまするに、右の措置のみでは、信用力の低い組合につきましては、思うように融資が受けられない事態も出て参つているのでありまして、これらの障害を除去して、有畜農家創設事業所期目的を達成いたしますためには、家畜導入資金融資する金融機関損失補償を行うことにより、金融機関が安んじて融資することができるような制度確立する必要があると思うのであります。しかしながら、実際問題といたしましては、このような損失補償制度が設けられましても、なおかつ融資を受けることが困難な組合もあろうかと考えられるのでありまして、このような場合には、すでに多くの都道府県において実施いたしておりますような、都道府県がみずから家畜を購入しこれを貸し付ける制度を奨励いたしますことが必要な措置であると考えるのであります。また新品種の家畜を集団的に導入しようとするような場合には、相当の危険なり負担が伴いますので、以上の諸措置のみでは十分にその成果を期待し得ないと考えられるのでありまして特に国で種畜以外の家畜についても、これを購入して貸し付けることができるような制度を設ける必要があると思うのであります。かくて有畜農家創設事業制度的に一応整備いたし、所期目的も十二分に達成できるものと確信いたすものであります。  本法案は、以上の考え方を骨子といたしているのでありますが、以下本法案内容を簡単に申し上げますと、第一、国が有畜農家創設事業に必要な資金融通のあつせんに努めること、第二、国が家畜導入資金についての利子補給を助成すること、第三、国が家畜導入資金についての損失補償を助成すること、第四、都道府県有家畜貸付を奨励すること、第五、国有家畜貸付の道を開くこと、の五点であります。  以上のような理由によりまして、この法案提出いたしまして次第でありますが、本法案につきましては、前国会におきまして各派共同提案により御審議中のところ、会期の関係審議未了に終つたことはすでに御承知のところであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださるよう切にお願い申し上げる次第であります。  次に土地改良法の一部を改正する法律案提案理由を申し上げたいと存じます。  土地改良法は、昭和二十四年八月施行以来すでに三年有余の年月を経過いたしまして、その間に旧来の普通水利組合耕地整理組合及び北海道土功組合は、それぞれ土地改良法に基く土地改良区に組織がえをいたし、新しい組織の下に灌漑排水施設農業用道路整備農地区画整理農地集団化農地の造成及び保全並びにその災害復旧等土地改良事業実施して参つたのであります。しかるにその後の土地改良法運営実施状況を見てみまするのに、あるいは土地改良事業実施手続の面でやや形式的煩瑣にすぎ、あるいは法律実施上不備であると考えられる点が出て参つて来たのでありまして、土地改良事業の円滑な実施をはかるため、この際土地改良事業実施手続簡素化をはかり、また土地改良法上の不備を是正いたしまして、土地改良事業を一層円滑に推進することの必要が痛感されるに至つたのであります。このことがこの改正法律案提出いたしました根本的な理由であります。  次に改正法律案の主要な内容について御説明申し上げます。第一は、土地改良区の設立手続簡素化したことであります。すなわち従来土地改良区を設立するには、土地改良事業計画概要定款基本事項等につきまして、都道府県知事が本審査予備審査との二段階の審査をするという手続をとつて来たのでありますが、本改正法律案では、農業水利施設等維持管理のみを行う土地改良区の設立につきましては、予備審査手続を廃止し、本審査のみで土地改良事業計画及び定款審査をいたすこととし、灌漑排水施設等の工事を行う土地改良区の設立については、予備審査にかえて、土地改良事業計画のみを純粋に技術的な見地から審査して、事業の適否の認定をいたすこととし、都道府県知事の行う縦覧公告利害関係人意見申立て等の諸手続を省略して、手続簡略化したことであります。  第二に、役員につきましては、新たに組合員以外からも練達の人を役員として置くことができることとするとともに、従来の都道府県知事の任命による監事を廃止して役員選任はすべて選挙によることとしたことであります。  第三に、農地法規定に基き買収した土地等につき国または都道府県開田をしまたは干拓をいたす場合に、その事業とあわせてその近傍の民有地について灌漑排水事業または開田事業を行うことが事業の効率を高め、農業経営合理化に寄与すると認められるときは、申請がなくても国または都道府県が積極的に農民の同意を求め、その民有地について土地改良事業をなし得る道を開いたことであります。  第四に、国営土地改良事業計画及び都道府県営土地改良事業計画につきまして、新たに計画を変更し得る道を開いて、事業の一層合理的な実施を期した次第であります。第五に、従来の国、都道府県土地改良区、農業協同組合の行う土地改良事業のほか、新たに市町村も一定の手続を経て土地改良事業を行い得ることとし、土地改良事業の一層の進捗を期したことであります。  なお、以上のほか、総代の定数役員監督等につきましても、それぞれ所要の改正を加えました。  以上が本法律案提案理由とその内容概要であります。何とぞ御審議の上、御賛成を賜わらんことを切望する次第でございます。
  11. 井出一太郎

    井出委員長 それでは、ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  12. 井出一太郎

    井出委員長 速記を始めて下さい。  引続きこれより先般来延期いたしておりました農林大臣農政に関する所信を承ることにいたします、保利農林大臣
  13. 保利茂

    保利国務大臣 先般も申し上げましたように、農林行政基本施策につきましては、前農林大臣がきわめて最近示されましたところをおおむね踏襲いたして参る所存でございます。  なお肥料対策についてこの場合申し上げますれば、肥料対策委員会答申がございました。従いまして、この答申趣旨に基きまして、可及的すみやかに肥料需給並びに価格に関しまする措置を講じたいと考えております。すなわち硫安につきましては、法的根拠によりまして、その生産費を調査いたし、その実態の把握に努めまして、公正妥当な基準に基く国内価格を定め、また価格引下げのための硫安工業合理化を強力に推進いたしますとともに、肥料需給に関しましては、その需給計画を明らかにいたし、内需及び輸出の調整措置について特に意を用いて参る所存でございます。  次に災害対策でございますが、先般の凍霜害につきましては、病虫害防除の助成、被害農家の再生産を維持するための営農資金確保に関する措置を講じたのでございますが、五月、六月の風水害、及び引続きましてこのたび北九州を襲いました水害に対しましては、とりあえず被災者に対して食糧給与の緊急対策を行い、また苗しろ対策等応急の災害対策を講じまするとともに、さらに被害概況を至急に調査いたしまして、その対策につきまして、災害復旧対策はもちろん、種子対策、肥料、農薬対策、家畜防疫対策、営農資金確保対策、食糧の貸付制度等万全の措置を講じて参りたい所存でございます。
  14. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの御説明に対し質疑を行います。吉川久衛君。
  15. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 本日の農林大臣の基本的施策の説明を伺うことを待望いたしていたわけでございます。しかしながら、同僚議員が大臣に対して質疑をいたしたいということで殺到をいたしておりますので、私は遠慮いたしまして、きわめて簡単に数点についてお尋ねをいたしたいと思います。  昨今新聞その他に盛んに二重価格制の問題が出ております。しかし二重価格制とは一体どういうことかということについて、国民はよくわかつていないようでございます。農林大臣といたしまして、食糧の二重価格制というものを理論的に、また実際的と申しますか、通俗的と申しますか、どういうようにお考えでございますか、御説明を承りたいと思います。
  16. 保利茂

    保利国務大臣 まあいろいろこれはとり方もあると存じますけれども、端的に二重価格というのはどういうのだと言えば、買つた米よりも売る場合に安くする、消費者に売る場合に安く売るというのが二重米価だと私は常識的に考えております。
  17. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 ただいまの御説明は、私の今伺つた二つのうちのあとの方の場合であろうと思います。実際的というか、通俗的な意味であろうと思います。理論的にどういうものであるか、もう少し詳しく御説明を願いませんと、どうも新聞等でははつきりいたしませんから、この二重価格制というものがはつきりしない限り、そのために、やみ値が下るべきものが上つたり、いろいろの思惑等が行われますので、いろいろの影響を国民の間に起しますから、もう少しひとつお言葉を伺つておきたいと思います。
  18. 保利茂

    保利国務大臣 私は、二重米価の主張をとつておりませんから、従つて自分の主張として二重米価に対する根拠というものは持たない。あなたの方では二重米価政策を持つていらつしやるから、その根拠を十分持つておられると思いますが、ただ概念的に二重米価は何だと言われれば、農家生産費あるいは再生産確保するその価格では消費者が負担に耐えかねる、買い切れない、そういう場合に、消費者に対して農家が売り渡す価格以下で売り渡すということが二重米価だと私は考えておるわけで、これもきわめて御不満であろうと存じますけれども、私どもはそういうふうに理解をいたしております。
  19. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 日本の食糧の自給度を高めよう、食糧の増産をいたしたいと考えておる者は、ひとしくこの二重価格制の問題を論じているわけでございまして、ひとり私ども改進党だけが言つているわけではございません。しかし国民の多くはこのことを、新聞では見ますけれども、内容がつまびらかでないのでいろいろな誤解を生じております。この食糧増産確保を強く御主張なさいます農林大臣は、二重価格制というものがいかなるものであるかということぐらいは、ひとつこれからでもおそくはござい参ませんから、御勉強おきを願いたいと思います。これは私の立場から説明する必要はございませんが、一本価格に対して二本建の価格を二重価格と言うので、その一本価格というのは、生産価格に対して、政府がただいま管理をいたしておりますから、管理諸費用に配給者のマージンといいますか、というようなものをプラスしたものを消費者価格にするのがこれが一本価格なんです。それを少しでも割れば二重価格ということになるわけであります。われわれはそういうように考える。そこで、先だつて農林大臣が麦価の決定についての経緯を当委員会において御報告になりましたそのときに、二重価格制ではない、現行制度、従来のやり方、この基本の上に立つてこのように麦価を決定したのであるということを、そこへ参りますと特に大臣は力を入れておつしやつておりました。私は実は不思議な感じを抱きながら承つていたのでございますが、これがとりもなおさず二毛価格なのでございます。だから大臣はえらいむずかしくお考えにならなくて、麦価決定に際しても、われわれは十分なる二重価格制ではない、理想的な二重価格制ではないけれども、二重価格制の一歩を踏み出したのであるというように、すなおにおつしやつてしかるべきではないかと私は伺つていたのでありますが、御所見はいかがでありますか。
  20. 保利茂

    保利国務大臣 力を入れて申し上げましたかどうか、私どもは麦の価格決定にあたりまして、二重米価価格制べ一歩を踏み込むという考えのもとには出ておりません。あくまでも現行制度の上に立つて、正しい、今年の特殊な生産事情等を考慮いたしまして、決定いたしたいと存じております。
  21. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 麦価決定にあたりましても、今後の米の価格決定にあたりましても同様でございますが、生産者の価格と消費者の価格の間に国庫より補給するものがない場合には、これは二重価格制ではないのです。しかし政府がそこで幾ばくかの負担をするということになると、これは最初に大臣が、生産者から高く買つて、消費者に安く売るという方式になるわけでございますから、これは大臣、何とおつしやいましても、二重価格制のことなんでございます。そういうように御了解くださいましたら、これは池田政調会長から説明をお聞きにならずとも、二重価格制というものがよくおわかりだろうと思う。そういうようにひとつ御了解をいただいて、今後の米価決定にあたつても、そのお考え方で進められんことを望みます。  私は詳しくはこれ以上はお尋ねいたしませんが、次に何か輸入米をできるだけ減して、高い輸入米をなるべく減して、これを麦に切りかえて、二十億ばかり浮かしたいというようなことを、前の内田農林大臣はおつしやつておりました。大蔵大臣も財政演説のときにこのようなことをおつしやつておりましたが、これをやりますと、われわれ貧乏人の一番経済的な食生活は、米を中心とする食糧生活なんです。ところが食糧を、主食の米をできるだけ輸入を減らして麦にかえて行くということは、これは貧乏人にはとても耐えられない、実際は副食物等の費用がかさんで、そうして支出を高める結果になりますから、これは貧乏人にはまねのできないことになるのです。こういうようなことをお考えの上で、一体米の輸入を削減して麦に切りかえて行こうというようにお考えなのか、それともただいまも畜産振興の問題についての御所見も伺いましたけれども、そういつたような総合食糧の確保のために格別の施策をやるんだ、そうして総合食糧確保のためにやつた結果が、麦を主食とするところの食生活に切りかえて行つても、米を中心とするところの食生活よりも比較的安上りな食生活ができるんだ、というようなお見通しを持つておいでになるとするならば、それでけつこうでございますが、それならば具体的にその総合食糧確保にいかなる施策をおやりになるか、その点を具体的にひとつ御説明を願いたい。
  22. 保利茂

    保利国務大臣 あるいは訂正しなければならぬかと思うのですけれども、率直に私の承知しておりますところを申し上げます。なるほど麦食が奨励せられ、そして食生活が改善せられて参りますためには、むろん米ばかりにたよらないでというその気持が第一でございますけれども、お話のように、米を食べるも麦を食べるも、生活負担の上からいつて大したかわりはないんだというようなところまで、全体に、蛋白、脂肪いわゆる牛乳であるとか肉であるとかいうようなものが、豊富低廉に一面から供給せられ、そうしてわが国の米麦の食糧事情を一般がよく理解して、そしてともに食生活が改善せられて行くということでなければ、ただいまのお話のように、やはり米を食つた方が経済的だということが端的に現われて参りますれば、なかなか麦食麦食と申しましても、簡単に行かないことは、もうお話の通りであると思います。そこでそれじや、そういう事情にあるにもかかわらず、外米の輸入を差控えて、麦の方にウエートを置いて行こうということは、私は少し異な感じがいたします。と申しますのは、やはり今日の現行管理制度のもとにおきまする米を確保いたしまする上から、最小限一体どれだけ米があればよろしいか、むろん内地の豊凶によりますから、決定的には絶対的なことは申されませんけれども、おおよそ昨年くらいの供出を、いろいろな手段をもつて得られるとして、一体配給を確保して行くためにどのくらいいるのか、それから割出してみますれば、少くとも六百三、四十万石の外米の輸入ということはどうしても確保しなければならぬという、その上に立ちまして、九十万トンの輸入計画を立てているわけでございます。従いまして私の申し上げていることが、私の承知しておる限りは間違いないと存じます。従いまして、外米を必要以上に輸入を押えて、小麦を入れあるいは麦を入れる、麦にかえるという考えは持つておらないのであります。
  23. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 それは農林大臣のお言葉とも聞えません。これは重大な問題であります。これは予算に出ているのです。それから大蔵大臣は、財政演説においてこれをはつきり強調しておいでになるのでございます。ですから、農林大臣と大蔵大臣とは所見を異にするということになりますと、これはもう閣内の不一致で、たいへんなことになりますから、私は吉田内閣を倒そうなんということは考えておりませんが、ひとつ十分連絡をとつて、もう少し大臣ひとつ御勉強をお願いいたします。これは博学の大臣に私が申し上げるまでもございませんが、私の戦前の調べによりますと、景気のいいときはまずい米が売れる。景気の悪い、不景気になつて参りますといい米が需要されるのです。それはどういうことかというと、いい米だと副食物がいらない。いわゆるおかずがいらない。それから副食物が割合いに高くとも、それが買えるような好景気の時代には、米の良、不良は問わない、その需給関係を見ただけでも、やはり日本の国民が、生活が苦しくなつて来れば、米にたよろうという意欲は強くなつて来るのであります。そのときに麦に転換をして二十億を浮かそうという、これはもう予算書にはつきりしています。これはひとつ御勉強を願わなければならない。その上でひとつ大臣のこの問題についての御所見を伺つてみたいと思います。きようはそれは保留にいたしておいてけつこうでございます。  その次に、先ほどの土地改良法の一部改正に伴う法律案の問題に関連を持つておりますが、食糧増産はもう絶対的な要請でございます。そのために政府もたいへん御苦労なさつておいでになることはよくわかります。また今度の土地改良法の一部改正についても、こまかい配慮がされておることもよくわかりますけれども、ただいままでのような土地改良事業の取扱い方では、食糧増産にはなかなか具体的な効果が現われて参りません。そのために、内田前大臣はこれにつきましては、増産の基盤である土地条件の整備をはからなければならない、特に土地改良事業を効率的に実施して、その効果を明らかにする確実な手段を講じたいと思う、こういうことを言つておいでになるのであります。ところが、内田大臣のそれに対する具体的な施策を伺わないうちに御引退になつてしまいました。この効果を明らかにする確実な手段というものは、一体どういうことなのか。これについて大臣おわかりにならないといけませんから、暗示的に私は一例を申し上げてみたい。ただいまのように、大きな団地でなければこれを許可しない、土地改良事業として認めないということでなくて、ほんとうの食糧増産にはそれも必要であるけれども、もつときわめて山間の小さな団地についても、簡単な手続によつて土地改良が行われるというようなことが、食糧増産に非常に好影響があるのでございますが、こういつた問題については、大臣はどういうようにお考えでございますか。すなわち、土地改良の助成の面積のわくと助成の対象のわく、それからそれに対する手続簡素化というような問題について、どういうようにお考えでございましようか。
  24. 保利茂

    保利国務大臣 食糧の逼迫から絶対量をふやしまするためには、領土を失つて、狭隘な土地に押し込められてしまつたこの戦後の実情からいたしまして、まず何よりも耕地の造成、改良、従つて大規模なところから取上げて行こうという占領時代のあれが、今日までどれくらい続いておりますか。私といたしましては、私も農村に育つて参りましたので、ただいまお話の通り、三町歩、五町歩の小規模なものでも、そこへちよつとの手を加えればただちにその増産の効果が上る、そういうものが今日までなおざりにされて来ておつたということは、非常に遺憾だと思つております。従いまして、これはそういう小規模の土地改良ということは、端的な食糧増産を伴うものでございますから、ぜひひとつできるようにやらなければならぬ、私はそう考えております。同時にまた、食糧増産計画は、まだ具体的に詳細に検討いたしておりませんけれども、感じを率直に申し上げますと、土地改良等によつて耕地の生産力が一変して来る、地方と申しますか、生産力が非常なかわり方をして行くのにかかわらず、これに伴うところの耕作技術と申しますか、これが伴つて行かなければ増産の実を上げることはできないじやないか。そういう意味で、土地改良と耕作技術というものが改良せられた、宝の土地が十分に生産力を発揮するように、何かそこに総合計画の必要があるのじやないかというふうに私は考えて、少し力を入れてみたいと考えている次第でございます。
  25. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私はその次に、最近農地開放の結果、農村においては一時農地開放の理想に近いところまで耕地が開放されまして、所期目的を達成しつつあるかのごとく見えたのでございますが、最近の経済界の情勢その他の事情で、また土地がある特定の人に集められているような傾向がございます。また政府の今日まで行つたところの米価政策等にもその原因があるのでございますけれども、富農と貧農との差が著しく現われて参つております。そのために自作農の創設相当程度達成をしたけれども、逆に自作農が再び小作人に転落しているということが顕著に現われて来ているのです。これを防ぐために、自作農の維持育成というような問願について、ただいままで伺つて来た大臣の基本施策にはございません。新農林大臣は、この自作農の維持育成についてどういうような基本的な御所見を持つておいでになりますか、伺います。
  26. 保利茂

    保利国務大臣 これは農村実情に最も明るい吉川さんのお話でございますから、そういう傾向が現われているといたしますれば、今後のわが国農村にとつて相当重大な問題だと思いますから、今御満足を得るような具体策を申し上げることは私はできませんけれども、ひとつよく実情に沿いまして、御趣意のような線で努力いたしてみるつもりであります。
  27. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 基本問題について御就任日の浅い農林大臣にいろいろ伺いましても、結局御信念を伺うだけであつて、われわれの納得の行くような具体的な問題についてのお答えをいただくことはできないような感じがいたします。ひとつ早急に御勉強になつて、今度は各法案ごとにわれわれは具体的な御質疑をいたしますから、そのときに満足の行くような御答弁を願いたいと思います。ただいままでのところ、どうも御就任になつてから、麦のこと以外は全然御勉強になつていないような感じが、はなはだ失礼な申し分かもしれませんが、するのです。もう少し農政問題について真剣に御勉強願わなければ、われわれははなはだ不満足であります。  それではまだ幾つかお伺いしたいことがございますが、飛びまして、肥料の問題について、特に大臣は本日強調なさいましたから、この点について具体的に御所見を伺うことができると思いますから、これをまず伺つてみたいと思います。  先ほど大臣の施策についての御説明を承つておりますと、何かこの肥料価格安定のために幾つかの御施策を実行しようとなさつておいでのようでございます。その中で内外需の調整をおもくろみになつておるようでございますが、どういうような御構想でございますか、それをまず伺いたいと思います。
  28. 保利茂

    保利国務大臣 二、三日前に肥料対策委員会答申がございまして、この答申案に基いて具体的に法的措置を要します部分につきましては、法的措置を構じたいと存じて、ただいま事務当局において立案を願つておるわけでございますが、内外需の調整をどうするか。この肥料問題がやかましいのは、内地の内需が高くして、輸出せられるものが安い、つまり外地の農民に安く売つて、内地の農民が高い肥料を買つておるという、この矛盾に対する不満が、今日肥料問題が最もやかましく言われる動機であつたろうと私は思うのであります。従いまして、まず何を申しましても、内需の肥料価格が、農民の側からとつて納得の行く適正な価格であるかいなか、すなわち昨年来外地に輸出せられている損失、出血が、内地価格に転嫁せられておるんじやないかという疑問が、私は問題の一番の焦点だろうと思う。従いまして納得し得る肥料価格を設けまするためには、答申案の中にはいろいろございますけれども、まず第一に肥料の、特に硫安生産コストを正確に把握する、そうして、この肥料はこれだけの生産コストがかかつておるということを農家の方々に納得を得ることができなければ、いわゆる出血輸出ということは、多数国民の承服し得ざるところであると思いますから、この国会で御協力をいただいて、最小限その措置がとれるように処置を講じたいというのが第一でございます。  それから内外需の調整をどうするかと言われますけれども、もともと肥料は今日四、五十万トンの余力はあると申しましても、その大部分は何と申しましても、内地農村の需要に応じなければならないわけでありますから、従つて内地農村の需要を第一に考えまして、その余力をもつて輸出に持つて行くという考えをとらなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  29. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 大臣は内需優先ということを主張されました、これはもう当然のことで、ぜひそうでなければならないと思います。その前に納得の行く価格決定をして行きたい、こういうことでございましたが、その納得の行く価格決定は、どういうようなやり方で決定できるのでございましようか。
  30. 保利茂

    保利国務大臣 ただいま答申案に基いて研究を願つておりますが、いずれにいたしましても、生産コストを基礎といたしまして、そして全体の肥料価格決定して行くということ以外には私はないと思います。それじや御質問の趣意には合わぬと存じますけれども、その趣意でもつて研究をいたしております。
  31. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 その生産コストを決定するには、どうしたらその生産コストをつかむことができるのか、私の知る限りにおいては、安本時代からただいまの審議庁に至るまで、この肥料価格生産費の原価計算のできる人は一人もなかつたと、安本の諸君から聞いているのです。つかまえようがなかつたのです。今度の農林大臣なつてから、これを勇敢におつかまえになることができるという御信念を持つておいでだそうでございますが、どういう人々によつて、どういう機関をつくつて、どういう方法で、その生産コストをつかんで行かれるのか、その辺をひとつ……。
  32. 小倉武一

    ○小倉政府委員 お話の通り硫安工業は、特に戦後多角経営なつた会社が非常に多うございまして、そうでなくとも固定資本の非常に大きな工業でございますので、御説のように原価を正確に把握するということは非常に困難な部類に属することは、御承知の通りであります。と申しましても、国内の価格が工場の採算から見て妥当かどうかということになりますと、やはりむずかしいけれども、これは原価を把握するということに努めなければならぬことに相なろうかと思うのであります。もちろん今まで統制時代にやりました原価の計算が的確に行われたかどうかということについては、いろいろ御批判もあろうかと思うのでありますが、そういう経験を持つた者もなお現在おりますので、そういう方々の協力によりまして、もしそういう法制ができますならば、正確な原価の把握に努めたい、かように存じておるのであります。
  33. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 経済局長なりにきわめて抽象的な名答弁でございますが、大臣はどうでございましようか。この硫安工業合理化を強力に推進すると言つておいででございますが、硫安工業合理化の標準をどこにおかれますか。
  34. 保利茂

    保利国務大臣 これはまつたくしろうとでございますけれども、輸出の面から見ましても、かつて日本の有力な市場であつた所が、かなりドイツ方面の肥料に圧迫をされておる。これと対抗競争し得るところまで持つて行くのが合理化の目標ではないかと私は考えております。
  35. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 それではその具体的な方策はどうしたらよろしゆうございましようか。
  36. 保利茂

    保利国務大臣 これは設備も遅れておりましようから、そういう設備の改善と、その工場のいわゆる能率を上げて参るということが第一であろう、従つて設備改善のためには相当資金も要することであろうと思うのであります。
  37. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私はこの点についてこれ以上お伺いをいたしません。いずれ来るべきこの具体案が上程される日にこれ以上伺いますが、そのお答えでは、これは伺いところを空転していて、ちつとも本質に触れてないのでございます。そこで問題は、価格決定にあたりまして、まず内需を優先するという前提に立つておやりになるということは明らかになりました。内需を優先して価格決定することになりますと、今の日本の硫定工業なら硫安工業生産状況を見ますると、ある工場は非常に合理化されてやつている、ある工場はきわめて非能率的な、不合理な経営をやつている、その間のコストにたいへんな差がございます。その一番低位のものを救わんとするがゆえに、ここに国内の需要者に犠牲を強いるような結果になつているわけなんです。そこで納得の行く価格をきめたいとおつしやいますから、その納得の行く価格というものは、私は硫安製造業者の立場だけに拘泥することではなくて、内需優先の基本的な立場に立つて考えるときに、これはおのずからその生産コストには幾つかの段階がございますけれども、その内需の需要者の納得の行く線というものは、この段階のうちのどこかに決定しなければならない、今日まではこれが、低位の生産能率を上げているところの、すなわちコストの一番高いところに基準を置いて、肥料価格というものを決定しているのです。生産業者の利益だけを考えて、農民の利益なんかちつとも考えていないのです。このしわはみな百姓に寄せて来ている。これじや食糧の増産なんかできるはずはない、だから米価を上げてくれと言う。米価を上げれば、今度は消費者の生活は苦しくなる。そうすればまた、それがすべての生産物の値上りとなつて、また農村にはね返つて来て、また農民は米の値を上げてくれと言う。こういう悪循環を繰返すだけなんです。この元を断つためには、大臣が今おつしやつたように、農民の納得の行く価格をきめるとおつしやつたからには、今までのような肥料価格決定を、最も非能率的な、不合理な生産様式でやつているところの硫安工場を基準にせずに、幾つかの段階のうちのどれかをつかまえて、そこを基準にして価格決定されるときに、初めて日本の国内の需要者の納得の行く線が出て来ると思う。そういう点を十分お考えをいただいて善処されたいと思います。どうも肥料の問題に関しては、特に本日強調なさいましたので、今度こそは具体的な御所見をお持ちであろうと思つて伺うと、これまた他の政府委員の応援を求めなければわからないような状態で、まことに私は納得が行きませんけれども、これは後日に破ることにいたしましよう。ただ聞くところによりますと、需給の調節をはかるために、何か輸出の面だけについて、特殊な会社のようなものをおつくりになるというようなお考えがあるようでございますが、その点はいかがなのでございましようか。
  38. 保利茂

    保利国務大臣 答申の趣意、経緯等につきまして、ただいま事務当局で研究、立案を願つておるわけでございますが、私の承知いたしております限りにおきましては、ただいまお話のようなたことは、まだ固まつた意見はどこからも聞いておりません。
  39. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は外国へ輸出する場合だけでなく、そのお考えになるところの構想は、おそらくコンパニーだろうと思うのですが、それをコーポレーシヨンにして、そうしてそこで抱えているところの肥料は、大臣のおつしやつたように、内需優先ということでございますから、情勢によつては国内へもこれを放出するというような制度でありたいと思います。まだお考えがコンクリートされていないようでございますから、そういうコーポレーシヨンの形をとるように善処されたいと思いますが、それについて大臣は、私のこの意見を聞いただけで、ただいまどういうようにお考えでございますか。
  40. 保利茂

    保利国務大臣 一つの有力な考え方だと存じます。そういう点で考慮して参りたいと思つております。
  41. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私はまだ昼飯を食べていないせいか、どうも大臣の御答弁が私に満足をさせないせいか、空腹を覚えて力がなくなつてしまいました。これ以上お尋ねしたくございませんが、これは保利農政としてきわめて重要な問題でございますから、最後に一点だけ伺つておきたいと思います。  前国会から、いやもつと古くからこれは問題にはなつていたのでございますが、農業団体の再編成の問題でございます。本日、農業協同組合法の一部改正農業委員会法の一部改正とが議題になりましたが、この二つの問題は、いわゆる農業団体の再編成という言葉をもつて表明されておるのでありますが、大臣のただいままで私の伺つたもろもろの案件についてのお答えから私は、推測をして恐縮でございますが、まだ農政について十分御検討になつておいでにならない。従つてこれは前農相のあるいは前々農相のお考えになつた一つの構想であろうと思うのです。今大臣にこのことを尋ねることは無理だと思いますけれども、いやしくも農林大臣をお引受けになるからには、最も農民の利益擁護の代表機関である農業委員会たらしめようとすること、並びに農民の経済の中枢をなすところの協同組合の育成強化の問題については、これは大臣をお引受けになるときに、どういう問題が今問題になつているか、一体これは保利農林大臣というものができることによつて、これを実現することが農民のために、国家のためにいいのであるかどうであるかということをお考えになつて、私は大臣をお引受けになつたと思うのでございますが、その辺はどうでございましようか。ひとつ農業団体再編に関連してあなたの御真情並びに御信念を伺つておきたい。
  42. 保利茂

    保利国務大臣 農村の沿革から、農村の実情から、最も精通されている吉川さんの御意見でございます。私どもも農村の経済をゆたかにして参りますためには、どうしてもそこに、経済的にも団体的活動が必要だ。長い間の産業組合活動によつて、日本の農村がどれくらい向上して来たかということを思い出しまするときに、農業協同組合のより一層の強化、経営の改善ということは、非常に必要だと思う。同時にまた個々の農家技術向上の面につきましても、これが相当試験場等において、高度な技術の研究が営まれておるにもかかわらず、昔からの伝習の中から抜け切れない。そういうところに、技術の滲透という面からいたしましても、やはり農業委員会活動あるいは農業協同組合活動というものがきわめて必要であろう。そういう意味から、むろん理想形態としてはいろいろ考えられると存じますけれども、農業団体も幾変遷して参つております。一挙に理想形態に行くということも、現実の問題としては、なかなか困難であろうと思います。従いまして今日までの諸団体で、この程度の改善をもつてしても、それが農村、農家の利益をもたらすものであるということであれば、できるだけ摩擦を回避しつ進歩をはかつて参るという意味において、私は提出いたしておりまするこの議案の成立を希望しておるわけでございます。
  43. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 この法案の成立を希望しておいでになるという確固たる御信念を持つておいでになるそうでございますから、それではもう一つ伺つておきたいと思いますが、この農業協同組合法の一部改正の先ほどの提案理由を伺つておりますと、非常に協同組合発達をしているところの地方の人々の要望と、それから私の聞いておりますところの今日までの中央政府の希望しているところの方向との間に相当の逕庭がありまして、そのために何とかつじつまを合せなければかつこうがつかないというような箇所が各所に散見するのであります。一つの場合を取上げてみますと、国に中央会をつくり、また府県にも中央会をつくる。しかも中央の施策が下部に統一的に合理的に能率的に滲透するためにと、こういうように言われておりますけれども、独立をしたところの府県の中央会と中央の中央会とこれは非常な矛盾ではなかろうかと私は思います。地方にはむしろ支部を置くべきである。ところがその支部では満足できないという地域の要望にこたえるために、こういう妥協的な形をとつたのではないかと私にはうかがわれる。こういう矛盾した面、それからまた末端の組合中央会に強制的に加入させられるというような、はなはだ矛盾撞着したこういう法律の構成というものは、これは理想の農村の進歩発展の方向にすなおに持つて行く行き方ではないのです。何か制度のための制度をつくる、農民の利益を擁護する社会的、経済的地位の向上に資するというような、そういう配慮に出るものではなくて、何か一つの制度のために制度をつくり、制度をいじくりまわすといつたような感じがしてならない。農業委員会法の一部を改正する法律案提案理由説明を聞いても、これにも問題はずいぶんございますが、私は時間の関係で遠慮したいから一点だけ申し上げておきますけれども、たとえて言えば、農民の利益擁護の機関であるといいながら、国の助成団体であり、国の助成機関であつて、農民の利益代表の機関たり得るか。こういう大きな矛盾を内包しているのです。こういうことは大臣はおそらく御検討にならないで、うのみでこの委員会提案なさつたのではないかと思うのでございます。今までの御説明から、これはうのみになさつたのであろうと、私はかように推察をいたしておりますが、そうでございますかどうか。そうであるとするならば、こういう点を下僚に命じて、ひとつあらためて出直さなければ、ほんとうの法律の当初生れたところの趣旨は滅却されるおそれがございますので、これはこの両法案の基本的な問題でございますので、それに対する御所見を伺つておきたい。そして私の本日の質疑は委員長からの御注意がございまして、一人で独占してはいけないということでございますから、これをもつて打切りたいと思います。
  44. 保利茂

    保利国務大臣 うのみにしたと申されればまあうのみにしているわけでございますが、よく今日までこの法案ができまする立案の経過を伺いまして、静かに考えてみまして、現状からいたしますれば、もとより御不満の向きもあろうかとは存じますけれども、現実の実情からいたしますれば、この辺で一応御審議を願うことが妥当であろうということで、御提案を申し上げているわけであります。
  45. 井出一太郎

    井出委員長 加藤高藏君
  46. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 農林大臣に二、三点お伺いしたいと思うのであります。今国会におきまする総理を初め各大臣の演説は、いずれもわが国の自立経済の基礎の確立を強調しておるのでありますが、これらの演説を総合いたしますと、その対策としては、国内資源の開発と輸出振興とに要約することができると思うのであります。そうして国内資源の開発は、電源の開発その他いろいろありましようけれども、第一は国内食糧の自給度の向上ということが一番重大であろうと思うのであります。つきましては食糧自給度向上のための具体的な増産計画をお伺いしたいと思います。また現に農林省は、昨年の六月でありまするか、食糧増産計画とその達成のための施策なる印刷物のうちに、昭和二十七年以降五箇年計画によりまして、食糧千五百万石の増産計画を立てておるのでありまするが、二十七年度はこの計画に対してどんな実績をあげましたか、あわせてお答え願いたいと思います。
  47. 保利茂

    保利国務大臣 食糧の自給度を高めて参りますことが、自立経済を達成して参ります上に何といつても一番大きい課題になつていることは、お話の通りでございます。むろん食糧増産といつても、結局一粒々々の米麦をつくり出していただく方は全国農家の方々であります。従つてまず今日、日本の国土において耕地となし得る限りのものはできるだけ耕地に開拓して行く。そうしてまた既存の耕地につきましても、できるだけ生産力を引上げて参りまするように、土地改良その他の方途を講じまして、全面的に生産力を引上げて行くということでなければならぬわけでありますが、しかしこれをいたしまするためには、今日までも過去五箇年間に、あるいは土地改良、あるいは耕地の保全、あるいは復旧等に費して参つておりまする財政投融資は千三百億からに上つているわけであります。ここに巨大な財政の投融資を必要とするわけでございます。政府としましては、できるだけ日本の自立経済を早く達成せしめるようにというその足並にそろえまして、十年くらいで何とか総合的に食糧の需給調整が整うように、目標をさしあたり五箇年間を中間目標として、玄米換算で、当初千七百万石くらいの増産計画は少くとも持たなければならぬということで、かかつておつたのでありますが、財政の事情を考慮することなしに、この計画を進めて参ることももとよりできないわけでございまして、今年度は御承知のように、ただいま予算の審議を願つておりまする土地改良等に二百六十六億、あるいは耕種の改善等に二十五億、それによる見合いの増産目標を百三十万石というような計画をもつて予算の審議を願つておるわけでございますが、もとより当初の農林省で計画をいたしておりました増産五箇年計画の予算として要求しております五百八十数億からいたしますれば非常な削減をこうむつております。従つて私どもが申しておりまする五箇年計画も、今日はそれだけずれを生じて参つておりますけれども、私は先ほど来吉川さんのお話もありましたように、食糧増産を端的に確実に上げ得るというその着実性をつかむことができますならば、本度度削減されておりまする増産計画をひとつ再検討をいたして、取返さなければならぬと考えておるわけでございます。
  48. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 去る六月の二十六日でありますか、最高経済会議の席上におきまして、岡野通産大臣が農林省案と称しまして五年後に米麦千七百万石の増産計画をはかるということを発表しておられるのでありますが、この計画に対しまして、農林大臣承知しておられるかどうか、ちよつと伺いたいと思います。
  49. 保利茂

    保利国務大臣 おそらくそれは通産大臣ということでなしに、経済審議庁長官としての言だと存じます。率直に申しまして、五百八十数億の予算要求をいたしましたときの五箇年計画の増産目標はさようであつたろう。それがずれて五箇年には千五百六、七十万石の増産目標になつて来ている、こういうことであります。
  50. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 そういたしますと、政府は千五百万の増産は、努力してもなかなかいろいろな点でで覆いということをただいまおつしやられたのでありますが、大分岡野さんのおつしやつたことと食い違いがあるのでありますが、その点はいかがですか。
  51. 保利茂

    保利国務大臣 これは目安ですから、目安のとり方はいかようでもとれます。私も千七百万石どころではなく、五箇年後に二千万石も行くようになることが、最も望ましいと存じておるわけでございます。これは目安でございます。しかし今日農林省として予算折衝の経過等からみまして二十八年度これだけのずれを来しておりますけれども、一方人口増から来る需要の増大、あるいは耕地の壊廃等から来る減収等を考えまして、五箇年間の最終目標としては、これだけはどうしても確保しなければならぬという最少限度を示しておるわけでありますから、私はどういう御説明であつたか存じませんけれども、あつたとすればそういうところだろうと思います。
  52. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 時間もありませんので先を急ぎまして、あとで詳しく質問することといたし、次に、畑地灌漑の点で御質問したいと思います。  畑地灌漑の重要性は、今さら申すまでもないのであります。過般の凍霜害の被害調査の報告にいたしましても、同僚の足鹿議員から述べられましたごとく、灌漑施設の完備した土地におきましては、凍霜害の被害もある程度防止することができるのであります。私も現に調査団の一人といたしまして、その一行に加わりまして、現地に着いてその状況を見て来たのであります。また国営で行われておりまするところの相模原の畑地灌漑の成績を見ましても、非常なるところの好成績を上げておるように思うのであります。これによりまして陸稲の収穫も大幅に増加いたしまして、しかも灌漑もある程度できて、農家経営の安定の上からいつても最も有効な手段と考えられるのであります。従つて灌漑の問題は、もつと重点的に取上げて行くべきものであろうと思うのであります。それにもかかわらず今年度におきまする予算は、海岸砂地地帯振興法による経費と合せまして、わずかに八千五百万、しかも、それは単なる調査費程度の費用しか上げておらない。現在の土地改良費百四十五億ということからみましたときに、あまりに僅少である。私はこの点はなはだ遺憾に存じておる次第であります。以上の観点から見まして、政府は灌漑施設の状況による畑地振興法というものを真剣に考慮すべきであると私は思うのでありますけれども、所信はいかがでありましようか。
  53. 保利茂

    保利国務大臣 それはまつたく御同感でございますが、戦後あるいは戦争中から、食糧増産の掛声のもとに、ずいぶん国費も使われて来ておるわけでございますが、それが実際によく実効を上げて来ておるということは、これはもう統計の示すところで、もしそれなかりせば、今日はたいへんな食糧事情に相なつておつたわけで、相当の実績を示して来ておりますことは、もとよりでありますが、同時に全国数多くの箇所において、乏しきと申しましても国民の税金からいえば相当の部分を占めておるのでありますから、決して乏しいと申し上げるわけには参らないと思います。これはずいぶん多い箇所が同時に行われておりますから、従つてこれだけの金をかけたから、すぐこれだけの効果が上るという工場生産と違うわけでありますから、増産の効果を見ますためには、相当の期間を必要とするということは、先ほどのお答えに漏れておりましたから、申し上げておきたいと思います。ただいまの畑地灌漑等の問題も、まつたくその通りだと思います。しかし、同時にまた手をつけて、どこもここも中途半端で終つておるということは——今進行しておるわけでありますから、終るということは申しませんけれども、中途半端で行くというようなことでは困るわけでございますから、手をつけたところはできるだけ早く工事が終るように、そして増産の実効をもたらすように持つて行かなければならぬ。そこと予算の関係をにらみ合せて、しかし御趣意の畑地灌漑等については、特に増産効果が著しいと認められるわけでございますから、格段の配慮をして行かねばならぬと考えております。
  54. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 ただいまの質問に関連してでありますが、海岸砂丘地帯の振興について、地区の指定はなるべくすみやかに行わなければならないと思うのでありますが、いかがでございますか。
  55. 保利茂

    保利国務大臣 これは係りもおられないようでございますけれども、できるだけすみやかにするように督励をいたします。
  56. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 小麦の問題でありますが、カナダ産の小麦がトン当り八十ドルを割つておると伝えられておる。しかも世界の情勢が平和に復帰するにつれまして、今後一層この小麦価格が下落することが予想されるのでありますが、近い将来、国際小麦協定の価格以下に自由市場の価格が下落するようなことはないのでありましようか、その点を聞きたいのであります。またそうした場合に、国際小麦協定に加入していることが、わが国の財政上の負担になるようなことはないか、お伺いしたいと思います。
  57. 保利茂

    保利国務大臣 ちよつと御質問の趣意をとりそこなつているかも存じませんけれども、自由市場の相場が、国際小麦協定価格より下まわつて行くという傾向は、今日のところ強いように思います。しかし日本のように多量の外麦を確保しなければならない食糧事情のもとに立つ国としましては、最も安全に、かつまた妥当な価格において決定せられているこの協定のわくを利用するということは、食糧確保の上から行きまして、今日私は妥当なことと存じております。なお外麦の下落により内地の麦の価格をどうするかという問題でございますが、もとより小麦の——あるいは三麦の価格決定は、今日食管法の規定するところによつて、国際価格のいかんにかかわらずこれは確保して参らなければならぬと存じております。
  58. 川俣清音

    川俣委員 ちよつと関連して——今外務委員会に小麦協定の件がかかつておりますが、私急ぐので、この際大臣に御答弁を願いたいのです。  この前内田農林大臣のときに、内麦の価格を一様に三・六七上げなければならないという内田農林大臣意見を——これはざつくばらんに申し上げますと、自由党の政調会の意見を農林省が採用された形においていわゆる四・四・二の値上率にされたわけですが、この根拠は、新聞の発表によりますと、将来外麦の中でも特に小麦が過剰になつて引下るような傾向にあるときに、内地産の小麦の価格を上げることは好ましくないということで四・四・二になつたというふうに説明せられておるわけです。そういたしますと、将来外国の小麦が下る傾向にあるというときに、あえて協定に入つて数量を義務づけられ、価格を義務づけられる結果になるわけですけれども、英国のような、食糧を全部外国に依存しなければならないところにおいてすら、この協定に入らないでおるのです。ところが日本の食糧事情は、英国から見ますと、国内需給の状態はまさる点が多々あるわけです。米を持ち、麦も相当数量生産いたしておるのでありますから、英国よりも日本は逼迫いたしておらないわけです。外麦に依存する程度が低いわけですが、しかしそれでもなお小麦協定に入らなければならないという根拠の説明が非常に足りないじやないかと思うのです。先ほど食糧庁長官説明によりますと、決して自由党の政調会長の言う意見に基いて四・四・二の引上率になつたのではなくて、むしろ国内の粉食率が下つて小麦の需要が減つて来たから、そういう比率で上げてもよいという考え方だという説明でしたが、私はこの説明は少し詭弁であると思うのです。保利農林大臣が池田案をのまれたのは、おそらく国際価格が将来下るであろう、それには国内の麦を幾分見合しておかなければならぬということでこの案に賛成されて、農林大臣が麦価をきめられたと思うのですが、この点いかがですか。
  59. 保利茂

    保利国務大臣 麦価の決定は、この間から申し上げておりますが、当初大体消費者に負担を増して行かないようにというねらいをもととして、三麦の決定をどうすればよいかということで、米価審議会に諮問をした。政府原案というものは、従つて小麦は全然いじつていない。ところが米価審議会の方から、やはり相当加算額を加算すべしという答申がございましたものですから、その答申孝尊重する一面、お話のように小麦の消費も相当でありますが、粒食傾向が何としても多うございますので、大麦、裸麦の需要がより多いわけです。     〔委員長退席、金子委員長代理着席〕 しかも大麦、裸麦は、やはり内地麦の方がよいということもございますので、そういう事情と、特に西日本の災害等の事情から勘案いたしまして、四半・四半・二というような加算の決定をしたような次第であります。
  60. 川俣清音

    川俣委員 もう一点だけ、これは重要ですからお尋ねしておきたい。  そういたしますれば、だんだん粒食が粉食を圧倒して、粒食の方向に向うという傾向にあることは私どもも認めるわけです。しかしながら日本の食糧事情からいつて、粉食というものを、小麦の増産を押えてまでそれほど押え得るかどうかということになると、非常に大きな疑問が出て来ると思うのです。粉食が激つたというのは、需給状態から見て、政府が百五十万トンに達するような多くの小麦を持つていて、市場を圧迫いたしておりますために減つておるように見えるのであつて、実際は百五十万トン持つておるのでありますから、粉食が減つたということは間違いだと私は思う。むしろ農村からいいますと、麦が自由販売になりましたために、加工された粉が適当に消費されておりますために、いわゆる市場性は持つていないけれども、粉食が減つたというふうにのみ限定することは、非常な間違いだと私は思うのです。しかしながら先ほど食糧長官は、粉食が減つて来ることは現実だ、こういう説明に終つておるわけです。そこで外麦のうちでできるだけ大麦を減らして、小麦にのみ依存しなければならないという今度の小麦協定に参加する理由、そして小麦をこれだけ確保しなければ、国内食糧が不安だという説明にはならないと思うのです。協定に入らなければならないという方面から言うと、これだけのものを確保しなければならないと説明し、今度は一方の内麦の方から言うと、いや粉食はだんだん減つて来るのだから、小麦は幾らか押えてもいいという、こういう説明になると、これは自己撞着だと思う。これは外麦であろうと内麦であろうと、粉食にはかわりがない。むしろメリケン粉あたりは多くするという説明であれば、これはまた一つの説明になりましようけれども、しかし粉食という説明から行くと、内麦の方の価格の問題を片づけるために、だんだん粉食が減つて来たから小麦は幾らか押えてもいい、ところが外麦を買う場合には、これだけなければ粉食を満たすことはできない、こういう説明は一つの方便的な説明だと思う。この問題を解決して行かないで、将来日本の小麦の生産がだんだん減つて参るようなことになると、ますます外国に依存しなければならない。外国に支配されなければならぬ。食糧生活を外国に依存しなければならないということになつたら、独立上重大な問題だと思うのです。私はそういう意味から、現在食糧の不足のときに、外麦を買わなければならないということは認めますけれども、どうしても協定に入つて確保しなければならないという根拠にはならないと思うのですが、大臣どうですか。大臣の説明によりますと、協定値段よりもさらに小麦の値段が下る傾向にあるということをお認めになつて、内麦もきめられたという考え方も出ておるわけです。しからば小麦協定に入る必要がなかつたと思うのですが、この点はどうですか。
  61. 保利茂

    保利国務大臣 まつたくその割切れないところはごもつともだと思います。しかしやはり川俣さんのお話のように、粉食が減退して行くというふうには私は考えておりません。これは食生活の改善という目標からいいましても、やはり粉食奨励ということが目標でございますから、これはどうしてもその粉食がもつとふえて参るように持つて行かなくちやならぬ。ただ現実は、比較の問題だと存じますが、やはり米に次いで大、裸の粒食という食習慣の傾向は、今日ではどうしても抜け切れないわけでございますから、その実情は実情として認めざるを得ない。但し国際市場が下りそうであるのに、小麦協定できちんとわくのはまつた価格の小麦を買わないで、もつと自由に買つたらどうかという御見解はごもつともだと存じますが、私どもといたしましては、食糧事情からいたしまして、イギリスの例をお引きになりますけれども、日本の場合といたしまして、正確に、確実に、妥当な価格だと信じます価格相当量を確保することは、今日の食糧当局としてどうしてもやらしていただかなければならぬと考えているわけであります。
  62. 川俣清音

    川俣委員 これは私はまたあらためて答弁を求めますけれども、小麦協定に入らなければ確保できないというほど国際農産物が逼迫していないのです。そういう建前に立つて四・四・二という建前をとられた、国際的に耕地面積もふえて来て相当増産になり、価格が下るという見通しで立てられた案だというふうに説明されております。そうであれば、あえて小麦協定に入らないでも、買付に困難なことはないじやないか。予算面では相当数量を出しておられますが、この点については反対いたしませんけれども、あえて小麦協定に入らなければならないという根拠の説明が足らない、この説明をもう一度願いたい、こういうことなんです。
  63. 保利茂

    保利国務大臣 確実に確保いたして参らなければならない。国内食糧事情からいたしまして、確実に確保せられる手段として、国際小麦協定のそのわく内に入り込んで、これを確保しようということであります。
  64. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 政府の予算説明書によりますと、輸入小麦はトン当り九十ドルに押えているのであります。もし今後九十ドル以下で輸入できる場合、予算に計上されました輸入小麦に対する補給金十六億円の全部あるいは一部は不要になると思いますが、その場合に、この不要になりました金額を、国内農産物価格の安定のために使う意思はないかどうか。  またもう一点は、外麦が内麦——おもに小麦でありますが、内麦を圧迫しないために、もし安く輸入されました場合には、輸入小麦に対しまして、政府は一定の利潤を加えてこれを払い下げなければならないと思いますが、そうした場合におきまして、この利潤をどういうふうに使いますか。この二点を伺いたいと思います。
  65. 保利茂

    保利国務大臣 九十ドルで見込んでおりますが、実際に入つて来た価格によつて繰り入れて行くようになつておりますから、つまり入つて来た分について繰入れをやつて行くという操作になつておりますから、それほどのものは出て来ないじやないか。いずれにしても、国自体としては、見込み値段よりも安いものが入つて来れば、それだけ国庫の負担が軽くなるということはその通りであります。  それから第二点は、問題がきわめて重要でございますから、調べましてから御答弁を申し上げさせていただきたいと思います。     〔金子委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 もう一点、簡単なことですが、わが国の輸出入物資の輸送の約三分の二は外国船に依存して、年間に厖大なる外貨を支払つているのであります。食糧について見ましても、年間約三百万トンの輸入をしておるのでありますが、この輸入物資の輸送にあたりましては、手持ち外貨の減少をなくするために、できるだけ邦船にするのが至当であると考えるのでありますが、これに対しまして大臣のお考え方をお伺いしたいと思います。
  67. 保利茂

    保利国務大臣 それはまつたく同感でございます。日本の船舶によつて輸送するということが大事だと存じますから、できるだけそういう方向で配慮をして参るようにいたしたいと思います。
  68. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員 時間が過ぎましたので、いろいろ質問したいことがあつたのでありますが、十分にお聞きすることができませんでした。後日機会を得ましているくお伺いいたしたい思います。これで一応私の質問を終ります。
  69. 井出一太郎

    井出委員長 芳賀貢君。
  70. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま新大臣の施策についてお伺いしたわけでありますが、これは大臣も言われたように、内田前大臣の構想をそのまま踏襲されて、ただ肥料問題と農業災害に関する問題をちよつとそれにつけ足したというように受取れるわけであります。私のまだ記憶に残つていることは、前農林大臣が大臣に就任された場合に、こういうことを言つておるのであります。農林大臣という仕事は非常に大きな仕事であつてやりがいがある。自分は年はとつているけれども、老骨にむちうつて大いにやるつもりだというような、七十才以上のかつての老政治家が情熱をもやしたということを、私は忘れておらぬのであります。このような一つの夢を持つて今国会に忽然として現われた老政治家は、わずかに麦価問題だけと取組んで、そのことも終らないうちにまた忽然として消え去つたわけでありますが、こういうことはあり得ることとしても、私どもは一抹の哀惜の念を持つものであります。それだから新大臣に対して反撃の度を加えるというわけではありませんけれども、望むらくは国会の会期中ぐらいは、主管大臣はかわらないでもらいたいというのが、われわれの最小限度の願いであります。それと同時に、就任された以上は、国の農政を担当しておるという一つの責任の上に立つて、やはり新大臣も情熱をかき立て、真剣にやろうとする心構えがおありであるかどうかということを、冒頭にお伺いしたいのであります。
  71. 保利茂

    保利国務大臣 全国農漁村のために、与えられている職務の重大なるを痛感しつつ、力の至らざるをおそれているわけでございますが、私としては、できるだけの努力を払つてみたいと考えている次第であります。
  72. 芳賀貢

    ○芳賀委員 基本的な施策を検討いたしますと、大体二つに区分することができると思うのであります。第一点は、総合的な食糧の自給度を促進し、確立するという点、すなわちこれは国内における農業生産力を増強するという方向であります。もう一つは、これに関連を持つ農業経済の安定向上をはかる、いわゆる生産農民の経済と生活の向上が、これと並行して進んで行かなければならないという考え方の上に立つて、骨格ができておると思うのであります。  それで第一にお尋ねしたいことは、しからば総合的な国内の食糧自給態勢を確立するためには、具体的にどういうような計画を持つておるかということであります。前農林大臣から継承された施策の中においても、この点が非常に明確になつておらないのであります。特に新大臣は、肥料問題と農業災害問題をこれに加味されておりますけれども、基本的な問題としての食糧の自給度の確立というものを、どういうような具体的な計画と、これに裏づけするいかなる予算的措置をもつてこれを推進するかという問題には、非常に欠けておるわけであります。  もう一点、先ほど申し上げました農家経済の安定、いわゆる農業経済の安定に対しましても、いかなる具体的な施策を講じてこれを安定させるがという点に対しても、欠けておる面が非常に多いのではないかというふうに思うわけであります。その点について御所見を聞きたいのであります。
  73. 保利茂

    保利国務大臣 すでに当年度予算案の編成を終つて、国会審議の半ばにおいてこの職務を引継いだわけでございますが、お話のように、食糧増産という課題は、農村の課題というよりも、むしろ国家的な課題である。従つてその国民的要請、国家的課題である食糧増産の意図を達しつつ、それと相関連して農家経済の安定向上をはかつて行くために、基本的には、先ほども国際小麦相場等の変動による諸問題がすでに論議が出ておるようでございます。全体といたしましては、私の感ずるところを申しますれば、まだ内地の米麦を圧迫するという外地食糧の事情にはない。従いまして、今日は食糧増産を願いつ、しかし増産せられたために米麦等主要作物の価格がおびやかされることはないと存じますけれども、しかしながら農村側からいたしますれば、私どもの考えといたしましては、国家の施設、農家の努力によつて現われて来る食糧増産、その増産の効果が、一面農家経済の安定向上に役立つて行かなければならぬ。そういう上から行きまして、一面において重要農産物等の価格に対する安定と申しますか、そういう政策が相伴つて参りますことは、今日の場合といえどもきわめて必要であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。食糧増産の具体的計画と申しますれば、今年度におきましては、ただいま御審議を願つております予算の範囲でこれを操作するほかいたし方ないわけでございますが、しかし同時に食糧増産の計画、また努力を払わざる状態における需給趨勢を見ますれば、まことに暗澹たる状態でありますから、従つてどうしても食糧増産というものは、自立経済を達成して参りまする上から行きましても、着実に効果を上げ得ますような、具体的な計画をもつて臨まなければならぬ。今日までも相当の財政投融資が払われて来ておりまして、むろん効果を上げて参つております。私が先ほども申しますように、国家の相当の国費を投じて施設改善を行つて、耕地の生産力を十分に生かして、着実に増産の効果を上げ得るように指導して参るということは、食糧増産の上に最も欠くことのできない点じやないか、そういう点につきましても、十分検討と努力を払つて参るつもりでおります。
  74. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題をもう少し具体的にとらえてみたいと思います。たとえば昨年、昭和二十七年度の米の国内における生産量はおよそ六千五百万石であります。なお麦の生産量は、米に換算して大体二千万石であります。そうすると米麦の昭和二十七年度における生産量は八千五百万石ということになるのであります。それに対して一方輸入米麦の問題でありますが、米においては九十六万トン、大麦は八十二万トン、小麦が百七十五万トンで、これを米に換算して総計いたしますと三百三十五万トンで、約二千百万石ぐらいの数字になるわけであります。そうすると国内生産量の六千五百万石と輸入米麦の約二千万石、合せて一億五百万石ぐらいが、国内における食糧の絶対量と申しますか、必要な限界線となるというふうに考えられるわけであります。これに対して政府は、たとえば第一次五箇年計画においては、二十八年から三十二年までに千七百五十万石の増産計画を持つておる。さらに十年後においては、国内における食糧の自給が達成されるというようなことを考えておられるようでありますが、問題は、この食糧の国内における自給の達成の限界、あるいは可能性ということに対して大臣はどのような認識を持つておられるかということであります。こういうような趨勢にある一面、もう一つは、この自給度をはばむ原因として、一つは人口の増加があるわけであります。毎年百三十万人程度の人口の自然増加がある。これに対してはやはり百五十万石ぐらいの食糧が必要になつて来るわけであります。もう一つは、年々一万町歩以上の農耕地が壊廃されておる。これは主として駐留軍の基地あるいは演習場あるいは保安隊の演習地とか、そういうものが中心になつて、せつかくの農耕地が壊廃されておるわけであつて、これらの壊廃によるところの生産減というものは、百五十万石ぐらいを下ることはないと思うのであります。そういうことにいたしますと、農地の減少によるところの生産減少が百五十万石、人口の自然増加によつて百五十万石、合せて実質的には三百万石というものが増産された場合においても、輸入量を減額することはできないというような計算になるわけでありますが、これらの現実の問題に当面して、大臣はその上に立つて、いかなる具体的な計画をもつてこの自給度の促進確立ということに計画性を与えるかという点について、お伺いしたいのであります。
  75. 保利茂

    保利国務大臣 お話のように、現状において前途の数字をはかつてみますならば、まつたくお示しのように、およそ人口増に伴う消費の増というものが百五十万石内外、他面農地の壊廃等によりまする減収が百万石、二百四、五十万石のそこに需給上の変化が生じて参るわけでございますから、従つて、そういう累計をいたしますれば、五箇年後あたりには千二、三百万石もそのために供給が逼迫して参る。従いまして増産計画というものは、どうしてもそれを相当上まわるものでなければ、増産計画の意義をなして来ない。その認識の見通しの上に立ちまして、ただいま増産計画を検討しておるわけでございますが、今日までとにかく土地改良、開墾、干拓にかなりの国家の投融資が行われ、それらがみな実効を上げて来ておるという段階には今日はないわけで、これは徐々に現われて参るわけでございますから、今日営んでおります改良工事等による生産力の増強というものは、数年後に現われて参るということも見通して行かなければならないわけでございまして、いずれにいたしましても、食糧増産に関して土地改良あるいは開墾、干拓等の施設が一箇所でも多く行われるようにいたしますとともに、その改良改善をいたしました施設が十二分に生かされて、着実に増産の効果を上げ得るように、これは一くふうも二くふうもしなければいかぬところじやないかというように考えておるわけでございます。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣は先ほど、農業問題というものは、これは国家的に見て、経済自立の基盤になるものであるということを強く言われたわけでありますが、そういう場合においては、やはり一般施策の中においてもこれは最重点的に取上げて、まず基本的な増産計画を立てて、これに必要な予算の獲得は必ずやるということでなければ、このことは全然推進できないと思うのであります。昨年政府が立てられた第一次五箇年計画の中においては、耕地の拡張と土地改良によつて千三百万石、耕種改善によつて四百五十万石、合せて千七百五十万石を、予算的には三千三百億の国家資金を投入してこれを達成するということでありますが、これを五箇年の平均に見た場合には、年間三百五十万石の増産に要する経費というものは、大体、六百六十億ということになるわけであります。しかるに今国会の六月十九日の本会議において、前内田農林大臣は、わが党の八百板議員の質問に答えて、二十八年度において食糧増産費は大体四百九十六億程度計上しておるのであつて、これによつて食糧増産の計画を進めて行きたいというようなことを言つておられるわけでありますが、こういうような計画実施面における数字との食い違いは、今後食糧自給を達成する上において期待を持つことができないのであります。大臣は、現段階において明確な計画を樹立することは困難であると言われましたが、現在の政府は、計画の樹立に対しては非常に手まわしがいいのであります。たとえば木村保安庁長官の警備五箇年計画というようなものも、そういうものはまだ必要としない段階においてすでに用意しており、自立経済の基盤をなす農業の増産計画に対しては、全然具体的な計画が進捗しておらぬというような矛盾に対して、大臣はどのようなお考えを持つておりますか。
  77. 保利茂

    保利国務大臣 当初の中間目標としての五箇ト計画は、お話のように玄米換算千七百万石程度を目標として、大よそお示しのような財政投資の必要があるという計画のもとに、予算要求をいたしたようでございますが、その計画の、先ほどお示しの前大臣が八百板さんにお答えされた四百数十億というのには、災害復旧費等も入つておるのじやないかと存じますが、二十八年度の積極的食糧増産のための土地改良と、これに要しまする経費ほ二百六十六億、御承知の通りでございます。あるいは耕種改善について二十五億、これが当初六百二十億を要求しておつたもとでございますが、それが約三百億弱に落されて、従つてこの増産計画は、当然計画としてはずれを生じて参つておるわけでございまして、今日の計画目標といたしましては、少くとも所要資金約三千億は、これは五箇年間にどうしても確保するように努力しなければ追いつかぬのじやないかという計画をもつて先ほど申しますような着実な増産効果を生み出すような、一面行政措置をとりつつ、しかもその計画を推進して行きたい。それでひとつ十分検討をして、自立達成の効果をあげるように参りたいと考えておるわけでございます。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 昭和二十七年度の予算の中からながめると、二十八年度において食糧増産の期待量というものは大体百三十万石程度であると思うのであります。そうすると今年度の食糧増産費が及ぼす二十九年度における期待量というのは、大体どのくらいにお考えになつておりますか。
  79. 保利茂

    保利国務大臣 これはもうよく御承知であられるように、ことしこれだけつぎ込んだから、これだけの実効が上る、これはもう申し上げられるものではございませんけれども、これが効果を現わしますれば、いわゆる期待目標といたしましては二百五、六十万石の期待をかけておるわけでございます。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 さらに大臣は、この計画を現状の上に立つて立てる必要があるというような表明がありましたが、この場合、今までの増産計画というものは、主として米麦を中心として行われたわけであります。こういうことは国全体の、たとえば農畜産物を包含したところの、大きな、広義な意味における増産計画というものにはならないと思うわけでございますが、今後立てようとする構想というものは、やはり依然として幅の狭い米麦を中心としたような増産計画であるか、あるいはまた国内における全体の分野の上に立つた、総合化されたところの増産計画の樹立というような構想に進むか、その点もお伺いしたいと思います。
  81. 保利茂

    保利国務大臣 これはきわめて重大な問題であると存じます。この中心としましては、何といつても耕地の新たなる造成による生産力の増強、既成耕地の生産力を増大せしめるための土地改良、これはもう骨格として進めて参らなければならぬと存じますけれども、同時にまた国民食糧としての総合計画を達成して参ります上から行きましても、耕地の生産力を保持して行く上から行きましても、農畜総合計画というものが非常に重大じやないか。極端に申しますれば、この米食偏向の食生活が改善されまして牛乳、肉等による総合食習慣が営まれるようになるならば、八千五百万の国民を養うのに、米なら六千万石足らずでいいじやないかという権威ある調査もあるわけでございます。しかしそれは絵にかいたもちのようなものでございますから、そういうものを期待して増産計画を立てるべきでないと存じますけれども、特に最近の耕作状態等から見まして、秋落ち等の著しい現象は何を意味しておるか。これは一部の権威者に言わせますと、化学肥料をあまり用い過ぎた結果、こういうふうに地方の著しい減耗を来しつつあるわけであります。従つてそれを補正して行くためにも、農畜の総合計画、総合営農というものが非常に必要だと力説せられておる有力な方もおありになるわけでございます。これは私は確かにその傾向があると存じます。従つてそういう土地改良あるいは耕種改善を中核として、しかも国民の長い食習慣を徐々に改善して行くという、総合的な上に立つての大きな国策の樹立ということが、どうしても必要じやないかというように、これははなはだ漠としたことでございますけれども、そういうふうな感じを深くしておるのでございます。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 問題を第二点の農業経済の安定向上に移します。この場合において、一つは農家が直接生産するところの農業生産物の販売処理に対して安定の価格政策をとるのと、もう一つは、農民に対する社会的な施策を施して、そして生活の安定あるいは社会的な安心感を与えるという、直接間接の二つの安定向上の策がとらるべきであると思います。  第一点の農産物の価格の安定方式に対しましては、こういうような矛盾があるわけであります。国内において足らないところの米麦は、特に国際価格が高くて国内価格が安い。安いというのは自然的に安いのではなくて、これは抑圧された安さであります。こういうような面に対しては、あるいは食管法であるとかあるいは麦の統制方式であるとか、そういうような一つの国の権力をもつてこれを抑圧するような施策を講じておる。それから一面かんしよ澱粉、ばれいしよ澱粉あるいは菜種のごとき農産物は、すでに一つの過剰生産のごとき様相を呈して来ておるわけであります。こういうことになると農産物に対する価格の安定をはかるということは、その基本的な焦点をどこに置いて考えて行くかということになるわけであります。農業生産が増強されて、国内において大体自給できるようになつた場合に、はたして現在のような施政で価格安定ということができるかどうか、あるいは農家の社会的経済的な地位の確立ということは、むしろ逆の方向へ行くのではないかというような、大きな不安も出て来るわけでありますが、これらの点に対して、大臣はどのように考えておられるか、お伺いしたい。
  83. 保利茂

    保利国務大臣 ただいまの食糧事情からいたしますれば、何と申しましても、米麦に対して需要が集中しておりますから、従いまして、農家の耕作の主点も米麦に中心を置いていただきたい、そうしてその価格が適正に安定をして、一面増産と相まつて個々の農家の経済が向上安定して行くようにして行かなければならない。しかしながら、その他の重要農産物等につきましても、農家の経済を不安にするような傾向を生じまするものにつきましては、やはりできるだけ安定の方策をとつて行かなければならないじやないか、そういうふうに考えております。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほどの大臣の施策の中においても、特殊な農産物に対しては価格支持の方途をとらなければならぬということを述べられておるわけでありますが、これらの考え方は、現象面に現われた、市場において過剰になる気配の一つ一つの農産物だけを取上げて、これらに対して最低価格支持を行うというようなことになると、その影響を受けて、価格支持がされるような農産物に対して作付けや何かが、水が低い方へ流れるような形で、またそこへ集中して行くというような状態が、自由主義の形の中においては現われやすいのであります。そういうことになりますと、今とつておるような微温的な支持政策をしていては、とうてい基本的な安定をはかることはできないと思うのであります。その場合においては、どうしても生産に対して一つの計画性を与え、その計画性の約束として、国が価格に対する支持を与えるというような、両々相まつた手が打たれなければこの実効というものはあがらないと思うわけでありますが、この点はどうお考えになつておりますか。
  85. 保利茂

    保利国務大臣 まつたくごもつともな御懸念だと存じます。私は、日本の農作物に対する国民の需要の状況から行きまして、農家の耕作の主点はやはり米麦に置いていただきたいという——ただお話のように、麦がたとえば自由になつた、菜種の方が割がよいというようなことになると、菜種の方へさつと行くというような傾向が多分にございますから、その点に対しては、改良普及と申しますか、営農の指導の面において、特に力を入れて行かなければならぬ点であろうと存じます。ただしかし、計画といえば極端な作付統制でもやるというようなことは、私はしない方がよかろう、ただみんなが、菜種がよいといえば、麦が採算的に相当とれるにもかかわらず菜種に流れて行つて不慮の損害を受けるというようなことを来さないように、十分の指導を必要とするであろうと考えております。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣は先日、まだ就任した早々、自己矛盾は感じておらぬということを言われておりましたが、ぼつぼつそういう矛盾が現われて来ると思います。自由経済の中において、任意に行われる農業生産の行為の跡始末をだんだんしなければならぬような状態、そういう現象に当面した場合、いろいろ御苦心が出て来ると思いますが、ただ日本農業の一つの特殊性として、二毛作をやる場合においては、たとえばかんしよが生産過剰になる場合においてもかんしよをつくらざるを得ないというような、そういう現象、あるいはまた積雪寒冷単作地帯等における畑作農業の中においては、これが不利であると考えても、やはりばれいしよならばれいしよを一つの経済作物として、中心に耕作しなければならぬような特殊な性格が強く流れておるので、そういう点についても十分お考えがあると思いますが、なおこの価格安定の問願に対して、本日示された施策の中には、具体的な何物もうたわれておらないわけであります。肥料問題も大事であり、農業災害に対する問題も大事でありますけれども、今言われたような農産物に対する価格安定という問題を、なぜ一つの新鮮味のある政策として打ち出さぬかという点に対して、疑問を持つわけでありますが、これはお忘れになつたのか、とつときとして持つておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  87. 保利茂

    保利国務大臣 私どもも、いくら米麦に対して需要が集中しておるから米麦ということを申しても、しかし同時にそれは適地適作で、戦争中のような極端な作付け統制の弊害は、全国農家の方々も十分味わつておられるわけです。私が、農家においてもまた農政関係者においても、指導の必要なところがあると思うのはそこであります。なお農産物価の安定方策については、忘れておるわけではもとよりございません。せつかく関係当局とただいま折衝をいたしております。相当財政上の影響もあるわけでございますから、内部的のとりまとめができますればこれを表に出すように、できるだけ出したいという考えのもとにただいま努力を願つておるわけであります。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣は作付け統制のようなことはしたくないと言つておりますが、そういうことをやるかやらぬかということを聞いているのではないのであります。ただ日本の農業全体の中において、生産面に対しても一つの計画性を与える必要があるではないか。これは特に個々の農家の中においても、経営の実態に即した、平易に言えばいわゆる適地適作というか、あるいは長期の経営計画というか、こういう生産に対する計画性を持たない農業というものは、決して発展もしないし、近代化することはできないのであります。そういう場合において、国の一つの権力や何かによつて、ゆがめられた統制をするかどうかということでなくて、やはり食糧増産の計画を立てる場合においても、生産全体に対する計画性というものは、これはどうしても必要なことになるわけであります。そういう計画の線に沿つて、あるいは価格の安定を講ずるとか、あるいは肥料問題の対策であるとか、あるいは災害に対する補償であるとか、そういう一連のつながりというものは、やはり一つの計画性の中からこそ、確実に具体的に生れて来るということを私は指摘したいのであつて、その点に対して、これは軽い気持でいいわけですが、そのことの必要性はお認めになつておると思いますが、いかがですか。
  89. 保利茂

    保利国務大臣 これは程度の問題であろうと思いますが、傾向として、方向として、私はもうそういうふうに考えます。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 まだ質問が二点ばかりあるのですが、第三の点は、一番大きな問題になるのは、農林における労働力が過剰になつて来るという傾向であります。これは最近においては、毎年大体百十五万くらいの生産適齢人口がふえておる。これらのうちの大体五五%の六十万人くらいは、農村の中において増大されておるところの傾向であります。現在においても非常に零細化されておる農業の中において、毎年五十万ないし六十万の労働力がふえて行くということは、これは農業経営そのものに対しても一つの大きな脅威になつております。問題は、たとえば次三男対策とか、そういう方に発展して行くわけでありますけれども、このような農業の零細化を進めるような形、それから農村における過剰労働力の処理に対して、大臣はどういうようなお考えを持つておりますか。
  91. 保利茂

    保利国務大臣 ひとり農村のみならず、狭隘なる国土の大人口を擁しておるということが、何といつても今日の日本全体の困難性の根本は、私はそこにあると思うわけであります。むろん農村の関係について申しますれば、開墾、干拓等によつて吸収をはかつて行かねばならぬと申しましても、これもまたさ純なものである。従いまして、この農村の過剰労働力の問題は、結局において日本の産業構造が拡大されて、そしてすべての産業の中に農村の過剰労働力が吸収せられて行くようにならなければ、私はおそらく農村の次三男対策と申しましても、それはなかなか実効の上るものではない。従いまして、国全体の施策と相まつて、日本の産業の規模が発展充実をして参るように、すベての施策を持つて行かなければならぬという考えの上に立つております。もとより一面におきましては、いわゆる親善外交の結実として、移民に期待する面もあろう、あるいは都市産業に吸収せられる面もなければならぬ、同時にまた農村の日開墾、開拓等に吸収せられて行くところの施策も必要である。すべての施策が相まつてこの問題に対処して行くほかはない、そういうふうに問題を考えておるわけであります。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題は一朝一夕に論ずるわけにはいかぬと思いますが、このような大きな問題を抱えて、これがやはり潜在失業者あるいは厖大なる産業予備軍の形において、結局政府の立場から見れば、このことがむしろ低米価、低賃金を推進する一つのいい武器になるかもしれませんが、これはこの程度にしておきます。  最後にお伺いしておきたいことは、これは社会的な問題になると思いますけれども、農村における婦人の過労、こういう点について、これを防止するために何か今までお考えになつた点があるか、このことは農村における婦人の人たちが、非常に労働の過重、あるいは非常に長時間にわたつての苦しい働きを続けておる、こういうことをしながらも、なお現在においては、全国の所得の中における農業の占める所得の数字というものは、一年々々低下しておつて、敗戦後、昭和二十四年くらいまではだんだん上昇して、大体全体の所得のうちで、農業の占める所得が二四%くらいまでは高まつたわけですが、昨年あたりになると大体一七%ちよつとくらいに下つております。このことは一戸々々の農家の所得の実勢というものが非常に下つて来て、結局生活の水準も下つておるというようなことになつて来るわけであつて、これらを何とか阻止して、一定の生活を維持するためには、やはり農家個々の家庭内における労働の強化という方向をたどるようなことになるわけでありますが、もう少し農村の婦人の、ああいう弱い体質を持つておる婦人の人たちが、朝三時か四時に起きて、夜の十一時までも寝ることができないというような、こういう社会的の取残された一つの現象に対して、農林大臣として何かお考えがあれば聞かしてもらいたいと思うのであります。
  93. 保利茂

    保利国務大臣 よく御承知であられるように、終戦後のあの混乱時代の状況は、まつたく都市産業が、極端に申せば麻癒しておる状態、従つて相対的には農村の経済事情が比較的恵まれ、さればその人口の動態から見ましても、都市人口が相当農村に流れて行つた。それがこの数年の傾向は、漸次日本の産業が復興して参りますと同じ歩調をもつて、農村に流れました人口が都市の方にまた還流している。この一両年は人口の配分を見ましても、四四%くらいの農村人口になつておるようであります。農家経済等の統計を見ましても、つまり日本産業の復興回復によりまして、相対的にはいかにもお話の通りであると思います。それは私はある意味においては、都市の産業の回復を意味するものでございますから、もし農村の経済事情が低下して来ないで、相対的に都市の経済事情が改善されて来ているという見方をすれば、むしろ喜ぶべき現象であるかと思います。そこで最近の統計から見ますれば、農家の個々の経済事情は、依然として上昇の足取りはとつております。絶対的な経済事情から行きますと、やはり改善進歩の跡を統計は示しております。しかしこれはむろん統計のことでございますから、御了承を願いたいと思います。  第二の農村婦人の過重労働の問題でございます。これはよく御承知のように、長い封建的な習慣から、すべての農家の生活が婦人に加重せられるような——つまらぬと申しましては、はなはだ失礼でございますが、台所のつくり方あたりから考えましても、婦人の立場に対してそういう点で少しも——少しもということは語弊があるかもしれませんが、思いやりが少い。そういうことがどうしても必要以上に農村婦人の労働過重をしいているのでありますから、農林省で出しております生活改善のための普及員等も、千名以上国費をいただいておるわけですから、農村婦人の負担を軽くして、そうして婦人の社会的関心また社会的責務も今日におきましては非常に大きくなつておりますから、その社会的責務が果されて行くような婦人の生活が営まれて来るように、指導をして行かなければならぬ、こういうふうに考えております。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は非常に見解が違うわけです。台所の改善だけをすれば農村の婦人が解放されるかと言えば、そうではないのであつて、解放せられない原因は、今の農業の中においてまだ依然として残つているわけです。婦人の労働力というものがこれを支えておるといつても過言ではないわけであります。これを取除いて解放してやるということは、単に今大臣の言われたような問題の解決だけでは、何ら解決にはならぬのであります。こういうような幾多の重圧とか困難性の中において、今の日本の農業が営まれておるのです。それは大臣の認識の証左であると思うわけですが、こういう点についても、今後いろいろな機会を通して伺いたいと思います。これは一つの社会政策としても重大な問題であると思いますが、いずれ他の機会に譲りまして、本日はこの程度にとどめます。
  95. 井出一太郎

    井出委員長 久保田豊君。
  96. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 時間もありませんから、私は保利農政に対する全般の質問は後刻に保留をいたしたいと思います。願わくは大臣には、就任御早々でお忙しいことと思うのでありますが、もう少し真剣に当面の段階の農政並びに日本の農業の置かれた基本問題について、せつかく御勉強をいただきたいということを、失礼ではございますがお願いを申し上げておきます。  当面必要な緊急の問題につきまして、二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。この基本施策の中でも、九州その他におきまする災害について特段のお骨折りをされておるように拝見をしております、ところで私どもが一番心配をいたしますのは、当面の食糧の配給がうまく行つているかという問題であります。と申しますのは、私は農民組合の出身でありますが、その方から行つた者の調査でも、また本日総評の大会に参りました九州方面の労働組合の代表諸君に会つて聞きましても、現地の食糧配給の事情がうまく行つておらないようであります。その証拠といたしまして、たとえば久留米等においては、今月の四日の調査におきまして米が四百円しております。また福岡におきましてはやみ米が三百二十円しております。しかもそれでも手に入らないという現状であります。しかも野菜のごときはまつたくない。従つてじやがいも一つが二十円だ、二十五円だというような状況なつておるようであります。これに対して前々から政府にお聞きいたしましたところ、食糧については心配はさせないということでしたが、具体的にどのような処置をとられておりますか、ひとつ実情をお伺いしたいと思うのであります。
  97. 保利茂

    保利国務大臣 今回の九州方面の災害に対しまして、私どもが最も心配しましたのは、食糧の問題と植付をいかにして完了するかというところを直感的に心配して来たわけであります。現に私はそういうことを申し上げてははなはだどうかと思いますがへ私の関係地におきましても、現にいまだ交通も開通せざる状態の区域相当広くあるのであります。そういう関係で輸送、流通の面にかなり困難を感じておるのではないか。そこで大野国務相に現地の対策本部長としておいでを願うときに、農林省からも改良局長以下数名の方を現地に出して、今日現地機関を督励いたしておりますのは、要するに食糧について不安を来さないように、幸いに現地に食糧は相当豊富にあるわけでありますから、それによつて現場において適切な処置に誤りないようにということを、お願いしてやつておりますけれども、お話のようにまだ交通の杜絶しているという地域も相当あるようでございます。この点は現地において最善を尽していると思いますけれども、なお十分気をつけて参るようにいたしたいと考えます。
  98. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 農林大臣は今のようなやみ値が出ておるということを御承知なんでありますか、この点をはつきりお伺いしたい。
  99. 保利茂

    保利国務大臣 一部においてそういうお話のような事例があるということを聞き及んでおります。
  100. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それでは現在までに災害者に米なり他の食糧なり、どの程度の数量を具体的に配給されておるのか、またそれが地域別にどうなつておるかということを、はつきり聞かせていただきたい。
  101. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。ただいま大臣から申し上げましたように、現地に責任者を派遣してやつておるわけでございますが、現在までのところ、米の配給につきましては完全になつております。それからなお麦につきましては、たとえば熊本におきましては、現地の製粉会社の手持用が相当数量ございますので、これを供給するように手配いたしておりまするし、また福岡等におきましても、麦類について政府の保管のものを配給し、また製粉会社その他の加工工場にございまするものを災害地に輸送しておる次第でございます。ただ麦類の総数量等につきましては、現地の方からの報告がばらばらでございますので、総体としてはまだつかめておりませんが、これも一両日中には現地の者が帰つて参りますので、その点は明白になるだろうと思います。
  102. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これはぜひひとつ具体的にお知らせ願いたい。現地にまかされたということでありますけれども、それでは不十分だと思います。やはりこちらから具体的にやらなければいけない。私どもは水害については何回か経験があるのでありますけれども、実際なかなか来ない。特に現地において聞くところによりますと、集団の避難地についてはたき出しその他が行われて、やや食糧がまわつておる。しかし分散をした連中についてはほとんど食糧が渡つていない、あるいは渡しかねておるというのが実情のようでございます。従いまして政府の方で、早急にどれだけのものを今までどの地域に配給したか、それは特に災害米としてやられたか、その基本方針をもう一回はつきりお尋ねしたい。ただ配給をしたというだけでは不十分である。  もう一つは、これに連関してどういう配給方法をとられておるのか。普通の場合の配給方法ではおそらく間に合わないと思います。従いまして具体的にどういうふうな配給方法をとつてやつておられるのか、政府としても、現地でしかるべくやつてくれというような無責任なことはできないと思うのであります。従いまして従来の配給機構を通じてやつておるのか、あるいは特別な配給組織をもつてやつておるのか。しかもそれは有料でやつておるのか、無料でやつておるのか、幾らでやつておるのか、こういう点をはつきり説明をしていただきたい。
  103. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 関連して。今の前谷長官のお答えでは、完全配給をしているということでございますが、一般の消費者に配給するような数量をもつて完全配給というのか。農家の場合は一般の消費者と同じような量をもつて完全配給と言われたのでは半日も働けないのです。その点は特別の区別をつけて配給をしておいでになるのか、その辺もあわせて承りたい。
  104. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの久保田委員の御質問でありますが、水害直後におきましては、御承知のように卸、小売の機構自身にも被害がありましたから、大部分は災害救助法によりまして、府県に対しまして政府が食糧を払い下げる、また災害救助法の適用によつて府県でもつて応急的に措置をいたしておつたわけでございます。だんだん配給機構が整備するにつれまして、従来の配給機構に依存をして配給を続けておる。当初の配給機構が再建されない以前におきます処置は、災害救助法によつてやつておるわけでございます。これの府県別数量は、まだ県別の報告が来ておりませんが、府県と協議いたしまして必要数量は必ず出すという形になつております。  それから農家につきましても、当初の災害救助法の関係では消費者と同様でございます。飯米を流失いたしました農家に対する今後の処置というものにつきましては、貸付あるいは延納という方法によつて処置して参りたい。また十五日の災害救助法の期間でございますが、その点を同時に現地におきましても調査し、今後の対策を立てておるような次第であります。
  105. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今のお話ではどうもはつきりしないのでありますが、都市におきましても農村においても、実際経験をしてみればわかるが、ああいう水害のときはなかなか金がないのです。事実食うものは非常に高くなる。その場合に今吉川さんからお話のあつたように、特に農村に居住しておる者は、普通のあの配給量をもつてどうにもなるものではありません。そこで貸付配給をしておるのか、あるいは量についてはどういう規正をしておるかという具体的なことを聞きたいのであります。ただ従来通りの配給機構を整備してやつておりますというだけでは、水害地の食糧対策にはならぬので、この点をはつきりお聞きしておるのであります。
  106. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 水害後の約二週間は災害救助法の関係によりましてやつております関係上、その場合におきましては、災害救助法の関係では無料という形になる場合があるわけでございます。正常の配給ということになりますと、一般の卸、小売の機構が再建されますにつれて正常配給に移つておるのでございます。消費者につきましては、正常配給の配給をいたしております。農家につきましては、御承知のように従来の還元配給の形でやつておるわけであります。
  107. 稲富稜人

    稲富委員 食糧庁長官に関連して質問いたしますが、災害救助法によつて十五日間配給をされる。しかしその後において、農民の実生活というものはそんなたやすく復活するものではないのでありまして、その期間が過ぎたらさらにそれを延長して救助をする、こういうようなお考えはもちろんあるだろうと思うのでございますが、これに対してどういうような考えを持つておられますか、食糧庁長官からはつきり伺いたい。
  108. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 その点につきましては、災害救助法後におきましては延納制度を活用いたしたいということで、現在考えておるわけであります。
  109. 稲富稜人

    稲富委員 それは貸し付けるとおつしやるのでありますか、貸与をするという意味でありますか、どうでありますか。
  110. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 府県に売却しまして、その代金を延納いたしたい、こういう方法で考えたいと思います。
  111. 稲富稜人

    稲富委員 ついでにこの際申し上げておきたいと思いますが、食糧庁長官の部下は、現地に行きますと、職務に忠実過ぎる人が多くございまして、その結果はたとえばこのたびの災害におきましても、すでに倉庫が水浸しになつておる。これを早く運べばその被害をこうむらないでもいいのではないかというけれども、いや、これは国家の倉庫だから扱うことはできないと言つて、とうとう何万俵というものを水に浸したというような、実に融通のきかない忠実過ぎるような部下がたくさんおられる。たとえばあるところに行きますと、やはりたき出しをやつておると、お前たちは何によつてやつておるのか、食管法に抵触するではないかと言つてしかられたという話があるのでありまして、どうもそういうような融通のきかない人がやられるので、これに対しては、よほどあなたの方で部下の指導をよろしくして、ほんとうに今日死活の立場にある被害者に対しましては、ひとつ十分なる救いの眼を向けて、一つのかた苦しい法律、かた苦しい規則によらなくて救済する。これは現在の罹災者に対しましては、いかにして食生活に安心を与えるかということが最も寛大な問題だと思うのです。しかもその罹災者は、災害をこうむりまして、一つの合宿所に入つております。自分の家に帰れば食糧はもう一切なくなつている。私ははなはだしいのを見たのでございますが、玄米に芽が出ているのです。そういうように玄米に芽が出ているというような状態を見まして、荘然自失の状態にあるこの災害者に対しては、いかさか融通をきかして救いの手を伸ばす、こういうようにして安心感を与えることが最も必要だと思うのです。部下に対しては十分督励してやつていただきたい、こういうことをわれわれは考えるわけであります。
  112. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今お話がありましたが、それとともに蔬菜その他については、政府として何らか具体的な手を打つておるのか、この点をひとつお伺いしたい。
  113. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 野菜につきましては、被害地域が非常に広汎でありまして、近所からの供給がとだえておるようであります。野菜の値上りも、報答によりますと非常に高いのであります。野菜としては、たとえばたまねぎとかきやべつとかいうものは近畿、中国の方で相当手配しております。ところが何さま要求量に対しては、この輸送が思うように行つておりませんので、追い追いルートがついて行きますけれども、とにかく関門トンネルが十五日にならなければいかぬ。そうすると機帆船で送るとかいろいろ輸送上の不便がありますので、今までは野菜が一番問題になつて、現地から野菜を送れという電報が来ております。これにつきましては、今申し上げましたように、腐敗にたえるたまねぎとかきやべつとかいうものを主として送る、こういう対策を立てております。
  114. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今のお答えでは不十分でありまして、満足することはできない。それは追い追い汽車が回復して、野菜が自由に行けるときは、現地ではそんなものは政府の手を煩わさずとも、野菜は手に入る、今困つているから、何らか政府が特別の措置を講じて、早く現地べやるということが必要であつて、関門トンネルの通るのをまつて野菜をぼつぼつ送りますなんという手ぬるい方策では困るので、この点をもう一回考え直していただきたい。  それからもう一つの点は、これは大臣にお伺いいたしたいのでありますが、たとえば労働組合にいたしましても、あるいは農民団体等にいたしましても、今日九州災害の救援ということについては、相当大きな関心を持つております。これは考えようによりますれば、またその規模、重要さというような点から見れば、関東大震災よりも大きい災害だと思う。私どもは関東大震災にもあいまして、非常に皆さんから御同情を得て、いろいろお助けいただいたこともあるのでありますが、そういつたことに対しまして、全国的な、国民的な救援運動が当然起つて来ておる。しかるに政府は、こういう点では今度のやり方は非常に官僚的だと思うのであります。それはなぜかというと、災害地に対して物資の輸送をする場合に、政府と日赤だけしか無賃輸送を認めていない、なぜこういうことをする必要があるか、一般の国民が早急にそれぞれの思いつきによつて、どんどん無賃輸送をするという対策をとることが一番必要であります。それを何ゆえに政府の物だけ、あるいは日赤の物だけを無賃輸送にして、あとの物は全部有賃輸送だ、どうしてこういうばかなことをしているか、この理由と、そうしてこれを早急に一般の国民が物資を送れるように、いろいろの意味におきまする物資を早急に送れるように、そうしてまた現地においては、これを最も公平に迅速にさばき得る受入れ態勢というものを——すでに相当日時がたつて、大野大臣が行つて現地の指揮をされているにもかかわらず、実情はそういう実情であつて、むしろ国民全体の救援運動を、政府のそういう間違つた輸送措置によつてとめておるのが、今日の現状だと思う。従いまして、これに対してひとつ、輸送当局でないから、大臣にお答えをいただくということは少し無理かと思いますけれども、政府として今のような間違つた方針を改めていただきたいと思うのですが、これに対する御所見をお伺いしたい。
  115. 保利茂

    保利国務大臣 今回の九州地方の災害は、久保田さんが言われますように、私どもも具体的な地域の状態をこちらで聞きまして、想像に絶する被害で、まさにお話のように関東震災にも劣らざる重大な被害である、従いまして、政府といたしましては、この罹災地に対する全国民のあたたかい協力を期待をいたしております。このことはひとり国民のみならず、諸外国の救援も、御承知のように集まつていることから見ましても、内外人がひとしくこの被害の激甚の程度を憂えておる証拠であると存じます。政府が音頭をとつて国民運動的な救援をやらなければならぬ、やれということはごもつともでございますが、いろいろさしつかえのある面もあるようです。たとえば救援金の募集等を役所で掲げるというわけには参らぬというような、今日の制度上のあり方にもなつておつて、そこで日赤がそのかわりを主としてやつて、その他民間諸団体において、今日救援のあたたかい手を差延べていただいている。お話の輸送の関係につきましても、ごもつともでございますが、この救血品等におきまする公共団体へ向けての輸送は、これはもう特別に扱つていると思います。ただ個人から個人への輸送につきましては、そういう手がない。しかしこれはできるだけ、御趣意のような点を十分考えて、罹災地の方々に元気をつけていただくように、立ち上つていただくように、私どもも、これは全体の御協力と御救援をお願いしてやまない次第であるわけです。その趣意に沿いまして、さらに努力をいたします。
  116. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の点は、これは農林大臣としてやることはなかなか困難だろうと思いますが、早急にだれでも送れるということが、やはり必要だと思う、ぜひそういうふうな趣旨で、内閣の方にもお考えおきをお願いいたしたい。  それから今お伺いした程度では——私はもちろん恒久策については、いろいろ問題がまた別に起ると思いますが、応急策にしましても、農林省のお考えになつておる現在の段階は、私はどうも、何か従来のありきたりの食管法その他にとらわれて、現地の実情に合つていないと思う。これはぜひひとつ、最近現地の方から人が帰つて来るというのならば、その実情も十分お聞きを願つて、格別の対策を立てられて、そうして現地へはつきりした指示をしていただきたいと思う。その対策ができましたら、当委員会にもさつそく御報告をいただきたいと思う。東京におられますと、水害というようなことは、あまりぴんと来ない。われわれは小さなときから、幾度か水害を食つております。たいがい官でやるところのものは、あとの祭りで、現地の連中が非常に苦しんでから、あとでいかにもありがたがらせるようなかつこうで、ちやちな物が来るのが大部分であります。どうかそういうことのないように、この際は、従来の規定その他ももちろん尊重はいたさなければなりませんけれども、そればかりにとらわれて規定を守つたからといつて、現地の人間が助からねば何にもならない。そのあとにはまだ立上りという非常に困難な大きな仕事があるわけであります。こういう当面の段階において、現地の人たちが苦しむということでは、意味がないと思います。もう一回再検討をしていただきまして、はつきりした暫定方針をお立てになつて、現地の罹災者がほんとうに安心できるように、そうして復興に立上れるような措置を、早急にお立てを願いたい。この点をひとつお願いいたして、とりあえずの質問を終ります。
  117. 井出一太郎

    井出委員長 残余の質疑は次会に譲つてこれを行うことにいたします。     —————————————
  118. 井出一太郎

    井出委員長 なお、この機会にお諮りいたします。けさほどの理事会の申合せによりまして、目下経済安定委員会審査中の、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、連合審査の要求をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。なお連合審査会は、明日午前十時より開会の予定になつておりますので、御了承を願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十九分散会