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1953-07-21 第16回国会 衆議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十一日(火曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 大村 清一君 理事 高橋  等君    理事 八木 一郎君 理事 上林與市郎君    理事 鈴木 義男君       江藤 夏雄君    津雲 國利君       永田 良吉君    長野 長廣君       平井 義一君    船田  中君       牧野 寛索君    赤澤 正道君       高瀬  傳君    粟山  博君       神近 市子君    島上善五郎君       堤 ツルヨ君    中村 高一君       濱地 文平君    辻  政信君  出席政府委員         内閣官房長官 江口見登留君         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         行政管理政務次         官       菊池 義郎君                  行政管理庁次長 大野木克彦君  委員外出席者         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ————————————— 七月二十一日  委員宮原幸三郎君、松村謙三君及び西村榮一君  辞任につき、その補欠として牧野寛索君、赤澤  正道君及び堤ツルヨ君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一二一号)  総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三二号)  恩給法の一部を改正する法律案内閣提出第一  三三号)  昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生  じた恩給等年額改定に関する法律案内閣  提出第一三五号)  行政管理庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出一五〇号)  元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別  措置に関する法律案内閣提出第一六二号)     —————————————
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより内閣委員会を開きます。  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案及び行政管理庁設置法の一部を改正する法律案一括議題とし、審査を進めます。質疑の通告があります。中村高一君。
  3. 中村高一

    中村(高)委員 昨日行政管理庁設置法の一部を改正する法律案に対しまして一部質問をいたしたいのでありまするが、もう二、三重要な点について政府の御所見を承りたいのでありまするか、今回の予算に対しまして、自由党改進党との修正案によりますと、行政庁費が百億削減されるということに相なるようでありまするが、もし百億削減をされるという場合におきましては、行政管理庁責任者といたしましては、どういう方面にどれだけ削減をせられるか、また修正をせられるる場合には、どういう方面にどれどれだけの削減をしろという具体的なものがあるのかどうか、これに関しましてお尋ねをいたしたいと思います。
  4. 稻村順三

    稻村委員長 それは委員長質問に対して答えられたことです。資料はあらためて至急提出すると言つておりました。
  5. 中村高一

    中村(高)委員 そうするときようこれの討論が終ると資料あとから提出されるというようなことになるのでしようか。
  6. 稻村順三

    稻村委員長 至急出すということを約束したのだから……。
  7. 中村高一

    中村(高)委員 それからもう一つ、今までどういう監査をして来たのか、われわれには監査の結果というものが一つ報告されないで、審議だけしろ、こういう役所があるからというのですけれども、どんな成績をあげて来られたか、われわれはこの行政管理庁の業績に対して疑いを持つておるのでありまして、どういう監査をせられて来たのか、これもあわせて御答弁願います。
  8. 大野木克彦

    大野木政府委員 初めの百億の削減の具体的の内容につきましては、昨日長官から御答弁申し上げたと存じますか、人員の定員等の点につきましては関係なく、庁費その他で削減をせられるように承つております。それから管理庁監査といたしましては、従来たとえば共済関係でございますとか、あるいは援護関係でございますとか、郵便関係でございますとか、そのほかいろいろな項目につきましてそれぞれ監査をいたしまして、それらにつきまして各省勧告をいたしまして、それについて各省からそれぞれ回答がございます。今後はさらにその回答趣旨が、はたしてその通り実施せられておるかどうかはよくまた見まして、行政運営の改善の促進に資して行きたい、こういうふうに考えております。
  9. 中村高一

    中村(高)委員 私がお尋ねしたのはもつと具体的に——会計検査院報告のようなものをただちにせよということも無理でありましようが、もう少し具体的な資料を出してもらわないと、今次長が言われるように、いろいろ勧告もしたしというような程度——どの役所にどういう事態があつて、どういう監査をしたというようなことをお尋ねをいたしておるのでありますが、今答えられなければやむを得ないから書面で出してもらいたいと思います。
  10. 菊池義郎

    菊池政府委員 ただいまの御質問でございますが、全国に千五百ばかり監察官を配置いたしまして、おのおのその専門々々の部門によつて、みな相当つ込んだ調査をいたしております。そうして勧告をいたしますにしても、まずその勧告をはね返されるようなへまなことのないように統計をとり、計数を明確にいたしまして、そうして絶対に間違いないようにいたしまして勧告を発するのでございますが、なかなか各部門にわたりますと多岐多様にわたりまして、一つ報告書類が三寸厚みくらいになつてつておるのであります。それを一々お目にかけても、なかなかお目通しになるようなひまもなかろうと思いますが、大体の急所急所はつかんで私が記録いたしておりますので、いつでもお目にかけたいと思うのでございます。ごらんになりますと非常に御参考になるおもしろい調査がたくさんございますから、いつでもお目にかけたいと思つております。
  11. 中村高一

    中村(高)委員 そういう浩酷な記録があればなおけつこうでありますが、われわれが委員会審議するのに必要な程度報告をするということはあたりまえであります。役所書類があるのがあたりまえであつて、むろん詳細な書類はおありになると思いますが、その結果を委員会報告するというのは行政管理庁の職務として当然でありまして、それさえしないで、書類がありますから見にいらつしやいというようなことは、菊池政務次官ともあろうものが、まことに一朝にして官僚に変化したような態度でありまして、民間から出た政務官といたしましてまことに心外千万であります。ただちに不信任をするほどのことでもありませんが、そういういろいろ調査の結果が現われて、その結果については、たとえばこういう点についてはこれは不必要だ、あるいはこういう点についてはこれは不正があつたのだから告発をするとか、そういうような取扱いをいたしたのがありますか。
  12. 菊池義郎

    菊池政府委員 告発するということは権限がないのでその筋にまわすようなことにいたしておりますが、その結果につきましては、御趣旨に沿いますように十分とりはからいたいと思います。
  13. 稻村順三

    稻村委員長 他に御質疑はございませんか。     —————————————
  14. 稻村順三

    稻村委員長 両案に対して御質疑がなければ、これより両案を一括して計論に付します。島上善五郎君。
  15. 島上善五郎

    島上委員 私は日本社会党を代表して、この両案に対して反対をいたします。その反対理由を簡単に申し上げます。  職員定員法の一部改正は、政府の一貫した方針がないということ、それから積極性がないということであります。質疑の間に明らかにされましたことは、たとえば気象台職員につきましても、先般来起つている風水害等に対して手不足であるということが明らかであります。そういうことが予報を迅速に行えなかつた一つ理由にもなつておると思われるのでありますが、そういう方面に対して増員しようという積極性がないということ、またたとえて言うならば、癩療養所関係においても、政府当局者自身が足りないと言つてその数字を示しておるのに、これに対しては何ら必要を満たそうという積極性がない。それにもかかわらず半面においては、例の海外移住局という大げさな機構をつくつて局長次長、課長をふやそうとしている。そうしてまたこの次あたり、来年度あたりには大きな行政整理のなたを振るおうというようなことをほのめかして、官公吏に脅威を与えている。まつたくこの職員定員法の一部改正法律案というものは、一貫した方針が全然ない。その都度改正で、これは吉田内閣のその都度外交、その都度改正というやり方とまつたく同じであつて、私どもこういうようなでたらめな改正案賛成するわけには参りません。  また行政管理庁設置法の一部改正ですが、これは昨日社会党中村高委員によつて質問された点で明らかにされましたが、これも管理庁機構強化し、管理の実を上げるということが理由になつておりますが、その強化がきわめてなまぬるいものであつて、現在の法律をあえて改正しなければならぬほどの理由を私どもは発することはできない。強化するならば、ほんとう強化するならば、ほんとう強化の実を上げ得るような改正でなければ意味がない。そういう観点から、この法案に対しても賛成するわけには行きません。  以上簡単に日本社会党反対理由を表明した次第であります。
  16. 稻村順三

  17. 高瀬傳

    高瀬委員 私は改進党を代表いたしまして、本案賛成するものであります。  まず行政機関職員定員法の一部を改正する法律案について申し上げます。定員法改正主要点は、各行政機関事業計画に即応して、必要やむを得ない増員、郵政省の特定郵便局賃金要員定員法上に認めようとするようなものや、あるいは旧軍人等恩給復活のための事務増加による増員等まで大体妥当なものと認められるとともに、事務能率合理化のための減員も行い、表の上では四千七百六十六人の増員となつておりまするが、実質上では二百三十二人の減員となつておることが明らかにされておるという点でこれらを了承いたします。  なお設置法の一部を改正する法律案につきましては、今次の監察強化程度ではまことに満足すべきものではないのでありますが、従来よりは一段を進んだものであることは明らかなので、今後の努力と、先日の大臣の答弁を信頼いたしましてこれを了とするものであります。  以上のような理由でただいま上程されました法案賛成の意を表するものであります。
  18. 稻村順三

  19. 中村高一

    中村(高)委員 両案に対しまして希望の意見を付して賛成をいたします。  行政管理庁の方につきましては、この役所自体がきわめてあいまいで不明確でなまぬるい役所でありまするから、これを明確にいたしまして、管理を主とするものなのか、あるいは監察役所なのか、定員などの現状から見ますると、ほとんど監察を担当する入が大部分、千五百人とかいうのでありまするが、管理の方は少数であります。おそらく監察を主とする役所と思うのでありまするが、そうしますると現在の会計検査院監察、大蔵省の監察所管省監察そのほかにこの行政管理庁監察という、実に複雑多岐監察をいたしておるのでありまするが、ときによりまするとまるで東京都の道路管理のように、ガス会社が掘り返したあとを水道が掘り返して、そのあとを電車が来てまた掘り返すというような、雑然たる道路行政と同じような監察の実情でありまして、やる方も受ける方も趣旨が一貫をいたしておりませんので、これは統合するか、もしくは強化するか、一本にしなければまつたく意味をなさないことだと思うのでありまして、この点について官庁自体まず監察を要する役所であると思うのであります。  次は、今度の改正内容を見ましても、とりとめてこれならばけつこうだと思われるほどの改正はどこにもありません。少しよくなるかどうかという点でありまして、百分の一か千分の一賛成をする程度改正でありまして、わざわざ委員会にかくのごとき手数を煩わすほどの改正ではありません。しかし少しは賛成できる点がありまするから同意をいたしまするが、やるといたしまするならば、もう少し役所に対しましての厳重な監査のできること、さらに国費から援助を受け、補助を受けておりまする公企業体あるいは法人、こういうようなものに対しても厳重な監査のできるような規定を持つことが当然であり、また役所に対しましても、これが監察を任務する役所でありますならば、協力を求めることができるなどというなまぬるいことで、協力しないというならば、目的を達することができないようなこういうものではなくして、監査をしたならば、堂々と説明を求めることもできるし、あるいはそれに対していろいろ適当な措置を講ずることのできるような規定、あるいは問題が起つたならば綱紀を維持するということが、今度の改正案にもあるのでありますから、まことにけつこうでありますが、一歩進んで、そういう綱紀を乱すような者に対しては軽微な者といえども懲戒あるいは告発をするというような積極的なことのできるような改正をしなければ意味をなさないと思うのであります。こういう点におきまして、はなはだなまぬるいので、もつとこれを徹底をさせるのならば徹底をさせるし、その目的を明確にして役所としての存在を明らかにすることが当然である、かように思うのであります。定員法につきましては、どうしてもこれは行政機構の改革、あるいはさらに進んで行政整理というようなところまで行かなければ——今日の役所機構あるいは仕事の仕方に対しては、国民からは実に批判を受けておるのであります。役所に用があつてつてみても、タバコを吸つておつたり、お茶を飲んでおつて、なかなか相手にしてくれませんというような切実な意見国民からあり、あるいはむだな費用を使つて、方々に調査に出かけたり、旅行に行つたりしておるというようなことに関しまして、国民からは相当手痛い批判を受けておるのでありますから、そういうことに対して、この役所はもつと国民の要望にこたえることが当然だと思うのでありますが、残念ながらこうやく張りの定員法改正にすぎない、こういう点については政府に十分な反省を求めまして、賛成する次第であります。
  20. 稻村順三

  21. 大村清一

    大村委員 私は自由党を代表いたしまして、両案に対し賛成意見を述べんとするものであります。  まず行政職員定員法の一部を改正する法律案でございますが、本法律案は、昭和二十八年度における各行政機関事業予定計画をもといにいたしまして、行政簡素化経費節約方針にのつとり、その定員を改訂せんとするものでありまして、反対論者の中には、海外移住局の問題について御意見もございましたが、これはわが国の置かれておる現状から見まして、この移住局によりまして将来に備えるということがきわめて適切な問題だと考えるのであります。その他この改正案は、大体において妥当と認めて賛成するものであります。ただ政府は本委員会における審議においてもその所信を明らかにされましたごとく、将来行政整理徹底的に遂行する、そうして二十八年度以後におきまして行政機関職員定員法は、その方針に基いて徹底的に改正をされるということに信頼をいたしまして、本年度においてはこれに賛成せんとするものであります。  次に行政管理庁設置法の一部を改正する法律案について申し述べます。本案は、行政管理庁の執務の経験に徴しまして、必要なる改正を加えんとするものであります。あるいは本案はきわめて微温的な、なまぬるい改正であるという御批判もございますが、しかし行政管理庁は、その本質といたしまして、いわゆる内部監査自己監査を使命といたしておるのであります。これは外部監査というようなことを職能といたしておるというように前提いたしますと、そのような説も起るかと思うのであります。内部監査本質から申しまして、この程度の職権の強化をいたしますことがむしろ適当だと認められるのでありまして、われわれは本改正案に対しまして賛成せんとするものであります。  以上の理由によりまして、私は両案に原案通り賛成せんとするものであります。
  22. 稻村順三

    稻村委員長 これより採決をいたします。  まず、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案賛成諸君起立を願います。     〔賛成者起立
  23. 稻村順三

    稻村委員長 起立多数。よつて本案は可決いたしました。  次に行政管理庁設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案賛成諸君起立を願います。     〔賛成者起立
  24. 稻村順三

    稻村委員長 起立多数。よつて本案原案の通り可決いたしました。  なお、ただいま可決いたしました両案について、委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願います。  午前中はこの程度にとどめ、暫時休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  25. 稻村順三

    稻村委員長 これより再開いたします。  総理府設置法の一部を改正する法律案恩給法の一部を改正する法律案昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案及び元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案一括議題とし、その審査を進めます。  ただいま恩給法の一部を改正する法律案昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案及び元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案の三法案に対し、自由、改進、分自、三派共同による修正案が、代表者として高瀬傳君より委員長手元にそれぞれ提出されております。各修正案趣旨説明を求めます。高瀬傳君。
  26. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいま委員長手元まで提出いたしました両自由党並びに改進党による共同修正案趣旨弁明をいたしたい思います。  ただいま提出いたしましたるところの恩給法の一部を改正する法律案に対する修正案につき、提案者を代表いたしまして説明せんとするものであります。その修正案の詳細なる内容は、お手元に配付いたしおりますところの恩給法の一部を改正する法律案に対する修正案に詳細に克明に載つておりますので、これは皆様にお読みを願うことにいたしまして、修正案要項につき重要なる点に対して御説明いたしたいと思います。  大体修正案のおもなる点は四項目にわたつておりまして、第一は一、二等兵、上等兵支給額政府原案兵長と同額とする。第二、七項症、一款症ないし四款症を設け、七項症に増加恩給款症傷病年金(但し款症には扶養家族加給は給せず)を支給する。来年四月一日をもつてこれが実施を行う。第三、増加恩給または傷病年金事由発生婚姻せる妻に扶養家族加給を支給する。第四、恩給受給原因発生後、父母祖父母が姻婚せる場合、同一戸籍内にある場合に限り恩給権を喪失せざることとする。以上が修正案要項であります。どうぞ慎重審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。  なおこの法律案改正に伴い、昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案修正案につきまして、修正理由及びその概要を御説明申し上げます。  このたび修正せんといたしましたことは、別途提出いたしました恩給法の一部を改正する法律案修正に伴う機械的修正であります。すなわち恩給法の一部を改正する法律案においては、増加恩給第七項症及び傷病年金は、今後旧軍人軍属、準軍人には年金として給せられず、従つて文官の従来のこれらの年金は単に従つてこれらの前をもつて立案され、従つてこれらの年金恩給はべース・アツプされないことになつていたのであります。ところがこのたびの旧軍人軍属及び準軍人にも、これらの年金を給すること、なり、従来の文官のこれらの年金も認めることになりましたので、これらの年金については他の年金と同様にべース・アツプの取扱いをいたそうとするのが第一でありまして、第一号の修正がこれに関するものであります。  次に恩給法の一部を改正する法律案修正に伴う援用条文の繰下げ等に伴う字句修正及び同法律案修正により追加された別表で、この法案実施により不用となるものを削除する等の措置をいたそうとするのが第二でありまして、第三号及び附則の修正がこれに関するものであります。以上がこの修正案概要であります。何とぞ御賛成あらんことをお願いいたします。  なお元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案に対する修正案議題に供されておりまするが、これらはいずれも恩給法の一部を改正する法律案修正に伴う字句並びに条文修正であります。この点につきましても、何とぞ皆様の御賛同を得たいと思います。  以上簡単ながら両自由党改進党共同修正案趣旨弁明といたします。
  27. 稻村順三

    稻村委員長 以上の三修正案に対して御質疑はございませんか。
  28. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 今度の修正案について大体了承できるのでありますが、恩給受給原因発生した後に父母祖父母婚姻をした場合に、従来の原案では、ただちに恩給権を喪失するようになつてつたようでございまするが、一応喪失しないことにしたことは非常に進歩でありますけれども、同一戸籍内にある場合に限り喪失しない。そうすると内縁の妻であればさしつかえない、正式の婚姻をすればいけないということを意味することになると思うのでありますが、できるだけそういう不明朗なことを法律が奨励するわけではないが、期待するようなことは好ましくないと思います。実際非常にたくさんの金でもくれるならば、また別問題でありますが、ほんのへそくり程度の小づかい銭を与えるのに、戸籍が別になればやらない、同じ戸籍で姓をかえなければやるというようなことは、はなはだ不合理修正だと思うのであります。どういう理由でこういう御修正になりましたか、承りたい。
  29. 高瀬傳

    高瀬委員 わが国法律建前では、再婚した場合には、これを正式に戸籍上に届け出て、正式の妻となつておる者に対して、正当なる請求権なり、あるいは法律的な資格を与えるのが、われわれの社会通念でありますので、そういう点で、先ほど鈴木義男君の言われたいわゆる内縁の妻に対しては、これを認めないということにいたしたのでありまして、この点については、それ以上さしたる理由はなかろうかと存じます。
  30. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 その答弁は違う。内縁の妻ならばくれるが、正式の妻ならばやらないというのは、けしからぬということを聞いておる。
  31. 高瀬傳

    高瀬委員 ただいまのは、ちよつと聞き違えましたので……。高橋君に答弁していただきます。
  32. 高橋等

    高橋(等)委員 修正案共同提案の一人として、御説明いたします。なるほど鈴木さんの御指摘になりましように、内縁関係にあれば恩給がもえる、その姓のままであればもらえる、他家婚姻して姓をかえた場合にはもらえない。一見不合理のようでありますが、これは父母あるいは和父母の場合、たとえば母が家を出て他家婚姻した場合には、その戦死者と非常につながりが薄くなるということとが考えられる。もう一つは、従来の社会通念から見まして、その家を出たら関係がなくなるのだという一般の社会通念があるものですから、立法の建前は、元の恩給法建前を尊重いたしまして、そういう建て方を実はいたした。そこで内縁の妻なんかの場合に、今仰せになつたような不合理の場合がありますが、これは一つの極端なレア・ケースである。あなたの言を引けば、わずかの恩給をもらうために、夫婦の愛情を内縁関係で置いておくか、あるいは向うに完全に籍を入れるかということを考える場合の、むしろレア・クースを取上げておられるのであつて、今私がお答えした筋の方がむしろ正しい筋なのだという解釈をして、われわれは修正いたしたのであります。これはもし御意見が違えば、意見の相違としか申し上げられないと思います。
  33. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 少し意見が違うと、それは意見の違いだからしかたがないというのは、はなはだ非民主的であつて幾ら意見違つても、親切にお答えを願いたい。それはレア・ケースであるというお言葉でありますが、私はレア・ケースでないと思う。むしろこういう法律をつくると、恩給を持つたおじいさん、おばあさんが、おのおの内縁関係で結ばれるということが非常にふえて行くと思う。現に私のところに二、三の陳情が来ておる。そういう婚姻をすることによつて、八十のおじいさんと七十のおばあさんが一緒になろうとしておる。今度は修正でよくなつたわけですが、恩給権がなくなりはせぬかと、そういうことを心配しておる。そういうことを奨励するような形になる修正はおもしろくないと思う。たとえばカトリックでは。再婚というものを絶対認めない。だから終生別居する。終生姦通をして暮らす。そういうようなことになる。絶対にできないことを法律できめることは、非常に間違つたことである。しまいに姦通を業とする者が現われて、裁判所において証人になつて離婚を求めて、ようやくカトリツクでは再婚をする。これはそれほど極端なものではありませんけれども、へそくりの恩給を持つて嫁に行く、あるいはむこ入をするおじいさんもないでしようが、そういうことを大目に見るくらいの雅量があつてもいいのじやないかと思うのであります。くどくは聞きませんが、大事な点でありますから、後の記録にとどめておきたい。いま一度お考え直しできないかということをお尋ね申し上げたい。
  34. 高橋等

    高橋(等)委員 ただいまのような場合も起り得ると思います。七十、八十になられた方々が婚姻をされて、別の籍に入るか、入らないかは、今の日本の慣習からいつて大した問題ではない。むしろ若い方の場合を考えなければなりません。これは要するに、戦死者父母が正しい婚姻をしたのを救おうというわけでしようが、しかしながら、母なり父がその家を出た場合は、戦死者との関係が非常に薄くなるから、そこを考慮した立法であります。もしそれでめかけ商売をどんどん一生涯やつて行くような人がたくさんふえれば、そういう傾向があれば、いつでもこの法律は自然にわれわれの手で改められると思います。ただいまのところは、私はこれがよろしいかと考えております。
  35. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それ以上述べることは、それこそ意見の交換、論争になりますから、略しておきますが、私はせつかく仏つくつて、魂を入れないこういう点は、もつと大らかにお考えになつていただきたいと思います。
  36. 神近市子

    ○神近委員 修正案に即したお尋ねでございますけれども、勅令第六十八号で七項症から四款症まで年金を停止されていたのでございますね。その人たちが今度の修正ができたことによつて、これを復活するのでございますか。それとも六十八号によつて停止されたものは、恩給権を喪失するのでございますか。それを伺いたいのでございます。
  37. 高橋等

    高橋(等)委員 今の七項症から四款症までの問題は、修正案に入つております。
  38. 神近市子

    ○神近委員 この修正案の第七十九条の三に関するものでございますか。
  39. 高橋等

    高橋(等)委員 この法案全部へその関係が実は盛られておるのでありますが、七項症から四款症に至るまでには、七項症には増加恩給を支給する、それから各款症には傷病年金を支給する、こういうことになつておりますから、どうぞその点御安心をお願いいたします。
  40. 神近市子

    ○神近委員 その点ですが、それはたいへんけつこうだと思つてどもは喜んでいるわけですけれども、もしその修正案が通る場合のことを考えれば、その前に六十八号によつて停止されたものは復活するかどうか。
  41. 高橋等

    高橋(等)委員 もちろんそれを救うための法律でございます。どうぞ御安心願います。
  42. 稻村順三

    稻村委員長 他に御質疑はございませんか。——質疑がなければ討論に入ります。  総理府設置法の一部を改正する法律案恩給法の一部を改正する法律案及びその修正案昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案及びその修正案及び元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案及びその修正案を、一括討論に付します。討論の通知があります。上林與市郎君。
  43. 上林與市郎

    ○上林委員 私は日本社会党を代表いたしまして、今回政府恩給法特例審議会の権威にのつとつた恩給法の一部を改正する法律案に対しまして、反対の意思を表明せんとするものであります。しかしながらわが党は決して戦争犠牲者に対する援護あるいは年金制度または遺家族援護に対して反対するものではございません。むしろ国民大衆の広汎な戦争被害に対しては積極的にこれが補償策を講ずるために、現在提案されておる政府恩給法改正に名をかりた旧軍人恩給法の復活を企図する現在の法律案よりも、もつと積極的な、より合理的な戦争犠牲者補償法案を用意しておるものであります。  まず総論的な観点から反対趣旨を二、三申し上げたいと思いますが、その第一の点は社会保障との関係でございます。言うまでもなく敗戦の責任と犠牲は決して軍人のみの負うべき性質のものではございません。また負うべきものではないのでありますが、戦争による犠牲は単に軍人のみでないこともまた言うまでもないのであります。国民は各種各様の形において身体、財産上の損害をこうむつておることは、今さら私から多言を要しないことでございます。従つてどもは、旧軍人に対する恩給措置は、つまり旧軍人の潜在的な既得権の復活という考え方に立つものであるとするならば、これは同時に今回の敗戦によつて受けたすべての国民の犠牲に対しても、その失われた収益の補償が考えられなければならぬと考えるのであります。またこれはもつぱら生活保障という人道主義的な観点からのみ処理されなければならないと私どもは考えるのであります。すなわち他の戦争犠牲者をも含めて、生活保障として、社会保障として、公平に解決されなければならない、かように考えるのでございます。これが私どもの今回恩給法改正法案に対する反対の第一の理由でございます。  第二の点は、現在提案されておる恩給法の一部改正法律案は、なるほど法律の名称は恩給法の一部改正でありますけれども、その実質を見ますと軍人恩給の復活、特に職業軍人に重点が置かれておることはこれまた私から言うまでもないところであります。また旧軍人の階級差によつて恩給が支給されようとしておるのであります。軍人のうち真に犠牲となつたのは戦時中強制召集された者であり、これを放任し職業軍人が、しかも古い身分差をそのまま残して保護されることは私どもは不当であるといわなければならぬのであります。しかもその身分差が遺族にまでも及ぶ点にも大いに私どもは異論があるのでありまして、これが私どものこの法案に対する反対の第二の点であります。  第三の点はいわゆる再軍備に関する問題であります。政府は健康な旧職業軍人二十万二千に対して年々四十四億円を支出して、旧軍人の既得権としての恩給を復活し、軍人という職業を特に優遇して、新たに建設しようとするいわゆる新日本軍の基盤をつくろうとしておることは明らかでありまして、しかもこれらの財源を捻出するために、非常に不幸な方々に対する予算的措置をすることも犠牲にしてこの裏づけをしようとしておるのであります。私どもはこういう不合理な点を指摘いたしまして反対するものでございます。  しからばこういう政府原案に対しまして、わが党は一体どんな対策を持つておるか。先ほど申しました戦争犠牲者の補償法案の要点は何かと申しますと、まず第一にその要旨を具体的に申し上げますと、わが党は旧職業軍人恩給復活の観念を一風して、戦地内地を問わず広く戦争犠牲者たる旧軍人軍属、国家総動員法による動員者、学徒、女子挺身隊員、船員、満蒙開拓義勇団等々の遺家族及び傷痍者、動員中の結核発病者並びにその後の死亡者等々に対して国家補償の見地より年金制度を実施することが最も合理的であると考えるのであります。  第二の点は、この年金制度は一元化された体系を持つ総合酢社会保障制度確立までの暫定的措置として行い、なお普通恩給(老齢旧軍人恩給)普通扶助料、一町扶助料(父母祖父母、寡婦、遺児等の扶助料)受給予定者は別に国民年金法を制定し、老齢年金、遺児年金、母子年金としてその生活を保障せんとするものであります。具体的に申し上げますと、第一に階級差仮定俸給を撤廃しようとするものであります。大将であろうと二等兵であろうと、手を失い足を失いあるいは生命を失つたその不幸は同一であるのに、はなはだしい階級差をつけるのは不当であるから、無階級に同一の補償をなすべきではないかと考えるのであります。  第二に、高額所得者に支給を禁止する、これはあくまで社会保障的な視野に立つて行うものであつて、困窮しておる国民大衆一般を対象とするものだからであります。  第三に、家族加給は年額五千円とし、支給額年額九万六千円くらいを標準総所得としてその三〇%を支給する、もちろんこの年金は、生活保護法による扶助料から控除しないものとする。九万六千円はわが党の要求する最低賃金八千円を年額に換算、所得の最低限度として定めたものである。  第四には、父母祖父母再婚の場合も認め、傷害年金の範囲も、政府は第六項症までとなつているが、わが党は広く傷痍者の要望にこたえて、この年金は第四款症まで支給すべきであると考えておるのであります。第一項症より第四項症までは一率に一時金二万円内を支給するとしておるのであります。  以上簡単にわが党の態度を述べたが、結論的に申し上げますと、わが党が声を大にして反対しておるものは、遺族やその他たくさんの戦争犠牲者を守ることに対してではなくて、政府の露骨な軍国主義復活の意図に対してであります。従つてわが党は、前にも申し上げました通りに、できるだけ多くの人々に国家保障の手を差延べようと努力しておるのでございます。さらに傷病の裁定に対しても、政府はもつと十全の措置を講ずべきであると考えます。たとえば第三項症の認定を受けたものが、恩給局においては第四項症とみなされたに対して、異議を裁定に持ち込む機関がないといつた種類の事例は、しばしば見られるところであつて、これは現行法規の不備を示すものであるから、これが解決のためには当然苦情処理機関等を設けるべきであると考えるのであります。  なお改進党、自由党両派三者共同修正案政府原案よりもある部分はよく改正されたに見える点もございまするが、これは本質的には恩給法を通すための政治的な取引以外の何ものもないと存じますので、これに対しても同様の理由から反対いたします。論ずる箇所がない。  昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案に対する修正案、これに対してはわが党は賛成いたします。  元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案に対する修正案に対しましても、わが党は賛成の意を表するものでございます。  なお総理府設置法の一部を改正する法律案に対しましては反対するものでございます。
  44. 稻村順三

    稻村委員長 高橋等君。
  45. 高橋等

    高橋(等)委員 私は自由党を代表いたしまして恩給法の一部改正案に対しまして、修正案及び修正案を除く政府原案賛成討論を試みます。  昭和二十七年第十三国会におきまして戦傷病者戦没者遺族等援護法の制定をいたされました。終戦以来久しきにわたつて顧みられなかつた遺族傷痍者に対する補償の一端を暫定的に措置したのでありますが、当時われわれは将来恩給制度を確立してその処遇を改善することを要望し、政府もこれを確約いたしたのであります。この懸案が本日の議題でありまして、これはまことに感慨深きものを覚えます。本法は昭和二十一年、いわゆる六八勅令によりまして停止または圧縮をせられました旧軍人、軍族、戦傷病者及びその遺族に対する恩給を復活せんとするものであります。世上軍人恩給だと称せられ、また一部の人々は本法をもつていわゆる旧職業軍人を優遇するものと非難し、国民を欺満せんとしておるのでありますが、これは当らざるもはなはだしいと申さねばなりません。本法施行に要します経費四百五十億円のうちで、実に九三%以上が遺族、傷痍者に対するものであり、本法は遺族傷痍者恩給法と称すべきものであります。戦争責任はひとり軍人のみに転嫁すべきではなくて、この機会に旧軍人に対する恩給を復活せしめることも当然の措置と申さねばなりません。また本法の制定が再軍備再開の一環であると申されるのでありますが、遺族、傷痍者等の補償は国家が当然なすべきものであつて、他の目的を持つべきものでないことは当然でありますが、今お聞きするところによりますと、恩給にかえるに社会保障で行けと仰せられる、それならば社会保障でこれらの人々に保護を与えるのはよいが、恩給で行けば再軍備に関係があるというのはどういうわけでありますか。ひとつその説明を承らなければならぬ。全国八百万の遺族を初め、傷痍者、旧軍人の方々が求めておりますものは、社会保障ではない、恩給制度の確立であります。恩給制度が現存する以上は、多数の民意を尊重して政府恩給制度により補償の実施を企図いたしましたことは、最も民主的措置と申さねばならないのであります。この法案の策定にあたりまして、政府恩給特例審議会の答申を尊重して、戦争犠牲者に対するこまかい数々の配意がなされておりますこと及び現下の財政上許される最大限の措置をしておることに対し敬意を表するものであります。しかしただいま修正案にありましたように、下級者に対する給与は厚くすること、あるいはまた七項症及び各款症の復活その他二点に対する修正はきわめて当を得たものでありまして、修正四点に対して賛意を表するものでございます。なお遺族援護法によりまして、雇用人、嘱託の有給軍属や国家総動員法に基き徴用せられた船員、学徒等の関係遺族、傷痍者が措置されることは、本法と相まつて戦争犠牲者の補償がなされることは当然でありますが、特に従来援護法の対象となつた人々で本法に漏れた人々に対しては、一人残らずこれを援護法に吸収せられることを期待いたします。また本法の実施あたりましては十分受入れ態勢を整えられまして、英断をもつて手続を簡易化して、多数案件を迅速に処理せられることを強く政府に要望いたします。本法による受給者の人々は、その給与が文官恩給と均衡がとれておらないこと及び戦地加算及び通算が考慮せられておらないことにつき不満足の点が多いこととは存じます。しかし本年度四百五十億円は、いわゆる九箇月予算でありまして、来年度は約六百億円となります。援護法施行のための五十億円と弔慰国債の元利払いと合算いたしますと、遺家族、戦傷病者を中心とした来年度予算は実に八百億円に達するのでありますが、この種の補償は金額が多いほど、範囲が広いほどよろしい。日本人である以上これに反するものはおりません。しかし国家の財政には限度があり、国の存立を危うくしては補償も何もできない。このたびの措置は、現下財政の許す最大限のものでありまして、遺家族、戦傷病者、旧軍人の方々も十分なる理解を与えることを信じまして疑わないのであります。  これをもつて賛成の討論といたしますが、なお残余の三件につきましても、自由党を代表いたしまして、賛成の意思を表明さしていただきます。(拍手)
  46. 稻村順三

  47. 赤澤正道

    赤澤委員 改進党を代表いたしまして、ただいまの三派共同修正案賛成の意を表するものであります。  わが党といたしましては、多年唱道いたしております公約の大部分が取入れられまして、はなはだ満足に思つておる次第でございますが、ただ一点大いなる問題でわれわれは一時これを放棄せざるを得なかつた。それは在職年の通算と戦時加算の問題でございます。申すまでもなく私もまた赤紙召集によつて二回もひつぱり出された一人でございますが、当時は国家が、召集された軍人に対して公約を恩給法の形においていたしておりました。それは戦時加算の問題でございます。わが党といたしましては、これを復活するべくいろいろ検討を加えたのでございまするが、次の二点において譲らざるを得なかつた。それは一つは財政的な問題であります。いくさに負けて、こういうみじめな状態に転落をいたしました今日、なおこの軍人恩給に要しまする金額が、国の総予算に対してかなり大きな比重を持つてつております。これ以上を要求いたしますことは、国の財政的な基礎を危うくするだろうというような大局的な見地が一つ、さらにはこれを裁定いたします場合における技術的な問題がありまして、まず不可能に近いということを発見したからでございます。大体われわれは調査機関を持ちませんために、全国の連隊区司令部、あるいは鎮守府についてこの問題を十分実情に即して検討することができなかつたことをはなはだ遺憾といたします。しかしながら恩給局ないしは復員局の諸氏といろいろ懇談いたしました結果得ました情報によりまするならば、恩給局の方では裁定の正確な資料になる戦時兵籍名簿は全国でおそらく三〇%残つておらぬだろう。さらに復員局の言われることによりますると、七〇%はあるだろう。しかしながら野戦から帰つた人たちには上陸地で証明書を持たしたり、いろいろしたのだが、戦時兵籍名簿の手入れは十分にできていない。従つて七〇%のうちでもおそらく信頼するに足る部分は、そのうちまた六〇%であろう、こういうことをわれわれも判断いたします場合に、ほとんど大部分が失われおる事実、当時卑怯だと申しまするか、はなはだけしからぬ話でありますが、うろたえた陸軍の当局が、まさに二十年八月十五日、戦時兵籍名簿を全部焼いてしまえという指令を全国に出しておる。そのためにこのとうとい野戦の記録であり、またなくなつた人たちにとりましては涙の記録であるところの戦時兵籍名簿そのものがほとんど灰燼に帰しておる。しかしながらこれはなお努力して調査いたしますならば、おそらく自然にわかつて来るであろうと思う。ただ今日の段階においては、われわれはこれを今即時に取上げるということが不可能に近いというからこそ、私どもは一時これを放棄したのであります。おそらくこの問題は厚生大臣の所管であると思う。この戦時兵籍名簿が将来とも散逸し、あるいはほごにされるということがあつては、野戦において非業の死を遂げた人、あるいは傷痍を負うて呻吟する方方に申訳がないと思う。従いましてただいまを契機として——これは今日恩給法で取上げよというわけではありませんが、政府におかせられましては、十分この再調査を即時行われたい。さらにごの問題については各党とも御協力をお願いいたしたいと思うのでございます。  さらに戦争が始まりましたときには、われわれはあの盧溝橋一発の銃声が北支から中支、南支にまで拡大しようとは、ゆめにも思つていなかつた。おそらく国民のほとんど全部にひとしい人がそう思つておつたであろうと私は思います。さらに昭和十五年十二月に真珠湾が突如攻撃された。これも寝耳に水である。こういう計画をした人はおそらくは国内のきわめて一部の人たちであつて、真珠湾の攻撃を前もつてつておつた人は国内に何人あつたか、おそらくこれはきわめてわずかな人であつて、かくのごとき人は、誤つた戦争の指導をして、日本を敗戦のどん底にたたき込んだということについては、十分責任を問われていいと思う。しかしながら、そのほかの人、われわれをも含むわけでありまするけれども、結局国家の至上命令に服して赤紙によつて戦地にひつぱり出されて、つぶさに辛苦をなめ、また大多数は命をさえ失つたのでございます。こういつた立場の人たちは、やはり国家として別に報いる方法があると思う。また単に物質的な問題だけでなくて、祖国に殉じたというこの崇高な立場というものは、私は表彰されてしかるべきものであると思うのであります。もちろん社会党諸君の言われるように、その他にもいろいろ社会の生存競争に敗れた落伍者の人もある、またそういう人でなくて、あるいは原子爆弾の犠牲になつたとか、あるいは学徒動員で出て、とうとい命を落した若い人だとか、こういう人たちを救わなければならぬ面は非常にたくさんございます。これはこれでまた別の各種の援護法もあり、保護法もあるのでありまして、こういつた方々を決しておろそかにするわけではない。あくまで手厚く援護し保護して行かなければなりませんけれども、私は、職業軍人といわれるけれども、やはりこの至上命令に服して、好むと好まざるとにかかわらず、あの悲惨なる戦争を闘わされた人たちの立場を強調いたしたいのでございます。こういうことからいたしまして、やはり私はこの恩給法審議いたします上に、つぶさに辛苦を払つたのでございますけれども、今日不十分ではありまするが、まず国の予算の許す範囲内において、また調査の行き届きます範囲内において、今日この立法がまず完成に近づいたことを非常に喜びといたす次第でございます。その他、戦争犯罪での処刑者を公務死とみなすかどうかという問題もございます。こういつた問題については、やはり今日国際情勢、あるいは現在まだ拘禁されておる人たちの釈放にも関連いたしますので、また各党の国会対策委員長等の間でこのことについては申合せがあるやに聞き及んでおるのでございますが、いずれにいたしましても、私今日この法案が成立いたしますことにつきまして、改進党を代表して賛成の意を表するものであります。(拍手)  なお残余の法案については、修正案の出ておりますものについては、修正案の通り決することに賛成いたします。  総理府設置法の一部を改正する法律案につきましては、原案賛成いたします。
  48. 稻村順三

  49. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、条件付賛成の意を表するものであります。  わが日本社会党は、この恩給制度そのものの根本的改革を考慮しておるのでありまして、国家財政の実情ともにらみ合せて、文官並びに旧軍人を通じて一層合理的な年金法を提出するつもりであるのであります。もしできますれば修正案を準備いたし、提出するつもりであつたのでありますが、あまりに全面的であり、かつ根本的修正でありますので、技術的に修正案として出すことが非常に困難でありますから、修正案提出をやめまして、ここにわが党の考えておるところを明らかにしまして、しばらく三党提案の修正案賛成いたしますが、われわれは将来もつとよい、合理的な制度の樹立に努力するつもりであるということを留保いたしておくものであります。  最初に明らかにしておきますことは、わが党のこの恩給制度に対する考え方は、従来の恩給法理論に対する考え方と社会保障制度に対する考え方とを総合して、そのときそれの国家財政の許す限りにおいて合理的に運営しようとするところにあるのであります。国家財政が許しますならば、私ども恩給制度と社公保障と両建で行つてよろしいと思うのでありますが、国家財政がこれを許しませんこと明らかな以上は、できるだけ広く保護を及ぼし、特に下に厚く上に薄く、下の範囲もできるだけこれを広げるべきであるというのでありまして、社会保障の方に重点を置くものであります。一部には、社会保障を受けるのは心外だ、われわれはどんなに少くても恩給の給付を受けたいのだということを申す人もありますが、文官の場合は全国を通じてもわずかに二十五万でありますから、どうにかこの恩給権理論と歩調を合せるたけの給与を差上げることができるのでありますが、今回のように旧軍人、傷痍軍人、その遺家族その他の戦争犠牲者ということになりますと、何百万人ということになつて、今回の政府原案あるいは各党の修正案程度では少しも恩給権理論に平仄が合わぬのでありまして、ただ言葉の争いにほかならないのであります。しかもその総額は六百億という少なからざる額であります。これだけの金を使うならば、もつと国民の生存権を考えながら効率的に使うべきであると信ずるのであります。そこでわが党は次のような構想を持つておることを明らかにするものであります。原案並びに修正案反対というのではなくして、むしろもつとよいものにしたいというのでありますから、条件付賛成論ともいうべきものであります。その条件をこれから申し述べるわけであります。  わが党のこの戦争犠牲者に対する根本方針は、再軍備につながるかの印象を与える軍人恩給の復活には反対なのであります。老齢軍人普通扶助料受給者に対しては、社会保障の見地においてこれを認めるのであります。戦傷病者戦没者遺族に対しては十分に手厚き国家保障をなすべきものと信ずるのであります。軍隊のない今日、古い階級による支給差別を認めることには賛成いたしがたいことは上林君の申されたことと同じであります。わが党は社会保障制度の確方されるまで暫定的措置として特別立法をやりたいということを考えておるのであります。むしろ恩給法でなくして戦傷病者戦没者遺族等年金法とでもいうべきものを立案いたしたいと考えておるのであります。  その内容は、普通恩給にありましてはまず第一に若年停止の問題であります。これは政府案よりもなお十歳を引上げまして五十五歳から半額を支給して、六十歳から全額を支給するのであります。文官恩給改正を考えておるのでありましてやはりこの若年停止を同じように文官にも及ぼすべきものであると考えるのであります。それから高額所得者に対する停止であります。普通恩給受給者であつて恩給外の所得が年額三十万円を越える者には支給を停止する。それから階級別を撤廃いたして所得額によつて五つの段階にわけて与えたいのであります。仮定俸給二十万円以上のものは二十万円にするのであります。十五万円以上のものは十五万円とする。十万円以上のものは十万円。七万円以上のものは八万五千円とする。五万円以上のものは七万円と仮定するのであります。そして一率にその三分の一を支給するのであります。若年停止の年齢を五十五歳にいたしましたのは厚生年金と歩調を一にしたわけであります。また老齢の年齢を高くしますれば逆に高級軍人だけが対象となる弊害があります。一様にフラツト制にいたしますことはイギリスのように一般国民に対する養老年金制が確立されていない今日、わが国に適当でないと思いますので、この五つぐらいの階級にわけることが妥当であろうというのがわれわれの考え方であります。  次に普通扶助料でありますが、普通恩給の支給方法に基きましてこれを支給するので、支給額は普通恩給額の二分の一とするのであります。家族加給は一人につき月額四百円とする。高額所得者に対しましては普通恩給の場合と同じく年額所得三十万円以上の者には支給を停止する。  それから一時恩給でありますが、これは認めないのであります。  次に公務扶助料でありますが、これは普通公務、特殊公務の差別を廃する。第二にはこの階級差を撤廃する。第三には標準を上等兵、兵長、伍長、軍曹の平均とするのであります。すなわち応召戦歿者大多数の平均の上位を標準とするのであります。第四には普通扶助料の三倍を支給するのであります。それから家族加給を支給する。一人につき月額四百円とする。  それから傷痍軍人増加恩給であります。これも第一に階級差を撤廃して傷病別によること上林君の言う通りであります。第二に原案よりも年金支給の範囲を広げるのであります。すなわち第四款症まで年金を支給して、第四日症まで一時金を支給するのであります。ゆえに全部の傷痍軍人が対象となるのであります。支給金額を次のようにしたいのであります。特別項は十八万円、第一項症は十五万円、第二項症十三万円、第三項症十一万円、第四項症九万円、第五項症七万円、第六項症五万円、第七項症四万五千円、第一款症は三万円、第二款症は二万五千円、第三款症は二万円、第四款症は一万五千円、第一目以下第四日までは一時金として二万円を支給する。第五項以上のものには家族給を支給する。こういう点であります。  次に国家総動員法の対象をも含めることがわれわれの念願であります。第一にこの支給は生活保護法から控除しない。それから第二に船員、国民義勇隊及び国家総動員法等に基いて徴用され援護法の対象になつたもの、戦犯抑留者及び未帰還者等についてもこれを適用したいのであります。第三に扶助料支給の場合に父母祖父母婚姻した場合にも支給できるように措置したいのであります。それから内地または外地で戦病死し、また帰郷後死亡した者も公務死として公務扶助料を支給するのであります。  その他こまかい数計的基礎をもつて申し上げたいのでありますが、ここで申し上げることはあまりに煩雑になりますから、計数的基礎統計並びに予算を申し上げることを略しますが、われわれの案によりましても国家財政の負担は政府の今回の案と大した隔たりはないのであります。大体その程度でやつて行ける計算であります。  わが党はこれら恩給年金実施いたしますならばいろいろの点で疑議を生じ紛争を生ずることは免れないと信ずるのでありまして、たとえば調査資料の不十分なもの、査定の困難なもの、個個のケースについて特に考慮を要するようなもの等につきましては、特別の苦情処理機関を設けて検討してできるだけ国家保護の対象にいたしたいと考えるものであります。前にも申し上げましたように、本来修正案を提案いたしたいのでありまするが、原案に手を入れるということになりますれば、技術的に非常な困難と多大の時間を要しますので、せめて両派社会党が一致して一本の案を得たいと思つたのでありますが、これもいろいろ検討いたしましたけれども多少の意見の相違が一致を見ずしてその結果を得ることができなかつたのであります。ましてや自由党改進党の諸君賛成を得ることは不可能であつたのであります。わが党の考えを実現することはこれを他日に譲りまして、決して満足すべきものと考えるわけではないのでありまするが、戦争犠牲者の大部分を慰めますことは焦眉の急務と存じ、しばらく自己を抑制してこの法案の成立を助け、その修正を他日に期そうとする次第であります。  以上わが党の主張を明らかにいたしまして、条件を付して修正案賛成するものであります。(拍手)  他の三法案に対しましては特に理由を述べるまでもないと存じます。一括して賛意を表します。(拍手)
  50. 稻村順三

    稻村委員長 濱地文平君。
  51. 濱地文平

    濱地委員 私は原案にも修正案にも決して満足している意味ではございませんけれども、しかし私どもの希望に近づいて来ておる意味におきまして、修正案賛成をするものであります。(拍手)
  52. 稻村順三

    稻村委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決いたします。まず総理府設置法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案賛成諸君起立を願います。     〔賛成者起立
  53. 稻村順三

    稻村委員長 起立多数。よつて本案原案の通り可決いたしました。  次に恩給法の一部を改正する法律案について採決いたします。まず本案に対する修正案の採決をいたします。修正案に対し賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立
  54. 稻村順三

    稻村委員長 起立多数。  次に修正部分を除いた原案について採決いたします。修正部分を除いた原案賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立
  55. 稻村順三

    稻村委員長 起立多数。よつて本案修正案通り修正議決されました。  次に昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案について採決いたします。まず本案に対する修正案について採算いたします。修正案賛成諸君起立を願います。     〔総員起立
  56. 稻村順三

    稻村委員長 起立総員。  次に修正部分を除く原案について採決いたします。修正部分を除く原案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  57. 稻村順三

    稻村委員長 起立総員。よつて本案修正案通り修正議決いたしました。  次に元南西諸島官公署職員等身分恩給等特別措置に関する法律案について採決いたします。これを修正案通り修正議決するに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  58. 稻村順三

    稻村委員長 起立総員。よつて本案修正議決いたしました。  ただいま議決いたしました四法案に対する委員会報告書作成及び修正議決に伴う字句の整理等は委員長に御一任願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十五分散会