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1953-07-25 第16回国会 衆議院 電気通信委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十五日(土曜日)     午前十一時四十九分開議  出席委員    委員長 成田 知巳君   理事 岩川 與助君 理事 橋本登美三郎君    理事 小泉 純也君 理事 原   茂君    理事 松前 重義君    菊池 義郎君       庄司 一郎君    玉置 信一君       齋藤 憲三君    柴田 義男君       甲斐 政治君    松井 政吉君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         郵政事務官         (電波監理局         長)      長谷 愼一君  委員外出席者         専  門  員 吉田 弘苗君         専  門  員 中村 寅市君     ――――――――――――― 七月二十五日  委員長谷川四郎君辞任につき、その補欠として  中曽根康弘君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 七月二十四日  電話料金引上げ反対に関する陳情書  (第一二二〇  号)  電信電話料金値上げ反対に関する陳情書  (  第一二二一号)  同(第一二  五四号)  電話料金引上げ反対に関する陳情書  (第一二五五号)  私設電話装置等に関する陳情書  (第一二五六号)  電信電話料金値上げ反対に関する陳情書  (第一二七  八号)  同(第一二七九  号)  電話事業に対する予算及び資金調達面の取扱に  関する陳情書  (第一二八〇号)  電話料金引上げ反対に関する陳情書  (第一三〇七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  放送法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四五号)     ―――――――――――――
  2. 成田知巳

    成田委員長 これより開会いたします。放送法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。質疑通告があります。通告順にこれを許します。橋本登美三郎君。
  3. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 根本問題について所管大臣の御意見をお聞きしたいと思います。  第一には、今回の放送法の一部改正でありますが、御承知のように放送法は、放送の原則と並んで日本放送協会組織並びにその運営を一緒にしてできております。当時の情勢では民間会社、いわゆる一般放送事業者の発展というものが予見できなかつたために、当時の状態としては、あの程度放送法でやむを得なかつた考えるのでありますが、今日では相当に一般放送事業者仕事が複雑になり、また発展しておる状態でありますからして、あの放送法をもつてしては必ずしも一般的な、いわゆる民間放送ですが、これらを律するには不十分であるように考えるのであります。将来放送法の根本についての改正を行う考えがあるかどうかという点を承りたいと思います。
  4. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 私もまつたく同感なんでありまして、将来全面的に再考慮しなければならないときが、必ず近いうちに来るのではないか、こういうように考えております。
  5. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 今回放送法の一部改正政府によつて提案されましたが、その問題に触れずして、とりあえずこの放送協会事業内容といいまするか、組織にも関連して来ますが、それのみが修正案として出されましたことについては、根本的な改正を意図するまでの十分なる調査が完了しておらなかつたことも一つの原因だろうと思うのです。もう一つ、この修正案には抜けておるのでありますが、放送法にもないのでありますけれども、解散等の場合において、放送協会から提案されました収支及び事業予算等承認にならなかつた場合、たとえば本国会前の解散のときに、そのぎりぎりの場合において解散が行われたために、放送法に従うところの承認事項が行われなかつた、そういう場合においては、四月、五月、六月、七月になりまするが、この期間に法的には放送協会は支出もあるいは収入もできない状態になつております。これらの問題は私は放送法不備であると考える。当時この放送法を審議した場合においては、この問題につきましても委員会において問題になつたのでありますが、この問題については、当時は、そのような事態もないとは言えませんけれども、大体においてそういう場合ははなはだまれな状態であろう。いわゆる国の予算とは別個に出される承認でありますから、時宜に応じて、解散というものの前に処理できるであろうという見解でおつたようであります。しかし最近の解散状況を見ると、突如として行われる場合もあり得る。従つて国予算とともに出されておる他の関係機関のような暫定予算措置がないというと、実際上放送協会としては、次の国会が召集せられるまでは、歳入歳出ともにこれを行う道がない、こういう結果になるわけでありますが、そういう問題が今回の修正案には盛られておりませんけれども、これらについて政府は、なくともやつて行ける方針であるかどうか、あるいはまたそれらについては見落してあつて、できれば早い機会においてこれを救済すべき規定を設けるべきであつたというお考えがおありになるかどうか、この点について御意見を承りたい。
  6. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 御指摘の点は、今までの私どもの考え方といたしましては、多少他の公社などと違うというように考えておりましたので、これで運用がつくというように考えておつたのでありますが、しかしいろいろと御指摘のような御意見を伺つてみますと、確かに若干不備があるというように考えられますので、直せれば直したいというふうに考えております。
  7. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 万一、これは仮定ですが、現行法のもとにおいて解散が行われた場合、しかも承認がなされなかつた場合、その空白期間に対してはどういう措置をおとりになるか、あるいは措置する方法がないとお考えになるか、その点についても伺いたいと思います。
  8. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。ただいま御指摘の問題についての根本的な考え方は、大臣から御答弁申し上げたような考え方でございますが、実はこういう問題は、この放送法の制定当時にも御指摘のありましたように、いろいろ論議されたと記憶いたしておりますが、放送協会予算は国の予算とは全然違いますし、また日本電信電話公社とか国鉄とも違つておりまするために、国会の御承認を得るといいましても、今申し上げましたように性格が大分違いますので、国の予算等と同じように、いわゆる暫定予算的な考え方を持つていなかつたのであります。そういうことがおそらく万が一にも起ることは非常に少いだろうというような事柄もありましたし、今申し上げましたように、国の予算と違うという考え方から、この暫定予算的な措置法文の中に盛られていなかつた。実は今回の改正案考えましたときにも、気がついた問題の一つでございますけれども、先般もどうにか間に合していただいたようなこともございますし、おそらくそんなことは起るまいというようなことで、安易と申せば安易な考え方もあつたわけでございますけれども、実は改正案に盛らなかつた次第でございます。御指摘のように、もしもそういうようなことが万が一起きた場合には、何か方法があるかというお話になりますと、ほとんど道が見つからないじやないかという心配も、実は持つておるわけでございます。
  9. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 もしそういう事態が起きれば、これに対する法的措置としては何らそのすべがない、こういうことでありますから、これを一面から見れば、放送法の欠陥と私は考えます。従つて政府としては、当然事後において執行して、そういう事態が予見せられるような最近の事態から考えれば、今回の改正案については、これらが当然載せられなければならなかつたと思うのでありますが、今のお話では、一応論議になりましたが、大体そのようなこともないかもしれぬというような考え方で、つい改正案の中には入つておらないということでありますが、政府当局としてはぜひともこの機会に法を全からしめるために、この改正案に盛られることを希望しておられるかどうか、この点についてお伺いいたしたい。
  10. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 そのように修正されますならば、たいへんけつこうだと思います。
  11. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 なお今回の改正要点は、一昨日の政府委員説明によりますれば、まず第一の点は理事の数を増加せしめておることであります。これについて実際上当局が見たときに、その理事の数を三名以上七名までに増員せしめる理由について御説明願いたい。
  12. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 この点は提案の趣旨説明申し上げましたときにも申し述べましたように、だんだんと協会のやる仕事地域的にも広くなり、量においても非常に多くなつたということで、今の理事の数では十分業務運営がつかないのではないか、そういうふうに考えましたことが理由でございます。
  13. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 理事の数を増加されましたが、これの配分といいましようか、実際上の扱い方については、これは法律の上には規定されておりませんが、たどえば現在の理事状況を見ると、現在の理事三名は現業を持つておりません。いわゆる局長というような現業を持つておらない。これが増加されれば、現業を持つておる理事現業を持たない理事というものが出て来ると思うのですが、たとえば株式会社の場合においては、常務取締役とか普通取締役というような区別によつて仕事の円滑をはかつておる。法律では単に理事ということになつておりますが、その場合協会業務規程もしくは定款等によつて、その中に常務理事等を設置する、こういうことが行われた場合においては、その放送法に対する違反であるとか、あるいは当局意向に相反するとかいうような考え方があるかどうか、そういうことが定款で行われてさしつかえない、こうお考えになつておられるか。
  14. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。お話のように現在の協会理事は三名で、その業務の担当の仕方もいろいろございますが、御案内のように、そのほかに会長及び副会長一名という制度がつくられております。従いまして、考え方によりましては、副会長会長の代理を勤める一方、いわゆる専務理事的な仕事もされておるようなかつこうでございますが、今回この改正法律案の御審議を経まして、三名以上七名までふやし得ることになりまするならば、その七名までただちにふやすか、あるいはその三名以上七名の範囲内で、現実仕事の分量あるいは機構等に準じまして、適当な範囲で順次理事の数をふやして行くか、あるいはまた理事の方の執務の範囲部署等につきましては、協会経営委員会等意向も十分反映しなければならぬだろうと思いますので、法律上はその点を明らかにされてないわけであります。また政府から今回の理事の増員は必要と認めて、改正案をお願いをしておるのでございますけれども、理事の分担その他につきましては、特に御注文をしようという考えも持つておりませんので、そういうことについての規定が何らないわけでございます。
  15. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 もう少しそこのところが了解しにくいのですが、私の言つているのは、そういうこともありますけれども、もう一つは、たとえばきのうも会長からの参考公述がありましたが、大阪に理事を置くとか、地方理事を置く場合もあり得ると思うのであります。そこで法律の上からいえば、理事会というものが法的に認められた役員会として行われるのですが、実際上の問題としては、もし地方理事を置くような場合が起きますれば、理事会を頻繁に開くことは困難になる。従つて内部におりまする理事をもつて常務理事という制度定款等においてつくつた場合、その常務理事会というものが、法律上の責任は別でありますけれども、放送協会としては、常務理事というものによつてある程度権限をゆだねられて仕事を続けることができるかどうか、かつまたそういう常務理事制度定款もしくは業務規程等において行うことができるかどうか、その点をお聞きしたい。
  16. 長谷愼一

    長谷政府委員 ただいま御指摘の問題は、放送法の第二十五条にございます。「会長、副会長及び理事をもつて理事会を構成する。」。第二項に「理事会は、定款の定めるところにより、協会重要業務の執行について審議する。」ということになつております。従いまして、定款によつて理事会に出席する最小限の理事の数等をきめることによりまして、実質的に今御指摘になりました常務理事というような形になし得るのではないかと思います。定款郵政大臣認可を得ることになつておりますが、法律上には、今お話のように理事会運営して行くことは何らさしつかえないのではないかと考えております。
  17. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 そうしますと、少しはつきりしませんが、法律上では理事会というものが協会運営の主体ということにきめられておる。であるからして、理事を決定した場合は、そのうちの一部をもつて理事会を構成する、こういう定款はできないと思います。理事として任命せられれば、当然会長及び副会長理事を含めて理事会が構成される。これが理事会としての権限ですから、定款の上において理事会のなすべき仕事がきめられておりますれば、当然これらは理事会において行わなくちやならぬのですが、ただ理事会からある程度仕事を、たとえば常務理事会とか、そういうものを定款の上でつくつた場合においては、それに委任して、常務理事会といいますか、理事会の一部分をもつて役員会に準ずるものをつくつて運営することが可能かどうか。
  18. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは放送法の二十五条の趣旨を読んでみますと、やはり二十五条に規定をいたしております重要業務については、理事の全員でもつて構成しておる理事会できめなければならないと解するのが正しく、かつこの規定強行規定考えなければなりませんから、定款でこれに違う定めをして、たとい委任を受けたという形でも、この重要業務理事のうちの少数の者がやるということは、できないのではないかと私ども考えられます。しかし、もちろん理事会のやつております現実仕事のうちには、必ずしも重要業務でない部分がかなりあると思うのでありますが、そういう部分のものは、即事のうちの少数部分の人が、常任理事会というような形でもつて集まつてつておられる分には、その程度のものならばさしつかえない、こういうようには考えられます。
  19. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 私も今の大臣の御答弁と同様に、法律規定しておる理事会というものは、重要業務に関するものである。従つて重要業務ならざる日常茶飯事業務については、特に定款をもつて常務理事会においてこれを処理する、こういうことが行われても、法律上の違反にはなるまい、こういうふうに解釈するものでありますが、大臣も同様の御意見のようであります。  それから次は助成についてであります。研究あるいは事業助成について、郵政大臣認可を必要とするというのが、今回の修正案の骨子であります。これは大小いろいろある思うのであります。数千円から数十万円、あるいは数百万円というような大きな金額が予見せられるのでありますが、実際上の問題として、さ少な問題にまで郵政大臣認可をしなければならぬ、こういうことは大臣の職務の上から見てもどうかと考えられるし、かつまた放送協会自身から考えても、そういうことによつて一種の束縛を受けるような感じを受けるのではなかろうか。のみならず、これらの助成に関する費用は、国会承認をまず求めなければならない。国会承認を求める場合においては、郵政当局は事こまかに放送協会協議をして、それらの内容について具体的なことを承知しておるはずであります。大まかに五千万円の助成金、こういうものを大まかにお認めになるはずはない。そのうちで大体おもなものは、こういうところにこういうものをしたい、こういうところにこういうものをしたいという、いわゆる説明付予算案提出でなければならないと思う。そういう実態でありますから、もちろんこまかい点で、その他として三十万円、五十万円という金額はあるでありましようけれども、いわゆる当局が監督をしなければならぬというような重要な助成費目について、予算の編成当時において政府当局はこれを承知しておると考えてよろしい。しかもこの予算国会承認を求めるという建前になつておるのでありますから、これら助成金を出す場合において、一々郵政大臣認可を必要としない、こういうふうに解釈をせられるのでありますが、あらためて郵政大臣認可を求められたゆえんを御説明願いたい。
  20. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは一応ごもつともな点なのでありますが、ただ予算には款項だけで金額が出ておりまして、もちろん助成金額の総体の説明資料の中には、一応こういう目的にこういうところでという説明はついておりますけれども、必ずしもその説明資料がそのまま予算運営の実施を一切規律するという形には法的になりがたいものでありますからして、その説明違つた形にまた助成などが行われるという場合も想像せられておりますので、一応これはその都度都度に認可をするということにいたしたのであります。しかし、予算でも国会の御了解を得ておるのでありますから、その範囲におきましてはあまりめんどうなことをいわずに、なるべく認可をする、こういう考え方でいたした次第であります。
  21. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 款項目の上においては、なるほどこういうように具体的にはなつておりませんが、その款項目をつくるまでにおいては、政府当局との間にこまかい点まで協議がなされるであろうと思います。これはもちろん法的には承認になつた場合において、説明と相反してこれをどう使用しても、その款項目違反しない限りは、問題にならないわけでありますけれども、実際上の問題としては、放送協会当局がそれに反した方面に助成が行われる、こういうことは実際にはあり得ないのではなかろうか。そういうことをすれば、次の国会承認を受けるべき予算案について、当局の信用を欠くことになるからして、実際問題としてはそういうことは起きないのではなかろうか。にもかかわらず、郵政大臣認可規定を置くために、大きなものはともあれといたしまして、こまかい問題にまで、政府当局意向を聞かなければならぬ、こういうことのために、ややもすれば自由であるべき言論の機関であるところの放送協会に対して、政府がこういうような名目を通じて干渉の手をのべる、こういうような誤解をこうむることは、当局としても必ずしも得策じやない、こう考えられるのでありますが、これに対する御意見を承りたい。
  22. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 この点は先ほども申し上げましたように、政府としては当初の予算が組まれた趣旨従つて行われておるかどうかということを、承知をしておるということが必要なんでありまして、従つて認可も非常に手軽に認可をする考え方であることは、先ほども申し上げた通りでありますが、よく考えてみますれば、認可というところまで行かなくとも、あるいは報告を受取つておくという程度でも、場合によつて目的が達せられるのではないか、こういうふうにも考えられます。
  23. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 私も今大臣の御答弁のように、報告もしくは届出程度をもつてよろしい規定ではなかろうか、こう考えるのであります。  次は、いわゆる経営委員地域を今度の改正案では撤廃いたしまして、法文の面から見れば、いかなるところから人を選んでもさしつかえない、こういうことに相なるわけであります。しかし、これはNHK当局経営委員候補者をつくるのではなくて、政府当局が行うのでありますからして、政府当局責任において行われるのですが、放送法の第一条に、あまねく全国に普及する義務放送協会に与えておる。ということは、政府があまねく全国放送を普及せしめなければならぬという考えのもとに、そういう義務を与えておるわけです。従つてこれらの責任者となるべき経営委員の任命にあたつても、当然いわゆる全国的な地域というものを考慮に入れて、人を選ぶという建前であると考えられます。従つて今回の改正案においては、八地区に画然ときまつてつた地域を撤廃いたしましたけれども、なお今回の改正にかかわらず、政府当局経営委員を選定する場合においては、全国あまねく人を得るという建前のもとに人選をするものと考えられるのでありますが、八地区を撤廃することによつて、根本的に人選方針がおかわりになつたのかどうか、この点についての御回答を願いたいと思います。
  24. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 今度住所制限を撤廃いたしました考え方については、今までのなるべく広く全国的にそれぞれの立場からそれぞれの地域代表した人たちを、経営委員に選びたいという考え方をかえたのでは少しもないのでありまして、その考え方従前通り考えておるのであります。ただこの間の経営委員の選任の際にもずいぶん苦労いたしましたのでありますが、必ずしもその地域住所を持つておる人が、よくその地域代表するということにはならない。現にたまたま住所東京にあるけれども、その地域に始終行つたり来たりして、十分その土地の事情を今までも知つており、現在も知つてつて、非常に適任者であると思われるにかかわらず、住所制限のためにその人を任命できなかつたというような事情もありましたので、こういう制限は必ずしも適当でないし、また必要がないのではないか、こう考え直したのであります。しかし経営委員というものは、一定の地域だけを考える人でなしに、それぞれの地域から、それぞれの地域での利益を十分代表し得る人を選ぶという考え方にはごうもかわりありません。
  25. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 放送法建前から見まして、いわゆる広く人材を求めるという当初の方針かわりはない。たとえば今まではたまたま東京住所を持つておるために、それぞれの地域利益代表する適材を得られない例もあつたので、その不便を除去するために、今回のごとき改正行つたという趣旨の御答弁つたと思います。このことについて、きのうの参考人の中には、そういう基本的な線の改正があるならば、当然経営委員の任期前の改選を行うべきではないかという陳述がありましたが、私はその必要はないと思います。今の大臣の御意向からみましても、決して当初の方針をかえたのではなく、より適切に当初の方針を行わんがために改正が行われたのである。現在選ばれておる経営委員は、適任者であるというように思われる。今度の改正行つても、ただちに経営委員改選を行う必要はないという政府方針について私は同調するものでありますが、なおその点についての御所信を承りたいと思います。
  26. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その点につきましては、私も橋本委員の御意見通り考えております。現在任命されております経営委員は、政府考え国会承認を得ておりますので、十分放送法本来の目的に合致した人々が選ばれておると確信いたしております。
  27. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 なおきのうの参考人の中には、現在の放送法は、文化教育産業等から人を選ぶように規定されておりますが、これに対して労働組合から労働代表を選ぶ必要があるのではないかという見解を述べられた人がありました。もちろん放送法国民全体に関係のあるものでありますから、労働関係はありますけれども、放送それ自体は、そうした特定の階層を代表すべきものではない。日本国民的文化産業代表すべきものでありますから、特定の団体の代表というような考え方は不適当であると同時に、放送方針説明にあたつても明らかにされたのでありますし、当委員会においてもそれらの方針のもとに原案通り通過を見ておるのですが、あらためてこの問題が参考人によつて提案されておりますので、この際当局のお考えをお聞きしたいと思います。
  28. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 この点は、十六条に教育文化、科学、産業その他各分野代表されることを考慮しなければならないと書いてあるのでありまして、特定産業分野、もしくは産業分野の労使というようなものの考え方から、特別な人を特に選ばなければならないというような考え方は、放送法本来の趣旨ではないと考えております。
  29. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 私も大体大臣の御答弁同様に考えておるものであります。なお今回の放送法の最も重大な点として、いろいろ世間からうわさされておるゆえんのものは、四十九条の問題であります。すなわち大臣の命令の問題である。この「郵政大臣は、……監督上必要な命令をすることができる。」こういうような規定でありますが、これは一応われわれ放送法の審議当時から考えまして、政府当局考え方が必ずしも放送番組の編集権を侵し、あるいは放送協会運営に対して特定考え方を持つておるとは解釈しておらないのでありまするけれども、法律の条文の上から考えると、ややもすれば第三条に規定してあるところの放送番組の自由、それに対して四十九条によつてこれを処理し得る、あるいは直接にはできないにいたしましても、間接にでもこれに対して影響を与えるように法律上解釈できるのであります。かつまたきのうの参考人等の供述から見ましても、「公共の福祉を増進するため」という積極的な規定があるために、なおさらこの関係が非常に深い。従つて法律上からこれを解釈するならば、そういう危険がなきにしもあらずという見解が、法制学者、その他の人によつても陳述せられておるのであります。それに対して政府当局が四十九条を改正しようという理由、動機といいましようか、それらについて詳しく所見をお聞きしたいと思う。
  30. 長谷愼一

    長谷政府委員 最初に私から答弁させていただきます。この監督に関する規定を特に入れました考え方は、一般監督権の規定が、今まで法文に明示されておらなかつたことが、いろいろ誤解を及ぼすことも考えまして、いわゆる法に不備があつたというふうに考えまして、今回他の改正と同時にお願いしたわけであります。放送協会に対する監督につきましては、放送債券の発行については大蔵大臣認可、また会計につきましては会計検査院の検査を受けるのでありますが、協会事業経営の一般的監督は、郵政大臣がこの法律の定めるところに従つてこれを行うことを今回明らかにしたい、こういうふうに存じてこういうような条文の改正をお願いしておるわけであります。現行法におきましては、先ほど申し上げましたように、こういう条文がございませんけれども、法律の執行を確実に行うことは政府の責務でございます。このことは申し上げるまでもなく憲法の上からも明らかではないかと存じます。郵政大臣放送協会に関しまする事項を分掌監理することが、その設置法上明らかでございますから、郵政大臣としましては、従来から当然放送法を誠実に執行し、従つて放送法従つて日本放送協会を監督すべき責務を有しておつたのでございます。この意味から監督権の幅は放送法全般にわたり、その執行が適当に行われておるかどうかということを見られておつたと存ずるのであります。また電波法第七十六条には、「郵政大臣は、免許人がこの法律放送法若しくはこれらの法律に基く命令又はこれらに基く処分に違反したときは、三箇月以内の期間を定めて無線局の」——これは放送局も含めておりますが、「運用の停止を命じ、又は」云々、こういうような規定がございますが、放送法違反したときには、運用の停止を命ずるということは、当然放送法が確実に守られているかどうかを常に見届けている。つまり放送法上の監督権が郵政大臣にあるということを前提として立法されていると申さねばならぬと存ずるのでございます。従いまして、現行法の上でも郵政大臣放送法の執行につき、放送協会に対して一般的監督権を持つていることは明らかと存ずるので、今回の改正案によりまして、四十九条の二という追加条文を特に加えたことによりまして、別段新たな権限郵政大臣に付与されたものとは存ぜないのでございます。それならば何ゆえ今回このような新たな条文を追加することにしたかということでございますが、ただいま申し上げましたように、郵政大臣の持つておる監督権を条文の上に明示しまして、設置法上の条文と相照応せしめますと同時に、他の一般の立法例の体系に合せまして従来の欠缺を補い、法体系の合理化をはかることを目的としているだけにすぎないのでございます。  なおこの際申し上げたいと思いますのは、この条文がないことによりまして、法文をきわめて表面的に解釈した場合には、郵政大臣には、放送法認可を受けることを命じているような特定の条文に限つて協会に対して監督権があつて、そのほかの条文の施行については、全然監督権がないのだというような考えに陥りやすいようでございます。現にこのような誤つた考え方で解釈をなすつておられる方もあるやに思われますので、このような誤解を防ぐためにも、郵政大臣が当然持つべき、また現に持つておる監督権については、条文に明らかにするのが有意義ではないかと存ずるのであります。  さらに、これは参考に申し上げますが、法人の監督の一般的な形を考えてみますと、民法上の社団法人あるいは財団法人はどのような小規模のものでございましても、またその仕事のいかんを問わず、主務大臣の監督に属することになつておりますことは申し上げるまでもございません。たとえば、現にやはり放送行つております日本文化放送協会は財団法人でございますが、郵政大臣の監督下にあるのでございます。また言論機関のようなものは、政府の監督下に置くということはいろいろ議論がなされておつて、これはいけないというような議論もございますが、この放送協会が言論機関であるということは、いわゆる実体法である放送法にその特徴が明らかに現われておりますので、放送法の定めるところに従つて郵政大臣が監督されるということは、これによつて何ら言論機関の圧迫になるというようなことはないではないかと思つているのであります。以上十分ではないと存じますが、一応私からお答えいたしました。
  31. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 放送協会法律による特殊法人であつて社団法人に類し、かつまた国鉄及び電電公社等の公共企業体にも類似する団体である、これはその通わであります。しかも郵政大臣国会に対して予算承認を求めて、郵政大臣責任においてこの予算案が上程せられる。従つて郵政大臣がその面の執行において責任を持つておる、こういう建前上、放送協会のある部面が郵政大臣の監督下に置かれるということについては、常識上あえて反対の余地はなかろうと思うのでありますが、ただここで、きのうの参考人並びに輿論が問題にしておる点は、「公共の福祉を増進する」という包括的な規定によつて郵政大臣が監督をする、こういうことになると、しかも「公共の福祉を増進する」という規定は、消極的な一般行政監督の規定ではなくして、積極的な意味を持つている。これが問題になる。この「公共の福祉を増進する」という規定は、別な言葉で言えば、事実上は「第七条の目的を達成するため」ということと同一の内容を持つたわけであります。であるからして、一般行政官庁としてその所管事業に対しての監督の範囲を逸脱するのではなかろうか。法文上の解釈から言えばこういうような危険を感ずるのであつて、それが問題になつておると思うのであります。特に通念上と申しますか、いわゆる普通常識上公共の福祉を増進するという言葉を考えますれば、その広い意味の包括的な前提に立つならば、郵政大臣はいかなる命令でも実際上は出せる。しかも命令を出す判断は郵政大臣に与えられておつて、第三者がこれを規定することができない、こういうようなものであります。だけに、その点が非常に重大視されておるわけであります。今当局説明を聞きますと、そういう包括的な郵政大臣の命令を出す考えはないのだ、電波法その他においてすでに郵政大臣の監督の下に置かれておるものが、放送法においてはその規定がないために、実際上この取扱いが困難である、こういうことから、実際の業務上といいましようか、当然なさるべき監督の程度規定しようとしたのがこの条項であるというようにお話になりましたが、しからば第四十九条において政府当局が監督しようというものについては、具体的に個々別々に言えば、どういうものを監督の対象にしたい、またなるものであるか、こういう点について御意見を伺いたい。
  32. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 四十九条の三の「公共の福祉を増進する」という言葉が、確かに橋本委員指摘のような懸念を起すということは、私も今それを承つてつてまさにそのような感じがいたしました。しかしどちらにいたしましても、郵政大臣放送協会を監督し得る限度というものは、監督官庁と監督されるものとの間の関係と、さらにそれらに関連して法律があるが、その法律範囲以上には出られないのであります。従つて私の気持といたしましては、この「公共の福祉を増進する」とあるのは、あるいはむしろ維持するという程度でよかつたというような感じを持つておる。積極的に命令を出して増進するというところまで、監督権は行き得ないのではないかという感じを確かに持つておるわけで、その点につきまして多少用語が穏当でなかつたと思うわけであります。しかしとにかく一般的な監督規定というものを置いておいた方がいいのではないか。そしてそういう考え方からは、今までの放送法規定にむしろ不満があつたのではないかということは、先ほど長谷政府委員から御説明申し上げた通りであります。  なおそのほか一体どういう監督命令が出せるのかという具体的な例につきましては、監理局長から御説明申し上げさせます。
  33. 長谷愼一

    長谷政府委員 補足的に御説明申し上げます。ただいま大臣からお話がありましたように、また私から先ほど申し上げましたように、私どもといたしましてはこの監督及び監督上必要な命令は、当然放送法範囲内である。また放送法に明文があつて放送協会当局にその権限責任とを明らかに与えてある問題につきましては、大臣から命令の形では出せないものというふうに考えておるのでございますが、御参考までに二、三の例をもつて申し上げてみたいと思います。  まず第一に監督命令としてわれわれが具体的に考えられますことは、放送法の各条項に定められてあります事項に違反した場合に、これを矯正するための命令であります。  またもう一つの面は、放送協会はあまねく日本国中に受信できるようにしなければならないという大きな責務が与えられておりますので、あまねく日本国中に放送が聞えるようにしなければならないという責務を施行する上において不適当な場合には、やはり政府から勧告なり、場合によつては命令というものも出さなくてはならない場合が考えられます。  またもう一つは、外国電波によりまして、日本放送の聴取が極度に妨害を受けたような場合には、またこれに対する対策というものも考えなければならないのでありますが、日本放送協会はただいま申しましたように、全国的な放送、しかも公共企業体として全国にあまねく放送を受信させる責務を持つておるのでありますから、外国電波に対する対策ということも、何をおいても放送協会考えなければならない。これはもちろん政府がともともに考える問題でありますけれども、実際に放送をやつておる実施機関である放送協会に、その対策を考究せしめるということは、当然起つて来るのではないかと思います。後ほど条文的にも申し上げてみたいと思いますが、特にあとに申し上げましたいわゆる難聴、聞えない地域の救済及び外国電波に対する対策というものは、時によりますと相当の金を要することになるのであります。従いましてこれを最初から政府がこうやるべしというような命令の形で、いわゆる積極的な命令で行くことは、先ほどから大臣お話にありましたように非常に疑問がありますので、われわれといたしましては、救済の方策を考究すべしというような程度の命令と申しましようか、研究、調査の命令、あるいはそれに対する対策を樹立する命令等を要求いたしまして、それによつて妥当と認める場合には、政府はまた必要な処置も講じ、放送協会にも可能な範囲内において必要な処置を講じさせるというような、二段構えで行くのが当然ではなかろうかと思つております。  なお私どもがここで特に申し上げてみたいことは、放送法の第三条の規定に定めております放送番組編集の自由についてであります。このような明文のありますことは、憲法において言論の自由を確保されている建前から考えましても、当然これを侵すような命令は出せないものと考えております。また一説によりますと、この改正法律案によりますと、郵政大臣労働関係法令上明らかに罷業権を認められておるのに、この罷業権を否認するような命令を出せるのではないかというふうな解釈もされておる向きもあるようでありますけれども、当然そういうことはできないものと実は考えておるのであります。  先ほど申し上げましたことをもう一度要約させていただきますと、電波法の規定違反」するような場合において、これを矯正するための命令、たとえば第九条にうたつております禁止規定等に違反した場合、あるいは第三十九条に協会の支出の制限規定がございますが、これに違反して支出等をやつた場合に適正な補正を求める。あるいはまた四十四条で、放送協会は科学的な世論調査を絶えず行いまして、国民の要望に沿つた番組をつくつて行かなければならぬということになつておるわけでありますが、そういう規定による義務を怠つた場合の命令であります。それからまた四十六条に広告放送等の禁止規定がございますが、これらに対する違反が行われた場合の矯正命令というようなことが考えられますが、もう一つ先ほど申し上げましたように、難聴区域あるいは外国電波に対する対策の考究についての命令、そういう点のことを考えておりますが、いずれにいたしましても、経済的負担を伴うような命令は、直接的には出せないというふうに考えております。また先ほど申しましたように、番組の編成の自由を侵すような命令は、当然出せないものと考えておるのであります。
  34. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 政府の言うことはわかるのでありますが、その中でなお私の意見と食い違つておるのは、この放送法違反した事項に対して郵政大臣が矯正の命令を出したい、こういう御意向のようですが、その法律違反しているかどうかを郵政大臣が一方的に認定するということは、法律を犯すことになりはしないか。従つてその法律違反した場合においては、ただ司法的な方法によつてこれは解決すべきであつて、それを行政官庁である郵政大臣が一方的に、それは法律違反である、間違つておるという見解のもとにそういう命令を出すということは、私は不穏当であると思う。たとえば先ほどの世論調査の問題ですが、協会としてはそれを行う場合には、これが公平な措置であると考えてやつたのかもしれない。それを郵政大臣が一方的に、これは法律違反である、従つて直せ、こういうような命令が出せるということになれば、やはり広い意味での番組に対して干渉を与えておる、こういうことに相なるわけでありますから、その当該法律違反しておるかどうかを決定する機関は、やはり司法機関である裁判によるべきものであつて、それを郵政大臣が一方的に是正すべきものでない。他の場合においてはあり得ると思いますけれども、特にこれは言論機関でありますから、一方的にこれを判断して、当該法律違反しておる、こういうような建前において矯正命令を出すことは不穏当である、私はこう解釈しておるのでありますが、その点についその当局のお考えをお聞きしたい。
  35. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは非常にめんどうな問題でありますけれども、しかし私どもの考え方といたしましては、一応こういうぐあいに監督するものと監督されるものがあり、その監督の基準になる法律というものがある場合には、一応監督するものの立場で考えて、これは違反であると考えれば監督命令を出す。しかし意見が非常に食い違つて、しかも重大な問題であれば、その場合におきましては今御指摘のように、当然最終の判断機関としては裁判機関があるわけでありますから、その方へ持つて行つて判定をしてもらうということになる、またそれでいいのではないかと私どもは考えておるわけであります。
  36. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 法律的にはそういろぐあいに命令が出ましても、これを承知しない。従つて裁判を仰ぐ、こういう方法で最終判決を得るわけでありますけれども、実際上の個々のこまかい問題についてある程度の差異があるならば、せつかく郵政大臣の命令があつたのだ、こういうことで、自主独立の権限が多少とも侵される危険があるとわれわれは考えるのであります。従つて政府当局先ほど説明によりますれば、必ずしも広く包括的な意味を持つておるのではない。個々に言えばこのような例である、こういうようなお話でありましたが、それに近い法律といたしましては、農業協同組合法の第八章に監督という章があります。この監督の章には比較的具体的に個々に列記して、慎重を期しております。こういうような方法によつて郵政大臣の命令し得る具体的な対象をここに列記する方法もわれわれは考えられると思うのでありますが、これに対する所管大臣の御意見を承りたい。
  37. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 農業協同組合の場合の監督の考え方と、放送協会の場合の監督の考え方は、私は少し違うと思うのでありまして、やはり放送協会は国からたくさん国家的な保護と特権を付与されている公共企業体であり、公共の福祉に至大な影響を持つておるということから考えますと、この放送事業というものの特質から出て来る監督を、そこまで行つてはならないという面をはつきり出して来て、その他の面は総括的に監督できるという形にしておく方がいいのじやないか、その方が適当ではないか、私はこういうように考えておるわけです。
  38. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 その点についてわれわれは言論統制及び言論の自由の干渉、こういう点から、非常にシリアスに物を考えておるかもしれませんが、いわゆる包括的な命令であればそういう危険を内蔵しておる、こういうふうに心配せざるを得ないのであります。従つて農業協同組合法で規定しておるように、具体的に個々別々に監督すべき対象を列記する、こういうことの方が輿論の心配をやわらげる結果になりはしないかと考えておるものであります。  なおこの問題につきましては、各委員においても相当御意見があるようでありまして、時間を食いますから、一応この辺でやめたいと思いますが、特に最後にお聞きいたしたいことは、これらの条項がなくとも、たとえば監督規定がなくとも、行政官庁としての一般監督権、こういうものはある程度あるとわれわれは解釈してよろしいかどうか。それとも、法文にこの規定が明記されなければ、行政機関として監督権が全然ないものと解釈していいか。しかも実態としては、郵政大臣放送協会予算の交付を受けて、それを審議して国会提出する義務を有しておる。従つて予算を通じて日本放送協会の経営に対しては、その責任を負わされているわけであります。であるから、当然ある程度の監督権というものがなければ、国会に対して最終の責任が負えないのでありますから、過去においてもやはり一般行政監督権は持つてつたものと解釈しなければ、従来どういう方法で監督をしておつたかということになるのでありますから、原則論として、この法律がなくてもいわゆる一般監督権というものは持つてつた従つて放送協会に対して資料の提供を命じ、あるいは随時報告を命ずる権限は、あえて法律規定しなくても、あつたものである。もしなければ郵政大臣は何によつて放送協会責任を最終的に持つておるか、予算承認を求め、その他経営の最終責任政府として持つてつたにかかわらず、何らの監督権がなかつたと解釈することは困難じやなかろうか。であるから一般監督権は、あえて法律がなくとも持つてつた、私はこう解釈したいのでありますが、その点についての御意見を承りたい。
  39. 長谷愼一

    長谷政府委員 私からお答え申し上げます。このことにつきましては、先ほど私が申し上げましたように、いわゆる法文上に欠缺というものがあるのではないかという疑いは多分にございます。私どももそのように感じまして、今回欠缺を補つていただきたい、こういうことからスタートしたのでございますが、今までもお話がありましたように、一般的な監督権を郵政大臣が持つておるということには、私どもも疑義をはさんでいないのであります。しかしながら法文上にそれが明らかになつていないために、先ほども申し上げましたように、誤解が出て来る心配がございますので、それを是正さしていただきたい、こういうのが趣旨でございます。またこれは私の私見かと存じますが、ただいま橋本委員の言及なさいました命令の点でございます。これは監督命令の規定がはつきりないというときには、確かに命令の形では出せないと思います。そのときには、法律違反等の事実を郵政大臣が確認いたした場合には、これを通告し、そして必要な場合は行政処分をする、こういうような形になつて行くのではないかと思います。ただそういうことによりまして、違反の場合には、やや途中でこれをため直すというような段階を経ずにただちに違反通告し、これを処分するというような形に行きかねない、そういう道しか残されないというような心配が一つございますし、もう一つは、先ほど申し上げましたように、今後われわれとして大いに注意しなければなりませんところの、外国その他による放送の国際的な情勢が今後かわつて行つた場合の積極的な研究、対策を、放送協会にもともに要求したい、こういうことは現在の放送法ではできないのではないか、そういうように実は考えておる次第でございます。
  40. 橋本登美三郎

    橋本(登)委員 時間もありませんから、私の質問はこれで一応打切ります。
  41. 成田知巳

    成田委員長 ほかに御質疑はございませんか。
  42. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 議事進行をかねて一、二御質問したいと思います。この委員室は一時までしか使用ができないそうであります。委員長におかれましては、この法案の重要性をお考えくださいまして、大臣御出席のもと、相なるべくは当該委員がそろつて出席をいたしまして、この審議に対して慎重な質疑応答を重ね、その結末を早く見出すように御努力願いたいと存じます。それにつきまして御質問を申し上げたいのでありますが、この法案の一部改正の焦点となつておりまする第四十九条の命令に対しまして、ただいま長谷局長は大体三点に要約されて、命令の範囲を御説明になつたようでありますが、定められた事項に違反した場合にこれを矯正するということと、受信可能義務を履行するための監督をやるということと、外国電波による極度の妨害を受けた場合の対策をやる。こういうような御説明でございましたが、大体この命令及び監督というのは、この限度に限られておるという御構想でございますか、どうですか、それを承りたい。
  43. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。放送は御案内のように、国際的な関係が非常に深うございます。また国内的な一般社会の動きによつても大分かわつて参りますので、将来のことは予測できませんけれども、現在私どもが考えておりますのは、先ほど申し上げましたように、またただいまお話もありましたように、放送法に定める事項に違反した場合の矯正、それから放送協会があまねく日本国に放送が聞えるようにしなければならないという義務を実施するために、これが対策を考究させる。その中には今申し上げた難聴区域の対策と外国電波の妨害のあつた場合の対策、その両方ともが一つの中に入つておると思います。ですから考え方によりましては二つにわけて考えた方がよろしいのではなかろうか、実はそういうふうに考えております。
  44. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 外国電波によつて極度の妨害を受けた場合の対策は、技術的に一体どういうことを意味するのでありますか。
  45. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。これは実際問題としては非常にむずかしゆうございます。結局外国の電波を日本の聴取者が聞いた場合に、いわゆる国としてあるいは社会として都合が悪い場合に、外国の電波が聞えないようにする。現在はどこの国でも行われていないと思いますけれども、いわゆる妨害電波を出して、外国の電波とまつたく同じ電波をその国なり、あるいは適当な所から出して、その放送を聞えなくする。これが一つ方法であります。もう一つは、外国電波よりも国内的に強力な電波を出せるように考えまして、外国の電波よりは国内の放送の方が聞きやすい形にして、結局外国電波よりは、常に国内の方を聞くようにする。こういう行き方とあるのではないかと思います。
  46. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 これは国際間におけるところの電波協約があるのでありましようが、その電波協約によりますと、BCバンドの場合には波長の及ぶ範囲が大体限定されておるはずだと思いますが、どうでありますか。
  47. 長谷愼一

    長谷政府委員 お話通りであります。大体電力とその波長によりまして、及ぶ限度がおのずから出て参ります。しかし特に南北の方向に寄りますと、相当遠くまで電波が届きます。高級な受信機で聞こうと思いますならば、ニユージーランド、濠州の放送日本で聞くことができますし、日本放送もかの地に届くわけであります。従つてお話がありましたように放送電波の使い方は、国際協定に従つて一々とりきめを行つて使つております。しかしながら残念なことには、中共地区及びソ連地区はこの国際協定に加盟していなかつたり、あるいは加盟しておりましても全面的な権利を留保しておりますために、必ずしも国際的な協定に従つたやり方をしておりませんので、今後いろいろな問題が起つて来るのではないかと心配いたしておるわけでございます。
  48. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 そうしますとBCバンドの波長範囲内において、中共及びソ連が随時波長をかえて日本向けの放送をやる。そういうものを妨害するときには、一体それに即応する波長を出す設備が、NHKになければならぬわけであります。そういうことはできておるのですか。
  49. 長谷愼一

    長谷政府委員 お答え申し上げます。私が先ほど申し上げました外国電波に対する対応策としましては、二つのことを申し上げたと思います。一つは直接外国の電波に対してまつ正面からぶつかつて行つて妨害する方法と、もう一つは外国の電波だけが聞えて国内の放送が聞えないというようなことがないように、国内の放送を強化して行く。こういう方法と二つあると思いますが、最初の方法先ほども申し上げましたように、実際にはどこの国でも行つておりませんし、国際的にもきわめて慎重を期さなくちやいかぬ問題でございますので、私どもとしましてはもつばら国内の放送設備を十分に整えて、外国の放送だけが聞えて日本の国内放送が聞えないというようなことが起つたり、あるいはそういう地域が起つたりしないようにすべきではないか、実はそういうふうに考えておるわけでございまして、今御指摘になりましたような施設等を放送協会が持つている段階に来ておりませんので、現実には持つておりません。
  50. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 その技術的な方面に対しましてはまた御質問をいたしたいと思いますが、時間がありませんから一点だけ大臣に御質問申し上げておきたいと思うのであります。それはこの第七回国会におきまして、電波法とともに放送法が提案せられましたときの立法の精神でございますが、これには「無線電信法は、行政官庁に対する援権の範囲が広きに過ぎ、国民の権利及び自由を十分に保障しているものと申すことができません。また電波が国境を越えた文化的手段でありますことから、その利用には高度の国際協力を必要といたしますが、このための国際電気通信条約にわが国も昨年加入いたしました結果、この条約の要求を満たすように国内法制を整備する必要がございます。」また、「行政を事業から分離し、別個の法体系とすることが合理的であると申すことができるのであります。」云云。「以上要しまするに、電波の公平かつ能率的な利用を確保し、公共の福祉を増進するため、及び放送が公共の福祉に適合して行われ、かつその健全な発達をはかるために、」という提案の説明があるのであります。それによりまして、この放送法の中には、公共の福祉ということかまず第一条にうたつてあります。すなわち「この法律は、左に掲げる原則に従つて放送を公共の福祉に適合するように規律し、」あるいは第七条に、「日本放送協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように、」。それから第十六条に、「委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、その選任については、教育文化、科学、産業その他の各分野が公平に代表されることを考慮しなければならない。」でありまするから、この経営委員というものはすべて放送協会業務を行うのに、原則的な公共の福祉というものに対して正当な判断をし得るという委任を、いわゆる議会及び内閣がやつたのであつて、この公共の福祉を遂行するという建前においては、一切の命令であるとか、監督であるとかいうものはいらないじやないか。いわゆる放送法、電波法に規定している以外の命令ないしは監督というものはあえていらないのだ、かように私は考えるのでありますが、この点に対して大臣の御所見を伺つておきたい。
  51. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは御指摘通り経営委員はまさにそういう条件を備えた識見豊富な人たちによつて構成されておるものであの、またそうでなければならぬのであります。しかし経営委員政府が任命をいたしますけれども、一応任命をいたしてしまうと、大体協会内部の組織の中にとけ込んでしまうわけであります。そうして政府の監督と、この経営委員事業の監督は、一方は内部において第一番に監督をし、運営を正確に、適正にやつて行くように見て行く、さらにそれをもう一つ政府が、政府本来の立場から見て行く、こういう関係になつておると思います。従つて経営委員が適正に委員の任命ができ、そうして委員会が適正に運営されておる場合には、政府が監督をするという事態は、おそらく実際には出て来ないだろう、こういういろいろ考え方があり、またそうあることを期待しておるわけでありますが、しかし内部にあるから政府が監督をしないでいいということは、放送事業本来の使命と、郵政大臣放送協会というものの間の関係からは出て来ないのであつて、やはり経営委員会がありながらも、問題が出て来た場合には郵政大臣が監督できるというようになつておらなければ、ほんとうに放送事業目的は達しられぬ、こういうように考えておるわけであります。
  52. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 私の考えから申しますと、ただいま私が申し上げました通り、民主的な建前から実行したい、言論の自由を確保したい、憲法の保障の線に沿いたいという建前から、わざわざ電波法及び放送法をつくつたと思うのでありますが、ただいまの大臣説明を承りますと、さらに経営委員会のやり方に対して内閣はどうかしれぬけれども、命令、監督権を持つた方がいいじやないかというお考え方は、民主主義の本義に照しますと、少し違うのではないかというふうに考えられる。一旦議会及び内閣が責任を持つて任命した者に対して、さらに不安を感じて命令、監督権を持たなければならないということになりますと、一体民主主義の本体というものはどこにあるか。そういうことを考えますと、さような命令、監督権はいらない。それは民主主義の本体に馳背すると考えるのでありますが、これに対して大臣の御所見を伺いたい。
  53. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 経営委員会という制度をつくりました目的は、そういう監督というようなもののほかにまだたくさんあるのでありまして、たとえば会長を任命する、また理事を任命するというような仕事も、経営委員会の非常に大事な任務になつている。そうして経営委員会の今の民主的な運営というものの面において意義があります。のは、むしろそういう点にあるのでありまして、そういう点に対しては経営委員会独自の判断でやりました放送協会の動きというものに対しては、郵政大臣が監督するわけには行かないということは、法律にはつきり出ております。そういう意味におきまして御指摘のような懸念はない、むしろそういう問題でない、ほかの点において監督する必要が起きた場合の郵政大臣の監督権の規定がある方が適当だし、なければならないというように考えております。
  54. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 ただいまの大臣答弁では承服いたしませんが、時間がありませんから、今日は質問を留保いたしておきます。
  55. 成田知巳

    成田委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時五分散会