○岡嶋
説明員 人絹糸の値段が非常に高いという点は仰せの
通りでございまして、最近人絹糸あるいは人絹織物の輸出が減退しておるという点から見ましても非常に遺憾なことでございまして、私
どもといたしましては極力これを下げたいというように
考えておる次第でございます。根本的に値段が高いという点は、やはり需給の点にあるのでございますから、これと
関連をいたしまして、取引所の問題も同時にあわせて
考えなければならない問題だと
考えておるわけであります。従いましてわれわれといたしましては、取引所の面と、それから基本的な需給の面、この二つについて
考えて参
つたわけであります。まず需給の点でございますが、特に最近の高い値段ということは、輸出が非常によく伸びて参
つたどいう点が大きな
原因でございます。大体人絹の製品の輸出というものは、できましたものの六割を内地に向ける、四割が輸出されるという
状況でございます。ところがこの四月以降の輸出の
状況を見て参りますと、大体五割から六割くらいのものが輸出であります。従いまして、輸出と内需とはすつかり逆にな
つておるというような
状況でございます。そういうふうに、輸出がよく出ました結果内需がなくな
つて参
つたという点と、それから第二番目に、人絹の生産能力の点でございますが、現在
日本の人絹六社でも
つて日産約二百四トンの能力があります。ところがこの登録能力に対しまして、われわれこれが全部できるかどうかということについて多少の疑問を持
つておりまして、この二百四トンで参りますと、月に約千三百五十万ポンドばかりできるわけであります。ところがいろいろな機械の定期修理その他を合せますと、大体一割ぐらいのところが実際の稼働能力ではないかと
考えております。そういたしますと、大体
先ほどの千三百五十万ポンドの九〇%の千二百二十万ポンドになるわけでございます。これが現在の一応の能力ではなかろうかというふうに
考えております。それに対しまして、現在八月の
状況は大体千百六十万ポンド出ておりまして、ほとんどフル稼働をや
つておるという
状況であります。一方人絹の
設備と申しますのは、非常にコストがかかる
状況でございまして、今のところ急にこれを増強しようというような機運もございませんし、やるとしても、大体一トンにつきまして三億くらいの金がかかります。
従つて普通日産十トンのものをつくるとなれば、三十億の金がかかるというような
状況でありまして、急にこれができないというところから、今後の増産ということはなかなかむずかしいのではないかというような思惑もございまして、これが高い値段に導いたのではないかと
考えております。それで、これの需給の点でございますが、われわれとしましては、本年の人絹糸の生産は、大体一億四千六百九十万ポンドを計画したのでございます。それに対しまして、四月から六、七、八の実績を見ますと、その計画の大体九五%しか出ておらないわけであります。これは最近の人絹の傾向といたしまして、だんだん太いものから細いものにかわ
つて参る、それがだんだん高級の織物ができるという傾向にな
つておりまして、
従つて糸が細ければポンド数が少いというりくつになるわけであります。そういう点もありますが、九五%に下
つておる。その結果、今年の計画に対して実績の方は多少下まわ
つておるという点がございます。この点につきまして、われわれとしては計画
通りのパルプの手当をや
つておりますので、大体この計画にあるだけの増産をまずメーカーとしてはやるべきであるというふうな点でも
つて、メーカーに対する増産の要請をいたしたわけであります。さらに、その後これでも
つてなお需給の
状況が好転しないという場合、しかも値段が非常に高くな
つて、それが下
つて来ないというような
状況がなお続くならば、われわれとしても人絹糸の輸入を考慮する必要があるのではないか。特に輸出用の人絹織物の原糸を、むしろ海外の安いのを買
つて、それを加工して輸出する必要があるのではないか。そういうことをすることによ
つて、多少思惑的な内地の高い相場も引いて来るのではないかということでも
つて、遂に人絹の輸入を考慮するという事態に立至
つたわけであります。
さらに第二番目といたしまして、需給の問題のほかに、取引所の問題がございます。われわれといたしましては、取引所の相場が正当な価格を現わすということはきわめて望ましいことでありまして、取引所の
運営についても多少不健全な要素がなか
つたろうかということも
考えたわけであります。この点につきまして、取引所の側におきましても、たとえば証拠金をとることを励行するとか、そういうふうないろいろな自粛の方策をと
つていただいております。さらに共用品の
範囲の拡大ということを
考えております。これは人絹の共用品が、大体ビスの百二十デニールのかせの一等品でありますが、これが全体の人絹の生産の五五%程度であります。これでは、その商品が非常に少いと、買占めのおそれがあるというところから、受渡しの共用品の拡大という措置も東京、
大阪の取引所を通じてや
つていただいておるわけでありますが、その結果、かせの二等品、あるいはまたビス百五十デニール、あるいは百二十のコーン巻というものを追加いたしまして、結局最初のビス百二十のかせの一等が全体として五五%であ
つたわけでありますが、その結果大体七〇%に広が
つたわけであります。そういうふうな受渡しの共用品の拡大ということによ
つて、思惑の買占めによる値段の高騰を防ごうではないか。
それからさらに第三番目といたしまして、思惑による買占めに対しまして、現物を売りに出すということが必要ではなかろうかという点を
考えたのであります。これはメーカーの方を指導いたしまして、取引所の方に現物を売り出すという手を打
つたわけであります。その結果、御
承知のように先月の取引所の納会のときには一挙に二十円も下るというような結果になりまして、その後相場としては大体おちついた
状況を示しているじやないかと思
つておりまして、今後また異常な
状況があるならば、さらに次の手を打つべきであるというように
考えております。
それから最近の輸出の
状況が非常に思わしくございませんので、そういう点からも、内需の方に多少持
つて来るじやないか。九月の輸出の実績を見ますと、
先ほど一時六割が輸出であると申しましたが、これが大体三分の一にな
つておりまして、
従つて三三%が輸出という
状況でございます。こういう面から申しましても、内地の人絹の方に多少潤
つて参る、
従つて値段の異常暴騰というのもだんだんしずま
つて来るのではなかろうか、こういうふうに
考えております。