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川上政府委員 不二越鉱業の敦賀の硫酸工場におきまして煙害を起しまして、いろいろ各方面に対しまして御迷惑をかけておりますことは、私ども磁硫鉄鉱の完全利用をどうしても推進して行かなければならぬというような
考えで、不二越鉱業のこの工場に対しまして、いろいろ援助あるいは指導いたしております立場からいいまして、まことに申訳ないと
考えております。被害につきましては、現在いろいろ調査をいたしております。まだ正確な被害の報告が参
つておりません。それから被害の予防なりあるいは技術的な問題につきまして、いろいろ欠陥があるかどうかという問題につきましては、現在私どもの方のエキスパートの技官が向うに派遣されておりまして、詳細指導をいたしております。そのものの報告がきよう実は届いたのですが、その報告によりますと、現在まで数回にわたりましていろいろれ問題を起しましたが、この七月の十九日の試験の結果は、ほとんどその問題が技術的に解決されまして、問題なく行われた、その後ずつと操業は正常に行われておるという報告を受けております。この問題につきましては、近いうち同技官が帰
つて来ると思いますので、詳細聞きたいと思
つております。それによりまして、今後のいろいろな
措置は講じて行きたいと
考えております。
なお磁硫鉄鉱の問題につきまして、
ちよつと申し上げておきますが、磁硫鉄鉱と申しますのは、今
国内に五千万トン、六千万トンといわれておりますが、おそらく調査の結果によりましては、数億トン存在しておるのではないかというふうに
考えられます。この磁硫鉄鉱が現在までに鉱物資源として何ら利用をされておりません。この磁硫鉄鉱の中には硫酸の原料であります硫黄分、それからもつと大事なことは、
相当量の鉄分を含んでおります。そういう鉱石が今日までほとんど利用されていないわけであります。それからこれと同じような
種類のもので、硫化鉱というのがあります。これは硫酸をとりまして、硫安の原料にな
つておりまするが、この硫化鉱につきましても、いまだ完全に利用されておりません。硫黄分につきましては、硫酸をとりまして、硫安の方へ利用されておりますけれども、このかすにつきましては、
相当の鉄分を含んでおりながら、これがほとんど利用されていないというような
状況にな
つております。従いまして、
日本みたいなきわめて貧弱な資源の国におきましては、磁硫鉄鉱なりあるいは硫化鉱なりを完全に利用いたしましてその中から硫黄分をとり硫酸をつくるとか、あるいは鉄分をと
つてこれを鉄鉱石と同様に使うとか、あるいはニツケル、コバルト、金、銀、銅というものも入
つておりますので、これを完全にとりまして、これを利用するということは、おそらく私どもとしましては、
日本の地下資源を利用するということにおきまして、画期的な問題ではないかというふうに
考えておりまして、先ほど申し上げました不二越鉱業の磁硫鉄鉱の完全利用の問題につきましては、
相当強く指導、援助を私どもの方としましてはしておるわけであります。また硫化鉱の完全利用の問題につきましても、現在同和鉱業におきまして、アメリカのフリユオ・ソリツド法という方法によりまして、先ほど申しました、単に硫黄分だけではなくて、ほかの鉄分なりいろいろなものを完全に利用する問題につきまして、いろいろ現在試験をいたしております。不二越鉱業の方は、ドイツから技術を入れまして、磁硫鉄鉱を完全に利用するというやり方、それから同和鉱業の方は、硫化鉱をフリユオ・ソリツド法によりまして、完全に利用するというやり方によりまして、いずれも劣らない画期的な問題ではないかというふうに
考えておりますが、この不二越鉱業の敦賀の工場は、さしあたり硫酸をつくるという工場でありまして、五月十六日火入れ式を
行つて、それからやり始めたのですが、いまだ完全利用をする
ところの湿式製錬とかいうような工場につきましては、まだ完全にでき上
つておりません。これは今後の問題であります。
ところがこの硫酸工場につきまして、先ほど申し上げましたような問題が起きましたのですが、六月の二十九日、七月の九日その他数回にわたりましてそういう問題が起きたのですが、これはこの焙焼炉の方と硫酸製造装置との間の技術的なコネクシヨンがうまく
行つていなかつたという
ところに原因があるようでありまして、これを私どもの方の技官が行きまして、いろいろ指導しました結果は、先ほど申し上げましたように、七月十九日の試験におきましては、大体完全に行われた。従いまして害は起らないような
状態に
なつたという報告が来ております。なおこれは帰
つて来てからいろいろ聞いて見なければわからない点がありますけれども、おそらく今後におきましては、こういうような
事態は生じないようになるのじやないかと私どもの方では
考えておりますが、そういうことがないように、なお詳細調査の上善処いたしたいと
考えます。なお今までのその煙害につきましてのいろいろな
措置につきましては、煙害の
程度がなお十分わか
つておりませんので、それを詳細調べました上で、十分善処いたしたいと
考えております。