○徳永
政府委員 はなはだ恐縮でありますが、私からお答えさしていただきたいと思います。今までや
つておりました制度のあらましは大体御存じのようであります。けれ
ども、もう少し補足して制度の趣旨から申し上げないとやめた事情がおわかりいただけないと思いますので、そこから申し上げたいと思います。
御
承知のように、占領当時から
日本に駐在いたします外人がふえて参りましたので、そういう人々の
需要するであろう物資というものを、ある程度確保しなければならぬというようなことで、毛製品を輸入してお
つたのでございます。
先ほどお話がございましたように、占領終結前の間はOSSとかその他の店に輸入権が与えられてお
つたわけであります。その輸入の際に、輸入原価から国内販売価格に
相当のもうけがあるというような事情がございました。それで
先ほどお話がございました
通り、占領の終了と同時に、この制度を切りかえまして、その輸入によ
つて国内に販売してもうけがあるならば、これを
日本の毛製品の
輸出振興に使おうじやないかというようなことで、この制度の切りかえをや
つたわけであります。当時
日本の毛製品は
輸出金額が
相当少いのでございますが、なかんずく毛織物になりますと、ほとんどゼロとい
つてもいいというような
状況でございましたので、それで毛織製品を
輸出したら、ほぼ同
金額の——これは
ドルとポンドで若干の差がございますけれ
ども、ほぼ同
金額の毛製品の輸入権を与えるという制度をや
つたわけでございます。そういたしまして、やりました結果、その効果がだんだん出て参りまして、昨年の秋、暮れごろになりますと、だんだん調子がよくなりまして、こうなると、あの制度をいつまでも残しておくと、
日本の毛の製品の
輸出ができることはけつこうだけれ
ども、それとほぼ同じ
金額の
外国の毛製品を輸入しなければならぬということになるわけでございます。もともと起りは、ある程度毛織物製品を輸入することは、在日外人用の物資を確保する意味においても、また
日本の遅れておる毛織工業の
技術向上のための実物見本が手に入るという意味においても、けつこうであろうということで
考えておりましたが、年間で七百万
ドルぐらいと記憶いたしております。それくらいのものを予定してお
つたのでありますが、一層伸びて来たものですから、だんだん伸びて来ますと、七百万
ドルをふやさなければならぬ。こうなりますと、また七百万
ドル輸入することによる利益を
輸出振興に使おうとしたのですが、数量が無限大にふえることになりますと、この制度にも疑問が出て参ることになりますので、
輸出振興はいいが、毛製品を
輸出して、また同じ毛製品を輸入するのだということになりますと、問題がございますので、毛識物製品の
輸出振興は
考えなければならぬが、制度としては別なことを
考えなければならぬはめだ陥
つて来たわけでございます。そこで私
ども業界にいろいろと相談をいたしたのでございますけれ
ども、
輸出の伸びておる
状況等を見まして、今年の初めになりまして実は予告をいたしました。これは商売のことでございますので、注文をとる際には、先に輸入権をもらえるということにな
つているわけでしようから、その分が実行できないということになれば、今
お話がございましたように、キャンセルの問題も起りましようから、今年の初めになりまして、この制度はどう見ても三月一ぱいぐらいしかできませんので、四月ごろから別なことを
考えなければならぬ。少くとも率の軽減を
考えなければならぬ。だから今の率はそのまま一年中続けて行くわけには参りませんということを実は予告いたしておりました。その後
輸出がだんだん伸びて参
つたものですから、予告
通り中止せざるを得ないという
状況になりまして、正式に中止いたしましたのはこの五月からということに相な
つたわけでございます。それでただいま当面しております問題は、五月以降は別問題といたしまして、四月中にできました契約の分が実行されました場合に、従来の制度で約束してお
つた輸入権というものを確保するための
措置が起
つて参りました。これが予想よりも実はオーバーいたしておりますので、七百万
ドル以上輸入しなければならぬということになるわけですが、これはあまり歓迎することではありませんけれ
ども、しかし一旦約束したものである以上、その約束に
従つて、商社その他が
輸出による犠牲と輸入による利益を勘定して商売しておられたわけであります。その方々に御迷惑をかけるわけには行かないということで、毛織物製品のわくをふやすか、あるいはその損失を他のものの輸入で補うか、この辺につきましては、目下通商局におきまして、私のところもお手伝いしながらいろいろと善後
措置を
考えつつあるわけでございます。ともかく一旦約束して、打切り以前に起りました契約が実行されました場合には、約束
通りのことにな
つて、御迷惑をかけないという線は貫きたいというふうに
考えております。
それから第二の問題は、その制度をやめるとしますと、毛製品の
輸出をどうするかという問題でございますが、今まで毛製品の輸入の利益を
輸出の補填に充てるという制度でうまくすべり出してお
つたのでございますが、これは今の程度でほ
つておいていいわけではございませんので、もつもと伸ばさなければなりませんが、そのためには私
ども今
考え、現に励行いたしております事項は、紡績業者に対しまして毛製品の
輸出をしたならば、その
輸出金額の一七〇%、
輸出金額の一・七倍の原毛の輸入権を差上げるという制度をや
つておるわけです。これは
金額で一・七倍でございますが、リンクの割合で数量に計算いたしますと約二・五倍、
輸出した
品物のうちに使
つたであろう原毛の量に対して二・五倍の輸入権を上げるというような制度でございますが、この制度を今先ほどの制度の中止と引かえに実施いたしております。そしてその輸入による利益といいますか、輸入権を紡績だけでなしに商社も機屋もある程度のわけ合いが持てるようにということで
輸出に努力していただく、紡績もそれから織布業者もまた商社もそれぞれの人に努力していただかなければいけませんので、そういう方々の努力にある程度報いるように輸入権の配分を
考えておるわけです。それが現在と
つております制度でございます。
さらになお私
どもといたしましては、目下これはまだもうしばらくの御猶予をいただきたいと思いますが、これだけの制度で毛製品の
輸出振興ということが十分であろうかどうかということにつきましては、若干の疑問を私
ども持
つておるわけでございます。と申しますのは、毛製品の全体の輸入、それから
輸出との割合を
考えてみますと一億五千万
ドルから七千万
ドル輸入いたしまして、
輸出がおととしで
特需を含めまして四千万
ドルくらいのところで、去年はそれが去年以前よりは減
つております。そういうことでかせぎが少いというような事情にございますので、もう少し
輸出に対する馬力をかけまして、業者が馬力をかけるような制度を打出したいというふうに
考えておるわけでございます。これは目下私
どもの繊維局内の
議論の仕上りができておりません。あらかた荒削りができた程度でありまして、なお通商局その他とも相談して仕上げたい。しかしいずれにしましても、そう時間がかからないうちに、ここ一週間か十日ごろの間には仕上げたいということで今せつかく立案中であります。
以上が今お尋ねの問題で、廃止の事情は今のようなことでございますが、廃止に関連いたしまして、その善後
措置の問題が二つあるわけでございます。実は業者の方に損失をおかけしないように、廃止するにかわるよりよい制度をどうするかという問題の概要を申し上げたのであります。