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1953-05-29 第16回国会 衆議院 通商産業委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十九日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 福田  一君    理事 村上  勇君 理事 長谷川四郎君    理事 永井勝次郎君 理事 伊藤卯四郎君    理事 首藤 新八君       小金 義照君    田中 龍夫君       土倉 宗明君    坪川 信三君       馬場 元治君    中村 幸八君       笹本 一雄君    柳原 三郎君       山手 滿男君    加藤 清二君       下川儀太郎君    中崎  敏君       山口シヅエ君    始関 伊平君       川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  岡野 清豪君  出席政府委員         農林事務官         (農業改良局         長)      塩見友之助君         通商産業事務官         (大臣官房長) 石原 武夫君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         通商産業事務官         (繊維局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (石炭局長)  佐久  洋君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         専  門  員 谷崎  明君     ————————————— 本日の会議に付した事件  通商産業行政に関する件     —————————————
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  本日は通商産業行政に関して審議を進めます。質疑通告がありまするので、順次これを許します。念のため申し上げておきますが、質疑通告者が現在七名ありまするので、その点お含みの上御了承願いたいと存じます。  それでは順、次質疑を許します。山手滿男君。
  3. 山手滿男

    山手委員 日本産業界が知らないうちに日々非常な困難な状態に陥りつつあることは、もうみんなが認めておるところであるし、非常に憂慮をしておるところであります。こういう窮状を打開するために、抜本的な手を打たなければいけないということは、みんなが承認をしておるところであります。その中でもまず第一に大きく取上げられなければならぬのは貿易政策でのるわけでありますが、最近通産省内部において、貿易打開の抜本的な政策再出すためにいろいろおやりになつておるようでありますが、まずこの方回の説明大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  4. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。御承知通りに、今日本経済というものは、一般に非常に危ぶまれておるような感じがあつて株の暴落とか何とかいうこともあります。これは結局特需がどうなつて行くかということがまず焦点として認められておるわけであります。それにもかかわらず、コストが高いというようなことで輸出が進展しない。また世界不況が出て来るのではないかといろいろなことも心配されますが、どつちみち日本が生きて行くためには、やはり輸出貿易を振興して、国民生活水準を向上して行くというよう自立経済を立てて行かなければならない。通産省としても年来非常に研究をいたしておりますが、まだ研究段階にあります。しかし研究の結果実行できるものはどんどん実行しているようでございます。また私は就任早々でありまして、今後日本経済をいかにして行くか、また貿易をいかにして行くかという全般的な結論は出しておりませんけれども通産省事務当局がいろいろ考えておることが、もし御必要でございましたならば、事務当局からお答えいたさせます。
  5. 山手滿男

    山手委員 きよう新聞にも通産省の方で態度を決定したようなことが出ておりますのに、大臣が今のような御答弁ではわれわれは満足できないのであります。今の大臣の御答弁では、コストが高過ぎるから、貿易打開のためにこれに対策を立てる必要がある、こういうことが通産省貿易振興根本対策ようにうかがわれますが、コスト高に対する対策をどういうふうにお考えになるか、まずお伺いをいたしておきます。
  6. 石原武夫

    石原政府委員 ただいまお尋ねコスト高の問題につきましては、これは各物資それぞれ理由もございますので、各主要な商品についてそれぞれ原因を見きわめまして、それぞれの対策を立てるということになろうと思います。それで先般来お話申し上げたこともあるかと思いますが、たとえば石炭につきましては少し長期の計画石炭コスト引下げ方策考える。あるいは鉄につきましても同じよう合理化計画を進めるとともに、それに基くコスト引下げ考える。また硫安等につきましても同様でございます。これは何分国際的にいろいろの原因から割高になつておるものを、一挙にこの際国際価格まで引下げるということはなかなか困難でございます。従つてそれらの計画は二年ないし三年というよう計画でございまするが、根本的にはどうしても日本の現在コスト高になつておる根本原因に手をつけて行く以外に道はないということで、主要な物資につきましてそれぞれ対策を立てているわけであります。そこで、それらの政策がかりに実行できるといたしましても、ある期間を要することは申すまでもないことでありますが、それではその間それだけ待てるかどうかという問題があるわけであります。この辺につきましては、補給金というような問題もございますが、これはいろいろ利害得失もございますので、その辺は目下研究をしておる段階でございます。
  7. 山手滿男

    山手委員 今官房長官からかわつて説明のありましたような各論的なことを私はこの際尋ねているのではないのでありまして、コスト高について最近通産省内部で現われておる議論は、コストが高いのでこれを何とか引下げなければいかぬ。そのためには、重点的に育成するものは育成をする、切り捨てるものは切り捨てる。同じ会社でも、同じ一つ産業界においても、優良な会社は育てて行く、見込みのある大会社は育てるけれども、そうでない会社はこの際もう見捨てる。開銀融資なんかでもあつせんしない、こういう対策商社にいたしましても、合併を強制して、歴史はあつても、現在いろいろな事情内容が不振の状態にあるものは切り捨ててしまうというふうな重点的な合併強行政策をとつて行く、こういうことが省内一つの輿論になつて来つつあるように聞いておる。あるいは独占禁止法の場合においても、これの改正にあたつては、特殊なカルテルを強力に認めて、弱いものについては、むしろこれを切り捨てさすという面を打ち出して行こうというよう政策考えておられるようでありますが、これは大臣の気分からも行かなければいかぬのであつて、これはかわつて説明願うわけにはいかぬのでありますが、この点について大臣の方から所見を伺いたい。
  8. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。今まで通産省におきまして、この見込まれるところの不況対策、また輸出貿易の阻害されておるところのいろいろな条件を、いかにして克服するかという点についていろいろ研究しておるのでございます。そのうちには、議論といたしましては、今お説のようなこともございまして、両方面から研究されておりますけれども、私のただいまの考えから申しますれば、つぶれるものはつぶれてもいいじやないかという立場は、これは日本経済としては非常に底が浅いのでございますから、大会社といえども、もし国家政策輸出貿易ほんとうに突進して行こうと思うときには、あるいはつぶれぬとも限らぬという結果が出て来る。われわれといたしましては、日本ようやく今日まで立ち直つたのでありますから、この立ち直つたところの商社並びに個人でも、企業者というようなものにできるだけ将来発展する方向を与えながら、しかも貿易進展をはかつて行くという方向に持つて行くべきだと私は考えております。そこで私がただいま申し上げられますことは、そういうふうにいろいろな研究がなされおりますが、この研究を彼此勘案しまして、いかにしたら日本貿易が振興して行くかということを考えてみたいと思います。先般来いろいろ研究しておりすと、五箇年後にこれだけの物価が下るとか、五箇年後にコスト高がこれだけ減るとかいうよう計画はあるようであります。しかし私は三年とか五年先を待つてつては今の経済界には対処できないのだから、何かはかに拙速でございますけれども、今日すぐ間に合う政策を打ち出さなければいかぬ、その方面研究をしておるわけでございます。
  9. 山手滿男

    山手委員 コスト高貿易不振の一つの大きな原因であることはいなめないし、この対策を根本的に立てなければ、やはり貿易は振つて行かないことは自明の理であります。しかし貿易振興対策というようなものは、いつも抽象論ばかりが繰返されておつてほんとうに具体的に施策の中に盛られ、打ち出されて行くということが今までされておらない。歴代の通産大臣が五へんも六ぺんもここ四、五年のうちにかわつておりますけれども、ほとんど見るべきものはない。のみならずその間において私どもがこの七八回の国会を通観いたしておりましても、たいへんな大失敗をやつている。たとえて言えば、ポンド対策というものは全然逆の政策政府がとつて、今日のポンド貿易のがんをつくつた。これは明らかに今の吉田内閣の非常な罪悪であつたわけであります。円よりもポンドは紙きれであるかのごとき言説をその大臣席におつて言つてつた人もあつたのでありますが、この際はつきりした所信を大臣から聞いておかなければ、われわれは承服することはできない。と申しますのは、コスト高根本原因は何かということを確かめて対処して行くというお話が今大臣からありましたが、コスト高根本原因は何か、そしてどういうふうにしてこれに対処して行くのか、この問題から考えていただかなければならないのであります。今日コスト高になつておりますのは、一つはやはりオーバー・ローンから来ている。政府の、国家経済を重しとし、国民経済、民間のふところぐあいを軽しとしたよう吉田内閣財政経済政策から、金利もかさんでいる、借金借金で、その間に銀行屋さんなんかの顔ばかりうかがつてつて行かなければならぬというふうな産業界のああした状態こそがコスト高になつている。そういう原因をあげて行けばいろいろきりがないのでありますが、そういう問題をたな上げにしておいて、一、二の重点工場商社だけを育成をして、大部分の商社合併を強制をしたり、つぶれるものはつぶして行くというふうな政策でないことを、第五次吉田内閣通産行政基本政策一般的に宣明されようとするときにおいてはつきりとさせなければ、われわれは協力のしようもないし、やつて行きようがない。まず大臣からもつとはつきり御答弁を願いたい。
  10. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えいたします。過去いかがありましたか、私まだ詳しく存じませんけれども、今お説のように大企業だけを偏重して、小さいものをつぶして行つて企業合理化をするとか、コスト高を是正して行くというふうな方策はこれをとりたくないと思つております。問題は、先ほども申しましたように、終戦後今までいろいろな苦難の道を経て来たのでありまして、今日事業をいたしているものは、よほどの忍耐とまた努力によつて生き延びておるのでございますから、これを独立後においてますます発展こそさせ、つぶれてもいいとか、つぶさなければならぬとか、つぶさなければコスト高が是正できぬとかいうふうなことは考えることではないと思います。それにつきましては、私も過去の経験もございますので、ただいま仰せの銀行の問題なんかも、実は銀行におりましたから、その辺も詳しくわかるはずでございますので、十分研究いたしまして、もう少し急速にまた一般業界に大した打撃を与えないで輸出貿易がよくできるようにやつて行きたいと考えております。
  11. 山手滿男

    山手委員 大臣のその決意をお聞きいたしまして、一応私どもは了承いたします。しかし先般来通産省内部の省議に上つたようでありまするが、通産省事務当局あたりでプランを立てつつある線というものは、今の大臣考えとは逆の方向であるようでありますから、この際だめを押しておきます。  今大臣の御答弁よう方向で、いわゆる重点産業商社だけを育成しつつ貿易を振興して行くというのであれば、それは中小企業そのほかにしわを寄せてやるというのでありますから、ある意味では簡単でありますが、そうではないようでありますから、いろいろな面で相当に思い切つた施策がとられなければならぬということがはつきりいたします。ついては、たとえて言えば、コスト価格競争をしなければならぬものについては、当面効果が早く上るよう政策をとるということになると、やはり補給金の問題が、鉄鋼にいたしましても、肥料にいたしましても、具体的な課題になつて参りますが、この補給金については、大臣は根本的にどういうふうにお考えか、この際承つておきたい。
  12. 岡野清豪

    岡野国務大臣 補給金の問題は、一番速効的の効果がある方法でございます。でございますから、今日のような情勢のときには、補給金を出せば目の前にコストが下るというような結果も起きるでございましようが、しかしまた補給金を出すということにつきましては、いろいろせつかく自由競争を促進して、各自の努力によつて産業が繁栄して行くというような民主主義的の経済の運行の方法をやつて行くのにまたさしつかえる面がたくさん出て来ます。と申しますことは、補給金を出せば、やはり統制が一部行われなければ補給金効果もないし、またむだ使いになりますから、そういう点においてこの点はよほど愼重考え——また愼重も下手の考え休むに似たりで、いつまでもほつてはおけませんので、私は速急にその方法を何とかしたいと思つております。私が通産大臣になりました後に、いろいろ通産省事務当局から伺つていますことを彼此勘案しまして、何とか最後の結論に入りたいと、こう思つております。ただ原則といたしましては、私は補給金制度というものにはあまり関心を持つておりません。しかしながらまた一面、このコスト高、ことに貿易が非常に不振になつておる、これをぜひ早くやつて行きたい、こういうためには補給金も必要である、この二つの観念だけは頭に入つております。しかしこの点はまだ私の頭でははつきりと断定がついておりません。
  13. 山手滿男

    山手委員 補給金を出すということになりますと、いろいろ国際的にも問題は起きることも想像されます。しかしさつきから話をいたしておりますように、今日の日本コスト高というものは一戦災から立ち上るためのいろいろな努力のしこりがまだ残つておるとも言えるし、その後の政府財政のやりくり、経済の運営の仕方というものが全般的に日本製品コスト高を招来しておるということであつて、これを何とか切り抜けて国際競争力をつくるためには、補給金ようなものを出すとか、補給金を出すことができなければ、それとうらはらの施策を強力に進めるということでなくては、とうていこれはできない。西ドイツやあるいはフランスとかベルギーなんかでとつておるよう税法改正の問題、あるいは輸出したものに対する優遇措置、こういうふうな政策を早急に実施せよということは、われわれがたびたび主張をして、ここでも議論したことでありますが、ほとんど見るべき手が打たれておらないようであります。その点についてはどういうお考えでありましようか。あるいはまた別に補給金を出さなくても、例の輸出信用保険制度改正案も、これは一部改正法でありますが、この国会に提案をされるようであります。まだ具体案を私は見ておりませんけれども、抜本的な改正提案じやないようであります。輸出信用保険法の法令を見ましても、この甲種信用保険の場合でも非常な条件がついておつて、全部の輸出品についてあらゆるケースが保険をされるというふうな状態ではない。保険範囲が非常に狭い、あるいは保険料率が約款によつて割高である。そのために輸出信用保険特別会計においては、二十七年度予算でわざわざ百億をとつたけれども相当の金額が遊んでおる。使わせないような法律になつておる。そこで先般流産になつた二十八年度の本予算において、百億を通産省大蔵省に要求をしたようでありますが、査定を受けて全額削除になつておる。このことは輸出業者にとつては、補給金を出すというふうな真正面から振りかざした政策ではないが、強力に早く推進をしなければならないと思う。輸出信用保険制度特別会計に対する本年度予算編成などについてもどういう措置をおとりになるつもりであるか、あるいはまたさつき言つた輸出業者に対する優遇措置——あるいは税法上からあるいはいろいろの手続の面から優遇して輸出を促進するというふうな具体的な措置はどういうふうにおやりになるつもりか、まず鮮明してもらいたい。われわれは単に輸出振興をやるんだ、そして審議会を設けてやるんだというふうな抽象論ばかりを政府から聞きたくはない。具体的にこうやるんだということをまず鮮明してもらいたい。
  14. 松尾泰一郎

    松尾説明員 今の輸出業者に対する優遇措置として、第一点は現在実施をいたしております輸出振興外貨拡張問題でなかろうかと思うのでありますが、御存じように現在ドル地域向け輸出につきまして、商品を三種類にわけまして、その輸出額のあるものは一五%、あるものは一〇%、あるものは五%というふうな三段階優遇率を設けまして、その率の範囲内において、あるいは渡航費を持たせるとかあるいは輸入させるとかいうふうな措置を講じておるのであります。先般来われわれ事務当局といたしましては、これをドル地域のみならず、ポンド地域、オープン・アカウント地域拡張いたすということで研究をして参つております。現段階といたしましては、大蔵省と今話合いをしている最中でありますが、われわれ通産省としての案を申し上げますと、この輸出振興外貨を全地域拡張するということと、それから率を均一に輸出額の一〇鬼にするという案をもちまして、今大蔵当局と話をしておるわけであります。それではなぜ従来の一五%、一〇%、五%を一律の率にしたかというようなことについて御不審もあろうかと思いますが、これは先般来国際通貨基金におきまして、為替管理上、どつちかといいますと、二重為替レートの発生のきらいがあるよう制度につきまして、各国間の話合いとして、原則としてそういうようなことはやめようというような話がIMFの理事会の決議になつておるような次第であります。従いまして、あまり輸出振興外貨ということを銘打ちまして、為替管理制度に大きな変更を加えるということは、国際的になかなかむずかしくなりましたので、われわれといたしましては、今申しましたよう為替管理上の実質的の困難を改善するという名目をもちまして、実はそういうよう改正考えまして、今関係省と相談をしておる段階であります。これが実施されますればことしはかなり輸出振興に役立つのではないかと思つております。  それから今お尋ねの第二点の貿易商社に対する税制上の優遇措置でありますが、前国会におきましても大体大蔵省との話合いもできまして、輸出キャンセル準備金を設定するとか、あるいは海外支店を設けました場合のその費用につきまして特別の償却をするとかいうようなことにつきまして、大蔵省とも話合いがつき、そのラインで実は法案国会通つたのでありますが、御存じ通りのことで流れたわけでありますが、この前の改正案に加えまするのに、われわれは輸入キャンセル準備金いうふうなものもこの際追加して参ろうということで、目下大蔵省と事務的に話合いをしている段階でございます。  それから第三点の輸出信用保険の改善の問題でありますが、先般の国会においても一部保険制度拡大について法案を提出いたしまして、衆議院の方の御議決は願つたのでありますが、参議院で審議中に解散になつたという状況であります。なお今度の国会におきまして、衆議院改正案に加えまするのに、輸出振興という見地からさらに一層の改正を加えて法案を御審議願いたいと思つております。  今事務当局として改正考えておりまする点を簡単に申し上げますと、御指摘になりました甲種信用保険につきまして、今お話のあつた担保範囲拡大につきましては、いわゆるクレームの場合、普通のキャンセルの場合に、それをどう対処するかという問題なんであります。国家が幾らでも負担し得るという状況でありますれば、こういうキャンセルについての保険も、今の甲種保険でいたすということも考えられるのでありますが、この点につきましては業界ともいろいろ相談しましても、業界の権威ある人は、そこまで行くことはまた逆選択もあつて、かつて財政上に負担を及ぼすことになるので、まだ現在の商業道徳の点からいつて、そこまでの拡張は困難であろうというふうな、業界自身からもそういう反省論もありまするので、この危険範囲拡張につきましては、大体現状通りにしまして、しかしながら保証の料率につきまして現在八割というものになつておりますが、これをわれわれ事務当局としては九割ぐらいに引上げてもらいたい、もちろんこれも大蔵省と折衡いたさなければならぬのでありますが、何とかして九割ぐらいに引上げるということで大蔵省話合いを進めております。  その他保険料率引下げの問題でありますが、これにつきましても加入者が多くなれば、当然保険料金引下げも可能になるわけでありまして、最近ぼつぼつ設立を見ました輸出組合制度等を活用いたしまして、できるだけ保険加入をふやす、そのことによつて保険料率引下げるということで、いわば組合による団体保険とか、あるいは商社個人々々のたとえば包括保険とかいう制度を今研究いたしているよう状況であります。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 議事進行について……。今本年度予算暫定予算として六月分が予算委員会にかかつておる。これは、これから出る二十八年度の本予算の前提となるものであり、本年度の本予算はもう日ならずして査定に入る。しかも大臣は就任されましてから、通産行政については新しい機軸を開いて行くんだという意見新聞に発表されておる。こういうような新しい政策を出して行くんだという意見のもとに、今二十八年度予算編成されようとしている。そのときにわれわれは大臣の新しい通産政策というものをこの委員会を通して聞こうとしておるのであつて事務当局のいろいろな事務的な説明をわれわれはここで聞こうとしておるのではないと考えるのであります。山手委員の今質問しようとしておるのも、二十八年度予算編成を前にして、通産大臣は本年度の当面している通産行政に対して、どういうところに重点を置くか、こういう問題について大臣から説明を求めておるのだと思うのであります。これらについて詳しい事務的な内容は、これは事務当局説明でよろしいと思いますけれども、少くも政策に関する限りにおいては、大臣答弁でなければ、われわれ委員会は了承できないと考えるのであります。もし大臣がそういう政策を樹立するために相当期間が必要であるというのであれば、その期間をここで話合つてつてもよろしいと思います。われわれは今予算査定の重要な段階において、しかも新しい政策が打出されようという重要な段階において、大臣から何も政策が聞けない、事務当局説明を聞くならば、わざわざ委員会を開く必要はないと考えるのであります。これらの問題に対して大臣はどういうお考えであるのか、何日ぐらい待てば大臣から政策についての説明が聞かれるのか、これを伺いたい。
  16. 岡野清豪

    岡野国務大臣 ちようど私の考えておる通りのことを御質問になりました。実は私も先般来昼夜兼行省内のいろいろな事情を聞いております。そこで私は結論が出ないし、政策を打出すことができないのは、御承知通りに何かすればやはり資金がいります、資金関係を打立てなければ政策にはなりません、空理空論でございます。でございますから私はただいま大蔵大臣と毎日のように折衝していろいろ研究しておるのです。それがある程度の見すえがつかなければ私の政策にはなりませんから、その点私の政策でないことを皆様方に先に申し上げまして、あとからああ言つたじやないかというようなこと——それはおつしやることは一向さしつかえありませんが、私は政治家の良心としてそれは恥ずべきだと思います。だからもし結論を出せとおつしやれば、私は今日は結論よう出し得ない立場におるということを申し上げておきます。
  17. 山手滿男

    山手委員 今大臣からお話がありましたが、それでは大蔵大臣話合いをしておるという大臣考えておられる基本的なものを、ここでこれはこういうふうに行きたいと思つて折衝しておるということを具体的に御説明をお願いをいたします。
  18. 岡野清豪

    岡野国務大臣 それは大蔵省にも関係があることでございますし、内閣全体の責任にあるわけでございますから、ただいまその考え方を申し上げることは差控えさせていただきたいと思います。
  19. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 議事進行について…。お聞きの通り、今大臣答弁を伺つておりますと、大蔵大臣と折衝しなければ自分の通産行政に対するところの方針というか、信念を持ち得ない、従つてそれをお聞きになるということであれば答弁はできない、それまで待つてもらいたいというような意味でありまして、今山手委員も質問いたしておりますが、通産行政の根本についてわれわれは大臣から意見を聞きたい。それから二十八年度予算通産行政をどのように織り込みつつ持つて行こうとしておられるか、これをお聞きしようとしておる、その点について答弁ができないということであれば、従つてわれわれが今日ここ質問をすることはまつたく無意味であると私は思いますので、その辺について委員長はどのようにお考えになつておられるか、このよう会議の進め方でよろしいとお考えになるか、およそ無意味であるとお考えになるか、その点について委員長の所見をひとつ伺いたい。
  20. 大西禎夫

    大西委員長 私といたしましては、ある程度の日にちを置かれて御質問になるか、あるいはまた現在大臣考えておられる通産行政に関する意見を聞くか、どつちかにしていただきたいとさよう考えております。
  21. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 お聞きの通り山手委員の質問に対する大臣答弁も、一歩も前進をいたしません。聞こうとしておられる点に対しては、大臣もそれは答弁ができないとおつしやつております。従つてせつかく通産行政の根本について大臣意見を聞こうとするのに、大臣答弁できずして、事務当局が行政的な扱い方の答弁をしておられるにすぎません。ところが実際問題としての事務折衝上における国際的な問題というのは、堂々めぐりというか、行きどまつてしまつて、につちもさつちも行かないというのが、今日の貿易不振の原因であることは、委員長も御承知通りであります。それを新大臣はどのように打開しようとされるのか。それらの根本的な予算編成上の問題について山手委員も伺つておるように私は了承しておる。それに対する答弁ができないということであれば、私は大臣に対する質問というものは、いかに時間をかけてやつても、一歩も前進しないと思う。従つて大臣が大蔵大臣と折衝されて、通産行政に対する方針と信念をもつてここで御答弁ができるまで、私はこれらの質問はその時期まで延期することが妥当ではないか。従つてこの委員会を開催することもそれまで延期をすることが、きわめて効率的ではないかと考えております。委員長はどのようにお考えになりますか。
  22. 大西禎夫

    大西委員長 お諮りいたしますが、今伊藤君からのお申出のように、日にちをかけてやるべきである、もう少し大臣に調べていただいてからやるかどうかという問題ですが…。
  23. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 少くとも大臣が就任いたしまして今日まで七日ぐらい日がたつておる。通産大臣になられたと同時にその決意がなければならない。すなわちわが国の経済の現状は、いかに輸出不振のために産業界が日々低迷しておるか、貿易においてはジリ貧の状態をたどつておるのでありまして、反面また最近の国際情勢は、御承知通り、各国の物価の低落と各国の輸出競争の激化のために、現下の日本の産業がどのように不振になつておるか。これに対処する決意は、大臣としてはごく簡単な説明でいいのじやないか。私はこうやつて行こうど思う、こういうことでいいのじやないか。ところが大臣は、資金云々というようなことを言つて、金を先にくめんしなければ行政が行い得ないというよう考え方は、まつたく大きな誤りだと思う。自分の行わんとする政策によつて、これに資金が幾らいるのだ、そうして初めて大蔵大臣との折衝が行われて行かなければならない。従つて私の行わんとするところは、幸い前通産大臣が大蔵大臣であるから、どのようにやつたらいいか会議をしておるのだというのならば話はわかると思う。その会議の上において新大臣の決意を説明するから、それまで待つてくれというなら一応納得できる。そうでなくして、ただ大蔵省との資金云々というようなことによつて日を置くということはけしからぬと思う。少くとも一国の大臣が、しかも日本産業界を今立て直さんとする大臣が、資金の額をきめてからなどということは、私は納得できない。ごく率直に、たとえば金融の面はどうする、貿易についてはこう考えておる。為替レートはこう考えておる。自分はそう思つておるが、今後大蔵大臣等と折衝してその実現を期したい。これでなければならないのではないか。ごく簡単ではないか。その点について大臣説明できないというならば、委員長のおつしやる通り、当分この委員会を延ばして行くのもやむを得ないでしよう。そうして今後提出されるところのすべての法案は、全部その順序を経て延ばして行きましよう。それで納得が行くならそうやつていただきたい。
  24. 福田一

    ○福田(一)委員 ただいまの審議状況を見ておりますと、私は若干注意をしてやつてもらわねばならぬ面もあるかと思いますし、しかもきよう委員会の初めての審議にあたりまして、政府の方針を十分明らかにさして行くという意味において、やはり議事をできる限り円満に進めて行くということについては、だれも異議はないと思いますから、委員長においては、このまま暫時休憩されまして、理事の間で十分相談をした上で審議を進められるようにとりはからいを願いたいと思います。
  25. 大西禎夫

    大西委員長 福田君の御意見ごもつともと存じますので、しばらく休憩をいたします。     午前十一時十六分休憩      ————◇—————     午前十一時三十三分開議
  26. 大西禎夫

    大西委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  まず大臣より通商産業政策の根本方針についてその所見を求めます。
  27. 岡野清豪

    岡野国務大臣 先ほどからいろいろ皆さんに御迷惑をかけたのは、私が初めてのことでございまして、至らぬ点もあつたかと思いますが、ただこれだけの性格だけは皆様方に今後のこともございますから、よく御承知おきを願いたいと思います。私はもともと銀行家出身でございまして、やはり一厘一毛がぴしつと合わないと、どうも結論が出ないのであります。そこで問題は、私は正直に必ず信念として、また信念が通るということを断定ができなければ、こういう公式の席上では、自分自身の抱負とか何とかいうことは申し上げられませんので、そういう点におきまして非常に躊躇したのでございますが、しかし私としましては、やはり昔実業界にいた関係がございますから、通産行政につきましても、相当研究したら、またいい知恵とか、経験の結果が出て来やしないか、こう思つてせつかく今勉強しておるわけであります。  そこで先ほども申し上げましたように、補給金の問題なんか、一番手取り早くて、またわれわれの考えなければならぬ日本輸出貿易を促進する上においては大事であつて、しかも効果がすぐ出て来るというようなものがあるものだから、その点だけを取上げますと、補給金は即座に実行したいという希望を持つておりますが、しかしまた一面考えてみますと、せつかく自由主義経済に立ちもどつて、そうして輸出業者からまた一般国民から非常に反感や、批評を受けましたところのあの官庁の統制というものにあともどりをしやしないかという心配が非常にあるものですから、そういうことは、なるほど輸出貿易を促進する即効薬であるけれども、全体の経済の運営方針として、また非常な欠陥を将来に生ずるというようなこともありますので、実は今断定がつきかねておるわけです。それにつきましても、むろんこれに対して折衷案とか、または妥協案とか、いろいろなことがございましようが、その辺のところを実は今考え中なので、就任早々で、その断定ができておりませんが、しかしそういうことをまず自分自身で信念をつくり、同時に皆様方の御批評をこうむりたい、こう考えております。しかし何を申しましても、もう今までこの輸出貿易が年々アンバランスになつてつて、そうしてそのアンバランスを埋めておるのが特需の問題であります。特需によつてやつと日本貿易のバランスが合つておるということは、これは正常ではない。これはたとい特需がずつと続く見込みがありましても、これを改正して行かなければならない。やはり特需は余分の景物、しかし正常貿易によつて日本輸出貿易のバランスが合うという方向に持つて行くのが筋である。しかるにもかかわらず、朝鮮休戦が成立するかもしれぬというようなうわさのために、特需が減るのではないかという見通しも出て来ぬとも限りませんが、また業界といたしましては、それが事実減るか減らぬかは別問題といたしましても、減るじやないかという心理的影響がやはり財界に影響するのであります。こういう点におきまして、私はこの際やはりできるだけ早く特需を当てにせぬ貿易政策を立てて行かなければならぬ、これが私の第一の希望でございます。同時にそのためにはどうすればいいかといいますと、先ほども皆様方からのお説のようコストの切下げをしなければならぬということになつて来て、コストの切下げをどうしてするかというようなことも問題になります。それからもう一つは、輸出貿易が今まで被占領下におきましては、盲貿易であつたから、この点におきましても、目を開いた貿易にして行きたい、こういうことが念願であります。このことにつきましては、いろいろのことがございましようが、でき得るだけ市場獲得のために各方面に調査団を出し、もしくは向うに常置の貿易に寄与するところの相談室というようなものを置いてやつて行きたい、こう考えております。  それからまた話はあとにもどりますが、石炭とか、鉄とかいうものをどうしたら合理化ができるかということで、先ほども申し上げましたよう補給金は別としましても、あるいはいろいろその業者の中において合理化し得る方法があるのではないかということもいろいろ研究しておりますが、これは補給金がなくても、ある程度まで合理化ができはせんかという見込みを持つておりますが、これもやはりまだ研究問題であります。  それからまたいろいろ御承知通りに、われわれがいくら安くていい物をつくりましても、今の世界情勢というものは、昔のように自由に、平和に貿易ができていたときには、安くていい物さえ売れば、必ず生産販路が拡張できたのでありますが、現在の情勢では安くていい物をつくつても、まだ貿易の振興にはならないと思うのです。と申しますことは、相手のあることでございますから、その相手方に対して通商協定をやるとか、貿易協定をやるとかいうことでやらなければならぬ。これは一にかかつて外交の力によるほかに方法はない。私はその点において外交交渉について極力努力して行つてもらわなければならぬ。これはむろん外務省がやることでございますが、しかしわれわれはわれわれ独自の立場でそういうようなことを考えて、そうして外交機関を通じて、通商航海条約とかなんとかいうようなことをやつてみたい、こう考えております。ガットへ早く入りたいというようなこともやはりその意味からでございます。それからまた宣伝機関なんかが今までいろいろありましたのですが、どうも宣伝が十分に行つてないから、この宣伝をいかにするかということもあります。それからまた一番大事なことは貿易商社の問題であります。これは先ほど山手さんからお話がありましたようですが、強力な資本を持ち、また外国に信用を得るところの商社をつくらなければならぬことが一つでございますが、しかしそれだからといつて、ほかのものをつぶしてしまつてそういうものにしたのでは、これは元も子もなくなるわけですから、ある程度の統合、合併はもちろんやりますけれども、しかしながらその商社を強力にして行くためには、いろいろ制度上の確立をしなければならぬ。それにつきましては、やはり輸出をするとかなんとかいうようなことをやりまして、価格変動のときにその損を埋め合せるために準備金制度をつくるとかいうこともやはり一つ方法だと思います。そういうことも考えてみたいと思いますが、とにかく外交交渉によつて販路を確保するということと、それから日本商品というものを向うによく理解認識させて、そうして買気を起させるということのために一つ施策をする。それからまた貿易をして行く人間そのものの資本力を強化し、同時に外国に信用を得るようなものにして行く一つ方策を講ずる。それからまた、もしも損害でもありましたならば保険制度にでもいたしまして、またその会社の準備金をうまくやつて行けるよう税法上の施策とかなんとかいうようなこともありましようが、いろいろの制度をつくつて行つて商社が少々の波には自分自身の仕事に影響を及ぼさない、こういうようなことの制度もつくつてみたい、こう考えております。そういうようなことをいろいろ総合して行つて一つ政策をまとめ上げたいと思つておりますけれども、しかしそれは私まだ就任早々でございまして、十分なる検討をつくしておりませんから、ただいま申し上げる程度はそのくらいのものでございます。
  28. 大西禎夫

    大西委員長 本日はこの程度にいたし、次回の委員会は散会後理事会を開き、理事会で決定をいたしたいと存じます。さよう御了承願います。本日はこれにて散会いたします。     午前十一時四十四分散会