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岡野国務大臣 先ほどからいろいろ皆さんに御迷惑をかけたのは、私が初めてのことでございまして、至らぬ点もあつたかと思いますが、ただこれだけの性格だけは皆様方に今後のこともございますから、よく御
承知おきを願いたいと思います。私はもともと
銀行家出身でございまして、やはり一厘一毛がぴしつと合わないと、どうも
結論が出ないのであります。そこで問題は、私は正直に必ず信念として、また信念が通るということを断定ができなければ、こういう公式の席上では、自分自身の抱負とか何とかいうことは申し上げられませんので、そういう点におきまして非常に躊躇したのでございますが、しかし私としましては、やはり昔実
業界にいた
関係がございますから、
通産行政につきましても、
相当研究したら、またいい知恵とか、経験の結果が出て来やしないか、こう思
つてせつかく今勉強しておるわけであります。
そこで先ほ
ども申し上げました
ように、
補給金の問題なんか、一番手取り早くて、またわれわれの
考えなければならぬ
日本の
輸出貿易を促進する上においては大事であ
つて、しかも
効果がすぐ出て来るという
ようなものがあるものだから、その点だけを取上げますと、
補給金は即座に実行したいという希望を持
つておりますが、しかしまた一面
考えてみますと、せつかく自由主義
経済に立ちもど
つて、そうして
輸出業者からまた
一般国民から非常に反感や、批評を受けましたところのあの官庁の統制というものにあともどりをしやしないかという心配が非常にあるものですから、そういうことは、なるほど
輸出貿易を促進する即効薬であるけれ
ども、全体の
経済の運営方針として、また非常な欠陥を将来に生ずるという
ようなこともありますので、実は今断定がつきかねておるわけです。それにつきましても、むろんこれに対して折衷案とか、または妥協案とか、いろいろなことがございまし
ようが、その辺のところを実は今
考え中なので、
就任早々で、その断定ができておりませんが、しかしそういうことをまず自分自身で信念をつくり、同時に皆様方の御批評をこうむりたい、こう
考えております。しかし何を申しましても、もう今までこの
輸出貿易が年々アンバランスにな
つてお
つて、そうしてそのアンバランスを埋めておるのが特需の問題であります。特需によ
つてやつと
日本の
貿易のバランスが合
つておるということは、これは正常ではない。これはたとい特需がずつと続く見込みがありましても、これを
改正して行かなければならない。やはり特需は余分の景物、しかし正常
貿易によ
つて日本の
輸出入
貿易のバランスが合うという
方向に持
つて行くのが筋である。しかるにもかかわらず、朝鮮休戦が成立するかもしれぬという
ようなうわさのために、特需が減るのではないかという見通しも出て来ぬとも限りませんが、また
業界といたしましては、それが事実減るか減らぬかは別問題といたしましても、減るじやないかという心理的影響がやはり財界に影響するのであります。こういう点におきまして、私はこの際やはりできるだけ早く特需を当てにせぬ
貿易政策を立てて行かなければならぬ、これが私の第一の希望でございます。同時にそのためにはどうすればいいかといいますと、先ほ
ども皆様方からのお説の
ように
コストの切下げをしなければならぬということにな
つて来て、
コストの切下げをどうしてするかという
ようなことも問題になります。それからもう
一つは、
輸出貿易が今まで被占領下におきましては、盲
貿易であつたから、この点におきましても、目を開いた
貿易にして行きたい、こういうことが念願であります。このことにつきましては、いろいろのことがございまし
ようが、でき得るだけ市場獲得のために各
方面に調査団を出し、もしくは向うに常置の
貿易に寄与するところの相談室という
ようなものを置いてや
つて行きたい、こう
考えております。
それからまた話はあとにもどりますが、
石炭とか、鉄とかいうものをどうしたら
合理化ができるかということで、先ほ
ども申し上げました
ような
補給金は別としましても、あるいはいろいろその業者の中において
合理化し得る
方法があるのではないかということもいろいろ
研究しておりますが、これは
補給金がなくても、ある程度まで
合理化ができはせんかという見込みを持
つておりますが、これもやはりまだ
研究問題であります。
それからまたいろいろ御
承知の
通りに、われわれがいくら安くていい物をつくりましても、今の世界情勢というものは、昔の
ように自由に、平和に
貿易ができていたときには、安くていい物さえ売れば、必ず生産販路が
拡張できたのでありますが、現在の情勢では安くていい物をつく
つても、まだ
貿易の振興にはならないと思うのです。と申しますことは、相手のあることでございますから、その相手方に対して通商協定をやるとか、
貿易協定をやるとかいうことでやらなければならぬ。これは一にかか
つて外交の力によるほかに
方法はない。私はその点において外交交渉について極力
努力して
行つてもらわなければならぬ。これはむろん外務省がやることでございますが、しかしわれわれはわれわれ独自の立場でそういう
ようなことを
考えて、そうして外交機関を通じて、通商航海条約とかなんとかいう
ようなことをや
つてみたい、こう
考えております。ガットへ早く入りたいという
ようなこともやはりその意味からでございます。それからまた宣伝機関なんかが今までいろいろありましたのですが、どうも宣伝が十分に
行つてないから、この宣伝をいかにするかということもあります。それからまた一番大事なことは
貿易商社の問題であります。これは先ほど
山手さんから
お話がありました
ようですが、強力な資本を持ち、また外国に信用を得るところの
商社をつくらなければならぬことが
一つでございますが、しかしそれだからとい
つて、ほかのものをつぶしてしま
つてそういうものにしたのでは、これは元も子もなくなるわけですから、ある程度の統合、
合併はもちろんやりますけれ
ども、しかしながらその
商社を強力にして行くためには、いろいろ
制度上の確立をしなければならぬ。それにつきましては、やはり
輸出をするとかなんとかいう
ようなことをやりまして、
価格変動のときにその損を埋め合せるために準備金
制度をつくるとかいうこともやはり
一つの
方法だと思います。そういうことも
考えてみたいと思いますが、とにかく外交交渉によ
つて販路を確保するということと、それから
日本の
商品というものを向うによく理解認識させて、そうして買気を起させるということのために
一つの
施策をする。それからまた
貿易をして行く人間そのものの資本力を強化し、同時に外国に信用を得る
ようなものにして行く
一つの
方策を講ずる。それからまた、もしも損害でもありましたならば
保険制度にでもいたしまして、またその
会社の準備金をうまくや
つて行ける
ように
税法上の
施策とかなんとかいう
ようなこともありまし
ようが、いろいろの
制度をつく
つて行つて、
商社が少々の波には自分自身の仕事に影響を及ぼさない、こういう
ようなことの
制度もつく
つてみたい、こう
考えております。そういう
ようなことをいろいろ総合して
行つて一つの
政策をまとめ上げたいと思
つておりますけれ
ども、しかしそれは私まだ
就任早々でございまして、十分なる検討をつくしておりませんから、ただいま申し上げる程度はそのくらいのものでございます。