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石井説明員 先般九月の十二日に鹿児島を立ちまして、中央から
調査団員
関係各省二十二名、鹿児島県及び鹿児島国警本部
関係官十二名、合計三十四名が約二週間ないし三週間にわたりまして現地の
調査をいたし、それに基きまして、復帰いたしまする
奄美群島の引継ぎ
事務の
措置を検討いたしておる次第でございます。余裕がございませんでしたので、書面では非常に簡単なものしか御配付いたしておりませんが、現地の概略の状況と、引継ぎの若干の問題点につきまして御
報告申し上げたいと思います。
御承知のように
昭和二十一年一月二十九日から
奄美群島が沖繩群島とともに行政分離になりまして、現地の
事情はいろいろ行政組織等にも変革を経て来ておりまするが、現在におきまして行政機構はお手元に差上げておりまするように、琉球
政府の司法
関係の機関、行政
関係の機関が
奄美大島にあるのでございます。この職員が概略でございますが、一般の司法行政に携わ
つておりまするのが約千五、六百名
——若干
報告の数字が食い違
つておりまするので、今正確な数字を調べておりまするが、千五百数十名でございまして、教職員
関係が別に千七百五名程度おります。これらの機関は、本土の各種司法
行政機関と類似しておるのもございますが、本土の機構と相当かわ
つておるものがあるのでありまして、これに関しまして、まずこれらの機構並びにこれらの職員を、復帰と同時に本土内に引継がなければなりませんので、これらのそれぞれの機構の内容、実態、またどういうように職員を引継ぐべきかということを、それぞれ
関係各省と協力して、
調査して参
つております。これらのうち、裁判所
関係は当然裁判所の機構となるでありましようし、また法務局の検察庁あるいは登記
関係の
事務あるいは刑務所等は法務省の所管になり、また税務
関係、関税等は
大蔵省とか、あるいは工務交通局の
関係にな
つております郵政、測候所
関係等は、それぞれの中央官庁の出先機関に引継ぐ。そのほか目下いろいろ検討しておりますが、それぞれ各省の所管別に、これらの機構をどう引継ぐかということを、現地でもいろいろ
調査し
研究して参りましたが、今日もなお
研究をしております。
次に現地におきましては、現在琉球銀行の手によりまして、一種の軍票でありますが、B円というものが流通いたしております。日本円の三円が琉球のB円の一円にな
つておるわけでございますが、このB円の兌換、交換を、復帰と同時にや
つて行かなければなりません。これが私
どもが
調査したときにおきましては、その金額等がまだ十分はつきりしておりませんが、その後の
報告等を聞いておりますと、現在概略二億数千万B円が流通しておるように判断しております。これらの通貨の兌換あるいは食糧配給の切りかえ等の
措置をいたさなければなりませんので、そういうことについて
大蔵省と農林省とが、主としてこれの
調査をいたして参
つておる次第であります。
それから、さしあたり行政機構を引継ぎ、向うの
予算の大体の目標の程度は、必ず引継いて行かなければならぬであろうと思いますので、現在の
予算の概略も
調査して参
つておりますが、向うで言
つております一九五四年度の
予算——本年の七月から開始されまして翌年の六月までに至る
予算が、
奄美大島に予定されておるものは、総額二億八千万B円程度にな
つております。現在のところまだ復帰の日がきま
つておりませんので、琉球
政府といたしましては、一応二億八千万B円程度の年間
予算を計上いたしまして、そのうち復帰までの間の
予算は
奄美大島に流しまして、おそらく一億数千万B円残ると予想いたしておるようでありますが、それは他の
方面に別途計画をして使用するというような
考えの模様であります。一応この現在の機構、職員、それから継続事業等を引継ぐためには、その二億八千万B円を基礎にして、まず本年度の、来年三月までの
予算のわくを
考えて行かなければならぬ。しかしながらその職員の給与ベースといいましても、三千四、五百B円でございまして、本土の給与ベースよりも若干低くな
つております。そういう点は復帰とともに本土並に
考えなくちやならないと思うのでありまして、その基本
予算についても、おそらくべースのふくらみということが
考えられなければならぬと思います。
それから
生活保護ですが、現地におきましては、保護法というような本土の
法律に類似するようなものはございませんが、日本の旧来の救護法等を、そのままということでなしに、若干それに類似したものを行政
措置としてや
つておるのでございます。それで
奄美大島関係で、被保護者というものが約七千七百人ぐらいあるのでありまして、それの支給額は最近若干上りまして、一人当り月七十B円ということにな
つております。七十B円といいますと、日本円にしまして月に二百十円、こういうような低い金額であります。これらの被保護者、並びにそのほかにもまだ日本の
生活の最低基準から
考えますと、相当数保護を与えるべき人数があるようでございますが、これらの給与、支給のべースも本土並に上げて行かなくちやならぬし、特に八年間のブランクがありまして、
生活は逼迫いたしておりますので、
生活保護の面におきましては、現在琉球
政府が組んでおりますものよりも、相当金額をさしあたり計上いたさなければならぬのではなかろうかというように
考えております。そういう基礎資料を各分野におきまして検討いたしましたとともに、なおその復帰と同時に、日本の法令が施行されて行かなければならぬのであります。ところが、現地は行政分離の際におきまして効力のあ
つた日本の
法律は、別に軍令その他によ
つて変更せざる限り、そのまま効力を有するものということにな
つておりまして、
民法、戸籍法その他日本の旧法が相当適用されております。それから
奄美大島には、奄美支庁が廃止されましたあとに、臨時北部、南西諸島政庁というものができ、
奄美群島政府というものができまして、そういう時代に施行されました法令というのが若干あり、昨年の四月に琉球
政府が発足いたしまして、南西諸島全般に施行されております法令というものがありまして、現地の
事情は非常に複雑でございます。しかしながら現地はできるだけすみやかに日本の法令の施行が行われるのを希望いたしておるわけでありますが、ただ日本の法令のあらゆるものをすぐに施行いたしますと、現地において非常に実情にそぐわない面もあるものがあるようでございます。また法令の施行について検討と申しますか、そういうものの必要のあるものもあるようでございます。一応法制局から派遣されました参事官を中心に、現地におきまして法令の実情並びに
措置につきまして検討をいたして参
つたのでございます。
最後に、
奄美大島は八年間の空白があるために、経済的に非常に疲弊いたしております。一例をあげますれば、大島つむぎのごときは、戦前におきましては
奄美大島の輸出金額の六〇%程度の額を占めておりまして、これによ
つて奄美大島の経済が潤
つていたのでありますが、それが現在は戦前の一〇%程度に落ちている。その他黒糖にいたしましても、さつまいもあるいは水産物にいたしましても、産額が非常に落ちております。ただ産額の目立
つてふえておりますものに木材がございます。これは琉球の建設、あるいはまた朝鮮
方面にも相当流れたようでございますが、木材におきましては、戦前水準を若干上まわ
つておる。これが結局
奄美大島の森林を相当濫伐したと言えば言えるというようなことを示しておるわけであります。そういう点から
考えまして、また道路、港湾等非常に不便であり、悪いのでありますから、どうしても復興計画というものを立てなければならぬ。これは特に現地の方の要望も非常に強く、ことに最近行政復帰のダレス声明以前に、ますます
奄美大島の経済が疲弊することを
考えまして、琉球
政府に対しまして
奄美群島復興三箇年計画というものを立てておるのであります。これは学校その他教育的なもの、あるいは厚生的なものを除きました経済的な部分、あるいは土木、港湾の部分で、日本円にしまして約四十億くらいの金額で、三箇年計画を琉球
政府に
要求いたしてお
つたのであります。この三箇年計画の内容と、それからそれと並行してつくりました教育施設の復興その他各般の復興計画の現在向うにおいて立てられております計画の内容を聞いて参
つたようなわけでございます。それを一応土台にいたしまして、鹿児島県でも若干の復興計画を基礎にした計画を、現在一応つく
つておるようでございます。
これらの現地の各般の
事情はこまかく御
説明すると非常に長くなりますけけ
ども、要約いたしますれば現地の実情が非常に疲弊しておる、そうしてまた行政機構もいろいろ複雑のようでございますが簡素化々々々、また人員の削減ということで、人員も逐次非常に少くな
つて来ておる、どうしてもこれらの行政機構をさしあたり国または県で引継ぎまして、この行政機構の整備充実をはか
つて行き、それから各種の法令につきましてできるだけすみやかに、しかも実情に即して混乱のないように実施して行く、それからさしあたり緊要な学校の復旧あるいは
生活保護という面におきましては、本年度
予算におきましてもできるだけの
予算を組み、なおこの復興計画につきましては、全般にわたりましてすみやかに総合的な年次計画でも立てて、
奄美大島の復興、ひいては将来の自立経済の立ち得るように、
政府も強力に指導し、また援助をして行かなければならぬのではなかろうか、こういうところが私
ども調査団の持
つて帰りました
調査の結果でございます。
一応概略でござしましたが御
報告申し上げまして、なお御
質問がございますれば、御回答申し上げることにいたしたいと思います。