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青砥参考人 実は私には、主として
勤労所得税の問題について話せということなので、そちらの
準備をして参りました。
勤労所得税につきましては、
国税の中における
所得税の
推移、さらに
所得税の間における
勤労所得税の
推移、それから
勤労所得税の、たとえば五十万円あるいは百万円とい
つた各
段級と申しますか、
階級相互間の
関連性、こうい
つた順序で申し上げまして、
最後に
税制改正の全般の問題について触れさせていただきたい、こういうように思うのであります。
わが国の
国税におきます
所得税の
推移を調べてみますと、
昭和九年から十一年の大体
戦争前の最もノーマルな年における
国税における
所得税の
構成率は、
勤労所得税で大体三%ないし四%、
事業所得税において七%ないし八%ということにな
つております。それから終戦後の
昭和二十二年にな
つて参りますと、
勤労所得税が一五%、
事業所得税が三〇%、さらに二十四年の
シヤウプ勧告による
改正前におきましては、
勤労所得税が二二%、
事業所得税が同じく二二%でありました。それから本年度の推定によりますと、
勤労所得税で二二%、
事業所得税で九%、正確に申しますと八・八%ということにな
つて参つておるわけであります。従いまして
昭和九年ないし十一年には、
国税における
所得税全体の
構成比率は一一%でありましたものが、
昭和十四年には一七%、二十二年には四五%、二十八年には三一%という
比率にな
つて参つておりますことは、いかにほかの税に比較して
所得税が
日本の税の上でウエートを増して来てお
つたか。これを裏返していいますならば、いかに
所得税だけが他の税に比較して重く徴収されてお
つたかわかるということになります。この
所得税の中でも
勤労所得税は、先ほど申し上げましたように、九年から十一年が大体三%ないし四%とな
つておりますが、それに比較いたしますと、現在の二十八年においては、
負担率が少くとも五、六倍にな
つておる。
税額から申しますとさらにずつとふえるわけでありますが、
負担率と申しますか、
構成比率から行きますと、五、六倍にふえておるのであります。
事業所得の方は、この九年ないし十一年が大体七、八%でありまして、現在九%でありますから、大体
戦争前と同じ程度であるということが言えろのではないか。これに関連しまして、先ほど
岡松さんから、そうい
つた個人の
事業者が順次
中小法人にかわりつつあるという点を指摘されたわけでありますが、それは、主として
法人になりますと
経費というものが認められるわけでありますが、
所得税につきましては、
経費というものはほとんど認められていない。特に
そういつた差がございますので、全体の
バランスから見ますと、
法人に切りかえた方が有利である、こういうことにな
つて切りかえたわけでありますが、その
事業所得者と
勤労所得者を比較いたしますと、先ほど申し上げましたような
構成比率から見ましても、非常な相違が現在にな
つて現われておるということが申し上げられると思います。
さらに
所得金額の
推移を調べて参りますと、
昭和二十四年には、これは
シヤウプ勧告前でありますが、
国民所得の総額が二兆七千億であります。これに対しまして、
勤務所得は一兆一千三十五億であります。
事業所得が八千七百六十一億、この
勤労所得と
事業所得の
比率を見ますと、七九%であります。それから
改正後の
昭和二十五年は、
国民所得が三兆四千八百八十九億、
勤労所得が一兆一千億であります。これに対しまして、
事業所得は急に減りまして、六千六百六十六億、
比率にいたしますと六〇%、それから本二十八年は、
国民所得のとり方はいろいろありますが、私のとりましたのによりますと五兆八千二百億、これに対しまして、
勤労所得の方が一兆八千二百三十四億、
事業所得は七千二百六十億、
比率にいたしまして三九%、こういうことにな
つて参つております。すなわち、
シヤウプ勧告によりまして
改正する以前までは、
事業所得者と
勤労所得者の
所得金額の把握されました率は、
勤労所得を一〇〇といたしますと、
事業所得は七九であ
つたものが、現在においてはその半分以下の三九に下
つておるということであります。
さらにその
所得税を納めております
納税人員の
推移を同じような
角度から調べてみますと、
昭和二十四年は、
勤労所得を納めております
人員が一千再六十万人、
事業所得の方が七百五十一万人、その
パーセンテージは六七%であります。二十五年は、
朝鮮事変の
始まつた年でありますが、
勤労所得が九百九十三万人、
事業所得が四百三十四万人、
パーセンテージにいたしまして四三・七%、現在の二十八年におきましては、
勤労所得が八百三十万人、
事業所得の方が二百四十万人、
比率にしまして二九%、これは、
基礎控除その他
社会保険の
控除とか、そうい
つたものの拡大あるいは新しい設定によりまして、漸次
納税者の人数が
減つて参つたわけでありますが、現在の
勤労所得あるいは
事業所得の各段階と申しますか、クラスと比べますと、大体同じような、見合
つたような
比率にな
つているわけであります。この
納税者の減る数は、大体同じことが言えるじやないかというふうにも考えられるにもかかわらず、しかもこの間に
朝鮮事変が起
つておりまして、
事業所得の方は、
給与所得と比べますと相当潤
つているじやないか、こういうふうに考えられるにもかかわらず、むしろ
納税者の数は減
つておる。二十四年の六七%に対して現在は二九%とな
つて、もう半分以下に減
つておる、こういうふうな事情にな
つているわけであります。ではどこからそうい
つた原因が生れて来るかとというふうに考えるわけでありますが、それは
あとで申し上げることといたしまして、もう
一つ、
国民所得から見た
租税負担と実際に
税金を
払つた実績とを比較して見たらどういうふうになるか。
昭和二十四年の
勤労所得は、これは別の
角度から見たわけでありますが、一兆二千五百四十億、これに対します実際の
所得税の
税額は千三百四十四億、この
負担率を求めますと一〇・七二%、こういうことにな
つております。これに対して
個人所得の方はどうであるかと申しますと、一兆二千二十四億、これに先ほどの
勤労所得の
負担率の一〇・七二%をかけますと、千二百八十九億、こういうことになります。この際に一体
事業所得の方では幾ら税を納めてお
つたかと申しますと、先ほどの千二百八十九億よりもさらに多い千五百八十四億、つまり
勤労所得の
比率よりも二百九十五億だけ
税金をよけい納めておる、こういう形にな
つております。ところがそれが
改正されまして、二十五年になりますと、むしろこれが逆の現象になりまして、
勤労所得の
所得顔が一兆五千六百八十三億、それに対しまして
所得の
税額は千二百四十三億、
比率にいたしまして七・九三%、
個人所得の方は一兆四千九百四十九億、これに先ほどの
比率の七・九三%をかけたものが一千百八十五億、これを
勤労所得並にしますと一千百八十五億の
税額が少くともなければならなか
つたものが、これに対して実際の税は幾ら納ま
つておるかと申しますと、八百六十三億納ま
つておりまして、
勤労所得の
比率に比べると三百二十二億少い、こういうことにな
つております。しからば現在はどういうふうであるかと申しますと、
勤労所得の
所得額は二兆八千八百四十億、これに対しまして
所得税は千六百八十億、
比率にいたしまして五・八二%、
個人所得の方は
所得額が二兆三千二百八十億、これに先ほどの
比率の五・八二%をかけますと千三百五十四億になります。
勤労所得並に徴税すれば千三百五十四億なければならない。それが実際の税としては七百五十八億しか納
つていない、こういうことになりまして、五百九十六億だけ
勤務所得と比べても少い、こういう数字にな
つておるわけであります。それからもう
一つ角度をかえまして、
勤労所得者とその他の
事業所得者との税を納めた額の
比率でありますが、これがどういうふうにな
つているか調べてみますと、
昭和二十三年は、
勤労所得が一〇%、営業
所得が二七%、農業
所得が一五%。二十四年が、
勤労所得が一二%、営業
所得が二七%、農業
所得一五%。
改正後の二十五年が、
勤労所得が二%、営業
所得が一九%、農業
所得が七%。二十六年が、
勤労所得が一一%、営業
所得が一七%、農業
所得が六%。それから二十七年が、
勤労所得が一〇%、営業
所得が一五%、農業
所得が五%。現在が、
勤労所得が九%、営業
所得が一五%、農業
所得が四%、こういうことにな
つておりまして、農業
所得並びに営業
所得を加えました一般申告
所得と
勤労所得の
負担率は、大体申告
所得者の方が、
改正前二十四年前は非常に重い
負担にな
つておるわけであります。
改正後漸次それらが低くなりまして、現在においては、
負担率だけがほぼ同じということにな
つております。それからもう
一つ、
事業所得者と
勤労所得者の
負担率だけから見ると、
事業所得者の方が重い、こういう数字が出ておりますが、年
所得五十万円といたしまして、この
勤労所得者と
事業所得者の
比率を見ますと、
税金の
負担率——納めた税と収入との
比率でありますが、二十四年が
勤労所得が四一%、
事業所得が四六%。二十五年が
勤労所得が三四%、
事業所得が三七%。二十六年が
勤労所得が二五%、
事業所得が二八%。二十七年が
勤労所得が二〇%、
事業所得が二四%。二十八年が
勤労所得が一七%、
事業所得が二二%。ほかの百万円の場合も三十万円の場合も同じでありますが、大体
事業所得の方が
比率の点から多少高くな
つておる、こういう統計にな
つております。以上申し上げました統計から見まして、
国税の中における
構成比率は、
勤労所得が非常に出て来て、一般の申告
所得の方は従前とほとんどかわりない。しかし納めた税とそれから把握された
所得との
比率は、
事業所得者の方が多い、こういうような
関係にな
つております。これは結局どこから来るかということを考えてみますと、
勤労所得においては、源泉徴収で
金額月給を払う際に給与の支給者たる
会社がこれを徴収しまして、徴収義務を課されて、その月のものは翌月の十日までに必ず
税務署に納めなければ、日歩四銭の延帯金をとる。一日遅れても四銭、最近は特に厳格にな
つておるわけであります。
さらにこまかいことを申し上げますならば、定期券の超過分、たとえば現在は
会社に通勤いたします際に、毎月五百円までは定期券に
税金を課さない、
税金の対象にしない、五百円を超過する分については
税金を課する、こういうことにな
つております。毎月たとえば九百円の定期代がかかる、こうい
つた場合に、四百円はその本人が
負担しなければならない。これは
会社が払いましても、四百円に対する
税金は本人が
負担する、こういうことになるわけであります。ですから本人から申しますと、結局五百円以内の近距離から通
つておる者よりも、それに対する
税額がかりに二百円といたしますと、二百円相当額だけは余分に払わなければならぬ。何も自分ですき好んで遠くから通
つているわけではありません。戦後の社会的な事情によ
つて、みずから求めざるにかかわらず、遠距離から疲労を感じながら毎月通
つているにもかかわらず、しかも税の面では余分にとられる、こういうことにな
つております。
会社としては、その二百円の税相当額もなおこれを給与に織り込んで払
つているわけであります。その他社宅料のそうい
つた超過分とか、たとえば居残りに対しましても、労働協約に基きまして一定の追加賃金を払うことにな
つておりますが、これに対してもやはり
税金を課する、こういうことにな
つております。しかもそれらが事こまかく帳簿に記入されておりまして、半期に一回は必ず
税務署から
調査を受けるということにな
つております。脚に
法人におきましては、会計上の処理もございまして、正確を期しておるわけで、帳簿を広げますと、一目瞭然、支給したままの全額がわかる、こういう事情にな
つておるわけであります。これに対しまして申告
所得の方の
事業所得の方は、青色申告をしておりますれば、一応帳簿を備えることにな
つておりますが、その帳簿につきましても、先ほど申し上げました
法人におきましても、大きい
法人と小さい
法人とにおきましては、そうい
つた正確性の点においても外少相違があると同じように、
個人の
事業者の青色申告におきましても、やはり同じようなことが言えるようであります。さらに当局においては、青色申告を奨励されて、青色申告に伴ういろいろな恩典与え宣伝されておるにかかわらず、現在なお青色申告はそれほど多くない。これは青色申告をすると帳簿を備えつけなければならぬ、証票も備えつけなければならぬ、結局比較的たくさんな
所得を把握されるので不利だ、こういうことで青色申告をしない、そういう事実が相当あるのではないか。それからさらにこれらの
税金は、
あとで納めるわけでありますから、
勤労所得のように源泉徴収をしないわけであります。いかに
利益が上り、
所得が上りましても、
税金相当額が手元に残りまして、これが資金として運転されておる。商店でありますればそれでストックを買う。料理屋でありますならば、それで新しい建築をする。全額それに充当するわけでもないでしようが、銀行から借入れもし、また自分のそうい
つた税金に相当するものを建築資金あるいは商品の買入れ代金として当充する、こういうことになりまして、
税務署で査定をされても、あるいは更正決定をする際にも、実際現金はないのだ、百万円の
所得がありまして申告して、それに対してさらに二百万円という査定をされても、実際その納める資金がないのだというふうなことで、相当大きい
法人あたりの
勤労所得者のそうい
つた所得の把握とは、相当開きがあるのではないかとそういうなことが考えられるわけであります。そこで結局これは形と申しますか、一応税法の上では、むしろ
勤労所得者に対して幾分か
税率の恩典を与えられておるが、もとの
所得の把握そのものが
違つて来ておる。
違つて来ておると申しますか、
事業所得者については十分把握されていない。これは一面から申しますと、あるいは徴税担当官の
調査能力がないからこういうことになるのじやないか、こういうことを言われるかもわかりませんが、しかしおそらくそう簡単に把握ができないのじやないか。従いまして、むしろ同じ
所得税を納める
納税者の
立場から考えますと、
事業所得者よりも源泉徴収を受けるところの
勤労所得者が、非常に重い
負担をしているということになるのでありまして、これを是正するためには、いつそ
勤労所得者の
税金を、現在の
個人所得と同じように申告
所得に切りかえたらどうか。申告
所得に切りかえまして、そうして現在は、申告
所得をする場合に、
会社が申告書に支給の証明書をつけることにな
つております。これは
国税、
地方税ともみな同じですが、その証明書の発行義務を免除する。つまり徴税の方法におきましても、
勤労所得もまた
個人の
事業所得も同じような徴収方法にする、同じような申告方法にする、
立場を同じようにするというふうなことをすれば、両者間が公平になるのじやないかと思うわけであります。実際問題としては、こういうことをすると
勤労所得が非常に減
つて来る。現在の三分の一くらいになりはしないか。つまり、
個人事業税と同じように相当減
つて来るのではないか。しかし、りくつを申し上げますが、租税は
負担の公平をはかるべきものであるから、公平にやる、こういうことから行きますと、三分の一にな
つてもやらなけれでいかぬということになるわけであります。しかしそれが困難とすれば、何か他の方法によ
つてそれを是正しなければならないのじやないか。他の方法として考えられますのは、一応源泉徴収をや
つておりますから、源泉徴収
控除というふうな名目をつけまして、現在の勤労
控除と同じように三割程度の免税をする。それは三割が適当か五割が適当かわかりませんが、幾らかそこにそうい
つた控除の方法を認める、こういうようなことも考えられるわけであります。
そういうことが一応考えられるわけでありますが、しかしいささかとつぴなきらいがありまして、結局国会あたりでおきめいただく一番妥当な線といたしましては、現在の勤労
控除の問題でありますが、これが
改正前は二五%にな
つてお
つたわけであります。ところが二十五年の
改正後には一五%になりまして、そして最高限度も、
改正前は三万七千五百円であ
つたものが三万円に
なつた。
基礎控除はその当時一万五千円でありましたが、現在四倍の六万円にな
つております。ところが勤労
控除の方はどうな
つておるかと申しますと、三万七千五百円が現在四万五千円、今年になりましてやつと四万五千円、昨年までは三万円までのすえ置き、こういうふうな状況にな
つております。ですからこれも、大体
基礎控除と同じような
比率で、四倍程度の拡大をしなければ、先ほど申し上げました
勤労所得者と
事業所得者の
バランスがとれないじやないか。大体四倍といたしますと、三万七千五百円の四倍でありますから、十五万円くらいになるわけであります。
比率は、
改正前が二五%でありますから、一挙に二五%まで持
つて行くことは困難でありましようから、大体二〇%くらいまで持
つて行く。
控除の最高限度を大体十五万円を目安にして、十五万円が困難なら、それに近いところまで持
つて行
つていただけば、ある程度の緩和がとれるのではないか。それでも十分とは申せませんが、その両者間の緩和がとれるのではないか、こういうふうに考えております。
今まで申しましたのは、大体
所得税の中の
勤労所得と
事業所得の相互の関連について申し上げたのでありますが、今度は
勤労所得自体の相互間の関連と申しますか、年収三十万プラスとか五十万プラス、こういうふうな間の
負担関係はどういうふうにな
つておるか、こういうことを
最後に申し上げたいと思います。これは現在五十万円までの
比率が、大体二〇%から四五%にな
つております。この間が必要以上にこまかくな
つております。もちろんインフレの進行以前におきましては、こうい
つた段階において、こうい
つた差等をつけることが必要であ
つたわけでありますが、物価もその当時と比べると相当上昇しておりますし、
国民所得もふえて参
つておりますので、この段階を相当広げる必要はないか。今回の
改正案によりますと、幾分それは認めておりますが、大体百万円程度くらいまでに四五%を引き延ばしていただいた方がいいじやないか。現在の段階で申しますと、大体
会社の課長の上級穴りあるいは部長級と、
会社の常務、社長とほとんど同じ
比率が適用されている、こういうふうなことにな
つております。多少その間を広げておく必要があるのではないか、こういうふうに考えます。
以上
勤労所得について考えられますことは、そういうふうに
勤労所得は、他の
所得と比べまして非常に
税金の
負担も高い。特に自由業者と比べますとその
負担の
金額も数倍にな
つている。こういうことにな
つて参つておりますが、現在の
制度では、
会社が徴収して
会社が
税務署に納める、こういうことにな
つておりますので、結局労働者といたしましては、その税を引かれた手取りを支給されることになるわけでありまして、賃金の交渉その他におきましても、
税金が幾らかか
つたということは無関心である。結局手取りということに非常な関心を持
つておるわけであります。結局これがベース・アツプの対象その他におきましては、手取りが常に問題になるわけであります。従
つて税の
負担が重いということは、結局
会社の原価が高くなる、こういう問題に関連を持
つて来るわけであります。
勤労所得税の
負担率が、従来低いものであ
つたものがかりに一割に
なつた。現在一割でありますが、そういう場合に、どういうふうに原価の面の
構成比率が出るかと申しますと、原料でかりに原価が一割ふえますと、最終の製品に参ります場合には、大体四、中割
構成比率がふえて来る。
従つて所得税の問題につきましても、
所得税が非常に高い場合には、結局それが原価の大きい
部分を占めて来る、こういうことにな
つておるわけであります。
従つて最近輸出振興等の問題が、貿易収支じりの点から問題にな
つているわけでありますが、
わが国の物価は国際物価に比べて非常に高い、高いがゆえに売れない、こういうことがいわれておりますが、この高いのは、あえて
所得税だけから来ておるわけではありませんが、これらが
影響する面が相当あるのじやないか、こういう面から考えましても、やはり公正な
所得税と申しますか、ある程度
勤労所得税を
軽減する方向に持
つて行かなければならないのじやないか、こういうふうなことが考えられるわけであります。
所得税のうちで
勤労所得税がいかに重いか、こういうことについて、実は私は十分な余裕がないものですから、まだ調べてはおりませんが、統計をとりますのに一番参考になりますのは、
市町村民税を調べてみると一番いいんじやないかと考えております。特に都会の東京あたりの近接地になります、たとえばいろいろな職業の人が住ま
つておりますところの武蔵野市とか、あるいは浦和市とか、こうい
つたところの
市町村民税の
納税者を職業別に分類いたしまして、戦前と戦後、あるいは
改正前と現在とを比較して見る。従いまして、一人当りの税の
負担額を調べてみますと、そこになお
勤労所得者の税の
負担が重くな
つて来ておるということが一番端的にわかるのじやないか、こういうふうに思うわけであります。
時間も大分たちましたので、
勤労所得税はその程度にいたしまして、一般の今回の
税制改正の問題につきまして、前国会におきまして、輸出振興につきまして、
租税特別措置法の一部
改正案が通過いたしましたことはわれわれは非常に感謝いたしておるわけであります。なお西独あたりと比べますと、同じ境遇にあるにもかかわらず、なお相当な開きがあるわけであります。一挙にそれと同じような法律がつくれない、こういうような特殊の事情もございましようが、なお重ねて強化をしていただくようにお願いしたいと思います。
それから
法人税につきましては、先ほど
岡松さんからお話がありましたが、三五%が一挙に四二%にはね上
つたのでありますが、一ぺんにこれを元へもどすということも困難ではございましようが、ひとつできるならばある程度引下げていただきたい。それから
法人税につきましては、超過
所得税の問題でありますが、これはやはり時期早尚ではないか。ただ単純に一般的に
比率を下げていただきたい、こういうわけであります。
それから
価格変動準備金でありますが、これも設定していただきましたわけでありますが、これは毎々問題になりますように、
利益の出るときに積み立てて、出ないときに引きおろして、
利益捻出の平均化をはかろう、こういうことがねらいでありますが、でき上
つたものを見ますと、逆にな
つておるわけであります。
利益の少いときに積み立てて、
利益が多くて、これは少し隠そうかというふうな
——隠すと言いましても、税の面で隠すのじやなくて、公表
利益として隠す場合があるわけでありますが、そうい
つた場合に出て来て、むしろ処置に困る。逆なことにな
つて来ておりますので、これをひとつお考えいただきたい、こういうふうに考えます。
それから
地方税の点におきましては、
固定資産税のうちに
償却資産税がシヤウプさんの
勧告によ
つて新しく生れたわけでありますが、これはどうも
日本の実情にはそぐわない、
アメリカ式の税である、こういうふうに考えますので、これもひとつ御再考いただきたいと思います。
時間の
関係もございまして十分申し上げられませんが、一応これで終ります。