○金塚
参考人 私はただいま御
紹介にあずかりました金塚孝でございます。私は現在茨城県の下館町に本社を有しております茨城商工
金融株式会社の社長であります。さらに茨城県株主相互
協会の
理事をしておりまして、
企業合同
委員長をいたしておりますほかに、酒造業その他各会社にも
関係いたしております。本日の
委員会に
参考人として
千葉委員長より
出席を求められたのでありますが、実は私昨日上京いたしまして、
国会において
大蔵委員会が開催される、議題として
金融の問題が審議される、さらにこれに関連して株主相互の問題も審議されるということを聞き及んだのでありまして、その模様を拝聴いたしたいというので
国会に参つたのでありますが、たまたましばらくぶりで
千葉委員長にお目にかかりまして、茨城県の株主相互の現状をちよつぴり申し上げましたところ、
委員長から、きようの
委員会に
出席して、茨城県の株主相互の実態を率直に述べて
参考に供していただきたいというような希望でありました。私はこの会社も約三箇月以前にお引受したわけでございまして、まことにしろうとでございますので、皆さん
専門家の
参考になるかどうかは疑問でございますが、ただいまより茨城県の株主相互の実態を率直に申し上げてみたいと存じます。
現在茨城県には、茨城県に本社を有する株主
相互金融会社と申すものが二十八ございます。さらに
東京、神奈川等に本社を有しまして、茨城県に支所を持
つております会社が四十ばかりあります。この一つの会社が、茨城県に現在御承知の
通り水戸、日立、土浦、古河の四市がございます。さらに小
都会な
どもございますが、ここに幾つものものを置いておりますから、茨城県ではもう山間の山村地帯にまで、現在株主相互会社の出張所が氾濫するというような状況にあるわけでございます。私の現在住んでおります所は土浦市でございますが、土浦市は人口六万五千ございますが、ここにも東邦殖産だとか、富士勧業だとかいうようなものの出先店や、あるいは茨城県内に営業するものなどは軒を並べておるという状況でございまして、土浦だけにも五十七あるというようなことでございます。そうしてその加入者は茨城県だけで約十万人あります。その
資金量も約十億と私たちは勘定しておるのでございます。現在茨城県民は御承知の
通り約二百万でございますから、約二十人に一人の
割合で株主相互に投資しておるという勘定になるわけでございます。株主相互会社の興亡は、まさにこういう状態でありますから、茨城県経済産業の面にも大きな影響を及ぼすということは、これはいまさら私が申し上げるまでもなく自明の理でございます。
ところで、各会社の営業状況は現在どういうふうにな
つておるかという問題でありますが、まず私は、私の会社の営業の状態の実情を率直に申し上げて
参考に供したいと存じます。私の会社は、
資本金五千万円でありまして、
昭和二十六年に始まりまして、約二箇年を経過いたしておるのでございます。創立当時の社長は、小島義雄と申しまして、下妻町に住む常陽
銀行の
銀行員でありまして、私が六月に社長を引受けたのでありますが、それまでこの人が社長をしておつたのであります。経営状況は、本年六月に私が社長を引受けました当時、債務、すなわち加入者よりの投資高が四千六百七十万円、債権は
貸付などが主でありますが、約二千万円でございますから、差引二千六百七十万円の赤字ということに現在な
つております。赤字の内容は、投資者に対しますところの月二分の支払金と、人件費とを含む
事業費などによ
つて赤字が出ておるわけでございます。この会社に私が
関係することになりました動機は、か
つて私が代議士当時、届出の一切の手続をしてやつたというわけで、実は私がこの会社の生みの親のような
関係にな
つておつたのでございます。創立当時は、二十人くらいの外交員や社員で、約七百万円くらいを持
つておつたのでございますが、逐次上昇いたしまして、一ころは一億くらいにまでなり、支所も現在二十八箇所あり、会社の社員も現在二百人ばかり擁しておるわけでございます。ところが同じ
地方にあります同
業者が相次いで倒産いたしたのでございます。
東京の一流の支所もありますが、これは名前は遠慮して申し上げませんが、どんどん参
つてしまうというようなわけでございますから、ここに輿論も沸騰して参りまして、各
地方新聞も、三大新聞といわれる読売新聞な
ども、盛んに株主相互を批判するというような状態でございまして、このあおりを食
つてしまいまして、私
どもの会社も、新規加入者が急に減
つてしまう、契約者も途中で解約する等、すなわち取付というような状態になりまして、現在は開店休業、整理中というような状態にな
つておるわけでございます。そこで私も、現在この会社を清算してしまうか、あるいは再建しなくてはならないかといろいろ苦心中でありますが、結局どうしてもやめられなく
なつたというようなところに現在追い込まれてしま
つておるというのが、実情でございます。というのは、私の会社に約二十万人の加入者があるのでございますが、一品五千円くらいから二十万円くらいまでの投資者があるのでございます。投資者の中にはいろいろな環境、
事情の者がございまして、会社が立とうが立つまいが、会社が赤字であろうが黒字であろうが、そんなことは別問題で、何が何でも絶対に返してやらないと、きようにも生活に窮するというような悲惨な者が
相当多数を占めておるような実情にございます。その一例を申し上げますと、本年八十歳に
なつた年寄りが、死金としてとらの子のようにして持
つておつた大事な二十万円を株主相互に預けた。株主相互は二分でございますから、月四千円であります。この四千円の金でわずかに最低生活をしておるということでございますが、この株主相互が不幸にして倒産してしまうということに
なつたならば、この二十万円はそれこそなくな
つてしまう。そうするとその老人には、死が待
つておるばかりであるということであります。さらに未亡人が四万円ばかり預けておるのがありますが、この人も子供を四人かかえて、この四万円の金が返らないならば、一家心中してしまうと言
つておるのがある。それからわが子が戦死して一時金を五万円ばかりもら
つて、株主相互会社に預けて、幾らかでもふやして石碑を建てようとして、石碑を建てることを楽しみにしておつた年
とつた親などがありますが、これな
ども、金が返らなかつたならばたいへんな難渋に陥るというのがあります。右のような実情でありますから、どうしても会社を立て直して、投資者の損害を償うより以外に現在のところ手はないというような現状に追い込まれておるわけであります。そこで私は、茨城県
金融協会の皆さんと相談いたしまして、この際弱小会社を整理統合して、健全な会社を創立して再出発しようということに
なつた。あらゆる苦労は覚悟でございますが、加入者の迷惑を解消しようと、現在私は
企業合同
委員長として努力中のものでございます。
大体、以上現状を率直簡単に報告いたした次第でありますが、実際会社の経営に当
つてみますと、いろいろ会社の整理を痛感せしめられるのでございます。結論として以下申し上げるような四つの条件にぶつかつたわけであります。
まずその第一に申し上げなければならないことは、
政府、すなわち
大蔵省が現在の株主相互というものを認めて、今後やらして行くようになるのか、それともつぶしてしまうのかということを私は確かめておきたいのであります。現在
大蔵省の内部では、株主相互には耳をかさないで、非常にこれに対して不親切であるというようなことも聞いておりますので、以上申し述べたような心配も出て来るわけであります。もし
政府並びに
大蔵省がやらして行くということなら、現在のままでは、実際問題として貸金
業者として法にひつかかるような、ひつかからないような、まことに法的にも限界がはつきりいたしておらないようなところがたくさんあります。でございますから、われわれはどこがひつかか
つていけない、どこがどうだということも、実際一線を引いてはつきりしてほしいと思うのであります。われわれは、原則として法の保護を受けられないような、そんな暗やみの
事業は絶対やりたくない、こういうふうにも
考えておるわけでございます。
第二に、現在の届出制では、現実にいろいろの弊害が百出しおります。今後もえたいの知れないものがどんどんと発生して参りまして、社会に迷惑をかけるであろうというようなことは、皆さんも新聞の三面記事等によ
つて御案内の
通りであります。でございますから、免許可制にして、私
どもは厳重に当局の監督にあずかり、そうしていずれもが安心のできる状態にして営業をさせていただきたいと思うのでございます。現在酒屋をや
つておりますが、酒屋は免許制にな
つております。免許制の理由は、酒は御承知の
通り酒造税という大きな税金がかかります。この税金を取扱うものでありますから、人を選ばなければならないというので免許制度であります。これはだれもが酒はつくれないということであります。こうじ屋な
ども免許であります。こうじ屋はどういうわけで免許かというと、われわれの食生活につながる米をつぶしますから、これはだれにでもできないというようなことで、これも免許であります。こういうことで、酒、米を取扱う者は、厳重に
大蔵省が監督して免許にするということにな
つております。金こそは、命の次は金だというくらいですから、これは免許にしなければならない。金のために親子げんかも兄弟げんかも友達げんがもできるというようなわけであります。こういうものを取扱わせるのに、現在のような届出制なので、前科者でも何でもやれて、今日のようなトラブルが起るのは自明の理ではないかと思うのでございます。
第三に、株主
相互金融が立
つて行けるのかどうかというのは、第二の問題だろうと思います。これは、生業
資金として零細
企業家の生業としてや
つて行ける限度内のものであるかどうかということによ
つて、おのずから利息の
程度もきま
つて行くのではないか、かように
考えているものでございます。
第四に、税金の問題が非常に問題にな
つている。株主に利益をまわしている、配当だと言
つて税務署は税金をとろうとしている。
業者は配当にされたならや
つて行けませんから、これは優待金だと盛んに言
つておりますが、こんな問題はどちらでもよい、皆さんの大勢が判断をするなら、これはどちらであるかということを
大蔵当局がはつきりしてもらいたいというようなことであります。以上いろいろな条件を申し上げましたが、最後に申し上げたいと思いますことは、これによ
つて私が
考えますことは、
全国的に、しかも短期間にこういうぐあいに急激に株主相互が発展し盛んに
なつた原因を、私は皆さんとともに探求してみなければならないと思うのでございます。これは、大きな社会の輿論となり政治問題化しております。
企業家の八〇%以上を占める零細
企業家や何かに対する
金融機関というものがきわめて少いということが、この因をなしている大きな問題だろうと思うのでございます。この層の悩んでおる者こそ、
日本が経済的に困
つている姿であると
考えておる次第でございます。社会保障制度はできております。もうすでに厚生省においては、身体障害者の援助ということも盛んに実行されておるわけでございますが、私は身体障害者よりも、経済の障害者こそ
全国にみなぎ
つておる問題ではないかと思う。こういう問題を政治的に大きく
考えてもらいたいと思うのであります。この際私は、株主層がどうだとか、こうだとかいう問題よりも、大局的に、零細
企業家たちへの生業
資金の道については、官民合同して一段と深く
考えてやるべきではないか、かように存ずる次第でございます。
以上はなはだ簡単でありますが、茨城県の株主相互の現状を率直に申し上げた次第でございます。