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東條説明員 火力借款の問題につきまして簡単に申し上げます。
約四千万
ドルの
火力発電
機械の
輸入につきまして、世界開発銀行からの借入れによりまして、その
代金を調達をするということで
交渉いたしておるわけでありまして、いろいろの
交渉の経緯はございましたが、近く調印を見る運びに至ると存じております。契約の内容は、
日本の開発銀行と世界銀行との借入れ契約が
一つと、それから三電力会社と世界銀行との間の事業
計画に関する契約書が
一つ、
日本政府と世界銀行との間の債務の保証契約が
一つ、正式の契約といたしましては三本建になるはずでございます。そこで、その契約の結果、世界銀行から開発銀行が四千万
ドル見当の金を借りまして、それを三電力会社に又貸しをいたします。三電力会社は、それでも
つて火力発電
機械を購入する。それからその担保
関係でありますが、開発銀行が世界銀行から借り入れました借入金の債務を、
日本政府が保証いたします。これは
日本政府といたしましては、過般国会で成立を見ました債務の保証をすることができるという
予算の総則、あるいは法律の規定に従いまして、無形の保証をするわけであります。有形の担保を設定したり、あるいは抵当を出すということは全然ございません。要するに無形の債務保証契約をするわけであります。同時に開発銀行が内地の三電力会社に又貸しをいたしました債権を、世界銀行に対しまして質に入れます。当初は、世界銀行は三電力会社の資産の上に特定の物的担保の提供をしてもらいたいという有形担保の要求がありましたが、折衝の結果、今申し上げましたように、開発銀行が三電力会社に対する債権を質に入れる、これは今までに
ちよつと例のないことのように思
つておりますが、さようなことが担保
関係に相
なつております。従いまして、契約が成立を見ましても、電力会社にいたしましても、あるいは
政府にいたしましても、単純な債権質であり、あるいは単純な債務の保証でありまして、物的な抵当権の設定でありますとか、担保権の設定というものは何らございません。ただこの
政府の債務保証契約の中に担保条項がございまして、その中に、将来
日本政府が今回の四千万
ドル以外に別途の外債を募集する、そしてその別途の外債を募集したときに、もしその債務について物的な担保を提供するというのであるならば、あらかじめ世界銀行と相談をしてもらいたい、相談を受けた場合においては、世界銀行は十分常識的に、そして好意を持
つて相談には乗ります、そういう相談を受けた場合に、従来世界銀行の態度としては、ぎごちないことを何ら申しておらぬことも確信しておるが、そういう態度でも
つて交渉に応ずるということは、世界銀行として約束をいたす。そこで
政府が世界銀行と話合いをいたしますれば、私は常識的に円満に解決することを確信いたしますけれ
ども、もし話合いがつかなか
つたと仮定いたします場合におきましては、その新たな外債について有形担保を設定いたしまするが、その担保について今回の四千万
ドルは、同順位の返済請求権があることにしてもらいたい。
つまり世界銀行としては、今回は
日本側の言い分に応じて全然物的担保はとらずに融資をする、ところが
日本政府がほかの場合に物的担保を出さなければならぬというならば、相談をしてもらいたいし、相談がまとまらなければ、その財産については、自分の方はほかに対して担保を出すなら、同順位の担保請求権を持つ、
従つて将来の問題としては、そういうことを
日本政府は約束してもらいたい、こういうことに
なつておるわけであります。
それから問題となりますことは、
日本政府だけでなくて、ポリティカル・サブ、デイヴィジヨンという言葉を使
つておりますが、
日本の解釈では、地方公共団体が入るという解釈をせざるを得ないのでありますが、そういうポリテイカル・サブ・デイヴィジヨン、それからガヴアメント・エージエンシー——
政府関係機関、これらのものが将来長期の外債を募集して、しかも物的の担保を出すというのならば、今私が申し上げました
政府に関する扱いと同様にしてもらいたいという条項があるわけであります。この点は、
日本側
政府といたしまして本件の
交渉上当初から非常に問題にした点でありまして、いろいろと折衝を重ねましたが、これは世界銀行が各国に貸し付けております契約条項のどこにも適用しておる例文である、
従つて日本側に対してのみこの条項をはずすわけには行かないということになりまして、
日本側の法制においては、今申しましたようなポリティカル・サプ・デイヴイジヨン、あるいはガヴアメント・エージェンシーについても、この規定を適用するということは困るのだということを申しました結果、
日本の憲法の制限の範囲内において——憲法違反のことならばしかたがない、憲法の制限の範囲内においてという言葉を——これは各国の例文にはないことでありますけれ
ども、
日本の場合には入れまして、やむを得ず地方公共団体、あるいは
政府関係機関についても右の条項を適用するということでなければ、この
火力借款は成立をしないということになりましたので、この担保条項につきましては、今申し上げましたようなことで話合いをつけるということに
なつたわけであります。それでくどく申し上げますが、世界銀行は、御
承知のように五十五箇国が株主に
なつておりますところの国際的な銀行でありまして、多数の国を相手方として貸付契約を結んでおりますから、
理事会が、また
理事会を構成しておる
理事が世界各国の代表者になりますから、その
理事会で可決せられなければこの
借款契約というものは成立しないわけでありますが、その成立を見るがためには、世界のどこの国に対しても実体的に同じ内容の規定でないと
理事会が通らない、これは世界銀行の性格上さようなものであろうと思います。
従つて世界各国並の条件を
日本に対してははずせということを言うことは、結局
理事会を通らず、
交渉成立の
見込みがないということになりましたので、担保条項の問題については、各国並、あるいは各国よりも憲法云々ということで、
日本の実情に近いように
なつておると思いますが、さようなことであるならばやむを得ないということが、担保条項に関する経緯に
なつております。