○春日
委員 今の佐藤君の質問に関連をするわけでありますが、私も同様の心配を深く持つわけであります。と申しますのは、たとえば四十六条の二でありますが、「
営業所における資金の預入及び借入、商品の仕入及び販売その他の取引のすべてが当該
法人の名においてなされている場合を除き、」と書いてある。これが
一つの尺度とな
つておる。この場合、たとえば
企業協同組合にいたしましても、あるいはまたここに指定されておる五以上の
営業所がある場合、今まで幾多の
事例を見ますと、年間を通じてその中に五枚や十枚、その伝票のあて名に
企業組合の名前を使うということを——しよつちゆう呼びなれておるから、
従つて渡辺さんとか、平田さんとかいうふうに、
個人の名前を使う間違いが私は当然あると思う。そうした場合において、これを類推する場合におきまして、渡辺さんや平田さんがこれを類推されるならば、そういうばかげたものは、当然これは心配はない、こういうことで
企業組合としての性格を
認めて行かれると思う。ところが現場におるところの若い
人たちは、あなたも御承知の通り二十一、二でみな前線に出て参ります。こういう若い
人たちが、この
法律を基準にして税の査定を行おうとする場合、伝票をずつと調べて行
つて、そこの中に、たとえば五枚でも七枚でもそういうものが何千枚とある伝票の中から出て来ると、この
法律には「すべて」と書いてあるのだから、一枚でもあ
つたらだめだ、こういうようなことで、たとえば、これは
法人ではない
といつて法人格を
認めないような場合が生じて来る、その場合に、
法律で定められているから、その人が異議を申し立てたところで、すべてとある以上は、一枚でも五枚でもやはりみずからの権利を喪失することにな
つて参ります。だから
相当の年輩に達して、しかも
税法というものの精神を十二分に咀噛含味しておる徴税官が
執行する場合は、私
どもは心配はございませんけれ
ども、何万人という
人たちが、しかも人生の経験も浅い若い
人たちが、ときには感情に走る場合もある。そうした場合、ちよつと受答えが悪いというだけで癇をたててしま
つて、一枚の間違いでも指摘して
法人格を否認するということが現実に行われておるわけなんです。全国におきまして、こういう
規定がないときだ
つてずいぶん被害を受けておるからこそ、彼らが猛烈な陳情をしておるわけであります。あなたが
自分の部下を信頼されておることは、非常にけつこうだと思いますけれ
ども、そういうふうにあなた方が盲目的に信用されるということは、国民の被害を受ける側においては、そのままちようだいいたしかねる。少くとも
法律をつく
つて行く立場におきましては、判断をしたり、類推をしたり、解釈をしたり、そういうような
法律であ
つてはならぬ、かたかなで書いたみたいに、読めばさつとわかるような、そのものずばりとか、どんぴしやりとか、こういうようなわかりやすい
法律でなければならぬと思います。この
所得税法なんというのは非常に複雑なんです。われわれが
相当の経験をも
つてこれを読んでも、十二分に理解し把握することは困難です。いわんや
中小企業者、零細業者
たちは、
税務署がこの
法律を持
つて来て、こういうふうに書いてあるからこうだと言われれば、それに返す言葉もない。そういうような
意味合いにおきまして、佐藤君が指摘されたところの心配は現実に存在するわけなんです。あなたが、われわれの部下はそういうような
行き過ぎた判断はしないであろうということは、ただ単にあなたのひとりよがりの早合点だ。現実は、そういうようなしんしやくゆたかな形で行われてはおりません。きわめて苛酷、懲罰的な、天くだり的、水増し
課税である。そういうような税制のもとにおきまして、こういう危険なるところの刃物を持たせるということこそが、
納税者を恐怖せしめておる。彼らが全国各地から、この暑いのに夜行に乗
つて陸続と陳情にかけつけて来るというゆえんもまたそこにある。あなたは先般、四十六条の三を特に前
国会よりは飛躍して、譲歩できるだけ譲歩しておると
言つておるけれ
ども、この条文によ
つては、何らの譲歩が行われていない、何らの救済も行われてはいない。
従つて彼らの不安恐怖は何らここにいやされておりません。だから、これはあくまでも危険な条文であります。類推せしめるとか、
税務署の税務吏員をして、しかも二十二、三の若い諸君が、その業態は何であるかということを解剖し、批判し、結論を下すというようなめんどうな
法律はつくるべきではない。それとも、あなたのような
国税庁長官とか国税局長級の人が前線で査定をしてくださるならば、私はこれでも異存はありません。だからだれがや
つても間違いなく、被害が国民に及ばないという条文によ
つて立法されて行かなければ、われわれとしてはこれを承認することはできません。
一つ例を申し上げます。この一月の末日、沼津の
税務署の管下で起
つたことでありますが、たしか稲木鉄工所というのがありまして、その人が十数万円の滞納をしておりました。そうすると、たしか一月の十七日だ
つたと私は記憶しておりますが、そこへ競売処分の通知が行きました。ところが御本人は不在であ
つて、それを受取ることができなか
つた。そうすると、今度は十八日を一日おいて十九日に、それが競売に付されてしま
つた。それでびつくりして
税務署へかけつけて、滞納
税金の一部の現金を持
つて行
つたが、
税務署はもうそれを受取らない。すでに一昨日競売に付されまして、
税務署の手を離れましたから、その金を受取ることができないというので、あれよくと驚いているうちに、翌日は、今度は競売を受け男がトラツクを持
つてその機械をとりはずしに来た。それで社会党に対して陳情が行われて、私
どもは
中小企業の窮境を救うということで現地に参
つていろいろ事情を聞いてみると、ま
つたく十数万円の滞納のために、七十万円にわたるところのその機械がわずか二十数万円で競売に付されてしま
つて、差額を受取りに来い、こういうような状況である。そこで払下げをした人にその稲本さんなる被害者が、何とか買いもとしてもらいたいと言
つたら、私は二十何万円で買い取
つたのだから、この機械の価値は今や五十万円以上でなければならぬ。
従つてあんたがどうしても買いもどしたいということであ
つたら、耳をそろえて持
つていらつしやい。そうしたらこの機械は返してあげましよう。こういう事態が起きて、当時沼津の新聞は、これを非常に糾弾的に載せておりました。世人の輿論は、
税務署員に対する怨嗟の声とな
つて巻き起
つた。こういうように、
中小企業者が滞納をして困
つておる。そうすると、ただちにこれを競売して換価処分をする。それに対して一掬の涙すら注がない。あなたの手下には、そういうような残忍酷薄なる
人たちもいるということをよくお考えにならなければならない。そういうような下僚をも含めてこの
執行をあやまちなからしめるためには、この
法律たるや、そういう非常に残酷な処分を行うことのできないような形において立法されなければならぬということを、私は主張いたしておるのであります。従いまして、この四十六条の三のごときは、すべての伝票がそうでなければならぬと
言つておるが、年間を通じて何千枚という伝票の中で——これは五つ以上その事業所がある場合におきましては、当然その責任者が対外的にもいろいろ応待をしておりましようから、
従つて、ときに誤
つてその責任者なり事業所の主任者なりの名前が伝票に表示される、こういうことはあり得ることだ。そういうようなあり得る危険がとの
法律によ
つて否定されて来る。そういうことがただちに
法人たるの資格を喪失する形になるというような立法は行うべきではない。このことを私
どもは強く主張するわけであります。この点について、あなたの御
答弁を伺いたい。