○加藤参考人 私たちの担当しておりまする
組合金融を通じまして、中小企業はどうな
つておるかということにつきまして、若干申し上げてみたいと思うのでございます。
中小企業の金詰まりということは、先ほど来先輩の皆様方がおつしや
つた通りでございまして、ことに最近のように、産業界の不況のときには、あらゆるしわが中小企業に寄せられまして、中小企業者は非常に苦しみ、
金融に悩んでおるのでございます。従いまして、商工中金等に対する
資金の需要というものも、非常に熾烈なものがあるのであります。今商工中金の
昭和二十七年度、すなわちことしの三月末のバランスで見ますると、貸出しの残高が三百九十五億円に達しておるのでございまして、前
事業年度末の貸出し残高に比べますと、百五十七億円の増加を見たのでございます。しからばこの貸出増百五十七億円の
資金の手当は何によ
つてそれをまか
なつたかと申しますると、まず第一に債券の発行の増加によりまする分が七十八億円でございます。なおこの七十八億円のうち、
資金運用部の引受の額の増加が三十六億円あるのでございます。第二は
預金の増加でございますが、これは年間七十五億円ございました。しかしこれはその内訳を見ますると、その大部分でございまする五十七億円が、
政府からの指定
預金、国庫の預討金でございまして、純然たる
組合の系統
機関の
預金として増加いたしましたものが、た
つた十八億円にすぎなか
つたのでございます。それから最後に
借入金の増加でありますが、これは四億円の増加をしております。その内訳を見ますと、昨年の十二月二十六日に通産省から、補正
予算でと
つた二十億円の
資金を中金に貸していただいたのでありまして、この二十億円の
政府の
借入金というものがございまして、一方日本銀行等からの
借入金が減りましたので、差引いたしまして四億円の
借入金の増加を見たのであります。かように債券において七十八億円、
預金において七十五億円、
借入金四億円、合計百五十七億円というものが、貸出増の百五十七億円をまか
なつたような次第であります。
〔内藤
委員長代理退席、島村
委員
長代理着席〕
以上申しました百五十七億円のうち、
政府関係の
資金はどのくらいあ
つたかと申しますと、先ほど申しましたように、
資金運用部の引受による債券の増加額三十六億円、それから
政府の預託金の増加の五十億七千万円、通産省から借り入れました二十億という数で、合計いたしますると、百十四億円の金を
政府から入れていただいた。百五十七億の
資金の貸出しの増の内訳として、百十四億円の
政府からの
資金を入れた。パーセンテージにいたしますると、七二%というものが
政府の力によ
つてふえたのであります。
なお年度末におきます総
資金量中の
政府資金の受入れ割合はどのくらいかと申しますと、昨年度末、すなわちこの三月末の
資金の総量は三百九十五億円でありますが、そのうち
政府からいただいております金は、出
資金――これは見返り
資金からの優先出
資金も含めてでございますが、四億六千五百万円、それから債券の
資金運用部による引受の額が六十八四六千八百万円、それから
政府からの指定
預金、すなわち預託金が五十七億七千万円、
政府からの
借入金が二十一億七千五百万円とな
つておりまして、合計百五十二億七千八百万円というのが
政府からの
資金であります。でありますから、総
資金量のうち三八・六%、大体四%近いものを
政府からの
資金としていただいておるのでございます。しからばその前の昨年の三月末のときはどうであ
つたかと申しますと、
政府から導入の
資金は三十八億円しかなか
つたのでありまして、中金の総
資金量のうちに占める割合は一七・一%というものであ
つたのであります。でありますから、
昭和二十七年度のこの一年間の
事業年度中におきまして、
政府からの導入
資金の額は百十四億円の増加となり、それからこの総
資金量の中において占める割合が一七・一%から三八・六%というふうにふえて参
つたのであります。このように二十七年度は、
政府から非常に多額の財政
資金をいだきましたので、貸出高も先ほど申したように一年間に百五十七億円もふえて参りまして、中金としては未曽有の貸出しの増加を見たのであります。その前年の二十六年度の貸出しの増加は、年間を通じて大体八十億円であ
つたのでございますから、二十七年度は前年に比しほとんど倍に達する貸出しの増加があ
つたのでございまして、ある
意味におきましては、
組合金融といたしまして昨年は最良の年であ
つたのではないかと思われるのであります。しからば本年度の見通しはどうかと申しますと、まことに、暗澹たるありさまでありまして、まず
政府からの預託金の五十七億円も、本年の十二月末までには毎月分割してお返ししなければならぬことにな
つておるのでありまして、一方毎月債券の発行高を極力ふやすことに努めまして、利付、割引合せて毎月十四、五億円の発行をいたしましても、旧債の償還額が毎月七億円序後ございますから、債券発行による手取金といたしま出して、月七億円前後しか見られないのでございます。他の
一般の
預金の増加というものにつきましても、中金は店舗の数も少うございますし、また本質的に
預金をいただける先が協同
組合、またはその構成員というふうに限られておりますので、多く伸びることは期待できません。せいぜい二十億円も伸びましたならばよい方じやないかと思われるのでございます。従いまして日本銀行からの借入れなども、第一次高率適用を一ぱいまで借りるということにいたしましても、貸出しにまわし得る新たな
資金というものは月平均いたしまして四、五億円にしかならないであろうと見込まれるのでございます。前
事業年度の月平均十三億円ほどと貸出しが伸びたのと思い合せますれば、まことに雲泥の差があるのであります。もし今後、かりに毎月の貸出し増加が前年同月の貸出し増加と同じ割合に伸びるすると、これもなかなかこれだけでは足りぬだろうと思われますけれども、中小企業界の不況の状況、最近の状況を
考えますと、さらに
資金需要が、ふえて参るであろうと思いますので、前年と同じだけ貸出しの増加ということ存ではなかなか困難だろうと思います。けれども、かりにそういう状況のもとに
考えた場合に、
資金はどれだけいるかと申しますと、この十二月末までには九十億円の
資金不足というような状況なのであります。中金の
理事者といたしまして、まことに今他力本願的なことを申し上げますのは申しにくいのでございますけれども、本年度も、
政府からひとつ大幅な長期の安定
資金を導入していただくことを熱望してやまない次第でございます。ことにこの預託金の五十七億円、これは昨年お借りするときにはまことに助か
つたのでございまして、このために中小企業の
組合関係の
資金は非常に潤
つて参
つたのでございます。本年これを返すというのは、その準備はしてございますけれども、業界にと
つてなかなか大きな響きがあろうと思われるのでございます。なお中金といたしまして、今回中小企業
金融公庫という
政府機関が生れて参りました場合に、商工中金は直接
政府からいろいろ
資金の御援助をいただくことができなくなるであろうということを、われわれは最も憂慮しておるものでございます。もともと商工中金の発足の当時の事情を
考えてみますると、中小企業というものは非常に力が弱いので、相互扶助の精神を持
つて組合を結成し、相協力してや
つて行く以外には救われる道がないというので、
政府が
組合組織を奨励して参
つたのでございまして、途中いろいろ
組合の名前もかわり、また
根拠法もかわりましたけれども、常にこれは一貫した
政府の
考え方であ
つたのであります。しかしその
組合をつくりましても、これに対する
金融ということはなかなかうまく行かない。それで
政府の強力な援助のもとに特殊の
金融機関をつくろうというので、この商工中金というものは
昭和十一年に
設立されたということにな
つておるのでございまして、これは当時の
提案理由等の
説明を拝見しますと、そういうことがうかがわれるのでございます。でありまするから、商工中金とい
つたようなこういう
機関は、
政府からの特別の援助ということが前提として成り立つものでありまして、これをはずされますると、なかなか大音ではや
つて行けない非常な困難な中小企業の
金融であろうと思うのであります。従いまして、
設立当初資本金一千万円で発足し、その場合五百万円は
政府にお持ち願い、
組合からは五百万円を出資して一千万円にした。そののち
昭和十八年に資本金を三千万円にいたしました際にも、
政府が半分の一千五百万円を持
つてくださいまして、この出
資金については、常に
政府と
組合とが折半して持
つていただいたという状況にあ
つたのであります。従いまして、
業務につきましては広汎な監督に服します一一方、
政府の出資に対しましては、
昭和二十七年三月まで配当を免除するというような恩典を
考えてくださいましたし、また税法上のいろいろな特典なども
考えられまして、非常に中金を保護するということをなさ
つて、半官半民の
機関とな
つていたのであります。また発足時当、
預金部
資金の運用等につきましても、特に低利
資金を中金が供給を受けまして、この低利
資金を
組合に貸し付けるというような制度を設けられてお
つたのであります。すなわち、その当時市中の金利が五分ないし六分というような当時におきまして、中金は
預金部から年三分二厘で債券を引受けてもらいまして、年三分九厘で
組合に
融資をしたいというようなことに相な
つておるのであります。ところが、その後の状況はどうであるかと申しますと、まず出
資金についてでございますが、その後数次の増資によりまして、現在商工中金は約十五億円にな
つております。そのうち十億円は
組合の出資でありまして、
政府の出資は約五億円であります。その五億円の
内容は、大部分が見返り
資金からの優先出資でありまして、これは毎年償還して行くので、いわば
借入金のようなものだろうと思います。こういう出資が大部分でありまして、純粋の
政府の出資は二百十万円でございます。昨年十二月にいただいた通産省からの二十億円の金は、その当時、やがて増資とともに、出資の引受けに切りかえていただくというようなふうにもわれわれは聞いてお
つたのでありますが、今度公庫が
設立されますと、この二十億の
貸付金は、
政府からの
貸付ではなくて、公庫からの
貸付に振りかえられ、公庫が
設立後二年以内に引上げられるということに相な
つております。今年の秋ごろに三億円ほどの増資をいたしたいと
考えておりますが、その株主総会に当るわれわれの出資者の総代会の席上等におきましても、ぜひひとつ
政府も
組合と同じような
金額の
政府出資を
考えていただきたい、今の状況はま
つたく
政府が出
資金を出さないで、
組合だけでやるという形にな
つておるけれども、
設立当初の沿革にかんがみて、
政府からの同額の出資をお願いいたしたいという希望が強く表明されたのであります。また配当の免除というような点につきましても、現在商工中金はいまだに無配でありますが、優先出資分につきましては、年七分五厘の配当をしておるのでございます。これは見返り
資金という特別な
資金の運用として、当初から七分五厘の利息をつけることにな
つている金でありますから、当事者あるわれわれといたしましては当然であると思いますけれども、少くともこの株主である出資者から見ますと、
一般の出資に対して配当も何もないときに、
政府だけ七分五厘の優先利子をとるということははなはだ情がないのではないか、こういうものも免除してもらいたいというような希望が強く表明されてお
つたのであります。また
預金部
資金を低利で利用することにつきましても、現在はそういうことはなくなりまして、毎月債券を多額に引受けていただきますので非常にありがたいのでありますけれども、その利率は、
一般市中で発行する債券と同じ利率でありまして、二銭四、五厘のものになるのでございます。特別な安い金利という点の御援助をいただいておりません。それで、できることでございますれば、
国民金融公庫さん、またこの
政府機関に対しましては、
預金部の
資金を貸し付けるという形で、おそらく年六分七厘
程度じやないかと思いますが、そういう
資金をお貸ししておられるのでございますが、商工中金にも、そういう金を低利にお貸しいただけないかということをお願いいたしたいと思うのであります。
また現在、この
資金運用部の
金融債の引受の割合も
法律できめられておるのでございまして、一回の発行額について六割まで、
総額において五割までという制限があ
つて、多額の引受もある
程度の制限があるのでございます。こういう点も、さらに
資金運用部の引受率を大きくするというようなことをお
考えいただけば非常に仕合せだと思うのでございます。
以上申し上げましたように、
政府の特別の保護がだんだん少くな
つて来るような気がいたすのでございます。現在の中小企業界の最も要望しております問題は、やはり低利の
資金を長期に借りたいという問題じやないかと思うのでございます。先ほど上山さんからもお話がございましたように、インフレ時代には金利の高いくらいのことは問題でない、金さえ借りられれば、
仕事をしてもうかるというような事情だ
つたかもしれませんが、最近は非常に利潤が少いので、低金利の金でなければ
仕事をや
つてももうからぬというようなことで、低利の金を要望され、また長期の安定した金でなければなかなか
仕事がうまくやりにくいというようなことで、低利であり、かつ長期の金が非常に要望されておるのでございます。商工中金は幸いにいたまして、この債券で
資金をまかなうということになりますので、長期の
資金は持
つておりますけれども、何分にも
一般の
預金というようなものが非常に少い
関係上、原価が非常に高くつきます。従いまして現在短期で日歩三銭、長期で年一割三分というような基準において貸出しをしておるような状況でありまして、こういう点は、
一般の業界から値下げを要望されておるのでございます。でございますので、商工中金といたしましては、ひとつこの際商工中金
設立当時のいきさつや、あるいは従来
政府資金の一貫として果しました役割というような沿革などを再認識くださいまして、たとい中小企業
金融公庫というものが誕生いたしましても、公庫と並行的に、中金に対して大幅な長期安定の低利
資金を導入してくださるように、格別の御配慮を賜わりたいと思うのでございます。商工中金は
組合金融だけでございまして、
組合を結成しない多数の中小企業のあることは申すまでもないのでございまして、そういうものに対する
政府の
金融機関として公庫をお設けになることは、非常に
けつこうだと思うのでございますが、それと並行して、この従来からございました商工中金の強化育成ということについて、格別の御配慮をたまわりたいと思うのでございます。
それから次に
中小金融について、株主相互
金融とか、そういう問題についてでございますが、これはただいま先輩の上山さんが申し述べられ一たように、われわれもま
つたくそんなふうに
考えておるのでございます。何分この相互
金融というようなものの貸出しの一口当りの平均というようなものを新聞で見ますと、三万二千円だとか、また貸出しの九〇%までは五十万円以下の貸出しだというようなことで、この
実情を見ますと、まさしくこれは零細
金融と申しますか、あるいは中小企業のうちでも小の部分の
金融面における逼迫ということが、こういう
金融に走らせる一つの下地じやないかと思うのでございます。もちろん中には、非常に大きな
金融もあるそうでございますけれども、われわれその
実態はよく存じません。いずれにいたしましても、手軽に借りられるというところが非常な魅力だそうでございまして、こういう点は、われわれ中小企業の
金融に携わるものといたしましても、今後十分慎んで行かなければならないのではないかというふうに
考えております。正常な
金融がうまく行きますれば、自然こういう
金融の伸びる余地もなくなると思うのでありまして、われわれも注意しなければならぬと
考えておるのでございます。こういう
金融の
実態というものはわれわれにもよくわかりません。ことに取引先なんかにおきましても、そういう
債務は簿外
債務として取扱
つておる場合が多いそうでございまして、なかなか現れて参りません。しかし現実にそういう高い金利の金を借りておるけれども、将来これを低利の金に借りかえてやるならば、十分にや
つて行けるというような見込みのある
事業等につきましては、われわれも気がつき次第、そういうものを低利の中金の
資金に肩がわりさせ、そうして高利の金をやめさせるようにしたいといつも
考えておる次第でございます。特にこの問題につきまして、先輩の方々のおつしや
つた以外のことを申し上げるだけの材料もありませんので、これで失礼いたします。