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1953-06-25 第16回国会 衆議院 水産委員会農林委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十五日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員   水産委員会    委員長 田口長治郎君    理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 中村庸一郎君 理事 山中日露史君    理事 日野 吉夫君 理事 小高 熹郎君       中村  清君    夏堀源三郎君       濱田 幸雄君    水田三喜男君       白浜 仁吉君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    田中幾三郎君       中村 英男君  農林委員会    委員長 井出一太郎君    理事 綱島 正興君 理事 金子與重郎君    理事 足鹿  覺君 理事 安藤  覺君       佐々木盛雄君    佐藤善一郎君       佐藤洋之助君    松岡 俊三君       松山 義雄君    加藤 高藏君       吉川 久衛君    芳賀  貢君       稲富 稜人君    川俣 清音君       久保田 豊君  出席政府委員         調達庁長官   根道 廣吉君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     山中 一朗君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         農 林 技 官         (水産庁次長) 岡井 正男君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部次長)    大石 孝章君         総理府事務官         (調達庁不動産         部不動産補償課         長)      鈴木  昇君         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    安川  壯君         農林事務官         (農地局管理部         入植課長)   和栗  博君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         経理課長)   高橋 泰彦君         水産委員会専門         員       杉浦 保吉君         水産委員会専門         員       徳久 三種君         農林委員会専門         員       難波 理平君         農林委員会専門         員       岩隈  博君         農林委員会専門         員       藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為に  よる特別損失補償に関する法律案内閣提出  第四二号)     —————————————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 ただいまより水産委員会農林委員会連合審査会を開会いたします。  私が議案の付託を受けておる水産委員会委員長でありますので、先例によりまして、本連合審査会委員長の職務を行います。  ただいまより日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為による特別損失補償に関する法律案について審査を進めます。質疑に入ります前に、農林委員方々のために、本案の趣旨について政府説明を願います。根道調達庁長官。     —————————————
  3. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいま提案になりました日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為による特別損失補償に関する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。本法律案は前の特別国会にこれを提案いたしまして、衆議院において可決せられました後、参議院において審議中のところ、衆議院の解散に伴つて審議未了と相なつたものでありますが、今回も日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて日本国内及びその付近に配備されたアメリカ合衆国陸軍海軍または空軍によつて東京湾口及び佐世保湾口防潜網水中聴音機その他の水中工作物設置または維持あるいは芦屋の防風林のような防風施設または防砂施設除去または損壊等が行われたことによりまして、従来適法農業林業漁業その他の事業を営んでおりました者が、その事業経営損失をこうむつたときは、国がその損失を適正に補償する必要が現在もなおあるのでありまして、これが再度本法律案提案する理由であります。  この法律案内容は、前に提出いたしたものとまつたく同一でありまして、第一条には、前述趣旨規定しているのでありますが、補償すべき損失の原因となるアメリカ合衆国陸軍海軍空軍行為としては、一に防潜網その他の水中工作物設置または維持、二に防風施設または防砂施設除去または損壊、そのほかに三といたしまして、その他政令で定める行為というものを掲げまして、行為の種類を政令で定めることとしております。なお損失補償を受けるべき事業としては、農業林業漁業規定しているのでありますが、それ以外の事業については政令で定めることとしております。この損失補償は、漁船の漁業制限法民事特別法等の他の法律により国が損害賠償又は損失補償の責に任ずべき損失については適用しないこととし、また補償する損失は通常生ずベき損失としております。  次にこの損失補償の手続については第二条に規定してありまして、この損失補償を受けようとする者は、総理府令の定めるところによつて、自己の住所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して損失補償申請書内閣総理大臣に提出しなければならないこととし、都道府県知事は、該申請書を受理したときは、当該事案に関する意見書を添えて、これを内閣総理大臣に送付し、内閣総理大臣は、補償すべき損失有無損失補償すべき場合には補償の額を決定し、遅滞なくこれを都道府県知事を経由して当該申請者通知しなければならないこととしております。  この内閣総理大臣補償すべき損失有無及び補償額決定に不服のある者は前述通知を受けた日から三十日以内に内閣総理大臣に対して異議申立てをすることができることとし、内閣総理大臣はこの申立てのあつた日から三十日以内にこれについて決定の上申立人通知しなければならないこととしております。  次に補償金の交付につきましては、第四条に規定してありまして、前述異議申立てがないときは、異議申立期間満了の日から三十日以内に補償を受けるべき者に対し、当該補償金を交付し、異議申立てがあつたときは、異議申立てに基く決定通知した日か三十日以内に補償を受けるべき者に対し、当該補償金を交付することとしております。  次に第五条におきましては、増額請求訴えについて規定してありまして、この法律により決定されました補償金の額に不服がある者は、その決定通知を受けた日から九十日以内に国を被告とする訴えをもつてその増額を請求することができることとしております。  次に附則第二項におきまして、この補償事務担当庁調達庁とするため調達庁設置法の一部を改正して、同庁不動産部所掌事務規定している同法第八条に第六号として、この法律施行に関することを挿入することとし、さらに調達庁付属機関たる中央調達不動産審議会調達庁長官諮問に応じ、この法律による損失補償についても、その基準その他一般的事項を調査審議することができるようにするとともに、調達局付属機関たる地方調達不動産審議会において、この法律による損失補償についても、調達局長諮問に応じ調達審議できるよう、同庁設置法に所要の改正を加えることとしているのであります。  以上が本法律案概要でございますが、よろしく御審議をお願い申し上げます。
  4. 田口長治郎

  5. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 私は前回委員会におきまして質問を保留しておつたのであります。本日は水産庁長官出席も要求しておいたのですが、出席がないので、まつたく遺憾に存ずる次第であります。この提案されておりまする法律案は、すでに前国会におきまして衆議院を通過いたしておるわけであります。そこでこの法案審議にあたつて、今年の二月十日に水産農林連合審査会におきまして、この法案講和発効後に遡及してこれを適用するとい御答弁が、川田不動産部長よりあつたのであります。これは当時水産庁長官も御出席になつておりましたし、はつきりいたしておるのでありますが、先日の水産委員会におきまして、山中不動産部長よりこの法案遡及して効力を発しない、かような御答弁があつたのであります。その理由といたしましては、他の法律案をつくりまするについて、悪例を残すという答弁があつた。この点につきまして、はたして不動産部長の御答弁の通りでありますかどうか、また前国会において政府委員より答弁があつたことを今日また繰返されるかどうか、またただちに前国会における発言を撤回されるかどうか。当時は調達庁長官も御出席になつてつたのであります。先日の水産委員会におきまして、助確なる答弁が得られなかつたのでありまして、今日ここにあらためてこの一点について御答弁願いたいのであります。
  6. 根道廣吉

    根道政府委員 前国会におきまして、ただいま御質問に相なりましたような意味のことを川田部長及び私からも申し上げたかと記憶いたしております。昨日でございましたか、現不動産部長より御説明があつたのに対して疑義を生じたようでございますが、これは遡及するという意味言葉使い方であると私は考えているのであります。実質的にこれが遡及というとおかしいですが、この法案が通りました後は、現実にこの法令が適用されるということには、私どもとのて今疑義を持つておらないのであります。これは法律の上に、効力遡及するという言葉が書いてございません。そういう書き方をすることは、他の法案との比較上いろいろ問題があろうという議があつたということに関して、おそらく山中不動産部長はそういうことを申したのであろうと推察するわけであります。いずれにいたしましても、この法案が通りましたときには、少くとも現実の問題といたしまして、補償する対象駐留軍行為によるものであり、駐留軍行為というものは、講和条約発効の日以後においては連合軍でなくして、駐留軍行為となるものであります。従いまして、駐留軍行為なつたものについて補償するという第一条の規定は、当然実質的に補償がそこまで及ぶ、こういう考え方であるということを前国会においても御説明申し上げたのであります。ただそこに起草上のいろいろの関係がございまして、ここは明白に書くか書かないかということが問題になつたことは事実でございまするが、現実問題といたしましては、この法案施行されるに至りましたならば、実際上現実補償が適用されるということについては、関係各庁ともいまだ疑問は持つておらぬのでありますので、さよう御了承願いたいと存じます。
  7. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 ただいま長官より御答弁があつたのでありまするが、どうも明確を欠くものであると私は考えます。この附則第一項に「この法律は、公布の日から施行する」と書いてあります。公布の日から施行せられまして、その施行前に起つたことが法律的に効果があるかどうか、この問題に対して明確にひとつ御答弁願いたいと思います。
  8. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいま提案になつております法案に、今の附則言葉をそのまま示すことは、将来に疑義を生ずるのではなかろうかということは、われわれといたしましても考えたのであります。しかし現実問題として、われわれの帰結するところ、書かずとも、実際上の効果は第一条によつて発生するということに論議が帰着いたしまして、こうなつたわけであります。御了承願いたいと思います。
  9. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 どうも私には明確に解釈しかねるのでありますが、しからば附則にこういう公布の日から施行するというようなことを特に書き入れる必要はまつたくないと思う。この項を削除されてはいかがですか。
  10. 根道廣吉

    根道政府委員 こういうことを申し上げてはどうかと思うのでありますが、その項目を削除いたしますと、これはまつたく適用不能に相なるのでございまして、ぜひとも必要でございます。
  11. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 この法文の附則から行きまするならば、公布の日から施行することなつておりますので、長官のお話はまつたく私に解釈しかねる。公布の日から施行するということになつておりまして、この以前に効力発効したと考えない。そうすると、この法律がその以前に適用されるということはまつた考えられないのであります。
  12. 根道廣吉

    根道政府委員 私ども考えておりますのは、法律令効力の発生するのは、この法案に書いてある日付からである。しかし適用の対象はさかのぼるのである。とういうふうな考え方であるということを前国会にも申し上げたつもりでございます。
  13. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 この法律公布されました場合に、この以前に起つた損害、すなわち占領軍駐留軍にかわつた以後に発生しました損害に全面的に適用せられると解釈してよろしいのでありましようか。またその間、すなわち講和発効後における損害に対して完全に補償せられるというように解釈してよろしゆうございましようか。
  14. 根道廣吉

    根道政府委員 時期についてはさようであります。また補償も、実損に基きましてその全額を補償するという考え方であります。
  15. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 そういたしますと、駐留軍によりまして支給されておりました見舞金、あるいは総理府令によつて支給されておりました見舞金につきましても、この法律補償内金とみなしてさしつかえないのでありますか。
  16. 根道廣吉

    根道政府委員 この法律によつて包含される部分につきましてはさようであります。現在のところ、この前の御説明のときに申し上げたと思うのでありますが、法案が適用されるまでは、形式的にはこれを補償と申し上げるわけには行かぬのでありまして、従いまして実際上なすべき実質的の補償、別な言葉をもつてすれば見舞金であります。これをしなければならぬというので、現実にはすでに見舞金の形において補償しているものがあるのであります。この法案が通りましたならば、その見舞金は、この法案による補償に自然になつて行くものである。従いまして、この法案によりましてあらためて計算するというような問題がかりに起りましたならば——現実は起らないと存じておりますが、起りましたときには、中身の問題といたしましては、中村委員のおつしやつたような内金というような考え方が出て来るかもしれません。しかも私どもといたしまして、内金という言葉使い方もいろいろ論議の種になるかと存じますが、実際上は見舞金として今はやらなければならない。しかしこの法案が通りましたときには、この法令によつて補償をやつたものだと考え、ただここに差額がございましたときには、あらためてその分の手当をしなければならぬ事態が起るかもしれません。こういうことを申し上げます。
  17. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 ただいま長官の御答弁によりまして、平和条約発効後発生いたしましたすべての損失に適用せられると、私は長官答弁を了承いたします。また平和条約発効後におきまして支給されました見舞金は、いわゆる損害補償内金と了承いたします。この法案の中にははなはだ明確を欠く点が多々あるのでありますが、この二点を長官の御答弁によりまして、御答弁通り適用せられると了承いたしまして私の質問を終ります。
  18. 綱島正興

    綱島委員 関連してお尋ねいたします。ただいまの御答弁委員発言を伺つておりますと、ちよつと不明確なようでありますが、長官の御答弁いかようであろうとも、本文の規定が非常に将来を規定することと存じますが、多分今応答になつた点は、第一条の「アメリカ合衆国陸軍海軍又は空軍の左に掲げる行為により、従来適法農業林業漁業又は政令で定めるその他の事業を営んでいた者がその事業経営損失をこうむつたときは、」こうあるのですが、実は文理解釈をすると、この文章では必ずしも長官の御説明だけでは不十分のように思えるのですが、これは幾らか委員会で改正なさるか何かしないと、ただ長官の御説明があつたからということでは、どうも法律家としては文理解釈上受取りにくいように思えるのですが、この箇条以外にこの法案の中に、従来のものも、補償できるという明確な規定がございましようか。
  19. 根道廣吉

    根道政府委員 この法案の中にはそういうようなことはございません。
  20. 綱島正興

    綱島委員 どうもこれだけだと、委員の疑問が起つたのがもつともで、法律的には最高裁判所に持つて行つてもどうしても根道さんの説は負けると思うのです。
  21. 水田三喜男

    水田委員 今の長官答弁は少しおかしいのです。法律論としたら、公布の日から施行する法律が過去にさかのぼつて適用されるということはあり得ないので、適用されない。ただしかしこういう法律ができたら、過去に起つた事実については、あとからこういう法律ができているのだから、過去の事実をやはりこの法律の精神に照らして損失補償してやろうという行政措置一でやられるのならかまわないのですが、この法律が過去の事実に適用されるのだというような説明だとしたら、これは問題であつて、今後大きい問題が起ると思う。今中村委員は了承する言われたが、これをあなたが承知したらたいへんなことになる。もう一ぺん答弁をし直す必要があると思う。
  22. 根道廣吉

    根道政府委員 この法律のことに関連いたしまする遡及効の問題といたしますと、なかなかめんどうでございまして、正直に申し上げますと、私はこれでできると考えておるのでありますが、疑問があると仰せられれば、まことにその疑問はあるのであります。従いましてこの点を何らか明確にするという方法があれば、委員会の御決定に従いましてもけつこうでございます。
  23. 松岡俊三

    松岡(俊)委員 ただいま水田君、綱島君から関連質問として申されたことは、前回委員会において、私が最も憂慮して指摘した一点であります。進駐軍から駐留軍に引続いておる。この法案によると前のものはほとんど全部片づいたかのようになつておるが、片づいてはおらない。初めて今回内灘の問題があれほど問題になりまするのは、われわれが講和発効後、独立国民となつて自由なる主張をなし得るからこれが言える。ところが進駐軍当時においては、鉄砲を構えてそこに一歩も入ることのできないような状態になつてつた従つてほとんどみな言われるままに問題が解決されなけばならぬようなぐあいで、一つ国民としてのほんとうの主張をなし得る機会がなかつたのであります。ただいま調達庁長官からこの点につい何らかの方法がありましたらばという答弁を得たので、委員会として十分なる処置をなさねばならぬということが明瞭になりましたから、私はこの一点はよろしゆございます。  次に私がお尋ねしたいのは、人命問題に関する点及びただいま御説明がありましたが、水中聴音機その他のことで、主として海軍や飛行機のことがありました。砲弾によつて教育が、あるいは産婦が非常な被害をこうむる。ことに直接砲弾下に住んでいるような人は教育上に非常な支障がある。ことに産婦などは問題である。こういう点をどの程度政府ではお考えになつておるか。この補償の認定をまず考えていただかなければならぬと思う。  第二点は、主として海のことに関することでありますが、農地関係、陸上の関係においては、ことに山林部においては、ほとんど山によつて生活しておる。この山によつて生活しているものが、接収地だけが補償対象になつて、これに連続する付近にあるものが、山菜、伐木あるいは採草に非常に損害があつても、従来はほとんど解決されずにそのままになつておる。この点についてどういうあんばいにお考えになつておるのか。  第三点は、ただいま申し上げました人命上の問題であります。砲弾下にあるものは、ほとんど生命が毎日脅かされておる有様であります。しかもそれは接収地でなく、その附近である。こういうようなことがありますが、すべて進駐軍占領時代に起つた問題が引続いてそのままになつておる。明後日根道長官初め農林省及び日米合同委員会方々が出張して親しくごらんになりますから、よくわかると思いますが、中途で砲弾が炸裂して、屋根からたんす、長持、針箱までめちやちやになつておる。一たび現地を見たら、実にはだえにあわを生ずるだけではない。しかもこれはそこに居合せなかつたからよかつたけれども、居合せたらただちに被害を受ける。その被害を受けたときに初めて補償対象になる。それがなければそのままになつておる。こういうことに対して、もう少し明確な行政措置が講ぜられるようにならなければ、この法案には満足できません。これらについてもお尋ねいたしたいのであります。私は長官の御答弁を得た後に、続いて農地関係でお尋ねすることがありますが、まずこの点をお答え願いたいと思います。
  24. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいま御質問の第二点及び第三点一緒の御答弁になるかと思うのでありますが、全般的に申しまして、ただいま御説示に相なりましたようないろいろな問題が起つております。またいろいろな迷惑が各方面に及んでおることは事実であります。従いましてこれらのことにつきましては、特にそういう方面補償の問題を扱つております調達庁としましては、種々心を砕きまして、何らかの措置をとりたいということはかねがね考えておつたところであります。しかしこの補償の問題につきましては、政府としては、やはり建前上実損が生じたものについてやる、こうせざるを得ないのでありますが、またなかなか損害の測定に非常に困難な性質のものもいろいろあります。そうかといつて放置するのもお気の毒なものが現実にはあるのであります。それらのものが現実補償されるようになる案を立てるには、非常にむつかしい点があるのであります。前国会にこの法案を提出いたしましたときに、その他の補償すべき事柄については政令をもつてこれを定むる。そのときにも各委員方々より、すみやかにこの政令をつくれ、内容はどうかというような御質問も受けたのであります。その後鋭意研究を進めております項目として、現在われわれが考えておりますことはずいぶんたくさんございます。しかしながらそれと申しましても、各方面の全部の御意見を網羅する段階にまでは、現在のところまだ至らぬかもわからぬが、かりに今私ども事務当局といたしましてこういう問題は取上げなければならぬかとして、種々研究中の事柄をまず申し上げてみたいと思います。  それでは大体のところだけ申し上げておきます。今われわれの事務的の案といたしまして考えております各種の項目を申し上げますと、一つ「海面(河川、湖沼及び海浜を含む)における艦船、舟艇、飛行艇使用及び水中における障害物の遺棄」その次には「堤防、林道、農道、水源用施設排水施設防災施設、ため池、又は魚つけ林不備除去損壊、新設、変更又は利用阻害」その第三といたしまして「水量の変更又は水質を汚毒する薬品、石油類使用」四、「火薬類並び爆発性を有する危険物の保管及び使用」五に「進入表面転移表面附近に存する建築物に近接した航空機の発着」六「学術研究を阻害する航空機戦車等重車輌の操縦及び射撃、砲撃」その他「自動車道使用」こういうような問題を掲げて目下事務的に研究中でございます。もちろんこの研究をいたしまするのには、単に項目をあげての研究ばかりではできないのでございまして、現実に各方面の調査をいたしまして、どの程度損害とおぼしきものが発生しつつあるか、発生するだろうかということもよく見きわめた上でありませんと、予算の手当等もととのいませんので、少しく実は時間を要しているような次第でございます。
  25. 松岡俊三

    松岡(俊)委員 今調達庁長官の御説明もありましたが、私にはまだ納得があまりできません。間接被害がどの程度までということはなかなか問題でございましようが、山林によつて主として生活しておる附近の住民——接収地内だけが問題になつておるが、その付近一帯が射撃のために山草をとるわけにいかない。いなかの寒村は肥料を買う資力もなく、山草によつて肥料をつくつておる、営農上の重大なる問題でありまして、こういう山草をとり得ないというのは、農家に対しての一大痛苦であります。また山菜その他によつて生活を維持しているというほど、山菜というものが非常に山の者の生活上には重大な関係があります。それから伐木によつて同様な生活をしておる。これが接収地内に限つているということが非常に不自然なんです。実際は付近接収地に隣接した地方に最もその関係があるのであります。これらの点については、現地を見ますとよくわかる、聞くばかりではわからないのです。ですから私は明後日の日米合同委員会において実地調査の上、どの程度までにこれらのことが測定されるかということによつて、さらに後日にもう一回委員長の許可を得て、保留さしていただきたいと思います。あるいはこの法案がその間に決定するような場合がありまするとしても、これは調達庁長官の方において特別に御考慮をいただいておかねばならぬと思います。また農地局長その他の方々が、委員として明後日現地においでになるのですから、この委員会の空気を体して、よくこれらの点を実地においてごらんをいただかなければならぬと思います。  次に私は、これも水田君の御質問によつて調達庁長官が修正のことを認証せられるような意向がわかりましたので、申し上げないでもさしつかえないようなものでありますけれども、念のために、これは山形県の知事として、特別の政府の所見を折返し願わなければならぬという問題でありますから、委員諸君にはたいへん申訳ないけれども、こういう懸案があつて、いかに終戦のために混雑した結果として起つておる問題があるかということを、委員諸君にもお聞きとり願う意味においてもお許しを願い得るかと思います。この六月九日に山形県知事が調達庁長官及び農地局長に宛てて折返し所見を願うという申請が出ております。その要綱は   神町キャンプ地区の調達に伴う補償について  昭和二十一年六月以降連合軍のキヤンプ敷地として接収を受け引続き駐留軍使用を受けている北村山郡東根町所在若木開拓地区中の一部一四八町余に対して昭和二十一年六月接収以前この土地の使用者であつた右開拓地の入植者武田浅蔵外百十六名から使用権に対する補償措置についての要望を貴官宛提出している筈であるが未だ措置を得ていないようであるからこの地域の状況並に陳情者の主張とするところの概要を述べ速急の善処をねがいたく要望する尚この件に対する国の方針を折返し御回示ねがいたい  一、本件土地は解散団体農地開発営団(以下単に開発営団という)が昭和十六年以降民有地を買収し昭和十九年以来三次に亘つて入植者を入れ一戸当り適正営農規模面積として四町歩を配分農地の造成に当つて来たが昭和二十一年六月連合軍の進駐によつてキャンプ敷地として接収されたものである  二、本年二月十八日陳情に及んだ武田浅蔵以不百十六名の者は右の方針に基いて昭和十九年以降本件土地に入植この土地の開発に当り二十一年六月接収時には一四八町余の概ね七割九三町余の農地を造成しており且住居を構え居住をしていた  三、本件土地に対する前記入植者の土地使用関係は自作農創設特別措置法又は農地法に基く国有開拓財産の一特使用の趣意と違い開発営団と入植者各人との間に賃貸借契約締結していたものであり年々賃借料を納入している  四、開発営団の入植者に対する本件土地の売渡しの方針は旧自作農創設特別措置法又は農地法の趣意と異り農地を完全に造成した後に売渡す方針であつた模様で接収時売渡を受けず前記の賃借権設定のままであつた  五、開発営団の解散に当つて本件土地は昭和二十二年法律第一七六号「農地開発営川の行う農地開発事業政府において引継いだ場合の措置に関する法律」によつて昭和二十四年四月国有開発財産として取得されている以上の如き事情にあるが武田浅蔵以下百十六名の陳情の処理に当つては更に左記事項をも勘酌されたく意見を附する  一、昭和二十二年法律第一七六号「農地開発営団の行う農地開発事業政府において引継いだ場合の措置に関する法律」に基く本件土地の開拓財産取得は旧自作農創設特別措置法第三十条第一項の趣旨である自作農創設の目的に供する土地としての意であつて取得の時期において同法第三十条に基き買収したものとみなさるべきではなく従つて昭和十九年以降陳情人等と開発営団との間に設定した賃借権は旧自作農特別措置法第十二条第一項による権利消滅とはならない。  二、昭和二十一年六月接収時陳情者は、本件土地中の農地について離作料(農業取得の二箇年分)をもらつているが、これは離作によつて生ずる損失に対する単なる補償であつて同人等の賃借権の排除措置ではない。  三、占領期間中の調達に伴う補償は土地に対しては所有権以外の権利についてなされなかつたが、駐留軍使用に供する土地の調達にあたつては、所有権以外の権利についても補償されることになつているので陳情者の権利も当然補償対象となるものと考えられる。  なお本件陳情者等の入植地区は前述のとおり適正営農規模面積として一戸四町歩を必要とする畑作地帯であるが(水田造成が不能の地である)しばしば次の調達によつて現在一戸八反ないし一町六反の狭少な土地を売渡しを受けているにすぎず農業経営が極度に困難であり生活が困窮している実情にあるのでかかる事情も充分に御考慮の上善処方おねがいする。  これが山形県知事として伺い出たものでございます。私は現地においてよくこれを調査したのでありまするが、終戦時に農地開発営団が解散されたがために、当然受くべきところの百十六名の開拓者が非常な困難を来しておる。これがただいま水田君の関連質問によつて明らかになつたのであります。これらの点は急速に解決しなければ、米軍に対する土地の者の反感が当然予想されるようなことになつていけないと思う。またこれらを利用して種種国家の実情を誤解せしむるようなぐあいに扇動する者も出ておる。これらの点から考えて、一刻も早く終戦時の混雑の際に起つた未解決の問題は、急速に解決せんければ、国家の現状からはなはだ憂慮すべきことだと思う、のであります。私の見たところ、山形県らわざわざ内灘方面を視察などしてまわりましたが、もし山形県の大高根の射撃場の問題を、一たびほんとうに取上げるようなぐあいになつたらどうなるか。明後日これをごらんになりますれば、実にびつくりするだろうと思う。そういうところでも、東北人が比較的おとなしく、協力的な態度に出ておる。これを不問に付するようなことになつたらばどんなことになるか、私は国家のために深憂にたえない。私は先日これらの者によく納得せしむるようにしたのであります。明日は山形県知事初めこぞつて本省に参るようになつておるのであります。一たびこれらの問題に火をつけるようにするか、せぬかということは、政府の対策、処置いかんによるのであります。それが先ほど水田君のお話のようなぐあいに、調達庁長官において考慮の余地がある。従来のようなぐあいじやいかぬ、でこぼこを相当に修正するようなところがあるということはわかりましたので私も少しく安心しておるのでありますけれども、幸い農地局長もここにおられるし、明後日は当局とともに現地視察に参るのであります。日本でただ一つ砲弾下にあるのでありますが、山の被害は海の被害と違つておりますけれども被害を受けている山村では種種なる扇動に陥りやすいところもあります。これらをよく御注意願いたい。こういうぐあいに終戦当時の混雑のために住民に迷惑をこうむらせている点があります。これはただひとりこの地方民ばかりでなく、全国的にこういうものがあろうと思いますから、善処していただきたいと思います。
  26. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 関連して……。私はただいま本案の中に遡及効を盛り込評という問題につきまして御質問申し上げ、前委員会においても御質問申し上げて、いろいろ遡及効の問題について答弁をいただいたのでありますが、この遡及効を盛り込むということが一番大事な問題であつて平和条約発効後におけるすべての損失に適用されることになり、また今日までの見舞金は一切内金ということになるわけであります。この問題が一番大きな問題であろうと思う。その一番大きな問題がすこぶる明確を欠いている。先の委員会において不動産部長より、行政措置によつてこれは完全補償するという答弁をいただいております。従つて私も行政措置によつてできるというような頭を今日まで持つてつたのであります。しかしながらこの点にいささか疑義をはさむものであります。従つて平和条約効力発生後における損失にすべて適用されるということ、それから各種の見舞金はこれが内金であるという長官の御答弁を了承してという言葉を私はさきに申し上げたのでありますが、これを取消します。私はこの法律の中に、明確なる効力を発するという遡及効を盛り込まなければならないと考えておる。それで私の了承しておるという先ほどの言葉を取消しておきます。しかしてまた関連質問といたしまして、先般の委員会におきまして、この法案によつて大体予想さるべき補償額はいかほどくらいであるかという質問をしたときに、大体七億から八億という御答弁をいただいております。この法案が通りました後におきまする損害補償というものは相当大きなものになろうと私は考えますので、この七億、八億という額ではたしてまかない得るかどうか、この点を明確に御答弁を願つておきたいと思います。
  27. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいまのところ一応の見込みでございます。しかしだんだんと調査が進みますると、七億、八億ではまかなえぬという事態が、ある場合には明白になつて来るかとも存ずるのであります。ただいままとまりました材料から見ますと、大体その辺であろう、こう今思つているわけであります。
  28. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 この額は予想額ということでありますが、相当の増額を必要とするものと私は考えます。従つてこの予算に対しましての問題、それからもう一点の遡及効を盛り込むという問題につきましてはあらためてまた御質問したいと思います。
  29. 田口長治郎

    田口委員長 松岡委員質問に対して何か御答弁がありますか。
  30. 根道廣吉

    根道政府委員 松岡先生の御質問に対してお答え申し上げます。先ほどいろいろお話がございました点につきましては、われわれとしてもかねて心を砕いておる点でありまして、十分心をいたしまして、できるだけすみやかに御憂慮になつておられるようなことを除去するように努めたいと存じます。
  31. 小高熹郎

    ○小高委員 関連して。今議題となつておりまするこの法案は、日本とアメリカとの行政協定に基く水面利用に関する法律並びに土地使用等に関する法律に抵触しておる点が非常に多いではないかと思うのでありまするが、これらの限界点の御答弁を願いたいことが一点と、いま一つ間接被害の解釈の問題でありますが、たとえば東京湾の防潜網の内側、東京よりの方は直接被害と見て、これに対する補償はこの法律で出すが、間接被害として防潜網の外側、南側、すなわち房州よりの方でございますが、これらは当然魚が絶えず動いておるのでございますから、間接的な意味において相当の被害があるのでございます。これらの被害もこの法律によつてはつきりと間接被害と認められるかどうか、この二点をお尋ねいたしたいのであります。
  32. 大石孝章

    大石説明員 小高委員の御質問にお答えいたします。他の法律との限界点の関係でございますが、施設区域の中につきましては、これは問題のない点であります。漁船の操業制限の法律に関しまして損失補償ができますものにつきましては、本法律を適用する必要はないわけでございます。  それから間接被害の範囲いかんという問題に要約されるようでございますが、在日米軍の行為漁業に及ぼす行為そのものが大体どんな因果関係にあるか、私どもの現在解釈しておる点を申し上げますと、相当因果関係があればこれをとるという解釈をいたしております。
  33. 小高熹郎

    ○小高委員 ただいまの間接被害に対して因果関係が濃厚ならばこれをとるというようなことではつきりいたしましたので、その点はその程度で了承いたしておきます。  いま一つの先ほど申し上げました他の法律との関係でございますが、内灘及び九十九里その他の地区を限られた問題は、多分にこれとまぎらわしいのでありますが、先ほどの答弁によりますと、ちよつと私ふに落ちない点もあるのでありますが、他の質問者も多いようでありますから、これは後刻あらためてお尋ねいたすことを留保いたしまして、質問を打切つておきます。
  34. 田口長治郎

  35. 山中日露史

    山中(日)委員 私は本法案補償すべき損失有無及び補償額決定に対する不服、すなわち救済方法についてこの法律には不備欠陥があると考えますので、その点について調達庁の見解を承りたいと思います。  この問題につきましては、過般の水産常任委員会におきましてお尋ねをいたしたのでありますが、その際には調達庁の方におきましても意見がまとまつておりませんので、次会に見解をまとめて御答弁を願うというお約束ができておりますので、この機会に重ねてお尋ねをいたしておきたいと思います。場合によつては修正の必要があるのではないかとすら考えておるのであります。それはこの法律によりますと、損失補償を受けようと思う者は、それぞれの手続を経まして総理大臣に申請をいたすのであります。その場合に総理大臣は損失があるかないか、また損失補償する場合においては、幾ばくの損失額を補償するかという額の決定をいたすのであります。この損失有無補償額決定に不服のある場合においては、さらに申請人は総理大臣に向つて異議申立てができるということが規定せられておるのであります。そこで法律の第五条に参りますと、「この法律により決定された補償金の額に不服がある者は、その決定通知を受けた日から九十日以内に、訴をもつてその増額を請求することができる。」こういうふうに規定しておりまして、損失補償するということが決定された場合においてのみその増額請求に不服のある場合においては、国を被告として訴えをもつて救済することができるというふうに規定されておつて、かんじんの総理大臣が損失有無について、異議申立てに対して、やはり損失がないと決定した場合においては、もはやその申請人は国を被告として訴えをもつて救済するという道がこの法律では明確になつておらないのであります。この点は私はこの法律の非常な欠陥ではないか。損失額の場合においてのみ国を被告として訴えができるということを特に規定しておりながら、損失のないという決定がなされた場合において、救済の道がないということは非常に片手落ちである。ことにこの法律によりますと、間接損害までも賠償するという因果関係の範囲の非常に広汎に解釈される問題が多いのでありまして、必ずや問題が起きた場合においては、その損失は当然補償すべきものである、あるいは因果関係があるとかないとかというような問題が当然出て来ると思うのです。かかる場合において最終的にそれらの人に対する国を被告として訴えをもつて救済するという道が開かれておらぬのは非常に片手落ちである。かように考えますが、その点についての御見解を承りたいと思います。
  36. 山中一朗

    山中政府委員 ただいまの山中委員からの御質問に対してお答えいたします。先般の水産委員会におきまして、この点が質疑応答されたのでございますが、これに関連いたしまして関係方面意見も聞いた後にお答えするということになつておりました。ただいままた再度御質問がありましたので、第五条の増額の請求のみをあげた理由を申し上げたいと存じます。  本案の第二条の第三項の決定に不服のある者は第三条の規定によりまして異議申立てができるのでございます。それに対して、第三条第二項により、内閣総理大臣決定することになつておりまするが、この決定に対しさらに不服がある場合は、いわゆる損失有無についての不服のある場合は、行政事件訴訟特別法の第一条、ないし第二条の規定によりまして、訴訟を提起することができることになつておるわけであります。従いまして本法におきましては、この規定をしなかつたのであります。増額請求につきましては、行政訴訟特例法においては救済ができないので、特に本法において救済規定を設けたような次第でございます。
  37. 山中日露史

    山中(日)委員 行政事件訴訟特例法によつて——駐留軍行為によつてこうむつ損害に対して、その損失を認めないという決定に対しては、この特例法によつて救済ができるというお話でありますが、これは見解の相違になるかもしれませんけれども、私は絶対にできないと考えております。と申しまするのは、御承知のように行政事件訴訟特例法は、かつて新憲法が生れまする前に行政裁判所という特別裁判所がありまして、すべて行政訴訟はこの行政裁判所によつて行われたのでありますが、新憲法によりまして、こういう特別裁判所がなくなりまして、すべて民事裁判所において裁判をするということになつたのであります。従つて民事裁判所において取扱うところのこの行政上の諸問題につきましては、従来行政裁判所があつた当時取扱つたその事件の内容とまつたく同一でありまして、この行政事件訴訟特例法において取扱われるところの問題というのは、言うまでもなく行政庁の違法なる処分の取消しもしくは変更を求める場合、すなわち日本の行政庁の不当なる処分あるいは行為によつて損害をこうむつた場合においてのみ、損害をこうむつた者はその行政庁を相手取つて訴訟ができるというのであります。しかしながらこの場合は、行政庁自身の行為によつて漁民や農民が損害をこうむるのではないのでありまして、いわゆるアメリカ駐留軍の演習その他の日本の行政官庁の行為でない、そういつたよその国の人の行為によつてこうむつ損害を国が賠償するというのがこの法律の建前であります。従つて、この行政事件訴訟特例法では、先ほど申し上げましたように、日本の行政官庁の行為によつて国民損害をこうむつた場合においての救済行為であります。従つてこの行政事件訴訟特例法によりますると、ただちに行政訴訟はできないのでありまして、必ずその行政処分をなしたところの官庁に対して異議申立てをする。それに対して不服な場合においては、さらに上級官庁に対して訴願をする。それがけられた場合において、初めて行政訴訟が提起できるというふうに、はつきり手続上の規定規定されておるのであります。この法律によりますると、最初申請された補償額決定するのも総理大臣、異議申立て決定するのも総理大臣でありまして、同じ人が決定をするのであります。従つてこういう変則な異議申立ての取扱いを規定いたしておるのでありまするから、当然にこの損失がないというような決定をした場合においては、やはりこの法律で特に国を被告として訴えを提起できるということを規定しなければなるまい。先ほど言いうように、その増額の場合だけ規定したのだ。行政事件訴訟特例法では救済できないからだとおつしやいますけれども、もしもこの損失がないということを決定した場合においても、行政事件訴訟特例法で救済できるものであるならば、当然その補償額決定に対して不服な場合においても、この法律の適用はなくても、この行政事件訴訟特例法で救済されなければならぬ。しかるに特にこの法律増額の請求のときだけを国を被告として訴えができるということを規定したところを見ますと、やはりそこに矛盾がある。でありますから、私は当然これはこの法律規定しなければ、絶対にこの行政事件訴訟特例法においては救済することはできないと考えております。さらにしからば、国家賠償法というような規定でこの被害をこうむつた人々に対して国が賠償できるかというと、これもできない。それは国または公共団体の公権力の行使による公務員がその職務を行うについて、故意または過失によつて国民損害を加えた場合でありますから、本件のような、駐留軍行為による場合においては、国家賠償法においても、この被害者は救済ができないのであります。従つてあくまでもこの法律に、特に国を被告として、そういう場合においてはやはり救済ができるという道を開かなければ、他の法律では絶対に救済できないのでありまして、これは見解の相違かもしれませんが、私はそう考えておる次第であります。この点についていかがでしよう。
  38. 山中一朗

    山中政府委員 ただいま山中委員からの御意見でございまするが、そういう点につきましても一応見解によりましていろいろ相違があるかと思いまするが、われわれといたしては、進駐軍行為であつても、その行為によるところの損害を国が判定し、国がこれを補償するということになりますので、総理大臣の決定は当然行政行為と解釈して、これの損害有無についての判定がある場合は、これを違法であり、適法であるということは当然起ることと思うのであります。それからただいまの国家賠償法による問題でございますが、これは御高見の通り、私もできないのじやないかと、こういうように考えております。
  39. 山中日露史

    山中(日)委員 これはまあいくらいつても見解の相違でありまして、いずれそれぞれ法制局その他の意見も徴したいと思つておりますが、私の聞くところによりますると、法制局においても、私の考えが正しいというふうにも聞いております。ただ今お答えの中で、異議の申立を却下したところの決定は、それはやはり行政官庁の行為だから、それによつて救済ができるといいますけれども、私の先ほど申し上げましたように、その行為の不当をついて、そうして損害を要求をする場合には、その行為は行政官庁の行為によつて、つまり不当なる処分、行為によつて生じたところの損害でなければならない。しかるに今回の場合は駐留軍行為によつて生じた損害でありまするから、その損害の発生原因がつまり総理大臣の決定によつて生じた損害ではないのです。従つて総理大臣の決定、つまり行政処分によつて生じた損害であるならば、お説のように、あるいはこの行政特例法でできるかもしれませんが、その損害が発生したのは、決して総理大臣の決定という行政処分によつて生じた損害ではないので、駐留軍行為によつて生じた損害である。ここに根本的な考えの違いがあると思います。これ以上は議論になりますから申し上げませんが、私どもは各党の委員とも相談をいたしましてこの点を明確にしておきませんと、非常に不公平な結果になると思いますので、いずれこの点については、各党の委員とも相談いたしたいと思います。この点についての質問は終ります。
  40. 田口長治郎

    田口委員長 足鹿覺君。
  41. 足鹿覺

    足鹿委員 私は農林委員の立場から若干お尋ねをしておきたいと思うのであります。先刻からいろいろと御質疑があり、また水産委員会で御審議になつておりまして、私は水産委員会出席しておりませんから、あるいは重複等の点があるかもしれませんが、そういう点はあらかじめ御了承をお願いしておきたいと思います。  まず最初に、本法により賠償を用意しておられまする地域は現在どこどこでありますか、これを明らかにしていただくことはできませんか。先刻は七億ないし八億の予算を必要とするであろうという御答弁がありました。従つてその金額を算出されますについては、大体補償対象となる、あるいは補償を用意されておる地域というものはほぼ見当がつくものではないかと思いますが、その点をまずお尋ねいたしたい。
  42. 大石孝章

    大石説明員 先ほど長官からお答え申し上げましたああいう事項に関しまして、これを地域的に申し上げますと、山形県山口村、若木村、これは水源を軍の共同にて使用いたしておりますために、使用の水量がふえまして、灌漑用水に非常なる不都合を来しておるという事案でございます。同じく農業関係で、仙台周辺の部落で、やはり水源を軍が利用いたしておりますために、灌漑用水の不足を来しておる、そういう農業上の被害であります。同じく松島の近くの矢本の飛行場、この飛行場建設のために、防風林魚つけ林等を伐採いたしましたために、付近の農作物及び漁獲物に被害を与えておるという事案でございます。それから農業被害で、宮城県の王城寺原、これは軍の射撃場に使つておる関係で、やはり水源を利用し、またいろいろ水路の破壊等がありますための灌漑用水の不足、同じく農業で、東京都北多摩郡砂川村の横田飛行場から雨水が流出いたしますために、隣接の耕作地に被害がある、排水施設の不備に基きますところの事案でございます。同じく北多摩郡昭和町からやはり雨水の流出によりまして農作物に被害があるという事案でございます。埼玉県の入間川町航空基地からの雨水の流出により畑が冠水し、被害が起きているという事案でございます。同じく農業の被容で、キャンプ富士からの雨水の流出によりまして耕地の被害があるという事案、同じく農業被害で、山梨県南都留郡忍野村森林の濫伐によりまして耕地に出水を来たした防災施設損壊による被害でございます。同じく山梨県の梨ケ原の水源利用によりまして灌漑用水が不足になつている水源利用阻害の事案でございます。九州の芦屋の空軍基地建設に際して、防風林除去いたしましたために近隣耕地に被害を及ぼしたという防風施設損壊に基きます農業上の被害、同じく農業上の被害で、青森県の大三沢町で高射砲の射撃演習によります井戸等の被害、それから三宅島で航空機の爆撃演習によりまして井戸あるいは貯水槽、屋根瓦等の被害がありますところの農業上の被害、愛知県小牧飛行場滑走路延長上に農家がありまして、航空機の進入方面付近に存在いたします建物であります関係上、航空機の発着等のために損害をこうむつて移転を要するという事案でございます。熊本県の大矢野原で軍が防災林を伐採いたしましたために、いわゆる防災施設損壊、農作物に被害を及ぼした事案でございます。北海道千歳航空基地キャンプから排出されました汚物あるいは薬液等によりまして、河川にその河物薬液が放流されますために魚族が壊滅する、それから木草が枯死する、住民の河川使用ができない、牛馬の放牧が危険という農業漁業等の被害でございます。  以上が農業林業とかみ合つた被害でありまして、以下東京湾の防潜網被害と、現在私どもの調査に基きまして損失補償を要するという結論に到達いたしましたのは三十四件でございます。
  43. 足鹿覺

    足鹿委員 今後この種の被害はまだ増加することが大体予想されます。それに関連いたしまして、本法による補償金の財源は、予算科目は防衛支出金でありまして、二十八年度の予算が六百二十億になつている、こういうふうに承知いたしますが、その防衛支出金の金額のうち、本法による補償に支出される項目は何でありますか、かつその金額のわくは何ほどになつておりますか、お伺いいたしたい。
  44. 山中一朗

    山中政府委員 はなはだ申しわけありませんが、ただいま財務関係の者が参つておりませんので、はつきりした予算案の内容を手元に持つておりませんが、私たちが承知しておるところでは、ただいまお話のように、本国会提案されておる予算案の中に、防衛支出金が六百二十億ございまして、その中に施設提供等諸費というのが五十三億九千二百十二万五千円ほどございます。この中から出ることになると存じております。
  45. 足鹿覺

    足鹿委員 大体五十三億余ということでありますが、その五十三億余がもし不足を生じた場合、財政上の理由からして、当然支払わるべき補償金が削減されるようなことがあるかどうか、そのわくは必要によつて増額せられる余地あるものであるかどうか。なおアメリカがその額のうち分担する額は、規定によつて半額ずつとなつておりますが、さように承知してよろしいかどうか。
  46. 山中一朗

    山中政府委員 ただいまの予算額に不足を来したときはどういうふうに処置するかという御質問でございますが、われわれかかる補償を取扱つている官庁といたしましては、御承知のように確定した債務を事前に把握できないのでありますから、われわれが財務当局に絶えず申し、また将来も折衝して、かかる点でやりたいという考え方は、もし年度内に支払うべき債務が発生し、当然支払うべきものにつきましては、当該年度内における予算の組みかえその他によりまして、完全に支払いいたしたい、こういうように存じておるわけであります。  防衛支出金のアメリカとの分担云々というのは、安保条約にも規定されておるようでございますが、われわれが今ここで半額を完全にこの金額について補償するかどうかということにつきましては、財政当局がいないので、十分お答えできないことを遺憾といたします。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 私の申し上げておる点は、従来よくあつたのでありますが、予算上におけるわくの制約によつて、気の毒ではあるが、十分の補償あるいは措置が講じられないということは、行政官庁の場合には今までも十分事例があるのでありまして、その点を案じてお尋ねをしておるのであります。もちろんこれはあらかじめ予測し得る場合もありましようし、また予測できないような突発的に出て来る場合等もその仕事の性質上あろうと思います。従つてこういう事案につきましては、融通性といいますか、その運用上において適正かつ敏速にその損失補償が与えられなければならないと思うものでありまして、財務当局がおいでにならなくとも、長官がおいでになるのでありますから、その点はここで明白にしていただきたいと思います。
  48. 根道廣吉

    根道政府委員 予算が足らなくなつたらどうかという点でありますが、われわれといたしましては、できるだけ早期において必要金額の算出を試みまして、それに対する手当を、全予算の中からできるだけ融通つけたい、こう考えております。予算が足らぬから損害を負けろという筋合いのものではなかろうと私は存じております。必要によりましては、大蔵当局とも協議の上、予算を国会に提出して追加の措置も講じなければならぬことがあろうかとも存じます。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 なお先刻の御質問によつて私も聞いておつたのでありますが、当面の損失補償の金額は七ないし八億というお話でありましたが、それとただいまの不動産部長の御答弁の五十三億何がしというものとの関係はどういう関係にあるのでありますか。
  50. 山中一朗

    山中政府委員 ただいまの五十三億九千万円の計数は、全体の調達庁で所管しておりますところの施設提供諸費というので、その中で一応今度の特損によりまして起るであろうとわれわれが目安をつけた金額が七億ないし八億である、こういう関係になつております。
  51. 足鹿覺

    足鹿委員 その問題はそれといたしまして、追加予算を提出する場合もある、また迷惑を運用上においてかけないという長官の御言明でありますから、この点は一応打切つておきます。次に本法による無過失責任を補償するに至つた動機、また駐留軍の過失、無過失の判定はだれが行いますか、その二点をお伺いいたしたい。
  52. 大石孝章

    大石説明員 お答えいたします。本法におきましては、駐留軍行為がありまして、従来適法に営業しておりました農業漁業林業あるいは政令で定める事業損失を及ぼした場合に適用するのでありまして、過失の場合は不法行為で、これは民事特別法によつて救済されることになる次第であります。
  53. 足鹿覺

    足鹿委員 だれが判定するのですか。
  54. 根道廣吉

    根道政府委員 今御質問のような関係のことがもし起りましたときには、日本側は日本側として調査するのであります。また米側は米側といたしまして、公務上の行為であつたか、公務外の行為であつたかということもみずから調査するわけであります。それで意見が一致して、これをそれぞれ公務上、公務外と日本政府とアメリカ政府の納得ができますれば、その線に従うわけでありますが、非常にむずかしい問題に相なりますと、これは合同委員会において決するところに従う、こういうことになると存じております。
  55. 足鹿覺

    足鹿委員 この際これに関連していま一点明らかにしておいてもらいたいのですが、本法においてアメリカ合衆国の軍隊の行為によるとはつきりなつておりますが、現在の状況をわれわれが見た際に、いわゆる軍隊の構成員である個々の軍人の公務あるいは軍隊以外の行動による損害というものも相当あると存じます。特に開拓地等におきまして、軍人が休暇中に馬を飛ばしてたんぼを走りまわるというようなことで、開拓地農民は相当これらの点について苦情を申し出ておることは御存じの通りだと思うが、そうした損害は本法によつては適用されないかどうか、その御解釈はどういうふうになりますか承りたい。
  56. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいまお尋ねの点は、本法によらずして、民事特別法によるものと心得ております。
  57. 足鹿覺

    足鹿委員 次にお尋ね申し上げたいのは、駐留軍行為による直接あるいは間接の損失は、これらの法律によつて一応補償されるといたしましても、無形の、いわば精神的な損失あるいは被害というような点が農林関係の場合は多いのであります。すなわち演習場の近傍でいつ内時田畑をふみ荒らされるかわからぬ、そういうようなことから農民が生産意欲を喪失する。これは直接被害として載つては参りませんが、これらのものは相当なものがあろうと思われます。これは本法の適用ということは困難だと考えますが、調達庁ではこれらの点についていかような御所見を持つておられますか、この際伺つておきたい。過般小平で航空機の墜落事故によつて農作物の被害があつたことは御存じの通りでありますが、これらの損失補償あるいは賠償は、本法によるものとの間に取扱い上どういう差異がありますか、その二点を承りたい。
  58. 根道廣吉

    根道政府委員 一応私として考えておりますところは、ただいま例に引かれました小平の事件のようなものは、これは民事特別法によるべき損害かと考えております。その場合損害の算出の方法は、ただいま提案いたしております法案と、農作物等の被害等に関しましては、内容はまつたく同一たるべきものと考えております。
  59. 足鹿覺

    足鹿委員 民事特別法による決定ということでありますが、従来民事特別法によつて損失補償したものと、この法案との間において開きがあつたとか、本法と比較してみて著しく差があつたとか、そういうような事例がありますかどうか。
  60. 根道廣吉

    根道政府委員 損害の起ります時期、その種類等によりまして、現実問題としては似たものでも多少の差異がある場合があるということは御了承願えるかと思うのでありますが、われわれとして、起りました事件がほぼ時を同じうして、いろいろのものの変動がないときには、同じようにせなければならぬものと考えております。
  61. 足鹿覺

    足鹿委員 こまかい点はまだありますが、一応大筋だけを私はお尋ねして先に進みたいと思います。今の御答弁では不満でありますが、これはまた同僚議員の御質問もあることでありますから、他の機会に譲りたいと思います。  次に補償算定の基礎について、現在立案せられたものがありますか。あればこれを御提示願いたい。
  62. 山中一朗

    山中政府委員 その基準について現在確定したものはまだございません。
  63. 足鹿覺

    足鹿委員 ないとおつしやいますが、先刻は七、八億という数字を長官みずから御発表になつておりますし、これらは何らの算定根拠なしにさような数字をはじき出されるとは考えられませんが、もし現在ないことが事実であるならば、どういう一つの要綱によつてこの算出基礎を今後定められますか。その大綱について承りたい。
  64. 山中一朗

    山中政府委員 お答えいたします。現在までわれわれが考えております大綱と申しますか。行くべき筋と申しますか、これにつきましては、二十七年七月四日の閣議了解で、駐留軍の用に供する土地等の損失補償要綱というのがございます。これに基きましてある程度推定した金額が、先ほど申し上げました金額に相当しておる、こういうふうに考えております。将来またこの法律施行されるまでには、完全な補償の適用基準というものをつくらなければならぬと思つております。これにつきましては、これは一応のテキストと申しますか、サンプルといたしまして、いろいろ関係各省とも相談いたしまして、その上で中央調達不動産審議会あたりにはかりまして、確定した案を作成いたしたい、こういうように存じておる次第であります。
  65. 足鹿覺

    足鹿委員 次に本法により受けた補償金に対して、課税上の取扱いはどのように大蔵当局と話がついておりますか。  なお先刻の私の質問に二、三関連もあるのでありますが、この権利関係の明確でない、いわば期待利益とでもいいますか、そういうものに対する補償の方針が本法においては明確にされておらない。たとえば内灘のごときは、聞くところによれば、あれは開拓財産であつた。全部あるいはその大部分かは私明確に存じませんが、これを所管がえをされまして、ああいう事態を引起しておいでになる。これはあれを将来開拓をして、そこに一つの食糧増産の目標を持ち、従つて大きな期待利益を地元の者が予想しておることは明確でありまして、これらのものが一瞬にして喪失してしまうのでありますが、こういつたものはなかなかむずかしいとは思いますが、これは重大な問題だと考えます。特に開拓地においては開墾建設計画を立てて、むやみにやつておるのではなくして、一定の方針と計画に基いて、乏しい資金と農民の努力によつて営々計画が進められておる場合に、こういう問題が降つて来るということによりまして、駐留軍行為によつてそれが画餅に期してしまうのであります。これは農業上の問題としては実に重大な問題だと思います。これらの点については、本法では何らの規定がありませんが、これらについて長官なり当該部長の御所見を承つておきたい。
  66. 山中一朗

    山中政府委員 ただいま足鹿委員からの御質問補償に関する課税問題でございますが、これは所得に算入する際は所得税法が適用されます。それから実費弁償的な補償、たとえば移転その他につきましては、されないわけでございます。その点御了承願います。
  67. 平川守

    平川政府委員 ただいまのいわゆる期待利益と申しますか、こういうものに対しましては、補償という形でこれを考えることは困難であります。従つてこの法律においても、そういうものに対する補償考えておらない。ただ実際問題といたしまして、農家の生活の安定なり食糧の生産なりということはきわめて重要でありますし、農林省といたしましても、他の一般的な土地改良あるいは開拓なりという事業を、でき得る限りそういう地帯に結びつけてやつて参りたい。たとえば内灘におきましても、あの砂丘地帯の残された地帯に対する畑地灌漑というようなことを計画しておる。これは直接の補償というわけではありませんけれども、その地帯の農家生活等を考えておるわけであります。
  68. 足鹿覺

    足鹿委員 先刻の補償金に対する課税上の取扱いについていま一応承りたいのでありますが、所得に類するものについては課税の対象になるというお話でありますけれども、その所得に類する場合は、たとえばどういう場合でありますか。
  69. 山中一朗

    山中政府委員 たとえば実際当該年度に推定される漁獲高、これに対してこれだけの漁業所得があつた、こういうものに対しまして、それが駐留軍行為によりましてとれなかつたから補償する、こういう場合は所得と考えておるのでございます。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員 わかりました。平川さんにもう一点ただいまの期待利益の点で承つておきたいのですが、これはあなたの所管に一番多い問題でありますが、こういう問題について、本法との関連において何らか具体的にこれらのことをお取運びになる御意思と御用意があるかどうか。ただ運用上の問題のみならず、何らかの措置を講ぜられる御用意と御意思があるかどうか承つておきたい。
  71. 平川守

    平川政府委員 これは法制的にきめることはきわめて困難でございまして、個々の地区々々の状態に応じて考えるよりいたし方がないかと思うのでございます。私どもとしましては、一つ一つの地区についての使用決定いたします際に、その土地の農家の状態なり、あるいは農地の状態なりを十分検討いたします。これは第一に使用を極力避けるということから参つておるわけであります。その際にできるだけ農家の生活なり農業に影響を与えないように、最小限度にとどめる。そのときのその地区の具体的な事情をつまびらかにいたしまして、その付近においてたまたま開拓に適する所があるから開拓しようとか、あるいは干拓に適する所があるから、これを干拓することによつてその人々の生活の安定をはかろう。その地区々々の状態によつてそういう無形の損害を受ける人々に対する対案を、一つ一つ具体的に考えておるわけでありますが、これを法制的にすることはちよつと困難であります。
  72. 足鹿覺

    足鹿委員 そうすると平川さん、それらに基く補償金の中に、見舞金というようなものがどこかの場合にあつたようですが、今おつしやつたような期待利益に対する損失補償意味を含めたものを、いわゆる見舞金というふうに御解釈になつておりますか。見舞金補償というものはどういうふうにお考えになつておりますか。
  73. 平川守

    平川政府委員 ただいまのお話の見舞金というのは、どこに出ておるものでありますか、従来こういう法律がありませんために見舞金という形で補償しておつたものがございますが、そういうものでありますとこの補償にかわるわけであります。ちよつと今の見舞金という言葉の出どころがはつきりいたしませんが丁……。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは一つの事例をお示しして御所見を承ります。内灘砂丘地の一時使用については、政府から昭和二十七年十一月二十六日付で県あてに正式通牒があつた。これに対する内灘村への見舞金として総額五千五百万円であり、直接地元へ銀行を通じて支払われたが、第一次支払いは十二月十七日、第二次支払いは昭和二十八年一月二十九日となつておりますが、この事例を御存じないのですか。局長はこの間飛行機で現地においでになつたはずですが……。
  75. 平川守

    平川政府委員 ただいまの事実は存じております。その見舞金の性質につきましては調達庁の方からお答え申し上げます。
  76. 根道廣吉

    根道政府委員 これは見舞金でございます。内灘村のあの地帯におきまして、政府といたしましてああいう射撃場を提供しなければならぬという事態があつたわけであります。ところが御承知のように、内灘村という所は非常な貧寒村でありまして、全体がささやかな漁業によつてつておるというような土地柄でありまして、全体的に村に対して非常な不安を与え、同時に多くの人が生業を奪われてしまうというような事態である、こういうような建前から、これは村を救済する意味において見舞金を出さなければいかぬ、こういうふうに考えて出した見舞金であります。
  77. 足鹿覺

    足鹿委員 私のお聞きしたいのは、期待利益に類する補償措置としておやりになつたかどうかということでありますが、非常に困窮をしておるから、その困窮に対して同情的な立場から見舞として出したのだ、こういう御答弁のようであります。しからば今後その困窮がかりに内灘の事態よりもさらに状況を異にするような箇所が発生したときには、この見舞金というものは一定なところにくぎづけされるものでないと解釈してさしつかえないと私は思います。これとまた逆な立場において、一見生活にそう困窮しておらないがごとき状態だとだれかが御認定になれば、その見舞金というものは引下げられる。要するに自由自在にさようなものが、時の政府なりあるいはそれと連絡をされる人々の意思によつて左右されるというようなことは、従来もあり今後もあり得ると思いますが、この見舞というようなものの内容をもつと明らかにし、第一条第一項に「その事業経営損失をこうむつたとき」該当するとなつておりますが、いわゆる事業財産以外の財産に損害を与える、すなわち家計上重大な損害を受けたときとわれわれは解釈しても、一面さしつかえないと思います。しかるにこの一条の第一項には「その事業経営損失をこうむつたときとはつきり規定し、何らそこに含みがありません。「等」という言葉もなく、はつきりこれは切つてあります。従つて私がただいま問題にしておりますような点については、いわゆる見舞金というようなそのときの都合によつてふらふらした事実の認定によつて行われる結果になるのでありますが、いわゆる家計上の損失は生活の困窮との関連があると私は見るのであります。この第一条第一項の規定のみでもつて事足れりと当局はお考えになつておりますかどうか。また家計上の重大な損害とみなして見舞金というものはそういう意味をも含めて御支出になつておるのでありますか、その点を明らかにいたしていただきたい。
  78. 根道廣吉

    根道政府委員 単純に困窮しておるからということだけをもつて見舞金を出す、あるいはその程度によつて見舞金に差等をつけるというようなことは、全般的から申しますれば、補償問題として仕事を扱つている調達庁としては、できるだけ公平な立場において物事をしなければなりません。ただいま内灘の例が引かれましたが、これも単純な困窮ということではございませんので、村全体の生活が将来に向つて脅かされるという事態を考えて、またたまたま通常の現在までの補償要網等によつてはなし得ませんので、その事態を勘案いたしまして出しました見舞金というものであります。今後この法案が通りました後におきましては、多くのものはこの法案によつて救済されるように相なるのではないかと私は考えております。また第一条だけで救済できるのかということでございますが、それらの点につきましては、先刻も多少こまかに申し上げた点でございますが、政令によりましてさらに具体的の損害の発生の場合をとらえまして、しかるべき処置をしたい、こういうわけであります。それからまた家計上の損失という言葉をお使いになつたのでありますが、私ども考えますところ、大体におきまして多くの場合何らかの事業ないしは事業と称し得べきものをやつているというふうに考えることができるんじやないか。そしてまた、これをある意味におきましてはできるだけ広くいたしまして、ほんとうに、損害を受ける者に対する補償をいたしたい、こういうふうに考えております。
  79. 足鹿覺

    足鹿委員 政令でさらによく規定したいというお話でありますから、ついでに政令問題も私はお尋ねしてみたい。第十五国会の水産、農林連合審査会の速記録を読んでみますと、その当時は政令案を提示する段階にないと政府委員はお答弁になつております。しかし当時から今日まですでに四箇月以上も日子が経過しておりますから、当然こういう重大な問題については、各省がそれぞれ案を提示し、そしてこれを御協議になつて政令案というものはすでにできておらなければならないはずだ。われわれはこういう重大な、わずか紙一枚でもつて地方住民の、国民の側の父祖伝来の地がいろいろな形でこわされ、それによつて大きな被害を受ける。こういう重大な問題に対して、この一枚の簡単な法律でもつて一応大綱をきめられ、他の具体的な問題はすべてこの政令に委任されるならば、その本法審査と並行して審査をしなければならぬのは、その政令の内要だと私は思う。そのものをできておらないとは私ども考えません。できておるはずだ。四箇月もたつておる。私どもは選挙で中断されておりますが、あなた方は選挙中はひまであつたわけでありますから、十分御研究ができておると思うのですが、その点を明らかにしていただきたい。
  80. 根道廣吉

    根道政府委員 前国会においてまさに御質問の通り申し上げた記憶がございます。その当時はまだ用意ができておらぬ、今はつきりぜひともしなければならぬと考えておるのは、ここに掲げてある第一項目及び第二項目だ、これはぜひすぐにもやらなければならぬものであるというように御答弁を申し上げまして、その他のことについてはいろいろのことはありますけれども、いろいろ研究してみなければならぬというふうに申し上げたのであります。その後おそいのでおしかりを受けて済みませんでございますが、先刻申し上げましたように、各地における実態を把握することに鋭意研究を進めまして、項目といたしましては、先刻申し上げたような項目を応考え、具体的の事態に対しましては、従来あります基準等によつて算定し得るものはこの額を算定して予算方面の裏づけも獲得しなければなりません。そういうようなことでいろいろ研究を進めて参りましたところ、すでに三、四箇月かかつたのであります。ただいまそういう案をもちまして、政府部門におきましてそれぞれ関係の向きと協議中でございますので、御了承願いたいと思います。
  81. 足鹿覺

    足鹿委員 三、四箇月もたつてまだ協議中で、この重大な案件を審議する際に、われわれがある一つの原案として御提示願うことのできないことをはなはだ遺憾に思うと同時に、これはあなたの方の準備不足でもありますし、強く言いますならば、怠慢だとも言えます。そんなことではとても現地の熾烈なこの問題に対して、迅速、的確なる補償等についても前途が心配されて来ます。もう少し御勉強になつて、この案を御提示になり、委員長においても——われわれ農林委員会としても重大関心を持つております。従つてこれは速急に審議して成立せしめなければならない性質の法律ではありますが、しかし内情を精密に具備した完全なるものとして出さないと、また再びその都度改正々々ということもできますまい。でありますから、委員長においてもその点を十分御考慮になりまして、すみやかに政令案を本委員会に御提示になるように、事務当局を御督励願いたいと思います。  ついでに政令の問題ですが、第一条第一項に「農業林業漁業又は政令で定めるその他の事業」とありますが、「その他の事業」とは何ですか。これは御質問が、あつたとも思いますが、私はこの委員会に出るのが初めてございますので、それくらいはもうわかつておると思いますが、いかがでしよう。
  82. 大石孝章

    大石説明員 お答えいたします。その他の事業もやはり政令に盛る次第でございます。
  83. 足鹿覺

    足鹿委員 どうもそういう御答弁では、私どもまともに受取りがたい。大まじめでそういうことを御答弁になるということは、あなた方の非常に不勉強というか、誠意に欠くるものがありはしないかと思う。そんなばかな答弁がありますか。その他の事業は一体何をあなた方は考えておるかということを私は聞いておるので、それをおつしやればよろしい。そんなばかな答弁がありますか。
  84. 大石孝章

    大石説明員 先ほど長官から、大体現在の構想をお答え申し上げたわけでございますが、本法の中心となる課題は、農業林業漁業が中心なのでございます。その他の事業につきましては、申し上げましたように、政令に盛りまして規定いたす次第ございますが、現在どういうものを考えておるかという足鹿委員のおしかりでございますから申し上げますが、今の研究では学校教育法、社会教育法によりますところの学校教育「社会教育またはこれに準じますところの学術研究のための事業、道路運送法によりますところの自動車道事業、海上運送法によりますところの船舶運行の事業、現在私ども研究の結果到達いたしました結論は以上の三点でございます。但し長官から申し上げましたように、その後の四箇月間の事態で、私ども当初の原案ではとても今発生しましたところのいろいろ申されておりますところの損失を全部補償するに足るとは考えられないという次第で、いかなる項目を追加するかということを研究し、また具体的に当つて各省と協議等を遂げて、着々整備中の段階にございます。
  85. 足鹿覺

    足鹿委員 初めからさようにおつしやれば何も問題はなかつたのであります。私の先刻申し上げたのは、そういう内容をお聞きしたかつたのです。了承いたしました。さらによく御研究を願いたいと思います。また遡及規定の問題等は、中村さんが詳細追究されますし、また私どもの同志の山中君からも総理大臣の補償決定問題に関連しての片手落ちは追究されましたから、私はこれを省略いたします。  最後に二、三点簡潔にお尋ねを申し上げて終りたいと思います。中央不動産審議会の構成メンバーはどういうものをお考えになつておりますか。
  86. 根道廣吉

    根道政府委員 お尋ねの審議会は、調達庁設置法に書いてある審議会でございまして、現存いたしますが、委員等は各界の学識経験者を主として集めております。どういう種類の人であるかは今申し上げましようか。
  87. 足鹿覺

    足鹿委員 不動産審議会のメンバーは、あとで書面でいただけばけつこうであります。なおこれについて希望的意見を付加しておきますならば、こういう事態というものは、今後ますます不幸なことではあるが、ふえる。従つて何年前に発足した審議会かは私あまりよく存じませんが、そのものを不動のものとしてお考えになることは、もう少し御再考の余地がありはしないか、中央不動産審議会のメンバー等についても、またその構成メンバーを選定する考え方についても、真にその被害の実情、損失の実情が具体的に反映するように、御考慮になつてしかるべきものではないか、これは私の意見六ありますが、よく御考慮を願つておきたいと思います。  次に、アメリカ合衆国軍隊以外の国連軍が日本に現在おる。行政協定以外の軍隊がどういうわけか知りませんがやつて来ております。これらの国連軍の軍隊の行為によつて損失がたくさん発生しておるはずだと思います。アメリカとの間には、いい悪いは別にして行政協定に基いて合同委員会もできており、またこの法律は「日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為」となつてつて、国連軍の場合は適用外にあるのでありますが、この関係いかように処理されますかお尋ねをいたします。  いま一つ、先刻の補償を算定する基準としての過去の税金の問題でありますが、この補償算定の基準として過去の税金を考えられるということが非常に大きな要素になつておるようでありますが、納税申告は、今まで非常に収入が少いし、零細だから低い。ところがその補償算定の基準にこの低い税金が取上げられておると、従つてその補償率も少いし、またこれに課税するというようなことは、所得とみなすものでありますから税法から行けばそうなるでしようが、こういう特殊な被害というものに対して、所得とみなすものに課税をすることに私は当らぬと思うのです。これはよく検討してみなければならぬと思いますが、従つて漁獲高が当然あるべきものがなくなつたから、いわゆるその補償として与えられたものを所得とみなす、こういうことになつて課税されるということは、そのみなす基準というものによつて、漁なんかの場合はたくさんとれるときもあります、その多くとれる場合非常に損をします。漁民はそういう無形の損害を受けるのでありますが、それを一つの所得とみなすということについては、私は妥当じやないかと思います。もう少し長官なり当該部長においてはこの点について研究をし、大蔵当局と何らかの折衝をする用意があるかないかということを最後にお尋ねします。国連軍の問題と今の問題、この二点で私の質疑を終ります。非常に長い間御迷惑をかけました。
  88. 根道廣吉

    根道政府委員 中央不動産審議会のことにつきましては、後刻書面をもつて申し上げます。現在のところ農林関係なら農林方面の専門家、特にその方面の団体の代表というような者を入れて審議しております。水産ならば水産方面の権威者ないしその団体の代表というような者を入れて審議を進めております。これを念のため申し上げます。  国連軍のことにつきましては、実に現在御承知の通り調達庁の所管ではございません。従いまして調達庁は直接には国連軍関係の問題によつて起りました損害補償の事務は扱つておりません。しかしながらいろいろ各方面の要望もございまして、やがて国連軍たる英濠軍等が日本に続いておるというような事態があつて、その間に何らか国際約束ができるということになりましたならば、そのときは同種業務でございますので調達庁がやはり扱わなければならぬようになると思いますが、現在のところ扱つておりません。  それから税金の問題でございましたが、この点はわれわれ時折気がついておるところであります。所得とみなすものに課税する、これはあたり前の言葉であります。しかし補償の仕方によりまして、これは損失補償なんだ、実損の補償なんだというようなやり方ができますならば、これは課税の対象にならない。ちようど火災保険で保険金が課税の対象にならぬと同じように処置すべきものである。また場合によりまして、どうしても政府が渡す金が課税の対象になる。しかし実情はこれを課税してはどうもおかしい。法令上は課税しなければならぬというような問題があるといたしますならば、これもやはり補償対象としてその中に織込んでやれば、課税をされても実損は完全に補償されるというようなやり方もあろうかと考えております。かつてそういう税明を申し上げたことも記憶しております。しかし一般論として所得とみなすべきものを課税するということは、まあ課税関係のものといたしましては、どうしても一応はそう申し申上げなければならぬ。しかしながら実際問題として、課税されたがゆえに補償してもらつたものが結局多少のマイナスになつてしまうのだというような事態では相ならぬ、こういうふうに考えております。
  89. 田口長治郎

    田口委員長 淡谷悠藏君、時間が大分経過しておりますから要点をお願い申し上げます。
  90. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 前々回の委員会で内灘村の射場に強制使用されております地域が訴訟になつております点を申し上げました。その詳細の御説明を願つたのですが、農林省管轄であるというので御答弁がなかつたので、農林大臣の御出席をお願いしたのでありますが、本日はお見えになりましようか。もし時間がないようであれば、大臣の出席するまで保留しておきます。
  91. 田口長治郎

    田口委員長 きようは呼ばないことにしておりますが、農地局長出席になつておりますが、いかがでしようか。
  92. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それではけつこうでございます。現在強制使用されております内灘の砂丘地帯が、さつき足鹿委員からもいろいろお話があつた通り、開拓地帯として現在国有になつておりますが、あれが訴訟を進行中だということになつておりますので、これの詳細の御説明を願いたい。訴訟の現在の進行の状態並びに性質について……。
  93. 平川守

    平川政府委員 ただいま詳細の資料を持つておりませんが、あの土地は開拓用地といたしまして政府が買収をいたしました。それに対しまして所有者から異議申立てがありました。これが訴訟になつておるわけであります。つまりその主張の要点に、これは開拓地として不適当な土地である、こういう主張で、従つて買収が違法である、こういう主張をいたしておるのであります。訴訟の結果第一審におきましては、政府側の勝訴になりまして、これは開拓地として買収したことは適法である、こういう状態になつておるのでありますが、ただいま控訴中でございます。訴訟といたしましてはそういう経過になつております。
  94. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この所有者の名前も伺いたいのであります。
  95. 平川守

    平川政府委員 豊国土地株式会社という会社でございます。
  96. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 関連して伺います。そういたしますと、これは目下控訴中なんだそうでございますが、開拓地として不適当であるという名目で所有者から異議申立があつたのが今度は逆に国有の開拓用の土地がまた射場として提供されましたのは、農林省としては開拓地として不適地であるという原告の主張をおいれになつたためでございましようか、その点はたいへん矛盾していると思うのでありますが、御説明願いたい。
  97. 平川守

    平川政府委員 これは開拓として不適当であるというためではございませんので、農地法の七十八条あるいは八十条等におきまして、公用の目的の場合におきましては、つまり開拓地として適当な土地でありましても、他のより緊切な国家目的があります場合においては、その方の使用に貸して行く、あるいは所管がえををするということが認められておるわけであります。極端に申しますれば、開拓用地としてすでに開拓されておる、個人に払下げられておるものも収用されるような、強い法律がこちらにあるわけであります。従いまして開拓の目的で政府が買収はいたしたけれども、より以上の強い目的が現われて来た、そのために開拓用地として不適当とは認めないけれども、そちらの目的に貸付をする、あるいは所管がえをするということは、農林省としても認めておるわけであります。
  98. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは特別調達庁長官にお伺いしたいのですが、この間の伊関協力局長の御答弁では、内灘の使用は、米軍の要求というよりは日本側の必要から、保安隊の使う砲丸を試験射撃するために使つたというような御難弁がございましたが、その通り了解しております。これにつきまもて、今度のアメリカ合衆国軍隊行為による特別損失補償というものに該当いたしますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  99. 根道廣吉

    根道政府委員 調達庁といたしましては、安全保障条約並びに行政協定等によりまして、米国駐留軍に日本政府として提供いたします区域、施設等に関しまして、その道程において起るべき損害補償する業務を扱つておるわけであります。私どもとしては、米軍に提供すると日本政府がきめたその方針に従いまして、要綱に従つて措置をとらなけばならぬものと考えます。
  100. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 一括して質問いたしますが、そういたしますと、やはりこの法律案決定いたしましたときに、さつきの遡及力の問題で内灘に対する補償も当然この法案内容となると理解いたしますが、そういたしますと、さつき足鹿委員からも質問があり、前会私も質問いたしました内灘における補償の実態というものは、特に内灘に限るということは言えないと思います。これは同一条件であれば、同じ補償基準によつて全国に適用になるものと了解いたしますが、そういたしますとこれだけの補償が、しかもその村が特別に貧困であるといつたような、いわゆる所得の実態もしくは所得税の実態とけ離れた貧困基準でこれは現われております。これでやつてみました場合に、先ほどの御説明の七億ないし八億というような補償額決定では、はたして間に合うかどうか、このことがたいへん問題になると思います私は内灘における補償は多いとは思いません、全部この基準でやられてけつこうだと思いますが、これでやるといたしますと、川全国における演習地、基地の補償要求が相当大きいものになると思いますが、この点のお見込みを伺いたいのが第一点であります。  それから遡及力がないといたしましても、行政措置によつて完全補償される場合に、一体アメリカの軍隊による損失が起つた時、期間でありますが、これをいつに確定するか。特に占領後引続いて使われておる演習地、基地がどういう手続によつて占領状態から講和後の状態に切りかえられたか。この手続の点をお伺いいたしたい。  それから先般お願い申し上げておきましたが、内灘と特調との間にとりかわされておりまする契約書の写しもお取寄せを願つておりますが、まだ届いておりません。この内容についても実は検討してみたいのであります。結局この契約書によつて補償額がはつきりきまり、それから初めてこの演習地、基地というものが使用さるべきものであるという原則がございますが、各地における状態は、こういう契約書のとりかわしがない間に、外務省の臨時の行政措置として使われておる事例がたくさんございます。今日外務省の方にもぜひおいで願つて、でき得べくんば外務大臣の御出席も願つて、こういつた契約の基礎をなす形式について御質問したいと思うのでありますが、一応ただいままでの質問についてお答えを願いたい。
  101. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいま御質問は、言葉の上では非常に簡単のようでございますが、なかなかむずかしい御質問だと私は存じます。まず第一の御質問の点であります内灘に対するあの措置は、この法案が通るとすれば、それに該当するものであるかどうか、この法案によりまするところの補償に切りかわる性質のものであるかどうかということでございますけれども、これは私どもといたしまして、さようでございますと今ここで申し上げる性質のものではないと存ずるのであります。
  102. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうだというところと、そうじやないというところを、はつきり言つていただきたい。
  103. 根道廣吉

    根道政府委員 そうだと今申し上げるのには、今ここで研究を要する、こういうわけでございます。何となれば、この法案によつて具体的にカバーされるような性質であるとはつきりわれわれが考え得まするならば、これはこの法案によつて切りかえられるものとなるわけでありますが、今までのところわれわれは独立したものと考えておるわけであります。この法案を提出する以前にこれはなされたものでございまして、従来いろいろやつて参りました一般的の見舞金というものと考えておるわけであります。
  104. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この前の委員会では、同一条件にある場合は、この基準を全国に基準として行うというといつたような、山中部長さんのお答えがあつたのですが、これは長官のお答えと若干食い違つているようでありますが、その点はいかがですか。
  105. 根道廣吉

    根道政府委員 この前の委員会におきまして、私も同じようなことを申し上げたと考えております。すなわち内灘問題はわれわれとしては特別な例であると考えておりまして、現在までのところ、同種類、同程度のものはなかつた考え措置した、こう申し上げたわけでありますが、それに対しまして、今後同じようなものが起つたら同じように扱うか、こういう御質問がございました。政府といたしましては、およそ一般の行政すべて公平にやらなければならぬことは御承知の通りでございますので、ほんとうの意味でもつて程度、同様な場合があれば、また同様の措置をとらなければならないであろうと私は申しておりました。ただいろいろ土地その他の状況も違いまして、また受ける損害、その苦痛の程度、いろいろなところにおいて種類と内容においていろいろ違うところがありますので、それは具体的に検討した上でなされなければならないものである、こう申し上げました。
  106. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さらにこの法案について政令案ができておりませんので、具体的な審議は不可能と思いますが、その他政令で定める項目の中に、砲撃、爆撃等の間接損害も御考慮になつていることは承つておりました。現在の事例を見ますると、松岡委員がさつき強調されました演習地でない場所の弾丸の通路、これによる被害は決して大高根だけではないようでございます。各種の演習地でこの状態がございまして、弾丸をこうむるための損害が続々と起つておりますが、こういうようなものなども政令の中にお見込みになつているかどうか、お答えを願いたい。
  107. 根道廣吉

    根道政府委員 先刻申し上げました項目の中にあります。ただいま申された言葉のうちにそれを包含しておるつもりであります。
  108. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 最後に一つお伺い申しますが、昭和二十七年度の損害補償でまだ未払いになつております額について、この前私が申し上げたのに、御仮事を得ておりませんが、二十七年度分としてどれくらい残つておりますか、概算をお示し願います。
  109. 大石孝章

    大石説明員 淡谷委員の御質問は、本法を適用した場合に、本法による補償の額がどれだけあるか、そういう意味でありますか。
  110. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 本法適用じやありませんでも、具体的に演習基地からあなたの方に要求され、かつ支払うことになつております二十七年度全体の補償額であります。
  111. 大石孝章

    大石説明員 補償の範囲が、私どもの扱つておるものはたいへん広いので、実はたいへん申訳なかつたのですが、本法によるものと誤解したので、その関係は、先ほど申し上げたように約七ないし八億程度に及ぶ、これはまだ実施をいたさないので、これから実施するわけであります。その他のものにつきましては、実はこれを賃貸借契約に基く借料、それから土地の買収による買収費、最初に離作する場合の離作料、立木、立毛の補償、建物、工作物の移転除却による補償等いろいろな範疇にわかれるので、それを一々拾い上げて申すまでのただいま手元に数字を持つておらないのであります。ただ御参考までに大高根の演習場の補償金額がどれだけあるかというような点を申し上げますと、総体におきまして今まで大高根演習場へ補償いたしました金額は、三千五百二十七万七千八百一円ございます。それを先ほど申し上げましたような種々の項目にわけて申し上げますと、立木の補償が二千六百十四万五千円、以下端数は捨てさせていただきます。木炭、まき、山菜あるいけ山華等の補償四百二十二万四千円、くりの木八百十本の除却補償四万四千円、それから離作補償二十一万円、それからこれは村が違いますので、別々に申し上げて恐縮ですが、同じく離作補償として百六十四万五千円、もう一つ百三十五万二千円、それから砲弾の破片等の落下によりまして、家屋等に損害を及ぼしましたので、その見舞命として九十五万七千円、それから軍の演習によりまして、これは重車両、陶車、あるいは戦車等の行動によりますところの立毛、立木の補償が六十九万六千円、合計三千五百二十七万七千円の補償をしております。そのように、大体におきまして占領期間から講和発効後まで引続き使用せられております演習場、あるいは講和発効後に新しく飛行場の拡張あるいは演習場の拡張等のために設定せられましたその部分の演習場、飛行場等、こういつた事例と同様大体補償いたしております。
  112. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私のお伺いいたしたかつたのは、実は各補償もそうでありますが、二十七年度の補償が現在払われていないという事実がもしあるとすれば、この後の法案の作成にあたつて補償すべき時期の問題が大きく浮び上つて来るのであります。これは零細漁民の生活から申しますと、接収された当日からすでにこれが始まつております。これは一年もしくは二年後に支払わるべきようなものではない。どこ盲でも前回委員会で御答弁があつた通り、はつきり使用の契約が成り立つて補償額決定して、支払いの条件も完備した上で引渡しされるのが本筋かと思いますが、それがさまざまな処置によつて全然補償もされず、補償金の受取りもしないうちに、その生業が奪われておるという状態が各地にあります。これは特に外務省の方にお伺いいたしたいと思いますが、本日はおいでになつておりませんか。
  113. 田口長治郎

    田口委員長 安川国際協力局第三課長がおいでになつております。
  114. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでは質問の要旨をとりまとめます。占領後引続いて演習地もしくは基地として使用された場合における手続上の処置、それから新しく演習地もしくは基地として使用される場合の手続を詳細に伺いたいと思います。
  115. 安川壯

    安川説明員 お答え申し上げます。最初の占領中の施設が引続き使用される場合の手続を申します。占領中から引続き使用されておりますところは、御承知の行政協定ができましたときに、それに付属しまして岡崎・ラスク交換公文という手紙が交換されまして、行政協定とその交換公文の二つによつて規定されておるわけであります。そこで行政協定が二月にできまして、合同委員会というものが設置されることになつたのでありますが、講和条約発効いたします四月二十八日を待つことなく、行政協定が締結されるとすぐに合同委員会の予備的な組織としまして、日米両者の間で予備作業班というものができました。その予備作業班で従来占領中に使われている施設を、全部両者で協議いたしまして、ここにこれを占領後引続いて使うかどうかということを両者で協議してきめて行つたわけであります。そうしてその仕事が講和条約発効と同時に合同委員会というものに切りかえられまして、その合同委員会を通じて、その個々の施設を引続いて提供するかどうかという作業を行つたわけであります。そうしてそれによつて日本側が引績き提供することに同意したものは、その都度新しい占領後の施設として行政協定の附表に追記されて行つたわけであります。ところがその作業が各施設にわたりますので、時日を要するということが最初から予想されたために、もし平和条約が発効して九十日以内に日本政府が同意しなかつたものについては、九十日以後においては占領中に使用しておつたものは引績いて米軍が使用することを認めるということが、先ほど申しました岡崎・ラスク交換公文に規定されておるわけであります。それを字句通り申し上げますと、「日本国が、前記の協定及び取極が成立するまでの間、施設及び区域でそれに関する協定及び取極が日本国との平和条約の効力発生の日の後九十日以内に成立しないものの使用の継続を許されれば、幸であります。」という先方の要請に対して、それを確認した手紙を岡崎外務大臣の名前で出しまして、そこで九十日以内に合意に到達しないものは引続いて米軍が使う権利を日本側が認めた。以上が占領中に使用されておりました施設の手続でありまして、新規の要求の手続を申し上げますと、これは日米合同委員会を通じまして、先方から新しい施設の要求がございます。そこでこれをこちらで受理しますと、外務省が合同委員会の事務局をやつておる関係で、外務省が中心となりまして、農地ならば農林省施設の種類によりましてそれぞれの関係各庁と協議をいたしまして、関係各庁で地元の方の状況を調査いたします。その前に、米軍から要請がありましたときには、はたしてこれが米軍で絶対に必要なものかどうかということを米軍と協議しまして、その上で必要だということが認められた場合には、ただちに先ほど申した国内関係官庁と協議いたしまして、その上で提供ということに決定いたしますと、それを合同委員会を通じて先方に通知すると同時に、国内的には閣議で決定して提供ということにきまるわけであります。以上が新規の要求の手続であります。
  116. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ただいまの御答弁の中にございました、九十日以内に不同意であつたものは引続き米軍が使用するということが岡崎・ラスクの交換公文書できまつた。そうしますと、占領後の演習地というものは強制使用の形が残つているわけです。それから私、受取れないことがたくさんございますが、新規の場合に、閣議決定には何か地元の同意がいるように今の御説明では受取れましたが、地元関係人というものをどのように外務省はお考えになつておるか。その点を明確にしていただきたい。地元の同意ということが今日さまざまな地方で紛擾の種になつておりますが、地元関係という内容をどうお考えになつておりますか、はつきり説明していただきたいと思います。
  117. 安川壯

    安川説明員 ただいま地元の同意と私はつきり申し上げたかどうか記憶いたしておりませんが、その点は誤解のないように申し上げておきます。同意を得ることが一番望ましいのでありますが、やむを得ない場合には、内灘の例で見られますように、必ずしも閣議決定ということが地元の同意ということを要件にしているということを申し上げたわけではないのであります。その点は誤解のないようにお願いいたします。  それから地元をどういうふうに考えているかとこういうでございますが、私の方といたしまして直接地元と連絡するというのは筋でないのでありまして、外務省といたしましては、農地の場合には農林省、それぞれの関係各庁を通じまして地方の御意向を伺つて、地元の意向というものは、結局関係官庁を通じて私の方で受取るというかつこうになつております。
  118. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 御答弁はまことに不満足なんでございますが、これ以上あなたに追究してもちよつと困ると思いますので、外務大臣の御出席を待つて私は再質問したいと思います。お話の模様では、閣議決定には地元の同意が必ずしも必要でないといつたようなお話もございましたし、占領中から引続いての関係から申しましても、米軍の基地については非常に強制使用的な色が濃厚になつて参りました。これを申し上げますのは、地元でさまざま調べますと、地元が同意を余儀なくされますのが、調査に行つておりますそれぞれの関係官庁の方が、もしこの要求に応じなけば、強制使用によつて補償金ももらえないとし、たいへんに不利になるからといつて綱場を行つているのであります。これなどははつきりあなたのお話の通り、次第によつては——むしろ次第によらなくても、米軍の要求があつた場合には、閣議決定で使わせる義務があるような印象を受けますが、これ以上私は追究いたしません。ただこういう形になつておりますと、なおさら本案の審査が大事になつて参ります。その点もう少し直接責任者である外務大臣の答弁を願つてから、私はこの案の審議を進めたいと思います。
  119. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこの程度にとどめまして散会いたします。     午後一時二十八分散会