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1953-07-29 第16回国会 衆議院 水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十九日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 田口 長治郎君    理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 中村庸一郎君 理事 山中日露史君    理事 小高 熹郎君       中村  清君    夏堀源三郎君       濱田 幸雄君    白浜 仁吉君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       田中幾三郎君    辻  文雄君       松田 鐵藏君    中村 英男君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         水産庁長官   清井  正君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      立川 宗保君         農林事務官         (水産庁生産部         長)      永野 正二君         通商産業事務官         (通商局農水産         課長)     森 日出哉君         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 七月二十九日  委員高橋英吉君辞任につき、その補欠として西  村直己君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長補欠選任農林漁業金融公  庫法の一部を改正する法律案起草に関する件  公海漁業に関する件  水産貿易に関する件     —————————————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  公海漁業に関する件について議事を進めます。本件について質疑の通告がありますので順次これを許します。赤路友藏君。
  3. 赤路友藏

    赤路委員 私は第三海洋丸事件について外務当局質問をいたしたいと思います。その質問の前に五月二十九日の参議院の本会議森崎隆君から緊急質問がなされておりますが、この緊急質問要点は大体三つに集約されると思うのであります。まず第一点は、第三海洋丸が三月十日フイリピンのバタン島の陸岸から二十マイル離れた地点において不法威嚇射撃を受け、不法拿捕されたことは遺憾であるが、これに対する外務省見解はどうであるかということ、フイリピンに曳航された後において、乗組員フイリピンの兵隊によつて暴行を受けておるという事実があります。五十七名の乗組員全員銃床尾をもつて殴打され、またはげんこつでもつてやられておる。当時足腰立たぬまでも打ちのされたものが六名あるというような事実、これに対する外務当局見解、なお不法拿捕であるという観点に立つて抑留期間相当長きにわたつておるが、これに対する賠償請求に対していかなる措置政府はとらんとするか、大体集約いたしますと、この三点の質問があつたと思われます。これに対する答弁調査をするということが大体答弁内容であつたかと思うのであります。爾後すでに二箇月にわたつておりますので、フイリピン政府との外交交渉相当進展をみておるかと思いますので、本事件に対する外交交渉経過について御説明願いたいと思うのであります。なお本船の母港である枕崎市議会から、先日陳情書が参つております。おそらく外務当局の方へも行つておると思いますが、読み上げてみます。「枕崎市長高城憲夫枕崎市議会議長柳田栄二、第三海洋丸事件に関する陳情書、一、第三海洋丸事件に対して政府保障を早急に決定されたい。一、今後この種事件が絶対に続発しないよう政府責任において善処されたい。     〔委員長退席川村委員長代理着席〕  理由、第三種漁港として日本最南端に位する枕崎港は、南方漁業基地として戦後急速に復興し、全国かつお漁船母港としてますますその重要度を高めつつあります。戦後の悪条件に経営難窮乏生活にあえぎながらも、ひたすら祖国再建を祈りつつ天職を守り続けた船主や船員も、昭和二十六年九月待望のマ・ライン撤廃によりようやく愁眉を開き、飛躍的な発展の遂に着くに至りました。しかるに去る三月十日、突然北元水産工業株式会社所属の第三海洋丸に対してなされたフイリピン警備艇不法拿捕人権無視暴行事件は、枕崎港を基地として同海域に出漁する全漁船一大衝撃を与え、爾来各事業主従業員は戦々きようきようとして生産意欲はとみに低下しつつあります。本事件に関しては、国会並びに政府当局においてすでに詳細な調査がなされていることと存じますが、われわれ国民としては日本が独立した現在において、国際的に正当な行為が他国の暴力によつて不法な取扱いを受けなければならないことについては、とうてい納得できないものであります。今後かかる事件が続発すればわれわれは日本の独立に疑問を抱かざるを得ないことになりまして、また全国かつお漁業従事者の死活に関することとなり、水産日本再建は期して待つべくもありません。国会並びに政府当局は、すみやかに本事件に対する国の保障を決定し、政治的、外交的に、かかる事件が続発しないよう善処願いたく陳情いたします。右枕崎市議会の議決により陳情いたします。」  以上が陳情書内容であります。相当現地におきましては、本問題を大きく、重大なものとして取上げ、非常な不安な情勢に置かれておることがわかるのでございまして、外務当局より今までの交渉経過につきまして、簡潔に要点を御説明願えれば幸いだと思います。
  4. 倭島英二

    ○倭島政府委員 従来交渉しました点を簡潔に申し上げ、それから重ねて先般の緊急質問の点をあげられて御質問のようでありますから、二、三われわれの見解を申し述べたいと思います。  第三海洋丸乗組の方々が帰つて来られまして、いろいろわれわれも事情を聞きました。それに基きまして五月の六日に訓令をマニラに出しまして、どういう事情で起つたかということで調査を命じております。その調査に対しては、すぐさまマニラフイリピン政府に申し入れまして、こちらの方である程度わかりました事情も申し添えて、こういうことがあつたようであるが、どういうふうに行われたかというふうなことを述べて質問をしておるわけであります。それについてはまだ返答がありません。しかしながら御存じ通り、当時第三海洋丸現地で、フイリピンでつかまりましたときには、フイリピン側としては二つの問題があつたようでありまして、一つ関税法違反、つまり自分領海を侵犯して関税法に触れたというのと、不法に漁獲をした漁業法違反という二つ観点から取扱つていたようでありますが、わが方の交渉の結果によりまして、先方もわかつて来たと見えまして、五月十四日に関税法違反という事実に基く罰金という問題はこの際ドロツプするという簡単な書面をよこしました。つまり二つ観点からフイリピンがこの事件を見ておつたのでありますけれども関税法違反といいますか、あるいは領海侵犯といいますか、その問題はこの際取上げないということを言つて参りました。これはもちろん交渉の結果であります。ただ不法漁業をやつたという点につきましては、まだ何とも言つて参りません。その後再三本件処置方法について非公式に——非公式といいますか、政府の方と、どういうことになつておるか、早く本件解決したい、ついてはその前提としてこちらで申し込んでおる調査等について返答がほしいと交渉しております。それに基きましてその次の措置をとるわけであります。遺憾ながらまだそれについての返事がございません。そういうような現状でありますので、政府といたしましては、やはり次の態度はつきりきめる前に、こちらの調査依頼、それから抗議に対する先方返答をもらつてから次の処置をとりたい、こう考えております。  ただここで先ほど緊急質問の三点ということでおあげになりました諸点について政府本件の取扱い方について、従来考えております一、二の点を申し上げたいと存じますが、一つの点は、フイリピンとの間には御承知通りまだ平和条約ができておりません。やかましく形式上から申しますれば、これは技術的にはまだ一種の戦争状態が続いておる、そうともいえるわけでありまして、要するにフイリピンサンフランシスコにおいてサンフランシスコ条約に調印はいたしました。しかし批准されておりません。要するに通常の平和関係が回復しておらぬというのは事実でありまして、政府といたしましては、こういう状況のもとにおきましてはいろいろなことが起り得る。起つた際においても、普通の平常時のような交渉なりあるいは要求なりをすることははなはだ困難な状況にありますので、一日も早くフイリツピン日本との間の関係を平常態に帰したい。つまり平和条約を批准されるところに持つて行きたいというのが一つの大きな問題であります。従つて、多少話がそれますけれども、そういうことができるためには、さらに賠償というような問題もありますし、それからほかの戦犯の問題や漁業の問題も従来ありましたが、そういうような問題をいろいろ一緒にしながら、あるいは関連を持たせながら、何とか早く一つ一つでも解決をして行きたいということで努力して参つております。実はフイリツピン日本に対する空気は、昨年から今年にかけてずいぶんかわつて参りました。つまりよくなつて来たわけであります。しかしながらこれもお聞き及びと存じますが、直接の日本との関係を担当しておな中央の当局では、大分そういう日本との関係を早く平常化したい、あるいは円滑にやつて行きたいという空気相当はつきりして来たようでありますけれども、それぞれの地方に参りますと、官憲にいたしましても、またフイリピン国民にいたしましても、いまだに相当はげしい感情が残つておる、そういうことがいろんなことにまだ現われておるようであります。先般戦犯の問題を、平常条約締結前にとにかくある程度解決をして、同胞が日本に帰つて来られるように交渉しました当時においても、いろいろなことを考え、いろいろな機微な問題の関係があつたのでありますが、できるだけフイリピンとの間の国民的な感情あるいは全般のいろいろまだ整つていないことを前にして、少しでも波風を立たせたくないというようなことが、やはり全体の考え方の方向をなしておつたわけであります。必ずしもそういうことのしわがこの第三海洋丸交渉のところに来たわけでもありませんけれども、たとえば三月ごろから四月に関係者が帰つて見えてわかりましたあと、調査その他について交渉なり請求をする関係におきましても、平常関係がまだ回復しておらぬということが一つの問題でありますし、それからまた今申し上げましたほかの問題との関係もありまして、あまりこの問題だけにせつかちな催促もしにくいというような点も多少考えておつたわけであります。しかしながらそれだからといつて、この問題をほつておくというようなことは毛頭考えておりません。しかしながらフイリピンとの間においては、そういう問題もあるという点を御説明申し上げたいと思つたわけであります。  それからなお漁業の問題につきましては、これはこのたびは一応関税法違反ということについて、向うがどういう気持か、これはこの際取上げない、それの関係の三百ペソという罰金はこの際云々しないということを言つて来たのでありますけれども、はたしてそういうことが将来日本フイリピンとの間で漁業交渉あるいは漁業に関する協定を締結する際に、どういうようなことになるだろうかという点でありますが、先方フイリピン側としましては、相当広い範囲領海ときめておりまして、またおそらくこの領海自分がきめておる範囲以上に、たとえば日本側から出漁してもらつてはこまるというような線を言つて来る可能性もないではない、むしろ相当そういう問題があり得るのではないかということをわれわれは懸念をしております。これは漁業の問題では、申し上げるまでもありませんが、すでに韓国との間ではそういう動きが具体的にあります。それから先般インドネシアとの賠償並びに漁業の話をいたしました際にも、ずいぶん、六十マイルという広い範囲にわたる範囲をある程度自分の国に確保しよう、その当時にもフイリピンはその関係をいろいろ尋ねて来ておりましたので、フイリピンも将来漁業の問題の交渉をいたします際に、そういうことを言うのじやないか、結局漁業問題につきましてだけでも、フイリピンとの間でいろいろな問題を起さないようにするというためには、将来漁業に関する協定というものを結ばなければならぬとわれわれは考えておりますが、そういうような将来の問題を多々含んでおりますので、この際第三海洋丸についての交渉というものは、よほど慎重にやりたい。これは重ねて申し上げますが、これについて卑屈な態度をとつたり、あるいは正しいと思うことを曲げるというようなことは毛頭考えておりません。しかしながら、こういう事件の取扱い方というものは、やはり将来の大きな漁業関係の利益というものについての話合いをするときに、いろいろまた影響を及ぼすと考えておりますので、その点慎重に取扱つて行きたい、こう考えておるわけであります。一応われわれの見ておりますところを御説明申し上げます。
  5. 赤路友藏

    赤路委員 関税法違反領海侵犯の線はドロツプしたということでございましたので、この点は一応了解をしておきたいと思いますが、漁業法違反についての外務当局の方の御意見はどうであるか、その点を一点お聞きしたいと思います。もう一点は、先ほど局長の御答弁の中に、平和条約ができていない、もつと極端に言うなれば、戦争状態が続いておるということも言える状態にある。そういうことになりますと、これは非常に危険な状態であるということに当然なりますので、さようなことを予期すれば、七分漁船に対して警告が発せられなければならないと思います。ところがこれは警告でなしに、マツカーサー・ラインが撤廃されました直後におきまして、講和発効後の漁業規制方針について、講和発効後の漁業規制大綱案、これが発表されております。その大綱案の前段にうたつておりますのは、講和発効後の公海漁業については、国際法及び国際慣習により確立された公海自由の原則を基調として、資源の保護に関する国際協力を尊重する関係各国との漁業協定のもとに、必要な規制を加えるものとするが、さしあたり現在の国際情勢を考慮し、必要な程度において当分の間自主的措置として、操業規制を行うものである、かようにうたつております。しかもこの目的のもとに発せられておるその内容は、かつおまぐろの船におきましては、指定遠洋漁船及び母船式漁船につき日付変更線以東の太平洋での操業を当分の間禁止する、但し北緯四十度の線と日付変更線との交点北緯二十度の線と西経百四十度の線との交点南緯三十度の線と西経百四十度の線との交点、及び南緯三十度の線と日付変更線との交点の四点をそれぞれ連ねた区域内を除く日付変更線から以東は除かれております。しかしながらかようになりますと、フイリピン近海はもちろん、その他の面は全部公海漁業が自由であるという形に打出されておる。従つてこれが打出されたことによつて漁業者は非常に大きな希望をつないで現地へ出て行き、操業をやつておるのが実態であります。先ほど局長が申されたような危険な状態にあるものであるとするなれば、かような大綱を出したこと自体が私は大きな間違いであると思う。これに対する責任をどういうふうにお考えになつておるか、この点をお聞きしたいと思います。
  6. 倭島英二

    ○倭島政府委員 第一の漁業について、不法漁業をやつたかどうかという点は、先ほどるる御説明を申し上げましたように、フイリピン見解について、現在こういう公開の席上でとやかく申し述べることは、将来の交渉上不適当だと思いますから、私はこの際申し上げません。それは日本の今後の漁業に関する協定だとか、今後大きな漁業問題についての協定をしなければならぬというような、先ほど申し上げました大きな問題を控えておるわけでありまして、この際こちらでこう思いますとか、こうあるべきだというようなことは、向う返事がない先においては慎みたいと思います。  それから今何か政府の書類をお読み上げになりましたが、私それは存じておりません。担当の方から御説明をしていただきたいと思います。
  7. 赤路友藏

    赤路委員 それではこれは多分水産庁の方で出されたのだと思いますが、長官はこの点について御存じでございますか。
  8. 清井正

    清井政府委員 その点について、私文書は存じております。おそらくそれは当方において適当なる手続を経て決定したものと私は存じております。ただこれは御承知通り、ただいまもアジア局長からお話がありましたが、やはりこれは遠洋漁業でありますから、国際漁業という立場からの観点資源維持開発という立場から、規制をして操業しなければいかぬという趣旨を、ちようど講和発効に際しましての方針として打ち出されたものである、こういうふうに考えておるわけであります。す
  9. 赤路友藏

    赤路委員 水産庁といえども外務省といえども当然日本政府の一機関なんであります。従つて、今のアジア局長お話のような状態下フイリピンとの国際関係がある場合、水産庁がもしこれをお出しになるとするなれば、当然事前に外務省との間に話合いがなければならないはずです。外務省の方では、アジア局長はお知りにならぬということであるので、単に水産庁のお考えだけでこれが出された、しかも安心して出た漁業者が、われわれが国際慣習考えておる公海であるところで拿捕されておるということになりますと、政府はこれに対して当然責任を負うべきであると私は思いますが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  10. 清井正

    清井政府委員 ただいまの文書につきまして、いろいろ責任云々についてのお話を承つたのでございますが、私どもといたしましては、マツカーサー・ラインもとれまして、新たに遠洋漁業への漁場が開発されたことに際会して、まず第一に進出する遠洋漁業かつおまぐろ漁業でございますので、それらにつきまして適切なる方針を指示する必要があるということに基きまして、今まで申し上げましたいろいろな方針に基いてそういう文書を発表したものと私は確信しておる次第でございます。
  11. 赤路友藏

    赤路委員 この点についてはこれ以上追究いたしません。結局追究してみましたとしましても、おそらくはつきりとした御答弁はお願いできないと思います。  そこで、先ほどのこの漁業法違反の問題でございますが、アジア局長の方からおつしやいましたように、爾後日本漁業全般発展ということ、漁業全体の将来を考えた場合、非常に大きな問題であるから、慎重を期してこの点については言えないとおつしやるのですが、ごもつともなことと思います。私たちも一海洋丸の問題のみを取上げて言うのではございません。海洋丸事件のようなことが爾後行われることに非常に大きな不安を感ずるがゆえに、私たちはこの点についての外務省側の強い御交渉のほどをお願い申し上げたいというので申しているのであります。大きな問題であることはわかるわけです。ただその点につきましては、見解に相違があるかとは存じますが、あまりにも弱い形において、ただフイリピン出方のみを待つてそれに対処して行くという受身の形における外交のあり方がいいか、それともこの海洋丸事件というものを一つ足がかりにして、強く日本漁業の将来への安定性を確保する方がいいかということが、問題であると私は思うのであります。それでいろいろ賠償問題もありましようし、あるいはまた沈船の引揚げに対する問題等フイリツピンとの間には相当大きな問題のあることは承知いたしております。しかしながらこのことは、悪くするなれば日本漁業におけるかつお漁場がまるで失われて行くということであります。この点非常に重大な問題でありますので、願わくは、私どもはこの第三海洋丸事件足がかりにして、強くフイリピン政府に対して要求をしてもらいたい、日本漁業の安定を期してもらいたいと思うのであります。しかも本件に対しましては、暴行事件までも行われている、かようなことは、われわれとしては断じて許さるべきでない。もちろん平和条約が発効していない、しかも戦争継続状態であるのだからやむを得ないといえばそれまでであります。しかしながらすでに今日マニラには在外事務所を置いている実状であります。私はそういう状態ではないと思う。従つて、この際、外務当局の方の一段の御奮起をお願いいたしたいと思うのでありますが、その点に対していかに局長はお考えになつているか。  いま一点は、賠償問題については何ら御答弁をいただいておりませんが、おそらく賠償問題等についても、事重大であるから慎重を期すということになろうかと思いますが、私は少なくとも不法拿捕であり、しかも暴行事件まで行われている本件に対しましては、賠償要求するだけの腰を外務省当局にはすえていただきたい、かように考える次第でありますが、その点に対する御答弁をお願い申し上げたい。
  12. 倭島英二

    ○倭島政府委員 御答弁申し上げます。多少今の御意見とは意見を異にしております。その点は先ほどから大分申し上げました点でありますが、外交を強くやるという問題につきまして、強い、弱いということは俗に言われますけれども、それは一体どういうことになるか、この点は、先ほどから申し上げておりますように、決して卑屈なことは考えておりませんし、正しいことを曲げるようなことを毛頭考えておりません。そういう意味におきまして、何といいますか、やるべきことをやらぬというようなことは毛頭考えておりません。しかしながら先ほども申し上げましたように、この問題はこれからの問題が相当大きいと思います。従つてこのたびの海洋丸事件を根拠にして、向う外交を展開して、そして将来の有利なる地位を獲得し得るかどうかというと、これは私はちようど逆考えを持つております。この点につきましては少くとも疑問を持つております。従つて、これはそういうふうにやり得るかどうか、決して卑屈な外交や不正な外交をするつもりは毛頭ございません。しかしながら、こういうような事件をとらえて、そして感情をだんだんと——全体の感情としてもまだはつきりととのつておらぬ状態であり、それからこのたびの海洋丸事件につきましては、暴行の点も関係者からわれわれは承つておりますが、その暴行関係につきましても、現地で当の係官等が非を認めて、相当断りを言つているようでありますし、それからまたこれについて何と言つて向う政府返答して参りますか、その結果を見た上でないと、こちらからただこうである、ああであるということで言うことにつきましては、われわれはもう少し慎重に取扱いたい、言うことだけが私はいい結果をもたらすと考えておりません。従つてその点は慎重にやりたい。今後やはり両国の漁業が円満に発展をするように持つて行かなければなるまい、そういう条約を結ぼうということを控えておる際に、この海洋丸の問題で向うがまだ返事をして来ないのに、こちらだけがいろいろなことを言うというようなことは、決していい結果をもたらすところに行かないのではないかというのがわれわれの心配でありまして、もう少し向う出方を見たいと思います。そういう意味におきましては、私は決してこれは外交の弱い立場ではないと存じております。そういう見解でございます。くれぐれも申し上げたいと思いますが、この件につきまして、一つの小さな事件であるから、こういうふうにいいかげんにやつたらいいだろうというようなことは毛頭考えておりません。ただ将来のこともございますので、慎重に対処したい。この件をてこにしてどうこうしようという点につきましては、多少見解を異にしております。  それから賠償問題の点は、これはやはり向う出方を見ないと何とも申し上げにくい。これもやはり慎重に今後対処して行きたい、こう思います。
  13. 赤路友藏

    赤路委員 これ以上御質問申し上げましても、おそらく同じことが繰返されると思いますので、私は御質問はこれ以上進めませんが、先般小高委員からも、竹島問題について外務省見解を聞いたのでありますが、竹島問題といい、あるいは本件の問題といい、これは外交のあり方に対して意見が相違しておりますので、これ以上追究いたしましても、おそらく同じだと思います。ただ私どもは非常に遺憾であるという点だけを指摘しておきたいと思います。  それから返事が来ないということなんですが、そして向う出方を待つということになつておる。一体いつごろまでに返事が来そうであるか、あるいは返事をもらうために、何らかの督促をなされておるか、この一点だけを御説明つておきたいと思います。
  14. 倭島英二

    ○倭島政府委員 口頭で折衝しております。
  15. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 小高熹郎君。
  16. 小高熹郎

    ○小高委員 アジア局長にお尋ねいたします。先ほどの第三海洋丸の問題については、私も大いに疑点を持つておるのでございますが、それは赤路委員も次の機会に譲るということでございますから、重複を避けたいと思いますが、この際ちよつとお尋ねをしておきたいことは、ただいま中共に拿捕抑留されておるわが国の漁船が累計百十四隻に及んでおり、抑留人員が三百七十一名、さらに漁船、漁具の損害が四十億といわれておるのであります。この抑留されておる漁業従業員を、一般中共引揚者と同様の方法をもつて、すみやかに帰還せしめる方法をお考えになつておられるかどうかという点が一点と、いま一つは、この拿捕船の防止について、いかなる交渉をなされておるか、この二点をお尋ねしたいのであります。
  17. 倭島英二

    ○倭島政府委員 引揚げの問題につきましては、従来他の関係で中共地区各地へ抑留せられ、あるいは残留せられた同胞の引揚げが、最近数回にわたつて行われておりますので、その際に漁業関係向うへつかまつた人がなるべく帰れるようにしたいと思いまして、先般北京に行かれた人たちに——特に名前を申しませんが、こういう問題についての解決がうまく行くようにということを頼んだのでありますが、必ずしもそういう漁業関係でおつたからということで、これはこういうふうに帰すんだという了解には達し得なかつたわけであります。御存じ通り、先般の北京で行われた交渉は、向うの建前もある問題で、結局政府直接の関係ではできませんでした。従つて三団体ということでやつたにすぎないのでありますし、また先般来から、数回にわたつて帰国することのできた同胞は、本人たちが帰国を希望するという建前になつておる模様でありまして、漁業関係者の方でも、帰国を希望するという関係になれば、今度のときに帰れると思いますけれども、その点現在政府が直接交渉をするという道を持つておりませんので、残念ながらそれについて正式な、積極的な方法がとりかねております。  それから船の帰還の問題でありますが、これはやはり正式の外交がございませんので、従来拿捕された船の正式返還を申し送る方法がございません。現在も正式にこれを交渉し得ない状況にあるわけでありまして、やつておりません。
  18. 小高熹郎

    ○小高委員 方法がないと言いますが、昨日私の質問に対して、外務省条約局長答弁によりますと、かかる国際的紛争に対しては国際裁判に提訴する道が与えられておるということを聞いておりますが、竹島問題のようなはつきりした事件に対しては、これは国際裁判の裁定をまつまでもないのでありまして、その点はそうめんどうに考えなくてもいいのではないかということを追究しておいたのであります。ただいまの問題に対しては、こういうものこそ国際裁判に提訴して、すみやかに解決をはかるべきだと思いますが、それらに対する今までの行動と、今後のお考えを承りたいと思います。
  19. 倭島英二

    ○倭島政府委員 私、国際司法裁判所への提訴の手続を今よく存じておりませんから、研究しました上で、他日御返答申し上げたいと思います。
  20. 小高熹郎

    ○小高委員 まだ研究してないということでありまするが、日時もどんどん過ぎ去つておりますので、こういう点で非常に国民政府に対する信頼感を失いつつあるのでありまして、この点につきましては、すみやかに解決の方法について努力を願いたいことと、それからいま一つは竹島問題でありまするが、これは本日あえて質問いたしません。近く外務大臣及び保安庁長官の出席を求めて——これは国全体の防衛力の問題でありまして、再軍備とかあるいはしからずとかというのでなく、自分の国を守つて行くところの最小限度の力を、今にして思いを新たにしなかつたならば、一体祖国日本いずこに行くのだ、落ち込むのだという非常なる心配を私抱いておるものであります。これは席をあらためて、また両大臣と質疑応答いたしたいと思いますので、本件に関しては、以上をもつて質問を終ることにいたします。
  21. 倭島英二

    ○倭島政府委員 第一の点でありますが、私が今自信がないのでお答えを申し上げかねる点は、御存じ通り、中国というものが二つに割れておりまして、中共を認めておる国と、それからいわゆる台湾にあります中華民国を認めておる国と二つありますし、またその国の関係が、国際司法裁判所との関係でどうなつておるか、中共との関係は、まだはつきりついていないのじやないかと思います。そういう点と、日本は普通の国と違つて、中共と何ら国交関係がございません。国交関係がない国についての紛争といいますか、係争関係を、国際司法裁判所等に持出す際にどういう関係になるか。普通の手続から申しますと、大体は、双方の国がある程度裁判にかけるということにして裁判に持出すわけであります。従つて、まだはなはだ常態と異なる国の建前でありますし、それからわが国と中共との関係が、そういうような関係のない国でありますので、そういう点はもう少し研究をいたしました上で、またさらに御返答申し上げたいと思います。大体においては、私の感じでございますが、あるいは違つてつたら次の機会に訂正させていただきたいと思うのでありますけれども、提訴できないのじやないか。できることは、あらゆる観点から従来もやつております。しかしながら今御指摘の点もございますし、さらに研究いたしまして御返答申し上げたいと思います。
  22. 小高熹郎

    ○小高委員 もう一言、今国際司法裁判所に提訴できないのではなかろうかということでありまするが、しからば国連軍にこれを提訴することができるでありましようか。国連を通じて本問題の解決は当然できると思うのでありまするが、この点を一点伺いたいと思います。
  23. 倭島英二

    ○倭島政府委員 御存じ通り、国連にはまだ中共は入つておりません。しかしながら、国際間の紛争を平和的に解決する方法が、国連にもあるわけでありますしただその点も、こういう問題をどの程度まで持出し得るか、一方、申すまでもありませんが、中共が朝鮮との関係で起しておる国際紛争は、国連にかかつておるわけであります。そのかかつておるのも、中共の方が認めたり認めなかつたり、結局は警察行動ということで、実力行為でこれを取締るということで来ておりますが、この点も国連に対してどの程度のことがなし得るか。これは私はさしあたつての感じは、消極的に考えますが、この点もまた後ほど御返答申し上げたいと存じます。
  24. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 夏堀源三郎君。
  25. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 私、昨日以来公海漁業の原則について質問をいたしております。引続いてこの問題について質疑を行いたいと存じます。いわゆる公海においての紛争、ただいまの話題は私の方から申し述べたのでありますが、国際司法裁判所、あるいは国連に提訴するということによつて解決をつけなければならぬじやないか。これは共産主義国といわず、全体の関係各国に対しての私の意見であります。ただいまの御答弁によつて、共産主義国との外交機関はないから、それは国際司法裁判所でも、あるいは国連への提訴も、それは非常にむずかしい、その通りであろうと思います。けれども日本憲法は、明らかに国際紛争のいかなる場合といえども、武力に訴えてはならない、こう言つておる。その通りであります。しかしそのために竹島の問題も、朝鮮の方から無謀な攻撃を受けてもいかんともいたし方がないという場合に、泣き寝入りをするという手はないだろう。これは全体の問題であります。そうした場合に国連に提訴する、あるいは国際司法裁判にも提訴する。そうした国際機関に提訴する場合に、日本ができなかつたならば、国連に参加しておる国、あるいはその他の有力なる第三国を通じて、これに提訴する方法もあるのかないのか、この点についての御答弁を伺いたい。
  26. 倭島英二

    ○倭島政府委員 あり得ると思います。目下研究しております。
  27. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 私もその通りだと思います。日本先ほど申し上げたように、武力によつてすべての結末をつけるということは、今の場合不可能であると思います。またやろうと思つても、それは絶対にできない。要するに私の考えとしては、昨日は北洋漁業に関連した問題について質問いたしましたが、きようは東太平洋、東南アジア全体を含んでの公海漁業の問題で質問いたしたいと存じます。そこですでに外交問題も入つて来るのであります。そのつもりで御答弁を願いたいと存じます。現在の敗戦国日本は武力を持たず、いわゆる軟弱外交と言われておりますけれども、全然背後に武力を持たない日本は、いかなる立場においてもわれわれは劣勢であり、その主張はなかなかこれを貫徹することは容易じやないということはわかり切つている話であります。しからば、いつまでもこれをそういう方向に放棄しておくかといいますと、それはいかぬ。しからばどういうふうに持つて行けばいいのか。これは私の考えとしては、いわゆる戦争を放棄した日本は、どこまでも民主国家として、民主主義によつて諸外国とおつき合いして行く以外にはない。われわれは武力に訴える力がないから、正しい民主主義の力をもつて諸外国とおつき合いしようではないか。なおそれでもどうにもならぬ場合には、昨日も申し上げましたが、各国は敗戦国日本のこの生活苦、人口問題、これに全然考慮を与えないということであつたならば、自由主義国家群は日本に対して恐るべき非人道的な行為であるということが言えるでありましよう。こういうことは国際間に取上げてりつぱな議論として成り立つであろう、こう私は存じております。そこでこれからの持つて行き方は、公海漁業日本の公共福祉のためにかくしなければならぬという原則のもとに、昨日から議論を進めておるであります。その意味からいつて、この紛争について、先ほどフイリピンお話もありましたが、内容はよくわかりませんが、各船一艘ずつについてのこの結末を今つけてろといつたところで、これは無理だろうと思う。そこで今局長の御答弁のあつたことは、私としては至当な答弁であろうと思います。そういうようなことで、強硬にこれを持つて行く場合には、将来の日本経済に悪影響を及ぼすという事態もできるであろう。これは当然考えなければなりません。そうした意味において、しからば、どこまでも屈辱ということはできませんので、民主国家として、民主的にものを運ぶという方法が一番いいということは今申し上げた通りであります。そこで東南アジア全体に対しての日本の経済進出、経済開発——向うの方の対日感情はまだ緩和されておりませんで、日本の経済侵略という言葉を使つておるそうでありますが、それは武力による侵略にかわつて日本はこの機会に未開発の東南アジアを経済的に侵略しようという計画を持つているということを、あちらの各新聞は発表しておるそうであります。これも非常に大きな誤解があるだろうとは存じまするけれども、しかしどこかには国際関係に摩擦の生ずることはやむを得ない。そこで東南アジアに対しての漁業問題、今吉田総理が東南アジアの開発を大きく国策として取上げております。私も一、二回呼ばれていろいろ意見を聞かれたこともありますが、現在東南アジアの開発において、貿易をやろうと言つたところで、一例を申し上げますると、これは別に詳しく申し上げる必要はありませんが、この程度は申し上げてもよろしいだろうと思いますが、貿易上において相当な金額はまだ決済がつかぬ。それは賠償が片づかぬからです。しかしそれでもいいだろうぐらいでやつたら、どつこいそうは行かぬということで、現況のままでは貿易はちつとも進まない。そういう状態において賠償問題を先に片づけなければならぬだろうと存じております。そういたしますると、一体東南アジアにどういう事業を興して開発をすることがよろしいか、そういうように非常にまだ危険性が伴つておる。その危険時代においてはやはり漁業は非常によろしいのじやないか。私はこういう構想を持つております。そこで水産庁にお伺いしたいことは、漁業公海においてということを申しておりまするけれども、これは公海よりものと領海においても、たとえば底びきのような領海漁業においても、日本漁業技術を求めようとしている国は一体東南アジアのどことどこであるのか。あるのか、ないのか。まずこの点をお伺いして、それから漸次質問を進めたいと存じます。
  28. 倭島英二

    ○倭島政府委員 漁業の問題につきましては、大体東南アジア各国とも、日本漁業技術等に比べまして劣つております。そのことは各国とも自覚をしており、しかも戦後においては二つの問題を考えておるようであります。一つは、このままほおつておくと日本が出て来て、われわれが将来漁業というものを育つて行く余地がなくなるのではあるまいかという心配が一つと、いま一つは、ぜひ日本の技術を教えてもらつて、また日本で木造船その他をこさえてもらつて、ぜひ漁業を発達させたい。そういう考え方のようであります。この日本の技術あるいは協力を欲しておる国はどこかという御質問のように存じますが、御承知通りすでにインドは日本から技術なり漁業を教えてもらいたいというので、もう二年くらいになりますが、現地の方へ太平洋漁業つたと思いますが、名前はちよつとはつきり覚えておりませんが、漁業会社が二年くらい協力しており、その成績がたいへんよいので、さらにその区域を広めようというような傾向にあります。セイロンがやはり日本から漁業を教えてもらいたいという希望を持つておるようであります。パキスタンも同様であります。最近、これも御承知であろうと思いますが、これもはつきりその協力した会社の名前を今覚えておりませんが、ビルマでは最近合弁で日本漁業界のある会社と漁業をやる。その趣旨は技術を習うと同時に、漁獲物をよけい取入れたいということなのであります。それからインドネシアといたしましても各地方に参りますと、ぜひ日本漁業家に来てもらつて漁業を教えてもらいたい。さしあたりのところ、魚をとつてわれわれに与えてもらいたい。こういう希望は各方面にあるようであります。しかし先ほど申しました第一の、日本にあまりこつちへ出てもらうと、将来動きのとれぬようなことになるのではないかというような心配もあるようであります。それからフヒイリピン、タイ、インドシナ等については、まだ直接漁業の希望を聞いておりませんが、従来からすでに話のありますのは、大要今申し上げましたような範囲のように存じております。
  29. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 夏堀君にお願いいたします。あと農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案起草に関する件、水産貿易に関する件等の問題がありますので、時間の関係もありますから、その旨お含みの上よろしくお願いいたします。
  30. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 今御答弁になつたように調査しております。そこで私は、公海漁業と貿易という点で昨日来質問しておりまするので、これに関連いたしまして、東南アジアヘの進出、この第一歩を踏み出すのは日本漁業であり、昨日来私の論じておりますることは世界公海——世界と言つたところで、昨日申し上げました通り、北洋、東太平洋、インド洋及びアフリカ、濠州ということを私は限定して申し上げております。これは広いのです。そうした面において日本の進出すべき海区はまだ相当ある。従つてこれに対してあまりにきつい許可制度によつてこれを押えることは、憲法上の解釈からいつても当らないのじやないかということを、昨日来私は申し上げておるのであります。そういうようなことで、日本は国策として東南アジアに進出する機会を与えなければならぬということでありまするから、今御答弁になつたように、漁業技術をあちらで必要としておるのであるということははつきりしております。ただビルマあたりでは、水産についてはある程度の希望を持つておりましようけれども、農業についてはその必要はないといつて、何か拒んでおるということも聞いておりますが、まずその先頭に立つて行くものは漁業問題である。しかしどこまでもそれは経済侵略であるという感じを与えることははなはだまずい。しからばどういう方法で行くか、これは大きな政策でありますので、この政策、大きく見た公海漁業ということ、公共の福祉というこの大きな問題を踏み誤るようなことがあつてはならない。よつて水産庁では、東南アジアの開発に関連して、政府にどの程度の申入れをしてあるかということ、なければよろしいですが、もしあればその点についてのお答えを願いたい。
  31. 清井正

    清井政府委員 東南アジア方面に対する日本遠洋漁業の進出についての御質問でございますが、これは昨日来夏堀委員お話もございますし、また私からお答え申し上げたことでございますが、国際遠洋漁業の開発にあたりましては、これは国際的な観点からの協調という問題と、資源の開発並びに維持の問題、さらに水産物の流通、消費価格等の問題等をもあわせ考え措置しなければならないということは、昨日も申し上げた通りであります。この点夏堀委員も十分御承知のことと思いまするが、そういうような観点たちまして、私ども遠洋漁業の取締りにあたりましては、ことさらに取締りのみに終始するということは全然考えておりません。必要に応じ、われわれが常々考えておりますところの、沖合から遠洋への進出の方針に従いまして、漁船その他につきましても、総合的な観点から遠洋漁業の進出について施策をとつて参らなければならぬと考えております。ただ問題は、これを一気に推し進めるということについでは、いろいろな観点から問題がございますので、方向といたしましては、遠洋漁業への進出強化という方向は是認せられると思いますけれども、その具体的な一つ一つの方策といたしましては、ただいま私どもがとつております方策を、逐次その時の事情に応じてかわつた方策をとつて参らなければならぬというふうに、実は考えております。かつおまぐろ漁業の方はその一つの例でございまして、資源の問題につきましては、他の漁業ほど問題がないというふうに考えるのでございますが、それを今ただちに一気に全部開放するということは、いささか早計に失すると思いますので、総合的に勘案いたしまして、諸般の施策と全体的な資源の開発とにらみ合せて、逐次遠洋漁業の進出という方向へ、この漁業に対する必要な措置をとつて参りたいと考えておる次第であります。
  32. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 私の質問要点は、東南アジアの開発について、水産庁政府にどういうことを要望して、何か計画があるのかないのか。それを具体的にお伺いしているのです。
  33. 清井正

    清井政府委員 遠洋漁業、特に国際漁業への進出の問題につきましては、ただいまアジア局長からも詳細御説明なさつたのでございますが、私どもといたしましては、ただいま申し上げたような方針に基きまして、部内でもつぱらその方策をとるべく具体案を準備中であります。
  34. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 今度閉会中に東南アジアへいろいろ調査団が派遣されるそうである。私も四月前から総理からも言われ、行つてみようかと考えておりましたが、そのほかの仕事の面で、別の方へ行かなければならなくなり、今度は遠慮することになつておりますが、私の調査したところだけでも、ある国は日本漁業団を歓迎しておる。そしてそのとつた魚は、ある国に出して米とかえる。こうすれば日本の食糧問題の緩和にも非常に役立つであろう。こういう大きな国策的な面をまず漁業方面から打出してみようということを、ある国の有力者の方々が考えておるということを聞いておる。日本が民主主義国家としてこれから進出する場合に、何を前提として考えなければならないかというと、それは食糧問題である。世界の人口と食糧のアンバランスは何によつて解決をつけるか、これは公海漁業資源開発にまたなければならない。しかし、日本の沿岸、あるいはアメリカでも開発された海区は、よほどむずかしい。今、日本漁業技術の導入を必要とする海区は、未開発なのであるから、水産庁はむしろこれに対しては積極的に援助すべきであると私は考えております。日本の東南アジアの開発は、諸工業及び農業開発の先端を切るべきものである。もし場合によつたならば、あちらに供給する魚の一部は、非常に安くとも、あるいはただでも、そういうことは国家の補償によつてやり、友好関係を維持進展さす方向に持つて行く政策が必要ではないか。これが昨日から私が質問をしておる要点であります。そこでこういう計画をいまだお立てになつておらないとすれば、これからでも十分に間に合うのではなかろうかと存じますので、この問題については、水産庁は積極的に各国の事情調査し、最初から完全な計画は立たないでありましようから、第一期の計画を立て、ただちに実施に入る。これは少くとも本年の末ごろまでには実施に入るように持つて行かなければならないのではないか。これは先ほど申しました諸工業、農業等の進出に際しての先端を切るという意味からいつて、急がなければならないのではないかと私は考えております。  ここでちよつとつけ加えておきますが、今、日本の沿岸漁業は非常に苦境に立つておる。それは沿岸漁場資源の枯渇である。その根元はどこにあるかと申しますと、機船底びきにあると思います。機船底びきが整理期に来ておることを私は承知しております。そこで思い切つてそれに対する補償制度を大蔵省との間に折衝されて、沿岸漁業の維持発展のために底びき漁業公海進出を求め、あわせて東南アジアヘの進出をはかるという方向に、国策的に持つて行くことが最も大切なのではないかと私は考えております。もしそうした面で大きく政治面を展開して行かなければならぬということであつたならば、これは必要によつてこれはあとで意見を申し上げる機会は求めたいと存じてはおりますが、水産庁は、現在外廓団体と申しますか、中央漁業調整審議会というものがありますけれども、それ以外にもつと政治力の強い、何か大きな財政面、金融面、及びそうした政策を断行するための一つの機関を必要とするが、本来ならばそれは本委員会の活動にまたなければならない。しかし合法的にはたしてそれが望み得るかどうかあとで、委員諸君と相談をいたしたいと思います。そうした意味水産庁を批判するわけではありませんけれども公海漁業と貿易という大きな問題を議する場合に、東南アジアの問題に対してまことに消極的であるという印象を、私は受けたのであります。それであつたならば日本の水産政策は一体どういうことになるのか。国内の小さな島々の沿岸漁業の取締りとか許可とか、そういうことによつてのみ水産行政が行れておつたのであつたならば、日本の水産行政は一体どうなるのか。もつと飛躍的に公海漁業と貿易という点を広く考えて、国民の生活に必要な、いわゆる公共のために、経済自立のためにかくしなければならぬ。それは東南アジアの開発を先端にしなければならぬし、あるいは北洋漁業の問題あるいは東太平洋のまぐろ母船式もその中に入りましよう、思い切つた事業計画を立てることによつて——本委員会に提案になつております水産加工輸出という法案に対しても、法律によつてこういうことを審議すること自体私はおかしいと思う。これはその政策よろしきを得ましたならば、魚をほしい人々に与える方法は商取引によつてできることであり、行政面までまたなくてもできることである。これを法律によつてどうこうということはちやんちやらおかしいと私は考えております。こうした面はもつと強力に水産庁で計画を立てて、そうしてそのためにある水産委員会は、その上に立つてこれを十分に批判し——私はこの水産委員会も十分なる批判力を持つて、水産行政に対して批判しなければならない。それはあえて監督をするとかいやがらせではなくて、政府に対するに協力の意味でそういうことが望ましいと考えております。私に与えられた時間は十二時までだそうでありますから、きようはこの程度としてあとに譲ることといたしますけれども公海漁業の問題については前申し上げたように、大きな国策の面からこれを論じておるのでありまして、業者の利害得失によつて云々ということは毛頭考えておりません。大きな国策として論じておるのでありますから、その御気分で、これからいろいろ議題もございましようし、懇談の機会もありましようから、きようはそのつもりでいろいろ御協力を申し上げたいということを申し述べて、これで終ります。     —————————————
  35. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 次に前会に引続き農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案起草に関する件について議事を進めます。本件について赤路友藏君より発言を求められております。この際これを許します。赤路友藏君。
  36. 赤路友藏

    赤路委員 昨日来御説明申し上げました農林漁業金融公庫法の一部改正の件でございますが、一点政府に対する要望を申し上げておきたいと思うのであります。  御承知通り貸付金が確実に返済されなければならぬことはもちろんでございまして、資金の回転がそのことによつて期せられなければならないと思うのであります。在来漁業手形の状態を見て参りました場合、非常に返済状況が悪い。こういうようなことが再び繰返されてはならないと思いますので、貸付対象者の選定については慎重でなければならないと思います。よつて本法施行に伴う融資については、本資金の性質及び中小企業の現状にかんがみ、政府は借入れ及び償還の安全を期するため、中小企業者の協力により受入れ態勢の整備に万全の措置を講ずべきである、かような要望を一点加えまして、昨日申し上げました線と並行して御審議のほどをお願い申し上げたいと思います。
  37. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 この農林漁業金融公庫法の改正につきましては、小委員長の詳しい御報告でまことにけつこうなことと思うのでありますが、この改正によりまして、実際の貸し出のわくが幾らある、との点を一点だけ明かにしておいていただきたいと思います。また開発銀行との関係についても御説明願いたいと思います。
  38. 小倉武一

    ○小倉政府委員 御質問の点でございますが、公庫法の一部改正につきましての本委員会の御提案の趣早は、私ども賛成でございますが、この資金のわくの点につきましては、公庫の資金のわくは、御承知通り予算に計上されまして御審議願うことになつておりまして、この公庫法の今回の改正につきましては、予算に計上を実はいたしておりません。従いまして、ただいまのところは、今回の改正の趣旨に照応いたします資金のわくはないのであります。しかしながら、御趣旨のような改正案が成立いたしますれば、私どもといたしましても極力御趣旨に沿うてわくの増大に努めなければならないと思います。水産庁におかれましても同様の趣旨であられると思いますので、農林省全体といたしまして、わくの拡大に予算の機会に十分の努力をしたい、かように考えております。
  39. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 この改正によります貸出しのわくの見通しでありますが、中小企業金融公庫の方の残がどのくらいあるか、それからまた貸し出される点は、復金の貸出し残が約五億円あると言われております。こういうものを流用できるではないかという意見もありますので、本年度において大体どのくらい貸出しできるかという見通しくらいはつくだろうと考えますが、この点お伺いしておきたいと思います。しこうしてこの改正案に対しましては、もう何ら議論の余地はないので、討論を省略してただちに採決されんことを希望いたすものであります。
  40. 小倉武一

    ○小倉政府委員 漁船金融につきまして、従来やつております特殊金融機関につきましてそのわくの問題でございますが、特別漁船のわくといつたものは設定していないようでございます。もちろん論理的に申しますと、そういう機関が漁船金融を従来やつてつたものでありますから、それに若干の目当てをいたしまして、当然あるフアンドはあるべきだということになりましようけれども、今回の公庫法の改正に伴つて当然そちらからの資金がこちらにまわるということには必ずしもなりません。ただ今後漁船につきましての資金わくを増大いたします場合に、他の金融機関につきましては、そういう点を考慮する必要はございませんから、おのずから漁船については公庫に一本になりまして、そこに資金のわくの増大の余地も出て来る、かように考えております。今回の改正によりまして、当然には必ずしも他の金融機関から資金源が譲り受けられるということには、なかなか困難であるというふうに思つております。
  41. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 松田鐵藏君。
  42. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 ただいま局長の話だと、開発銀行のわくというものはきまつている。だからこの金融金庫と全然別個のものである。よつて開発銀行の漁船に対する金融という道は、現在のところはそのままで、開発銀行の現在の行き方で行き得るのだ、こういう御説明でございますか。
  43. 清井正

    清井政府委員 私からちよつとつけ加えて申し上げますが、御承知通り、ただいま開発銀行におきましては、二通りの融資をいたしております。一つは約一千万円以上の資本金を有する大会社につきまして、大体二百トンを越える漁船について本来の開発銀行の融資をいたしております。それは御承知通り、昨年度におきましては約十億近い額の融資が行われたのでございますが、かつおまぐろの船あるいは少数の捕鯨等につきましての融資を行われたのであります。問題になりますのは、それ以下の個人企業者の融資の問題であろうかと思います。それは御承知通り開発銀行の中小事業部において融資をいたしておつたのでございますが、中小事業部といたしまして、特に水産関係で融資を見ておりましたのは、製氷冷凍漁船でございます。ところがそれは製氷冷凍漁船というわくがあるわけでございませんので、御承知通り中小事業部の全体のわくから随時貸付けを受けておつた、こういうことでありまして、製氷冷凍漁船のわくというものは固定をしていないわけであります。それが中小事業部が今度中小企業金融公庫と形がかわりまして、いわゆる原始産業は含まないということになりまして、製氷冷凍は含めますけれども、個人企業者の漁船の分が浮いてしまう、貸付けを受ける道がなくなるということになりまして、今回この問題が非常に大きな問題と相なる、こういうことが考えられるのであります。その点につきましては、ただいま、経済局長から御説明申し上げました通り、金額の固定したことは考えられないけれども、抽象的な中小事業部において貸しておつたのだから、その分は当然貸付けらるべき筋合いのものであろう、こういうことを経済局長は御答弁をされたのであります。ただ今この法律を改正して、だからすぐ開発銀行の中小事業部のわくが来るというわけにはいかないけれども、従来中小事業部において漁船に貸しておつたわけだから、その部分のわくは当然来るべき筋合いにはなるであろう、こういう意味のことを御説明申し上げておつたような次第であります。
  44. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 銀行局長がおいでになつたので、銀行局長に私は質問をしたいのでございます。ただいま提案になつておりまする公庫法の一部改正で、十八条を一部改正して、個人に対する金融の道を講じたいという、委員会全体の意見によつて、この提案がなされておるのであります。現在開発銀行を通じて出ているものは、大資本漁業を重点とされて出ておる。これは国策としてやることであるから、最も好ましいことである。零細漁民は、系統機関である漁業協同組合を通じて漁船の貸出しもできておる。しかるに中の漁業者は、その漁業協同組合及び開発銀行からの融資の道が講ぜられていないのが今日の姿である。よつて水産庁において今回漁船損害補償、すなわち満期保険の制度による、中小漁業に対しても積立てによる融資の方法を講じて行きたいという政府の非常に画期的な法律をつくられた。そのときにおいて、大蔵省においては、二十トンという限度を固執されおつたが、幸いにして大蔵省もこの中小漁業というものに対する認識を改められて、しかして百トンまでということに御同意を願つた、こういうように承つて、われわれは感謝の念を持つておる。さてしかし、この満期保険の制度によつて漁船の金融は積立てをもつてやろうという考え方で、法律の建前から行けばそうなつておる。しかし積立てをして行つた場合において、全部積立てになつてからつくるということはいとやさしいことであるが、漁民はそういうような考え方をもつていない。終戦後もはや五年なり七年なりにおいて、船そのものが非常にいたんでおる。それがなけなしの金をもつて、年々みずからの手によつて建造している資金というものは、水産庁の先日のリストからいつて見ると百二十億を算しておる。この百二十億というものは、結局すべての水産に対するしわができておる。そこに欠陥ができておる。よつて水産上の発展というものもできていないのである。これをどうかして政府のあたたかい気持をもつて、ただいま申し上げたような開発銀行及び漁業協同組合、これらの系統機関を通じてやる以外に道はないが、公庫法の改正によつて財政資金によつてその道を開いてやることによつて漁業者の百二十億という漁船の建造資金の幾分でも緩和するような道を講じて行かなければならないではないかというのが、この法律を出した主眼であります。ところが農林省経済局長にいろいろ折衝してみましたが、本年の財政資金から出ておる農林漁業金融公庫のあの資金というものは、わくがもうきまつてつて、割当てがきまつてつて、なかなか今そこに食い込む余地がないものであるという議論であり、われわれもそれを了承するものであります。しかして現在でも一番困つているものは、ただいま申し上げたような建造資金というものが一番困つている。かりに満期保険をかけて行つて、その内容調査してみるときにおいて、水産庁から上つておる計画から行くと、年々約五十億くらいの金というものが積立てになつて行くことであろうというような計画を持つておられるようであります。そこでその五十億も積立てられて行くということであつたならば、漁民は先ほど申したように、積立てをすることによつて、一年なら一年、二年なら二年というものを、掛金すなわち積立をすることによつて、目的である最後の三年、六年、九年というその目的を一日も早く実現したいというのが、その満期保険に入る漁民の考え方であろう、かように考えておるのであります。よつてここにおいて、たとえば基金協会の制度はできたが、なかなかこれは施設費にはまわらぬものである。着業資金その他によつてまかなうべき性質のものであるから、どうしてもここにおいて、金融業者はもはや今日のような状態であるし、財政資金によつてまかなつてもらわなければならないのであるが、一方において財政資金そのものは、もう予算が決定されておるので、いかんともなしがたいというような経済局長の御意見下あるが、ここにおいて大蔵省は、ただいまわれわれが提案しておる農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案をよく御理解願つたならば、漁民の経済というものの状態もよくおわかりのことと思う。漁民の一番大事なものは漁船である、これらをよくめんどうを見てやることによつて初めて生産が拡充することになるのだから、その点を十分考慮なさつて、今日どういうような方法を考えられているか、この財政資金の運用をいかになされるか、御研究ができているなら、そういうところをひとつ、御研究の程度でも御発表願えればたいへんけつこうだ、こう思つておるのです。
  45. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 お答え申し上げます。今御質問の農林漁業金融公庫法の改正につきましては、当委員会におきまして御提案があつて、近くそういうことで成立をするように承つております。この点につきましては、私自体としても、林道その他の例もありますので、適当な措置だというふうに考えております。ただ問題は、こういう改正が行われた場合において、ただちにそういう方面へ向ける資金というものがあるかどうかという点でありますが、これはただいまお話もありましたように、農林漁業金融公庫の資金源というものは、すべてこれを財政資金に仰いでおる。財政資金は御承知のように、すべて予算あるいは予算に関連する政府の資金計画の一環として組まれておるわけであります。従いまして、現在御審議をいただいております予算案の中には、こういう改正を前提とした資金計画というものは実は入つておらぬわけであります。従いまして、この予算がもし通過いたしました場合におきまして、ただちにこの法律の改正に即応するような資金源を農林漁業金融公庫に与えることは、実際問題として困難だと考えます。しかし、御趣旨はよく了承いたしておるところであり事から、今後またいろいろ機会もあるかと思うのでありますが、そういう機会におきましては、財政全体の立場からこの点を十分考慮いたしまして、必要なる措置をとりたい、かように考えておりますが、さしあたりの問題といたしましては、今申し上げましたような事情で、財政資金をここでただちに出すということは、ちよつと困難かと存じております。
  46. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 たいへん懇切な御意見で、私どもも了とするものでありますが、まず九州の災害、和歌山県の災害、これらの問題から行きまして、近く臨時国会が開かれて、補正予算が組まれることは必然的なことだと私は思つております。その場合において、政府はこの切実な叫びに対する、御考慮を払つていただくように、今から銀行局長は主計局にも御連絡を願いたいと思うのであります。次にもう一点、それはわれわれあさはかな考え方から論議しているので、先日も銀行局の係官においでを願つて、ただいま局長が言われるような御意見を承つている。しかし私はそのときにおいて、今までの農林漁業の特融によつて、農林中金は相当上手に経営されたために、農林中金において相当の自己資金がふえた。これは銀行局でもよくおわかりのことと思う。それを今うの目たかの目で各方面からとろうとしている。これは農林特融がこれまでに出たために、農林中金は負債のある、焦げつきのある協同組合に対しては、強力にその回収に努めたものであります。これは幾多の例からそう言えると思います。そこで初めて農林中金の自己資金がふえたものであります。一方はまるつきり農林中金の救済のような形にもなつているのであります。それはいけないということから、公庫ができたのです。そのとき公庫法を制定するにあたつて、私は水産委員会を代表して、副委員長となつてこの問題を論議してあそこまで持つてつたものです。そのゆえに内容はつきりわかつております。ところで、この中金の自己資金というものに対して、現在たとえば水産においても、農業においてもつなぎ資金の形をもつて、中金の了解を得て、中金はまた出してやらなければならないじやないかということから、つなぎ資金が相当出ている、これは非常にいいことと思つております。よつてこうした切実な漁民の叫び、われわれ委員会においての意見というものをも反映するならば、中金の自己資金をこの方に流用さしてもらいたい。たとえばそれが十億であろうと二十億であろうと、これを流用願わせるように、政府当局として御努力なさつたならばいいじやないか、こういうように考えているのでありますが、それはまたそこにいろいろと問題があることと思います。またその他農山漁村電気導入促進法についても、北海道あたりは三十億も四十億もほしがつているが、これがわずかに九億より予算がないというようなことで、非常に困つている状態がある。これらをよく勘案いたしまして、つなぎ資金を出す場合において、たとえば二十億でもいい、三十億でもいい、一定の金額に対して、公庫がその利子に対する幾分の保証をするとか——金利は、中金の自己資金であるからそのままでもいいが、それに対して保証をするというような方法はでき得ないかということを、私どをは考えているのでありますが、その点銀行局長どうでございますか。
  47. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 お答え申し上げます。農林中金が資金が非常に余るといいますか、だぶつているようなお話もありましたが、この点は見方の問題でありまして、私はさように考えておりません。資金の使い方のよしあしの問題についてはいろいろ議論はあると思います。水産の方にウエートを置かな過ぎているといつたような議論はあると思いますけれども、私どもとしては、今農中の資金繰りは常時見ておりますが、決して資金は余つておりません。最近では、ことに水害関係その他で相当大きなものを出さなければならぬ、これがために政府としても、苦しい中から指定預金さえ実はしているような事態になつているので、決して農中自体が資金が非常に余つているという状態にはないと思います。それで農林漁業金融公庫が発足当時、仕事がなかなかうまく運びませんので、農林中金からつなぎ資金も一時出したことも確かにございました。今度の場合におきましては、もし資金に余裕があれば、一応そういうことも考えられないことではありませんが、その前提としては、やはり最近の機会において、これらの資金のために農林漁業金融公庫自体の資金源が充実されるということが、どうしてもなくちやいけない。その約束がまだできておらないのに、農林中金でそのつなぎを出すということは、なかなか困難な問題であろうと思います。何らかの機会において、これらの方へ向けての公庫の資金を確保することがまず先決であつて、それが確保できた後において、当座のつなぎを農林中金でやるということであれば考えられることだと思いますけれども、ただいまのような状態におきましては、その点がまだ十分に確実に約束できる状態になつておりませんので、今お話のような点はなかなかむずかしいと思います。それから保証の点につきましては、やはり今申し上げましたようなことで、おのずからおわかり願えると思うのであります。
  48. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 局長の言われる意味はよくわかります。よつて、われわれの今提案しておるこの法律が制定されることによつて十分御考慮を願いたいということだけをお願い申し上げまして、私の質問は打切つておきます。
  49. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 水産金融の面においては、私どもも業者としては、ぜひこの法案を通してもらうようにお願いする方には賛成でありまするけれども、制度の面においてはいろいろ自由党としての立場もありますので、自由党はまだこれを党議に付しておらぬと私は考えております。この委員会においてこの取扱いをどうするか、それはやはり党議にかけなければなりませんので、その間にただいま御答弁になつたようなこともあり、いろいろ政府当局と懇談しなければならぬこともあるだろうと存じます。これは与党としてはやむを得ないことであります。そうした意味で、この委員会として、この金融問題の取扱いについては、自由党としては一応党議にはかつて、それから御相談に応じるか応じないかということを、この次の委員会で意見を申し述べるという方法が妥当じやないかと私は考えております。その点委員長において適当なおはからいを願います。
  50. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 皆様にお諮り申し上げます。実は夏堀君の御発言のような事情から、委員長は今自由党の機関、に諮りに行つておるのでございます。先ほど参りましたけれども、まだ幹部の諸君との会見をみんな終つていないので、もしこの委員会の時間までに結論が出されればこちらに参るけれども、目下折衝中であるから、適当にとりはからいを願いたいということを申していましたから、この点につきまして、さらに時間をかしてもらつて皆さんと御相談をしたいと思います。
  51. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 大体自由党は不都合千万だ、とにかく当委員会において、これは委員全体がこうあるべきだということでもつて、これを共同提案しておる。それだのに、まだ党議が決定していないというようなことで引延しをされる、現にこの前の二つの法律に対してもその通りなんだ、政府提案でありながら二日も延ばした、こういう問題はきよう初めて出た問題じやない。そのときにおいても私どもは文句を言わなかつた、しかし将来を忠告しておいた。そうして、そのときには、会期もあることだからやむを得ないということで——自分も自由党におつて、あのお家柄の腐つたようなやり方をもつてぐたぐたしておつたのではしかたがない、そんなところへ長くいるべきじやないといつて新しくぱつぱぱつぱと新鮮味を持つた鳩山自由党に行つたんだけれども、まだまだそれを改革できない。そんなようなことで一体会期はいつまであるか、もうこの問題は参議院においても事前審査をしておる、そういうことを言わぬで、お互いの責任において全会一致をもつて可決して、こうしたのであるからということでもつてよく御理解を願えるようにしてもらうことが、自由党の襟度だと私は思うのであるが、この点に対して私はただいまの夏堀委員の発言に対しては不満の意を表明いたします。
  52. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 暫時休憩をいたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後零時三十八分開議
  53. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。   農林漁業金融公庫法の一部改正に関する件は、午後の委員会にまわして議事を進めることにいたしまして、次に水産貿易に関する件について議事を進めます。この際松田委員より発言を求められておりますので、これを許します。松田鐵藏君。
  54. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 さきに提案されておつた加工水産物の輸出振興に関する法律案、これは現在当委員会において審議中でありますが、私はこれに対して、この法案が提出されてからいろいろとその内容調査せんとしたものであります。ところがこの法律の内容調査するにおいてたまたま発見されたことは、日本のカン詰業者の一番の負担になつておるのが空カンであります。この空カンがアメリカのツナの空カンは一ドルである。日本の空カンはニドルである。ここにおいてほとんど倍額のものをカン詰業者が使用しなければならないというような現状になつおる。さてこれをいろいろと研究してみると、今日本にある空カン会社のうちで、一番大きいのが東洋製缶である。北海製缶というのは、東洋製缶と同一の系統の会社である。これらが戦前からの空カンの製造会社であり、すべての機械、建物、それらのものが全部償却されておる優秀な会社であります。しかも日本の独占企業にひとしいものである。ところがこの空カンの非常な高値によつて日本の産業そのものが進展しない実情にあることが発見されたのであります。さて結果として現われたものは、九州において、この東洋製缶のあまりにも高価な空カンでは耐えがたいというところから、九州製缶というものがつくられた。これは近年においてつくられたものであり、物価の高い今日において、その施設費というものは相当高いものである。にもかかわらず、この九州製缶は二割の配当をしておる。そのほかに業者に対しては割もどし金まで与えておる、こういうまつたくまじめな営業をされておるのであります。ですから私は水産庁に対して、この両者の比較をしなければならないから、空カン会社のコストの点を調べていただきたいということを申し送つたのでありまするが、残念ながら水産庁はそれを調べる権能がないということで、でき得ないのが今日の状態であります。さてここから行きますると、独占企業である空カン会社が、自己の営業の建前から利益を得るがために、カン詰業者は非常な苦境に立つておる。これを是正して行かなかつたならば、たといどのような法律が出ようと、かりに加工水産物輸出振興に関する法律が制定されましても、いつまでたつても、外国の市場とは太刀打ちができ得ないのであります。この点を解決することがわれわれの一番の大きな問題だと私は考えております。ところでアメリカのブリキはトン六万円、日本のブリキはトン十三万円、それに輸出振興の面からいつてトン二万円の補助金を出しておる。しかしそれでも九万円です。これは日本のカン詰として出して行くべき空カンであつたならば、場合によつては、トン六万円まで、ブリキに対する補助金なり何なりを出す方法もお考えにならなければならないことでもあろうし、空カン会社のコストというものに対しては、十分政府としてもお考えになつて行かなければならないと思うのでありますが、水産庁及び通産省はどのようにお考えになつておるか、もしコストやそれらの点で発表できるまでの調査ができておつたならば、御発表を願いたいと存ずるものであります。
  55. 清井正

    清井政府委員 私の考えを申し上げたいと思います。確かに水産カン詰の輸出にあたりまして、空カンの価格が非常な問題となつていることは御指摘の通りでございます。ことに内地の空カンの価格と輸入空カンの価格とに価格差があるということにつきましても、私ども十分に承知いたしておりまして、カン詰の製造業者が、このカン詰に使用するところの空カンの価格を何らかの方法によつて引下げる措置を講じてもらいたいという切なる希望を持つていることも、私ども十分承知をいたしておるのであります。従いまして、カン詰の輸出振興という立場から考えまして、何らかの方法を講じまして、空カンの価格をさらに現在よりも低廉ならしめる措置を講ずることが、製造業者にとつては必要ではないかということを、私ども立場としては考えておる次第でございます。
  56. 森日出哉

    ○森説明員 ただいまの問題につきまして簡単にお答え申し上げます。ブリキの値段の問題でございますが、これはブリキの値段の問題であると同時に、その原料となつておりますところの鋼板の価格の問題、これが密接に関連しております。鋼板となりますと、鉄鋼の生産費、これがやはり関連しておるわけでございまして、その関連につきまして、私けさほどから私の方の重工業局の方と話をしておるわけでございますが、その関連につきましては、まだはつきりした結論を得ておりません。それから製カン会社のコストの問題でございますけれども、これは鋼板までは重工業局が扱つておりまして、製カン会社に対する監督は、少くとも食品関係につきましては、農林省の方で監督しておられるということでございます。そういうふうに私の方の重工業局では考えております。鋼板から以後の問題につきましては、私の方で研究いたします。
  57. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 そういたしますと、現在日本には独占企業である東洋製缶というものがある。ところが先ほど申したように、これではあまりにもカン詰業者が困るというので、九州製缶というものができた。自由競争の自由経済が今日の原則ですから、それに対してとやかく言えないというのですが、政府はどうして是正することができ得ないのか、この点ひとつ御意見を承りたい。
  58. 清井正

    清井政府委員 ただいまの空カンの価格についての御質問でございまするが、これは私が先ほど返事申し上げました通り、水産の立場から見ましても、水産用カン詰の輸出振興という立場から、その生産費を低廉ならしめるという意味におきまして、カン詰製造用の空カンを、より低廉なる価格において使用するということが望ましいということは、先ほど申し上げた通りであります。ただ問題は、それが望ましいとは考えておりますが、さて実行はどうかということになるのでございますが、この点はまことに残念ながら、今すぐ確定的な御返事はいたしかねますので、しばらく研究の機会を与えていただきたいと思うのであります。私どもなおよく実情を調査いたしまして、ただいま私が考えております方向に、通産省ともよく連絡をいたしまして、できるだけの具体的措置をとる方向へ進んで参りたいと考えております。
  59. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 委員長に要望いたしますが、こうした企業は自由な企業でありますから、これを制約するとかなんとかいう意味合いでなく、その内容調査するということがどの委員会においてでき得るかということを御研究願つて、そうしてそのリストを国民に発表する機会を得なければ、輿論によつてこれをなし遂げなかつたならば、とうていでき得ないことと思うのでありますが、この点はひとつ委員長においてしかるべく御考慮願いたいと思います。
  60. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 松田君にお答えいたします。松田君の御発言に対しましては、十分調査の上、善処するように伝えておきます。
  61. 赤路友藏

    赤路委員 ちよつと関連して農水産課長にお尋ねいたします。あきカンの方は農林省の所管になつており、鋼板関係は通産省になつておる。そうするとブリキ板は現在輸入価格に対して国内価格の方が非常に高くなつている。しかしながら製缶会社がこれを購入する場合は、輸入価格と同様の線まで価格を引下げておるということを聞いておるが、それは事実であるかどうか。
  62. 森日出哉

    ○森説明員 これは私の方の担当じやございませんので、よく存じません。重工業局の重工業課でやつております。     —————————————
  63. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 この際小委員及び小委員長補欠選任についてお諮りいたします。先般来夏堀源三郎君、中村清君、遠藤三郎君、赤路友藏君、淡谷悠藏君及び辻文雄君が、それぞれ委員を辞任されましたが、その後以上の諸君が再び委員に選任されました。その結果以上の諸君が従来担当しておりました各小委員及び小委員長がそれぞれ欠員となつております。この際その補欠選任を行いたいと存じますが、これは選挙の手続を省略し、委員長において従来通り各小委員及び小委員長にそれぞれ指名いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 川村善八郎

    ○川村委員長代理 御異議なしと認め、ただちに御指名申し上げます。  公海漁業及び水産貿易に関する小委員には夏堀源三郎赤路友藏君 辻文雄君、水産金融に関する小委員には遠藤三郎君 中村清君 夏堀源三郎赤路友藏君 淡谷悠藏君 辻文雄君、漁業制度及び水産資源の保護増殖に関する小委員には中村清君 淡谷悠藏君、公海漁業及び水産貿易に関する小委員長には夏堀源三郎君、水産金融に関する小委員長には赤路友藏君をそれぞれ御指名申し上げます。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後は本会議散会後開会いたします。暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————    休憩後は開会に至らなかつた