○松浦
委員 私は改進党を代表しまして、二、三
政府に質問いたしたいと思います。
今度の十三号台風に対しまして、去る一日から渥美半島、知多半島並びに伊勢湾海岸区約百里、四百キロ近い距離を自動車で全部くまなく調査したのであります。今度の
災害の状況は、先ほど来各県の県知事がいろいろと陳情されておつたようでありますが、この十三号台風の
対策といたしましては——先ほど海岸地帯でない山間平野地方の
お話も十分承
つたのでございますが、この山間平野地方における
対策は、従来の六月、七月の
災害の特別
立法である二十四の法律を適用する、これによ
つて救済するという方法は、あとで動議が提出せられまして
委員会一致で決定せられることと思いますが、海岸地帯に起つた
災害は、この二十四の法律では救いかねる点が多いと思います。この点に対しましては、先ほど三重県並びに愛知県代表からお述べにな
つたのでありますから、情勢はこまかく申し上げませんが、とにかく三重県においては約一万五千町歩、愛知県においては五千町歩というものは、今日もなお高潮が出入りいたしまして、八尺の水の下に作物があるというような状況でございます。この状況をくまなく報告することはできませんけれ
ども、三重県の寒村である鵲村——海岸の村でありますが、ここに参りましたところが、八十になる老村長が陣頭に立
つてや
つている。徳川時代に干拓をいたした所であ
つて、海岸林はほとんど二尺以上の太さの老松をも
つて囲われているのでありますが、それが全部決壊している。これは明治三年に一ぺん切れたきり今回まで切れたことがないということで、悲痛な面持で善後策を講じておつた姿を私は見たのでありますが、これと同じような、もつと大きいのは豊橋附近における海岸の、明治二十二年の干拓
事業による地方であります。これは一千町歩に及ぶ冠水がそのままにな
つて、八尺の水の下に家屋が建
つておるというような状況であります。この海岸地帯の状況を先ほど愛知県の代表からお述べになりましたが、この原因は今度の高潮ではありますけれ
ども、間接の原因は、昭和十九年に南海地震によ
つて地盤が沈下した、それをそのままに
政府が
処置を講じておりませんから、今度の高潮の場合に表からこわされたのではなくて、水が上から越したものですから、裏からこわされて堤防が決壊してしま
つております。これは、
災害の起つた直後に、二尺七寸あるいは一メートルも地盤沈下をしていることはわか
つておりますから、その場合に、かさ盛りをしておけば、今度のように
災害をあれほど大きく受けなかつたろうと思うのです。これは地方の人がいずれもそれを恨んでおります。特にこの問題については、先年建設省並びに農林省が、海岸保全法というものをつく
つて善処しようと思つたけれ
ども、両省のセクシヨナリズム的な闘争のために、遂にこれがつぶれてしま
つて、そのままに放置してある。それが今日かような
災害を起したということでありますから 私は潮も高かつたけれ
ども、政策が貧困なるためにかような状況になつたと指摘したいのであります。この地帯に
小笠原さんの選挙区があります。私はそこに行
つてみました。夜八時ころに雨のじやんじやん降るところに行
つてみましたところが、今ようやく避難民が去つたところだと言
つておつた。寺津町という所にも参りました。かまやすきを持
つて二百人が村をとり囲んで、村長に何とかせよと迫
つている姿を見たのでありますがこれはこの村だけの
考え方ではない。どの村でもこういう
考え方を持
つている。これをこのままに放置しておいたら、先ほど
綱島さんか
仰せになりましたように、共産党の温床のような結果になる。でありますから私は一日も早くこれの救済
対策を発表することが、これらの人々を安定するゆえんだと思うのでありますが、それに対して二十四の法律では、海水が浸入して来たものの排除をして、これに元に復すということは困難だと思います。それで熊本において泥土排除法かできましたように、海水防止法、あるいは海岸保全法であるとか、前に農林省、建設省で計画したことのある、そういう単独な
立法をつく
つて、この百里にわたる沿岸全体に対するかさ盛りをすると同時に、これのこわれたところを直す、そうして海水を排除いたしまして中に客土をする。
政府の力で客土をいたしまして、それが二毛作のかわりにな
つて、それによ
つて来年度の耕作が可能になるというような手を打たなければならぬ。この二万町歩に及ぶ干拓地帯はわれわれの先輩がつく
つて来たところなんです。それが今度の
災害でこつぱみじんになつた。これをこのままにして、先輩の
政治家に何と申訳するか。吉田総理は、しばしば食糧政策のために干拓
事業をやるということをさかんに放送しておられる。新しい干拓もや
つてもらいたい。けれ
ども、現実の姿をこのままにして次の干拓はあり得ないと思うのです。これに対して、
政府におかれては、吉田総理がしばしば干拓
事業をやるということを建設
大臣や緒方さんに申し出ておられるようでありますが、現在の侵された干拓地帯を、特別な
立法をも
つて、また特別な
予算の裏づけをも
つてやるのでなければ、これを救済することはできないと思うが、これに対する
政府の
考えはどうでございますか、お聞きしたいと思います。