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1953-10-05 第16回国会 衆議院 水害地緊急対策特別委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月五日(月曜日)     午後三時九分開議  出席委員    委員長 村上  勇君    理事 熊谷 憲一君 理事 田渕 光一君    理事 滝井 義高君 理事 稲富 稜人君       生田 宏一君    上塚  司君       大久保武雄君    綱島 正興君       富田 健治君    中村  清君       中村 幸八君    仲川房次郎君       平井 義一君    坊  秀男君       三池  信君    八木 一郎君       岡部 得三君    田中 久雄君       舘林三喜男君    中野 四郎君       橋本 清吉君    廣瀬 正雄君       松浦周太郎君    井手 以誠君       辻原 弘市君    芳賀  貢君       八木 一男君    柳田 秀一君       山口丈太郎君    伊瀬幸太郎君       小平  忠君    杉村沖治郎君       堤 ツルヨ君    日野 吉夫君       三宅 正一君    佐藤虎次郎君       久保田 豊君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計官)   柏木 雄介君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         運輸事務官         (鉄道監督局民         営鉄道部長)  山内 公猷君         建設事務官         (大臣官房長) 石破 二朗君     ————————————— 九月二十一日  委員江藤夏雄君、武田信之助君及び池田禎治君  辞任につき、その補欠として富田健治君、林信  雄君及び堤ツルヨ君が議長指名委員に選任  された。 十月五日  委員徳安實藏君、林信雄君、降旗徳弥君、山中  貞則君、中島茂喜君、本名武君、吉田安君、原  茂君、木下郁君、辻文雄君、松前重義君及び中  村英男辞任につき、その補欠として中村清君、  八木一郎君、中村幸八君、平井義一君、松浦周  太郎君、橋本清吉君、中野四郎君、柳田秀一君、  杉村沖治郎君、三宅正一君、日野吉夫君及び久  保田豊君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  水害地対策に関する件     —————————————
  2. 村上勇

    村上委員長 これより会議を開きます。  水害地対策について議事を進めます。政府に対し質疑の通告がありますから、これを許します。綱島正興君。
  3. 綱島正興

    綱島委員 大蔵大臣に主としてお尋ねをいたしますが、このことはひとり大蔵大臣だけではありません。対策本部長その他の各部署を担任しておられます各大臣も含めてお聞取り願いたいと思います。  特に大蔵大臣にまずお尋ねをいたさなければならぬことは、本委員会はもろもろの立法をいたしております。この立法措置の目的を完全に達するために、これを具体化することを政令に一部委託をいたしております。すでにこの政令立法すべての本旨等はもはや御承知のはずと存ずるのでございますが、まず、大蔵大臣は、この立法について十分なる御注意をなされ、しかもこれに予算措置をなされる御意思ありやいかん。これを伺います。
  4. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この問題は、どの程度に予算化し得るかということにつきまして十分検討を加えた上、政令等を出したい、かように考えておる次第でございます。
  5. 綱島正興

    綱島委員 水害がありましてから非常に日にちがたつておるのであります。ことに大蔵大臣はこの間留守をしておられまして、臨時代理をお立てになつたりいたされておるのでありますから、この点については特に早急に御考慮つてしかるべきものと考えるのでありますが、ただいまのお答えによりますと、これから何か考えてするというようなお話であります。それは特殊な事情がございましようか、軽んじておるがゆえに起ることでありましようか、明確なお答えを願います。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は毛頭院議を軽んずる意思は持つておりません。ただ、綱島さんも御承知のごとくに、私ども調べまして、その後の被害数字が相当ふくらんでおります。従いまして、これをはたして日本の現状で予算化し得るかどうかということについて今苦慮いたしておりますが、しかし御趣意の点は十分尊重して、できるだけのことをいたしたいと考えておる次第でございます。私はここでちよつと公共事業関係あるいは文教、厚生等について申し上げますると、被害報告額が、公共事業関係で約二千九百三十一億九千七百万に上つております。従いまして査定見込額が二千十一億二千八百万に上り、現行法によりましても千四百八十八億八千八百万を要するのであります。従いまして現在のところさような財源等を持ち合せておりませんので、これをいかにすべきかということで実は苦慮しておるということを申し上げておる次第でございます。
  7. 綱島正興

    綱島委員 実は前にも一応申し上げたと記憶いたしておりますが、この委員会で取扱いましたることのうち、特に公共企業に対するものについては、そうたくさんの改訂をいたしておりません。特に主要なる改訂をいたしましたものは、公共福祉関係するもの、母子に関するものとか、非常に弱者の立場にある人のことを考えたことと、いま一つは、特に農民に対する措置であります。これが新聞などを見てみますると、政治的立法だとかいうような言葉がよく使われておるのでありますが、これが一体政治的立場というならば、最も賢明なる政治的立場であります。そのゆえんを申し上げます。今日本は多額の費用を出して保安隊のことをいたしたり、いろいろいたしております。また国際間においても、共産主義に対する対策のために、少からざる貨財と人心とを使つておる次第でございます。何がゆえにさようなことをいたすかと言うならば、この農民の窮乏を看過いたしますならば、かような措置というものはほとんど空に帰するのであります。このことを実は現閣僚諸君はとつくりと腹をすえてお聞取りを願いたい、労働者の赤化いたしたのは帰つて参ります。インフレが過ぎてデフレになりましたり、いろいろなことがありますと、相当赤化した労働者も帰つて参ります。農民生産手続において政府の協力を要しない部分が多いのであります。消費においてもまたしかり、生産においてもしかり、従つて農民の赤化いたしたものは引返す方法がないのであります。かるがゆえに、世界革命はことごとく農村より始まつております。もしもこの重大なる事実を見落して、帳面の上からあなた方がお考えになるならば、及ぶべからざる災害に逢着することを考えなければならない。この考え方がないならば、実は現閣僚としては資格がないと言わなければならぬ。(拍手)これをよくお考えにならなければならない。この意思がなくして、このたびの災害に対してお考えになるというなら、まつたく当を得ないのであります。  特にもう一言申し上げておきます。日本世界第一の高利貸し国であります。これは大蔵大臣責任をもつて考えにならなければならぬ。かつてインフレーシヨン処置をいたしましたが、物価及び賃金に対する横ばい政策はなるほど成功をいたしましたが、必ずインフレーシヨン処置は低金利政策をいたさなければ再発することは、これはもう通則と言わなければならぬ。理論の上からも何からでもはつきりいたしておる。ドイツが一九二四年の改訂をやつた後に、何のためにヒトラー政権が生れなければならなかつたかという経済的事情は、その後に高金利が横行したからであります。不幸にしてわが国のインフレ処置については銀行家指導者であつたということが、日本のためには不幸でございました。わけてはその後大蔵省がこの高金利政策を維持しておられるということが、われわれは非常な不幸であると考えておる。ただいま日本銀行発行指数は大体三千億円を上下いたしておる。年末には六千億円にもなろうと予想せられておる。貸出し指数はおそらくこれが十倍を越えておろう、三兆を越えておるであろうと思います。これに対する利息は、現在の日本利息世界のいずれの国よりも一割以上高いのであります。これは大蔵省が造船についての利子補給などをしておられるからよく御承知のはずであります。そこで、少くとも日本においては、国際的に見ては、不労利得というものがどんなに小さく見ても三千五、六百億円を下らないのであります。こういうものを温存しておきながら、財源がないとか——もしもこれが転化いたして生産資源に相なるならば、日本生産はずつと増強いたすのであります。口をあけて言うのにはどういうことを言うかというと、資本が足らぬのだから蓄積をしなければならぬ。これくらい愚かな議論はない。金利利得による蓄積が一体本質的な資本蓄積であろうか。高金利というものは必ず生産を阻害する縮小生産要素であることは、経済学者のひとしく認めるところであります。ただいま認めたのではございません。一五八〇年代においてヤルトという学者が非常に述べておる。イングランド銀行興つたのも、そのために銀行をつくつたのであります。銀行はすでに低金利のためにつくつておる。しかるに、大蔵省は何のためにこの高金利を維持しておるか。大蔵省が維持しないというなら、高金利を是正することについて措置しないのか。この点を根本的にひとつ伺つておきます。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今の高金利の点であります。これは、不幸にして日本は非常に金利が高いことは仰せ通りでありますが、御承知のごとく、戦後におきまして資本蓄積が十分でなく、従つてまた各銀行も、経費その他のものを見ますと、資金コストが非常に高いことは綱島さんも御承知通りであります。私もこまかく計算を出したことはございませんが、おそらくは七分以上になつておるのじやないかと思われます。それが高金利一つのもとをなしております。従いまして、政府の方面でやり得ることについては、私どもはできるだけの低金利政策をとつておりまするけれども、しかし、各銀行のそれぞれ自分で蓄積した資金の運用については、それらの自発的な力にまつほかはないのでありまして、これを政府が強権をもつてどうこうするということは、現在の立法下では許されておりません。従いまして私どもは、政府の意のあるところをよく申しまして、常に低金利政策に努めておりまするが、よそと著しく事情の違つておることは、今申し上げた通りであります。一時戦敗直後においてはほとんど資本蓄積は行われておらなかつた。その後ようやく行われて来たのでありまして、各銀行が持つておる預金も、現在の貸出しも、銀行規模に比べますと、どちらかと申せば非常に小さいのであります。それがひいて金利高を来しておるもとであります。しかし、なお金融業者の方においても、経営合理化その他についてなすべき点がたくさんあると思います。従つて、私どもが常に銀行業者その他に経営合理化を望んで、それによつて少しでも各産業者また事業者金利負担軽減に努めてもらいたいということを熱心に要望しておることは、たびたびの私ども処置で御承知くださつておることと存じておるのであります。
  9. 綱島正興

    綱島委員 大蔵大臣の御答弁でありますが、このような状態を是正するのに、単に勧告されたようなことでできるかできないか、さように性根のやさしい人が高利貸しをしておるかどうか。これは私は大蔵大臣政治的認識を疑わざるを得ない。さようなことが何のために起るかといえば、政府がこれの処置を何にもいたさぬ、あまつさえ大蔵省関係の官僚がことごとく金融機関に蟠踞しておる事実が、実はこのことを醸成いたしておるのであります。そこで、今大蔵大臣は七分と申されましたが、政府特別措置のものなら格別、ただいまのわれわれの立法いたしましたものでさえ六分五厘でございます。中小企業金融公庫の貸出しが一割でございます。おそらくは、事業家が聞いたら、七分という金があつたら拾つてみたいとみな答えるでしよう。一割四、五分は平均いたしておりましよう。相当りつぱな日本で指折りの十か十五の金融機関拾つてみても、一割以下にはならぬでありましよう。世界長期資金はことごとく二分以下である。短期の銀行手数を特に要するものは格別、長期資金二分を越えるものは、すぐれた国ではまれだと思うのであります。これに対して一体どういう処置をされるつもりでおられるか。われわれから考えれば、中小企業金融公庫とか、農林漁業金融公庫とかいうものをごく低利にする。そしてこれに対する財政投資拡大して行けば、いやでもおうでも商業銀行はくつついて来る。そうしなければ借り手はなくなるのであります。その資金源である郵便貯金等金利の引下げはもちろんでございます。ことに、著しく遺憾に存じますことは、戦前大体銀行の手数料というものは、総預金額の一分三厘にしか当らない。ただいまはどうでありますか。二分、三分ということもある。そうして、はなはだしきに至つては、このたびの中小企業金融公庫においても、自己責任において貸すものについては四分を保証しておられる、かような法案が委員会を通つたことを、私は実に残念に思つておるのであります。かようなことに相なりましたことは、ほんとうに私どもは遺憾中の遺憾と考えております。大蔵大臣が何と言われようと、財政規模拡大によるにあらず、高金利によつて日本インフレーシヨンに再出発することは間違いでございません。資本が少ければ少いほど、低金利が必要であります。小資本の場合、会社が資本を必要とするときは、どんな資本を必要とするかといえば、低金利資本を必要とすするのであります。資本は低金利でなければ効率がないのであります。高金利資本は災いをもたらす原因になるのであります。ここにわれわれはほんとう考え方を新たにしなければならないのであります。この点について、もしもほんとうのお考え方をなされたならば、少くとも何千億かの生産増強に資することができる。この問題について何ら触れることなくして、ただ、さしあたりの、一兆円を予算が越してはならないというような感覚で、ただいまのこの災害に対する考え方をしておられるならば、私は及ぶべからざる災害を招くと思う。われわれは天の災害を受けて再び内閣の災害を受けるのじやないかと考えられる。(拍手、笑声)これはじようだんごとで申し上げるのではない。私は与党ですよ。本気で聞いてください。あなた方がもしもこのたび農民に対する処置等において失当なさるならば、日本そつくりそのまま共産主義にのしをつけて差出したものとお考えになつて間違いございません。戦前共産主義をあれほど征伐いたしました。あのとき、監獄にいた以外の共産主義者はみな農村にくぐつてつたのであります。全部農村にくぐつております。農民というものは、ほんとう自己立場が強い。弱いが強い。そこで、この人たちに火がつけばどうにもならないのであります。資本主義崩壊の過程をごらんください。資本主義の糜爛することによつて非常に災害をこうむつておる方から起つておる。最初は労働組合運動が起る。最後に決をとるものは農民であります。従つて産業の発達したる工場都市等では、革命はほとんど成就いたさない。農村に関する限り全部成功しております。いわくロシヤ、いわくダニユーブ沿岸、いわく中共、そして日本の人口の四〇%は農民であります。この処置に対して単なる上べだけのお考えでおいでになるかどうか、これは、皆さんがほんとう時局を担当する政治家であるかどうかの境目であります。不祥なことを言うようだが、後日必ずつまらぬことが起つたときは、断罪に処せられる資料になる。ほんとうにこれは腹をきめてお考えにならなければならない。単なる金融資本家などにサービスをし、そうして日本国高利貸しのもとに置いておる。その上での手仕事をなさつてもできるはずがない。大蔵大臣意思的にされぬとおつしやいましたが、一体金利意思処置によつてみな引下げておる。ドイツインフレーシヨンもそうであります。ヒトラーもそうでありましよう。英国のイングランド銀行をつくるときが、すでに金利を引下げるためにつくたものであります。すべて金利というものは人為的処置によつておるのであつて業者のなすがままにまかせてなつた金利はございません。今の大蔵大臣のお考え方は私は非常に不服でございますので、特に御考慮を願わなければなりません。そこで、この点に対するお考え方は一応今伺つたが、お考直し願わなければならぬ。断じて大蔵大臣大蔵省の属僚に使嗾されたり負けたりなさつてはいけません。何となれば、日本国民の代表だからであります。そうして日本は危急存亡のところに追い攻められておるからであります。財源の確立をいたすためならば、生産増強すればよろしい。生産増強するには、金利を低金利化するよりほかに、ただいまのところ目ぼしいものはございません。世界無比高金利を維持しつつ生産増強をなすというがごときは、木によつて魚を求めるよりはなはだしき考え方であると言わなければなりません。この点で財政資金がいる。しかも生産に必要とする財政資金がいる。センチメンタル的に考えずとても、経済的に考え生産資金がいるときに、その最も重要なことは、高閣に連なつて顧みず、不作為という最も無能なことによつてこれをおおわんとするがごときは許すべからざることで、時局がこれを承認しないのであります。どうぞこの点に対する御覚悟を伺います。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま綱島さんのお話を伺つておりましたが、一、二誤解もあるようであります。私が七分と申しましたのは、貸出し金利でなくて、それは各銀行資金コストがそれだけについておるという話でございます。なお二分以上の長期資金世界のどこにもないとおつしやいましたが、これは何かお間違いではないかと思います。私は二分以下の長期資金がそうたくさんあることを実は聞いたことがありません。この点は何か御記憶の違いではないかと思うので、この点申し上げておくのであります。今日、世界のどこを通じましても、さような安い金利長期資金はございません。私ども金利を引下げることについては望力を尽したいと考えおるのでありますが、御承知のように、まずもとにななる資本ができておりません。言いかえますと、銀行その他の預金がないのに、その金がないのに安い金を出すということになれば、どこから金が出るかということをお考えくださると、これは結局いわゆる赤字公債式日本銀行の札を出すほかないことは、よく御了解が行くことと思うのであります。もしもさようなことにいたしましたならば、インフレーシヨンが起りますることも、私の説明をまたずして御了承くたさることと思うのであります。従いまして私どもは、一方できるだけ資本蓄積に努めて、その資本をできるだけ安い資金ができるように努めて、その金をば貸出しの資金に充てさす、こういうことに行かなければならぬこともよく御理解が行くことと思うのであります。また私どもも決して財源云々を申しておるのじやございません。どこにわれわれの財源があるかと申しまするならば、綱島さんも御承知のように、われわれが税金を取立てる以外には財源はございません。従いまして、もしもここでもう五百億、千億出せというなら、他方でもう五百億増税しろ、千億増税しろということと同じになることは、私が説明いたさないでもよく御了解がいただけると思うのであります。従いまして、私どもは今後できるだけのことはいたしますが、しかし、よく財源等の問題を考え日本インフレーシヨンに持つて行かないように、そして日本国民の生活を破綻せしめないように持つて行く。しかし仰せのごとく農民層はきわめて大切であります。また国民の大部分を占める農村にもしも怨嗟、失望等の声があつては相ならぬのでございますから、これに対して最善を尽し、これに対しできるだけのことを、たすのは当然でございますが、しかしそれが一方で増税をしなければならぬようなことが起り、また赤字公債でも出さなければまかなえな、といたしますならば、ひいてそれがまた必ずしも農民の幸福にならぬことも、農村各位はよくおわかりがいただけることと思うのであります。従いまして、私どもはこの点で今深甚なる考慮をいたしておる次第で、私どもは、こういう点については、国民各位がよく理解くださることと思うのであります。今度の災害が非常に大きなものであり、この災害に対して善処しなければならぬことはよく承知しておりまするが、それがひいて日本経済を混乱に陥れるようなことになつてはならぬ。いわゆる赤字公債等を出すことによつてインフレーシヨンを起すようなことになつては相ならぬので、この点で実は心を苦しめておることは、よく御了察が願いたいと存ずるのであります。
  11. 綱島正興

    綱島委員 ただいま二分以上の資金はないというお話でございますが……。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 以下です。
  13. 綱島正興

    綱島委員 これは取調べて後日のことに譲ります。私は大部分二分以下たと思います。  それからいま一つ金利を安くすれば資本が集まつて来ない、金利を高くすれば集まるというお考え方は私は疑問を持たざるを得ない。ただいま国外資本がそう参つておるわけでもない。また国外資本がそれほど高い金利のものを必要としない事態であるが、高くしておるように私には考えられる。ところが、国内資本は、金利が高くなれば集まるが、低くなれば集まらない、低くなれば赤字公債でなければならぬという理論に、私は考え方に錯誤がありはせぬかと思う。金利が安くなれば資本効率が高くなりますから、貨幣資本指数は低くてもいいのです。金利が高ければ貨幣資本は額を増さねば資本の効力を増さないのです。何となれば、消費拡大するから経費拡大して参るからであります。そこにインフノーシヨンの要素が生れるのであります。インフレーシヨンは要するに不労利得拡大によつて生れるのであります。効率的利得においてはインフレーシヨンはそれほど拡大いたさないのである。ここに問題がある。金利か高ければ資本があつて金利が安ければ資本がないというりくつは、一体どういうことであるか。もつと言いかえるならば、事業経営するにおいて必要なる資本の割合が、低金利になれば効率化して参るのであります。従つて貨幣資本指数が少くても間に合うのでありますが、高金利を維持しなければ資本指数を維持して行くことができない、貨幣資本をまかなうことができないという御議論がどこから一体出て来るのか。私はこの点を重ねてお伺いいたします。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私はさようには申さなかつたはずであります。またよくお考えくださればさように申しておりません。私が申しておりますのは、現在の日本では預金その他資金コストが高いから、それで貸出し金利が高くなつておるのはやむを得ないが、しかしこれをできるだけ下げようとしておるということを申しておるのであります。別に金利が高ければ資金がよけい集まるというような意味を申したわけではございません。  それから、私が今申したように、この日本インフレーシヨンに持つて行かないように処理するということになりますると、何と申しましても預金その他の資本蓄積が行われざる限りは、どうしましても増税その他による以外に道がないということは、よくおわかりがいただけると思うのであります。このことを申し上げたのでありまして、もしもそうでなくて、日本銀行から金を出させる、札を出させる、赤字公債を発行させるというようなことになると、すぐインフレになることはよくおわかりのことと思います。従いまして、日本敗戦国であつて、アメリカのようなぐあいになかなか参りません。そこで私どもは、まず現在のところ少き資金をもつて効率的に仕事をして、それで生産増強をはかり、その結果だんだんと利益が上つて資金が安くなつて参る、こういうことによつて日本を漸次低金利の国へ持つて行く以外にないのではないかという意味を申したのでありまして、一挙にここで低金利に持つて行くという方法はございません。このことはよく実情についてお考えくださればおわかり願えると思うのであります。
  15. 綱島正興

    綱島委員 ただいまのお話によりますと、まつたく百年河清を待つがごときものであります。ただいまの日本の状態は容易ならざる状態であります。この点は御同意だと存じます。低金利になるため貨幣蓄積をいたして、それでやつて行けなければやつて行かれぬという御議論でありますが、一体貨幣蓄積をいたして、その蓄積の結果が高金利の保証となる線においての蓄積は、先ほどから申し上げるように生産増強にならないのであります。縮小生産にしかならない。なぜならば、不労所得に対する支払いが拡大して来るからであります。そこで、どうしてもまず資本蓄積をしようというならば、低金手より始めねばならぬ。低金利にする方法がないと言われるが、これは、先ほどから申し上げる通り、たとえば国会において郵便貯金を引下げるとか、あるいは国が持つておるところの財政投資の額を拡大して、そうしてこの恵まれざる階層に派しての低金利の使用の機会を多くするとかいうようにすれば、どうしたつて商業銀行はこれについて来ざるを得ない。しかし、商業銀行よりほかに借り口がなければ、泣きの涙で金利の高い高利貸しの門をたたくよりしかたがなくなつて来る。国際的に見ればそういうものは高利貸しであります。銀行が運転している資金は七分についている。その根本はどういうところにあるかというならば、郵便貯金の利息が五分以上であるので、これらがめどとなつている。これが改訂をまずいたさなければならない。これはどうしても、この際低金利をなすことによつて日本生産効率を高めて参る、それによつてこのたびの災害復旧等もやるということを同時に行うよりほかには方法はございません。それができたらやるというようなことでできることではないのであります。このことは意見としてこれだけにいたしておきます。何べん申し上げても同じことであります。  問題はその次に移ります。国際間においていかにして輸出をするか、飢餓輸出のようなことをするか、せぬか、あるいはいかにすれば輸入を少くできるかという二つの大きな課題が、ことに日本のような中間加工国においては課せられておる。輸出をするというても限度があつて、それ以上のことはもはやできないという答えは、大体英国が五、六年間やつてみてはつきりいたして来た。問題は輸入をいかにして少くするか、言いかえれば自己の国の資源をいかにして開発をするかということと、食糧をいかにして自国において最も充足するかという問題が重大になるので亙ります、何となれば、食糧は加工して商品化することのできないものでありますから、これを外貨を使つて輸入をすることは、国民経済に至大なる欠損を来す原因となるからであります。そこでこのたびの問題は、いかにして輸入を少くするかという基本問題に触れて参るのであります。ひとりセンチメンタルな考え方からだけではございません。そこでこの農業災害を早く復旧しなければならぬという基本問題が横たわるのであります。この点に対する御意見を伺います。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 仰せのごとくに、やはり日本としましては、一面大いに輸出貿易を拡大し、そうして外貨の獲得に努めるとともに、他面輸入をでき得るだけ国内生産によつてまかなうことによつて、この外貨の支払いを少くする、こういうことになり、しかもその最も大きな一つが食糧の輸入でありまするので、食糧増産計画を国内で立でなければならぬということについてのお話は全然御同感でございます。
  17. 綱島正興

    綱島委員 これは漏れ承るところでありますが、新聞などで多少報じておるようでありますが、この食糧増産に対する経費とか災害復旧等については、この際非常な手心をせねばならぬというような閣内においての御発言があつたと伝えられておりますが、さようなことがございませんかございますか。
  18. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 食糧増産について最も資金効率的に使い、食糧増産の率を上ぐるべきであるということは申しております。(「災害はどうだ」と呼ぶ者あり)災害につきましては、ただいま申し上げました通り災害のでき得るだけ早き復旧と、また災害地の方の再興を促すために、できるだけのことをいたしたいと存じまするが、さつきも私が数字を申しましたごとく、ちようど今年は非常に日本にとつて不幸な年で、かようなことはあつたことがございませんほどの不幸な年で、実は被害報告額が九千七百五十一億にも上るのであります。(「数字が違う」と呼ぶ者あり)従いまして、現行法に基いてもなお千四百八十八億からの金がいるのでございまして、それをどうし行くかということについての苦労をいたしておるということを申しております。それではこれを何でまかなうか、こういうことについて非常に苦心をしておるということを申しておるのでございます。
  19. 綱島正興

    綱島委員 大体御趣旨はわかりましたが、しからば一体……。(「わからないよ」と呼ぶ者あり)大部分は了承いたしませんが、御趣旨はわかります。  そこで一体どれくらいの予算を組むつもりで——この臨時国会で、今度のわれわれが立法いたした災害、その他十三号台風等によつても多少また増加されると思いますが、一体どのくらいの予算を組むつもりの腹組みになつておられますか、その点を伺います。
  20. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 財源等の問題もありまするので、その点について日夜検討しつつある次第でございます。
  21. 綱島正興

    綱島委員 そうすればそれはいつごろ一体御報告していただけますか。これをごらんなさい。今は休会中のことですが、委員はみんなそろつておられます。傍聴人もこれだけおられます。そのうちにという今のようなお話では、何にもおつしやられないことと同じことなんです。あなたのおつしやつた通りのことを傍聴人がみんなで言つたら、一体大蔵大臣という人はどういう性格の人だろうと言いますよ。そこで一体いつまでならば正確な数字をお出しになるお考えか。委員会の開会の都合がございますので、責任ある御答弁をお伺いいたしておきます。
  22. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今のわれわれが考え得べき財源で処理するものがあり得るならば即時処理いたしますけれども、今申し上げる通り、千四百億以上に上る大きなものでありまして、今の一本の財源はさようなものはございません。そこでこれをいかにすべきかということで私どもは苦慮いたしておる次第であつて災害地における農村民各自の心持はよくわかりまするから、できるだけのことをいたしたい。できるだけのことをするが、しかし片方に財源がないので、どうして財源を出したらよいかということで苦労しておるのでございますから、今私どもは一日々々を延ばす意思は何ら持つておりません。もしだれかここに大きな財源を出してくれる者があれば、即刻私どもは解決いたします。しかしながらそれがないので、いかにすべきかを今苦心いたしておるのであります。     〔発言する者多し〕
  23. 村上勇

    村上委員長 御静粛に願います。
  24. 綱島正興

    綱島委員 ただいま私はいつまでにお答え願えるかということを申し上げたのでありますが、ただ御考慮中というだけの御答弁で、この点ははなはだ私も心もとなく思うのでありますが、何べんお伺いしてもこれは同じ二とのようだから私の質問は大体これで終りますけれども、特に最後に申し入れをいたしておきます。このたびのことは言いのがれや何やらではいけません。これは魂を入れた政治でないと、高閣におつての政治は意味をなしません。言いかえれば、田畑から災害者の門口までわたつて考え方で政治をなされなければ、言いのがれや引延ばしくらいでは、決してこのことはおちつくことではないということを十分御了承願いたい。このことがなかつたならば、私どもほんとう考慮を払わなくちやならない。これはおそらく日本国民がみな考慮を払わなくちやならない、このことはよく銘記していただきたいのであります。財源がないとおつしやるが、財源のある範囲でならばこれだけはやれる、そのほかの財源はこうするなら出せるとか、あるいはこういう点は予定外だとかいうことなら格別、どうにもならぬことだからどうにもなりません。別に大した金でも寄付する人があればというようなお話は、どうも私は大蔵大臣のお言葉とはとれない。災害経費というものは、一日一日増額して行く。それでこの点はもう少しお考えを願わなければならぬ。大蔵省の帳面から出て、災害地の現地まで頭を切りかえていただかないとできないことじやないかと私は思う。これはひとつ大蔵大臣のいすをいつとき離れて災害地の現地で考えてとただきたい。こういうことを追加いたして私の質問を終ることにいたします。
  25. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま私が申し上げた言葉があるいは非常に不適当であつたかと思いますが、私は実は非常によい財源があればという意味で申し上げたのでありまして、何か寄付でもすればなどと申しましたが、そんな何千億も寄付のできることでもないので、このことは御了承を願いたいと存じます。  なお、申し上げるまでもなく、私はこのことは誠心誠意解決しなければならぬと思つております。しかしながら、いかに誠意をもつてするも、何しろ財源がありません。そこで、いかにこれをすべきかということで、実は日夜苦慮いたしておる次第でございますから、どうか綱島さんもその点御承知を願いたいと存じます。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して。今綱島委員からいろいろ根本的な問題について御質問がありました。しかし、質問もきわめて抽象的でありましたが、答弁も抽象的でありました。従つて前回の九月の初旬の委員会等においては、本物の大蔵大臣がいないということで、緒方副総理の答弁もきわめてあいまい模糊たる状態であつた。幸いに本物の大蔵大臣が帰つて参りましたので、ひとつ具体的にお尋ねをいたしたいと思います。  大臣は、二日の新聞記者会見において、補正予算のわくを一兆円で納めにい、この方針は大体かわらないつもりである、こういうことを言われております。この方針は九月の初旬における当委員会において、私、主計局長にも、いろいろの角度から一兆円のわくでとどめるとするならば、この補正予算というものは三百五十億になるが、その通り了解してさしつかえないかという質問をいたしましたら、主計局長は、大体大蔵大臣がアメリカに行かれるときに、一兆円のわくで押えよということを、遺言みたいのように厳命されて行つたので、三百五十億円のわく内で納めることは間違いありませんという答弁をいたしましたが、現在でも大蔵大臣はそういう心境であるかどうか。まず三百五十億のわくから災害費が出るという主計局長の答弁であつたが、それを修正されるのか、それとも、あくまでこれを踏襲せられるのか、それをお答え願いたい。
  27. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御承知のごとくその後十三号台風等もありまして、その後の被害状況を見ますと、私はその三百五十億で納まるとは考えておりません。従いまして、今朝でありましたか、ちようど私朝の訪問に対して言いました通り、これは若干ふえるということは、これはどうもこういう予期せぬ災害であるから、それはふえるであろうということを申しておりますが、しかし一方には、既定経費の中でも、あるいはまたこれを繰延べし得るものがあればこれを繰延べし、他方できるだけ節約をして、そうしてできるだけ一兆円という線で納めたい、この信念にはかわりはありません。これは私がどこでも聞かれることは、日本インフレに向いはせぬかということであり、また国民の心理に及ぼす影響も、一兆というものを越したときには非常に重大な心理影響もございますので、災害がふえて来ておるから、他方で何か削るものを——削ると言うと何か語弊があるかもしれませんが、あるいは繰延べし得るもの等はないか、この点について今各省に協力を求めておる次第でございます。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、一兆円を越えないという、こういう既定方針はかわらないと了解してさしつかえありませんか。
  29. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その方針は堅持いたしたいと考えております。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、一兆という既定方針はかわらない。同時に、この二日の新聞記者談話の中でやはりこういうことを言つておられることは裏書きをすると思いますが、一兆円のわくに圧縮する方針は大体かわらない。しかし、渡米後に災害もふえ、また政治情勢も異なつたので、若干の弾力性を持たせるという談話を発表いたしておるようでありますが、若干の弾力性ということは、結局今申しました一兆円のわくにとどめるけれども、弾力性というものは、既定経費の繰延べ、あるいは節約によつて浮いて来るところの財源が、大蔵大臣の言う若干の弾力性と解してさしつかえありませんか。
  31. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはどうも数字回答になつてはなはだ相済みませんが、私も一兆というものをきちんと零、終るものと考えておりません。例が悪いかもしれませんが、そうだといたしますと、それでは百億かと仰せられても困るのでありますが、百億ふえてもこれは一兆のラインだと私は考えております。その意味もこの弾力性というときには含まれております。つまり一兆という線は動かさぬというのは、太い線を動かさないという意味であります。従いましてこの弾力性の中には今の少々のものはあり得ることと私は考えて、弾力性という意味を使つておるのであります。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 そこで、これは緒方副総理にお尋ねいたさなければならぬのですが、先般の当委員会の質問を通じて、既定の公共事業というものは削減をするという意見があつたが、削減しないのだ、こういうことを緒方副総理はここで確かに答弁されました。そうすると、大蔵大臣の今の答弁では、既定の経費も繰延べあるいは節減をする、こういうことになつているわけでありますが、公共事業に関しては、その繰延べあるいは節約あるいは削減ということは例外である。こう了解してもさしつかえありませんか。
  33. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 それは、先般の委員会におきまして、今お話になつた答弁乙いたしたことは間違いありません。その通りであります。当時既定の公共中業等の予算を節約する意向が、財源を求める上から、大蔵省にあつて、一応それを議題といたしたのでありますが、すでに通知をした後でありまして、実際上不可能であるということがはつきりいたしまして、それを閣議の了解によつて打切つたのでありますが、その後、御承知のように災害が十三号台風あるいは冷害等によつて非常にふえて参つて来ておりまして、補正予算の編成された明年度の予算の編成につきまして、財源をどこに求めるかということにつきまして、先ほど大蔵大臣からお答え申しましたように、非常に苦慮して参りました。     〔委員長退席、綱島委員長代理着席〕 そこで本日の次官会議に、既定の経費の中からも少しでも圧縮または繰延べするものがないかどうか、そういうことについてもう一度検討してもらうように注文したことが——これはきようであります。そういうことを次官会議において諮つたことは事実であります。それだけはぜひ間違いのないように申し上げます。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、先般の緒方副総理の、公共事業については削減をやらない、既定計画の削減をやらないと言うたことは、これを一応取消して、すべての既定の経費について節減が可能であり、繰延べ可能なものは、これを今度新しく起つた西日本あるいは十三号その他冷害等の災害のものに、繰延べあるいは節減できるものはそれを財源として、いわゆる一兆円のわくを堅持するという方針のもとに行くのだ、こう了解してさしつかえありませんか。
  35. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 これは大蔵省からただ財源の捻出を各省に要求するだけでなしに、この新しい二十九年度予算あるいは補正予算財源難に直面しておりますことは、各省も事情はよくわかつておりますので、各省自発的にそういう財源の提供をできないかどうかということを協議したのであります。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 いま一つ、さいぜん大蔵大臣の説明の中で、公共事業その他被害額が九千三百七十一億円——あとで九千七百五十一億円と申しましたが、初め私は二千九百七十一億円とお聞きしたのです。それで今度特別法で行くと二千十一億円、現行法で行くと千四百八十八億円、こういうことで一応計算が出ておるようでございます。これは一応こういう計算が出るということになりますと、すでに特別法が政府の方では成案になつていると考えられることになりますが、その通りに、いわゆる二十四の議員立法に対する政令の成案がりつぱに成文化されて大蔵省にまわつていると、こう了解してさしつかえないか伺いたい。
  37. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと最初のところでありますが、二千七百八十一億でございまして、数字を間違えて申したかもしれませんが、二千九百ではございません。  それで、実は政令はまだ正式のものはまわつて来ていないのでありますが、ちよつと御参考に申し上げますと、現行法によつてやりまして一千四百八十八億、それからかりに特別立法の適用を受ける事業が、全地域の場合について見ますと、それに加えること三百十億、さらに二分の一に地域が圧縮された場合を考えますと百五十五億、それから今度は四分の一に圧縮された場合を考えますと七十七億五千万、こういうようなぐあいに増加いたすことになります。その結果どうなるかと申しますと、現行法でやりまして千四百八十八億、それから合計しましたもので今の三百十億を加えたものは千七百九十八億、それから二分の一に圧縮した場合で千六百四十三億、四分の一に圧縮した場合で千五百六十六億、こういうふうになるのであります。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 二千十一億は何ですか。
  39. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それはさつき申し上げました被害報告額が二千七百八十一億でありまするので、それを査定いたしますると、査定見込額が二千十一億、こういうことになります。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 その内訳をもう少し伺いたい。
  41. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはちよつと説明員から……。
  42. 森永貞一郎

    ○森永説明員 各省から参りました災害報告の総額は二千七百八十一億円でございますが、そのうち公共事業関係が二千五百十九億でございます。さらにその内訳を申し上げますと、冬季風浪及び融雪関係が六十六億七千九百万、これは例の特別法の関係はございません。それから六、七月の水害関係分でございますが、これが千四百四十二億、八月の水害が百六十七億、十三号台風が八百四十三億でございます。それらの合計が先ほど申し上げましたように二千五百十九億でございます。今後若干の小災害が起ることもあり得ると存じまして、なお百億ぐらいを推計で見ております。そうしますと二千六百十九億ぐらいになります。そのほかに文教施設、厚生施設等の関係の各省の報告額が百七億、凍霜害その他が五十四億、この二つの合計が百六十二億でございまして、合計が二千七百八十一億になるわけでございます。これは各省からの報告でございまして、それに対しまして今後ある程度の査定が見込まれます。その査定を見込みました数字が二千十一億ということでございます。これの内訳を申し上げますと、公共事業関係が千七百七十八億、そのうち冬季風浪関係四十七億、六月、七月の水害が千十二億八月の水害が百二十六億、十三号台風が五百九十三億、それで千七百七十八億になります。さらに今後発生見込みを若干少く見込みまして七十億と見ますと、千八百四十八億になります。それから文教施設、厚生施設で、これは百七億査定済みでございます。凍霜害その他五十四億、合計百六十二億でございまして総合計が二千十一億、かような数字に相なつております。
  43. 滝井義高

    ○滝井委員 今の御説明によりまして、一応今年度三、五、二という割合で行くということを、先般の委員会においても緒方副総理は言明をせられました。そうしますと、大体今年度に予算に計上せられなければならない額は、大体六百億程度を押えればいいと思うわけなんです。そこで一兆円のわくの中から三百五十億出て来るのですが、あと二百五十億の金が出れば、大体災害だけは聞に合う形になるわけです。大体大臣は現在非常に財源のことを苦慮せられておりますが、これは起つた二千七百八十一億を全部今年出すわけではないのでありまして、いわゆる千四百八十八億に三百十億を加えた千七百九十八億、約千八百億程度ですが、その程度の三割ですからまあ大体六百億そこそこだと、こう考えられるわけです。そうしますと、大臣は非常に財源のことを心配され、インフレーシヨンのことを心配されておりますが、これは再生産を伴つて来るものなんでございますので、六百億くらいを出してもそうインフレは起らない、こう思うのです。大臣は総額一兆円を幾らか越えてもいいということでございましたが、先般何かうわさに聞きますと、補正予算は八百億だという話もありまするが、大体六百億程度の災害予算というものは、この数字から行けば出さなければならぬことになるわけです。それをどうしても出せないと言われるか、その半分程度でも出すと言われるのか、およそ腰だめ的な数字でけつこうだと思いますが、ひとつ数字が出ましたので、そこらの概要だけは御説明願わないと、われわれは今後の委員会その他の運営もありますので、ひとつ大蔵省の数字を御説明願いたい。
  44. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは、今お話のように、本年限りで出さなければならぬものでもございませんので、二十九年度予算を編成するにあたつて、二十九年度予算にどれだけそれを入れるか。すでに御承知通り、もう十月にもなつておりますので、それで予算通りますのにいろいろなことを考慮いたしますと、相当年度も詰まつて来ておりますから、このうちかりに今のような数字を見るとして、本年内にどれたけ見るか、次の年にどれだけ繰入れるかというような問題等がありますので、実はその点で今厳重に私ども検討しておる最中でございます。それで、もうしばらく実は御猶予を願わぬと、私どもの方でも実は間に合うように必ずやります。間に合うようにやりますから、それはどうかひとつそういうことで御了承願いたい。実は二十九年度り予算を編成しませんと、これではどれだけこの補正予算へ入れるかということはちよつと見当がつきかねますので、この点から今かれこれ検討しておる次第でございます。御了承願いたいと思います。
  45. 綱島正興

    綱島委員長代理 関連だから、ここらで……。あとに通告があります。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 ちよつと待つてください。大事なところだから、だれが質問しても同じだと思います。そうしますと、補正予算と二十九年度の予算との関連においてでなければ、水害予算というものが組まれないというのが、今の答弁の概要であつたと心得えます。これは二十九年度の予算ということになりますと、当然自由党と改進党との、いわゆる話合いその他政局安定の問題にも関連をして来る問題で、あるいは池田政務調査会長がアメリカから帰らなければわからないということで、十月の初めか十一月でなければこういう具体的な問題が決定できない、こう考えられるが、それよりもつと以前に、たとえば十月中旬までぐらいに水害だけの予算をはつきり出すというようなことなのか、もうしばらく待てというのは十一月の初めまで待つのか、それともここ一週間も待てば具体的にきまるのか、この辺もはつきりしてもらわなければ、われわれも引下るわけに参りません。
  47. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはいついつかといつて日にちをお限りになつても因りますし、私も誠意を持つて解決に当りますから、しばらくお待ちを願います。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 それではどうも答弁にたりません。すでにさいぜんも政令にかりにというような言葉をちよつと使いかけたのですが、政令ももうすでにこういう数字が出て来る限りはできておる、政令ができれば当然それに積み重ねるところの数字というものは出て来るわけです。そうしますと、問題は、その政令によつて出て来る金額の何割を今年やるか、二十九年度の予算と関連があるとしても、今年大体何割やるかということがきまれば今年の数字は出て来る、こう確信しておる。従つてこれは建設大臣に尋ねなければならないことになりますが、そうなりますと、建設大臣は今年こういう公共事業災害を何割やるお考えですか。それを関連質問としてお答えを願いたい。
  49. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 これは財務当局との関連もありますから、私がどうすると申し上げてもしようがないと思いますが、私の希望としては、今後災害の復旧は、従来三年と申しておりますものを二年でやりたいという希望を持つておる。それでないと、今後の恒久対策を立てる上にも、従来の災害が残つておるというようなことはおもしろくないことだというふうに思います。但し私どもといたしましても、そうそう大きな額をといつてもいけませんから、なるべく正確な査定と申しますか、そういう点に十分注意をいたして、金額としては、今大蔵省で査定の予想をいたしておりますよりも、もつと厳重にいたしても、この方針だけは貫きたい。そういう意味で、私は二年で災害の復旧を今後やるようにしなければほんとうではない、かように考えております。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 今建設大臣は二年でやりたい、こういうことなんです。そうすると、建設省だけでわれわれが今建設省からもらつた資料によりますと、国庫負担は九百四十七億円になります。そうすると。大体二年でやることになるのでしようが、一応その三割と見ても二百八十四億の金がいるのです。だからこれは、内閣の中においても、一方は二年でやろうと言うし、一方は財源がないと言う。これは明らかに閣内不統一でありますが、ひとつこれは今年何割やるのかという内閣の基本方針を、緒方副総理に説明してもらいたいと思います。そういう閣内不統一のことでは、私どもはどうも家へ帰れませんから、はつきりした閣内統一の意見を言つてもらいたい。
  51. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ただいま建設大臣からお答え申し上げたのは、建設省として災害が復旧に至らざる前に同じような災害を繰返しては何もならないから、建設省独自の考えとしては二年で完成したい、なるべく早く完成したいという意味から、二年でしたいということでありますが、それはまだ政府全体としての意見をまとめておりません。私が先般三五二と申しましたのも、当時御質問が四四二でやることができるかできないかという御質問でありましたから、それはどうも困難のように思われる、やはり従来の方針によらざるを得ない、従来の方針が大体三五二でありましたので、それを申し上げたので、それも当時の私個人の意見で、政府としてどうきめるかということは、先ほど来大蔵大臣が申しておりますように、財源全体、補正予算及び二十九年度の予算の編成の見通しをまたないと、私も最後的にはきめられないのではないかと考えております。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもなまず問答で要領を得ません。最後にお尋ねいたしますが、大体大蔵省は当委員会に二十九年度予算並びに二十八年度補正予算を、いつまでに、水害予算を含めて確信ある答弁ができるか、その概略の日にちだけを、ひとつはつきり御答弁をお願いいたしたいと思います。
  53. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大蔵省としてはできるだけ努力いたしますが、まだ閣議その他でもとりきめておりませんので、確定的な日にちは申し上げられませんが、この災害のことについて急いでやらなければならぬことはよくわかつておりますから、もうしばらくお待ち願いたい。
  54. 滝井義高

    ○滝井委員 しばらく待て待てということは、すでに九月十二日に当委員会が終るときも、やはり緒方副総理から、小笠原大蔵大臣が帰つて来るまでひとつ待つてもらいたいというたつてのお願いをわれわれにしたのです。あなたが帰つて来られてからこれは間もないという声もありますが、間もないかもしれませんけれども、あなたの部下、そこに主計局長さんも来ておられますけれども、すでにこの前から、各省の数字が集まり次第に、はつきりした御答弁をいたしますということであつた。もうすでに数字が集まつておる。だからこれは一数字で大よそ大蔵省はこれだけのものは組むのだという方針が立たないはずはない。もうすでに災害が起つて、西日本だけでも三箇月を経過している。それを今になつてまだ検討中である。どうも政令がかりの政令だ、そういう不見識な答弁をされるということになれば、さいぜんから綱島委員も言われたように、日本は用心しないと農村から革命が起つて来るということも、自由党自身の委員が心配されておる。これはひとつ十月中あるいは十一月の初旬ということでけつこうですから、御答弁願いたいと思います。それをはつきりしていただかなければ納得できません。その点ひとつはつきり御答弁を願いたいと思います。
  55. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大蔵省といたしましては、今お話になつたごとく、主計局その他でも十分この数字は集めております。その点今申し上げた通りです。さつき副総理からお話がありました通り、本日次官会議等で、各省の予算について、あるいは節減し得るもについては節減し、繰延ばし得るもの等については延ばしてもらう、それに基いて災害対策についての予算をできるだけふやしたい、こう考えておりますので、大よそのことでございますれば目途がつきましようけれども、そういうことでなく、いついつかと仰せになるとちよつと困るということを、私は正直に申し上げておる次第でございます。
  56. 滝井義高

    ○滝井委員 ひとつ委員長から内閣の方にお願いをいたしてもらいたいと思う。われわれは、当委員会で緒方副総理の答弁は内閣を代表する答弁であるということを心得ておる。ところが三五二は、どうもそれは君の方から四四二という質問があつたので、三五二で行きたいという個人的な意見だ、あるいはそういうことは大蔵大臣が帰つたらひとつやるということ、あるいは情勢も違うからということで、絶えずくらくらと内閣の意向がそのときどきの情勢でかわるということは、何のためにわれわれ四十人の委員災害地の意向を代表してやつておるかわからないのでございます。従つて、これは委員長から、今後の閣僚の答弁は内閣を代表した答弁である、間違いない答弁であるということを、ひとつ先に言質をとつておいてもらいたいと思う。  それから最後に、大蔵省にお願いいたしたいのは、非常につなぎ融資等がたくさん出ておりますので、あしたの委員会までに、このつなぎ融資の出た総額と各県に行つた額の資料を御提出願いたいと思います。これで質問を打切ります。
  57. 綱島正興

    綱島委員長代理 松浦周太郎君。
  58. 松浦周太郎

    ○松浦委員 私は改進党を代表しまして、二、三政府に質問いたしたいと思います。  今度の十三号台風に対しまして、去る一日から渥美半島、知多半島並びに伊勢湾海岸区約百里、四百キロ近い距離を自動車で全部くまなく調査したのであります。今度の災害の状況は、先ほど来各県の県知事がいろいろと陳情されておつたようでありますが、この十三号台風の対策といたしましては——先ほど海岸地帯でない山間平野地方のお話も十分承つたのでございますが、この山間平野地方における対策は、従来の六月、七月の災害の特別立法である二十四の法律を適用する、これによつて救済するという方法は、あとで動議が提出せられまして委員会一致で決定せられることと思いますが、海岸地帯に起つた災害は、この二十四の法律では救いかねる点が多いと思います。この点に対しましては、先ほど三重県並びに愛知県代表からお述べになつたのでありますから、情勢はこまかく申し上げませんが、とにかく三重県においては約一万五千町歩、愛知県においては五千町歩というものは、今日もなお高潮が出入りいたしまして、八尺の水の下に作物があるというような状況でございます。この状況をくまなく報告することはできませんけれども、三重県の寒村である鵲村——海岸の村でありますが、ここに参りましたところが、八十になる老村長が陣頭に立つてつている。徳川時代に干拓をいたした所であつて、海岸林はほとんど二尺以上の太さの老松をもつて囲われているのでありますが、それが全部決壊している。これは明治三年に一ぺん切れたきり今回まで切れたことがないということで、悲痛な面持で善後策を講じておつた姿を私は見たのでありますが、これと同じような、もつと大きいのは豊橋附近における海岸の、明治二十二年の干拓事業による地方であります。これは一千町歩に及ぶ冠水がそのままになつて、八尺の水の下に家屋が建つておるというような状況であります。この海岸地帯の状況を先ほど愛知県の代表からお述べになりましたが、この原因は今度の高潮ではありますけれども、間接の原因は、昭和十九年に南海地震によつて地盤が沈下した、それをそのままに政府処置を講じておりませんから、今度の高潮の場合に表からこわされたのではなくて、水が上から越したものですから、裏からこわされて堤防が決壊してしまつております。これは、災害の起つた直後に、二尺七寸あるいは一メートルも地盤沈下をしていることはわかつておりますから、その場合に、かさ盛りをしておけば、今度のように災害をあれほど大きく受けなかつたろうと思うのです。これは地方の人がいずれもそれを恨んでおります。特にこの問題については、先年建設省並びに農林省が、海岸保全法というものをつくつて善処しようと思つたけれども、両省のセクシヨナリズム的な闘争のために、遂にこれがつぶれてしまつて、そのままに放置してある。それが今日かような災害を起したということでありますから 私は潮も高かつたけれども、政策が貧困なるためにかような状況になつたと指摘したいのであります。この地帯に小笠原さんの選挙区があります。私はそこに行つてみました。夜八時ころに雨のじやんじやん降るところに行つてみましたところが、今ようやく避難民が去つたところだと言つておつた。寺津町という所にも参りました。かまやすきを持つて二百人が村をとり囲んで、村長に何とかせよと迫つている姿を見たのでありますがこれはこの村だけの考え方ではない。どの村でもこういう考え方を持つている。これをこのままに放置しておいたら、先ほど綱島さんか仰せになりましたように、共産党の温床のような結果になる。でありますから私は一日も早くこれの救済対策を発表することが、これらの人々を安定するゆえんだと思うのでありますが、それに対して二十四の法律では、海水が浸入して来たものの排除をして、これに元に復すということは困難だと思います。それで熊本において泥土排除法かできましたように、海水防止法、あるいは海岸保全法であるとか、前に農林省、建設省で計画したことのある、そういう単独な立法をつくつて、この百里にわたる沿岸全体に対するかさ盛りをすると同時に、これのこわれたところを直す、そうして海水を排除いたしまして中に客土をする。政府の力で客土をいたしまして、それが二毛作のかわりになつて、それによつて来年度の耕作が可能になるというような手を打たなければならぬ。この二万町歩に及ぶ干拓地帯はわれわれの先輩がつくつて来たところなんです。それが今度の災害でこつぱみじんになつた。これをこのままにして、先輩の政治家に何と申訳するか。吉田総理は、しばしば食糧政策のために干拓事業をやるということをさかんに放送しておられる。新しい干拓もやつてもらいたい。けれども、現実の姿をこのままにして次の干拓はあり得ないと思うのです。これに対して、政府におかれては、吉田総理がしばしば干拓事業をやるということを建設大臣や緒方さんに申し出ておられるようでありますが、現在の侵された干拓地帯を、特別な立法をもつて、また特別な予算の裏づけをもつてやるのでなければ、これを救済することはできないと思うが、これに対する政府考えはどうでございますか、お聞きしたいと思います。
  59. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 松浦さんのお言葉まことに私は感謝にたえません。ちようど私の生れた郷里地方がそうなんでありまして、心を苦しめておる次第であります。これについては、やはり私も特別な、あるいは今御指摘になつたような立法等を要するのではないかと考えておりますが、実はまだ私帰つて参りまして詳細の報告に接しておりません。一応の数字また写真等は見て、悲惨な状況は知つておりますが、どういうふうにこれを持つて行つたらいいかという対策についてはまだ何も聞いておりません。従いまして、至急これらについて聞きまして、あるいは農林当局とももるいは建設当局とも打合せをいたしました上で、この今の悲惨なる農村に対してできるだけのことをいたしたいと考えておる次第でございます。
  60. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 ただいま災害補償のお話がありましたが、今回の災害は、必ずしも仰せのような立法でなくても、水没というような意味で、堤防はもちろんのこと、耕地の方も、水没、埋没というか、同じような扱いで行けるのじやないかと思います。
  61. 松浦周太郎

    ○松浦委員 戸塚さんは静岡県だから、そういうところがないので、そういう認識を持つているかも知れませんが、現在までの法律では、あれだけのものを直すことは断じてできません。八尺海水がある。そして地盤が沈下しておる。これは技術的の問題になりますが、地盤が一メートル沈下しておるものですから、従来の水の満干の関係におきましては排水することができない。水の量によりますが、少くとも五百馬力か八百馬力の揚水機をすえて、そうして動力排水をしない限りはできないと思います。それが早く行われなければ塩が沈澱するのです。そうすると、土壌が塩分を含みますから作物ができません。従つて、これは大規模の客土をやる、大規模の築堤をやるのでなければ、これは断じてできないと思います。それは現地においでになるよりでありますから、ごらんになりましたらはつきりすると思いますが、これは、小笠原さんのおつしやるように、特別立法でなければ私はできないと思うが、あなたがやるという計画は一体どういう計画を持つておられますか。
  62. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 私が申し上げましたのは、あるいは法律をつくらなければできないというかもしれませんが、復旧、ないしはその復旧の上に改良を加味してやる計画を立てればよろしいのではないか、こういう意味で申し上げたのであります。沈下したというお話もありましたが、沈下についても、御存じのように各地に相当の手当はしておつたのでありますが、十分に参らなかつたということになりましよう。それで私は、明日愛知県、明後日三重県に行つて現場を見て参るつもりであります。なお、せんだつても話を聞きまして、ただいまお話がありましたように、ポンプのことも手当はいたしておりますが、どうも場所が都合が悪い、あるいはディーゼルのポンプが今ないというようなことで、現場では非常に苦しんでおります。なるべく早くお話のようにこれを回復しなければいかぬというので、現地でも努力をいたしております。一日も早く回復するようにいたしたい、かように考えております。
  63. 松浦周太郎

    ○松浦委員 昭和十九年に沈下したものを、調査費が十分組んであるかどうかまだわからないような現状でありまして、勢力争いばかりを盛んにやつてつて、利己的なことをやつて、自然に対する考え方がおろそかになつておるのでありますから、天が一つの警告を現内閣に与えたものだと思うのです。でありますから、今のような、昭和十九年に沈下しておるのに、今まで一体幾らそれに国費をお出しになつたのか、どういう調査をされておるのか、主管大臣もまだそのことがわからぬようなことでありますから、こういうような災害が頻発するのです。治山治水においても同様なんです。先ほどから大蔵大臣財源問題でずいぶん問答をしておられたのですが、これは考え方の置きどころが違うと私は思うのですそれは、なるほど今までと同じようなことをやつて行けば、財源がないことはきまつておるのです。今金利の問題について綱島さんとの間にずいぶん質疑応答があつたが、それはそれといたしまして、税に財源を依存するよりしかたがないということは当然なんです。とれるだけの税の中で国民生活が安定するということが政治ではないですか。そうであるとすれば、まずこの次に考えることは、やはり行政整理をやらなければだめでしよう。行政整理をやつて、従来と同じ財源をもつて、この行政整理によつて出て来る余剰をもつて災害を防止し、同時に国土の開発をするということを考えるのでなければ、今のままで行政をほつたらかしておいて、そうして税を高くとらなければならないというような考え方だつたら、大蔵大臣もどうかしていると思うのです。この行政整理についてはどういうお考えを持つておられますか。     〔綱島委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 行政整理につきましては、目下塚田長官のところで鋭意やつておりますが、このことにつきましては、これは従来行政整理がややもすればかけ声に終つておるから、今度は実行されるようにという総理から特に強い要望がありまして、目下塚田長官の手元で急いでおる次第であります。  ただ、松浦さんに申し上げておきますが、行政整理をいたしましても、初年度は予算にはちよつと出て参らないのであります。退職手当その他のものにいりますので、そこでやはり昭和二十八年度の補正予算とか、昭和二十九年度の予算になりますと、この点まだ十分なことが私どもの方で考えられませんが、もちろん行政整理も徹底的にやらなければならないことは仰せ通り考えております。
  65. 松浦周太郎

    ○松浦委員 初年度は退職手当その他において財源が十分でないというようなことは十分知つております。しかしながら、将来その財源が得られるということであるならば、計画は立てられるはずです。そんな答弁は私は得ようとしてはおらない。そこで行政整理を鋭意やるというならば、その行政整理の大きさは、一体どのくらいの財源を得る目標を持つてつておられますか。
  66. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまのところまだ所管大臣から——その行政整理の担当者からよく聞いておりません。どれだけの財源をとるということについての話は実にまだ聞いておりません。
  67. 松浦周太郎

    ○松浦委員 行政整理も十分でない、税もこれ以上はとることはできない、しかし国の現状においてこの災害をこのまま放置することはできない、しかし百般の行政はやらなければならない、財源がない、これでは通らないと思う。そこで、他に財源を求めることができなければ、二十八年度の予算においても公債を発行しておられるが、建設公債等についてはお考えにならないのかどうか。
  68. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは実は二十八年度の補正予算、二十九年度の総予算等を編成するときに、この問題はきめたいと思いますが、私どもは、こういつた災害に対しては、どうしても根本的に対策がいる、この点は強く認識いたしております。
  69. 松浦周太郎

    ○松浦委員 根本的な対策に対する財源がなければどうにもならないということなんで、財源を心配しているわけでありますが、私は建設公債等を発行する意思があるかどうかを聞いておきたい。
  70. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まだ予算の方針等を閣議でも二十九年度についてはきめておりませんので、そういう問題のときに建設公債を出すべきやいなやということについてきめたいと考えております。
  71. 松浦周太郎

    ○松浦委員 二十九年度の予算について建設公債を発行するという考えがあるならば、今回の補正予算についてその財源を利用することができることは当然だと思うのです。なぜならば、二十九年度の予算に建設公債をある程度利用するとするならば、二十九年度に充て込んでおつた他の財源をこちらの方の応急策に使うことができるからであります。でありますから、問題になるのは、その他の財源がないとするならば、なくてもやらなければならぬので苦慮しているという苦慮が——ここに一つ問題があるのではないか。それであるならば、公債を発行されるかどうかということを聞いておきたい。
  72. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それは二十九年度予算のときに申し上げるまで、ひとつお待ちを願いたいと思います。私一個の考え方をここで申し上げることは差控えたいと存じます。
  73. 松浦周太郎

    ○松浦委員 それは今私がこれ以上聞いても、閣議が決定しない以上は返事かできないと思いますけれども、私ども考え、あるいは避難民の考え、国の現状から考えて、この際はインフレの防遏にも相当苦慮することはあろうけれども、現在のままに放置することかできないならば、何か他に財源を見つけることをしなければならぬ。見つけるとすれば、いわゆる使う金を縮めて行くか、あるいは新たに公債を発行するか。増税することができないとするならば、その道しかないではありませんか。私はそれを二十九年度の予算ではあるが、二十九年度に公債を発行するということになるならば、この対策委員会においてもおのずと財源を見つけられると思うから聞いているのでありますが、もう一ぺん御返事を願いたい。
  74. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 予算全体から見れば、あるいはなお若干節減し得る分も出て来るじやないかと思います。あるいはまた忍んでもらわなければならぬ分も出て来るかと考えます。従いまして、どの程度に公債を発行すべきかというような問題等は実はまだきめておりませんので、これを率直に申し上げる時期にまだ達していないということを答弁させていただきます。
  75. 松浦周太郎

    ○松浦委員 財源の問題につきましては、これ以上つきましても返事はできはいと思いますが、この災害地の国民全般の希望をよくお考えになつて、民心安定のために、早く財源措置を講ずることが必要だと思う。先ほども臨時国会の問題についていろいろ押し問答があつたのでありますが、真剣に早く案を立てて、臨時国会を召集して一刻も早く手を打たなければ、蜂起する者を押えることはできない。地方の知事及び市町村長は、この間二百人にも取囲まれて、どうにもならない状況があなたの選挙区にある。あなたはそのことはよく御存じだと思う。そういうことでございますから、一刻も早く先ほど御質問のありましたように財源を求めて、そうして補正予算を早く組み、臨時議会を早く召集するということでないと私は治まらないと思う。のみならず、北海道、東北におきましては非常に大きな冷害を受けておる。一千倍だといわれているような災害の年でございますから、すべてのものはあとまわしにしても、まず災害を救わなければならぬことは今日の政治だと思うのです。これに対しましては私は緒方さんにもう一ぺんだめを押しておきたいのでありますが、総理大臣はしばしば泥炭地の改良あるいは大規模の干拓事業をやるということを国民の前に発表されておるのでありますが、これは国家として当然やらなければならぬことであると思うのです。そういうような場合に、明治二十二年、あるいは先ほどの鵲村のように、徳川時代につくつた干拓地帯が、このように二万町歩ま今日水の底にある。新しい干拓をやろうという考えのもとにこれをやるのでなければ、姑息なことをしたのでは——先ほど三重県知事の言つておるように、海岸全部で二百二十箇所決潰しておる。こんなものを災害復旧や何かの姑息なものでやられるものではない。全体に百里に及ぶ築堤をやらなければならない。しかもこれは、私は財源も法律も新しく組んで、そうして応急恒久を兼ねて今から見通しをつけてやるのでなければ、ずいぶんむだも多くなると思うのであります。でありますから、それに対する緒方さんのお考えはどうでありますか、お伺いいたします。
  76. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私どもといたしましては、今お話のあつた通りに実は考えておるのでありまして、今度の災害の応急復旧のみならず、その恒久対策を、財源の問題もありまするが、抜本的にやりたいという考えから、政府の中に治山治水対策協議会というものをつくつております。これは単に治山治水のみでなく、今仰せられたようなこともできるだけこみで研究いたし、施策いたしたい、さように考えております。
  77. 松浦周太郎

    ○松浦委員 小笠原さんは特別立法のようなものも必要である、こう述べておられるが、戸塚さんは、それでなくても従来の法律でできるような口吻もあつた。両方さつきと同じように話がわかれておるが、一体総理の代理としてはどうお考えになりますか。
  78. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 先般の議員立法の中にそういう場合の措置ができるものがありはしないかと考えるのでありますが、鹹水に浸る、淡水に浸るにかかわらず、同じような災害として措置をとり、復旧対策を講じたいと思います。もしそれができないという結論になりましたならば、今お話のように臨時国会におきまして特例法をつくる必要がある。その臨時国会を開くまでの間、政府といたしましては特例法があると同じように、つなぎをやつて行く方針であります。
  79. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 松浦君にお答えいたしますが、財源その他には今いろいろ二十九年度予算等ともにらみ合せて苦心いたしておりまするけれども、しかし即刻要する資金については、つなぎ融資としてさきに数府県に対して十億出しましたほか、さらに大阪、兵庫等にも出す等、仕事の面につきましては何ら支障なきよう措置したいと思つております。もし足らぬところがありますれば、これについては十分措置をいたす考えでおりますから、御了承を願いたいと存じます。
  80. 松浦周太郎

    ○松浦委員 長くなつて皆さんに御迷惑ですから……。今のお話は支障のない限りという言葉を具体的に生かしてもらいたいのです。みんな支障があるからこんなに大勢来ているのです。深刻な状況ですよ。一ぺん行つてごらんなさい。ここで議論ばかりしておつてもだめです。そして十億出したということはたいへん大幅にやられたようですが、各県に割つてみれば幾らでもない。土俵も集まらない。三重県のごときは十万俵から土俵がいるといつているが、今ちよつとの二、三箇所やるためにそれだけいるといつておる。それをやらなければあした高潮が来ると大騒ぎしおる。くいもだんだん両方から締めて行くと、三十六尺のくいで間に合わない。浮いてしまう。それから一日二へん出たり入つたりするから、狭くなれば瀬が強くなり下が掘れてしまう。あるいはじやかごで投石するよりほかないのですが、じやかごもなければ石もないのです。そのお金が、つなぎ資金が来ないために各県はどうにもならない。今恒久立法についてはいろいろやるという仰せでありましたからいいのでありますが、応急的にはあなたのおつしやつた話と現実は違つておりますよ。だから、つなぎ融資に対しましても、今の残りのものをやるくらいのことでは問題にならないのです。早く臨時議会を開いて、つなぎ資金ならつなぎ資金の基礎を固めなければ、今の残りの資金をやるようなことでは、十億や二十億出しても、これは二県だけじやないのです。先ほど各県のお話があつたのでありますが、山間、平野地方にもこの台風は大きな影響を与えております。私の言うのは、特に今までの二十四の法律の中にない部分を指摘しておるのでありますけれども、今のようなお話をひとつ実現してもらいたい。そうして応急的には迷惑をかけない、支障のないようにするということを、言葉でなくて、現実の政府の上に現わしてもらいたい。これが私が向うに行つて参りました実情の関係であります。  最後に申し上げたいことは、財源がないないと言うが、ないそでは振れぬということはわかつておるのです。この春以来大きな災害が起つて、おそらく地方県知事から出ておるところの統計の総額は、私は五千五百億か六千億になつておると思うのです。今度だけでも二千二百五十億だと言つておるようでありますから、そういう大きな災害があり、その災害を受けた人には担税力がありませんから、自然税源も減るでありましよう。根本的に小笠原財政というものをやりかえなければだめですよ。今までのようにないないと言つておるのじやだめだ。今までのことは根本的にやりかえて行くというのでなければ、災害に対するほんとうの行政はしけないと思うのです。それに対して一体今までと同じような行き方で行くかどうか、そういう考え財源がないというのでなくて、あるだけの財源で有効的に現在の災害を救うという決意をしてもらわない限りこれはできないと思うのですが、その御決意を聞いて私は質問を打切ります。
  81. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 災害に対する対策の全きを期することは当然であります。従いまして、これに対する財源等についての十分な措置考慮することもまた当然のことであります。但し、私どもといたしましては、現在のところ、たとえばある部分について節減し得るものは節減する。繰延べ得るものは繰延べる、しかしそれでもなお及ばぬところがあつたらどうするかということについて、今いろいろ協議をいたしておる次第でございます。この点は、私どもは近く二十八年度の補正予算並びに二十九年度の予算を出すのでありますから、そのときに十分御審議を願えれば、私どもの心持もおわかり願えることと確信いたしております。
  82. 松浦周太郎

    ○松浦委員 最後に、私は委員各位にお願いいたしたいのでありますが、十三号台風に対して委員会としてはまだ調査団の派遣が今後になるように思いますので、ひとつ十三号台風の地域全体にわたつて、各委員が手わけして実情の御調査を願いたいということをお願いいたしておきます。これをもつて私の質問を終ります。
  83. 村上勇

  84. 稲富稜人

    ○稲富委員 先刻から政府の御答弁を聞いておりますと、過般来の委員会における大臣の答弁が個人の資格をもつて答弁されたというふうに承るのでありますが、私たちは個人の資格をもつ御答弁は受けたくないのでありまして、閣僚として、しかも責任のある大臣としての答弁を承りたいと思つて質問いたしますから、それに対する大臣としての御答弁をお願いしたいと思うのであります。なお、すでに西日本におきまする災害が起りまして三箇月を経過しておるのでありまするが、今日なお政府といたしまして、この災害に対する対策、しかも具体的な方針がきまつていない、閣議でもまだその大体の大綱がきまつていないという先刻の御答弁を聞きまして、私たち実に遺憾に存ずる次第であります。おそらく現地の罹災者がこの言葉を聞きましたならば、どれほど政治に対して不安を感ずるだろうかということをわれわれは考えるのであります。少くとも政治というものは、国民の心を心としてやつてもらうことがすなわち善政である、かように考えます。私たちが現地に行きまして罹災者の実情を見まするときに、臨時国会も開かれない、予算措置も決定しない、政令の地位がどうなるか非常にそういう不安なままに工事が進捗しないというような事実を見ますのは、私は、政府に大きな責任があるということを政府として十分考えていただきたいと思うのであります。かような見地から私考えまするに、まず大蔵大臣お尋ねいたしたいと思いますることは、このたびのこの災害に対していかなる処置をとらんとされているのか。政府は、西日本災害が起りまするや、現地に大臣を派遣されまして、非常に災害には熱意があるごとく、ただちにこれに緊急措置をとるかのごとき態度をとられたにもかかわらず、今日まで一つもこれが結果に現われないということは、私は政府のこの災害に対する熱意を疑わざるを得ないのであります。一体政府は、この災害に対して、ちようど現地に大臣を派遣されて緊急措置をやるぞといつたようなその熱意が今日もあるかないか、この点をまず承りまして次の質問をいたしたいと思うのであります。
  85. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたします。今回の十三号台風並びに東北、北海道方面の冷害が非常に深刻であるということを承知いたしました結果、従来のごとく西日本災害対策中央本部と言うておりましたのでは実情に沿わないと考えまして、先般これを臨時災害対策本部といたしまして冷害並びに十三号台風の災害に対しましても、この本部において各省の意見をとりまとめ、応急の対策を講ずることにいたしております。  それから、西日本のときは大騒ぎをやつたにかかわらず、今度は非常に冷淡ではないかという御質問であります。実は西日本災害のときには非常に大きな災害が一時に来たので、政府といたしましてもこれは容易なことでないと考えて、現地対策本部をすぐ設けたような次第であります。冷害の方は天災には違いありませんが、いわゆる災害とちよつと感じを異にしておりまして、申さば忍び足に災害が忍び寄つたような感じで、実は閣僚の視察も今までやつていなかつたのでありますが、明日の閣議後大臣を派遣いたすことにしております。十三号台風の方は地域が非常に広うございまして、まだ特にどうこうという決定はいたしておりませんが、それに対しましてもだんだん災害の状況がはつきりいたして参りまして、西日本災害に比べて行く行くあまり劣らぬことになるのではないか。それに対してどういう処置をとればいいか。これは地域的に申しまして西日本ほど離れておりませんので、現地災害対策本部をつくることはあるいは必要ないんじやないかというように考えております。これに対しまして、政府から見舞を兼ねまして視察に参ることは、近々いたしたいと考えております。
  86. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの緒方副総理の答弁は、私の質問とはいささか違つておるのであります。私の質問いたしましたのは、三箇月前に西日本水害が起りました当時は、政府は非常に熱意を持つたような対策をやられたにもかかわらず、今日三箇月を経過いたしましたにもかかわらず、なお政府としての方針がきまつていないことは熱がさめているので、本気でこの対策をやるつもりであるかどうか、こういうことを私は念を押したのでありまして、今日の西日本水害に対する政府の熱意がないことを私は遺憾として申し上げたのであります。これに対し政府はどの程度の熱意を持つてやらんとするのであるかということを承りたいと思うのであります。
  87. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 政府といたしましては熱意は少しもさめておりません。かわりはないつもりでおるのでありますが、先ほど来大蔵大臣及び私から御答弁いたしましたように、国会でおつくりになつた政令(発言する者あり)——ちよつと聞いてください。政令のその基準に応じまして、国の補助の総額がいろいろ違つて参ります。先ほど来お話したように、財源関係からいろいろ苦慮して、あるいは委員会に懇談を申し入れる等のこともありましたが、その間に不幸にしてさらに新たな災害が参りまして、先ほど大蔵大臣から申しましたように、補正予算、それに引続く二十九年度の予算の編成の見通しがつかないということと、はたして政令の基準をそのままのめるかどうかということに対して多少の不安がないとは申せませんので、私、衆議院におきましても参議院におきましても言い続けて参りましたように、今回の予管編成にあたりましては、災害の復旧対策を優先的に考えなければならぬという決意でおることは申すまでもないのでありますが、ただいろいろな項目につきまして予算の見通しがきまらぬものがあります。これは災害だけの問題じやありません。全体の予算をどういうふうに切り盛りするかということにつきまして、その見通しをもう少しはつきりしたい。その間に災害地をうつちやつておいてはいけないのじやないか。これに対しましてはいわゆるつなぎ融資をいたしまして、まだ災害対策融資も多少残つておると思いまするし、かりにこの間の議員立法でないまでも、旧法の有する程度のつなぎ融資はさしつかえないだろう。そういう点でできるだけの財源を探しまして、現地で災害の応急復旧に対して不都合のないだけのことはやつて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  88. 稲富稜人

    ○稲富委員 大蔵大臣お尋ねいたしたいと思うのでございます。この非常災害に対する予算編成と通常の予算編成とにおいては、いささか考え方が違わなくちやいけないのではないかというのが、われわれの考え方であるのであります。大蔵大臣には、このたびの災害を特別非常災害だという認識がどの程度おありになるかということを承りたいと思います。
  89. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ことしにおきまする各地の災害が非常なる災害であるということはよく承知しております。従いまして、このいわゆるつなぎ融資等も、すでにもう百億円余を出しておることは御承知通りであり、さらに災害対策の予備費、あれにつきましても巨億見てありましたが、今日まですでに支払いを了した分が八十億からございます。そういうぐあいで、できるだけ急いでおります。ただ、非常に不幸なことは、私どもが六、七月のあの措置をいろいろ講じておる最中に、八月にまたああいう近畿の水害があり、それについて案を練つておるうちに今度の十三号台風が参りまして、これも非常に広汎な地域にわたつておる。なお、私が一昨日聞いたときの数字と本朝聞いたときの数字とでは、たとえば横井県のごとく、若狭方面では全然今まで知られていなかつたところがふえておるので、そういうふうで実は遅れております。しかし私どもも、こういりた災害国民災害でございますから、何としてもこれに対しては処置しなければならぬと思つておりますが、さしむきは、まずつなぎ融資で行けるものはつなぎ融資をできるだけ早く出てうということでやつております。けれども承知のごとくに……(「早く出ておらぬよ」と呼ぶ者あり)あまり早く出してない、あるいは遅れておる点があればまことに申訳ありませんが、御承知通り出ておるものにつきましても、これはみんな、たとえば人夫賃に払われ、いろいろなものに払われるのでございまして、実情に基き仰せになれば、これは私ども必ず出しております。これは今までの例で御承知くださつておるところもあると思います。従いましてそれで一方やつておる。他方に、さつき申しましたように、今の予算によりましても約千四百八十八億といつたような大きな国の補助金を要することになりますので、これを補正予算あるいは二十九年度予算でどう持つて行くか、それらについて今いろいろ心配しておる次第で、その心配しておる間遅れるじやないかとおしかりを受けるかもしれませんが、それはつなぎ融資で当面のことは忍んでいただく、こういうことで処理いたしております。私は、自分の生れたところも災害を受けておつて、決してその災害についての熱意に欠けておりません。そのことをはつきり申し上げて、皆さんの御協力を得たいと存じております。
  90. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま大蔵大臣から、このたびの非常災害というものは十分御認識があるということを承つたのでありますが、非常災害に対する御認識がありますならば、予算編成に対しましても災害の実情に即した予算編成をやつて、一日もすみやかにこれを復旧することが、すなわち災害対策じやなかろうかと思うのであります。しかるに、大蔵大臣は、先般アメリカに行かれるときに、先刻からここでいろいろ質疑応答がありましたように、一兆億という限界を置いて、この以内において補正予算をやりたいというような御意見があつたということを先刻承つたのでありますが、災害の実情に即さないその一兆億という限度を置かれたというのは、はたして災害のどこに基本を置いて一兆億という限度だけをおきめになつたか、その点をひとつ承りたいと思います。
  91. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 予算のことは、よく御承知のごとくに、各種の費目にわたつておりますので、そのうち災害対策については、いわば災害対策予備費が百億ございましたが、さらに相当増額したものを見ればよいだろう。また他方、先ほど申し上げました通りに、幾らか繰延べしてもらうとか、各種のことをやつてもらうことによつて災害地の実情に応ずるような予算を組み得るであろう。しかし、その後にいろいろな災害が起つて参りました。しかもその災害は深刻なものが参りましたので、そこで私は今朝も実はそのことを申したのでありますが、自分は一兆という線は死守したいと考えておつたけれども災害のためにはやむを得ぬことだ、こう自分は信ずるということを申したくらいでありまして、これは何も、そういうことをいたずらに墨守して、災害地の予算をどうこうということはございません。しかし、できるだけ国の予算を切り詰める、これは私は何としても必要なことでございますので、さつき緒方副総理より御説明申し上げました通りに、総理の意向といたしまして、各次官に現在の予算でできるだけ切り詰めをし、繰延べし得るものを出してもらうということにいたしておる次第でございます。私は決して一兆というわくをつくつたから、そのあとの零の上に何物も乗つてはいかぬ、かように考えてはおりません。考えてはおりませんが、これは国民の心理的な影響もありますし、また日本経済財政の前途を見ますと、この線が多少太い幅のある線ではありますけれども、この線はあくまで守つて参らなければならぬ、かように考えておる次第でございますが、今のような災害のものは、その太い線の上に若干出て来ることは、私は当然のことじやないかと考えております。
  92. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは大蔵大臣の一兆とおつしやつたのは、十三号台風がなかつたら一兆以内で切り詰めたい、十三号台風が起つたから一兆を越していい、こういうような考えで新聞に発表になつたのでございましようか、その点を承りたい。
  93. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは十三号台風とかそういう問題のみではございませんので、当時私が承知しておる災害を受けた程度におきましては、この程度でよいのではないか、こう思つた次第でございます。さらに、御承知のごとくに、ひとりこれは補正予算のみでまかなうべきものでなくて、次の二十九年度予算でまかなうべきものでありまして、これがこの臨時国会を通るといたしますれば、相当時期的にことし使われる金等の制約もございますので、その意味ではこれで足りるのじやないか、こう申した次第であります。
  94. 稲富稜人

    ○稲富委員 先刻私が大蔵大臣災害に対する御認識を承つたのはその点でございますが、大蔵大臣は、アメリカに行かれる前に、一兆億以内でやろう、その当時における災害としてはそのくらい出せばいいのだと考えておつしやつたということならば、それは災害に対する認識が非常に足りないのじやないかと思うのであります。私どもは、今日現地に行きまして、あの大蔵大臣の一兆億以内で補正予算をやつて行こう、こういうような言葉が災害地の復興を非常に遅らしておる。これは私は、大蔵大臣に対してあえてここでその責任を追究するわけじやございませんけれども、そういう事実があるということはひとつ御承知願いたいと思うのであります。そんなに予算が来なければ、いろいろ災害対策に対してやつてつても困るじやないか、こういうような状態を来しておるという事実があるのでございまして、もしもそのくらいでいいのじやなかろうかとしてそういう言葉を発せられたとしたならば、私は災害に対する認識が非常に足りないのではないかと思うのであります。それはもちろん国家といたしましては財源等関係もあるかもしれませんが、災害の実情に即して、しかも災害に対しては復日するということが主体でございますので、復旧に必要なる予算を組む、そうしてこれによつて復旧をやらせる、これが私は災害に対する予算編成の方針じやなかろうかと思う。ただわくをつくつて、従来の予算編成のようなわく内で予算の配分をやるというような、そういうような予算の編成方針と、災害復旧に対する予算編成の方針とは非常に違わなくちやいけない。ここに私は、予算編成上における根本的の考え方が違うのではないか、かように考えるわけであります。それで今日各地方から情勢報告等もあつたと思いますので、その情勢報告に応じまして、復旧に必要であるならそういう限界を置かないで、あるいは一兆億を十分越しましても、ほんとうに復旧できるような予算編成をやる、こういう熱意がありますならば、その熱意のあるところを国民の前に明らかにしていただきたいということをお願いする次第であります。
  95. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さつきも申しました通り、補正予算で見る分と、それから二十九年度予算あるいは三十年度予算等で見るべきものとございます。従いまして私どもは、当時の状況では、二十八年度の補正予算はそれくらいでいいじやないかというふうに見ておつたことは、率直に私は申し上げておきます。その後の状況で、それではいかぬということがよくわかつて参りましたので、それで今非常に財源等に苦慮いたしておる次第でございます。私はさつき申した通り、わくをつくつたから目分のつくつたわくの中で自分が苦しむということはしたくないと思います。しかしながらやはり国の対外信用とかいろいろなものから見まして、また日本の国の財政経済を健全に持つて行くという点から見まして、わくはございません。わくはございませんが、できるだけ健全なる予算を組みたい、かような精神においては何らかわりはないのでありまして、この点から一兆という言葉が出るのでございます。しかし、さつきも申した通り、これはこの上ちよつとでも出てはいかぬぞ、そこはひつ込めろというきゆうくつな考えを持つていないということは、私が繰返し申し述べた通りでございます。
  96. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから、予算編成に対しまして、ただいま大蔵大臣は一兆を越しても災害対策をやるとおつしやるので、その点はわかるのでございますが、ただ十分なる予算編成をやるとインフレを助長するから、なるたけこれを切り詰めたいというような御意向もあるように新聞等で承るのでございますが、私は今日の災害地を復興しなくてこれを放任しておくということになりますと、これまたインフレどころかジリ貧になつて来ると思うのであります。これは一つの国家としての投資という立場におきましても、一日も早く復興いたしまして、次の国家的生産に移すことが国策上必要だ、かように考えるのでございまして、ただインフレ助長である予算を出さないようにすることがいいんだというようなことよりも、一日も早く復興するんだというこの観点から、ひとつ予算の編成に対しては当つていただきたい。この点を特に大蔵大臣にお願いをしたい、かように考えておるわけでございますが、これに対する大蔵大臣の御意向を承りたいと思うのであります。
  97. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その点は私も仰せ通り考えております。但し、それがために、各種の形において来年二十九年度予算についても節減あるいは繰延べ等をさせたいと思つて、そういう対策に万全を期したいと思つておりますが、しかしある程度、たとえばどうしてもいわゆる赤字公債を出さなければやつて行けないということになりますと、それがインフレになつて来ますことは、これは御承知通りであります。従いまして、私どもはこの点についての対策に今苦慮しておる次第で、私は何としても災害は復興しなければならぬことは当然だと思います。またそれは全力を尽してやるべきである。そのときにまた、そこにほかの方の予算でこれに振り向けるべきものがあるのじやないか、つまり一方でこういうことをやらなければならぬときには、他方でこれを忍んでもらわなければならぬものがあるのじやないか、こういう考え方から申しておるのでありまして、この点は十分御了承願いたいと存じおります。
  98. 稲富稜人

    ○稲富委員 災害に対しましては、国民も忍ばなければならないでございましようが、政府といたしましても忍んで、十分復興に対する予算を組んでいただきたいということを、重ねてお願い申し上げたいと思うのであります。  さらにまた、先刻大蔵大臣の御答弁によりますと、政令等の問題についても予算とともにこれを検討したい、政府としては院議は尊重するのだ、しかし政令の問題に対しては予算等とにらみ合せて考えたい、こういうような御意向のように承つたのでございますが、実はこの政令が決定しないということによつて、これまた非常に復興が遅れておると思うのであります。実はそのことにつきまして、この前の委員会におきましても政令の基準を決定いたしまして、これに対しまして緒方副総理は、九月十一日にはつきり、この政令の基準はあれでよいのじやないかと思いますと御答弁なすつたのであります。おそらくこれは緒方さん個人の答弁ではなくして、国務大臣としての答弁だ、かように私たちは承知いたしております。すでに私たちの政令に対する基準は示しておりますし、法律はできておるのでありますから、これに対して当然予算処置をやらなければならぬ段階に政府は来ておると思うのであります。しかも、ここに至つて、まだ政令がはつきりしないんだ、それだから予算はできないんだ、さらにまた第十三号台風が来たから予算の編成ができないんだ、こういうようなことで、すでに三箇月もお延ばしになつているということは、あまりにも政府が無責任ではないか、私はこういう考えを持つておるのであります。ただ自分の、無責任をほかに転嫁するような言葉は罹災者といたしましては承服できない言葉であると思うのであります。政令等もできまして大体の予算の大綱も承れると思つて、非常なる期待を持つて私たちきようの委員会に臨んだのでありますが、依然として、きようの委員会では、何とか急にやるんだ、そういうような御答弁をされるにおいては、われわれは実に遺憾に存ずるのであります。これに対してどういうようなお考えを持つておられるか。大蔵大臣は、政令がきまらないからまだきめられないんだというようなことをまた繰返されるのか、その責任をお聞きしたいと思うのであります。
  99. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 先ほども申し上げましたように、ちようどこの間御決議になつた立法によりますと、全体にわたりますと今の千四百八十八億にさらに三百十億を加えるということになるのであります。たとえば、俗に言われるように、それをもう少ししぼつて二分の一の地域その他にしたらどうかというようなことを言われますと、それはさつき申し上げた通り百五十五億ということになるのでありまして、これらの点についてもなお千六百四十三億という金を要することになるのであります。そこで、どの程度までこれが行けるかということについて、二十九年度の予算の編成で、今せつかく努力しておる次第でございます。大体私どもは皆さんの心持はよくわかります。また私ども災害地の一人としてよくわかりますが、しかし、やはり予算の全体をつかみませんとはつきりとした御返事ができかねますので、さつきからいま少しくお待ちを願いたい、こういうふうに申しておるのであります。
  100. 稲富稜人

    ○稲富委員 政府は、先刻から二十九年度予算だ、恒久対策だ、かような言葉をしばしばお繰返しになつておりますが、今日罹災者として考えておりますことは、二十九年度予算よりも、今日の災害予算をどうしてもらうかということをみんな希望していると思うのであります。さらにまた今日の災害に対する緊急対策さえもやらぬで、恒久対策をやるんだということはあつかましいことだと思うのであります。私どもは、恒久対策も必要でありますが、今日災害をこうむつて耕す田なく住まう家がないというような、こういう悲惨な状態にある罹災者に対して、何とか緊急なる処置をやることが最も急務であると思います。この緊急処置というものは、政府をして言わしめますれば、つなぎ融資で行くのだと言われますが、それだけのつなぎ融資では災害の復旧に役立たないという状態でありまして、早く予算措置をつけてもらいたい、こういうことを希望しているときに、予算措置は何とかつけると言つても、二十九年度予算では何とか考えなければならぬ、恒久対策をやつておるのだ、こういうようなことをさきに言われて、そうして今日の罹災者に対してがまんをしろということでは、罹災者はがまんができないのであります。二十九年度予算はもちろん必要でありますが、今日の災害予算というもりをどうするか、今日の災害予算に対してどういう計画をしておられるか、この具体的の問題を承りたい、かように考えるわけであります。これに対する緊急対策としての大蔵大臣の方針を承りたいと思うのであります。
  101. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは災害対策本部等で十分お練りくださることと思つておりますので、それについて御相談いたします。私どもとしては入り用な金は出したいと思つております。しかしながら、それが予算化するということになりますと、今申し上げた通り二十九年度のことを考えなければならない。二十九年度予算と言つても、これは法律でもきめられておりますから、そう長くお待ちを願いたいという意味しはございません。補正予算については特に今言われておるのでありますかり、いましばらくお待ち願いたい、こう申し上げておる次第でございます。
  102. 稲富稜人

    ○稲富委員 緊急対策その他に対しては対策本部と打合せるということでありますので、対策本部長として、緒方副総理はこの緊急災害に対する予算対策をいかにお考えになつておるか、承りたいと思います。
  103. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私といたしましては、先ほど申し上げましたように、今度の二十四の立法また政令の基準についての考え方について何も申しませんということは、たびたび申し上げたのであります。結局するところ予算がどうなるかということにおちついて、はたしてインフレのおそれなしに補正予算あるいは二十九年度の予算が編成できるかできないかというところまで行つた際に、あらためてまた御相談をしなければならぬ場合があるかもしれないということは、本院におきましても参議院におきましても繰返して述べて参つたのであります。ただ、その間のんべんだらりとしておつたのでは災害対策がつかないじやないかということは当然のことでありまして、災害対策本部といたしましても、その点については非常に焦慮いたしまして、つなぎ融資といいましても財源におのずから限りがありますが、いろいろ大蔵省の意向を打診いたしましても、その道は相当にあると考えられますので、急を要するものにつきましては、つなぎ融資を今後ともできるだけ御要求に応じて出して参りたい、そして臨時国会、予算編成の見通しがつくと同時に、政令をもつてきめるということ以外に、ただいまの対策としてはないのじやないかと思います。そこで、対策本部といたしましては、つなぎ融資を、中間に入りまして大藏省に要求する、その仕事を今のところしておるのであります。
  104. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうすると、お尋ねしますが、災害対策本部といたしましては、つなぎ融資を大蔵省に御相談になつておるだけであつて災害に対する予算に対しては、まだ御相談になつておらないのでありますか。
  105. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 それは、今申し上げました二十四の議員立法及びそれに関する政令考え方、それについて大蔵省と種々折衝いたしておりまして、結局それが予算の見通しの問題にぶつかるものでありますから、それはむろん災害対策本部としてやつております。ただ、現実として金の問題をどう扱つておるかということになりはしないかと思いますので、つなぎ融資の問題を処置しておるということを申し上げておるわけであります。
  106. 稲富稜人

    ○稲富委員 大蔵大臣災害対策本部の方でやつておるのだと言い、災害対策本部長大蔵省の方に折衝中だということで、われわれはどちらの方に話をしてよいかわからないようなことになるのでございますが、それでは実に心もとないのでありまして、しかもまた先刻から御答弁を承つておりますと、二十九年度の予算との関連があるようなことを言つていらつしやるのでありますが、私たちは、実はこの災害のための臨時国会を開いてもらいたいということは、しばしば決議をしておるのであります。しかも九月下旬に臨時国会を開いてもらいたいということを決議しておりますが、これも今日まで開かれておりません。私たちは、少くとも臨時国会を開いて、災害対策は早くけりをつけたい、そうすることが災害地に忠実なゆえんだ、かように考えておる。ところが、臨時国会を今まで開かれないということを、われわれは非常に遺憾に思つておるのであります。しかも、今の話を聞きますと、二十九年度の予算編成と今度の臨時国会を一緒に持つて行くような——まさかそういうような考えはないだろうとは思うのでございますけれども、そうさえ疑われるような御答弁でございますので、大体臨時国会はいつお開きになるつもりでございますか。その点をひとつはつきり承りたいと思います。
  107. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 臨時国会はすでに国会の成規による御要求が出ておりますので、これを開かないというようなことは全然考えておりません。その開く期日は、先般来も申し上げておりまするように、十月の末より早くは開くことができないと思つております。どうも十一月に入るのじやないかと考えておりますが、はつきりした期日はまだ申し上げるまでの段階に至つておりません。なお通常国会と一緒にするというようなことは決していたしません。
  108. 稲富稜人

    ○稲富委員 もちろん成規の要求によつて臨時国会を開けという要望になつておると思うのでありますが、われわれ水害委員会が臨時国会を開けと要求しましたゆえんのものは、この水害地の問題を緊急に片づけるためにこういうことを要望しておるのであります。しかも、災害がありましてから今日三箇月経過している。私たちが九月の終りに開いてもらいたいということを言つてつたのに、これが十一月になりますると、災害が発生しましてからもうずいぶんの日にちがかかることになつて来る。こういうようなことで災害地の罹災者が耐え忍べるか。ことに、もうすぐに冬の季に入ります。これは専門的に政府は御承知だと思いますが、たとえば復旧工事をやるにいたしましても、十一月に臨時国会を開いて予算処置をして仕事をやるというと、冬の、ほとんど仕事の能率が上らないときに復旧工事をやらなければならないということになりまして、非常にこれは愚策であると言わなければなりません。こういうような怠慢の結果になつて来ると思うのであります。それで、臨時国会を早く開いてもらいたいということをしばしば言つているにかかわらず、今日までまだ開かれない。しかも、十一月に開こうと思つている、こういうことを聞きますときに、私たちは、ほんとう災害に対してどれほど政府の熱意があるのか、こういうことさえ疑いたくなつて来るのであります。臨時国会を早く開くと同時に、この災害地に対する予算処置をやつてもらいたい、この点をひとつお願いしたい。  さらにまた、先刻災害対策本部からこの予算処置に対しても要求されておるようであります。私は、この機会に大蔵大臣に特に申し上げたいと思いますることは、大蔵大臣災害に対して非常に御認識があるように先刻から承つておるのでありますが、往々にいたしますると、あなたの部下の大蔵省のお役人さんには、なかなか災害に対する認識の足らないお方が非常におありになるのでありまして、はなはだしいのはこういう話を聞く。ある大蔵省の役人のごときは、災害の復旧に一反二十万円かかる、二十万円の復旧費をかけないでも、耕地が一反十万円の価格なら十万円罹災者にやつたらいいではないか、その方が罹災者は喜ぶだろう、こういうような実に農村の実情、農民の実情を知らざる考え方を持つた人がたくさんおるのであります。そういうふうな考え方でどうして災害予算が組まれるかということを、われわれは考えなければいけないと思う。少くとも災害に対する根本観念が違うということは、私が今日大蔵大臣に対してあなたが災害に対してどういう御認識を持つておるか聞きましたゆえんのものは、すなわちあなたの部下にそういう人がたくさんおる。先刻から聞いておりまして、あちらに行け、こちらに行けという御答弁をなさることは、あなたが大蔵官僚の意見に動かされてはつきりした答弁をなされないのではなかろうか、こういう考えさえ私は持つのでありまして、大蔵大臣はおそらくそれほど災害に対して不認識ではないと思いますが、あなたの部下にはそういう人が多いのであります。そういう人たちによつて災害予算を編成してもらうということは、非常に危険があるのでありまして、これに対しては、大蔵大臣の御認識をもつて予算編成に対して目を通していただかなければ、とんだ予算ができるのではなかろうかと思います。そういうような、あなたの部下に対しては、十分あなたが災害に対する御認識を与えて、予算編成に対しては十分熱意を持つてつてもらいたいと思いますが、これに対する大蔵大臣の決意を承りたいと思います。
  109. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 仰せの点は私まことによくわかります。私どもも熱意を持つてぜひそういうふうにやりたいと考えております。ただ、はつきり申し上げますが、あつちに行け、こつちに行けと言うことは、逃げるような心を持つておるからではないのであります。予算というものは、災害対策予算でもこれは補正予算に盛るけれども、二十九年度の予算でこれだけやるという一つの計画が立たなければなりませんので、それに対する事柄を私は申しておるのでありまして、もし切り離して補正予算だけできるものだつたら、そこでやれるのでありますが、そうではないのであります。今申し上げた通り現行法によつても千五百億というものがいる。それを持つて来るにはどうするか。また皆さんの御意思によつて相当これはふえることになつておりますので、それをどう持つて行くか、それにはことしの補正予算はこれだけ持つて行こう、来年はこう持つて行こう。それはやはりほかの予算との兼ね合いがありますから、それには相当節減してもらわなければならぬ分一があります。私は逃げるのではない。そうしてもらわなければ、赤字を出してやらなければならぬことになるが、それではインフレになりますので、そういうことは絶対にできません。逃げるようにお聞きになつたかしれませんが、二十九年度予算全体についてのことを考えないとやれないと申しておる点は、予算編成者として御了察願いたいと思います。
  110. 稲富稜人

    ○稲富委員 最後に一つ希望を申し上げます。すでに大蔵大臣、本部長も御承知通り、今日まで水害委員会は、災害地の窮状を見るに忍びず、これに対してはほんとうに各党協力して災害対策を協議して参つたと思います。先刻与党代表の綱島委員の質問の中にもありましたごとく、これに対しては政府は抜本的な予算処置をやつてもらいたいというのが、災害地の罹災者の気持を気持としてやつておる水害対策委員会といたしましての全体の希望だと思います。こういう熱意のありまするわれわれの希望に対しまして、大蔵大臣も、政府においても、遠慮なく抜本的な予算を組んでもらいたい。もちろんそれは国家の大計を誤るようなことをやつてはいけないと思います。予算で国家の大計を誤るようなことをやつてはいけないのでありまして、国家百年の大計を立てる上におきましても、災害地を一日も早く復旧する、そうして罹災者が安心してその業につくことができるようにすることが、災害対策の最も緊急なことと思うのであります。かような意味で、政府予算処置に対しては大胆に予算を組んでいただきますように、くれぐれもお願い申し上げたい。かように考えておるわけであります。
  111. 村上勇

    村上委員長 この際中野四郎君より発言を求められておりますので、これを許します。中野四郎君。
  112. 中野四郎

    中野委員 この際緊急動議を提出いたします。  十三号台風による災害の調査及びその対策樹立については、来る臨時国会において院議により本特別委員会に付託せられることと存じまするが、それまでの間、現に付託されておる六月、七月水害に関連して、災害地の実情をすみやかに調査の上、各災害地ともとりあえず特別法に入れるように処置せられんことを望みます。  右動議を提出いたします。
  113. 村上勇

    村上委員長 ただいまの中野君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 村上勇

    村上委員長 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。(拍手)  佐藤虎次郎君。
  115. 佐藤虎次郎

    ○佐藤(虎)委員 ただいま十三号台風によりますところの特別立法に包含するかしないかという問題は、院議によつて、この災害緊急特別委員会に付託されるのでありますが、今日私どもがこの陳情団の諸君の実情をながめ、同時に十三号台風が発生いたしましたとき、私は和歌山県におりまして、和歌山からあの台風に追われつつ大阪に流れ込みました。翻つて六月二十五、六、七と西日本を襲いましたところのあの台風に対しまして、私ども衆議院は、十五名お見舞と実情調査に派遣されました。そのときに、私もその一人となつて、この実情調査に参つたのでありますが、西日本を襲いましたところのあの大災害と、このたびの十三号台風とどれだけの懸隔があるかということに対しましてして私はこの台風に追われつつ、和歌山から大阪に逃げ込み、京都、滋賀、愛知、静岡に帰つて参りまして、その実情をつぶさに私はまのあたり体験をいたして参つたのであります。これを特別立法に包含するということは当然でなければならぬ。ゆえに、ただいまの中野君の動議に対しまして満腔の賛意を表するとともに、この水害緊急対策特別委員会は、政党政派を超越いたしまして、災害地の救済に一命をささげつつ今日に参つております。ゆえに、各政党はすべての障害も打破して、これがこの特別立法に包含され得られますように、来るべき臨時国会において議決をされんことを、私は強く各委員諸君、各党に要求するものであります。同時に、ただいま稻富同僚議員よりの御質問に対しまして、大蔵大臣は、非常緊急災害対策に対しまする予算編成に対して、その予算編成はしばらくの間時間を待て、かような御答弁でありました。予算措置にお困りのことはよくわかります。しからば、この予算処置に行き詰まつておるものでありといたしますならば、強く声を大にして私は要求いたしたい。この災害というものには、政党政派を超越いたして、この救助対策、復興対策に乗り出しておるのであります。この災害対策に対しまする財源にお困りでありといたしますならば、自由党はもちろん、改進党、社会党左右両派、われらの鳩山自由党あるいは小会派に至りまするこの党を代表する諸君、これらに政府当局はひざを交えて、くつろいだ気持で胸襟を開いて、この予算処置に対しまする財源を求めることを相談するような熱意を私は要求してみたい、かように思うのであります。そこで、ただいま非常災害対策に対しまする予算処置ができるまで、しばらくの間つなぎ融資でまず地方財政をまかなつていただきたいというお話でありますが、はたして今日このつなぎ融資で満足いたしておるかどうかということに対しまして、大蔵大臣がつなぎ資金を出した建前上、その件はこれで承認しておられるかどうか、それを一応承りたいと思います。
  116. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと今の御質問の意味……が。これを承認しておるかどうかということでしようか。
  117. 佐藤虎次郎

    ○佐藤(虎)委員 いや、満足しておられるかどうか。
  118. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 決して満足いたしておりません。
  119. 佐藤虎次郎

    ○佐藤(虎)委員 満足いたしておらないといたしますならば、政治は国民に対しまして満足感を与え、不安と不満を取除くことがすなわち生きた政治だと私は心得ております。しからば、満足行かないまでも、腹八分という昔のことわざがありますが、腹八分まで、熱意を込めてその処置をとることが妥当ではありますまいか、かように考えております。時間がありませんから、私は長い問答はいたしません。綱島議員あるいは滝井議員、稻富議員から、るるこの予算措置に対しましては質問がありましたから、省略いたします。そこで私は、建設大臣に一応伺つておきたいのでありますが、このたびのこの災害といもうのは、どこに発生の源があつたか。なるほど雨が降つて風が吹いたんだと申されればそれまででありますが、私の専門的知識からこれを調査いたしますのに、重要河川、中小河川、これに重点を置いておるとはいうものの、今日の河川法というものは、御承知のごとく各所管省のなわ張り争いであります。このなわ張り争いであるがために、この河川法というものが完備しておりません。そのために工事の施工が遅れ、予算処置に行き詰りまして、今日河川が氾濫するというような結果に相なつたことを、このたび私どもまのあたり見て参つたのであります。ゆえに、来るべき臨時国会あるいは通常国会におきまして、建設大臣は河川法の改正をやるか、やらないか。もしやるといたしまするならば、緒方副総理は総理を補佐し、閣僚を統一し、各所管省を統一して、これに対しまする不平不満なからしめるようにいたしまして、河川法の改正に協力するかしないか、これだけをひとつ両大臣から承つておきたいと思います。
  120. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 河川法の改正のことについて御意見を承つたのでありますか、河川法は明治時代のものであつて、やや実情に沿わざる点があるようであります。改正をすべしというのでだんだん研究をさしておつたことも私は承知いたしております。しかし、ただいまお話がありましたように、別に各省のセクシヨンでどうというようなことでなくて、話の仕方が足りなかつたのじやないか、私はかように思つております。ことに今度は、この水害を目がけまして、日本の川の管理ということがもう少し徹底的になされなければならない。今重要河川と中小河川とおつしやいましたが、その中にも属せざる川が日本にはまだ三千余りもあると思います。このようなものは、河川法で重要河川とすれば政府が管理する、さもなければ投げやりというような法律なのであります。法律が悪いのじやない。使い方が悪いと言えばそれまででありますが、従つて、そういう河川についてとかくいろいろな問題が起ることもある。それからまた、セクシヨンというお話でありましたが、これは河口ないしは上流で、だんだん国の仕事が複雑になつて行くに従つて、かち合うところが出て来ておるというようなことだと思います。川というものは一貫した管理のもとに置くということが最も大切ではないかというので、ぜひともこれははつきりしたものにいたしたいというので、私も研究中であります。川についてみましてもまだ遺憾の点がございますので、もう少し再検討をただいまさしておるのであります。なるべくは臨時国会ないしは通常国会までに、河川法の改正案をまとめ上げたいというふうに考えております。
  121. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 河川法につきましては、ただいま建設大臣から申し上げましたように、話の仕方が足りなかつたのだというのが私は真相ではないかと考えます。でありまするが、何か意見の調整をする必要が生じました場合には、及ばずながら尽力いたします。
  122. 佐藤虎次郎

    ○佐藤(虎)委員 最後に、時間がありませんから、大蔵大臣にひとつ腹をすえて聞いてもらつておかなければならぬ。とかく物事は、初め大きい声をすると、びつくりして、しまいに行くと、いくら大きい声をしてもだんだん驚かなくなる、こういうことをよく私は聞いております。このたびの西日本を襲いました六月、七月の台風のみぎりには、つなぎ資金も、私どもは満足とは行きませんが、早くやつていただいて、なかなか熱意を込めてやられた。ところが、八月の近畿を襲つた台風と、このたびの十三号台風に対しまするつなぎ資金は、前から見まするならば、すずめの涙にひとしいものだ。まだまだこればかりのはした金では満足が行くどころの騒ぎじやなく、承服ができ得ない。承服のでき得ないところは、思想的に悪影響を及ぼします。ゆえに、今後まだまだお願いというか、要求というか、いずれにいたしましても、各府県が参られます。そこで、特に必要であるということを感ずることは、もはや麦の作付の時期に相なつておりまするが、この肥料代すらもない。肥料代がないのはどういうわけかというと、農業協同組合に融資の金がありません。これに対しまする融資便法も、今日全国農業会を代表して陳情の言葉がありましたごとく、この水害対策特別委員会からもいずれはお願いが行くと同時に、各府県からもお願いに上ることは必然の事実であります。これに対しまして、気持よく大きい腹をもつて農村、中小工業救済のためにりつぱな日本一の大蔵大臣たる襟度を示して、大いにやつていただきたい。吉田さんは、三時間でも半日でも大臣が気に入らなければとりかえてしまえと十六国会では申しましたが、われわれ四百六十六人は、あなたがこの水害対策に御努力くださつているならば、私どもは必ず手をついて吉田さんに留任を頼みます。どうかあなたま必ずこの災害者の気持を体して——あなた自体も災害者の一員であろう。同時にその選挙区であろう。あなたも落選するのはいやであろう。あえて愛知県だけとは申しません。静岡県だけとは私は申しません、この災害を受けました県民の心理状態をよく御推察賜わりまして、どうか罹災者が安心してこの業にいそしめますように、御努力と御同情をお願いしますとともに、建設大臣に対しましては、来る臨時国会あるいは通常国会におきまして、河川法の改正をすみやかに提出されて、われわれ建設委員会の前に提示され、われわれもこの実現に寄与して行きたいということをお誓いいたしますから、どうか建設大臣は河川法の改正を断固として出し、同時にこの災害を未然に防ぐという御努力のほどをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  123. 村上勇

    村上委員長 井手以誠君。
  124. 井手以誠

    ○井手委員 時間もおそうございますので、簡単に小笠原大蔵大臣に主としてお尋ねいたしたい。第一に、先刻大蔵大臣は、政令を完全に運用すれば幾らかかる、二分の一で幾らかかる、三分の一では幾らかかると申しましたが、その通りでございますか、ちよつと念のために……。
  125. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は政令でなくて現行法でやるとこのようになる、それからかりにこの間議会で御決議になつた分を全部やるとこうなる、その二分の一にしぼるとこういうふうになる、四分の一にしぼるとこういうふうになる、こういうふうに御答弁申し上げたのであります。
  126. 井手以誠

    ○井手委員 はなはだ意外な御答弁でございます。法律が出て、それを運用するために具体的なものを政令できめりれる。従つて立法精神から申しますれば、政令一つでなくてはならぬ、絶対的のものでなければならぬ、かように考える。しかるに、ただいまは二分の一にしぼれば幾らになる、三分の一にしぼれば幾らになる、そういうことが言えるかどうか、ひとつ原則的にお尋ねしておきます。
  127. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 あれは、御承知のごとく政令でもつて地域をきめることになつておりまするので、これを全地域に及ぼすとこういうふうになる、指定地域がもし二分の一であればこういうふうになる、四分の一であればこういうふうになるということでございます。
  128. 井手以誠

    ○井手委員 それではちよつとその中間にお尋ねいたしますが、大蔵大臣は、臨時大蔵大臣でありました緒方副総理から、あるいはあなたの下におる主計局長その他から、今日までのこの会員会におきまする審議の概要並びに結果をお聞きになりましたかどうか、その点をお尋ねいたします。
  129. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 あるいは十分にと申すわけには参らないかもしれませんか、一応承つております。
  130. 井手以誠

    ○井手委員 先刻稲富委員からもお尋ねがございましたが、政令の基準については委員会と相談の上にきめたい、早くきめたいと考えておつたけれども委員会が開かれなかつたので今日まで待つておりました、委員会がきめられた政令の基準はこれを実行いたしますということを、臨時大蔵大臣また副総理である緒方さんは、はつきりとここ言明なさつたのでございます。そのものを二分の一にしぼるとか、三分の一にしぼるとかいうことは、私は相対に言えないことだと思う。どうしてそこに大事な橋をかけるのに半分でよろしいということが言えるのか。はつきりきまつたことを今になつて二分の一にするとか三分の一にするという考えは、私はどうしもわからない。政令は一本でなくちやならぬと思う。どういうことでそういうお考えが出るのか。政府が約束なさつた、また当委員会が決定した基準について、何か文句でもございますのか、ひとつその点をお尋ねいたしたい。
  131. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 何かちよつと誤解かあるのじやないかと思いますが、あれは全地域に及ぼせばということでありまして、この政令の標準いかんによつては、あるいは全地域に及ぼせばそれはこういう数字が出ます、かりに及ぼす地域が二分の一であればこういうふうになります、こういうことを申し上げたわけで、まだ政令自体ができていないことは、さつき申した通りであります。     〔「できている」と呼ぶ者あり〕
  132. 井手以誠

    ○井手委員 基準については、すでに政府と当委員会と約束済みでございます。今になつて全部に適用するとかしないとかいうことは、もう時期がおそい。八項目か九項目にわたる適用地域については、ここではつきりと緒方副総理と約束済みでございます。それを半分適用するとか、三合の一適用するということは言えないことなんです。そういう基準をきめて——その立法の精神に従つたものがそういう基準でございます。その絶対的のものであるはの基準について、半分にするとか、三分の一にするというのは、けしからぬ。お取消しを願いたい。
  133. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今の点についてはそういうふうに緒方副総理が御返事を申し上げたそうでございますが、但しなお、この事柄等については、あらためて当委員会と御相談申し上げるということになつておるそうでございます。ただ、私が事務からもらつた数字はそうなつておりましたので、そのままを申し上げた次第で、この点私の聞取り不十分な点でありまして、この点はまことに申訳ありません。
  134. 井手以誠

    ○井手委員 御相談とかなんとか、私はまだそういう話はまつたく承つておりません。いやしくも全国民注視の中に開いた当委員会においてきめた事柄をまたあの水害を復旧するのに財源かない云々で、半分にしようとか、三分の一にしようとかいうことは、絶対にできないことです。私はこの政令を今からお尋ねいたしますが、いつ出されるか、その点を私はお尋ねしたいと思いますけれども、この点御確認願いたいのは、大蔵大臣もあの基準を承認なさることは間違いないとは存じますけれども、念のためにお伺いいたしておきます。
  135. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 予算の実行上についてはまだ検討を要する点があるというふうに御答弁申し上げたと言つております。
  136. 井手以誠

    ○井手委員 財源とか、あるいは予算とかいうことについては、それは本年度何割やるということについての問題であります。立法精神を生かして適用地域をきめるということは絶対的なものである。それを混同しないようにしてもらいたい。そういう意味で御答弁をしていただきたい。
  137. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 小笠原国務大臣がアメリカから帰つて来られました後に、留守中にこの委員会におきまして私が申し上げたことを十分に引継いでありませんので、多少食い違いを生じておるようでありますが、私が申しましたのは大体今おつしやつた通りであります。ただ、懇談会の席その他で私が繰返し申し上げたと思いますことは、あの基準は議員立法に基いておるというので尊重いたしますが。補正予算を組む場合に、その結果が補正予算全体としてインフレになるおそれがある等の場合において、さらにもどつて御相談しなければならぬ場合があるかもしれないということは、私は繰返し申し上げた通りであります。今大蔵大臣にそのことをお伝えしたのでありますけれども、よく意が伝わらないで、食い違いを生じたような感じがいたします。以上まとめて申し上げます。
  138. 井手以誠

    ○井手委員 緒方副総理が、基準には従いますその通りやります、しかし本年度何割やるかについては、予算についてはなお研究を要するということは、それは私も承つております。  そこで私は、その基準を約束通り実行するという言明をぜひ大蔵大臣からお願いしたいと思うのであります。ひとつこの場でその点のはつきりした御答弁をお願いいたします。
  139. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私が十分引継ぎを受けておりませんでしたが、今の副総理の御答弁のごとくであれば、その通りでございます。しかしながら、予算化の問題は、今の割合等の問題につきましては、これはあらためて御相談を願いたいと存じております。
  140. 井手以誠

    ○井手委員 ただいま小笠原大蔵大臣から、当委員会がきめて政府に申し入れました適用地域に関する基準は、これを確認するという言質を得たのでございます。私ははつきりこれを確認いたします。  そこで、その適用地域に関する政令、それはいつお出しになる御予定であるか。今までの約束によりますと、九月の十日に適用地域の基準をきめ、十二日にその他の適用範囲に関する基準を当委員会が決定して、政府に申し入れたのでございますが、その際、急を要しますので、九月二十一日に当委員会を再開いたしますから、その際にぜひ政令案を提出してもらいたいということを申し入れ、また政府もこれに承諾を与えておつたのであります。ところが約束の二十一日にまだ政令ができていないということで、その後懇談に移り、立法精神を無視するような大蔵官僚の答弁から非常に紛糾いたしたのでございますが、その政令はもうすでにでき上つておると思うのであります。その後の約束によりますと、二十六日に出すということでございました。ここの約束は、私はそう軽々にバナナのたたき売りみたいにやるべきものでないと考えております。どういうふうに政府はこの政令についてお考えになつておるか、いつ出されるお考えであるか、その点をお尋ねしたいと思います。私はこれ以上待つことはできないことを特につけ加えて、お尋ねを申し上げる次第でございます。
  141. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 政令は今各省及び大蔵省で打合せております。関係省で打合せております。これは政令予算とは、考えますると不可分の関係にもありますので、その点でまだ若干の日を要すると考えております。
  142. 井手以誠

    ○井手委員 どうもまたおかしな言葉でございます。予算の方、財源の方は、本年度何割やるかということで関係が出て来ると思う。政令というものは、立法精神に基いて具体的に認めるのが政令であります。財源がどうだとか予算がどうだとかということではないと私は考えます。その政令が出ないために、地方ではその後、はたして国庫補助が得られるかどうか、まつたく災害復旧の見通しが立たずに困つておる。どこの府県でも府県会を開いておるけれども、どうもすることができずに困つておる。おそらくこの実情は当局は御存じであろうと考えております。その予算とは直接の関係がない——あとでは関係が出て来るでありましようが、政令立法精神に基いて出すのです。今になつてそうおつしやるのは、どうも当を得ないと思う。私はいろいろ途中のことは申しません。われわれが決定した基準に基いて、いつ政令を私どもにお示しになりますか。それをはつきりしていただきたい。私はできれば本日見せていただきたい。
  143. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私も実は政令案を見ておりません。従いまして、どういうふうに進行しておるか、実情につきまして政府委員より答弁いたさせます。
  144. 森永貞一郎

    ○森永説明員 ただいま大臣から、政令の内容と予算関係が非常に密接不可分の関係にあることを申し上げたのでございますが、先ほどから大臣からも申し上げました通り、あの政令の基準案で地区を指定することになりますと、ほとんど全地域が指定されるということになるのでございます。その結果、財政負担が増加する金額が三百十億にも達するわけでございまして、補正予算につきましては、非常に財源難でございまして、いかにしてこの災害予算に応ずるかということを日夜苦慮しておるわけでありますが、その場合に、三百十億を総花的にふやすか、あるいは災害のひどいところに高率適用をするか、そういう問題が、やはりもり一度反省される機会を私どもとしては持ちたいと思つて大臣にもお願い申し上げておるわけであります。それを高率補助を全域に適用するということになりますと、初年度の復旧率が総体的に非常に程度が薄くなるわけであります。そこを重点主義で災害のひどいところだけに高率補助が行くようにといたしますと、総花で考えましたときより幾らかでも初年度は多くなる。その兼ね合いがあるわけでありまして、私どもといたしましては、災害につきまして非常に冷淡であるわけではありません。やはり深刻に考えておりますが、災害のひどいところ、ひどくないところを区別して、できるだけ全体として初年度によけい行きますように、そういう観点から、もう一度政令の内容につきましてもお考え直しをいただく機会を与えていただきたい、そういう意味で緒方臨時大蔵大臣にもお願い申し上げましたし、また小笠原大蔵大臣にもお願い申し上げておるわけとございまして、先ほど緒方国務大臣からお話がありましたのも、さような趣旨だと了承いたしております。さような次第でございまして、関係各省目下いろいろ打合せておりますが、関係各省といたしましても、たとえば、これが財源がないために、三年にもなり、四年にもなり、五年にもなるということでは困るという意見も実はあるわけでございまして、やはり重点的に考えて行つた方がいいのじやないかという御意向もございまして、まだ政令の内容が発表できる時期に至つておりませんことは、はなはだ遺憾であります。
  145. 井手以誠

    ○井手委員 ただいまの御答弁で、私はいろいろ根本的に申し上げたいと思いますが、その前にちよつと言葉についてお尋ねいたしますが、反省してもらいたいというお言葉がありましたが、私どもがどんな悪いことをしたか、その点をひとつお聞きいたしたいと思います。私どもは、超党派で、全会一致でこういう特別立法をしなくては災害は復旧できないし、またそれに基いてこういう基準の政令を出してもらわなくては災害復旧ができないという意味で、全会一致できめたものであります。私どもは、正しい考えのもとに、正しい順序を踏んで、正しく決定したと信じております。しかるに、ただいまは反省しろというお言葉、この立法府に対して反省しろという言葉、しかもあなたは大臣でなくて主計局長だと私は存じます。この間までは官房長だと考えておりますが、その官房長だつた主計局長が、委員会に対して反省しろとは何事であるかと私は言いたい。私は、これについて、そういう役人を持つておられる吉田内閣の副総理と、直接の上長である大蔵大臣と、当人の三人のお考えを承りたいと存じます。その上で私は、今の御答弁に対する質問を続行いたしたいと考えております。
  146. 森永貞一郎

    ○森永説明員 私の言葉が非常に不十分でございまして非常に御迷惑をか一けたといたしますれば、これは不徳のいたすところでございますので取消します。私は、もう一度われわれが考え直す機会を与えていただきたい、さような意味で申し上げたのでございまして、もし私、その点非常に皆さんに御迷惑をおかけいたしておるといたしますれば、それは衷心よりおわびいたします。
  147. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私が聞いたのは、自分の方が反省云々というふうに聞いたので、あなたの方の方でなく、みずからという意味に聞いたのであります。(「速記ができておる」と呼び、その他発言する者多し)もしそうでなければ、これはあやまちであります。私は、広くそういうふうに、考え直してというふうに取つたのであります。     〔発言する者多し〕
  148. 井手以誠

    ○井手委員 私は、ただいまの御答弁の言葉だけならば、そう深く追究しようとは考えておりませんが、今日まで十何回にわたる委員会において、それに似た言葉が多かつたのであります。もしそうであるならばという大蔵大臣のお言葉でございましたが——はつきりしておると思いますが、ひとつ速記録を見たいと存じますので、ちよつと調べてもらいたい。
  149. 村上勇

    村上委員長 暫時休憩いたします。     午後六時五分休憩      ————◇—————     午後六時十七分開議
  150. 村上勇

    村上委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  井手以誠君。
  151. 井手以誠

    ○井手委員 ただいまの主計局長の答弁については、十分追究せねばならぬところが多いのであります。これはあらためて明日でも続行いたしたいと考えております。時間の関係で……     〔「こんなだらしのない進行の仕方じやだめだ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  152. 村上勇

    村上委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  153. 村上勇

    村上委員長 速記を始めて。井手以誠君。
  154. 井手以誠

    ○井手委員 先刻主計局長から委員会を侮辱する言辞がありまして、今までいろいろ論議されたのでございます。この問題が解決しなくては、またこのような委員会を侮辱するような大蔵省主計局長の態度では、私はこれ以上質問を続け審議をすることはできないと考えます。そこでこの際、委員長の善処をお願い申し上げる次第でございます。
  155. 村上勇

    村上委員長 あともう一、二質問がありますが、委員会の空気もあまりよくないので、本日はこの程度にとどめて次会は明六日午前十時より開会いたします。
  156. 田渕光一

    ○田渕委員 委員長委員会の何とおつしやつたのですか。委員会は熱心にやつているのです。大蔵省が悪いんじやないか。
  157. 村上勇

    村上委員長 委員会の空気の悪いと申しますのは大蔵省の説明員の答弁があまり穏当でないので、委員会の空気が悪い。これはもう私が申し上げなくても皆さんが満場一致御承知のことと思いますので、そういうややつこしいことは言わなくてもおわかりと思います。それで明日午前十時から委員会を開会いたします。     〔「大蔵大臣、副総理の善処を願いたい」と呼ぶ者あり〕
  158. 村上勇

    村上委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  159. 村上勇

    村上委員長 速記を始めて。それではただいまの説明員の説明が不穏当のようでありますので、委員会はこれ以上今日は続けられません。しかしこの際、副総理並びに大蔵大臣におきましても、何とか善処をお願いいたしたいと思います。
  160. 中野四郎

    中野委員 ただいまの主計局長の発言は当委員会だけじやない。議会で決定したいわゆる決定事項に対してその意思表示をしておるのでありまするから、この委員会に説明員として出席しておる限りにおいては、かような不遜な説明員をして説明七しめることは、われわれはとうてい了承できない。従つて委員会の名において説明員とし出ての彼を拒否して、新たにその責任大蔵大臣なり副総理に問うということが正しいのであります。そのことは一向支障ないのだから、ただちにこれを拒否されて、退場を命ぜられたらよいだろうと思います。
  161. 田渕光一

    ○田渕委員 関連質問です。私は、非常に、大蔵官僚の優越性を、ことに主計局の官僚が各省に数十年間威圧を加えて来たことに対しては、憤慨を感ずる。新憲法の四十一条における「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」ということを、はつきり諸君は認識してもらいたい。同時に、憲法七十三条の第一項にこう出ておる。「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」「一法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」これは内閣の責任である。同時に、憲法の五十九条にはこう出ておる。これなどもはつきり無視しておる。「法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。」と書いてある。あるいはこれが八十三条に行けばはつきりしておる。諸君はこれを思い違いしておる。新憲法をどう考えておるか。八十三条には、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」とあるのに、きまつた予算をば、金が足りなければ公益事業でも中止しなければならぬ。長い間の大藏官僚に対するわれわれのうつぷんが今日現われておる。委員長、じようだんの問題じやない。この間の懇談会においても、国税庁の次長をしておつた原君か主計次長となつて来るやわれわれは反省を求めた。今また主計局長がこう言つておる。また主計次長がこう言つておる。われわれのつくつた立法に対して、そんなものは議員がかつてにつくつて来るが、予算はこつちにあると言つておる。それで各省の予算が出ない。局長がこういう答弁をしておる以上、これを善処されるまではこれ以上会議を進めることはできないから、きようの委員会は散会してください。これ以上進められません。(「拒否してから散会するのだよ」と呼ぶ者あり)もちろん拒否です。議員なら徴罰にかけるのだ。     〔「まず決定したまえ、委員長。そしてこの説明員を拒否して、しかる後に散会しよう」と呼ぶ者あり〕
  162. 村上勇

    村上委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  163. 村上勇

    村上委員長 それでは速記を続けてください。先刻の井手委員の質疑に対する森永主計局長の答弁はきわめて不穏当なものと認められ、議事の円滑な進行に重大な支障を来しましたので、委員長は退場を命じます。  これ以上議事の進行はできませんので本日はこれにて散会いたします。     午後七時四分散会