○
世耕委員 私は簡単に
政府当局に要望したいと思います。
まず第一に、これは副
総理には現地を親しく御視察願いましたので、蛇足かもしれませんが、今度の
災害は、百年に一ぺんか、二百年に一ぺんあるかないかという異常の
災害であるから、従来の
災害と異
なつた見地からこの問題を取上げていただかなければならぬということを、私
お願い申し上げたい。たとえば、現在なお死骸を掘り出さなければならぬところがある、あ
るいは中から母親が子供を掬いてそのまま掘り出されて来る、あ
るいは老夫婦が次々に材木の間にはさまれて死骸とな
つて現われて来るということは、現地を見たならば涙なしには見られない。あ
るいは一部落が全滅して、たまたま外出した者数名が生き残
つたが、どうしたらいいかというてま
つたくこの対策に迷う、村当局ですら迷うというような悲惨な状況であります。こういうことを前提として、
政府当局におかれても善処していただきたいということを
お願いする次第である。
なお、この点について、先ほど来
同僚議員よりも御
質問のあ
つた査定の問題であります。相当すみやかに
査定を完了していただいたところもありますが、いろいろな
事情から
査定が遅れる場所が相当ある。それで、これは私が現地を見ながらつくづくそれ
考えたわけですが、できたら土木方面の
査定は今後飛行機を利用していただいたらどうか。そうして精密な飛行機による現地の地図をと
つて、それに基いて
査定をしていただくと、案外に合理的に行くのではないか。副
総理は御多忙のうち今度は飛行機を利用されたようでありますが、そのために多くの現地を見ていただけたことも、私はこの文明の利器を活用された結果だと思う。この
意味において、北海道その他の地方においても、今後飛行機の精密な写真によ
つて査定の資料に充てられたならば、案外早く行くのではないかということをひ
とつ御研究が願いたい。
それから
査定にあた
つての地元の非難を御参考までに申し上げておきますが、えてして
法律を取扱う者は法になじみ過ぎて
実情を無視するきらいがある。われわれの勉強した範囲から申すと、法はむしろ生活に従わなくちやならぬ。生活に
従つて法が適用されるべきである。ところが、法をたてにして生活を無視した
査定をや
つていては、せつかくの親切がかえ
つて恨みの種になる。一例を申し上げますならば、六万円あ
るいは七万円の臨時住宅に対して、
査定の人が地元へ
行つて注意するところを聞いてみますると、
政府の規格によ
つて柱は三寸、屋根はこれこれの瓦をふけ、こういうことを山の中へまで
行つて要求している。そのために、せつかく今度の
水害で瓦だけはうまく水の中へ落ちて残
つた、その瓦すら規格に反するから使つちや相ならぬ。またせつかく親戚からもら
つた柱を利用して家を建てようと思うと、規格に合わぬから、その柱は使
つては相ならぬ。板もさようなことをしているというような、非常に非常識なことが各地で行われている。私は現地を視察してそういうことを聞いて来たのであります。
もう一つは、営農資金の貸付あ
るいは金融処置についてもあります。
国会並びに
政府の意向は、できるだけ困
つた人に早く貸し付けるという立法
趣旨にもかかわらず、困
つた人に、いや保証金はどうだ、担保はどう、あ
るいはむずかしい条件をつけて、むしろ貸さぬような方法である。そしてあまり貸してもらいたくない人にも、無理に、あんた借りとかぬかというようなことも二、三私は実は発見して来た。こういう事実がある。それは、
政府からわくをもら
つたのに、もし貸さなか
つたら文句を言われるからというて、わくをみずからこしらえるための魂胆であ
つた。これははなはだ悪徳行為でありますけれ
ども、金融業者の中にこういう事実もあるということを御了承願
つておきたい。
それから、もう一つは、復興計画を一日もすみやかにしていただきたいという要望の一つとして、私は機械化を要望いたします。現在
政府並びに事務当局の御協力によ
つて、相当機械が各地区に活動いたしておりますけれ
ども、まだ不足していると思います。この際
アメリカ当局の協力を得て、復興に必要な機械の購入をして、少くとも来年の植付に間に合うように、耕地等の
復旧に機械力を活用していただきたい。かりに一台のブルドーザーが活躍すれば千人の働きをするということを、もうすでにわれわれ現地目撃して来たのであります。田地の
復旧には少くとも今年中にでも目鼻をつけて、来年の植付に間に合うようにするためには、どうしても機械力を活用していただかなければならぬ。この点もやがて具体的な問題として現われるであろうと思いますから、御了承願
つておきたい。
なおもう一つ地元の非難としてお取次ぎをしておきたいのは、電燈会社の処置であります。小さい問題でありますけれ
ども、零細な国民の声であるから、この際お伝えしおきたいと思います。家が流れる。それでも再起しなくちやならぬというので、すぎの板屋根でその流れた跡に掘立小屋を建ててがんば
つている人たちふ、電燈をつけてくれと言うても応じない。むしろ流れなか
つた家の電燈を先につける。しかも、その電燈のつけ方が、三月分を先払いして、あるところのごときは、電燈料ばかりではない、とりつけの料金に対してきわめて冷淡な処置をと
つているということが数箇所に及んでおります。そのために、共産党の諸君が活躍している事実も和歌山県下には数箇所あることを私発見して来たのであります。こういう点も、小さい問題であるが、この際特に十分に
考えておいていただくように
お願いする。
それから、もう
あと二点ばかり申し上げておきたいのは、これは建設
関係に及ぶと思いますが、私は
水害必ずしも天災でないということを指摘したい。過去における日本の建設、すなわち技術面に多くの欠点があ
つたということを、私はここに指摘することができるのであります。この点に関しまして、私が認識を特に深めておいていただきたいと思うことは、山くずれがあ
つた、あ
るいは地すべりがあ
つたということを非常に悲観しているようでありますが、私が現地視察をした
実情によりますと、山くずれのあ
つたところ、地すべりのあ
つたところはむしろ土地が肥えているところである。開墾できるところである。私は地すべりがあ
つたというのは、ここを掘れという天の啓示だと、かように積極的に
考える。実はこれについては、下の方へ完全な堤防を築いて、その地すべりの土を全部山はだの岩石が出るまで平らにしたなれば、開墾と一緒に田地ができるところが、和歌山県下で少くとも四、五十町歩あ
るい考えて来たのであります。かようなところにまた新しい天災に対する対策の切りかえの技術面がいるのではないか、かように
考える。
もう一つは、ついこの間かけたばかりの橋がみな流れている。なぜ流れているのか調べてみると、砂の上にいわゆる橋脚を立てておる。ひつくり返
つたのを見ると、象の爪の先の方へ砂がくつついておる。不正工事が行われていることがりつぱに証明されておるのであります。しかも大きな、二かかえもあるような橋脚が二つにぼきんと割れて、一番かんじんの岩盤に達するところに鉄筋が入
つているなら合理的であるけれ
ども、検査を受ける一番上の方に半分だけ鉄筋をして、下の方はごまかしている事実がれくさんある。これでは何回巨額の金をかけて工事をや
つたから
つて、
意味をなさぬ。もし
査定を厳重にするのであ
つたならば、こういうところをひ
とつ政府にもつと徹底した監査をしてもらわなければ、
意味をなさぬと私は思うのであります。要するに天災の半分は人災であ
つたということを、私はこの
機会に指摘できるのであります。この点、特に金がないとおつしやる
大蔵省が、もう一つつつ込んで、はたして金が有効に使われるかどうかという使い先までもつと監査してほしい、こういうことを私は地元民の要望として
お願いしたい。昔は、御承知の
通り、大きな堤防や橋をつくるときは、必ず人柱というものが出たことは言伝えにあります。今日の堤防に人柱を建てろとは申しませんけれ
ども、もう少し土木技術者の精神力がこの中に打込まれなければならぬのではないか、こういうことを私は痛切に感ずるのであります。これは金ではありません。いわゆる郷土愛、技術者の良心、ここに大きな問題がひそんでおるのではないか。これはおそらく和歌山県ばかりではなしに、各県に多々あることを私は思わざるを得ないのであります。それから技術面について、私はしろうとでございますけれ
ども申し上げたいことは、何ゆえ川が曲りくね
つて流れるかということの原理を、日本の技術者がはたしてつかんでいるかどうかということに疑問がある。それはなぜかと申しますれば、山の形をかえないで川の形ばかりかえている。ここにすなわち今度の堤防の決壊の原因があり、死人を出しております。