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田中(好)
委員 私は自由党を代表いたしまして
本案に賛成の意を表するものであります。
その理由の第一点は、
本案が教育
職員の全面的な優遇の道を講じておるという点であります。国民を完全に育成しまして、健全なる国家を形成するには、教育の必要であることは申すまでもないのであります。従いまして教育制度の改革もまた必要でありますが、また一面、教育に従事するところの
教職員が安んじてその
職務に従事し、その使命を達成せしむるがためには、どういたしましても生活の安定を与えなければならぬのでございます。この
意味におきまして、文部省はさきに教育
職員の特殊的な地位にかんがみまして、
一般公務員に比して優遇しなければならぬということを要望いたしまして、その実現を期したのであります。その要望は人事院の手によ
つて逐次取上げられつつあるのでありますが、いまだも
つて十分という域には達しておりません。しかるに本
法案におきましては、
大学の
教職員については四級から十級までの者は切りかえと同時に全面的に一
号俸だけを高くし、特に
大学院を設置する
大学の教授の
待遇は従来よりも三
号俸だけ
号俸の幅を伸ばし、現在の
ベースにおきまして最高五万一千二百円の
待遇を受くることとな
つたのであります。また
高等学校の
職員は、
中小学校職員と同一の
俸給表のもとに規正され、校長の
待遇は従来九級でとどめられてお
つたのでありますが、本
法案におきましては十二級の四号という現行
ベースにおいて四万三千三百円の
待遇を受くることとなるのであります。また四級より九級までの大部分の
教職員が切りかえと同時にそれぞれ一律に従来より一
号俸だけ高い
待遇を受けることと相なるのであります。
次に
中小学校の
教職員につきましても、校長の
待遇は従来九級でとま
つていたものでありますが、本
法案においては十級まで伸びるのであります。また教諭の
号俸の幅も従来よりも三号有利に伸びているのでございます。世間では本
法案の提出によりまして
中小学校の
職員が動揺しておるということを声を大にして非難しておる者がございます。しかしながら右に申し述べましたように、いずれの
学校の
職員におきましても、本法の施行によりまして現在よりは優遇されるのでありまして、それら動揺しておると非難しておる連中は、おそらく本法の実施によ
つて矛の誤りを知ることができるであろうと私は確信するものでございます。
さらにまた本
法案に対する第二の瀞成点は、従来
高等学校等の
教職員の
給与は二九
ベース切りかえ当時の特殊の事由から、
中小学校等の
職員給与に比して著しく不利にな
つていたのでありまするが、それが本
法案においては十分とはいえないのでございますけれ
ども、それらの点が朗らかに是正せられたということを認めざるを得ないのでございます。従来
高等学校の
職員は、その学歴において
中小学校職員のそれに比して、はるかにまさ
つているにもかかわらず、同一年令の
給与についてこれを見まするならば、前者の
給与がかえ
つて後者の
給与よりも平均的に見まして劣
つておるという事実は顕著なものでありまして、この現実は
給与公平の
原則から見ましても、はたまた高い教育のためには高い学歴の人を必要とするという社会通念から申しましても、はなはだ不合理なのでありまして、まことに不当なものといわざるを得ないのでございます。しかるに現行
給与法が
学校種別によ
つて異
なつた
待遇を許さず、同一学歴についてその初任給も、昇給も、または昇格の速度も同一でありまする結果、二九
ベース当時の切りかえ措置の粗漏に端を発しまして、この
高等学校職員給与の
陥没は永久に是正することができなか
つたのであります。今回人事院の勧告をいたしました
給与準則といえ
ども、現行
給与法の
待遇原則を変更しない限り、これを行うことがきわめて困難な事柄であ
つたのでございます。しかるに本
法案におきましては、四級から九級までの
職員も一
号俸だけ高めるという措置によりましてそれを是正し、長い間の懸案を解決に一歩進めましたことは、まことに妥当な措置であるといわなければならないのでございまして、われわれはこれに対しまして全幅の贊意を表する次第でございます。あるいは
学校職員の
待遇によ
つて、学歴の高い人が
中小学校職員を希望しない結果とな
つて、基礎的教育でありまするところの義務制教育の進展を妨げるという議論がございます。しかしながらそれを主張する人は、就職誘致の原因というものが、ただ給料の高低一点張りによ
つて就職誘致の原因があるものであると見るのが、そもそもの誤りであろうと存ずるのでございます。その人の身辺に存するところの特殊の事情も加味されて決定せられることは常識であるのであります。本
法案のために
義務教育制が破壊せられるというがごときは、ま
つたく杞憂にすぎないものといわなければなりません。
われわれが
本案に賛成する理由の第三の点は、
本案が教育
職員の勤務の特殊性にかんがみまして、いわゆる三本建の
俸給表を設定したことであります。現行
給与法第十条三項におきましては、教育
職員及びその他特別の勤務に従事する
職員の
給与に関し、人事院はこれを特に研究し、その結論を国会及び内閣に勧告しなければならぬ旨を
規定しておるのでございまするが、このことは、教育
職員の勤務の態様がきわめて特殊的なものでありまして、このように
一般職員同様の
俸給表を
適用する現行制度はかなり無理があることを物語
つておるものでございます。しかるに人事院はその無理を知りつつ、この
規定制定後すでに数年を経過しておりまするにかかわらず、何ら教育
職員のために特別
俸給表の処置を講じなか
つたのであります。本
法案はこの点にも留意し、人事院の勧告に先立
つて着手したのでございます。従来の
一般俸給表の
適用の不当なる処置を廃し、ここに三本建の
教員の特別
俸給表を制定したのでございます。あるいは教育の本質からいたしまして、教育には種類、差等がないということを論拠として三本建に反対する人がありまするけれ
ども、教育の本質と、教育に従事する者に対する
待遇制度とは、厳にこれを区別して判断せなければならぬのであります。すでに
学校職員免許法が、
学校の糖類によりまして
教員の資格要件に差をつけているごとによりましても、差等があることを物語るものでございます。
従つて学校の種類に応じて三本建にいたしましたことは、現実に即応し、応能
給与の
原則に適したものでもございまして、むしろ機宜に適した
改正といわねばなりません。この
法案はもとより十全完備のものとは思いませんが、従来
一般俸給表適用を不当と知りつつ、しかも
高等学校職員の数年の不備を知りつつ、何らこれに適切なる措置を講ずることなく荏苒日を送ることよりはるかにまさ
つたものと確信する次第でございます。
右の三点の理由をあげて賛意を表する次第でありまするが、今論議の中心にな
つておりました特殊
学校の
職員等は、何とかしてこれを現実の
給与に
適用するような方針をと
つていただきたいという希望を付しまして、私の討論を終ります。