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1953-05-25 第16回国会 衆議院 昭和二十八年度一般会計暫定予算につき同意を求めるの件外六件特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十五日(月曜日)     午後二時五十九分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 橋本 龍伍君    理事 西村 直己君 理事 川崎 秀二君    理事 成田 知巳君 理事 川島 金次君    理事 山口 好一君       植木庚子郎君    迫水 久常君       辻  寛一君    富田 健治君       灘尾 弘吉君    西村 久之君       羽田武嗣郎君    喜多壯一郎君       中村三之丞君    橋本 清吉君       福田 繁芳君    久保田鶴松君       田中織之進君    辻原 弘市君       古屋 貞雄君    河野  密君       西村 榮一君    吉田 賢一君       中村 梅吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         通商産業大臣  岡野 清豪君         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         国税庁長官   平田敬一郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君     ————————————— 五月二十五日  委員伊藤好道君辞任につき、その補欠として古  屋貞雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計暫定予算につき日本国  憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求め  るの件(内閣提出予同第一号)  昭和二十八年度特別会計暫定予算につき日本国  憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求め  るの件(内閣提出予同第二号)  昭和二十八年度政府関係機関暫定予算につき日  本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を  求めるの件(内閣提出予同第三号)  国会議員選挙等執行経費基準に関する法  律の一部を改正する法律昭和二十八年法律第  二十二号)につき日本国憲法第五十四条第三項  の規定に基く同意を求めるの件(内閣提出、法  同第一号)  国立学校設置法の一部を改正する法律昭和二  十八年法律第二十五号)につき日本国憲法第五  十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件(  内閣提出、法同第二号)  不正競争防止法の一部を改正する法律昭和二  十八年法律第二十六号)につき日本国憲法第五  十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件(  内閣提出、法同第三号)  期限等の定のある法律につき当該期限等を変更  するための法律昭和二十八年法律第二十四  号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定  に基く同意を求めるの件(内閣提出、法同第四  号)     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計暫定予算につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件外六件を一括議題といたします。  質疑を継続いたします。中村三之丞君。
  3. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は、一昨日保留いたしてあります総理大臣に対する質疑をいたしたいと存じます。  さき吉田内閣衆議院の連合多数に不信任せられました。不信任せられた政党内閣は、総辞職か解散の道を選はなければならない。吉田総理解散の道を選ばれたのであります。そうして吉田総理の得られましたものは、衆議院における相対的多数にすぎなかつたのであります。しかし、この相対的多数をもつて第五次吉田内閣は成立いたしました。私の問わんとするところは予算のことであります。衆議院の解放によつて予算年度開始以前に不成立となつたのであります。この善後束吉田さんの責任であります。そこで許されたる方法として暫定予算を組み、参議院緊急集会においてそれが通過をいたしております。しかしながら、暫定予算なるものは、基準的経費盛つたのにすぎないのでありまして、現に一昨日、大蔵大臣は、暫定予算国政に必要なる最小限の費用で掛ると言明しておられます。従つて暫定予算一つ基準予算である、かように申すことができるでありましよう。これが暫定予算性格であると私は解します。さらに、時期的に見ますならば、財政法に示すがごとく会計年度のうちの一定期間にすぎないのでありまして、本予算の成立までのつなぎであります。ゆえに、暫定予算は、時期的に見れば、つなぎ予算であります。しかもこの暫定予算は、われわれに同意を求めておられる。しかし、この暫定予算について同意すべきやいなやはれわれの立場にある。同意を得られない場合におきましては、暫定予算なるものは将来に向つてその効力を撤回するのであります。事態かくのごときであります。総理大臣はこれに対していかに処せられんとするか、私は総理の所見をただしたいのであります。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お尋ねの趣意は、暫定予算がもし否決せられた場合にはどうするかというお尋ねと承知しましたが、これが国会として否決になる以上は——可決すると否決するとは御自由でありますが、しかしながら、もし否決せられるならば、国政、特に予算の伴う国政は行き詰まるということになるのでありますから、政府としてはあくまでもその通過を希望し、また通過せられることを予期いたしておるのであります。しかし、もし通過しなかつた場合にはどうであるかという場合は、これは申すまでもなく、当然議会としては国政運用に支障なからしむる方策をとられることを私は予期いたしますから、否決せられるということは万々ないであろうし、またなきことを希望いたすのであります。しこうして、暫定予算については、先ほどお話通り、事務的に国費の必要とする最小限度規定いたして組み込んでおるのであります。ゆえに、これに対してぜひとも御協賛を願いたいと私は思うのであります。
  5. 中村三之丞

    中村(三)委員 解散による年度開始以前における予算不成立によつて、たとい暫定予算参議院緊急集会において認められたといたしましても、暫定予算なるものは一箇年を通ずるところの全体の予算でありませんから、暫定予算は部分的であり、ばらばらであります。従つて、一会計年度を通ずるところの全体としての行政、地方財政国民経済国民生活の上に好ましからざる影響を与えておるということは現前の事実であります。総理大臣はこれを知り、これに対してどういうふうに考えておられますか。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 解散の結果、暫定予算を組む必要が生じ、従つて、普通の予算によつて処置のできることが、処置ができなかつたといううらみがあることは認めますが、しかしながら、二れはやむを得ない二とでありまして解散に伴う必然の結果でありますから、解散がよかつたか、悪かつたかという問題に結局帰すると思います。しかし私は、当時において解散をいたすほか、政府としてはとるべき道がないと考え解散をいたしたのであります。
  7. 中村三之丞

    中村(三)委員 それではお確かめいたしますが、解散のため、さような事態の起つたことはやむを得ないというお考えでございますか。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 それはやむを得ないことと考えます。
  9. 中村三之丞

    中村(三)委員 やむを得ないと言われるところに、私はさらに進んで総理善後処置に対する誠意を問わなければなりません。予算は一日も存在がないということはできますまい。しかしながら、解散の結果、全体の国民経済国政運用に停滞と一つのむらを生じておることはこれは事実であります。ゆえに、政治というものは筋を通すごとであります。よつて来るところの原因をただし、責任所在を明確にすることであります。しこうして、私の申しまする責任所在ということは、すみやかに本予算編成せられ、もつて暫定予算をこれに吸収し、ことに新たなる政策を盛り、長期計画を持ち、予算不成立暫定予算の便法による空白をすみやかに埋めるということが、吉田内閣がまさにやらなければならない役割であると信じ、またわれわれはそれに対して総理のお考えをただしておかなければなりません。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。ごもつともであります。政府としては、なるべく早く本予算を提出するために、ただいま大蔵大臣その他がしきりに予算編成を急いでおりますが、ただ大蔵大臣が違いましたから、新大蔵大臣考えもありましようから、ただちに前議会出し予算をそのまま出すということはできないかもしれません。しかし、新大蔵大臣においても十分研究いたした上で、本予算はなるべくすみやかに提出いたすようにいたします。
  11. 中村三之丞

    中村(三)委員 暫定予算は単なる暫定予算ではありません。本予算一つ前提である。従つて、われわれが暫定予算審議を求められる場合におきましては、来るべき本予算方向についても私はただしておかなければならないと思うのであります。今日の予算は、予算を通ずる経済の発展をはかるべきであつて生産予算に転換を早めて行かなければなりません。また長期計画を立て、日本経済根本的延直しをなすとともに、社会保障制度を拡充し、もつて国民生活の安定をはからなければなりますまい。また財政と金融との総合的調整をはかり、極端なるインフレと極端なるデフレを防止して行かなければなりません。ことに中央、地方を通ずる税制を改革する必要にも迫られているのみならず、今日の税金の取立ては、強制的割当であり、また収め奪うところの収奪化いたしておるのであります。ゆえに本予算編成にあたられましては、この現在の横暴な徴税制度を根本的に改革するの熱意を示すにあらずんば、税金に対する国民思想は悪化の一途をたどるのである。税金は単なるお金の問題ではありません。税金思想の問題であります。この点を当局者はよくお考えになる必要ありと私は信ずるのであります。これらの方向に対して私は総理のお考えをただしておきます。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 お尋ねの御意見は伺つておきますが、政府としてもなるべく税の負担を軽減するように努力いたすつもりでおります。また従来も努力いたしつつあつたのであります。この政策は今後といえども踏襲いたす。かりに大蔵大臣がかわつても、この方針については、政府としては、あくまでも財政の整理とともに、税負担の軽減はいたすつもりであります。詳細のことは本予算のときに御説明いたします。
  13. 中村三之丞

    中村(三)委員 吉田総理は長く英国におられたと承ります。英国におきましては、総理大臣大蔵大臣を経た人がなつておるようであります。これは財政経済に経験と良識があるためでありましよう。私は外交官出身たる吉田総理にこれを求めるのではありませんが、総理内閣を組織せられること五たび、この財政経済方針についてとくとお考えになり、今日の日本経済の建直し、時局、経済に対して誤りなきを期せられんことを私は要求せざるを得ないのでございます。  総理に対する質疑はこれで終りますが、委員長に御了解を得たいことは、一昨日私の質問に対する国税庁長官答弁が残つておりますから、この際国税庁長官より答弁を求めたいのであります。
  14. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ちよつと御了解をいただきたいのでありますが、それは総理に対する御質疑終つたあとでよろしゆうございますか。
  15. 中村三之丞

    中村(三)委員 あとまわしでもかまいません。ただそれだけ申し上げておきます。
  16. 尾崎末吉

    尾崎委員長 了承いたしました。成田知巳君。
  17. 成田知巳

    成田委員 一昨日の本委員会で、総理が御出席なかつたために、政府側答弁で明確を欠いていた点について、二、三この際総理お尋ねしてみたいと存じます。  一昨日の本委員会におきまして、小笠原大蔵大臣は、八月から本予算案を実施する見込みである、四月、五月、六月、七月は暫定予算で行くのだ、こういう方計をお示しになつたのであります。ただいまの総理の御答弁にもありますように、暫定予算は事務的な最小限度のものである。そういたしますと、四月、五月、六月、七月という会計年度の三分の一がまつたく事務的な予算で終つてしまう。その間に大きな空白が出るわけであります。従つて、八月から実施されようとする本予算案編成方針内容についても、相当変化が出て来なければいけない。現に一昨日小笠原大蔵大臣は、私の質問に対して、減税国債も発行をやめるかもしれないという御発言があつたわけであります。ここで総理お尋ねいたしたいのは、減税国債は一例でありますが、政府重要施策について、暫定予算を四月、五月実施したために、その空白期間が出て来たために、予算編成方針、あるいはこれを中心とする重要施策について、相当変化が出て来るということは当然考えられるわけであります。その点で予算編成方針並びに重要施策前提条件でありますところの内閣主体性の問題、言葉をかえて申しましたならば、政局の安定の問題について、少数単独内閣として出発した吉田内閣として、どのような御構想を持つていらつしやるか、まず承りたいのであります。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 三箇月、四箇月の空白を生じたことは、政府としてまことに遺憾といたします。またその空白を補うために、八月以降の予算において相当処置をとることは当然のことで、いたすつもりであります。しからば今日においてどういう予算編成をなすか。ただいま新内閣として、新大蔵大臣ができて、予算をしきりに検討いたしておりますが、しばらく編成のできるまでお待ちを願いたいと思います。
  19. 成田知巳

    成田委員 私がお尋ねしたのは、予算内容についてお尋ねしたのではなくて、相当変化があるとすれば、その前提として内閣主体性の問題、政局の安定について、少数単独内閣として出発した吉田内閣としていかなる御構想を持つていらつしやるか、これをまず承つたのでありますから、御答弁を願いたいと存じます。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは予算編成方針についてのことでなくて、政局をいかにして安定せしめて行くかということのお尋ねのようでありますが、これに対しては、なるべくわれわれと政策を同じゆうする同志、あるいは政党同情、あるいは支援を得て参りたいと思います。しからばどういうふうにしてやるかといつてお尋ねになるかもしれませんが、それはまだ申し上げるところまで進んでおりません。
  21. 成田知巳

    成田委員 政局安定の方式として、志を同じくする人々同情並びに援助を得たい、こういう御答弁でありましたが、財界その他の要求といたしまして、政局安定のために保守の再編成が唱えられていることは御承知の通りでありますが、総理は、この政局安定の問題について、日ごろ政治について筋を通すということを言つていらつしやいます。従つて同志の方を獲得し、あるいは同情を得られるにいたしましても、あくまでも筋をお通しになると思う。たとえば、こぼう抜きとか、その他のやみ取引はおやりにならない。そういう意味での筋を通した政局安定をおやりになると思いますが、それについての御意見を承りたい。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 筋を通すことは、私は絶えず申し上げておるところであります。決して筋の立たないようなことはいたしませんから、この点は御安心願いたい。しからばどう筋を通すかと切り込まれますと、今のところはちよつとお話できません。
  23. 成田知巳

    成田委員 今総理は予防線をお張りになりましたが、当然質問順序として、どうして筋を通すかということはお尋ねしなければなりません。今自分たちと志を同じゆうする者と言われましたが、自由党保守内閣に対しまして志を同じゆうする者とすれば、失礼かもわかりませんが、大体保守政党の人人だと思うのです。そこで保守政党だとすれば、改進党あるいは分自党でありますが、この改進党あるいは分自党に対して、政局安定の方式として総理はいかなる手をお打ちになろうとお考えか、承りたいのであります。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 今のお話でありますが、筋を通すということは、結局政策を高じゆうし、またわれわれと政見を同じうしておる同志を集めて参りたいと思うのであります。しかし社会党の諸君といえども、わがはいと政見を同じゆうせられるならば、喜んでお迎えをいたしたいと存じます。
  25. 成田知巳

    成田委員 まじめに御答弁願いたいと思うのですが、保守政党としては、自由党と改進党あるいは鳩山自由党、これ以外には現在日本には見当らない。従つて志を同じゆうする同志吉田総理がお考えになるのは、少くとも改進党、分自党以外にはないと思う。そこでこれらの人々と相提携するという方針をお持ちになるとして、端的にお尋ねしたいのでありますが、現在あるいは近い将来において、吉田総理重光会談というものをお考えになつておるかどうか、これを承りたいと思います。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところは何も考えておりません。また約束の話もいたしておりません。
  27. 成田知巳

    成田委員 ただいまのところと申しましたが、現在はない、また近い将来においてもそういうことはお考えになつてない、こう解釈してよろしゆうございましようか。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 解釈は御自由でありますが、しかしながら、ただいまのところ約束がないから、約束のないという事実を申しただけであります。
  29. 成田知巳

    成田委員 次に、先ほど総理からお話のありました予算編成方針に関連して、一、二お尋ねいたしたいのでありますが、四箇月の暫定予算となりました関係上、警察法改正その他重要法案について相当影響がある。たとえば警察法改正につきましては、前の国会におきまして、四月から本予算が実施されるとして、準備期間その他があるというので、九月から実施される予定で法案をお出しになつておる。ところが、今回暫定予算が七月まで行われるといたしましたならば、本予算は八月から実施される。そういたしますと、準備期間相当見込みますと、事実上警察法というものが今会計年度においては実施できない、こう解釈せざるを得ない。従つて警察法改正については、政府は今国会にお出しにならない方針じやないかと思うのでありますが、その点をお伺いいたします。
  30. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 先ほども申しました通り、七月分も、これは暫定予算編成するほかないかと存じますが、しかし暫定予算のことでありますから、従つてやはり国務の運行上必要やむを得ざるものに限るほかない。もしこれに予算全体に影響を及ぼすような新政策を盛り込むようなことがありましたら——今お話警察法を盛り込むようなことがありましたら、これはこの次の本予算でこれをしいる前提になると考えますから、原則として、暫定予算といたしましては、いわゆる骨格予算の建前で参りたいと考えておる次第でございます。
  31. 成田知巳

    成田委員 私がお尋ねしたのは、暫定予算性格についてはもうすでに内容が明らかになつておる。そこで総理から先ほどお話がありましたように、本予算編成方針変化が出ることはあり得るだろうということ、それに関連して、警察法改正の問題を私はお尋ねしておるのであります。さき国会警察法改正をお出しになりましたときも、四月から本予算が実施されるとしても、準備期間相当の日時を要するから、警察法改正が実施されるのは九月からであると政府は御答弁なつた。すなわち五箇月間の準備期間が必要である。もし八月から本予算案を実施することになりますならば、五箇月の準備期間がいるとすれば、事実上、昭和二十八年度においては、警察法改正は実施できないということになる。従つて、そういう無意味警察法改正法案をお出しになることはないだろう、こういう意味お尋ねしておるわけでありますから、総理のお考えを承りたいと思います。
  32. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。警察法の必要を認めて政府は提案をいたしたのであります。お話のごとくに、もし予算の上において、あるいは予算施行の上において警察法が実行できないから、引込ませるかというお尋ねのようでありますが、政府としては、これはあくまでもその必要を考えて提出いたしたのでありますから、ただいまのところ提出するつもりであります。
  33. 成田知巳

    成田委員 次にお尋ねいたしたいのは、前国会において本予算案審議の際に、保安隊増強の問題が論議の中心となりました。政府答弁は一貫して、保安隊増強装備の強化をはかるけれども、人員増強考えていない、こういう御答弁であつたのであります。私たちアメリカの情勢その他からいつて、そういう安易な気持ではあり得ない、こう考えておつたのでありますが、あくまでも人員増強政府は否定して来られた。ところが、最近アメリカにおける上院で、ダレス長官MSA援助の問題に関連して証言しておる。アリソン新大使も日本に参りまして、MSAの問題に関して相当示唆ある発言を行つております。一般の解釈するところによりますと、保安隊人員増強はやむを得ない、十五万程度の増強が行われるのじやないか、こういう観測さえ行われておるわけでありまして、八月から実施される本予算案相当修正されるという見込みの今日、保安隊増強というものが本予算案に組み入れられるかどうか、この点についてお尋ねいたしたいと思います。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところ、増強考えておりません。またしたくないと考えております。
  35. 成田知巳

    成田委員 ただいまのところ保安隊増強考えていないというのは、装備増強だけじやなしに、人員増強考えていない、こう解釈してよろしゆうございましようか。
  36. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。
  37. 成田知巳

    成田委員 次に、これも一昨日の私の質問に関連してお尋ねするのでありますが、緒方副総理が、参議院緊急集会で、暫定予算出した。この暫定予算は事務的な国政運用最小限度のものである。その根拠はどうかといえば、内閣不信任案通過した状態のもとにおける内閣というものは、新政策を盛ることは許されない、事務管理内閣である、だから最小限度必要な予算案を提出したのだ、こう御答弁なつた。そこで、私が質問いたしたのは、事務管理内閣である以上、かの日米通商航海条約というような国の消長に重大な関係のある、国民権利義務に至大な影響のあるところの条約事務管理内閣が締結するというようなことは、憲法の精神に反するんじやないか、こういう御質問を申し上げたのでありますが、政府答弁はまつたく要領を得ないのであります。この点総理として、事務管理内閣である当時の内閣日米通商航海条約というような重要な条約を締結したということは、違憲のそしりを免れない、こうお考えにならないかどうか、明確な御答弁を承りたいのであります。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は事務管理内閣という名称があるかどうかは承知いたしません。従つてまた、通商航海条約を締結していかぬというりくつも立たないと私は思います。いやしくも条約を締結するごとによつて国民利益を受くるものであるならば、協議を進めて当然であると思います。この調印された条約が批准せられるかどうかは、一に国会審議にまつのみでありまして、調印したからといつて、それでもつてただちにその条約が成立いたしたのではないのであります。調印後において批准協賛を求めて、そうして国会協賛をしたということになつて、初めて条約効力を有するので、それまでの順序として調印した。なるべく早く国民利益になるような条約はこしらえ上げて行くことが、いずれの内閣といえどもいたすべきものであると考えるのであります。私は、外務省がいたしたことは、決して憲法違反でもなければ、不当でもないと思います。
  39. 成田知巳

    成田委員 事務管理内閣という言葉があるかどうか知らないと言われたが、その問題は別といたしまして、少くとも内閣不信任案通過した。国民は、吉田内閣を信任せず、こういう意思表示をやつたわけです。その内閣はまさに選挙管理内閣である。事務管理内閣である。これを一般民間の例にとつてみましても、私たち普通の状態にあるときは、能力者として売買その他の取引は自由にやれる。しかしながら、準禁治産の宣告を受けた場合には、そういう能力というものは制限される。不信任が可決された内閣というものは、まさに準禁治産内閣なんだ。(「その通り」)この準禁治産内閣が、国民権利義務に重大な影響のある——総理は、国民のためになると言つた。ためになるかならないかはわからない。私たちは、むしろ、あの旧株式の取得の問題、あるいはアメリカの金融機関に預金、信託業務を認める規定、こういう点から見まして国民、のためにはならないと思う。こういう重大な国民権利義務影響のある条約を、準禁治産内閣であるところの当時の吉田内閣において締結するということは、あくまでも違憲である、こう考えるのでありますが、いかがでございましよう。
  40. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の暫定内閣が準禁治産内閣であるかどうかは別のお話といたしまして、私の見解はかわつておりません。ただいま申した通り、調印によつてただちに効力が発生するのではなくして、批准の準備行為として調印をしたのである。この条約が準禁治産内閣であるからして不都合であるといえば、批准を拒まれて、そうしてこれに対して賛成をせられなければ、それで問題は解決すると思います。
  41. 田中織之進

    ○田中(織)委員 関連して……。ただいいまの吉田総理の御答弁は納得が行かないのであります。いやしくも条約締結という国政のうちで最も重要なる案件を、不信任案の通過によつて、単に選挙終了まで、次の国会が召集されたならば総辞職をしなければならないということが憲法上明記されておる性格内閣において締結することは、私は、これは責任政治の建前から見まして、きわめて重大な問題だと思うのであります。もし総理のような考え方からいたしますならば、あるいは憲法改正の問題にいたしましても、また憲法にこれは禁止いたしておる事項でありますけれども、現に保安隊のごとく、憲法第九条に違反したところの軍隊がつくられておるような情勢のもとにおいては、外国と戦争するというようなことについても、もし政府が外国との間に何らかの了解をつけたならば、議会解散して、そのただ単なる管理内閣の手においても、場合によれば、とにかく戦争にまで国民を引きずつて行くことも可能だということになると私は思うのでありまして、この問題は総理の御答弁では、われわれ納得するわけには行かないのであります。この間の解散憲法の第六十九条によつて行つた解散であるということを、一昨日法制局長官なり緒方副総理が明白にされておるのでありまして、その意味で三月十四日以降の吉田内閣というものは、現在の内閣とは性格が違うのであります。この点について総理は、現在もなおこの日米通商航海条約を締結したことは当然である、批准の前の準備手続だと言われるのでありますが、私は断じてただ単なるそういう手続的な問題ではないと思いますから、この点について明確なる責任ある御答弁を願いたいと思います。
  42. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 一昨日の説明にさらにつけ加えますと、今御指摘のいろいろな例と、ただいまの日米条約関係は私は違うと思うのであります。日米条約につきましては、先ほど総理からお答え申し上げました通り、いますが批准がないのであります。この批准は国会の御審議によることでありますから、違うと思います
  43. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今の問題はきわめて重大な問題で、先ほど成田委員質問に対する総理答弁についての質問でありますから、この際総理より率直に御答弁を願いたいと思います。
  44. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、重要な問題であり、従つて答弁の正確を期するために、専門の政府委員からして答弁させるのが、私は最も適当な処置考えます。しかして、ただいまの政府委員の説明は、すなわち私の説明と御承知を願います。
  45. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点に私関連して、総理にお伺いしたい点が一点あるわけであります。  それは、当面問題になつておる承認を求める暫定予算の中で、歳出の第一番の項目に、防衛支出金の百五十億円というのが計上されておるのであります。これは説明によりますると、日米安全保障条約に基く行政協定に基くとりきめによつて四半期分を計上したということが、明白にここにあげられておるのであります。これは条約の問題にも関連いたしますから、御質問申し上げるのでありますが、行政協定の問題は、われわれは、これは当然条約に準ずべきものであるから、議会の承認を得べきものだということを主張したのでありますが、吉田内閣は遂に議会の承認を得ないまま、懇意的に、これは米国政府との間に締結したものであります。従つて今、日米通商航海条約の問題は、批准を前にしてのことであるから、単なる準備手続にすぎないということになりますならば、議会の承認を得ておらないところの日米行政協宗に基くとりきめというものは、何ら法律的には国民を拘束するものではないのであります。防衛費というものは、かりに米国側が負担しておいたものでも日本側が負担すべきものであるならば、新内閣が成立したあとでも提出することは可能なんです。それにもかかわらずこれを計上しておるというところにも、条約あるいは行政協定というような国民権利義務に重大な関係を持つ問題に対する憲法規定を、現内閣が遵奉するという精神が欠けておる。具体的にこの防衛費百五十億円の計上にもそれが現われておる。百五十億円というのは国民経済にとつては莫大なる負担であります。この点からも、これはどうしても総理に、憲法条約に関する規定の根本的な考え方として重ねて御答弁を願いたいと思うのであります。
  46. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは当時非常に議論になりまして、田中君も覚えておいでになることと思いますが、われわれとしては、日米安全保障条約の中に、両政府間に行政協定をとりきめるということになつておりますから、そこで国会の承認を得たものと解釈いたしまして、行政協定については承認を得なかつたのでございますが、しかしながら、行政協定に基いての防衛費は、日米安全保障条約に基く条約上の義務であると考えております。またこの費用は前にも計上しておりまして、それの月割にした事務的のものを計上したわけであります。
  47. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 成田委員質疑に対しての総理答弁及びその一部分は田中委員答弁がありまたが、根本の問題で、吉田総理及び吉田内閣は、国民の生活のみならず、日本の前途に対して根本の認識を欠いているから、日米通商航海条約というものは批准を得ればいいのだというふうなことで、御答弁があつたと思うのですが、これは大きな意味日本にとつて経済憲法だと思う。大きく制約されるものだと思う。しかもその中には、他日の機会に譲りますが、総理が長いこと一枚看板で言つて来た外資導入などというようなことは、実は条約の案文を見ると、制約される部分がたくさんあつて、それはあまり制約されないようにしろという書簡さえ外務当局に送つたと世間では伝わつておる。そういつた根本の考え方において、この条約に対する吉田総理及び吉田内閣の根本的な認識観というものを、私はもう一度総理自身からお伺いしたい。これが関連質問一つであります。
  48. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 条約内容につきましては他日十分御審議を願う機会があると思います。しかしながら、今も申されたような外資導入とかその他の点を考えまして、われわれは条約の案文を協定したのでありますが、その日米通商航海条約につきましては、国会においても近くこれを締結する運びになるであろうということを再三申しております。また質問に応じまして、当時わかりました部分は国会でも答弁をいたしておりまして、前内閣は、この方針通商航海条約をつくるべく、ずつと努力を続けて来たのでありまして、すでに昨年以来の努力の継続でありますが、それがたまたま三月にちようど話合いがまとまつて、調印の運びに至ろうというときに解散になつたのであります。従つて、もしそのときに急に調印をしないということになれば、むしろそれが従来の政策の変更になるくらいにわれわれは考えておるのでありまして、ずつと従来の政策を続けて来た、そして、今総理も御答弁になりましたように、調印をいたしたというだけでありますが、その調印もさらにいろいろの考慮がありまして、たとえば、これを早くやらないとアメリカ国会の批准にも間に合わない関係で、かりに日本側の批准が得られましたとしても、条約効力は来年でなければ発生しないような状況もあつたのでありまして、従つて、今までの事務的の折衝の続きとして調印をいたしたようなわけであります。
  49. 成田知巳

    成田委員 ただいまの岡崎外務大臣の答弁を聞いておりますと、総理答弁と大分食い違いがある。岡崎外務大臣は、昨年来いろいろ交渉して来た結果なのだから、たとい不信任をこうむつた内閣でもやつていいじやないか。さらにまた一つの理由としては、アメリカの批准の関係があるから早くやつたのだ。これはいわゆる岡崎外交の、アメリカ一辺倒の外交の本質を暴露しているのです。もしこれがほんとうの独立国家で対等の条約ならば、アメリカの批准の状況によつて日本が調印するかしないかということを左右されるはずはないのです。日本独自の立場でこれを判断すべきであります。それが一つ。それから、昨年来交渉して来たものだからやつたと言われるのですが、いくら長く交渉しておりましても、不信任案が通過した内閣が、こういう重要な条約を締結する資格はない。先ほど申しましたように、準禁治産なのです。準禁治産の内閣が、こういう条約を締結する権限はないのです。逆に言えば、交渉の経過が非常に短かくとも、当然締結するところの権限を持つている内閣ならばやつていいのです。そういう点、総理答弁と岡崎外務大臣の答弁は食い違いがあるのです。その点明確にしていただきたいと思います。
  50. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は一向食い違いがあるとは考えておりません。昨年以来交渉を続けておりましたというのは、事実を申し上げたのであつて、これは国会答弁等で十分御承知のことと思います。そうして、もちろん総理の言われるすなわち国のためになる意味は、われわれももちろん当然そう考えておりますが、そこに何も食い違いはないので、国のためにならないことをやつておるわけでは決してない。そうして、今準禁治産ということをしきりに言われましたけれども、私どもはそうは考えておりませんが、これは別問題としまして、今までずつと方針を続けてやつているこの条約を調印するということは、私は憲法その他にも何ら矛盾はないと思つております。実は調印はもう少し前にするはずでありましたが、解散になりましたので、さらにいろいろの点を検討いたしました結果、さしつかえないという結論を得ましたので、調印いたしたような次第であります。
  51. 成田知巳

    成田委員 この点については根本的に見解を異にしておりますので、別の機会に政府の所見をただしてみたいと思います。  もう一つ総理お尋ねしたいことは、参議院緊急集会暫定予算審議する際に、いろいろ問題があつた。参議院における総理答弁によりますと、本予算衆議院通過しておる、そうして不信任案通過後十日間の余裕期間があるのだから、なぜ本予算参議院審議しなかつたか、こういう質問に対して、総理は、一日も早く国民の判定にまちたい、総意を知りたい、こういう意味解散をやつたのだ、こういう御答弁をやつていらつしやるのでありますが、参議院相当余裕期間があつたにもかかわらず、あえて本予算案を出さないで即日解散をやつた。その理由というのは、今言いました一日も早く国民の審判を仰ぎたいという根拠以外には理由がないのかどうか、承りたいと思います。
  52. 吉田茂

    吉田国務大臣 当時参議院において、十日間で予算を成立せしむる見込みは全然私はなかつたのであります。ゆえに解散をいたすとともに、ただいまお話のように、国民の意思を早く反映せしむることが、政府としてとるべき民主政治の精神である、こう私は決心いたして、いたしたのであります。
  53. 成田知巳

    成田委員 最後に、先ほど中村委員質問に関連してお尋ねしたいのでありますが、緊急集会暫定予算編成及び実施の責任は現内閣がおとりになる、こういう御答弁でありましたが、第四次吉田内閣、また不信任案を可決されたところの当時の吉田内閣と今回の第五次吉田内閣は、人格的に別個のものだと思います。従つて、当時不信任案を可決された内閣がお出しなつ暫定予算編成及び実施の責任を、人格的に別個であると思う今回の吉田内閣がはたして法律上負うことができるのかどうか。これはテスト・ケースでございますから、この点念のために承つてみたいと思います。
  54. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 緊急集会をお願いして暫定措置を求めましたのは、第四次吉田内閣責任の問題であります。今回この同意についてお願いをしているのは、第五次吉田内閣がお願いしているわけであります。
  55. 成田知巳

    成田委員 同意を要求されているのが第五次吉田内閣であることはもちろんなのです。これは問わなくともわかつておる。ただ、この参議院緊急集会暫定予算、緊急の法律案をお出しになつたのは、第五次吉田内閣とは違う。人格が別である。従つて、人格が別個のものが出し暫定予算その他の法律案の責任を、第五次吉田内閣がとることがはたして法律上あり得るかどうか。このことは、緊急集会予算案審議すること自体が許されるかどうかということに関連しておると思う。それで念のために伺つておるわけです。
  56. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 第四次吉田内閣において参議院緊急集会を経てとられました措置を、今日の第五次吉田内閣同意をお願いすることが、国のためにまた国民のために必要であると考えましたからして、それをお願いしているという関係にあるのであります。
  57. 成田知巳

    成田委員 国のために必要であるとか、国民のために必要であるとかいう政治論を私は聞いておるのではない。先ほど申し上げましたように、テスト・ケースとして、純法律的に考えて、性格の違う、人格の違う内閣出したものに対して、次の内閣責任を負うということができるかどうか。たとえば、これはまだ吉田内閣が第四次、第五次だからよいのでありますが、吉田内閣参議院緊急集会において暫定予算をお出しなつた、総選挙の結果社会党内閣ができた、そのとき、社会党内閣が、その暫定予算について、はたして責任を負う必要があるかどうか、この問題をお尋ねしておるわけです。
  58. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 今のお言葉はまさに一昨日私が申し上げました例でありまして、私は、今お話のような趣旨で、一昨日お答えいたしました。すなわち緊急集会を求めて暫定措置をとつたという責任は、第四次吉田内閣責任である。しかし、かりにその責任に対する批判、問題があるとすれば、それは総選挙においてすでに清算されてしまつておる。今日においては継続の関係がありません。しかしながら、第五次吉田内閣としては、前の内閣のつくつた暫定措置の案件について、これをこのままほつておいてよいのか、あるいはつぶすのかという点において、それを法律的に考えれば、そこに自分の責任をもつて判断する場面が出て来たわけであります。そこで、先ほど私の申し上げました通りに、今度の第五次吉田内閣としても、これを成立させることはどうしても必要であるという角度から、その成立に対していろいろとお願いをしておるという筋合いになるように考えます。
  59. 成田知巳

    成田委員 今の御答弁では私たち了解できないのです。総選挙の結果国民の判定が下つたのだ、それですべては一応御破算になつて、次の内閣がそれについて同意を求めるのだ、こういう苦しい答弁をされることは、結局どこに原因があるかというと、参議院緊急集会で、憲法には明文がありませんが、予算だとかこういう重要な問題を措置することはできない。これが一つ憲法の根本原則だ。それをあえておやりになつたところに、そういう無理な解釈をしなければいけない原因が出て来たと思いますが、この点については、後ほど私たち政府と十分論議をかわして、明確にしたいと思つております。私の質問はこれで終ります。
  60. 田中織之進

    ○田中(織)委員 ちよつと関連してお尋ねいたします。今成田委員から最後に質問した、緊急集会出し暫定予算性格の問題に関連するのでありますが、法制局長官が苦しい答弁をされるように、緊急集会に出す暫定予算というものは、あらゆる意味かち疑義があり制約されるのでありますけれども、私は、その点についての問題は、ただいま成田委員が別の機会に譲るということになりましたから、追究いたしません。一昨日御答弁なつた中で、これから提出せられる六、七月の暫定予算について、これは総理からお伺いしたいと思うのであります。  一昨日までの大蔵大臣その他の答弁によりますと、緊急集会出したと大体同じようなものを出すのだということでございますが、これは衆議院だけできまる問題ではなくて、参議院通過する問題でありますから、緊急集会出した疑義のある暫定予算とは違つて、思い切つてこの内閣政策なりあるいは新規の事業費、少くとも月割のものを積極的に出してしかるべきではないかと私は考えるのです。特にその点から考えますならば、一番大きな問題として、占領中に引揚げて参りまして、現在も続いております中共地区からの引揚者の援護対策費の問題、あるいは各党とも今真剣に考えておられます先般の凍霜害の対策の問題、これは各党とも緊急に支出しなければならぬという点において一致しておる問題だと思うのであります。防衛費のように疑義のあるようなものすら緊急集会において計上しておるのでありますが、私は、今度衆参両院を通過しなければ成立しない、六、七月の暫定予算には、少くともこういう各党ともに納得できるようなものについては、たとい暫定予算であり、新規の経費であろうとも、計上すべきではなかろうかと思うのであります。一昨日の御答弁ではその点が明確でないのでありまして、私はこの際総理から、六、七月の暫定予算が今明日中にも提出される運びであろうと存じますので、この点を明確にしていただきたいと思うのであります。
  61. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまお話の中国からの引揚げのものにつきましては、本日提出すると存じますが、六月の暫定予算に計上してございます。なおそのほかでも、国会法律案が通りますれば、その通つた法律に伴う経費は計上することにいたしたいと存じておる次第でございます。
  62. 尾崎末吉

    尾崎委員長 吉田賢一君。
  63. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、吉田総理に、主として憲法運用上の内閣の所信を、大略三点にわたつて質問したいと思うのであります。  近時の風潮として、ともすれば、日本国憲法は占領下に制定されたものであるから、これは改正しなくちやならぬというような風潮も生じております。しかしながら、これは、現に厳存する日本国憲法の建前からいたしましても、戒めねばならぬ一つの風潮と考えます。そこで、憲法の公布文を見ましても、吉田総理大臣は劈頭に署名しておられる。爾来何回か内閣を組織して来られた総理におきましては、この憲法を最も厳格に解釈し、またこれが運用の責めを負つて、最も慎重に運用して行かねばならぬ、こういう信念においては何人にも劣らないものを持つておられると私は思います。また当然そうあらねばならぬと考えますので、日本国憲法を厳格に慎重に運営しなければならぬという点について、まず総理の御所見を伺つておきたいと思います。
  64. 吉田茂

    吉田国務大臣 お尋ねの趣意は、憲法改正を軽々しくいたすべきものではなく、また憲法運用については慎重に考えろという御意見でありました。これは当然のことでありまして、政府としては、憲法運用についてはあくまでも慎重を期したいと考えます。憲法改正についてはいろいろ世間に議論がありますけれども、憲法改正ということは軽々しくいたすべきことではない。輿論が動いて、国民がこれを要求することが明らかであるときにおいて考えるべき問題ではないかと私は考えております。
  65. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 慎重な運用はもちろんでございますが、なお私のお尋ねしました点は、最も厳格に憲法の精神、趣旨とするところを解釈してその適正を期して行くことが、また一つの重要な根本的態度であろうと思いますので、その点についてもお尋ねしたのであります。
  66. 吉田茂

    吉田国務大臣 お尋ねの趣意は、憲法の精神をも厳守せよ、こういうことであります。これまた政府としてはそのつもりであります。
  67. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはもつともなことであります。ところで、さように精神を尊重し、厳格に解釈し、運用の慎重を期するということになりますると、ここに今議題になつておりまする暫定予算参議院緊急集会を求めましたことにつきまして、私ども幾多の疑問を持つております。これは読み上げるのも失礼でありまするけれども、憲法五十四条の第二項によりますと「内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院緊急集会を求めることができる。」従つて、この五十四条の第二項の精神、趣旨とするところは、緊急の必要のある事項について、内閣参議院の集会を求め、その臨時的措置を要請するというところに、この趣意が存するものと解するのでありまして、この点は何人も異論がなく、また明文明らかであります。ところが、ここに出されましたところのいわゆる暫定予算なるものをつぶさに検討いたしてみますると、この中にはまことに緊急ならざるものがある。あるいはまだ使用のめどもつかないものもある。あるいは常識上だれが考えても、わざわざ参議院緊急集会に上程すべきものと考えられないような項目も幾多随所に散見しますることは、過日の質疑の機会に若干指摘したのであります。総理は全部目を通しておられないものと思いますけれども、たとえて例をあげましたならば、大蔵省所管におきましては七億五千万円の予備費が上つておる。他に災害予備費が十億円ありまするが、これは一応問題外といたしまして、七億五千万円の予備費が上げられておる。あるいは五千数百万円の各省庁の交際費が上つておる。その地あげれば際限ないほど多数散見いたします。私どもは、政府が緊急なりと認定する事項も、国会が緊急なりと認定する事項も、民間のわれわれ社会生活におきまして緊急なりと認定する事項も、やはりこれは大体において一致するところに、新しい民主主義の精神があると思う。ところが、われわれの社会生活におきましては、予備費というものが緊急経費ということはどうしても理解できない。交際費というものは、普通には一番しまいに記載されるべきものであります。こういつたものが莫大に記載されまして、そうして暫定予算編成されて参議院の緊急措置を要請しておるのであります。こういつたところに憲法の解釈をおろそかにしておる、憲法運用の慎重を欠いておる、こういうふうに見られるべき節ありとわれわれは疑うのであります。総理は一々こまかい数字を覚えておいでにならぬと思いまするけれども、私が今申し上げましたことは政府の提出した資料にはつきちと明記してあるのであります。総理はいかにお考えになりましようか。どうお感じになりましようか。憲法運用の重要な責任ある立場としまして御所見を伺いたい。
  68. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ……。
  69. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちよつと待つてください。憲法運用の根本問題に関しますので、総理から聞きたい。小笠原国務大臣には別に聞く機会を持つておるのです。
  70. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それはちよつと……。
  71. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはそうしなければいけません。やはりこの委員会の秩序は厳に守つてもらわなければならぬ。さつきからこういう異例な措置をとられておる。委員長はしつかりしてください。われわれは三十分しかないこの時間を、有効に総理との問答をいたしたい。
  72. 吉田茂

    吉田国務大臣 たいへん議論がやかましくなりましたが、大蔵省の所管等については、主管大臣からお答えをいたした方が、御質問に対する説明が十分に行くと考えますので、主管大臣から説明いたさせます。
  73. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうじやないのです質疑の趣旨は、さような事実がありまするので、大蔵大臣としては当の責任者なのですから、それに対する説明、弁解はあるかもわからぬ。そうでなく、私の聞きたい点は、あなたの部下の大蔵大臣がかような予算を組んで出しておられるが、総理大臣として所見いかん、こういうのです。
  74. 吉田茂

    吉田国務大臣 であるがゆえに、その性質は主管大臣からお答えする方が明瞭であると考えるので、主管大臣からお答えをいたさせます。
  75. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御指摘のものでありますが、たとえば予備費につきましては、大蔵省所管だけについて申し上げますると、これは北洋に調査船を出す等の問題もあり、また不時のいろいろな問題も起りますので、予備費を若干見ておくことも必要であり、また四、五の二箇月にわたることでありまして、在外公館もふえておるから、これらの予備費を月割に見ることは必要であると考えて計上した次第であります。
  76. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の質問の要旨は、今指摘いたしました数個の費目につきまして、それがどういうような使途内容であつたかというようなことは、大蔵当局から御説明を伺つていいのであります。しかしながら、かような費目につきまして、政治家としては常識的判断ができまするので、内閣責任者としての感想いかんと聞いておるのです。大藏大臣に、かくかくの使途、かくかくの必要であります、こういうような事務的内容の御説明を聞こうとするのは、本員の質疑の趣旨でないのであります。どうぞ、わずかな時間を利用するのですから、最も有効に、お互いに胸襟を開いて御答弁せられんことを希望いたします。
  77. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ただいまお聞きの通りでありますから、その趣旨に沿うような御答弁を希望いたします。
  78. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。予算編成当時においても、その費目の性質に対して緊急なりと政府は認め、これが事務的なものでおると解釈したから、暫定予算に組み入れたのであります。
  79. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 憲法の精神を尊重するということは、ただに吉田第五次内閣においてその問題が論議さるべきのみでなく、日本憲法が始まつて以来の大事な問題であります。今列席しておる犬養さんの御尊父が総理大臣でありました昭和七年、例の上海事変が拡大しましたときに、旧憲法の七十条によりまして、財政の緊急措置に対する勅令の請求を政府出しましたときにも、枢密院といたしましては、憲法の七十条の緊急の趣旨に沿わない経費はこれを認めるべきではないということを——犬養総理は幾たびか要請しておりましたけれども、厳としてこれを峻拒して、次の国会の開会ができるまでの、きわめて臨時的な経費を認めることになつてけりがついたことは、当時最も大きな話題になつた事実であります。そういうこともありますので、私は、憲法の解釈につきましては、吉田総理は人後に落ちられないと思いますので、やはりさような非難、疑いがあるような場合には、つとめてこれを狭く厳格に解釈していただかなければならぬと思うのであります。内閣を主幸しておられる総理大臣におきましてどうお感じになりまするか。今昔の感もありましようが、なお一応その点について明言していただきたいと思うのでございます。
  80. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は、犬養内閣当時のことは存じませんが、しかしながら、憲法を厳格に解する、運用するということの精神につきましては、毛頭異存がないのみならず、その線に沿うように今後努力いたします。
  81. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ただいまの私が数項あげました事実だけをとつてみましても、明らかに憲法の趣旨を無視いたされた疑いが顕著でございまして、これを少し強い言葉で申しますと、臨時的なる措置を求めるべく暫定予算参議院に出されましたことは、その内容におきまして、全部とは申しませんけれども、違憲の疑いのある事由を相当包含しておるもの、こういうふうにわれわれは判断いたしておるのでありますが、御所見いかがでありましようか。
  82. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としては、先ほど申しました通り、費用についてこれは違憲なりという御意見でありまするが、不幸にしてその御意見に対しては同意ができないのであります。政府の解するところによると、緊急なりとして予算に計上いたしたのであります。
  83. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは、いずれその点につきまして、また別の機会か別の時間に、大蔵大臣の所見を伺いまするが、私が今申しました点は、使いもしない予備費まで——これは使つておらぬのです。七億五千万円の予備費のうち、五月二十三日現在六億九千万円残つておる。だから、使いもしない予備費まで憲法上のきわめて重要な異例の緊急措置を求めるべく計上するようなことは、まことにこれはずさんな憲法侵犯の行為であると考えまするので、これらの点につきましてはひとつ政府の猛省を求めてやまぬのであります。  次にお尋ねいたしたい。お互いに、ことに内閣は、憲法並びに行政組織法内閣法等によりましても、国会の立場を尊重するということは申すまでもないのでありまするが、新しい憲法は、国会尊重につきましては、飛躍的なる発展を遂げております。そこで、この国会尊重ということが憲法運用上最も重要なる課題である、こういうふうにわれわれは信じておりまするが、国会尊重に対する総理の信念をお伺いしたいと思います。
  84. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としては、国会院を軽視いたすことは全然考えておりせん。あくまでも尊重いたすつもりであります。
  85. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは、私はこの程度で一応とどめまして、なお、あす継続して総理に対する質疑をさせていただくことを、お許し願つておきたいと思います。
  86. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 これは総理だけ帰すのでしよう。(「その通り」)そうでしよう。他の閣僚には残つていただくのでしよう。だから総理だけお帰しすることに同意いたしましよう。
  87. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは、引続いてお許し願いまして、大蔵大臣にお伺いします。今のことに関連しまして、財政法の三十条に規定しておるいわゆる暫定予算を、あなたの方では緊急集会にお出しになつたのですが、法の解釈というよりも、あなたの方の御所見、大蔵大臣としての御所見を聞くのですが、暫定予算というものは、緊急集会出し得るものと、それから出すことのできない一般的なものとがあるということは、これは常識だと思うのですが、そういうふうにお扱いになつておるのじやないでしようか。たとえば、今度出しまする六月の暫定予算、あるいは七月の暫定予算、こういつたものは、すでに衆議院も成立しているのですから、あなたのおつしやる骨格予算とかいうものをかなり広範囲に、また今ほかの委員からも要望いたしたようなことを織り込みまして、暫定予算として審議の対象となるところの適格性があると思いますけれども、憲法におけるところのこの緊急集会は、「緊急の必要」ということを厳に規定しておりますので、そこはやはり相当区別して行くのが当然ではないかと思いますので、法規の解釈というよりも、大蔵大臣のお立場におきましてのこの点についての御所見をひとつ伺つておきたい。
  88. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。緊急集会暫定予算を提出できるということは、これは一昨日も申し上げました通り、学説その他で一致しておるところで、ございましてこの緊急集会暫定予算を出す場合にいかなる経費を盛るかということにつきましては、この緊急集会におけるところの措置というものは、暫定予算であれ法律であれ、次の国会が召集されて国会の権能として行使されるまでの間のつなぎということでありまするので、その間におきまして国会の議決を経なければできないということは、あるいは新しい法律の制定の問題でありますとか、本予算とか、そういうようなことは計上することはできないのでありますが、原則として暫定予算について制限ということはないと思います。ただ、性質上できるだけ最小限度の必要経費にとどめるべきものであると考えておるのであります。
  89. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはやはり質問に対するお答えになつておらぬのです。今お答えになつたのは、財政法暫定予算には制限がないとおつしやる。ところが、憲法は制限をしておるのであります。「緊急の必要」という制限をしておる。財政法は制限がないかもしらぬけれども、憲法は制限をしておるのだから、憲法の関門を通過さそうと思えば、制限をされておるというその適格性も暫定予算の中に具備しなければならぬのでないか、こういうのでありまするから、これに対するお答えを願いたいと思います。だから、ひとつ問いに対する答えにしてもらいたいのです。
  90. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 もちろんさきに申し上げたと思いますけれども、この「緊急の必要」というお言葉でございますが、憲法に書いてありまする「緊急の必要」ということは、緊要という言葉とは私は違うと思います。緊要ということではなくして、緊急のということと必要ということがわけて書いてある。そうすると、緊急の関係は時間的の問題であるということになりまして必要の関係は言うまで、もなく必要であるということで、その必要性のしぼり方といいますか、限度というものについては、憲法上別段制約はないと考えておるわけであります。従つて、この暫定予算は一括してお考えになりまして、今の言葉で申しますれば、つなぎのために必要であるか必要でないかというようなことに御判定願う筋合いであるというふうに考えております。
  91. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の質疑をなお明確にするだけにとどめますが、これは法制局長官主計局長の両方の御答弁として、私の質疑に対してお答え願いたいのです。そこで問題は、財政法のみに暫定予算規定されております。ほかにはないはずであります。そこで、財政法の三十条に規定されておりますこの暫定予算なるもののうちには、一つ憲法緊急集会にかけ得る条件を具備しておるものもある、二つ、憲法緊急集会にはかけ得ざるものもある、こういうふうに区別し得るのではないか、こういうのが掘り下げれば先ほど来の質問になるわけです。そこで、私の最初のお尋ねの趣旨は、法律解釈ということよりも、大蔵省のそういうことに対する所見ということであつたのですけれども、あなた並びに主計局長は、むしろ法律解釈的な御答弁をされましたから、区わけして今のように申したのです。一、二に対する答弁をしてもらえばいいのです。そして、そうでないのなら何ゆえなのだ、そうであるのなら何ゆえなのだ、それをお答え願えればいいのです。
  92. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ちよつとお尋ねの趣旨がはつきりつかめないのですが、ふだんなら米の飯を食うだけの予算があるいは必要かもしらぬけれども、この暫定予算という段階はおかゆをもつてかりにつなぎ得るならば、おかゆに相当するだけの費用を盛ればいいのではないか、例は非常に悪うございますが、そういう趣旨であります。
  93. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういう比喩でなしに、あなたのお考えを伺いたい。区別があるのですか、ないのですか。
  94. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 区別はないと考えております。この三十条に言つております暫定予算というものは、要するに応急のものである、つなぎのものであるということははつきりしておりますけれども、それ以外において、緊急集会前の暫定予算内容は、かようかくかくであるべきだという区別はない。これは一昨日お答えした通りであります。
  95. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しからば、すでに衆議院が成立した後に組まれようとしている六月、七月の暫定予算なるもの、これもやはり憲法の、緊急集会出し得る適格性がありという結論ですか。
  96. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 その点は一昨日はつきり申し上げたと思いますが、あの当時三月に開かれました緊急集会に、かりに七月、八月の暫定予算をお出しして決を求めたということになれば、これは緊急性が全然ございませんから、明らかに憲法違反であろうと思うわけであります。
  97. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ただいまの御答弁によれば、言葉としましては区別なしと言われ、事実におきましては区別あり、何となれば、このたび出さんとする暫定予算は、憲法緊急集会の対象にする適格性がないという御所見であります。だから、区別なしと言われながら、実際は区別ありという答弁になつておる。もつと統一してしつかりしたところを断定的におつしやつてもらいたい。
  98. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 はつきり申し上げれば、その暫定予算内容となるべきものについては区別はございません。それから暫定予算としての七月分とか八月分とかということがあるわけでございますが、その時期の問題については、先ほど申し上げましたように、緊急性の条件が当然かぶつて参りますからして、七、八月分を三月の緊急集会にかけるというようなことは許されないと、時期の問題から申し上げたのであります。
  99. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の質疑を保留さしていただきまして、改進党の方にかわりたいと思います。
  100. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今の吉田さんの質問に関連して。ただいまの法制局長官の御答弁は、私まだ不明確で理解できないのでありますが、財政法第三十条に規定する暫定予算については、緊急集会へ出すものと、それからすでに六、七月と衆参を通じて審議するところの暫定予算とは、おのずから内容的にも性格的にも違つておるべきものだと、こういうふうに私は考えるのです。その意味で、緊急集会出し得るかどうかということにも疑義があるが、それはともかくとして、出すについては先ほど吉田委員から鋭く追究されておるように、緊急性の問題が当然条件となつて参りますけれども、すでに衆議院が成立して、政府が本日ここに提出された六月分の暫定予算については、緊急集会へ出すものとはおのずから内容的にも性格的にも違つてさしつかえない。これは当然のことだと私は思うのです。従つて財政法第三十条に言う暫定予算については、大きくわければ二通りあるということは、言い得るのではないかと思うのでありますが、この点について法制局長官の明快な御答弁を願います。
  101. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 今のお話の点は、この間たしか成田委員でありましたかにお答えした場合に、私はニユアンスというような言葉を使つたのであります。その趣旨は、これを法律的に見て、暫定予算内容というものはどういうものか、本質はどういうものかと申し上げれば、先ほどのように応急的なものという一言に尽きると思います。ただ具体的にどういう事項がどういう内容となつてつて来るかということについては、法律上何ら列挙されておる基準はございませんから、そこに政治的のニユアンスの問題が出て来るだろう。これは私の立場を離れたことになりますけれども、否定できないと思います。そこでニユアンスということはどこへ出て来るかと申しますと、解散後における緊急集会において、その当時の政府が出す内容というものと、すでに総選挙のあとで、両院も成立して新内閣もできたという場合に組んで出す暫定予算の場合と比べれば、その後の場合に多少新しい政策的なものは入つて来ても、これはおしかりを受けることにはならないだろうという意味のニュアンスを私は申し上げたつもりでございます。
  102. 尾崎末吉

  103. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 私は岡崎外務大臣に質問したいのですが、すなおに伺いますからすなおに御答弁願いたい。  私のお伺いしたいのは、不当なる軍事基地の接収、ないしは軍事基地で言葉が不明確であるならば、その中には試射場、演習場等も入ります。さよう御承知願いたい。私がお尋ねする問題の対象は、最も焦点の濃い石川県内灘村のいわゆる試射場ですが、この性質は御承知の通りであつて、ここに詳しく申し上げませんが、日本各地に問題が起きつつある。起きていないと当局の方はしいておつしやる態度があるが、実は国民として見れば起きておる。そこで特にそのうちの最もいやな性質を持つて来たもの——いやな性質というのはなぜか。内灘村の米軍試射場は、六月一日から無期限使用として米軍に提供するために、あすの閣議にあなたはおかけになつて、これを確認するという情報が伝わつておりますが、それをお認めになりますか。
  104. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまなお考慮中であります。
  105. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 考慮中というと、国民の立場から行くと、猛烈な反対運動を起せば、岡崎外務大臣は腰を抜かして、それをやめてあすは出さないかとも考えられる。私は、あすに迫つた閣議に出されるこの大きな問題を目下考慮中という二とでは、国民としても納得できないと思うし、質問者としても納得できないので、考慮なさるその要件はどういう点か、ひとつすなおにお答え願いたい。
  106. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 元来閣議に出す性質のものは、多くは非常に重要なものに限られております。従いまして常に最後まで考慮するのは当然であります。なお、現に私は本日も石川県の県知事初めいろいろの人に会いまして、それらの人の言う二とも十分考えなければならぬわけでありまして、これは考慮中であるのがむしろ当然であつて、これらの人の考えを全然ほうつておいて一方的にきめるということにすれば、その方がむしろ間違いだと私は考えております。
  107. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 考慮の意味はよくわかりました。私は重ねてこの公的な場所で申し上げたい。第四次吉田内閣が、最初から率直に事実を事実として二の内灘村の接収に乗り出されたならば、私はできたかもしれないと思う。しかるに政府の態度は、初めから終りまで、ほとんど県民を欺瞞するという態度であつたことは、これは私は天下が断じて認めると思う。しかも、岡崎外務大臣が、最初から矢面にお立ちになつて、今のような率直さで来たら、私はある程度地元の納得した条件が出たと思う。しかるに、介在するのに一国務大臣をもつてして、その一国務大臣の県民に対する要求の言辞というものは、今日から顧みると、ほとんどそのときどきの、言いかえればその場のがれの言辞であつたことが、今日の大きな反対の勢いをつくつたと私は信じて疑わない。その国務大臣はおやめになつた林屋前国務大臣——この間の参議院の地区選挙においては、政府日本初まつて以来の干渉をした。しかもその国務大臣は、候補者として規定の数の枚数以上、約三万に近いようなものを検印を押さずに張つた。その検挙さえもしなかつたが、しかも落選した。この落選したということは、単に自由党が不評判であつたということじやない。この人は、オフイシヤルには無所属を名乗つて出たが落選した。落選させられた。私はそう申し上げたい。それはなぜかというと、この内灘試射場問題を通じて、石川県民が各界各層立つて、一言にして言えば日本の七百幾つかの、約千に近いところの人の声を声として立つたのが、林屋前国務大臣の落選ののろしだつた、私はこう見る。従つてこれは、過去の吉田内閣の態度において、真の民主主義の政治は信義をもつて貫くべきだ。そうすればこの問題はある程度解決ができていたのを、できずに来たことは、私は信義を欠いていた一点にあると思う。もし岡崎外務大臣が、本日あの猛烈な勢いをもつて身命を賭して行こうという県民の反対の声をお聞きになつて、あすの閣議に最後決定をなさるという二とを考慮されるというならば、あすの閣議にはかけないで、もつと手を尽すべきが私は真実の外務大臣だと、こう申し上げますが、所見いかん。
  108. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まずお断りしておかなければなりませんことは、私は日米安全保障条約がいいか悪いか、これはいろいろ議論はありましようけれども、現在においてアメリカの駐留する軍隊を国内に置く以上は、これに対する飛行場や演習場や試射場は提供しなければならないことと思います。そこで、これを提供しなければならぬということはわかつてつても、自分のところでは困る、よそへ持つてつてくれ、こういう話を日本中がいたしますれば、それはどこへも持つて行きようはないのであります。従つて、もしわれわれがアメリカの駐留軍はもう不要だからいらぬ、こういうことが決定されない限りは、どこかにこういうものは置かなければならない。そこで、その場合には一体どこへ置くか。それはいろいろの考慮はありましよう。場所においても、またこれは当然補償等が伴いますので、政府としてはできるだけ補償の額の少くて済むようなところを選ぶのも、これは自然の考え方であります。そこで、こういう問題や、その他風紀の問題とか、いろいろの点がありますので、これらをまじめにわれわれは考えておりますけれども、いずれかのところを提供しなければならないという事実は、これをお認め願わなければならないと考えております。そこで、始終政府がいいかげんなことを申しておると言われますけれども、政府としては、いろいろの考慮から、とにかく四月末まで内灘を使おうということになりまして、そうして五月の一日からとにかく試射もやめておるのであります。しかし、政府として率直に申し上げますれば、他に適当なところがないので、でき得る限り地元の人々了解を得て、これを継続して使用したいという考えを持つておるのであります。そこで、今現に交渉をいたしておる最中であることは御承知の通りでありまして、この交渉がどうなりますかはわかりませんけれども、もし閣議にかける必要がある場合におきましても、この交渉のためにはやはり新しい問題も出て来ております。たとえば、たまの落ちる付近の町村に対する補償の必要の有無等もありますので、こういう点は、もし話を現実に進めるとすれば、やはり閣議の決定を経て、これこれの補償を出すのだということをきめてかからなければ、交渉ができない場合もあるのであります。こういう意味で、閣議にかけることの必要も一方にはあるのでありますが、しかし、現にきようも人々が来ていろいろの話がありますので、明日の閣議にそういうものをかけるかかけないかは、まだ時間もありますので最後的に考えよう、こう考えておりますが、しかし、先ほどお話の個人の問題については、私は言及いたしくたくありませんけれども、前国務大臣の林屋さんも、政府の意を体しまして、その結果がうまく行つたかどうか、それは別としまして、まじめに、円満に解決しようとして努力してくださつたことは事実と、私どもは考えております。できればひとつ地元の了解を得て、新たに話をとりきめたいと思つて、今いろいろ考慮中であります。
  109. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 たいへんいい言葉が出ました。私も林屋前国務大臣のとられた径路が、私は県民の一人として、日本国民の一人として、また衆議院議員として、実は不満足であります。私は率直にそう申し上げておく。終始これは欺瞞だ。しかし、林屋前国務大臣をお使いになつたということは、これは結局は責任吉田内閣に行くべきであり、当然岡崎外務大臣もそのうず巻の中に入りましよう。私はそう思う。他人のことは言いたくないと言うが、これは私の場所ではありません。公の場所で公人として、これは大いに論ずべきことだと思う。従つて、その交渉のあとは私はもう申し上げません。時間が惜しい。実に信義を欠いておる。今の言葉の中に地元とあつた。岡崎外務大臣も伊関国際協力局長も地元々々とおつしやるが、一体地元というのはどこですかへんな定義かベグリフを聞くわけではありませんが、あなた方の地元というのは、都合のいいところだけ地元にしている。地元はそうじやない。今の言葉の中にあつたが、試射場の損害というものは、撃つところの土地よりも撃たれるところの、たまの落ちるところの土地の方が損害が大きい。精神的な被害が大きい。そうすると、地元が拡大されて来る。どの辺まで地元とお考えになるか。県知事が地元の代表か、村長が地元の代表か、それとも撃つところの村だけか、どの辺だ。その辺は少しあれかもしれませんが、私はあなたの決意を聞くために必要なる条件ですから、お聞かせ願いたい。同時に、これは率直に申し上げます。あなたでおわかりにならなかつたら、伊関局長、ひとつ出てはつきりとしていただきたいと思う。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 地元と申し上げるのは、主として内灘村及び宇ノ気その他の着弾地に近接している地域でありますが、そこで、事は結局石川県でありますから、やはり石川県全体も広い意味では地元であります。しかし最もわれわれが対象といたしておる——補償で話がつくかどうかは別問題でありますが、かりに補償の問題を考えるときは、石川県全体というよりも、内灘なりあるいは宇ノ気とか、その他着弾する土地の人々の農耕がどうであるか、漁業がどうであるかという状況を直接の対象として考えております。
  111. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 わかりました。それだから私らは不審にたえない。結局これは一時使用だよ、そうして四月一日で打切るのだ、雪が降るところがあるから、雪の降らないところでやるのだ、そう信じておつたところが、今度は、ずつとやるのだ。もうこれは重ねて申しません。一時使用の形がコンクリートの柱になつたり、暖房装置ができたりして、どうしてああ金をかけて来るんだと、県民は、吉田内閣は、外務大臣は、国務大臣は、こういうときだから、県民をだまかして来たのだ、いまさら承知できぬと言います。よくありますよ。悪いごとわざですが、悪女の深情ということで、だまされればどんなやつでも怒ります。明日あなたが閣議にかけられるまでには考慮しよう、けつこう。うんと考慮して、閣議にかけない方がよろしい。大体公の場所で私もあなたに承つたし、同時にきようも申し上げたが、五月一ぱいは政府は全力を尽して交渉します、そうして善処しますと言つた。まだ五月一ぱいじやない。ぼくは三百代言のような言葉になりますが、やることがみんないけない。石川県の新聞によりますと、私は見て驚いたのだが、十七日の新聞に、金沢、大根布間行政協定道路に安全保障費で新拡張ということを言つておる。一方では、私どもに対しては、あなた及びあなたの部下は、いやこれは一時接収です、使用です、このごろになつて、無期限です、こう言つていて、片方では、安全保障費で道路をうんと建設省が——これは建設省当局がいたらお聞きしたいのですが、おそらく新聞は間違いありますまい。一億かけて金沢からその試射場まで道をつくる、こういうふうになだめておいてこつちでこうひつぱたく。なだめておいてこつちでとる。これじや吉田内閣の信義、道義高揚、大体あまり性格のいい内閣じやないのが、なおさら悪くなる。私がこの点であなた方にきよう申し上げたいことは、これを技術的にどう解釈なさいますか、どう解決なさいますかということよりも、ほんとうに道義をもつて、信義をもつてやることですよ。これが最も必要なことです。日本人というのは信義の前にはひれ伏します。こつちでは善処しますというのがせいぜいで、県知事なり副知事を呼び寄せたり、あるいはその村の村長さんや議長さんを呼んでおる。どんな硬骨漢でも、どんなりつぱな人でも、とにかく外務大臣、吉田内閣ではこうやると言われればしり込みします。そこのところはフェアにお考えになつてきようのことについては、あすの閣議にかけて、いわゆる無期限接収をなさることは、不祥の事態が起つたときに、責任はあなた方にありますよと申し上げておきたい。どうです。この行政協定道路ということは、外務大臣お聞きになつておりますか、伺いたい。
  112. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その話は私は聞いておりませんが、こういうことは従来から各地でございまして、たとえばある地区を使用するという場合には、それを予定しまして計画を立てる。しかし実際に実行もしておらなければ、また金もまだとつておらない場合でも、計画だけはつくることがあるのであります。これは建設省なりその他で、いざというときに間に合わないから、そういう場合を予想してつくるということは私の県にも現にありまして、大分問題になりましたが、結局これは実現しなかつたのでありますが、こういう事態もあると思います。しかし、おそらくそれは、かりにそういう事態なつたらばつくるという予定の計画だろうと考えております。また先ほど申しましたように、私はあなたのおつしやることはまことにその通りだと考えております。まじめに、またトリツクを用いないで、できるだけ話を進めてみたいと考えております。従つて、あした閣議にかけるといううわさが立つておりますのは、いわゆる継続的に使用する決定ではなくて、その交渉に、たとえば新しく宇ノ気にどうするとか、どこにどうするという条件が必要である場合に、これをかけようという話なのでありますが、しかしこれもまだよく考えてみないと、それだけでは十分であるかどうかもわからないので、そういう意味で今考慮中なのであります。片方五月一ばいはできるだけ誠意を尽して話を出そうという考えはその通りでありまして、決してそれを裏切るようなことはいたさないつもりでおります。
  113. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 だんだんよくわかりましたが、重ねてお尋ねします。日米合同委員会で、特にアメリカ側は六月一日から試射の再開をしたいという要求は盛んでありますか。強いものでありますか。それを日米合同委員会で引延ばすだけの外務大臣の力を発揮していただけますか。
  114. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは主としてアメリカ本国の意向のようでありますが、実は御承知のように、これは弾丸等の注文されたものを実際に使つてみて、適格かどうかを調べるわけでありますが、この注文をとるところは、私の聞いておりますところでは、他に二、三の外国で努力をいたしておるようでありまして、もしこれがおそくなるようならば、今後はほかへ注文せざるを得ないというような意向もちらちら見えておるようであります。アメリカ側としては、実はできればもつと早く試射を行つて、今まで注文したけれども、まだ試射ができずに、従つて受取れないでおるものがかなりあるようであります。こういうものを早く処理したいという考えがあるのでありますが、それはとにかく五月一ぱいはやめております。しかし話の模様によりましては、またさらにこれを考え直さなければならぬ事態も来るかしれませんけれども、われわれとしては、できるだけ五月一ぱいで、何とか話を円満につけたいという強い希望を持つております。
  115. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 私は、外務大臣を通じて、吉田内閣にこういつた態度はやめていただきたいことを要求したいのでありますが、それは申し上げた通り、信義と信義、言いかえれば胸襟を開いて、胸と胸をぶつけて行けばどうだということはおわかりだろうと思うが、一部ではこういううわさもある。吉田内閣は、内灘問題を何とか無理やりに無期限接収に解決すると、ほかもそれに右へならえで行くから、あそこにひとつ圧力を加えろという態度が見える。これはいけません。同時にまた、この点ははつきりしていただきたい。おそらく私は困つておるだろうと思う。商売人のような気持を持てば、惻隠の情も考えられる。それはとにかく、工事が一箇月ずれて遅れる。そこにまた一箇月試射したのですから、おそらくとんでもない大爆発をする爆弾が山をなしておる。もしこれがどこかで爆発をすれば、しりはまた外務大臣のところに行きますよ。あなたは、あんな日米安全保障条約を結んだのだからといつて、そんな独裁政治家的な——陳情もお聞きになるだろうと思う。それより、ほんとうに純朴な——祖先代々の浜を一時は使用さしたが、あとの態度はだまかされたということで、使用を絶対反対しておる。接収絶対反対、この声だけは、きようも大体あなたもお聞きになつたのですから、善処してくださると思うが、こういうことは局所的なことだが、実は全般的に通ずる血の問題であります。私は、日米安全保障条約と行政協定のもつと真劒な再検討ということを必要としておる段階に来ておると思う。しかし、北大西洋軍事行政協定がアメリカの上院で難航いたしておるところを見ると、日本もなかなかむずかしいと思うが、そこを貫いてやることが、岡崎ケース・バイ・ケースの外交が飛躍して、ほんとうに日本のための外交になるのですが、おやりになる熱意がありますかどうですか。初めての第五次内閣の外務大臣としてのあなたに、私は国民の一人としてお聞きしたい。
  116. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日米安全保障条約につきましては、これは条文も非常に簡単でありますし、ほとんどその趣旨を直すことでなければ、条文を直すということは私は意味はないと実は考えております。しかし、行政協定の方はいろいろ一年間やつてみまして、直した方がいいと考えるところもないことはないのであります。これは、私は今後さらに研究を進めますけれども、とにかく一年の間はこのままやつてみて、その結果によつてさらに考慮をするということになつておりますから、当然この点は考慮をいたしたい、こう考えております。但し、今おつしやつたように、北大西洋条約に関する批准の問題が、アメリカ側で今上院で研究されております。そこで行政協定の一番中心問題は裁判権の問題でありまするから、上院の批准が全然絶望であるというような場合は別として、今上程されんとしておるときに、その批准をまたずして裁判権の問題を別の意味で改革するということは、これは実際上困難であろうと思つておりますから、しばらく上院の批准状況を見てみよう。全然できないとか、あるいは一箇月たてばできるとか、こういう見当がつきましたときに、はつきり申し上げられるだろう、こう考えております。
  117. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 私は最後に外務大臣及び閣僚全体に要望したい。この問題は石川県の一内灘村の問題でありますが、本質は日本的な、全国的な問題であります。同時に、独立日本の本質に関する問題でありますから、過去のことは過去のこととして、ある程度目もつぶりますが、きようからはどうぞ率直に、大胆に、日本人の気持を尊重して、あすの閣議などには、考慮の結果やつぱりかけた方がよかつたのだ。——あすもこの委員会が続きますから、私はあとの質疑を留保して、ひとまず打切つておきます。
  118. 尾崎末吉

    尾崎委員長 辻原弘市君。
  119. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間が非常に迫つておりますので、要約をいたしまして、主として地方財政並びに教育財政の方面につきまして質問をいたしたいと思いますが、最初に文部大臣に対して御質問をいたしておきたいのであります。  暫定予算に盛られておる義務教育費の国庫負担につきまして……。
  120. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ちよつと辻原君に御了解願います。自治庁の関係で塚田国務大臣が出ておりますが、そちらの方を先にお願いできましようか。——文部大臣はちよつと時間がかかるそうです。
  121. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、それをあとに譲りまして、自治庁長官の方はこれに関連があつてのことで、あとで質問をいたしますから、大蔵大臣にお願いいたします。
  122. 尾崎末吉

    尾崎委員長 どうぞ。
  123. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまの問題とは違うのでありますが、四、五月の暫定予算の中で一応若干の金融措置がとられておりますが、二の金融措置の問題に対しまして、昨日来お伺いをいたしますると、六、七月の暫定予算は大体四、五月の暫定予算方針を踏襲して国会に提出をする、こういう編成方針で進められておるようでありますが、ただいま御承知のように、本予算国会解散という事態に逢着をいたしまして、中小企業といわず、あるいは地方財政といわず、すべて非常な金融難に逢着いたしておりますことは、御承知の通りであると思います。この点に関しまして、四、五月の暫定予算を見ますると、一般会計、運用部並びに簡易保険その他の預金部から、合計いたしまして約百七十九億が金融措置としてすでに計上されておりますが、この点につきまして、近く提出される六月の暫定予算並びに予想されておる七月の暫定予算においては、どの程度考慮せられておるものか。四、五月の暫定予算とほぼ同額程度か、あるいは現在の状態から、この問題に対しては、相当将来を展望されて、思い切つた予算外の金融措置をとられようとするのか。この点に対して大蔵大臣の御見解並びに方針を伺つておきたい。
  124. 河野一之

    河野(一)政府委員 六月の暫定予算につきましては本日御提出申し上げたのでございまして、七月の暫定予算をもしやるといたしまして、これをどういうふうにするかということにつきましては、まだ方針がきまつておりませんが、六月分の御提出申し上げました予算案におきましては、民間への資金供給は、一般会計から三十億、資金運用部から四十九億、見返り資金かえら六十億というふうに組んでおります、それから政府事業、国鉄、電電公社等におきましては資金運用部から十二億、その他地方債といたしまして、起債として三十億ございますが、そのほかに短期債として百六十億円程度は、六月中に、七月の暫定予算において措置をいたしたいと考えております。
  125. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまの問題はそれにいたしまして、文部大臣が見えたようでありますから、最初の質問に移りたいと思います。主として義務教育費の国庫負担金の問題に関連をいたしてでありますが、暫定予算におきましては国庫負担金が約八十九億計上せられておるのであります。この八十九億を組むにあたつて問題となりますのは、これは御承知のように、現行の義務教育費の国庫負担法、これに基いて計上せられたものであると考えておるのでありますが、そういたしますると、八十九億を組む基礎資料というものがどういう形でつくられたか、この点が非常に重要な問題となつて参りますので、最初にどういう資料を用いられて計上をせられたか、あるいはその資料が大体どの時期のものであるか、この点に対してお伺いをいたしておきたいのであります。
  126. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 ただいまの問題につきましては、政府委員をして答弁いたさせますから、御了承を願います。
  127. 田中義男

    ○田中(義)政府委員 四月、五月の教育費に関しまする暫定予算を計上いたします場合に、その算定基礎といたしましては、まず教員の数でございますが、その数は昭和二十七年の五月一日の子弟統計の数字を基礎にいたしまして、そして二十八年度における生徒、児童の増加数を基礎とした先生方の数の増加、こういうものを見込みまして、そして一応二十八年度の先生の数の基礎といたしました。それから給与の単価でございますが、これは本年の一月に各都道府県から報告をいただきまして、その場合の実額平均を基礎として、二十八年度の予算の算定基準といたしました。
  128. 辻原弘市

    ○辻原委員 こまかい数の点につきましては、またいずれ別の委員会でお伺いいたしまするので、その点には触れませんが、問題は、法律によりますると、この法律の趣旨は、各都道府県の実支出額の二分の一を国庫負担金として交付する、こういうふうに相なつておりまするが、ただいまお伺いをいたしてみますると、この二十八年の四、五月の暫定予算は、二十七年五月に調査せられたいわゆる子弟統計に基いて計上せられておる。もちろんそれに対する見通しの補正はやられておるようであります。ところが、実際問題として、たとえば本年の三月等におきましては、私の知るところによりますると、相当量国庫負担金が予想よりも少い。あるいは最近の地方財政の現況から、とうていこれは都道府県が自己財源でまかなうことができない。いろいろな理由からいたしまして、高年齢者の強制退職、あるいは助教諭、女子教員といつたものの転退職、こうしたものが相当全国的に大幅に行われておるということの事実を私は知つておるのでありまするが、かりにこうしたことが行われるということの問題を掘り下げて行けば、さらにいろいろな問題が出て来ると思うのでございます。今述べられたような形において組まれた予算、このものがはたして各都道府県の実支出額であるかどうかという問題は、大きな問題として残されると思います。その問題は一応さておきまして、ともかくこの調査の資料をもつてやられた場合、三月にそういう大きな異動が行われたということになれば、これは大きく変動して来ると私は考えるのであります。そうした場合にここに変動が生ずる。場合によれば相当の増額をしなければならぬ。あるいは減額を必要とせねばならぬ。そうしますと、現在のこの国庫負担法の建前で行けば、当然その補正が行われなければならぬと思うのでありますが、その補正の用意を現在文部大臣はお考えになつておるかどうか。同時に、この点が予算上の問題でございますので、これは相当論議せられた問題でありますが、大蔵大臣も、近い将来において、この点に対する補正を考えられておるかどうか。  いま一点は、これは半額負担という建前でありますから、当然事は平衡交付金に影響して参るはずでありまして、ここに平衡交付金の単位費用の変更ということも余儀なくせられるのではないか、かように思うのであります。その点に対しましても、自治庁長官は、将来そういう事態が当然——現在正確に数字を洗えば、これは起つておると思うのでありますが、この補正並びに予算措置等の用意ありやいなやということを伺つておきたいのであります。
  129. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 現行法におきまして、実支出額の二分の一ということが明らかに規定せられておるのでありますから、その通りせなければならぬ。これはもちろん申すまでもないのであります。四、五月分につきましては概算払いであります。後日実際の支出額がわかつた場合に、補正せられるもの、また補正すべきものと存じます。
  130. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいま大臣から明確な御答弁をいただいたわけであります。変動が生じた場合は必ず補正をする、こういう文部大臣の方針が明らかにせられたのでありまするが、この点は絶えず、予算編成の場合に、従来文部当局と大蔵当局との間、あるいは自治庁との間に見解の相違が生れておりまするので、同じ見解を大蔵大臣もお持ちになつておられるかどうか。この点も承つておきたいと思います。
  131. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 本予算編成の際十分考慮いたしたいと考えておりますが、一般にわたつての補正予算そのものは、ただいまのところ考えておりません。
  132. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま一点この問題に関しまして、ただいまの文部大臣なり大蔵大臣のお考えによれば、私は多くを聞く必要はないのでありまするが、現在の平衡交付金という地方財政運用の制度の建前の上にこの負担法が置かれておるわけでありまして、そういたしますると、今申しましたように、この実支出額が地方でふくれて参りましたのを、自動的に国が補填をする、こういう方法を踏襲されてその補正をする、こう言明なさつたわけでありますが、この制度をずつと今の大臣のお話のように踏襲せられるということでありました場合に、やはり若干問題となりますのは、富裕団体と貧弱団体、この間におけるいわゆる多少不公平な——もちろんこれは財政上の見地を離れまして、教育上の見地、教育財政の見地から考えてみますると、これは富裕団体に対して多額の交付金をやるということは、教育奨励の意味においてわれわれも大賛成であります。一面しかしながらこのことが、半額国庫負担法をつくる場合に、相当財政当局から反対のあつた点でありまして、従つてこの点も私は相当明確にいたしておかなければならぬと存じますので、そういう富裕団体と貧弱団体との調整といつたような問題については考慮せられておるのか、あるいはこの点については、私が申しましたように、教育奨励的な意味において、今後もこれは多少の財政上の問題はあるけれども、それはそのまま踏襲して行くのだ、こういうふうに考えられておるのか、この点につきましてもお伺いをいたしておきたい。これは当然地方財政の面もありますので、文部大臣と、それから自治庁長官の御見解も伺つておきたい。
  133. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 本予算編成の際に、平衡交付金法及び関係政令を十分検討いたしまして、御希望に沿うて行きたいと考えます。
  134. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の御質問申し上げた趣旨と若干違うと思います。これは今御答弁になりましたような交付金で調整をされるということは、実際問題として私はおそらく不可能ではないかと思うのであります。私の申しましたのは、交付金で一応調整される、その上に同率の負担金が参るということになれば、そこに問題が出て参るわけでありますから、そういつた点についていかなる方法で調整されるかということを御質問申しましたので、その点お伺いをしたい。これは、私は最初に文部大臣にお伺いをしておきたいと思います。方針の息でありますので、文部大臣にお伺いをしたい。
  135. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは、方針の問題というよりも、現行法がはつきりと実支出額の二分の一ということを規定しているのでありますから、その通りに執行せられて行くべきもの、かような意味で申し上げたのであります。
  136. 辻原弘市

    ○辻原委員 その通りでありまするならば問題はないのでありまして、後日本予算編成等の場合に、このものが問題だから何とかしなければならぬというふうな事態の予想を全然せられていなければ、私はいいと思う。私は必ずしも財政上の見地のみでこの法律考えませんので、その点は今文部大臣が言われたように、当然法律にそうあるから、その方針を踏襲して行くということでありまするならば、そのように私は確認さしていただきまして、これでその問題に関する限り質問は終りたいのでありますが、はたしてそうであるのかどうか。この点明確に伺いたい。  なお、おわかりにくいようでありますので、若干申し添えますが、話はさかのぼりますけれども、前国会に義務教育学校職員法を出しました経緯の一つには、当然この法律が現存しておつたわけであります。でありますから、いわゆる国庫負担法の運用として、この法律で欠陥がないということでありましたならば、義務教育学校職員法の半分と私は申したいのですが、これは当然財政法を含んでおるのでありますから、その点に対する特別な立法措置というものは全然いらなかつたわけであります。いらないということならば、なぜ不必要なものを出したかという問題にこれは触れて参るのでありますから、いま少しくこれは具体的にお伺いをいたしておきたい。
  137. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは、現行法が改正せられない限りそうあるべきだということを申し上げたのでありまして、それにかわるべき他の法律案もしくはこれを改正する法律案が出た場合には、おのずからそれが成立した場合において違つて来ることはもちろんであります。先ほど富裕府県と貧弱府県というふうなお話があつたようでありまして、それに関連しての、またそのお気持での御質問考えたのでありますが、半額国庫負担法には但書の規定があるように記憶しております、これがどういうふうに実際適用されますか。特別の事情がある場合においては云々というような規定があるわけでありまして、この辺はどういう特例を置くかということは、関係方面とまだ結論を見ておりません。その点だけを申し上げておきます。
  138. 辻原弘市

    ○辻原委員 詳しく論争をするいとまはないのでございますから、ただいまの御答弁では非常に不十分でありまするが、もう少し私も端的に聞いてみたいと思うのです。今大臣のお話によれば、現行法律の範囲内においてそういうことの調整は可能だということをにおわされたわけでありますが、そうでありますならばそれでいいのでありますが、それ以外に、そういう財政法上の問題を別途法律等でいま一たびやられるような心組みをお持ちになるのか、あるいは現行法律の修正等をやつて、そうしてそうした問題を調整して行こうとお考えになるのか、あるいは具体的に申しますると、二の法律ができました当時、両院における審議の過程で明確になつておりますることは、富裕団体と貧弱団体等の問題が起るが、これに対しては今大臣が引用せられました法律の最高限度云々ということでもつて、将来にわたつて調整するというようなことは全然考慮せられておらない、今後行われる税制改正考えて、その中でやつて行くということを言われておるわけなんでありまして、だから、いかなる方法によるのか、この点について私はお伺いをしておきたいのでありまするから、全然そういうことを現在考慮されておらないのであれば、これはその通りお答えを願いたいし、その方針によりまして、この負担法の運用というものが非常にかわつて参りまするから、その点をひとつ明確に、ただいままでわかつております範囲を大臣から御答弁を願いたい。
  139. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 現在の法律の範囲におきましては、御承知のように半額国庫負担法に基く政令で、できる限りの措置をいたします。しかし御指摘のように、十分調整がつきかねる面もあろうと思いますので、これは地方税制全般の改正とにらみ合せて、その機会に十分考え直したい、こういうふうに考えております。
  140. 辻原弘市

    ○辻原委員 大体はつきりいたしましたので、最後に私も確認をいたしておきたいのでありまするが、ただいまのお話によりますれば、この点はできる限り現行法律の範囲内でもつて調整等をはかる。いま一つは、それで不可能の場合には、将来にわたつての税制改正の中でこれを考慮して行くというお話でありまするから、これは少くとも今日財政法である国庫負担法の運用については、別途法律の必要はないというお考えで進まれている、こういうふうに私は了解をいたしたのでありますが、そのように考えてさしつかえないかどうか、その点をいま一度お伺いいたします。
  141. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 現在の段階では、そういうふうに御了解つてさしつかえないと思います。このようにお答え申し上げます。
  142. 辻原弘市

    ○辻原委員 大体終りました。
  143. 尾崎末吉

    尾崎委員長 本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後五時十五分散会