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1953-05-23 第16回国会 衆議院 昭和二十八年度一般会計暫定予算につき同意を求めるの件外六件特別委員会 第3号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十三日(土曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 橋本 龍伍君    理事 西村 直己君 理事 川崎 秀二君    理事 成田 知巳君 理事 川島 金次君    理事 山口 好一君       植木庚子郎君    川島正次郎君       迫水 久常君    鈴木 正文君       辻  寛一君    富田 健治君       灘尾 弘吉君    西村 久之君       羽田武嗣郎君    井出一太郎君       喜多壯一郎君    中村三之丞君       橋本 清吉君    福田 繁芳君       伊藤 好道君    久保田鶴松君       田中織之進君    辻原 弘市君       古屋 貞雄君    河野  密君       西村 榮一君    吉田 賢一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         通商産業大臣  岡野 清豪君         郵 政 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         総理府事務官         (自治庁次長) 鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      金丸 三郎君         法務事務官         (矯正局長)  中尾 文策君         法務事務官         (入国管理局         長)      鈴木  一君         大蔵事務官         (大蔵大臣官房         長)      森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君     ————————————— 五月二十三日  委員井出一太郎君及び古屋貞雄君辞任につき、  その補欠として中村三之丞君及び辻原弘市君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計暫定予算につき日本国  憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求め  るの件(内閣提出予同第一号)  昭和二十八年度特別会計暫定予算につき日本国  憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求め  るの件(内閣提出予同第二号)  昭和二十八年度政府関係機関暫定予算につき日  本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を  求めるの件(内閣提出予同第三号)  国会議員選挙等執行経費基準に関する法  律の一部を改正する法律昭和二十八年法律第  二十二号)につき日本国憲法第五十四条第三項  の規定に基く同意を求めるの件(内閣提出、法  同第一号)  国立学校設置法の一部を改正する法律昭和二  十八年法律第二十五号)につき日本国憲法第五  十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件(  閣提出、法同第二号)  不正競争防止法の一部を改正する法律昭和二  十八年法律第二十六号)につき日本国憲法第五  十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件(  内閣提出、法同第三号)  期限等の定のある法律につき当該期限等を変更  するための法律昭和二十八年法律第二十四  号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定  に基く同意を求めるの件(内閣提出、法同第四  号)     —————————————
  2. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 これより会議を開きます。
  3. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 昭和二十八年度一般会計特別会計及び政府関係機関の各予算は、三月十四日衆議院解散せられました結果、不成立となりましたので、政府は、日本国憲法第五十四条第二項但書により三月十八日参議院緊急集会を求め、財政法第三十条の規定によりまして昭和二十八年度のうち四月及び五月分にかかる暫定予算提出し、同月二十日議決成立いたしましたが、このことは日本国憲法第五十四条第三項によりまして衆議院同意を必要といたしますので、御審議をお願いいたす次第であります。  次に、参議院緊急集会において議決されました、昭和二十八年度四、五月分の暫定予算概要を御説明申し上げます。  この暫定予算は、年間予算が成立するまでの暫定的なものでありますので、新たに成立した法律実施に伴うもののほか、新規計画に伴う経費はこれを避けることといたしました。従つて、この暫定予算におきましては、国政の運営上どうしても必要なもののみでありまして、いわば骨格予算であります。以下その内容を簡単に御説明いたします。  一般会計暫定予算歳入一千百四十五億円余、歳出一千四百十七億円余でありまして、差引二百七十二億円余り歳出超過なつておりますが、この不足額は、国庫余裕金及び大蔵省証券の発行により支弁いたすこととなつております。  歳入におきましては、税制の改正案酒税法改正を除き、前国会において審議未了となりましたので、所得税については、給与所得者等負担軽減措置を継続することを肝要と考え、本年一月ないし三月にとられた臨時措置を二箇月間延長することといたしました。その以外は原則として現行法によることといたしまして四月及び五月における収入額を見積り、租税及び印紙収入千三十四億円余、官業益金その他百十一億円余、計千百四十五億円余を計上いたしました。専売納付金及び前年度剰余金歳入の時期的関係から計上いたしておりません。  次に、歳出につきまして御説明いたします。  まず第一に、防衛支出金に百五十億円、保安庁経費に五十八億円を計上いたしました。防衛支出金のうち、駐留米軍に対する交付金は、行政協定に基くとりきめによりまして四半期ごとに交付する必要がありますので、年間所要額の四分の一とし、施設提供等の諸費は二箇月分を計上いたしました。  保安庁経費は、施設、装備の強化に要する経費は一切計上せず、最小限度維持費のみにとどめております。なお、平和回復善後処理及び連合国財産の補償に関する経費は、さしあたり必要がありませんので、計上いたしておりません。  また、さき国会において恩給法の一部を改正する法律案不成立に終りましたので、旧軍人等恩給の復活に要する経費は計上いたしておりません。但し戦没者遺家族戦傷病者留守家族に対しましては、従前の援護措置を続行するごととなるのでありますが、この暫定予算では支出時期の関係留守家族の分のみを計上いたしております。  第二に、地方財政に関しましては、四月一日より実施せられる現行義務教育費国庫負担法規定により、義務教育費国庫負担金の二箇月分の所要額八十九億円を計上いたし、なお地方財政平衡交付金の二箇月分の所要額百八十七億円を計上いたしました。  第三に、公共事業食糧増産対策事業その他の建設事業につきましては、継続にかかるものについて最小限度事業実施することといたしまして、所要額を計上いたしました。  第四に、出資投資としては、さき国会において成立した農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律によつて公庫資本金が増額されましたので、これに対する出資として二十億円を計上するにとどめました。なお、この期間における国民金融公庫住宅金融公庫等の貸出し業務を維持するためには、資金運用部資金を活用いたしたのであります。  暫定予算新規に計上した経費は、衆参両院議員選挙に必要な経費及び中共地域よりの引揚げ促進に必要な経費等、真に最小限度のものにとどめております。  次に、特別会計及び政府関係機関暫定予算におきましても、一般会計について申し述べた方針に準じて四月及び五月に必要な金額を計上しております。不成立となりました年間予算と異なりました点は、一方において産業投資特別会計法案その他の法律案審議未了となりましたために、廃止される予定米国対日援助見返資金特別会計及び米国日援助物資等処理特別会計が存続されることとなつたことと、他方において新設される予定であつた産業投資特別会計等設置中小企業金融公庫の設立がとりやめとなつた等の点であります。  以上をもちまして昭和二十八年度四、五月分の暫定予算概要説明といたす次第でございます。
  4. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 次は、国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律昭和二十八年法律第二十二号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件について政府説明を求めます。自治庁長官塚田十一郎君。
  5. 塚田国務大臣(塚田十一郎)

    塚田国務大臣 ただいま議題なつておりまする私の所管の法律——日本国憲法第五十四条第三項の規定により、国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律につき、本院の同意を求めるために提案いたしました理由の概略を御説明申し上げます。  国会議員選挙等執行経費基準に関する法律は、国がその経費を負相する国会議員選挙最高裁判所裁判官国民審査及び日本国憲法第九十五条の規定により一の地方公共団体のみに適用される特別法の制定に関する住民投票につきまして、都道府県及び市区町村に交付する選挙執行経費基準を定めるものでありますが、昨年末、公務員給与基準が従来の一万六十二円から一万二千八百二十円に改訂せられたのに伴いまして、これらの選挙投票、開票、選挙会その他の選挙事務に携わる都道府県及び市区町村の吏員に支給する超過勤務手当額を、この改訂給与基準額に即するよう改訂する必要がありましたので、この法律の一部を改正する法律案を第十五国会提案いたしていたのでありましたが、衆議院解散せられましたために、審議未了終つたのであります。しかしながら、当時参議院議員通常選挙はすでに予定されており、加うるに衆議院解散により衆議院議員の総選挙をも執行することに相なりましたので、これらの選挙を円滑に管理執行するためには、その執行経費につきまして、至急法律の一部を改正し、公務員改訂給与額に基く超過勤務手当を支給することは当然であると考えまして、これに関する法律案参議院緊急集会提案いたしたのでありまして、緊急集会においては異議なく可決され、三月二十四日に法律第二十二号として公布せられたのであります。  本法律参議院緊急集会提案され、かつ議決せられました事情は右の通りでありますので、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御同意あらんことを切望する次第であります。
  6. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 次は、国立学校設置法の一部を改正する法律昭和二十八年法律第二十五号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件について政府説明を求めます。文部大臣大達茂雄君。
  7. 大達国務大臣(大達茂雄)

    大達国務大臣 ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件につきましてその提案理由を御説明申し上げます。  国立大学における昭和二十七年度以前に設置された学部学科等学年進行に基く年次計画による職員定員の増加及び新制大学への切りかえの年次計画による大学院開設のための必要な措置として、参議院緊急集会において国立学校設置法の一部を改正する法律が議決されました。従つてこの法律につき日本国憲法第五十四条第三項の規定により衆議院同意を得るために、この案件を本特別国会提出した次第であります。  この法律内容は、さきの第十五国会政府から提出した国立学校設置法の一部を改正する法律案のうち、本年四月一日以降当然に進学して来る学生に対する教育支障なく遂行するため、昭和二十八年四月一日からぜひとも施行を必要とする部分の規定を取出したものであります。  この法律施行の結果、今日国立大学において、前年度の職員定員に比して五百二十七名の増員となり、また北海道大学外十一の国立大学大学院開設され、すでに教育が開始されております。  この案件提出理由及び内容概要は以上の通りでありますので、どうかすみやかに御同意くださるようお願い申し上げます。
  8. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 次は、不正競争防止法の一部を改正する法律昭和二十八年法律第二十六号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件について政府説明を求めます。通商産業大臣岡野清豪君。
  9. 岡野国務大臣(岡野清豪)

    岡野国務大臣 不正競争防止法の一部を改正する法律につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件について提案理由を御説明申し上げます。  先般発効いたしましたるわが国連合国との間の平和条約に付属しておりまする宣言によりますると、わが国は、平和条約最初効力発生の後一年以内、すなわち本年四月二十八日までに、いわゆる貨物の原産地虚偽表示防止に関するマドリッド協定加入することになつており、すでにその手続をとつておりますが、この加入に伴い不正競争防止法の一部を緊急に改正する必要がありましたので、去る三月の参議院緊急集会提出し、その議決を得て、三月二十六日公布されたのであります。  そもそも自由競争に立脚した経済の健全かつ公正な運営は、国際信用を高め、貿易を振興し、わが国経済再建の原動力となるものでありまして、すでに去る昭和二十五年、当時の不正競争防止法を大幅に改正強化いたしておるのでありまして、マドリッド協定の趣旨はおおむね織り込まれておるのでありまするが、協定実施上若干の点につきましては、なお不十分と思われますので、協定加入に伴い、虚偽原産地表示を付する行為につきましては、その範囲を拡張いたしまするとともに、ぶどう生産物地方的名称でありまして普通名称なつておりまするものをも取締りの対象といたしたのであります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御同意あらんことをお願いいたします。
  10. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 次は、期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律昭和二十八年法律第二十四号)につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件について政府説明を求めます。内閣官房長官福永健司君。
  11. 福永政府委員(福永健司)

    福永政府委員 ただいま議題となりました期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く同意を求めるの件について提案理由を御説明申し上げます。  過日の衆議院解散に伴いまして、有効期限等の定めのある法律中、今回の特別国会開会までの間にその期限等の到来するものが生ずるごととなつたのでありますが、これらの中には、諸般の状況から見てこれをそのまま放置するときは種々の支障を生ずるおそれのあるものが少くなかつたのであります。本件の法律は、右の支障を避けるため、関税定率法外十五の法律につきまして、その定める期限延長等について所要改正措置を講じたものでありまして、さき参議院緊急集会において議決され、三月二十六日公布即日施行されたのであります。政府といたしましては、この法律につき日本国憲法第五十四条第三項の規定に基く衆議院同意を求めるために、この案件提出した次第でございます。以下、この法律内容中主要なものについて御説明いたします。  まず第一に、法律そのものが失効するものといたしまして、国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律国際的供給不足物資等需給調整に関する臨時措置に関する法律及び恩給法特例に関する件の三件があつたのでありますが、これらの失効によつて法の空白が生ずることは避くべきことと認められますので、とりあえずその有効期限をそれぞれ二箇月延長することといたしたのであります。  次に、租税関係につきましては、学校給食用乾燥脱脂ミルク大豆その他の農産物、産業用重要機械類輸入税の減免並びに給与所得及び退職所得についての軽減措置が三月限り失効するごととなつておりましたので、これらの期限をそれぞれ二箇月延長することとし、なお地方税につきましては、昭和二十八年分についても従来通り附加価値税にかえ事業税及び特別所得税を賦課徴収することとしたのであります。  次に、引揚擁護庁は三月限り外局から内局となることになつていたのでありますが、これも最近における引揚げ再開等に伴いましてとりあえず五月末日まで外局として存置することといたしたのであります。  最後に、施行期日延長に関するものとして、外国人登録法中の指紋押捺に関する規定は、本年四月中に施行されることとなつていたのでありますが、これにつきましても、諸般事情にかんがみて、先の諸件同様、今回の特別国会開会までの間、一応現状のままとすることが適当と認められましたので、六月一日までその施行を延期することとしたのであります。  なお、以上のほか、この法律には、その他若干の改正措置も含まれておりますが、これらにつきましては、政府委員細目説明に譲ることといたします。  この法律は、以上のような措置を講じたものであります。何とぞよろしく御審議の上、この法律についてすみやかに同意せらるるようお願い申し上げます。
  12. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 次に、政府委員より補充説明を求めることといたします。文部省大学学術局長稲田清助君。
  13. 稲田政府委員(稲田清助)

    稲田政府委員 ただいま議題なつております案件につきまして、補足して御説明申し上げます。  国立学校設置法の一部を改正する法律において改正いたしました第一点は、国立学校設置法の第三条の二を第三条の三とし、新たに第三条の二に国立大学に置く大学院開設規定いたしました。大学院を置く大学北海道大学、東北大学、東京大学、東京教育大学、東京工業大学、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学、広島大学及び九州大学の十二の大学であります。  この法律における改正の第二点は、別表第一の改正でありまして、国立大学に置かれる職員定員増による改正であります。改正後の定員は六万一千百三十九名で、前年度に比し五百二十七名の増となつております。五百二十七名の内訳は、大学院開設によるもの百名、昨年度以前に設置した学部学科、短期大学及び付属学校等学年進行によるもの四百二十七名であります。  次に、この法律附則第一項は、施行期日昭和二十八年四月一日といたしておりますが、これは、学年進行によつて大学院及び関係学部学科等上級学年に当然学生が進学して来るためであります。この法律施行されて、今日すでにそれらの学生が進学して来ております。  最後に、この法律附則第二項は、行政機関職員定員法改正でありますが、これは、さきに申し上げました別表第一の改正による文部省職員定員改正に伴うものであります。
  14. 尾崎委員長(尾崎末吉)

  15. 林政府委員(林修三)

    林政府委員 ただいま、期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律の大体の内容につきましては、官房長官より御説明がございましたが、さらにこの法律につきまして逐条的にその内容を御説明いたしたいと思います。  まず最初に、この法律による措置は、衆議院解散に伴い特別国会開会までの暫定的、臨時的のものであるということを念頭に置きまして、暫定予算の組み方などともにらみ合せ、特別の理由のあるものを除きまして原則として期限等延長は二箇月にとどめることにいたしたのであります。  次に、各条の内容について御説明申し上げます。  第一条第一項は、法律規定中「昭和二十八年三月三十一日」となつております規定を「昭和二十八年五月三十一日」ということに改めたのであります。ここに上つております法律は全部で八件であります。  まず第一の関税定率法附則第二項でありますが、これは、小学校または盲学校、聾学校もしくは養護学校小学部もしくは保育所の児童の給食用乾燥脱脂ミルク輸入税免除期間昭和二十八年三月三十一日までとなつていたのを、二月延長いたしまして五月三十一日までとしたものであります。  第二の租税特別措置法第二十六条第一項は、航空機燃料用ガソリン揮発油税は、昭和二十八年三月三十一日までに製造場または保税地域から引取揮発油については免除されていたのでありますが、この免除期限がここで切れますので、これを二月間延長して、五月三十一日までに引取揮発油について免除することとしたものであります。  第三は、少年院法第二十一条でありますが、これは、改正前の少年院法第二十一条第一項によれば、本年の三月三十一日までの間に限り、少年院または拘置監の特に区別した場所少年鑑別所に充てる、いわゆる代用少年鑑別所制度が認められております。また、同条第二項によれば、本年三月三十一日までの間に限り、少年刑務所の特に区別した場所特別少年院に充てる、いわゆる代用特別少年院制度が認められていたのでありますが、現在なお少年鑑別所及び特別少年院施設は十分でありませんので、この特例措置をさらに二月間延長したものであります。  第四は、関税定率法の一部を改正する法律附則第五項でありますが、これは、こうりやん、とうもろこし、大豆、重油、航空機等輸入税は、本年三月三十一日までの輸入については免除され、ガソリン建染め染料等につきましては軽減税率が適用されていたのでありますが、その免除または軽減期間を五月三十一日まで二月間延長することといたしたのであります。なお附則第六項の方は、産業用機械類のうち、新式または高性能でわが国では製作困難であり、かつ経済自立達成に資する産業用のものの輸入税は、本年三月三十一日までの輸入については免除されておつたわけでありますが、これを五月三十一日までの輸出について免除するこことしたものであります。  第五は、恩給法特例に関する件の措置に関する法律第二条でありますが、これは、旧軍人軍属及びその遺族について恩給の停止を定めておりました恩給法特例に関する件というポツダム勅令法律としての効力が本年三月三十一日限り失効することを定めたものであつたのでありますが、これについては何らかの法的措置を必要としますので、とりあえずこれを五月三十一日まで二月間延長したものであります。  第六の国家行政組織法の一部を改正する法律附則第三項と第七の行政機関職員定員法の一部を改正する法律附則第六項は、ともに本条第二項の第二号に掲げられております厚生省設置法の一部を改正する法律の一部改正とも関連するものでありまして、引揚援護庁は、本年の三月三十一日までは厚生省外局として置かれ、四月一日以降同省の内局たる引揚援護局となることとなつていたのでありますが、中共からの引揚げをも考えて、これをさらに二月間、すなわち五月三十一日まで外局のまま存置したことに伴うものであります。  第八は、保安庁職員給与法第二十八条の改正でありますが、改正前の規定によれば、昨年十月十五日から本年三月三十一日までに保安隊の二等保査として採用された者には、二年間勤務した後退職または死亡したときは、これに俸給の百日分の退職手当を支給することになつており、またこれらの者及び昨年八月一日から本年三月三十一日までに警備隊の警査長以下の警備官として採用された者が、採用後二年内に公務上死亡しまたは傷痍疾病により退職した場合には、勤続期間一月につき四日の割合で計算した日数分俸給額に相当する退職手当を支給することになつていたのでありますが、保安庁職員に関する退職手当制度が別途制定されるまでの間の暫定措置として、この採用期間の終期をとりあえず五月三十一日まで二月間延長したものであります。  第一条第二項は、法律規定中「昭和二十八年四月一日」となつておりましたのを「昭和二十八年六月一日」とし、二月間延長したものであります。この関係法律は二件でありまして第一は、国際的供給不足物資等需給調整に関する臨時措置に関する法律附則第二項でありますが、この法律は、何らの立法措置をしないときは本年四月一日に失効することとなつておりましたので、本法の有効期間をとりあえずさらに二月間延長したものであります。第二は、厚生省設置法の一部を改正する法律附則第一項であります。これは、引揚援護庁を本年四月一日より内局の引揚擁護局としたものでありますが、先ほど御説明申し上げました通り、とりあえずなお二月間は現状のまま引揚援護庁として存置したものであります。  以上が法律の第一条関係でございます。  次に、第二条について御説明申し上げます。本条は、昭和二十一年度一般会計終戦処理の財源に充てるための借入金に関する法律、及び帝国鉄道会計又は通信事業特別会計における昭和二十一年度の経費支弁のための借入金等に関する法律に基き、借り入れました借入金の償還期限は、昭和二十七年末となつていたのでありますが、この償還期限を六月一日まで延期する契約を結ぶことができるようにしたものであります。  第三条は、金管理法第二十条第一項に関するものでありますが、これは、金鉱業者がその事業に必要なものであるとの証明を主務大臣から受けて輸入しました試錐機、パイン油等につきましては、本年四月末までの間輸入税免除することとなつていたのでありますが、この免除期間を五月末まで一月間延長したものであります。  第四条は、国家公務員等に対する退職手当に関するものでありまして、改正前の規定では本年三月三十一日限りその効力を失うものとなつておつたのでありますが、これをさしあたり五月三十一日まで二月間延長したものであります。  第五条は、地方税法のうち、附加価値税並びに事業税及び特別所得税制度に関するものであります。改正前の規定では、地方税につき何らの措置をいたしませんと、昭和二十八年度から、これまで延期されておりました附加価値税の制度実施しなければならないこととなつていたのでありますが、昭和二十八年度につきましては、従前通り、附加価値税の実施にかえて事業税及び特別所得税制度をなお維持して行くことが必要であると考えましたので、このために地方税法中所要改正を加えたものであります。  第六条は、外国人登録法に関するものでありまして、改正前の同法によれば、指紋押捺に関する規定は、同法の施行の日から一年以内で政令で定める日から施行されることとなつておつたのであります。同法の施行されましたのは昨年の対日平和条約の発効の日でありましたから、この指紋押捺規定は本年四月二十八日までに施行しなければならないこととなつていたのでございますが、右施行期限を本年六月一日まで延長したものであります。  最後に、第七条は、所得税の臨時特例措置延長したものであります。すなわち、給与所得及び退職手当につきましては、昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法律によりまして、本年一月から三月までの支給分は、政府昭和二十八年分所得税について予定していました減税措置を織り込んで軽減したところに従つて源泉徴収しておつたのでありますが、従つて今回の特別国会所得税に関する改正措置が行われるまで、この特別措置をさらに二月間すなわち四、五月分についても行うこととしたものであります。  最後に、附則の第一項はこの法律施行期日及び地方税改正規定の適用関係を定めたものであります。第二項は経過措置として必要な事項は政令で定めることを規定しております。  以上で各条の細目についての御説明を終ります。
  16. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 それでは午前中はこの程度といたし、午後正一時より再開して質疑に入ることといたしまして、暫時休憩いたします。     午前十一時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時二十四分開議
  17. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑に入ります。質疑は順次これを許します。中村三之丞君。
  18. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 本委員会に付託せられました暫定予算は、国会解散によりまして、年度開始以前に不成立なつております。政府はその跡始末をしておられるようでありますが、これが国政、地方財政、国民生活の上に重大なる影響を来しておるのでありますから、総理大臣の所見をまず伺うことが順序であると思います。しかるに総理大臣は本日御出席ができないということでありますから、私が総理大臣に質問いたしたいことは明後日に保留いたしまして、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。委員長におかれましては、この点御了承を願つておきます。
  19. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 了承いたしました。
  20. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 いわゆる暫定予算なるものは一定の期間でありますが、大体暫定予算はどの程度にお出しになるのでありますか。
  21. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 四月及び五月の分として提出いたした次第であります。
  22. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 四月、五月、おそらく六月、七月も出るのであると思いますが、できるだけ早く本予算の編成にかからなければならないのでありまして、この点、大蔵大臣はいかなる編成方針をもつて進まれんとするのでありますか。
  23. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 六月分につきましては近日提出いたしたい所存であります。
  24. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 そういたしますと、六月分をもつて暫定予算を打切り、本予算は七月ごろ提出せられるという見込みでありますか。われわれ国民は本予算の成立を待つているのであります。なぜならば、国民生活の安定が欠けているからであります。この点政府は正しい見込みをもつて進まるべきであります。大蔵大臣はどうお考えでありますか。
  25. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 六月半ばまでに一般予算を出したいと考えておりますが、審議の状況によりましては、七月分の暫定予算をまた出すことになるかとも存じます。
  26. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 審議の状況ではありません。これは政府の誠意であります。政府解散によつて——その解散のことはここでは論じませんが、解散によつて予算施行が遅れておる。これは政府の責任である。従つて政府は、すみやかに本予算を編成し、暫定予算をその中に吸収して、一年間の予算を示して、国民の生活安定をはからなければならない。しかるに審議の状況とはどういうことでありますか。
  27. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 お話の通りでありますが、新内閣ができてから日が浅いので、まだ一般予算につきましての問題は、ただいま申し上げた通り、六月半ばまでに出したいと思つて全力を尽しておる次第でございます。審議の状況という言葉は、あるいは少し語弊があつたかも存じませんが、しかし七月の見込みが立たないときには、七月の分を暫定的に出す、こういう意味でございます。
  28. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 私は言葉じりをとらえませんが、審議の状況と言われるから、私は申し上げる。政府は、できるだけ誠意をもつて大蔵省の全力をあげてすみやかに出します、こういう態度に出られることが、私は、今日の政局において、政府の態度であるべきはずであると思うのであります。この点大蔵大臣はとくと御考慮せられるよう要求いたしておきます。  次に、暫定予算なるものは大体において義務的経費である。従つて暫定予算は骨絡予算であると言われておりますが、はたしてこの暫定予算はそうであるかどうか。私のおそれるところは、暫定予算の名において、必要ならざることを政府がつけ加えておらないかということなのであります。
  29. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 現在の施政上の最小限度のものをやつておるのでございまして、何ものもつけ加えておりません。
  30. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 それでありますから、無謀な解散をするならば、国政及び国家の経綸が遅れて行くということなのです。暫定予算は、参議院において緊急集会が認めておるのでありまするが、衆議院はまた別の考慮をしなければならない。衆議院衆議院で考えなければならない。そこで骨格予算であるといたしまするならば、たとえば刑務所の経費のごときを、これを暫定予算が認められないという場合になりますと、どういう方法をおとりになるのか。審議の模様によつて暫定予算はどうなるかわからぬ。同意を求められなければ、将来において効果を失うのであります。これは予算編成上、ほかの言葉で申しますならば、予算、決算制度の上における相当な問題である。一応伺つておきます。
  31. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 国政運用上最小限度のものでありますから、またただいま御指摘のごとき刑務所等の問題はまさにそれでございまして、私どもは必ずこれが御承認を得られるものと信じております。
  32. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 この暫定予算地方財政に及ぼす影響が多いのであります。現に地方交付金を待望しておる。たとえば大都会の市会のごときは、一年分の予算を組んで、解散ということを予想しなかつたのでありますから、その計画を立てておる。しかるに解散によつて暫定予算の配分しか受けないという状態でありますが、この地方の交付金暫定予算は別といたしまして、今後地方財政が動揺を来さないように、どういうふうにして行かれますか。
  33. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 地方交付金の問題は、一応四、五月の分については暫定的に処置いたしておりますので、その点についての最小限度の処置はいたしておりますから、十分とは申されませんが、支障なきものと見ております。
  34. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 私の言うのは、地方財政の確立のために、交付金にめどがある、こういうふうに言葉に示してもらわなければ、地方の当局者は迷わざるを得ない。これが地方財政並びに地方経済に及ぼす影響は少くはないのであります。ゆえに私はこの見込みをお尋ねしておる。方針をお尋ねしておる。大蔵大臣の考えをはつきりお示し願いたい。こういうふうにするということをおつしやらなければ、地方は不安でたまらないのであります。
  35. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 今の点は、実は本予算の問題でございますので、暫定予算としてほこの程度のものと考えております。
  36. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 本予算が出ることはわかりますが、暫定予算は本予算の前提である。暫定予算はやがては本予算に吸収せらるべきものである。ゆえにこの際、暫定予算をお出しになつた際において、本予算でこうするということを、ここに的確に仰せにならなければ、私は無意味ではないかと思う。
  37. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 本予算には諸般の政策を盛り込みますが、暫定予算は、さつき申し上げました通り、ほんとうに国政運用上最小限度のものを計上いたしました次第で、本予算の場合には十分その点を考慮することになつております。
  38. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 本予算の場合にそうなさるのはわかります。しかし暫定予算をお出しになつた以上は、本予算の場合についても考えてもらわなければ、ただ暫定予算暫定予算だ、本予算はその場合だということでは、われわれは暫定予算そのものを審議する上において考えなければなりません。暫定予算にはすでに本予算のその覚悟が現われていなければならない。これを私どもは大蔵大臣にただしておくのであります。これは本予算の場合じやない。今日から十分お考えを願つておくように私は要求しておきます。  それから冷霜害対策の経費をどこからとられるか。これがすみやかに行われなければ、全国の冷霜害地帯は非常に不安であります。農家経済はある意味において危機に瀕するのです。これをどうなさるか。
  39. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 ただいまの点は災害対策の予備金というものを見ておりますから、その中で処理いたしたいと考えております。
  40. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 予備金の支出は、ここに災害対策予備金は相当計上されております。それから出すと言われるのでありますが、予備金は事後承諾が必要でございましよう。だから私は、冷霜害対策に関する経費は、暫定予算の追加で行けるのではないかと思う。それの方がここに出てわれわれは公明に審議ができる。予備金にせられる理由いかんということであります。
  41. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 冷霜害対策の経費につきましては、被害の状況、またこれに対する対策の程度につきまして目下調査中でございます。早急に支出を要する次第でございますが、その額等につきましてなかなか決定に至らない場合におきまして、もし暫定予算提出までに間に合わないようなことがございますと支障を生じますので、現在災害対策予備金というものを暫定予算に計上いたしておりますので、財政法上こういうような支出ができることになつておりますから、そういう処置をとることを適当と考えております。
  42. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 そうしますと、暫定予算の追加に加えるという考えはないということですか。
  43. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 四、五月分の暫定予算に災害対策予備金が十億ございますので、これをもつて早急に処理したいと考えております。
  44. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 それではその金額で十分であるというのでありますか。
  45. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 目下調査中でありますが、一応私ども見ておるところでは、ただいまの範囲で足りる、かように信じております。しかし正確な数字は調査中であります。
  46. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 調査中ならすみやかに調査をせられるように、ただ調査中で逃げられては、ちと無責任ではないかと思います。  次に、私はこの暫定予算に伴う金融問題を一応お伺いいたします。配られた資料によりますと、揚超が百二十億あるというのですが、これはどういうところから来るのですか。
  47. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 私からお答えいたします。暫定予算の執行期間、つまり四、五月におきまする国庫収支の状況は、四月におきましては百五十九億ばかりの散布超過になつております。これは、四月の間におきましては、前年度の予算の執行もございますので、散布超が百五十九億ばかりあります。それから五月におきましては、二百七十九億の引揚げ超過になつております。従いまして、その両期間を通じますと、百二十億程度の引揚げ超過であります。但しこれにつきましては、一方国庫余裕金を七十億指定預金いたしましたので、実際の揚超は五十億ということになります。
  48. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 指定預金が、暫定予算のために、日本の経済界に、ことに金融界に相当つらく当るのじやないか。こういう点も金融事情に影響を来すのじやないか。この国庫指定預金というものの預託については、すみやかにできるだけのことをせられる必要がある。そうしなければ、金融界は相当きゆうくつになるのではないか。これは単なる事務的な仕事じやない。大蔵大臣の金融政策の現われなんであります。新大臣からひとつお考えを伺つておきたい。
  49. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 金融の情勢に応じて適宜な処置をとりたいと考えております。
  50. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 金融界の情勢に応じておやりになるということは当然なことです。しかしながら問題は、どこに配分をせられるかということなんです。この預託というものは、むしろ中小金融機関にうんとやるということでなければ、中小商工業者の危機を救うことはできない。だから、どういう点に重点を置いてあるかということを、新大臣に私は伺つておきたい。そうでなければ、これは政談演説にすぎません。議会の答弁にはならない。小笠原さん、もう少し具体的に、自分は通商大臣のときには中小金融に努力したから、大蔵大臣になつたら預託もうんとやるということをお話になつたらどうです。
  51. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 最近の預託について申しますと、七十億のうち四十億は中小金融にやつておるのであります。さらに三十億も大体中小金融にわたることになつておりまして、仰せのごとくに中小企業の金融については十分考慮いたしておるつもりでございます。
  52. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 それは当然の処置でありまして、私は、ただ単に金融情勢に応じてということでは、ちと承服しかねるので申し上げたわけであります。  次は見返り資金でございますが、これはどういうふうになつておりますか。おそらく廃止になるのでございましよう。
  53. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 見返資金特別会計につきましては、成立予算におきましては産業投資会計に引継ぐことになつておりますが、これは不成立になりましたので、見返り資金は暫定期間中はしばらく残ることになつております。今後の問題につきましては、新しい政策と一緒に考えたいと思います。
  54. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 そうすると、議会の解散法律の処置が不成立なつたから、見返り資金は一応留保しておくというのでありますか。これはちと便宜主義じやないですか。
  55. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 法律も生きておりますし、当然その特別会計は残るものであります。四、五月分の暫定予算におきましては、見返り資金から開発銀行に五十億、電源開発に二十五億の金を出すことになつております。
  56. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 どうも私はあまり便宜主義じやないかと思います。もう少し根本的にお考えになつておかなければならぬ。暫定予算だから何事も暫定だというのではわからない。予算そのものはかまいません。こういう問題は便宜主義ではいけない。  次に歳入の問題でありますが、この歳入につきましては、法律によるところの税金が——一体最近は非常な不況でありますが、徴税についてはどういうお見込みでありますか。
  57. 渡辺政府委員(渡辺喜久造)

    ○渡辺政府委員 歳入につきましては、暫定予算としまして、四、五月分として租税及び印紙収入で千三十四億の見積りをつくつておりまして、四月分の実績は一応わかりましたが、それは三百十二億。四月分に入つて来ます金額は、御承知のように二十八年度の歳入になるのでありまして、その二十八年四月に入つて来る歳入の中には、二十七年度歳入になるものと二十八年度歳入になるものと両方ございまして、従いまして四月分の金額が、ある程度例月より少いというのが通常の例だと思います。大体一応の見込みでございますが、千三十億とそう大きな開きがなくて済むのではないだろうかということを考えております。的確なところはわかりませんが、ただ二十七年度の現計は、現在のところ二百三十五億程度の自然増収が出るのではないか、こういう数字になつております。
  58. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 その数字の見込みにつきましては、主税局長の統計を今拝聴いたしたのでありますが、税金の収入につきましては、中小業者の申告の税金と源泉の税金と二つにわけて考えてみなければならぬと思いますが、最近はどういう成績になつておるのでありますか。この点を伺つておきたい。
  59. 渡辺政府委員(渡辺喜久造)

    ○渡辺政府委員 ただいま申し上げました四月分の歳入三百十二億の中では、源泉は百二十三億であります。申告は一億三千二百万円。納期のいろいろのずれでむしろ大部分が四月に入りましても、二十七年度分の二十八年四月歳入ということになりますために、二十八年度歳入になりますのは、二十六年度以前の滞納の分だけが二十八年度の歳入でございまして、金としましてはもう少し入つて来ますが、大部分は二十七年度の歳入になりますために、二十八年度の歳入としては今のような小さい数字になるという二とを御了承願いたい。なお、二十七年度の歳入予算が源泉所得税の分が千七百六十一億、それに対しまして四月末の現計が千八百六十七億であります。申告の方は、予算は八百三十九億、これに対して四月末現計が八百三十億、こういう数字になつております。
  60. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 俸給者の源泉徴収はしばらくおきまして、中小業者の申告につきましては、徴税当局は相当苛酷ではないかというふうに思い、またそういう声が強いのであります。去年の三割増しである、あるいは五割増しである、こういう一種の強制割当の強行をしておられるようでありますが、一体主税当局はそういうことを管下の税務署に伝えられておるのですか。こういうように調べもせずして、ただ単に去年の何割増しという税金の強制割当が、今日の中小業者の怨嗟の的になつておる。この点を徴税当局はどういうふうに考えておられるか。
  61. 渡辺政府委員(渡辺喜久造)

    ○渡辺政府委員 国税庁のやつておる仕事でありますが、私からお話申し上げられることですから、お話申し上げます。今お話のような、前年に比べまして何割増しといつたような、いわば一種の強制割当というようなことは、徴税当局としては全然やつておりません。一応できるだけの調査をしまして、そしてその実績に基き申告を出していただくことにしておりますが、多数の中には帳簿の不完備な方がありまして、従いましてある程度、同じような程度の方から類推しまして一応の金額を出す、こういつたようなことはやむを得ずやつておりますが、今お話のように、何でも一律に何割増し、こういうようなことは絶対にやつているつもりはございません。
  62. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 それでは国税庁の当局者はおられますね。現にやつておるのです。主税局はそういうふうにお逃げになるかもしれませんが、現に去る三月十六日の確定申告にあたつてはざらにあるのです。よくお調べ願いたい。そういう強制割当をして、ただ単に上から下に押しつけるという——この点は私どもは本予算のときに論議をしますが、暫定予算には歳入に、税金が盛つてありますから、私はこれをまずこの際お伺いしておく。国税庁当局からお答え願いたい。
  63. 渡辺政府委員(渡辺喜久造)

    ○渡辺政府委員 私は、先ほども申しましたように、そうした意味のことはやつておらぬということを確信しておりますが、今国税庁の当局者がおりませんから、至急に呼びますなり何なりして、はつきりしたことを申し上げることにいたします。
  64. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 大蔵省証券を御発行になるようであります。これは暫定予算として載つておる。いずれ本予算において載るのでありましようが、これの消化はどういうふうに考えておられますか。
  65. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 四、五月分の暫定予算におきましては、大蔵省証券百億を一応予定してあるのでございますが、これはただいままで発行はございません。
  66. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 全体として本予算には相当載るのでございましようね。
  67. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 本予算を編成の上で、その収支の状況——各月における収支の状況を見た上で、その関係は決定せられるであろうと思います。
  68. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 この剰余金の状態です。国庫剰余金を財源にしておられるようでありますが、この状況を説明願いたい。
  69. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 国庫剰余金につきましては、不成立予算予定いたしました国庫剰余金四百五十五億円は、昭和二十六年度の純剰余金でございます。昭和二十七年度の純剰余金につきましては、目下出納整理期間中でもありますし、確定的な計数はまだ出ておらないのでございまして、二百億以上はあるのではないかというふうに思いますが、まだ計数的に確定いたしておりません。
  70. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 これは確定はなかなかむずかしいでしよう。そこで私の進んで問いたいことは、よく自然増収ということを言つておられますが、一体最近自然増収は減つておるのでございましようか。自然増収と言うものの、自然に増加したのじやない。予算と決算との差ではないのですか。どうもここに、私は徴税方法に相当苛酷なことができておるのではないか。そしてそれを自然増収と称して発表しておられるのではないか。最近の自然増収の傾向をひとつ示してもらいたい。
  71. 渡辺政府委員(渡辺喜久造)

    ○渡辺政府委員 二十六年度における予算と決算との差と申しますか、予算に対して実績が上まわりました数字は、たしか四百五十億くらいだと記憶しております。二十七年度の分につきましてはまだ最終の決算はできませんが、四月末の現計におきましては二百三十五億——この数字は五月に多少まだ数億の金額が会計経理の関係から入つて来ると思いますが、そう多く違うとは思つておりません。従いまして、その額は前年に比べますとはるかに少い。同時に申告所得税につきましては、先ほど申しましたように予算は八百三十九億と一応組んでございますが、四月末の現在におきましては八百三十億で、九億ほど一応予算を下まわるということであります。
  72. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 最近の財界は特需問題の先行き不安によつて相当動揺をいたしておる。私は大蔵当局が自然増収をよけい出すとか、あるいはつじつまを合すために、法人税とか個人の所得税などに相当無理なやり方をやつておるのじやないか、これを私はおそれるのであります。従つてここに減税論のいろいろな問題も出て来るのでありますが、最近の会社に対する課税、個人に対する所得税の収入、こういうふうな状況をこの際承つておくことが、本予算審議における一つの資料になると思いますので、重ねてお伺いをいたします。
  73. 渡辺政府委員(渡辺喜久造)

    ○渡辺政府委員 どういうことを申し上げると御納得をいただけるかよくわかりませんから、一応申し上げまして、さらにつけ加えることにいたします。  一応一つの指標になると思いますのは、先ほど申しました二百三十五億の、いわば自然増収、これの内訳でございますが、これの源泉所得税の分が百六億の増になります。それから申告所得税の方はいろいろお話がございますが、予算に対しましては九億三千九百万円減でございます。所得税全体といたしまして九十六億の増になります。法人税は予算に対して二十三億の減になつております。  あとこまかい計数がございますが、大きなものとしましてあげて参りますと、富裕税で十億、再評価税で三十五億、酒税で十三億、砂糖消費税で十九億、揮発油税で十五億、関税で四十一億、そういつたようなものがおもな自然増収の数字でございます。
  74. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 次に、継続費はどういうふうに暫定予算でお取扱いになつておりますか。
  75. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 継続費につきましては本年度の年割がございますので、四、五月分におきましてその年割額の大体四分の一程度と見ております。
  76. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 そうしますと、継続費はわれわれが二回認める、議決するということになるのでございますか。
  77. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 これは法律論としていろいろあるかと存じますが、従来の旧憲法時代の予算におきましても、すでに議決を経ておる継続費も便宜一緒にして御協賛を求めておりましたし、また皇室費につきましても、議決を要しないものも一緒にしてやつておるということで、現在の制度におきましても、便宜、議決を経ておるものも一緒に予算の中に全貌を表わしてやつておる、こういうことであります。
  78. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 継続費の暫定予算に対する盛り方、次に出て来る本予算に対する盛り方でございますが、継続費の中には季節あるいは資材に関係するものがあるのではないか、議会解散に伴う暫定予算提出によつて事業に相当支障を来すものがあるのではないかと思われます。これは地方の一つの不安になつております。こういうことについて大蔵当局はどういうふうに考えられるか。
  79. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 暫定予算は国政運用の最小限度経費を盛つたものでございまして、もちろん後におきまして本予算に吸収せらるべきものでございますが、今回の場合で申しますれば、不成立予算について、当初これは当然通るであろうという前提のもとにいろいろ計画をせられたところにおきましては、あるいはそういうことがあるかも存じませんが、少くとも国政運用の最小限度経費であります以上、この暫定予算で国政の運営に支障のあるというようなことは、私は考えられないと考えております。もちろん全体的な計画のもとにおいて国政の運用を見ることは適当ではございますが、暫定的の期間として私はやむを得ないと考えております。
  80. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 私は、暫定予算というものは、大体一箇月ないし二箇月の月別予算ではないかと思います。今度は二箇月分を一括せられる、こういうのでございます。そこで暫定予算というものは、今局長の言われたようにそう楽観はできないのじやないか。この点はよほど慎重に考えてもらいませんと、一つのエア・ポケツトが日本の予算の上に生じておる。なるほど骨格予算である、あるいはまた最小限の義務的経費を載せたと言われるのでありますが、継続費になりますると、この点は少しく考えていただかなければならないのではないか。そこをお考えにならないと、そういう支障を来して来るのではないか。単に義務的経費を載せた最小限度のものという言葉で逃げられることは、私は妥当でないと思います。同時にまた、最初に申しましたことく、暫定予算の中に抜けがけ的な経費を計上せられることも、われわれは警戒をしなければならぬ。この点の取捨選択、適正な処置というものは、相当むずかしいのではないかと思うのでありますが、技術的な点を私はお伺いをいたしておきます。
  81. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 この問題につきましては先日申し上げたのでございますが、たとえば公共事業のようなものにつきましては、前年度予算あるいは不成立予算のいずれか少い方を考える。かつまた新規は一切入れないというような建前で考えまして、そのような経費の盛り方をいたしておるのであります。しかし継続費につきましては、これはすでに国会の御議決をいただきました予算でありますので、その年割が前年よりふえておるものにつきましては、そのふえた年割で大体四、五月分において工事が実施せられるであろう四分の一程度のものを盛る、こういう考えでございます。
  82. 中村(三)委員(中村三之丞)

    ○中村(三)委員 私は、総理大臣に対する質問は保留いたしまして、暫定予算に対する私の質疑はこれでとどめておきます。
  83. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 成田知巳君。
  84. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 今回参議院緊急集会暫定予算審議されたことは、新憲法最初のテスト・ケースであり、参議院における審議の過程におきましても、いろいろ問題点が発生して、それが未解決のまま相当残されておると思います。この際そういう点について政府の所見をただしてみたいと思います。  まず暫定予算の性格について、どういうものが暫定予算であるか。財政法三十条には「内閣は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これを国会提出することができる。」こう規定してありまして、その二項には、「暫定予算は、当該年度の予算が成立したときは、失効するものとし、暫定予算に基く支出又はこれに基く債務の負担があるときは、これを当該年度の予算に基いてなしたものとみなす。」こう規定してある。先ほどの中村委員に対する御答弁に、暫定予算というものは国政運用の最小限度のものであるということがあつたのですが、この三十条の解釈から行きますと、「内閣は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これを国会提出することができる。」とあるだけでありまして国政運用の最小限度という解釈は出て来ないように思いますが、これについて御答弁を願いたい。
  85. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 これは暫定予算の性格論と申しますか、当然のことであろうと考えておるわけであります。国政というものは予算なくして一日も運営はできないのでありまして、予算不成立によつて予算がない場合においては、国政の運営ができない。これを可能ならしめるために、ほんとうの予算にかわるべき一定期間暫定予算というものが考えられる。しかしこの暫定予算というものは、国全体の政策に影響を及ぼすようなものであつては適当でないので、従つて、当面国が生活のためにどんな場合でも必要であるという最小限度のものを計上している。従つて予算にこれが吸収せられても何ら支障がない、こういうものだけ選ぶべきものであると考えております。
  86. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 三十条の解釈からしては、どうしてもそういう解釈はできないと思うのです。そこで私がお尋ねしたいのは、参議院緊急集会における暫定予算は、これは参議院緊急集会の性格あるいは予算の性格上、国政運用の最小限度というわくが入つて来るように思いますが、今度衆議院においても暫定予算審議することになつた。参議院緊急集会の場合の暫定予算と、衆議院に付議されて参議院に回付され、憲法に定めてあるところの正式の国会の議決を経るところの暫定予算とは、性格がおのずから異なつて来るのではないか。政府の国政運用の最小限度というものは、緊急集会の場合に限つての解釈ではないかと思うのですが、その点御明確に願いたい。
  87. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 私からお答え申し上げます。御指摘の通り財政法に条文がございますが、お読みになつ通りに、暫定予算の定義というものは全然ありません。従いまして、その性格というものは、立法の趣旨から考えてみなければならないことと思うのであります。立法の趣旨から申しますと、これは本予算のできないときの応急措置であるということは、はつきり申し上げ得ると思うわけであります。そうしますと、おのずからそこの応急措置ということからも、わくというものが想定せられるのであつて、先ほど主計局長が申し上げましたように、国の生活を維持するに必要な限度のものは、おのずから必要とされておるという意味に考えられるわけであります。今お尋ねの緊急集会の場合と、今度国会が成立したときに出すのとは性質が違うのじやないかという御質問は、私非常に敬服して伺つたわけでございますが、暫定予算そのものの根拠の条文は今まで財政法一つしかございません。それが場合によつてその実態が大きくかわつて来るかは、私は申し上げ得ないと思います。ただ政治的の気持からお考えになれば、今のようなことははつきり違うので、緊急集会参議院だけでやつてしまう、しかもその提案者は解散後における政府であるというような意味で、生成のニュアンスは私は若干違いがあると思いますが、これはニュアンスの違いではなくて、暫定予算とは何ぞやということから申し上げれば、その間に大きな違いがないと申し上げるのが正しいんじやないかというふうに思つておる次第であります。
  88. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 ただいまの法制局長官の御答弁では、緊急集会の場合も、今回出される正式の暫定予算の場合も、多少のニュアンスはあるかもわからないけれども、違わないだろうという、まことにニュアンスのある御答弁があつたのであります。ここで大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、ただいま中村委員の質問に対して、六月暫定予算をお出しになるということですが、この六月の暫定予算は国政運用の最小限度のもので、四月、五月の暫定予算と性格的に何ら異ならないかどうか承りたい。
  89. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 まだ本予算の全貌が明らかでございませんので、それに支障を及ぼすようなことはできませんので、六月分については最小限度のものをお出しするという考えでございます。
  90. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 そういたしますと、四月、五月の暫定予算と性格的にはかわらないと解釈したいと思いますが、十月の暫定予算を出すか出さないかという先ほどの質問に対して、本予算は六月の半ばには提出される、しかしながら七月の暫定予算を出すか出さないかは審議の模様によると言つて、中村委員からおしかりがあつたわけですが、常識的に考えまして六月の半ばに本予算案を政府提出した場合に、これが衆議院参議院を通過して成立するのは、七月の半ば以降にならなければならないと思います。そういたしますと、事実問題として七月においても暫定予算、そうして早くとも八月から本予算になると解釈しなければいけないと思いますが、大蔵大臣はどういう御方針であるか承りたい。
  91. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 これは非常にむずかしいことでありますが、一応私から申し上げます。おつしやるような場合におきましては、すでに本予算案ができて、その際七月分の暫定予算ができたら出すのだから、新規のものを入れてもさしつかえないのではないかというお考えは一応ごもつともであると思いますが、私どもの事務的な考え方から申しますと、暫定予算はもちろん本予算より先に成立するということからいたしますと、それによつて予算の議決を強制する、つまり新規の政策によるものを入れて、その暫定予算をきめることによつて、本予算のその分に関する分をきめるというようなことを国会に要請申し上げることはいかがかというふうな考え方を持つております。
  92. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 今の御答弁は何だか一つもわからないのです。私が御質問申し上げたのは、六月の半ばに本予算案を提出する政府の方針だと言われた。中村委員の質問で、七月は暫定予算ですかどうかと言われたら、これは審議の模様によると言われたのですが、六月半ばに本予算案をお出しになつた場合、今までの経験から行きまして、少くとも審議に一箇月はかかるのです。そうすると本予算が成立するのは七月の半ばになりますから、どうしても七月から本予算実施することはできないと思います。八月から本予算になると考えるのが至当であると思います。そこで大蔵大臣はどういう御方針であるか承りたい。
  93. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 今成田さんの言われたようなことでありまして、七月については暫定予算を出さざるを得ないというふうに考えております。
  94. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 それでだんだんはつきりして参りましたが、そうすると六月も暫定予算、七月も暫定予算、八月から本予算になる、こういう御方針と解釈してよろしゆうございましようか。
  95. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 大体さようになると存じます。
  96. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 そこで先ほどの暫定予算の性格の問題に入るのでありますが、世上新聞報道なんかを見ますと、七月暫定予算については相当政策的なものが入るのではないか、という一部報道もあるわけであります。もし四月、五月、六月、七月が暫定予算だといたしましたならば、会計年度の三分の一は暫定予算です。政府の政策というものは三分の一実施できないことになる。そこで六月ごろから徐々に七月までには、相当政府の政策の入つた暫定予算が出るのではないかというのが一般の観測だと思います。この七月分についても、先ほど主計局長なり法制局長官が言われたように、純事務的な国政運用の最小限度予算をお出しになる方針であるかどうか承りたいのです。
  97. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 お話のように、七月分につきましては、これは純事務的なものを提出するということ以外にないと存じます。
  98. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 そういたしますと、四月、五月、六月、七月、会計年度の三分の一が純事務的なものでありまして、政府の政策というものは全然加味されない予算になるわけであります。そこで、当然八月から実施されますところの本予算に対して、会計年度の三分の一は政策という意味からいつて空白であつたということになつて、本予算編成の前提条件が相当二十七年度とはかわつて来ると思います。内外の情勢もありましようが、予算編成の技術面からいつてもかわつて来なければいかぬ。たとえば、本予算案では減税国債三百億、国鉄、電電公社の社債二百二十億を発行することになつておりましたが、会計年度の三分の一が無為に過されたのでは、とてもその成果は上らない。そこで大蔵省の内部でも、減税国債なり電電公社、国鉄の社債発行を中止するという意見もあるし、あるいはまた自由党の意見を代表して、あくまでもやるのだ、さらにまた改進党との妥協で別の意味の公債も考えよう、こういう意見もあるようであります。これは当然四箇月の暫定予算が事務的なものである以上、この公債発行の問題について影響が来ることは明らかだと思うのです。そこで現在大蔵大臣とされては、この問題になつておる減税国債、電電公社、国鉄公社債の発行について、どういうお考えを持つておるかお尋ねしたいと思います。
  99. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 成田さんが言われたように、大体四箇月もたちますと、よほど収入状況も違うと思います。従つて、これらについて本予算の編成については十分考慮する考えでおります。しかし、ただいまお話になりました公債その他の問題につきましては、まだ少し検討中でございまして、結論に達しておりませんので、結論に達し次第申し上げることにいたしたいと思います。
  100. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 この四箇月の空白を経た場合に、収入その他について影響があるのは当然だと言われたのですが、これは税収の面がおもだと思います。たとえば砂糖消費税がだめになつた、有価証券移転税もだめになつた、こういう点で歳入の面で変化があるのは当然だと思います。私の御質問申し上げているのは発行公債の消化の問題ですが、予算年度の三分の一を空費して、そうしてあとの三分の二でこの消化ができるかどうかというその見通しの問題なんです。これは数字的に算術的におわかりになると思いますが、御答弁願いたいと思います。
  101. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 今お話のごとくに、減税国優等につきましては、主として法人その他の決算期等の関係がありまして、相当日にちがたつことは、消化の上において多少疑問があります。従いましてどの程度かということについて目下検討中でございまして、その結果をまちました上で、きちつとした方針を確立いたしたいと存じております。
  102. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 消化について相当疑問がある、どの程度かはつきりしたところを見定めたいというお話なんですが、といたしますと、発行するという方針はかえない、ただ発行限度にある程度の変化、あるいは相当の変化がある、こういうようなお考えでいらつしやる意味でありましようか。
  103. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 お答えいたします。発行そのものにつきしても、十分検討いたしてみたいと考えております。
  104. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 その次にお伺いいたしたいのは、この暫定予算の性格の問題に関連いたしまして、参議院で、この暫定予算を修正または否決することができるかどうかということが、相当論議になりました。最初政府は、修正も否決も許さぬというような強硬な御態度をとつておられたようでありますが、だんだん追究されまして、組みかえ要求なりあるいは修正というものは認めるというような御答弁をなさつてつたと思うのでありますが、衆議院においては、もちろん憲法五十四条で否決することはできると思うのですが、まずその前提として、参議院緊急集会において暫定予算を修正または否決できるものかどうか、これを承りたいと思います。
  105. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまお言葉にありましたように、参議院でも相当大きな問題でございました。当時私は少し興奮し過ぎて強くお答えした傾向があります。参議院の集会の最後に後悔の念を申し上げて、実は問題そのものを振り返つてみると、これは国会審議権そのものの問題でありますので、国会御自身でおきめになるべきことであり、横合いからわれわれが力み返つて申し上げたような形になつて、たいへん申訳なかつたというような意味のことを申し上げたのであります。ただしかし、お尋ねでございますから、私の考えておりましたところを申し上げますと、大体参議院の場合における審議の問題については、お言葉にちよつとありましたが、修正の問題は、これは最初からもちろん可能でございます。参議院で御修正になることは可能でございますということは、私は申し上げておきました。ただ否決ができるということは、先ほど来お話に出ておりましたように、骨格予算であつて、本来国の生活が、これがなくては一日も続けられないという性格のものであるからして、こういうものが否決されて予算に空白ができるような事態が生ずることは、憲法自体も全然予想していないと思います。従つて否決されるということは考えられないというお答えをしたことは事実でございます。
  106. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 そこで、衆議院でこれを否決することができるということは当然なことだと思いますが、いかがでございましようか。
  107. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 これも実は政府側としての意見を申し上げても、これは拘束力のないことで、衆議院自身の権限、解釈においておきめになることでありますから、政府としては何とぞ御同意をお願いいたしますということを申し上げるべきじやないかと私は思います。
  108. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 まあ政府の御希望としてはそうだと思うのですが、憲法五十四条によりますと「前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院同意がない場合には、その効力を失ふ。」こう書いてあります。十日以内に衆議院同意がないという場合は、十日以内に同意も反対も議決をされなかつたという場合と、また同意を得られなかつたという場合があると思うのです。この場合に、今回緊急集会暫定予算を編成せられた、またそれを実施された責任——これは緒方副総理にお伺いしたいと思うのですが、この緊急集会暫定予算効力を失つたら、憲法五十四条の規定に基きましてその責任は一体だれが負うのか、これをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  109. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政治上の責任は政府にあると考えます。
  110. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 まず政治上の責任から御答弁があつたのですが、政府にあるというのは現政府にある。と申しますのは、第四次吉田内閣が事務管理内閣として参議院緊急集会暫定予算をお出しになつた。今度第五次吉田内閣になつたのですが、この政府の責任というものは第五次吉田内閣がおとりになる、こう解釈してよろしゆうございますか。
  111. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 総選挙の結果によりまして国民の審判が下つたのでありますから、その点につきましては国民がすでに解決してくれたと考えます。
  112. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 吉田総理がよく、総選挙の結果自由党が多数になつたから、これは国民が審判したのだと言われますが、この緊急集会の責任の問題、この憲法で、もし十日間に同意を得られない場合には失効するわけなんです。そうすると相当の混乱があると思いますが、その失効の責任をどの内閣が負うかということを聞いているので、選挙とは全然別個の問題だと思います。
  113. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 この点につきましても、先ほど法制局長官からお答えいたしましたように、政府の立場といたしましては、これを不承認にならないようにお願いするより方法はないと考えます。
  114. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 それでは答弁にならないので、政府の御希望はよくわかるのです。ただ国会の立場で、憲法の条章に基いて五十四条三項で、もし十日以内に衆議院同意がない場合には、この暫定予算効力を失うことになるわけですが、この暫定予算が失効した場合に、その責任はどうするか、どうお負いになるかまたどの内閣かお負いになるか、こういうことを聞いているので、政府の希望を私はお聞きしているのではないのです。
  115. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 現行憲法のもとにおきましては、政府としてはただお願いする以外にやり方はないと考えますノ
  116. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 これは委員長もお聞きになつて、ひとつ委員長の立場で言つていただきたい。国会の責任とかいう問題ではない。政府の御希望を私は聞いているのではないのです。憲法ではつきり、十日以内に衆議院同意がない場合にはその効力を失うと書いてあるのです。効力を失うということは失効することになるのです。その失効した場合に、どこに責任があるか、これをお聞きしておるのです。これは明確にひとつ御答弁願いたい。(「そんなべらぼうなことはない」と呼ぶ者あり)べらぼうでも何でもない。憲法に書いてあるのです。その結果はどうなるか。
  117. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 先ほどお答え申し上げた以上にお答えのしようがないと思います。
  118. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 憲法で明確に失効する場合を規定してあるのですよ。そういう事態が発生した場合に、どういう責任をおとりになるか、責任はどこにあるか、これをお伺いしているので、(「予算を通していただきたいと言つているじやないか」と呼ぶ者あり)通してもらいたいという御答弁だけでは答弁にならない。もう少し明確に御答弁願いたい。
  119. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 同じことを繰返すことになると存じますけれども、暫定予算そのものの性格から申しまして、これがなければ国の生活はもちろん、国政の運営もできませんし、あるいは法律の執行そのものができなくなるという場面を生ずるわけであります。従いましてこれが不成立になるということは想像もいたされませんし、政府としてはぜひこういうことにならないようにとお願いする以外にないと存じます。
  120. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 副総理の答弁も法制局長官の答弁も答弁になつていない。そこで問題は、後ほどもお聞きしたいと思いますが、遡及して失効するということを前提にお考えになるとそういう問題も起ると思いますが、不承認になつた場合、同意を得られなかつた場合に、将来にわたつて効力を失う、こういう場合もあると思います。遡及するかしないかという問題は、また別の観点から論議してみたいと思いますが、一応将来において効力を失うという場合があると思います。その際にもやはり責任の問題が起る。それをただ御承認を願いたいという希望を言われるだけで、その責任の帰属がどこにあるか、いかなる責任をとられるかということについて御答弁がないということはまことに遺憾であります。もう一度御答弁願いたいと思います。
  121. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 私がお答えすべき筋かどうか存じませんが、今述べましたようなことから、これが不成立なつ予算の空白が生ずるということは、全然われわれとしては考えておりません。それでお願いもしておるわけであります。ですから、不成立なつた場合に政府が責任をとるということまでは考えておりません。むしろお願いを申し上げるだけであります。
  122. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 この暫定予算についてこれが効力を失うということは予想されないということになりますと、憲法五十四条の規定そのものは無意味の規定になる。憲法五十四条で明確に規定しておる責任問題が必ず発生すると思う。それを政府が、そんなことはあり得ない、必ず通るものだと考える。これはまことにフアッショ的な考え方だと思います。一方的だ。これは非常に政治的な問題でございますから、緒方副総理から詳細に明確な御答弁を願いたいと思います。
  123. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 ちよつと補足させていただきます。先ほど申し落したことになるかもしれませんが、御承知のように私どもがそういうことを予想しませんと申します根拠は、旧憲法の七十一条に「帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ予算施行スヘシ」という条項があるのであります。その場合には、帝国議会で予算が成立しないということを予想して、この規定を置いておつた。ところが、御承知の通り憲法にはそういう規定が全然ございませんございませんということは、そういう事態があり得ないということをむしろ前提にして、新憲法ができているということを申し上げざるを得ないというふうに思うのであります。
  124. 田中(織)委員(田中織之進)

    ○田中(織)委員 関連して。ただいま成田委員の質問に対して十日以内に暫定予算衆議院における同意が得られないために、五十四条に従つて失効した場合の責任は、これを提出した事務管理内閣としての第四次吉田内閣にあるのか、現在の第五次吉田内閣にあるのかという点が明確に答えられないということになると、これはきわめて重大な問題だと思う。前年度の予算を踏襲することはやらないという新憲法の建前から見たら、暫定予算なるものが緊急集会に出せるかどうかということ自体が、これまた一つ大きな問題なんだ。きようは総理がおりませんから、その点の質問はただいまの成田委員も、先ほどの改進党の中村委員も、あさつてに譲つておるのだと思うのですけれども、私は、その問題はむしろ「先行してここで議論しなければならぬことになると思う。なぜならば、今度のそれは解散の問題にもやはり関連して来るのです。憲法の六十九条によつて不信任案が通過したから、この間の解散が行われたはずなんですが、解散の詔書には、憲法七条によつて解散するというだけで、不信任案の通過によつて国会解散したという点が明確になつておらない。この点についてもわれわれは緒方副総理から答えていただきたいと思います。かりに政府が六十九条に基いて、不信任案が通過したから、総辞職の道を選ばずに解散を行おうといたしましても、十日間という期間があるわけです。たまたま予算衆議院を通過いたしまして参議院審議中なんです。従つてこの十日間というものは、総辞職をするか国会解散をやるかの政府の決定をするまでの間に、二十八年度の予算案の成立のために努力をする期間がその意味から与えられておるのです。それにもかかわらず、その努力をやらずに、暫定予算国会に出してその予算が、場合によると衆議院同意が得られない場合がこれはあり得るのです。あり得るからこそ憲法第五十四条の規定があつて、その場合には将来に向つて効力を失うということが規定されておるのでありまするから、従つてその失効になつた場合の責任というのは、いずれの内閣が責任を負うのか、事務管理内閣か、新たにできた現在の吉田内閣であるかという点については、これは当然答えられなければならない性質のものなんです。従つてこの点について私が今申し上げた点と関連して、質問の趣旨はおわかりだろうと思いますから、お答えを願います。
  125. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 だんだんお話を承つておりますうちに、はつきりいたして参りました。私の筋道と考えておりますところを一応お答え申し上げておきます。今のお尋ねの中にいろいろな問題が入つておりましたが、一言に言いますと、解散の結果こういうことになつたんじやないかという問題がまず起つて来るわけだろうと思います。そうしますと、その解散の問題になると思います。この解散は、第四次吉田内閣が解散したことも事実であります。従いまして第四次吉田内閣がとつた解散の結果、暫定予算緊急集会にかけて今日また御同意をお願いすることになりましたその責任はどこにあるか、これは第四次吉田内閣の解散措置に伴つたことでありますから、第四次吉田内閣にあることはこれは明瞭だろうと思います。しかしてそれに対する批判はいつ行われるかと申しますと、先ほど副総理からお答え申しましたように、解散の当否の問題を含めて、これは総選挙によつて主権者たる国民が直接に審判を下したということで、そこで大きなけじめがついたことと考えるわけであります。そこで今度召集されました今度の国会——問題を簡単にいたしますために、たまたま吉田茂氏が総理に指名されましたから混乱もいたしますけれども、違つた党派の方が指名されて、そうしてこの場に臨んで今の同意を求めるというような場合を御想像願えれば、きわめてはつきりすると思います。その場合においては、やはり政府といたしましては、どの内閣がやつたにせよ、この暫定予算不成立に終つて予算の空白を生ずるということは、国民全般に対対して、憲法の運営そのものに対してたいへんな障害を生ずることでございますから、いかなる内閣といえどもこの際ぜひお願いするのが政府の責任である。従つて第五次吉田内閣といたしましては、この際ぜひお願いいたしますということを極力お願いするのがその責任であるというふうに、筋道をたどればなることと思います。
  126. 田中(織)委員(田中織之進)

    ○田中(織)委員 その点から見てただいまの法制局長官の答弁は、かりに今本委員会にかかつている暫定予算が、衆議院同意を得られないで失効した場合の責任は、第五次吉田内閣、これは緒方副総理の先ほどの政治的な責任は現内閣にあるということと符節するわけですが、そういうふうに受取つてよろしいのですか。
  127. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 その点については先ほど申し上げました通りでありまして、現内閣といたしましてはぜひお願いいたしますという一点に尽きることであると存じます。
  128. 田中(織)委員(田中織之進)

    ○田中(織)委員 それではどうも今法制局長官が長々と筋を追つて説明されたかんじんの点がぼけて来ていると思いますが、しかしこの点については、いずれ総理が月曜日に出て来られるわけでありますから、私は総理に質問をしたい。ただ佐藤法制局長官のただいまの答弁の中で、国会解散の当、不当の問題については、選挙を経た今日、それは国民が審判しておるのだからということで、法律的にも一切の問題が解消したかのごとき御答弁がありましたが、私はそれは大きな誤りであろうと思います。この点はいずれ総理に月曜日にお尋ねをいたしますが、憲法六十九条によつて政府は今回解散か総辞職かいずれかの道をとるということで、私は解散措置に出たと思うのです。ところが、少くとも当日に——三月の十八日でありましたか、解散の日に、内閣の助言と承認に基いて出ました解散の詔書には、憲法第六十九条の関係は出ておらないのであります。従つて実際は不信任案通過という具体的な事実に立つて六十九条に基いて政府は判断をせられたであろうところの問題について、その関係が明確になつておらないのです。従つて現在の最高裁判所はこの種の憲法裁判は取上げないということで、きわめて変形的な司法制度ができておるのでありますけれども、この点に法律的には十分争いのある問題として残ると思うのです。政治的には、あるいは法制局長官の言われたように、解散とあとの選挙によつて、その問題に対する国民の批判は終つておるということにはなるかもしれませんが、私は、法律的な問題においては、十分争いのある問題が残つておると思う。この点はあさつて総理が出て来て、総理がそのいずれによつたかということを聞いてみなければ、われわれはまだ委員会における追究はできないわけでありますけれども、その点は、私は、法制局長官の、法律的な争いもまるつきり選挙によつてなくなつたかのごとき答弁は間違いだと思いますので、その点念を押しておきたいと思います。
  129. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 政治的の面は、私から特にお答えすべき点とも思いませんが、今のお尋ねの中に、七条と六十九条のことで非常にうれしいお尋ねがあつたと思いますから、ちよつとその点をお答えさせていただきまして、速記録に残しておきたいと思います。  解散の原因は、六十九条の場合に限るかどうかという問題がございます。ございますけれども、この間の解散につきましては、これは明らかに不信任決議によるところの解散でございますから、六十九条に当ることは問題がないのであります。しかるにもかかわらず、詔書には第七条という条文しか引かなかつたというお尋ねですが、これはちよつとはつきりさせていただきたいと思います。われわれの解釈は、会話のありましたような議論もございますけれども、結局解散の詔書というものは、外に出る場合の根拠条文は、どこを探してみましても第七条以外にはございません。この前の第一回の新憲法の際における解散の場合におきましては、第七条と第六十九条を引きましたが、第七条だけは必ず引いております。従つて今回の場合も——前回もそうでありますが、引用する場合には第七条だけを引用することにして、あと六十九条その他の解散の原因になる事項は、詔書の上に出す必要はないという趣旨でございますので、詔書そのものは間違いがない。第七条だけを引けば十分であると考えております。
  130. 河野(密)委員(河野密)

    河野(密)委員 関連質問をさせていただきたいのですが……。私法制局長官が今御答弁なすつたことに満足することはできないのです。憲法第五十四条に、衆議院解散されたときは、参議院緊急集会を開く、こういうことになつておりますが、緊急必要のあるときということが前提になつておる。この緊急必要のあるときという場合に、財政法第三十条に言うところの暫定予算という問題を前提として、憲法規定したものかどうか。私はこの点が憲法上の大きな争いだと思うのです。これをはつきりすることが、今言う解散権の問題についても、すべての政治問題に対する前提というものになりますから、これをわれわれは伺つているのであつて、そのことを明確にしないで、ただ憲法のことで責任が消えたものとかなんとかいうような、そういうおざなりの答弁は私はできないと思うのです。この憲法第五十四条というものが、そういう暫定予算のごときものを含んでおるのかどうか。これが私は前提条件であると思う。その点を明確に答えていただきたい。
  131. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまのお尋ねも重要な点であると思います。従いまして、参議院におきましても御質疑がありました。私どもの考えておりますところを申し上げますと、御指摘の第五十四条第二項に、国に緊急の必要があるときは、緊急集会を求めることができる。第三項に「前項但書の緊急集会において採られた措置は、」とあるのであります。そこで、緊急集会にかけられる案件というものに限界があるかどうかという問題が、御質疑の大なる要点だろうと思うのであります。もちろん緊急事態に対処する方法としては、旧憲法時代、御承知の通り第八条に緊急勅令、第七十条に財政処分もございました。さらに先ほど指摘いたしました第七十一条に、予算不成立の場合は前年度の予算政府が単独に施行できるという条項がございます。新憲法におきましては、さようなことは全部やめてしまいまして、そして解散中といえども、参議院だけは国会の一翼として残つているわけであります。その参議院国会の代行をしていただこうという趣旨で、この五十四条の規定ができたものと考えているわけであります。従いまして、ここにかけられるものにつきましては何ら列挙いたしておりません。この憲法審議の際に、この条文でいう緊急集会にはどういう案件がかけられるのかという質問がありました。当時金森国務大臣は、国会の権限に属することは原則として全部かける、たとえば法律もこれでかけ得ます、また予算もここで審議せられ得る、さらに憲法改正のことまで言つておりますが、これは憲法は予想しておらぬということも言つております。少くとも法律予算についてははつきりこの措置の中に含まれるという答弁をして、憲法は成立しているわけであります。また学者の本を見ましても、法律予算については大体緊急集会で処置し得るのだという定説になつているようでありまして、暫定予算といえどもこれは一種の予算でございますので、その点については私は全然疑問がないと考えているわけであります。
  132. 山口(好)委員(山口好一)

    ○山口(好)委員 今の問題に関連しまして、憲法第五十四条第三項に「衆議院同意がない場合には、その効力を失ふ。」こう厳と規定がしてあります。もし同意がない場合の効力については、事はなはだ重大である。この同意が得られなかつたならば、どういう結果を招来するかということについては、事重大でありますために、政府においても、与党の諸君も、さような結果になることは断じて予想できない、必ず同意が得られるものだ、ぜひともこれは同意をしてもらうよりいたし方がないということを言うのでありますが、これが厳として規定がある以上は、私は法制局長官に、その効力を失うということは、どういう結果になるかということを伺いたいのであります。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  133. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 ただいままでの御答弁は、大体予算の問題に集中してお答えしたために、そもそも予算がなくては国政は動きませんということを申し上げているわけであります。今のお尋ねの点を広く考えますと、たとえば今度御提案申し上げておりますところの法律関係やいろいろなものがあるわけであります。抽象的に申しますといろいろなものがあるのであつてこの中には効力を失うことになつてもあるいはやむを得ない。政府としてはもちろん困りますけれども、客観的に見ますと、あるいはやむを得ないものも観念上はあり得ると思いますから、そういう広い立場から申し上げれば、効力を失つてもやむを得ないという場面があり得る。しかし、先ほど来申し上げたように、予算関係はそういうことはとても想像もできないということで、そういうことを申し上げたのであります。
  134. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 憲法六十九条と七条の解散権の問題については、これはあさつて総理がおいでになつてから詳細に質問いたしたいと思つておりますが、今の法制局長官の答弁で、今度の解散は六十九条による不信任決議を原因として七条で解散をやつた、証書には七条だけが書いてある、こういうわけですが、昨年八月の解散の場合は不信任決議がなかつた。第七条でおやりになつて、六十九条という原因はなかつたと思いますが、政府解散に関する見解がおかわりになつたのか。これを念のために聞いておきます。
  135. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 これは事柄を二つに分析いたしまして、一つは解散の意思の発表形式の問題、それから、今のお言葉にもありましたように、解散原因の問題の二つにわけなければならない。解散原因については六十九条の場合にのみ限られるか、その他の場合も行われるか、これは先ほどお話のように仮説の問題であります。政府としてはもちろん六十九条の場合には限られないと考えておりますけれども、世間には違つた説もある。これは解散原因の問題であります。ところがその解散を表示する形式の問題となつて参りますと、先ほどちよつと触れましたように、これはどうしても詔書の形でなければならぬ。どういう原因の場合といえども詔書の形でなければならぬ。その詔書を出す根拠条文がどこにあるかと申しますと、これは七条以外にはないわけであります。そこで先ほど触れましたように、解散原因を一々その詔書にうたうという必要は、われわれとしては今後ないであろうということで、詔書の直接の根拠条文を、七条をもつてあらゆる場合をカバーしてやつた方が、単純でよろしくはないだろうかということで、そういう形式をとりました。それを申し上げたわけであります。
  136. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 憲法五十四条の措置内容予算法律も含んでおられる、こういう御答弁ですが、参議院においても同じような御趣旨を開陳しておられたと思うのですが、この点について予算措置に入つているかどうかということは重大問題であります。少くとも政治的には、今度の緊急集会というもので予算審議したということについて、相当疑問があると思いますが、これも総理がおいでになつてから質問いたしたいと思います。  今関連質問に御答弁になつ効力を失うという場合に、予算の場合は効力を失うようになつては困る、だからそういうことがないように希望する、その他の問題については効力を失う場合もあるだろう、こういう御答弁があつたのですが、これは措置をやはり予算法律というように解釈されておる結果だろうと思います。従つて効力を失う場合に、法律緊急集会審議された場合には効力を失う場合もあると思いますが、その効力を失うというのは将来に向つて効力を失うのか、それとも遡及して効力を失うのか、それを御答弁願いたいと思います。
  137. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 その点もはつきりさせていただく機会を得たわけでございますが、今の法律の問題については、かりに法律について不同意の議決がありました場合には、その効力は将来に向つて効力を失う。この五十四条の不同意の場合は、すべての法律のみならず、ほかに、去年お願いしました緊急集会における中央選挙管理会の委員の任命という、ああいう問題も含めまして、すべてその措置は将来に向つて効力を失う、過去には遡及しないという考えでございます。これもまた学説も一定しておるようであります。
  138. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 法律については将来に向つて効力を失うだけだ、こう言われるのでありますが、先ほど法制局長官が例をおとりになりまして、この五十四条というものは旧憲法の第八条の緊急勅令と、七十条の財政緊急措置と、この二つを含んでいるのだという御答弁があつたのですが、第八条には緊急勅令は将来に向つて効力を失うと書いてあります。そういたしますと、反対解釈をいたしましたら、これにはただ失効すると書いてある。第五十四条の解釈として第八条をおとりになつたら、第八条には将来に向つて効力を失うとあり、これにはそう書いてないとすれば、当然反対解釈として、新憲法下においては衆議院国会の権威というものを尊重した場合、衆議院の承認を得ていないような法律は遡及して効力を失うのだ、こう解釈するのが妥当だと思う。条理から行きましても、反対解釈から行きましても、当然そうなるのじやないかと思います。
  139. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 その点も敬服いたします。(笑声)但し今の遡及するという建前になりますと、要するにすでにでき上つている既成の秩序というものは、さかのぼつて根本的にくずれるわけです。それによる被害というものが相当大きなものが想像されるわけです。一般の法律の建前としては、特に遡及する場合には、遡及して適用するということをうたつて初めて遡及するので、そうでない場合には、原則は将来に向つての問題だけを規律するものであるということは、私は法律関係のことについての根本の観念であろうと思うのであります。従いまして、旧憲法の例をお引きになりましたけれども、これは当然の条理をうたつたものであつて、むしろ逆に、遡及して効力を失うと書かない場合には、旧憲法時代と同じように読むのが法律の通念であろうというふうに前から考えておる次第であります。
  140. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 法律も、たとえば刑罰法規なんかは、利益のためには遡及するという原則があるわけです。それから、第八条に将来に向つて失効するとあることは、当然の規定を書いたのだと言われるのですが、七十条の財政緊急措置については将来云々ということはないのです。従つて緊急勅令は、旧憲法下においては将来に向つて効力を失うのだと当然のことを書いたんでなしに、特に断つているのだ。その第八条と違つた表現をしている新憲法下においては、国会の権威というものにおいて、遡及して効力がなくなるというのが当然の解釈ではないかと思う。第七十条の表現から言つても当然そう解釈されるのですが、いかがですか。
  141. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 七十条自体につきましても、これは遡及はしない。そういう将来に向つてという明文がなくても、これは遡及しないというのが旧憲法時代の解釈のようであります。たとえば、かりに財政上の処分をしても、これは不承認だ、前に出した金をみな取返せということは、当然憲法には予想しておらないところであるということを言つてつておるのでありまして、そういう点から申しましても、むしろ第八条の将来に向つて失効するということは、当然のことを当然に書いてあるものと解釈するわけであります。
  142. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 緒方副総理にお尋ねしたいのですが、今度の参議院緊急集会暫定予算をお出しになつた。この暫定予算というのは国政運用の最小限度だ、こうなつております。それからほかに法律案件が五件ばかり出ておりますが、これも最小限度国政を運用するに必要な法律案をお出しになつた。その原因というのは、内閣は衆議院で不信任を受けた、一種の事務管理内閣である、従つて国政運用に最小限度必要な予算法律案を出したのだ、こう解釈すべきだと思うのでありますが、いかがでございましようか。
  143. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 その通りであります。
  144. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 ただいまの御答弁のように、衆議院で不信任案を可決された内閣として、当然事務管理内閣だ、こういう性格からして、暫定予算についても、法律案についても、国政運用の最小限度のものを緊急集会提出された、こういう御答弁ですが、そこでお尋ねしたいのは、これは参議院緊急集会の問題ではありませんが、事務管理内閣という性格から言つて特にお尋ねしたいのですが、その単なる事務管理内閣にすぎないところの内閣が、日米通商航海条約を締結された、こういう国政に重大な関係のあるような条約を、なぜ事務管理内閣が締結されたか、これをお尋ねしたいと思います。
  145. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 御指摘でありますが、これは一昨年以来続けて日米両国の間に審議しておりましたもので、その従来の経過に従いまして継続したのであります。その成果につきましては、今回の国会にあらためて御承認を得る、それが今までのしきたりであると考えまして、そういう考えから締結いたしたのであります。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕
  146. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 従来継続中であつたから締結したのだとか、その結果について今度の新国会に承認を得られるということは、この重大な日米通商航海条約を締結された理由にはならないと思う。単なる事務管理内閣である。しかもその内容がいかに日本にとつて不利であるかということは、言うまでもないのでありますが、こういう重大な条約を、ただ従来交渉しておつたからとか、あるいは今度国会の承認を得るからとかいうことで締結されたことは、理由にならないと思います。何か明確な御理由があると思いますので、はつきりさせていただきたいと思います。
  147. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府選挙管理内閣でありましたけれども、国家は悠久に続いておるのでありまして、外国との関係、その条約につきましては、従来の交渉をそのまま続けることが、選挙管理内閣におきましても別にふしぎはない。必要の最小限度における仕事であると思つております。
  148. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 その日米通商航海条約というのは必要最小限度の事務だ——今度の暫定予算にしろ、法律にしろ必要最小限度のものなんです。いわば事務的なものなんです。この日米通商航海条約を必要最小限度のものとお考えになつておるのかどうか。国家は悠久に続いておるとおつしやるのですが、これはもちろんそうです。しかし問題は、事務管理内閣になつた吉田内閣が、こういう重要な条約を締結していいかどうか。国会の承認、不承認の問題は別問題です。法律論、政治論として、選挙管理内閣であるところの吉田内閣がこういう条約を締結できるかどうか、ここに問題があると思います。率直に御答弁になつた方がいいと思うのですが……。
  149. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 ただいま緒方副総理からお答え申しましたように、これはその場合になつて、選挙管理内閣になつてから思い立つて交渉を始めて、そうして締結したということならば、これは問題でございますけれども、前からの行きがかりになつて折衝に折衝を続けておつたものが、一段落ついたので、そこで調印をした。そして今度の新しい国会にそれを御提出申し上げて、事前承認をお願いしようというのでありますから、そこに別におしかりを受けるようなことはないと思います。
  150. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 急に思い立つてつたのじやないので、前から交渉しておつたのだからいいと言われますが、不信任案が通過しまして、内閣の性格はかわつているのです。管理内閣になつちまつているのです。その瞬間において、従来の権限というか、役割はなくなつているのです。法制局長官法律の専門家ですが、いわゆる無権代理という形になるだろうと思う。性格がかわつているのですよ。単なる事務管理しかできない。事務管理しかできない者が、管理以上のたとえば使用、収益とか、そういうことはできないのです。それと同じ性格のものなんです。ただ従来やつて来たからという時の経過が問題でなしに、内閣の性格が問題になる。たとい従来やつていなくても、即座にでも、その内閣に権限があればやつていいのです。五年、六年交渉しておりましても、内閣の性格がかわつたら、たとえば長年月にわたつて交渉しておつても、こういう条約を締結する権限はない。今の御答弁は、明敏な頭脳を持つていらつしやる法律専門家の長官の御答弁とも受取れないのです。そういう長官の御答弁では私たちは満足が行かない。緒方副総理の御答弁をもう一度お願いしたい。
  151. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 ただいま法制局長官からお答えいたしました通りに考えております。
  152. 成田委員(成田知巳)

    ○成田委員 六十九条、七条の解散権の問題、さらにまた事務管理内閣である吉田内閣が日米通商航海条約を締結したという問題は、論議の余地は十分あると思う。今日の質疑では責任ある答弁を私たちは得られませんので、あさつて吉田総理が出ましたときに、この問題を追究することにいたしましてきようはこれで一応私の質問は終つておきます。
  153. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 吉田賢一君。
  154. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 きようの議案は、これは憲法解釈の上から見ましても、あるいは新憲法運用の上から見ましても、国政の根本に触れるきわめて重大な問題を含んでおりまするので、私は総理にその所見をただす機会をあとに保留させていただきまして、その前提となる問題等について、きようは質疑をし、なおきようの質疑の内容によりましてさらに他の所管大臣にも時間の許す限り質疑を試みてみたい、こういうふうに考えておりますので、御了承願いたいと思います。  緊急集会によりまして、今提案なつておりまする暫定予算初め法律案参議院によつて可決されております。そこで私がお尋ねしたい第一は、政府提案になりましたこの予算案は、憲法五十四条の第二項の但書の条件を満たしておるのかいなや。満たしておるとするならば、その趣旨内容についてまず御説明を願いたい。
  155. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 御指摘の但書と申しますのは、「国に緊急の必要があるときは、参議院緊急集会を求める」という、結局「国に緊急の必要」という条件の問題であろうと思います。それで、ただいまの暫定予算のごときは、もとより新年度の開始までに成立しておりませんと、先ほど来申しましたような支障を生じますからして、どうしても三月中には成立しなければならぬというもので、そういう点で緊急性があるわけであります。また必要性から申しましても、予算がなくては成り立ちませんですから、十分必要性があるという意味で、まさにこの条件に該当するものと考えております。
  156. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 長官に伺いますが、そうすると、具体的に各費目につきまして一々あげることは差控えますけれども、概括して申せば、一体国の緊急必要のためというこの緊急という趣旨は、どういうふうに解しておられるのでしようか。三月までに予算が成立しなければ困るという、そういうようなものではなくて、緊急という趣旨についてもつと明確な御答弁を願いたいと思います。
  157. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 ごもつともに存じます。教科書のようなことでございますけれども、定義を申しますれば、解散後の総選挙によつて新たにつくられる国会が開かれて、その国会の御審議にまつひまがない。それまで待てない意味だと思います。
  158. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 次の国会開会まで待てない。大蔵大臣の説明によりますると、新たに成立した法律施行のためにもこの暫定予算は組んだのである、こういうような趣旨の説明もあつたのでありまするが、この緊急というのは、そういう漠然としたものではなくして、真に国家の危急存亡と言いますか、これなくんば公安の維持ができない、そういうような非常に重大な緊迫した事情という趣旨に解されておるのが、旧憲法時代の旧憲法第八条の緊急勅令、あるいは七十条の財政緊急処分の緊急の趣旨であると解しておるのですが、この点についての御所見をもう一ぺん伺つてみたいと思います。
  159. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 緊急の必要という言葉をまた例によつて分析いたしますが、これは緊急ということと、必要ということとの二つの要件にわけることができると存じます。緊急ということについては、先ほど来申しましたように、待てない、どうしても今やつていただかなければ待てないということは、これは明瞭に緊急でございますから、予算が成立するまでは、どうしても暫定予算を成立しておかなければならないというのは緊急の方であります。ところが必要の方になりますと、これは予算内容についても、今御指摘のような問題も出て参りましよう。法律そのものについても問題が出て参りましようが、今御指摘になつたような事柄は、これはすでに有効に成立した法律があつて、ある公庫出資をしなければならないという法律がちやんとできておつて、その執行をどうしても予算に盛り込まなければ今度は違法の状態を生ずる。違法の状態ということは、結局大きく言えば憲法違反——法律に反することは憲法違反ということでありますから、そういう意味で違法の状態が生ずる、そういうことを避けるということは、やはり大きな必要ということで、御指摘のようなものについても盛り込んであるわけであります。
  160. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 大蔵大臣にお尋ねしまするが、これは例をもつてお尋ねしまして、なお緊急の必要性の問題について、その趣旨を明らかにしたいと思うのであります。たとえば他の省にもずいぶんと出ておりますが、一例をあげますれば、配付になりました二十八年度の一般会計暫定予算についての三百五ページによりますると、これは通産省の所管の費目でありまするが、広報宣伝費あるいは海外広報宣伝費、あるいはその次のページには交際費——広報宣伝費として十六万七千円、海外広報宣伝費として二百余万円、交際費が四十万円、あるいは国界公務員共済組合負担金としまして千四百五十六万円、かようなものが載つております。こういうのは通常の経費であることは、これは相違ないと思います。これを憲法規定しておりまする緊急性があると言うことは、どうもこれは牽強附会になるのではないかと存じます。ひとつ査定になりました大蔵大臣の御所感を承りたい。
  161. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 海外の広報宣伝ということは従来からずつとやつてきております。毎月いろいろなパンフレツトをつくつて海外に送るなり、そういつたような事務をずつと継続してやつておるわけであります。これが一箇月間なくなるということは、いろいろな点において支障があると存じます。また交際費につきましても、この期間だけ特に交際費がいらないというわけにも参りません。いろいろな事務をやつております上において必要なわけであります。共済組合負担金につきましても、これは月給を払いますたびにその負担金の支出を要するわけであります。
  162. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 私が聞かんとするこの緊急の趣旨をひとつ御説明願いたい。政府の所信を伺いたいと思います。今局長の話によりますと、いろいろな方面に支障を来す、従来それは出しておつた費目である、こういうような御意見でありますが、いろいろな方面に支障を来すということは、必ずしも国の緊急、国のために緊急必要な事項とは限らない。それは観念が違います。だから、そういうようなごまかしじやなしに、やはりはつきりと緊急必要性ありということについて、これはひとつ大臣から聞いてみたい。たとえば交際費に至りまするまで緊急性がある、憲法五十四条の緊急集会にかけ得られる条件があるというようなことになりましては、これは財政法の三十条の普通一般の暫定予算と混淆したことになると思うのであります。憲法五十四条の緊急集会に求めるべき条件、出し得る条件は、もつと厳格にいろいろな条件が付してありますことは申すまでもないことであります。交際費のごときが国家の緊急必要事項であるというようなことは、常識上考えられません。要するに、普通の暫定予算としてお組みになることが編成の根本趣旨ではないのか、こういうことを疑問に持つているので、お伺いするのであります。
  163. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 御答弁申し上げます……。
  164. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 大臣に答弁願いたい。先ほどの御意見なら聞く必要はない。
  165. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 大臣にかわつて御答弁申し上げます。緊急ということにつきましては、先ほど法制局長官から申し上げられましたように、次の総選挙後の議会まで待つことができない程度のものである。そういう意味のものが緊急である。また必要ということになりますと、交際費はその期間において支出しなくてもいいじやないかという御議論もあるかと思います。われわれといたしましては、こういつた経費は四、五月の間においてやはり続けて支出する必要があると考えまして、暫定予算に計上いたした次第であります。
  166. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 ただいま主計局長の答弁いたした通りに考えております。
  167. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 それなら、いま一度主計局長に聞いてみますが、一般暫定予算と、緊急集会に出し得る条件を具備した暫定予算とは、そこに相当条件の違いがあるということは了承していいのでしようね。
  168. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 先ほど成田さんの御質問に対してお答えいたしたように、政治的には、法制局長官からも答弁がありましたように、緊急集会に出すべき暫定予算と、そうでない、国会ができてから出す暫定予算とは、性質的に差違がある、こういうふうにおつしやつたのであります。これはその通りであろうと私も考えますが、暫定予算の性格といたしましては、緊急集会に出すものであろうと、あるいはその他の集会において出すものにおきましても、やはり国政運営上必要最小限度のものとして考えてやるべきものであつて、いろいろな経費を入れまして、応急的処置としてとられたものが、本格的措置に影響を及ぼすことがないように措置をするのが、暫定予算の性格であろうと考えているわけであります。
  169. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 あなたと問答をしていては、どうもはつきりしないから、法制局長官にお答えを願いたい。財政法の三十条によりますると、「内閣は、必要に応じて一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これを国会提出することができる。」つまり「内閣は、必要に応じて」という一つの要件があるだけであります。ところが憲法五十四条の二項の但書によりますると、「国に緊急の必要があるときは」というように、憲法にこういう条件が附加されておりまして、非常に厳格な条件がついておるものと思うのであります。そういう意味におきまして両者おのずからそこに条件は違うものと思うのですが、いかがですか。
  170. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 財政法の三十条も結局、この第二項とあわせ読みますと、暫定予算というものは、本予算が成立しない場合に備える応急のものだということは、先ほども成田委員にお答えした通りに、その性格がうかがわれると思います。従いまして、暫定予算というものの性格は応急的のものである。従つて、さらに卑近な言葉で申しますれば、あまりはでなものは盛り込まれるはずがないという程度のわくはあると思います。しかし何分暫定予算に盛り得るものは左のことしというような列挙されたものはございませんから、そういう法律の精神からそんたくするほかはないと考えるわけであります。  そこで、今のお尋ねにもどりまして、緊急集会に出される暫定予算ということをおつしやいますけれども、結局その場合には、暫定予算といえども、国が今まで続けて来た生活というものがそれによつて支障を生ずる、生活ができなくなるということのないようにという内容が、暫定予算の中身となつて来るべきものである。これは暫定予算そのものの性格が、やはりそのままの形で緊急集会にかけられ、本会議の御同意を求めるということになるのであつて暫定予算そのものの性格を先ほど申しましたように一応考えて、その後緊急集会にお願いするというふうに、少し大ざつぱかもしれませんが、筋道はそう考えらるべきだろうと思うわけであります。
  171. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 法制局に伺いますが、旧憲法の八条及び七十条の緊急の趣旨と、新憲法の五十四条の国の緊急の必要性の緊急とは違うのですか。同趣旨に解しておられるのですか。いかがでしようか。
  172. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 これもごもつともなお尋ねと存じますが、旧憲法の第八条には、御指摘のように、「緊急ノ必要」という言葉がございますが、その上に、さらに「公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要二由リ」という条件がきびしくかぶせられております。七十条についても、もつときびしい条件がかぶせられておつたと思います。これは、要するに、この旧憲法時代の緊急勅令あるいは緊急処分は、政府の一存でやつてしまう。そうしてあとで帝国議会の事後承諾を求めますけれども、それも先ほど御説明申し上げましたように、不承諾であつても、効力はそのままというふうに、非常に政府が優越的な、いわば非民主的な建前になつておりますから、その調和のために、こういうきつい条件をかぶせてあつたのだと私は思います。ただ、今度の新憲法の場合におきましては先ほど来申します通りに、そういうことでなしに、国会の一院であるところの参議院が少くとも健在である。国民代表の参議院があられるわけでありますから、その参議院国会の代理を勤めていただくというわけで、措置そのものは民主的という趣旨にはずれませんから、そういう意味で、こういうきびしいわくをはずしたというふうに考えておるわけであります。
  173. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 旧憲法の八条は、あなたのおつしやるように「公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル」という条件がついておりますが、しかしまた同時に、地方的な出来事についても第八条が適用されておつたということは、学説で一致しておるようであります。ところが新憲法の五十四条では、「国に緊急の必要」という条件が厳に規定されているわけであります。でありますから、その点は必ずしも旧憲法の方が条件が厳格だとは言えません。こちらは、地方的なものは大体除外して、「国に」ということになつておりますから……。そこで緊急という趣旨におきましては、やはり今の新憲法におきましても、旧憲法の趣旨を相当踏襲されておるのではないか、こういうふうに思うのですが、その点について重ねてひとつ伺つておきたいと思います。
  174. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 旧憲法時代には「国に」という言葉はございませんけれども、これは国の立法として法律でなさるべきことを、勅令でやれるという趣旨でございますので、やはり国家的な関心事というものが、その立法あるいは緊急勅令の内容になることは、当然これは予想されておるところであろうと思うのであります。従いまして、御指摘のように、新憲法の五十四条の「国に」と申しますのも、当然これは国家的な重要な事項、国家的な必要事項という趣旨であつて、地方と区別して特に「国に」という言葉を使つたとは私は思いません。ただ、しいて申しますれば、たとえば地方の条例限りでできることを立法でお願いするというようなことは、当然のことかもしれませんけれども、「国に」という言葉で、あるいは関連してできるかもしれませんが、これはこじつけに近いと私は思います。
  175. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 それなら伺いますが、この場合の具体的適用は、やはり非常な事態と目すべきような、もしくは非常な事実、こういつた場合を主としてさすべきではないでしようか。少くとも通常の場合は含まないというふうに解すべきが、緊急の文字の解釈から見ましても、戦後の法律の沿革から見ましても、当然であろうと思うのですが、いかがですか。
  176. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 お尋ねの点は、もちろんほんとうに非常な事柄、予測もつかない突発の事柄という場合をも、ここに含めてあることは当然であろうと思います。あるいはそれに重点を置かれておつたかもしれませんけれども、何分にもこの法律の解釈の態度といたしましては、今のように「国に緊急の必要」ということで非常に広い形、旧憲法時代より広い形、しかも参議院審議を経てなされる措置ということから、これは予測せざる突発事態という場合に限つてと解釈すべき根拠は、どこからも出て来ないというふうに考えているわけであります。
  177. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、さきに指摘しました——これはたくさんの例がありますが、官庁の交際費のごときものも、やはり「国に緊急の必要」というのに入ると解釈されるのでしようか。いかがでしよう。
  178. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 そういうものも含めて、国なりあるいは国の機関の運行を滞りなく進めて行かなければならぬという必要から、この暫定予算の中に盛り込まれておるわけであります。国家機関の運行を滞りなく進めなければならぬという必要、その暫定予算をどうしても三月一ぱい、新年度開始前に成立させなければならぬという緊急性がある。その二つの必要から今度の措置についてお願い申し上げるのであります。
  179. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 完全にやむを得ざる消極的な支出の面につきましての経費にとどまる、こういうふうに解すべきものであつて、少しでもそこに考慮のゆとりを持つべきような経費等は、緊急の趣旨にはまらぬのである。何となれば、それはやはり積極的な性格を持つたものであるからと、こういうふうに解すべきが緊急の条件に適する経費であろう、こう思うのですが、いかがですか。
  180. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 今の積極的にというのは非常に適切な言葉であろうと存ずるのであります。私ども参議院説明して参りましたのは、先ほどの問題にも触れますが、新しい政策、今までやつていなかつたことを新しく思い立つてやろうというその予算をこの中に盛り込むということは、まさに今のお言葉の積極的の中に入ると思います。われわれはそうでなく、そういうものは限界の外に置いて、今まで続けて来た国家機関の生活をそのまま続ける、こういう限度にとどめたというわけでございますから、お言葉に従えば、これは消極的なものであると申し上げてよろしいと存じます。
  181. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 これは、たとえて申しますれば、真に最小限度、健康で言うならば、生命で言うならば、ほんの一時的に、水であるとか、少しでも積極的な栄養価値というものを含まない、厳に事務的な経過的なものだけを含むということが、この際における参議院提出されるべき「国に緊急の必要」の暫定予算、こういうふうに解すべきものではないのでしようか。
  182. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 今の憲法の条文の中にある「必要」という文字を、文字以上にさらにしぼられまして、最小限度の必要というところまでしぼるという考え方も、これは一つのお考えだろうと思います。けれども私の趣旨は、むしろ先ほどお言葉にありました積極性があるか、消極的のものであるかというのが大きな限界になつて、積極性のあるもの、すなわち新たに思いついたような政策を盛り込むということはなすべきではない。緊急の必要という、その必要の限度をどの程度までしぼつて行くか。やむを得ない最小の必要というところまでしぼるかどうかということは、憲法自身の解釈としては、必要とあればその必要という言葉を率直にとればいいのであつて、さらにそれをしぼつて考えるというところまで憲法は要求しておらないように考えておるわけであります。
  183. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 それでは次に進みまして緒方副総理にお尋ねしますが、憲法六十条は御承知の通り衆議院における予算の先議権の規定であります。それから六十九条は、申すまでもなく不信任、解散、その間に辞職のゆとりの十日という規定があるわけでありますが、内閣といたしましては、予算の先議権のある衆議院を、予算についてはできるだけ尊重するという建前をとつて行かねばならぬと思うのですが、それに対する御所見はいかがですか。
  184. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 原則としては今仰せられましたことは当然であると考えております。
  185. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 当然のことでありますが、それならば、すでに不信任が可決されました後にも相当時間の余裕がありますので、国会尊重の建前から衆議院暫定予算を出すということになれば、非常に寛大な条件のもとに暫定予算が編成されるべきであつた、こう思うのですが、なぜその措置に出られなかつたか、その理由を御説明願いたい。
  186. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 解散に先だつて暫定予算を出せばよかつたではないかという御質問のようでありますが、当時の国会の情勢から見まして、十日間以内に予算審議を終ることは不可能であると政府で判断をいたしまして、憲法第六十九条に従いまして解散をいたした次第であります。
  187. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 そうはお答えになるが、しかし参議院におきましてはこの暫定予算なるものは、緊急集会で二日間で審議を終了しておる。参議院で二日間で終了するものが、衆議院で十日間で終了しないとは考えられないのですが、いかがですか。
  188. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 衆議院におきましてはすでに不信任案が通過いたしておりまして、その後に暫定予算提出することは法理上間違つておると考えたのであります。
  189. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 佐藤長官に聞きますが、さような場合に衆議院暫定予算提出することは法理上不合理な根拠、理由があるのですか、いかがでしよう。
  190. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 むずかしいお尋ねでありますが、憲法六十九条の趣旨を見ましても、あるいはただいま御指摘の五十四条の趣旨を見ましても、少くともその解散の前、すなわち不信任決議の後、解散の前に、すべての措置を完了しなければならぬという根拠はないわけであります。むしろその場合は、内閣の政治判断によつて、迅速なる措置をとるのがいいか、いずれがよろしいかという判断をするということに憲法はゆだねておる。そのゆだねておるところに従つて措置をするということは、結局法理上の結論ということに実はなると存じます。
  191. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 不信任案の可決せられた衆議院暫定予算提出することは、法理上不合理であるという御答弁だが、それに対する御所見いかん、こう聞いておる。国会中心、衆議院の先議権を承認されておる緒方副総理でありますから、その場合に何ゆえに衆議院にこれを出すことが合理的でないのかということを伺つておる。なお法律上佐藤長官に伺うのですが、政治的判断を問うのではなしに、法理上不合理だという御答弁でありましたから、それは解しかねるので、法律上の御意見を伺つておる。
  192. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 先ほどお答えした通りになるわけでございますが、そういう判断に憲法はまかせておるということは、結局私は憲法の法理上の問題になろうと思う。
  193. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 予算審議衆議院に先議権があり、また国会中心に財政審議をするということは、申すまでもなく新憲法の精神です。これに向つて最善の措置をするということが、不信任の決議があろうとなかろうとにかかわらず、内閣としてなすべき唯一の当然の道だろうと思うが、それをなぜしなかつたか、こういうのです。それをあなたに聞くのでなしに、重ねて副総理に伺いましよう。
  194. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。それは第六十九条の規定に従いまして不信任案の通過後政府解散をするか、総辞職をするかの判断をまかされておるのでありますが、その場合に、すでに不信任案が通過しておりますので、その後の措置参議院緊急集会にまかせるのが当然であると政府といたしましては判断をいたしました結果、緊急集会暫定予算提出してその承認を求める措置をとつた次第であります。
  195. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 ただいまのはどうも答弁になつておらぬと思うのであります。私の伺うのは、あなたも衆議院予算について先議権があるということはお認めになつておる。それから国政は国会中心に運営されることが新憲法の精神である。こういうことも御同意なつておる。しからば、参議院においては二日間で審議が終了した。それほど簡単に運んでおるこの各議案につきまして、なぜあなたの信念に基く国会中心、衆議院先議権尊重の建前からする措置を内閣はとらなかつたか、衆議院になぜこれを出さなかつたか、こういうのが私の質疑の趣旨なんであります。これに対して明快な御答弁を伺いたい。
  196. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府といたしましては、その場合は、暫定予算憲法第五十四条の参議院緊急集会にかけることが当然である、そう考えた結果であります。
  197. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 この点につきましては、これはやはり行政を担当する政府といたしまして、予算を発議するところの政府の立場、措置といたしまして、憲法運用の上における根本問題に触れると思いますので、重ねてあさつて総理に所信を伺うことにさせていただきたいと思います。  それから佐藤長官に伺います。成田君の質疑の際に少し触れましたかと思うのですが、私から重ねて聞いておきたいと思います。衆議院は、この議案につきましては、独自の立場において修正あるいは部分的不同意、こういつたものはなし得る権限があると考えるのですが、その点はいかがでしようか。
  198. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 われわれの立場といたしましては、先ほども申し上げたのでありますけれども、お尋ねのこと自体は、今御意見の御開陳もありましたように、国会御自身の権限でありますので、また国会御自身の独自の問題でございますから、われわれ政府側の方から解釈を申し上げても一向権威のないことではないかと思うので、むしろ先ほど申しましたように、ぜひ御同意をお願い申しますということを申し上げるのが筋合いじやないかと思うわけであります。
  199. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 私は、国会独自の所見によつて行動し判断し得るということは信じております。しかし、その場合に、部分的な不同意あるいは部分的な修正、こういつたことはなし得るものとの見解を持つておりまするが、政府の所見はいかん、こう聞いておるのです。
  200. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 重ねてのお尋ねでございますから、私どもの考えているところを御参考に申し上げますと、今回の案件は暫定的と申しますか、臨時的の措置によるものではありますけれども、すでに参議院緊急集会の可決を経て、予算としては成立してしまつておるものでございます。それについての御同意を求めておるものでございますから、普通の予算の御審議の場合とは、これは場面が違つておるのであります。すでに成立したものについての可否を問うておるという形になりますから、修正の問題は、私は出て来ないという結論になるように思います。  それから可分、不可分の問題でございますが、かりに一般会計予算というものをつかまえてその各項目について可分、不可分の論を立てようといたしましても、これは、予算一般会計予算として各関連を持つた一体のものと考えますから、不可分のものであるというふうに考えております。しいてお尋ねがありましたので、さように考えておりましたところを申し上げた次第であります。
  201. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 これはまことに奇怪な御発言ですが、不可分のものであるということでありますと、どうもわれわれの論理上想像できないように思うのです。各省の各予算につきまして、いろいろな費目があげられております。しかし、われわれの見るところによりますれば、明かに国のため緊急な必要ありという条件を満たしておらぬという予算が随所に見えるのであります。これは一、二指摘して私は質疑したのでありますが、さような場合にも、なお不可分のものとして、同意するかいなやということに結論をつけなければならぬということは、私はそれはやはり国会審議権が、予算編成という形から制限をされる危険がある、こういうふうに考えざるを得ないのであります。やはり国会といたしましては、各費目につきまして、各省にわたりましてそれぞれ審査いたしまして、これはよい、これは悪いということをなし得る権限は十分にある、こう思うのであります。何もこれが単一のもので、不可分のものでなければならぬという筋合いではないと思います。やはりその点は通常の予算審議の際に、これをどう扱うかということと、趣旨においてかわりはないものと考えるのであります。重ねて御所見を聞いておきたいと思います。
  202. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 まことにごもつともだと思います。私個人といたしましても、国会審議権、ことに衆議院の本会議における審議権を十分尊重した態度で、物事を考えなければならないということには違いないのでありますけれども、それにもかかわりませず、一応の筋をたどつて私が考えました結論は、はなはだ心苦しいことでありますけれども、どうも先ほど申しましたような筋道になるのではないかということで、最初はむしろ御遠慮申し上げておつたわけですが、しいてお尋ねがありましたので、はからずもお答えしたわけであります。これは、最後国会の御判定にまつほかはないと思うのですが、ただ私の気持を申し上げたという程度にお聞き願いたいと思います。
  203. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 それでは佐藤長官に重ねて伺つておきますが、先ほど緒方副総理と問答いたしました点についての法律的な憲法解釈上の御所見をお聞きいたしたいと思います。新憲法では、財政予算審議というものは衆議院に先議権がある。しかして国会が中心であつて、古い憲法におきましては、たとえば財政の緊急処分の規定によつて見ましても、かなり政府中心であります。だから政府がさような処置をなし得るということで。緊急勅令あるいは財政処分の緊急処理を見ましても、やはり政府中心ですが、その点は根本的に国会中心にかわつておることは申すまでもないことと思うのであります。それならば、国会尊重という線に沿うて、この暫定予算は組まれねばならないはずであつたのでありますが、それが衆議院を無視しまして参議院へ持つてつて衆議院は、いわば不信任されたのだから、けんかした粗手だという意味かもわかりませんけれども、そごにやはり根本的な、よく言えば大きな手落ちでありまするが、悪く言えば政府憲法の精神を蹂躪した。参議院緊急集会召集権を濫用した形跡すら見える、こういうふうにも思うのでありまするが、その点について憲法運用解釈上の所見はどうでしよう。
  204. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 御趣旨はよくわかるのでありますけれども、結局問題の根本点を突き詰めて行きますと、緊急集会というものにこの予算なるものをかけることの適否の問題、あるいは違法かどうかというような問題になると思います。この点は、先ほど触れました通りに、緊急集会の条文に上つておる措置というものの内容に、わくがあるかどうかということに結局帰着するのでありますけれども、これはどうしてもごく平たく憲法を見ました場合の解釈としては、あの措置の中に予算は含まれないという条文の解釈はどうしても出て来ない。従いまして、金森さんが最初憲法制定の際に答弁されましたように、法律も当然であるが、予算も含むというのがやはり解釈としては出て来ることじやないか。そういたしますと、今御指摘のその点において、すでに参議院先議という形が憲法で許されてしまつているというように見なければならないと思うのであります。そこで今御指摘の問題が出て来る。しかし憲法措置の中に今の予算が入るということに解釈をしてしまえば、そのあとのことはやむを得ない結論としずつと出て来ると解釈する。またその解釈は、学説も一定した解釈となつておりますから、憲法の解釈としても間違つていないと考えます。
  205. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 関連質問を許します。河野密君。
  206. 河野(密)委員(河野密)

    河野(密)委員 先ほどから伺つていて、法制局長官の言われることは非常にその意を得ないのですが、かりに憲法第五十四条の緊急措置の中に予算措置が含まれているとしても、その予算措置というものが、ただちに財政法第三十条にいう暫定予算であるかどうかということの結論にはならないという問題が一つ。もし憲法第五十四条にいう臨時的の措置というものに予算の問題があるとしても、それは緊急のいわゆる措置として行われるものであつて財政法第三十条にいう暫定予算という形をとらない場合もあり得るということを認めなければならぬ。それで、私たちがここでその点を強く主張するのは、これはこの憲法の盲点であると思うのです。盲点であるけれども、憲法を通読してみて、ここに国会解散なつた場合における予算をどうするかという規定は一つもないのであります。これをもし憲法をそのままにわれわれがあたりまえに解釈をするといたしますならば、予算不成立なつたために内閣が総辞職をするとか、あるいは解散をするとかいうことを前提にしておらぬと私は思うのであります。この憲法において、予算不成立なつた場合においては国会解散するとかいうことを前提としておらぬ。私は、この憲法を通読してみて、そういうことが憲法の底に流れておると思う。そこで、もし予算不成立なつた場合、衆議院解散しなければならない場合には、その憲法第六十九条によつて、十日間の間に何らかの措置を講じなければならないというのが、私は憲法の精神だと思うのです。その点を重要に考えるから言つておるのでありますが、その点少しも明確にしておらぬ。はつきりしてもらいたい。
  207. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 私の理解が誤つておりましたら後に重ねてお尋ねを願いますが、お話の点は大きくわけて二つになると思います。第一点は、この措置というものについて暫定予算とかその他のきまつた定形のすでにあるものを言つているのではないのであつて、もつとしぼつた何か臨機の措置のものを想定しているのではないかというようなお尋ねだと思うのでありますが、私どもの考えておりますことは、先ほども触れましたように、ここに措置というのは何かといえば、要するにその国会の権限となつている事項を言うのでありますということを、第一段に常に言つているわけであります。これは学者もそう言つております。そこで国会の権限になつている事項というのは、法律の制定、予算の議決、その他この間の中央選挙管理委員の選任の件、そういうものがある。そういうすでに単に法制上の定形のあることをここに利用しているのであつて、法制上の定形のない、たとえば立法事項に当ることを法律の形式によらないで、何か違つた形で措置としてこれにおかけすることができるかというと、私どもはそれは消極的にできない。むしろ他の定形によつてきまつているものをおかけすることが立憲的である。新らしい形をここにつくつてつて行くということは許されない。従つて法律事項は法律の形でかける。予算の場合には、本予算ということは考えられませんから、暫定予算をつくつてそれをおかけするというのが、むしろ正しい運用であろうと考えて来ているわけでございます。  それから第二点の問題は、大きな問題であると思いますが、不信任決議があつた場合には、とにかく政府解散するか総辞職をするかということに追い込まれているわけであります。もちろんその場合に、解散するということについて、たとえば解散後における必要な善後措置というものを全部事前に尽して、それが成立した後でなければ解散できないというような制限は明文上もありませんし、また民主主義——民主主義と申しますか、議院内閣制の根本精神からいつて、そういう制約はあろうはずはないと考えますからして、今回のような措置をとることも、決して憲法の筋道にたがつたことでないと考えているわけであります。
  208. 河野(密)委員(河野密)

    河野(密)委員 重ねてもう一つ。今お話のように、追い詰めてみると、ここにいわゆる緊急集会において暫定予算というものがかけられるか、かけられないか。これはお話の通り暫定予算というものはかけられるものであるとわれわれも解釈してもいいけれども、この場合における暫定予算というものは、財政法第三十条における暫定予算というものとは違うものである。それは先ほどからあなた方が説明しておられるものとは全然違うものである、こういうふうにわれわれは解釈しなければならない。それからもう一つ根本の問題は、この憲法を通読してみて、衆議院解散するというこれほどの重大なる問題について、この場合に、予算不成立なつた場合においてはどうするかということを規定しておらないというのは、憲法の盲点であります。盲点であるだけに、われわれはその憲法自体で解釈しなければならない。してみれば、この憲法自体の解釈からするならば、予算不成立なつた場合においては、衆議院解散できないのだ、その場合は憲法は予想しておらぬのだ、こう解釈する議院内閣制の場合は、あなたの御説明を聞くまでもなく、われわれはよく知つているが、この憲法が議院内閣制の考え方によつてできているのじやないのですから、この憲法によつて予算不成立なつた場合においては、衆議院解散することはあり得ないという建前の中に、この憲法はできていると私は思う。それを言うのが、この憲法を通読してみた上でのあたりまえの解釈である、ごくあたりまえの常識的な解釈だと私は思います。それであるがゆえに、私が聞きたいのは、もしその間にできるとするならば、六十九条によつて、不信任案が出た場合の十日間に何らかの措置をとるということを前提にして、十日間というものを置いてあるのだ、そういうよりほかに、この憲法からは解釈することはできないと私は思いますが、その点を重ねて明確に答弁してもらいたい。
  209. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 憲法の根本問題になりますけれども、私どもは憲法制定の際に政府側からも御説明しておりますように、一貫してこの国会と内閣との関係は議院内閣制であるというように確信を持つております。従いまして、これは今河野先生のお言葉のように、議院内閣制でないという前提をとつて参りますと、少し違つて来るということになりまして、これは結論がおのずから違つて来ることは明瞭なんで、見解の相違と申し上げるよりほかはないと思いますけれども、ただ、今の議院内閣制の趣旨を貫いていると私が申し上げましたのは、たとえば今御引用になりました六十九条の十日以内ということ、十日以内というのは、むしろ解散後における善後措置を十日間に尽して後に解散すべしという趣旨のように、今拝聴したわけでありますが、私どもの今まで持つております考えでは、むしろそれとは違つて、議院内閣制の趣旨から言つて、この六十九条というものの本旨は、不信任決議を内閣がとられながら、総辞職もせず、解散もせず、ほおかむりしてそのままのんべんだらりとすわり込まれては、議院内閣制の本旨にもとるから、そういうことは許さない。ただ、ただちに進退を決するということは困るから、総辞職に行くか、解散するかという猶予期間を十日与えた。その本旨は十日間以上ほおかむりを許さないということに趣旨があるのだと考える。またそう考えることが、前提としております議院内閣制の本旨に沿つた解釈であると思いますから、解散後における善後措置というものは、十日の問題ではないというふうに確信を持つてつたわけであります。しかしそれはいろいろ考え方がございましようから、違つてもやむを得ませんけれども、私はそういうふうに考えております。
  210. 河野(密)委員(河野密)

    河野(密)委員 それならば、なぜこの憲法そのものに、衆議院解散したときにおける予算措置に対して旧憲法におけるが、ごとき明確なる規定がないのか。この憲法の不備であることは間違いないかもしれぬ。しかし、私はこの憲法が不備であつても、この憲法自体で解釈するのが、当然正常なる解釈であると思う。もしそうであるならば、予算不成立の場合に衆議院解散があるというようなことを前提にしておらぬ。私はこの憲法はそういうことを予想もしておらないのだという解釈をするのが当然だと思う。財政法第三十条の規定を読んでごらんなさい。あなたは法制局長官だからよく御存じだが、この財政法第三十条の規定と、この憲法第五十四条に書いてある規定とは、全然規定の趣旨が違つておる。そういうものを無理に持つて来て政府に助け舟を出されても、吉田内閣はそう長く続くわけではないから、そう忠勤をはげむ必要はないですよ。
  211. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 私は良心に対して忠勤をはげんでおるのであります。ただいま御指摘の、憲法は予想しておらぬとおつしやいますが、これはお言葉を返して恐縮でありますけれども、かりに緊急集会の条文がありませんでしたならば、それはお言葉通り憲法予算不成立のままの解散ということは予想してないということはありますけれども、緊急集会制度があつて、なおかつそういうお言葉は、ちよつと私には了解しかねるのでございます。
  212. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 佐藤長官に重ねて聞いておきますが、緊急の条件が欠けておりまする暫定予算である場合は、これは憲法違反であることは解釈として間違いないですね。
  213. 佐藤(達)政府委員(佐藤達夫)

    ○佐藤(達)政府委員 たいへん卑近な例ではつきり確認いたしておきたいと思いますが、たとえば、この三月における緊急集会に七、八月分の暫定予算を出したということであるならば、これは明瞭に憲法違反だと思います。
  214. 吉田(賢)委員(吉田賢一)

    ○吉田(賢)委員 私は、一応この程度で終りまして、あさつてなお若干時間をいただきたいと思います。
  215. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 山口好一君。
  216. 山口(好)委員(山口好一)

    ○山口(好)委員 本日は総理大臣の御出席がありませんので、緊急集会にかかりました暫定予算の承認問題につきましては、やはりその前提となります政治的責任の追究が、われわれ国民の代表としてこれを承認いたしますについてはごく必要であると考えますので、後日吉田総理大臣にその点を十分ただしてみたいと思います。  本日は、その当時から吉田さんとともに、これらの件につきまして重要なポストにあられた緒方副総理もおいでになりますから、一、二の点をお尋ねいたしまして、私の本日の質疑は終つておきたいと思います。  前国会において予算案が不成立に終つたその結果、暫定予算施行のやむなきに至りまして、かくしてわが国の産業経済の活動面においても、またその発展を阻害しておる面におきましても、非常な影響があつたことは、われわれとしてこれを十分認識いたさなければならないと思うのであります。そこでこの内容はともかくといたしまして、産業その他経済部面に甚大なる影響を及ぼしましたこの暫定予算を承認するかいなやにつきましては、暫定予算施行しなければならなくなつたその責任について、第四次吉田内閣にその責任があつたか、あるいは与党の責任であつたか、その責任の所在について一応これをただすべきことは当然であると思うのであります。しかし、これは大きな政治問題であり、複雑な問題でありますから、本日の政府委員では御答弁ができないと思います。ただ一点、ただいま河野君その他から問題とされておりました憲法六十九条、衆議院で内閣が不信任の決議案を可決せられたその場合には、十日以内に衆議院解散されない限り総辞職をしなければならない。これはついに解散となつたのでありますが、この規定があります以上、十日という解散後の処置につきましても、いろいろ準備期間があるわけであります。いな解散に至るまでのそうした準備期間があるわけでありますが、前内閣としましては、不信任案が通過せられましたあと、この予算の問題について、特にすでに衆議院においては可決せられて、参議院に送付せられ、参議院においても相当にこれが審議せられておりました当時としまして、この予算案の通過に向つて、はたしていかなる努力をせられたか。少くとも暫定予算施行するように至つては非常な悪影響があるゆえに、何とかこの予算案を通過せしめなければならないという、その努力を払われたりやいなや、これをお伺いいたします。
  217. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 政府といたしましては、不信任案が通過いたしました後、衆議院解散する結果、わが国の政治、経済上に及ぼす深刻な影響につきまして十分考えまして、できれば予算を通過させたいと考えたのでありますが、当時の参議院の情勢を見ましても、十日以内に予算案の通過をはかることはとうてい不可能であると考えました結果、衆議院解散をせざるを得なかつたわけでありまして、その十日間の猶予を憲法第六十九条に置かれました理由につきましては、先ほど法制局長官が申された通りの経緯をとつておりまして、ただ解散の結果の影響に考え及びまして、できれば予算を通過させたいと解散前に考えたことは今申し上げた通りでございます。
  218. 山口(好)委員(山口好一)

    ○山口(好)委員 ただいまの御答弁ではありますが、われわれとしましては、不信任案が通過しまして、ほとんどただちに解散に持つてつたように考えられます。その間において、さような御努力をなされたるやいなや。これはむしろそういう努力がなされなかつたというふうにも考えるのでありますが、さような御答弁でありますからやむを得ません。  さらに第二点といたしまして、緒方さんも言われるごとく、この暫定予算については深刻なる影響があるということを現認されておるようでありますが、この点をわれわれ国民の代表としても非常に心配をいたし、またこれからの予算案の編成などにつきましても、われわれとしまして非常に関心を持つ点でありますが、この暫定予算を四月、五月と施行いたして参つたために、日本の産業その他の経済部面にいかなる深刻なる影響が及ぼされたか、これについて調査をいたしておりますかどうか、これは大蔵大臣にお伺いいたします。
  219. 小笠原国務大臣(小笠原三九郎)

    小笠原国務大臣 相当の影響がありましたことは仰せの通りに存じます。しかしながら、暫定予算で国の最小限度のことはやつておりまするので、その影響の程度はまだどの程度かということにつきましては、何ら調査いたしておりません。(「調査か」と呼ぶ者あり)いや何ら正確な数字を持つておらないのであります。
  220. 山口(好)委員(山口好一)

    ○山口(好)委員 ただいま大蔵大臣は正直なところを述べたようでありますが、まさか調査をしておらないというのではないと思います。しかしこれは数字が出ておらないといいますが、事務当局の方ではどんな状態になつておりますか、これを一言お伺いいたします。
  221. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 ちよつと山口君に御了解を願いますが、緒方副総理は、さつきからちよつと急用で呼びに参つておるようでありますが、よろしゆうございますか。
  222. 山口(好)委員(山口好一)

    ○山口(好)委員 緒方さん自身には質問はないのですが、いま少しいてください。
  223. 河野(一)政府委員(河野一之)

    河野(一)政府委員 暫定予算最小限度の国政の運営に必要な経費を盛つたものでございまして、最小限度の国政の運用に支障があるとは考えておりません。しかしながら、当初予定いたしましたいろいろな計画が年度当初から行われる予定なつておりましたものが、これが流れたという面で、経済界その他に多少の影響があつたことは、これはやむを得ないことであると考えております。中小企業の問題についても、中小企業金融公庫が成立しなかつたために、その方面における金融ができなかつた、あるいは住宅問題につきましても十分なる施策ができなかつたというような点で、相当な影響があるとは存じますが、その辺におきます影響につきましては、先ほど申しましたように、指定預金の運用でありますとか、あるいは民間資金の活用をはかりますとか、あるいは預金部資金の運用をはかりますとかいうようなことにおきまして、最小限度の影響にとどめるべく努力して参つたのでありまして、その運用の実績等につきまして、もし数字の御要求がございますれば提出いたしたいと思います。
  224. 山口(好)委員(山口好一)

    ○山口(好)委員 ただいま河野主計局長はやむを得ない影響であつて、それも大したことでない、いろいろな処置でそれを防ぎとめておるというような御答弁であつたようでありますが、現実を見ますれば、決してさようななまやさしいものでないということはよくわかるのでありまして、もとよりこれにつきましての統計その他の資料がありましたならば、ぜひこの委員会に提出していただかなければならないと思います。これは今後の予算編成、特にこの暫定予算の承認につきましては、そこまでわれわれが確かめて、この悪影響に対してこれを是正する今後の手段を的確に定め、その方針を伺つた上でなければ、なかなかこれを承認するということは、われわれの責任としてできないことではないか、こういうふうに思います。その点の資料は、すみやかに調製の上に御提出を願いたいと思います。さらにこれに対するいろいろな救済手段、今後の積極的な施策などにつきましても、この委員会において十分御発表を願わなければならないと思うのであります。とかく私の所見では、政府が自分で総辞職すべきところを解散をいたしまして、そうして暫定予算というこのへんば的な予算を行うことによつて、かような経済界に悪影響を及ぼしております以上は、これを承認してくれろというならば、まずもつて自己の責任を反省いたしまして、そうしてここに至つたのは自分たちの責任であるということを認めると同時に、その後の暫定予算によるところの財界その他の影響を十分に調査し、これに対処するところの方策をここに掲げまして、どうぞこれで承認をしてもらいたいということこそ、この委員会に対する政府の真のエチケットであると思うのであります。そういう態度でなければ、結局吉田内閣は依然として独善主義であり、非民主主義をもつて押し通そうとしておるというそしりを免れないと思うのであります。われわれも一旦自由党に籍を置いたものであります。十分なる好意をもつてここに申し上げる次第でありまして、緒方さんのこれに対する御所見を伺いたい。
  225. 緒方国務大臣(緒方竹虎)

    ○緒方国務大臣 お答えを申し上げまするが、衆議院解散の結果、予算不成立になりまして、その政治的また経済的に及ぼした影響の非常に深刻でありますることは、政府としても十分に承知いたしておりまするので、それに対しましては、今後の政治の運営、また施策の上にできるだけの償いをして、その損害を少くする、国民生活を早く安定拡充する方に進めて参りたい、それ以外に政府といたして道はないと考えております。
  226. 山口(好)委員(山口好一)

    ○山口(好)委員 あとのこまかい質問は後日に留保いたしまして、本日はこれで終ります。
  227. 尾崎委員長(尾崎末吉)

    尾崎委員長 明後二十五日午前十時より開会いたし、質疑を継続いたすことといたし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十分散会