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中野委員 どうも、いろいろ調べた結果、
佐竹君がいろいろな不当支出の金の中で、当時の金で五百万円を大阪大学の岡部教授に渡そうとした事実があのです。岡部教授はその中の百八十万円だけを受取
つて、残りは
佐竹に返しておる。それから、その返
つて来た中から、六十万円の金をあなたのところへ出しておる傾向が強い。してみますと、当時の
陸軍汚職
事件の渦中にあ
つた佐竹君は、六十万円という金をあなたのところへ持
つて来て、これを二年、三年後世の中が鎮ま
つてから返してもらいたい。もし
佐竹君が実質上
自分の金で六十万円持
つてお
つたのならば、在所は豊川だから、そこへ持
つてて利殖の
方法を
考えたらいい。あるいはほかの
方法で利殖の道を
考えていいはずです。あえて同僚であるあなたのところに持
つて来て、あつせんしてもら
つて、そうして知らないところの日刊工業に融資をしなければならないというほどおちついた
状態でないはずです。たとえて言えば、人間というものは、心理作用によ
つて、思いがけない金が不正の道で入りますと、これをどういうふうに隠蔽しようかと、あらゆる努力をすることがある。
従つて、まずい
方法ではあるが、あなたのところに持
つて行
つて、これを日刊工業に預けておくというような形は、決して混乱
状態の人のやる姿とはちよつと
考えられない。
相当おちついた、前途を見通したやり方です。そこで、私は不思議に思うのは、今申し上げるような不当支出に属しておる金の中の五百万円を大阪大学の岡部教授に渡そうとして、同教授は非常に恐れて、中の百八十万円だけを受取
つて、あとの三百二十万円は返しておる。そうすると、この三百二十万円の返却を受けるにあ
つて、若干量の
ダイヤモンドを当時
佐竹は持
つてお
つたので、これを岡部教授に示して、これを同教授に売
つたことにして三百二十万円を受取ろうとしたが、同教授は断
つておる。ちよつとここのところがおかしい。
佐竹は警視庁に召喚されて、留置された。しかし、警視庁は、残念ながら材料を持たずに調べてお
つた傾向が強いのです。今日
佐竹君は、あらゆる新聞や雑誌に大いに強が
つたことを
言つておられる。国会の行政監察
委員会はふといやつである、あるいは、これを調べる
中野はふといやつだ、こういうような言辞をも
つて迎えられております。しかしながら、今日憲法において人権がお互いに尊重されており、国会があなたらに圧迫を加えるということはあり得ないのであります。国会は、この
疑惑を明らかにするについては、あらゆる角度から資料を集めて、動きのとれぬところに持
つて行かなければ、
証人を喚問して
証言を求めるということはしないように努めておるのであります。警視庁の当時の記録はここにあります。当時
佐竹君が警視庁においてあらゆる調ベを受けた状況をつぶさに調べておりますが、残念ながら、警視庁の当時の担当官は、この事実を指摘するところがまだ足りなか
つた。この
ダイヤモンドの出所あるいはこの思いがけない金をば持
つておられた
佐竹君のその金の出所というような面にわた
つて、つぶさに警視庁が調べておらないから、不起訴同様にな
つて今日に至
つておりますが、この問題の
陸軍、
海軍の
ダイヤモンド買上げ、
ダイヤモンド処理に関しまして、
買い上げた当時の
数量と、
処理いたしました
数量と、現に残
つております
数量とが、ま
つたくマッチしないのであります。
買上げの
数量はあまりにも多数、
処理した
数量はきわめて少量、現存しております
数量もきわめて少数でありまして、この中間において、先ほど申し上げましたような不正なるところの軍人あるいは不正なるところの係官が、
相当数量隠蔽し、あるいはこれを横領した疑いが多分にあります。この点において、正直者がばかを見ない、言いかえれば、道義の確立といいますか、西
ドイツでは道義の武装と
言つておりますが、やはり正直者がばかを見ないという政治を打立てませんと、いくら自衛軍をつくりまして再軍備をしようと申しましても、根本の国に対する愛国心というような裏づけがなければ何にもならないということは、あなたも
御存じの通りであります。私どもは、いたずらに犯人を出したり、いたずらに被害者を出しておるのではないのであります。あくまでも、不正な人は不正、悪い者は悪いのでありまして、これに対しては国家は適正なる措置をと
つて、正直者がばかを見ないという制度を打立てたいと
考えますがゆえに、こういうような努力を重ねておるのであります。私が今あなたにあえて述べましたように、当時の
陸軍の状況から言えば、
佐竹君が六十万円というような金を持
つてあなたのところに行くということは、どうしても不自然と言わざるを得ないと思うのです。ところが、あなたが
疑惑も抱かれずにその金をあつせんしたということになれば、私は、あなたが
佐竹君にその六十万円の金が入
つた道を十二分に御
承知にな
つていらしたのじやないかという疑いを持つ。さらに、その六十万円を簡単に日刊工業にあつせんしているところを見ると、何かの代償として、何かの裏づけとして、あなたが
佐竹から受取るべき理由があ
つたのじやないかどうかというところに今日の疑点か集中しておるのであります。この点が釈然といたしませんと、せつかくあなたが今日まで国家のためにお努めなさいまして、御苦労なさいましたかいというものが、こういうことから欠けるおそれが多分にあると思いますので、御遠慮なく当時受けられた
自分の感想を述べていただきたいと思うのです。どうも
佐竹が六十万円持
つておるのはおかしい、いや入る理由があるのだ、おれのところに持
つて来るのはあたりまえだ、いやそういう筋のものではないのだということが、今
考えてみれば思い当ると思いますので、この点についての御説明をお願いいたします。