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1953-07-18 第16回国会 衆議院 厚生委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十八日(土曜日)     午後二時十二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君    理事 松永 佛骨君 理事 長谷川 保君    理事 中川 俊思君    越智  茂君       加藤鐐五郎君    田中  元君       寺島隆太郎君    降旗 徳弥君       中野 四郎君    山下 春江君       堤 ツルヨ君    杉山元治郎君       有田 八郎君  出席政府委員         厚生政務次官  中山 マサ君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (引揚援護庁次         長)      田邊 繁雄君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君  委員外出席者         厚生事務官         (社会局庶務課         長)      熊崎 正夫君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 七月十七日  委員堤ツルヨ辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として堤  ツルヨ君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十七日  生活保護法最低生活基準額引上げ等に関する  請願井手以誠君紹介)(第四五五二号)  生活保護法適用患者身廻品費引上げ請願(  勝間田清一紹介)(第四五五三号)  未帰還者留守家族援護強化に関する請願(押  谷富三紹介)(第四五五五号)  同(日野吉夫紹介)(第四六二〇号)  同(山下春江紹介)(第四六二一号)  同(杉山元治郎紹介)(第四六六九号)  未復員者給与法による入院患者生活費支給に  関する請願松前重義紹介)(第四五五六  号)  同(正木清紹介)(第四五五七号)  同(井手以誠君紹介)(第四六六七号)  軍人会館返還に関する請願早稻田柳右エ門君  紹介)(第四五八四号)  国立らい療養所職員の増員に関する請願(島上  善五郎紹介)(第四六二二号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願早稻田柳右エ門紹介)(第四六二三  号)  児童福祉対策に関する請願青柳一郎紹介)  (第四六六八号)  長崎県の簡易水道敷設費国庫補助増額に関する  請願辻文雄紹介)(第四六七〇号)  大島青松園の病床増設等に関する請願井谷正  吉君外二名紹介)(第四六七一号)  同(阿部五郎紹介)(第四六七二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  財団法人日本遺族会に対する国有財産無償貸  付に関する法律案内閣提出第一四四号)  食品衛生法の一部を改正する法律案内閣提出  第一八号)(参議院送付)     ―――――――――――――
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず食品衛生法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。中川俊思君
  3. 中川俊思

    中川(俊)委員 ちよつとお尋ねしますが、たとえば外米なんか大きな輸入品一つになつておりますが、中共から牛肉だとかあるいは卵だとかいうようなものが逐次入つて来るようになると思いますが、そういうような場合には、今日本としては中共を別に承認しておるわけじやないのですが、向う政府から証明書を発行さすというようなことは可能ですか。
  4. 楠本正康

    楠本政府委員 お答え申し上げます。この輸入の制限という問題は、当然正常なる貿易状態において行い得ることであります。従いまして現在のようにいまだ貿易態勢が整つておらぬ中共との間においては、そうようなことを徹底させることはなかなか困難と存じます。しかしながらこれはもともと貿易態勢が整つておりませんので、貿易がないものと解釈しなければなりませんので、その辺の支障は実際問題としてはないものと考えております。
  5. 中川俊思

    中川(俊)委員 そうすると、現在中共からそういうものが入つてませんか。
  6. 楠本正康

    楠本政府委員 現在輸入品として中共から肉その他の食品は入つておりません。
  7. 中川俊思

    中川(俊)委員 輸入としては入つていないだろうと思うのですが、私の調査したところではかなり入つております。そうした場合にこれをどうしてこの取締りの対象とするか。それから証明書を発行さすといいますが、相手国政府がこれをただで発行するかどうか、私は相当金がかかるのじやないかと思うのです。さらに日本でも、入つて来れば十分に検査をする――新たにこうして日本政府十分検査をすればいいわけなんであつて、またしておると思うのですが、だからこれを改正する趣旨が少し薄弱になるように思うのですが、その点についても伺いたい。
  8. 楠本正康

    楠本政府委員 私の承知いたします範囲におきましては、最近沖繩から食肉が入りましたのが最初でございまして、中共からの肉はいまだ承知いたしておりません。  次に輸入先証明書を要するということは、大体世界各国国際慣例によつて行われていることでありまして、と申しますのは、食肉は、すでに枝肉となりました肉だけを見てはそのよしあしがわからぬのでありまして、どういたしましても食肉の安全を期するには生きている動物、生体並びに屠殺当時の検査が必要であります。ところが輸入されますものは枝肉の姿でありますために、その元がわかりません。そこでかようなことは相手国証明書によつてチエツクして行こうということであります。なおただいま金がかかるであろうというお話でありますが、現在各国とも正常な食肉はいずれも検査制度が実施されております。従いまして、別に特に輸出するから検査をするということでなく、大体食肉は前もつて屠殺当時に検査するということに相なつておりますので、特別な経費を要さぬものと考えております。
  9. 中川俊思

    中川(俊)委員 そうすると、入つて来たものは国内ではもう検査をしないのですか。
  10. 楠本正康

    楠本政府委員 一般食品と同じようにもちろん検査はいたします。しかしながらそれだけの検査では安全を期し得られないというのが食肉特殊性であります。
  11. 中川俊思

    中川(俊)委員 日本へ入つて来て日本で一度検査をすればそれでいいように考えるのですが……。それからさらに、今の証明書のことで金がかからぬだろうということですが、中共あたりでは、やはりその証明書を添付する場合に金の要求なんかあるんじやないかというふうにちよつと私考えておるのですが、それはありませんね。
  12. 楠本正康

    楠本政府委員 これはただいまお答え申し上げましたように、格別な経費は要さないものと思つております。
  13. 小島徹三

    小島委員長 他に本案についての御質疑はございませんか――他に御質疑もないようですから、本案質疑は終了したものと認めることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。本案質疑は終了いたしたものと認めます。  次に本案討論に入るのでありますが、本案討論につきましては、格別に通告もありませんので、これを省略し、ただちに採決に入るに御異議ありませんか。     〔堤(ツ)委員ちよつと、左派社会党がおらぬですが、いいんですか、了解を得たのですか。」と呼ぶ〕
  15. 小島徹三

    小島委員長 では食品衛生法の一部を改正する法律案採決はあとまわしにいたします。     ―――――――――――――
  16. 小島徹三

    小島委員長 次に財団法人日本遺族会に対する国有財産無償貸付に関する法律案議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。中野四郎君。
  17. 中野四郎

    中野委員 少し軍人会館の問題について伺いたい。終局についてはいずれまた皆さん方の御結論があろうと思いますが、私はこの軍人会館の問題については初めて伺うのでありまして、質疑が重複する点があつたらお許しを願いたいと思います。  第一番に伺つておきたいのは、旧軍人会館というものは、元来だれが持主であつたかということが一つです。  それから接収されておつたのでありますが、接収解除になれば当然連合軍覚書に基いて処理されるものと私は考えるのでありますが、関係当局の方はこの接収、すなわちコンフイスケーシヨンをばどういうふうに解釈しておられますか。接収解除覚書に基いて処理をされようとするのかどうか、こういう点についてお聞きをしたいと思いますから、今伺つた二つの点のお答えを願いたいと思います。
  18. 安田巖

    安田政府委員 第一の軍人会館の沿革でございますが、旧軍人会館建物は、昭和三年の今上陛下御即位の大典を記念して計画されまして、昭和七年二月起工、同九年三月竣功いたしたものでございます。建設資金在郷軍人三百万人、現役軍人を含めで各自に三十銭以上を拠出して集めた百万円、及び満鉄からの寄付金百万円を主といたしまして、その他一般寄付金合せて合計二百六十万円だつたと思います。爾来終戦まで宿泊所集会所結婚式場、酒保、食堂等施設として一般軍人並びに関係者に利用されて参つたのでありますが、終戦とともに財団法人軍人会館解散団体に指定されましたので、その建物国庫に帰属いたしたわけであります。現在は、米駐留軍極東空軍劇場将校クラブ宿泊所食堂等施設として提供されております。  第二点は、解散団体になりまして、その財産国庫に帰属いたしているのでありますから、これが日米行政協定に基いて現在米軍の方へ提供されておりますけれども、もしそれがこちらに返されれば、日本政府の方で適当に処分することができると思います。
  19. 中野四郎

    中野委員 そういう過程をふむだろうと思うのです。しかし私が伺いましたのは、接収というこの意味が、国際法上にいう、ハーグにおける陸戦法規の定めるところの接収にあらずして、すなわちポツダム宣言受諾に基いてのいわゆる接収であるか、特別の、一つの新しい型によるところの接収であることをば、国際法学者である横田喜三郎博士からの説明によつてわれわれは承知をしておるのでありますが、この点が私ちよつとのみ込めないのです。つまり旧軍人会館国庫に属する問題だけが陸戦法規によるところの没収になるのか、あるいは今回の占領軍のとつた処置は、ハーグにおいて制定されておるところの陸戦法規によらずして、独自の立場をとつたポツダム宣言受諾に基く条章によつて発生したものであるから、その接収意義相当広い範囲にわたつておるという説明を受けておるのです。従つて私はこの意義を伺いたいと思います。それによれば、接収解除という問題についてはおのずから違つた立場をとらなければならぬことは、近来接収解除を受けました日本銀行の地下室にある金、銀、白金、ダイヤモンドの処理等についても非常に悩んでおるのであつて従つて将来においては国会で別な立法措置をとらなければならぬかというような段階にまで入つておる。これは私が約一箇年にわたつてこの法的根拠についで調べておるのだが、あなたの方はどういう見地に立つておやりになつたか、この点を伺つでおきたい。
  20. 安田巖

    安田政府委員 私はどうもそういう詳しいことは存じませんし、法律の方はあまり詳しくないのでありますが、これはポツ勅によりまして解散団体に指定されまして、そしてその財産国庫に帰属したわけでございます。国有財産になつております。ポツ勅は現在でも生きておるわけでございます。それに基いて国有財産に帰属したという状態も現在生きておるわけだと思つております。そしてそれはその以前からアメリカ軍使用に供せられておりましたけれども、現在においては日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基く行政協定に基いて、日本アメリカ軍の方にそれを供与している、こういうふうな形になつております。従いまして、もし向う使用が不必要になりましたならば、これは当然日本に返すべきは行政協定の定めるところでございますから、そういうふうに実は解釈しております。
  21. 中野四郎

    中野委員 私の聞いているのと大分違うのです。それはあなたの一般常識でおつしやつていらつしやるのであつて私の伺つておるのは、先ほど申し上げたように、国際法上の権威者である東大の横田博士は、今回行われたるところの接収は、ハーグにおいて制定されたる陸戦法規による接収、すなわち没収ではないと言つておるのです。そしてただ一つ建物にしましても、一つ物件にしましても、右から左に移転をしたものであつて、いわゆる保管管理をしたものであつて国際法上による没収にはならない。つまり接収というのは、コンフイスケーシヨンとでもいいまするか、そういう観点に立つてとられたものではない。そこで今資料を取寄せまして読み上げますから、後ほどこれに対してのお答えをいただきますが、連合軍司令部からこの接収解除にあたつて明らかに覚書を二度当方によこしておるわけであります。この内容を見ると、あくまでも元の所有主がはつきりしておるものはこれに返してやれと言つております。もちろん解散団体でありますから、これは国庫に帰属することはよくわかるのですけれども、当時の接収状況をよくのみ込んで立法計画をされたものかどうか、少くとも軍人会館処置に関して、議会に提案されるにあたつては、その点の法的根拠をきわめておられるかどうかという点が、私のあなたに伺いたい一点であります。ただこう申すのは、はなはだ迂遠な話でありますけ参れども、接収という言葉を非常に簡単に解しておる。大蔵省があらゆる国有財産処理に当りましても、接収解除物件に対する考え方ばかりではなく、その出発点である接収という解釈を非常に簡単に考えておるのです。ところが私もそういつうもりでその接収というものに対して検討を加えて行つたところが、ただいま申し上げたような陸戦法規にある接収とは意味が根本的に違うというのです。今回の処置はあくまでも新しい観点に立つて接収だという意見が高く評価されておるものだからあなたに伺つたのでありますが、この点についてお調べになつていらつしやらなければ、あえてここで無理にお聞きしませんが、大事な問題ですし、利害関係者相当多いことだから、釈然たる態度で処置をしたいという考え方伺つたのです。
  22. 安田巖

    安田政府委員 戦時国際公法のことは、実はよくわからないのでありまして、中野委員のおつしやる通りかと思うのですが、ただ所有権が、たとえば私人であるとか、あるいは国であるとかいうもので持つておる建物、それを接収いたします。接収したのがどういう根拠に基くか、あるいはどういう法律的の性質のものであるかということは、なるほど疑問があるかもしれない。たとえば、現在東宝劇場をアー二ーパイル劇場として接収して使用しているという問題がある、いろいろそういう例があると思う。これらの所有権そのものには、別に何ら問題はないのであつて、それを返還せよというような訴訟が起きておるように聞いておるのです。そういう問題と、もう一つ接収当時は、確かに軍人会館を所有しているところの団体があつたわけです。しかしそれとは別な観点から、あの財産持主解散団体に指定された、これはとにかくその指定したこと自体を問題にするならば意見がございましようけれども、一応これは国内法的に有効だとするならば、現在においては、これは国有財産である。従いまして、アメリカ軍が現在それを使つておる。法律的な状態は、行政協定に基いて使つておるといたしますと、向うが不必要になりまして返すと言うならば、私の方でそれを返していただいて、それを適当なところに使うことはできるのじやないかと思います。前段の先生のおつしやつた点につきましては、私は自信がないのでありますけれども、後段のこの問題の焦点になつておりますものはそういうことで間違いないんじやないかということでございます。
  23. 中野四郎

    中野委員 それじや今資料を持つて参りまして、二、三疑義についてお伺いいたします。  そこで、最初に申し上げたように、軍人会館内容については、私よく存じておりませんから、少し詳しくお教えを願いたいのですが、現在軍人会館使用でき得る部屋、たとえて言えば、遺族方々の上京の際に宿泊の便に供するというようなことが趣旨になつておるようであります。あるいはこれを維持するために、会館等相当設備を貸与して、その収益をもつてこれに充てるというふうに私は了承しておりますが、実際上において遺族の方方が上京されて、その人々の便に供し得る能力を持つておる設備はどのくらいあるか。こういう点について御説明願いたい。
  24. 安田巖

    安田政府委員 旧軍人会館の全部の坪数は、たしか四千坪と思いますがその間取りと、今度遺族会がそれを無償使用することになつた場合に、どういうふうに使うかということを、図面で参考につけておきましたのを、お手元に差上げてあると思います。
  25. 中野四郎

    中野委員 もう一点疑点があるので伺いたいのですが、近ごろいろいろ陳情に参ります中に、旧在郷軍人会人たちが、これは当時われわれが非常に苦心をしてつくつたものだから、当然われわれに返さるべきものであつて、むろん遺族の便に供することに異議はないということ等を列挙されております。私らの考え方国民感情から言えば、なくなつた在郷軍人会よりも、むしろこの際この戦争の大なる犠牲者である遺族方々のそういう集団的便に供する方法がよいというような考えは持ちますけれども、両方の陳情内容を見ますと、いずれももつともと思うのです。まことにしろうとのような伺い方で申訳ないけれども、これについて政府はどういう考えを持つておられるかひとつ伺いたい。
  26. 安田巖

    安田政府委員 まことにごもつともな御質問だと思うのでありますが、今度の軍人会館貸付を、元の所有者在郷軍人会であるからそれに返すのだという考え方もございましよう。それから一応これはとにかく解散団体として指定されまして、国庫に帰属しておるのであつて元に返すという理由が現在の情勢からいつて出て来ないといたしますならば、別のさらに社会福祉なりあるいは公共の福祉という観点からこれを貸し付けるということになるのじやないかと思う。私どもは元の持主にこれを返せというのも情としてごもつともだと思いますが、現在そういうことをうたつてこれを元に返す、無償で貸し付けるということはいかがかと実は思つております。従いましてあそこの場所が靖国神社のすぐ前でもありますし、それから遺族に対しましては戦後長い間国もほうつておいた責任もあります。いろいろ援護措置を講じましたが、必ずしもこれまた十分でないというふうに感ぜられますので、いろいろ考えまして結局遺族全体の福祉のために使われるならば、これを返すについてもりつぱな理由にならないだろうか。こういう考え方であります。
  27. 中野四郎

    中野委員 そうしますと、接収意義から申しましても、従つて接収後においては、解散団体とされて接収されたのでありますから、これは国庫に帰属するものであつて、その接収解除意味から言うても、旧在郷軍人会がわれわれの努力をしてつくつたものだとは言えるけれども、われわれのものだということは言えないということははつきりするわけなのです。それで新たに政府側においてこれを適当の処理をしたいというお考えなので、この点については私もまつたく同感でありまするが、ただここで伺いたいのは、お互いに旧在郷軍人会の方も国家のために一生懸命お尽し願つた、また今次事変以来大東亜戦争に及んで今日までの間に、国家の大なる犠牲者となられたところの遺族会の人を遇するの道をもつて迎えるのもけつこうなのである。そこで私はもう少し広い意味で、むろん御遺族方々の便に供するということはよろしいが、旧在郷軍人会人々という意味でなく、お互いに八千三百万人の日本を構成しているという見地に立つて、この会館をつくるにあたつて相当努力をされた人々に対してはどういうふうな考えで律せられるつもりであるか。ただ遺族の方だというだけでなく、もつと広い意味方法はないものなのでありますか、こういう点についてひとつ政府考えを聞きたいと思うのであります。
  28. 安田巖

    安田政府委員 法案提出理由として、元の持主に気の毒であるからそつちの方に使わせるというようなことは、これは先ほど申し上げましたように申しかねると思います。しかし遺族の方も元はみな軍人遺族でございますから、軍人、傷痍軍人の方とは御関係の深い方である、そういう意味におきまして、遺族方々と御関係の深い、また遺族方々関係のある範囲内におきまして、今申されましたようなことを実際の運用面において調節して行くということも考え意味におきまして、そういうことは日本遺族会等で、この法案がもし通りまして使用されるようになりましたならば、十分ひとつ御談してみたい、かように思つております。
  29. 中野四郎

    中野委員 たいへんよくわかりました、もう一点だけ伺つておきたい。今大体はつきりしたことは、元の在郷軍人人々が集まつて、さらに在郷軍人会というものを現在全国に結成しつつある。従つてわれわれのつくつたものだからわれわれに使わせろとか、いやわれわれに優先権があるというようなことは、接収解除、あるいは国庫に帰属したという点において明らかになつたと思うのですが、もう一点私の心配をしている点があるのです。これは私が寡聞にしてまことに私の耳に入ることが間違つているかもしれませんが、伝え聞くところによると、遺族会が今度の旧軍人会館をば利用するにあたつて相当遺族会の中にも――こういうことを申し上げておしかりを受けるかもしれませんが、ボス的な傾向があるやに私は聞いておるのでありますが、もし万が一にもそういうような傾向があつたときには、これこそ天下の一大事であると思う。従つてこの処置について当委員会では慎重を期せられることでありましようけれども、その仕事の監督に当たられる政府においても、こういう点について十二分に留意されて、ただいまも申し上げましたような遺族方々の便に供するというのを、もつ範囲を広い意味において十二分に御処置願いたい。私はこれだけ申し上げて自分の意見は終ります。
  30. 安田巖

    安田政府委員 私ども、旧軍人会館日本遺族会に貸し付けるということも大事なことでありますけれども、しかしほんとうは貸し付けたあとの運営をどうするかということは、非常に大事なことだと思うのであります。しかもあれだけの大きな建物であります、管理費その他にも相当な金がかかりますし、何とかこれがうまく運営されまして、ほんとう遺族福祉のために役立つようにしたいということに、私ども一応責任を感じておるわけであります。今の御説のようなことをもしこれが通過いたしまして遺族会に貸し付けられることになりましたら、十分気をつけるようにして参りたいと思います。
  31. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 関連して、今の中野委員の御質問を承つてつたわけでございますが、軍人会館国有財産である、そこで御存じのように今国会では国有財産払下げに関するところの特別委員会をつくつて、ひとつ調査しなければならないという議が起つておるのです。これは何かと申しますと、国有財産と申しましてもいろいろございまして、たとえば広大な原木を持つた山だとかいろいろな種類にわたるわけでございますが、この国有財産払下げをめぐつて相当いろいろな不在事件が多い、それからこれとはまた逆に国有財産処置についてどうもふに落ちないという問題が非常に多いのであります。従つてこの軍人会館払下げにつきましては、私は非常に政府に慎重を期してもらいたいのでございますが、今日の金に見積りまして相当な金になるといわれておるこの軍人会館を払い下げられるにあたりまして、他のものとの均衡を失しないように考えてもらわなければならぬ、なぜこういうことを私が申すかといいますと、国有財産の中に――現在解散団体に命令されたり、接収されたりしてうき目を見たけれども、その中に国家が行うべきところの義務教育を代行しておる私立学校、それから日本に帰化し社会福祉事業をやつておいでになるような施設があります。はなはだしきはこれに苛酷な家賃を、また強制的な買入れ要求を国がいたしまして、金がなくて赤字で泣き泣き社会福祉事業を国にかわつてつておるようなものまでも、何百万、何千万円で買えということが至るところにある。国庫が補助を与えるべき義務教育だとか社会福祉事業だとかいうこの機関を見ておりますと、国の措置に非常に疑問を持つのでございます。保護者から金をつのり、バーザーをやり、売店をやつて保護者が孜々営々として荒れ野原の中から再建した学校などもある、それに対して何千万円で買え、そして何月何日までに札束をそろえて持つて来いということをやかましく申しまして、そしてこれを買わなければどうにもこうにもならないところに追い詰められて、おるところの施設がずいぶんある。こういうものから国庫に家賃を取上げ、それから相当な値段でこれを市価といろいろにらみ合せながら買わせて、義務教育社会福祉事業をやつておる機関を泣かせておきながら、片方において無償でたつた一片の法律で簡単に国有財産を払い下げられるということになつて来ますと、一生懸命やつておるこれらの人々から見ればふに落ちないわけであります。でありますから、国有財産処理に関しては、しごく公平でなければならない。私たちは長年戦傷病者戦没者遺族等の犠牲者に対しまして何とかしてやらなければならないと考えて参りましたので、このたび草深いところに住む遺族や、遺児、未亡人や老人にこれが恩典が浴して払い下げになる、無償貸与になるということは非常にけつこうでございますけれども、私たちはこの貸付にあたりまして、これは他のものとの均衡も考えて、将来やはり国有財産に対するところの公共的な措置を、いわゆる接収なり解散団体ということに指令されて、うき目を見たこれらのものに対して均衡を失しないようにしてもらわなければならないという点から考えまして、私は遺族がこれだけの恩典に浴されます場合に、同じ国有財産でありながら無償貸与もしてもらえないし、無償払下げもしてもらえないで、国有財産の中で国のため社会のために孜々営々として働かれる人々のあることを考えますときに、この軍人会館だけでなしに、将来政府はこういうものに対して公平に見て、第三者がだれも納得するものであれば、この軍人会館のごとく社会福祉事業をやつておるものとか、また国の義務教育を代行しているような施設並びに土地は、これに準じて国有財産無償貸与なり払下げをやる意思があつてまず手初めにこれをおやりになつたのかどうか、そういうところをひとつ伺いたいのでございます。これは大臣あたりでないとわからないかもしれませんが。
  32. 安田巖

    安田政府委員 国有財産の管理につきましては大蔵大臣の所管になつておるわけであります。今のお話のような私立学校なりあるいは社会福祉事業につきましては、昨年国会で成立いたしました国有財産臨時措置法というものがございまして、これで大体五割引というのが特例で設けられたわけでございます。いろいろ苛酷な取扱いのお話もございましたが、そういうわけで私どもからかれこれ申し上げるわけに行かないと思います。これは特例の特例ということで御審議願つていただきたいと思います。
  33. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が非常に憂いますのは、遺族軍人に対する払下げに反対するのではありません。ところがはたのものとの均衡を失しないか、順次これを考えてみて常識的に考えてみても、占領軍の命令によつた接収であり、団体に指定されたのでやむを得なかつたけれども、今日においては日本政府の独自の立場において、元の形に返してやろうという一つの筋の通つた意見を持つてこれをお出しになつたのならわかるのですが、これだけは特別々々といえば、おれのところも特別々々ということになつて責任者が少々政府に上手に運動したものが何十億の財産もできる、うまく右へならえしてその筋をねらえということになつて来ると、ゆゆしき紊乱も生じて参りますし、不正も生じて参りますし、非常な問題だと思う。私は政府の最高方針を承つておかないと、これだけを特別の特別という今の言葉でやられると、うちも特別の特別、これも特別の特別というので、りくつをつけるのは上手ですから、やり出したらこれは処置がつかないのです。ですから最高方針を聞かないと、政務次官はいかに御明敏な方でありましても、まだ御着任早々でございますから、そういう点を自信がなければ、何分にも十五億の国有財産でございますから、大蔵省の責任ある方にこういう点につきましてははつきりしていただきたいという気持を、わが党といたしましてはけさの国会対策委員会におきましても持つておるわけでございまして、ひとつ筋を通していただきたい。そうでないと遺族軍人会館を特別の特別の特別でもらつたんじやないかということで、私のところに火のつくように言つて来ておる。あれが特別の特別といつて来たらそれでは特別の特別ということでやろうじやないかということになりまして、一つずつ法律を千も二千もこしらえて払い下げて行くということをおやりになつたら、始末がつかないと思う。どうぞそれを政務次官からでも御答弁願いたい。
  34. 安田巖

    安田政府委員 一々ごもつともでございますが、やはり元の建物の性格が軍人さんに関係があつたということ、それで今遺族がそういう点で一番気の毒な状態にあるということ、それから靖国神社がすぐあそこにあつて、春秋には遺族の方も参詣されまして、関係が非常に深いということ、そういうこともいろいろ考えまして、特にこういうふうな法案が出たのですが、こういうことは一々法律案として国会で御承認を得なければもちろんできないことでございまして、先のことを一々考えまして、これもそうなるだろうあるいはこうなるだろうということはちよつとまだ申し上げかねるかと思います。  それからもう一つは、これは一応貸付けになつておりまして、所有権そのもの遺族会に移るというのではございません。その点もお含みおき願いたいと思います。
  35. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が実例を見ておりますのに、せめて無償永久貸与でもいいからと言つて泣きついて来られても、社会福祉事業や教育事業における無償貸与をしてもらえない事実が非常に多いんです。この無償貸与というのは非常にありがたい言葉で、お借りになる方からいえば無償払下げと一緒なんです。中山政務次官もお出ましになつておりますが、あなたの大阪の話を例にとつて申し上げますと、大阪の元偕行社の一部にただいま追手門学院というのがあります。あの学校などは接収されて解散団体になつてしまつた、それで取上げられてしまつたのですが、一応政府解散団体の対象にしないという宣言をしたのです。ところがその宣言が間違つてつたということになつて、二年ほどたつてから取消しが来た。そういたしますと、保護者はエプロンをしてPTAであずきをこしらえてお茶をくみながら、焼野原で電線一つないところから立ち上つて来た、今日まで借金しながら、PTAの寄付で子供たちが骨折りながらやつて来た。ところがこれを三千万円、四千万円で買えと国から言われた。そうして三月にあげず証書が行つて、買わなければどつかへ宿がえをしなければならぬ、宿がえなどできない、借金を背負つておるというようなわけで、非常に困つておる。これは一つの例でございますが、外人の社会福祉事業施設考えますときに、今の安田社会局長のように、先のことは考えられませんというようなその場当りのことではなしに、やはり接収になつて解散団体の指示を受けたところのものに対しては、一応これくらいの限界で行くという一つの筋を通しておいて、順次はずさして行くというのならわかりますけれども、同じ解散団体であつて、これはこうするけれどもあれはこう持つて行くというようなことになると、これは始末がつかなくなるのじやないかと思うのであります。従つてどうかひとつ大臣と御相談になつて、これを契機に政府内の思想を統一されまして、筋の通つた御答弁をいただきましたならば、一刻も早く私たちは遺族に払い下げることには決して異議を申し立てるものではございません。そうして私は委員長にお願いをいたしておきますが、ここに今政府からもらつた資料がございますが、私たちこの資料を見ましても、なるほどきれいなあつさりした図面ですからわかりますけれども、駐留軍が使つておるこの中の実態というものはどの程度のものかということが何もわからないわけです。それから宿舎とはどういうものか、食堂とはどういうものか、文化劇場及び集会室とはどんなものかということは、やはりこれを審議するわれわれ委員の目に見せてもらわないと、木賃宿程度のものか、大臣の宿舎程度のものかわからないわけです。そうすると私たちがたとえば将来靖国神社に遺児を無料参拝さしてあげる、めつたに東京へ来られない戦争未亡人の、子供を育てた人が、国のおかげで靖国神社に参らせてもらつた、のりとをもらつたというそのありがたいときに、この宿舎の恩典に浴して、おいしいものの一ぱいも呼ばれたということならわかりますけれども、そんな遺族なんかかまつていられないからといつて、高級ホテルのようにしてこれらを対象にしないということになると、これはわれわれの志とまつたく反することになります。ですからこれが木賃宿程度のものか、アメリカさんの将校の宿舎というと相当高級なものじやないかと思いますが、いたずらにこれを論じてみてもぴんと来ないわけです。従つてこの委員会におきましては、正式にこれを視察するための動議を私は提出いたしますから、委員長においておとりはからい願います。
  36. 中野四郎

    中野委員 堤委員のおつしやることにまつたく同感なのです。私は今この財団法人日本遺族会に対する国有財産無償貸付に関する法律案関係資料というものを拝見したが、これには事業計画がまつたくないのはどういうわけなのですか。この内容に略図はありますが、事業計画がない。これは本案を決定するにあたつては重大な問題であります。将来この旧軍人会館をどういう方法で使うかという一応の筋道は立ててあるけれども、場合によればどういうふうにでも変革がなる。この事業計画を、まず何人収容できて、そして何年後にはどういうような方法でやるとうような明確な点を御説明願いたいことが一点。第二は、この遺族会経営にかかれば、結果においては社会事業的な性格を多分に持つものであつて、この内容から見れば独立採算制をとつておられるように思うのですが、はたしてこの示された資料程度のものでこれだけの大きな会館のすべての設備に対する維持経営ができるかどうか、これが第二点。それに対しては足りない場合にはどういうような政府補償でやるのか。どういうような方法を講じてこれの運営の完全を期するかという点が第三点です。それからもう一つつておきます。何べんか立つのはやつかいですから。この法律案提案の理由の説明の中に、「もとの軍人軍属で公務により死亡した者の遺族」に対しましてとある。この点が厚生委員会においては重大な議論のあるところでございます。遺族人々の中には、不幸にして援護法にかからざる人、あるいは恩給法にかからざる人、しかしながらこの方々はまつた国家の要用に供されてそして国家の犠牲となられて不幸法律の欠点からこの人たちは公務による死亡としての待遇を受けていない、こういう人々が現在相当数あつて、しかもこの人々は、生活に追われ弔慰金すらもらえないで、遺族でありながら遺族としての待遇も受けられず、日夜泣いておるということは、特に中山政務次官は御承知であろうと思うのです。この字句を私がとらえて言うのではないけれども、もし軍人軍属で公務により死亡した者の遺族の者のみを対象として、範囲をぐつと狭義に解釈いたしますると、このことはわれわれの審議の過程において納得し得ざる点があるのであります。以上の点について政府の簡明なる説明を伺いたい。
  37. 安田巖

    安田政府委員 遺族範囲の問題を先にお答えいたします。法律の方には別にそういうことはやかましく書いてないのでございますけれども、説明といたしましては戦傷病者戦没者遺族等援護法の規定したのと大体範囲を同じくするであろう、こういうふうに説明を申したのです。しかしこれは別に国債をいただくとか今後何年間遺族年金がありますとかいうような、法律上特に問題となるような援護方法ではございませんので、その辺は常識的に考えましてゆとりのある取扱いができるだろうと思つております。なおこのこまかい収支計画等については課長からお答え申し上げます。
  38. 中野四郎

    中野委員 これはどうも局長の答弁としてはまことに奇怪しごくと言わざるを得ない。そういうふうに解釈していらつしやつても、いやしくも国会委員会法案提出するにあたつて、提案理由の説明としてこれを責任ある人が説明しておる。してみれば、これは明らかに速記録に残つてつて将来日本遺族会の者が運営するにあたつては、政府の説明はこの通りであると物的証拠を示された場合においては、まことにもつて支障を来さざるを得ないと思うのです。もしそういう気持があるならば、この政府の説明においてもつと親切に、そして広範囲なる内容を示して、議員の審議の便に供すというのがあたりまえであると思うのです。私はあえてこんなことをこの字句にとらわれて言うのではないのです。この審議の過程においては、あなたの意見を、この提案理由の説明にはこういうふうにむずかしく書いたけれども、事実はそうでないということを速記録に明らかにして、後日日本遺族会の運営の便に供したいという念願なんですから、あなたからもう一ぺんこの点について、説明においてこうしたことは間違いであつて、その真意と内容はかようであるということを、速記録の上にとどめておいてもらいたいと思います。
  39. 安田巖

    安田政府委員 先ほどお答えをしたのでございますけれすも、御納得いただけませんでたいへん申訳ないのでありますが、この法律案内容そのものが、特に権利義務というようなむずかしいことではございませんし、場合によれば、員外利用というようなものがある場合も考えられるのであります。そういうことを考えまして一応説明をいたしました場合には、軍人軍属等公務のために死んだ者ということを書きましたが、これは遺族援護法のように正確に書こうと思うとたいへんでございまして今委員会で問題になつておる通りでございますから、大体のところを御説明申し上げたというところで、あとはひとつ常識的に解決していただきたい、こういう趣旨でございますから、どうぞひとつ御了承願います。
  40. 中野四郎

    中野委員 私はこの提案理由の説明だけかと思つてつたら、法律案にもそういうふうに出ておるじやありませんか。この法律案に、「もとの軍人軍属で公務により死亡した者の遺族」と明らかに載つておるじやありませんか。そうするとあなたは法律案もうそをついて出したということになる。あなたは容易ならぬ失態をこの委員会にしておることになる。あなたの今の御説明が正しいのであるならば、この法律案をただちに撤回なすつて、もう一ぺん再提出をなさることを私は要求いたしますが、いかがでしよう。
  41. 安田巖

    安田政府委員 たいへんどうも失態をいたしまして申訳ございません。取消します。しかし趣旨はそういうことでございます。「もとの軍人軍属で公務により死亡した者」と申しましても、元の軍人軍属というものが一体どの法律によつてどうだというようなことはなかなかむずかしいのであります。その辺は多少ゆとりをとつたような表現だと思つておりますので、そういうことでひとつ御了承願いたいと思います。
  42. 中川俊思

    中川(俊)委員 そうすると、あそこへ遺族だと言つて来ればだれでもとめるのですか。その点ちよつとお聞きいたします。
  43. 安田巖

    安田政府委員 まあ事前に申込をするとかそういうことになると思います。特に靖国神社のお祭り前後なんかには全国的にたくさんの希望者がございましようから、あるいは地元の遺族会の方から連絡をするとかいろいろ方法はございましよう。しかしながら一一証明書を持つて来いとかなんとかいうことにはならないのではないかと私は考えております。
  44. 中川俊思

    中川(俊)委員 そうすると事前に申し込めばとめるということになる。たとえばこんなばかなこともないだろうと思うのですけれども、幸い春だし全国からたくさん来るんだから、遺族でなくても今度ひとつ靖国神社へ参ろうと思う、団体で東京見物をやるのにはあそこは安くもあるし便利もいいからして、だれか遺族の名前でひとつ事前に申し込もうじやないかというので、こうしたこと全国からどんどん累積して来て、せつかく遺族が来られてもとめられないというような実情に際会することを私どもは予想するのですが、そこまではお考えにならなかつたでしようか。
  45. 安田巖

    安田政府委員 私ども実はそうむずかしく考えなかつたのでございます。     〔「法律案を出すのに考えなかつたとは何事だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  46. 小島徹三

    小島委員長 静粛に願います。
  47. 安田巖

    安田政府委員 そういう場合に証明書を持つて来るとか、あるいはそういう手続をしなければとめないというふうなことまでは考えなかつたのであります。しかし今おつしやるように非常に希望が多くて、ほんとう遺族人たちがとまれないような事態が起るということであれば、それはそのときの事情に応じて適切な措置をとらなければならぬと思つております。
  48. 中川俊思

    中川(俊)委員 そういうようなことでおやりになるとしたらたいへんな問題だと私は思う。今まだ使つていないのだから将来どうなるかわからないのです、遺族会がせつかくこれを経営されるようになつても、今私どもが心配しておるようなことのないような事態に立ち至るかもしれないし、また逆にわれわれ心配しておる以上の事態が起きるかもしれません。その場合になつてせつかく遺族が来ても、何らとまるわけにはいかない、行つてみればわけのわからぬのが来て、たくさんごちやごちやしておる、こういうようなことになつたのでは、せつかくこの法案を、私どもは何とかして遺家族のほんとうの需要に供するようにしたいという気持でおるのですから、事業計画を周密にお立てにならないと、将来非常な支障を来しはしないか。それから先ほど中野委員がお尋ねになつて私も聞こうと思つたのですが、事業計画というものはこれには全然ない。これはどういうふうにしてあの厖大なものを運営して行くか、せつかく日本遺族会無償提供はしたけれども、遺族会がにつちもさつちも行かなくなつた、そういうような場合に政府はその損失を補償するのかどうか、補償しないとしても、これを無償提供を受けた遺族会は、どういうふうにして運営して行くかということを、厚生省としては監督官庁として、事前にその点十分にお聞きになつて、それをわれわれ前にお示しくださるのが私は常道ではないかと思うのです。これは中野委員も先ほど御指摘になつた、まつたく同感です。この問題については現在事業計画がありますれば、私も中野委員と同様にひとつぜひ拝見をいたしたいと思うのです。
  49. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 それでは、事業計画の内容につきまして御説明を申し上げたいと思います。
  50. 中川俊思

    中川(俊)委員 厖大なものは、読まれただけではわからない、それを資料として出していただかないと、ただ朗読してもらつてものみ込めません。あなた方の資料は、先ほど堤委員がおつしやつたように、延坪は四千坪だ、お手元に資料があるじやないかといわれても、何坪の部屋でどういうふうになつておるかということはわからない……。
  51. 小島徹三

    小島委員長 中川君に申し上げますが、簡単に説明を聞いた上で後ほど資料提出させることにいたします。
  52. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 実は部屋の構造その他につきましては、われわれが事前にそれの中に入つてよく状況を見た上でやらなければならないというふうに考えるのは当然だと考えておりまするが、中に入ることができない事情になつておりまして私の方で事業計画書をつくるにつきましても、当時あの会館関係をしていた方々に相談をいたしまして、大体類推の上に一応事業計画書をつくつたわけでございます。従いましてあの事業計画書は、ただちにあの会館無償貸付を受けて、その事業計画書通りにそのまま実施できるというふうなはつきりした見通しは断言することはできません。従いまして一応私の方で準備的に計画はこれこれということはわかつておりますので、これは御要求に応じまして本委員会提出するつもりでございます。
  53. 中川俊思

    中川(俊)委員 それでは局長にお尋ねしたいのですが元の軍人会館ですが、これは接収解除はいつごろですか、見込みでも大体おありであるかどうか伺いたい。
  54. 安田巖

    安田政府委員 現在軍人会館使用しております極東空軍司令部は都内のその他の施設使用しておりますものと一緒に、すでに府中に移転することになつております。一部は工事着工中でありますけれども、現在府中にある極東空軍補給廠の部隊が立川市付近の都下北多摩郡の大和村に移転することになつております。ところが大和村の土地収用が未定で移転できないために、その予算の大部分は執行されないでおるという状況でございます。このような大和村の土地収用が行き悩んでおるので、現在その軍人会館使用しておる極東空軍の移転を困難ならしめておる。従つて現在軍人会館返還についての具体的時期については明言し得ないのであります。しかし極東空軍の移転後はすみやかに返還するよう外務省の方から申し入れることになつておりますし、近い将来に返還される可能性もあるというふうに聞いております。いずれにしましてもこの法律の第一条にありますように、この法律は当該建物米駐留軍から返還された後に初めて実際に執行されることになつております。
  55. 中川俊思

    中川(俊)委員 そうすると、今のところでは見通しとしてはおよそいつごろということはわからないように今の御説明で拝聴したのですが、政府がこの会館処理を急がれる理由は一体どういうわけですか。
  56. 安田巖

    安田政府委員 ただいま申しましたように、はつきりと何月何日に返還されるかということがわからないと同時にまた早く返還されるかもわからないというような状況でございまして、もし日本側に返還された場合は遺族会の方ですぐ使うのだという形に実はしておきたいのであります。
  57. 中川俊思

    中川(俊)委員 それもわかるのですが、そう私は急がれなくてもいいと思うのですが、返還を受けてから計画を立ててもいいのじやないですか。ことにいろいろな疑点もあるし、また内部もよく調査されて――返還を受けてからただちにこれが使用にたえるかどうかということも問題でありますから、返還を受けてからでもいいのじやないかと思うのですが、それはそれでよろしゆうございます。意見の相違ですから。  それから政府はこの東京都在郷軍人会というものから陳情を受けられたことがありますかどうか。
  58. 安田巖

    安田政府委員 私はたしか東京都の在郷軍人会の元の役員の方お二人の方とお会いしたことがございますし、陳情書が出ておることも事実でございます。
  59. 中川俊思

    中川(俊)委員 ここにずつと並べてあるのはみな在郷軍人会から来ておるのですが、私も実は今初めて拝見したのです。こういうものが現在あるのかどうか。実は私もはなはだうかつで在郷軍人会というものがあるのかどうか、よく認識をしていなかつたのですが、政府は東京都在郷軍人会というものをどういう性格としてお認めになつておるのですか。あなたがお認めになつておるというのでなく、どういう立場としてこれに応待をしておられるか、陳情をお受けになつておられるか。
  60. 安田巖

    安田政府委員 東京都在郷軍人会というのが現在どういう性格であるかということは、実は私ども承知いたしておりません。ただ私ども陳情を受けましたのは、元この会館軍人の皆さんが出金をしてできたものである、従つてそれを自分たちの方に返してもらいたい、こういう陳情を受けたわけであります。
  61. 中野四郎

    中野委員 関連して……。先ほど伺つた事業計画の問題は、中川委員のおつしやつたように後ほど資料をお出しになるのはあたりまえなのです。同時にこの法案内容についても局長との説明に大なる食い違いかある。しかし私の質問したのは別なのです。つまり社会事業的性格をもつて、しかも独立採算制で行こうというものだから……。しかし日本遺族会というような性質からいえば、これを運営するに当つて、実際上に欠損が出るのか、利益が出るのか明確でない。これは事業計画があつても、そういう疑点は生じて来る。従つてそういう場合に政府は補償するのかどうかという点を伺つておるのです。それからその点の説明を伺えればよろしいのですが、立つたついでにもう一つつておくのは、何か事業計画を立てるについて、あなたの方で今度再び厚生委員会に事業計画を出される、かりにこの資料の中から見ました面でも、実際上に中に入つて調べたものでないと言つておられる。旧軍人会館当時の関係者のいわゆる認識に基いて書いたものである。してみると、米軍日本に駐留して以来、日本家屋の構造というものは、根本的にかえてはおらぬかしらぬが、大体において内部をかえるものなんです。接収解除になるということはもう明らかなんであつて、何もアメリカにびくびくすることはないのだから、堂々と、解除になつたあとの処置をするについて、日本政府の代行者としてあなたらは行つて中を十二分に調べることなんです。向うは空軍の宿舎なんだから、ちつとも機密もなければ秘密もないのだから、十分に調べられるはずなんで、十二分にそれをきわめてから、事業計画としてこれを委員会に出さなければ、ここであなたの方でただ覚書のまま書いて数字だけ出して来たところで、もう一ぺんあなたの方に返つてしまつて審議か遅れるだけだから、私は親切の意味で言うわけです。遠慮することはないのですから、旧軍人会館へ乗り込んで行つて、その担当官に会つて、中が改造されておるかどうかを調べて現在の実情に即した事業計画を立てて国会の審議に向うというのが、私は正しい政府の行いだと思うので先ほど御質問した。田中委員から動議が出るようですから重ねては申さぬが、先ほど申し上げた政府補償をするのかどうするのか、この点について答弁を願つておきます。
  62. 安田巖

    安田政府委員 お答えいたします。実ははなはだ私ども用意が足りなくて申訳ありませんでしたが、こまかい事業計画書も出ておりますし、収支の予算書もここにあるわけであります。しかしここで一々読み上げましても何でございますから、後日申し上げることにいたします。  それから私どもはこれだけの建物無償遺族会に貸与するということによりまして、これの運用方法いかんによつて相当遺族福祉のためになり得るのではないかと考えております。そういうような収支の予算を組んで、大体これなら妥当だろうというものを実はここへ盛つておるわけであります。従いまして補償するかどうかということは現在のところ考えておりません。一応うまく行くだろうということで、今後の運営を信頼いたしておるわけであります。  それから中を見ないのは計画としてずさんじやないか、これまたまことにごもつともでございますが、先ほど申し上げましたような事情で、私ども実は中へ入らなかつたわけであります。しかしこの建物は鉄筋コンクリートでございますし、もちろん内部は相当改造されておるということは予想されますが、そうむちやなかえ方をしてないだろうということも考えられます。ま特別調達庁からいろいろ中を改造するにつきまして一度見に行つた方があるのであります。そういう方の意見を私どもが聞きまして、元の資料にそれを加えて行つたのが現在の状況であります。これは私ども自身で見なくても、そういう方が一度立ち会つたのでありますから、大体それを信頼したらどうだろう、中へ入る入らんでそう無理をしなくても済むのではないかという気持でおるのであります。
  63. 中野四郎

    中野委員 御遺族福祉増進になるということは万人の認めるところなのであつて、これについては反対してない。大いに賛成しておるのです。ただ政府の甘い考え方で、これだけの建物無償で貸してやれば何とかなるのじやないかというのは、私は無責任だと思う。これは先ほど堤さんが言われたように、ややもするとこういうような建物無償で借りたものは、最初趣旨と目的はたいへんよいけれども、途中においてはボス的傾向等がはびこつたり、あるいは監督不行届の結果においては思いがけないような状態の起ることを憂慮するあまりに私は言うのです。あるとかないとか言うのではない。杞憂であればそれに越したことはない。こういうような大きな建物を運営するにあたつては、当然十二分に考えてやらなければならぬと考える。ただ今後計画されるいわゆる運営の方法はあくまでも社会事業的な性格を持つたものであるのです。これは営利を目的として貸すわけではないはずなんです。してみれば独立採算制をとつて行くのだが、その場合に起ることも一応想像しておかなければならぬことなんです。こういう場合にはうまく行くはずだがというのでは困るのです。どうも最初から局長のお話を聞いておると、この法案提出方法についても、時期についても説明についてもまじめを欠いた感が深いのであります。従つてこれはあまり急がぬ方がいいのではないか。もう少し慎重に厚生委員会で審議をして納得の行く、国民が釈然とする過程においてこれを決定するという方法を持つた方がいいのじやないかという感じを私は受けたのですが、ひとり私のみであるかもしれません。それは余談としましても、少くともこれだけの大きな建物をもつて日本中の御遺族に対して福祉増進のための用を達しようとするならば、もつと親切に真心をこめて、遺族方々が安んじてこの便に供せられるところまで考えてやらなければうそです。ただ貸してやる、まず何とかなるだろうというようなあいまいなものではないと私は思う。これ以上は申し上げませんが、先ほど申し上げた事業計画を明らかにし、そうしてその内容を十二分に納得のでき得るような点において、もう一ぺん資料を御提出願いたいと思うのであります。
  64. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 前の国会から御就任の委員の方が多いのですが、この法案は三月十四日の解散の十分ほど前に突如として出されて来て通してくれということだつた日本遺族会の某事務所の方のごときは、手を合せるから、拝むから通してくれといつて来られた方があります。なぜ解散であるのにこんなに急がなくちやならぬのか、さつと通さなければいかぬのかと私は申し上げたことがあるのです。今対象になつている日本遺族厚生連盟ですか、日本遺族会というものに対しましては、各党からこの間から御批判があつたようでありますから、あまり申し上げませんが、私たちが真に遺族というのは、主人の英霊は永久に帰つて来ない、暗いかまどの下で子供の顔と年寄りの顔を見て働いている未亡人なんです。孫をかかえた八十歳の老人なんです。また中学校さえも行けないような遺児なのであります。遺族にもいろいろありまして、遺族のお世話をすると称してボス的な傾向にだんだん変遷して行つておる。その証拠に選挙のたびにごらんなさい。遺族会から候補者なるものを立てて、――今度の参議院の選挙のごときをごらんなさい。堤さん、ようあなたはあの法案に反対してくれた、遺族会推薦の候補者の選挙費云々がこの会館にからんであつたということまで私に言つて来たことがあります。これは一つの風聞でありますけれども、私は日本遺族会を対象とされますならば、特定政党の出店のような動きをするボス的な幹部が支配する遺族会というものに対しては、政府は慎重に御検討になる必要がありますから、私はこの点を十分御忠告申し上げておいて、質問はまたあとに譲らせていただきます。
  65. 中川俊思

    中川(俊)委員 先ほど各委員からいろいろ疑念の点が出ましたが、われわれとしては、あそこに実際今堤委員のおつしやるような政略的な問題があつたとすれば、重大な考えをしなければなりませんけれども、私どもはそうは解釈しないのです。しかしあるいはそういうような風聞かあつたかもしれません。あつたとすれば、遺族会においても十分御反省願わなければならぬのであるが、しかしあそこは遺族会が有効にしかも最も効果的にお使いになるということについては私は賛意を表するのです。賛意を表するが、先ほど来中野委員、堤委員からもるる御疑念の点をおただしになつていたようですが、私どももまつたく同感ですから、これを遺族会に提供した後における運営の方針などをはつきりしていただいて、これを遺族会に渡しても、収支ちやんと償つてうまく行き、私が先ほどちよつと触れましたような問題も、ただ遺族だと言つて来ればとめてしまうというようなことをやつたら、これは必ず問題を生ずるのですから、そういう点について十分に御研究になつて、今後における運営の方針、さらに事業計画等をお示しいただきたい。このことを私は強くお願い申し上げて今回は質問を終ります。
  66. 田中元

    ○田中(元)委員 議事進行について発言いたします。非常に理想的な内容を盛つておりますこの法案に対しまして、厚生省の諸説明、法律内容等につきましても委員として納得の行かない点が多々あるわけでございます。ゆえに今日は質疑をこの程度で終了いたしまして、次回には厚生省は少くとも納得の行くような説明をひとつ用意していただきまして、この法案について十二分な検討をいたしたい、こういうふうに考えるわけでございます。この動議を提出いたしたいと思います。
  67. 小島徹三

    小島委員長 田中君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 小島徹三

    小島委員長 それでは本日は本案質疑はこの程度にして、次会以後に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  69. 小島徹三

    小島委員長 先刻採決を延期いたしました食品衛生法の一部を改正する法律案議題として、討論を省略してただちに採決いたします。  本案を原案の通り可決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案は原案の通り可決いたされました。  なお本案に関する委員会の報告書の作成に関しましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めそのように決定いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後二時三十二分散会