○堤(ツ)
委員 私はわが党を代表いたしまして、
らい予防法の改正案に残念ながら反対の意を表せざるを得ないのであります。
現行の癩
予防法は、御承知の通り明治四十年に勅令第二八四号をも
つて公布され、同じく四十二年の四月一日から施行されました。当時はもつぱら浮浪
患者を強制的に隔離することを目的としたものでございまして、
癩行政及び
療養所の運営を規定したものでありますが、以来五十年近くを経て医学が非常に進歩いたし、癩
予防療養所の本質的性格もかわ
つておりますのに、法律のみは、十年一日という
言葉もありますが、五十年一日何ら改革を加えることなく、今日まで旧法が施行されて来たのであります。当然私は時代の流れに沿
つてこれら古い癩
予防法が漸次改められつつ今日に及ばなければならなかつたと存ずるのでございます。この点はなはだ遺憾に存ずるものでございます。すなわち漸次改正されたものでないがゆえに、今回の五十年ぶりの
らい予防法案を見ましても、
政府の頭は今日の事態に即応したものに切りかえられておらないのでございます。法案全体に対しまして、
取締法であり、また罰則規定が大部分を占めているということを申して、
癩患者の諸子は猛烈なる反対運動を続けておいでになりますが、むべなるかな、
福祉の面はほんの刺身のつま
程度でございまして、ほとんどがやはり依然として浮浪
患者を強制隔離した当時の頭にのつと
つて今日もなお改正がなされているという点をはなはだ遺憾に存ずるのでございます。
この
らい予防法の逐条審議にあたりまして、各
委員からも発言があり、その要望がなされましたと同時に、賛成の与党の青柳
委員、改進党の賛成
委員の御
意見を承りましても、私たちが
質疑応答の中においてはつきりいたしました面を御
指摘にな
つて、むしろこの点は早急に何とかさらに改正をされなければならないということを御強調にな
つておりますのを見てもわかります通りに、私たちは
入所の義務を
患者に要求して、それから
検診を法に規定し、さらにいろいろな罰則を盛りますからには、それを償うにあまりあるところの
保護、福利施設というものが、当然近代的な感覚をも
つてこの中に盛られなければならないと存ずるのでございます。ところが
政府の意図たるやまことに不誠意きわまるものであ
つて、
法文上の技巧的な労苦はなされておりますけれ
ども、その根底となるべき財政裏づけというものがほとんどなされておらず、今日はなはだ根拠の薄いところの医学的見解も、もう一段と研究しなければいけない
段階に来ているのでありまして、これをか
つて約束されているにもかかわらず、なお予算には十分な額が組まれず、また
福祉更生の面につきましても、るる
質疑応答の際において申し述べましたが、軽
患者、重症
患者を区別することなく、画一的にこの中に
収容させるとい
つたような施設は、まつたく犠牲をしいるところの
患者に対して私たち申訳ないものと言わざるを得ないのでございます。さらでだに感情的になりやすい
癩患者の方々が、気分転換をはかり、できるだけ治療なさ
つて、愉快な人生をせめてこの園の中で送
つてもらおうとするならば、私たちはこの方々に対するところの社会
保障的な見地からの
保護がなされなければならないと思うのでございます。職業補導にいたしましても、また
家族との連絡の問題につきましても、さらにいろいろな娯楽面につきましても、大よそわれわれがわれわれの社会において望むものは、この
人たちに十分に
保障されなければならないのでございまして、こうした面において国の予算がないどころか、むしろ貞明皇后の御遺志であるところの藤楓会の持つ二億二千万円の金さえも、今日においてもなお手の行き届いた
処置がとられておらないということを
考えますときには、まことに
患者諸氏にかわ
つて私は憤懣禁じ得ないものがあるということを申し上げたいのでございます。できるならば私たちはこの
癩患者の方方に対しまして、超党派的な
委員会の
意見をまとめて
政府の意向に反省を求め、できるだけ私たちの
保障の面を強調いたしたいと存じたのでございますが、この審議を急がれる政党もあり、歩調がそろわず、まことに残念でございまして、附帯決議さえも同一歩調を持ち得ないということははなはだ残念でございます。わが党といたしましては、この現在の
法文に加うるに、第四章の
福祉更生施設の面がより以上に強調されて具体的に盛られなければ、
癩患者のためにこれに私たちは同調できないと思うのでございます。同時に
癩患者の方々に対しましては、十分な代弁をいたしますけれ
ども、しかしわれわれが検討するにあたりまして、感情的にならずに理性的でなければなりません。科学的、医学的でなければなりません。一万二千人の
患者の方々のために八千五百万の人々が無視されてはならないのでありまして、この点から
考えまして、一にも二にもあげて癩医学の研究ということについては、もつともつとこの
委員会の意志を強く表示しておかなければならないと存ずるのであります。医学的な見地から研究される費用、さらにつつ込んだ世界水準をはるかに抜いた文献などができなければ、国際的な恥辱であるところの
癩患者の数は、日本から消えることはないと存ずるのでございまして、民族あげてこの癩と闘うの気慨をも
つて、私たちは国家予算の中に研究のための費用を盛られなければならないと存ずるのでございます。この面につきましても
政府は確たる
意見と、そして十分なる費用を組まずして、この法案の改正を叫んでいるのでございます。私はこの
予防法案が片手落ちのものであるということを強調いたしますと同時に、今日病に呻吟されます方々と同じ愚を繰返すことなく、後代の人々が何とかこの病魔から救われますような、明日の希望あるところの国策を切望するものでありますがゆえに、この未完成な法案に対しましては反対をいたし、本院においてははなはだ数の上において微力でございますので、その目的を達しませんが、さらにその闘争を参議院に移すということを申し上げて、討論を終りたいと存じます。