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1953-08-03 第16回国会 衆議院 建設委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月三日(月曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 内海 安吉君 理事 瀬戸山三男君    理事 中島 茂喜君 理事 佐藤虎次郎君       逢澤  寛君    高田 弥市君       堀川 恭平君    松崎 朝治君       村瀬 宣親君    三鍋 義三君       細野三千雄君    只野直三郎君  出席政府委員         建設事務官         (住宅局長)  師岡健四郎君  委員外出席者         参  考  人         (愛知建築部         長)      濱島 敏雄君         参  考  人         (大阪建築局         長)      伊東 五郎君         参  考  人         (大阪建築部         長)      吉田安三郎君         参  考  人         (横浜建築局         長)      内藤 亮一君         参  考  人         (東京大学教         授)      杉村章三郎君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ————————————— 七月三十一日  委員堀川恭平辞任につき、その補欠として三  浦寅之助君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員三浦寅之助辞任につき、その補欠として  堀川恭平君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  建築基準法の一部を改正する法律案瀬戸山三  男君外十四石提出、衆法第三七号)  小委員長中間報告聴取     —————————————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入ります前に、お諮りいたすことがあります。すなわち河川に関する小委員長より、今国会における小委員会調査報告をいたしたいとの申出があります。この際これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。内海安吉君。
  4. 内海安吉

    内海委員 ただいまより河川に関する小委員会における今日までの調査経過につきまして、御報告いたします。  本委員会は、去る五月二十九日に設置され、爾来主として、河川法改正について調査を進めて参りました。御承知のように、現行河川法は、明治二十九年に制定されたもので、時勢の進展に従い、その改正が論議され、昭和四年ごろより、その改正案が数回にわたつて準備されたのでありますが、各省間の意見調整がならずに過ぎて来たのであります。戦後利水事業が盛んになるにつれ、これが早急なる改正の要を感じ、過ぐる第十三国会において、建設委員会河川に関する小委員会が設置され、河川法改正について調査を進め、一応改正河川法案を立案したのでありますが、提案に至らなかつたのであります。次いで、第十五回国会におきまして、河川小委員会が設置され、第十二回国会に作成した改正案を基礎として、河川法改正について調査を行いつつあつたのでありますが、解散によつて御破算なつたのであります。  今国会になりまして、再度河川小委員会が設置され、同問題に関して調査を進めたのであります。今国会におきましては、特に次の諸点について、現行法改正河川法案との比較、さらにこれに対する各省意見について調査を進めたのであります。すなわち、第一は、水系主義区間主義並びに河川種類の問題、第二は、河川の指定または認定の問題、第三は、河川計画の倒立の問題、第四は、主務大臣の問題、第五は、河川管理の一元化の問題、第六は、河川工事河川使用等に関する管理行政の問題、第七は、損失補償制度の問題、第八は、河川工事費用負担の問題、第九は、河川審議会設置の問題、以上の九点について、前後四回にわたつて比較検討をしたのであります。  この調査の過程におきまして、たまたま、台風第二号に引続き六月七日の梅雨前線による豪雨のため、西日本は近年にない災害をこうむりました。その結果、毎年繰返される災害を防止するためには、何としても、河川を水源から河口まで一元的に管理することが必要であり、現行河川法は、まず洪水防禦という観点から検討を要するという気運が醸成されて参りました。従いまして、小委員会におきましては、さつそく各党の小委員に御依頼をいたしまして、河川法改正について、各党意見をまとめていただくよう御依頼をいたしたのでありますが、その関係するところ、まことに多岐にわたりますりで、各党とも結論を出す段階に至つていないことを遺憾とする次第であります。  本問題は、現在、わが国の自立達成への最大限日であり、早急に結論を出して、必要なる改正をいたすことは、まことに焦眉の急を要する重要事であると考えられるのであります。従いまして、委員長においては、引続き、本件に関し、調査を進め得るよう、御配慮をお願いしたいと存ずるものであります。  以上簡単ながら、河川に関する小委員会調査経過について中間報告いたした次第であります。     —————————————
  5. 久野忠治

    久野委員長 次に、建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回委員会におきまして慎重審議を期するため参考人各位より本案に関しまする意見を聴取することに決定いたしておるのでありますが、鈴木和夫君、田中一郎君の御出席がありませんので、さらに東京大学教授杉村章三郎君、愛知建築部長濱島敏雄君の両君より意見を聴取するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  ただいまより本案に関しまして参考人より意見を聴取することといたしますが、その前に委員長より参考人各位に一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  本日は御多用中のところわざわざ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。御承知のごとく、終戦以来建築行政と申しますか、特に住宅難の問題は、国においても、当委員会においても取上げられまして、強くこの推進方要望をせられておるわけであります。かかる見地から考えまして、この建築行政の強力な推進という面と、地方自治の助成という面とを理論的に、あるいは実際的にいろいろの問題が発生をいたしておると存じます。さような意味合いから行きまして、本日は参考人各位の御意見を拝聴できますれば、当委員会審議の上にも非常な参考になると存ずるわけでございます。何とぞ十分なる御意見開陳を切にお願いを申し上げ次第でございます。  それではこれより順次御意見開陳をお願いいたしますが、議事運営の都合上、お一人大体十分ないし、十五分くらいで参考人各位より順次御意見の発表を願いまして、その後に委員各位より質問をいたすことにいたしたいと存じます。愛知建築部長横島敏雄君。
  7. 濱島敏雄

    濱島参考人 ただいま御紹介いただきました愛知県の建築部長濱島敏雄でございます。皆様には、炎暑の候、しかもきわめて公務御多端の中を、今回提案されました建築基準法一部改正の件について、私ども第一線に活動しておる者の意見を聞いてやろうということで御招集をいただきましたことに対しまして衷心より感謝を申し上げます。時間もあまりないことでございますから、できるだけ簡潔に申し上げようと努めますから、何とぞお聞取りをお願いいたします。なお短時間に要旨だけ申し上げることでありますから、勢い言葉がむきつけになりまして、礼を失するような点があるかもしれませんが、そういつた点につきましても、あしからずお許しのほどをお願い申し上げます。  最初に、この問題に対しまする全国知事会愛知県議会意見について、ちよつと申し上げてみたいと存じます。この改正案に対しましては、全国知事会から前後三回にわたりまして強い反対意見を申し述べております。第一回は今年の二月、前の国会に今回提案された案とほとんど同様な案が提案されたというわけでございます。第二回は本年の六月二日に、また前回のような改正案が提案されては困るという趣旨で、全国知事会において、決議をもつて反対意見をきめて各方面べ御送付申し上げておられます。第三回は、今回改正案が提案されました直後の七月二十日に、全国知事会の議決をもつて反対要望関係方面に述べておられます。おそらく皆様の手元にも届いておることと存じますので、これを読むことは省略させていただきます。  なお愛知県議会におきましても、この問題について、早くよりたびたび研究会を、建築常任委員会を中心にして開きまして、意見を練つておられたのでありますが、今年の三月定例県議会におきまして、建築確認事務移官の問題は、国の地方制度調査会結論をまつてさらに審議して決定するのが適当であるという報告建築常任委員長からいたしまして、それを全会一致で可決いたしております。さらに七月二十日、今回改正・案が提案されました後に、緊急の建築信任委員会を開きまして、今回衆議院に提出された改正法律案反対する旨を決議をいたしておる次第でございます。従いまして、全国知事会におきましても、また県の議会におきましても、私が以下申し述べるようなことを支持しておるわけでございまして、私ども一部役人の者が、いわゆるセクシヨナリズムからこういうことを申し上げるのではないということを、御了承願いたいと存ずるのであります。ただ一建築部の問題でなしに、県全体、あるいは全国府県の問題であるということを御認願いたいと存じます。  次に、今回提案されました改正案に、私どもがなせ反対するかという理由を、申し上げてみたいと思います。  第一点は、今回提案されました案の骨子は、市長知事に対する通知をもつて建築行政移管し得るというところにあると思いますが、そういうことになりますとまだ移管の機運にもなつていないのに、慎重を欠いた、極端にいえば無批判的な移管が行われる心配がありはしないかという面でございます。建築行政移管するかどうかということは、その土地々々の県、市の事情によつて決定すべきものと存じます。しかるに、今回礎案されましたように、市長の一方的な通告だけをもつて移官の効力を発生するということになりますと、かりに、ある土地ではまだ移管の時期でないという段階にあるにもかかわらず、移官が容易に行われるということになりはしないかと思うのであります。役所の常といたしまして、とかく権限のふえることには皆が賛成をいたします。一人が主張いたしますれば、他の者はこれに追随することが多いのでございます。従いまして、何かこれをチエツクするものがなければ、円満な時宜に適した移管は行われないという場合もあると思いますが、そういつた点について欠けることがないか。またさらに、こういつた容易に移管される道を開けば、他の目的に利用されることがありはしないか、つまり政治的な目的に相手を困らすような目的に利用されることも起らないとは断言できないと思うのでございます。もし、その時期でないのに、単に市側要望するという一事をもつて移管が成立いたしますならば、その後にいろいろな弊害が起こつて財政的な負う担が多過ぎるとか、あるいは行政能率が下がるというような弊害が起つて来るということを心配するのが第一でございます。  次に、第二点といたしましては、立法形武から申しましても、われわれとして非常に承服しがたいものがあるのでございます。市は決して県の上級官庁ではございません。従来は、むしつ県の監督を受くる、ような面すら多かつたのでございます。しかるに、上級行政庁でもないところの市が、単に通告をもつて知重事権限と接種するというりようなことは、おそらく他に類例のない立法だろうと私は思います。そういつたことは、県の立場からいつて承服しがたいところであると存じます。  およそ、権限なり領域なりを移官する場合には、双方の円満なる協議了解というものがととのつて、しかる後にこれをなすのが常道でございまして、たとえば地方自治の第七条にも、市町村境界変更とか、廃置分合という場合には、関係市町村申請によりまして県議会の同意を得て知事が決定する、こういうことになつております。合併する方の市町村が合併される方の市町村通告することによつて合併が成立するとは書いてないのでございます。そういつた意味において、県、市が円満に協議がととのつて、しかる後に移官されるのが本則ではないかと存ずるのであります。  しかも、ただそういつた形式的な問題だけでなしに、もし移管が成立いたしますならば、現在府県におりますところの建築行政職員の相当の整理をいさなければならぬのでございます。しかしながら協議がととのつた移管でなしに、一方的な通告による移管の場合には、往々にしてそういつた整理される職員の身の振り方といつたようなことについても、うまく行かぬ心配がございます。極言いたしますならば、府県建築行政職、というものは、市長通告によつて、いつその職を失うかもしれない。あるいは職を失わないまでも、今まで自分の多年経験して来た仕事を離れて他の仕事に振りかえられる場合が起るかもしれない。そういつた公務員の身分の問題につきましても、相当大きな問題をはらむものだと存じます。  第三点は、現在府県市町村との間には、権限調整につきまして、いろいろ論議もされ、研究もされておるようでございます。従いまして、建築基準法の問題も、その一環としての性質を有するものでありまして、単に建設行政のみの問題ではないと存ずるのでございます。ことに府県と大都市との間におきましては、先年来いろいろ権限調整について論争もされ、検討もされておるのでございまして、そういつた見地から、その問題がいまた未解決であるのに、建築行政についてこのよな改正案が通る場合には、その係争問題に対していろいろの大きな影響を与える要素となりはしないか。幸に中央におきましては、地方行政調査会というものができまして、いろいろこの問題について検討を重ねておられます。近くその結論も出るであろうと期しておるのでありますが、その結論が出てから善処しても、決しておそらくないと存するのでございます、財政問題もございましようし、あるいは機構の問題もございましよう。いろいろ複雑な県と市との関係が有機的につながつておるのでありまして、建築行政問題は、いわばその一つでございます。従いまして、そういつた全般をにらんで解決していただくことが、最も適当であろうと存ずるのでございます。そのために、県の議会あるいは全国会知事会等におきましても、この問題の非常に大きな関心を持たれまして、いろいろ意見を述べておられるのでございますが、そういう全体とのにらみ合せをしていただくということかひとつお願いしたい要点でございます。  次に、建築基準法は、建築士法及び建設業法とともに、よく建築二法といわれ、非常に密接な関係にございます。また都市計画法とは、いわゆる姉妹法関係にありまして、これまた一体不可分の関係にあるのであります。その他医療法旅館業法公衆浴場法興行法、こういつたいろいろ建築に関します法律がございまして、これらの諸法に関します許可、認可は、現在におきましては、全部知事権限になつておるのでございます。こういう事務と切り離して、こういつた事務との関係調整せずして、建築確認事務だけを一方的に市に移管する道を開くということは、勢いその部局間の連絡を不円滑にして、事務能率を下げる心配かあると存ずるのであります。現在その他の諸法につきましても、知事許認可権限を握つておりますから、県庁内におきまして、敏速に会議、相談をいたしまして、これら関係諸法令の円満な遂行にも支障のないような状態になつておりますので、今ただちに法律をもつてこれを移管するという必要はないのではないかと存ずるのであります。建築してしまつてから、いろいろまずいものができたといつて騒いでみても、及ばないわけであります。建築する際に、旅館なりあるいは浴場なりといつたようなものがいいか悪いかということを、まず検討いたしまして、悪いものならば、手をつける前に建築画を通じてやめさせるということでないと、なかなか目的を達しないのでありますが、そういつた点から申しますと、現在県で建築基準法確認事務を扱う形式の方が、関係法令の円満な遂行にはけつこうな点が多いのでございます。これが第四点でございます。  次に、第五点といたしましては、こういつた通知による一方的な移管ということが行われた後、はたして県、市の間に十分な連絡協調を保つて行政が行われるかという点を、心配しておるのでございます。特にこの事務移管した直後におきましては、県が市に協力するということが最も必要でございます。その後におきましても、県と市とは非常に密接な関係がございますから、隣府県相互間以上に連絡協調ということが望ましいのでありますが、片一方がそれを欲していないのに、単なる通知をもつて移管した場合に、その後十分協調して円満な行政がやつて行けるかという点を非常に心配いたすのでございます。  こういつたもろもろの点から、私は今回提案されました改正案に対して反対意見を持つておるものでございまして、できればもう少しよく検討願いまして、一応この法案を見送つていただきたいと存ずるものであります。  次に、ただいま申しましたのは、法案そのものに対する見解でございますが、さらに法案目的としておるところの移管促進という問題につきましても、意見を申し述べてみたいと存ずるのであります。はたして法律改正してまで移管を促進する必要があるかどうか、それほど市役所において行政をさせる切実な必要があるかどうか、この点に対して、私は疑義なきを得ないのであります。もちろん、円満に移管が成立した場合のことを申し上げるのではありませんが、今回提案せられたような単なる通知という方法によつてまで移管をさせなければならないかという点について、少し意見を申し上げてみたいと存じます。  そういつた問題を考える場合、第一に考えなければならない点は、市民の便、不便ということだろうと思います。この点につきまして、建築行政は、愛知県の例で申しますと、県の建築課一本に窓口が統一されております。そうして建築課書類を受付けますと、それを、必要があれば県の土木部衛生部農林部教育委員会、あるいは法規によつて命ぜられておる通りに市の消防局といつたような部局で、全部課員が持ちまわりで会議をしております。従つて市民の方には、そういうところに出頭していただく必要は全然ありませんので、県が扱つておるために市民の方に迷惑をかけるという点は全然ないのでございます。しかも、その手続はきわめて敏速に運ばれるのでございまして、建築基準法第六条第三項には、申請者申請の内容によつて、七日間また二十一日間に申請された書類を処理せよということになつておりますから、私どもの方といたしましては、その期限内に確実に処理をいたしております。従いまして、たとい市へ移管いたされましても、これ以上市民皆様の手数の省きようはないと考えておる次第でございます。  なお、こういつた手続がどういう種類の人によつてなされるかということも、考えなければならないと存ずるのでありますが、それは大部分、十人のうち九人以上が建築士であり、あるいは請負をし、山業者である。そういつたしよつちりう県庁へ出入りしている限られた技術者によつてなされておるのでございます。従いまして、これは一般市民の問題というよりも、むしろこういつた少数の技術者についての問題でありますが、そういつたわれわれの関係の深い建築士であるとか、あるいは請負業者であるとか、そういつた人々から市へ移管してほしいという声を聞いたことがあるかと申しますと、私の知る限りでは、一ぺんもそういう意見が述べられたことはございません。そういう実情でございます。特にこれは愛知県の特殊事情でございますが、市役所県庁が並んでおりますから、かりに市へ消防関係とか、あるいは都市計画関係申請したついでに行かれるということがありといたしましても、隣同士役所でございますから、市民の方に迷惑をかけるということはほとんどないのでございます。これが移管の価値に対する問題の第一点でございます。  第二点といたしましては、この建築行政を行うがための行政費の問題でございます。現在県一本で行政をやつておりますために経費比較的、少くて済んでおるのでありますが、これを県と市と二つにわければ、両方で支出する経費の合計は、現在県で支出している額よりも、かなり大きなものとなると思います。それはなぜかと申しますと、役所二つにわければ、使う人間に機物性がなくなり、弾力性がなくなり、相互に応援し合う範囲が狭くなりますから、どうしてもよけいの人を準備しておかなければなりません。それからもう一つは、庶務係とか、あるいは企画係とか、あるいは文書統計を扱う係というようなものは、当然扱い者二つになれば、両方に持たなければなりませんから、そういつた面からも人かふえる結果になると存じます。  こういつた点につきまして、先般来私どもが各方面陳情書を提出いたしましたところ、市側から、県はああいうことを言うけれども神奈川県で実施した場合には、一向人はふえていない。移管前には九十一名の神奈川県庁建築定員であつたものが、移管後においても川崎市、横浜市、県庁を含めて九十二名にしかなつていない。しかもその中には川崎市の営繕課職員までも入つておるじやないかという駁論をされたのを、あるところで見たのでありますが、それは何かの間違いではないかと存じます。私ども移管直後に神奈川県庁にお伺いして聞いたところによりますと横浜市は当初の定員五十三名ということで発足されたということを聞いております。神奈川県庁といたしましても、横浜市並びに川崎市へ移管するために、さしあたり二十名の定員を削つて、当分はそのままで行きたい、こういうように言つておられたことをはつきり記憶しておりますので、五十三名市で増して、県で二十名減れば——その二十名のうちには、川崎市へ転出された八名がありますから、十二名でありますが、五十二名から十二名引けば四十一名という増になるわけであります。もし先般市の方で発表された資料により、過去において九十一名であつたものが、九十二名で納まつておるという事実があるとすれば、それは必ず神奈川県庁建築部長なり、あるいは市の建築局長さんなりの非常に不満足な陣容であると私は断言してはげからないと存じます。しかしながら、この経費の問題は市の財政との見比べてあるので、一概に言い得ない問題でありますけれども、現在名古屋市等においては、非常に住宅問題が逼迫しておりまして、市においても相当たくさんの住宅を建てておられますけれども、抽箋の際には、まだ五十倍、六十倍あるいは百二、三十倍という大きな競争率でございます。財政多端折柄、そういう経費を増すことは少しでも避くべきじやないか、県もそうすべきじやないかと存ずるのであります。しかもそれが先ほど申しましたように、この手続をする人がごく限られた建築関係者だけであるという点を考慮いたしますと、経費増理由が一層薄弱になると存ずるのであります。市民全部に毎日関係のあることでありますれば、経費の増もやむを得ませんが、比較的限られた人に関係のある問題であるということを考えますと、経費を増すことが惜しいという結論にならざるを得ないのであります。  第三点は、移管することによりまして、法規統一的運用支障がありはしないかという点でございます。建築基準法には、地域制等によりまして、ある種の建築物を建てることを一応禁止するけれども特定行政庁がこれを許可した場合には、建ててもさしつかえないという規定が相当多数にございます。また各条文にわたりましても、解釈のわかれる点が多々あるのでございます。こういつた特定行政庁の裁量あるいは解釈といつたような点につきまして、扱う行政庁の数が多くなるに従つて意見が区々となります。それが具体的事情に適して区々になればよろしいのでありますが、そうでない場合も、起り得るのであります。たとえば緩厳の差、か生じて来るのでございます。もしきびしい扱いと緩なる扱いとが出て来ますれば、必ず緩なるものにおちつくことになります。名古屋市で認められることが、豊橋市で認められないことはないじやないかということになりまして、そういつた統一的見解をもつて法規の適正な執行、用をするという点で、行政庁がふえるということは、確かに支障があるのではないか。こういつた点は、現行法の建前に関する問題でもありますけれども、相当研究を要するものがあると存じます。特に聞き及ぶところによりますと、この特定行政庁市町村にも認めるという条文は、当初壕案になかつたものが、占領中のことでありますから、その後そういう制度が入つて来たということも聞いておりますが、すでに独立した今日、こういつた点については一段とつつ込んで研究する必要もありはしないかと存ずるのでございます。  第四点は、時期の問題でございます。現在市側は、一刻も早く移管をするようにという要望を述べておられますけれども、実際を申しますと、建築行政は、終戦後の虚脱状態を脱しまして、現在軌道に乗つたばかりのところでございます。まだ違反建築も相当多いのでございます。また無理と知りつつ、相当知名の方が建築課へ乗り込んで来て、いろいろと運動をされるといこともあるわけでございまして、一応軌道には乗つたけれども、まだ市民の理解が十分であるという点までは至つていないのでございます。従つて、いましばらくは非常に経験に富んでおるところの今まで扱つて来た県の建築部職員にやらせて、十分市民の間に協力の基盤ができてからこれを移管してもおそくない問題じやないかという点も考えられるのでございます。こういつた点から、私どもは名古屋市の要望に対しまして、現在の段階におきまして、ただちに移管することには応じかねるという回答を差上げた次第でございます。愛知県の特殊事情も加味いんしまして申したことでありまして、現在すでに円満に移管をされておる県市の実情を批判する意思は毛頭ないのでございますが、われわれとしては、そういう考えのもとに現在まで名古屋市の御申出に沿い得なかつた実情でございます。  以上、私は提案されました法案に対する反対理由移管そのものを愛知県で実現してない事情について申し上げました。もちろん私の申し上げることに間違いがあるかもしれません。また土地の事情によつて移管する方がよい県もあるかもしれません。しかしながら、現在すぐに法律改正をもつて一方的移管を認めるということについては、これはちよつと行き過ぎではないかと思うのであります。協議移管という道も開かれておるのでございますから、そういつた府県の意思を抹殺してまで、一方的な移管をさせる道を開くということについては、慎重な御研究を願いたいと存ずるのであります。時間が参りましたようですから、これで終わらせていただきますが、さいぜん申しましたようにお、単なるわれわれのセクシヨナリズムではなしに、知事会、県議会等が全般的に私ども意見を支持しておる問題でございますから、何とぞ慎重に御研究くださいまして、公正な判断を賜わりますように、切にお倣い申し上げます。どうもありがとうございました。
  8. 久野忠治

    久野委員長 参考人の方たちにお願いを申し上げますが、時圏の関係等もありますので、今までの運動の経過等につきましては、なるべくお避けをいただきまして、問題の要点のみをひとり簡潔に御開陳願いたいと思います。  次に大阪建築局長伊東五郎君
  9. 伊東五郎

    ○伊東参考人 私はただいま御紹介いただきました大阪市の伊東でございます。  私は大阪市並びに神戸、名古屋、京都、横浜等の立場から、ただいま濱島さんからの御意見反対の立場から意見を申し上げたいと思います。この五大都市からしばしば両院の議長並びに建築委員長あてに陳情書を出しておりますので、これは御承知のことと思います。また地元におきましても、各市も大体二年以来折衝いたしておるのでございます。そういう関係もございますし、また私、前に建築基準法の立場のときにも関係したようなこともありまして、ただいま横島さんの言葉の中にちよつと食い違つた点もありますので、大体濱島さんの御意見に対する意見をごく簡単にまとめて申し上げたいと思います。  まず現行法の、市町村と都道府県協議の上で移行をするというやり方刀がいいので、いきなり法律できめてしまうというようなことは、いろいろトラブルを起して適当でない、こういう御意見でありますが、これにつきましては、一般市町村の場合につきましては、私もそのように考えます。なるべく協議の上でやるのがいいと思つております。ただ、今回問題になりましたような、この改正案で取上げられましたような、たとえば人口三十万以上の市——これは三十万か、五十万か、二の点は知りませが、相当の能力のある市につきましては、現行法は適当でないと思います。と申しますのは、現行法の四条を読んでいただけばわかりますが、市町村には建築主事を置いて建築行政をやることができるという道を開いておりますが、そこに若干法文行為の明らかでないような点がありまして、協議がととのつた場合においてこれこれというふうにありまして、協議がととのわなければやつて行かれませんが、事実はそういうことになつておる。そうしますと、これは府県の一方的な判断でこの移管ができるかできないかということがきめられるのであります。  この立法の趣旨はそうではないと私は解釈しております。と申しますのは、この法律を最初に提案されましたときに、この席から益谷建築大臣が理由を説明されておりますが、その場合にも、また政府委員からのいろいろな補足説明にも、これは地方自治を伸張するために、能力のある限りなるべく市に移管するのを原則とする、こういうことを申しておられます。またたびたびこの委員会でも、また参議院におきましても、市に移管する問題につきましては、委員の方々からも多分に疑問が出まして、非常に質疑応答が多かつたのでございますが、結局大所高所から能力のある市、つまり大都市というようなところには、その自治の伸張のために、民主的な建築基準法の運営のために、市に移すことが望ましい、こういうことをはつきり言つておられます。またその後第十三国会におきまして、やはり両院の建設委員会におきましていろいろ質問がございました場合に、やはり所管大臣なり政府委員から、その方針を確認せられまして、そうして現行法のわく内で市に移管するように努力するという意味のことをしばしば明言しておられます。また事実建設省では住宅局長の依命通牒をもつて知事あてに、円滑に移官のできるように努力してもらいたいという意味の通牒を出しておられるのであります。しかしこれはいろいろ問題がございましようが、結局におきましては、大きな地方自治という観点から、建築基準法の民主化、直接市民の便利ということから考えまして、大筋としてはよろしいと思います。一般市町村については現行法でよろしいと思いますが、特定の市につきましては、この改正案のようないろいろとこれを打開する方法はあろうと思いますが、いずれにいたしましても、建設省が立法当時認めておりました大きな方針から行きますと、現行法には不備があるのではないかと思います。協議がととのわないという場合にはどうするか、これを裁定する法的な根拠もないようでありますし、これを国会においてもはつきりどうするかということをきめておられないわけでありますので、これは早急に打開をして是正をしていただきませんと、いたずらに県と市の間のトラブルを起すのみであると思いますので、早急な解決がお願いしたいのでございます。  それから世界のどこの市でも、ほとんど大部分の市におきましては、建築の取締りということは市自体がやつております。これは各国のその都市の常識的なことになつておると思います。道路とか区画整理とか、上水、下水、清掃というような市民に直結した仕事は、最下級の市町村という自治体が担当するということは通例になつておりますが、同様に建築の問題もそうであると思います。建築基準法は、大部分の規定は、都市計画によりまして、ここは住居地域、ここは商業地域、あるいは防火地域とか、いろいろ都市計画としてきめられますが、その事柄をその通りに実行して行くようになつているかどうかということのために、建築主事を置くのでありまして、大きな都市計画をどうきめて行くかということは、多少公益行政と申しますか、全般的に隣接町村なども考えてやるということもありますが、建築の取締り自体は、最下級の自治体がやるのが、最も民主的なやり方であろうと思います。特に戦後は消防関係が市に移りまして、また固定資産税などの建築に深い関係を持つておるものも市に移りました関係で——特に消防関係につきましては、ほとんどすべて、どんな小さなことでもみな消防長の同意がいるのであります。これは市が関係しておりますが、これに関連して不法建築がないかどうかというような現場の調査ども、市の消防局がやつておるわけでございます。そういう関係からいいましても、ますます市が担当するという要素がふえておると思うのであります。  また不法建築の問題などもございましたが、これも市の事業でいろいろこまかい事業が多いわけでございます。区画整理事業とか、道路の事業とか、いろいろあります。これに関連して不法建築が非常に多いのでありますが、これは現在では市自体が処理することはできないということになつておりますので、府県に御依頼をしなければできないということで、市自体といたしましては、非常な不便を感じておるわけでございます。従つて市民に、迷惑をかけておる点が多いのでございます。  これは原則論でございますが、そのほかにいろいろ今説明されました中で、府県職員、公務員の身分のお話がありました。そういう御懸念もあるいはあるかもしれませんが、いきなりこういう法律をもつて移管をしてしまうと、あとの職員の身の振り方がつかぬというような御心配であります。これは建築主事というものは御承知だろうと思いますが、大体建設大臣の試験によりまして検定しているものであります。また下級のものは建設大臣が身分を検定してきめております。でありますから、特定の身分を持つた人だけしかできないのでありまして、この行政を市に移した場合におきましても、市としましては、当然その資格を持つたエキスパートを受入れなければできないわけであります。でありますから、大体におきまして、失業者を出すという御懸念はないものと考えます。それから、他のいろいろな法令との関係でございますが、ただいま申しましたように、消防法などの関係から行きますと、市に移して、消防上の関係建築上の関係とを一本にやることが望ましいのでありまして、そのことによりまして、事務が非常に簡素化されると思うのでございます。また戦災地の区画整理の区域が大都市はみな非常に多いのでありまして、特別都市計画法によりまして、その方からまた建築許可がいるわけであります。これは府県知事であります。しかし、これは先般建設省におきまして政令を改正せられまして、建築基準法移管されまして、知事権限も同時に市なら市に移管されるというように政令が改正されましたので、大部分の問題は解消しているのでありますが、ただ、今お話がありましたような、つまり営業三法といいますか、浴場とか興行場、飲食店というような関係、それから都市計画一般の都市計画法、これは戦災地以外の都市計画は非常に少いのでありますが、そういう場合にやはり知事の許可権が残る。これが二重になるじやないかというお話ですが、これは一方は営業許可の関係でありますので、建築だけの問題ではありませんから、これを一本することはなかなかむずかしいと思います。別々にありましても、そのケースは非常に少うございます。われわれの調べましたところによりますと、全体の二—三%ぐらいにしかなつていないと思います。ごくわずかの例でありまして、特殊の営業許可の関係でありますので、二重の許可を受けなければならぬというか、二つ手続をしなければならぬという点については、ごく例外的のものでありまして、さほど根本的のものではないように考えております。  それから府県に強制的に仕事を委譲した場合に、その後において府県と市との連絡協調がうまく行くかどうか。これはよくわかりませんでしたが、そういうような感じのものではないと思います。実際の理論的のものでありますから、さような心配はないのではないかと考えます。  それから、市民の直接の便不便はどうかということでありましたが、なるほど本法には、普通のものならば一週間以内に確認をしなければならぬということがあるのでありまして、大体そういうふうに現在もやつて来ておると思いますが、この移管によりましては、影響がないともいえますが、しかし消防手続などの関係から言いまして、一層簡便にできるということは、先ほど申し上げた通りであります。  それから統一的な運営はどうかというようなことがございましたが、なるほど府県でやります方が市がやりますよりは、強力な執行ができると思います。しかし、強力であればいいかどうかという点には、多分に疑問があるのでありまして、もともと建築基準法ができます前には、市街地建築物法というものがあつたのであります。その当時は警察でやつておつたのでありまして、建築技術者が警察官と現場へ行つて、サーベルをがちやがちやさせてやつた時代があつたのであります。その後警察から離れておりますが、建築警察的な要素が多分にあつた。そういうような考え方を基本にいたしますと、弱体化するということがいえるのでありますが、一面市民を納得さす、民主的に運営をするという点におきまして、非常に大きな進歩があると思うのであります。これはその当局者の一方的な都合だけからは判断できないのでありまして、市民の立場を十分考えた上で判断しなければならない問題であると思うのであります。  また行政費が非常にかさむのではないかというお話でありましたが、これは私どもの市で今予定しておりますものでは、そうふえません。府県と市との両方合せたものが、現在よりも非常にふえるというわけではございませんで、若干ふえることがあれば、これはサービス改善などに使われるものと考えております。  それから最後に、もともとこの立法は進駐軍の指示によつてこの条項が入つたというようなお話がありましたが、これは事実とまつたく違つておりますからその点は私から訂正をしておきます。これはもともと市街地建築物法の時代から、一部の市には移した方がいいのではないかという議論が非常にあたつたのでありまして、新憲法以前は、建築に関する取扱いは警察でやつておりました。そのためにいろいろ弊害がありましたが、新憲法ができ、改正の空気ができて、この建築基準法ができたのでありまして、その立案の当初は、たしか人口十五万が何か、何万以上の市はこれでやることができるというようなことでありましたが、進駐軍の意見によりまして、町村でもやりたいというところがあつて、やれる能力があるならば、やらせてもいいじやないかということで、非常に広げられたのであります。これは結果から見れば、必ずしも適当ではなかつたと思います。町村までは行き過ぎではないかと思いますが、事実はこういうような経過でできておるのでありまして、進駐軍の指示によつてやつたのだから、進駐軍の占領行政がなくなつたから元に返すという問題ではないのでありまして、その点は御了承を願いたいと思います。
  10. 久野忠治

  11. 吉田安三郎

    ○吉田参考人 ただいま御紹介にあずかりました吉田でございます。私は、先ほどお二方からいろいろ御意見がありましたが、重複を避けましてごく平たく建築行政と申しますか、それの理論と実際、あるいは雰囲気というものにつきまして、委員長のお示しにより十分間ばかり私の所見を申し上げたいと思います。  先ほどからいろいろお話がりましたが、要するにこういう問題を解決するかぎは理論と実際並びにその当時の雰囲気ということが非常に影響すると思うのであります。  先ほど来るるお話がありましたが、私もかつて建設省にもおりまして、終戦直後従来の市街地建築物法等の改正につきましてるるお教えを願い、研究もいたしたのであます。なかなかこういう問題につきましては相当の経験もあり、また終戦直後から地方自治の精神によらなくてはならない、あるいはまた監督行政から指導行政に移らなくちやいけないというようなわけで、各府県建築課も指導課と名前をかえ、あるいは共同建築あるいは一般の住宅の規模の改良というようなものに、法規を離れて指導もいたしておるような空気になつておるのであります。従いまして、現在におきましても、ただいま御議論になつております建築基準法の一部改正案につきましても、現に各府県事務担当者の方々は、雑誌にあるいは講演その他におきまして、みずからの所信を表明せられまして、こういうような状態がいいかどうか、あるいは現行の規定がいいかどうかといういうな点についても、るる研究をされておるわけであります。従いまして、理論的にはいろいろな見方が成り立つと思うのであります。もちろん法案の制定がどうなつた、こうなつたということを言いましても、帰するところは、結局理論はどうか、実際の問題はどうか、現在の雰囲気はどうか、この三点を総合して考えるのが、最も妥当な考えであると私は考えておるわけでございます。  従いまして、理論的に申しまして協議というものはどういう意味かということは、いろいろせんさくすれば意味がありましよう。あるいはその当時の意図は、今言われたようなことかもしれません。あるいは時代の進運に伴つて、また内容を考え直さなくちやならないかもしれません。そこに妙味もあるのではなかろうか、さように私は考えておるわけであります。従いまして、この問題につきましては、法案ができるだけでも、相当論議が重ねられ、なおまた、その後の施行の実績に徴して、われわれも創意をいたし、くふうもし、先ほども申しましたように各府県建築主事の方々が現在でも研究され、雑誌その他に発表されておるわけであります。その内容はくどくど申し上げる時間もございませんが、そういうようような事柄でありまして、理論という問題につきましては、いまだ各方面から検討されておる状況でございます。  実際上の問題はどうか。これは平たく申しますと、問題は以上の点において考えますならば、やはりそういう不安定な状態に置くような改正も困るじやないか、あるいはまた協議といいましても、どういう人間をいついかなるというときに、十分協議をととのえなくちやならぬと思うのであります。やはり職員の身分のこともありますし、あるいは府県から市に参りますれば、恩給の点もございましよう。従つて恩給にもう達するのに間もない人は、行くのを好まぬかもしれません。達した人は好むかもしれません。そういうような人その者の意思というものを十分尊重してやらなければ、将棋のこまを動かすようなわけには行かぬ、これとこれはこちらへというわけには行かないのであります。やはり協議というものは、都市の計画が大きければそれだけ異動する人が多い。従つてそういう問題は十分に協議を重ねてやらなくちやならない、かように私は考えるわけであります。  なおまた、先ほど来申されました事柄はいろいろ御両所の方で論議がございましたが、これもりくつのつけ方、ものの見方であります。従いまして、実際にそういうことがうまく行くかどうかということは、やつてみなければなかなかわからない。しかも現にやつておられるところもあるのでありますから、われわれはそういう点も十分関心を持つてつて行く、そういうような態度で臨むのが、実際問題の解決として一番いいのじやないか、かように私は思うのであります。  最後に、もう一つは雰囲気であります。やはり何と申しましても、理論はどうであろうとも、実際はどうであろうとも、雰囲気ということを忘れてはいけないと私は思います。  先ほど局長が言われたように、それは占領下であろうが何であろうが、これは厳然とした、国会の協賛を経てやつておる法律でありますから、われわれもそれに十分従い、またその不備を研究し、将来やつて行きたいという信念に燃えております。しかしながら、やはりそういうときの雰囲気も、これは私は忘れてはいけないと思います。そういたしますと、現在のここ一、二年来の雰囲気はどうか。やはり地方制度のあり方をどうしようかというので、先ほど来地方制度調査会というものを設けられまして、学界の方々あるいは衆参両院の方々が集まられまして、目下研究されております。あるいは今伊東局長が言われましたように、五大都市についてはそういうことでやつた方がいいという結論が出るかもしれません。今まさにそういうふうな大きな、地方制度をどうしようかという結論が出ようとするときでありますから、われわれもできるだけ考えるけれども、この結論というものは相当権威のあるものである。従つて、これに従つて大道を決して行こう。大道がきまれば、おのずから基準法もその方向にのつとつて進めばいいじやないか。こうすれば、営業三法がどうの、何がどうのということも、一挙に解決するではないか、それまでわれわれは研究しながら待つて行つた方が賢明じやないか、こういうのがわれわれの心底の腹であります。  りくつはたての両面でありまして、いろいろつけようがありましよう。しかしながら三十数年にわたつてつて来た事柄でありますし、私ども大都市や大府県におります建築部長だけではございません、そうでない新進の学界の方々も、いろいろこういう点について研究いたしております。従つて、そういう理論と実際と合せて、なおまた現在の雰囲気というものを十分認識してやつて行く方が、最も堅実な歩み方でなかろうか、私はこういうように考えております。  その他のことにつきましても御議論がありましたが、これを私が一々拾い上げまして、これがどうだああだと申し上げましても、重複することと思います。要点は、今申しましたように、現在目の前にそういう地方制度、地方自治をどうするか、県の事務再配分あるいは市町村事務再配分をどうするか、こういうこともこの秋には結論を得るようになつておりまして、従つてそのときにそれを見まして、欣然そういう大道に進んで行こうじやないか、こういうふうに考えておるわけであります。  時間もございませんし、いろいろ申されましたところの論旨につきまして申し上げておつても、限りがありませんので、ほんとうの腹を割つた気持を披瀝申し上げて、御賢明な御判断を得たい、かように思う次第であります。
  12. 久野忠治

    久野委員長 次に横浜建築局長内藤亮一君。
  13. 内藤亮一

    ○内藤参考人 私は横浜市の建築局長内藤亮一であります。議題に上つておりますところの法律案につきましての考えを、御参考までに申し上げたいと思います。  第一に、横浜市は昭和三十六年十月十日以来、神奈川県より建築事務移管を受けております。その移管を受けます際のいろいろの経過なりあるいは移管後の状況なりを御参考に申し上げ、それから私の建築行政についての日ごろの考えを申し上げ、最後にこの法律案について私の考えを申し上げたいと思います。  横浜市におきましては昭和二十五年十一月、ちようど建築基準法が施行の月でありますが、施行と同時に、神奈川知事から市長あてに、市か施行する意思があるかどうか、意思があるとすればいつごろからやるつもりかというような又書をいただいております。それによりまして市長から、二十六年四月一日から施行したいというようなことを回答いたしております。その後、県の専門の建築職員を市へ何名かいただく問題、その他市で条例をつくる問題についての県より指導を受けるとか、いろいろな問題で時間が経過いたしまして、結局二十六年十月十日から円満に協議がととのいましたのは、もつと前でありますが、施行いたしたわけであります。  施行後の状況も、県と市は非常に連絡もうまく行つております。一例を申し上げますと、最近横浜市で建築コンクールをやりましたが、これについては知事賞も出しております。その他建築基準法には、地方団体に建築審査会を置くことになつておりますが、市の建築審査会には県の建築部長が入つており、あるいは県の建築審査会には市の建築局長が入つていると、いうふうに、また月に一回、川崎横浜神奈川県と会合いたしまして、連絡は非常に良好に行つておると思うわけであります。  それから、先ほども愛知県の部長さんから市へ行つたら軟弱になるとか、その他いろいろな問題がございましたが、私らは、市へ行つてからの方がよかつたと申し上げれば、県の方にまことに礼を失するわけでありますが、また市の方へ来てまずくなつたということを申し上げれば、また私の方がまずいわけであります。これはまだ与論調査か何かで市民の声を聞いておりません。私公平に見て——公平かどうかわかりませんが、県でやりましたときも、市でやりましたときも、大体六十五点というふうに見ておるわけであります。決して百点に行つているとは思いません、まあ六十五点ぐらいだと思います。  それからいろいろ市へ行つて人がふえたとか、予算の問題がございましたが、参考に申し上げますが、現在二十八年度の予算は、建築基準法のほかに、御承知のように耐火建築促進法その他いろいろな行政事務をやつておりますので、一切合せまして、一年に千二百万円、そのうちに建築基準法による手数料が大体六百六十万円、市の負担が約五百万円、この中には最近ジープを買うような予算も入つておりますが、とにかく約四〇%ぐらいは市で負担しております。人員も、県から十二、三人専門の職員をいただきまして、現在では四十一名、確かに人もふえております。金も今申し上げましたように、五百万円、ほど市が負担しております。これにつきまして、ちよつとだけ申し上げておきますが、はたして現在の建築行政全般が安全に行つているかどうか。私は広い意味の建築行政は、建築基準法はその半分ぐらいしか得るところがない。書類を審査いたしまして、現場に検査に行くというような仕事が中心であります。もちろんそのほかに、建築基準法にいろいろな条文も盛られておりますけれども、一口にいえば、建築規制、これは建築行政の全体から見れば、半分の仕事であります。その他まだ農村地帯における農村住宅の改良とか、あるいは今まで手の及んでいないところもあります。それから建物を検査して、あそこが悪い、ここが悪いというような行政ばかりでなく、いい建物をはめるというような行政は、現在のところ行われていない。現在広島とか、愛知県でも行われていると聞いておりますが、最近横浜市でも実施いたしました建築コンクールなどを実施いたしまして、いい建物を県知事がほめて、一般に建築に理解を持つてもらう、やがてはこれが全国建築コンクールになり、建設大臣賞も出してもらうというような行政が今まで行われていない。また都市計画の回におきましては、日本の都市計画はまだ至らぬ点がたくさんあります。建築行政には、未開拓の面がたくさんある。たとえば、耐火建築促進法、これが一つの助成行政であります。建築士法も、今までは一つ一つの建物を対象にしておりましたが、全国五万の建築技価者の協力を得て、日本の建築の質をよくして行くというような法律も、終戦後知事の協賛を得まして——建築士伝は議員提出の法律でございますが、とにかくそれらの建築士の費用は県で見てくれる。それで県におきましても、末端行政横浜市へ移管されまして、あと今まで手をつけるべくしてつけられなかつた仕事をやつておるわけであります。従つて、今まで十分でなかつた部面に、若干の人員なり経費を要するということは当然のことであります。別に不経済でもなんでもないわけであります。直接横浜市に関係ございませんので、省略いたしますが、要するに大多数の府県は、普通の場合には私は以上のような観点から建築行政のうちの、ごく一部分、そのうちでも一番末端行政を、能力と熱意のある市町村、特に大都市に移管されるということについては、もう議論の余地はないと思うわけであります。  しかしながら、それではなぜ現在こういう問題が起つて法律改正案まで議論されておるかということを申し上げますと、これは私の考えますところでは、特別市制問題が起りまして以来の県と市の間か——これは私から申し上げるのも失礼でございますが、必ずしも円満に行つていない。最近では県議会あるいは市の議会までが、この問題に異常な関心を持つておるのであります。従いまして、本来なれば神奈川県、横浜市のように、順調に協議がととのいましてすぐ解決する問題が、解決しない、こういう点が真相ではないかと思うわけであります。そこで、その場合にこういう法律が出ますということは——これは今議題になつておりますところの法律案は、一つの問題解決の方法ではあると思います。しかしながら、はたして最善の方法であるかどうかということについて、私は疑念を寺つて治るわけであります。特市問題は、ことに重要な問題であります。私の専門でもございませんから、これについての意見は申し上げるべき筋合いのものではございませんが、私の聞いておるところによりますと、地方自治庁長官から、制度調査会あてに、最近四つの事項が諮問されておる。府県の統合問題とか、大きな問題は、とても一年や二年では結論が出ません。そこでとりあえず明年度の法律案なり、予算案なりに、目下問題になつておるところの四つの項目だけについて八月一ぱい中に調査会から御回答をいただくような意味の諮問が、地方自治庁長官から調査会へも行つているように聞いております。その四つの項目の中に、財政問題だとか、大都市の問題とかいろいろございますが、事務の再配分の問題が一つつているようであります。おそらくはこの四つの項目については、八月一ぱいには結論が出ると思います。出ましたなれば、これはお話がありましたように、浴場だとか旅館だとかの許可の問題というような末端行政は、大都市には事務配分されるというような結論になることを私は信じ、かつこれを期待しておるものであります。そういたしますと、その時期をまつてからでもおそくないではないかという気がいたしておるわけであります。今その時期に至らんとしておる際、しかも非常に大府県と大都市とが感情的に対立しておるときに、こういう法律結論をお出しになろうとすることは、少し今時期が適当でないではないかという感じを持つわけであります。もうしばらくお待ちいただきまして、地方行政調査会が今月中に結論が出ると思います。あるいは反対結論が出るかもしれませんが、もう建築の方は府県でやつた方がいいという結論が出るかもしれません。どういう結論が出るかしれませんが、そうでなくて末端行政はだんだん大都市に移譲して行くというような調査会からの報告がございまして、政府がそれに伴いまして、たとえば公衆浴場法とか、あるいは旅館業法改正も準備する、そういうようなときに一貫してこれをお考えになる。そういうような調査会、あるいは政府の結論が出まして、なおかつまだ大府県と大都市とが対立の状態にあるということになりますと、これはまことに遺憾でございますが、そういうときには、こういうような収善の策ではありませんが、一方的な通知によつてつて行くというような法律が適当になる場合があるかもしれません。しかしながら、現在はまだその時期ではない、もう一月か二月結論をお待ち願つたらいかがかというのが私の考えであります。  以上をもつて私の公述を終ります。
  14. 久野忠治

  15. 杉村章三郎

    ○杉村参考人 実際に当つておられる皆さんから御意見が、ございましたので、私の申すことは、もはやないのでありますが、ただ私は、両方の立場にとらわれずに、建築基準法の元とつた精神、また地方自治の本旨というような点から一応お話してみたいと思います。  建築行政は、長い間市街地建築物法におきまして、国の機関たる府県知事を中心として運営されて参つたのでありますが、昭和二十五念建築基準法が制定せられまして、そこに地方自治の要求というものも、この法律ではかなり入れられたものと見られるわけであります。すなわち、建築行政を国の行政とする点におきましては、従来と違わないのでありますけれども、その事務の執行につきまして、地方団体に委任するところが非常に多くなつております。国は主として建築行政についての基準を定める、この立法的基準が非常にこまかくなつておりまして、また一定の監督というようなものを認めておるのでありますけれども、大体地方団体に委任するところが多いのであります。ことに、府県に対してのみでなく、市町村に対してもその委任を行つておる点、さらに建築主事という特殊な技術機関を置きまして、これに建築行政に関する重要な権限を与え、建築主事を置く市町村について特殊な地位を認めたものであります。この点につきましては、当時の政府当局者といいますか、立案者の提案理由というものが、かなりよく当時の事情を説明しておるかと思います。  それによりますと、建築物がこの法律の定める最低基準に適合することを確保する手続については、従来のような都道府県知事の認可制度を廃止いたしまして、建築物の質をこの法規の基準に適合させる法律上の責任は、原則として当該建築物の設置者または工事執行者であるということを前箋として、建築行政に関する点については、専門的な知識経験を有する市町村または都道府県建築主事の確認を受ければ足りることとし、かつ処理機関を法定して事務処理の責任を明らかにし、また手続の簡易迅速化をはかることにした、こういうように言つております。ですから、一方においてこの法律立法趣旨のうちには、当時から非常にやかましく言われておりました戦災都市の復興に欠くことのできない建築行政を迅速に処理するがために、手続を簡素化すり、またそれと同時に、その事務をなるべく国民に身近かな団体の権能としようとする、そういう地方自治の精神が、この法律立法精神に存するということは否定することができないと思うのであります。前の手続を簡素化するという点から、建築について、いわば実質上の認可権、許可権にもひとしいところの確認の権利を建築主事に与えて、そうして建築主事だけで通常の事務を処理することができるようにしたことであります。それからあとの、地方自治の進展ということについては、この法律第四条におきまして、広く一般市町村にも建築主事を置き得ることとしたという点に現われているかと思うのであります。しかし建築行政というものは、元来技術的に高度の行政であるということがいえるわけでありまして、市町村建築主事を置く場合には、知事協議をしなければならない、こういう第四条を置いたというふうに考えられるわけであります。それで昭和二十六年の地方行政調査委員会議の勧告では、さらにこの事務を国の事務としないで、市の事務にする。ことにまた都市計画の執行をする町村の事務にするというようなところまで行つているわけであります。現行法はそうなつておりませんが、そういう見地から、建築行政の実質的責任というものが市町村におろされるというような態勢が整つたわけであります。すでに先ほどからお話のように、横浜市を初めといたしまして、九つの都市が建築主事を設けているわけであります。しかし、いろいろな関係から、他の都市では知事との間の協議がととのわないために、法の趣旨が実現せられておらないわけでありまして、ことに横浜を除く四大都市というものは、行財政能力が非常にすぐれている都市であるにかかわらず、府県から建築行政権限の委譲を受けておらないということは、この法律の趣旨から申しまして、奇妙な現象といわなければならないと思うのであります。そういう点からこの改正法が、建築行政を担当する能力が十分あると認められる人口三十万以上の市について、知事との事前の協議なくして建築主事を置き得るとして、そうして建築行政の円満な実行を確保しようとしておる。この改正法のねらいとするところは、これはおそらく建築基準法の本来の趣旨を貫いているものではないかというように思われるのであります。  しかし実際問題といたしましては、いろいろ県側の方あるいは都市の方々からの意見があるわけでありますし、また反対理由とし掲げられておるところにおきましても、実際的には、たとえば建築行政費が非常にふえる、あるいはその統一的な運用に支障を生ずるおそれがある、あるいは都市計画法に基く建築の許認可権が知事にあるという関係から、一元的な処理がはばまれるというような点でありますとか、そういつたようなことがいろいろあるでありましようが、これらは実際的な見地でありまして、いわばこの改正法が絶対的に不適当であるという理由にはなりそうもないのであります。現に法律自身も、知事との協議がととのえば、町村にまで建築主事を置き得ると現行法はなつておるのであります。また現在におきましても、町村ではありませんけれども県庁所在地でもないところの人口四万ないし六万というような都市に建築主事が置かれているような実情もあるわけでありまして、従いまして、この改正法が絶対に不適当であるということは、法律上の見地からはいえないのではないかというふうに考えるわけであります。  この改正に対する反対というものは、先ほどもどなたかがおつしやいましたように、その本体においては、主として府県と大都市との間のわだかまり、あるいはトラブルというものに、おそらく根を持つのではないかというふうに考えられるわけでありまして、この点から、おそらく府県の性格というものもやはり問題になつて来るであろうと思うのであります。府県というものは、市町村の連合体的な性格を持つておるものでありまして市町村のなし得ない広域行政、あるいは市町村行政に非常に欠陥があるという場合のいわゆる補完行政というものを任務とすべきものであるというふうに、私どもがこの間までやつておりましたある研究会では結論を持つておるわけであります。だから府県市町村というものは、そういうふうに対立すべきものではなく、それぞれの任務を持つて協力すべきものであるというふうに考えられるわけであります。そこで市町村のなし得ること、あるいはなすことを希望する事務については、府県もなるべく雅量をもつて協議に応ずるというようなことにしたならば、円滑に事柄は運ぶのではないかというふうに考えておる次第であります。これは非常に実際的な見地の問題でありまして、法律家として私の言うべきことではないかもしれませんが、全体としましては、そう絶対的に不適当なものではないということを一応申し上げておく次第であります。
  16. 久野忠治

    久野委員長 以上にて、参考人各位の御意見開陳は終りました。  引続き参考人に対して質疑を行います。質疑の申入れがあります。よつてこれを許します。内海安吉君。
  17. 内海安吉

    内海委員 大体本日お集まりの参考人諸君は、建築基準法の単独立法にあたつて、これが起草あるいは審議等に際して、それぞれ責任を持つてこの国会意見を提出せられた人々であつて、なかんずく伊藤大阪建築局長、さらに吉田大阪建築部長、内藤横浜建築局長、この方々は、ことごとくわれわれが建設常任委員会においてこの議員立法をするにあたつて、提案者であり責任者として、われわれ議論を闘わした人々であります。しかるに、ただいまそれぞれの市なりあるいは府県なりの立場からの御意見を承つてみますと、最も簡明率直にここにその意見開陳せられたのが愛知県の建築部長濱島さんでありますが、われわれがこの法案を取扱うというよりも、この委員会において審議を始めました原因というものは、決して一方的な人々の依頼によつてやつたものではございません。これは濱島さんにおいて根本的な誤つたるお考えだと思います。これは衆議院の議員立法として、われわれ委員の仲間において、与野党全体を通じて、しかも、十五名の提案者をもつてこの案を出したのでございますから、決して一方的にこれをどうでも無理に通さなければならぬというような狭量な考えは持つておりません。それでこそ今日皆様をお招きいたしまして、御多忙のところ皆さんの御意見のあるところを承つておるのでありまして、まことに文字通りの慎重審議を重ねてこの法律改正しようと考えておるのでありますから、参考人の二、三の方々からも、一方的という言葉がありますが、われわれは、大阪市のためにとか、あるいは横浜のためにとかいうような考えは毛頭持つておりません。常に立法は八千四百万の民族の繁栄のためにやらなければならぬという気持においてはかわりはありません。  そこでまず横島さんに伺いたいのですが、濱島さんの御説明の中にしばしは言われておるお言葉がある。それはもしこの改正法案なるものが成立してこれを実行するということになつたならば、この法律は他の目的のために利用せられて、どうも収拾のつかぬような結果になるであろうというようなお言葉を述べられておる。第二の問題は、この法律を実施することによつて非常な弊害ができると言うが、われわれは弊害を予想してこういう法律をつくろうとは思つておりません。またこういう法律が他の目的のために利用せられるというようなことは毛頭考えておりません。この点については、われわれはまつたく聞捨てならぬお言葉であります。この二点について、ただいまの簡明率直なる御説明と同様な、はつきりしたるお言葉をこの際承つておきたいと思います。
  18. 濱島敏雄

    濱島参考人 ただいまの内海委員のお話の二点について、私からお答え申し上げます。  第一に、一方的という言葉をたびたび使いましたが、私が一方的と申しましたのは、この委員会における審議が一方的であるという意味では毛頭ございませんで、従来は協議によつて相互的に移管されておつたものが、法案が通れば、市長通告によつて一方的に移管されるという意味で、一方的という言葉をたびたび使いましたので、皆さんの御審議が一方的であるという意味では全然使つておりません。もしそういうふうに聞えましたならば、私の言い方が非常に悪かつたと思いますから、御了解を願いたいと思います。  それから他の目的に利用される、あるいはいろいろ好ましくない弊害が出て来るということを申し上げたのですが、私どもとしては、そういう心配をしておるわけでございます。先ほど横浜市の建築局長さんからお話がちよつとありましたのですが、大都市と府県の間には、現在いろいろ複雑な経緯がございまして、いろいろめんどうなことになつておるようでございます。その一番めんどうになつておる渦中において、この問題が非常に強力に市側から持ち出されるということになると、そういうふうに考える向きも相当多いようであります。現に横浜の局長さんから、特市問題のしこりがここに影響しておるのだというお言葉があつたようでありますが、そういつたことについて、事実そうであるかないかを、私は断言できませんけれども、他の目的のために、たとえば特市問題の一つの突破口として、あるいは橋頭堡としてこれをされるというような意思がもしありとすれば、利用され得ることにもなろうと思います。おそらくないと思いますが、利用しようとすれば、そういうこともできるのではないか。それが現在の協議移管であれば、そういうことはあり得ない。それからまたいろいろ弊害が出て来るという点については、私どもはさように考えておりません。第一回の発言のとき申し述べました通り、法規の統一的な運用であるとか、あるいは経費の節減の見地から、あるいはまた人の処理の問題、いろいろ移管をしてみても、いいことばかりはない、弊害の面も相当にあるのではないかということを申し上げた次第でございます。
  19. 内海安吉

    内海委員 まだ満足はできませんけれども、これ以上また具体的にということは、こういう会合でははなはだ非常識にわたつて参りますから、この程度にいたしておきます。  次に、伊東大阪建築局長に承りたい。われわれは建築基準法の制定にあたりまして、やはり都市計画見地からいいましても、あるいは水道行政の面からいつても、あるいは道路計画の面からいいましても、この問題はひとり建築基準法そのものでもつて切り離して論ずべき問題じやない。私もやはり終戦後において地方自治法の改正の立案につきましては、参画した一人でありますが、地方自治の問題は、都道府県ということよりも、市町村に重きを置いて立案されたことは、よく御存じのことと存じます。ただいま杉村先生からもいろいろ法律的根拠について御説明もありましたが、中央の集権を、あるいは都道府県の集権制度を拡大して、なるべく市町村にこの権限を委譲するということが、現在における地方自治法の目的であります。それを目的として立案されておつたこの地方自治法を生かしてこれを運用するという面からいつても、当然こういつた問題は地方自治法のうちに包含させて、市をして行わしめることが適当であるという言葉は、かつて建設委員会においても、いろいろな点からこの法案立法するときに議論があつたのであります。ちようどお二人がそのときにおいて政府委員としてここに来られて、そうしてこの法律立法されたのは、まつたくまだ耳新しいのでありますが、特にこれが立法にあたつて、東京は別でありますけれども大阪であるとか福岡であるとか、神戸、名古屋あるいは横浜というような市に対しては、あらかじめ行わんとする目的のもとに立法されたのであつたか、それとも今後時の至るを待つて改正してやろうという考えであつたか、この機会に参考になりますから、そのときお考えになりましたところのあなたの腹を割つた御説明を願いたいと存じます。
  20. 伊東五郎

    ○伊東参考人 立法当時のこの問題の考え方についてのお尋ねでございますが、私個人といたしましては、今大阪市におりますので、ちよつと申しにくいのでありますが、その当時の質疑応答、説明などの表面に現われておりますものを基礎に申しますと、先ほども申しましたように、提案理由の説明において、能力のある市はなるべくそれにやらすことを建前とするということを言つておりまして、能力のある市とはどうかというと、今問題になつております五市、そういうようなところはどうかということになります。その当時はつきりどの市ということは申しておりませんが、申すまでもなく五市はその範疇に入るものと考えておりました。なお、その上に三十万以上の市というのはまだありますが、能力のある市というのはどの辺かということについては、はつきりしませんで、実際の運用にまかす、提案者としての政府の考え方はそうであつたのであります。最近特に、横浜市を除く四市について問題になつておりますが、この市については、立法当初からこれにやらすのが当然だということで、——そういうようにはつきりは申しておりませんで、別な表現を用いておりますが、そういう趣旨でこの法律ができておるものと考えております。またその後法律ができまして後に、衆参両院でいろいろ問題になりましたときも、私はかわりましたが、大臣なり政府委員なりの答弁は、まつたく同じ方針でお答えになつておるように思つております。
  21. 内海安吉

    内海委員 この改正法案審議にあたりまして、実はまことに簡単にスムーズに行くことであると考えておつたのでありますが、今や愛知県においては名古屋市と愛知県、大阪においては大阪府と大阪市、横浜は、これは例外でありましてよろしいということでありますが、そういつたようなトラブルを起す前に、何とか地元において——東京の国会のまん中で県の当局と市の当局とが口角あわを飛ばして争うというようなことは、われわれは地方自治のほんとうの精神から見ましても、そんなことはあまり芳ばしいことではないと考えられます。まず大体この法案は時期尚早という議論に傾いておるようじありますが、会期もあと五日間しかないのでありますから、その間においてゆつくりひざを交えて何とかしようじやないかというようなお考えが起らぬものでございましようか、もう一ぺんこの法律の生みの親である伊東さんに承りたいと思います。
  22. 伊東五郎

    ○伊東参考人 私も今内海さんからお話のありました通り、こういう問題で中央まで御迷惑をかけるということは、心苦しいことです。また私は個人的に府側の方とも非常に懇意な友だちなんでありまして、情としてはまことに忍びないのでありますが、私も立法に多少関係いたしました者として、や依りどこまでも二の基準法ができましん当初の精神は貫かなければならぬ。これは私情を離れまして、公の立場かつは、今もつてこの基準法に多少の責任と申しますか、そういうものを感じておるわけでありますが、できるならば話合いでもつて何とかいたしたいということは重々考えるのでございます。先ほどほかの参考人からもお話がありました通り、とかくこれが建築基準法そのもののことから逸脱いたしまして、ほかの行政配分の問題なんかとも何か関連して考えられまして、そういうことから、われわれが率直に申し上げることが、なかなか率直に県側にくみとつていただけないということなんでございます。これが制定されましてから三年になりますが、ほとんど三年近くも話合いをいたしておりまして、どうしても地方的には解決しないということが、非常にはつきりしております。これ以上押し問答いたしまして、むしろ同僚でありました方々と感旧問題なんか入つて参りますと、まことに残念でございますので、これは法の不備があると考えますから、先ほど申し上げましたように、国会で法の不備を何らかの形で是正をしていただきたい。必ずしも私は、今御提案になつておりますものだけが解決の方法じやないと思います。これは申し上げませんが、いろいろと対案はあると思います。また国会の方から政府の所管大臣なり、そちらの方で解決されるというような形式でもいいじやないかと思いますが、いずれにいたしましても、地元同士の話合いという策は、もう万策尽きておりますので、今後とも地元でもつていたずらにトラブルを起すということは、私どもといたしましては好ましくないと考えております。
  23. 内海安吉

    内海委員 最後に、それではトラブルを防くことができないというようなね考えでもありましようが、杉村さんは、法理的理論より発して地方自治の精神に参つて、さらにこの改正案が通るということは決して悪いことじやない、地方全体の希望としては、これを貫くということはまことによろしい。要するにこれは運営のいかんにあるのであるから、市町村と都道府県との間において将来こういつたトラブルを起さぬように進めたらいいじやないかという、救いの手が出ておるようでありますが、私もこの杉村さんのお説には賛成であります。できるならば、トラブルを防ぐことができないということではなく、最後までこういつた問題は、地方自治の運営の上からいつても、互いに譲るべきところは譲り、また主張すべきところは主張する、そうして府県と市との間における運営がもつと円滑に進まなかつたならば、ひとり建築基準法のみではなく、今後においてあらゆる財政面においてもしかり、公安の面においてもしかり、みなことごとくこういつた情勢であるならば、むしろ大阪市をつぶすか、大阪府をつぶすか、一つをつぶして、東京都のごとき都制でも行つたらいいじやないかということを御勧告申し上げます。私はその意味におきまして、最後の杉村先生の、トラブルを何とか収めて進めたらどうかという穏健妥当なるお言葉を拝借しまして、私よりも関係当局の方に勧告を申し上げて、私の質問を終ります。
  24. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 私は別に質問をするのじやありません。この改正案の提案代表者でありますから、皆様にお聞きするよりも、私の方が詳しいのでありますから、聞かない。ただ、今内海委員からも御質問がありましたが、何か特別都市の問題に関連があるように考えておられる。これはおつしやるまでもなく、私はそれをそんたくいたしておるのでありますが、そういうことは全然ないということを、ここに明らかにいたしておきます。第七国会で現行の建築基準法が提案され、われわれが審議いたしたのでありますが、そのときに第四条で、市町村建築主事を置くことができる、しかもそのときには県知事協議をしなければならない。ただこれだけの規定になつておりますので、これは余談になりますが、先ほどセクシヨナリズムじやないとか、あるいは権限争いじやないというような口吻を漏らされましたが、私から率直に言わせると、まさにこれは権限争いであります。今の日本の現状において、協議をしなければならないということで簡単にこの問題は解決しないということを、そのとき痛烈に質問いたした。それは速記録をごらんになれげすぐにわかりますが、そういうことで、地方自治の確立をする一面としての建築行政ができるかどうかということを、ここにおられるその当時の伊南局長、それからはかの大臣にも質問かいたした。その当時何と言われたかというと、これは政府と申しますか、最高の監督機関である建設大臣が適当に指導してこの法律目的を達成するのだ、こういうお答えであります。その際私は、そういうことはとうていできないと思つておりましたが、そういう提案者の意見であるから、それではしばらくそれによつてつてくださいということで、その場は修正もしないて収まつたのであります。ところが三年有余になる現在において、先ほど杉村教授が言われた、地方自治というものは、できるだけ地方の住民の力によつて解決するというのは当然であります。ただ、できない、もしくはそれが不適当である、いわゆる広域行政にわたるものである、こういうものは府県がやるべきものである。府県は多くの地方自治体の連絡調整の機関であります。それをうまく円滑に連絡調整して、できないところをさらに府県の広域行政をやる。これが建前であるにかかわらず、市町村でできることを、何か財産でもとられるような考えで、盛んにトラブルをやつておられる。今日までこの建築基準法が満足に行われておりませんから、その当時に問題にたつておるところを改正しようというわけであります。先ほど伊東局長かお話になりましたが、そういうことがなぜ円満に話合いがつかないかということを内海君も言われ、また杉村教授もちよつと触れられたのでありますが、それができないから、この基準法の目的を達成するために法律の不備を補つて、そうしてこの法律の趣旨を徹底させようというだけのことでございます。これはお尋ぬするわけじやありませんか、さつきの杉村教授のお話をよく聞いておかれて、そういうふうな考えで、これは何も役人さんの仕事でなくて、究構のところは住民の問題てありますから、よくひとつお考えなされんことを希望いたしておきます。あなた方が法律の不備をいいことにして無視されるから、これを解決しようという立法府としての当然の仕事であるということを、ここに申し上げておきます。
  25. 久野忠治

    久野委員長 逢澤寛君。
  26. 逢澤寛

    ○逢澤委員 時間も相当たつておりますから、私は率直簡明にお尋ぬいたします。まず伊東さんにお尋ねいたしますが、あなたの公述の中に、市がやることによつて市民に便利になるというお話があつたのであります。まずどういう点が、都道府県がやるより市がやることに特定の便和があるか。
  27. 伊東五郎

    ○伊東参考人 先ほど申しましたように、建築基準法確認事務というのは、基準法にきめられていることに合つているかどうかという、ごく末端的な仕事でございまして、合つているかどうかということを見て、なるべく早く、複雑でなく簡単にその書類の処理などをいたしますことが、これが市民の最も便利になるわけであろうと思います。現在消防法によりまして、建築基準法で確認を要するものは、みな消防長の同意がいるのです。そうしますと、府県の方の確認とそれから消防長の同意、こういうことが必要になつて参ります。これはなるべく簡単に行けるようにやつてはおられますが、しかしこれが市に移りますと、消防建築部局というものは同じ市の中でありますから、これは一緒にしてやつてよいと思います。当時に両方を兼務してもよし、一ぺんにやることもできると思います。そんなことで、非常に簡便に仕事ができるようになると思います。  それから市は、御承知の通り末端的な行政をいろいろやつております。こまかい末端の道路とか、下水とか、あるいは区画整理とかいうようなものは、みな市がやつているわけです。それと関連していろいろまた不法建築ども最近非常に多いのであります。道路を計画しているところに、いきなり無断でもつて家をつくつてしまうとかいうような事例が非常に多くて困つているのであります。これは府県にお願いしてやれぬことはないのでありますが、何と申しましても、市としては、あるいは再会としましても、自分の市と町のことでありますから、最も熱心にやるというようなことから、情として、府県よりは直接の末端の自治体であるところの市が最も関心を持ち、熱心にやるはずだと思いますが、現在そういうことが、大阪あたりでは市会で相当問題になつております。そういうことから不法建築も簡単に取締れる。あるいは危険建築物どもかなり多いのであります修繕をしないでほつたらかしておくというような建築物が非常に多い。これはまた住宅問題なんかかち見ましても、非常に大問題でありますが、これを何とか処理しよう、危険だからこれを立ちのかすとか、使用禁止を命ずるとか、補修を命ずるというようなことがいろいろ起きて参りますが、これは府県知事に対してそういうことをやつてもらいたいということ申し出るよりしかたがないのであります。これが市に移りましたならば、そういう命令を出すと同時に、さらに費用も市が負担して、その損害の費用なども出してやるというようなことも同時にできるのでありますが、現在そういうことがなかなかやりにくいような状態になつております。根本的の地方自治の精神のことは、先ほどいろいろお話がありましたから申し上げませんが、実際に市民の便利ということから申しますと、逆の御説明もありましたが、それよりは市民のために便利な点が非常に多いと私は確信しております。
  28. 逢澤寛

    ○逢澤委員 ただいま御指摘になりましたような消防、下水、道路、不法建築物などの遂行に対して、都道府県がやつた場合より、市に移管された場合の方がそれらの点が便利になるということは一応了承しますが、しかし、そういう事実が県におきましてもありますでしようか、その点をまずお尋ねしておきたい。  それからいま一つは、先ほど来しばしば問題になつております、おそらくこれらが中心の問題になつて、こういうことが起きたのだと思うのでありますが、この建築基準法も、特定の技術者が大部分である。従つてもしこれが移管された場合にも、特定人だから、それほど失業問題は起らないという御意見がありましたけれども、しかし県の方では相当失業者が起るというようなことを今ここで述べられて、おります。あなたの、特定八だから失業は起らぬという理由をもう少し詳しく承りたい。
  29. 伊東五郎

    ○伊東参考人 建築主事という新しい制度がこの基準法によつて設けられたのでありますが、これは建築技術者でなければいけないのでございます。しかも建築行政についての経験なり知識なりを持つておるということが必要でありまして、建設大臣が県建築主事を試験をしてきめるということになつております。だから、現在やつておる人はその資格を持つておるわけでありまして、その人はほとんど現在都道府県職員をしておるわけでございます。市にも若干おります。大阪市あたりは資格を持つておる者が若干おりますが、ほかの市ではほとんどいない。でありますから、これを市が移管を受けましてやろうという場合は、どうしても建築主事が必要でありますから、その人はさしあたりその府」と市の関係から見まして、名古屋市ならば愛知県の人をいただくということになるわけであります。そうしなければ円満な執行はできない。でありますから、それは絶無とは申しませんが、大体において今県でやつておる人は市がとるのじやないか。これは各市ともそのつもりで、協議を進めますときには、人もいただきたいということは申し出てやつておるわけでございます。法律でかちつきまれば、そんなことは協議はいらないのだから、もうお前の方の人はいらぬということは、常識上としてないと思いますし、実際問題としてそういう資格のある人がいるのでありますから、心配はないと思います。横浜の方もおられますが、神奈川県から横浜市の方に移つた場合にも、そういう失業問題は起きないのではないかと思います。ただ恩給の問題で、国の人が市に移る場合あるいは府県の人が市に移る場合に、恩給が継続しないのであります。これが問題でございますが、そういう事例は、国から移る場合は非常に少いのであります。現在、国の恩給を将来もらえるという人が市に移るというケースは、非常に少いのでありまして、府県から市に移るというケースはかなり多いと思います。これは恩給の関係で動きにくい人があるのでありますが、実際問題としては、そういう関係の人は府県にとどまつてもらつて、そうでない人が市に移る、こういうことがいいのではないかと思います。
  30. 逢澤寛

    ○逢澤委員 ただいまあなたの陳述に、なるたけ早い機会にこれは移管した方がいいというようなお話があつたのであります。また他の参考人の方々の御意見の中にも二、三あつたように思いますが、地方制度調査会の答申が間近に迫つておる。この秋ごろまでにはその答申もあるだろう、こういうような御意見もあつたのでありますが、あなたは、その答申後にこの処理についての決定をしたのではおそいというお考えでありましようか、その点について御意見を伺います。
  31. 伊東五郎

    ○伊東参考人 私は地方制度調査会結論をまつてやつたのではおそいとは申し上げていないのでございます。国会としましてその点をお考えになつておやりになることであれば、別に私どもは何ということもございませんが、ただこの問題は、地方の府県市間の協議だけでは、大都市に関する限り解決は非常に困難な実情でありますので、一日も早くこの問題を法律的に是正をしていただきたい。法律の欠陥と申しますか、現行法のもとにおきましては、建設省としても有権的な解決裁定ができないような法律の建前になつておりまして、府県側の一方的なイエス、ノーできまることになつております。これでは私どもとしては承服できないのでありまして、いつまでもトラブルが続くわけでありますので、一日も早く改正をお願いしたいというわけであります。地方制度調査会の答申をどうとかいうことは、申し上げておるわけではございません。
  32. 逢澤寛

    ○逢澤委員 地方自治の発展の上からいつても、なるたけこうした事務は市にまかせた方がいいと、私どもは考えるのですが、しかし、まかすとすれば、先ほど杉村さんからも御指摘になつたと思うのですが、建築主事を置いておるところに対しては、なるべくその市の権限に委譲してやりたい。この点については私ども同感なんでございますが、これは提案者の方できめたことで、あなた方の方には関係のないことであると思います。しかしながら、あなた方の陳述の中にも、大都市、特に大きいところというような言葉がしばしばあつたと思います。かりに三十万以上の都市にこれを限定するということなどを考えると、大都市はやはりそういう機能が充実しておる。たとえていえばそういうふうに考える。小さいところはそうした機能と施設が売笑していないから、これは別の問題だ、こういうことになると、ちよつと理論的にはおかしく聞える。三十万の都市には委譲してもいい、それ以下の都市にはこれは別の考えだということに対しては、少し理論的にその考え方の判断に苦しむような点が起るように思えるのでございます。特にあなた方のような大都市の方から考えた場合に、われわれの方はこれを必要があるぞ、三十万以下の都市に対してはその必要がないんだという理論について、あなたはその道の権威なんでありますが、ひとつその理論について拝聴さしていただきたいと思います。
  33. 伊東五郎

    ○伊東参考人 これは私どもはもう大阪市で大都市関係でありますから、大都市の実情から見て、その脂力もあり希望もありますので、移管ができるような措置をお願いしたいということなんでありますが、この立法当初の政府の考え方も、三十万とかなんとかということは言つておりません、その市に能力のある限り市にやらせるというのが根本の方針だということを言つております。大体その能力があるかないかということは、やはり人口などをものさしにして考えるのが普通のやり方でありまして、どの辺が線になるか、三十万か五十万か、その辺は別としまして、ある程度以上の市、こういうことになるんじやないかと思います。ただそれ以下の市でありましても、法律は町村まで入れておりますが、そこに希望があり、そうして協議がととのつた場合、こういうときには移管ができることになつております。それはその協議に際して、何か都道府県側の十分な指導援助を受けることもできるようになつておりますので、そういうことを前提にしまして、府県側から有能な人を送るとか、あるいは実際の運営について助言をするとかなんとかいうようなことがありますれば、小さい市でも支障なく行われるのじやないかと思います。この現行法並びに改正法案によりましても、その他の小さな市に移管することを全然拒んでおるわけではございませんので、実情によつてはやり得る。ただ大きな能力のある市が一方的な通知移管ができるんだ、こういうことだと思いますので、大都市の問題を特に大きく取上げられておるんじやないかと思います。
  34. 久野忠治

  35. 堀川恭平

    堀川委員 私も一つだけ簡単にちよつとお聞くしたいと思います。  実際今お聞きしましたところによりますと、この建築基準法を立案され、そうしてその当時の説明員か政府委員かをして、あらゆる観点からここで、この法案を説明せられたり何かしておられた人が二、三人おられる、こういうことであるのでありますが、一体役人というものはいろいろ法律をつくられて、そうして終りまで責任を持つかというと、そうじやない。その重点なり責任は、いつも国会にあとでやつかいにかかるというような法律案が相当ある。そこで今回のこの件におきましても、伊東さんと吉田さんが反対の立場におつたときには、おそらく反対のいろいろな御理由をここで申し述べられるものと私は思うのであります。今大阪市におられ、あるいは大阪府におられるから、そういう市に対するあらゆる理論あるいは府県に対する理論等を言われておるのだと私は想像するのであります。かような意味から行きますと、この立案をされたときに、あるいは十五万とか十万とか、そういう市にやつてもいいのだというだけじやなしに、はつきりした案をつくつていないというのはあなた方の責任だと思います。こういう意味から行きまして、今現に府県とあらゆる論争をしておられる、そうしていつまでたつても切りがないから、何とか結論をつけてくれ、こういうことが重点だと私は思うのてあります。そこで、またそれを法律論によつて法律づけ、法律によつてそれを決定することが是か非かということになりますと、いわゆるここの国会にけつを持つて来たということになるのでありますが、私はただ一点だけ皆さんにお聞きしたいのは、ここに県の側の人が二人、市の側の人が二人おられるのであります。横浜市の方は別でありますが、ほかの三人のお方に私は一言だけお聞きしたい点は、皆様方が今まで府県市側とがあらゆる方法によつてお話合いなさつたが、どうも結論がつかない。そこで皆様方は、法律によらず、白紙で本省あるいは建設大臣に委任して、そうしてそれに裁決してもらつて不服がないというような御自信があるかないか、その点をお聞きしたいと思います。
  36. 濱島敏雄

    濱島参考人 ただいま建設大臣に白紙委任して解決してもらつて異存ないかという御質問でありますが、建設大臣はもちろん建設行政の中心をなされる方でありますから、その裁決にはもちろん公正な結果が期待できるとは思いますけれども、さいぜんから申し上げましたように、これは一建築部長の考えできまる問題じやございません。まかすかどうかという返事をせよということでございましたならば、私としては県議会あるいは上司の方面と相談をいたしませんと、ちよつと御返事が申し上げかねるような実情でございます。
  37. 堀川恭平

    堀川委員 あなた個人として御意思があるかないか。きようは参考人として来られておるのですから……。
  38. 濱島敏雄

    濱島参考人 私個人としては、確かに一つの方法だと存じます。しかしいろいろ府県の機構も大きな組織を持つて動いておりますので、そういうふうに白紙一任できるというふうに意向がとりまとめられるかどうかということについては、ちよつと自信がございません。
  39. 伊東五郎

    ○伊東参考人 私も大阪市の側からどうかと言われますと、ちよつと責任あるお答えはできませんが、参考人として私個人の考えとしては、けつこうでございます。ただ現行法におきましては、建設大臣に強い裁定権はないと思いますので、これはそういう法律改正がありまして、それに基いておやりになるということならはけつこうと思います。現行法に基きましては、先ほどから申しましたように、建設省としましても、大都市は問題ないのだ、能力があるのだから移してもよろしいという、非公式と申しますか、勧告をされておるわけでありまして、それでは解決しないのでありますから、現行法ではいけないと申しますが、そういう法律的な根拠ができましたならば、そうおやりになることも別に異存はございません。
  40. 吉田安三郎

    ○吉田参考人 お尋ねがございましたので、私からも申し上げます。私先ほど、公式の席上でございますから、簡明直截に申し上げましたので、速記録に載つていない事柄がたくさんございますが、それと同様の意味合いで、また簡明直截に申し上げます。  元来こういう協議といいますのは、できるだけひざを交えて根気よくやるのが、最もいい協議だと思うのであります。われわれも協議をやつておるひまがあるわけではございませんで、日常の業務をやりながら時に応じて協議をして行く。ところが大阪府におきましても、いろいろ多事多難な事柄もございます。そういうようなことで、またしばらく話が途切れるというようなことであつたわけであります。ただいま堀川委員から御発言のありました御趣旨は、私個人としては十分了承いたしております。そういう意味合いで建設大臣がほんとうに、何といいますか、端的に申し上げれば、同じく建築基準法をやつておる仲間といえば仲間でありますから、そういう相手の立場も十分理解をして、法の制定された雰囲気から何から十分知つておられる方々がひざを交えて、しかも先ほど申し上げましたように、今地方自治の大道がき史らんとする事柄を十分考慮に入れられまして、そうして法律によらないで、ひざを交えてやろうという場合には、われわれは虚心坦懐に応すべきであるし、また府県知事意見も皆さん方のお手元に出してあるようでありますから、そういう条項をここでやるという条件一考えておやりになるということが白紙といいますか、桃色といいますか、そういう地方行政制度の方向を見てやるというようなことなら、私は責任を持つては申せませんが、その方も納得するでしようし、私も自分がこれは是と信ずることであるならば、上司にも言い、係に説明するにもやぶさかではありません。そういう心境でございます。
  41. 久野忠治

    久野委員長 只野君。
  42. 只野直三郎

    ○只野委員 大分時間が経過しておりますから、簡潔に、最初に愛知県の濱島さん、二番目に伊東さん、最後に杉村先生にお尋ねしたいと思います。  濱島さんの今度の法案に対する反対理由としてあげられた、一方的通告でなされる結果、軽卒なる移管が行われるかもしれぬ、また立法の形式上、一方的通告で下紙であるはずの市が、上紙官庁と相談したいできめてもいいということは不当であるという御意見ですが、これは私ももつともだと思うのです。その点においては、私どもも了承できますが、ただ私お尋ねしたいのは、今日の民主政治の本体が、地方分権を徹底するということでありまするならば、大阪市のように、あるいは名古屋とか、神戸とかという大都市になつてくれば、当然に自分の手で自分のことは処理できるようになつて来ておる。そういうように、地方の都市が、あまり府県の世証にならずに、自分でやつて行けるようになつて来たことに対しても、府県側としては、それに対する自治権の拡張を認めないのか、どういう腹でおられるのかということを、まずお聞きしたい。
  43. 濱島敏雄

    濱島参考人 それでは第二番目の点について私の私見を申し上げます。民主政治の本質は地方分権にあり、私もこの点についてはお説の通りだと思います。私どもがかつて皆様のところへ提出しました陳情書にも、民主政治下においては、地方分権が原則てあるという理論山な根拠には反対しない、その通りであるけれども、それは一つの抽象的な理論であつて、近く決定する地方制度調査会意見とにらみ合せて、その理想を生かしてほしいということが結論であつたわけでございまするが、その御理論は、私もごもつともだと存じます。ただ私どもがしいて申し上げたいことは、そういう理想的な理論と同時に、損得の面を一つ考えて行かなくてはならないのじやないかという見地から、先ほど来この法律が通つて移管が大いに促進された場合に、プラスの面もマイナスの面もいろいろあろうと存じますが、われわれの考えで、たとえば経済的にマイナスになりはせぬか、あるいは事務的にマイナスになりはせぬかという点をるる申し上げた次第てございます。ただいまの民主政治の御議論には、私もまつたく同感であります。
  44. 只野直三郎

    ○只野委員 それではもう一点、それに関連して伊東さんにお尋ねいたします。結局豊本原則の地方分権の精神を了解し、それを希望するということであれば、今度の法案の欠点がどこにあるかということになるわけですが、一体それでは一方的な通告にならないような方法、それからその結果そこに弊害が起つて来ないか、その弊害が除去される方士が確立されるならば、そういう問題に対して、府県側としてはそれに賛成できるかどうかということです。
  45. 濱島敏雄

    濱島参考人 ただいま御発言がありましたように、私どもがいろいろ反対的な意見を申し上げる一番大きな原因は、お説のように、一方的通知によつて移管の効力を発生するという点でございます。この点がもし改められたならという仮定のものとに、どう考えるかというお尋ねてございます。もしこの点が改められるなれば、私が先ほど約十項目円にわたりました意見のうちの、半数近いものが理由を失うことになると思います。その他の問題につきましては、時期的な問題、あるいは財政問題とかいろいろな点を申し上げたわけでありますが、時期的にいろいろ情勢が刻々かわる、時代でもありますし、財政状態も十た時間の推移に従つてかわつて行きますから、根本的な困難は取除かれるものと存じます。
  46. 只野直三郎

    ○只野委員 実はまだ法案審議中なので、決定したものではありませんから、私見になるのですが、たとえば府県という上級官庁が市から無視されないようにするためには、今までの方法で協議して行く場合がいいか、しからずんば協議がととのわない場合は、さらに上級官庁の裁定を受けるか、その裁定によつて決定に服従して行くか——先ほどの堀川委員の質問と同じことになるのでありますが、その場合に裁定の条件ですね。裁定する場合、やはり一定の条件というものを設けよう。たとえば府県の人員微理がされる場合に、それを声の方に移管する場合にはどういうふうにするかとか、その他経済上、財政上の措置なんかを、各般にわたつて十分に納得行くような裁定条件というものをきめて、そうして建設大臣の裁定を受ける。それがよしとなればよし、いけないとなつたら現状のまま、こういうふうな最終決定権というもの建設大臣に持たせて、建設大臣が各種の条件によつて府県側を納得させ、市側を納得させるというようなことであつたら、あなたはどう思いますか。これは代表者として言えないとしても、個人としてどう思いますか。
  47. 濱島敏雄

    濱島参考人 ただいま一応協議をして、ととのはない場合には、上級官庁である建設大臣の裁定に持つて行くのをどう思うかというお尋ねでございますが、確かに市長通知によつて移管の効力を生ずるという案よりも、私ども要望には近い御提案だと思います。ただその裁定につきまして、ただいま両方を納得させるというお言葉がございましたが、そういう両方の納得する裁定が下されれば、何も申し上げることはございませんが、どうもお言葉の中にも、人はどうする、その他の条件はこうするというたように、委譲を前提としたような裁定であると、そういうお腹ぐみであると、私は今すぐに御賛成申し上げかねる点がございます。現行法協議によつて移管するという規定が最も普通であり、また物事を円満に運ぶゆえんであろうと存じます。なるほど協議がととのう、あるいは双方とも満足する結論が得られるについて、多少時間がかかるという難点はございますけれども、私といたしましては、現行法の規定でさしつかえないではないか、何もこの際、県の非常な反対を押し切つてまで法律改正をなさる必要はないじやないか存とずる次第でございます。
  48. 只野直三郎

    ○只野委員 今の浜島さんの御説明でよくわかりまましたが、私の言うのは、地方分権という基本の線に立つて、できるだけ地方移譲をして行く。そうすると、府県側として、市なら市側に委譲できる条件がそろつたら委譲するという腹が全然ないものと仮定すれば、この問題は結局対立のままで——ということは、大きな都市で盛んにそれを委譲してくれという要求のあることは厳たる事実です。その厳たる事実を全然無視して、府県は萎れないという前提に立つて議論を進めるとなれば、解決する道はない。そうすれば国家は法律をもつてそれを決定して行く。そうなるだろうと思うのですが、それで大体了承いたしました。  そこで大阪市の伊東さんにお尋ねしたいのですが、これは先ほどからしばしげ言われておりまして、お尋ねするのも蛇足のようになりますが、大阪市その他の大きな都市に、特別市制というものの政治的意図を持つて、現実に基準法や何かも、全部市の方に譲つてくれというような政治的意思が万一にもあれは、これは今日の地方行政の秩序を乱す非常な危険が伴うものだ。先ほど浜島さんがおつしやつたように、下剋上的な政治状態が生れて来る可能性がある。そういうようなことに対して、絶対にないというこを確信できるかどうか、それを伊束さんにお尋ねいたします。
  49. 伊東五郎

    ○伊東参考人 少くとも私は、大阪に入る前から建築業法に関係しておりますが、その当時から私としましては、考えはかわつておらぬのでございまして、特別市の問題と全然関連したものとは考えていないということを申し上げたいと思います。
  50. 只野直三郎

    ○只野委員 杉村先生にお尋ねいたしますが、今度の法安が出て来た原文を見ますと、先ほど浜島さんの言つたような欠点があるように、私にも考えられます。それで、こういうように、たとえば県側の方ではこれは絶対に譲れない、市側の方ではどうしても要求して来る、それで協議がととのわなければだめだ、こうなつておる。それを今度は三十万以上の都市は、協議にかかわらず一方的に通告すればこの法案が実行できるということになれば、これは明らに府と市のけんかなんです。府と市のけんかになる。こういうけんかになるような法律をつくということは、私としてはとても忍びないことであつて、やはりけんかさせないような法律をつくらなければならぬ。そうすれば、そこにけんかさせないようなもう一つの安全弁を用意する必要があると思いますが、その点について御意見をちよつと承りたい。
  51. 杉村章三郎

    ○杉村参考人 それはどうも私の能力の範囲外の問題でありまして、そういう解決の方法はつきませんが、私は建築基準法というものの精神から申しまして、市町村に置くことができるということから——しかし、それは能力あつても置けないという、協議がととのわないという場合の決定につて立法的措置を講ずるというならば、それはこの精神に別に反することではないのじやないかということを申したわけでありまして、どうもその点、両方の争を裁判的に月決しないで法律で解決した、そういうようにも見ておるわけですが、解決するようになるのじやないかということを見ておるわけなんです。時期の問題で、今がいいか、もう少しあとの方がいいか、それは別ですが、立法趣旨としてはそういうところにあるのではないか、こういうように思つているわけなんです。
  52. 只野直三郎

    ○只野委員 どうもありがとうございました。
  53. 久野忠治

    久野委員長 本法案に対する審議は、本日はこの程度とし、次会は公報をもつてお知らせすることにいたします。  本日はこれにて散会をいたします。     午後一時十八分散会