○
石井(由)
政府委員 まことにごもつともなお話でありまして、私
どもも内部的にはそういう努力を従来も重ねて参
つたのであります。ただここで申し上げておきたいと思いますことは、この四千七百万ドルの対
米債権の法律的性質と経済的な基礎であります。経済的な背景と申しますか、これについての考察をして見なければならぬと思うのであります。
債権の発生原因は申すまでもなく明らかに商取引に基くものでありまして、法律的には
援助と何ら
関係がないのであります。しかしながら経済的にこれを見ますと、それはいまだも
つて日本国民の税負担で支弁されたものではないのであります。と申しますことは、昨日来申し上げておりますように、四百十億円の繰入れをて、
一般会計に御迷惑をかけましたけれ
ども、四百八十三億円を繰りもとしているのでございます。
貿易特別会計はそれだけではありません。なおただいま
木内委員長から申し上げましたように、外為
特別会計に対しまして約二億ドルに上る外貨を原始的に、すなわち無償で引継いでいるのであります。でありますから経済的に見ますと、この
債権の根拠になる
円払いというものは、
日本国民の税負担で行われたかといえば、そこまで行
つておらないのであります。でありますから、換言すれば、米国からの
援助物資を
国内に放出いたしまして、その
代金で調達したものを
朝鮮に送
つてや
つたことで生じたものと経済的に見れば言えないことはないのであります。そこでわれわれはもつぱらこの
債権の法律的性質に着目いたしまして、それを根拠といたして
関係の資料を整備して、アメリカ側にこれを認めさせたのであります。もちろん
司令部内部におきましても経済的に見れば、これは
日本の腹の痛んだ
債権ではないということを、財政を担当している係官などは言
つてお
つたのであります。そうでありましよう。たとえばリード氏あたりをと
つてみれば、お前らは
一般会計から幾ら出してもら
つた、四百十億だろう、それはすべて返せるじやないか、というような主張もあ
つたのであります。しかしこの
関係を知
つております人々は割に少か
つたのであります。私
どもは、そういう経済的なバツクはとにもかくにもあれ、法律的にはわれわれの品物をエキスポートしたものの代価であるから、これを払えという形で、今
吉田先生のおつしやられるように、経済的に見ると、この
商品代を分析すれば、アメリカからの
援助物資を放出して、それで買
つたものを送
つたその
代金ではないかというような点も、いろいろあげつらわれるわけではございますけれ
ども、そういうものは抜きにいたしまして、とにもかくにもわれわれは
輸出したのである、これに対するしつかりした証明がある、これを認めようという
態度で一貫いたしまして、この
債権をアメリカ側に確認さしたのであります。従いまして、今回の論議におきまして、一昨日
予算委員会において申し上げましたように、四百十億円の繰入れと四百八十三億円の繰りもどし、こういう
関係からいたしまして、この
債権を構成するベースはどこにあ
つたかということ、経済的な負担者はだれであ
つたかということは、
国会で明らかにな
つたのであります。こういうことが明らかにされますことは、もちろんこの対
米債権の交渉に何らエフエクトを及ぼさないかもしれません。しかしエフエクトを及ぼすかもしれません。われわれ
政府委員として申し上げますことは、まことに失礼ではありますけれ
ども、
総理が外交は簡単でないとおつしやいましたことは、この辺の配慮もあ
つたことかとお察し申し上げておる次第であります。そこで先ほど
木内君から、この
債権につきましては、あまり確定したものでないというお話がございました。また昨日河野先生からの御
質問で、行きがけに担当官が署名して来ただけのものであるというお話もあ
つたわけであります。正確には速記によ
つて調べねばわかりませんけれ
ども、そういうようなお話がありますので、私は直接
関係がございますか、ございませんかわかりませんが、一九四九年三月二十九日に発効いたしました金融財政処理に関する米韓基本条約の第二条の存在することを、この際特に申し上げておきたいと思うのであります。これは米国
政府は一九四五年九月七日から本条約発効の目までの間において、
日本から
朝鮮に
輸出された代価から同期間中
朝鮮から
日本に
輸出された代価を差引きたる残額を決済すべきことを約す、こう書いてあるのであります。従いまして、一九四九年三月当時というのは、ただいま古田先生からおつしやいました、いわばはなはだ不明確な整理の行われました最終期でございます。この当時すでに米国務省におきましても、この
債権の額はともあれ、その存在は知
つてお
つたわけでありまして、われわれといたしましては、その認めておる
債権の
内容を明らかにした、このように考えておる次第でございます。