○小林(進)
委員 私は社会党を代表いたしまして、ただいまの独禁法
改正案に反対
意見を申し述べんとするものであります。
資本主義の最大の悪は、まず第一に資本による搾取と、それから第二は、
企業の独占の二つに尽きると思うのであります。独占
禁止法はこの二つの資本の悪の中の
企業の独占を排除して、資本主義
経済と自由主義の根幹をなす自由競争を守り抜こうとするところに立法の
趣旨があると信ずるのであります。われわれ社会主義計画
経済を基本方針とする社会主義政党が、自由競争の原理に立
つて資本主義を守り抜こうとする独禁法をこの際支持いたしまして、これが改正について反対するという
理由は、一見矛盾いたしているようでありますが、その
理由を申し述べてわれわれの反対器の第一にせんとするものであります。
本来、資本主義は
産業革命と相ま
つて世界の領土が無限であり、世界の富が無尽蔵であるという前提のもとにのみ成立するのであ
つて、事実この前提のもとに資本主義は異常の発達を遂げて来たのであります。しかしこの錯覚も、やがて世界の領土も世界の冨も有限であるということがわか
つたとき、資本主義原理の自由競争が至るところに競合をし、衝突をするに至
つたのであります。国際的に見てアジア諸国における先進資本主義国家の争いのごときそのよき前例でありまして、第一次世界大戦といい、第二次世界大戦といい、その勃発の原因が一体どこにあ
つたかといえば、これすなわち未開発アジアにおける資本主義の競争の結末でありました。この資本主義の行き詰まりが、すなわち
カルテルとなり、あるいはトラストとなり、ダンピングと
なつて、アジアに
市場を求めた。しかもトラスト、ダンピングの力及ばざるその終局は、すなわち軍の力を背景にして
市場獲得に
行つた。資本主義の手先に遂に軍の力を用い、その結果戦争の勃発を見たのでありまして、
カルテルを認めることは、これすなわち戦争への道を開く第一歩であるということを、われわれは深く認識しなければならぬと思うのであります。こうして自由競争が行き詰ま
つて来るときに、資本主義が必ず打つ手が二つあるのであります。
その第一は何かといえば、これすなわち国家に保護を要求するということである。軍閥に保護を要求するという、その手であります。第二は迎合いたしまして、自衛態勢をつくり上げて、みずからの防衛に任ずるということでありまして、現代の資本主義国家における
政治の基本政策は、いかにして資本家を擁護するかということに重点が置かれております。資本家もまた
政治に保護を求める段階を越えて、今わが
日本の現状は、まさに資本家が政府をつくり、
政治を動かして、資本主義の擁護と利潤の追求に猛進しているのが実情でありまして、真の意味の自由競争は、今はま
つたく失われております。この上に彼らがさらに自衛手段を強化して、資本家同士の競争を自制し、休戦し、
企業の独占と価格、製品の協定等によ
つて、永久にその利潤を獲得せんとするがごときは、まさに二重の悪をほしいままにすることになるのであります。従
つてこの資本主義の悪を排除するということは、今日わが社会党に課せられたる重大な使命でありまして、民主主義的排除の手段として、今世界に行われている二つの方法を申し上げたいと思うのであります。
その
一つの独占排除の方法は、これすなわち、英国労働党が一九四五年以降政権をとるに至りまするや、石炭を初め、
銀行、鉄鋼、伊力、鉄道、ガス、航空、放送等の各
産業部門が、ことごとく国有化されたのでありまするが、この国有化の
理由として、特に鉄鋼業につき、
私的独占が支配しているために、独占資本は国民全体の
利益を無視して、もつぱら独占利潤を追求し、高能率の最新式一貫
工場の設立と運営を妨害する等、またより安い価格で供給する競争者を排除し、
産業の基礎資材である鉄鋼の高価格を需要者及び消費者に強制した、こういう
理由を主張いたしまして、これらの主要な公益的
産業に対しては、すなわち国有化または社会化の方策によ
つて、
私的独占を公的独占となし、
私的独占と資本の搾取の二つの悪を一挙に解決いたしたのでありまして、わが社会党といたしましては、容易に
カルテル化しやすい少数大
企業の重要
産業に対しては、現法規の持つ独占
禁止程度ではいまだ満足しないのであります。願わくは公正なる取引、すなわち自由競争を守るという
立場にあらずして、
企業の社会化という、ま
つたく別個の
立場から、われわれはあくまで公的独占を主張するのが、正当なる真の
理由であるということを申し述べたいのであります。
第二の独占防止方策というのが、これすなわち現在アメリカにおいて行われているアメリカ的考え方でありまして、アメリカはシャーマン法一八九〇年、クレイトン法一九一四年等の制定をまつ前よりコモンローとして、すでに反トラスト法は存在していたのでありますが、その基本的な考え方はあくまで資本主義の
立場に立
つて、公正かつ自由な競争秩序の確立こそは、
経済倫理の最高標準であると確信しておるかのごとくであります。その理念の上に立
つて、すなわち今日共産主義の暴力革命に対抗し得るものは、労働者の団結と
団体交渉を認める寛容な労働政策と、一方資本主義の独占化と硬直化を防ぎ、自由競争の
経済原理に基く資本主義
経済政策以外はないというアメリカ的な確信を持
つて、古くは一九三三年ニュー・デイール政策の一環として、全国
産業復興法を制定して、反トラスト法の適用を停止したことに対して、国会、いわゆるグロー
委員会でございますが、この
委員会で、政府によ
つて支持された独占であると攻撃され、そうして一九三五年には違憲の判決をや
つて、そうしてこの反トラスト法を無効にいたしておるのであります。
なお近来としては、去る五〇年十二月にはクレイトン法の七条が修正強化され、また独占
禁止の法制の違反者に対する制裁規定の強化、
会社間の株式所有
関係の規則等についての審議が行われており、輸出組合法、ウイッブポメリン法が再販売価格維持について非契約者拘束制度を認容するマツクギヤー法等の再検討を叫び、昨年八月二十四日、上院の小
企業委員会が国際的な石油
カルテルに関する連邦取引
委員会の秘密報告を公表して世論の批判を求め、これに並行して相互安全保障局、すなわち本国会で論議せられているMSAでありますが、このMSAが、この石油
カルテルによ
つて米国の海外援助資金が不当に利得されたとして、五大米石油
会社を相手として、損害賠償の請求を起しているがごときは、わが資本家代表の国
会議員も十分御考慮あ
つてしかるべしと思うのであります。以上のごとき動向によ
つて、われわれはアメリカ的
禁止政策の考え方を知ることができるのでありますが、わが社会党といたしましては、このアメリカ的な
立場ではなく、あくまでも英国的な
立場に立
つて、計画
経済の
立場から独禁法それ自体にも反対する基本態度から、当面するこの
法律の改正に断固反対するものであります。
次に私は、
改正法案の内容それ自体について反対の
理由を一、二申し述べたいと思うのであります。この改正法の内容とするところは、すなわち条件をつけて、ある特定の場合における
カルテルを認容せんとするのでありますが、私はこの
カルテルの認容は、いかなる条件があろうとも、
カルテルを認めること自体、すでに独禁法の完全なる精神を失
つて骨抜きにしたものであると論ぜざるを得ないのでありまして、まず第一にこの
改正法案が
カルテルの中に正当、不当の区別をつけようとするがごときが、そもそも誤りであるということを申し上げたいのであります。
不況、合理化、貿易、いずれの
カルテルを問わず、
カルテルの本質は独占価格と独占利潤の維持にほかならぬのでありまして、これを容認することは、独禁法をま
つたく骨抜きにするものであるということを私は申し上げたいのであります。
なお第二として、
カルテルが独占形態の
一つである。その
カルテルの持
つている絶対的
経済力を濫用しないという保証は一体どこにありますか、どこにもないのでありまして、消費者は結局高い品物を押しつけられ、購買力を収奪される以外に、これに対抗をして自己防衛をする手段は
一つもないのでありまして、もしこの
カルテルに対して消費者が自己防衛する手段の
一つもあ
つたならば、私はお聞かせ願いたいと思うのであります。断じてこれはない。濫用を防止する方法は
一つもないのであります。
なお第三の問題として、
カルテル成立の条件としては、取扱う商品の種類が単純で、数が少いこと、それから加盟
企業がそろ
つて大きいということ、かつその
企業家の数が比較的少いということが、
カルテル成立の絶対条件でありまするから、
カルテルはすなわち大
企業の支配する
産業部門にのみ結成される財閥特有のものであ
つて、
中小企業の支配する
産業部門では、
カルテルの結成は事実上ま
つたく不可能であります。すなわち
カルテルは大
企業のみの独占であります。
第四として私は申し上げたい。
カルテルによる
市場安定の操作、これは断じて最終の安定とはならない。特に自由党諸君に申し上げたい。今は資本家を擁護し、資本家におべつかを使う方法としてまさに
カルテルをも
つて市場を安定せんとしておるのでありまするが、
カルテルをも
つて市場の安定を操作せんとすることは、断じて不可能だということを私は申し上げたいのであります。終局においては自由競争による景気変動以上に
恐慌を激化することは、ムースの著わすところの
カルテルの景気運動という著書に明らかに解明せられている
通りでありまして、最初
中小企業者、農民、消費者の犠牲の院に財閥の安定を得る
カルテルも、終局に至
つては財閥自体がさらに
不況のために大きな衝撃を受けるのが
カルテルの本質でありまして、決して終局には
カルテルが財閥の擁護にならないということを、私は御
承知願いたいと思うのであります。
なお第五として申し上げたいことは、このたびの独禁法の改正に対し、賛否の階層が整然とわかれているという事実であります。すなわち賛成者は
生産部門に携わるほんの少数者の大
企業家及びこれの
関係者であります。反対者は労働者、農民、
一般消費者、それに学者陣営にわかれておるのでありまして、
一つの
法律に対し、これほど賛否の階層が明確に区分せられた
法律は、ま
つたく私は珍しいと思うのでありまして、これがいかに一部大
企業家にのみ
利益をもたらす改正法であるかは、これによ
つても十分御
推察願えると思うのであります。
なお第六として、今日
日本の
経済が
カルテルを必要とするまで追い込まれて来たということをかりに認めるとしても、その原因が一体どこにあ
つたかといえば、もつぱら政府の自由放任の
経済政策と、これに便乗した
財界人の特需と政府の保護政策のみに依存せんとした、いわば無計画なる
経済の結果にほかならぬのでありまして、政府と
経済界みずからの不手ぎわに基く跡始末を、われわれ
一般勤労者、労働者、
中小企業者、消費者にしわ寄せしてこれを打開せんとするがごときは、まさに盗人たけだけしい
法律の改正であるといわなければならないのであります。これを打開する道は、おそまきながらも、わが党の主張する計画
経済をおいてほかにないということを申し上げたいのであります。
なお私は、トラストに対する厳格な予防規定の緩和に対するこの
法律の改正に対しても、反対をするものでありまして、元来反トラスト思想のもとにおいては、結合による
経済力の集中は、
企業の正常な発展とは認められないとする根本的な思想によ
つてでき上
つておるのでありますが、
改正案は、持株
会社の
禁止を除いては、ほとんどトラスト予防規定としての実を失わしめておるのであります。すなわち株式保有の制限緩和により、実質的にはほかの
会社の株式保有を手段として
私的独占を可能にいたしております。
役員兼任の制限緩和に至
つては、事実上役員兼任を野放しにするがごとくに改悪せられていることは、今村成和教授の指摘している
通りでありまして、私は再びこれを繰返す冗言を省略いたしまするが、以上の点において、これはわれわれのとうてい認容しあたわざるどころであります。
なお申し上げたいことは、
カルテル認可制に対する問題であります。運営の問題でありまするが、
改正案においては、
カルテルの認可権を主務
大臣に与えるということに
なつておりましたが、あいまいふかしぎな改進党のぬえ的なる妥協案によ
つて、これを主務
大臣に協議するとあり、実に
法律的にふかしぎな
言葉をも
つて成立いたしたのでありますが、これは実質上主務
大臣の認可と五十歩百歩であ
つて、何ら実質上の差異なきものと観じておるのであります。
不況カルテル、合理化
カルテルを通じ、主務
大臣は
公正取引委員会の認可をするときに協議に参加するということ、これはまさにこの
法律の改正においても、最も大きな私
どもの反対しなければならない要点であることを申し上げたいのでありまして、ここに至るまでには、
通産省と
公取委員会との間にはげしい
意見の対立があ
つたことも、周知の事実であります。
通産大臣は
経済主管
大臣として認可権を持つのは当然であると、この
委員会でも答弁をせられておるのでありまするが、
経済認定と
法律認定とはしばしばその見解を異にすることがあるのでありまして、これは過去においてもしかり、将来においても、しばしばそういう場合を予想しなければならぬのでありまして、こういう問題に対し、
公取委員長の明確なる回答が今日に至るまでなか
つたことは、私の最も遺憾とするところであります。
独禁法はこの際、あくまでそのときどきの
経済的現象に左右されず、厳格なる
法律の解釈によ
つて認定して行くということに至厳なる態度を持つところに、この独禁法の真の意義があるのでありまして、ここに
通産大臣の介入を許して、時々
経済界の変動に即応するがごとき
法律の解釈が行われるというがごときは、これまた独禁法を有名無実にする以外の何ものでもないということを申し上げなければならぬのであります。
従来より
通産省は財閥保護育成の官庁であります。
日本における自由主義の
経済政策推進の本部であることは、私が申し上げるまでもなく、ここにおられる
通産省出身の先輩同僚各位が親しく御存じの
通りであります。おのずからその罪悪を繰返して来たことは、同僚先輩諸君を前にしてあえてこれを確言してはばからないのでありまするが、この財閥擁護の
通産省の所管
大臣に、認可権に匹敵する協議権を与えるということは、まさに財閥の手代に認可権を与えたと同じ結果になることを、私は申し上げたいのであります。化学肥料、砂糖、綿糸等、
通産省の介入による価格輸入割当、
生産割当等は、いずれも独禁法違反の疑いの顕著なるものでありまするが、
公正取引委員会は、その事実を知りつつも、断固たる審決を下し得ずして今日に至
つていることは、私の最も悲しみとするところであります。
操短に至
つては完全なる独禁法違反である。この
操短により、十社は不当なる
利益を獲得した反面、
中小企業者は全国的に
倒産するとともに、
紡績関係労働者は二万名近くも馘首せられている事実に対し、
公正取引委員会は、遂にわれわれの期待する処置を施し得ずして今日に至
つておるのであります。政府は、この財閥の要求により、過去の違反事実を実績として、今まさに
法律的に制度化せんとするとともに、さらに一歩を進んで、
公正取引委員会をもま
つたく弱体化せんとしておるのであります。
通産省は諸官庁を通じて最も汚職の多い役所であります。国民の信頼より見て、
カルテルの認可、不許可というがごとき、最も利権のとりまとう業務を取扱わしむることは、さらに危険であるといわなければならぬのでありまして、認可権はあくまでも
公正取引委員会一本にしておくべきであ
つて、いかなる形においても、
通産省の介入は危険この上なしという断定のもとに、われわれはあくまでも反対をしなければならぬのであります。
なお再販売価格維持契約の点についても、二言触れたいと思うのであります。第二十四条において、再販売価格維持契約を認めておるのであります。医薬品
公正取引協議会等よりこれが実現を要望されておりまするが、直接
一般消費者の利害に
関係する問題であり、今日この制度を導入しなければならぬ
理由が明確でない点より見て、われわれはとうてい賛意を表するわけには行かぬのであります。特に社会主義的
経済の
立場からは、その独占はあくまでも社会的、公的独占のみ許さるべきであ
つて、その他は一切これを認めることが、理論上にも矛盾しているということを、われわれは申し上げなければならぬのであります。米国においては、マックギヤー法において厳格な条件のものに、従来再販売価格維持が許されていたが、今日非契約者拘束制度について再検討が続けられ、
禁止の
方向に進みつつあるということも私は申し上げておきたいのであります。
なお私は世界の
情勢から見て、独禁法に反対をいたしたいと思うのでありまするが、今日の世界の
情勢は、共産主義国家は別として、独禁法を制定することは、
一つの常識と
なつておるのでありまして、独禁法的考え方の本家でありまするアメリカは別としても、イギリス、カナダ等の英連邦諸国や、スイス、スエーデン、オランダ等にも
カルテル取締法があり、フランスとベルギーは今新たに
法案を立案中であります。西独は現に
カルテル禁止の占領法規があるのみならず、独自の競争制限防止
法案が国会に上程されんといたしておるのでありまして、まさに世界の趨勢は、独禁法の存在するところは、さらにこれを強化せんとする趨勢であり、独禁法のない文明諸国においては、早急にこれをつくり上げんといたしておるのが世界の趨勢であるにもかかわらず、ひとり
日本の国会は、この世界の趨勢に相反して、今までの独禁法を緩和し、あるいは無にせんとするがごとき逆コースヘと進みつつあるのでありまして、まさに世界の趨勢に反逆する
反動的行為であるとわれわれは論じなければならないのであります。今日欧州各国の直面する問題は、
カルテル取締法をもう持つか持たぬかという点ではないのでありまして、
カルテル原則的に
禁止する
法律としてこれを持つか、あるいは濫用防止法としてこれを認めるかという点にわかれておるのであります。特にわが国においては、申し上げるまでもなく、独禁法は終戦後の革新的立法の
一つであ
つて、平和条約によ
つて承認せられた
法律であり、これを忠実に施行することは、わが国の国際的義務と
なつておるのであります。われわれはこの際、わずかの景気変動によ
つてこれを改正緩和することが、
日本の国際的信用にも相当重大な影響を及ぼすことをあわせて考慮しなければならぬのであります。われわれは以上の諸
情勢から見て、独禁法はあくまで成立当初の厳格な
カルテル禁止法であるべきであるというところの原則論に立ちまして、わが国独自の
経済政策を加味した
経済立法として進むことが正しいことを確信するものでありまして、今後の
日本の
経済は、
日本工
業界が安くていいものをつくり出すという単純な結論以外に自立の方法がないことを私はここで極言いたしたいのでありまして、安易な
カルテルなんかの方法で逃避し、政府の保護と独占によ
つて、消費大衆を搾取し、その犠牲の上に少数者の安定をはからんとするがごときは、断じてわが
経済の進むべき道でないということを申し上げたいのでありまして、この意味においてもわれわれは反対をいたしたいのであります。
なお最後に一言申し述べておきたいことは、
公取委員会の従来のあり方であります。わが党は
公取委員会が至厳なる独禁法の番人として、その存在を認めるにやぶさかではないのでありますが、従来独禁法が成立して以来、
公取委員会の歩み方を見ておると、ことごとくわれわれの期待に反しておるということを私は率直に申し上げなければならないのであります。あるいは独禁法を発動いたしまして、床屋組合に疑義があるとかあるいはふろ屋のふろ銭に独禁法違反の疑義があるとか、そういう
方面にのみ至厳なる活動を発揮せられておりますが、もちろんわれわれはその発動を不可とするものではございません。否認するものではございません。大いに調査、審決をお願いいたしたいのでありますが、しかし、それに先んじて、ほんとうに独禁法の精神から見るならば、財閥の
企業の独占にこそ秋霜烈日なるところの活動を
行つてもらわなければならないにもかかわらず、そうしたねらうべき敵に対しましては実に動作は緩慢でありまして、あるいは知るがごとく知らざるがごとき態度を持続しておることは、われわれの最も悲しむところであります。どうかこの
法律の改正に際しましては、
公取委員会においても十分反省せられまして、改正せられたこの悪法に対し、至厳なる運用の妙を発揮して従来の改正前の
法律にまさる至厳なる発動運営をいたされんことを切望いたしまして、私の反対
意見にかえる次第であります。(拍手)