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1953-07-08 第16回国会 衆議院 経済安定委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月八日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 佐伯 宗義君    理事 小笠 公韶君 理事 加藤 宗平君    理事 武田信之助君 理事 栗田 英男君    理事 阿部 五郎君 理事 菊川 忠雄君       秋山 利恭君    迫水 久常君       神戸  眞君    楠美 省吾君       飛鳥田一雄君    石村 英雄君       小林  進君    中村 時雄君       山本 勝市君  出席政府委員         公正取引委員会         委員      湯地謹爾郎君         通商産業政務次         官       古池 信三君         通商産業事務官         (企業局次長) 小室 恒夫君  委員外出席者         参  考  人         (大阪連会         長)      中山 太一君         参  考  人         (日本労働組合         総評議会調査委         員)      高島喜久男君         専  門  員 圓地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇四  号)     —————————————
  2. 栗田英男

    栗田委員長代理 これより会議を開きます。  本日午前は、私が委員長の職務を行います。  この際お諮りいたしますが、先般通商産業委員会より、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について、連合審査会開会の申しいれがありましたが、連合審査会開会するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗田英男

    栗田委員長代理 それではそのように決定いたします。  なお、他の委員会よりも申入れがありました場合は、一括してこの委員会とも連合審査会開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 栗田英男

    栗田委員長代理 それではそのようにとりはからうことにいたします。  なお開会の日時は、先般の理事会で決定いたしました通り、明日午前十時といたします。  次に私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。小林進君。
  5. 小林進

    小林(進)委員 公正取引委員長の横田さん、お見えになつていらつしやいませんか。それではけつこうです。他の政府委員にお伺いいたしまするが、本年の二月の二十八日に公正取引委員会審判を開始されて、目下進行中と承つておりますインドパキスタン航路海運同盟事件、この問題についてその後の経過をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  6. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 インドパキスタン航路の問題に関しまする審判経過について概要を申し上げます。  実はインドパキスタン航路につきましては、イギリス系船会社及びアメリカ船会社、それから日本といたしましては郵船、大阪商船等航路同盟をつくりまして、その際に日本船会社であります新日本汽船が、その航路同盟加入をいたしたいということを申出たのでございますが、その航路同盟におきまして、これに対して、加入を許すとか、あるいは許さないとかいう明示の意思表示がなくて、事実上加入ができないという状態にあつたのであります。それによりまして新日本汽船——この航路同盟の結成につきましては、海運事業法によりまして運輸大臣に届出をしておるのであります。そうしてそれの一定行為につきまして、同法律におきまして独占禁止法適用除外をいたしております。その条件の中に、正当な理由がなくしてその参加を拒否するというような協定等につきましては、独禁法適用除外にならないという規定がありますので、新日本汽船といたしましては、この同盟加入を拒否された、しかも正当な理由を示さないで拒否されたという理由をもつて公正取引委員会に提訴をして参つたのであります。それで本年の三月二十八日に公正取引委員会はこれの審判開始決定をいたしまして、現在審判継続中であります。この争点の問題は、先ほど申しました通り、新日本汽船同盟加入を申請したにかかわらず、正当な理由を示さないで入れてくれないということは、適用除外法律の要件の欠けるものであるということで、その点について主として審判が行われておる次第であります。
  7. 小林進

    小林(進)委員 この問題は国際カルテルの問題でありますが、これをお取上げになりました際の被告は一体どこであるかをお聞きしたい。
  8. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 今ここに詳しい資料を持ち合せておりませんが、航路同盟自体と、それに加入しております船会社を被審理人といたしておるわけであります。いずれまた後ほどその資料を差上げてもけつこうだと思います。
  9. 小林進

    小林(進)委員 それではまた後ほど資料をいただきましてから、詳しく御質問をすることといたしまして、ただ大ざつばにお伺いいたしたいことは、この公正取引委員会という日本の制度は、国際カルテル、いわば英米といつたような会社に対しても、審判権を持つものであるか、拘束力を持つものであるか、この解釈をひとつ伺いたいと思います。
  10. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 この問題はやはり相当むずかしい問題でありまして、現在審判継続中におきましても、被審理人の側から、国外に対して拘束力を及ぼすものでないという意味抗弁等が出ておるわけであります。しかしわれわれといたしましては、外国会社といえどもいやしくも日本国内事業活動をしておりまして、それがカルテル等の、日本経済秩序、言いかえれば自由競争秩序を侵害するような、言いかえれば独占禁止法法益対象にしておりますような事態が生じますれば、これに対して審判をし、場合によつて排除処置をすることができるという考えで、審判開始決定をいたした次第であります。
  11. 小林進

    小林(進)委員 こうした国際カルテルに対しましては、今の御説明は、たしかわが日本独占禁止法の基幹をなしているアメリカ法考え方を基準にした御答弁ではないかと思いますが、これに対して、そうした同盟加入を拒否することが許されるくらいの考え方英国固有法は持つているかにわれわれは承つているのでありますが、もし日本公正取引委員会で、それをカルテルとして、その加入を拒否した行為不当行為であつたとした場合に、当然対英国の問題が起きて来るので肝ないか、そういう結果について一体いかようにお考えになつておりますか、承りたい。
  12. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 この問題は、実は審判開始決定をいたします前に、今申されました国際関係の点に相当微秒な占があります。御承知通りイギリス考え方はいわゆるクローズ・コンフアレンスで、ほかのものはむしろ特別な事情がない限りはいいじやないかというのでありますが、アメリカの方は特別な事情がない限りは入れろという、むしろ相反しているような考え方であります。実は日本が位置的にはちようどその中間に位しております関係上、イギリスの船も参りますし、アメリカの船も参ります。ちようどその中間に位しまして、アメリカの方に力を置くか、イギリスの方に力を置くかということで、今後の海運関係等につきまして非常に微妙な関係があります関係上、運輸省並び外務省等とも一応は打合せをいたしたのであります。しかし現在の日本独占禁止法といたしましては、もしその加入拒否が正当な事由がないものであるということであるならば、やはり独占禁止法適用除外にするわけにはいかないという法制になつております関係上、多少その点はあると考えたのでありますが、審判開始決定をすることにいたしたわけでありりす。
  13. 小林進

    小林(進)委員 この法的な解釈に対しましては、学者の間にもいろいろ意見がございますので、これはむしろ別委員会質問すべき性質のものであるかもしれませんけれども、ただ私どもの考えるところでは、かつては七つの海を支配いたしました英国は、英国なりに貿易外収入といいますか、航海の独占権を握つて、落ち行く英国経済を船の力で守り抜こうということで、船に重点を置いた。アメリカはやはり自由経済品物を売るという点に重点を置いて、世界の港を自由に支配しようというので、なるべく英国式の船の独占的航行というようなことを排除して、できるだけ品物を売りたい、こういうことから私は両方解釈が違つて来るのじやないかと思うのでありますが、わが日本としましては、どつちの解釈に立つた方が将来のわが日本にとつて有利であるかということを、もし御所見があれば承つておきたいと思うのであります。
  14. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 この問題は公取の方からお答えすることは非常に不適当だろうと思うので、むしろ運輸省の方から伺つていただきたいと思います。ただこのインドパキスタン関係につきましては、実は対イギリスの全体の関係ということのほかに、戦前からインドとの関係においては、そういう実績から見ても、むしろ日本船中心になつてつた欧州航路になつて来ますと、日本品物の動く分量よりは、ほかのインドあるいは欧州諸国品物の動く分量の方が多いということは言えると思いますが、インドパキスタン関係におきましては、日本輸出品あるいは日本が輸入する品物を運ぶ関係が多いということと、それから戦前主として日本の船がその航路中心になつてつたというような関係もありまして、先ほど申しましたように、多少場合によつては摩擦があるかもしれないが、法律的には一応そういう法制になつております関係上、審判開始をしようということで審判開始決定をしたのであります。
  15. 小林進

    小林(進)委員 加入を申込んで拒否せられたのは、今おつしやつた日本汽船のみでございましようか。
  16. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 実はその後に国際海運もその申入れをいたしたということを承つております。しかし、これは審判開始決定対象にはなつておりません。
  17. 小林進

    小林(進)委員 新日本汽船国際海運だけが加入を申し込んで拒否せられたということは私ども知つておるのでありますが、そのほかにやはり日本でどこか拒否せられたところがあるかどうか。できれば先ほどもおつしやつたように、現在インドパキスタンカイロ同盟加入している船会社はどことどこであつて、しかも被審理人がどこであるかというようなことを詳しくお知らせを願いたい。それによつてまた御質問をいたしたいと思います。本日はこれをもつて質問を留保いたします。
  18. 阿部五郎

    阿部委員 御存じの通りに、今回九州地方、中国、四国、こういう方面で大雨・台風のために農作物が非常な惨害を受けておりますが、この作物の回復のためにはカリ肥料が最も必要なことは申すまでもありませんが、聞くところによりますと、このカリ肥料輸入業者並びに国内製造業者がこのカリ肥料の非常な需要期を目ざして値上りすることを期待するために一致して売り惜しみを行つておるということを聞くのでありますが、これに対して、公正取引委員会におかれてはすでに着眼なさつていられるかどうか。着眼なさつて何らかの御処置をとつておられるかどうか。これをまず承りたいと思います。
  19. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 カリ肥料売り惜しみあるいは出荷制限等協定があるのではないか。それに対して公取が何か対策を講じておるかという御質問でございますが、実はカリ肥料という点を特別に取上げて、いわゆる審判開始決定の前提の意味におきまする調査ということはいたしておりませんが、肥料関係業者の生産あるいは価格等の問題につきまして、公正取引委員会事務局経済部というのがございまして、ここの調査課一般的にそういうふうな傾向については種々注意をいたしておりまして、そういう傾向があるかないかというようなことについては、多少そういう疑いがあるのではないかということで調査はいたしております。しかし御承知通り公正取引委員会でこれをほんとう取締るというような場合に、いわゆる審査部活動をまちまして、平たく申し上げますれば検事のような立場で調査する、いわゆる審査調査を始めるということになつて、そしてその結果審判開始を決定するものはするという形になるのでございます。その審査部調査には至つておりませんが、経済部調査におきましては調査をいたしております。
  20. 阿部五郎

    阿部委員 私は事はなはだ緊急なる九州を主とするあの惨害に対する当面の問題について伺つておるのでありますが、お答えははなはだのんきなことくに印象づけられたのであります。あまり特別に気がつかれておらないとすればいたし方ありませんが、ついては通産省に伺いたい。四月の年度端境における輸入カリ肥料繰越高幾らになつてつたか。並びにその後の毎月の輸入カリ肥料の数量がいかになつておるか。並びに四月の年度以来の価格の騰落の成行きはどうか。さらにその間における荷動きの状況はどうか。これらの点をお答え願いたい。
  21. 古池信三

    古池政府委員 ただいまお尋ねの点は数字に関することでございますから、後刻資料を御提出申し上げたいと存じます。
  22. 阿部五郎

    阿部委員 それでけつこうであります。事ははなはだ急を要するのであつて、ただいまこの雨の多いがために、あの方面数百億円に上る稲作の被害があるのであつて、稲が立ち直るためには、どうしてもカリ成分を主としたる肥料がなければ立ち直りがきかないのであります。これは非常に重大な問題でありますから、お調べは緊急になさつて対策もただちにお立てを願うことを申し上げておきます。
  23. 山本勝市

    山本(勝)委員 昨日質問いたしましたことで、どうもはつきりしないが、しかし私として大切だと思う二、三の点をお伺いしてみたいと思うのです。この法律法益というのは自由競争秩序であるということははつきりしておる。この競争を実質的に制限なる行為というものが、一般的に申しますと、取締り対象になる、こういうわけでありますか。     〔栗田委員長代理退席加藤委員長代理着席
  24. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 その通りであります。
  25. 山本勝市

    山本(勝)委員 そうしますと、競争を実質的に制限する場合には、これは取締り対象になるというのでありますが、独占ということと競争ということは裏表のように——裏表と申しますか、独占というのは、競争のない状態独占考えておられるのかどうか。
  26. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 お話の通り独占という場合は、大体取引において競争がほとんどないという状態意味しております。
  27. 山本勝市

    山本(勝)委員 そうしますと、えらいこまかいことをお尋ね申し上げますが、競争が実質的に制限はされたけれども、しかしまだ競争は残つておる。しかし制限はされている。たとえば数量的に申し上げるのはおかしいのですけれども、そのままおけば十の競争が行われる場合に、程度でいつて五つくらいは制約されておる、しかしあと五つ競争が残つておるというような状況は、これは競争がなくなつたのではない。ですから、それは独占とは見ないのかどうか。競争のある独占というのは、どうも独占の本質に——先ほど申したことから申しますと、競争のない状態独占であるというと、そういう場合が起り得ると思うのです。起り得るというよりは、実際にそういうものだと思う。ですから、独占禁止するというのと、競争を実質的に制限する行為を禁ずるというのとは、必ずしも一致しないと思う。これは当然だと思う。そこで公取の方で実際に事件審判し、処理して行く場合には、まだ独占は大いに残つておるというようなときには、これは取締り対象にしないのか、あるいは幾らかでも競争制限されておるから、こういう行為はいかぬ、こういうふうに審判されるか、ここを伺いたい。
  28. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 先ほど私の申し上げましたのは、多少不正確でありましたので訂正させていただきたいと思いますが、今の独占並びに取引制限という定義が、この法律の中にありまして、御承知通り二条にございます。それでいわゆる私的独占というのは、事実上は、公取解釈といたしましては、ほとんど競争のないような状態、しかも相手方を支配し、競争者を支配し、あるいは競争者事業活動を積極的に排除するだけの力があつて競争を実質的に制限する場合、それから不当な取引制限という場合は特に相手方事業活動を支配したり、あるいは排除したりするという程度に至らないが、お互いに協定してやることによつて、その取引分野におきまする競争を実質的に制限する場合、言いかえますと、独占の場合でも、幾らかは競争余地は残つております。しかし不当な取引制限の場合には、その競争余地が、独占に比べてまだ相当残つております。しかしその不当な取引制限という場合に、業者間の共同行為によりまして、その一定取引分野におきまする競争を実際的に制約するある程度の力を持つておるというような場合に、不当な取引制限になる、こういうふうに解釈いたしております。
  29. 山本勝市

    山本(勝)委員 たとえばカルテルを認めるというような場合には、昨日も申しましたけれども、これが何ほどかの、競争制限する力を持たぬのでは、意味がないです。ですから、それを承認するというときには、これはもう何ほどかは実質的に制限する力を持つということを認めないと、カルテルを認める意味がない。ただその制限がはなはだしきに至つて来る場合だけを取締るというのなら、これはわかりますけれども、実質的に制約するものはいかぬのだということになると、むしろカルテルそのものを認めるということと矛盾しやしないかと思います。
  30. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 本法におきます二十四条の二あるいは三あるいは四の、いわゆる不況カルテルもしくは合理化カルテルを、一定条件のもとに認めるという趣旨は、不当な取引制限になるような場合、これは別の観点からこのカルテルを認める必要があるという意味で、適用除外したのでありまして、初めから実質的な競争制限をしないもの、いわゆる需要者共同行為、あるいはこれをカルテルとも言つていいかと思いますが、一定取引分野競争を、実質的に制限しないようないわゆるカルテルということは、今度の改正法によりましては、別に認可もいらないでやれるということになつておるわけであります。
  31. 山本勝市

    山本(勝)委員 この条文をこまかく読んでおりませんけれども、競争という一つの言葉でそれを実質的に制約するということで、どうもそこに大きな意味を持たしておるようですが、私は競争という中にはいろいろ難があつて、破滅的な競争というものもあると思う。その破滅的競争をやれば共倒れになつてしまうといつたよう競争は、これはむしろ不公正な取引という言葉の中に入れてもいいのではないか。
  32. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 お説の通り、たとえば原価を切つて、いわゆるダンピングをやつて、そうして競争をするというような競争は、この独占禁止法におきましては、いわゆる正常な競争というふうには認めないで、現行法でありますれば公正な競争、この改正法では公正な取引方法という名前にかえましたが、これに該当するものとしてそういう競争を用いるものはいけないというふうにいたしておるわけであります。
  33. 山本勝市

    山本(勝)委員 そういうふうなダンピングという言葉を使いましたが、たとえばコスト切つて売る。実際にはそういう場合はたくさんあります。これを一々ダンピングという言葉で呼ぶことは私は間違いだと思いますが、コスト切つて売るというようなことは、むしろそれが取締り対象になる。コスト切つて互いに競争するというものを制約することが、むしろほんとう競争というものを保護するゆえんだ。私の申し上げる意味がよくわかりにならぬかもしれませんが、私は今のこの法律公正取引委員会の方々が競争制限だと考えておられることの中に、実はほんとう競争確保される場合も競争制限考えておられる場合があるのじないか。それは前にも一度私は申しましたけれども、競争戦争にたとえて申しますと、白兵戦というか、ちやんばらで刀を持つて一騎打ちで切り合うような競争、そういう場合はたくさんあります。しかしそういうものだけを競争というふうに考えると今度は、今日の戦争のように、中隊とか小隊とかいうふうに隊を組んで互いに争うというふうな場合は、これは戦争のうちに入らない。しかし実際は白兵戦戦争であるが、隊伍を組んで戦うのも戦争である。つまり競争というものにいろいろな形がある。ですからカルテルを認めるという場合も、確かに独占利潤をほしいままに持続するというふうなカルテルを禁ずることは、これは競争を侵害するからこれを取締るということでよろしいのですけれども、そうではなしに競争した、つまり白兵戦をやつたのでは、隊伍を組まず、カルテルを結ばないで競争したら、両方ともコストを割つてしまう。コストという中にも、この間も申しましたように、いろいろありますけれども、倒れてしまうのではありませんけれども、いつまでたつて固定資本の回収ができないというふうな場合には、むしろ隊伍を組んで、カルテルを結んで競争をする場合こそほんとう自由競争経済秩序というものがそこに現われて来る。だからそれは好ましくないことではないので、むしろ自由競争秩序を保護するというこの法益から申しますと、そういう競争がなければ、コストを割つて競争してしまうという場合には、カルテルを結ばせることがむしろ私は自由競争の維持するゆえんだ、こういうふうに考えるのですが、言葉は足りませんけれども、御意見はいかがでしようか。
  34. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 今の御質問に当てはまらないかもしれませんが、独占禁止法で正当なる競争秩序を維持するという考え方は、まず競争手段についていわゆる不公正な競争方法を用いてはならぬ。たとえばダンピング差別待遇というように相手をけ落す手段として不公正な手段は用いない。言いかえれば、公正な手段を用いて競争をさせる、そうしてその場合にカルテルと申しますか、個人でやる場合はその競争の結果あるいはある程度事業活動としての制限をするというような場合といえどもこれは許されるわけであります。しかしこれは独占に至りますと、いわゆる独占規定にかかりますが、そこに至らない程度一定取引分野事業活動を実質的に制限する場合でありましても、これは不公正な競争手段をもつてつていない限り許されるわけでありますが、それが他人と共同していわゆるカルテルという方法によりましてやる場合には、独占に至らなくても一定取引分野競争を実質的に制限するというような場合にはこれは独禁法の違法なものとする、こういうような考え方であります。
  35. 山本勝市

    山本(勝)委員 そこに私は非常な問題が起ると思うのです。つまりたとえば価格カルテルを結ばなければ共倒れになるというふうな場合に、カルテルを結んでそれである程度競争制限する。それゆえに独占までには至らない。独占という言葉が非常に重要なことになりますが、私が申しますのは、カルテルを結んでそして価格をある程度に引上げるというか、維持することによつてようやく一般産業平均利潤が得られるという場合は、私は独占とは言えないと思う。独占利潤を得ていないのです。一般平均利潤しか得ていない。しかし競争制限はしております。競争制限をして、そして価格をそこで維持しておる。ですから、競争制限は違法だということと独占利潤禁止するということと、同じことを別の言葉言つたよう考えられたら、そこに食い違いが生じて来ると思う。独占利潤を得ていない独占というようなものは私は考えられない。カルテルを結ばなかつたら普通の利潤も得られない。しかしカルテルを結んだがゆえに普通の利潤が得られるようになつた。しかしそれ以上の独占利潤というものは得ていないのですから、これは独占とは言えないが、しかし競争を実質的に制約しておるということになる。私はただ理論をもてあそんでいるのではなくて、不公正というようなことは先ほど言つたようにまだ実際上常識である程度判断ができましようけれども、しかし競争制限するとか独占化するとかいうようなことは、これはなかなか、一般常識で言えないのですから、やはり何か独占利潤を得た場合には、独占と見るといつたような基準がないと、まつた処置に困るのではないかと思います。
  36. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 正当な競争方法をもつて競争秩序をじやまして、そしてそれが個人としてではなくて、他の業者と共同のカルテルを結んでやる。そしてその場合に仰せの通り、そうでなければいわゆる多面的競争が起つて、その産業自体の存立が危うくなるというような場合、言いかえますれば、二十四条に認めております通り、いわゆる不況カルテルのような要点を備えますれば、これはたとえば第三条の取引制限になるような場合で、これは例外的に認めようという趣旨になるのです。それからいま一点申し上げておきたいのは、いわゆる第三条の取引制限という場合でも、この定義の中に書いておるのでありますが、いわゆる他人と共同して、お互いに協定によりましてカルテルをいたしまして、そして一定の分野の競争を実質的に制限する、そのときにやはり公共の利益に反して一定取引場裡における競争を実質的に制限するという、そこに一つの公共の福祉という基準が出ておるわけであります。これはやはりどうしても今申しました通り、そうやらなければ一定利潤が得られない、あるいは事業経営が困難であるという場合に、これが公共の福祉に反しているかどうか、これは同時に消費者の立場も考えなければなりませんので、公共の利益に反しているかどうかという認定が相当問題になつて参ると思いますが、この二十四条の不況カルテルのような場合には、場合によつては、こういう要件に違背しても、そういう特別の場合には認定を受けることによつてカルテル活動を認める、こういうふうに考えております。
  37. 山本勝市

    山本(勝)委員 昨日も触れましたけれども、実際に事業をやつた場合には、損をしたり、得をしたりということが通常の状態であります。ですから相当長い目で観察されないと、普通以上にもうけておるという場合でありましても、あるいはまた普通だけの利潤が得られないで、損をしている場合がある。ことに状態によつてはもうほとんどずつと赤字が続いて行つて、何かの機会になつて今度は黒字が続くという場合がありますから、ごく短い期間をとつて判定した場合と、相当長い期間をとつて判定した場合とでは結論が違つて来るのでありまして、消費者としては、短い期間として見れば安ければ安い方がいい、ただになれば一番いいということですが、しかし、長い目で見ると、そういうコストを割るような値段で続けて行くということは、一時的には消費者の利益になりましても、結局はその事業が萎徴して行つて、非常に高いものについて来る。こういうことがありますから、こういう点は相当長い目で見て判断するおつもりだろうと思いますが、いかがでしようか。
  38. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 その点は先ほど申しました公共の利益に反するかどうかということが、一つの基準になろうかと思います。そうしてこの不況カルテルを認めた考え方の中には、独占禁止法羅持するわれわれの立場からいいますれば、この不況カルテルによつては、一時的に、直接的には消費者にあるいは今のままよりは損をかける、不利益を与えるということがあろうかと思いますが、ほつておけばその産業自体が共倒れになる。結局あとに生き残つたものが独占体となつて消費者に不利益を与えるというような状態から考えれば、それの方が結局長い目で見れば不利益になるという考えから例外規定を認めたけであります。
  39. 山本勝市

    山本(勝)委員 今後独占禁止法を運用される場合に、私は実際問題として、自由競争を守るという立場からいつて一番注意してもらいたいことを希望しておきたい。それは洗濯屋が十人や二十人寄つて値段などをきめましても、洗濯屋は何もそれだけが洗濯屋ではない。洗濯屋はほかにもたくさんある。またあまり高ければ家でも洗濯することができる。だからこんなものは取締る必要も何もない。一番恐るべきものは、財力の相当大きな事業家がカルテルを結んでやる。それが任意カルテルである間は、私はほつておいてもいいと思う。ところが自由意思でカルテルを結んでやる場合には、破滅的競争を防ぐだけの制約は、背に腹はかえられませんからどうにかやります。そのカルテルを実行しなかつたならば共倒れになるということですから、戦争でたとえますと、両方とも戦いを続けたのでは滅んでしまうという場合には、十中八、九まで休戦が成り立つ。しかし、そうでなくて、一応破滅的競争を避けて、相当な利潤を上げておるということになつて来たときには、そこに任意カルテルはつぶれて行く危機にぶつつかる。相当の仕事なら普通以上の利潤が得られるということでありますから、ほかの事業をやつてつた人も、そこの資本を引揚げて来て、その事業に参加して来る。それからこのカルテルのメンバーに入つておる人でも、もう相当な独占利潤が得られて来るということになると、そこで得た利潤でもつて同じ仕事を始めて、必ずそこにアウト・サイダーというものが出て来てつぶれてしまう。そこでどうもうまい汁を吸つてカルテルでどうにか立ち直つたときに、その連中の心の中に何とかしてこの独占利潤は持続して行こうという欲望が起つて来る。破減的競争を避けるだけで満足しない、さらにこのカルテルの力によつて相当値段を引上げる。そうして独占利潤を持続して行こうという欲望が起つて来る。起つて来るけれども、一方ではアウト・サイダーが必然に出て来て、どうにもそれが持続できないというときに政治力に結びついて来る。代議士を動かすとか、議員立法でもやらせて、アウト・サイダーを認めない、あるいは全体の同じ業者のうちで三分のニが議決した場合は、残りの三分の一の者はいやおうなしにそれに従わねばならぬといつたような、つまり強制カルテルをつくつてくれという要求が必ず起つて来るのです。ということは、一方から申しますと、任意カルテルというものは、簡単に独占々々と申しますけれども、実際は独占するのでなくて、破滅的競争を防ぐ。これは有澤廣巳君の書いた参考文献をきのうくださいましたが、その一番初めにクライン・ヴエヒターの言葉を引いて、カルテルは不況の子である——これは有澤君がカルテル問題を論ずるときは一番初めにいつも書く言葉でありますが、有澤君のような、どちらかといえば、今日の言葉でいう進歩的な、私のような自由経済の徹底的な主張者ではない人でも、カルテルは不況の子である、もう背に腹はかえられぬということが生んだものだ、独占というものを目的として生れて来るのでなくて、共倒れを防一ぐために不況の子として生れたということを認めておる。任意カルテルのあれはそうです。ですから任意カルテルというものは、独占利潤が得られないからこそ彼ら業者自身の中から強制カルテルを結んでくれと、政治的な、つまり力にたよつて来る。その業者自身はそれでよろしいけれども、一たび強制カルテルが結ばれますと、ここに独占利潤というものが持続いたしますが、その独占利潤が持続することは、まさしく消費者の利益を害する。しかしその消費者の利益を害するということは、自由競争秩序の結果ではなくて、自由競争秩序の限界内では、任意カルテルというものは決して自由競争秩序の侵害者ではないと私は思う。破滅的競争を防ぐという実に堂々たる必然のものであり、またそれはいい。ただ任意カルテルがどうしても独占利潤を得させてくれないというところから強制的にアウト・サイダーを防ぐということになつた瞬間に、もはや任意カルテルのわれわれが容認し得るところの働きは転化して、独占利潤の擁護者となる。しかしそれは自由競争秩序の責任ではないので、政府の権力によつて自由競争秩序——自由なる意思においてカルテルを結ぶか、アウト・サイダーとしてカルテルに入らないかという、自由を権力によつて制限したところにそれが生れて来るのである。ですから、どうかせつかくこの独占禁止法というものが自由競争秩序確保することの法益として生れて来たのでありますから、ただこまかな自由競争秩序の侵害者に目をつけて仕事をされるのでなくて、もつと大きく法益そのものを侵害するのならば、この法文にないことでも、法律をかえてでもこの法益を守ろうという意気込みで今後ひとつつてほしい。私が終戦直後に衆議院に出ましたときにこの法律案が出て来た。しかしこれはまつた日本人の発意でも何でもありません。これは進駐軍が出して来たのでありますが、あつという間に通つてしまつた。ちよつと読んで見ると、自由競争秩序確保するのだという精神であるからわれわれの精理合つているようだし、そうかと思うと、どうも自由なる意思においてお互いに競争するということさえも禁ずる、つまり自由競争を禁ずるというようでもある。ところが、あつという間に通つたアメリカにおいても、御承知通りシャーマン法はテオドル・ルーズヅエルトがつくつた。あのスタンダード・オイルの独占行為に対して憤慨してつくつたといわれますけれども、ほんとうかうそか知らぬが、ルーズヴエルトが死ぬときに、私の一生の不覚はあのシャーマン法をつくつたことである、それが一生の誤まりであつた言つて死んだという話すらある。ですから、法益そのものを守るということを常に念頭に置いて、ただこの条文だけでやられないようにしてほしい。こういう私の希望を申し上げて質問を打切りますが、なお次官にお伺いしたい。次官にお伺いするのでなくして大臣にお伺いしたいのでありますけれども、実は私この間、国務大臣の産業経済政策に関する施政方針演説に対する質問をしておるわけです。数箇条の質問をして、時間の関係上あとで答弁していただきたい、こういうことになつておるのでありますが、その後ちつとも出て来られないので、もし大臣が来られないでも、次官に答弁していただければ次官でもけつこうでありますから、その点お願いいたします。
  40. 古池信三

    古池政府委員 ただいま大臣は、御承知のように参議院の本会議の方に出席しておりまして、こちらの委員会に参れませんことをまずお断り申し上げておきます。  それから、前回大臣に対しまして御質疑があつたそうでありますが、私その質疑の内容、またこれに対して大臣の答弁をいたしていない部分の点について承つておりません。もし私で御答弁できますることでありましたら、何でも知つておりますことはお答えいたしたいと思います。
  41. 山本勝市

    山本(勝)委員 いや大臣からはまだ一言も答弁がないので、私もその場では時間の関係上答弁を求めなくて、御研究願つてこの次に御答弁を願いたいということで質問をしておるのです。それは、第一は、あの経済政策の演説の中で、国務大臣の政策の基本方針として輸出を奨励する、それから輸入はむしろ制限する。そうしてそこに輸出輸入のバランスをとつて行く。ことに奢侈品などは輸入を押えて行く方針であると述べている。なおそのほかに食糧増産あるいは電源開発、化学繊維の増産というふうなことをうたわれて、自給度を高める、そうして何年かの後には五億ドルの外貨の節約ができると述べている。この岡野国務大臣の考え方は、自給自足というか、アウタルキーを目ざした行き方である。輸出は奨励するが、輸入は押えて行く。しかもなるべく自給度を高くして、外国からあまり買わぬように、外国に金を払わぬようにして行くことによつて日本経済を自立さして行こうという考え方である。ところが岡崎国務大臣の演説は自由貿易の伸張によつて通商規模を拡大して行く、これは予算委員会で聞いておりますと、本会議の岡崎国務大臣の演説だけではなくて、岡野大臣からもたびたびその方針を述べておられますが、この自由貿易を伸張し通商規模を拡大して行く、しかるに近代、他の国々において、輸入を制限したりあるいは関税障壁を高くしたりして、この方針にさからつておるが、この自由貿易の伸張、通商規模の拡大ということは、日本にとつて必要であるだけではなくて、世界にとつて必要なんだ、この方針で行くのだということを強調しておられる。これは私は、この二つの、アウタルキーの方式でこの経済を打開して行くという行き方と、自由通商で打開して行くという行き方とは、基本的に違つておる。ここに矛盾があるのではないか。そのいずれが  一体ほんとうの政府の腹なのかということを第一点で伺つておきます。
  42. 古池信三

    古池政府委員 経済方面の権威であられまする山本先生の御説を十分に伺いましたが、ただいまのお尋ねあるいは御意見、きわめて重大なる問題だと私は考えます。従つて私の考えておりますところを率直に申し上げまして、また先生のお教えも受けたいと思つておる次第であります。岡野大臣の言われました演説の唐は、いろいろな項目がございますが、しかしいわゆるアウタルキーの確立と申しますか、そういう方向に向つて日本が行かなくちやいかぬという強い意味ではなかつたと私は考えるのであります。しかしながら現在の日本の貿易状況は、御承知のように、最近数年というものは特需によつてどうにかつじつまを合わせておる、こういう状態でありまするので、何としてもやはり正常的な貿易の振興に力をいたさなければならぬ。それにはぜひ必要な食糧なりあるいは原料と  いうようなものは外国から輸入を仰がなくちやいかぬ。従つてこれに見合いまする輸出は今後大いに振興して行かなければならないということはまず第一点であろうと思うのであります。し  かしながらいつまでも食糧を外国から輸入に仰ぐということは、これまた考慮を要することでありまして、全然日本で今後食糧増産の目当がないという場合でありますれば、これまたやむを得ないかもしれませんが、今後相当な政策を立てて実行して行きまするならば、まだく日本内地の国土の開発は可能であり、これによつて食糧の増産ができるということであれば、何も好んで外国から貴重な食糧を入れる必要はない。そういう意味において、食糧の自給度をさらに高めて行きたい、こういう意味であろうと考えます。従つて戦前にいわれておりましたようなアウタルキー式の考え方ではないと思うのであります。またたとえば国民の衣料の点につきましても、羊毛なり原綿を輸入して加工する、こればかりによらないで、今後は内地の材料によつてつくられまする合成繊維というものがあるのでありまするから、この技術を大いに進歩させて、これによつて内地国民の需要に充てると同時に、これを外国に輸出すれば、必要なるやむを得ない原材料の輸入その他に外貨が充てられる、こういうような考えでありますので、必ずしも小さく日本が固まつてほんとうに自給態勢というか、アウタルキーをやつて行こうというような狭い考えではなかろうと思うのであります。ことに日本としましては、こういう狭い国土で大勢の国民が生活して行かなければならぬということになれば、どうしても海外と交通を頻繁にして、貿易を振興して行かなければならぬという原則は、これはもう誤りのないことであると思います。そこに自由貿易を伸張して行きたい。ただ相手方のある問題でありまするから、相手方とのいろいろな外交上の書籍ついて十分努力はせねばならぬと思いまするが、決して日本としては門戸をとじるというような意味合いではなく、もつとく平和的にさらに経済的に外国と十分提携を密にして行こうということが、おそらく岡崎外務大臣の趣旨であろうと考えるのであります。従いまして、そこに私どもの考えとは何ら矛盾はないので、要するに自給態勢もものによつては大いにこれを考えて行かなくちやならぬが、外国貿易も伸張して行きたい。これは両方の目的があるようでありまするが、結局実際の政治問題としては、そういうところにおちつくのではないか、かように私は考えておるのであります。
  43. 山本勝市

    山本(勝)委員 今矛盾しないということでしたが、もちろん私がアウタルキーというのは、一から十まで自分の国で硬うものは自分の国でつくろう、そういうふうなことはやろうとしたつてできるものでもありません。ただ方針というか、一つの基本的な方法として、食う物、それから着る物、こういうものを自分のところでまかなおうというねらいがどうもあるように感じられる。住居はもちろんそんなに外国から入つて来るわけはありませんから、これは自分の国の材木でつくつて間に合う。そうすると衣食住でわれわれの必要なものをなるべく自分の国でつくつて、たとい安くても外国から買わないようにするという一つの基本的な方針だと思う。またそこにあの演説の意味がある。もちろん自由貿易論者もあり、またその反対論者もあるようです。両方とも理由があるのですから、おそらく両方の要求を持つておられるのだと思いますが、あるいは外国に向つては大いに自由貿易を主張して、輸入の制限などするな、それで内輪では、しかし大いに自分の方では輸入の制限をする、こういうふうなことの意味かもしれません。まあいずれにいたしましても、政府として今後力強くやつて行くには、基本的な線がはつきりしていないと、自由貿易といつても、完全な自由貿易があるわけでもなければ、アウタルキーで完全な文字通りのアウタルキーがあるわけでもありませんけれども、しかしその基本的なことが明らかになつていないと、せつかくの努力が途中で実を結ばない。たとえばインドから綿を千何百億も買つておる。ちよつと見ると、この代金の支払いがたいへんだ。これを日本で大いにビニールでもうんとつつてやれば助かるというふうに簡単に考えましようけれども、しかしインドからもし綿を買わぬようになつたら、インドに物を売ろうといつたつて、もうとてもインドで買う力はありません。ですから、基本的には自由貿易で、従つて自由に売り、自由に買う。しかし補足的というか、それを補足するになるべくむだな輸入はしないといつたようことで行くのか、二つの原理を使うにしても、政府自身でその矛盾を自覚していなかつたら、政治の実際は効果を持たないと私は思う。それでお伺いしたのですが、次官の考えはよくわかりました。  第二に私が伺つたのは、物価に対する考え方、物価水準というものは、御承知通り国内の通貨価値の裏表であります。通貨価値を安定させなくてはとうてい資本の蓄積もできないし、産業も起らぬのだということを大蔵大臣はしきりに強調しておられる。その強調される意味はよくわかるのです。また他の言葉で、物価の水準はこれを維持するのだ、物価水準を上げもしない、下げもしない、大蔵大臣の答弁の中にはインフレでもいかぬ、デフレでもいかぬ、要するに今のままでずつと安定さすのだ、こういうことを強調しておられる。そうかと思うと、通産大臣の説明には、あるいは総理大臣の演説の中にもありますが、貿易振興ということを問題にいたしましたときには、日本の物価水準は世界の物価水準に比べて非常に高い、しかも世界の物価水準は今まですでに日本の物価水準よりも非常に低いのにかかわらず、なおかつ下向きの傾向にある、これにさや寄せをするのだということを演説で言つておられる。予算の説明書の中にもそのことを書いておられます。私が気がつくことは、物価水準を維持するということの主張と、国際物価水準にさや寄せする——これもちよつとの事柄ですけれども、今の国際物価水準と日本の物価水準との開きというものは非常な開きであります。しかもなおかつ下りつつあるものを追いかけて、これにさや寄せすることによつて、国際競争力というか、つまりそれで輸出を振興しようという行き方とはどうも矛盾がある。それでこの矛盾はおそらく気づいておられるに相違ないと思うのでありますが、どちらがほんとうなのかということなんです。しかも一言申しておきますが、大蔵大臣は私が質問いたしました際にも、答弁はいらないと申しましたにかかわらず、進んで為替レートは絶対に動かさぬ、三百六十円を動かさぬということをたびたびここで主張しておられる。私は為替レートの問題は経済界に非常なシヨックを与える重大問題だから、政治的な答弁としてはなかなかむずかしい問題であるから答弁を要求しなかつたのでありますが、しかしどうもあの答えを聞いておると、ただその場の答弁でなしに、本気でそう考えておられるらしい。そうすると、為替レートには全然手をつけないという前提の上に物価水準は維持する、それから国際物価水準へさや寄せするのだというこの二つの主張は、私の考えではどうしてもこれは両立できないと思う。物価水準の維持、すなわち通貨価値の維持、インフレでもデフレでもない、ディス・インフレというか、リフレというか、その線の上で今後の日本の財政経済政策を実現しようとするのか、それとも非常なデフレ、つまり物価水準を下げるというところにねらいがあるのか、これが私にはよく了解できない。時間の関係質問を先にして時間を節約いたしますが、それでもし貿易伸張のために外国に売るものだけを下げて行くの下あつて、物価水準としては維持するのだ、輸出品だけの価格を国際水準に下げるのだと考えておられるのだとしたら、実際問題として私はそういうことはできないと思うが、あえてそれをやるとしたら、これは輸出品以外の品物を逆に非常に上げないと、指数としては大体平均した水準というものを維費したことにはならない。事実上そういうことはできないのです。いずれがほんとうの政府のやろうとするところなのか、この点です。
  44. 古池信三

    古池政府委員 ただいまのお尋ねもこれは非常にむずかしい問題だと思います。ことに大蔵省関係の事項が非常に多いように存じますので、私がここで独断的に申し上げることもいかが希と存じますが、一応私見としてお聞取りを願いますれば、デフレあるいはインフレと申しましても、やはりそれけ程度があると思います。わずかの通貨価値の上下、あるいは物価の上下というものは必ずしもデフレともインフレとも言えないじやないか。日本で申しますれば、終戦直後の二、三年間の歎の物価の非常な急騰というものはこれは確かにインフレであつたでしよう。現に今でも年に少しずつは物価が上黒していることは御承知通りでありまして、これは必ずしもインフレとは蓄えない。そこで大蔵大臣の言われましたのは、推察しますと、この際政府としてはそういう極端なデフレ政策とかあるいはインフレ政策はとらない。また対外関係についてはあくまで三百六十円の為替レートを維持して行こう、こういう意見であろうと考えます。しかし先ほど申し上げましたように、今後日本が国際貿易、自由貿易によつて大いに有無相通じて、さらに世界の平和的な繁栄に寄与しようといたしますならば、そこに非常な困難があつて、内地の物価が国際水準に比べて相当高いのにかかわらず、これを輸出しようとすれば非常な困難が出て来ることは当然のことであります。しからばその場合の困難をどうして乗り切つて行くか。これはただいま仰せになりましたように、輸出品に対しましてこれを安くさせて行こうとすれば、その穴埋めは内地の国民の消費者が負担することになる、あるいはまた補給金をやるという問題になれば、これは税金によつて結局国民の負担にかかつて来るわけです。しかし外国貿易が自由になされるという場合において、かような輸出品だけに補給金を出すようなことはよほど検討を要する問題だと思います。そこでまず物価引下げといいますか、若干ずつ世界的な水準に近づけて行こうとすれば、どうしてもそこに人間の努力によつて、たとえば企業の合理化をはかつて行く、こういうようなことによつてコストを引下げて行くようにすれば、必ずしもこれはデフレとは言えないし、またこれによつて若干ずつでも国際価格に近づけて行けば、国際貿易の上においてもよい効果が現われるじやないかと私は考えます。
  45. 山本勝市

    山本(勝)委員 それは私はよくわかるのですが、問題は物価水準を下げるのか、下げないのかということなんです。これはいろいろ努力によつてどうとか言われるが、それは両方とも要求はあるのです。われわれの矛盾した要求というものは、お互いの個人生活でもあるように、国家だつてある。それはその矛盾した要求をしているのが現実でありますけれども、しかし一つの物価なら物価というものを下げもしないのだ、上げもしないのだということはあり得ない。しかも朝鮮事変の起つた当時からでも日本の物価が五倍以上にも上つておる、よそは二割ぐらいしか上つてないと俗にいわれるのでありますが、とにかく非常な開きがある。それをそこまで下げて行こうということは、相当大きな値上げであります。値下げはどのようなコースをとつて実現するにいたしましても、物価水準を下げるということには間違いなかろう、そうすれば、その物価水準を維持するのだ、すなわち通貨価値を維持するんだという主張とは、どうも両立しない。あるところで私は自由党の小峯君に話したら、あれは演説なんで、演説は演説、予算は予算、あの予算は割にその演説を離れてつくらしておるから正確ではない、そう心配することはいらないというようなことを言われたが、しかし私はそう無責任に立てられたものとは思わない。やはりあの演説に沿うところの努力は、予算の上にも見えておるから、その努力が実を結ぶか結ばぬかということから申しますと、今のあの行き方をすれば、悪性インフレということは申しませんけれども、しかし物価水準はやはり上る、為替レートに手をつければ別ですけれども、そうでないとすれば上る。だから、それを下げることによつてどうというようなことは、実際問題としては作文に終る。こういうことですから、これはひとつ御研究願いたい。非常に根本的な重大な問題です。そのときに自由党の方も言つておりました、一体デフレになるかならぬのかということについて、しつかり腹がきまつてないということは確かである。つまり今後政策を遂行して行く上に必ずぶつかつて来る避けることのできない問題を、一時的に目をつぶつてつておるというふうなことを感じるのです。これは責めるのでも何でもない、なかなかむずかしい問題なんです。  それから、まだいろいろありますけれども、もう一つだけ伺いたい。これは大臣よりもかえつてあなたの方がよくわかるそうでありますからお伺い申し上げますが、五箇年の長期計画、これは岡野国務大臣のまつたくの試案であつて、木村試案と同ずような性質のものであろうと思いますから、これをここで取上げるということは私はしない。ただ今後ああいうものを必要と考えて立てて行かれるとするならば、生産の増強の計画というものは簡単に立つ、それは全部の生産を上げるという計画はむずかしいが、何か二つとか三つとかの種類の品物を選んで、それの生産をふやして行くのなら、うんとそこに国力を集中すれば、二、三年の間に倍にでも三倍にでもできますけれども、ただ生産の計画に伴つて価格がどう動いて行くかということを同時に念頭に置かなければならぬ、そこにむずかしさがある。しかし価格がどう動いて行くかということは、実際問題としてはなかなかむずかしい、むずかしくはありますけれども、もしほんとうに実行するような長期の計画を立てられる場合には、むずかしいからといつてこれを避けるわけにはいかない。それがどうしてもできないということなら、その長期生産計画は結局作文のようなものに終る。岡野さんも演説の中で、日本の化学繊維をこうするとか、食糧を千何百万石ふやすというようなことで、五億ドルの外貨の節約をやると言われるときには、どうも価格というものは今のまま動かぬように仮定しておられるのではないか。もし日本ほんとうに短かい時間の間にそういう食糧の増産あるいは化学繊維の増産ができ上つたとしたら、私は価格に対する影響は非常に大きいと思う。価格方策を無視しては、資本主義の経済だけではありません、社会主義の経済といえども成り立たない。ですからその価格というものを長期計画を立てられるときにどういうふうに考えられたかという点です。
  46. 古池信三

    古池政府委員 実は私言い訳をするわけではございませんが、長期計画の問題は経済審議庁がやつておりますので、私の担当ではないのでございます。しかし一応私の考えまするのは、これは先ほど御質問にありました物価政策と非常に関連のある問題でございますが、為替レートにしましても、国内物価の問題にしましても、大体現在の線を維持して、その線に沿つて五箇年間の計画を立てた、かように考えております。そこに通貨価値の大きな変動ということは考慮に入れてないと思います。
  47. 山本勝市

    山本(勝)委員 まだありますけれども、何でも審議庁の方で私の質問に対して文書で答えていただくような話があるという、ことも聞いておりますので、もう時間も大分たちましたから、この辺で………。
  48. 加藤宗平

    加藤委員長代理 それでは午前の会議はこれにて休憩し、午後は一時半より再開、参考人より意見を聴取することといたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  49. 佐伯宗義

    ○佐伯委員長 午前に引続き会議を再開いたします。  これより昨日の当委員会の決定に基き、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部の改正する法律案を議題とし、本案について参考人より御意見の開陳をいただくことになつております。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。参考人各位におかせられては——御多用中にもかかわらず、特に御出席くださいましたことに対し、厚く御礼申し上げます。何とぞ十分忌憚ない御意見を御発表くださるようお願いいたします。  なお念のため申し上げておきますが、御意見の開陳はなるべく二十分程度とし、御発言の際は委員長の許可をお受けくださるようお願い申し上げておきます。それではまず中山太一君より御発言をお願い申します。中山太一君。
  50. 中山太一

    ○中山参考人 本委員会で御審議中の問題につきまして、主として再販売価格の維持に関することについて私見を陳述いたしたいと考えます。  わが国の人口を職業別に分類しますと、中小企業に属する中小商工業者とその従業員及び家族の占める割合は、きわめて多くあります。従つて国民生活の安定を期しますためには、この中小企業の維持育成をはかることがきわめて緊急な問題であると存じます。なかんずく現在のわが国では、小売業によつて本人及び家族並びに従業員の生活が維持されております。しかもこれらの小売業者は、日夜肉体的労働のみでなく、商品の仕入れまたは管理、記帳事務、販売、宣伝等の精神的労働、知識的労働に全力をあげて事業の維持発展に没頭しておるのであります。しかも本人及び家族だけではなくその従業員をも相当に使用しております。その数を国民の全人口に比べて推定いたしますれば、先般ある統計によつて、各種の小売業は国民の四十余名に一店ずつの割合であるということであります。それから推算いたしますれば、小売業は八千有百万の人口に対して、二百万ないし二百万以上あります。これに本人及び家族ともに五名、従業員を平均して二名としまする五名、一千万の人が日々筋肉労働、知識労働、精神労働に従事し、しかも他よりも多くの時間を働きながら、これが不当廉売等によつて生活の維持ができなく、事業の経営が不能になり、納税の力も失われ、やがてはこれが倒産して失業者となる場合には、社会に大きな不安を来し、ある意味においては労働不安をも招くおそれがあつて、不自然な労銀の低下を来すおそれも多分にあります。それのみならず、小売店の経営不能、倒産、支払い不履行は問屋の倒産となり、また生産メーカーの事業経営の維持が困難になり、きわめて弱体化されるのであります。従つてこれらの生産者は、日本の平和、日本経済産業の復興に大いに努めねばならぬのみか、外国品の力強い迫力に押されて、これと対抗する実力を失い、輸入を激増するばかりでなく、国内に強固な地盤、販路を持たない産業は、海外市場を開拓し、良品を廉価に生産することができないために、遂にこの中小企業による産業はきわめて弱体になつて行く。従つてこれは社会問題または労働問題だけでなく、産業問題からも特に深甚なる御考慮を仰がねばならぬと存ずるのであります。今日のように領土が少くなつて、民族は多くなつておる。これが自活して行くにはことごとくが働かねばならぬと存じます。これは当然であります。働かずして生活ができないならば、これはやむを得ないが働いても働いても生活を維持することができない。自分も家族もそれをなし得ないということは、人類としての一大悲惨なことであり、不幸なことである。またこれは民族としてだれも見のがすことのできないことであると思います。それがいろいろの方面産業方面、労働方面にも大きな悪影響を及ぼすということになれば、これを未然に防ぐことに対して特に御高配を仰がねばならぬ点が多分にあるのであります。  元来自由競争は、産業の発展上好ましいことでありますが、これがあまりに極競になつて、資本力のみをもつて弱体企業、中小企業をむやみに圧迫しますということは大きな弊害が伴うことでありますから、その害を除くためにも一定の保護をしていただくことは必要であります。現下の中小商工業の状態は、このまま自然の推移にまかしておきましたならば、ただいま申しましたように、はなはだ憂慮すべき事態に立ち至ると思います。資本主義経済社会における自由競争の長所はもちろん認めますが、近来起りつつあるその短所が弱体企業にしわ寄せになる。または不正競争あるいは信用の破壊または不当廉売等によつて、倒産もしくは共倒れを招来するような実例もだんだん起りつつありますから、これに対して本委員会で御審議いただいております再販売価格によつてこれが相当救済され、防止され得るものと信ずるのであります。  不正競争取締り及び濫売または不当廉売防止による企業の維持と、納税を行い得る程度ということについて申し上げます。  ただいま日本に、私どもの知り得ております範囲で、化粧品、工業薬品、電球、書籍、電気器具、菓子、カン詰、製びん、陶器その他帽子または各種の雑貨類で、良品を廉価に生産して、信用と責任を重んじて、自分の商標を全財産にひとしきものとして大衆に、消費者に責任を負うて大切に事業を経営ししておりますものが多数あります。その多数の製造者はいずれもその産業において生産額が一割に匹敵するものは少いのであります。ごく微少なものであります。従つてこれらを保護していただいても、独占禁止の精神に反するようなことは断じてないと信じます。また適当な例を化粧品、薬品等で申し上げますれば、相当はげしい競争がこれらの生産メーカーの間に行われております。それでこれらが協議して、自由かつてに消費者を犠牲にするような値段つり上げというものは断じて行われないのであります。他の商標品と自分の商標品と比べて、その品質において、価格において、分量において不利でないようにしなかつたならば、その商標のものは決して消費されないのであります。それでその点を生産者がすでに自由競争の精神を取入れて適正価格をきめ、そしてごく微少な卸問屋の利潤、小売業の不当でない、適正な利潤を織り込んで指定価格をきめておるのであります。それでありますから、この点は暴利を得るための指定価格でなく、正しい事業経営——先ほど申し上げました程度の生活、事業、納税等がようやくでき得る範囲であるということをも御了承を仰ぎたいと存じます。そして製造業者が同一の製品について価格を指定しますために、販売業者がこれをかつて協定して高くつり上げるということは絶対にできないのでございます。製造業者の希望し、指定した価格を上まわる価格で、たとい品不足になつたときでも、指定価格がある限りは、その商品はそれを忠実に守らねばならぬ。でありますから消費者の利益を侵すというようなととは断じてないのであります。  小売業者の立場についてはよく御了承と存じますけれども、独占禁止法を指示したものがアメリカとすれば、自由競争の精神でこれが日本にも制定されたと存じますが、そのアメリカにおいても昨年の春その競争が激甚なので、とうとうこれでは産業を破壊するということになつて、御承知のように、アメリカでは下院で、初めは反対があつたのが、大多数の百九十幾つの賛成、十票の反対で通過しております。そのときの意見にも、これまた御承知通りでありますが、工業その他の労働者の労銀が協定され、または労働協約が行われ、ある場合には争議権まで行使することが許されて、その生活権が擁護される。農業労働についてもやはり主食に対して労働賃金及び生活に役立つように一定価格が定められておるが、商業労働に対してのみなぜ最低のマージンを与えることはいけないかということで主張されておるようであります。またこれが正しく理解されるのは、小売店の健全な発展は社会思想のためにも実に望ましきことである。いわゆる健全思想を維持するためにも必要だということを力説しております。  また独占禁止法の中にもある程度の保護がありまして、協同組合のみはこの協定が認められることになつておりますけれども、これはあまりに狭きに失するのみならず、小売業は微弱な事業であつて、それが団体行動をするということは時間を非常に浪費する。自分が第一線に立つてその職務に当らたければならぬが、しばしばこういう組合活動をするということは困難でありますので、各地にこれが普遍的に結成することは至難であります。従つてその恩恵に浴することも困難であると存じます。またはなはだ私ども異議がありますのは、協同組合には法律で値段協定を認めておるにもかかわらず、他の消費組合はこれを打ちこわす反対の行為法律で認められるようなことがあれば、これは法律の不備である、矛盾ではないかというようなことが感ぜられるのであります。今日は私は販売価格を有効適切に維持できるように御配慮いただければ、一千万の関係者のために、また日本産業、中小企業の繁栄のためにもまことにありがたいことだと存ずるのであります。  これで私の参考意見を一応終りますが、なおお尋ねその他によりましてお答えいたしたいと思います。
  51. 佐伯宗義

    ○佐伯委員長 次に高島喜久男君。
  52. 高島喜久男

    ○高島参考人 私実は、これはおそらく総評の事務的な手続きからだと思いますが、一昨日初めて本日のことをお聞きしましたので、皆さん方が御審議中の法案の内容についても十分目を通しておりません。それでたいへん遺憾ですけれども、一応独占禁止法あるいは独占禁止法を緩和しようとするいろいろの動きにつきまして、私ども労働組合におりますものが一般的にどういうふうに考えておるか、どういう点に問題を見ているかということを申し上げて責めをふさぎたいと考えております。  結論を簡単に申し上げますと、私どもは独占禁止法を今緩和しようとしておられます案について、これに対しましては全面的に反対でございます。総評に参加しております組合は、独占企業の従業員も非常に多く含んでおります。たとえば八幡製鉄のような独占企業の従業員の組合をも含めまして、独占禁止法を緩和しようとする一切の企図に対しては、私どもは反対の態度をとつておるのであります。  そこでなぜそれに反対するかということをごく簡単に一つの例だけを申し上げたいと思います。たとえば紡績が、綿糸が売れない、綿糸が不況だからということを理由にいたしまして、綿糸の生産なり販売なり購入なりを制限するために不況カルテルを組織したといたします。しかしながら、これらのカルテルは決してこの不況を緩和することさえも実はできないのであります。不況を緩和することがこれらのカルテルによつてできないだけではなく、逆にその綿糸を用いますところの、綿糸を需要するところの中小綿織物業者それから国民の負担を増加させるだけにとどまるのであります。このような独占のための、独占価格を維持する目的での不況カルテルというものは、結果といたしまして、現在中小企業者を苦しめておる。原料高、製品安という問題をさらに拡大する以外の何らの効果も持たないものと私どもは考えるのであります。このようなカルテルがそれでは小売商や中小企業者の中でつくられるかと申しますと、これは現実の問題としてはほとんど不可能に近いことであると思いますし、さらにこれらの小売商や中小企業者は、実はカルテルによつて制限する以前に金融難であるとかあるいはつぶれてしまうという以外に、生産なり販売なりを制限せざるを得ない状態にあるものと私どもは見ております。カルテルの組織によつて不況を食いとめるということができないだけではなく、それは逆にさらに購買力を拡大することによつて不況を拡大する役割をするものだと私どもは考えております。  一つの例を申し上げますと、今物価はどういう位置にあるかと申しますと、戦前をとつてみてもよろしいし、戦鮮事変前をとつてもかまいませんが、卸売り物価が大体一番高い位置にあります。卸売物価の中でも生産財の卸売り物価が最も高い位置にあります。次いで消費財の卸売り物価が高い位置にあります。さらに小売物価はその約半分ぐらいの位置にあります。それから消費者物価はそれよりもやや低い位置にあります。このことが一体何を示しているかといいますと、小売店の店先においては商品は売れもせず値段も上らない、消費者のふところにおいてはこれはさらに買えもせず値段も上らない、しかし卸売り部面においてはあるいは工場の庫出し部面においては需要が存在し、その値段は上つてしまつておる。ことに生産財の庫出し価格においてはこれは相当に上つておるということを示しておると思います。このことは現在の日本において購買力、需要がどこに存在しておるか、そうしてどこに存在していないかということを示すものだと思います。このような事実をそのままにしておいて、そうしてしかも特にカルテルが結成せられますのは、おそらく、今すでにうわさに上つております、たとえば紡績であるとかあるいは鉄鉱石であるとかいうふうな部面においてこれが行われますことは、さらにこの矛盾を拡大する以外の何ものでもないと私は考えます。こういうふうにして生産を制限し、販売を制限し、あるいは価格制限して価格を維持し、従つてまた利潤あるいは独占利潤を維持して行きます場合に、そのしわは一体どこに寄るのであるか。生産を制限し、販売を制限して行きます場合に、そのしわは必ず金融かまたは財政に寄せざるを得ないことになると私どもは考えます。必ずこれは滞貨融資を伴うかあるいは補助金を伴うか、財政投資を伴うか、そういつた形で、金融なり財政にそのしわを寄せざるを得ないものと私どもは考えます。このようにして国民は、結局物が買えないという実情をそのままにして、さらにそれを拡大することによつていじめられるわけですが、さらにそのしわまで持たせられる、インフレーシヨンと税金によつてそのしわまで持たせられるという結果を来す必然性を持つておるのであります。そのしわが金融か財政に寄らざるを得ないか、またはもう一つの道は、ある種の商品、たとえば硫安というような商品にすでに現われておるわけでございますが、そういう、現在すでにある種の商品に現われておりますように、出血輸出ということによつて、そのしわを国民にもう一度寄せざるを得ないことも生ずるのではないかと考えます。これはどういうことかといいますと、要するに余つたものは輸出してしまう。その値は安くてかまわない。国内への供給量を制限する。供給量が制限されれば、それによつて独占価格が維持されるということがねらいとなつておるのでありまして、このような形で硫安の出血輸出が行われて、硫安の販売が制限せられ、そうして硫安の独占価格独占利潤が品維持せられ、あるいは硫安を通じて石炭の独占価格独占利潤が維持される、このような結果が生ずることは明らかだと思います。このようなことは、つまり出血輸出というようなことによつて、結局そのカルテルの維持が可能になることを示すものでありして、結局不況ということのためにカルテルをつくるということは、これは不況を解決する策も何も示さず、不況を拡大する一方であつて、かえつて国民の負担によつてのみこれを切り抜けよう、あるいはこれを維持しようということになるのだと私どもは考えます。そのような考え方から、われわれは独占禁止法を緩和しようということ——今不況がいかに深刻なように見えるからといつて、これを切り抜けるために販売を制限した方がいい、価格制限した方がいいということは、いかにイージーな立場で考えられるからといつて、これに対しては反対せざるを得ないと考えるわけです。それだけではないのでありまして、私どもの方は、さらに独占というものに対して、これが私的独占であろうと、国家的独占であろうと、これに対しては反対の態度をとつているのであります。さらに単に独占に対して反対するだけではなくて、独占に対して与えられておりますいろいろの優先的な地位、あるいは優先的な特権に対しても反対しておるのであります。今日独占に対しましては、たとえば資金の面であるとか、電力の面であるとか、資材の面であるとか、その他について優先的な特権がいろいろ与えられているのでありますが、これらに対しても私どもは反対するのであります。そうして私どもは逆に、中小企業に対して国家的援助が——独占に対してそのような優先的特権が与えられるのでなくて、中小企業に対して国家的援助が与えらるべきだと考えるのであります。  私たちはこのように現在独占に対して反対しておりますけれども、この独占に対して反対しております態度は、実は独占禁止法がつくられた趣旨、あるいは独占禁止法の内容に盛られた趣旨とは違うものであることを申し上げなければならないと思います。私たちは現在独占を強化しようとするすべての政策が、今独占禁止法を緩和しようとする企図の中に集中的に現われて来たと思いますから、独占禁止法を緩和するという企てに対して、徹底的に反対する態度をとるのでありますけれども、独占禁止法そのものにつきましては、これに賛成する態度をとらないのであります。なぜかといいますと、独占禁止法は、独占に対して自由競争を証歌し、自由競争が万能のものであるということを主張しておるように私どもは見ておるのであります、これは独占禁止法が制定せられたのは、アメリカにおける農民の要求を基礎にしてできているというような歴史的事情があると思いますが、しかしながら同時にまた独占禁止法が第二次大戦後、あるいはマーシヤル・プランの双務条約といい、あるいは日本でいいますと、十原則というような、その他によつて何回も繰返して、アメリカの援助を受ける諸国に対してアメリカから要求せられているものであるということについて、私どもはさらに考なければならない点があると思います。私どもは、独占が成立することは、自由競争の必然の結果であると考えるのです。自由競争を証歌することによつて独占を排除することは、これは決してできるものではない、そんなふうに考えます。私どもが独占に反対するのは、自由競争を証歌するためではなくて、逆に労働者であるとか、農民であるとか、中小企業者であるとか、私どもははこれを平和国民と呼びますが、平和を愛している国民の独占の政策に対して反対する要求を代表して、独占に対して反対するのでありまして、決して自由競争を証歌するためではないのであります。  アメリカがなぜ独占禁止法日本において制定したかといえば、これは単に日本においてだけではないが、マーシヤル・プランの援助を受けておりますすべての国において独占禁止されておるのでありますが、このようなことがなぜ行われているかと申しますと、これは一つの事実をあげれば明らかになるのではないかと思います。といいますのは、アメリカの資本と日本の資本が対等の立場に立つて競争することがはたしてできるものであるかどうかということをお考えになれば明らかになると思います。われわれはアメリカ資本が日本において自由を獲得することを決して好まないものでありますし、それに対しては反対の態度をとらざるを得ないのであります。われわれは日本産業日本の資本が、民族産業を保護するための団結、民族産業を保護するための結合を主張することに対しては、これを支持せざるを得ないのであります。そういう意味で、独占に対して反対し、独占に対して闘うものが決して現在の独占禁止法ではなくして、平和国民の独占に対する要求、独占に対する闘いのみであるということを繰返して私は申し上げたいと考えます。  このような立場で私どもはおりますので、たとえば電気事業のような大独占体の従業員の組合、電産組合、あるいは炭労、石炭産業のような独占資本の組合、これらは今労働者みずからが外に出まして、中小企業者、農民その他とともに自由なる討論の機会を持ち、自由なる懇談の機会を持つて、そうして独占の政策に対していかに平和的な経済政策、平和的な経済再建の政策を打立てるかということの討議を十分に開始しておるのであります。そうしてそのような討議とそのような闘いの過程を通じて初めて独占に対する反対は貫徹されるものと私どもは信じておるわけであります。  非常に簡単でありますけれども意見だけ申し上げました。
  53. 佐伯宗義

    ○佐伯委員長 以上で参考人の御発言は終りました。これに対する委員諸君の御質問がありましたならば、この際これを許します。
  54. 栗田英男

    栗田委員 中山参考人にお尋ねをいたしたいのですが、特に中山さんは、化粧品関係の仕事をしておられるのでありますが、最近われわれが表へ出てみまして、特に感ずることは、外国の化粧品が店頭や露店に非常にはでに販売をされているということを発見するのであります。日本は重要資源が少いのでありますから、われわれはこの重要資源を輸入する方に外貨を使わなければならないのですが、こういう化粧品という消費財を外国から買つて来るのに外貨を投資するということは、非常にもつたいないことであります。そこで特に生産者としてあなたにお尋ねをいたすのでありますが、実際問題として日本の化粧品と外国の化粧品の差というものが、今日価格に現われているようにあるのかどうかということ、それからこの再販売価格維持契約を結ぶことによつて、生産者は、こういうような法律規定がなかつたときよりも、この契約ができたことによつて、もつとりつぱな、品質のよい商品がこの契約によつて生れることができるのかどうか、それからこういう生産の契約によつて生産者が、あるいは不当に値をこれによつてつり上げて、ひいては消費者に迷惑をかけるようなことはないか、特にこの点に関しまして、今日までの体験から、率直に御所見を伺いたいと思います。
  55. 中山太一

    ○中山参考人 ただいまお尋ねをいただきましたことに対して、率直にお答え申し上げます。外国品が、占領下において、いろいろの手を経て輸入されておりました。けれども、これは外人のみの使用というのが、表面の許可されておる理由でありましたから、市場に氾濫するとまでは行かなかつたのでありますが、これがやはりよほど国内の化粧品業に悪影を与えつつあつたのであります。ところが昨年の春からこれが自由に輸入されることになりまして、これをそのまま放置いたしますれば、日本の化粧品業は弱体化するというよりも、非常な不利な立場に陥るのであります。それで、かねてから化粧品業の各メーカーは、競争の目標をいつも外国品に置いております。外国品に置いておるのは、日本の化粧品業の大きな目的は——フランスがかつて世界第一の富を得た当時、あれは化粧品とぶどう酒の産業によつて得たのであります。日本もその立場になるために、将来東南アジアその他において、きつとわれわれは御奉公ができるとかねてから信じて、たゆまず業者は努力しておりました。それで、いつも外国品に劣らないものをつくるために、三十年前から入超防止・輸出促進、国産尊重の運動をして、消費財はなるべく日本の材料、原料及び日本の労働によつてつくられたものを使う、それにはまず品質をよくしなければならない、品質の研究、それが悪かつたならば、保健衛生上からも、美的生活の上からも無価値であるから、これは売れない。従つてそれに対してあらゆる研究、たゆまない研究と努力を続けて参つておりました。ところが戦争のために、原料が得られない、抜術者は応召し、徴用されるというようなことで、たいへんな断層ができまして、そこに外国品が参つたものですから、せつかく完全にできておる陣容がくずれて参りました。戦後にはそのすきに乗じて来ましたので、われわれは非常な警戒をして、これに協力して当らなければならなかつた。それで、生産者はお互いに競争して、しかも最高の目標を外国品を向うにまわしておるから、現在の市場におきましては、外国品よりも、品質において、容器において、デザインにおいて、まさつても決して劣らない。そして価格においては、向うの三割ないし五割安です。倍額のものと日本の半額のものと御比較願つて日本のものがすぐれておるものが多いということになつております。だから消費者も、半年、一年は舶来盲信のためにどんどん外国品を使つた人が、今では日本のまじめなメーカーの製品を需要するような傾向が多くなつて参りました。また輸出を許してくれる国には、日本の製品はブラジルその他各国に行きつつあります。しかしまだ許してくれない国が多いのでありますから、化粧品も海外輸出において、大きな使命を果すというまでにはなつておりませんが、その最高の目標に向つて業者は懸命の努力を払つております。それでまた、ことに昨年からは、小売組合も卸の関係も生産者も、非常に国産を奨励するような機運になつて来ました。これは国内で失業者が多くなり、それから労働者が不利な立場になつたならば、消費はやはり減つて来ます。ですからこれは相関関係がありますから、どうしても消費は生産のために消費するという根本でもつて、ない原料だけは外国から入れるけれども、ただいま申したように、一貫して業者がこれに臨んでおります。従つてこの点は、国産品でなるがために消費者が迷惑になるということはありません。ただ再販売価格が維持できないために、良品を市場で売らないような機運があります。商標に責任を負うて、良品を適正な価で出しても、隣の競争者がより安く売るために、自分の信用を落し、客が減るから、なるべく売らない。だからいかに丹精をこめていいものをつくつても、売らないようにするということになりますから、そういう有名ないいものがやはり十分に伸びない。それで無名な、あるいは無責任なものを扱つて、それが利潤を得て、生活を維持し、事業を継続するという点が相当多数ある。それだから、いいものをつくり、正しい販売価格の維持ができぬ限りは——良品を適正価に供給する根本は、能率を増進して大量につくるところに、生産原価を安くすることができる、その大目的を阻止するような形がある。そうして消費者も、不良品とか価値の少いものを勤められておるので、むしろ被害者であると申してもいいのであります。それから再販売価格というものが行われても、不当のつり上げは絶対にない。小売のマージンはごく少いのでありまして、それは小売店は団体を結成して、団体交渉とか争議とかをする権限は持つておりません。だから各自に正しい利潤さえ与えておれば、それを忠実に信頼して販売しておりますから、決して不当に利潤を獲得するために、威力を用いてメーカーをいじめて、その結果消費者にも迷惑になるというようなことは、今ない状態で、生産、販売とも日本の化粧品を健全に発達さすということの精神的な理解と、経済的な協力の態勢が、ただいまは整つております。
  56. 栗田英男

    栗田委員 この法案が通るか通らないか、わかりませんが、この法案の原案通りつたということになりますと、この再販売価格維持契約については、労働組合なり、あるいは消費生活協同組合等が適用除外になつておるわけです。そこでそういう組合は別に再販売価格維持契約を結んでおるのではありませんから、おとり販売等において、有名商品を濫売したというときに、各地の小売店から、こういうことをされては困るというて、どんどん本舗に苦情を申し込まれるというようなことが、さつそくありはしないかということを私は非常に憂えるのであります。こういう点に関しまして、本舗としてどのようなお考えをお持ちであるか、お答えを願いたいと思うのであります。
  57. 中山太一

    ○中山参考人 ただいまのお尋ねに対してお答え申し上げます。率直に申し上げますれば、除外されておる団体がありますが、これははたしてこの法律上公正であるかないかということは、私どもも非常に不安で、疑問を持つておるのであります。私はここでそれを力説し、追究する意味ではありませんけれども、まことにこれは再販売価格の維持の目的に一〇〇%の効力があつてほしいものが、あるいは三〇%、五〇%にとどまるおそれはないか。しかしないよりはある方がいいということになります。それでたとえば労働組合が除外されるのはいかにも社会政策的にいいことであると思います。しかし考えられなければならぬのは、労働者の本分は何かというと、担当職務に勤労するということで、それに対する報酬または代償として適正賃金を得ることにあります。小売業者は物品を販売するにいうことが本来の使命であります。それに対する代償として適正代金を受取るということであります。従つて勤労者は適正賃金で最低生活は絶対に維持しなければならぬ。また税金も、再生産力も、文化生活の維持も含まれましようが、小売業者もその代償とするところの代金には最低のマージンは保証されなければならぬ。そして経営費なり、生活費なり、税金なり、子女の教育費なり、また事業の維持に関する種々なる附帯費等は当然あるべきものである、これが公平な立場でないか。そうすると勤労者を保護するために、その主たるものである労銀の領分は絶対に侵してはならぬが、販売利潤によつて生活する者が小売業であるならば、その領分を侵すということは本来の目的と違い、別の意味になりはせぬか。あるいは社会政策というが、小売業者一千万の生活権にまで関係するということにもなれば、ほかにもう少し聰明な方法がありやしないか。勤労者を保護するということは私は絶対に賛成でありますが、小売商を犠牲にして、小売業の事業の基盤を破壊し、またはその正当な権利を侵害するようなことまでしてやらなければならぬかどうか。極端に言いますと、小売組合は自分の方がもうからないからといつて労銀の低下を認めるとか、そういうような低賃銀を強要したりすることはできないはずであります。お互いに基本人権が尊重されるとすればこの点において相互とも好意ある理解のもとに、両方栄えて行くとこうことが望ましいことのように思えます。それでさらに今度購売組合が除外されないのは実に適切なことと思いますが、小売業がその事業から利益を得たならば租税を払う、それから会社がこの厚生施設をしてこれを行いましたときには、これは損失勘定になつておりますから、当然納税しなければならぬものが税を払わなくて済む。小売業は衰微しますから、税を出すのが少くなる、会社の購買組合は当然厚生施設としてやるのですから、それで国家の収入にまでも関係する、こういう点があるようにも思います。それでこの点はいろいろの弊害もあり、正しい産業の経営、小売店が衰微し、問屋もいけない、生産者もいけないということになれば、産業秩序を破壊するようなことにもなり得ると思います。あまり長くなりますから略してまた御質問にお答えいたします。
  58. 栗田英男

    栗田委員 今の場合は小売業者と消費生活協同組合の例をとつたのでありますが、非常に不況が深刻になりまして、小売業者同士がこの再販売維持契約を破つて濫売したような場合には、本舗として取引停止をするお考えを持つておるのかどうか、あるいは違約金を課するという考え方を持つておるのか、それからもう一つは今の消費生活協同組合というようなものが非常に発達をして濫売をする、そして小売業者からも苦情が出るというような場合において、品物は同じだけれどもレツテルは一般の市販の商標とは違うものをつけて協同組合だけに卸すというお考えを持つておるのか。この点に関しまして生産者として実施の上からのお考えを承りたいと思います。
  59. 中山太一

    ○中山参考人 国内または国際関係によつて不況は一層深刻の度を加えるおそれもあるように思われます。それがいろいろな点に影響を及ぼして、小売市場にも不当廉売が一層深刻になるおそれがありはせぬかということですが、まつたくそういうおそれがありますので、この際ぜひ再販売価格維持に関する法律改正を仰ぐことができれば、その実害はある程度食いとめられるだろうと思います。そしてこれに対する制裁が本舗としてあるかということでありますが、今の法律でありますと、独占禁止法で極端な制裁は禁じられておりまして、普通であれば団体的に同業組合法、重要物産法によつて同業組合ではそれができたのですが、今ではそれが許されない。しかし英国では労働組合が組合員を及締ると同じように、契約販売価格の契約外の不当廉売したならば、それに対して損害賠償を訴えることが認められておる。そこまで労働組合を発達させ、保護しておると同時に、小売業に対してこれだけの保護がしてあるということについては、日本も将来この点を御考慮願わなければならぬかと思います。ただ道義を無視したり、安く売るのは社会奉仕だと誤つて、人に迷惑をかけておるような人に対しては、そういう不正競争をやつていることはいかぬことだというように、生産者、問屋など取引関係の人が忠告すれば、容易に反省し、改善し得られることになります。それをしないようなところにはやはり商品を供給する機関がなくなるから、自然人を妨害してまで事業を営もうとしてもできない。店員が盗んだ、どろぼうにあつた、あるいは運送の途中でとられた荷物を内々で安く売ることは、これは不正公為であつて、常にあるわけではありません。これは非常特殊の場合でありますから別の取締法があると思いますが、将来はこの点につきまして適当な方法が講ぜられてしかるべきである。ただ出荷は、業者全般の正しい繁栄を阻止するということは生、配、販・三者の不利ばかりでなく、またその業界全部の不利ばかりでなく先ほど申しましたように、国家のためにも国民の多数が不幸な状態になることに対しては——社会の便益と一致するということがわれわれ事業経営者の根本精神でありますから、それに反するようなことに対しては、あらゆる方法をもつて適正に取締りを行うようにして行きたい。しかして第一に精神的な改善協力を求めるのに、非常に便宜な、また向うで反省しやすいことになることだけは事実だと信ずるのであります。  それから講買組合その他に別のわくもしくは別の要求によつて出す考えはないか。これは双方、労働組合であるとか、購買組合だとか、こういうところには、——多くの消費者の便宜をはかるために、市場の小売店に害を与えないような方法で、別の言葉で言えば喜んでその便益をはかる、これは生産者としても当然であります。外国品の輸入を防ごうという場合には、他の会社及び勤労者に対してその便宜をはかるようなことは、別の意味から考えまして、やはり人なる目的達成のためにやらなければいかぬことだと思います。この点は今どういう計画をしているということは申し上げられません。
  60. 栗田英男

    栗田委員 日本の化粧品を製造する生産者は大体何軒くらいありますか。それからそのうちで一番大きな会社はどこであるか。その大きな会社日本の生産量の何パーセントくらいを占めているか。今日日本の消費量の中に外国の化粧品というものが何パーセントくらい入つておるか、これがもしおわかりでしたらお知らせ願いたい。他の委員からも質問がありますので、私の質問は保留いたします。
  61. 中山太一

    ○中山参考人 ただいまのお尋ねにお答えいたします。日本の化粧品品製造業者は終戦後は七百ないし八百ありました。ただいま東京、大阪関係の組合は三百余りであります。組合員外を入れますと、これに百あるいは百五十くらい加わると思います。組合員外の関係はよくわかりません。そして一本舗は、名前は差控えますが、一本舗がその業界に占めている販売力はどの程度か。これは大体二、三のものが、一番よく売つておりましても一割を越えない程度のものでございます。競争がはげしくございますから二割になることは今まではまだありません。二割になつても決して市場を独占する力はありません。まだそれくらいの程度であります。  それから外国品の国内に入つたものは大体多いときが一割ぐらい、百五十億円であれば十五、六億円、またこのごろは政府の方でも大分考えられつつありますから、これが二分の一になるか、三分の一になるか減つて行きつつあると思いますけれども、しかし日本でこういういいものができるのに、海外に大事な金を出すということは浪費で私はほかの、国民同士が取合いをするのならいいけれども、海外へ出すということは非常な国民的浪費だと思います。この点はまた御参考に表を後日出してもよろしゆうございますが、一応それだけ申し上げます。
  62. 中村時雄

    ○中村(時)委員 お話はよくわかつたのですが、たとえば戦後のあらゆる部面にわたつて、特に私は化粧品並びに薬品のためにつくられておるような感じがしてしようがないのです。化粧品を例にとりましても、戦後非常に急激に化粧品がたくさん出まわつて来たということは、それだけ化粧品というものは利潤があつた解釈ができると思うのです。おそらく資本主義の今のような面におきまして、この一つの資本利潤を追求して行くということは、これは資本主義の経済原則なんです。そういう意味において、資本利潤の追求をしておつた。しかしながら今度の朝鮮休戦あるいはまたそのほかいろいろな条件が伴つて、政策の転換をせざるを得ないような状態になつた。そこで大いに不況がさらに将来起るであろうという推算がここに出て来るわけであります。そのために現在までの価格維持なり、あるいは現在までの利潤の限度というものを今度はそういうような保護によつてみんなの立場を守つて行こうという線の方が強く感ずるのですが、それに対してどうお考えですか。
  63. 中山太一

    ○中山参考人 ただいまのお尋ねに対してお答え申し上げます。化粧品業は戦後多数生産者がふえたということは、利潤が多いからということは、一部のものを除くほかは断じてありません。普通の産業よりもまだ利潤は少いのであります。ただこれは大量につくれば利潤でありますで、少々のことでは利潤どころではありません。それだから戦後には品質にも商標にも責任を負わないものが、無責任につくつたものは——それは五人や十人の家族なり、従業員なりを養うためにつくつたのでしようが、産業として存在する化粧品は、きわめて利潤が薄いのであります。戦後に七、八百あつたものが今三百組合、あとが百五十あるかと思いますが、これだけ減つたの利潤の薄いことを如実に示しておるのです。これがまだまだ残念ながら半減し、三分の一になる。真に利潤にかまわずいいものを正しい値段で売るメーカーが残つて行くと思いますから、この点はそれで御了承をいただきたいと思います。  それから再販売価格の方は、朝鮮の休戦問題あるいはその他の事情、不況によつて急に将来の不安を予防するためにするのではないか、こういう御意見も一応ごもつともと考えますが、それも全然そうでありません。私の記憶するところによりますと、大正十年にこのままでは業界は破滅する。外国に対抗する力がないんだ、ことに関東大震火災のときから、値段を保護しない限りは業界というものは、少し外国の資本が来たならばみんな共倒れになるということから、当時国産愛用運動の急先鋒になつてつたのはそれであります。そのときからこの価格問題に対してはいろいろの団体をつくつてつておりましたけれども、今団体をつくることが禁止されておるから、戦後はどうもできない。独占禁止法によつて、正しい経営、責任のある商品を適正な価格で売ることが阻止されておるので、やむを得ずこれを譲歩をしておる。そこでこれは当局に対しては三年も五年も前から陳情しておりますが、なかなか取上げられなかつた。ところが実情を調査されて、これは捨ておけないということがわかつて、それから海外を御視察になつて、なるほど海外もこうだということがわかつて、なかなか容易にお取上げにならぬ公正取引委員会も、われわれのかつてな利己主義的な主張でないということを御了承になつたために、この改正案をお出しになつたのではないかと推察しておる次第であります。
  64. 中村時雄

    ○中村(時)委員 海外の問題なども激りました。たとえば東南アジアの経済の立地条件、あるいはブラジルのお話などもありましたけれども、実際に向うの日本人が日本の商品を買うということは、化粧品に限らずすべてが日本のものであるというなつかしい気持から買つているのであります。外国人はほとんど買つていやしません。私も向うへ行つて見て十分認めて来たのであります。これは商品の品質というよりも、日本人のつくつたものであるという一つの郷愁と申しますか、そういう考え方から出ているのであつて、品質が非常にいいというような意味において外国に売つているとおつしやいますけれども、その外国の買つている者はほとんどが日本人、大体こういう状態であります。そこで私どうしてもピンと来ないのです。  それで次にお聞きしたいのですが、生活費の中に化粧品の占める地位というものはどの程度のパーセントになつておりますか。
  65. 中山太一

    ○中山参考人 海外においての日本化粧品の需要されることについて今申されたことは、一部はその通りであります。日本品でなければいかぬといつていろいろのめんどうな議を排除してまで輸入しようというものは、やはり日本に好意を持つたものしかやらない。一般的には貸し売りをして、今のような為替手続なり、許可手続をしてまで何も化粧品を輸入する必要はないからしませんが、これが自由になつて来ましたならば、日本化粧品は確かにいいから外国、ことに東南アジアには相当売れます。東南アジアの各地から共同経営、向うに加工場を設けることの申込みがだいぶんあります。それで品質においても、アジア民族には日本で研究したものが歓迎されるということだけは間違いありません。それでこの点は将来大いに微力をささげて御奉公するつもりであります。  それから次の点は、はつきりしたことは申しかねますが、ちようど私どもの文化研究所で女性の文化生活に対して二百人の統計をとつたものがありますから、これをあれしたらよろしいのですが、私きようそのつもりで来ませんでしたか、多分収入の三%から五%、ごくそういう方に興味を持つておられない人は一%もお使いになりませんが、普通は三%から五%のところのように考えております。
  66. 中村時雄

    ○中村(時)委員 わずか生活費の三%ないし五%しか使つていないという化粧品ですら——これは化粧品を例にとつているわけではないのですが、たとえば消費組合、労働組合をこの法案から除外しなくちやならぬというほど今の一般労働者は低賃金である、適正賃金でないということを意味しておるわけです。これがまず第一点。そうした場合に、たとえば今お宅なんかが、労働組合あるいは消費組合からそういう商品を契約したいというような場合に、対等の立場において契約を取扱つていただけますか。
  67. 中山太一

    ○中山参考人 労働組合の方々は負担のパーセントが少いけれども、やはり安いことを望まれる。それくらいだから、賃金関係も影響しておるというお話から、将来やはり販売について組合等に相当な不利でないような均幸した待遇を与えるかというようなお尋ねのように考えますが、これはやはり他に害を及ぼさぬように、正当な小売業が実害をこうむらないならば喜んで私は協力すると思います。現に下関で鉄道の退職者協会がありまして、それに対して業者が協力しておる、これはことに日本で初めてでありまするが、百貨店のような関係で協力している、これはおもしろい例でありますが、産業人は——これは釈迦に説法でありますけれども、今は大分目ざめて、自分だけよければいいというような利己的な幼稚な思想でなくて、やはり自他ともに有利で栄えて行くようにという気持を持つておりますから、お説のことについては十分——少くともわれわれ業者は欣然協力し得るつもりでありますから、小売店の値段がくずれないような、いわゆる労働者にとつて、労働賃金を不自然に低下さすような悪影響を与えることがいけないと同様に、その悪影響がなければ喜んで協力し、またそれ以上のサービスもできるかもわかりません。
  68. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういうことを認めるとするならば、それはお宅のようなりつぱな考え方があればけつこうです。ところがお宅はただ化粧品なら化粧品一本だけを見ておつてこういうように進められるといいますが、このことが認められるとするならば、価格の維持持政策という今のお話がてこ入れになりまして、あらゆる面に影響が出て来て、これが価格カルテルに関連いたしますと、そのままその価格が下へ流れてしまう。ところが物価の変動は常にある、そういうような場合には、どういうふうにお考えになりますか。
  69. 中山太一

    ○中山参考人 運営のことは当局でなければわかりませんが、当局の公正取引委員会のお考えは、そういうおそれのあるものには認められないのじやないでしようか。これは過去も現在も、市場調査もして小売再販売価格の維持を認めても、消費者にも害がない、産業にもいい影響を及ぼすというもののみを許可されて、そういう実害の伴うようなものには、公正取引委員会は他の官署よりはかたいから、私どもの徴力では容易に御了解を得ることは困難です。これはいかぬ、これはどうだといつていろいろの資料をもつて突きつけて認められぬから、よほどまじめな考えをもつて責任を負うたものでなければいかない。それで信用ある商標のあるものと、商権擁護の意味で、国家の許しておる商権、しかもそれと実際市場とをつき合せまして運営されるつもりで、実害がないようにしようという当局の深甚なる御配慮であろうと思いまするにもかかわらず、当局は労働組合その他にはまだまだ遠慮しておられるから、私は今何も——今日は再販売価格を一応何してもらつて……。
  70. 中村時雄

    ○中村(時)委員 何もそこまで立ち至つて聞こうとは思つていません。実際の問題として、たとえばお宅のような生産者が下へ品物を流しますね。流して行つたときに、実際上、上の方で非常に利潤が少くなつて来る場合がある。そのような場合に、非常におそれることは、たとえば下部において今まで何割というものをやつてつたわけです。その何割というものを打切つて、たとえば二割であつたものを一割にして、自分の方の経営に非常に苦しいからといつて、その一割を自分の方へ取上げるということが考えられるわけです。あなた個人は、実にりつぱな意見を出していますから、そういうことはないと思います。ところが一般にはもうけるということが頭に来ているのが一般の人なんです。だから実際に公取委員会でも今そのことが非常に問題になつておるのであります。だから、あなたは公取委員会ではそうじやないからこういうものを出したのだろうと言われますけれども、そうじやなくて、現実にはそういう心配がある。だからあなたがそこまで言うのは僭越なんです。  ついでですからもう一点高島君に聞くんだが、たとえばこういうような曖昧模糊たるものが大分来ておる。これは数の上では通るかもしらぬが、本質の上では通すべきではない。そこで、この程度のものだつたら労働組合としては認めるかどうか。いずれこれは御相談もあるわけですが、この独禁法の一部分改正、この程度のものは認められるかどうかお聞きしたい。それにもつて来て販売価格の問題です。今言つていらつしやるのは化粧品を中心にして言つているのですが、労働組合を対象にする場合には、幅の広い再販売価格というものが問題になつて来る。だからその点で認めるか認めぬかを先にちよつとお聞きしておきたい。
  71. 中山太一

    ○中山参考人 ただいまの話はまつたく私はそうではないかと思いますということだけでございますから、どうぞよろしく……。  それで、お前は正直にやるけれども、他にそうでない業者もあろうということですが、これは私はみな同じ気持だと思うけれども、そうでないとしますれば、その人は衰微します。小売業者は売らなくなります。だんだん売れて行つて、消費者も信用し、小売屋さんも熱心に売つてくれるようになつたならば、今度はこの勢力をたよりにして利潤をふやす。これは労働でも何でも同じですが、搾取的なことをやつたらそういう品物を売らぬようになりますから、これは自業自得、悪因悪果で、その人自身が滅亡して行きますから大きな制裁があるわけです。これは御安心いただいていいと思います。
  72. 高島喜久男

    ○高島参考人 今出ております案を認めるか認めないかという御質問でございますが、労働組合の基本的態度としてはこれは認めません。認めないという態度を労働組合の機関として決定しておるところもありますが、まだ機関として決定していないところもあります。総評議会としては、機関としての態度を決定しておりませんけれども、しかしながら、労働組合の基本的立場としてはこれを認めるということはあり得ません。
  73. 山本勝市

    山本(勝)委員 最初に中山さんに二点だけお伺い申しますが、一つは、戦争前にもやはりこういう再販売価格という制度があつたことがあるかということでございます。すなはち小売商店とメーカーとの間にその販売価格について契約をするということがあつたのかどうか、もしあつたとすれば、それが完全に維持されたものかどうか。  次に、私は時間の関係で全部質問いたしますが、今日のような不況時代ですからとうてい今までのままではやつて行けないというので、この再販売価格協定を結べば幾らかの効果はあるかと思いますけれども、しかしやはり薄利多売でやろうという日本の小売商人の競争というものは絶えない。ですから、これは結んだだけではなかなかその再販売価格そのものを十分に維持することは困難ではないかと思うのですが、いかがでしようか。
  74. 中山太一

    ○中山参考人 戦前に再販売価格のようなものが維持される方法があつたかどうかということでありますが、これは戦前には重要物産同業組合法によります。同業組合によつてこの価格の維持が行われたのであります。一時百貨店と小売店との対立摩擦が深刻なときに、小売店はほとんど全滅するだろうという問題まで起りました。それから農業協同組合との間にも問題が起りました。これは不当な値段で売りくずしはしないということで、法律上では疑義がありましたけれども、やはり百貨店も大事なお得意でありますから、とうとう百貨店との間に協調ができて、維持ができました。それから小売業者は小売業者の団体がありまして、それが売りくずしをしないように、そのかわりには不当廉売もしない、高売りもしないという附帯した申合せを大概しております。それを高売りすれば、つまり、どんなにいい品物を安く適正に売ろうとしても、売れぬようにしようと思つて高く値をつければ、それは生産者に対してボイコツトするという反対の意味になりまして非常な害がありますから、高くも売らないし、廉売もしない。こういうふうな意味で、やはり組合が横の連絡を維持されて、それを守らないところには問屋なり生産者が品を送らぬというようなことで、割にこれが実行されておりましたけれども、これが今度のこの法律の使命で、そうすればすぐ訴えられるのでありますから、小売店はみな非常に悲惨な立場に一時陥るということを言つております。  それから、これができたならば完全に維持できるかどうか。これは薄利多売です。薄利多売というのは、薄利多売でなければもう決してその商標のある商品が売れないのです。それに、非常に多くの利益を小売屋さんに与えたならば消費者が満足しませんで、ほかの競争品が行きますから、薄利の程度に指定した値をつける。それを安く売ると事業の維持ができないというのは、それは不当廉売に属するからであります。しかしこれは絶対守れるかというと、絶対守れる要素が精神的にも制度的にも備わりますけれども、あの印紙でもタバコでも、小売店が自分の家からよけい買つてもらおうと思つて、ないしよで安く出すところがあります。これは私ははつきり言明はできませんから、そういうときにはどうするかということもわかりませんが、中にはそういう人もないとも限りません。これはまた御当局より適当に聞いていただきたいと思います。
  75. 山本勝市

    山本(勝)委員 もう一つは海外に対しての化粧品の輸出ですが、これは相当伸びる可能性があると思うのです。日本人の産業としては、おそらくほかのものに比べて負けないほど出るのではないかと思うのですが、ただ、今日の為替レートが、かりに四百五十円とか五百円とかいうやみ相場程度ではなくても、三百六十円ではなしに、ある程度日本の通貨の実勢に沿うたところにもし変更されたと仮定して、——実際はなかなかそうならないでしようけれども、そういう実際の日本経済力に適応したところへ日本の対外通貨価値というものがかわつたら、これは相当海外に出るのではないかと思いますが、その点はどういうふうに見てやられるかを承りたい。
  76. 中山太一

    ○中山参考人 御説も輸出促進の一つの要素でありましようが、今各国とも輸入資金が欠乏しておりますので、それで、日本では化粧品をアメリカから輸入しながら、他では、ほかの機械とかあるいは農業肥料、その他重要な生産財の方を先にして、消費財の方はなるべく資金に余裕があるときにしたい。それから自転車のような活動するときに必要なものでも、これは第二義的に扱われて、向うでは希望しておりながら、容易に許可がおりないというところまでなつております。  それから、御説のように、化粧品は将来必ず国家のために役に立つものです。私ども業者は、化粧品を理解してもらつて保護してもらいたい、これは一つのモットーにしております。つむなかれ国の柱となる双葉、今幼稚であつても、将来国の一つの産業の柱になり得るものである、その確信をもつて、真剣に努力を続けております。
  77. 山本勝市

    山本(勝)委員 高島さんにちよつとお伺いします。あなたの今の御意見は、日本労働組合総評議会の御意見ですか。
  78. 高島喜久男

    ○高島参考人 日本労働組合総評議会としましては、先ほど申しましたように、機関としてこの問題についての意見を決定しておることはありません。ですから、機関の決定という意見ではありません。
  79. 山本勝市

    山本(勝)委員 組合としては絶対に認められぬということがありましたが、その組合というのは、この組合じやないのですか。
  80. 高島喜久男

    ○高島参考人 今の質問にお答えします。労働者の生活を守ることを第一義的な原則としておる労働組合にとつては、基本的な立場として、この案を認めることはできないとお答えしたわけでございます。
  81. 山本勝市

    山本(勝)委員 つまり高島さんの考えでは、こういうわけですね。自分の解釈する労働組合の根本の考え方からすれば、この改正は認められるべきものではないと考える、こういうわけですね。
  82. 高島喜久男

    ○高島参考人 ある意味においてはお説の通りであります。他の意味においては、それは私個人の考えではなくて、現在の労働者の共通の考え方を代弁しておるということであります。
  83. 山本勝市

    山本(勝)委員 それは組合の役員会か何かに相談されて、今日出て来られるときに、大体こういうふうに答えろということでありますか。そうでなしに、さらに一般の、この組合傘下の労働者の個人々々全部にわたらぬまでも、大体各方面意見を聞いて、下の方の意見自身が、もうこういうものは認めぬようにしてもらいたい、こういうことであるのですか。あるいはそういう手続をとつていないにしても、個々の組合員の少くとも大多数が、これを認めない、こういうことを、責任を持つて言い切れますか。
  84. 高島喜久男

    ○高島参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。日本の労働組合は、必ずしも一色で塗りつぶされておるわけではありません。従つて日本の労働組合の中には、独禁法の緩和どころか、実は独占そのものにも緩成する部面もございます。しかし日本の労働者の大半をもつて組織しております総評議会傘下の組合においては、これに対する反対は、一般的な考え方となつております。そしてまた、きよう実は総評議会の大会が開かれておりますけれども、総評議会の運動方針は、独占に対する反対を明らかに表示しております。また総評議会傘下の主要組合であり、日本の最大の独占企業の一つである八幡製鉄の従業員組合は、独禁法緩和反対を決議しております。それから八幡製鉄の組合を含みます鉄鋼労働組合連合会も、反対を決議しております。その他に、そういうふうに機関としての意見を決定しておるところもございます。またさらに労働組合の若干の幹部、個人々々の意見を総合しまして、それと私の考えます労働組合の理論的な態度、それとを総合しまして、これは労働組合として基本的には反対であると申し上げたわけです。
  85. 山本勝市

    山本(勝)委員 その点はよくわかりました。私が誤解して聞いておるかもしれませんが、つまり先ほどの御意見は、独占禁止法そのものにも反対というのですね。それから独占禁止法の緩和にも反対、こういうわけですね。あるいは独占禁止法には賛成、今度の緩和には反対というのですか、どちらですか。
  86. 高島喜久男

    ○高島参考人 今の独占禁止法に対しまして、われわれが意図しますのは、独占そのものに対する反対、独占の政策に対する反対でありまして、そのようなわれわれの意図は、現在の独占禁止法によつては達成できない。従つてわれわれは、もつと別の態度で、別の角度で、独占に対する反対の闘争を組織しておるし、組織しなければならない。こういうふうに申し上げたわけです。
  87. 山本勝市

    山本(勝)委員 先ほどは、独占には反対、しかしながらそれは自由競争に賛成というのではない、こういうことでありました。つまり自由競争秩序にも反対、また独占にも反対。そうすると、賛成というのは何が賛成なんですか。どういう秩序に賛成なんですか。
  88. 高島喜久男

    ○高島参考人 今の御質問にお答えします。山本さんは、独占自由競争とは二つの対立物であつて、それ以外に何ものもないというようにお考えのようであります。私はこれは間違つておると思います。なぜかと申しますと、独占というのは、経済社会において、少数の人間が経済力を独占することなんです。多数の者が多数の利益のために団結することはあり得るのです。現にアメリカにおきましては、労働組合は、労働者が団結して、労働力を独占することだ、従つて労働組合は独占禁止に触れるのだという意見かございます。私どもはこのような独占禁止考え方に対しては、反対するわけです。
  89. 山本勝市

    山本(勝)委員 よくわからぬのですが、この独占禁止法で言う独占には反対、しかし独占に反対というわけではないというのですか。たとえば今アメリカの例を引かれましたが、アメリカの労働組合が音頭をとつて、それが一切の産業独占し、一切の価格を決定して行くという独占ならば賛成、こういうわけなんですか。
  90. 高島喜久男

    ○高島参考人 逆に御質問したいのですが、山本さんは独占の定義をどういうふうにお考えになつていらつしやるのですか。それによつてお答えしたいと思います。
  91. 山本勝市

    山本(勝)委員 いや、私はあなたに質問しておるのであつて、どうもお答えの意味がわからないで私は決してここで言う独占というものと、競争というものとが、二律背反のものとは考えておりません。その点では形式的に言うと、あなたと同じなんです。ただあなたのここで述べられた意見がよく了解しがたかつたので、それをただ明らかにしたいという意味でお伺いしたのです。先ほどのお話で、競争独占に必然に転化するのだ、こういうことをおつしやいました。従つてこんな独占禁止法などがあつたつて防げるものではないのだ、こういうお考えはその通りですね。
  92. 高島喜久男

    ○高島参考人 独占というのは、必ずしも二つのものが協定することだけが独占ではなくて、一つのものが巨大な力を持つた場合には独占であるはずです。そういう意味で、自由競争というものは、これは必然的に優勝劣敗を伴います。その優勝劣敗の結果、必然的に一つのものが巨大な力を占めることになります。これは独占なんです。このような独占に対しては反対しておるわけであります。ですからこの独占禁止法のようなもので独占に反対できるものだと考えてはいない。こういうふうに私は申し上げておるわけであります。たとえばカルテルがつくられなくとも、コンツエルンがつくられなくとも、一つのものが巨大な力を持つて、それが国民生活に対して大きな影響力を持ち、大きな圧迫を与えるという場合には、これは独占であり、これに対しては反対するというふうに申し上げるのであります。それから労働者が自分らの生活を守るために、団結する。その場合に、労働力の売買はなるほど独占されます。それは団体協約によつて契約されることになります。しかしこれは私どもは反対すべきものでなく、私どもは権利として主張しておる。中小企業者が組合をつくる、これに対してもわれわれは反対しないし、これは積極的に賛成し支持されるべきものである、こういうふうに考えておると申し上げておるのです。
  93. 山本勝市

    山本(勝)委員 つまり労働者の場合には、それは独占でないから賛成しておるというのか、独占ではあるけれどもしかしその場合には賛成だ、一種の独占には相違ないと考えられて、しかし賛成だというのか、あるいは初めから労働者の場合には、かりにその中に競争が行われないようにモノポライスしても、それは決して独占とは見ないのだというのですか、要するに独占というものの意味がはつきりしないわけなのであります。
  94. 高島喜久男

    ○高島参考人 従つて私は先ほど山本さんが独占についてどういう御定義をくださつておるかわからないのでお答えしにくいと申し上げたわけなんですが、逆に私の方から独占の定義をしてもいいわけです。私どもはここでアメリカ流に独占という言葉を使つておる法案に対しましたので、独占という言葉を使いましたけれども、独占ということを問題にしておるわけではないのです。独占資本ということを問題にしておるわけなんです。
  95. 山本勝市

    山本(勝)委員 先ほどあなたの言葉に、およそ独占に対しては、私の独占であつても、あるいはそうではなしに、公のというか、何という言葉を使われたかしらぬが、独占であつても反対なんだと言われたときの独占というのは、普通に言われる競争のない状況独占というという意味でなく、資本家の国家、あるいは資本家そのものによつて競争が否定される場合その独占は反対である。こういう意味解釈してよろしゆうございますか。
  96. 高島喜久男

    ○高島参考人 その通りです。今の御意見通りに私どもは解釈しております。
  97. 山本勝市

    山本(勝)委員 わかりました。
  98. 中村時雄

    ○中村(時)委員 高島君に一言お聞きしますが、もしこの法案が、特にこの独禁法そのものの問題があるわけですけれども、一応それは除外して、この一部改正法案という問題で上程されて来るわけなんです。これははつきりと決定したわけではありませんけれども、この問題が与える影響というものはかなり大きな問題が出て来る。それに対してあなたが今ここに来ていらつしやるのは個人の資格になつている。そこで決議機関としてこれを総評の今度の大会に提案されるとか何らかの行動的な線が非常に大事な問題になつて来るわけです。そういう御意見を持つていらつしやるかどうか。
  99. 高島喜久男

    ○高島参考人 今の御質問に対して私個人の意見をお答えすることになります。独禁法の緩和に対して反対する態度を総評なら総評の機関に提案して決定する意思があるかどうかということですね。実は先ほど申しましたように、たとえば八幡製鉄の組合あるいは鉄鋼労連、それらにおいて独禁法の緩和に対する反対を決定しておるわけです。そしてそれらの組合からこれを総評に提起して、総評において独禁法緩和反対の態度を決定し、その運動を起そうという意向といいますか提案といいますか、そういつたものが現在あるわけです。今度の、きようから開かれておる大会でそれが問題になるかどうかわかりませんけれども、総評としてこれに対する態度を決定する時期は遠からずあるものと私は信じております。
  100. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうなつて来ますと、時間的な問題が出て来る。時間的な問題としてはすでに上程されて審議に入つている。これが済んでから云々したつて始まらない。幸いにして今大会をやつておる。だから提案理由として八幡製鉄の組合でもけつこう、どこでもけつこうです。その一つの問題の取上げ方にあなた個人の意見としてすぐに行動的にそれが出られるかどうかということをお聞きしているわけです。
  101. 高島喜久男

    ○高島参考人 ただいまの御質問に答えますと、その行動の形がどういう形であろうと、たとえば国会共闘を通じてであろうと、あるいは大衆的な何らかの意思表示であろうと、あるいは大衆的な何らかの行動であろうと、その形がどのようであろうとも、反対の行動が行われつつありますし、また行われるということは私御返事できると思います。
  102. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは最後に一点高島君に申し上げます。時間的な問題が非常に早急に来ているわけです。深くつつ込んで行きますと、おそらくスト禁止法ともからんで来る。ですからその意味において、相並行両立して、この問題をあなた自身が組合員の立場において提案を今度は申し込んでおいてもらいたい。  最後に中山さんにお聞きしたいのです。というのは、山本先生は非常に喜ばれるでしようけれども。資本主義のいわゆる自由競争という意味からいいましたら、今言つたように、そういう多くのものが集まつていろいろ競争し合つて行く中に、品質の向上もあり、技術の向上もあり、従つて消費者に対しては、これがなるほど安くていいのだということになれば、購買力が自然にできる。何もこういうことをしなくても、本質的な今の資本主義の形態の上から行けばそれが最も妥当だ。ところが資本主義ではいかぬということが今実際出て来ている。実際にカルテルを結ぶとか何とかいうことはそういうことだ。私が言つているのは、カルテルそのものは計画経済的な面から見た場合はかまわぬ。ただ問題は、その対象が公平な利潤の分配という点から、消費者に利潤が上らないところに問題がある。だから実際の問題としてあなた方のお考えは、この問題よりも今言つた自由競争によつてつて行かれる方がより以上のつばなものができ上るというお考えはないですか。
  103. 中山太一

    ○中山参考人 たいへんむずかしい問題で、私は御満足の行くお答えを多分しかねるだろうと思います。この点前もつて御了解いただきたいと思います。私は労働組合であつても、資本家であつても、団体力が害をなすのでなくして、それを運営するあるいは指導する根本にりつぱな理想、信念、人格を持つてこれを善用すれば、国家、社会、人類に益する。決して資本が罪悪ではない。労働が罪悪ではない。これを誤つて濫用すれば、国家、社会、人類のために害になる。だから団体力によつて資本家が結束して、つぶれかかる産業を大いに起すのはいいが、それがために依存産業に非常な迷惑をかける。自分たちのみを保護して、依存産業考えないようなときには、これは必ずしも善とは言えない。それをつぶしてしまえば、多くの勤労者を失業者にする、国の産業の基本もつぶしてしまうから、一時の便法として何かの保護をしなければならぬというときには、注射は好ましくないけれども、やはり注射で一時の危機を救うて、それからおもむろにいい方法を講じるということはあり得るものではないかと思います。私はあまり適当な答えはし得ませんから、これくらいでお許しをいただきたいと思います。
  104. 中村時雄

    ○中村(時)委員 まことにりつぱな御意見であり、あなた個人としては私は非常にいいと思つているのです。但しちようどこういうことがあるのです。一つの最も具体的な例をとつてみますると、パチンコ屋でパチンコを当てるとタバコが出て来る。そうするとこの四十円のピースを町で三十五円で売つていると、必然的に三十五円のものを買い出す。正常な立場で注文通り行くならいいが、但しこれが現実の行為として現われて来る場合、はたしてこの法案の内容通りできるかどうか、ここに大きな問題があるわけです。たとえば最もりつぱだと思われている官吏において、通産省の涜職事件考えてごらんなさい。最も多くの事件を出している。そういうように出て来るのであります。これに対してあなたがおつしやつているところの責任がとれるかどうかということが大事な問題だと思う。あなたがおつしやつた指導なりそういう事柄を、あなた方の立場において正常な形において責任をとれるかどうかということを最後にお聞きしたい。
  105. 中山太一

    ○中山参考人 資本の団結によるいろいろな何でカルテルのことに関連したお尋ねのように聞きましたので、先ほどのように申しました。今度は、再販売価格のことに関連してのように拝承いたしますが、それでよろしゆうございますか。
  106. 中村時雄

    ○中村(時)委員 仰せの通りです。
  107. 中山太一

    ○中山参考人 これは業者がやはり、先ほど来申します通りにどうしても商売は信用を重んじ、道義を重んずるということでないと絶対どんな法律があつても完全に行きませんから、それでわれわれメーカーも、問屋も、小売業者の指導者も、やはりせつかく大きなものの犠牲になつているのを、御了解を得て幾分でも緩和することができたならば、これが徒労にならぬよう水泡にならぬように真剣な努力を続ける、意義あるように、価値あるように努力するということを申し上げたい。それ以上は……。
  108. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこですよ、問題の判断の仕方は。たとえばあなたのおつしやつている善なる面が多い場合にはいいですよ。ところが今までの実際は悪い面の方が多場く出ているのです。多く出ているから、こういうふうなことをしようとしている。そうすると悪い面が数が多い場合においては、この維持契約というものはかえつて害をなす面の方が強く出て来る。それを言つているわけです。
  109. 中山太一

    ○中山参考人 これは私のみでなく競争同業生産者の大体多数の意見であります。従つてそれにやはり関連する問屋、小売店もみな入るわけです。今の日本の終戦後の商売の堕落というものは何によるかというと、利己主義ばかりに走つているから堕落している。昔の商売というものは売る人も買う人も信頼し、感謝し合い、たまに利益をさしている。今は自分が利益すれば買うた方が損する、買うた方が利益すれば自分が損する。それだから結局競輪、競馬と同じで、商売と勝負とを取違えている。スイツチの入れかえをしている。この点を直さなければいかぬというのが化粧品同業者の多数の自覚した指導精神、というものよりもこれをもつて業界はともに助け合つて行こうということで、私は薬業においてもよほど進んで来ておりますから、その点も同様だと思います。あとのことはまだ調査不十分でありますから、このくらいで……。
  110. 中村時雄

    ○中村(時)委員 時間がありませんから、あとは保留いたします。
  111. 栗田英男

    栗田委員 高島参考人に一点お尋ねをいたしたいのですが、今のいろいろのお話を聞いていると、あなたは今までの独禁法にも反対、今度の修正案にも反対、私的独占法にも反対、国家的独占法にも反対、このような御趣旨のようであるが、そこで今中村委員からのお話によると、たまたま総評の大会が開催されているので、早急にそこで決定をして本委員会独禁法の審議と間に合うようにこういうことを提案したらいいではないかということだけれども、一体私的独占法にも反対、公的独占法にも反対、現在の独禁法にも反対、改正案にも反対というと、あなた方はどのような独禁法考えているのか。一体そういうようなものが総評で取上げられた場合において、しかも日本最大の労働組合がはたしてそういう案がこの委員会においてまじめに論議されると思つているかどうか、この点に関しましてあなたの率直なる意見を伺いたい。
  112. 高島喜久男

    ○高島参考人 ただいまの御質問はまつた言葉の遊戯に陥つていると私は考えます。先ほど申しましたように独占は抽象的なものではないのです。言葉としての独占というものはどこかの天国にあるにすぎないものなんです。現実の独占は資本の独占であるわけなんです。私的資本の独占、国家資本の独占、私的または国家的独占資本が存在する。これに対して労働者は、労働組合は反対している。そしてこれに反対する反対とは独占一般という、独占という抽象的な言葉によつて自由競争主義を謳歌することによつては闘えない、反対できない、こう私は申し上げたのです。このことは決してあいまいなものでなく、内容的には非常に明確なことだと私は考えます。それを独占という一つの言葉の遊戯として、独占が幾つもある、みな反対ではないか、こういうふうに言われることは具体的な理解の仕方を欠いているのじやないかと私は考えます。
  113. 栗田英男

    栗田委員 あなたの話を聞いていると大分私をあなたの思想の基盤が違うようでありまして、これではどこまで行つても平行線でありまして問題になりませんから、あなたに対する御質問はこれで打切りをいたします。  最後に中山参考人に一点お尋ねいたしたい。やはり私は非常に不況になることを心配しているのですが、非常に不況が深刻になつて参りまして、Aという店が濫売を始める、そういたしますとBという店が非常に意志の強固な主人公であつて、近所に濫売が起きているけれどもじつとがまんをして、あくまでも再販売維持契約というものを堅持をしているということになりますといいのでありますけれども、結局問題はおとり商品でありますから、あの店はいくらまじめにやつてつても高いのだという折紙がつけられてしまつて、結局経済的に参つてしまうということになりますと、Aも濫売を始める、Bも濫売を始める、Cも濫売を始めるということになると、これは収拾がつかなくなつてしまうのじやないかというような一つの懸念があります。しかもそういうような場合においてよくこの生産者というものがいわゆる再販売維持契約を守り抜くことができるかどうかという点につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
  114. 中山太一

    ○中山参考人 不況が深刻になつて、中には経営の不健全なものがやむを得ず濫売とか不当廉売をする。それが行われ続いたときにはまた附近の競争小売店が同様に濫売をしはしないか。それを強固な意思をもつて、ある意味では聖人君子のように売れても売れなくてもかまわぬとして、全然適正価格を守つてつて行くかどうかというお尋ねのように拝承いたしました。この点は従来のようでありますと非常な不安が伴いますから、いつくずれるかわかりません。現在もこういう濫売のビラを、東京市内である店がずつと配つております。こういうものを配つて、そうして近所の小売店のお客を吸収しようとして非常な妨害行為をしておられます。これが何回も続くと、客も減るから耐えられないことになりましようが、今度の再販売価格の維持ができますと、今度はたよりがある。今まではいつまでやつたら、いつまでしんぼうしたらいいかというくらいでしたが、今度はあそこまで行けば山の頂上、あそこまで行けば岸に着き得るというので、苦難のところを耐えて行く目標ができますから、それで必ず多数の小売店がこれを堅持しまして、必ず業界共栄のために協力すると私は信ずるのであります。
  115. 小笠公韶

    ○小笠委員 私は高島さんにひとつお伺いしたいのです、高島さんの立場はよくわかるのでありまして、ただお話をよりよく理解するために用語について一言お伺いしておきたい。あなたのお話の中に労働者、農民、中小商工業者、これを平和国民と称するということがありましたが、中小商工業はいかなる範囲のところで規定しているかということが第一点。第二点はあなたの言われる民族産業とは何であるか。この二つについていわゆるデフイニツシヨンだけでけつこうですからお示しをを願いたい。
  116. 高島喜久男

    ○高島参考人 中小商工業者とは何をさすか、どの程度のものをさすかという御質問でございますが、これは簡単で、独占資本でないものは中小商工業者、私どもはそう見ております。それから民族産業というのは、日本における産業という意味に理解してよろしいと思います。
  117. 小笠公韶

    ○小笠委員 そうしますと、独占資本にあらざるものを中小企業と称するが、これは前の蜷川中小企業庁長官がよく言われた言葉である。独占資本にあらざるものが中小企業であれば、しからば中と小との区別はどこでしますか。
  118. 高島喜久男

    ○高島参考人 中と小とはどこで区別するかというような区別はしておりません。またする必要はないと考えております。と言いますのは、中と小とによつて労働者及び労働組合が、それに対する態度が違うということはあり得ないからです。
  119. 小笠公韶

    ○小笠委員 実は中小企業の定義としまして、独占資本にあらざるものを中小企業ということは、わかつたようでわからぬのであります。あなたは先ほど来抽象論はごめんだ、具体的なデフイニツシヨンを下せということを山本委員に対して言ておられたようでありますが、独占資本にあらざる資本、それを中小企業と言うが、独占資本にあらざるとは具体的にどういうものかお示し願いたい。
  120. 高島喜久男

    ○高島参考人 具体的に申し上げますと、独占資本に反対し、独占資本と闘う資本、それで具体化されていると思います。
  121. 小笠公韶

    ○小笠委員 具体化されているかどうか、これは常識の問題になりそうでありますが、非常に問題はデフイニツシヨンがむずかしいと私は思う。そこであなたの述べられた立論、いわゆる労働者、農民層、それに中小商工業者、いわゆると称する平和国民というものの範囲というものを、相当明確にせられないと、あなたのお話の理解が非常にむずかしいと私は思うのであります。あなたは抽象論を排除せられておりますが、あなたのお話はあくまで頭の中で動いておると私は理解するのであります。あなたの、独占にあらざる資本という中小企業の定義は、実は私はわかつたようでわからぬということを申し添えて終ります。
  122. 迫水久常

    ○迫水委員 高島さんにお尋ねいたします。きようは高島さんは、現在提案されておる私的独占禁止法の改正案についての、あなたの御意見を述べにいらつしやつたはずだと思います。先ほどからのお話を承つておりまして、私の受けました印象をこれから申し上げますから、それでその通りかどうかということをお答え願いたい。結局いろいろな角度から、いろいろむずかしい、ちよつとわれわれには理解のできないような単語、ないしどういう定義をもつて使つておるかわからないような言葉を使われて、懇切に御説明がありましたが、結局あなたの言われようとするところは、私的独占禁止法という現在の法律並びにこれを改正しようとする今回提案になつておる改正案は、いずれも資本主義社会におけるところの立法であるから、自分たちの立場であるマルキシズムの立場からは、全然社会の違うところの立法であるから、これは論評する限りでない。自分たちとは無関係な世界の法律であつて、従つてこれについては論評する限りでない。いろいろなことを言つたけれでも、実質的には何も言う意見はないのだ。こういうことと私は理解しますが、よろしゆうございますか。
  123. 高島喜久男

    ○高島参考人 ただいまの迫水さんの御理解は、私の説明の不十さ、あるいは用語の不正確さがあつたかもしれませんが、非常に誤解を含んでいると思います。私は独占禁止法を緩和しようとする、今提案せられております法案は、日本の現在の段階で独占資本をさらに強化しようとする法案だ、従つてこれに対しては反対だということを申し上げたのであります。決してこれは無関心の問題だということを申し上げておりません。現在独占資本に対する労働者の、労働組合の闘いは、独占禁止法を緩和するこの法案というものに、集中的に表現されているということを申し上げたはずであります。決して無関心の問題として申し上げたつもりはありません。
  124. 迫水久常

    ○迫水委員 無関心でなくて無関係、違う世界の問題だと……。
  125. 高島喜久男

    ○高島参考人 その問題を次に申し院げます。われわれは今独占資本に対して反対している。しかし資本主義に対して労働組合が全面的に反対してい活ものではないのです。なぜかといいますと、労働組合といいますものは、資本主義のわく内においても、賃金を上げて労働者の生活をよくして行くことを目的としているものです。従つてこの限りにおいて、労働組合はいかなる場合においても資本主義を否定するというものではないのです。労働組合が発展して行きますときに、労働組合の中で労働者が闘つて行きますときに、資本主義を否定して社会主義を信ずるようになる、あるいは社会主義のために闘う、あるいは社会主義の政党に入るということはありますけれども、労働組合はいかなる場合においても社会主義でなければならぬ、資本主義を否定するものだというものではありません。私どもは今独占資本を相手とするのでありまして、資本主義を全面的に否定することが、この独占禁止法緩和に反対する中心課題だと私どもは決して考えない、こういうことです。
  126. 迫水久常

    ○迫水委員 御説明はよくわかりました。しかし今具体的に提案されているところの独占禁止法に関する改正法律案というのは、たとえば不況カルテルというものを許すとか、合理化カルテルというものを許すとか、あるいは再販売価格協定というものを認めるとか、それぞれ具体的な問題です。あなたのお話は、私的独占禁止法というものが、独占資本を否定する法律ではないということですが、これはしかし独占資本ということに重点があつて、顧みて他を言つておるような感じがする。具体的に私的独占禁止法というこの法律について、何ら意見をお述べにならないで、自分たちは独占資本というものを排撃するのだ。それはよくわかるが、しかしそれは何ら私的独占禁止法の改正法律案を、われわれが審議する上について参考にはならない。だから結論は、あなたはこの法律についての意見は、世界が違う法律だから、自分たちとは無関係なものなんだから、これは資本主義社会の方々がおやりになつたらいいでしよう、われわれの社会はマルキシズムの社会だから、それは別な面で考えます。こういうことをたくさんな言葉でおつしやつていらつしやるのじやないかと、私は邪推かもしれませんが思います。そういうふうに実は私は理解したのですが、それでいいかということを私は聞いているのです。
  127. 高島喜久男

    ○高島参考人 それでいいかという御質問でしたら、それではよくありません。現実に不況カルテルというものがどんなものであるかということは、先ほど申しましたように、不況の原因を排除せず、不況を緩和する策をとらず、不況の時期にもなお資本の利潤を維持するという案であると私どもは考えます。それからまた、実は中山さんが横におられますのでたいへん申し上げにくいのですが、再販売価格の維持は、これは不況期において、生産者が小売商に利潤の減少の犠牲を負わそうとするものだ、あるいはまた消費者にその犠牲を負わそうとするものだ、私どもはそういうふうに考えます。そういう意味で、この独占禁止法の緩和の法案は、現在のような不況期において、独占資本を維持し、強化し、補強する法案だと考えますので、これに対しては反対の意見を持つているのです。その反対の意見を申し上げたわけです。
  128. 迫水久常

    ○迫水委員 もう私は別にお答えはいりませんが、私の感想を申し上げますと、個々の問題を断片的にとらえて、不況カルテルというものはこういう欠陥がある、再販売価格というものの協定はこういうことだということはよくわかるのです。しかし一つの資本主義社会というものがあつて価格がひどく暴落することを防ぐとか、不況の対策を講じなければならぬということは、現実の要請です。その場合において、つまりこの私的独占禁止法の改正案がいなければ、それに対する反対の案がもしお持ちになるなら聞きたいのですけれども、ほかの方も御迷惑でしようし、おそらくきようは、そういう資本主義社会において適用するような具体的な案はお持ちにならないのじやないかと思われます。お答えはいりません。私はそういう感じがいたします。
  129. 栗田英男

    栗田委員 これは公取政府委員にお尋ねいたしますが、やはり再販売価格の問題ですが、この法律規定は「公正取引委員会の指定する商品であつて、」と、こうあるのですが、そこで具体的にこの法案が通つた場合にはどうやるのですか。いわゆる指定する商品であるということで、この第二十四条の二の第三項に、「第二項の規定による指定は、告示によつて、これを行う。」ということですから、別に申請者があつてもなくても、この法案が通ると、公取はこういうものは再販売維持契約をしてもいいのだという、いわゆる告示をするわけですか。
  130. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 法律的に申しますと、別に申請がなくてもできる建前になつておりますが、実際のやり方といたしましては、申請をまちまして、それを委員会で討議いたしまして、その結果告示を出すつもりでおります。
  131. 栗田英男

    栗田委員 そうするとおかしいのですが、六項を見ると、公正取引委員会規則の定めるところにより、その契約成立の日から三十日以内に維持契約ができた場合には、届出をしなければならないというので、この第一項と第六項とは手続上において大分矛盾をしておると思うのですが、この辺のいわゆるわかりやすい手続方法を詳細に御説明願いたいと思います。
  132. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 この第六項においてこういう規定がありますのは、公正取引委員会が指定をいたしましたあとで、その商品について業者がこういう維持契約をしようという場合に届出をする、こういうことであります。
  133. 栗田英男

    栗田委員 そうすると委員会としては、どういう商品を指定するかという腹案はもうおありですか。
  134. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 一応考えてはおりますが、しかし実際に告示するということになりますと、この法案の見通し等が、もう少しはつきりいたしまして、委員会等で十分討議いたしたい、こういうふうに考えております。
  135. 中山太一

    ○中山参考人 ただいま参考人同士の間で問題がありますので、一口それにお答えをしておかなければ、誤解があると思いますのでお許し願います。隣組ではなはだ何でありますが、中小企業の不況対策として、この再販売価格の維持を要望しておる。それは小売業者の犠牲、消費者の犠牲のもとに行うメーカーの不純な考えのように誤解されておる。そういう考えは毛頭ありません。メーカーも損でありますが、小売店が確かに立ち行かない。それに消費者は悪いものを勧められるから、これも被害者であります。そうして先では外国商品と闘う力も弱まるということになるのだから、この点にはひとつ好意ある理解をお願いいたしたいと思うのです。それで私は討論ではあり参せん。ただ御了解を得ておきたい。中小企業の繁栄に大いに理解を持つておられるにかかわらず、この小売業の発展に対して一歩進んだ好意と理解を持つてもらわないと、その本来の御主張と矛盾するように患います。それで全国一千万の関係者を幸福ならしむるかいなか、それが失業者になつたときには労働関係にどんな悪影響を与えるかということまでお考えつて、そうしてさしつかえないことはできるだけ御後援を願いたいと私は思います。
  136. 阿部五郎

    阿部委員 中山さんに伺いたい。私は再販売のことについて伺うのですが、カルテルの場合も同じことでしようが、あなたのお話によると、カルテルにしろ、再販売価格にしろ、団結を結んで行うことは必ずしも悪いのではない。その運用がよければよろしい、悪ければ悪いのであるとおつしやつておりましたが、この再販売価格の場合に、そのよい運用をするという場合は、大体不景気になつて来た場合に、一般物価が下つても小売価格を依然として維持して行つて、かりにまた景気がよくなつて一般物価が多少上つても、小売価格は急激には上げない、すなわち日用品の価格の変動が急激にならない、緩漫になるというような結果を来さしめるものであなたのおつしやるよろしき運用を得たものだ、その点さように理解してよろしいのでございましようか。
  137. 中山太一

    ○中山参考人 ただいまのお尋ねは私はそうは考えません。最初に団体の結束を善用されれば、国家、社会、人類に益すること至大なものがあるということは、労働組合なりまたは資本家の団体、小売業の団体に対しても申したのは、これはその通りであります。悪用されれば、ちようど悪魔に一つの武器を与えれば人に害を与えるが、善人に与えれば世を救うことになりますのと一緒だと思います。値段の場合は、再販売価格は下つても、そのまま高物価のときを維持するか、それから上つても低物価のときを維持するかということがあります。この点は商標が代表しておりますから、これを一歩遅れて行きましたときには、小売業では競争しない、その生産面、消費を通じて価格を定めて、それが非常に不況になり、物価が下つたときに、対策を誤つたらその商品は市場からほうり出されてしまう、消費を失つてしまうということになりますから、あるいは分量をふやす、あるいは価格——価格が弊害があるなら分量をふやす、いろいろなことをして、消費者のために一定の原価計算によつて競争が行われております。それで今度は上つたときには、どうするか、これは確かに自分の商売の将来を考えて、なるべくしんぼうしよう、そうせぬと先にやると、今度は他の者に負けるかもわからぬから、これはできるだけ自重しようとして、一般物価の上るのには並行せずに若干遅れて、やむを得ず原料、材料、労銀が上つてたえられないから、上るということになりますから、消費者にとつてはこの商標をもつて責任を持ち、自分の将来のためにやつておるメーカーのためには利益があつても、決して不利にはならぬと、私は現在の実情からもそういうように考えております。
  138. 阿部五郎

    阿部委員 お話を簡単に言うと、一般物価が上る時分には上げないで、かりに上げても緩漫に上げて、物価の下るときにはそれに応じ、あるいは率先して下げる、かように承るのでありますが、これでありましたら業者が団結するという意味はほとんどなくなつてしまうように思うのであります。実情としてはむしろそれは逆じやないかとわれわれは思つておるのであります。しかしおつしやるところはまさにその通りでありますから、かりにその通りといたしまして、しからばこの再販売価格の場合、そういうことをなさる場合には、メーカーと問屋と小売商人との間によほど密接なる関係が結ばれておらなければ、さような実行は困難であろうかと思うのであります。  ところで、わが国においては、一般の原則から言うたならば、不景気になつて来れば小売商店は一番もうからないのでありますから、小売商店の数は減らなければならぬのでありますけれども、通常の日本経済状態のもとに不景気になると、かえつて小売商店の数が増加して行くというのが、戦前日本の実情でありました。将来も戦争のような経済界の非常事態がないとしましたならば、おそらくさような状態が再び生れて来るのではないかと思います。すなわち将来不景気が来ましたら、それだけ一般に職業を得がたい人ができ、失業者や、官吏の退職者や、そういう小資本を退職金その他で持つた者が、いずれも小売商店に流れ込むという現象が起るのでありますが、あなたのおつしやるような再販売価格の制度ができて、しかもそれがあなたのおつしやるようなよろしき運用を得ておつたといたしました場合に、そういう不景気のときに新たに小売商店の業界に入ろうという人々が不景気に応じてたくさん出て来た場合、そういう人がはたしてその業界に入りやすくなるであろうか、入りにくくなるであろうかという点が疑問なのであります。この点については労働者側の観測と業者のあなた方の観測と双方の観測を承りたいと思いますから、御両所からおのおのの御意見を伺いたいと思います。
  139. 中山太一

    ○中山参考人 ただいま不景気になつて来ると小売業がふえる傾向があるということについての意見をお求めでありましたが、確かに不景気になれば売れ行きが減退いたします。それから小売業者は今まで普通八時間働いておつたが、それではできないから、十時間も十二時間も、労働基準法の関係にさしつかえない範囲において、自分の自由な立場から活動して、その欠陥を補うべく努力され、また行商までしてその危機を打破されることはありますが、しかし不景気のときに小売業が多くなるということは、小売業が一見不景気になりながら、そこの従業員もふえる場合があります。自分の家族がわきに職業を求められず失業したので、自分の家で商売を手伝わす、それから親戚の者でも困つている者は入れるということになります。そういう関係がない者は、小売が楽だからやるということであつて、お説のように確かに小売業はふえて来ます。それがあの第一回の欧州大戦後でも、各国とも失業者は多いのに、日本は小売業があるから——家族制度でもありましたが、失業者が割方に出なかつた。これと、農業関係日本の当時の農業家族制度のらの力がこの失業者を多く出さなかつた大きな原因だと、私はいつも信じております。今日は事態がかわつておるから、自由に商売ができるが、ここが今度の再販売価格の上において保護されるものであります。なぜかと言いますと、今のようで行きますとどんないい品でも安く商売すれば損をしますから、不景気なときにそれで生活しようとしても生活ができなくなる。正しい利潤だけあれば、それが小売業を営んで勉強すれば生活を維持することができる。もう一つは、値段を高くすると売りやすいものでも売れなくなる。そうして制度品として制限したものしか売れなくなる。家を特定して、自由な営業を阻止して特定の店しか売れないと、今のような失業して小売業をやろうとする人は自由にできない。全然そのうちに入ることができない。再販売価格が維持できたならば、現在の小売業も保護されますが、今度商売を新たにしたいという人もそれに参加することができて、これを制限するようなことは業界にもない、また法律にも私は認めてない、こう思いますので、御不安だけは確かにない、むしろ一歩いい意味の前進をしたものと私は信じておる次第であります。
  140. 高島喜久男

    ○高島参考人 私にとつては新しい問題を出されておるわけなのでちよつとお答えしにくいかもしれませんが、再販売価格を維持するということは、それだけでは今の御質問の問題には直接には触れないわけです。しかしながら再販売価格を維持するということに伴ういろいろの関連がどういうことになつて来るかということを絵に描いてみなければいけないのだと思います。そこで再販売価格を維持するということは、不景気になつたときに値段が下ることをできるだけ食いとめたいということなんだろうと思いますが、そういたしますと、(「それは違うよ」と呼ぶ者あり)それが違うかどうかは別問題でありますが、そうだといたしますと、これはその商品について自由な競争が起ることは芳ばしくないということになつて来るのではないかと思うのです。そういうような空気の中で、その生産者あるいは取次業者と小売商との間にどういうふうな契約をどういうふうに結んで行くか、それからまた新規の小売商と生産者なり取次業者がどういうような契約をどういうふうに結ぶかということを考えますと、いろいろその関連の中においては、実際新規の営業、ことに小資本で、あるいけ無資本で失業者がやる新規の開業ということは相当困難になるのではないかということが想像されるのではないかと思います。私にとつてそれ以上のことはちよつとお答えしにくいように思います。
  141. 阿部五郎

    阿部委員 高島さんがお答えしにくいのはまことにごもつともだと思いますから、お聞きするのはやめますが、中山さんが再販売価格が維持せられるようになると、メーカーが小売商店を制限するようなことはしなくなつて、かえつて新規開業などはたやすくなるというふうにおつしやいましたが、これは今一応の御説明はあつたけれども、われわれの常識の納得するところではないように思うのでございますから、それはどういう成行きでどういう筋道を通つてなるのであるかということを伺いたいのであります。常識として考えますると、再販売価格を維持するということになると、メーカー、御屋、小売屋間の関係が相当密接になつて、小売店をやつておる人と卸屋をやつておる人というものはちやんとメーカーに結びつけられてしまつて、新しくその関係に入ることは相当困難が生ずるのではないか、これがわれわれの常識なんですが、それがどういう筋道を通つてかえつてたやすくなるという結論が出るのでございますか。
  142. 中山太一

    ○中山参考人 先ほどのお尋ねにも一つ漏らしたことがありますからあとで申し上げますが、ただいまの問題は事実そうなる。一つのタバコとかああいう特殊な制限をされておる事業でありません、小売店の仕入れられる普通の商品は無制限であります。無制限であるが、その人が約束を守るということをされれば決してそこに売らぬということはない。売らなかつたならば、私はかえつて独占禁止法の精神にメーカーみずからが違反するのじやないか。この点は今まで行われた例はありませんが、実際にその御心配はありません。それでかりに私が供給せんとすれば、私の競争者はむしろ喜んで競争して一層売るようになる。この競争がメーカー同士で自由にされるという意味のところに、この点は一段、二段、三段構えにおいても支障がないことになる。これは事実が必ず立証することと思います。  それから次に物価が上るときには隠忍してある程度奉仕をしておる、これはわかる。けれども下るときに問屋、小売屋の間にどういう連絡をとり、またそれはせつかく再販売価格にした意味をなさないじやないかという意味にとれましたが、これはカルテルの方でありますと本鋪同士、いわゆる生産者同士が申し合せて不景気対策でこうしようということになりますが、それでなくこの再販売価格は単なる不景気対策ではない、常時の正常取引において応用してもらいたいというのが熱望であります。不景気のときに輸出が困難だとか、カルテルその他の問題も起りましようけれども、ただいまのはそうではなく、メーカーはそれぞれ競争して行くのでありますから、原料、材料、労賃が下つた、それを自分だけが利益を得て消費者、小売店に分配しないならば、その事業は必ず衰微することは、過去の実際に照して明らかであります。それでこの点は私は実例がありますけれども、自分のことに関連しますからこういう席では申し上げることを慎みますが、いろいろと税金が安くなつて、ある期間価段を安くする、これはメーカーが単に自分の商標のものだけに安くするのであるから、メーカーが問屋なり小売屋に損害をかけないように、迷惑にならぬような方法考えればこれは円滑に行い得るが、むやみにやれば、信頼を失つてあの品物はいつ下るかわからぬということになりますから、よほど自重しなければならぬ。御注意はその通りでありますから、これは十分に用意周到に善処して行くつもりであります。
  143. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今のお話を聞いておりますと、どうも私は最初からピントが合わなかつたと思つたら、やつとわかつたのですが、お宅の話をしておるのは化粧品のことばかり話しておる。だから錯綜が出て来る。大きなメーカーでりつぱな商標があるところに、たとえば不況カルテルがあつて、そこで労働者が首になり、実際に失業者が出た、あるいは農村の潜在失業者が何とか方向転換したいと思つて小売商になりたいと思う。ところが、大きなメーカーは生産から卸、小売と縦の線が一本になつておる。そうなつて来るとますく排他的になつて来る。そこで、転業しようとしても、卸商へ行つてこうこうだからといつても、その一つの権利を守つて他の者を入れないという結果が出て来る。おそらく阿部さんもそれを聞かれたのだと思う。あなたはそういうことがないとおつしやるけれども現実には出て来ます。私も昔そういうことをやつた。私は小商人になろうとしてキツコーマン醤油へ行つたらだめだつた。そういうことが出て来るのです。
  144. 山本勝市

    山本(勝)委員 議事進行の動議を提出いたします。質問者はいろいろ質問されることがあり、それぞれ重要な意味を持つておることに相違ありませんが、しかし動議提案の判断から申しますと、参考人としては自分の体験に基いて信念のあるところはほとんど全部吐露されたようにとるのです。委員の方では聞きたいことがたくさんありましても、参考人としては、いいかげんなことを答えれば別ですけれども、自分の自信のあるところはもう尽されたように思う。大分時間もたちましたし、これ以上聞きましても、中山参考人としては自分の長い間の体験に基いて語られれば化粧品の問題に落ちるということでありますから、この辺で参考人に対する質疑は打切つて一ぺん休憩なさつたらいかがでしよう。
  145. 佐伯宗義

    ○佐伯委員長 山本さんの動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 佐伯宗義

    ○佐伯委員長 では参考人に対する質問はこれで打切ります。  それではこの席より参考人各位に対し一言ごあいさつ申し上げます。本日は長時間にわたり御出席を願い、かつ貴重なる御意見を熱心にお述べいただきましてまことにありがとうございました。本委員会といたしましては、皆様の御発言を十分参考として慎重に審議をいたしたいと存じます。まことにありがとうございました。  ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  147. 佐伯宗義

    ○佐伯委員長 速記を始めてください。  次会は明日午前十時より連合審査会開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十一分散会