○山本(勝)委員 具体的に例を引いてお尋ねいたします。その方が
はつきりすると思いますが、たとえばあるところで
二つの船会社が
競争するという場合を
考えますと、御承知の通り船そのものが二十年なら二十年間は持つということになりますと、その船そのものの償却というものは二十年の間にすればよろしいので、さしあた
つて償却しなくてもよろしい。港につないでおきましても、腐るものは腐る。従
つて動かした方がよろしいか、それとも港につないでおいた方がよろしいか、こういうことを船会社が決定して
考えたときに、船そのものはもうすでに資本を投じているのですから、これは港につないでおいても悪くなるものは悪くなる、むしろ動かした方が船のためによろしい。つまりさしあた
つて港につないでおけばいらない費用、たとえば船員の費用とか、あるいは石炭代であるとか、あるいはお客の食費であるとか、そういうものは港につないでおけばいらぬでしよう。ですから港につないでおけばいらないが、動かすために特にいる費用を償う程度の船賃、それを償
つてなお若干でもそこに剰余が出て来るという程度の船賃でありますなら——言いかえてみますと、船そのものの償却はその船賃ではできないけれども、さしあた
つて動かすためにいる費用を償
つてなお若干の剰余が出るという場合には、船会社として
はつないでおくよりもむしろ動かしていた方が得である。そういう
関係で
二つの船会社が
競争いたしますと、必ず甲の船会社も乙の船会社もさしあた
つて動かすごとによ
つている費用——専門的に申しますと、直接費と申しますか、その直接費を償
つて多少の剰余が出れば、間接費を償うだけの価格でなくても町かす。従
つて両方とも動かす結果として、これまでの実例から見ましても、船会社が
競争すると、必ず安い船賃で食べさせて、さらに手ぬぐいを景品につけて
競争する、その結果いつまでた
つても両方の会社は船そのものに対して投じた費用の償却はできない。二十年間に償却すればよろしいにだから、さしあた
つては動かした方が得で、動かしますけれども、両方とも償却ができないで行くという事態が生じて来るそういうときにやむを得ず
カルテルを結んで船賃の
協定をする。そうしなければ、両方とも直接費は償うことができるし、また船会社は船は腐るのではありませんからつぶれはいたしませんけれども、その固定資本の償却ができない。こういうときの
カルテルというものをはたして不当と見るのか、あるいは不当と見ないのか、これは重大な問題だと思う。一体
カルテルができて、しかもそれがつぶれないで行われて行くという場合は、実際問題としては背に腹はかえられぬ。つまり固定資本の大きい事業というものは
競争すれば固定資本の回収ができないということから、背に腹はかえられぬ場合に
カルテルは持続するというのが実際の常であ
つて、固定資本の小さな事業というものは、何べん
カルテルを結んでみましても、なくてもどうにかや
つて行けますものですから、実際は
カルテルがつぶれてしまう。ですから不当という
解釈が非常に幅が広くて、もしこれをただ
競争を
制限するのは、不当だとかいうふうな簡単なことで扱つたら、それこそ収拾がつかぬことになるのではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしよう。