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1953-07-29 第16回国会 衆議院 外務委員会大蔵委員会通商産業委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十九日(水曜日)     午前十時五十分開議  出席委員  外務委員会    外務委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 並木 芳雄君 理事 田中 稔男君    理事 戸叶 里子君 理事 池田正之輔君       麻生太賀吉君    野田 卯一君       岡田 勢一君    喜多壯一郎君       須磨彌吉郎君    帆足  計君       穗積 七郎君    岡  良一君       中村 高一君    川上 貫一君  大蔵委員会    理事 苫米地英俊君       福田 赳夫君  通商産業委員会    通商産業委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 永井勝次郎君    理事 伊藤卯四郎君       井上 良二君    笹本 一雄君       山手 滿男君    加藤 清二君       齋木 重一君    中崎  敏君       始関 伊平君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         外務省参事官  森  治樹君         大蔵事務官         (為替局調査課         長)      崎谷 武男君         大蔵事務官   近藤 道生君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海  条約批准について承認を求めるの件(条約第  九号)     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 ただいまより外務委員会大蔵委員会通商産業委員会連合審査会を開催いたします。  慣例によりまして私が委員長を勤めますから、さよう御了承をお願いいたします。  なお時間整理の関係がございますので、各質問者は十五分ないし二十分の範囲にとどめられんことをお願いいたします。  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。     —————————————
  3. 上塚司

    上塚委員長 これより質疑を許します。福田赳夫君。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)委員 私はいろいろ質問したいことがあるのですが、まず内国民待遇に関する第七条についてお伺いいたしたいのであります。ことにこの七条の中で私どもが重大なる関心を持つておるのは金融の問題であります。何となれば、この金融というものは、使い方によりましては非常な外国を支配するところの力を持つものであります。ことに本条約相手方である米国は、巨大なる資金力を持つておる相手方でありまして、そのアメリカ資金力というものが、日本に対してどういう関係になるのか、これはわれわれといたしましては重大関心事たらざるを得ないのであります。さような観点から伺いたいのであります。この第七条の二項の中ごろに内国民待遇制限する権利を留保するのに対しまして制限規定がある。それは「但し、いずれか一方の締約国が、その領域内でそれらの事業を営むことに関して外国人に内国民待遇を与える限度について新たに行う制限は、その実施の際その領域内でそれらの事業行つており、且つ、他方の締約国国民又は会社が所有し、又は支配している企業に対しては、適用しない。」ということがあるのであります。金融業についてこの適用考えてみますと、日本金融業は今いかなる事業アメリカ行つておるか、また逆にアメリカ金融機関日本においてどういう事業行つておるか、これをひとつ比較して説明してもらいたい。
  5. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 出席が遅れまして、たいへん失礼いたしました。おわび申し上げます。この条約交渉いたします際に、われわれが最も意を用いた点はただいま福田委員から御指摘になりましたごとく、日本経済力アメリカ経済力との間に非常な差がある。この差がある場合に、もしお互いに内国民待遇を与えよう、あるいは最恵国待遇を与えようということが起つた際に、またこの条約を貫いております精神というものは、相互に内国民待遇あるいは最恵国待遇を与えようという思想で流れておるのでありますけれども、そういつたことをやりました際に実質的な差が形式的な平等を飛び越えて、実際には非常に不公平なものをつくりはしないかということを一番注意いたしまして、そういうことが起らないように、その点に最も努力払つたのであります。従いましてそういう努力の結果が、この条約の随所に現われておりますことは御承知の通りと思うのでありますけれども、たとえばただいま福田さんのおつしやいました第七条二項に、制限業種範囲が相当広く列挙してあります。その制限業種範囲の広さというものは、アメリカが今までほかの国と戦後結びました条約においても、その比を見ないほど多く、ここに制限業種の数が規定してありますが、これが一つの現われであります。さらに第十二条に参りますと、為替制限を行い得るということが規定してありますが、これもアメリカの方は為替は自由にしており、ドルをふんだんに持つておる。従つてフリーでありますけれども、日本の方はそうは参らぬというので、理想はノー・コントロールでありましようけれども、そう参りませんので、為替管理を行い得るということをいたしております。それからさらにまた旧株取得に関しましても、議定書の第十五項によりまして、三年間は旧株取得を禁ずることができるというふうにいたしまして、アメリカの巨大な資本によつて日本経済が隷属させられることのないようにというふうな保護措置規定しておるのであります。  さてただいま御発言のありました銀行業務でありますけれども、アメリカ銀行戦前からもナシヨナル・シテイ・バンク日本に参りておりまして、預金業務信託業務行つております。それが日本経済に害を及ぼしたとは、われわれも決して考えておりません。それからただいまは四つアメリカ銀行日本に参りまして預金業務信託業務等行つております。これも戦前におけると同様に日本経済に寄与をしてくれておるとわれわれは考えております。従いましてこれらの業務に関しましては、今まで通り銀行業務を行わしめるということから、七条の第二項の前段におきましては、銀行業務のうち預金業務及び信託業務に関しましては、制限し得るということにいたしたのでありますけれども、但し制限し得る法律実施されて、その実施の際にすでに得ている権利は認めてやろうということにいたしたのであります。つまりそれをそういたしませんと、不安定で業務もできないということになりますれば、日本経済にも寄与しているとわれわれが考えておりますところの業務が遂行できなくなるか、あるいは非常に困難になるという関係に相なりますので、既得権既得権として認めようということにいたした次第であります。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)委員 しからば日本におけるアメリカ側既得権はどういうものであるか、また日本アメリカにおける既得権はどういうのがあるか、これを彼此対照してもらいたいのです。
  7. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 第七条二項の後段によりましてアメリカ側既得権としてただいま持つておりますものは、チエース・ナシヨナル・バンクナシヨナル・シテイ・バンクオブニユーヨークバンクオブアメリカ、それから、アメリカンエキスプレス、この四つ日本において営業しておりまして、制限業種に関するところの業務下行つております。どれがただいまのところ全部でございます。それからこの第七条二項の後段によつて日本向う行つて享受し得る既得権といたしましては、これは一番大きいものは農業であります。この農業はおそらく約五万人くらいの日本の一世が向うにおいて農業に従事しておるということになつております。もし将来農業のごときは外国人には許さぬということになりましても、これは既得権として保持し得るということに相なります。それから農業を除きますれば、今どういうものがあるかと申しますれば、銀行といたしましては東京銀行ニユーヨークニユーヨーク住友銀行、同じく千代田銀行サンフランシスコに三和銀行というふうなものがございます。それからなお、向う法人となりましたものではサンフランシスコ住友東京銀行、これだけが向うにあります。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)委員 どういう銀行向うに出ておるか、また向うからどういう銀行が出ておるか、これは承知しておるのです。その銀行がやつておる営業範囲に非常に問題があるのではないかと思う。私の承知しておるところでは、アメリカ州法——これは州法できまる問題だろうと思うのでありますが、州法においては、日本銀行アメリカにおいて預金をとることを許していない。反面においてナシヨナルシティ以下日本進出しているアメリカ銀行は、これらの預金を無制限にとることができる。かような建前に現在なつておる。そこに非常に大きな金融業の本質に触れた違いがあるというふうに思うのであります。その通り解釈していいのですか。既得権にそれだけの違いがある、さように考えていいのでありますか、
  9. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 アメリカの方におきましては、州法において外国支店を禁止したり、あるいは預金業務を取扱わせなかつたりすることが多々ありまして、その点に関しましては、議定書の第四において、そういう州に関しては、レシプロシティでやれ、同じような取扱いをやろうということにしております、従いましてその範囲外に出ますものは、今申し上げましたような四つ銀行日本において今まで営業して来ておつた。それに関しては今まで通り認めてやろう、こういうことであります。そこで日本の方の銀行向う行つてこういうふうにしておるかと申しますと、州によりましては支店設置を許さないというところもございますが、そういうところでも支店でなしに現地法人というものを設立することはできます。それによつて、その方が利益になることも多いようでございます。そういう方法によつてやり得るところもございます。たとえばカリフオルニアのごときは支店設置はたしか認めていないと思いましたが、現に住友銀行東京銀行加州住友加州東京というものをつくりまして、そこで預金業務というふうなものもいたしております。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)委員 そうすると、この条約の第七条並びに議定書から判断いたしますと、日本銀行はすべてアメリカにおいて預金をとることを主張し得る根拠がこれから出て来るというふうに解釈していいのか、あるいはそうでなくて州法のきめるところによるのだというふうに理解すべきものであるかどつちですか。
  11. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 ちよつと森参事官からお答えいたさせます。
  12. 森治樹

    森説明員 議定書の第四項によりまして、今後の銀行に関しましては、もし当該の銀行が設立されておる米国の州において、日本銀行預金業務等制限を設けておる場合には、日本でも同種の制限を課し得るわけでございます。ただいま局長から御説明申し上げました遜りに、ただこれは今後の銀行進出に対する規定でございまして、現在進出しておるアメリカ三つ銀行及び現在審議申でありますアメリカンエキスプレス、これは第七条二項の日本既得の条項をかぶりますので、この四つ銀行については例外ということになるのであります。同時に日本側例外を主張し得るのは、加州に現在現地法人を設立しております住友銀行及び東京銀行だけは、これは現地法人を設立して預金業務を認められておりますので、その範囲において既得権を尊重せられる、こういうことになるのでございます。
  13. 福田赳夫

    福田(赳)委員 よくわかりましたが、そうしますと、これは非常な不平等な関係がそこに起つて来るわけです。日米関係というものはそういう不平等な関係ではないはずです。平和条約第十二条でしたか、これは平等の原則既得権に対しても処置するという原則になつておるように承知しておるのでありますが、非常におかしなことになる。それに関連してお伺いしたいのですが、既得権というものはいつの状況であるか、いつの状況において既得権というものが出て来るのであるか、条約締結の際の状況を基礎としておるのか、あるいは条約効力を生ずる国会承認によつて既得権という時期を判断するのか、どういう状況になりますか。
  14. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 初めの福田委員のおしつやられました互恵平等ではないという点は、われわれはこれは片方は三つ四つ銀行のあれでございます。それからこつちの方の大きな問題は、これは農業というものの既得権、これでありまして、従いましてどつちが非常に大きいかということは、比較考量なかなかむずかしいのであろうとは思いますけれども、不平等であるというふうにはわれわれは考えてもおりませんし、考えたくもないのであります。  それから既得権というものがいつかということについての御発言でございますが、これは条約締結されたときとか、あるいは発効したときとかいうのではございませんで、たくさん制限業種が書いてございますが、その制限業種に関しては制限をなし得るということになつております。従いましてそれの制限をなすためには、おそらく法律制定が必要でありましようが、その法律制定がされまして、こういうことに関しては外国人には許さないのだということを制定されるというそのときであります。条約締結とか、あるいは批准ということではございません。
  15. 福田赳夫

    福田(赳)委員 では言葉をかえて言いますが、第七条の二項に、「その実施の際その領域内」とありますが、「その実施」とはいつであるか。
  16. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 これが制限業種に関しまして制限をするということを法的に措置をとつた、その法的措置をとつたまでの実施、こういう意味であります。
  17. 福田赳夫

    福田(赳)委員 どうも条約からいいますと、そういうふうに思えないのでありますが、そうするとその実施の際ということが、制限業種について制限をしたときというふうに解釈いたしますと、これは現在の状況といたしますと、まだ日米通商航海条約批准承認国会としてはしていないのでありますから、これはいつでも制限し得る状況であるかどうか、これをひとつ……。
  18. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 さようでございます。それは制限業種はこれとまつた関係なしに何でもできるというわけでありますし、それからここに書いてございます制限業種に関しましても、制限をしまいと思えばしないでもよろしい。あるいは中にはかえつてしない方がいいのじやないかと思われるものもございますが、する必要があればいつでもなし得る、こういうわけであります。
  19. 福田赳夫

    福田(赳)委員 それはどうも話が食い違つているのではないかと思うのです。但書において制限業種権利留保適用をここで除外しているのだ、その除外しておるものについては既得権を認めるということになつておる、ですから既得権というのはただいまでもまだこの条約のできない間は制限し得る状況にあるのかどうか、この問題を聞いておるのであります。お答え前段のものに関連してお答えのようでありますが、そうではなく、私は中段の適用除外既得権、これはただいまの状況においては制限し得る状況にあるかどうか、これをひとつ伺いたい。
  20. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 この条約効力を発生するのは批准後でございますので、それまではこれに何ら働きをしないということでございますので、ただいまおつしやいました点は理論から申しますればまつたくその通りであります。
  21. 福田赳夫

    福田(赳)委員 そうしますと、ただいまにおきましては理論既得権を認めるかどうかということは、外務当局腹一つというか、交渉次第だと思うのです。これについてはどういう交渉をしておるか、これは日本金融アメリカの大資本に支配されるかどうかという非常な市大問題であるので伺つておきたいのですが、どういう努力をしてどういう交渉をしておるのか、その交渉のいきさつというものを全部ぶちまけてもらいたい、これをひとつお願いいたします。
  22. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 われわれは先ほど申し上げましたように、アメリカ金融業というものが日本にやつて参りまして、日本経済発展戦前においても、現在においても寄与しておるというふうに考えておるのでございます。たとえて申しますれば、ただいま火力発電の四千万ドルの借款というものを交渉いたしております。それができますまでに——これは非常に急を要しますが、たとえば早く機械のすえつけをやらないと、再来年でありますか、三年後でありますかの渇水期に間に合わないというような状況でありまして、非常に急いでおるのでございますけれども、それがなかなか向う国際銀行というものと交渉が長引くというふうな話が起りまして、そのときに七百万ドルでございましたか、バンクオブアメリカがこのつなぎ融資をしてやろうというようなことを言つてくれて来ております。われわれは経済発展に非常に寄与しておるというふうなことを考えております。従いましてこの既得権既得権として彼らに認めてやるということは、益こそすれ害はないというふうに考えておりますので、これはこのままで行つて一向さしつかえないと考えております。従いましてそれを制限しようというふうなことは考えておりませんし、交渉もいたしておりません。
  23. 上塚司

    上塚委員長 福田君、時間がすでに十八分になりましたから、あと二分残すのみであります。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)委員 ただいままでは非常に平穏であつた、しかし一たび日本経済が混乱して来ると事態が非常にかわつて来るのです。日本国内政治情勢また日本経済政策、そういうようなものの前途を考えてみますと、いろいろ波乱があろうと思うのです。ことに最近におきましては、日本経済の将来の見通しというようなものについて非常な悲観論が多いのです。この日本経済に一たび大変動があるというような際となりますと、たとえば預金一つをつかまえてみましても、アメリカ銀行に全部預金が集中してしまうという事態も起りかねないというふうな感じもするのであります。私は平和条約でも互恵平等の原則が認められておるのですから、この点につきましてはひとつ何とかして行動の自由と申しますか、これをとつておくべきものじやないかというふうに思うのです。これはまだ向う承認を渡したわけではないのですから、こちらの考え方だけできまる問題ではないかと思うのでありますが、さような考えはあるかどうか、きわめてこれは重大な問題じやないかと思うのです。
  25. 上塚司

    上塚委員長 福田君、これで時間が参りました。
  26. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 ただいまのアメリカ銀行における預金額等から見ましても、われわれはそれによつて非常に脅威を受けるというふうなことは実はないということを確信しております。それからこれを大事をとつて禁止し得るのだというようなことにいたしますと、あるいはそれを年限を切るというようなことにいたしますと、先ほど設例で申し上げましたように、三年間の、たとえば七百万ドルに及ぶつなぎ融資を受けようというようなときにも、一体われわれは来年は営業し得るのかどうかということの不安が起きまして、そういうこともおそらくできないというようなことになるのではないかと思います。  それからはつきりしておかないと困るという点は、それはたとえば外資導入いたしますにつきましても、不安定では外資が入つて来ない。従つてこれらの点は相当はつきりしておかないと、この条約をつくつております一つ目的は、外資導入ということをねらつているのでありますけれども、はつきりしないとその目的を殺すということになろうと思うのであります。従いましてその点をはつきりさせておいた方が、利益であると考えている次第であります。
  27. 上塚司

  28. 永井勝次郎

    永井委員 質問に入るに先だちまして議事の進行について一言申し上げたいのでありますが、通産常任委員会としましては、本委員会に対して合同審査を大分早く委員長を通して申し入れたはずであります。内容としてはわれわれ通産委員会としても、今後の日本貿易に重大なる影響ある問題でありますし、いろいろな角度から具体的にこれを審議しなければならない、こう思つていたのでありますが、本日の議事はまつたく形式的であつて、これはこういう専門常任委員会の制度がいけないと言えばいけないのでありますが、しかしながら合同審査ができるという道が開かれておるにもかかわらず、これを活用しないでまつたく形式的にただ合同審査をしたという形式を通して、これらの重要な議案を素通りさせて、案の精査をしないというような手続に対しては、われわれは非常に不満を持つているということを明らかにしておきたいと思うのであります。そこで時間がありませんからお尋ねをいたすわけでありますが、第七条のこの制限業種の問題についてであります。これをこのような形で参りますならば、非常に弱い力の日本は、自由平等であるという立場において、これは大きな資本に小さな資本が食われて行くことは明らかであります。不平等の結果を招来することは明らかでありますが、その中においても特に日本基幹産業に対する民族資本の擁護という立場が、はつきり打出されなければならない問題ではないか、その意味におきましてこの制限業種をもつと拡張して、あるいは鉄鋼業であるとかあるいは証券業であるとか、あるいは繊維、紡績といつたような、こういう業種に対して制限をするという考えはないのかどうか、これを伺いたい。
  29. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 先ほど申し上げましたように、外資を入れるということもこの条約をつくりました目的の大きなものの一つでありますが、しかも外資を入れる際にはその分野が相当広い、あるいは安定しているということが必要であります。それから入れられる方といたしましては、それがなるべく狭くあつて、しかも闖入される分野が少いということを希望するという理論になるわけであります。しかし一方これを非常に広くするということになりますと、これはまた外資導入というようなことは一向実現し得ないということになるわけであります。第七条二項に列挙してある制限業種は、相当広いのであります。あるいはこの制限しておる業種の中においても、かえつてしなかつた方がよかつたのではないかというふうなものも、実は私などはありはしないかくらいに思つておるくらいでございますが、とにかく非常に広くなつておる。ただいま仰せになりました鉄鋼業とか自動車工業とかあるいは繊維機械工業とかいうものも、これを入れようということにいたしますれば、それはただいま申し上げた二つの相矛盾するもののどつちに重きを置くかということになるわけでございますけれども、鉄鋼業とか自動車工業とかいうものは、むしろ外資の入つて来る方に入れておきまして、それによつて合理化であるとかコストの引下げであるとかいうふうなことをやる方が、かえつて望ましいという結論に達しまして、そういうものは省いた次第でございます。
  30. 永井勝次郎

    永井委員 今後の貿易産業は、従来のような軽工業から重化学工業に転換して行かなければならない。その場合こういう基幹産業外資に首を押えられて、どうして今後の日本貿易の伸展をはかることができるか、これは明らかなる事実であろうと思うのであります。外資が来やすいようにアメリカさんのごきげんばかりを伺う、そういうふうな向う立場にのみ立つて考えて、民族資本立場を全然無視するというような考え方外務省の性格かもしれませんけれども、われわれは民族的な立場に立つて、こういう問題は厳重に批判して行かなければならないと思う。先ほど局長は、アメリカでは日本人が五万人も農業を経営しておる、ナシヨナル・シテイ・バンク日本における進出と比較したら問題にならないというように、何か農業五万人が数の上から非常に比重が高いような考え方をしておるようでありますが、金融支配というものの力と、五万人の農民がばらばらな形で入つておる状態との経済支配上の比重をどのように局長考えておるか。つまりこういう基幹産業を押えられていいのかどうかということと、金融機関農業とのそれぞれの国内の経済界に与える影響その比重をどういうふうに考えておるか、これを伺いたい。
  31. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 私が先ほど申し上げたのは、わが国の方の既得権としてあげ得る大きなものは、農業に従事しておるアメリカにおける一世である、その数が約五万人に達する、それから向うの方が日本既得権として持ち得る現在におけるものは、たつた四つ銀行である、そうしてこれらは対象が違いますからにわかに比較対照をなし得ない、どつちが重いかどつちが低いかということは申し上げにくいということを申し上げたのでありまして、五万人もいる方がよほど大きいのだということを申し上げた事実はございません。  それから基幹産業にどんどん入つて来てどうかという御発言でございますが、これは先ほど申し上げた外資導入ということと、もう一つ基幹産業の保護ということとの兼ね合いでございまして、その兼ね合いの結果がこの七条二項に制限業種として相当大きなものが列挙してございます。これはアメリカがほかの国と結んだ制限業種に比べては非常に多いのでありまして、むしろほかの国に比べれば、それが広いというのが本条約の特質でございます。それからこれは見方によるかもしれませんけれども、カナダが最近非常に繁栄しておりますが、これもアメリカ外資をどんどん入れた、しかもそのときに、やはり一方にはそれでよいのだろうかという議論があつたのですが、そういうことはちつとも起り得ないで、非常に繁栄している。メキシコがそうであります。それからイギリスにおいても相当為替管理を厳重にしておりますけれども、投下資本利益の送金については何にも制限をしないでやつております。そういう点から来る心配はそれほど大きくないのじやないかと思つております。しかしそれに加えて、もしわが方においてなお心配するような場合には、議定書の第六項に、外資が入つて来る場合には、それを受入れる必要性に関して日本においてこれを審査し得るという規定がございます。この規定によつて、好ましからざる資本の流入ということは、ある程度防ぎ得ることになつております。
  32. 永井勝次郎

    永井委員 そういたしますと、今までアメリカ・ドルが日本旧株にいろいろ投資していると思います。その投資状況はどうなつておるか。また映画会社その他も相当円をかせいで、向うへ送れないために、これを日本へ蓄積して動かしておると思うのでありますか、この映画会社あたりの十五、六億か二十億と思いますけれども、そういうものをどういうふうに国内で動かしているか、明らかにしていただきたいと思います。
  33. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 旧株の保有額は約十三億ぐらいでございます。これは許可を得て持つておることになつております。それから本条約実施されて以後三年間は依然として許可を喫することになつておりますので、どのくらいの量が持たれるであろうかということはチェックし得るようになつております。それから映画関係の金は、ただいまのところ約十五億ぐらいでございます。これは映画会社との協定によつて、年々あるいは月々に入つて来る一定部分を向うに送金させて、あとのむのはブロツクすることになつております。
  34. 永井勝次郎

    永井委員 第九条では資産取得の事柄が規定されておると思います。旧株再評価について三年間の猶予期限を置いてあるようでありますが、この条約において三年間に旧株の再評価が全部完了し得るという見通しがあるのかどうか。見通しがあるとすれば、その具体的な根拠をひとつ示していただきたい。
  35. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 これはまことに日本貿易が立つて行くかどうかという根本問題であります。貿易が不振である理由にはいろいろありましよう。外的理由から来るものと、内的理由から来るものと二つあると思うのであります。その外的の方の理由に関しましては、われわれ懸命の努力をしてこれの打破に努めておるのでありますが、内から来る理由に関してはなかなか困難なのであります。つまり物が高いということでありまして、これをどうしても安くしなければ、貿易が振わない。これは非常に大きな理由であり、大きな命題であります。それをやるためには、ただいまおつしやいましたような再平価なり、あるいは企業の整備なりをやらなければならぬと思うのであります。それは三年間というものをもつてなし得るというふうに考えております。
  36. 永井勝次郎

    永井委員 第二十四条には、いろいろな申入れに対して協議をするということがあります。その条件は、日本の産業を保護するためにそういうことをやつてはいけないというようなことがあるのであります。たとえばこういうことを前提として参りますと、為替管理の問題等は、日本利益のためにこれをやるというようなことで、そういう場合のいろいろな障害になる条件ではないかと思うのでありますが、これに対してはどういうふうにお考えになつておりますか。
  37. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 二十円条の協議事項というものは、日本産業の保護のためにやつてはいけないというようなことは、何も書いてはございません。ただ二十四条は、条約実施に関して申入れがあつた場合には、お互いに好意的佃考慮して善処しようということを規定している条文でありまして、産業の保護とかそういうことは、おそらくりくつにならないと思いますけれども、直接この条文に関連ないのであります。
  38. 永井勝次郎

    永井委員 間違いました。十四条です。十四条は、輸入制限について、事前に公表をしなければならないとなつておりますが、それならばたとえば小麦なら小麦をポンド地域に振りかえよう、あるいは綿花の輸入をポンド地域に振りかえようという場合に、一々これを事前に公表して折衝しなければならぬ。時期的にあるいは商機を非常にたつとばなければならないこれらの問題に対して、国際的な市場において、ドルの操作によつて実害を受けなければならない結果になる。日本がいろいろな輸出入の関係において、自主的に動く条件が非常な制約を受ける結果になるのではないかと思うのであります。こういう非常に不平等な条件というものは、当局はこの条件下において、市場における活動が可能であるというふうに考えておるのか、この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  39. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 それは永井さんの誤解でございます。この条約にきめておりますことは、たとえば日本がポンドが不足して来たという場合に、ポントの方で買つていたものをドルの方から買うということは、一向禁止もいたしておりませんし、また協議事項でもございません。それはむろん日本が一方的にできることでございまして、一々そういう場合に向うと協議してやらなければならないということは、どこにもないのでございます。もしそういうふうにお読みになつたのでございましたならば、それは永井さんのお読み違いでございます。
  40. 上塚司

    上塚委員長 永井君、時間が来ました。
  41. 永井勝次郎

    永井委員 もう一つだけ。十八条の競争制限の問題でありますが、過般通産委員会においては、輸出入取引法を決定して、輸出カルテルをやることができるということを決定したのでありますが、こういう点から申しますと、こういうカルテル行為は、この条項に抵触する結果になるのではないかということが一点。それからこの条約は、批准後一箇月で効力を発生し、十箇年の効力を持つというのですが、非常な激動期における条件の中で、十箇年というような長期の条約というものは、非常に避けなければならない問題ではないか。もつと五年ぐらいの短期にする、あるいはできれば三年ぐらいというような、非常に短期な条約にしておかなければならぬ問題ではないかと思うのでありますが、十箇年という長期の条約にした根拠。押しつけられたのか、こちらがこれを希望しているのか。この二点についてお尋ねいたしたい。
  42. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 十八条の規定は、競争を制限したり、市場への参加を制限したり、あるいは独占的支配を助長するような慣行をやつたりというようなことは、貿易の通常の発展を阻害するということをお互いに認めまして、そういうことがあつた場合には、お互いに協議しようではないかということだけを規定した条文であります。従いまして輸出カルテルとか、あるいは今審議されておりますところのもろもろの法案でございますが、われわれは、これはそこまで言つているものではないと考えておる次第であります。またそこまで言つた向うが認めましても、それは協議事項の対象となり得るというだけでございまして、十八条に抵触するということではございません。  それから十年間の問題でございますけれども、先ほども申し上げましたように、本条約締結のねらいの一つは、外資導入であります。従いまして、外資導入いたしますためには、どうしても相当期間安定せる状態が続くということが、前提条件となるのであります。通商航海条約が三年先には切れてしまう、あとにどうなるかわからないということになりますと、外資導入の阻害になるということは理の当然でありまして、打つ、そういうことから十年間ということにいたした次第であります。
  43. 上塚司

    上塚委員長 永井君に一言いたします。連合審査会については、外務委員長は昨日まで通産委員長から何らの申入れを受けておりません。ただ昨日通産委員会において、連合委員会を開催したいということを決議されたということを承つたのであります。但し大蔵委員会においては、大蔵委員長みずからがここに来られて、申入れがありましたので、今日これをただちに開催したような次第であります。     〔発言する者多し〕
  44. 中崎敏

    ○中崎委員 私は動議を提出いたします。この際通産委員長出席を求めて、この点を明らかにしてもらいたいと思います。
  45. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 私は議事進行に関して一言いたしますが、この際通産委員長出席を求めることは、通産委員会の方におまかせして、外務委員としては議事を進行せられんことを願います。     〔「採決々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  46. 上塚司

    上塚委員長 中崎君に発言を許しました。
  47. 中崎敏

    ○中崎委員 今の点をまず先議としてお願いいたします。
  48. 上塚司

    上塚委員長 中崎君、質疑を続行しますか。棄権しますか。
  49. 中崎敏

    ○中崎委員 発言はもちろんやりますが、まず私の、育つた動議を……。
  50. 上塚司

    上塚委員長 連合審査会においては、かくのごとき問題を採決する必要はないと思います。     〔「採決するかしないか採決しろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  51. 喜多壯一郎

    ○喜多委員 議事進行……。(「委員長一方的だよ」と呼ぶ者あり)議事進行ですから簡単に申し上げます。委員長同士の話は、この間においてだれか代理させるなりして、お話をきめて、質疑の進行をせられんことを望みます。     〔「議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり〕
  52. 上塚司

    上塚委員長 中崎君に発言を許しました。     〔「委員長議事進行だぞ」「自由党に許してわれわれに許さぬとは何ごとだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  53. 上塚司

    上塚委員長 この点については後ほど鮮明して御報告をいたします。——中崎敏君。     〔「議事進行だ」と呼び、その他発言するものあり〕
  54. 中崎敏

    ○中崎委員 通産委員長を呼んでいただくことになるのはけつこうですが、後ほどというのはいつでしようか。午前中に呼んでいただきたい。午後では困る。委員長どうでしようか。これを極力善処していただきたい。
  55. 上塚司

    上塚委員長 一応質疑を終了した後にいたします。
  56. 中崎敏

    ○中崎委員 議事進行でまず発言をしたいのでありますが、外務大臣の出席を要求したいと思うのであります。この点いかがですか。われわれの側にとつてはきわめて重要な問題でありますから呼んでいただきたい。
  57. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣は目下冷議院の本会議と予算委員会の方へ出席いたしておりますので、今ただちに出席が困難であります。
  58. 中崎敏

    ○中崎委員 実は私大きな問題については、一応外務大臣の意見を聞いてみたいとふうのであります。従いまして外務大臣の出席を待ちまして質疑をやりたいと思うのでありますが、それまで私は質問を留保しておきたいと思います。
  59. 帆足計

    ○帆足委員 今日は最後の審議でございますから、私ども審議の資料をいただきたいのでございます。昨日までにお願いしてありました資料をきようの午前中に御提出願わなければ、われわれはあとの質問を続行することは不可能でございますから、委員長においてひとつよろしくおとりはからい、御督促をお願いしたいと思います。
  60. 中村高一

    ○中村(高)委員 議事進行について。今通産委員の方から外務大臣を要求せられておることは、まことにもつともな意見のようでありまして、われわれ外務委員としては、もう十数日にわたりまして外務大臣との間に議論をいたしておるのであります。おそらく連合委員会を開きましたことは、この重大な法案につきまして、外務大臣から所見を聞こうという熱意だと思うのであります。われわれ外務委員として、われわれだけが聞いたからあちらの方の委員はどうでもいいということは、まことに忍びないのであります。どんどん議事の進行をしたい立場にありますが、これはまことに寛大でありますから、また連合委員会が連日開かれるわけでもありますまいし、外務大臣から重要な意見を開陳する機会は、公平に必要だと思います。
  61. 上塚司

    上塚委員長 今の中村君の要求の御発言の点は了承いたしました。すぐ外務大臣の都合を確かめてみます。  外務大臣以外の質問がありましたらば中崎君やつてください。
  62. 中崎敏

    ○中崎委員 私は、それに関連して、次から次と問題が起つて来るのでありまして、一応外務大臣の話をきつかけにして質問をしたいと思います。
  63. 上塚司

    上塚委員長 それでは次の加藤清二君。
  64. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私もやはり外務大臣に答弁方を願いたい。委員長はきのうお聞き及びになつたということでございますが、私はもう二十日も前からそれを通産委員会で要望しておつたのでございます。従いましてきよう与えられたせつかくのチャンス一回しかないと思いますので、ぜひ大臣に御出席を願つてお答え願いたいと存じます。
  65. 永井勝次郎

    永井委員 暫時休憩の動議を提出します。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  67. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めてください。野田君。
  68. 野田卯一

    ○野田委員 私はこの機会に、日米通商航海条約アメリカ関税政策との関係について、外務省の見解を求めたいと思います。
  69. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 アメリカの関税政策でございますけれども、これは日本のガット加入に非常に関係の深いことでございまして、われわれむろん非常に注目しているのでございます。御承知のようにガツトに加入するためには、日本が各国と関税交渉をまずやるというのが慣例でございまして、そのために過去二回ほど大がかわな関税交渉を多数国間にいたしております。  日本はガットに加入しないために、ある国々、たとえばフランス、カナダ、濠州というふうな国からは、まだガツトの税率を与えられておりません。従つてわが国の重要な輸出貿易というものも、これらガットの税率をわが国にもらえないということから、相当なドルあるいは外貨の収入減を来しておるということになつております。ガツトに早く加入したいということは、かねて希望を表明してあるのでございますが、去る二月のジュネーヴにおける中間委員会で、日本をどういう時期にどういう条件で加入せしめるかということを審議したとやに、日本の加入の条件というものが大体きまつたのであります。つまり日本を加入せしめるためには、日本が他の国と同等な条件で入る、それまでは、たとえば日本の労働法規はどうなつておるかとか、ダンピングのおそれはないかというふうなことが相当議せられたのであります。そのとき一つのデクテレーシヨンを出しまして、ある一国から相当多量な物質がある国に向けられまして、そのためにマーケットを非常に乱すというふうな場合には相寄つて協議する。これは何も日本に向けられたものではありませんで、一般的にそういうことを宣言して、そうして条件の方は片づきました。ただ時期の方は、まだそのときにきまりませんで、早い時期にということがきまりました。さてそうこういたしますうちに、今度はアメリカの方で、関税政策あるいはアメリカの将来とるべき通商政策は、いかにすべきかということが大問題になつて来たのであります。つまりトルーマンからアイゼンハウアーにかわりまして、しかもよく言われておりますように、民主党は低関税政策をとつておるが、共和党は高関税主義である、保護貿易、国内産業の保護政策をとる党であるということが言われておるのであります。過去の例はまつたくその通りでございました。ところが御承知のように、ただいまドルの偏在というものは、世界的の現象でありまして、ドルが全部アメリカに集まつておる。従つて世界のその他の国はドル不足で非常に悩んでおる状況であります。この結果としてわが国においても多角貿易ができませんで、ともすれば両当事国間の貿易をやらざるを得ないことになつております。これは御承知の通りオープン・アカウントを十七箇国あるいは二十箇国近い国と結びまして、清算勘定をやつているのでございますけれども、これもドルが不定しておつて、自由自在にドルを仲介として貿易ができないために起つている現象でございます。そこで御承知のように援助よりも貿易ということが、世界各国にほうはいとして起つておるようでありまして、アメリカの援助は、最初の段階におきましては経済援助が主でございました。これの一番大きな現われはマーシヤル・プランでございます。これによつてヨーロツパの経済復興が相当なし得たことは事実否定できないと思うのでありますけれども、それが中途に至つて今度は軍事援助になつたという関係がございます。そこでトレード・ノツト・エイドということを各国からいわれて参りましたので、アメリカにおいても高関税政策はやめたらよいじやないかというふうにかわつて参りました。その現われとして、日本に対しましても、まぐろの関税を引上げてくれという要望が強いにもかかわらずそれを上げなかつた、あるいは絹スカーフの場合においてもしかりでありますが、そういうふうに、低関税政策をとろうというふうに向いて行くのじやないかと観測いたしております。
  70. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣が出席されましたから、中崎敏君に発言を許します。
  71. 中崎敏

    ○中崎委員 外務大臣にお尋ねしますが、本条約の調印は四月二日になつておるということであります。これは時あたかも選挙の最中であります。そして、選手の結果によつて新しい内閣ができることはすでに明らかなことであります。言いかえますと、その当時の吉田内閣は、選挙管理内閣であるということが申し上げられると思うのであります。その選挙管理内閣において、この重要な条約が調印されるということは、われわれの了解に苦しむところである。どういう考え方、またどういう意図をもつてこのときにやられたのかをひとつお尋ねしてみたいと思います。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この問題は予算委員会その他外務委員会においてもしばしば申し上げておりますので、委員の中では重複されてお聞きになる方もありましようが、簡単に今の御質問お答えします。  この条約は御承知のように、一昨年の暮れから交渉を始めておりまして、その間に私も外交演説で二回にわたりまして、これに触れたことがありますが、その解散の前の外交演説におきましても、日米通商航海条約は近く妥結に至る見込みである、その際は国会の御審議を願うつもりであるということを申しておるのでありまして、またそれに至る間に委員会等の質問におきまして、かなりその内容について説明もいたしておきました。そしてほとんど話合いが妥結したのがことしの二月の終りごろだつたと記憶しております。それから条文の整理をいたしまして、当時の国会に提出する準備をいたしておりましたが、そして大体この調印の日取りもきめておりましたところが解散になつてしまつたので、提出ができなかつたわけであります。そこで従来の国際間の話合いのいきさつもありますし、また従来のきまつた方針で、ずつと政府はその考え方国会等でも明らかにして来ておりまして、それを突如として変更することは当を得ないのであつて、むしろ今まで通りの方針で行くのが解散後の内閣の任務であつて、解散後になつてから今までの方針を急遽かえるということは、これはむしろやらない方がよろしいという意見でありますし、また事実調印をいたすということは、条約効力発生には関係がないことであつて国会に提出し得る原案をきめたということになるのでありますから、われわれとしてはその効力を発生するかどうか、つまり承認をするかどうかは、国会に全部まかされておる次第でありますから、調印をしてもさしつかえない、こういう判定のもとに調印をいたしたのであります。
  73. 中崎敏

    ○中崎委員 どうも私はよくわからないのでありますが、こうしたものが条約として有効に成立した後においては、内閣はたといどういうふうにかわろうと、それは当然国家の責任においてこれを実行すべきことは言うまでもないのであります。ただ、いまだ交渉の過程において一つの案文がある程度進んでおつた。それがたまたまその後において整理をされておつたのでありますけれども、これはまだ調印にも至つておらない、国会承認もとつていない、従いましてほんの話合いにすぎない。そういうふうなものを選挙管理内閣、何ら実体的な国の重大な権利義務に関すること、大きな負担に関するような問題を取扱うべき性格でないところのその内閣においてやられたというところが問題なのであつて、それを前の内閣で、ある程度話が進んでおつたから、次の内閣が出でも同じようなことを守らなければならぬというような考え存、われわれ国民としてはこれに納得行かないのでありますが、この点についてやはり岡崎さんとしては、やらなければならぬという何らかの重い責任を持つておられたかどうかということ、別の理由があるかということをひとつお尋ねしてみたいのであります。
  74. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今までの国際間のこういう協定につきまして、調印はいたしたけれど4、その後内閣がかわつたり、あるいはその国の政治勢力の変更によりまして、国会承認を得なかつたというような実例はしばしばあるのであります。調印ということは国会の行動を拘束するものでは全然ないのであつて、その後の国会の勢力によつてこの調印したものが、かりに否認されても、それはどうもやむを得ないことであつて、それによつて国際関係が悪くなるとかよくなるということは、私はないと思います。しかしながら、少くとも従来の政府がずつとやつておる方針からいいますれば、調印のまぎわに解散になつたのでありますから、これは本来なら実は解放の直前に調印を行つたかもしれないのでありますが、ちようで調印をしようと思つているときに解散になつてしまつたので、ちよつと延びたのは事実でありますが、しかしそれによつて国会を拘束するのでも何でもないのでありますから、調印ということは、私は今までの方針通りつてさしつかえないことであるというふうに考えておるのでありまして、ほかの理由は別段ないのであります。
  75. 中崎敏

    ○中崎委員 この点について二つの問題があるのであります。一つにはこうした重要な問題は、まず調印の前において一応国会におよその輪郭等を明らかにして諮つて、それからやつてもおそくないのじやないかという考え方一つ。それからもう一つには、調印をしても、国会においてはこれを批判し決定する自由があるのだから、調印をしてもさしつかえないという考え方で、そのあとの方のお考えのようでありますが、一度、いやしくも時の政府が調印をしたからにはこれを容易にひつくり返すということは、国民の良識において、また国民を代表する国会においても、そう簡単になし得るものではない。これがただ調印の前において、こういうものであるが国会はどういう考えを持つておるかということが、かりに非公式にでも諮られるならば、相当かわつた意見というものも出し得る。現にその内容においても相当な問題があると思う。それがやはり泣き泣きでもついて行かなければならぬということは、政府が一方的に、しかも実質的意味における権限がないところの内閣が、一方的にそういうことをいたしたというので、国民に対してまことに悲しむべき結果が生じておる。現に外交のあらゆる面を見ても、ほとんど唯々として追随して、何ら日本の国を代表するような、国民の切実なるところの実情を反映するような手が打たれていないと国民は思つている。そういうやさきにおいて、こういうことが依然としてやられるというところに、国民に割切れないところの気持がある。そういう意味において、そうしたところの調印というものは、あまりに行き過ぎではないか。そうしてまた、その調印の結果というものは、明らかに国民に対して悲しむべき不幸をもたらすものではないか、こういうことを私は懸念しておるのであります。そういう意味において行き過ぎではなかつたか。そしてもう一つには、国会にもう少しその輪郭でも、すでにわかつてつたのであるから、解散前の国会において大体の輪郭を示されて、そういうようなものをもう少し国民とともに、国民外交をやるというふうな心構えを持つていなかつたのか。今後において、やはりこういうようなことを繰返してやるのかどうか。ことに外国において、ほんとうに急を要してその場で調印せられなければならぬというような事例もあるだろうけれども、この通商航海条約に関しては、一刻一瞬を争つて調印をされなければならないという理由はないと思う。そういうふうな意味合いにおいて、この通商航海条約の性質にかんがみ、またその当時の事情にかんがみて、もう少し慎重に国会の意思も尊重するという行き方がなかつたかということを聞いておるのであります。
  76. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国会にもその都度——これはほとんど秘密を要するような事項は少かつたのでありまして、従つていわば大ぴらに交渉いたし、またその内容についても別段隠すことはしておらなかつたのでありまして、国会においても説明等はずつといたして来ております。また一般の民間側の関係者にも意見を聞きまして、関係者も自由に意見を述べ、その結果も取入れて、たとえば三年間の旧株取得制限とか、その他の問題も入れておりました。この条約は長い間研究をいたした結果でありますが、日本のただいまの通商関係を規正するには一番適正なものだとわれわれは信じております。今申した通り国会にもあるいは一般新聞等にもこの内容はしばしば出ておるのでありまして、その点は隠してはおりません。国会にも報告いたしております。ただもし調印の前に国会の同村を得べしという御議論でありますれば、それはいつも言います通り、調印の前に国会承認を求めるということは困難だと私は思います。なぜならば調印する前はある問題が右になるか左になるかわからない状態でありますから、調印をいたすときにこれは右なら右、左なら左とはつきりきまるのであつて、その前に、右になるか左になるかわかりませんが国会承認求めますというような承認の仕方はできないことだと思う。ただ法律上の承認でなくて、国会の方にできるだけ知らせるという意味ならば、これはずつと隠しておりません。その結果につきましては、昨日でありましたか、外務委員会の公聴会で各方面の意見も問われたのでありますが、大体においてこの条約に適当なものであるという意見の発表があつたと了解いたしております。従いまして、政府としては、これについては解散後の内閣といえども従来のずつとのいきさつから見まして、調印することは別段さしつかえないという結論であります。
  77. 中崎敏

    ○中崎委員 時間の関係がありますので、あまりつつ込んで話ができませんが、いずれにいたしましても、今度の内閣はたまたま前の内閣と性格のかわらないものであつた。ところがこれは選挙をやつてみなければわからぬ。そのわからないものを予想して、先見の明があつて解散したかもしれないけれども、もし今度は違つた内閣がかりにできたらどうなる。現に自由党は過半数を持つていない。本来からいえば自由党内閣ができるはずのものでなかつた。それがたまたま間違つて内閣ができたにすぎない。それを予想して調印したのは、その当時としては行き過ぎだつた。これは何ら正当性を説明するものではないと思うのでありますが、この点はこの程度といたします、  さてこの条文の全体を見ますと、翻訳そのものみたいだ。われわれみたいに頭の悪い者にはわからない。もう少し日本人にわかるように、日本式に書くことができなかつたのか。テクニツクがあまりに巧妙過ぎて、英語のよくわからぬわれわれにはわからぬ。今後においてもそうでありますが、もう少し国民の親しめるようなやり方ができるのではないか。その点、今後のことも含めて、聞きたい。
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはまことにお話の通りで、私どもも条約の川語ということについては、とかくほんとうの日本語というよりも、むしろ生硬な感じの日本語を使わざるを得ないので、ぜひこれは用語例というようなものを早くつくりまして、実際の日本文にいたしたいと常に思つておるのでありますが、ただこの条約なども御承知のように、日本語と英語は両方とも正文、いうことになつております。従いまして日本語だけで書きまして英語とうまく今わないとぐあいが悪い。実は英語の方をごらんになりますと、日本語に合うように、英語としてはちよつとどうかと思うようなところもあるのであります。それは日本語と英語とがきちんと合うような文章にいたしますので、日本語にはあるけれども英語ににないという言葉もありますし、英語にはあるけれども日本語には適当でないというものかありますと、それを両方合せるために、どうしても英語はほんとうの英語と言えないような一分もでき、日本語もほんとうの日本語と言えないような一分でがきがちなのであります。言葉において日本語も英語も妙な言葉ではあるけれども、とにかく両方きちんと合うようにいたすために、実は私もこれは生なところがあつて不十分であろうと思いますけれども、今後できるだけこういうものははつきりした日本語の定義のような、つまり用語例をつくりまして、こういう点をだんだん改正して行かなければならぬと考えて、今後もできるだけそういう意味努力するつもりであります。
  79. 上塚司

    上塚委員長 中崎君、あと五分です、十五分を過ぎましたらそのつもりで。
  80. 中崎敏

    ○中崎委員 次にお尋ねしますが、私はこの通商航海条約を見て、これが日本の産業経済にいかなる影響を及ぼすかということを考える。もちろんこの条約日本経済全体としては喜ばしいということは言うまでもないことなのであります。しかし一面においてややもすれば隷属的な立場に置かれて来た日本が、さらにこの通商航海条約によつて、ある意味において既得権を認めるということは、これは日本にとつて非常に大きな問題である。そういう現実の上に立つておるだけに、この問題は全体として非常に慎重に考えて、いわば国権の回復というか、そういうかつこうから強く主張していただきたいと思つたのでありますが、全体を通じて、どこともなくわれわれが日本の将来を大いに心配しなければならぬという面が至るところにある。  さらにもう一つ大きな問題は移民問題であります。日本のこれだけの大きな人口を四つの島にとじ込められて、どこへもはけ口がないというような問題は、われわれは長い間いわゆる排日移民法という法律のもとに差別待遇を受けておつた。その民族のひがみがいかにしてこの条約によつて解決されて行くのか、将来一体どういうふうになるのか。ことにアメリカ側で、この内閣に一方的に条約を持つて行かれたのでありますから、それだけに日本民族の生きる道も移民等の問題で解決するのが当然と思うのですが、一体この関心をどう扱われておるかということをお聞きしてみたい。
  81. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本経済に対するいろいろの圧迫という点は、私どももこの条約をつくる上において一番頭を使つて苦労した問題であります。実は現状におきまして日本経済産業を保護するために、いろいろの規定考え得るのでありますが、そういう保護的な規定をたくさん入れるということは、いずれも将来のほかの通商条約に影響するのでありますが、日本と東南アジアその他の諸国との通商条約考えてみますと、ちようどアメリカ日本のような関係とまでは行きますまいが、今度日本進出をいろいろ心配する向きもありまして、日本アメリカとそういう条約を結べば、今度日本は自然に東南アジアその他に出て行くことはむずかしいという関係にもなり得るのでありまして、通商条約の形としてはおもしろくないのであります。もう一つは、そういう保護的な規定をたくさん設ければ設けるほど、日本の産業等がほんとうに競争して自立するということは少くなりまして、温室に入れられて育て上げられるというかつこうになりますので、もしほんとうに国民の中に産業自立の能力があるならば、できるだけ野放しにすることが望ましいわけでありまして、従つて主義としては自由に企業等も行えるようにいたしまして、ただやむを得ざる場合のみを特に制限的に規定いたしたのであります。そこでお話のような多少心配の点もあるのでありますが、銀行等につきましても、私は銀行協会の会長その他の意見も十分取入れまして、これならばむしろさしつかえないという結論を先方からもらいまして、こういうような規定にいたしたのでありまして、銀行などもそうでありますし、一方では百分の仕事にじやまにならないようにということと同時に、できるだけ銀行業務等を広く活用する、あるいは外資導入しやすくするという意味で、いずれも痛しかゆしの意見があるのであります。その中で結局各方面の意見をとりまとめまして、日本側としてはこの程度でよろしかろうということになつたので、今のような規定になりましたが、今後の運用におきましては、おつしやるような点は十分注意するつもりでおります。  それから移民の問題につきましては、アメリカ側に対しましてもいろいろ移民の話はいたしておりまして、これはほかのいろいろの関係でだんだん正常に復して参りますが、しかし私はアメリカに対しては、今までの情勢及び今後の情勢を見まして、とても大量に日本の移民が行くというようなところまでは期待ができないと思つております。すでにアメリカの国内開発も非常に進んでおりますし、何万とかいうような数がアメリカには、かりにいろいろな点が自由になりましても、行くことは困難であろうと思います。移民ということになりますと、やはり主として南米、中米それからほかの地域、東南アジアもできればそう考えますが、これはまたこれとして別の方面で、たとえば今外務省に海外移住局という新しい局を設ける法案を出して御審議を願つておりますが、こういう方面でこれは専門にとりかかりたいと考えております。アメリカとの間では、ヨーロツパその他の国々との関係もありまして、日本だけに特別に非常に大量な移民を許すということは、私はいかなる場合でも、ただいまのところではちよつと予期できないことだろうと思つております。
  82. 上塚司

    上塚委員長 中崎君、時間が来ましたから……。
  83. 中崎敏

    ○中崎委員 排日法はなお存在しておるのか。もし存在しておるとすれば、少くとも友好的な関係につながつておるものとして、これを撤廃せよと要求をしたかどうか、そういう努力をしたかどうか。
  84. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 前の、たとえば加州の土地法とか、その他排日的な立法はすでになくなつております、普通の例のクオータによる移民ということはできるようになつております。ただその数が非常に少いということであります。
  85. 上塚司

    上塚委員長 加藤清二君。
  86. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣にお尋ねすることは、さきの中崎委員質問に関連した点がございますが、まず第一番に、本条約国会で修正することが可能であるかないかという点。わかりきつたことでございましようが簡單に。
  87. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国会としては、これは修正することも否決することも可能であります。ただかりに修正された場合にどうなるかと申しますと、先方はすでに批准いたしておりますから、今度修正になりますと、また新たなる交渉を要して、先方の批准は結局違うものを批准したことになりますから、効力は発生しないということになりまして、新たなる交渉になり得る、これは法律的な意見でございます。
  88. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 修正可能な本条約を、不信任を食つた内閣が、その期間においてどうしても早く結ばなければならなかつた理由の要点だけお尋ねいたします。
  89. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今中崎君に御説明いたしましたのでほとんど尽きておりますが、修正可能である条約というのは、私の意味で言えば、いかなる条約でも修正可能なのであつて、この条約だけが修正可能だという意味ではございません。そうして条約につきましては、先ほど申したように、長い間交渉をして、いざ調印ということになつて国会が解散せられた、従つて今までの方針通り調印をいたしておくのが、これが正当なやり方であつて、もし調印して効力を発生するということになりますれば、それは国会の解散中にやるべきことではありませんけれども、国会承認が第一の条件でありますから、国会にすみやかに提出する意味においても、調印をいたしておくということが適当であろうと思つて、調印いたしたのであります。
  90. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると、これは修正してもよろしい、こういうことなんですね、
  91. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国会が修正をされるということは、要するに修正の意思表示を決議等でされることになりましよう、そうすると政府はその意思に基いて、今までの交渉をやめて、新しい交渉を始めるということになるわけであります。
  92. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に産業、経済上に及ばす影響の非常に多い条文が第五条以下に盛られておりますので、それについてお尋ねいたしますが、第一点は、今日外貨については内国人には管理が行われているようでございます、いわば統制が行われておると同じ状況でございますが、その条件が外国人の所有するところのドル及びポンド、日本国内において使用するところの外国人のドル及びポンドについて、日本の国法が適用されるかされないか、こういう問題について、これはごく簡単に答えていただければいいのです。どうせこれはわかり切つた話でございますから……、
  93. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外国人のドルと日本人のドルとの間に区別はありません。しかし詳細は経済局長からお答えをいたします。
  94. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 全然相違がない。そうすると外国人の所有しているドル及びポンドについても日本の国内法が適用される、そのまま内国人同様適用される、かように解釈してよろしゆうございますか。
  95. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 居住者はまつたく御説の通りであります。
  96. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その通りですか。間違いありませんね、絶対に。
  97. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 ただいま申し上げました通りであります。
  98. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは次に進みますが、この条約が行われることによつて、今のような答弁が成立するか、終戦後、過去においてもあなたの答弁が正しく適用されていたと解釈していいのか、いずれでございますか。うそをおつしやらないようにひと……。
  99. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 この条約実施関係なく、今までそうでございました。
  100. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではお尋ねいたしますが、過去において国内で使用されていた外国人のドルというものの中に、やみドルがあつたということを認めますか、認めませんか。
  101. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 法律上許されざるところの流通したドルがあつたということは、これはあつたかもしれません。
  102. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 日本の国内法の適用範囲外の外貨がとにかくあつたかなかつたか、それがすでに行われていたかいなかつたかという問題について、もう一度お尋ねいたします。それを政府側としては認めていたかいなかつたか。それは認めていても、どうせ手が及ばないことだからというて、やむを得ぬと考えていたのか、その点について……
  103. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 かつてコンヴアーティブル円というシステムをとつたことがございますが、それは向うからドルを持つて来た者が銀行に預けまして、そしてそれで円をもらいまして、その円で帳じりをちやんと表示いたしまして、そして余つた場合に、また持つて帰れるようにコンヴアーティブル円というシステムをとつたことがございます。それを除きましては、やみドルというものがありましたといたしますれば、それは違法に存在していたものであります。
  104. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 今の答弁にはまだ満足できない幾多の実例を私は持つております。時間があればあとでその実例を申し上げます。次にこの条約が行われることによつて日本人が現在所有しているところの持株、これが外国人の手に渡り得るということが思考できますが、さようなことが行われると思つていらしやるのか、そういうことは全然心配ないとお考えになつていらつしやるか、大臣にお尋ねいたします。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この条約規定にありますように旧株取得につきましては、三年間制限をいたすわけであります。新株というものは旧株があつて割当てられるのでありまして、これを違法に名義を何かごまかして買うというようなことが、考えればやみでやり得ることもあり得るかもしれないが、条約上は三年間は制限されるわけであります。
  106. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 すでに過去においても株式市場へ外国人が相当出入りしておるという実例を御存じございましようが、すべて平等な立場に立たせた場合に、資本の少い日本人と、大きな資本を持つている外国人と、全然平等な立場に立たせた場合に、利益率の多い株が流れるという心配があると存じますが、その点について大臣はいかようにお考えになつていらしやいますか。
  107. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう点についていろいろ懸念をいたしております。われわれ、また財界等の一般の心配は、株を取得することによつて、その事業の経営権を相手方にとられやしないかということであります。そこでやみでもつて株を取得した場合には、これはやみでありますから、かりに、そういうことはあるまいと思いますが、あつたといたしましても、経営権の問題にはなつて来ないわけであります。条約で三年間は旧株取得制限しておりますから、そういう心配は三年間はない、こういうふうにわれわれは考えております。
  108. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 三年たつたあとの話でございますが、この条約は十年間有効と聞いておりますが、三年たつたらこの条約は無効になりますか。
  109. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 つまりわれわれの考えは、三年のうちに日本の国内の、そういうふうに外国側にもし株を持たれて経営権を握られるということがいやな会社は、できるだけ早く資本の再評価、増資等を行いまして通常の経営に移す、通常の経営に移せばその点は——つまりわれわれの心配いたしますのは、資本金がたとえば一億であつて借入金等が非常に多くて、十億とか二十億の仕事をしておる、それを一億の半分でもつて、その全体の十億なり二十億なりの事業が支配されるということを心配しておる。もし十億のものに対して半分投資して、これが制限業種でないならば、外資導入ということはむしろ歓迎すべきことだと思つております。不当に少額のもので大きな事業を支配することを防ごうというのがこの条約の三年間の趣旨であります。三年の間には資本再評価その他の仕事を早く終りまして、今度は自由に外資導入をしても、日本の産業に不当な圧迫が来ないようにいたすというのがこの趣旨であります。
  110. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 不当の圧迫が来ないようにするという言葉の意味はよくわかりますが、すでに再評価だの何だの言われない戦前におきましても、日本の電気事業株や石油事業の株がほとんど向うに行かれていたという事実を大臣はよく御存じのことと存じます。ましていわんや今日こういう状態下に置かされて、占領中の特権はそのままに認めて行く。資本はまるで双葉山と赤子ほど違う、こういう前提条件をそのままに認めて、そうして日本資本力と外国資本力、特にアメリカ資本力と競争させて、今あなたのおつしやるような精神がはたして生かされるものかどうか、私の考えでは、当然この際平等な立場に置くためには、弱いものは何らかの保護政策を考えておかなければ、結果として平等な立場に立ち得ない、このままの状態で行くならば、やがて日本独特の資本であつた紡績資本にまでもアメリカ資本が入り込んで来るという憂いは、私一人でなくして業界の方々も心配しておるところでございますが、そういう心配ははたして杞憂に属するや、あるいは私の心配はいらざる杞憂であるということなら幸いでございますが、この際大臣の今後十年間の経済状態の推移をどうお考えになつていらつしやいますか、この際はつきり御答弁願いたい。
  111. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 自由党内閣は当初から外資導入ということを叫んでおりまして、野党側の質問では、お前たちは外資導入を一枚看板にしておりながら、全然入つて来ないじやないか、何をしておるのだ、こういうのが予算委員会等の質問に集中されたところでございます。外資というものはなかなか入つて来ないのであります。よほど条件をよくし、安全にしても容易に入つて来ないのでありまして、われわれはもしこの三年間に予期するように資本の再評価その他ができまして、そして今おつしやるように心配するほど外資が入つて来るならば、こちらの受入れ態勢ができたあとでありますれば、これはむしろ歓迎すべきものだと思つておるのであります。ところがなかなか、おそらくもし内閣が三年後も続いておりますれば、やはりあなた方から一枚看板の外資導入は一向にできないのじやないかといつて非難される部分の方が多いのじやないかと実は心配しておるのであります。要するに国内の産業の保護ということ、これはもちろん考えなければなりませんけれども、いつまでも保護をしておつては、ほんとうの世の中へ出てひとり立ちの働きはできないのでございまして、保護をすると同時に、できるだけ早くひとり立ちのできるようにいたすためには、その間の調節が必要でありまして、これがこの条約考えました臨時的な、三年間とか、ほかにも多少ありますが、調整であります。
  112. 上塚司

    上塚委員長 加藤君二十分の時間が来ました。
  113. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これでおしまいですか。
  114. 上塚司

    上塚委員長 次は伊藤卯四郎君。——お諮りいたします外務大臣は午後一時から参議院の本会議に出られる予定ですが、できるだけ簡略にひとつお願いをいたします。
  115. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣等にお伺いする前に一言申し上げておきたいのは、委員長もお聞きの通産委員会との連合審査の問題で議事進行上の問題が起りました。私どもがこれを一言言つておかなければならない理由は、われわれは二週間も前に申し込んでおる。委員長は昨日お聞きになつたと言われる、昨日お聞きになつて、さようお開きになるというのはこの日の時間的関係においてもいささか私は納得できないものがある。同時にまた疑問を起さざるを得ないのは、この条約は足かけ二年間にわたつて準備が進められて来ておる問題である。しかも産業経済上にとつて重大な問題を、通産委員会のものが連合審査会を申し込んだのに、わずか二十分をもつて、しかもそれ以上は許さぬ、しかもきよう限りだと言われる、こういう点を合せて考えて、委員長の先ほどとられた処置に対して、政府との関連の上に何らかそういうものをやられた計画的なものでないかということを私は思わざるを得ないので、はなはだ遺憾に感ずることをここで一言申し上げておきます。  お伺いいたしたいのは、アメリカ人の持つております産業別の株券、これが持つております資本の蓄積額、そういう点を具体的にお示し願いたいと思います。
  116. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 株式投資が三千八十八件、投資総額が約百億円、そのうち経営参加的のもの九十八件で約七十六億円、市場取得が約十三億円、受益証券投資が約五千二百万円、それからどういうものに投資しておるかという点のお尋ねでございましたが、詳しいものはここに刷つたものがございますが、紡織、製材、木工、紙パルプ、印刷、石油、ゴム、ガラス、金属、電気機械、輸送用機械……。
  117. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 ただいま政府側から御発表になりつつありました問題は、時間の関係等がありますから、後ほど資料として御提出を願います。大臣がお急ぎのようでございますから、大臣の方に先にひとつお伺いをいたします。  大臣御承知のように、日本は今日独立国家になつておるのであります。ところがアメリカから輸入されて参ります電池、石炭を初め多くの品物が日本に無税で入つてつております。しかもこれは日本産業再建復興への補助的なものでなくて、これが日本産業を圧迫しつつあることは申し上げるまでもありません。とかくこれの問題が起つておることも御承知でしよう。そういうような現状にあるのであるが、さればといつて日本から輸出するものには、アメリカを初めドル地域においては、だんだん関税障壁を高くして、日本商品入れるべからずという状態が起つております。これはまことに独立国家として不平等でありますが、こういう点をいかにお考えになつておるか、このままの形でこの条約というものを進められる考えであるか、この辺のさばきをどうしようとされるか、この点を伺いたい。
  118. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は条約の建前としてはいつも相互主義でありまして、こちらたけが無税で向うは有税だというような建前はとらないのが当然と、そう考えております。ただ今御指摘のものとか、あるいは食糧だとかいうものは、日本の国内の都合によりまして、特別の法律によつて産業経済再建に必要なものを、一時的に無税で入れるというようなことは、もしそういうことをやるとすれば、それはすべて自分の方の都合によつての特別の法律によるものである、こう考えます。
  119. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今の大臣の御答弁ははなはだ無責任でございます。現にたとえば重油が入りまして、今日本の炭鉱がそのために多くつぶれようとしております。一千万トンの貯炭ができてそのさばきに困つております。そういう状態があると同時に、さらに石炭も日本にあるのに七百万トンから一千万トン輸入をしようとしております。こういうものはすべて無税であり、しかもこの油会社はアメリカ資本が過半数を持つております。これが無税である。そして上つた利益をずつとアメリカにどんどん送金しつつある状態である。今ここで御答弁できないなら資料でお示し願いたいが、御答弁できますなら御答弁を願いたい。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今資料の持合せがないようでありますから、後ほどお願いいたします。
  121. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それでは後ほどこの資料はお示しができますか。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは外務省の所管じやございませんから、通産省等に調べてもらわなければ、私の方からの資料はありません。
  123. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 経済外交上これは重大な問題ではございませんか。たとえばアメリカ側からそういう形において入つて来るものは、占領時代と同じような形でどんどんそれが激増しつつあるために、日本経済を圧迫しつつある、日本から外国へ行くのには、無税でなく関税障壁を設けて、日本外国市場はことごとく漸次狭められて行きつつあることは、御承知の通りであります。これは通産省の問題だけでございますか、外務省経済外交上の問題に入るか入らないかひとつ承りたい。
  124. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外務省関係としましては、もし日本でかりに石油なら石油、石炭なら石炭を無税にしたいときに、国際的の条約を結びまして、このものは無税にするということを先方に約束いたしますれば、これは外務省の管轄になります。しかし日本の国内の必要上、あるいは粘結炭がどうしてもいる、あるいは重油がいるという国内の必要上無税にいたしますならば、それは通産省なりあるいは大蔵省なりあるいは経済審議庁の仕事になります。
  125. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間の関係上あるいはつつ込んで議論のできないのは、はなはだ残念に思うのでありますが、すでにそれは日本の都合ではございません。お調べになればわかるが、特に重油のごときはアメリカ資本が過半数ではございませんか。五つの会社をお調べください、これは全部アメリカ資本が過半数を持つております。しかも先ほどから申しますように、向うから入るものは占領下と同じように無税で、日本国から売るものに対しては税をかけられて売れなくなる、こういう状態で一体独立日本の産業経済経済外交を行われていると言えるでありましようか。そういうことを無視してこの条約が結ばれるということになるならば、これは重大なる問題である、われわれはそういう形で、これがすらすらと無視して結ばれるならば、この条約には賛成することはできないのである。そういう点に対してもつと閣議等においても打合せの上に、これらの経済上から来る問題について、この条約をどのように扱おうとしておられるか、根本問題について伺いたい。
  126. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは伊藤君は、国内の都合によつて無税にするものと、条約上の協定によつて無税にするものとを、ごつちやにしておられるような感じがするのであります。たとえば食糧等を輸入する場合に税金をかけるかかけないか。これは国内において食糧が必要な場合には、かけないで入れて来るということは各国でも行われておりますが、別にこれは条約上の義務としてやつているわけではない。その国の必要がなくなれば税をかけるということにもなりましよう。しかし石炭につきましても石油にしても、これは日本の国内に多量に産しないので、これに税金をかけて、特に高いものを国内で使わせるということになれば、またそれがコストに影響して、輸出品の値段が高くなるというような関係もありましよう。これらの円内における計算は経済関係各省でやることでありますが、条約上あるものを無税にするというと外国との協定があるということになりますれば、これはまたいろいろ問題でありますが、国内の必要上やつているということになりますれば、これは国内の法律によつてつているのである、外務省としましてはその結果をできるだけ有利にすることはもちろんでございますけれども、国内の必要でやることは外交の問題と一緒にならないのであります。
  127. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 外務大臣の答弁は、はなはだどうも国の政治の責任の上に立つておられぬような気がします。私は米のことは一言も言つておりません。日本の産業、経済を圧迫するもののことを言つておるのでございます。しかも外務省日本の外交政治をやつていると私は考える。日本の地位、日本国民の生活というものをよりよくさすために、外務省は外交政治をやつていることは論ずるまでもない。それであるならば、やはり国全体の政治の上に立つて、外交政治をいかにうまくやつて行くかということは、あなたもお考えになつているでしよう。まさかこれは別だ、外務省は象牙の塔であるとお考えになつてはおらぬでしよう。私は大臣がそういう考え方で外交政治をやられ、条約を結ばれるということについて納得できません。しかしながら時間の関係がありますから、私はさらにつつ込んで質問のできないことをはなはだ残念に思いますが、あなたの時間等もあるようですから、あなたに対する点を伺いたい。  この条約を結ばれましたら、あるいはアメリカ行つております日本人の投資資産、たとえば銀行への預金等は、アメリカ人が日本にいるのと平等の形で、各州においても政治的にこれが統一して行われるかどうか。御承知のようにアメリカ政府は一つのものをやりましても、各州の政治というものは多く独自の立場に立つてつております。このために、従来からアメリカ行つている日本人あるいはその二世等が、いかに不平等の立場に立たされているか、いかに卑屈な立場に立たされておつたかは、論ずるまでもありません。たとえば私が戦争の始まります直前にアメリカにしばらく行つておりましたときも、加州における一番日本人の多い地域において、黄色人種等は十七人のうちに一人以上使つてはならないということを明らかにしております。それらは各州々々で違います。そこでこの条約を結ばれまして、たとえば資産上の問題、あるいは投資上の問題、あるいは銀行上の問題、社会的地位の問題、諸船の問題について日米関係において平等に、しかも各州統一して行われて行くかどうかを伺いたい。
  128. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはもちろん原則的に言つてはその通りであります。但しいろいろな問題がありますから、その中にはこの条約にもあります通り、内国民待遇というのもあれば、最恵国待遇というのもありまして、内国民には許されないが、外国人には全部同様に取扱うというものもあり、内国民とまつたく同様だというものもありますが、それは日本でも同様であります。要するに相互主義でありますから、その点はどちらもお互いに同じことをやるのであります。少くとも日本人であるがゆえにとか、あるいは黄色人種であるがゆえにというような、そういう差別待遇はありません。
  129. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 外務大臣の答弁は言葉だけを要領よく使つて、結局答弁の核心に触れて誠意のある答弁をしようとしておられぬことを、私ははなはだ遺憾に思います。あなたの答弁は、とにかく答弁さえしておけばよかろう、二十分の時間さえたてばいいのだということで、要領よくやつているのに間違いありません。私はその点はなはだ不満にたえません。  そこで今お伺いをしたその各州との関係などにおいて、従来、あなたにも御承知であると思うが、アメリカ政府はこうしておつても、各州はこれをこう扱うということを単独自由にやつているが、そういう点に対して、今後は不平等なことがないような話合い等も内交渉の上に進められつつあるか、その点を伺いたい。
  130. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は決して二十分たてばいいと思つてつているのじやないのでありまして、これははなはだ伊藤君の誤解であります。  そこで今お話の点でありますが、戦争前の通要約、これもいろいろ逃げ道もありまして、法律的にこれが各州でできるというような考え方もありまして、いろいろ問題を起したわけであります。今度はそういう点は十分注意いたしておりますから、この条約は、ここに書いてあるものは別でありますが、それ以外は各州の法律等に優先する、こう私は確信しております。
  131. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうもまつたく時間であとを追いかけられておるようで、はなはだ残念でありますが、最後にいま一つ大臣に伺つておきたいのは、これは外務委員会等で同僚各位から相当検討されておることであろうと思いますから、私は触れる必要はないと思いますけれども、MSAの協定ができて参りますと、この条約などは問題にしないで、MSA協定が優先して行くものであるかどうか、その点伺いたい。
  132. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはお話の通り外務委員会でもしばしば問題になりました。主として問題になつたのは、MSAの協定によると、アメリカから持つて来る援助の品物が無税で入るじやないかという点であります。その他にもあるかもれませんが、われわれの考えでは、これはMSAの協定にしましても、あるいは今後領事職務条約というようなものをつくることになろうと思いますが、同じことでありまして、一般的の規定は個々にありますが、それに対して特別の規定を設けますれば、特殊のものだけは特別に扱われ、普通領事職務条約によれば、領事の持つて来る品物は無税、MSAの協定ができた場合にはどういう話になりますかは別として、日本に援助する兵器等は無税で入れる、こういうことになろうと思います。
  133. 上塚司

    上塚委員長 伊藤君、あと三分を余すのみですから、あらかじめ御注意をいたしておきます。
  134. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 政府側の答弁が要領を得なかつたり、資料がなかつたりして時間をとることは、委員長お含みになつていただかないと困ります。  私はさらにいま一点その点を追究しておきたいと思いますことは、今ここで審議されておりますこの日米通商条約は、国民的なものであることは申し上げるまでもありません。ところがMSAのものは軍事的なもので、軍事的なMSAの方が優先してどんどんやられて、国民的な条約が何と結ばれようとも、それは問題にされないで実行されて行くということになつて来ると、これは非常に重大な問題であるが、そういう点を関連さして、この条約なりMSAとの関係というものを見合いながら進められて行きつつあるかどうか、その辺の経過、あるいはまたそれらの大筋を大体どのようにはつきりわけておかなければならないというお考えであるか、そういう点についてお示しを願いたい。
  135. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは申すまでもなく、日本アメリカの間の経済関係、通商関係規定するものでありまして、これによりまして日本の商社等もアメリカにおいて自由なる活動ができる、これによつて貿易等も大いに増大するという期待を持つております。またアメリカにおります日本の国籍を持つておる人たちの権利も、これによつて確保されて安定する、こういうことでありますので、われわれとしてはこの一般的な通商航海条約は、すでにアメリカでも批准を了したことでありますから、できるだけ早く日本でも承認をお願いして、そうして一日も早く効力を発生したいと考えております。MSAの問題はいろいろな点で考慮を要するものもありますし、実はまだ交渉を始めてその入口に入つた程度でありまして、諸般の関係を見て慎重に決定しなければならぬ問題でありますが、これはいずれまた一応意見がまとまりますれば国会承認を得て、これによつて効力を発生するものでありますから、これとこの条約とは、これは別個の問題であり、また別個に国会承認を求むべきものである。この条約の方は今申した通りの理由で、一日も早く効力を発生いたしたい、こう考えております。
  136. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 政府委員の方に一点だけお尋ねいたしますが、最近日本におりますアメリカ人が、個人的な立場においてドルを相当入れつつあります。これで動産、不動産を買う、あるいは投資をするというようなこと等で相当入れつありますが、これは相当思惑がなければなりません。そこで最近これがどのように増加しつつあるか、それがどのように投資をされつつあるか、それから動産、不動産のどういうものを彼らが買いつつあるか、こういう点について、こまかい点はいりません、大体の大づかみの点でけつこうですから、どのようにそれが動きつつあるかを御説明願いたい。
  137. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 外資が入つて参ります場合は、ドルを送りましてそれが円にかわり、円で動産を買う場合はつかみようがございません。そうでなくて、それが投資の形で行われるというような場合、しかもそれが利潤の送金を伴うような場合には、必ず外資委員会の議を経なければならないということになつておりますので、日本に対して好ましからざる方面にその投資がどんどん行われて行くということはあり得ない。それから今までのところ、それらが参つております一番大きなものは技術援助であります。ほとんど大部分が技術提携の方に金が入つて来ております。
  138. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも私が一番聞かんとしたところの、そういう関係のドルがいかに増加しつつあるか、それからどのように投資されつつあるか、その大事な点をあなたは御答弁をお忘れになつたようであるから、それをお示し願いたい。なお数字的なことにわたりますから、ここで具体的にできないならば、これも先ほど要求いたしました資料と一緒にひとつ御提出願います。
  139. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 数字は外資委員会の方で編纂したものがございますから、それを差上げます。
  140. 上塚司

    上塚委員長 これにて本連合審査会を散会することといたします。     午後一時十五分散会