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黄田政府委員 アメリカの関税政策でございますけれども、これは
日本のガット加入に非常に
関係の深いことでございまして、われわれむろん非常に注目しているのでございます。御承知のようにガツトに加入するためには、
日本が各国と関税
交渉をまずやるというのが慣例でございまして、そのために過去二回ほど大がかわな関税
交渉を多数国間にいたしております。
日本はガットに加入しないために、ある国々、たとえばフランス、カナダ、濠州というふうな国からは、まだガツトの税率を与えられておりません。
従つてわが国の重要な輸出
貿易というものも、これらガットの税率をわが国にもらえないということから、相当なドルあるいは外貨の収入減を来しておるということにな
つております。ガツトに早く加入したいということは、かねて希望を表明してあるのでございますが、去る二月のジュネーヴにおける中間
委員会で、
日本をどういう時期にどういう条件で加入せしめるかということを審議したとやに、
日本の加入の条件というものが大体きま
つたのであります。つまり
日本を加入せしめるためには、
日本が他の国と同等な条件で入る、それまでは、たとえば
日本の労働法規はどうな
つておるかとか、ダンピングのおそれはないかというふうなことが相当議せられたのであります。そのとき
一つのデクテレーシヨンを出しまして、ある一国から相当多量な物質がある国に向けられまして、そのためにマーケットを非常に乱すというふうな場合には相寄
つて協議する。これは何も
日本に向けられたものではありませんで、一般的にそういうことを宣言して、そうして条件の方は片づきました。ただ時期の方は、まだそのときにきまりませんで、早い時期にということがきまりました。さてそうこういたしますうちに、今度は
アメリカの方で、関税政策あるいは
アメリカの将来とるべき通商政策は、いかにすべきかということが大問題にな
つて来たのであります。つまりトルーマンからアイゼンハウアーにかわりまして、しかもよく言われておりますように、民主党は低関税政策をと
つておるが、共和党は高関税主義である、保護
貿易、国内産業の保護政策をとる党であるということが言われておるのであります。過去の例はま
つたくその
通りでございました。ところが御承知のように、ただいまドルの偏在というものは、世界的の現象でありまして、ドルが全部
アメリカに集ま
つておる。
従つて世界のその他の国はドル不足で非常に悩んでおる
状況であります。この結果としてわが国においても多角
貿易ができませんで、ともすれば両当事国間の
貿易をやらざるを得ないことにな
つております。これは御承知の
通りオープン・アカウントを十七箇国あるいは二十箇国近い国と結びまして、清算勘定をや
つているのでございますけれども、これもドルが不定してお
つて、自由自在にドルを仲介として
貿易ができないために起
つている現象でございます。そこで御承知のように援助よりも
貿易ということが、世界各国にほうはいとして起
つておるようでありまして、
アメリカの援助は、最初の段階におきましては
経済援助が主でございました。これの一番大きな現われはマーシヤル・プランでございます。これによ
つてヨーロツパの
経済復興が相当なし得たことは事実否定できないと思うのでありますけれども、それが中途に至
つて今度は軍事援助に
なつたという
関係がございます。そこでトレード・ノツト・エイドということを各国からいわれて参りましたので、
アメリカにおいても高関税政策はやめたらよいじやないかというふうにかわ
つて参りました。その現われとして、
日本に対しましても、まぐろの関税を引上げてくれという要望が強いにもかかわらずそれを上げなか
つた、あるいは絹スカーフの場合においてもしかりでありますが、そういうふうに、低関税政策をとろうというふうに向いて行くのじやないかと観測いたしております。