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岡崎国務大臣 MSAの問題につきましては、この前九月の初めに申し上げたのですが、その後も引続き
協定文その他については
交渉を続けておりまして、大体において
意見は近づきつつありますが、いわゆる
顧問団の
性格とか、
顧問団の
任務、
顧問団に要する
費用等については、まだ双方の
——こちらは大体
意見がありますが、
アメリカ側は
政府に請訓しておるようで、まだ
向うからの確答がありません。それから
日本の
経済と
MSAとの
関係について、いかにこれを表現するかということについても、まだ
結論を得ておりません。その他多少一、二こまかい点ではありますが、大体においてはその
方面の
話合いはまとまりつつあるのであります。そこでそのうちにこの
MSAの五百五十号といいますか、
アメリカ側が
農産物を
政府で
買つて、それを希望する
外国政府に売り渡すという問題がありますので、これも
ちようど折から
国内でも不作の
状況でありますので、この
農産物を
相当量手に入れてみたいという考えも持ちまして、その
方面の話も並行して続けております。これは要するに
考え方としては、
外貨を支払わないで
麦等を入手するのでありますが、そのかわりに円で
アメリカ側に支払うということになります。そこでその円は
国内に積み立てまして、それでも
つて何に使うかという問題になるのでありますが、これは
日本の
防衛力の
増強に使うという点もありましようし、あるいはその他の国の
域外買付に一部使うという
考え方も出て来るわけであります。また
防衛力に関連して、
日本の
工業方面にその一部を使うという
考え方もあるわけでありまして、これらの条件とかあるいは
アメリカの
小麦の
値段が高いのでありますから、それを
国内でさばく場合には、
買上げ値段よりも安く売らなければならないわけであります。その間の調節をどうするかという点もあります。また
日本国内には
小麦は手持ちも相当ありますし、また
小麦協定によ
つて入手するかなり安い
小麦もあります。またフリー・マーケットで買えば、カナダ等非常に安い
小麦もあるのであります。従いましてこの
値段という問題も、なるほど
外貨はいらぬわけでありますから
都合がいいし、またそれをいずれは必要である
国内の
防衛のいろいろの
費用に使うということであれば、これもさしつかえないと思いますが、しかしこれらの点についてはいろいろ今
交渉いたしております。
なお、どういう
種類の
MSAの
援助を求めるかということにつきましては、来
年度におきまして
保安庁においてただいま
防衛力漸増の
計画を
立案中であります。従いまして、
アメリカの
会計年度と
日本の
会計年度は違いまして、
日本では来
年度でありましても
アメリカでは本
年度の
会計に入る月がありますから、
従つていずれそういうものができるとしますれば、その前に
援助の
内容をきめても、またそういうものができると、さらに新しく
援助の追加を必要とする場合もありましようので、そういう
保安庁の方の
計画が定まり、
予算等の
見通しがつく場合には、一括して
交渉した方がいい場合もありましようので、この点もにらみ合せてただいま
研究中でありまして、こういう点はもうそうおそからざるうちに
結論が出ると思いますが、ただいまはそういうぐあいで、まだ
諸般の問題についての
結論には達しておりません。
他方日韓会談につきましては、ここにおります
久保田参与が主としてこれに当つたのでありますが、御
承知のように、
日韓会談の
内容としては大体
五つの問題がある。つまり
基本条約の問題、それから
財産権請求権の問題、
漁業の問題、それから
日本におります
韓国人の国籍とか、処遇問題及び船舶の問題、こういう
五つの問題がありますが、これがなかなか話がつかないで今日に至
つておりますところが、
ちようど漁期にあたりまして李承晩問題が再びむずかしくな
つて参りましたので、このほかの問題はしばらくおいて、
漁業問題だけを話し合おうという
申入れをいたしましたが、
先方はやはり
五つの懸案について
会談を行うならば応じようということでありましたから、
日韓会談を全般の問題について再開することをこちらも
承知いたしまして、十月の六日から
話合いを始めたわけであります。始めましてもまず
漁業問題を先議しようと提議いたしておりましたが、結局これも
先方は全部の問題を同時に話し合いたいということでありましたので
承知いたしまして、本
会議及び
分科会をつくりましてこれらの問題を
討議いたしました。しかるに
先方では依然としてこの
原則論にのみ終始いたしまして、なかなか実際的な
話合いに入らないのであります。ことに
請求権につきましては、
韓国側が
日韓併合後三十六年間の統治において受けました被害に対する
損害賠償といいますか、
賠償請求権を保留しておるのだからというようなことを言い出しまして、普通の
請求権以外の問題にまで議論を及ぼしましたので、こちら側でもそんな不合理なことはないという
主張をいたしましたところが、これを口実にして、どうしても
日本側でその
発言を取消して、悪かつたと言
つてあやまらなければ、もう
会議は続行しないという
態度をと
つて来たのであります。われわれとしましては何も
間違つたことを言
つているわけでもないし、あやまる
理由は
一つもないのでありますから、それをあやまるということはできないのでとうとう
会議は不調に終りました。残念なことは、
ちようどその翌日
日本側としては
漁業問題の
分科会を開いて、かねてから言
つておりますような
漁業に関する積極的な、しかも建設的な
提案を出そうといたしておりましたところが、そういうようなわけで
会議が続行不能になりましたので、
漁業問題についても実際的な
討議に入れない
事情にな
つてしまいました。もつとも
韓国側の今までの
会議における
発言等から見ますと、かりに実際的な
提案をいたしましても、これに応じてまじめに
討議をするかどうか、はなはだ疑問なような感じも受けたのであります。要するに
李承晩ラインを
日本側が承認して、あの
ラインの
向う側には船を出さないということの
原則を認めなければ、
漁業問題の
話合いにも応じられないような
態度をずつとと
つて来ましたから、はたして建設的な案を出して、
先方がこれに乗
つて話をするかどうかは、実際上は疑わしかつたのであります。いずれにしましても、こういうふうにして
会談が不調に終りましたことは、はなはだ残念であります。しかしながらこちら側がすべて悪くて、
先方の言うことはみな聞かなければ、
話合いは続行できないというような
態度であ
つては、まことに残念でありますが、こちら側としても、そこまで何でもかんでも
先方に屈従して
話合いをするということも困難であります。従いまして、この
日韓会談を通じて
漁業問題を
解決しようとしたわれわれの初めの意図は、実現ができなかつたのであります。その後も
——実は
会談中でも
日本の
漁船等はつかま
つて、
向うに持
つて行かれております。その後も同様の事項が起りまして、御
承知のようにすでに四百何十名という人が
向うに捕えられておる。またこれに対しては、いかなる
法律であるか、はなはだ根拠があいまいな
法律によりまして
裁判を行
つておる。その
裁判には弁護士をもつけないで、か
つてな
裁判をや
つておるというような、非常に不合理なことをいたしております。そこでわれわれとしてもここに
二つの問題に当面したのでありまして、
一つは、ただいまつかま
つております
漁夫や
漁船を早く
日本に返還させるということと、それからようやく
漁期に入りました底びき網とかトロール船の
漁業を、
李承晩ラインの中でも継続してできるようにするという
二つの問題があるのでありますが、
先方が
国際法を無視し、そして力をも
つてか
つてに
日本の
漁船等をつかまえておる現状では、なかなか条理を尽して話しただけで
解決はむずかしいようであります。ようやくにして最近このつかま
つておる
人たちに対する着物であるとか、食糧であるとかいう
種類の
品物を送ることだけは
先方は認めましたけれども、これにつき
添つて業者の
代表なり
漁夫の
代表なりが
向うに
行つて世話をしようというこちら側の
申入れについては、まだ返事をよこしておりません。
品物だけは受取ろうという
態度であります。そこでこれをどうや
つて解決するかということにつきましては、いろいろ業界からも
意見を述べられ、われわれももちろん
研究をしておりますが、できるだけまず平和的な
解決方法を求めることは、これは当然であります。しかしながら一方においては
漁船の
強行出漁ということも言われております。その場合にいかなる保護を与えるか。これは何も実力を行使しにこちらから出かけるわけではありませんけれども、公海において
漁船がむやみにつかまるという場合に、これを保護するという手段は講じなければならない場合も起ろうかと思
つております。しかしその結果
国際間におもしろくない
事件が起ることはできるだけ避ける必要もありますので、ただいまこういう点につきましても、また
韓国の問題につきましては
国際連合軍も同地におることでありますし、
国際間の
関心も非常に強い今日でありますので、
世界の
輿論、ことに
国際連合軍を出しておる諸国の
考え方を、できるだけ
日本側の
主張に理解あるようにいたしまして、こういう
方面の
輿論を結集して、
韓国側の不合理を是正するような
措置もとるべきであろうと考えて、いろいろの点でただいま至急に対策を講じつつあるような実情であります。
以上簡単でありますが、御
報告申し上げます。