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1953-10-19 第16回国会 衆議院 外務委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月十九日(月曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    佐々木盛雄君       中山 マサ君    増田甲子七君       須磨彌吉郎君    勝間田清一君       穗積 七郎君    木村 武雄君       大橋 忠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 九月二十五日  委員荒舩清十郎大橋武夫君及び池田正之輔君  辞任につき、その補欠として星島二郎君、林讓  治君及び木村武雄君が議長指名委員選任  された。 十月十九日  委員林讓治君、帆足計君及び中村高一君辞任に  つき、その補欠として佐々木盛雄君、勝間田清  一君及び西尾末廣君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件  (東南アジア問題について)     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 ただいまより会議を開きます。  岡崎外務大臣は去る九月二十九日羽田発フィリピンインドネシアビルマ及び仏領インドシナを歴訪せられ、親しく各国の元首または首脳者と会見して国際親善の実をあげられたのみならず、賠償問題、国交回復の問題、通商問題等につき協議せられました。現職外務大臣がかくのごとく各国を歴訪して樽俎折衝に当られたのは、わが国外交史上稀有のことでありまして、外務大臣の御苦労を多とするものであります。しこうして今回の歴訪による成果は、国民のひとしく待望しておつたところであります。よつて今日は特に問題を東南アジアに限定して委員会を開き、大臣より御報告を求め、本委員会質問応答を通じて国民にこの間の事情を知らしめるよういたしたいと思います。岡崎外務大臣の御報告を求めます。岡崎外務大臣
  3. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今回の旅行は三国とも国交がまだ正常に回復しておりませんので、国交回復、それに続いてのいろいろの輸出入の円滑化とか経済的の提携の問題とか、その土台をつくるために国交回復を促進したいと思いまして出かけたわけであります。従いまして、向うに行きましての話合いは、もつぱら条約関係あるいはこれに伴う当然の賠償の問題ということになるのでありますけれども、その他にもずいぶん各般の話合いはいたしました。  これを国別に申しますと、フィリピンにおきましては、ただいまちようど選挙の最中でありましたので、いずれにいたしましても政府側との話合いは重要でありますが、同時に、野党であるナシヨナリスタ党領袖とも面会をいたしまして、特に野党側とも話合いをいたしました。そして大体においてフイリピンにおきましては、これは多少意見があるのであります。つまり桑港条約批准か、二国間条約を別につくるかという問題は、ほかのインドネシアビルマにおいて二国間条約という声が非常に多いものですから、フィリピンにおいても多少あるのでありますが、大体の傾向は桑港条約批准ということに傾いていると認められました。そこでそれにはもちろん賠償の問題が片づかなければならないわけでありますが、折から選挙の最中でもありますので、先方におきましても、賠償の問題なり、日本フィリピンとの条約関係なりを政争の具に供したくないという気持は十分認められました。もちろん先方におきましては、これは従来から超党派的に取扱つていわゆる十九人委員会等をつくつておりましたが、今回特に私が参りましたについても、できるだけこれを政争の具に供したくないという意思表示は、与党のみならず野党側からもはつきり聞きました。そこでいろいろの話はいたしましたが、これにつきましてのさらに具体的な話合いというのは、どうしても選挙後にまたなければできない、これはいずれの党派が勝つにしてもその関係はかわらない、こう考えておりましたが、先方も大体これを了承したようでありますので、基礎的な話合いはいたしましたが、額等については、いずれこちら側からさらに具体的な意思表示をいたしましようということを言つておられました。  それからもちろんその間にいろいろ話合いをいたしまして、先方賠償問題全般についてどういう気持でおり、どの程度腹案を持つておるであろうかということをなるべく知ることに努めまして、やや先方の意向もわかつたと思いますが、この点は向う選挙前のことでありますから、非常に慎重に取扱つております。選挙が終りましたあとでひとつさらに具体的なことを申し上げたいと思いますが、先方側考え方につきましても、具体的な数字等につきましては、ただいまのところ差控えて申し上げない方が両国のためであろうと考えております。もちろん先方においても、具体的な数額について話し合つておらないということは、野党側与党側双方において発表しておられます。私も実際上具体的数額について話し合つたことはないのであります。そうしてそれに関連いたしまして、私は日本としてはいろいろただいま財政的には非常に困難な事情にあり、ことに本年は農作物が非常に不作であつて、それの救済にも相当多額の費用がいるというような説明もいたしまして、かりに賠償を実行する場合にもこれを何年にするかは別として、初めが少くてだんだん毎年の額がふえるようにして行つた方が、日本経済からいえば、やりよいのであるということを説明いたしまして、これは先方でも納得いたしました。  それから年数につきましては、五年ないし七年ということを言われておりましたが、これは私は長い方がよろしいのである、その方がやはり支払いも容易であるという説明をいたしました。たとえば五年よりは七年がよいが、七年よりは十年がよい、十年が十五年になればなお都合がよいのだというような一般的の話をしましたが、この点も何年で話がついたということはありませんが、先方としては了承したように思います。そうしてもしうまく話合いがつきますれば、いずれの党が選挙で勝つことになりましても、超党派的にできるだけすみやかに賠償の話を片づけて、条約批准まで持つて行きたい、そうして日本フィリピンとの間のいろいろの関係経済的その他の関係において、もつと親善の度を深めて行くことが必要であるということに、大体意見の一致を見たのであります。もとよりフイリピンマニラにおきましても、実は中身は正味三日でありまして、はなはだ短かい期間でありましたから、そう非常な詳細な話をする余裕はなかつたのでありますが、しかしかなり先方でも時間をさいてくれまして、大統領初め、外務大臣はおりませんでしたけれども、その他の閣僚にも会いました。大蔵大臣とか通産大臣とか、いろいろ閣僚にも会いました。また野党側領袖であるロドリゲス氏、ラウレル氏、デルガルド氏その他多数の人に会いまして意見交換をいたしました。  次にジャカルタに参りましたが、これは合計五日いたのでありますが、初めの日が日曜日で、次の日がアーミイ・デーというので半日つぶれましたから、正味はやはりあまりマニラとかわつておりません。ここでも外務大臣旅行中でありまして、総理が外相を兼任いたしておりましたから、私の話は主として総理に対したものであります。しかしジャカルタにおきましても、ここは非常に多くの政党があるのは御承知通りでありますが、各政党領袖にも面会をいたしました。それからマニラでもそうでありましたが、ジャカルタでも、アメリカ、イギリス、オランダ、フランス等いろいろ外交団の人々にも面会をいたして意見交換をいたしました。ジャカルタにおきましては、新聞等に出ておるような賠償額というのではなくして、損害額というものが非常に大きく取扱われておりました。これはある者は、米ドルで百七十二億ドルといい、ある場合には八十億ドルともいわれております。これは損害額であろうと思いますが、まだまだいろいろ話合いをいたさなければならぬような情勢のように思いました。二国間の条約につきましては、インドネシアサンフランシスコ条約に調印したのでありますが、その後の国内情勢は、サンフランシスコ条約批准を不可能とするような情勢のように思われました。そこで、やはりサンフランシスコ条約に調印したのだから、早く批准をするようにといつて要求しましても、これは結局正常関係を延ばすことになるほか何ものも意味しないと思いましたので、私は総理その他と面会の後、これはどうしても二国間条約で行くよりほかはないのじやないかと思いました。日本側としても、二国間条約で満足に話合いがつくならば、これに異存がないという趣旨の話をいたしました。  賠償問題につきましても、いろいろ意見交換はいたしましたが、数額等については、これはまだもつともつと相互の実情認識のし合い方が必要であると思いまして、具体的な話はいたしませんでしたが、おそらく今月中にでも、先方から調査団が参るのじやないかと思つております。うわさされるところでは、その調査団には、インドネシア大使として、インド及びビルマに約六年も駐在されておつたスダルソノという人が、団長格で見えるのじやないかというふうに聞いておりますが、まだこれは決定したようではありません。従つてもう少し向うの決定を待つてから、はつきりしたことは申し上げたいと思いますが、この調査団が参りますれば、一層具体的な話合い日本側実情等についてもよく認識ができて、実際的な荒合いに進み得るであろうと期待いたしております。今回の会談にあたりましても、スダルソノ氏は、元大使でありましたが、今はアジア局長というような役割のようであります。非常に外務省でも重きをなしておる方のように見られました。会談中も滞在中も毎日面会をいたしておつた人であります。なおインドネシアにつきましては、ここにおられます倭島アジア局長を、今般公使の資格をもつてジャカルタ出張駐在をさせる。そしてさらに調査団が来た後の話合いも、倭島公使で話をするということにいたしまして、先方の了承を得ております。アジア局長は来月にも赴任をいたすことになろうかと考えております。  それからビルマにおきましては、これも非常に短かい滞在で、合計三日でありましたが、大統領初め総理外務大臣面会いたしまして、いろいろこれも話をいたしました。非常にビルマにおきましては自力更生といいますか、経済の復興ということについて努力をいたされておるようであります。賠償問題についても、非常な実際的な考えを持つておられるように思いましたし、また経済的な提携についても、何とかすみやかに実現をしたいという気持もあるように看取いたしました。総理大臣も非常にこの点は積極的なように見えました。ただ戦争損害につきましては、ビルマフィリピンに劣らないのだ、インドネシアよりももつと戦争損害は多いのだというような口ぶりも見えておりまして、この点で将来なおいろいろ話合いをいたさなければならぬ点があると思いますが、全体から見て、賠償問題等を非常に実際的に取扱おうという気持がよく見られたのであります。ここにおきましても、二国間条約の問題を話合いいたしました。これはサンフランシスコにも参加しておらないのでありますから、当然二国間条約を結ばなければならない関係になつております。いろいろこちらからも二国間条約の案を示して、これは出発前から研究して持つてつたものがありましたから、その案を示して先方意見を求めたのでありますが、先方においてはまだ考慮中であつて、しばらく時間をほしいということでありましたので、そのまま結論を得ずして帰つて参りましたが、しかし大体において、こまかいことは別として、大きな意見の相違はなかつたように思います。帰りは、実は十四日の朝バンコックに到着しまして、それから香港に向つて、十五日に日本に帰つて来る、こういう予定でありましたが、前に東京の駐箚大使をしておりましたフランスドジヤン氏が、自分の飛行機をもつてバンコックに飛んで来られまして、久しぶりで会見したのでありますが、ハノイへ行くからついでに同行して、インドシナ状況も見たらどうかということでありました。久しぶり面会したし、いろいろインドシナ事情も知りたかつたので、予定飛行機に乗らずに、ドジヤン氏の飛行機に乗つてハノイに参りました。その間いろいろインドシナ三国の状況も聞きました。また懸案になつております中間沈船賠償の話もいたしました。また一般的な賠償関係、あるいはヴエトナムとの公使交換、カンボジアとの公使交換等の話もいたしました。そしてハノイを早朝出まして、香港飛行機予定飛行機に乗りかえまして、ちようど予定通りつて来たようなわけであります。  以上非常に簡単でありますが、経過だけを申し上げまして、あとは御質問に答えて詳しく御説明いたしたいと思います。
  4. 上塚司

    上塚委員長 これより順を追うて質疑を許します。時間の都合上各党の持時間を二十五分といたします。福田篤泰君。
  5. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ただいま外務大臣から、今回の三国訪問につきましての御報告がありました。まず委員会を通じて国民に対外問題の真相を伝えたいというこの態度にわれわれは非常に敬意を表します。今後もこの方針をぜひとも持続していただきたい。ついては内容につきましてはきわめて抽象的な御報告でありますので、具体的な問題について若干質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、三国からの賠償額の要求につきまして、額の明示がなかつたというお話でありますが、これは新聞その他の報道を通じまして、従来とも非公式にいろいろな額が発表されておる。またわが方といたしましても、たとえばフィリピンに対して一億五千万ドルから三億ドル、あるいはインドネシアに一億五千万ドル、ビルマに六千万ドルというようなことを考えておるということも報道されておるような具体的な事実がありますので、私はむしろ今後の微妙な賠償に対する交渉について、じやまになつては困るから、腰だめでもけつこうでありますが、大体向うはこういう考えを持つておる。われわれの方はこれだけの力の用意しかない、あるいは用意があるとか、まず政府としてのめどを国民にお知らせしてその覚悟を固める、ないし今後の交渉にも当るというような態度が必要ではないかと思うのですが、この意味でどうしてもその点について具体的に言えないとなればしかたがありませんが、はたして全然触れなかつたのか、あるいは触れたが発表できないと言われるのか、その点をひとつお答え願いたい。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実際上先方では損害額についてはいろいろの話がありました。しかし賠償額については先方も非常に慎重な態度でありまして、どれだけということは実際言われなかつたのであります。これだけの損害であるから、この中から日本が分に応じて払うべきであるという損害額を示されたのであります。しかし必ずしもこの損害額全部が賠償の額ではない、そこは十分考慮の余地があるということは言われましたが、それをはたしてどれだけということは言われなかつたのであります。私の方としましては、実はまずその交渉具体化については、こちらからこれだけしか払えないのだ、あるいはこれだけ払う意思があるのだということを言わなければ、実際的には交渉は始まらぬ二とは承知しております。もちろんこれは日本財政力その他できまる問題であつて相手とかけひきして相手があまり要求しそうもなければ少くというような二とで行くべきでないことは当然であります。ただその中にも、たとえば日本の品物につきましてどういうものならば出しよいか、どういうものならば非常にむずかしいか、またこれを年限に見積つて初めの年に、具体的にどういうものであればどうなるかというようなことで、これが算定のためには内容的にもいろいろ見なければ、こちらの案もきまらないわけであります。従つて今度はたとえば資本財はどういうものを向うは欲しておるのであるか。それからたとえば機関車なら機関車が必要だとしても、日本機関車製造能力はきまつておるわけであります。一時に工場を拡張してたくさん機関車をつくつても、来年度からは何もなくなつてしまうというのではいけませんので、国内需要供給関係も見なければなりません。そういうような点で具体的な数字の基礎をつくる材料をできるだけはつきりとることを目的としておりましたから、こちらの方からまだ数額を、かりに腰だめにしても先方に言うだけのところへ達しておりませんが、実際上これは新聞にいろいろ報道されておりまして、先方もこの点は非常に困つておられるようにも見えました。というのは、これが少い額報道されますと、なぜそんな額をいわれておるのに黙つているのかというふうにつつ込まれるし、それからあまり大きなものを出せば、今度は日本側でこれでは話にならぬというようなことにもなりましよう。国民にあまり大きな期待を抱かせない——というとおかしいのですが、あまり大きな期待を抱かしてしまうと、これはにつちもさつちも行かなくなるというようなこともあつて、何かの数字が出るということは、先方としても非常にやりにくいように思われました。それで私どももあえて数額については言わなかつたのが真相であります。
  7. 福田篤泰

    福田(篤)委員 賠償の性質からいつて、いろいろ微妙なむずかしい点があるという意味で、お互いに額は発表し得ない、または発表していないということであれば、それで一応了承いたしますが、サンフランシスコ平和条約の第十四条の規定は、御承知通り役務賠償規定をしておるわけであります。今般報道によりますと、わが方は現物賠償である資本財の提供をも、役務賠償と並行して考えておるということを言われております。この点は重要な問題でありまして、はたして役務賠償以外にこういう新しい義務なり、やり方を考えるというならば、どういうふうに解釈してよいか。たとえば十四条の規定拡張解釈として政府考えておるのか、あるいは全然別個な形の新しい義務考慮しておるのか、今度の講和条約交渉につきましても重大な関係がありますので、この点を明らかにしておいていただきたい。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 サンフランシスコ条約の条文の解釈になるわけでありますが、十四条の規定原材料をすべて求償国の方の負担であるというふうには書いてないのでありまして、ただ外貨負担日本側としては回避する必要があるから、原材料求償国で供給すべきであるというふうに書いてあるわけであります。そこでこれは政府としては非常に厳重にといいますか、きゆうくつに解釈いたしておつたのでありますが、それではいつまでも二の賠償問題は解決できないし、また役務にしましても、要するにその賠償に使わなければ何らかの形で国の富になるか、あるいは外貨の獲得になるものでありますから、全体の額が日本負担にたえる種類のものであれば、あえて材料日本側で持つても、これは結局は経済的には大した差額がないのではないかと思つております。またかりにありましても、すでに総理大臣も前に予算委員会でも申したのでありますが、必ずしも役務だけに解釈しないで、これをできるだけ相手国に有利に解釈して行く。但し総額の点ではどうしてもこれは日本の払い得る程度に落ちて来なければできないわけであります。こういう意味現物賠償といいますか、そういうようなことも考え得るということは従来も申しておりましたが、今回もやはり先方によく説明をいたしました。
  9. 福田篤泰

    福田(篤)委員 そうなりますと、フィリピンは御承知通り調印はしたが批准をしていない。従つてこれは十四条の規定拡張解釈でこの現物賠償も解決し得る。今後ビルマインドネシアは、今までの御説明によりますれば、二国間の条約平和国交が行われると申されますが、その場合にやはり十四条の拡張解釈式賠償規定規定されるつもりか、あるいは全然別個な形で新しい義務考えられますか、その点を明らかにしていただきたい。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだそこまで具体的に行つておりませんけれども、私の腹案としましては、条約の中の文章といいますか、書き方はサンフランシスコと同じようにいたしたいと思つております。ただそういう拡張解釈といいますか、ゆとりのある解釈をとるのでありますから、かりにフィリピンとの間の場合にも話合いがつきますれば議事録なり、あるいはその他の形でもつてこの十四条の意味はこういう意味であるということを述べますが、それにはつまり資本財も入るという趣旨のことが入ると思います。同様の議事録なり何かほかの形でインドネシアビルマにつきましても、条約解釈としてこういう意味であるということを書けばそれで行きはしないか、こう思つております。
  11. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先ほどの御説明で、インドネシアは特に二国間の話合いで行きたいという希望を持つております。いろいろこの動機なり考え方は、米ソ陣営にも左右されない第三勢力としてのアジアの立場を守りたい。賠償条項不満であるという民族的な要望が強いということを言われておりますが、ほんとうの理由はどういうふうに解釈されますか、外務大臣の御見解を伺いたい。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように、インドネシアにおきましてはただいまでもたしか十の政党閣僚を送つております。そうして閣外協力として共産党も現内閣を支援しておるような、非常に多数な政党が支持しておるわけであります。その政党々々によりましてはいろいろ意見があるようであります。今おつしやつたようなどちらかの陣営にあまり加担し過ぎてはいかぬじやないかという意見も、一部の政党にはあるようでありますが、主として賠償関係役務に限定されておるという点に、サンフランシスコ条約不満があるように私は感じました。
  13. 福田篤泰

    福田(篤)委員 次に経済協力について一言お尋ねしますが、これは私は見ようによつて賠償自体が一種の経済協力内容を持ち得るものである。この場合政府としてそういう考えが正しいかどうか、またやるとすればどういう方法でこの一連性と申しますか相関性を生かして行くつもりか、この点をなるべく具体的に御説明願いたいと思います。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お説の通りであります。お説の通りでありますが、ただ多少その間に違いがあるとすれば、賠償の方は主として相手国戦争損害を軽くする、回復するという意味でありますから、もつぱら相手国利益のためをはかるという点にあるのであります。それから経済協力という点は、相手国利益もはかりますが、同時に結局のところは、日本にも利益になるという観点に立つわけであります。但し今のところ経済協力にしましても相手方がゆたかになり、相手方の資源が十分開発せられるということが、最終的に日本利益になるのであるから、目下さしあたりのところは何もすぐ日本利益を追求しなくてもよろしい、相手国だけの利益考えればよろしいという気持になつておりますから、そのさしあたりのところは同じことだと思います。相手国利益、しかし終局的には今申した通り多少の違いがある。ただ経済協力をあまり私が振りまわしますと、何か賠償を払わないで経済協力でごまかすと言つては語弊がありますが、肩がわりするような印象を与えることが一つと、それからやはり正常関係になりませんと、結局経済協力ということもなかなかむずかしいということもありますから、先方から求められましたときは、われわれとしていろいろの考えがあることは述べますが、これはもつぱら先方希望によるのであつて経済協力をむやみに振りまわして賠償を何かわけのわからぬようなことにするというような印象がないように努めて参りたい。従いまして主としてこれは賠償問題の話合いがおもでありまして、経済協力は参考までにこういうことも考えられる、こういうことも考えられるということを説明いたすにとどめました。
  15. 福田篤泰

    福田(篤)委員 やはりこの問題と関連しまして、具体的な今後のいろいろな困難を予想される点は、御承知通りインドネシアのオランダ資本、またビルマにおける旧英国資本、これは非常に強固な組織と根強さを持つている、民族的な各国の感情とも大分違うといいますか、具体的の実力の点からどうにもしようがないという現状のようでありますが、今後経済協力する場合に各国アジア的な、民族的な要望というものと、従来の支配者であるオランダや英国の資本的の力に対して、どういうようにして行くか、この点について外務省は十分御調査をしていると思いますが、何らかの方向について御指示があれば承りたい。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も参りまして、たとえばオランダの資本力がなかなか強いことはよくわかりましたが、オランダ側としてもインドネシアの繁栄ということが、結局オランダの投下資本を保護して利益を上げるゆえんであるということも十分考えておられるようでありますから、この点についてやり方さえ気をつければ、むやみにオランダ資本を排撃して日本だけが出て行くという、こういうことではいけませんけれども、いずれにしてもあすこには非常に大きな資本がいるのであつて、今投下しておるオランダの資本以外にも、日本の資本も技術も十分入り得る余地があるのでありますから、もちろん中心はインドネシアの資本なりインドネシアの技術をもととしなければならぬが、この三国でも四国でもいくらでも協力して行く余地は十分あります。日本の貧弱なる資本だけでとうていインドネシアに十分なことはできないことははつきりしておりますように思いますから、やり方だけであつて、そのやり方に気をつけさえすれば、あまりそういう点について心配はないじやないか、こう思つております。
  17. 福田篤泰

    福田(篤)委員 昨年インドネシアの使節団長が来まして、団長と私会いましたときはこういう希望がありました。日本がいろいろな各ルートを通じて提携問題ないしは開発問題について、問合せなり照会なりがしよつちゆう来ておるが、ばらばらで非常に迷惑しておる。何か政府側で権威あるしつかりした窓口をひとつくつて、そこでまとめてやつてくれないかという切なる希望があつたわけであります。これは一年前からの懸案になつておりますが、外務省が中心になりましていろいろ研究しておると伺つておりますが、今後の各国との、微妙な東南アジア諸国との提携経済開発あるいは経済協力につきまして、何か政府側に一本の機関をつくつて、ばらばらの各商社なり各団体の公社その他の分散あるいは矛盾を避けるように御用意があるかどうか、またなければ一日も早くしなければならないと思いますが、この点について具体的な御回答を願いたい。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この点は私もお話のようなことを先方で聞きました。これはもつともなことだと思いますが、政府としてはまだ政府でそういうものを統制するというところまであまり進んでおりません。あまり考え方としてはやりたくないことであります。ただいまアジア経済懇談会等をつくりましていろいろ研究しておりまして、ただわれわれのやり得る二とは、そのいろいろな人が行つていろいろな計画を立てておるのであるけれども、その中でこれは健全な事業であつて、しかもインドネシア側に——ほかの国にもそうでありますが、相手国に十分役に立つて、また将来日本の方にも利益をもたらすものであるという判断ができましたら、その事業なり計画には、たとえば開発銀行なり輸出銀行なりを通じましてもその他政府としてできるだけの助力をいたす。助力をいたさない、政府のバツク・グラウンドのないものは、政府としてあまり感心していないものであるという二とに結論的にはなるのであるが、そういう意味で積極的な援助をいたしますが、お前はいかぬ、お前はいいといつて、全部統制してやるというところまでにはまだ進んでおりません。
  19. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それでは各民間で自分かつての自由競争にまかせるという、こう了解してよろしゆうございますか。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれとしても自が届かないと思いますから、民間の方の自由な活動にできるだけまつべきものであつて、その中で資金が必要であるとか、あるいは技術が必要であるとか、あるいはその他政府の援助が必要であるというものには、これは調べまして、いいものであればこれに対して援助を惜しまない、こういう態度で進むつもりでおります。
  21. 福田篤泰

    福田(篤)委員 時間がありませんので最後に一つだけお尋ねいたします。  三国をまわられまして、これは各報道ニュースでわれわれも注意を深めておつたのでありますが、日本に対する対日感情——一昨年私どもがマニラに行つたころは、一歩もホテル以外に外出もできなかつたような非常な険悪な状態でありましたが、その後断片的に伝えられる外相の談話によりますと、非常によくなつている。どういうような好転を示しておりますか、また現在のMSA交渉または論議されている再軍備問題について、どういう反響を示しているか、この問題についてひとつお尋ねしたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私が参りました印象では、三国ともに非常に空気はいいようであります。またわれわれが外に出て、何ら懸念のある評うなことは想像もできませんでした。この理由はいろいろあるだろうと思いますが、要するにだんだん年がたつて来まして、双方の理解が深まつたからだというほかはないと思います。  なおこれはちようどお話がありましたが、私も先ほど言い落したのでありますが、日本の防衛力漸増ということにつきましては、いずれにおきましても非常に注意深くこれを検討しているようでありまして、これは政府側はあまり言及されませんでしたが、新聞報道機関等では常に二の問題について質問を発しております。その理由は二つあるようであります。一つは、日本が防衛力を漸増するために何千億という非常に大きな金がかかる、従つて賠償は払えないのだ、こういうふうに持つて来やしないかという懸念であります。われわれはこれに対しては、日本は防衛力も漸増しなければならない、兵器も必要であるし、国内でたとえば災害の対策であるとか、あるいは教育の普及であるとか、いろいろの点にやはり費用はいるのであつて、それと同じように防衛力漸増にも費用はいるのであるから、この費用は組むけれども、これをもつて賠償が支払えないという形にはしない、賠償の費目もやはり組むのであつて、いずれも国力に応じた程度には組むつもりである、こういう説明をいたして来たのであります。もう一つは、やり一般に言われておりますように、日本が大きな武力を持つということになると、将来これはまた日本が昔のような侵略的な行為をとりはしないかという懸念のように思われました。しかしこの点につきましては、一般に私の印象では、日本も防衛力は必要である、また将来は日本がしつかりすることによつてアジアの安定も保たれるのであるから、その防衛力についてあまり懸念をする必要はない、むしろこれは歓迎すべきものじやないか、もちろんそのやり方及び心構え等は、十分注意しなければならぬけれども、独立国が防衛力を持つということについて、とやかく言うべきものじやないのだというふうに傾いている方が多いように思われまして、日本の武力ということに恐怖を感じているというふうにはあまり見られませんでした。この点はやはりだんだん事情がわかつて来たのじやないか、こう思うのであります。
  23. 上塚司

    上塚委員長 次は並木芳雄君。
  24. 並木芳雄

    ○並木委員 さつき委員長のあいさつを聞いておりましたら、委員長与党委員長として祝辞のようなあいさつをされたのでびつくりしたのです。われわれ委員は何も大臣が東南アジアに行つたことを公式に聞いておりません。ですからこそきようは出て来てもらつていろいろ聞きたい、こういうふうに要望しておつたわけです。  第一に、私は今度の大臣の東南アジアヘの逃避行というものはわからない。なぜわからないかというと、MSAというものが先月の末ごろには調印の運びになるであろう、こういう答弁を聞いておつて、その九月の末を待つてつた私どもには、調印を待たずしていつの間にか大臣が姿を消してしまつたのですから、こんなふに落ちないことはないわけなんです。これはどうしても私どもとしては、MSAと日本の国防問題と、今回の大臣の東南アジア行きとの間に関係があるというふうに説明を得なければ納得ができないわけであります。この間にはたして関係がないのかあるのか、まずお尋ねしたい。
  25. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは関係はありません。もししいてありとすれば、私が二週間余り留守にしましてもMSA交渉には支障なしという観測のもとに立つてつたのでありまして、その意味では消極的には関連があるかもしれませんが、積極的には関連がありませんし、今逃避行というようなふうに言われましたが、私はどこへも逃げるつもりはなかつたし、また逃げるわけにも行きません。
  26. 並木芳雄

    ○並木委員 関係がないとはつきりおつしやるならば、それでいいのです。そのかわりそれならばお尋ねしますけれども、MSAというものは近く調印になるのですか。どういうわけで遅れておりますか。
  27. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAの交渉につきましては、今せつかく保安庁等でいろいろの計画を研究しておるのでありますから、その計画も見てさらに交渉を始める方がいいと思いますし、その計画等も予算との関係もありますので、そういう点の研究を待つておるわけであります。
  28. 並木芳雄

    ○並木委員 そういたしますと、やはりそういう点で東南アジアの了解を求めておく必要が生じたのではないですか。つまり賠償のような大きな問題があるのに、東南アジアの諸国の了解なしにMSAに調印をし、日本の防衛力を強めて行くということになつてはいけませんので、それで大臣が行つたのではないか、私どもはそういうふうに考えたわけです。しかも今お伺いすれば、保安庁の方で云々といいますけれども、大臣はMSAの調印と防衛計画とは全然関係がない、全然別個だというふうにおつしやつていた。今日それをそういうふうに関係づけられてMSAが延びるということは、これはやはり政府としては責任を感じなければならぬと思います。やはり関係があつたのではないですか。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 東南アジアの方面におきましては、MSAの問題は話しなかつたのであります。また全然する必要もないと思います。これは日本とアメリカだけの問題であります。私はMSAの交渉について、防衛計画等が必須条件ではないということを繰返して申し上げました。同時にあればそれに越したことはないということを申しました。ちようど今計画立案中のようでありますから、それができれば、話合いについてはあつた方がいいのでありますから、できるかできないかしばらく様子を見てみる、これは重要なことでありますから、急いで何もきようあすを争つて調印しなければならぬというよりも、むしろ慎重に十分考慮してやつた方がいい、こう考えております。
  30. 並木芳雄

    ○並木委員 どうもその点は大臣の答弁がまた上手にかわつて来ているように受取ります。  通商条約の問題であります。東南アジアとの貿易ということは、国会においてしばしば強く政府に要望して参つたのでありますけれども、今度の旅行を通じて、東アジアとの間の貿易の見通しについては、どういうふうに大臣はお感じになつて帰られましたか。通商条約のごときも、二国間の条約あるいは平和条約に対するフィリピン批准、そういうものが行われなくても、何らかの形で締結される可能性があるかどうか。貿易関係についてお伺いしたいと思います。
  31. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 通商条約は、普通の常識からしますれば、国交回復前にはやれないと思います。やはり国交回復が前提条件だと思います。従つてさしあたりやろうとすれば、通商協定なり貿易協定あるいは支払協定、こういうものになろうと思います。貿易の関係につきましては、フィリピンとの間はこれはだんだんよくなつて来るように思つております。インドネシアにつきましては、日本の方が輸出が多くて輸入が少い関係でありますので、これは輸入の方をもつとふやす必要があろうかと思います。それでなければ輸出もさらにふえることはむずかしい。また御承知のように六千万ドルというような貸越しのものもありますので、これはできるだけ輸入をふやして行かなければならぬ。それには道路が必要であり、港湾が必要であるというようないろいろな考慮がいるわけであります。ビルマにつきましては、今月の一日からインドその他の国に行われておりました特恵関税を廃止しまして、日本もインドやその他の国々と全然同じ立場において貿易を行えるようになりましたので、最近非常に日本の品物がふえて向うに行つておるようでありまして、この点もけつこうだと思います。今後はやはり通商条約はできるだけ早く国交を回復して、その上で各国との間にそれぞれつくつて行く、こういう方針で行つております。
  32. 並木芳雄

    ○並木委員 賠償内容でございますけれども、サンフランシスコ平和条約では役務について賠償を行う、こうなつております。ところが今度は品物で、資本財として行う、あるいは現金で払えという話も出て来たのではないかと思います。しかし十四条の賠償規定というものは、平和条約第二十六条によつて二国間の平和条約を結ぶ場合には、「いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行つたときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼさなければならない。」こう規定してありますので、十四条の条件よりも有利な条件を二国間で結ぶようなことがありますと、ほかの問題に波及する影響が大きいのじやないかと思います。その点に大臣は気がついておられるかどうか。もし気がついておられるならば、どういうふうに処理をして行くお考えであるか、お尋ねしたいと思います。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今おつしやつたことのうちで、金銭賠償という問題は、今度は相手国からもほとんど出ませんでした。要するに役務なりあるいは品物なりを受取りますれば、それを処理して当然収入はその政府にあるわけでありまして、この点はあまり問題にしておられないように思いました。また賠償条項につきましては、十四条の1にありますように、これは日本の軍隊で占領した国ということになつております。従いましてそれは今のところフイリピンインドネシアビルマインドシナ、この四箇国ということになるわけでありまして、この四箇国に対してこの十四条の解釈——十四条はそのままであつて解釈の問題でありますが、四箇国に対して同様な解釈を施すにおいては、今おつしやつたような二十六条の問題は出て来ないであろう、こう考えております。
  34. 並木芳雄

    ○並木委員 その点についてフイリピンの例の沈船の引揚げでございますけれども、それは協定ができたのでありますが、どういう現状になつておりますか。聞くところによると、なかなかやつかいな問題が含まれておつて、着手に至るには骨が折れるということでありますけれども、どんなふうな事情になつておりますか。
  35. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは向うでもいろいろ、大統領が不在であつたりして遅れたと思いますが、間もなく調印になるはずであります。そうむずかしいことはないように思つております。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどの大臣の御報告ですと、フイリピンとの間の賠償の額などについてこちらからいずれ意思表示はいたします。やや先方の意向もわかつたとのことでございました。選挙が終つたら具体的なことを私どもに報告するということでございますが、具体的な数字はとにかくとして、その額は大体日本政府としては満足できるものであるかどうか、それをお伺いしたい。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうことはまだ私は申し上げられないのでありますが、ベーシック・オブ・ネゴシエーシヨンと申しますか、交渉の基礎として成り立ち得るように先方考えておるし、われわれもそう思つておる。そういうことを基礎としてだんだん話合いを進めて行く、こういうことになろうかと思います。
  38. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどのお話の中にインドシナ損害額百七十二億ドルないし百八十億ドルということが報告されましたけれども、大体最近の賠償の傾向としては、こういう損害額に対してどれくらいの率のものが決定されておりますか、その点をお伺いしたいのです。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私先ほど申し上げましたのは、一般に新聞等に出ておる数字をただ述べたのでありますが、それは百八十億じやなくて、百七十二億ドルというのが一つあります。また八十億ドルというのが一つあるわけであります。これは損害額であります。最近の例としてもあまり私どもは的確な例は持つておりませんが、たとえば私の記憶しておるところで、多少間違つておるかもしれませんが、イタリアの場合にはいずれも求償国はかなり大きな損害額を提示したようであります。たとえばユーゴスラビアは三百四十億という損害額を出したようでありますが、だんだん減りまして最終的にはあの条約にありますように、ユーゴスラビアは一億二千五百万ドルを賠償として受領するということになつたようであります。これは別に先例としてどうごうということではございません。一つのこういう事例があつたということだけを申し上げるのであります。
  40. 並木芳雄

    ○並木委員 インドネシアなどが特に日本に対してあまりいい感じを持つておらないという理由の一つに、日本があまりにアメリカと友好関係になり過ぎておる、そして東南アジアの国々との間の国交をはからないというようなことでもつて、要するに日本政府のアメリカとの協力強化ということに対して、快からず思つておるということがあると思うのですが、この点については今度はいかがでございましたか。
  41. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうお話も私聞いておりましたが、行つてみた感じではそのようなことはないように思います。ただ私自身、というよりも日本外務大臣がほかの国に行くに先だつて、まず東南アジアの三国を訪問したということについては、私自身じやなくて外務大臣たる者が行つたということについては、比較的いい感じを持たれたように思います。しかしアメリカとの提携の問題については、やはりこれは日本として日本自身がきめる問題であるというふうにとつてつて、別段これについて言及した人はなかつたように思います。
  42. 並木芳雄

    ○並木委員 ではあと須磨委員が御質問しますから、もう一間にとどめておきますが、要するに賠償の問題が片づかず、二国間の条約あるいは批准というものが片づきませんと、なかなか本来の意味における国交の回復ができないわけであります。そこでこれが長引くようなことがある場合には、全体として大臣はどういうような方針で国交をやつて行くお考えであるか。ことに最近起りました問題では、ソ連との間の例のラズエズノイ号の事件に関連して降伏文書というものがまだ生きておるのだとか、いやこれは無効であるとかいうような議論さえむし返されておる状態であります。こんなことについては私どもむしろびつくりしておるわけなんですけれども、友好国たらんとしておつてもいつ何時またそれが破れないとも限らない。お隣の大韓民国李承晩ラインなんかでもそういう問題があるのであります。ですから両方の場合を想定しなければなりませんが、どういうような方針でもつて事実上の講和、事実上の平和状態をこれから推し進めて行くつもりであるか。これは二国間の条約がなかなかできなかつた場合であります。それとも二国間の条約が早晩できるという御確信があるのかどうか。あわせて最近問題になつたこの降伏文書に関する政府態度、ラズエズノイ号に対する裁判管轄権の問題でありますが、それについてもこの際はつきり表明していただいて誤解を解いていただきたいと思います。その点は外務大臣が御無理ならば条約局長でもけつこうです。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この二国間の条約、つまり各国との間を平常化するということは、日本にとつても非常に必要なことでありますけれども、これは日本利益のためだけにやつているのではなくして、相手国も当然必要なことであります。従いまして、すぐにというわけにもなかなか参りますまいが、私はこれは両方で必要な二とでありますから、必ずでき上る確信を持つております。但し時期の問題は別であります。さらに降伏文書につきましては、お話もありましたから条約局長からお答えいたします。
  44. 下田武三

    ○下田説明員 日本とソ連との間のポツダム宣言及び降伏文書にからんでの関係でございますが、一口に申しますれば、技術的には戦争状態がまだ終了していないわけでございますが、実際問題といたしましては、日本の降伏による命令服従関係というものは今日終止いたしております。ポツダム宣言の第十二項によりますと、ポツダム宣言の目的が達成せられた場合には、日本国から軍隊を撤退するという趣旨規定がございます。連合軍が占領を終止したということは、連合軍がこの目的を達成したからと認めたのにほかならないわけでございます。それから降伏文書との関係におきまして、現に旭川の裁判所等で弁護人側等から主張されております点がございまして、その点が世間に明瞭でないと思いますので、この機会に申し上げたいと思います。降伏文書で、連合軍側が命令し日本が服従しなければならないということを規定いたしましたところが二箇所ございます。一つは連合軍最高司令官がみずから発し、またはその委任に基いて発せしめる一切の命令を日本政府は受理しなければならない規定がございます。ところで弁護人側の主張によりますと、日本政府は元ソ連代表部なるものを認めないというけれども、連合国側から言えばそれは依然として代表者なのである。だからその命令は、日本政府としては争うことなく従わなければならないというようなことを言つております。ところがただいまも申し上げました命令というのは、連合国最高司令官がみずから発しまたはその委任に基き発せしめる命令でなければならないわけであります。ソ連代表部から釈放方を申し入れて参りましたのは、いかなる意味におきましても最高司令官の命令でもなく、また最高司令官の委任に基いて発せしめられた命令でもございません。もう一つの降伏文書の条項では、連合国最高司令官またはその他特定の連合国代表者が要求することあるべき一切の命令を受理しなければならないという項がございます。日本語では特定の連合国代表者となつておりますが、英語ではアライド・パワーズというので、複数になつておるのであります。従いましてソ連一国が、おれが定めた、ソ連という特定国の代表者の命令であるから、日本政府は従わなければならぬということは申せないのであります。つまり複数の連合国の指定した特定の代表者でなければならないわけでございます。でございますから、弁護人側の言われますような純粋の法律技術的の問題といたしましても、この降伏文書に基きます命令服従関係というものは、もはや援用する根拠が全然ない、そう申し上げるほかないわけであります。従いまして日本政府としては、連合国最高司令官のアクレデイツトされた代表者ということでそのアクレデイツトされた相手方の連合国最高司令官がないのでございますから、元ソ連代表部なるものは今日何ら合法的な性格を持つてない、一介の私人にすぎない。その私人から何か申しましても、これは国家を代表する政府として正式に取上げるわけに行かない。もとより裁判所で被告なり弁護人なりが主張せられることは、日本の憲法からして自由でございますけれども、政府としてはそういう一私人の申出を正式に取上げて処理することはできない規定になつております。
  45. 上塚司

  46. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まず岡崎外務大臣にお尋ねいたします。先ほどの報告を聞いておりますと、食糧問題についての研究がなされておらなかつたように私は見受けるのであります。幸いにして東南アジア地域に参られたのでありますし、今日の日本の災害状況等から見て、食糧輸入の問題、なかんずくビルマ、タイ等との間における食糧輸入に関する懸案が山積いたしておる状況でございますから、外務大臣は当然これが折衝をなされたものと私は考えるのでありますが、これについての報告がございません。食糧問題についていかなるお話をされて参つたか、この点をひとつお尋ねいたしたいと思います。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 タイにつきましては、私はただ飛行機を乗りかえただけでありますから話をするいとまはありません。政府の人にも、だれにも会いません。ビルマにおきましては、この問題も出まして、たしか出発前の公表の中にも米の買入れ問題についてもデイスカツスしたということを述べております。これは実は私がやるというのではなく、従来からやつておるのでありますから、係はあそこの日本の総領事がやるわけでありますが、ついでに、いろいろの話の関連もありますから、話はいたしました。まだ結論には至つておらないようであります。先方では大体セイロンとの米の売買契約と同様のものを、日本に対しても求めたいということのようであります。日本の方では多少そこに議論があるようでありまして、今話合いを続行中であります。フィリピンにおきましても食糧の問題は出ました。フィリピンでは、昨年はかなり輸入したのであるが、今年は作柄がよいのと肥料を非常によけい用いたので、輸入する必要はなくなつた。この調子で行けば来年は輸出ができるかもしれぬという話でありました。要するに、主として米の話をいたしましたのはビルマでありますが、今ちようど折衝の最中でありますので、もう少したたないと結論が出て来ないと思つております。
  48. 勝間田清一

    ○勝間田委員 せつかく行かれたのに、こういつた当面の問題を解決されなかつたことは、まことに残念に思うのであります。総領事との間で話をしておるということでありますけれども、すでにそういう問題ではないと私は思うのであります。増額の問題にいたしましてもそうでありますが、同時に輸出検査あるいは輸入検査の問題等についても、現に現地から、日本政府日本の港で検査をすることについては、これではとても将来の輸出の増大は期し得られないということがしばしば伝えられているわけでありますから、こういう問題等については、何日かの御旅行であつたならば当然解決してしかるべきだと思うのでありますが、まことに残念ながら聞かれないことは遺憾に思うのであります。それから賠償問題等について、役務賠償の条項を比較的一ぱいに解釈をしてやつて行きたいという点についてはわれわれも同感で、しかるべきであると私は思うのであります。ただこの際に、先ほど福田さんに御答弁になつた際にお話があつたのでありますが、通商関係の増進改善という問題を、やはり賠償問題と一緒にお話をするということは、決して私は無理でないという感を抱いておるわけであります。こちらが賠償を支払うことによつて、同時にある面においては通商関係の改善をはかつて行く。たとえば土地改良に対する賠償が支払われるならば、それに関連をして食糧輸入の問題についての合理的なとりきめをして行くというようなやり方というものは、当然私はしかるべきだと思うのでありますが、岡崎外務大臣はこういう問題について、もう少し積極的に考えられる必要があると思うのですけれども、いかがでありますか。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私が先ほど申したのは、いわゆる経済協力ということをこのごろ盛んに日本側で言うものですから、何か賠償経済協力をすりかえるように印象を受けておる人が非常に多いのであります。従つて、こういう問題については先方からの話合いを待つてするので、あまり経済協力ということを看板にして話をすることは、慎んだ方がいいと思つてつたということを申し上げたのであります。その中には、やはり鉱山の問題もあれば米の増産の問題もあり、その他いろいろ問題があるわけであります。大体そういう問題は、経済協力として行くならば、日本から資本なり技術なりを投下すれば、増産分の相当程度日本側で輸入するということでなければ、日本側としても、経済協力といつても、これは政府がやるものじやありませんからして、どうしたつてこれはそれだけの何か了解がなければ、資本を出すということはむずかしいのでありますから、当然そういう問題に入つて来るわけであります。従つて、いろいろこういうこともできる、ああいうこともできるという話合いの中には、当然そういうこともあるわけであります。また水力電気の開発ということも、要するにこれは、ダムの建設はつまり水利の問題にもなつて来るわけであります。従つて食糧の増産にも関連があるわけであります。こういう問題はいろいろ具体的の事項について話し合つたのでありますが、要するに結局そういうことでも、賠償をやめて、まずそれから先にやるということは今のところなかなかむずかしい。個々の小さなことはできるでありましようが、大きなものはやはり正常関係ができて日本の投資等に対する保護の道も十分講じられるというところに来なければならぬだろうと思つております。
  50. 勝間田清一

    ○勝間田委員 賠償問題についていかなる性格の、たとえばどういつた面に対する賠償なり協力なりをほしいという問題については、相当話し合つたろうと私は思うのでありますが、フィリピンインドネシアビルマ等についてその概要をお話し願えませんでしようか。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ビルマにおいてはかなり向うの、何といいますか、福祉計画というのがありまして、これに対して、たとえば全額はこれだけいるが、その中の外国側の金はこれだけいるのだというような計算も出ております。従つてそれに基いていろいろの話合いもいたしました。それは主として水力電気の開発、その次が鉄道の復旧、それから通信の復旧、こういうことが主眼になつております。それからフィリピン等におきましては、そのほかに病院をつくる問題なども出されましたし、鉱山の開発とか水田の改良とかいうようなこともありました。しかしこれにつきましても、ビルマの方は大体の数額報告書の中に出ておりますから、先方の計画はわかつております。フィリピンの方はまだ計画自体が具体的な数字になつておらないようでありまして、これはこちら側でどれだけ出せるかによつて向うも計画を立てるというようなことにもなろうかと思います。インドネシアにおきましては、まだ具体的なものは承知しておりません。
  52. 勝間田清一

    ○勝間田委員 二国間条約の問題でありますが、それは従来のインドと日本との間に締結された形、その中で、賠償条項は違つて参ると思うのでありますが、大体その形式が選ばれると考えてよろしゆうございましようか。
  53. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも大体の話合いをしたところによりますと、ビルマにおいては、こまかいところは別として、大体においてお話のような点で行くのじやないかと思います。インドネシアの方は多少違つておりまして、必ずしもインドの形をまねるということではなくて、少し違つた形ができるかもしれません。先方の意向もある程度聞いて参りましたが、これはよほどまだ研究してみなければならぬと思います。しかしインドの形をまねる、まねないは別といたしまして、大筋はそう違つたものができるとは思いません。従いまして、大体インドと同様なものになろうかと思いますが、ただインドネシアについてはやはり独自の意見も多少あるようであります。
  54. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その場合における賠償条項は、現在のサンフランシスコ条約の線とはどういう関係になりますか。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほど福田君にもお答えしたのでありますが、これも実際上具体的にならないとはつきりしませんが、私の考えでは、フィリピンについては、サンフランシスコ条約批准従つて十四条がそのまま残るわけであります。インドネシアビルマにつきましても、その十四条と同じものを条約の中に入れまして、ただその解釈上ゆとりのあるものを見るわけでありますから、これを正式の議事録なりそのほかの方法でこの十四条を——ビルマやなんかのときは条文は十四条とはなりますまいが、五条なり六条なり、十四条と同じ条文ができまして、この条文の解釈はこういうことであるという解釈をつける、その解釈フイリピンについても同様のものをつける、これで行くのじやないかと思います。
  56. 勝間田清一

    ○勝間田委員 現在日韓会談は非常な難航を続けつつ、すでにこれが決裂の段階に行くのではないだろうかという感がいたすのでありますが、今後の日韓会談に処する岡崎外務大臣のお心構えをひとつ伺つておきたいと思います。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も帰りまして早々で、十分にはまだ顧慮しておりませんが、しかし報告承知しております。この交渉内容その他を、また実際上朝鮮海峡における韓国側のやり方などを見ますると、ずいぶん無理なところがあると思います。これは強く先方の反省を促す必要があろうと考えておりますが、しかし交渉事につきましては私はあくまでも平和的な処理方針をとる、そのためにはできるだけ忍耐強く、やけにならないで進みたい、こう考えております。
  58. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その場合に、相手国に対する考え方でありますが、もし順調に行くならば、政治会議は朝鮮で開かれて南北朝鮮の統一の問題が出て参り、そこに統一政権というものが出て参るというのが、今後の一応の見通しだろうかと思うのであります。またその線が支持されると私は考えるのでありますが、その問題と現在の韓国政府との関係、これは近い将来において必ず考えなければならぬ問題が出て参りましようが、この両者の関係をどう考えて今日韓会談をやつておられるのか、その点をお示し願いたい。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日韓会談はいろいろ基本的な問題もありましようが、私どもが特にすみやかな解決を必要としたいと思つておりますのは漁業の問題であります。これはいずれの政府ができるにしても、ただいま焦眉の急でありますから、これは早く解決したい、こう思つております。またかりに日韓間にほかの話合いができたとしましても、これは韓国側として将来統一した政府ができます場合には、当然その方に引継がれるものと考えております。
  60. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最後に伺いたいのは、現在まだ抑留されておる日本漁民がたくさんおるわけでありますが、これが至急帰つて来る見通しがあるのかないのか、この点が一つでございます。  それからもう一つは、これを漁業問題として解決されて行くという考え方、これは一つの重要な考え方だと私も考えます。特に従来韓国が漁業をやつてつたについても、日本の漁業技術あるいは日本の漁業資材というものの供給を受けなければ、あの地域におけるいろいろな漁業がやつて行けないことも事実であるし、またそのためにも日本の協力も必要であると私は思う。また漁獲物は、従来おそらく六割以上も日本に輸出しておる状態だと私は考える。従つて韓国側としても生産物を日本に対して輸出することがなくしては、これ以上の大きな発展という二とも期し得られない状態にある。またいろいろ関税問題等もその間にからんでおるというようなことを考えてみますれば、真実の意味から行けば、漁業問題の範囲内においては日韓の利益は共通するという考え方を私は持つておるわけであります。そういう意味では漁業協定という形でこの問題が解決されるという感を深くするのでありますが、その意味岡崎外相の御見解をひとつ承りたいと思うのであります。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もその点では勝間田君と同感でありまして、これは漁業問題だけは解決し得る形になつておると思うのであります。従つて私は、この間立つ前でありますが、韓国側に申し入れたときは、こ際漁業問題だけ取上げてやろうじやないかということを言つたのでありますが、先方としては全部の問題を一緒にやりたい、こういうことでありますから、それでは一緒にやろうということで一緒にやつておるわけであります。ただ先方としては、これをいろいろほかの問題にひつかけておる。つまり、日本側として非常に早く解決しなければならぬと考えておるものですから、ほかの問題にこれをひつかけて来ておるということも、交渉の技術上当然考えられることで、それでこう長引いておるわけでありますが、実際上おつしやるように、魚だつて半分以上は日本で買つておるようなわけで、従つて、どうしたつてこれは一緒にやる以外に方法はないと思つておるのであります。  それから言い落しましたが、抑留された漁民の問題については、韓国側に強く申し入れております。それでも物足りませんから、できれば、たとえば漁業者の代表のような人を向うにでもやつて世話をするようなことが可能なら、非常にけつこうだと思つておりますし、またそれらを通じて早く帰すように、向うで体刑等にならないように極力骨を折らなければならない、こう考えておりますが、今のところ、まだいつまでにどうということはちよつと申し上げられない状況であります。
  62. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど並木委員がちよつと触れられましたが、岡崎外務大臣の今回の訪問を逃避の旅行だと言うような人もたまにはいるわけですけれども、それはやはり国民から考えてみまして、いろいろ納得のできない面が非常に多かつたからだと思います。たとえばフィリピンにおいては選挙前であつて、いろいろつつ込んだ交渉ができないという面や、あるいはまた具体的な賠償額数字を持つて行けないというようないろいろな立場において出かけられたことや、あるいは国内にMSAの問題があつてそう言われたのだと思いますけれども、岡崎外務大臣としては何か非常に大きな収穫があると思つてお出かけになつたのだろうと思います。今回の訪問の旅行を通じて、具体的にこういうことがほんとうによかつたことだとお思いになつた点がありましたら、その点を率直にお話願いたいと思います。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の旅行は実は前々から考えておつたのですが、いろいろ国内の仕事があつて離れられなかつた。ところが今度行きませんと、また臨時国会とか通常国会とかいうことになつて機会を失つてしまいますので、ほかの交渉国内におつてもできますからよろしゆうございますが、向うに出かけるということは、どうしても今の時期を選ぶよりほかに方法がなかつたので思い切つてつたわけであります。  それから、一体今度行つたのは成功であつたか成功でなかつたか、交渉は失敗であつたのじやないかというようないろいろな質問がよくあります。私はこれに対しては実は答えてないのです。交渉がうまく行つたかどうかは、これはだんだん具体的にわかつて来ることであります。今すぐに結果が出なくとも、一月、二月あるいは三月あとに、なるほどあのとき行つてよかつたとか、あのときに行つたのはまずかつたとかいうようなことは、だんだん結果が出て来ると思いますから、そのときにひとつ御批評を願うよりほかしかたがない。しかし私先ほど申しましたが、日本外務大臣が東南アジアに出かけたということについては、各国ともこれは大いに理解してくれた、こう思つております。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 岡崎さんが自信をお持ちになつてつていらつしやつたことは、向うが理解をしたという意味でよいとおつしやるならば、そういうふうに了解をいたしますが、今度いらして向うのいろいろな気持なり何なりをつかんでいらつしやつたといたしますならば、この次には一体日本にいらしてどういうふうな第二のステツプをおとりになろうとするか。つまり今度の目的は、一日も早くそれらの国々と平和回復をして、平和条約なり何なりを結んで、そうして通常の国交調整をなさろうという目的であろうと思います。そこで岡崎さんの言われる第一ステツプが踏まれたといたしますならば、この次にはどういうふうな形でもつて、具体的に平和条約の締結なり何なりというふうなところに持つて行かれようとされるか、その構想を承りたいと思います。
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは率直に申しまして、私は結局賠償の問題を具体的に話し合うということ以外にないと思います。これにつきましては、先ほども申しましたように、日本側から国内のいろいろの予算その他の関係を見て、また将来の見通しも立てて、この負担能力を決定しなければならぬというような場合が起ることももちろんであります。その前に今度の話合いに基きまして、場合によつてはある国では——これははつきりわかりませんが、先方から具体的にこういう数額とこういう額とこれを要求したいというようなことを言つて来る場合もなきにしもあらずであろう、こう思つておりますが、いずれにしても賠償問題を具体的に解決する、これが第二のステップになろうと思います。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 岡崎外務大臣として、今フィリピンなり、それからインドネシアあるいはビルマというような国々の賠償額というものを、大体どのくらいということはおつしやれないといたしましても、それらの国々全体から見て、大体どの程度ならば日本としても払えるというような、何か腹案をお持ちでございましようか。
  68. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも先ほど福田君に申しましたが、日本側としては、相手側がよけい要求しそうだから少しよけい出さなければならないとか、相手方が大して要求しないからこれくらいならよかろうというようなことでなくて、日本側としていろいろの経費の必要がありますが、その間において賠償に対する負担能力をぎりぎりかけひきのないところを算出して、これだけなら出せるということでなければならぬと思います。但しそのやり方におきましては、たとえば、先ほど勝間田君もちよつと触れられましたが、それによつて日本利益にもなるようなことになれば、これは払いやすいわけであります。たとえばそれが米の増産に使われて、その米が日本に輸出されるということにでもなれば、やりいいわけであります。こういう実際上のいろいろな関連は、今後さらに具体的に研究しなければなりませんが、私も見て様子も判断できる程度の立場にはなつておると思います。今後できるだけ早くこういう問題は具体的に研究してみたい、こう考えております。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 ぎりぎりかけひきのないところでの総額というものの腹案をお持ちであるかどうか承りたいと思います。それがもしおつしやれないとか、あるいはお持ちにならないとするならば、もしも先方損害額はこのくらいだと言われて、日本日本経済考えた上で賠償額はこのくらいだというふうに提示なさるのだろうと思いますが、その間に大した差はないというような感じを今度の旅行でお持ちになられたかどうか。その点承りたいと思います。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは非常にむずかしい問題で、負担能力ということは抽象的にははつきり言えますけれども、大きな国の経済のことでありますから、多少ふくれても縮まつてもりくつはずいぶんつくと思うのであります。これは大蔵大臣その他関係相と相談してみないと、そして相談してもなかなか具体的にここまでだといつて踏み切るところまでは時間がかかると思います。それから今度の旅行でいろいろ見た結果につきましても、どうも私にはまだ先方のはつきりしたことを自信を持つて申し上げるようなところには行つておりません。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、これから賠償の具体的な話合いをお互いにすることになるのですが、先方のことも具体的にそれほどよくわからないし、日本経済負担能力というものもこれからいろいろ研究して行かなければならない、そういうことになりますと非常に手間取るのではないか、そうすると、賠償の問題が解決しませんと、それらの国々との平和条約ということも、なかなかむずかしくなつて来るのではないかとも懸念されるのですけれども、大体いつごろからそういつた話合いを始めようとなさるお考えかを承りたいと思います。
  72. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはどうも実際時間がかかるので、一方において正常関係を早く回復するという必要、これは日本のあらゆる方面から要求せられておるわけであります。しかし賠償の問題というのは、日本経済の将来にも相当大きな影響を与えるものでありますから、やはりこれは慎重に考えなければなりませんので、今のところいつということのめどはつきかねておりますが、できるだけ早くというつもりでやる考えでおります。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 何かしらたいへん心細い話になつて来たのですけれども、そうしますと今度は、できるだけ早くおやりになるという考え方でお進みになるといたしまして、日本の外務省が経済実情をいろいろ調査してそれをきめられる。相手国交渉をする場合には、相手国日本に来ているミツシヨンの人なり何なりとするわけなんでしようか。それともまた日本からだれか行つて話し合うのか、どういうふうな形でもつて第二のステップをとつて行かれようとなさるのでしようか。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 インドネシアにおきましては、先ほど申しましたように、調査団が来るように了解しております。ビルマでもそういうものを考えておられるのではないかと思います。従つて日本に来るそういう調査団のような形の人と話合いをするということもありますが、また先ほど申しましたように、ここにおるアジア局長インドネシア公使として参りますし、フィリピンにも今度公使を派遣することにいたしておりますし、それからこれはまだ具体的にはなつておりませんが、ビルマにも公使を派遣する心構えでおります。こういう普通の総領事とか在外事務所でなくして、特に公使を派遣してこういう外交折衝にも当れるようにいたしたい、こう考えております。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 賠償の根本的な払い方についてちよつと承りたいのですが、たとえばもしも先方の要求する賠償額が、日本側経済実情から見てそれだけ支払われないという点に達しましたときには、どういうふうにして普通は妥協点を見出して行くわけなのでしようか。
  76. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはイタリアの場合のように条約の中にすぐに額まで書いてしまう、これは連合国のおもなる国々があつせんして話合いをきめたわけでありますが、それをイタリアはそのままのんだような形になつております。しかし今度の場合はやはり、ほかの国の仲介を頼むことなくして、相手国日本との間で直接に話合いをして、意見が合わない場合もありましようけれども、これを打開して行くよりいたし方がない、こう考えております。
  77. 戸叶里子

    戸叶委員 その場合は、やはり日本がどうしても先方意見を、ある程度無理でも受けなければならないということになるわけですね。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは先方でどうも不十分であるけれども、日本意見をいれなければならぬという場合もあるかもしれません。これはお互いに理解し合い譲り合つてまとめる以外に、方法はないと思つております。
  79. 戸叶里子

    戸叶委員 では今度の東南アジア旅行を通じて、経済外交ということに対して、どんな構想を持つていらつしやつたかを承りたいと思います。たとえば先ほど福田委員の御質問にもありましたが、日本のいろいろな貿易商社がたくさん行つていて、かえつてお互いの間の争いでうまく行かないような場合が多い。そういうようなときにも、そこへ一つのプールみたいなものをつくつておいて、そしてそこでうまく調節をとつて行くようなことは、統制というような考え方を起させるから、それは今考えておらないということをおつしやいました。ところが現実の問題といたしまして、やはり東南アジアへ参りました人たちのだれでも感じますことは、自由に日本の商社が行つておりまして、その間の調節というものはちつともはかられておらないために、日本の貿易がうまく行くところが行かないような場合がずいぶん多いのです。そういう点については、多分外務大臣もお耳にはさんだことと思いますけれども、どういう調整をとろうとなさるかを承りたいと思います。
  80. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私が先ほど申したのは、経済協力といいますか、そういう面においてのことでありますが、貿易については、お話のようにたくさんの商社の代表が行つて無益な競争をしたりして、どうも弊害が非常に多いようであります。これらは独占禁止法等に触れない範囲内においてはぜひ一つのまとまつたものをつくつて、お互いに無益な競争をしないようにいたすのが国のためだろうと思つておりますが、この具体的方法はどうしたらいいか、場所によつても違いましようが、何とかこれをまとめ上げる必要はあると思います。
  81. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう問題を早く解決されませんと、日本の東南アジアヘの進出ということは非常にむずかしいのではないかと思いますので、その点も考えていただきたいと思います。  それから岡崎外務大臣もやはり感じて来られたと思いますが、外務省の出先機関に通商関係の専門家をなるべくたくさん送つておくことが必要だと思いますが、そういうことに対しての何か新しいお考えはないかどうかということを承りたいと思います。  もう一つ、倭島局長が今度インドネシアへいらつしやるということは私もたいへんいいことであり、倭島さん自身に対しては、私もりつぱな方だと思つて尊敬しておりますが、この前の新聞に、たしかインドネシアの方でまだ日本から公使を任命するのは早いというようなことを言つておるということが出ておりましたけれども、そういうような感情がインドネシアに全然なかつたですか、どうでしようか。
  82. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 在外公館に通商関係の人間、これは少しおるのでありますが、不十分なことは申すまでもありません。ただこれも予算その他の関係がありまして、なかなか思うように行かないのであります。今度そういう点でできるだけ予算等がとれますように御尽力を願いたいと思います。  倭島局長につきましては、インドネシアではことに期待が非常に大きくて、どこでも非常に歓迎をしておりまして、そういう懸念はないと思います。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 懸念がないならば私も安心いたしましたが、そういう記事を新聞で見たものですからちよつと承つたのです。  それからもう一点だけ伺いたいのですが、それは先ほども勝間田委員から触れられました韓国との間の問題ですが、なかなか日韓会談が進まないで、国民の人たちがいろいろな感じをもつて見ております。たとえば軍備論者はやはり日本がこういう機会に軍備をしないからだというようなことも言つておりましたり、それからまた非常になまぬるいといつたりいろいろ批判をいたしておりますが、この問題は一日も早く解決しなければ、日本にとつても非常に重大な問題だと思うのです。私自身もいろいろ考えるのですか、たとえば李承晩大統領が、私どもの目から見ますならば、日本に対しましていい感情を持つていられない。これは李承晩大統領がかつて日本のだれかからいじめられたとかなんとかいう個人的な感情だけからではなくして、何かはかに日本に対しての感情を悪くしていられる面があるのではないかと思いますが、こういう点について、一体どういうわけで日本に対する感情が悪いかというようなことで、おわかりになつている点があつたら承りたいと思います。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように李承晩大統領には先般正月に会いまして、いろいろ話し会つてみましたが、共産主義という共同の脅威を持つている現在、日本と韓国とが仲を悪くして行くという理由はない。その必要に迫られては、どうしても日韓の提携を緊密にしなければならぬのだと強く考えておられるようでありまして、特に日本に対して悪感情を持つておるといううわさは聞きますが、そういうことは私はないのだと思います。ただ独立してまぎわの韓国として、いろいろ国内的にも困難があり、また経験の浅い点もありまして、いろいろ問題をしげくしておるのでありますが、こういう点は隣同士でありますから、遠慮なく悪い点は指摘して先方の反省を強く促す。同時に交渉は忍耐強く、あくまでも円満に解決するように、時間が多少かかることもやむを得ぬ場合もありましようけれども、できるだけ忍耐を持つてこちら側の考えを徹底させる必要がある、こう思つております。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 聞くところによりますと、何か漁業関係で韓国から日本に船舶の修理のためのすぎ材を買おうと申し込まれたときに、それを断つたとか、あるいは船舶を買いたいといわれましたのも断つたとかいうようなことが最近あつたようにも聞いておりますが、そういう事実はないわけでしようか。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私は帰りたてで、まだ承知しておりません。いずれ調べましてお答えいたします。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がないですから結論に急ぎますが、しんぼう強く待つていることも非常に必要であり、平和的な手段によつて、民間外交によつて何とか早くこの日韓の間の問題を解決していただかなければならないと思いますが、よく町のビラに、武力行為といいますか、そういつたような行為を扇動するようなポスターが張つてありますので、こういう点について外務大臣としてどういうお考えを持つていらつしやるか、これを何か取締るお考えはないか、そのお考えを承りたいと思います。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 町のビラはいろいろな種類のものがありまして、ソ連と大いにやれとか、アメリカを駆逐せよとか、そんなものもありますが、あまり取締られておらぬようであります。これは私の管轄じやありませんが、取締るべきものは警察で取締るだろうと思います。
  89. 上塚司

    上塚委員長 大橋忠一君。
  90. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 外務大臣が今度東南アジアにおまわりになつたことは、非常にけつこうなことであります。東南アジア日本の問題の核心は賠償問題でありますが、すでに平和条約が調印されてから一年半の間に、まだその解決の曙光さえ見えないということは、私は非常に遺憾なことであると思います。このままなおこれを遷延しておりますと、おそらく日本はそのうちに災害その他で経済力が弱まり、あるいは再軍備を強要されて金がかかる。そこで結局払えなくなつてしまうのじやないかというような疑いも持ちまして、日本の誠意について彼らの心の中に疑いが起りはせぬかと思う。そこでもうそろそろ向うもこちらも大体腹がわかつたのでありますから、これ以上お互いの腹を探り合うことをせずに、もうこのごろで、日本の方でも、どれだけ日本の支払い能力があるか、従つてどれだけ支払うか、またその支払う方法はどういうふうにして支払うか、何がゆえにかくのごとき額が出たか、何がゆえにかくのごとき支払い方法を希望するかということを、少し腰だめでもいいからこの際はつきりきめられて、そうして具体案を当該関係国にぶつけて、そうしてこの話を一日も早く進められたいと思うのであります。今度外務大臣が行かれたのでありますから、私は多分そういうような具体案がすでにできたから、それを持つて個別的に折衝をされに行くんだと思つて非常に喜んでおつたのでありますが、どうもそのことはなかつたようでありますが、外務大臣としてそういう線に沿うてもう腹の探り合いなんかやめて、この際思い切つて賠償支払い能力に応じた賠償額支払い方法をこちらで決定されて、そして向うに一日も早く提出して、そして賠償に関するこちらの誠意のあるところを示される意思があるかないか、その点をお尋ねいたします。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実はお話のような趣旨考え方で私も出かけたのであります。しかしこれにはたとえば国民所得に対して何パーセントならばいいとか、将来の国民所得の傾向は上向きになるだろうか下向きになるだろうか、もちろん外貨の支払いを要する外債の問題、あるいはガリオアはどうなるか、いろいろな点が考慮に必要なのであります。これはもう一年もありますから今までもずつと考慮して研究して参つたのでありますが、お話のような方向にだんだん進むつもりで、ただいま努力をいたしております。
  92. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 これはだんだんと言わずに、私はひとつ至急具体案をまとめられて向うに出されて、そうして具体的の交渉の糸口を切つていただきたい。そうして日本の誠意のあるところを示していただきたい。そうしないとドイツや英国その他の西欧諸国などの経済進出に、ますます日本は立ち遅れるということになることをおそれるのであります。  第二にお尋ねしたいことは、今ワシントンで池田特使とアメリカの当局との間に、日本の防衛力漸増の問題について話が進められておると報ぜられておるのでありますが、私の考えでは、この交渉はよくはわかりませんが、非常な重大なる交渉である、この交渉なるものがもし外務大臣の管轄であるならば、こういう日本の国運にも関する重大なる交渉のあるときは外務大臣は東京におられて、そうしてその成行きにつき監督されるのが、私は当然じやないかと思うのでありますが、時を同じくして南洋の方をまわつて来られた。むろん南洋の問題も重大でありますが、より重大なるいわゆる池田会談なるものが進行中に南洋を旅行されたということは、何か外務大臣がMSAの条約のテクニカルなことについては権限があるが、どれだけのMSAの援助が来るか、どういう形で来るかというような核心になると、何か枢機に参画してないというような感じを受けるのであります。そういうようなことになつては、これは外務大臣が将来権威をもつて外交政策を遂行する上において、支障があるのではないかと私はおそれるのでありますが、なぜこういう重要なる会談進行中に南洋に行かれたのでありますか、その間の事情の御説明を願いたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の参りましたのは先ほども申した通り、行くとすれば今行かなければ行く機会がしばらくなくなつてしまう。東南アジアの方面の問題もこれは急を要するのでありますので、かりに短期間であつて行つた方がよろしいと判断して行つたのでありますが、池田特使の話合いにつきましても十分事前にも打合せております。また必要なものにつきましては出先に電報も来て、必要なものについては私も意見を東京に打電しておりまして、留守中はもちろん犬養外相代理、また池田君は総理の特使としていつたのでありますから、もちろん総理も十分考えておられまして、この間私が東京におらなくてもさしつかえはほとんどない、こういう見通しで出かけたわけであります。
  94. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 最後に日韓会談の問題についてお尋ねいたしますが、私はいなかに行つて選挙区をまわつて来ましても、いなかのお百姓や山家の人までもこの韓国に対する非常に強い反感を持つて、至るところその話が出るのであります。それでこの李承晩ラインのごとき問題をいつまでもこじらして、しかも関西方面の魚の値段がこれがためにすでに倍も上つた日本の食糧問題に重大なる脅威を与えつつあるというこの大問題を、いつまでも長引かしておることは、日韓関係の将来に重大なる暗影を投げるものであると私は思うのであります。かくのごとき関係がいつまでもよくならず、ますます悪化するというような状態のもとにおいて、アメリカの圧力によつて日本がかりに軍備をつくつてみたところで、そういう軍備は私は何にもならぬ、韓国を仮想敵国としたような軍備をつくつて、はたしてアメリカは満足するでありましようか、非常にこれはアメリカとしてはその素志に反するような方向に向うのではないかということをおそれるのであります。しかるにかかわらず新聞によりますと、本件についてアメリカは干渉しない、一つ間違うと両方ともアメリカから借りたり供給されたる船でもつて撃合いも始まりかねないような状態が現出しておる。それをいつまでもアメリカが黙つて見ているという二とが私には腹に入らないのであります。従つて巷間ではこれはアメリカが日本の再軍備熱をあおるがために、こういう二とをやらしているんだろうというような、そういうとてつもない道聴塗説さえ伝えられておりまして、ひいては日米間の関係にまで悪い影響を及ぼして来る。本件につい私は外務大臣としてアメリカに対して仲介の労について交渉になつたでありましようか、どうでありましようか。もしなつたとすれば、アメリカはこれについてどういう考えを持つておるでしようか、その点をお伺いいたします。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お話のような、韓国を仮想敵国として防衛力を強めるなんという考え政府としては毛頭ありませんし、韓国に対してはあくまでも円満に話合いを完了させるように努力をするつもりでおりますが、しかしその間韓国側の不都合な点につきましては、私は強く反省を促すつもりでおります。また日本の漁船なり漁夫なりの捕えられた者につきましては、すみやかにこれを帰還させるように強く要求する必要があると考えております。アメリカとの関係については元来これは日韓間の問題でありまして、なるほど韓国もアメリカと防衛の条約を結んでおりますし、また日本も安保条約を結んでおりますけれども、そうかといつて一々問題があるごとにアメリカに頼むということは私として考えておりません。どうしても解決のできない場合には、それはアメリカもありましようが、国連もありますし、また国際司法裁判所とかいろいろな組織があるのでありますから、適当な方法は講ぜざるを得ないかもしれませんけれども、まずこれは二国間で十分話合いをし、解決をいたすためにあらゆる努力をする。そのつもりでやつております。これからもできるだけ努力をして先方の反省を促すように努めるつもりでおります。
  96. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 それでは最後にお尋ねしますが、本件についてアメリカに仲介あつせんの労を御交渉になつたことはあるのでありましようか。もしあるとすればそれに対するアメリカ側の返答ぶりはいかがであつたでしようか。その点をお尋ねいたします。
  97. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほども申しました通り、これは日韓間で解決すべきものと考えておりますので、ただいまのところまではアメリカに仲介の労をとるように要求したことはございません。但し今までの経過につきましてはアメリカにも十分報告はいたして知らしております。またその他韓国側に関連のある国々についても適当にこの経過は知らしております、従つてまだアメリカに仲介の労を依頼をしておりませんので、先方の出方等は承知いたしておりません。
  98. 上塚司

  99. 木村武雄

    木村(武)委員 このたび東南アジア地区に外務大臣がおいでになりましたことは、日本と東南アジア地区の人心をなごやかにする意味合いにおいては非常に有意義であつたと思います。その点に関しまして日本外務大臣が行つたというだけでも、将来の効果を期待することができるという自信満々のお言葉でありましたが、まことにけつこうなことであります。ただ振りかえつてみますと、かつて東南アジア地区の人々は民族的に申せば弱小民族でありましたし、これらの人々の偽りない心理は極端に侵略を恐れていることだと思います。そして事実上日本に侵略された経験もありますし、そうした民族に対しては特に注意をしなければならない、私はこう感じておるのでありますが、かつて日本の侵略の手先となつて働きました石原広一郎君のような人を総理大臣の官邸に呼ばれまして、東南アジアの開発問題について協議された事案がありますが、ああいうようなやり方は、東南アジア地区の人々に対して決していい感じを与えるものじやない、こういうように考えておりますが、そういうような影響は、今度おまわりになりましてありませんでしたかどうか、そういう感じを受取りになりませんでしたかどうか、承つておきます。
  100. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こういう委員会で人の名前をあげて申し上げるのはちよつと差控えたいと思いますが、今お話になつたようなことにつきましても、私はインドネシア等でいろいろ聞いてみましたが、御懸念のようなことはこの特定の方についてはないようであります。
  101. 木村武雄

    木村(武)委員 もう一つお伺いいたしますが、東南アジア地区の諸般の問題が事実上難航を続けておりますし、現在の日韓会談も難航を続けておることは事実であります。私は隣合せになつております韓国の問題を解決せずして、遠くの問題の解決なんかはなかなか及びもつかないのじやないかと思います。結局一番近い、しかもかつては国を一つにしておりました韓国の問題を日本が解決し得ましたならば、その影響は東南アジア地区全体にも及ぼして、爾後の交渉が非常に円満に行くのじやないか、こういうようにも拝察するのであります。ところがかんじんかなめの韓国に対しましては、李承晩大統領日本に参りましたけれども、当の吉田総理大臣は答礼にも出かけていない。外務大臣は日韓交渉の重要性はみな末端の属僚にまかしてしまつて、東南アジア地区の視察に出かけて行くというようなそういうようなやり方で、一体日韓問題の解決というものはつくと考えておいでになりますか。私はこの際こそ大胆に総理大臣も韓国に出かけて行き、それから外務大臣も韓国に出かけて行く、そして日韓交渉は末端にまかせないで首脳部が直接談判をして早急に解決するくらいの決意が必要じやないか、努力が必要じやないか、しかも仲介の労をアメリカにとらせないという態度はまことにけつこうでありますから、今日この際総理大臣外務大臣が韓国に出かけて、そしてじかにこの問題を早急に解決して、爾後のアジア全体の交渉に好影響を与えるようなやり方をとるべきじやないかと考えておりますが、外務大臣は韓国に出かけて行く決意を持つておいでになりますかどうか。それから総理大臣が答礼の意味も兼ねて出かけて行つて、李承晩と直談判をするくらいの決意を持つべきであると思いますが、そうしたあつせんの労を外務大臣がとる決心をお持ちになることができますかどうか、お伺い申し上げます。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実はいろいろ差迫つた懸案があるのでありまして、もちろん韓国の問題も非常に差迫つております。MSA等の交渉も差追つておりますし、東南アジアの問題も重要でありますので、まあからだが一つしかないものですから、東南アジアに出かけたようなわけであります。第一に李承晩大統領がここへお見えになりましたが、あれはクラーク大将の招待でもつてお正月の休みに日本に来て暮らした、こういう形になつておりまして日本なり日本政府なりを訪問されたということにはなつておりませんからして、私はさしあたり答礼という問題はちよつと筋が出て来ないのであろうと考えております。しかしそれは別としまして、韓国の問題も重要でありますから、私が行つて解決できるものならそれは何べんでも行くに何らやぶさかでないことは前から申し上げておるのでありますが、今のところ今までの話合いではやはり日韓会談を開催して、これによつて解決をはかるというのが先方考え方でもありますし、またこういう点で具体的な問題が取上げられて、その土台ができませんと、ただ手ぶらで行つて李承晩大統領と話せばものが解決つくというわけにも参りますまいと考えております。しかしお話の趣旨はよく了解いたしますから、今後ともできるだけお話のような点も考慮いたしまして善処いたしたいと考えます。
  103. 上塚司

    上塚委員長 須磨彌吉郎君。
  104. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 きわめて簡単にお伺いをいたします。今回おまわりになりました諸地域は、国民感情が非常に盛り上つておることは報道されておる通りと思います。特に今回おまわりになつたその途次におきまして、その国民感情が実はわが日本関係いたしました戦争の結果、独立というものをかち得たという考え方もまた諸所方々に見受けられたのではなかろうかと思うのでございます。このことは外国人等が同地方をまわりましたときに伝えられました幾多の報道がございましたのでありますが、特にジエームス・マクレインシユと申しますか、アメリカ人が参つたときはさような発言があつたということを報じておりましたが、今度おまわりになつた間に初めて日本外務大臣が来たという二とのほかに、いま一つ初めて独立した喜びをわかつと申しますか、さような感情の吐露は何かの機会になかつたものでございましようか、お伺いをいたしたいと思います。
  105. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私もいろいろそういうお話は聞いておりまして、日本の人々もたくさんそういうことを聞いてあちらの方に行つた人が前にもずいぶんあつたのじやないかと思います。たとえばインドネシアのごときは、日本占領中に独立させると言いながらとうとう独立させなかつた。一番しまいに終戦の直前にそういうことを言つたようでありますが、それはもう終戦がきまつてからのようであります。従つて結局独立は自分らの手でかち得たのだ、オランダと戦争をしてかち得たのだというふうに言われておりました。それから多少これは反発的なことじやないかと思いますが、とかく日本は、日本戦争した結果、これらの国も独立の機運に行つたのだという恩を着せがちの話ぶりが前にあつたのじやないかと思いまして、結局そういう点ではあまりお話のような、先方日本のおかげだというようなことの発言はありませんでした。ただいずれの国におきましても、アジアの一国として日本とこれらの国が手をつないで行かなければならぬのだということは非常に強調されまして、たとえばこういうことを申し上げていいかどうかわかりませんが、キリノ大統領に会いましたところが、キリノ大統領は、一体日本フィリピンは仲よくして行かなければならぬ運命にあるのである、かりに日本フィリピンをきらいだとしたつて、それでは太平洋から大西洋に行つてしまうというわけには行かないし、フィリピン日本がいやだといつたつて、太平洋からインド洋へ移転してしまうわけにも行かない。これは土地柄一緒になるように運命づけられているのだというようなことを、非常に強く言われました。私もその通りだと思いましたが、ほかの国におきましてもやはり同様に、東南アジアの一国として日本とこれらの国が提携して行くのだ、これが結局アジア全体の安全といいますか、セキユリテイとプロスペリテイにかかる問題であるということは、いずれの国においても非常に強く認識されておつたようであります。
  106. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 そのお言葉を聞いて、私は多少明るみを覚えるものであります。  次に賠償の件でございますが、申し上げるまでもなく、本日の各議員からのお言葉によりましても、この賠償問題がまず先決である、それから国交という方に入る、言いかえれば、賠償を一日も早くしなければ、国交並びに経済関係の隆盛におもむくということは、期待できないことは申すまでもないことでありますから、一日も早くこの賠償問題を片づけることは必要であるわけであります。今回の御旅行によつて、その効果は今に上つて来るかもしらぬと思うのでありますが、たとえばこの三箇国でございますがいずれもわが隣邦でありまして、非常な親しい関係をこれからもつくらなければならぬのでありますから、これを個々別々に各支払い方法等の交渉をなさいますことも、これまた必要でありますが、他方におきましては、この三箇国の間にまた同じ意味におきまして意見交換するという機会を持ちますことが、この解決を促進するという面も私はあり得ると思うのであります。古くは第一次大戦のときでございますが、ヤング案でありますとかドーズ案でありますとか、これは事情はまつたく違いますけれども、さように集団的になりますと、事が非常に簡単になる場合があるわけであります。ことに私が考えますことは、個別的交渉によつたあとには、あと味の悪いことが残るのではないか、A国に対しては多かつた、B国に対しては少かつたということもあるかもしれませんから、おまわりになりました今回の感想におきまして、さようなことができますか、またはさようなことをなさるおつもりがおありになりますか、これを伺いたいと思います。
  107. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この点は前から私も研究しておりまして、つまり一種の賠償会議のようなものを開いて、日本負担能力がこれだけである、これをそちら側で適当にわけてくれというような形の場合もいろいろ研究してみましたが、ただいまのところでは、私の見るところでありますから間違うかもしれませんが、個々の話合いによつて——もちろん今おつしやつたように結果においてあそこが多いとかここが少いとかいう議論も残りましようと思いますが、早く解決するためにはむしろ個々の国々と直接交渉をした方が、できやすいのではないかという印象を得て参りました。なかなかむずかしい国もありましようけれども、たとえば一つなり二つなりの国がまとまりますれば、他はまとまつて来るのではないかというふうにも考えられます。それでただいまのところは集団的といいますか、そういうようなことはまだ考慮するあるいは研究の段階ということでありまして実際上の話は個々別々に進めております。将来そういうことも考え得られないことではないと思いますが、これはもう少し事情がはつきりするまでは、ただいまのように個々別々の方針で行つてみたいと思つております。
  108. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 先ほど木村委員からのお話で尽きておるわけでございますが、日韓問題についてであります。このことはいろいろな関係があるかもしれませんが、非常な困難が両国間にありますのは、感情の問題がよほど重きを占めておるからと私は思うのであります。しかるにこれまた一日もゆるがせにすべからざる大問題であるばかりでなく、今月の二十七日には政治会議開催の期限も参り、国際政局がきわめて機微な動きをすると思いますから、さようなときまで荏苒事を片づけないでおくことは、これははなはだおもしろくないことでもありますし、先ほどお話もあつたように、おいでになることができないこともあるかもしれませんけれども、答礼ということはお話の通りこれは何の必要もないことでありますが、この際漁業問題について、われわれが最も神経をとがらしております、国民全体の神経の問題であります李承晩ラインだけを切り離して、外務大臣がみずから交渉に出るという意思表示をすることだけによつても、私はよほどこの感情の緩和もあり、あるいはまた見通しもつくかもしれぬと思うのでありますが、さような措置を速急にとるお気持はございませんでしようか。
  109. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今、日韓問題につきましては、帰つたばかりでありますが、いろいろ報告を聞いて考えつつあります。お話のような点もひとつ十分考慮に入れて、早急に何か対策をきめたいと思つております。
  110. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 割当の時間がありませんので、ごく簡単に二、三の点について外相にお尋ねしたいと思つております。  実は東南アジア諸国に対しまする賠償の問題は、講和条約の当時におきましては、その解釈またはその宣伝においては、役務賠償をもつて足りるというふうに理解されておつたわけでありますが、今日になりますと、現物賠償という拡大解釈もこれに加えて行く御方針のようであります。われわれ少し将来を考えますと、現物賠償だけに限らないで、現金賠償の要求が出て来ないとも限らないというふうに推察するわけでありますが、もしそういう問題が出て参りましたときに、今の政府当局は現物賠償問題に対してどういう態度をおとりになるおつもりであるか。すなわちこれを拒否されるおつもりであるのか、場合によればさらに拡大解釈いたしまして、物にかわる金でやつて行くというふうなことで、条件によりましてはこれをおのみになるお考えであるか、お伺いいたしたいと思  います。
  112. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 元来賠償というものは、戦争による被害をできるだけなくするためにやるのでありますから、りくつから言えば現金だろうが、現物だろうが、役務だろうが、やれるものをやればいいわけでしようけれども、同時に日本外貨のポゼツシヨンとか財政上の問題とか加わつて参りますから、そこでサンフランシスコでは十四条のような規定になつたわけであります。この十四条の規定をいかに広く解釈しましても、現金の賠償をするという解釈は出て来ないと私は思います。物をつくつて渡すということは、広く解釈すれば文面上からもできないことはないと思いますが、現金を払うということはこれはないように思いますので、できるだけこの十四条の趣旨で行きたい、ただ十四条の解釈については、許し得るだけのゆとりのある解釈で行きたい、こう考えております。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 ついでにお尋ねいたしますが、これは賠償問題と関連があるような、ないようなことでありますが、東南アジア諸国の経済開発に対しまして、こちらから資本跡を出して、しかもその形ほかの国とわが国との合弁のような形で経済開発に協力する、そういう計画をお進めになることについて先ほどちよつとお触れになりましたが、そのことが誤解を招くといけないので、この際あまり強くは出さなかつたというお話でございましたが、これは相手国との間においてだんだんと話を進める条件が整つて来れば、国によりましてはそういうふうなこともお考えになつておられるかどうか、重ねてお伺いいたしたいと思います。
  114. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは政府としてやるのじやなくして、民間の会社等が自分の将来における利益考え経済的な提携をやる。初めは資本を投下し、あるいは技術を入れる。将来だんだんと開発されて来れば、その製品等をこちらが入手できるから、結局こちらの利益にもなるという考えで、商社等が計画をするものであります。これの合理的なものに対しては、できるだけ政府としても援助を惜しまない、こういうつもりでおりますが、政府がやろうという考えではないのであります。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねいたしましたのは、その資本が国家資本でありましようと民間資本でございましようと、いずれにいたしましても、かの国の大体の輿論等を察知いたしますと、日本政府の外交政策であるとか、あるいは国内経済政策等と関連して、これを受けるか受けないかの態度に大きな影響があると思うのです。そういう意味で実はお尋ねしたのであります。  それに関連してついでにお尋ねいたしたいのは、今申しました賠償の問題にいたしましても、あるいは日本の資本が外地に出る場合におきましても、日本の外交方針やあるいはまた国内経済政策に、大きな関連がある問題だとわれわれは理解するのですが、その点について大臣のお考えをお尋ねしたい。言いかえますならば、侵略的な危険を日本の将来に感ずるような場合におきましては、かの地の人々の賠償に対します態度も、非常に強い要求になつて来る。そうでない場合におきましては、民主的、平和的な方法でアジア経済開発を共同にやつて行くというような態度が政策の上に現われますならば、賠償問題に対しても非常に緩和する可能性があるというふうにわれわれは考えるのですが、その点について大臣のお考えを承りたいのであります。
  116. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本も侵略的な政策を持とうとはごうも考えておりませんし、今ではこれらの国々も、日本が侵略的になろうというふうな予想は全然しておりませんから、おつしやるような問題は何も出て参りません。またこれはよく先方も了解しております。但しこういうことはあります。穗積君のお話は、こういうことに多少関連があるのじやないかと思いますが、たとえばアメリカと日本が非常に密接な連絡をしておれば、これは相手国が好まないとか、中共と貿易をしなければ相手国が好まないとか、それによつてまたいろいろその国との関係がよくなつたり悪くなつたりする。こういうような意味でありますれば、いろいろ先方政府当局とも話しましたが、日本国内の政策なりあるいは外交政策なりは、日本が独自にきめるものであつて、それがどちらを向うとも、そんなことは一向干渉すべき問題でない。従つてそういうことは日本が自由におやりになつてけつこうである。もちろん侵略するとかしないとかそんなことは別としまして、これが相手国に気に入るからいいとか、気に入らないから悪いとかいうようなことは、先方考えておらないようであります。
  117. 穗積七郎

    穗積委員 たとえば一例を申しますれば、先般われわれの党の代表の諸君が東南アジアに参りましたときに、ビルマの、個人ではなくて政府当局の有力な人が、日本国内政策が平和的な政策をとり、また外交政策におきましても、アジアに対する協調的な方針を明らかにするならば、賠償問題についてわれわれはあまりやかましいことを考えていない。大いに理解のある態度をもつて、それらを軽減することを考えているというような意見を申し述べたようでありますが、私の申したのはそういう意味なんです。つまり政府が今まで明らかにされた点は、向う側は被害の実害に対する賠償を要求する。これは賠償の原則だと思うのです。ところがこちら側は、その原則は否定しないが、実は経済的能力がないのだということが、賠償交渉のこちら側の言い分になつているように、われわれは先ほど来伺つているわけであります。そのときに、単に日本経済力が払う力がないというような問題になりますと、これは非常に相対的な問題でございまして、一定の限界というものはないと思うのです。しかも相手国であります東南アジア諸国の生活程度は、現在の日本の生活程度よりさらに低いのでありますから、従つてゆたかなところからより貧しいところへ払う能力がないことはないというりくつも成り立つわけであります。従つて私たちは、単に経済的な困難ということが理由だけでなしに、もう一つ大きな賠償問題解決のめどになるのは、日本の対外政策や国内の政策が、戦争前の日本を再現する危険がないという印象を与えることが、非常に必要だと思うのです。そういう意味でお尋ねいたしたいのは、日本が独立いたしましたときに、最も最初に外交方針として明らかにすベきものは、やはり何といいましても前の戦争の失敗や誤りを反省して、それにかわつてアジアの諸国と、こういう提携の方針を持ち、こういう経済開発の方針を持つのだということを、具体的な内容にわたつて明らかにすることが必要だと思う。ところが遺憾ながら今日まで、そのことを宣明するようなことがなくて、単に日本の今までの外交は、アメリカとの交渉なりあるいはアメリカからの援助を受けることに汲々としておつて、そして今再軍備費を伴う非常な経済的困難に当面して、そして東南アジアの市場を開発したり、あるいは賠償を軽減するような交渉に移つて来るというような印象を与えることは、非常にまずいと思うのです。そういう意味で、今からでもおそくはないので、独立日本の重要な外交政策の一つのパートとして、アジア開発に対する考え方を宣明されることが必要だと私は思うのですが、そういう御用意があるかないかをお尋ねいたしたいと思います。
  118. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう御趣旨であれば、私は日本の外交政策が平和的なものであるということと、日本国内が非常に民主的に進んでおり、侵略の意思はないということ、及び東南アジアとの提携は、常々非常に心がけているということについては、各国とも十分理解したと思います。なお経済開発というようなことをおつしやいましたが、これは日本がやるのではなくして、その国が自分の計画でやるのであります。それで要する場合には、日本は喜んでこれに寄与するだけの準備を持つている。こちらからいろいろな計画を押しつけるつもりは毛頭ないのでありますから、われわれはこちらの計画を発表するだけのものは持つておりません。ただ相手方のいろいろの開発計画等は十分研究しておりまして、この点なりあの点なりについて日本が求められたならば、できるだけのことはし得る準備があるということは、よく説明をして参りました。
  119. 穗積七郎

    穗積委員 もとより私の言つたのは、かの国に日本の方針を押しつけて、その通りやるのだというような意味で言つたのではないので、アジア全体の経済開発に協力するわれわれの立場を言つたのであります。従つてそのことにつきましては、少し大臣と私と認識の立場が違うようでありますが、どうぞそういうことについて、これから日本の方針を誤解のないように宣明することを希望いたしまして、次に移りたいと思います。  賠償問題の解決の時期でございますが、これはできるだけ早く解決するという御方針のお話でございましたが、実はわれわれの理解によりますと、この問題は、政府が特に国内経済力の限界をもつて賠償交渉の一つの理由にしているわけであります。そうなると、MSA交渉に伴いまして、日本が相当生活程度を引下げながら防衛費を、すなわち軍事費を織り込んで行くというような予算がどんどん政策の上で出て参りますと、そういうような余裕があるのなら、賠償の問題についてもこちらへより多くの賠償の責任を持たすべきだという議論が当然なされると思う。そういう意味におきましては、やはり他の委員からもお話がありましたが、MSA問題、すなわち防衛計画等が予算化される前に、日本側の総予算のめどを大体お示しになつて、そして東南アジア諸国と交渉されるのが当然であり適切であるとわれわれは考える。解決の時期につきましては、その点が非常に重要じやないかと思いますので、可及的すみやかということでなしに、もう一度大体のめどをお示しいただきたいと思います。
  120. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本の予算につきましては、何もことしだけの予算でないのでありまして、かりに賠償を払うということになりましても、短かくても五年、七年あるいは十年、十五年というような相当長期にわたる問題でありますから、長期の見通しをつけなければならない。ことしだけの予算で話ができるものじやないのであります。また国の防衛力の漸増ということは、たとえば災害の復旧と同様に国としては重要なことでありますから、これはやらなければならぬ範囲のものは当然やるベきである。それと同時に賠償の問題、これも重要な問題でありますから同時に考慮する、どちらが優先ということもないはずであります。
  121. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、時間を経過しておりますから……。
  122. 穗積七郎

    穗積委員 最後ですから……。もとより賠償問題も防衛計画の予算化も長期計画であるということは言うまでもありません。ところが今まで防衛計画については、本委員会におきましても外務大臣並びに政府当局は、防衛計画は持つていない、その理由は経済的な基礎がないからであるということを、理由の一点としてあげられて参りました。ところがMSAの交渉にあたりまして、条件は大して違わないのに政府考えておられ、または国民に約束されたよりはおそらく違つた厖大な軍事予算というものが出て来る可能性が、そういうものをのむ可能性がある。そういう事態が起きましたときに、はたして東南アジア諸国が、経済的な困難を理由にしてこちらから提案いたしました少額の賠償で納得するかどうか。経済的限界であるならば、今おつしやつた通り、軍事費の問題にいたしましても、賠償問題にいたしましても、同様なことだと思うのです。そうであるなら、一方強いアメリカの要求である防衛力増強の予算化は実行したが、一方は実行しないということになりますれば、東南アジア一般の輿論としては、そういうことに対して不満を持つことは当然だと思います。  時間がありませんから、そのことを重ねて御注意申し上げて、最後に具体的なことで一点だけお尋ねしたいのは、ビルマの米を買う希望を持つておられるようで当然なことであると思いますが、これはビルマに限らず、その他の国々からこれからある期間相当長期的にこれを買付をすることが必要だと思うのですが、その場合に一点お尋ねをしたいのは、その買付の話はやはり向う政府とこちらの政府の間で話をされると思う。ところがそれを事実取扱いますのはおそらくは民間の商社であろうと思うのですが、これにつきまして少数の大きな商社にのみ独占的にこの米の輸入の取扱いを指定するというようなことは、われわれとしては非常に非民主的なものであると思いますし、同時に向う側の政府の中にもそういうことに対する意見が相当あるようであります。従つて今後東南アジア地区に限らず、その他の米の輸入の取扱いにつきまして、独占的にごく少数の商社に限つてこれの取扱いを指定するというような御方針をおとりになるのかどうか、その点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  123. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私どもの管轄じやありませんので、農林大臣にお聞きを願いたいと思います。
  124. 上塚司

  125. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は先ほど来問題になつておりました日韓会談につきまして、簡単に私の疑問を承つておきたいと思います。  まず第一に李承晩ラインでありますが、韓国側はしきりに一九四五年九月のトルーマン宣言を引合いに出しますして、すでにこういうラインの先例はあるのだということを主張いたしておるようでありますが、トルーマン・ラインにいたしましても、あるいはさきに日米加漁業協定が締結された際におきましても、そのラインというものの性格が、韓国の主張する場合と非常に性格を異にいたしておる、すなわちむしろ魚族の保存ということが重点であつたように思うのですが、今度の場合におきましては韓国側は、李承晩ライン内におけるところの主権を主張いたしておる、すなわち領海の拡張をいたしておる。はなはだしきに至りましては、李承晩ラインについて見ますと、百五、六十海里の沖合いまでも韓国の主権の及ぶ海域と認めておるようでありますが、これはもとより今日の国際通念から申しまして、一般の三海里説などの通説を無視した、まことに一方的な不当な宣言であることは申すまでもないと思うのでありますが、韓国は依然としては日韓会談におきまして、李承晩ライン内におけるところの主権の存在を主張しておるのかどうか、私はこの点につきましてひとつ明らかにしてほしいと思いまする
  126. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも先方の主張ははつきりいたしておりませんが、普通の、たとえば旅客船等がそこを通過することについて、何ら干渉の意思はないというようなことも言つておるようであります、そうするともつぱら漁業に関する問題だけじやないかと想像されますが、どうもその点はあまりはつきりいたしておりません。
  127. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 さきに韓国側で発表したところによりますと、李承晩ラインの中に韓国の主権が及ぶのだというようなことを明らかにいたしておつたということを私は記憶いたしておるのでありますが、その後韓国側におつてこれを取消したようなことがあつたでありましようか。
  128. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日韓会談におきましては、いずれにしてもそういう点ではつきりした言明はないように思います。
  129. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、政府としては漁業権の問題だけである、とこういうふうに韓国側は主張しておるという立場に立つて交渉を進められておるのですか。
  130. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府としてはいずれにしても公海の自由という原則に立つておりますから、その中で主権があろうとかなかろうとか、そんなことは問題にしておりません。
  131. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私の申しておるのは日本を問題にしておるのではなくて、韓国側が主権を主張しておるかどうかということを承つておるわけなのでありまして、もし大臣にしてその間の消息に詳しくなければ、条約局長からでもけつこうであります、基礎的なことでありますから、はつきりしておいてもらいたいと思います。
  132. 下田武三

    ○下田説明員 ごく最近の日韓会談の全体会議でその問題にも触れております。しかし先ほど大臣が申されましたように、先方の主張の真相がきわめて把握しがたいのでございます。久保田首席代表が、韓国はあたかも李承晩ライン内の公海を領海と同じように扱つておるということを申しましたら、いや決して領海としているのではないということを口をきわめて弁解はしておるのであります。しかしながら主権がなければできないようなことを現実にいたしておるわけでありまして、主権の行使をするのではないという弁解をいたしたことはございません。ただ何も公海を領海と見なしておるのではないという弁解は、最近はいたしております。いずれにいたしましても、先方の主張はきわめてあいまいでありまして、私が先方にかわつて説明申し上げることが不可能なくらいあいまい模糊としております。
  133. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 韓国側はすでにわが漁船を多数拿捕し、あるいはわが国の財産を没収しあるいは監禁し、さらに殺人行為を行い、しかも最近におきましては裁判権を行使して、不当な裁判を行つておるようでありますが、主権がないところに裁判権のあろうはずもない。従つて政府といたしましては、当然それらの裁判権の宣言というものは無効である。また没収したり監禁をしたり、殺人行為を行つたことによつて発生いたしました損害賠償につきましては、これは当然日韓会談の俎上に上ることであると考えますが、いかなる所存でありましようか。
  134. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はお話のような趣旨に同感でありまして、先方に対する抗議その他におきましても、常に韓国側の責任であるから、それに対する被害は当然韓国側で負うべきものである、こういうことを言つております。
  135. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 すでに日韓会談におきまして、不当なる裁判やあるいは没収、監禁、殺人等の行為に対して、損害賠償というようなことを要求したことがあつたでありましようか、どうでありましようか。
  136. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 最近私日韓会談から離れておりますから、その点は条約局長から申しますが、被害の全額もこちらとしては算定しておらないので、おそらくそういう額はまだ提出してないと思います。あと条約局長から……。
  137. 下田武三

    ○下田説明員 ただいま大臣のおつしやいましたように、損害賠償を請求いたしますためには、被害額の算定、それからいかなる形で賠償を要求するかというような点を確定してからでないと、正式に要求できません。従いまして今までなしておりますことは、損害賠償要求の権利を留保するということを、申入れの都度申しておるわけでございます。
  138. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は先ほど社会党の委員の諸君からも、李承晩ラインの問題について、国民があまり騒ぎ過ぎるのではなかろうかというような意味のことを含めた発言もあつたようでありますが、私はむしろ逆でありまして、大いにこの際こそ国民が発奮興起しなければならぬときであると考えます。政府当局におきましても、少しくこの朝鮮問題の重大性というものに対する認識が疑わしく私には思われる節もあるわけでありまして、一国の領土が、明らかに他国によつて侵略を受けておる、この点を特に私は強調いたしたい。特に公海に対して一国の領海を不当に拡張するということの争いばかりでなくして、竹島の問題のごときは、明らかに父祖伝来の日本の領土である。これに対して韓国側が上陸して来て、それに韓国領土であるということの標識を立てておることは、御承知通りであります。しかもそれらの侵略行為を行うことによつて、韓国側は軍艦まで持出しておる、明らかに威嚇行為を行つておる、また日本の海上保安庁の船に対しても、臨検等の行為を行つておる。かようなことに対しまして国民が大いに輿論を喚起することは、私は当然のことであると思うのでありますが、かくのごとく一国の領土が他国によつて侵略を受けておる、私はかように考えるわけでありますが、この侵略を受けた場合において、侵略行為を排除するために、いかなる方法によつてこれを排除することができるか、政府といたしましては、日韓会談によつて円満なる交渉をするということでありますが、円満なる交渉も、すでに韓国側の不誠意な態度によつて今打切られておるような状態であります。一頓挫をいたしておるような状態であります。私は日本の主権が侵されたということは、もつと深刻な、緊急な事態である、かように考えるわけでありまして、政府といたしましても、これに対する緊急な対策をとる必要があるのではないか、この領土の侵略に対して日本の主権が侵されておるという立場に立つて、いかなる方法によつてこの侵略行為を排除しようというお考えであるか、これらの点に対する所信を承りたいと思います。
  139. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはわれわれとしては竹島が日本の領土であるということは確信をいたしておりまして、その間ごうも疑いを入れることはないと信じております。しかしながら、韓国側は先般抗議書を逆によこしまして、これは韓国側の領土であるという歴史的の事実があるということを申して来ております。これについてはもちろんこれに反駁するだけの十分な材料がありますが、要するに形は国際紛争になつておるのでありますから、自衛手段として、たとえばそこに人がおればまたいろいろ自衛手段も講じましようが、国際紛争になつておるこの竹島につきましては、平和的な方法でこの紛争を解決する、これが憲法の命ずるところである、こう考えてそのつもりでやる考えであります。
  140. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは、たとえば壱岐対馬に対する侵略行為も、次の問題であるというようなことが、すでに一般の通説となつておる、あるいは韓国人にして、このことを放言した人もあるようであります。国民はもしも壱岐、対馬が、再び竹島のようなことを繰返したならばどうなるかということについて、非常な不安を持つておるわけであります。ただいまの御説に従いますと、国際紛争の解決のためには、武力行使をしないという憲法の趣旨からいたしますと、かりに壱岐、対馬が侵略された場合においても、政府は依然として日韓会談によつて、外交上の解決をする以外に道がない、しかもその外交交渉というものは、遅々として一向に進まないが、こういうふうなお考えでありましよう。それではこの日韓会談がもう少し円満に解決するならばけつこうでありましようが、韓国側におきましてはきわめて不誠意なる態度をもつて、むしろ日韓会談を忌避するような、拒否するような態度を示しておるやに承るのでありますが、今申しますような壱岐、対馬あるいはその他におきまして、第二の竹島事件というものが起つたときにおいては、どういうふうな方針で臨むかという政府の所信のほどを承りたいと思います。
  141. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私はそういうことはないと確信しております。従つてそれは仮定の問題について議論をすることになりまして、国際間の関係から考えても、当委員会で議論することは適当でないと思いますので、この点は——しかし実際はそんなことを言えば、東京へ入つて来たらどうするという議論と同じであります。これは当然そういうことはないということを確信いたしております。
  142. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それではただいま李承晩ライン内において起つたいろいろな不祥事件、これを国民の側から見るなれば、まことに痛憤にたえない、切歯扼腕おくあたわざるところの行為でありますが、これに対する政府態度が非常になまぬるいということを——政府側の立場から申しますれば、いろいろな立場もあるでありましようけれども、一般国民はさように考えておるわけなのであります。  そこでそれでは政府考えというものは、ただいま政府のとつております態度が非常になまぬるいということは、憲法第九条の国際紛争を解決する手段として、武力を使うことができないというために、日本が憲法上がんじがらめになつてつて、手も足も出ないのだ、こういうふうなことが主たる原因でありましようか、それらの点につきまして承りたいと思います。
  143. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も今の状態は、はなはだ痛憤にたえないと考えておりますので、できるだけこれは解決をしなければならぬと思つております。ただ憲法の問題につきましては、かりに憲法があつてもなくても、もし私が外務大臣をしておりますれば、国際紛争を平和的手段以外で解決するつもりはありません。
  144. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 朝鮮側の一方的な宣言にもかかわらず、日本の沿岸漁民たちは、もはや死活の問題として、李承晩ラインというものを突破して入らなければ、漁場を求めることができない状態に置かれておるわけであります。おそらくは日韓会談が今日のような荏苒日をむなしゆうする段階におきましては、日本の漁民たちは自分の死活の問題として、生命の危険をも冒して李承晩ラインの中に入つて漁撈する以外に道はない、その方向に行くであろうと考えますが、政府といたしましては、依然として出漁は見合わさせるような、ないしは禁止するというような方針であるのかどうか。日本の全漁民の死活の問題であるから、しかもそれは公海自由の原則に反してまことに一方的な宣言であつて、われわれの承服するところではないから、漁民は出かけて行きなさい、政府としてはできるだけの保護をしよう、あるいは海上保安庁の船ないしは海上警備隊等の船を動員することによつて日本の漁船を保護してやろうという、こういう方針なのか、いずれの方針をおとりになるつもりか、承りたいと思います。
  145. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは主として農林大臣の管轄でありますから、私から申し上げる点はあまりないと思いますが、私の方の考え方から行きますれば、公海の自由という原則を政府としては堅持しておるのでありますから、その公海に出て行つて漁耕するということに対して、漁業家に行つてはいけないという中止をする勇気は全然ございません。やめろという勧告をするつもりはないのでございます。ただ一言念のためにつけ加えますれば、たとえばこの前もちよつと申しましたが、往来の歩道を人間が歩くことは、これは当然の権利であつて、何らさしつかえないのであります。従つてどんどん歩道を歩いてもいいわけでありますが、もし間違つて向うからトラックが歩道へ乗り上げて来たというときに、おれは権利があるのだからと、堂々とトラックのまん中でもどこへでも突き進んで行くかというと、これは漁民の、つまり歩道を歩く人の個々の判断にまつ以外にないのであります。しかし政府としては、公海の自由を主張しておる以上、漁撈に出かける者をとめることは理由がないと考えております。
  146. 上塚司

    上塚委員長 佐々木君、もう時間を非常に長く許しましたから……。
  147. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 これで終ります。それでは進んでその漁船を保護するという用意はありますか。
  148. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは農林大臣の判断によると思います。
  149. 上塚司

    上塚委員長 佐々木君、まだですか。
  150. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一つであります。それでは最後にもう一つ承つておきたいと存じますが、先刻来第三国によるところの仲介依頼のお話があつたようでありますが、日本の領土の一角が明らかに侵略を受け、日本の主権が外国によつて侵害を受けておるのでありますから、少くとも日米安全保障条約の精神から考えてみましても、私は、当然アメリカが進んでこの紛争解決に当らなければならぬところの道義的の責任はあるのじやなかろうかと考えるわけであります。すでに韓国側におきましては艦艇を動員し、そうして武力の行使をいたしておるわけであります。武力の行使をすることによつて日本の領土が侵され、そうして日本人の生命財産が損害を受けておるわけでありますから、当然日米安全保障条約の発動を見ても決して不都合ではない、私はかように考えておるわけであります。もしこのようなままで行くならば、日米安全保障条約というものは、単なる日米外交の飾りものにすぎないのであつて、ほんとうに何のための条約であるかということを疑わなければならぬのであります。従つて、私は重ねて外務大臣に、これらの問題につきましては、アメリカ当局に対しても積極的に仲介方に対して意思表示をしてほしい、このような二とをひとつお願いをいたしておくわけであります。  それからもう一つ承つておきたいことは、これらの竹島の問題やあるいは李承晩ラインの問題は、ただいまの日韓会談においてのみこれを解決しようというお考えなのか。あるいは国際司法裁判所への提訴であるとか、あるいは先ほど申したアメリカ等の第三国によるところの仲介、こういつた手段も考えられるわけでありますが、政府としては、あくまでもそれではこれらの問題は日韓会談においてのみ解決するという方針かどうかという点と、もう一つは、日韓会談というものは日本側が非常に積極的であるけれども、韓国側はきわめて消極的であつて日本側の積極的な熱意に対してきわめて冷淡である、こういうふうに見受けられるわけでありますが、好転する見込みはあるのかどうか、どういう見通しをお持ちになつておるのか、もしこれがさらに荏苒日をむなしゆうして、容易に両者の会談において解決を見ないというような場合におきましては、いかなる方針によつてこれを解決するのかどうかという点。それと関連をいたしまして、近く開かれますところの政治会議等におきましても、当然日本の代表を送つたり、あるいはその政治会議において李承晩ライン、竹島の問題等も含めた今日の日韓間の問題というものも、討議に移してほしいという希望を私は持つておるわけでありますが、これらの点につきまして政府の何らかの考えがありましたら承つておきたいと思います。
  151. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 さしあたり日本と朝鮮の間で本件は解決するべくあらゆる努力を続けておりますが、どうしても見込みがないという結論に達しましたならば、他の方法を考慮いたします。なお、政治会議でもつて竹島や李承晩ラインの問題を考えるようには、そういう気持は今どこの国も持つておりますまいし、またそれは政治会議本来の趣旨からいつても、少し筋が違うだろうと思います。あくまでもこれは両国間で話合いをいたすべきものだと信じております。
  152. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどの私の言葉が足りなくて、誤解があるといけませんから一言つけ加えたいと思います。今の佐々木委員の言葉の中にも、社会党が李承晩ラインの問題に対して非常に冷淡であるというようなことも言われたのですけれども、この問題を騒ぐとか騒がないということでなくて、むしろ平和的な手段によつて一日も早くこの問題を解決していただきたいということを私は政府に要望すると同時に、いわゆる李承晩ラインの紛争をめぐつて、それだから日本は早く再軍備をしなさいというように運用しようとする人たちがおりますから、そういう点を気をつけてほしいということを先ほど言つたのでありまして、言葉が足りなかつたので誤解されるといけませんから一応訂正しておきたいと思います。
  153. 上塚司

    上塚委員長 今日はこれをもつて散会します。     午後一時四十九分散会