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岡崎国務大臣 きようは閣議が
思つたより長くかかりまして、遅刻いたしました。そこで、ただいま
委員長からの
お話がありますので、できるだけ簡単に申し上げます。
MSAの
交渉経過につきましては、この前八月六日に本院の本
会議で
報告をいたしましたが、その後約一箇月足らずの間でありますから、
会談は四回開いたにとどま
つております。但し、その間におきましてもいろいろ非公式な
意見の
交換等は行
つて来ております。またその間に、
アメリカ側の首席の
委員が転任のために交代いたしましたので、こんなようなこともあ
つて、まだ非常に進捗しているというところには行
つておりません。しかし、たとえば例をと
つて申しますと、将来
援助を受けた場合に、
援助物資の
差押え免除とか、あるいは免税というような条項につきましては、双方の
意見が一致いたしました。
協定文についても大体合意を見ております。そこで、この前八月六日の
報告の中では、まだ
話合いがきま
つていないという問題として、
顧問団の性格とその
取扱いぶり、それから、
相互安全保障法の五百十一条の(a)項にある各
項目をどういうふうに取扱うかという点、それから、
MSAの
援助と
日本の
経済との
関連性をどういうふうにいたすかという点が、
話合いのおもなる
問題点として申し上げたのでありますが、こういう点について、この四回の会合においてもさらに突き進んで
両方の
話合いを進めて来ております。
第一に、
顧問団の問題は、
MSAを受けておる国ではほとんど一致したような一種の
取扱いぶりがきま
つておるのでありますから、あまり問題はないとも言えるのでありますが、ただ
日本としては、
日米安全保障条約によりまして
在日米軍というものがあります。この
在日米軍の地位と申しますか、これと、新しく
MSAの
顧問団というものとを、どういうふうな
関係に置くかという点が、
一つほかの国にあまりない問題でありますので、この点についていろいろ確かめてみなければならない
事情もあります。
アメリカ側でも、
日本の意向については
本国政府に請訓するようなこともありますので、まだ
結論には行
つておりませんが、
話合いの筋は、要するにこういう点にあるのであります。
それから第二の五百十一条の(a)項の問題につきましては、これはどこの国でもみな(a)項の六
項目というものを書き上げまして、この
条件を
受諾するということをいたしております。もつともその書き方には、大体多くの国は六一
項目をそのまま写し取つたようにして、そうしてこれに対する
受諾を表明しておりますが、一、二の国は、六
項目をみなご
ちやちやとませて
一つの条文にしておるのもあります。形はいろいろありますけれ
ども、どの国もこれを入れておりますから、この点も別に
日本側としては
原則上は問題がないわけであります。ただ、この前の
国会におきましてもいろいろと論議がありまして、この
外務委員会でも種々の
意見をお述べになりましたが、その
一つは、こういう
義務を
受諾する場合には、
日本の
憲法に違反する結果になりはしないかという御
意見があつたと記憶しております。そこでわれわれとしましても、かかる御
意見は十分尊重いたしまして、
憲法に違反しない
範囲内の、これは
条件の
受諾であるということを何らかの形で明らかにする必要はないかどうか、こういう点が主として
話合いの
中心にな
つております。もちろん
アメリカ側としましても、
日本側の
憲法違反等を起すようなことを考えているわけじやないのでありますけれ
ども、
協定なりあるいは
附属書なり、あるいは
議事録等でこの点を念を押す必要はないかどうか、またかりに、
はつきりさせようとすれば、どういう
表現を用いればよろしいのであろうかという点が
話合いの
中心であります。
それから第三の、
MSAと
日本の
経済の
関連でありますが、これはこの
委員会におきましても、私からもしばしば御
質問に答えて申しましたように、
アメリカの
MSAの
援助の形はいろいろのものが一緒にな
つておりまして、たとえば
マーシヤル計画というようなものも含まれておりますし、
ポイント・フオアというようなものも含まれておりますから、相当雑然たる形にな
つておりますけれ
ども、だんだんマーシヤル・プランのようなものは、実際
上防備計画——防備といいますか、
軍事援助の形に置きかえられて来ておる
現状でありまして、今回われわれが受けようといたします
MSAの
援助というものは、少くともことしにおきましては、いわゆる
——いわゆるでありますが、
軍事援助という形であ
つて、
防衛支持援助というようないわゆる
経済的の
援助の形は、ことしは
期待ができないであろうということを申しておりましたが、しかしそれと同時にこの前の六月二十四日、二十六日の手紙にもありますように、
日本政府としては、かりに
防備力を増強する場合におきましても、
日本の
経済の安定をくつがえすような結果になることはもちろん考えておりませんし、また
防備力を増強する上においては、
日本の
経済の安定ということが
前提の問題であるというふうに言
つておりまして、
アメリカ側も
表現の違いはありますが、同様に
日本の
経済を重視するという答えはいたしておるわけであります。これは要するに
防備計画をただそれだけむやみに増強するとかなんとかいうことじやない、常に
経済を考えてやるのだということでありますが、同時に一般には
MSAの
援助を受けますれば、非常に
日本の
経済に直接何か
経済的な
援助が含まれて入
つて来るのじやないかというふうに考えられておりは上ないかと思われる点もあるのであります。しかし今申しました
通り、軍事的な
援助というものがただいま考えられておるものであります。
経済的な
関連におきましては、第一には、かりに
防備計画を増強しても、
経済の安定をくつがえすようなことはいたさないのだという点が、
一つの
中心になるわけであります。
さらにこれも申し上げてもう御
承知のことでありますが、
MSAの
援助を受けますと、
日本も
東南アジアといいますか、この方面においても
アメリカの
MSA援助を受ける国の
一つとなるわけでありまして、その
関連性におきましては、十億何がしという
東南アジアに向けられます
援助のその一部は、
域外買付とな
つて日本に
注文される場合もあり得る。また
日本に直接
援助の
完成兵器等の場合でも、
アメリカから全部来るというのではなくして、一部は
日本において
注文をいたして、
アメリカ側でこれに対してドルを
支払つて受取つたものを
日本の
保安隊なり
海上警備隊なりに引渡す、こういう形もあり得るわけでありまして、この点におきましては
間接ではありますが、
日本の
工業にある
程度の
潤いは来るものと考えられるのであります。
要するに
日本の
経済との
関連性においては、ただいま申したような
防衛計画等を将来つくりますにおきましても、
経済の安定は害さないという点と、
日本の
工業に対する
注文、
域外買付等による
潤い、こういう
二つの点があるわけであります。こういう点におきまして、われわれはその
関連がどういうふうになるか、また
日本の考え方はこうであるということを先方に説明することに努めております。そして将来におきましては、たとえば
防衛資材と訓練というようなことばかりでなくして、いわゆる
経済援助と称せられます
防衛支持援助あるいはまた
東南アジアの
開発に
関連のある
技術援助、いわゆる
ポイント・フォアでありますが、これにつきましても、
日本の
資材なり
日本の
技術なりを用いてこの
開発をするように
話合いもいたしたい。またその
開発の結果できました
資材等は、できるだけ
日本でもこれを買いつけるようにいたしたい、こういうような
関連におきましては、これはまだ直接の問題ではもちろんありませんけれ
ども、やはり
日本の
経済の安定に相当の
関連性が将来持ち得る、こう思
つているのであります。
これが大体三つの
懸案事項について、まだ
結論は得ておりませんが、
問題点として話し
合つているところであります。
それからもう
一つ問題として、これは全部の
MSAを受けておる国との間の
協定にあるというわけではありませんが、少くともラテン・
アメリカの
諸国とか、その他にも一、二の国とは
規定がありまして、平和を脅威する国に対する
貿易の
統制ということがあるのであります。これは非常に率直に申しますれば、
共産圏の
諸国に平和を脅威するような行動があつた場合に、これに対して
兵器その他の
軍需品を輸出しないというような、この間の
国連の
決議のようなことを考慮されておることと思いますが、こういう問題も
一つあるのであります。これにつきましても、
日本はすでに
国連の
決議に基きまして、また諸
外国との
協議によりまして、輸出の制限を行
つております。従いまして平和を脅威するような国があつた場合に、その国との
貿易についてある種の
統制を加えるという
規定を入れることは、
原則としてはさしつかえないことであり、すでに
日本は事実上行
つておることである、こう私は考えておりますが、しかしその
表現の方法その他によりまして、この間の議会におきまして、本院の
中共貿易に関する
決議等もあります。この
決議に、
表現の次第によ
つては、何か反するような
規定にな
つてはいけませんから、こういう点を十分に注意いたしまして、どういうふうに取扱つたらよいかということにつきまして、ただいま
話合いをいたしております。大体そういう点がおもなる点でありますが、こういう点が片づきますと、今度は実質的に、たとえばかりに
援助の何パーセントが
日本の
国内で
注文されるであろうか、
援助の
種類とか
総額とかいうものはどの
程度になるであろうか、あるいは
日本にはどれがほしいというような話を進める
段階になるわけであります。
こうやつて交渉がだんだん進んで行くわけでありますが、今後どういう
見通しであるかということにつきましては、
協定文につきましてはただいまのような点が、多少ほかにもこまかい点はありますが、大体おもなる点でありまして、これはいずれも
話合いができかねるという
種類のものではありませんから、何らか
話合いの
結論が出るのもそう遠いことではないのじやないか、こう思
つております。今度は別に
日本に供与される
援助の
総額とか
内容とか、こういう問題になりますと、これはいろいろまたほかの国との
関連もあるようでありまして、ただいま私の
見通しとしても、どの
程度ということを申し上げることができませんけれ
ども、これを今後はいろいろの角度から検討して
話合いを進めることになるわけであります。
アメリカの
予算について見ましても、十億何千万ドルという金額はありますが、これは中国とかフイリピンとかタイとか
仏印とかいうような国々に
援助いたしておる
現状におきまして、その十億何千万というものから、今までこれらの四国に
援助しておりました額を引きますと、大体常識的には
日本にどの
程度——的確じやありませんが、一億以上一億五千万以内とか、一億以上一億八千万とかいうような大まかな見当は出て来るわけでありますし、また
アメリカの
上院の
議事録などにおきましても、議論の間において
日本にどのくらいというような数字をあげておるのもありますけれ
ども、これはいずれも私はまだ的確なものというわけには行かないと考えております。こういう今後
交渉の進展によりましてだんだん明らかにして行きたい、こう考えております。
援助の
内容の、先ほど申しました
完成兵器の
種類とか数量とか、その他
日本に
注文し得るものはどの
程度あるかというような点も同様であります。
最後に、これは私の直接の担当の問題でありませんが、
防衛計画と申しますか
防備計画と申しますか、そういうものと
協定との
関連でありますが、これは前にも
ちよつと申し上げましたように、
アメリカ側としては
日本のこういう
計画の
決定に何らくちばしを入れない、こういう
計画の
決定なりあるいはその大要なりは、一に
日本政府のきめるところであるということを印しておるのは御
承知の
通りであります。そこでこういうものができておりますれば、もちろん
協定の
交渉におきまして非常に役に立ち、
話合いが
はつきりするということはもちろんでありますけれ
ども、しかし前に申した
通り、これは
交渉自体から言いますれば、必ずしも必須の要件であ
つてこれがなければできないという
趣旨のものではない、こう私は考えております。この点につきましては所管が違いますので、私からいろいろ申し上げるよりは
保安庁長官から
お話を申し上げた方が適当であろうと考えておりますが、ただそれだけのことを申し上げておきます。
要するに
経済界のいろいろの
希望を聞きますと、やはりできるだけ
日本の
経済に寄与するようにこの
話合いを進めてくれということでありますが、これは
MSAの
規定等をあまりよく研究しないで、何か直接に
日本の
経済に
潤いのあるような
援助が来るような
期待を持
つている向きもあるようでありますが、それは先ほ
ども申したように
間接にはありましよう。もちろん非常にあろうと思いますが、面接には
MSA自体からは来にくいのじやないか、こう私は考えております。
以上が大体
経過の御
報告であります。