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松本参考人 私のところのこの問題は、結論を申しますと、
昭和二十六年四月から現在まで、七十三町歩という海岸地帯を、米軍の高射砲陣地として接収されておるのでありますが、今回さらに三千五百町歩という厖大な面積、海岸の幅が約一里、ぐらい、奥行きが奥の方に二方ヤード、こういう厖大な海面の面積を、
アメリカ軍が、海陸空の総合
演習をやるから、ぜひこれを貸せ、こういうことを
日本の政府に要求せられておるのに対しまして、地元の町はもちろんのこと、地元十箇町村の決議と、それから北海道議会の満場一致の決議によりまして、両院、その他米軍の各部に対しまして、絶対にこの拡大の線はやめてもらいたい、こういう陳情、
請願をや
つておる次第でございます。以下内容に入りまして、簡単に説明を申し上げたいと思います。
日高門別は、北海道へ行かれた方はおわかりでしようが、苫小牧という製紙社会がありますところから、日高線というのが、太平洋岸に沿うてあります。そこから一時間半ばかり汽車で参りますと、そこに門別町があるのでございます。海岸を持ち、そうして奥行き十三里くらいありまして、農村、漁村、それから有名な日高馬の産地で、木材等を多数産出し、木炭におきましては、北海道の東の大関といわれる産地でございます。この三千五百町歩というのは、わが門別町におけるところの目抜きの箇所でございます。海におきましては約一億円、陸におきまして、は、農畜産すべてを合せまして一億五千万から二億円、合計年産額二億円という生産力を持
つておる部落でございまして、わが門別町の年産額の三〇%を占めておる地域でございます。今、それをひとつ貸せ。七十三町歩を二十六年度から接収されてさえも、高射砲をや
つておりますから、一箇月に十五日、あるいは十八日というような
期間は、絶対漁業ができません。そうして非常に苦しんでおるにもかかわらず、さらに今度は奥地の方を三千五百町歩という厖大な要請をしておる。それから軍艦が十数隻、上陸用舟艇も今度参ります。それから戦車が三百八十台、歩兵が約三千、その他の車両が数百、それから野砲、山砲、
ジエツト機、この現代式のあらゆる武器をあげまして、海陸空の統合
演習をやる、こういうわけでございまして、われわれ町民は、これらに対して非常な心配をしておるのであります。
関係の部落民は、数回にわた
つて大会を開いて、絶対反対をや
つておる次第でございます。この間四月には、参謀大佐のバソール、それからギボン少佐の一行と、政府からは外務、大蔵、農林、それから調達庁、こういうような
関係機関の高官連中が二十数名おいでになりまして、わざわざその予定地を視察してくださつたのでございまして、午後には、今度は日米会談というのが北海道の門別において行われたわけでございます。そのときに私は、バソール大佐に向
つて、その反対の理由を申し上げておいたのであります。畑は使わないし、道路だけを使うのだからと、こういうようなことで、何とかしてくれろとい
つていろいろ説明しました。ところが、北海道の札幌の郊外の豊平という地区においての
演習状況を、私のところの町民がよく知
つております。そこは道路だけ貸せ、畑は使わない、こういうのでやらしてみたところが、全部蹂躙してしまつた。そういう例がちやんとありますから、そういう手には乗りません。それで絶対反対をしておるのであります。
それで、
ちよつとその内容を申し上げると、水田が百五十町歩、畑が八百六十九町歩、牧野が八百八十町歩、混牧林が一千十五町歩、原野その他が五百六十一町歩、それから宅地が十八町歩、合計三千四百九十三町歩、ざつと三千五百町歩でありまして、これは八八%が民有地であります。
〔
委員長退席、富田
委員長代理着席〕
国有地というのは、魚を集める
ための海岸の保安林が若干、それからなお開拓地百七十三町歩の中に、まだ売渡しが未済に
なつておるのが百四十一町歩、これだけありまして、八八%は全部民有地です。そして一坪でもむだに
使つておらない、全部これを生産に
使つておるようなわけでございます。そういう目抜きの箇所を三千五百町歩、それから海面は、今までは高射砲陣地ですから、扇を広げたように
なつておりましたが、今度は上陸用舟艇ですから、幅を広く、一里ばかりにわた
つて二方ヤード、そういう大面積を
使つて、軍艦等が十数隻――私この間横須賀に行
つてアレキサンダーに会
つて、ちやんとこれは控えて来たのですが、新聞あたりに書いてよいかどうかわかりませんから、明細なことは申しません、軍艦何そう、輸送船何そうということは、手帳に書いてありますが、祕密にしておきますけれ
ども、そういう厖大な隻数を持
つて来て上陸作戦をやり、海陸空の大
演習をやろうという。これをやられましたならば、門別町はすつかりめちやめちやに
なつてしまう。われわれは絶対、何としても――たとい戦車の下に
なつても動かないとい
つてがんば
つております。そういうわけで、私のところは、別段むしろ旗を立てたわけでもありませんが、とにかく去年の四月からこれを要求しておりまして、現在までに日米合同
委員会が二十八回か九回あつたと聞いておるのですが、一年四箇月かにわた
つて、
日本の政府はこれを拒否するように働いてもら
つております。私は、この点非常に感謝しております。ところがまだ勝負がつかないで、四つに組んだままに
なつておるような現状でございます。もしこれが接収されることに
なつたら、それはたいへんな話です。この地域には馬が八百十六頭、牛が百五十三頭、豚が二百九十頭、緬羊が三百十頭、やぎが三十頭、その他うさぎとか何とか小家畜を加えますと、三千三百九十九の数になるわけでございますが、そういうのがこの三千五百町歩の中におりまして、そして牛乳をしぼつたりしている。その付近には、半道も行かぬ、ほんの十町かそこらのところに雪じるしのチーズ、バター工場があ
つて、大きくや
つておりますが、そこに全部これを輸送している。もしそういうことになりまして、三百数十台、約四百台の車両が通行しましたならば、絶対輸送も何もできません。牛乳も何も腐
つてしまうのであります。それから高等
学校が
一つ、
中学校、小
学校、保育所、これが合計十一ございますが、これの授業なんかもちろんできません。先ほど
福岡の方から説明がありましたが、
ジエツト機ががんがんやつたら、十一の
学校の授業なんかもちろんできません。それから一般農家が百九十五戸、入植者が二十七戸、漁業者が百三十六戸、その他三百三十三戸、合計六百九十一戸あります。これによ
つて生活しておる者が三千四百五十五人、これらは一体どうなるかという問題です、そこでバソールというのは、ロードだけを使うのだから、営農をや
つてもさしつかえない。こう向うでは言いますが、すでに御
承知のように、あの札幌の郊外の豊平の
演習地におきましては、最初はロードだけ使うから、お前らは営農にはさしつかえないと言つた。その中には九十五戸包含されておりますが一それがとうとうここでは生活ができぬというので、道庁もこれを認め、国家もこれを認めまして、今では九十五戸全部を移動させるという方針にかえてしまつた。そして半数以上はすでに移転しました。あとに残
つておるのは、これから移転する。こういう状態を町民はすつかり知
つております。われわれは、バソールにはだまされない。ああいうようなことを言
つておるが、豊平はどうだ。九十五戸というのは、初めは安全地帯である、営農はできると言
つておつたが、全部営農ができないで、すでに半数以上は移転しおる。われわれもそういうような目にあうのだから、これは絶対にごめんこうむるとい
つておるのであります。これは非常な決意をも
つておるのです。そこで、実はゆうべ私の方の助役と、それから漁業組合の方から電報が来たので、それを御
紹介したいと思います。その前に
ちよつと申し上げておきますが、この間、六月の十六日には、許可を受けないで数十町歩に無断侵入しまして、野砲、山砲を持
つて来て
演習をしました。私は
ちようど札幌の道庁に出張中でありましたが、電話が来ましたので、断固反対せいと言いましたところが、助役は、すぐにこれを
市長に話し、
市長は無電で道庁に送り、道庁はただちに本部の真駒内分隊と折衝した。ところが分隊があわてて、翌朝すぐに来まして、現場を見た。ところがなるほど蹂躪されておる、しかも域外だ、これはいかぬ、これは
現地部隊を厳重な処罰をするから、今回限りは許してくれ、損害は十分こつちで補償するからというので、それを今手続中であります。そういうことがあつたのが、ついこの間です。ところがゆうべの電報によりますと七月十九日、米軍の手違いにより、高射砲
演習部隊無通告で来る、たこ箱、延繩の始末ができず、漁民一時混乱せるも、町の抗議により延期し、二十三日より三十一日まで実施中ということですから、きようもや
つておるわけであります。これは無通告でや
つて来た。一週間前に通告をして、今度は漁民がいろいろな
施設をやめて待
つておる。たこ箱とか延繩とか何とかは一日も二日もかかるのです。それを無通告でどんどんや
つておるので、どつこい待てと言
つて、やめさしておる。それでとうとう十九日に来たものが、二十三日から三十一日まで今実施中だと言
つて来ておる。こういうわけで、黙
つておると何をやるかわからない、こういうことであります。それから補償の問題は、時間がありませんから簡単に申しますが、去年五十三日間高射砲で射撃をやりました。ところがその補償金が、まだ政府から一厘も渡
つておりません。そこでここに漁業組合から電報が参りましたのを読んでみますと、二十七年度補償書類
東京に出されたるも、われらの要求する金額に達し得ず、札幌調達局に交渉せるも見込なし、至急支払われるよう、ぜひ懇請せられたし、漁組というのであります。こんなふうで、どうもそれでは食えぬから、町は貧弱な財政ではありますけれ
ども、五十万円という金を去年の秋漁民に貸してや
つております。この補償が来たら、町長返すから、それまで待
つてくれというので、無利子で借しておるが、こつちも高等
学校をつくつたり、いろいろや
つておりますから、金がかか
つておりますけれ
ども、何しろ一文も補償がない漁民に、貸さぬわけには行きません。こんなわけで、漁民の人にまだびた一文もわた
つていないというような現状では、実際どうかと思われる。こんな状態ですから、ひとつ外務
委員の先生方は、適当なるおとりはからいができるように御
尽力をお願いしたいと思う次第でございます。
なお風紀上の問題等もたくさんありますけれ
ども、時間が制限されておりますから申し上げません。
実は非常に危険なことでありますが、去年の十一月にこういうことがあつた。
飛行機が吹流しを引つぱ
つて来て、それをどんどんと高射砲で打つのですが、その吹流しが磯舟の横つ腹にあたりまして、大きな穴があいた。それで、町長たいへんなことが起きた、磯舟に吹流しがぶつか
つて穴があいたというので、そんなばかなことがあるか、吹流しがなんぼ強く当
つても、舟の横つ腹に穴があくというようなばかなことがあるかと言つたら、この通りだと写真を持
つて来ました。これはわれわれの認識不足でありまして、
アメリカの吹流しには鉄かぶとがついております。三貫五百から四貫くらいの鉄かぶとがどんと当つた。幸いに人間が乗
つていなかつたから舟でありましたから、死傷者は一名も出しませんでしたが、あれが数名のものが乗
つておつたのにぶつかつたら、即死です。そういう危険なことがあります。