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1953-07-21 第16回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十一日(火曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 福田 篤泰君    理事 並木 芳雄君 理事 田中 稔男君    理事 戸叶 里子君 理事 池田正之輔君       麻生太賀吉君    金光 庸夫君       富田 健治君    岡田 勢一君       須磨彌吉郎君    帆足  計君       穗積 七郎君    岡  良一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務省参事官         (大臣官房審議         室付)     大野 勝已君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         通産事務官         (通商局長)  牛場 信彦君         特許庁長官   長村 貞一君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局渡航課         長)       松尾 隆男君         専  門  員  佐藤 敏人君         専  門  員  村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月二十日  委員熊谷憲一辞任につき、その補欠として三  浦寅之助君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員三浦寅之助辞任につき、その補欠として  富田健治君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月二十日  国際民間航空条約への加入について承認を求め  るの件(条約第二〇号)  国際航空業務通過協定の受諾について承認を求  めるの件(条約第二一号)  国際電気通信条約批准について承認を求める  の件(条約第二二号) の審査を本委員会に付託された。 同月十八日  離島大島米軍演習地として接収反対陳情書  (第一〇一〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海  条約批准について承認を求めるの件(条約第  九号)  日本国フィリピン共和国との間の沈没船舶引  揚に関する中間賠償協定締結について承認を  求めるの件(条約第一六号)  第二次世界大戦影響を受けた工業所有権の保  護に関する日本国ドイツ連邦共和国との間の  協定批准について承認を求めるの件(条約第  一八号)  第二次世界大戦影響を受けた工業所有権の保  護に関する日本国スイス連邦との間の協定の  締結について承認を求めるの件(条約第一九  号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  第二次世界大戦影響を受けた工業所有権保護に関する日本国ドイツ連邦共和国との間の協定批准について承認を求めるの件、第二次世界大戦影響を受けた工業所有権保護に関する日本国スイス連邦との間の協定締結について承認を求めるの件を一括議題とし、政府側より提案理由説明を聴取いたします。外務省政務次官小滝彬君。     —————————————
  3. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま議題となりました第二次世界大戦影響を受けた工業所有権保護に関するドイツとの間の協定及びスイスとの間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  第二次世界大戦とこれに次ぐ日・独両国占領のため、約十年間は、日・独両国間及び日本スイス両国間の通信連絡異常状態に置かれ、その結果として右期間におきましては、工業所有権関係出願書類相手国に郵送し、または特許料登録料等相手国に納付することがきわめて困難でありました。また連合国占領政策は、一時、日・独両国政府外国人出願を受理したり、また日・独両国人外国出願することを禁止いたしておりました。これらの理由により、日・独間において、また日本スイス間においては、互いに相手国民工業所有権保護するための措置をとることができなかつた状態にありました。そこでドイツ政府は、昨年八月にこれらの権利相互的基礎に立つて救済するための協定締結したい旨を申し入れて参りましたが、本年四月に東京ドイツから参りました使節団との間に交渉を行いました結果、両国間に完全に意見が一致し、協定案の作成を見ましたので五月八日に署名をいたしました。  一方スイス政府は、一昨年十一月に同種の協定締結したい旨申入れを行い、東京において交渉を行つて参りましたところ、両国間に完全に意見がまとまりましたので、本年六月二十五日に協定案署名をいたしました。  ドイツとの間の協定は、工業所有権特許または登録出願のための優先期間の延長及び、遡及効を伴う商標権存続期間の更新を内容といたしております。この協定は、わが国独立回復後同国との間に締結いたします最初正式協定であり、両国間の伝統的な技術提携関係を再建するに役立つものと存じます。  一方、スイスとの間の協定には、ドイツとの間の協定に盛られました内容のほかに、消滅した工業所有権回復措置規定されておりますが、これまたわが国独立回復後、スイスとの間に締結いたします最初正式協定であり、日独間の協定と同様の効果をもたらすものと信じます。  以上の事情を了承せられ何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認を与えられんことを切に希望いたします。
  4. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの二件についての質疑次会に譲ります。     —————————————
  5. 上塚司

    上塚委員長 日本国フイリピン共和国との間の沈没船引揚に関する中間賠償協定締結について承認を求めるの件について質疑を行います。通告順によつて質疑を許します。岡良一君。
  6. 岡良一

    岡委員 ただいまの中間賠償協定締結についてお尋ねをいたしたいのでありますが、今日までの日本国フイリピン共和国との間における賠償についての交渉はどの程度まで進捗いたしておるのでありますか、あるいは重複いたすかもしれませんが、本中間賠償協定に関して大わくを承りたいと思います。
  7. 大野勝已

    大野政府委員 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げたいと存じます。フィリピン日本との間の賠償問題は、サンフランシスコ締結されました対日平和条約フイリピン国による批准の問題と関連を持つておるのでありまして、わが国といたしましては、最もすみやかなる機会においてフイリピン国政府サンフランシスコ平和条約批准することを希望いたしておるのであります。それによりまして日比間の国交関係をすみやかに正常化して友好親善関係を増進いたしたい、こういうふうに考えておる次第でありますが、残念ながら今日までのところまだサンフランシスコ平和条約批准ということは、フィリピン国の議会によつて承認されておらないのであります。どういう事情がそれにまつわつているかと申しますと、いろいろな事情があるのでありますが、その一つの大きな原因は、賠償問題についての日本との話合いが必ずしも円滑に行つていない、フィリピン側の満足するような話にまだなつていないという点が、非常に大きな原因になつておる次第でありまして、フィリピンの政界の一部におきましても、賠償なければ批准なしというふうな相言葉すらあるというふうでありますので、口でいろいろ美辞麗句を並べるよりは、賠償を実施するという行為によつてひとつ誠意を現実に示してもらいたい、こういう希望が漸次高まつて来ておつたような状況であります。昨年の一月に、津島壽一さんを団長とするわが国からの賠償使節団マニラに参りましてまず交渉を開始したのでありますが、その際は損害額八十億ドルというふうな巨額な数額基礎といたしまする提案が、フイリピン側からなされたのでありますが、これに対しましてわが代表団といたしましては、よく事情を承つて日本帰つて、これに対する日本側態度を適当な機会に通知をして、その上でさらに打合せをして行きたい、こういうような立場をとりまして、日本側立場をよく鮮明して、先方申入れを一応日本へ持つて帰るということをして帰つて来たような次第でございます。その後さしたる発展はなかつたのでありますが、昨年の十月に、わが国マニラ在外事務所を設定いたしまして在外事務所長を派遣いたしましたところ、この在外事務所長に対しまして先方政府が、この際サンフランシスコ平和条約批准を促進する意味もあつて、このサンフランシスコ平和条約の第十四条に規定してあります沈没船引揚げ役務中心とする賠償話合いを、手取り早くしたいということを申し入れて来たのであります。政府といたしましては、この申入れを受けまして、昨年の十月から、沈船引揚げ中心とする中間賠償話合いを現地において行わしめて来たのであります。その後紆余曲折を経まして交渉を続行いたしました結果でき上りましたものが、本年の三月十二日にマニラにおいて調印されました本件、日比間の沈船引揚に関する中間賠償協定案であります。冒頭に述べましたように、わが国といたしましては、サンフランシスコ平和条約に調印をいたしましたフイリピン国政府が、最もすみやかなる機会においてこれを批准してほしいのであります。それによつて日比間の国交関係をますます増進したいという念願にかられておるわけでありますが、この沈船引揚中間協定が実施に移されるということになつて参りますと、日本側誠意先方に非常にわかつてもらえるということになる次第でありまして、必ずやサンフランシコ平和条約フイリピンによる批准を促進するものと政府は信じておる次第であります。
  8. 岡良一

    岡委員 本年の一月の終りにマニラで、在外事務所長の中川君たちから聞いたいたのでありますが、ただいま御説明のようなわけで、フイリピンとしても、切り離して賠償問題の解決をやろうというので、各界代表を網羅する十九人委員会とやらいうものを設けたという。そこで、この十九人委員会というものが、はたして何らか対日賠償についての具体的対案をつくつたのかどうか、あるいは、それとこの中間賠償協定とはどういう関連があるのかという点をお伺いしたい。
  9. 大野勝已

    大野政府委員 ただいまの岡さんの御質問にお答え申し上げたいと存じます。  仰せの通りフィリピン側は、十九人委員会と俗に申しております委員会を結成いたしまして、対日賠償問題の審議に当らしたのであります。この委員会は、上院、下院の有力者と、それから学識経験者その他を網羅している委員会でありまして、フィリピン大統領諮問機関として、賠償問題についてある種の答申案を出すことになつてつたのであります。具体的に問題になりましたのは、昨年の暮れにマニラに立ち寄りました外務省の倭島アジア局長から、先方提案いたしましたところの生産加工に関する日本側の考えを議題といたしまして、この十九人委員会で研究して参つたもののごとくであります。その結果、何か結論が出て大統領の方に答申されたかと申しますと、やはりフイリピン国内政事情がかなり複雑なようでありまして、もともと超党派的に賠償問題を取扱おうということを目的といたしましたこの委員会が、場合によりましては必ずしもそうも行かなかつた模様でありまして、フィリピン政府の当初考えていたようなところへ結論を落すことに、百パーセント成功したとは認められないわけでございます。その結果といたしまして、本年の四月の六日にこの十九人委員会大統領に答申した結果をいれまして、四月六日にフイリピン国政府から日本側に対しまして、ある種の申入れがあつたのであります。それは今申しましたように、十九人委員会の決定したところに基いてフィリピン政府日本側に対して、ある種の申入れをして来たのであります。  この申入れのごく概略を申し上げますと、生産加工に関する役務の個々の項目について一つ一つ協議をして行くという、そういうことの前に、総額幾ら日本側フイリピンに払う用意があるのか、それから何年以内にそれを払うつもりでおるか、それから生産加工日本がかりに引受ける場合において、原料先方が持つことになるわけでありますから、その場合の経費の負担区分等について、最も明確な意思表示をしてもらわないと、生産加工の個個の項目について協議を進めるわけにも行かないがどうか。概略申し上げますと、こういつたような趣旨申入れをして来たようなわけでございます。政府といたしましてはよく研究いたしました結果、五月の中旬だつたと思つておりますが、中間的な回答を先方に渡しておるのでありますが、総額の問題その他につきましては、予備会談あるいは技術者会談というものを両国の間で開きまして、生産加工の問題を一つ一つ取上げて協議して行く過程において、自然に討議の対象になるかもしれない。それは自分たちもよく了承しておるのだが、しかしこの際ここではつきりフィリピン側申入れして来たのに対して、幾ら幾らまでは払うというふうにお答えするわけには行かない。であるからできるだけ早く両国の間に予定されている予備会談を、東京ででも、マニラででもいいから開きたい、これを開いて話を進めて行く点については何らの異議もないし、その用意も十分整つておるという趣旨の返答を実は先方に出したのであります。そういうふうな状況になつておる次第でございます。
  10. 岡良一

    岡委員 第二段のお尋ねですが、私どもの承知するところでは、十九人委員会フイリピン各界代表を網羅したか在り権威ある、対日賠償決定機関とは申せますまいが、相当政府に対して影響力を持つ機関のように承知いたしておるので、それが今御説明のような形において、部分的な折衝がその答申案基礎として、あるいは日本側の意向もくんでなされておる、そこでただいま御提案中間賠償協定は、やはり当然この十九人委員会承認を得るというか、対日賠償の中にスムーズに繰入れられる期待を十分持てるわけなのでしようか。
  11. 大野勝已

    大野政府委員 お答え申し上げます。この中間賠償協定は、実は十九人委員会審議と別に交渉が開始されたいきさつがありまして、むろんフイリピン政府は、この交渉いきさつを十九人委員会に報告しているには違いないと思いますが、別段十九人委員会中間協定案提案されて、そこを通らなければならないという趣旨のものでもないように思つております。ただ岡さんの御質問の全体の、まだ未決になつている沈船引揚げ以外の項目についての賠償問題が解決した際には、むろんのこと中間的に今とりきめようとしている沈船引揚げ役務というものは、その全体の中の一部を占めることは申すまでもないことでございまして、それは金額的にももちろん換算されれば、トータルの賠償総額の中の重要な一部をなすことは疑いないわけでございます。
  12. 岡良一

    岡委員 ざらにお尋ねいたしたいと思う。これはせんだつて委員会でも岡田勢委員からお尋ねのあつた点ですが、わが党としては非常に重要に考えておりますので、重ねて政府所信お尋ねいたしたいと思います。それは本協定では、日本役務によつて海底から取出したスクラップというものが、われわれとすれば、有償をもつてでも日本の乏しい鉄資源の代替として、入手したいことは当然のことでございますが、この点には触れられておりません。これは日本国フイリピン国との単に両国間のみにおける協定というものではなく、われわれとしては将来インドネシアにしても、ビルマにしても、やはりサービス賠償の形において役務を提供するその結果、その国国において資源が開発された場合に、単にこれはスクラップでなくても、磁鉄鉱でも、マンガンでも、あるいはすずでも、そういうものは日本の国に非常に乏しい資源であり、日本が非常に犠牲を払つて海外から遠いところをはるばると輸入をしておることを考えるならば、当然役務賠償の形で、これらの国々において掘り出された重要な、しかも日本においては乏しい資源というものが、日本の鉱業に役立つと同時に、また日本工業がそれらを原料といたしまして、そうしてつくり出した農機具なり、織機なり、エンジンなり、あるいは機関車なり、レールというものが、またそれらの国々に還元されてそれらの国々近代化をいざなつて行く、それらの問題について、賠償問題を契機とするいわゆる実質的な経済提携をわれわれが考えた場合に、やはりこの協定の中に、日本役務によつてフイリピンの近海から掘り出したところのスクラップというものは、日本有償をもつて払い受けることができるというような規定をはつきり打出すということは、将来の各国に対する役務賠償の場合の原則を立てる意味で、私どもは非常に重要視しておるわけです。それについては先般岡田委員の御質問に対してもお答えがありましたが、この原則を確立することは非常に大切だと思いますので、政府の御所信を承りたい。  次には、この協定においてはかかる主張をなされたはずでありますが、その点折衝経過等について、重ねて承りたいと思います。
  13. 大野勝已

    大野政府委員 岡さんのただいまの御質問にお答えいたします。  前段のスクラップの問題でございますが、海底から上つて参る経済的な価値に非常に大きな価値を添加するものでありますから、これを大いに活用しなければならないし、またこれを活用することのできるような原則を打立てておくということが、フィリピン以外の国との賠償交渉をやる場合においても、非常に重要であるという点につきましては、まつたく同感であります。政府といたしましてもその通りに考えております。従いましてフィリピンとの間の沈船協定交渉をいたす過程におきまして、その点にも当然触れているわけでありまして、ただこの中間協定の文書の中に織り込まれる性質のものではないように思いましたので、織り込まれておりませんので、両国間の発表しない了解ということになつております。その了解によりますと、フイリピン政府輸出用として認めるスクラップに対しましては、日本への業者商業採算で入札することができる、かような了解が明確にできております。但しこれはただいま申しましたように、両国申合せによりまして、不発表のものといたしておりますから、さよう御了承を願いたいのです。なお引揚げられまひた船舶から生じたスクラップをいかように処分するつもりであるか、全体的にどういうふうにするかということにつきましては、日本側はまだフイリピン側から正式な意思表示は受けておりません。ただその一部をフィリピン政府輸出用として認めるものを日本人業者商業採算の上で入札してこれを手に入れるということだけは、今申しましたようなことで確立しておるのであります。爾余の分につきましては、いずれ沈船引揚け以外の役務、すなわちまだ残されている生産加工役務に関しましていかなる限度まで、いかなる項目について賠償対象とするかということが、具体的に日比両国間で賠償交渉が進んではつきりして参ります際には必ず出る問題でありまして、かりに製造加工役務日本が引受けると仮定いたしますならば、講和条約第十四条の規定によつて材料及び原料先方持ちということに相なつておりますから、その場合に今度引揚けらるべきスクラップが、生産加工用原料ないし材料として相当大きな働きをするのではないかということが、今日からほぼ予想される次第であります。
  14. 岡良一

    岡委員 この点は繰返し申し上げませんが、私ども立場からすると、むしろ協定の中に明文化されるべきほどのかなり将来重要な意味を持つておるので、今後とも賠償問題が、特にサービス賠償中心とした折衝におきましては、アジアにおけるいろいろな資源が、たとい賠償の形においてであろうと、日本人労働力なりあるいは科学技術なり、そのつくり出した設備なりを通じて、アジア平和生産の拡大、再生産の軌道に乗つてこれが動き出し得るような、そういう建前を協定の上に明文化する、こういう御努力をお願いしまして私の質問を終ります。
  15. 上塚司

  16. 並木芳雄

    並木委員 私は沈船所属権につきまして、まだ釈然といたしませんので質問してみたいと思うのです。フイリピン沈船所属につきましては、平和条約がまだ批准されておらないのですから、平和条約は適用されないだろうと思うのです。この点は旧南洋委任統治領における沈船問題にも関連をして参ります。この前下田条約局長に法律的の解釈質問したのですけれども、法律的の立場はそうかもしれませんけれども平和条約で別途に特別協定をやることになつておりますから、やはり平和条約特別協定をやるというあの条文が優先するのではないかと思うのです。その点お尋ねしておきます。
  17. 下田武三

    下田政府委員 先日申し上げましたように、南洋委任統治領につきましては、平和条約第四条の規定がございます。ただ問題はその特別とりきめの対象となる請求権というものの意味だろうと思うのであります。これは南洋拓殖銀行とかその他の日本の会社、南洋庁でありますとか、戦闘と全然関係のない平和的財産が、そう多くないとは思いますが、あることはあると思います。そういうものはあたかも朝鮮における総督府の財産あるいは朝鮮銀行財産と同じようにその処理について、請求権の問題として特別とりきめの対象となると思うのです。ところが兵器、艦船のごときは、これは平和条約の前提におきまして、国際法で直接規定するところに従いましてその処理を考えなければならない。そこで沈船につきましては、実は国際法が完全にエスタブリツシユされておるわけではございません。ことに昔は海の底に深く沈んでしまつたものは利用価値が少かつたので、国際法ではあまり取上げなかつたのでありますが、近来はサルページ技術的進歩で、海底に沈んでいるものといえどもこれを揚げて利用するという点でヴアリユーを持つに至りました。そこで国際法でいろいろな議論が生じたのでありますが、今日の多数説は沈んでしまつた艦船でも敵対行為のために破壊を受け、または敵の圏内に入つたものは、敵があたかも戦利品と同じように没収し得るというのが通説になつております。従いまして平和条約の問題となります前に、国際法上の原則に従いましてアメリカ側が現に圏内に収める、アメリカ側が自由に処分し得る説も成り立つと思うのであります。しかしこの点につきましては米国の従来の好意的態度にもかんがみまして、特別の話合いもなし得る可能性があるのではないかと考えております。  フイリピンにおける沈船につきましては、御指摘のようにまだ平和条約の第四条の問題とすらなり得ないのでありますが、しかし先ほど申し上げました国際法原則に従いまして、その所有権、その処分権は、いずれに帰属するかという点は、先ほどの旧南洋委任統治領における沈船と同じことだろうと思います。
  18. 並木芳雄

    並木委員 ちようど大臣が見えましたから、旧南洋委任統治領における沈船処分の問題についてお尋ねをいたします。この前大臣予算委員会つたと思いますが、先方に話をして、先方も入札をとりやめるようにしてもらいたいということでしたが、あの交渉はどういうふうになつたでしようか。今の条約局長の答弁でもわかります通り、法律的には国際法上の解釈はそうでありましようが、一応平和条約で別途に協定するということがきめられてあるので、私どもは、やはり平和条約が最終的のまた最も権威あるものであるという見地から考えますと、国際法上の原則論はそうであつても、平和条約は一種の特別法のとりきめに当るものと思うのです。従つて今度の場合、日本政府としては大臣がこの間答弁されたように、アメリカ側申入れをする権利もあると思うのです。その点についての交渉経過またただいま申し上げましたような解釈などについて、御所見を伺つておきたいと思います。
  19. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この点につきましては、アメリカに現在確かめましたところは、平和条約規定に違反するようなことはしないということなのであります。しかしそれは解釈の問題で、今条約局長が御説明したように、平和条約の前に日本所有権ではなくなつておるということであれば、平和条約には法律的には入つて来ないわけであります。これは国際法上の通念からどういうふうになるかという問題と、そしてそういうりくつはあるだろうが、日米関係の現状から見て、日本も必要なのだから、特別に考慮してもらいたいという要請と二つあるだろうと思います。いろいろ今その実情やらまた向う側の動機がどこにあるかということも確かめまして——向うで言つているところは、平和条約に違反しないということだけなのです。今後さらに十分手を尽してみたいと思うのであります。
  20. 並木芳雄

    並木委員 入札は一応とりやめたのですか。
  21. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の承知しているところではそのように思つております。たしか入札は取消したと了解しております。     —————————————
  22. 上塚司

    上塚委員長 岡崎外務大臣が見えましたので、ただちに友好通商航海条約審議に入りたいと思いますが、その前に須磨委員より緊急質問の申出がありますので許します。きわめて簡潔にお願いいたします。須磨彌吉郎君。
  23. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 大臣にお伺いいたしたいと思いますが、十八日の本委員会におきまして、木村長官もおいでになり、私がお尋ねをいたしました結果、だんだんMSA交渉が進むに従いましては、保安庁法の第四条の改正も必要となるであろうし、従つて保安隊というものの名称の変更にまで至つて、保安隊の性格がかわるだろうというお話があつたのであります。さらに並木委員の御質問もあつて、それに対しまして外務大臣は、このMSAに関して憲法の改正はいたさないという御言明があつたやに、私は覚えておるのでございますが、さように了解してよろしゆうございますか。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府としては、憲法を改正したり、あるいは実質的に憲法の改正になるような協定を、MSAについてつくるつもりはごうもありません。木村保安庁長官の言明につきましては、私から確認するということはおかしなものでありますが、これは速記録等ではつきりしていると思うのであります。
  25. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 そういたしますと、名称等はいかようでもあれ、とにかくだんだん交渉の結果、自衛隊もしくは直接侵略にも当るような兵力ができて参るわけでございます。しかもそのためには憲法の改正を必要としないということになりますならば、私の属しております改進党は、従来、国力に相応いたします自衛軍は、憲法の改正を要せずして置けることを主張して参つた次第であります。そういたしますと、わが党の主張と政府のこれからだんだんおやりになります、MSAの援助の上にでき上ります実態は、何もかわらない。まつたく同じものである。従つて政府もわが党の方策に御同調なさると私は申したいのですが、いかがでございますか。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 このMSAの交渉につきましては、理論的には、法律等がありますから、当然いろいろ考えられる点がたくさんございます。しかし日本の場合はいろいろ特殊の事情がありますから、協定がどういう形ででき上り、またその協定をつくるにあたりまして、われわれとしてどういう考え方で行くか。これはわれわれの考え方は一応きまつておりますが、その結果が協定にどういうふうに現われて来るかは、具体的には草案ができた上でないとはつきりいたしません。従いまして今後の協定の中で、どういうふうになるかということについては、われわれはまだ申し上げることはできないのでありますが、今おつしやつたように、一方においては憲法の改正を要しないという方針をわれわれもとつておる。今伺えば改進党の方もそういうつもりでおられる。他方においてMSAの援助は受けるのだ、できるだけさしつかえない限りは受けたいのだ。こういう気持を私どもは持つておるのでありますし、政府も持つておりますが、須磨君等のお話によると、須磨君あるいはその他の方々も、やはり受けた方がいいのだという考えを持つているように想像するのであります。そうすると、憲法を改正しないということと、MSAは特別の事情がない限りは受けるのだ、受けたいのだ、こういう点では上と下のわくは一致しておると思います。その中において自衛軍といいますか、あるいは今保安隊といつておりますが、名前はいろいろ言えましようが、それが実質的に同じようなものになるのだ、こういうことをただいま須磨君がお考えになつても、われわれとしてはやむを得ない、こう考えております。
  27. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいまのお話によると、私の趣旨を御了承になつてお認めになつたと了解いたしまして、私の質問を打切ります。
  28. 上塚司

    上塚委員長 帆足委員
  29. 帆足計

    ○帆足委員 去る土曜日に旅券法の問題につきまして、緊急な件がございましたので、外務大臣にお伺いいたしましたところ、旅券法の問題の運営は、政府の鎖国のとばりを侵して鉄のカーテンのかなたに旅行した人間は、政府としてはたいへんすかぬから、再び海外に渡航させたくないと思つているけれども、それを禁止する法規がないならば、法律に従つてこれを認める以外にしかたがないと思うが、法律のこまかなことは自分はよく存ぜぬから、こまかなことはその担当の係の部課長に聞いてもらいたいということでありましたので、本日欧米局長並びに渡航課長の出席を求めておきましたが、渡航課長がお見えのようですからお尋ねいたします。  昨年高良女史が中国に他の同僚とともに渡ろうといたしましたときに、高良女史だけが差別待遇を受けようといたしましたので、私はこれは基本的人権に対する侵害として、国会で質問いたしましたところが、それは公用旅券の問題であるから、公用旅券というと、ある程度まで政府の予算でやる。政府の息のかかつた仕事であるから、一応除外しようと考慮してみたということでありましたが、結局は除外しなかつたのです。私用旅券の場合は、そういう差別待遇をする法規はないから、従つてだれにいたしましても、差別待遇をするようなことはいたさないということを、明確に欧米局長から御答弁がありました。しかるにかかわらず、今般西ヨーロッパで開かれます一国際会議に対して、数名の者が許可されましたのに、同じ資格にある一人のメンバーが、かつて鉄のカーテンのかなたを旅行したというゆえんをもつて、不当に旅券交付を拒否されている。しかも飛行機はもうすでに出発してしまつて、第二次の飛行機を待ちながら、焦慮にたえぬことであるという訴えを聞いておりますが、この問題について渡航課長の御所見を伺いたいと思います。
  30. 松尾隆男

    ○松尾説明員 今の帆足委員の御質問にお答えいたします。昨年高良女史が中共地区残留邦人引揚げのために出かけるときの旅券問題については、当時の議事録等によつて十分御承知のはずと思いますから、私から今くどくどしく申し上げることを避けたいと思います。今お話の当面の問題といたしまして、帆足委員は某氏が西欧におけるある会議代表として行くという、はなはだ漠然たるお話でございますけれども、私の知る限りこういうお話だろうと考えるのであります。本日からウイーンにおいて開かれておりますところの、世界教職員会議に対しまして、一橋大学助教授の南博氏が出席したいという御希望であつた。それに対しまして現在まだ旅券が出ていない。この問題を今帆足委員はお取上げだろうと思いますが、まずそのことでございますかお伺いしたいと思います。
  31. 帆足計

    ○帆足委員 その件について伺いたいと思います。それからついでに、その背後の原則について……。
  32. 松尾隆男

    ○松尾説明員 それでは、今のウイーンにおける世界教職員会議に参加を希望されました、一橋大学助教授の南博氏の問題に限定してお答えを申し上げるのが、私は筋道だろうと思います。御承知のように、南博氏は昨年七月三十日付をもつて、文部大臣から外務大臣に対して公用旅券の発給請求書があつたわけであります。その渡航の目的は、フランスであつたと思いますが、国際心理学界の学者の大会に出席し、あわせて英仏独伊における大学院制度の調査視察のためという目的をもつて、英仏独伊四箇国向けの公用旅券を請求されたわけであります。これに対して外務省は、公用旅券を差上げて出発したわけであります。その後御承知のように、南博氏は旅券法第八条の規定に違反いたしまして、中共、ソ連にお入りになつてお帰りになつたわけであります。そこで外務省といたしましては、身少くとも教育というとうとい職業に携わられる方が、旅券法に違反されまして、中共、ソ連を旅行されてお帰りになつたことに対しましては、外務省といたしましてははなはだ遺憾に存じまして、お帰りになつて、氏が中共、ソ連にお入りになつたということを確認いたしましたに基いて、文部大臣に対しまして、一体これはどうしたことか、一応事情調査の上報告してくれるように通知をしたわけであります。ところがそのとき、私が了解しておるところによりますと、大学の教授という職にあることにつきましては、教育公務員特例法とかなんとかいうものがございまして、文部省としても直接にはアクシヨンがとれない。一橋大学に運営委員会というものがありまして、その運営委員会が同助教授の今度の中共、ソ連地区への旅行についての調査をし、あるいはまたそれに対する処分と申しますか、対策を考究して文部省に回答するということを私は当時承つたのであります。爾来もう半年有余を経過いたしました今日、文部省方面から外務省に対しまして何らのお答えもないところを見れば、私はおそらく一橋大学の方でまだその問題について十分調査を終えておられない、結論をお出しになることができないのじやないかと考えておるのであります。従つて、今回のウイーンの世界教職員大会に、南助教授が出席されたいというお気持でもつて、日教組の方々と御一緒に旅券発給申請のための相談にいらつしやいましたときには、私どもの方の係の者からそのお話を申し上げまして、先生は昨年こういうことでもつて旅券法の違反をされており、調査は未完了である、従つてそれまでは旅券は差上げられないとお伝え申し上げた次第であります。なおまた日教組の政治局長をしております大鹿氏も、渡航課長を訪問されましたときに、今度向うからは十二名の代表に対して招聘状が来ている、その中には南助教授も入つておるけれども、南助教授の昨年の行動にかんがみ、日教組は統制ある行動をとりたいために南助教授に対しては自分たちの方からも、日本代表として一行に加わることを御辞退申し上げている次第であると、こう申されておりました。
  33. 帆足計

    ○帆足委員 それではちよつとお尋ねいたします。旅券法の運用につきまして、身は官僚の身にある者が旅券法の運用を曲げまして、生命に異常があるとか、われわれのごとき善良なる市民に対して、国益を阻害する人物であるなどと不当なことを言うて旅券法を違反して、われわれの旅行を阻害したことは周知の事実でありますが、これに対しては裁判所へ目下損害賠償を要求して上訴しておりますから、いずれその判決を待つことにいたしまして、今日まずお尋ねいたしたいことは、今の南君の場合でなくて、私用旅券の場合において、鉄のカーテンのかなたを旅行した者に対しては、海外に参りますときに二度と旅券を発給しない意思でありますか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  34. 松尾隆男

    ○松尾説明員 私用旅券と申しますが、これは一般旅券と申していただきたいのであります。一般旅券をもつてソ連、中共等にお入りになつた方に対しては、政府は今後もおそらく出さないだろうと私は了解いたしております。
  35. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと帆足君に申し上げますが、すでに政府よりは帆足君の御質問に対して詳細な説明も行われましたので、この際本論に入つて、通商航海条約審議に移りたいと思います。
  36. 帆足計

    ○帆足委員 これは政府が違反している問題ですから、お許しを願います。
  37. 上塚司

    上塚委員長 それではごく簡潔にお願いします。
  38. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの問題はひとつ速記録をお調べ願います。欧米局長から、一般旅券の問題については明文がございまして、旅券法違反によつて刑に処せられた者のみを差別待遇できるということであつて政府と民間との解釈の相違によつてつた事件に対しては差別待遇することはできないという意味のことが答弁されて、それがすでに速記録に書きとどめられておりますから、それをごらん願いたいと思います。  そこで、委員長からも御注意がありましたし、南君の場合は多少特殊の例であるということは了承いたしましたので、時間もありませんからその問題につきましては委員長のおさしずによりまして控えますが、ただ一言、外務大臣もお見えになつておりますから、世間一般の常識からもう一点お尋ねします。ただいまモスクワ並びに北京にそれぞれ二人の新聞記者が入つておりまして、そうしてわれわれが見ることのできないかの地の情報をわれわれに提供しております。これが、生命に異常があるということと国益を阻害をするということの二つの条件をもつて、おそらく政府は旅券を発行していなかつたのではないかと思いますが、かくのごとく、二人の善良なる、そうして良識のある普通の新聞社の新聞記者が二名おられることが、生命に異常があるとお考えですか、国益を阻害するとお考えでありますか。それだけ御答弁を願いまして、あとの問題はまた他日委員長のお許しを得ましてお尋ねいたしたいと思います。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もし生命に何か問題があつたときに、日本政府としては、ソ連では救済の道もないし、また交渉の余地もはなはだ少い。従つて、いくら自分は危険を承知して行くのだから大丈夫だと言われても、これは日本政府として十分に考慮する必要があるわけであります。また国益を阻害するということは、その行つた人がどういう人であるから阻害し、どういう人でなければ阻害しないという意味ではなくして、ただいまの日本の持つております方針、主義その他から申しまして、だれといえども、現在のところ国交の回復していないこれらの共産国家へ行くことは、国益を阻害するものとわれわれは考えております。
  40. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの渡航課長のお話と欧米局長の回答との食い違いにつきましては、速記録を見ました上、ひとつ適当におはからいを願います。     —————————————
  41. 上塚司

    上塚委員長 それでは、日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件を議題にいたします。まず逐条についての説明を聴取することといたします。黄田経済局長
  42. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 日米両国間の通商航海条約は明治四十四年に古いものができまして、それが昭和十五年の一月に、廃棄されますまで、存在いたしておりましたが、その後廃棄されまして失効いたしまして、以来十二年間両国は無条約状態だという関係に立つておりました。その間平和条約ができまして、平和条約が発効いたしましたあとは同条約の十二条によつて律せられておりましたけれども、これではあまり確たる保障がないということで、何とかして両国間に条約を持ちたいというので、約一年間ほど交渉いたしました結果できましたのが、御審議をお願いいたしておりますところの条約でございます。  本条約は前文とそれから本文が二十五条、議定書に掲げられた十五項目というものから成り立つております。  まず前文でございますけれども、前文は、「両国間の平和及び友好関係の強化」、それから「両国の国民の間の緊密な経済的及び文化的関係の促進」、それから「相互に有利な通商関係の助長」、これがメイン・ポイントでございまして、及び「相互に有益な投資の促進の四項目を掲げ、そのため無条件最恵国待遇及び内国民待遇の原則基礎とする」と、そういうことの基礎において本条約締結するということをうたつております。  本文の方に入りますと、本文は二十五箇条からなつているのでございますが、第一条におきましては、入国、居住及び滞在の条件を規定いたしております。その第一項におきまして、いわゆる条約商人及び条約投資家というものの入国及び滞在を保障し、それ以外の者の入国及び滞在は、当事国の関係入国法規の定めるところに従うということを規定いたしております。それから第二項におきましては、入国した後における居住、移転その他の自由権を保障するということを規定いたしております。  それから第二条は、身体の保護及び保障に関する基本的な保障を定めている規定でございますが、第一項において、待遇については国際法の要求する標準によるという原則を明らかにいたしまして、第二項で、身体の拘束を受けた場合にどうするかということを規定いたしております。  それから第三条は古い条約にはございませんでした規定でございますが、社会保障制度に関して内国民待遇を与えるということを規定いたしております。第一項におきまして業務上の災害補償に関する制度について、第二項は強制的な社会保障制度について、この両方を規定いたしております。  それから第四条は出訴権及び商事仲裁に関する規定でございます。第一項において出訴権に関する内国民待遇、最恵国待遇というものを保障しておりますし、第二項におきまして商事仲裁を規定いたしております。それには仲裁判断の執行をどうするかということにまで及びまして規定いたしております。これも古い条約におきましてはなかつた規定でございます。  それから第五条は資本、技能及び技術の交流を促進するための規定でございますけれども相手国の国民または会社が取得した権益を不当に妨げることがないようにというふうなこととともに、相手国が経済的開発のために必要とする資本、技術等を入手することを不当に抑制しないというふうな技能及び技術の交流の促進ということを第五条において規定いたしております。  それから第六条は、財産保護に関する基本的な待遇を規定いたしております。原則として締約国の国民及び会社の財産は、相手締約国の領域内で不断の保護及び保障を受けるということを大原則としてうたつております。なお公用徴収等があつた場合にどうするかということも三項において詳細に規定いたしております。  それから第七条、これは非常に重要なる規定でございますが、営利事業活動に関する待遇の規定でございます。この第七条が日米通商航海条約において規定された重要事項の一つの重要なる条文でございますが、第一項におきまして、営利活動に関する内国民待遇の原則並びに営利活動の遂行に必要な施設の維持、会社の設立、会社に関する財産及び利益の取得、企業の支配経営及び事業活動の遂行一般に関する内国民待遇というものを規定いたしております。本条約の基本精神は前文にもうたわれておりますように、無条件な最恵国待遇ということを原則といたしておりまして、それが随所に現われておるのでございますけれども、第七条の営利活動に関しましても、原則としては内国民待遇ということを規定いたしております。但しその国々によりましてむろん例外を認めなければならぬというふうなこともございますので、その点の調整をどういうふうにするかということが、一番大きな案件であつた次第でございますけれども、そういう観点からいたしまして、但書をつけまして、通貨準備の保護のために必要な制限を行い得る例外規定が議定書の第六項に掲げてございます。これが一つの調整いたしました点の大きなものでございます。それからまた旧株の取得をどうするか、これがもう一つの大きな点でございまして、旧株の取得については、わが国の経済の現状にかんがみまして、暫定的な例外規定がこれまた議定書の第十五項に設けられております。それから第七条の二項は、原則は内国民待遇ということを第一項でうたつておりますけれども、第二項で例外を設けまして、包括的な内国民待遇を与えるけれども、それには例外があるのだということで、制限業種というものをここに掲げており院ます。造船、航空運送、水上運送、銀行業務、土地その他の天然資源の開発を行うような企業というふうなものに関しましては、これは制限業種に指定いたしまして、内国民待遇の例外としております。この制限業種の範囲は、わが国がこの通商航海条約でリザーヴいたしましたところの範囲は、今までアメリカが他国と結びましたところの条約よりも相当広くなつておりまして、これが一つの特色をなしております。またその七条第二項に今申し上げましたような制限業種の範囲を規定いたしておりますけれども、既得権はどうするかということをまた七条二項の後段の方で規定いたしまして、制限実施の際既得のものについてはこれを認めるということをうたつてございます。  それから第八条、これは雇用とか自由職業及び非営利活動に関する規定でございます。原則といたしまして、締約国の一方の国民は、他国の領土内におきまして、そこに行われておる法令の規定を遵守して、同一の条件でそういう職業に従事することができるということを第一項で規定いたしております。  第九条は財産権の取得処分に関する待遇の規定でございます。第一項におきまして不動産に関する権利のうち土地建物等の賃借、占有及び使用につきまして、第八条に規定いたしました自由職業とかあるいは非営利活動の遂行のため並びに居住のために、内国民待遇を保障するということを規定いたしまして、第二項におきまして、すべての種類の動産の取得、所有及び占有に関し、原則として内国民待遇及び最恵国待遇を保障するということを規定いたしております。第三項はつけたりみたいなものでございますけれども、遺産の取得に関して内国民待遇が与えられない場合にどうするかという救済規定を設けております。  第十条は工業所有権に関する内国民待遇及び最悪国待遇の保障の規定でございます。  第十一条が内国課税についての基本的待遇に関する規定でございます。課税上の内国民待遇ということを規定いたしております。  それから第十二条は、これも相当重要な規定でございまして、為替管理に関する規定であります。御承知のように大体為替管理というものは、原則としてやりたくないというのが理想主義的な考え方でございますけれども、しかし現実は各国ともそういう理想とははるかに遠い状況でございますので、為替管理をやり得るということを規定いたしておるのであります。但しその場合にはどういう場合にやり得るかということを規定いたし、かつやる場合にはこういうことをまずやつて、しかる後にやろうというふうなことを規定いたしております。これはアメリカの方はただいまのところ為替管理も何もやつておりませんので、現状におきましては日本のみが適用を受ける条文かと存ずるのであります。しかしそれにいたしましも、為替管理はやり得る、但しその場合にはこういうことを考慮に入れ、措置した上でやろうということを規定いたしておりますのが第十二条でございます。  第十三条は商業旅行者に対する最恵国待遇の保障規定でございます。  それから第十四条は関税事項及び輸出入の禁止制限に関する規定でございます。第一項におきまして関税事項に関する最恵国待遇ということをきめまして、それから第二項で輸出入禁止制限についてその無差別的な適用を保障する。第三項で輸出入制限の具体的適用形態である量的制限を行う場合、どういうふうにするかということを規定いたしております。これも後段の方は今までの条約にはなかつた新しいものでございまして、たとえば、一国が他国から一定の品目を非常にたくさん買つていたのに、それを何らの正当ずける理由な上に、来年は三分の一にするというふうなことをお互いにやらないようにしようということでありまして、つまり両締約国間におきまして通商が自由になるべく円滑に行くようにということを規定いたしておるのであります。なお第十四条と第二十一条とをあわせ考えてみますときに、わが国はただいまガットの加入国ではないのでございましてガットには入つておりませんけれども、この第十四条と第二十一条との関係におきまして、日本が自分の意思に基かずしてガットに加入し得ないという間は、アメリカ日本にガツトの関税を与えるということを約束いたしております。  それから第十五条は税関の行政に関する規定であります。  第十六条は、輸入貨物の取扱いに関する規定でありまして、輸入品の国内における取扱いに関して、内国民待遇及び最恵国待遇を保障するということを規定しております。但しここに、これもまたわが国の特殊事情にかんがみまして、例外規定を二つ規定いたしております。それは議定書の第八項に書いてございますけれども、入手困難な工業原料あるいは食糧というふうなものに関しましては、当分の間日本は——日本はと申しますと、つまり締約国の一方は、輸入品と異なるところの取扱いをなし得るということを規定いたしております。これは食糧あるいはその他の工業原料におきまして、日本はそういうことをやらざるを得ない、現に今でもやつておるということの理由に基く例外規定でございます。  それから第十七条は、国家貿易あるいは国家商業に関する規定でございますけれども、これは商売というものは商業的考慮に上つてのみ行われるべきものであるという原則——これは平和条約にもそういうことがたしか書いてございますので、そういう原則を第十七条にうたつておるわけでございます。  第十八条では、競争を制限するような商慣行は貿易の自由なる発展を阻害することがあり得るという、いわゆる独占禁止法的な考え方でございますけれども、そういうことがあつた場合には、両国相寄つてとらるべき手段に関して、協議しようではないかということが第十八条に書いてございます。  第十九条は、船舶、海運及び航海に関する基本的な待遇保障の規定でございます。船の開港場への入港、あるいは港内においてどういう待遇を受けるかということが規定してあるわけでございます。  それから第二十条は、人及び物について相手国の領域通過の自由に関する保障の規定でございます。  第二十一条は、今まではずつと原則を言つて来ましたけれども、それに対してどういうことを例外となし得るかということを規定している条文でございます。さきにも申しましたガットに日本が自分の意思に基かずして入れないのだというような場合には、向うは、日本にガットと同じ税率をくれるというふうなことを規定しておりますのもこの第二十一条でございます。それからまた自由に入つて何でもできるというけれども、政治的活動は留保するとか、あるいは一般的の原則に例外となるようなある種の地域的の協定というふうなものはその例外にするということが、第二十一条の例外規定の中に書いてございます。  それから第二十二条は、定義でございます。内国民待遇については第一項、最恵国待遇については第二項というように、この条約の中に使われております言葉につきまして定義を下しておる条文でございます。  第二十三条は、適用地域に関する規定でありまして、たとえば日本の方は沖縄その他の諸島に関連して、どういうふうなことをやるかというような適用地域、これは適用するけれども、これはちよつと困る、これは例外であるというふうなことが規定してあります。  それから第二十四条は、協議条項でございまして、この条約の実施に関する事項についての締約国間の協議及びこの条約解釈または適用に関する紛争の解決についてはどうするかいうことを規定しております。  第二十五条は、この条約の効力に関する規定であります。  以上が二十五条の全文の規定内容であります。  それから議定書がございますが、これは条約とひとしく、前文、本文及び末文からなり、十五項目からなる本文については、それぞれ条約関係条項とともに、ただいま御説明申し上げましたようなことを議定書に規定しております。
  43. 上塚司

    上塚委員長 これにて逐条説明は終了いたしました。  これより本件に関する総括質疑を行うごとといたします。質問は、時間の都合上、一人の持時間を一時間といたしたく、その範囲において質疑を進められんことをお願いいたします。
  44. 戸叶里子

    戸叶委員 ちよつと議事進行について。この条約日本にとつて非常に重要な条約だと思いますので、十分な審議を必要とすると思います。そこで私どもといたしましても、いろいろと参考書類をそろえて出していただき審議いたしたいと思いますので、まず第一に私は次のような参考書類をお集めいただきたいと思います。  それは米国とイタリアとの間の通商航海条約、それから日米通商航海条約の古いもの、それから日英間。もの、米英間のもの、米国とコロンビアとの間のもの、米国と中国との間のもの、それらの通商航海条約をそろえていただきたいと思います。それから日本におけるところの一般外国人の国内法上の地位に関するもの、それから日本人の米国入国移氏の制限、これはいわゆるマツカラン法といわれておるものでございます。それから「自由職業に関する外国人に対する米国の国内法、外国資本に対する制限、外国金融活動に対する制限、それから学制に関する資料、それから不動産取得に関する外国人に対する制限の資料、それから鉱業権に関する米国の国内法、保険業に関する米国の国内法」、以上十五の資料を、なるべく早くお整え願いたいということを要求いたします。
  45. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ただいま戸叶委員から御要求のございましたものは、極力とりそろえるように努力いたしますけれども、ただいまおあげになりましたものの中には、あるいは日本だけでは整えられませんで、ほかから取寄せなければならないものもあるかと思つております。そうなりますと非常に時間もかかりますし、あるいは部数も相当整えるということになりますと、なおさらそうかと存じますが、それを待つておりまして本条約の御審議を願うということになりますと非常に遅れることを憂慮いたしますので、極力これをとりそろえるように努力いたしますけれども、その間におきましてもどうぞ御審議を賜わるようにお願いいたします。
  46. 戸叶里子

    戸叶委員 とりそろえるのに骨が折れるというのは、おそらく米国の国内法関係だと存じますが、その国内法はいずれもこの通商航海条約とは関連のあるものでございますから、もちろん私ども審議を始めますけれども、そういう必要な書類をもなるべく早くそろえていただきまして、そして十分な審議をさせていただくことを希望いたします。
  47. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ぜひひとつこれは政府にお願いしたいのでありまして、むしろ政府の方から積極的にこういう関係資料を委員に配付して、そうして十分研究させるという誠意があつてしかるべきだと思う。委員の要求をまつてとりそろえる、しかもそれは時間がかるから審議の方を急いでくれというのは、どうも政府としては妥当な態度ではないと思うのですが、私の方からも政府にお願いいたしておきます。もう一つ今の提出を要求された資料のうちに加えて、数日前批准されましたアメリカと西ドイツの間の通商航海条約の条文を用意していただきたい。
  48. 上塚司

    上塚委員長 それでは総括質問に移ります。並木芳雄君。
  49. 並木芳雄

    並木委員 重要な点だけを数点大臣に総括質問をいたしたいと思います。  第一はこの大事な通商航海条約をなぜ選挙中に調印をしてしまつたかということであります。     〔委員長退席。福田(篤)委員 長代理着席〕 選挙の結果によつては違う内閣ができたかもしれません。またはそのできる可能性も事実あつたわけです。従つてもうしばらくのところですから私は政府としては待つことができたと思う。それを待つことができずに調印をしたのは、あるいは先方から強い圧力でも加えられたのではないかと思うのですが、この条約全般を見るとアメリカ側には有利であつて日本には必ずしも有利でないという点もありますから、私は特にこの点をお伺いしておきたいと思うのです。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この条約は私も二回外交演説で申したと思いますが、ずつと前からの話合いでありまして、たしかもう一年以上も話合いを継続しております。非常に長くかかつたのは、日本側の主張もかなり強く申し入れたために、われわれ意見が合わなかつたのでありますが、それが今年の二月の終りごろですかに大体話合いがまとまつたわけであります。それから条文の整理をしまして、それで調印という運びに行こうと思つておりました。そのことはすでに今年の一月の外交演説でも、調印してこの前の国会に提出するつもりであるということを申したと記憶しております。そういう方向でずつとまあ来ておつたところが、突然解散がありましたために予定が狂つたのでありますが、しかしずつと今まで話をして来たものを、調印するという方針で来ていたものでありますから、われわれとしてはもしその方針を違えれば、かえつて新しい政策ということになるのでありまして、今までの政策のままずつと進むというのは解散後の内閣のなすべきことであろうと思いまして、また事実上調印することは何ら国会を拘束することでもありませんので、政府としての与えられたる職務の範囲内におい調印をやつたような次第であります。
  51. 並木芳雄

    並木委員 私は違法ではないけれども妥当ではないと考えるのですけれども大臣はそういう考えはお持ちになりませんか。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はずつと従来もそういう方針で来ておりましたから、これは少し言い方が変になるかもしれませんが、その方針をかえるということは新しい政策であつて、むしろその方が妥当ではないのではないか、このくらいに思つていたわけであります。
  53. 並木芳雄

    並木委員 アメリカとの条約はでき上りましたが、ほかの国々との同様な条約交渉の進行はどういうふうなぐあいになつておりますか。英国との間郡何か円滑に行つておらないような話も聞いております。
  54. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ただいまカナダ、スペイン、イタリア等と交渉をいたしております。イギリスとの間には通商航海条約を結びたいということをもう一年も前に申し出たのでありますけれども、イギリスの方でもう少し待ちたいということでまだ始まつておりません。
  55. 並木芳雄

    並木委員 その待ちたいという理由はどういうことですか。
  56. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 理由を明らかにして参つておりませんので、どういうことか向うの言つていることわはかりませんけれども、おそらくまだ当時日本のガットに加入する問題が向うの方においては時期尚早であるということで、その方の問題の関連においても、考慮すべき点があるということであろうというように推測いたします。
  57. 並木芳雄

    並木委員 ガツトに入つておらないために、今度の日米友好通商航海条約で不利不便を感ずる点はありませんか。
  58. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、この条約では第十四条と第二十一条とによりまして、日本が自己の意思に基かずしてガットの加入国でない場合には、アメリカ日本にガットの税率を許すということに規定いたしているのであります。従つてこの条約に関する限りにおきましては、日本はガットに加入したと同様の利益を享受できるということになつているのであります。
  59. 並木芳雄

    並木委員 アメリカではそういう扱いを受けているにかかわらず、英国ではこのガット自体に加盟させるのを好まないという傾向があるのは、特にどうい点を懸念しているのか、わかつたら答弁していただきたい。
  60. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 イギリスも事実上日本にガットの税率をただいま許しているのであります。但しその事実上の待遇を法律的の権利として日本の方に認めることに関しては、もうちよつと待ちたい、こういう事情らしいのでありまして、事実上はイギリスの方もガツトの税率を日本に適用しております。
  61. 並木芳雄

    並木委員 駐留米軍その他の国連軍の関係でありますれども、やはりこれもなかなか無視できない経済活動をしているわけです。それで今後行政協定を改訂する場合に、これら駐留米軍、国連軍に対しても、今度の友好通商航海条約に準じて行うように持つて行けないかどうか。今までの行政協定ですと別天地のような状態を示しておりますから、政府としても金の動き、物の動きなどについて、的確な管理といつたものができないと思うのです。その点どういうふうにお考えになつておりますか。
  62. 下田武三

    下田政府委員 駐留米軍の地位につきましては、行政協定で入国、居住また日本におります間の課税でございますとか、いろいろな点につきまして特別な規定をなしております。従いまして日本におります一般米人は、この条約が発効いたしますと、当然この通商航海条約の適用を受けるわけでありますが、駐留米軍につきましては日米行政協定によつて律せられることが依然続くわけであります。しかしこれは何も特別なことではありませんで、どこの国でも軍隊が外国に入ります場合には、まずは国際法上に基く特権的な地位が認められます。ことに日本でございますとか、NATO諸国のようにまとめてたくさんの外国の軍隊を入れている場合には、通商条約の一般規定では律し得ませんので、それぞれ特別の協定を結んでこれを律することにするというのがむしろ普通のことでございます。
  63. 並木芳雄

    並木委員 今度の条約を見ますと、対等であるとか相互であるというような文字が出ております。ことに相互に有益な投資を促進するというような文字も出ております。しかし資力の違うアメリカ日本との間で、文字の上で相互に有益な投資を促進するということが書けても、はたして実際それが行い得るかどうか。この点は多分に疑問があると思うのであります。両国にとつて相互に有益な投資を促進するといいますけれども、しからば日本としてはいかなる有益な投資が促進されると考えておられるか、政府の所見をお伺いしたいと思います。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはお話のように、現状においてはそういうことも言われようかと思います。もつともアメリカの方が投資としては安全だとか安定性があるとか、いろいろな意味において投資したい人があるかもしれませんが、しかしこの日米通商航海条約は、何も二、三年とか一、二年とかいうものじやありません。長く続くものとわれわれは考えておりますので、時至らば、われわれの方でも大いにアメリカに投資して、利益を上げるような状況になる場合もあると考えますので、これはどうしてもただいまの現状のみをもつて律するわけには行かないと思います。
  65. 並木芳雄

    並木委員 時至らば、という大臣の意気は壮でありますが、時至らばどういうことをするかということを私は聞いておるのでありますから、その時至らば日本からも有益な投資をやりたいという計画はどうなつておりますか。抽象的でなく……。
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ時が至つておりませんから、残念ながらそういう計画はありません。
  67. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 長代理 並木君、時間の都合上簡単に願います。
  68. 並木芳雄

    並木委員 時間を制限されてしまうと、質問がずれてしまつて困ります。  為替管理のみならず、日本におけるアメリカの円による活動というものも制限すべきではなかつたかと思うのですが、政府にはそういう意図があるのではないかと思う。もし、日本国内における円に換算されたその円の管理をやらないと、資力の強い先方としては、日本の経済をこれで把握してしまうのではないか、また会社や銀行などについても、例の五分の一の支配力を握つてしまうのではないかということも憂えられるのでありますけれども、この点についてはいかがですか。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはどういうことを意味しておられるか、条約の一番しまいの四十六ページ目に「日本国は、この条約の効力発生の日から三年を経過するまでの間は、外国人が円貨をもつて日本国の企業の発行済の株式(社員の持分を含む。)を取得すること」は制限する、こうありますが、これとは意味が違うのです。
  70. 並木芳雄

    並木委員 その点は旧株に対するものだとわれわれは了解しておつたのですが、今大臣説明されたのがすべての経済活動に適用されるのですか。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは株でありまして、つまり旧株を持つていなければ、これから新しく発行する株の割当がないはずだと思うのです。
  72. 並木芳雄

    並木委員 しかし一般の証券市場において投資をすることができるのじやないですか。
  73. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはもぐるというつもりなら、たとえばほかの人間の名義を持つて来て、日本人の名義にしてやるというようなことがあり得ると思いますけれども、これは私の考えでは、とめるのはなかなかむずかしいと思います。要するに外国人がその名前において、たとえば会社の経営権を、日本の今持つておる保有円貨で不当に安くとられてしまいはしないかというのが、早い話心配の種だと思います。そこで外国人が発行済みの株を取得することを制限すれば、少くとも三年間は防げる。こう私は思います。
  74. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 代理 田中稔男君。
  75. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 時間の制約がありますから、簡単に重要な点だけお尋ねいたします。  四月二日、選挙管理内閣のとき、岡崎外務大臣が本条約に調印された重大な政治的責任については、並木委員同様私ども追究したいと思います。  次に、この条約のモデルになつたものは、アメリカとコロンビアとの間に結ばれた通商航海条約だと聞いておりますが、コロンビアという国は御承知の通りコーヒーが主産物であります。石油なんか出ますが、その石油資本におきましても、アメリカの資本が七〇%以上支配しておるという国であります。輸出入におきましても、その八〇%はアメリカに依存しており、国民の五〇%は文盲である。こういうアメリカの植民地でありますが、こういう国との間に結ばれた通商航海条約をモデルにしたというのは、一体どういう理由でありましようか、お尋ねいたします。
  76. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 コロンビアとアメリカとの間の条約を基本にしたとおつしやいますけれども、コロンビアとアメリカとの条約をモデルにしたのではないので、戦後アメリカが結びましたイタリアとかあるいはコロンビア——コロンビアもその一つでありますけれども、いろいろな条約を参考にいたしまして、つくつたわけでございます。たとえばコロンビアとアメリカとの条約と比較いたしますと、本条約は非常に差異がございます。それはたとえば先ほど申し上げましたような制限業種とか、その範囲とか、あるいは議定書十五にありますところの旧株の取得の制限とかいうようなことは、非常に大きな差異でございまして、必ずしもコロンビアとアメリカとの条約をモデルにしてつくつたわけではございません。
  77. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 本条約は、投資の保護とか、事業活動の自由とか、動産不動産の取得等におきまして、日米両国が相互に最恵国待遇や内国民待遇を与えるということにもなつております。しかしながら両国の政治的、経済的な実力が非常に大きな開きを持つております際に、実際においては、日本経済がアメリカ経済に隷属するというような結果になりはしないか。私どもはそういうことを本条約について憂うるものでありますが、これについての御所見を伺いたい。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいわば基本的人権というものが、国と国との間にも同じように、国の基本的権利というものは、国際的にもあるいは国連憲章においても認められておるのでありまして、日本といえども、経済的、政治的その他の実力が異なるからといつて、それでもつてこういう条約を変な片寄つたものにすることは適当でないと思います。しかしながら実際上は、一時的には御心配のような点もありますから、たとえば先ほど申したように、本来からいえば株式の取得などは自由であるべきはずのものを、日本の経済の実情にかんがみて、三年間は外国人が円貨でこれを取得することはできないというような特別の規定を設けておるのであります。
  79. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 その点について私外務大臣と所見を異にしますが、私どもの考えではこれはどうも日本にとつては非常に危険な条約であると思つております。国際的な政治経済情勢が非常に変転はなはだしい今日、劣勢な日本経済を優勢なアメリカ経済に隷属させるようなこういう条約を、十年間の長期にわたつて効力を発生するとりきめをしたことについて、その期間の点について妥当であるとお考えになりましようか、御所見を伺いたい。
  80. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは私から田中君に逆にお伺いしたいのですが、そういう場合にはそれじや通商航海条約などというものはつくらない方がいいというお考えであるか、あるいはつくるならどういう形の通商航海条約をつくればいいのかという御意見がないと、ただこれはけしからぬとおつしやつても私は理解に苦しむのであります。また通商航海条約をつくりますれば一年や二年でかわるという予想では、双方で投資をするのがむずかしいし、またいろいろな経済提携をやろうとしても困難でありまして、まず十年くらいということが私は適当であろうと考えております。
  81. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 外務大臣の御質問ですが、私どもとしましては、これは十年というような長い期間でなく、もう少し短期に切るべきであり、また内容につきましても日本の事業をむしろ保護するという規定をもつと私は織り込まなければならぬと思うのであります。  次に私がお尋ねいたしたい点は、本条約とMSA法との関係であります。本条約の第十八条には競争制限的商慣行の排除ということが規定されております。これはもつとものようでありますけれども日本の事業というものは非常に弱体でありますから、その場合に無制限に自由な競争をここでやるということになりますと、どうしてもアメリカの資本に日本の資本が圧倒されるということになるのであります。MSA法の第五百十六条に自由企業の奨励という項目があることは御承知の通りでありますが、この項目アメリカ資本の自由な海外活動を妨げる法律が被援助国にあつた場合にはそれを廃止する、また被援助国にカルテルその他の独占的な商慣行が行われている場合にもこれを廃止する、こういうことになりまして、アメリカの資本が自由に国外に向つてその活動を拡張する、こういうふうなねらいであります。これはやはり本条約の第十八条の精神となつて現われておるのであります。先年日本の電気事業が九つに分断されたのでございますが、その場合も結局これは外資導入のための準備だといわれた。つまりこういう公益事業というものが一本にまとまり、さらにそれが国有国営というような形態をとつて参りますことは、アメリカ資本としては非常にこれはおもしろくない、こういうことを考えまして、そうしてこれをアメリカ資本が支配しやすいようにあらかじめ分断をした、こういうふうな非難が当時電産労働組合その他からありましたが、私は今日に至つてそれがほんとうであつたということに思い当るのであります。しかも御承知の通り、この電力会社につきましては東北電力の会長白洲次郎氏にしても、九州電力会社の会長の麻生太賀吉君にしても、これはやはり吉田首相につながつた、いわば吉田一家でありまして、結局こうして外資が入つて来るようにちやんとおぜん立てをしておいて、その外資導入の利益に均霑するというねらいがそこにあるのじやないか、こういうことをいろいろ考えますことは少しく本論からそれますけれども、私はこういうふうなことまでだんだん考えて参りますと、この条文というものは非常に重要な意味を持つ、こう思うのであります。私はそういう点につきまして政府の所見をお伺いしたいと思います。
  82. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも今の田中君の御質問は論旨がいろいろの方一向いてしまつて、私はどこに要点があるのかわからないのですが、われわれは外資導入ということを政策の根本に置いておるのであります。この点は間違いないようにひとつ御了解願いたい。従つて外資が入つて来るのにじやまにならないような方策をとりたい。現に予算委員会等の御質問では、政府は外資を導入するといいながら一向入つて来ないじやないかという非難の意見もある。今度むやみに外資が入つて来るのはいかぬじやないかという両方の反対意見では、これはどうしていいかわからない。私は外資をできるだけ導入するという方針のもとに、ただ現状の比較的弱体な日本の経済に対して、特別に何か保護をしなければいけない点だけはいたしますが、できるだけアメリカの資本もこちらへ入つて来るように、こういうつもりで考えておるのでありますから、もし田中君のお考えがそれに根本的に反対で、アメリカの資本が自由に入つて来ちや困るのだという御意見ならば、実は私とはこの通商条約をつくる根本観念が少し違うのであります。
  83. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 長代理 田中君に申し上げますが、時間が超過しましたから……。
  84. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私はこの次にいたします。
  85. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 長代理 戸叶里子君。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 私本論へ入ります前に岡崎外務大臣に、簡単なことですから一点だけ伺いたいと思います。それは、MSAの援助をお受けになるにあたりまして、この前の本会議におきましても大臣は、交渉過程においてさしつかえない程度で国会に報告をする、こういうようなことをおつしやつていられました。国会ももうじき休会になろうといたしておりますが、もしも休会中にMSA援助を交渉されておりまして、その交渉過程を国会に報告しようとされるときには、その都度国会を特別に召集されて報告されるか、あるいはそれをそのままにしておき、しかもMSAの援助を大体受けるということに政府がおきめになつて、そのきめられたのが休会中であるならば、そのまま国会に諮らずにきめてしまわれるかどうか、その点の態度をちよつと承つておきたいと思います
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国会に報告するということは、むろん国会にも報告する目的でありますが、また国会を通じて国民にも報告するつもりでございます。国会が閉会中でありますれば、新聞等を通じてできるだけ国民にも周知させるつもりでございます。なお国会に諮らずしてこれを受けるときめるとかきめないとかおつしやいましたが、国会に諮らなければ受けることはきめられないのであります。つまり国会の承認がなければ私はきまらないと思います。ただその基礎になる双方の話合いがどこまではつきりしたかということは、それはきめることになります。要するに国会の承認を得るのには、まだここのところは何もきまらないのだけれども、これで承認をしていただきますというわけには行かない、こういうふうになるからこれでよろしいかどうかという承認を受けるわけでありますから、そこまでの準備はいずれにしてもいたさなければならない、こう考えております。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは休会中でも新聞を通してあるいは国会を臨時に召集してでも、その交渉過程を報告なされますか。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国会を召集するかどうかということは、これは政府全体の考え方でありますし、またたとえば私の所属しておる党としての考え方もありましようし、また野党側の考え方もあります。私は国会を召集するとかしないとかいうことをここで申し上げるわけには行かないので、ただできるだけ国民に周知させる、国会があれば幸いだから国会を通じて国民に知らせる、なければその他の手段で国民に知らせる、こういうことだけを申し上げておきます。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 新聞を通してだけの報告ですと、どうしてもそれに対してのいろいろな討論ができませんので私は今のようなことを申し上げたわけでございますが、岡崎外務大臣もなるべく国民に知らせ、国会に諮るというふうに考えていられると了承いたしましたので、私は通商航海条約の方の質疑に入りたいと思います。  この通商航海条約は、日本が独立して初めての通商航海条約ですから、非常に重大であることは申すまでもございません。そこでこの締結にあたりましては、ずいぶんと長いこと日数を要されたようでございますが、そのプロセスはどういうふうな過程を経て条約締結をされたかを承りたいと思います。
  91. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 古い条約がなくなりましたことは先ほど申し上げた通りでございますが、それに関連いたしまして、新しい時代に新しい条約をつくろう、お互いに平等互恵の立場に立つ包括的な待遇保障を含む新条約をつくるうということをお互いに話し合いまして、たしか一昨年の暮れぐらいから非公式に話合いを始めました。それが一年以上かかつたわけでございまして、一年以上お互いの論点、特殊事情というふうなことをとつくりと話し合いまして、その結果先ほど大臣からもお話がございましたように、今年の二月下旬に至つてやつと基本的の了解が成立したという状態にあります。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 そのように長くかかつた条約であり、そしてまた占領中からその交渉を始められていた条約でございますので、私はここに二つ了解できないことがございます。その一点は、なぜ占領中から審議が始められたかということと、先ほども並木委員から御質疑がございましたが、選挙管理内閣でどうしてそれだけ長くかかつた条約締結しなければならなかつたか、アメリカの方の政治情勢を顧みましたときに、ちようどアイク新政権が確立される前後だつたと思いますが、何かそういうふうなことと特別な関係がなかつたかどうか、その点を承りたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはもうすでに平和条約が調印できまして、いよいよ独立するという状況は予見されておるのであります。従つてわれわれは独立後に備えまして、一日も早く通商航海条約をつくる必要がある、こう考えて予備的な交渉をいたしたわけであります。これは占領中といえども、この点においては全然占領という事態から離れて、お互いにその点は十分了解しまして、独立後の対等な立場でやるのだということで予備会談を始めたわけであります。それからこれはアイゼンハウアーの新しい政府ができたとかできないとかいうこととは何ら関係はありません。これは新しい政府とすれば、ある程度の政策もありましようけれども、通商航海条約というのは著しく事務的なものも多いのでありますから、また各国との間の例もありますので、それは二、三決定しなければならぬ問題は政府としてありましようけれども、予備的交渉を始める段階としては、これはどの政権であろうともさしつかえないと思つております。また解散後に調印したということは、先ほど並木君に申し上げた通りであつて、私はむしろ今までの政策をかえるということがおかしいのであつて、今までの政策通り行うというのが解散後の政府のやるべきことである、こう考えております。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 次にこの通商航海条約が基準となつてほかの国との通商航海条約が結ばれると思うのでありますが、先ほどもほかの委員から言及されましたように、アメリカのような日本と比へて非常に経済的な条件も違つているところと始めないで、むしろ最初アジア諸国との締結をはかるべきではなかつたかと思いますが、その点はどうかということと、これと同じような形の条約が一体結ばれるお見込みがあるかどうかを承りたいと思います。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれはやはりアメリカとの間に一番大きな経済的の関係を持つておりますので、早くこの点をはつきりさせる必要があると思つたのであります。もちろんアジア諸国をないがしろにする意味じやないのでありますが、アジア諸国のうちには、まだ重要な国で実は平和条約もできていない国もありますので、この点を考慮したわけであります。それからほかの国との条約はまだやつておりませんから、この通りできるとかできないとかいうことはちよつと申しかねますが、政府としてはこういうかつこうでほかの国とも条約を結びたいと思つて今後努力をいたします。おそらく実際上はこれも非常に珍しい型の条約ではありませんからして、こういう形でほかの国とも条約ができるだろうと思つておりますが、その程度に考えます。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 日本アメリカとの通商航海条約が基準となりまして、今度日本アジアのどこかの国との通商航海条約が結ばれますときに、アメリカ日本よりも経済的に恵まれておりますから、日本の方がどうしても不利だと思いますけれども、そうした場合に日本アメリカと同じような立場に立つてアジア諸国との通商航海条約が結べるかどうかということは非常に疑問だと思いますが、そういう点はどうお考えになりますか。
  97. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはりくつだけではなはだ恐縮ですが、りくつだけ申しますと、経済的にまつたく同格だという国はないわけであつて、どちらかの国が少しでも経済的に有利であるとか、もつと安定しているとか、していないとかいうわけであります。そのときに常にお前の国は少し弱いからこういうふうにかえるとか、自分の国は少し強いからこういうふうにかえるとかいつても、また二、三年たつて地位が逆転しない場合もないとも限らない。経済的の地位というものは非常に変転が多いのでありますから、そういうことは特に私どもは考えずに、国と国との間の普通正常に実施すべき通商航海の諸種の規定を設けてお互いに通商を便宜にする、こういう意味でこれもつくつたのでありますが、そういう意味でほかの国ともつくるつもりでありますから、私は国の実勢力が現在どつちかが強いとか弱いとかいうことには、それほど重きを置く必要はないのじやないかと思つております。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 その点では私どもと考えることが違うのです。たとえばこの条約のうちの投資条項、特に議定書の十五項には、三年後には日本日本にある旧株の取得に対しても、何ら制限を加えられなくなるような規定がしてあります。このことは私は相当日本の国内経済に悪影響を与えるものではないかと思いますがこの点はどうであるかということと、時間がありませんのでもう一点伺いたいのですが、インドやフィリピンアメリカとの通商航海条約に対して、長いこと締結されずに懸案になつているということを聞いておりますが、それもこの投資条項が問題になつているからだというふうに了承しております。そうするとなぜ日本だけがそういう点を認められてそうした条約締結されたのか、その点をお伺いいたします。
  99. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはわれわれもしろうとでありますから、その的確なことは言えませんけれども、この問題については日本の経済界、財界あるいは金融界の人々の意見も、率直なるところを聞いてみたのであります。結局先ほどもお話のように、外資というものは株式の取得ばかりじやない、ほかの形でもむろん入つて来ますけれども、株式の取得による外資の導入ということも、非常に大きな部分を占めておるわけであります。こういう点で外資の導入がやさしいようにするという必要は、われわれも経済界の方でも一様に認めておるところであります。他方、要するに自己資本が少い企業に対して、その資本の過半数をとるがゆえに、その企業を支配できる。ところがそれには借入金等が非常に多くて、非常に君大な仕事をしておるのを、資本金が小さいがゆえに、過半数をとつてその企業の支配ができるという点が困るという問題であります。逆に言えば、早く資本再評価等をやりまして、ちやんと自己資本でできるようになれば、何も外資が入つて来ることを妨げる理由も少いわけであります。そこで一般の意見としては、三年間を限るということによつて、一方においてはアメリカ人の持つている円貨の使用を制限するか、同時に他方においては、資本再評価という国内で必要な要請を促進する意味にもなるのであるからして、あまりいつまでもほつておくよりは、むしろ三月くらいの期限で、資本再評価を促進した方がよろしい。これによつて外資の導入を容易にする方がよろしいということは、大多数というか、圧倒的な意見であります。われわれもそう思いましたので、こういうふうにしたのでありまして、私はこれが批准されますれば、もちろん国内にもこの点は、十分啓発宣伝するつもりでありますが、私どもの見るところは、三年間という期間を置けば、それほど心配のことはない——多少あるかもしれぬが、それは外資の導入という利益に比べればそう恐れることはない、こういう判断によつたわけであります。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 今インドやフイリピンで、この問題が懸案になつて、投資条項が問題になつていて、アメリカとの通商条約が結ばれないということを聞いておりますが、そういうことがないかどうか。その点おわかりならば詳しく承りたい。
  101. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 私からお答え申し上げますが、インドとフィリピンは長い間アメリカと通商航海条約締結交渉いたしておりますけれども、まだ締結に至つておりません。これは仰せのように投資条項が問題になつておるのであろうと私どもは考えます。投資をする方から申しますれば、その市場が安定していることを望むということは当然であります。それから投資を受ける方の国といたしましては、そのために経済的な支配を受けるというふうなことは好ましくないということも当然でございまして、そのために長い間かかつているように了承いたしております。同様なことはわが国に関しても言えることは、申すまでもないのでございます。従いましてその点が本条約交渉いたしますときにも交渉の重点になりまして、先ほど来御説明申し上げておりますように、そのことゆえに、七条に制限業種を非常に多くするとか、あるいは旧株の取得をどうするとか、あるいは外資が入つて参ります場合に、日本の方といたしましては、それをスクリーンすることができるというふうに、各所に留保条項を置きまして、ただいま申し上げました投資する方とされる方との間のアジヤストメントをつくつたということになつておるのであります。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ。三年というのはどちら側できめたのですか。
  103. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 三年というのは、もちろん日本側から申し込んだのであります。
  104. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 長代理 この際お諮りいたします。本件は重要な案件でございますので、学界、その他関係団体よりその代表者を参考人として招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 長代理 御異議がなければ、さように決定いたします。  なお参考人の選定及び意見を聴取する日時等につきましては、理事会に御  一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 長代理 御異議がなければさようにとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時五分散会