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1953-07-17 第16回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十七日(金曜日)     午後二時十分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 熊谷 憲一君 理事 福田 篤泰君    理事 並木 芳雄君 理事 田中 稔男君    理事 戸叶 里子君    麻生太賀吉君       野田 卯一君    岡田 勢一君       喜多壯一郎君    須磨彌吉郎君       島上善五郎君    穗積 七郎君       岡  良一君    大橋 忠一君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務省参事官         (大臣官房審議         室付)     大野 勝巳君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         労働事務官         (労働基凖局         長)      龜井  光君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁労務部         渉外労務監督         官)      木下 芳美君         外務事務官         (アジア局第三         課長)     卜部 敏男君         外務事務官   關 守三郎君         外務事務官         (情報文化局         長)      林   馨君         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   橘 善四郎君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月十六日  委員篠田弘作君、山崎始男君及び堤ツルヨ君辞  任につき、その補欠として野田卯一君、武藤運  十郎君及び加藤勘十君が議長の指名で委員に選  任された。     ――――――――――――― 七月十六日  世界気象機関条約への加入について承認を求め  るの件(条約第一七号) 同月十五日  内灘射撃場永久接収反対に関する請願島上  善五郎紹介)(第三九五八号)  妙義、浅間両地区駐留軍演習地等設置反対の  請願川上貫一紹介)(第三九五九号)  同(川上貫一君外一名紹介)(第四〇七四号)  同(中澤茂一紹介)(第四〇七五号)  妙義地区駐留軍演習地設置反対請願武藤  運十郎紹介)(第三九六〇号)  同外十六件(武藤運十郎紹介)(第四〇〇一  号)  同外十二件(小峯柳多君紹介)(第四〇七六  号)  日米通商航海条約反対請願帆足計君外二名  紹介)(第三九六二号) 同月十六日  未帰還者帰還促進等に関する請願有田八郎  君紹介)(第四二三八号)  海外抑留胞引揚促進に関する請願小川平二  君紹介)(第四三一五号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第四三一六号)  妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外四件  (小峯柳多君紹介)(第四三一七号) の審査を本委員会に付託された。 七月十五日  北海道門別町並びに大島村離島周辺米駐留軍  演習地接収反対に関する陳情書外一件  (第八二〇号)  東富士演習場地域住民生存権保障等に関する  陳情書(第  八八一号)  同   (第八八二号)  同(  第八八三号)  同  (第八八四号)  同  (第八八五号)  同(  第八八六号)  同(  第八八七号)  同(第  八八八号)  同(  第八八九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  戦争犠牲者保護に関する千九百四十九年八月  十二日のジユネーヴ条約への加入について承  認を求めるの件(条約第二号)  団結権及び団体交渉権についての原則適用に  関する条約(第九十八号)の批准について承認  を求めるの件(条約第一二号)  工業及び商業における労働監督に関する条約(  第八十一号)の批准について承認を求めるの件  (条約第一三号)  職業安定組織構成に関する条約(第八十八  号)の批准について承認を求めるの件(条約第  一四号)  日本国フランスとの間の文化協定批准につ  いて承認を求めるの件(条約第一五号)  日本国フィリピン共和国との間の沈没船舶引  揚に関する中間賠償協定締結について承認を  求めるの件(条約第一六号)  世界気象機関への加入について承認を求めるの  件(条約第一七号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 ただいまより会議を開きます。  日本国フランスとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国フイリピン共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定締結について承認を求めるの件、世界気象機関条約への加入について承認を求めるの件、右三件を一括議題といたします。順次提案理由説明を求めます。
  3. 田中稔男

    田中(稔)委員 ちよつと議事進行について。去る十五日にMSA援助に関する第一回の外交交渉が行われたのでありますが、それに引続いて交渉が行われるということを聞いております。この交渉は非常に重要な交渉でありまして、外務大臣に御出席願いまして、第一回の交渉の模様を、ひとつ正式に本委員会に御報告願いたいと思います。なお今後必要に応じまして、外務大臣中間報告をお聞きいたしまして、外務委員会としては、国民の輿論をこの外交交渉に織り込むことができるようにいたしたいと思います。その点につきまして、委員長がよろしくごあつせんくださいますようにお願い申し上げます。
  4. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの田中君の要求は、その通りとりはからうことにいたします。  それでは提案理由説明を求めます。小滝政府委員。     —————————————
  5. 小滝彬

    小滝政府委員 日本国フランスとの間の文化協定批准について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昨年八月フランス政府より文化協定締結方提議に接しましたが、先方では、日本が戦後最初に結ぶ文化協定をぜひ日仏間のものとしてもらいたいとの熱心な態度を示しましたので、わが方ももとよりこれに異存がありませんので、積極的にこの申出に応ずることとし、昨年十月から東京具体的交渉を行つて参りましたところ、本年五月、両国政府の間に意見一致を見るに至りました。よつて五月十二日、外務大臣在京フランス大使との間において、この文化協定署名調印を了した次第であります。  この協定は、申し上げまるでもなく、わが国フランスとの間に伝統的
  6. 小滝彬

    小滝政府委員 日本国フランスとの間の文化協定批准について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昨年八月フランス政府より文化協定締結方提議に接しましたが、先方では、日本が戦後最初に結ぶ文化協定をぜひ日仏間のものとしてもらいたいとの熱心な態度を示しましたので、わが方ももとよりこれに異存がありませんので、積極的にこの申出に応ずることとし、昨年十月から東京具体的交渉を行つて参りましたところ、本年五月、両国政府の間に意見一致を見るに至りました。よつて五月十二日、外務大臣在京フラゾス大使との間において、この文化協定署名調印を了した次第であります。  この協定は、申し上げまるでもなく、わが国フランスとの間に伝統的
  7. 小滝彬

    小滝政府委員 日本国フランスとの間の文化協定批准について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昨年八月フランス政府より文化協定締結方提議に接しましたが、先方では、日本が戦後最初に結ぶ文化協定をぜひ日仏間のものとしてもらいたいとの熱心な態度を示しましたので、わが方ももとよりこれに異存がありませんので、積極的にこの申出に応ずることとし、昨年十月から東京具体的交渉を行つて参りましたところ、本年五月、両国政府の間に意見一致を見るに至りました。よつて五月十二日、外務大臣在京フラゾス大使との間において、この文化協定署名調印を了した次第であります。  この協定は、申し上げまるでもなく、わが国フランスとの間に伝統的に存在しております密接な文化関係を今後も維持すると同時に、いよいよ緊密化することを目的としております。この協定実施いたしますと、両国間の文化交流を通じて、自仏両国民間の相互理解は従前にも増して深められ、ひいて両国間の政治的友好関係の増進に資すべきことを信じて疑いません。また現にヨーロツパ文化中心地たるフランスを通して、間接欧州諸国に対する日本文化紹介の機会を増進するの効果も期待できることと存じます。  よつてここにこの協定批准について、御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件についてすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、日本国フィリピン共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、フィリピン共和国との国交の調整のためには、できるだけ早く賠償実施を開始することが必要であると認めまして、さきに本年一月マニラ湾等にある沈船の調査目的として、君島丸を派遣いたしましたが、この調査作業と並行して、マニラにおいて、わが在外事務所フィリピン外務省との間で、沈船引揚に関するとりきめにつき交渉せしめましたところ、双方の意見一致いたしましたので、本年三月十二日に、マニラで、日本政府在外事務所長中川融と、フィリピン共和国外務次官フエリノ・ネリとが、この協定署名いたした次第であります。  わが国はこの協定に基いて、フイリピン共和国に対し、その領海にある沈没船舶引揚げるための役務の提供という形において、賠償実施することになるわけであります。このように賠償実施に対するわが国の誠意を示すことは、フィリピンとの友好関係の樹立に寄与することが大きいと考えられます。  よつて、この協定締結について、第十五国会の承認を求めましたところ、衆議院の解散のため審議未了となりましたので、ここにあらためて御承認を求める次第であります。慎重御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に世界気象機関条約への加入について承認を求めるの件について、提案理由を御説明申し上げます。  世界気象機関条約は、一九四七年九月に、ワシントンで開催されました国際気象機関気象台長会議で作成され、一九五〇年三月二十三日に効力を発生いたしました。現在この条約締約国は五十六箇国で、これにこの条約によつて機関構成員たる資格を認められた領域または領域の集合を加えまして、この機関構成員は七十九を数えております。  気象機関がその業務を通じて、真に人類の活動に寄与するためには、各国の気象機関協力して観測網を完成し、同一の基準による観測を行い、その結果を交換することが必要であります。この条約は、気象業務の遂行に不可欠なこの国際協力実施するための機関として、世界気象機関設立を定めたものであります。  わが国は、国際気象機関設立当時から、戦前まで、長年にわたつてこれに協力して来ましたが、戦後再び、これにかわつて発足した世界気象機関趣旨に沿い、積極的に世界気象業務の円滑な運営に協力いたしております。  世界気象機関への加盟は、この条約加入することによつて行われますが、わが国の場合は、条約への加入に先だつて加盟申請を行い、国である構成員の三分の二の承認を得ることが加入の条件とされておりますので、わが国は、日本国との平和条約に関する宣言に基いて、昨年十月に加盟申請を行いましたところ、先般これが承認されたので、この条約加入しようとするものであります。  以上の点を了察せられ、御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。
  8. 上塚司

    上塚委員長 三案に対する提案理由説明は終了いたしました。     —————————————
  9. 上塚司

    上塚委員長 次に、戦争犠牲者保護に関する千九百四十九年八月十二百のジユネーヴ条約への加入について承認を求めるの件、団結権及び団体交渉権についての原則適用に関する条約批准について承認を求めるの件、工業及び商業における労働監督に関する条約批准について承認を求めるの件、職業安定組織構成に関する条約批准について承認を求めるの件、並びにただいま小瀧政務次官より説明せられました三案につき、順次質疑を許します。戸叶里子君。
  10. 戸叶里子

    ○戸叶委員 まず最初戦争犠牲者保護に関する千九百四十九年八月十二日のジユネーヴ条約への加入について承認を求めるの件、これに対しまして、私は一、二点質問したいと思います。これは人道上から考えますならば、当然加入することに問題はございませんけれども、ただこの説明のしまいの方に書いてありますように、わが国は一昨年九月八日にサンフランシスコにおける平和条約署名に際して、この平和条約最初効力が発生の後一年以内に、この条約加入する意思宣言しておりますというふうに書いてございますが、この講和条約日本の国が署名をいたしますときには、すでにわが国戦争放棄を決定してあるところの憲法が制定せられております。このような憲法を持つているところの日本が、なぜこの戦争犠牲者保護に関するジュネーブ条約加入をなされたか、その理由を承りたいと思います。
  11. 小滝彬

    小滝政府委員 この条約は、これに加入する国が戦争に加わるとか加わらないとかいうことを離れて、これは人道的な見地から、中立国の人の地位も生命も保護しなければならない、戦争による惨禍をできるだけ少くしようという趣旨に出たものであります。また戦争でなくとも、内乱があつたような場合にも適用することになつておるのでありまして、日本戦争放棄とこの条約との関係は、矛盾はないものと思います。
  12. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この条約加盟いたしまして、日本適用されるような場合は、どういうときでありましようか。
  13. 下田武三

    下田政府委員 この条約の今までの条約との違いは、適用する場合を戦争に限定していないことがその一つでありますが、不幸にして日本侵略されたような場合、あるいは不幸にして日本内乱、騒擾が起つたような場合、すべてこの条約適用があるわけであります。ことに第四の文民の保護に関する条約、これは日本国に住む日本国民はもちろんのこと、第三国人もいろいろ保護されるごとになります。従いまして、日本戦争放棄規定とは無関係に、また日本が戦力を持つていないからこそ、なおさらこういう条約保護は受ける必要があるのではないかと存ずるのであります。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、もしも間接的な侵略日本が受けた場合、日本の国内でこういうような何か不幸な人たちが出た場合に、その間接侵略をした方に対しても保護をするということを意味するわけなのでしようか。
  15. 下田武三

    下田政府委員 間接侵略でも、侵略する方が、この義務を負う方であります。赤十字のマークのある病院を攻撃してはいかぬ、攻撃する前に、婦女、幼児を隔離する手続をとらなければいかぬとか、そういうような義務を負う方であります。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これに加入しておらない国で、大きな国の一、二の例をあげていただきたいと思います。
  17. 下田武三

    下田政府委員 一九四九年の今度の条約には、ソ連が実は入つておりません。それから中共が入つておりません。朝鮮動乱が起りまして——朝鮮動乱戦争ではなくて、まさにこの条約の予見しておる朝鮮内の間接侵略だろうと思いますが、その場合に、国際赤十字委員会におきましても、朝鮮動乱から生ずる災害をできるだけ緩和したいという精神から、この条約声準用することを提唱いたしたのであります。そこで北鮮側中共側も、この条約を準用するという趣旨は表明したのであります。ところが、実際にやつておるところを見ますと、国連側がいくら捕虜の名簿を早くよこしてくれ、あるいはこの条約規定によりますと、捕虜が入つたら、すぐその個人々々について人名表をつくり、また完全なリストをつくつて中立国なり赤十字なりを介して、それぞれの捕虜所属国に通知するという規定があるのであります。しかし中共側北鮮側は準用すると言つておきながら、この捕虜リストを初め、情報提供を長い間怠つておりました。やつと最近の捕虜協定締結直前に至りまして、リストを提出する運びに至つたような次第であります。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、入つていない国から日本侵略をもしかりに受けたような場合には、この条約は何ら適用されないわけですか。
  19. 下田武三

    下田政府委員 この条約のもう一つの特色といたしまして、この条約加盟国以外のものも、ある特定戦争が起つた、あるいは擾乱が起つた場合に、自分は本来この条約加盟国ではないが、この擾乱に関しては適用するということを宣言することによりまして、その特定戦争なり擾乱なりに適用するという道が開いております。従いまして、加盟国以外の国もそういう宣言をさえすれば、この条約適用が生ずるわけであります。
  20. 上塚司

    上塚委員長 よろしゆうございますか。では次に、並木芳雄君。
  21. 並木芳雄

    並木委員 私は、この前条約局長にお尋ねした点について質問をしたい。それは朝鮮の俘虞の取扱いの問題であります。あの質問をいたしましたときに、局長は、大韓民国軍隊国際連合軍支配下に置かれておるかどうかということで、今度の俘虜取扱いに対する解釈はかわつて来るものである、こういうふうに答弁された。これは覚えておられるだろうと思うのです、この点がはつきりしたかどうか。なぜ私が聞きたいかと申しますと、これから国際紛争が起つたときに、警察行為にしても、軍事行動にしても、国際連合としてああいう行動に出た場合に、必ず独立援助国との間で摩擦が起ると思うのです。従つて国際連合のああいう警察行為というものと、その行為によつて援助を受ける大韓民国のような独立国との関係は、国際法上、あるいは国連憲章ではつきりしているのかいないのか。今度の場合でも、李承晩大統領国際連合軍——アメリカとの間で、休戦処理の方法において違いが出ております。私どもがこういうことを予測するのは、もちろんいやでありますが、万一将来日本侵略を受けて、日米安全保障条約アメリカ行動をとつてもらう、あるいはさらに国際連合というものが日本を助けるために警察行動に出る。そういうようなときに、一体日本主権というものはどうなるのか。日本には軍隊がありませんから、軍隊がその管轄下に置かれるということは考えられませんけれども、今度MSA援助なんか受けますと、保安隊とか、海上警備隊はそういう問題が起つて参ります。そういうときに、独立国たる日本主権というものは、ある程度制限されるのかどうか。私どもはそういうことは考えたくない。夢にも思つておりませんけれども、はつきりしておかないと、これはどこでもまた繰返される紛争の種になるのではないかという心配があるわけであります。従つて朝鮮における俘虜取扱いに付随して、ただいま申し上げました国連独立国との関係——日本の場合には日米安全保障条約におけるアメリカ日本との関係、これは万が一、事が起つたときの話ですが、それからさらに日本国際連合というものが助ける場合に出て来る関係について、この際はつきりしておいていただきたいと思う。
  22. 下田武三

    下田政府委員 御質問要点は、先日朝鮮における捕虜の釈放を、李承晩大統領連合国意思に反して強行したことが、今度のこの条約とどういう関係に立つかというのが、この条約との直接の関係の問題であると存ずるのであります。この前に申しましたように、朝鮮事変におきます捕虜の問題につきましては、従来の国際法及び従来の捕虜関係条約、また今回御審議を願つております一九四九年の捕虜の待遇に関する条約、そのいずれもが予測していなかつた事態が発生したわけであります。すなわち従来の観念によりますれば、捕虜というのは、敵につかまつて祖国に帰られない悲惨な境遇にある。従つて敵対行為が終止したら、喜んで祖国に帰るであろうし、また捕虜をつかまえておる方からしたら、一刻も早く祖国に返してやらなければならないというのが、当然の前提であると考えられて、従来の国際法なり条約ができておるわけであります。しかるに朝鮮におきましては、つかまつておる間に、祖国リージヨンがつくづくいやになつて、帰るのがいやになつたという捕虜が現われたのが事実であるようであります。そこで敵対行為が終止したら、捕虜をすみやかに送還するということは、まさに人道的精神から、捕虜自身の幸福をはかるからにほかならないのでありますが、ただいま申しましたように、祖国に帰るのがつくづくいやになつたというような捕虜を、無理やりに、強制的に、また再び元のリージヨンに返してやるということが、はたして捕虜の幸福になるのかどうか、捕虜自由意思を尊重することになるかどうかという、全然今まで考えたこともない事態が発生したわけであります。そこで、ただいま御承認を求めております条約規定からいいますと、百九条に、捕虜傷病兵である者、これは本人が希望すれば、治療した上で送還しなければならぬという規定がございます。それから百十八条に、敵対行為が終止したらすみやかに返してやらなければならないという規定がございます。第三の規定といたしましては、やはり百九条でございますが、傷病兵たる捕虜は、その意思に反して送還してはならないという規定がございます。そこで本人意思を初めて問題にしておるわけでございますが、しかしこの捕虜本人意思表示の仕方たるや、傷病兵なるがゆえに、まだからだも回復しておらないのに、長い旅行で帰るということは自分はいやだ、もう少しゆつくり静養していたいという捕虜まで、無理に返すのは困る。そういうところから来ておるのであります。結局今回の条約規定を検討してみましても、南鮮捕虜収容所で発生した事態をカバーする規定が見当らないのであります。結局国際法条約で未解決な問題が起つたのでありまして、これをどう取扱うかということは、結局関係国相談ずくできめるほかはないのであります。そこでこの捕虜取扱いが重要な議題となりまして、板門店で先般解決されましたような協定を見たことになつたわけでございます。  御質問の、後段日本の場合にどうなるかということでありますが、御質問要点がよくわからないのですか……。
  23. 並木芳雄

    並木委員 微妙な問題ですから、もう一度さつきの後段の点を繰返します。それは、この前局長が、朝鮮捕虜の問題について、どちらに理があるかということを判断するのは、ひとえに李承晩大統領大韓民国軍隊が、国際連合軍支配下に置かれておるという契約ができておるかいなかによつてきまる、こういうことを言われた。だからその点がどうなつたか。こういうことを予測するのはほんとうにいやなのですけれども、もし日本に不幸な事態が起つた場合に、日米安全保障条約によつてアメリカ日本との関係はどういうふうに置かれるのか。それから国際連合による警察行為が、日本を助けるために行われたような場合に、日本国連との関係はどうか、こういう点なのです。つまりその点が国際法上、あるいは国連憲章上はつきりしておればよろしいのですけれども、この前の局長の答弁から察しましても、はつきりしておらないと思います。ですから、万一日本にそういう不幸が起つた場合に、日米安全保障条約によつてアメリカ軍が当然出動するでしよう。日本には軍隊がありませんから、朝鮮の場合と違つて日本軍隊アメリカ軍管轄下に入るとか、あるいは国際連合軍管轄下に入るということは考えられませんけれどもMSA援助なんかが実現して参りますと、保安隊あるいは海上警備隊というものが、それに協力をしなくてはならぬとか、共同動作に出ることもあり得るわけなのです。そのときにその関係はどうか。日本があくまでも指導権を握つておると私どもは思うのですが、それがそうではなくて、そういう場合にはアメリカが指導的立場に立つのだとか、あるいは国連というものが指導的立場に立つのだということになるのかどうか、その点なのです。それをお伺いしておかないと、もしそういう事態が起つた場合に、重大な紛争のもとになると思うからお伺いしたのです。
  24. 下田武三

    下田政府委員 御質問は、ただいま議題になつております条約とは直接関係がないように考えるのでございますが、先般御質問のときに、はつきりいたしません答えをいたしましたので、補足して申し上げさせていただきたいと思います。当時のマッカーサー国連軍司令官と李承晩大統領との間に、明確に韓国の軍隊をマッカーサー司令官の指揮下に置くというとりきめがございます。これは一九五〇年七月十五日付で、李承晩大統領とマツカーサー国連軍司令官との間の書簡の交換によつて行われております。その内容について、李承晩の方で、韓国の全陸海空軍を、朝鮮における敵対行為の継続中、国連軍最高司令官またはその最高司令官から委任を受けた代理指揮官の指揮下に置く、韓国軍はマッカーサー司令官のもとにこの仕事に従事するのを誇りとするということを言つておるのであります。そこで明確に国連軍の指揮下に韓国軍を入れるということを約束しておきながら、先般国連軍の意思に反して捕虜を釈放したことは、これは国連軍側が申します通り、約束違反ではないかと存じます。しかしこれは日本の関知した問題ではございません。  次に、仮定の場合の御質問でございますが、かりに不幸にして日本間接侵略を受けた場合に、一体日本側の自衛力と国連軍、米軍との関係はどうなるか。これは今から断定することは、とうてい不可能だと存じます。もちろんマッカーサー司令官と李大統領との間のようなとりきめも考えられるでありましよう。また現在ヨーロッパでやつておりますように、アメリカ人の最高司令官のもとに、NATO参加諸国の軍隊を従属せしむるというようなとりきめも考えられるでございましよう。これはしかし、その場合になつてみませんと、どういうことになるか、全然これはそのときのきめ方でございますので、ただいまからどうなるというようなことは申し上げるわけに行かないと思います。
  25. 上塚司

    上塚委員長 今日は、なお多数の質疑者があるばかりでなく、労働大臣は他の予算委員会その他に行かれるのに急いでおられますから、できるだけ先に進みたいと思います。岡良一君。
  26. 岡良一

    ○岡委員 捕虜の待遇に関する条約の百十八条には、実際の敵対行為が終了した後は遅滞なく解放し、かつ送還されるという意味のことがうたわれてあるのでありますが、日本中共、あるいは日本とソ同盟の関係は、実際の敵対行為が終了したという関係と解釈上みなしていいでございましようか。
  27. 下田武三

    下田政府委員 ポツダム宣言日本による受諾、並びにポツダム宣言を引用いたしました降伏文書の署名によりまして、日本連合国との間に存しました敵対行為はすでに終止しておるわけであります。
  28. 岡良一

    ○岡委員 ところが、これは政府も御存じの通り、昨年の十二月一日の北京放送、翌日の新華社電などで見ましても、三万人の日本捕虜がおる、逐次それを返そうというような意思表示をしておる。ところがこの数字についても、香港あたりから伝わつて来る数字を見ると、十万を越える数字も、かなり確かな数字としてわれわれも聞いておる。また、ここ一両日前の新聞では、ハバロフスクに一千名以上の邦人がいるというようなことも伝えられております。一体この条約にはソビエトが入つておらない、中共が入つておらないということになりまして、しかもわれわれがこの条約を受諾し、しかも事実において、こうして中共やあるいはソ同盟においては、かなりなお生存者が抑留されておるという事実に対して、一体政府としてどういうふうな対策を今後とつて行くか。
  29. 下田武三

    下田政府委員 ソ連、中共は先ほど申し上げましたように、この条約批准しておりません。従いまして条約上の義務者として日本の抑留者を返す義務はないという法律的の関係になつて参ります。しかしながら、第一、現在のソ連におります日本人のステータスにつきまして、はつきりいたしません。ソ連は、三千数百名の日本人がおるが、これは戦犯者であるということを申しております。つまり刑事犯罪人であれば、その刑期の終了までは返さなくてもいいのだという観点に立つておるのかもしれません。これは推測でございますが、しかしながら、この法律的の観点は度外視いたしまして、とにかく多数の日本人が敵対行為の終了後何年も返されないということは、人道的にまことに遺憾でございますので、現在直接外交関係のないソ連との間柄でございますから、直接交渉こそいたしませんが、国連関係の諸機関並びに国際赤十字関係の諸機関等を通じまして、再三早期帰還の要請をいたしておる次第でございます。
  30. 岡良一

    ○岡委員 ちようど三年前に、私はジユネーヴで、国際赤十字委員会委員長のリユーガー氏に会いまして、そのときに彼は非常に嘆いておつた。これは国際赤十字委員会としては、できるだけ日本の抑留者を返したいと思つておるけれども、一九三六年かに捕虜情報国際赤十字委員会の方に提供するという協定がある。これにはソ同盟も入つておらないし、日本も入つておらないが、わざわざそのカードを保管しておる倉庫に案内をしてくれましたが、日本人の名簿が一つもない。そこで国際赤十字の方でも、ちようど、そのときに国連の方でもこの問題が大きく取上げられたので、国連の方から電報が来た。リューガー委員長を初め二、三名がモスクワに行つてもらいたい。なるたけ日本のカードだけでも提供してくれるようにということで努力方を請われ、その後さらにこの方面とも折衝に出かけて行つたけれども、ソ同盟の方では、世界は二つであろ、従つて万国赤十字などという概念をわれわれは受けることはできないという、きわめて冷淡な、にべもない返事しかもらえないということを関いておる。こういうような事態でありますが、この条約を受諾した日本の立場から、少くとも外務省としては積極的に、こういう事態にかんがみて、日本人抑留者の名簿を、こういう国際赤十字委員会のような機関を通じて、何とか入手するというふうな方法についてのお考えはないのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  31. 下田武三

    下田政府委員 この条約規定しておりますように、捕虜をつかまえますと銘々票というものをつくるわけでございます。それを三通でしたかつくりまして、一つ国際赤十字委員会に送る。一つは相手国に送付するというようなことをいたしまして、この条約の建前ですと、捕虜がつかまつたら必ず本人の銘々票ができるのでありまして、従つてその銘々票を総計すれば完全なリストができる仕組みになつておりますが、日本人がソ連の手に抑留されました時代には、そういう措置が、どうもとられてなかつたのではないかと思われるのでございます。従いましてわが方としては、手紙であるとか、あるいは復員局の古いリストとかいうものを材料にして、不完全な資料をつくることを余儀なくせられた大きな原因であろうと思うのであります。またソ連の方といたしましても、そういう完備した銘々票をつくつた形跡もないので、ソ連側にもこういう名簿の持合せがないでありましよう。また従いまして、ソ連からそういう国際機関リストを送付した形跡もない。まつたく日本にとりましては不幸な事態でございます。しかしながら、この不幸な事態を解決するために、きわめて事務的に困難た段階にございますが、先ほど申しましたように、あゆらる面接交渉以外の手を通じまして、早期に帰還を促進するという方針で進んでおる次第でございます。
  32. 岡良一

    ○岡委員 この条約締結した場合、単に日本が一種の人道的な雰囲気を国際的にまき散らすということだけでは済まないので、やはり日本捕虜に関してこうした一種の拘束された義務を背負わなければならない。しかも日本人とすれば、今一番大きな問題は、遺骨も続々帰つて来るが、生きた人間はまだ帰らない。この問題は非常に大きな関心であり、この条約と関連して政府の大きな責任ではないかと思う。ところが、まあこれは日本だけの言い分で通らない。今おつしやつたようなわけで、リスト提供されておらないから、いわば何人という確認もない。また、おらないという発表もうのみにできない。一方では、おるという情報が入つて来るということで、国民は非常に不安と焦燥にかられておるのであつて、この点は、やはり何とかもう少し、この条約締結し、国会が承認を与えたという機会に、もつと積極的にやはり政府としても働いていただくということを私は希望するのであります。  もう一つは、特にこの未帰還者の問題、これは日本とドイツが共通の関心を持つておる。御存じでもございましようが、ドイツの方はもつとたくさんのものが帰つていない。百万と言い、二百万と言つておる。ところでドイツの、特にこの引揚げ問題で国連総会にドイツ国会を代表して出ているヘルバート・ウエーナーという人にも先般ボンで会つたのですが、日本とドイツが共通してこの未帰還の問題で悩んでおる。しかもドイツは、たとえばフランス戦争捕虜なつた者が、ほかの国の義勇隊に編入され、それによつてフランスの市民権を与えられ、仏領インドシナ戦線なんかの戦争に送られておる。こういうアジアの事情であつてフランスの方にも手がかりがないので、日本あたりがこの点、調査等に協力してもらいたい。あるいはドイツ人の帰還した捕虜が、日本人の捕虜について、ソビエトのキャンプ生活などについて、相当な事情を持ち帰つて来ておる。これはもうドイツの政府の方では相当に集録して持つておる。何とかこういう情報日本政府とドイツ政府がお互いに手を組んで、交換をして、そうしてこの問題を人道の問題として、もう少し国際的な輿論に訴うべきだという希望をヘルバート・ウエーナー君などは主張しておられたようである。こういうことも私はこの問題に非常にプラスになると思うが、この機会に政府としても同様な運命にある——やはりドイツのこの問題に対する真剣なとつ組み方に、日本も同様な運命にある立場から十分に理解を与え、同時にお互いが手を組んで、この問題を人道的な問題として、ぜひとも解決するように御努力方を願いたいと思います。これで打切ります。
  33. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま岡委員のおつしやる品は、まことに同感でありまして、この秋開かれる特別委員会においては、ドイツと協力して国際的な輿論を喚起し、また国連を通じて適当な措置を講じてもらうように、万全を尽したいと考えております。
  34. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの議案につきまして、他に御質疑はございませんか。——なければ本件に関する質疑はこれで終了することといたします。
  35. 上塚司

    上塚委員長 次に団結権及び団体交渉権についての原則適用に関する条約工業及び商業における労働監督に関する条約職業安定組織構成に関する条約、この三案を一括いたしまして質疑を許します。  なおこの際、委員長より一言外務当局へ申し上げます。聞くところによりますと、来る九月十四日より一週間、東京においてILOアジア地域会議が開催せられるおもむきでありますが、日本側代表よりの希望として、会場内にイヤホーンを備えつけていただきたいというのであります。外務当局において、これをぜひ御負担願いたいという希望でありますが、つきましては外務省において、特にこの点について御考慮をお願いいたしたいと思います。
  36. 小滝彬

    小滝政府委員 本件につきましては、すでに関係の向きからお話がございまして、そのお話によりまして、すでにイヤホーンとりそろえ方、ことに日本でもこれは作製ができるそうでありますので、十分間に合うようにとりそろえるように措置いたしております。さよう御了承願いたいと思います。
  37. 上塚司

    上塚委員長 それでは通告順によりまして、順次発言を許します。島上善五郎君。
  38. 島上善五郎

    島上委員 私はこの三つの国際労働機構において決定しました条約批准に関して御質問を申し上げますが、この条約の内容に関する質問の前に、私は労働大臣に対して国際労働機構に対する日本政府の考え方を、基本的な点をまずお伺いしたいと思います。  御承知のように国際労働機構はその憲章にはつきり定められておりますように、労働条件を改善し、不正と窮乏とを絶滅することによつて世界の平和と福祉に貢献する。そしてこれに加盟した日本は、日本の労働者の労働条件、その他労働者の地位を国際的な水準に高めるために、努力をするという義務が負わされておると思うのです、ところが日本政府はこの国際労働機構に創立当初から加盟しておりますが、少くとも今までの日本政府の国際労働機構に対する態度と申しますか、そういうものはきわめておざなりであつて、私ども熱意があまりにも不十分であるということを、非常に遺憾に思つております。過去のことは今ここで言つてもしかたがないと思いますが、再加入を許された今日、そして新しい労働大臣にお伺いしたいのは、日本が当然過去のようなおざなり的なことではなしに、国際労働機構の条約、勧告を最大限に尊重し、批准し、日本国内においてこれを実施するという各種の措置をとるという熱意を持つていなければならないと思うのです。それをお伺いしてから——あたりまえのことのようですが、その基本的な点をお伺いしてから、順次条約に対する質問をいたしたいと思います。
  39. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。ILOの機構は御承知のようにその憲章前文、並びに附属書にはつきり示されておりますように、永続する平和というものは、社会正義を基礎としてのみ確立し得るという立場から、労働条件及び生活水準を国際協力のもとに改善して行こう、こういうのでございまして、政府といたしましても、この方針につきましてはまことに適切、妥当なものと考え、広く国際的に関連を持つ現在の日本の立場からいたしましても、この機構に対して全面的に協力して行こう、こう考えておる次第でございます。
  40. 島上善五郎

    島上委員 その御答弁の通りであるとすれば、まことにけつこうですが、そうだといたしますと、条約批准についても、私は積極的な熱意を、事実をもつて示してもらいたいということと、それから条約批准しただけでなしに、これを国内的に真に実施するための措置がとられなければならないと思うのであります。今国会に承認を求めて来ておりますものは、ただいま委員長の言われた三件でございますが、私はほんとうに日本政府が国際労働機構に対して熱意を持つならば、もつともつとこの前に批准しなければならぬ基本的な条約が相当たくさんあるように思える。そういう点に対する政府のお考えを承りたいと存じます。
  41. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ILOの機構に対して協力いたしたいという政府態度は、今申し上げた通りでありますが、なおただいま委員長からの御発言にもありましたように、アジア会議をこの九月に持つわけであります。戦後におきましての東洋における最大の会議でございますし、私ども政府の者といたしましても、ひとつこの機会に日本における労働関係の諸情勢というものを、十分に各国に知らしめたい、こういう考え方を持つております。そうして、ただいま御質問の点でございますが、これは御承知のように、昨年の第三十五回総会までに採択せられました条約というものは、総計百三に達しておるのであります。しかし政府は一昨年の十一月の二十六日に再加盟いたしたのでございまして、それ以来鋭意諸条約の内容を検討して参つたのでございますが、何せ脱退以来十三年をけみしておるのでございまして、その間の空白のために、十分なる調査もなかなか困難をきわめておりましたが、最近に至りましていろいろ資料も整備され、調査機能も活発化して参りましたので、今後においてできる限りこの批准を相次いで行いたいと思つておるのでございます。従いましてその方針で、とりあえず最も重要な条約を選択いたしまして、このたび三条約の御審議を願うことにいたした次第でございますが、今後逐次国内立法ともにらみ合せまして、他の条約を御審議つて、御批准を願いたい、かように考えておる次第でございます。
  42. 島上善五郎

    島上委員 今度の総会で、政府代表はこういう報告をしております。二年前にILOに再加盟を許されたことは非常に感謝にたえない、この御好意にこたえるために、その期間——再加盟を許されてから後のことをさしておると思いますが、政府は非常に進歩的な労働運動を完成することによつて、諸君の御好意に報いる努力をしておる、こういうことを育つて、労働組合法、労働基準法及び職業安定法等、非常にりつぱなものを持つておる、それから乏しい予算の中から失業保険、健康保険、災害補償等を初め、その他社会保障計画を樹立するために懸命の努力をしておる、こういうような報告をしておる。この報告を聞いた者は、まことに日本はけつこうな国だと思つているに違いないと思うのですが、しかし事実はこれと相遠いものがあつて——相遠いというよりはむしろ逆でありまして、国際労働機構に再加入を許された後に、例の労働関係調整法を改悪したり——これはわれわれの立場から見れば明らかに改悪ですが、先般の電気産業及び石炭鉱業労働者に対する組合活動の自由の拘束をやつたというような、少くとも今まで与えておつた自由を拘束する法的な措置をとつておるのに、そういうことはこの報告では一つも言つていない。しかし同会議に出席した労働者の代表からは、そういう実際の事実を率直に報告されておりますので、良識ある世界の代表者諸君は、このいずれが正しいかを判断しておると存じますが、こういうような表面の体裁のいいことばかり言つて、実際はそれとは反対のことをやるようなことでは、せつかく加入し、また条約批准しても何にもならぬということになるのではないかと私ども心配されるのです。  そこで、今条約批准については積極的に出したい、しかし長い間の空間もあつたことであるし、さしあたつて最も工安な三件の批准を求める、こういう炎話でしたが、もちろん私どもも百余件の勧告を一挙に全部やる、そういうようなことを望んでおるわけではありません。今出されているこの三つの条約も、もちろん重要なものではないということは言えませんけれども、もつと基本的に重要なものかあると思います。たとえば労働時間に関する条約、これは日本は特殊条項を認められておりますが、私どもは、少くとも今日の日本では、その特殊条項の廃止を要求して、世界の水準と同様のものとして、その条約を改正するとともに、その改正した条約批准して国内に実施する、そういう段階に来ておると思う。そういうことや、条約二十六条による最低賃金制の創設に関する条約、それから今回出されておる団結権及び団体交渉に関する条約というものが出されておりますが、前年度の総会で、条約八十七号で、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約というものが採択されております。私どもの解釈するところによれば、この結社の自由及び団結権の擁護に関する条約、第八十七号、これこそが今回出された団結権及び団体交渉に関する条約よりも前に批准しなければならない基礎的なものではないか、こういうふうに解釈しております。こういうふうに拾つてみますと、幾つかのきわめて重要な条約批准されないままに放置されておりますが、これに対してすみやかに批准しようというお考えがあるかどうか、ひとつ承りたいと思います。
  43. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ILO総会におきます日本政府の代表は、御承知のごとく中山中労委会長でありますが、御存じのごとき非常に良心的な学者でおられますから、特別の色を持たず、日本の実態について該博なる知識を傾けて十分お話願つたものと、政府といたしましては承知をいたしております。  なお、ただいま御指摘の点でございますが、政府といたしましては、第十三国会における国際労働条約批准促進に関する御決議もございまして、国際労働条約につきましては、できるだけ早期に多くの条約を国会に御提出を申し上げて、御承認を得るようにしたいという基本的な態度をとつておる次第でございます。ただいま島上委員の御指摘の八十七号でございますか、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約につきましても、ただいま議題となつております第九十八号条約と同様に検討を進めて参りましたのでございますが、八十七号条約につきましては、条約の内容につきましても、また用語の意味、国内法との関係等につきましても、なお疑義がありますので、在外出先機関を通じまして、ILO事務当局とも連絡いたしまして、目下あらゆる角度から慎重に検討いたしておる次第でございます。しかしながら御質問趣旨を十分に体しまして、できるだけ早期に検討を終えまして、国会の御承認を得るようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  44. 島上善五郎

    島上委員 実はこの八十七号条約、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約については、私はこの前の国会においても、政府にそのことをお尋ねしましたが、やはりただいまと同様、出語の解釈等に対してまだ決定的なものを持つていないし、疑義を問い合しておるという御答弁でありました。それからもう半年以上たつておりますが、すでに労働省で出された出版物——昭和二十四年の印刷物ですが、それにちやんと印刷してある、私どもはそれを見て、そう疑義のある点があるとは思えないのですが、いつも同じような御答弁を繰返して、荏苒と期間を送つておるということは、やはり政府に熱意が足りないせいではないかということがうかがわれる。  それともう一つは、これは私はこの前も言いましたが、この条約批准するということと、片方においては炭鉱や電産の労働者の組合活動の制約をするということは、どう考えても矛盾することである。そういうことを考慮して、私はこういう大事な条約批准を見送つているのではないかという疑いが持たれてしかたがない。用語の解釈とか疑義ということは、そんなにいつまでも解明できないものではないはずだ。そういうことを私どもから考えると、どうも政府の怠慢、もしくは政府の誠意かないというふうに思われてしかたがない。しかしそういうことを質問してもしかたがないと思いますが、私は少くともこの次の機会には、また同様の答弁を繰返すことのないように、これをすみやかに運んでもらいたいということを強く希望せざるを得ないのであります。そこで……。
  45. 上塚司

    上塚委員長 島上君、もはやあなたに約十八分の発言を許しておりますが、なるべく簡潔に、あと二分くらいで終られんことを希望いたします。
  46. 島上善五郎

    島上委員 では、最後でもいいですが、どうも今私がちよつと指摘しましたように、国際的な舞台へ行くと、きわめて体裁のいいことを言つている。実際にやつていることと違うことを言つている。そこで今度国際労働局から事務次長のモレーという人の名前で、外務大臣あてにこういう問合せが来ておる。内陸運輸労働委員会の結論に対してとられた措置に対する報告を求めておる。この報告は内陸運輸労働委員会の結論に対してどういう措置をとつたか、またどういう措置を今後とらんとしておるか、そういう計画があるということも報告を求めて来た。この次の委員会の参考に報告を求める。この報告は、報告を求めて来た文書によつて明らかでありますように、関係労使団体と協議の上作成するよう手配すること、それからモレーに提出する前に、これを関係労使団体に送付すること、こういうことや、その他いろいろなことが書いてありますが、これは五月三十日までに提出するようにという、三月二十五日の書面ですが、私の聞くところによりますと、これがいまだ報告が提出されていないということと、それから労使の意見を聞くための会を二、三回やつたそうですけれども、その会合に臨んだ政府態度というものは、労使の意見を形式的には聞くようなかつこうをとつているが、実際はそれとかかわりなしに、政府の考えで、今御指摘したようなおざなりの体裁のいいような報告をしよう、こういう態度をとつているように承知しております。そのために、いまだにその報告も出せないという状態であるということを承つておりますが、その間のいきさつ及びいつごろどういうふうにして出す考えであるかを伺いたいと思います。
  47. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 第一点の、御指摘の八十七号につきましては、御指摘の印刷物は、いわゆる仮訳でありまして、今後公定訳をつくります上に、先ほど申しましたような連絡その他の措置を要するということを申し上げた次第でございます。  なお第二点の御質問の問題でございますが、内陸運輸労働委員会に関しましては、日本は御承知のごとく参加いたしておりませんが、ILOの事務局より、日本実施状況を、労使と協議の上報告すべく求められておるのでございます。そこで労使それぞれに御協議を願いまして、数回にわたつて話合いを願つたのでありますが、報告内容につきまして、労働者側の方々から、これを不満足とする意味の御意向が示されておりますので、目下、十分満足の行くような報告を出そうということで、検討しておる段階でございます。もちろんそういう段階でありますので、いまだ報告書は提出いたしておりません。
  48. 島上善五郎

    島上委員 そこで、その労使の会合した際に、政府の報告の案なるものが出されて、私もここに持つておりますが、これを見て、私も数点気がついたところがありますが、まつたく国際労働総会における政府代表の報告のように、きわめて体裁のいい報告をしておる。たとえば内陸運輸労働者が、団結権団体交渉権及び団体行動権等が完全に保護されているような、そういう法的な措置がとられているといつて、その反面に、公共企業体等労働関係法により、国鉄の労働者の団体行動権が制約されたり、地方公企労法でもつて電車関係の労働者が制約されているということが全然書いてない。これは事実ですから、事実をそのまま報告したらよろしいと思うのですが、その事実の半分、政府に都合のいい面だけを報告しようとするから、労働者は満足しないということになる。私は、そういう態度をもつて臨む限りは、永久に労使、政府意見一致しないと思う。事実を報告するのに、都合のいい半面だけを報告して、都合の悪い面は報告しないというような、こういう態度をきれいさつぱりと捨てて、事実は事実として報告する。国際労働総会の代表の演説でもそうだと思う。事実は事実として報告して、悪いところは、国際的な水準まで高めるように改善をする。その努力をする。こういう率直な態度をもつて、報告に際してもそうだし、国際会議に臨む際にも、そういう態度をもつて今後臨んでもらいたいと思うのです。そういうことを強く御希望申し上げ、これに対する労働大臣の考えを伺いたいと思います。
  49. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいま御答弁申し上げましたように、報告内容につきましては、労働者側の御納得を得るように御協議している次第でございまして、政府としましては、事実を事実として平明に報告するという態度であります。ただ労働関係法をいろいろ改正した場合、これを改悪なりと労働者側が考えられても、政府は改悪したと思わなければ、そのような御意見に服従することはできぬかもしれませんが、事実はやはり事実として、そのまま明瞭に書く、こういう態度を持つておるわけでございます。ただ主観的な相違でございますから、そのような点までは断言できないのでございます。そういう態度でおるわけであります。
  50. 島上善五郎

    島上委員 それは見解の相違というものはあります。しかし事実は、たとえば労働立法がある。憲法もある。そこで労働基本権や人権が認められておる。しかしその半面に、公企労法とか、日鉄法とか、地方公企労法などがあつて、これである程度の制約をしていることも事実である。これらの都合のいい事実だけを言い、都合の悪い事実は言わぬということは、いくら見解が違うといつても、あまりにひどいと思う。たとえばこの労働条件等の均等化をはかつているというようなことで、国鉄の労働者、あるいは地方公企労法のもとにおける労働者には、仲裁制度というものがあつて、きわめて公平に労働条件が改善されておるというのであります。しかし、その仲裁裁定が、たとえば国鉄の場合は、三回も出たが、完全な形で実施されていないという事実をほおかむりしておる。これも事実なんです。見解は、いかなる見解を持とうとも、仲裁裁定が、完全な形で実施されていないということは事実です。そういう都合の悪いことをほおかむりして報告しない。政府がこういう態度で、体裁のいいことを報告しても、労働組合側は、労働組合側の事実を報告する。これは世界の人々にわかつてもらえると思う。意見をつけ加えるという場合には、意見には、労使と政府それぞれ違う場合が往々にしてあり得ると思いますが、事実というものは、だれが見ても白いものは白く、黒いものは黒い。もつとも吉田内閣のように、白を黒と言い張るようなことでは仕方がありませんが、私は、白を黒と言い張るのではなしに、事実は事実として率直に報告する、こういう態度を今後とつてほしい。そうでないと、労使、政府の間における報告を一つ出すという問題でも、なかなかまとまらぬというような不名誉な事態が起きる。見解の相違ということはあり得ることですが、白を黒いというような、都合の悪いことは報告しないというような態度を、政府はとつてもらいたくないということを、私は強く希望します。大分、委員長は時間をやかましく言いますから、これで終りにいたします。
  51. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私も、その通りに実は申し上げておるのでございます。事実は事実として平明に報告するということを言つておるのでありまして、ただその場合に批評する場合の主観まで統一せよと言われましても、その場合はどうなるかということは、その場合でないと考えられない。こういうことでございまして、特に事実を曲げて書くなどというようなことは、毛頭考えておりません。
  52. 上塚司

    上塚委員長 それでは、労働大臣もお急ぎのようですから、田中稔男君に簡単にお願いいたします。
  53. 田中稔男

    田中(稔)委員 労働大臣は、日本の労働者の労働条件について、一般的に関心を持つておられると思いますので、お急ぎのところでありますが、しばし足をとめていただいて、質問を聞いていただきたいと思います。  極東海軍に勤務しておりました松岡一郎君外四百五十三名の者が、昨年の十一月中旬から十二月中旬までの間に、必要な手続もされないままに全員解雇されて行つた。このことにつきまして、米軍側及び雇用主である調達庁の措置が不当であるということで、関係筋に陳情いたしたのであります。東京の労働基準局長は、確かに米軍の措置は労働基準法第二十条の違反であると認定いたしたのであります。そこで特別調達庁に対しては、解雇予告手当の支給を要求したのであります。その金額は、概算七百四十万円に達するのでありまして、これらの労務者諸君は、この手当の支払いを受けませんと、非常に生活に困るのであります。それで再々このことについて、政府に折衝しておるのでありますが、政府——特に調達庁においては、米軍の方との話合いがうまくつかないというようなことを理由にして、今日まで手当の支払いが行われていないのであります。このことは労働委員会においては、今まで数回取上げられて、労働大臣に対してだと思いますが、各委員から質問があつたのであります。今、島上善五郎君が質問しました言葉の中にもありましたが、どうも労働大臣は、労働者に対する思いやりといいますか、誠意が足りないようで、いつも近々解決するというようなお話があるだけで、今日までこのことが延び延びになつておるのです。これはまず第一には、特別調達庁が責任の主体でありますので、そこに責任を追究しなければなりませんが、こういう問題が起つておるということを、労働大臣も御承知になつておる以上は、ひとつ特別調達庁の方に申入れをするなり何なりして、この問題の解決を促進していただきたいと思うのです。なお特別調達庁としては、これを日米合同委員会の方に持ち込むことにして、国際協力局の方に話を移しておるということも聞いておりますので、国際協力局の伊關局長に出てもらいたいと思つて、御出席を要求しておきましたが、まだ見えませんので、その方に対する質問はあとからいたすことにいたしまして、労働大臣は、このことについて御存じだと思いますが、その後の経過は一体どうなつておるか、また早く手当が支払われますように御尽力をお願いしたいと思います。
  54. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいま御指摘の問題につきましては、私も非常に心を痛めておるのでありますが、これは当然解雇予告手当を支払うべきものであると考えております。その総額は七百三十二万円でございますが、これを一日も早くお払いしたい。こういう考えを持ちまして、調達庁にも強くこのことを交渉するように申しておる次第であります。調達庁といたしましても、これはひとつできるだけということでやつておつたのでありますが、米軍側の方より、それは支払う必要がないという回答が参りましたので、これを日米合同委員会提案するということを考えまして、その前にある程度の外交折衝をいたしておきませんことには、合同委員会も円滑に進行しないということで、外務省において、このことに尽力してくれておるという報告を受けております。私としては、実は先週中にも解決するように考えておつたのでありますが、それがまた今日まで延びておるような状態でありまして、私としても、ひとつできるだけ早期にこの問題を解決したいと思いまして、関係各省に要望いたしておるような次第でございます。
  55. 田中稔男

    田中(稔)委員 本人たちが私のところに参りまして、とにかく金がいるから、つなぎ融資でもしてくれるよう話してくれと言つて参りましたが、それはなかなかむずかしいと思います。しかし、特調が雇用主であるということは、はつきりしておるのでありますから、使用主であつた極東海軍との話合いがうまくつかなくても、雇用主の責任において何とか解決すべきだと思いますので、重ねてひとつ労働大臣の積極的なごあつせんをお願いいたします。
  56. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この問題がたいへん先に延びるということでありますと、ただいまのようなことも考えるべきであると思いますが、何せ、話がすぐにもできますというような報告ばかり参るものでありますから、すぐできるということを信頼しておるのであります。労働者諸君に対する思いやり云々の話がございましたけれども、できるだけこういう問題は早期に解決しなければならぬということで、私も及ばずながら努力いたしておる次第でございます。駐留軍労務者の占領軍時代の退職手当なども、非常に懸案となつておりまして延び延びになつておりましたが、皆様の御好意で、このほど全部この問題は解決できました。それと同時に、懸案になつておりましたこの極東海軍の支払い問題も、この際解決したい、こう思つておる次第であります。
  57. 岡良一

    ○岡委員 労働大臣がお急ぎのようでありますから、私は希望だけを申し上げておきたいと思う。  本条約受諾に伴いまして、第一条でありますが、ここには御存じのごとく「職業安定組織の本来の任務は、必要な場合には他の公私の関係団体と協力して、完全雇用の達成及び維持並びに生産資源の開発及び利用のための国家的計画の不可分の一部として雇用市場を最もよく組織化することである。」とある。この点は、この条約を受諾する日本として、重要な責任部門であると思う。しかしながら、現に日本の国あるいは政府が、こういう生産資源の開発利用のための国家的計画を立てておられるかと申しますと、これについての論議はやめますが、現在はいわゆる岡野試案と称する中間報告しかない。その報告について見ましても、例えば五年後には、日本の生産規模は指数的に一四%ばかり上昇する。これに伴い労働力は五%ばかり吸収できるという、まつたく目標数字ばかりを羅列しておるという程度であつて、これでは私どもは納得できない。しかも、こういう雇用計画というものは、これは経済審議庁の方で、係の人たちが統計の数字をいろいろと工作しておられるようであるが、私の考えによれば、むしろ日本の産業の上昇をうたわれておる生産資源の開発計画なり、利用計画を、国家的規模でやろうとするならば、日本の人口動態からかんがみて、当然雇用計画というものがバッツク・ボーンじやないかと私は思う。これは決して経済審議庁にゆだねるべきではなく、労働省が直接これにタッチし、労働省の責任において、雇用計画に裏ずけられた産業建設計画、こういうところまで持つてつてもらいたいと思いますので、その点をひとつ十分労働省としてもやつていただきたいということ。なお関連して、お願いを申し上げておきたいと思うのでございますが、それは昨年六月のILOの第三十五回の総会で採択ざれた、あの社会保障の最低基準に関する条約、もろもろの労働に関する国際労働条約がありますが、あの条約は、日本の現実においては特に必要だと私は思う。しかも、これが労働省の所管となり、その多くの部分が厚生省の所管になつておるというようなことからいたしまして、現在のところ、この国会の承認を求められる時期については、なかなか私どもの期待するようなわけに行かないような外務大臣の御答弁もありましたが、しかし、この最低基準に関する条約は、私どもとしては、あらゆる労働条約の中でも、日本の現実において一番必要なものであろうと考えますので、労働省としては、厚生省とどうかひとつ御協力、御検討の上、一日も早く国会の承認を求められるの手続をとつていただきたいということを、あわせてお願いいたします。
  58. 上塚司

  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 労働省の方に伺いたいのですが、こういうふうな条約加盟いたしますからには、当然条約違反にならないように守られなくてはなりません。ところが、この条約加入しながらも、条約違反と考えられるような問題もときどき起つて来るのであります。たとえば、ただいま岡委員が述べられましたように、職業安定組織構成に関する条約でございますが、こういうふうな条約加盟するからには、当然職業安定というようなものが、完全に考えられなければなりません。ところが、ここで思い出されますのは——私ちようど、この条約が、この前に国会の委員会にかけられたときにも言及いたしましたけれども、大谷の石材問題、たとえば婦人たちが、あの坑内に入つて作業ができないために、職をとめられてしまつて、生活ができないという、非常に大きな問題が起きておりますけれども、一年たちましても、まだこの問題が何ら解決されておりません。あのときには、失対あるいはその他の方法で解決いたしますというような御答弁でございましたけれども、その後大して解決をいたしておりませんが、これに対してどう思われるかを伺いたい。
  60. 龜井光

    龜井政府委員 大谷石の問題につきましては、先般の国会で御質問もございまして、その方途につきまして、一応の御説明を申し上げたのであります。その後、地元の栃木の基準局の努力によりまして、私が報告を受けましたところでは、ほとんど職場の転換と申しますか、坑内から坑外の仕事、露天掘りの方の仕事に、すべて円滑に行つて、あとわずか五、六人程度の者が残つておるということを、実は先月の末に報告を受けておるのであります。従いまして、従来特別の監督指導をして参りましたものを、本月から、一般の監督の状況にもどしたという報告を受けております。大体その点は円滑に解決されておるものと考えております。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ところが、なかなかそうではございませんでして、職業がないし、食べて行かれないために、どうしても坑内に入る。そうすると、それは基準法違反だといつて、とがめられる。それでは、そのかわりの仕事を与えてほしいと言いましても、なかなかそうしてもらえないというので、婦人たちが非常に困つておるという状態を、私は見て知つております。ですから、もしも今のようなお答えをなさいますのでしたら、もう一度よくお調べの上、一日も早く解決されるようにしていただきたいということを希望いたします。
  62. 龜井光

    龜井政府委員 もう一度よく調査いたしまして、それに対しまして、対策を講じたいと思います。
  63. 上塚司

  64. 並木芳雄

    並木委員 批准の状況を見ておりますと、工業及び商業は十六、職業安定が十六、団結権及び団体交渉は十一となつてつて少いと思う。この理由。それから二つは十六で、一つ団結権及び団体交渉の方は十一であるというふうに、差があるのは、何か特別の理由があるかどうか。
  65. 下田武三

    下田政府委員 三条約批准国数がそれぞれ違いますのは、別に特別な意味があるわけではございません。偶然そういう差異が生じておるわけであります。なお初めに、批准国数が少いではないかというお話でございますが、大体日本は、今まで十四年間のギヤツプがありましたにもかかわらず、すでに十四加盟して、これを御承認を得ますと、十七の労働条約加入になります。ところが、労働条約のすべての条約のそれぞれにつきまして、平均批准国数を割出してみますと、大体一つの労働条約で十三加入国があるのが平均になつております。でございますから、日本は十四年間のギヤツプがあるにもかかわらず、やがて十七の労働条約批准しようとしておるのでありますから、国際的レベルから見まして、決して労働条約に対する熱意が足りないということは、公平に見て申し上げられないと思うのであります。
  66. 並木芳雄

    並木委員 局長質問の意味をちよつと取違えておると思います。今日まで批准国が十六あるいは十一しかない。これはやつぱり労働問題においても、二つの世界にわかれておるようなことが原因ではないかと思いますが、どういう原因でしようかと、私は尋ねているわけです。
  67. 下田武三

    下田政府委員 それは、この条約が比較的新しい条約であるからでございます。
  68. 並木芳雄

    並木委員 新しくても、いいものならば、もう三年もたつているのですから、どんどん批准が行われそうなものでありますけれども、それが順調に行つていないのは、何か特別の理由があるかどうかということなのです。
  69. 下田武三

    下田政府委員 この三つの条約を選びましてやりましたのは、比較的これでも批准国数が多い方なのであります。戦後の条約を見ますと、あるいは二箇国でありますとか、一箇国でありますとか、せいぞれ六、七箇国というような批准国数になつております。でございますから、各国がこれは大事な、加入していい条約だと認めるところは、大体一致しております。この三つの条約が、最近では一番多い加入国数を持つておる条約であります。
  70. 並木芳雄

    並木委員 少いということは、どうも事実のようでございます。私たちは、その点よく研究する必要があると思うのです。世界の労働運動の情勢というものがどうなつているか、つまり、この国際労働機構に対比するような、他の国際労働機構が生れようとする傾向があるかないかということ。それから労働組合の運動につきましても、世界労連と、国際自由労連とが対立しておるというような情勢から考えて、この批准が遅れている、少いというようなことに対しては、私たちは、ほんとうにいいものならば、どんどん話が進んで行きそうなものでありますけれども、そういう労働運動の最近の傾向というものは、どうなつておりますか。この際お尋ねをしておきたいと思います。
  71. 橘善四郎

    ○橘説明員 並木委員の御質問に対して答弁いたします。私ども本年の総会にも参つたのでございます。いろいろとお伺いいたしておることでございますが、別にILOと対立するような国際機関が設けられるというような情勢はございません。御承知の通りに、ILOは、国連の唯一の労働専門機関でございますけれども国連の立場から申しましても、おそらく将来において、もう一つ国際労働機関というようなものができることはないと、私は信じております。
  72. 並木芳雄

    並木委員 では最後に、もう一点伺つておきます。それは先ほどちよつと話が出たのですけれども、九月のILOアジア地域会議、これが日本で開催されるということでありますが、日本側の受入れ態勢を詳しく承知しておきたいと思います。たとえば場所とか、期間、構成国、あるいは人員、どういう資格を持つた人が参加するとか、あるいはその議題、議事の運営方法、あるいは費用、これに対する予算とか、そういうことを、政府としては、もう立案ができておると思いますから、この機会に伺つておきたいと思います。
  73. 橘善四郎

    ○橘説明員 御承知のことと存じますが、ILOからの特別の要望によりまして、わが国が第二回目のアジア地域会議に対して、お宿を仰せつかつたことになつておるのでございます。主催者側は、あくまでもILOでございまして、わが国は単にお宿をする。そしてそれに関連いたしましてのいろいろな準備、御便宜を提供するという程度にとどまつておるものでございます。従いまして、目下外務省等と御協力をいたしまして、諸般の準備を進めておるのでございます。開催期日は、九月の十四日から、九月の二十六日ということになつております。予算の関係等におきましては、ILOの方と、わが国と、折半分担をせなければならないということになつておりますが、ILOとわが国と分担する費用は、主としてILOから送つて来ますところの、約四十名内外のスタッフ・メンバーの旅費を、わが国とILOとが支払う。その他は、タイピストを雇い上げるとか、ステノグラフアーを雇い上げるとかいうようなものでございます。しかしわが国といたしまして、お宿をする上からは、これに関連しての費用を背負わなければならないというようなことになつておるのであります。目下、この費用につきましても、ILOと交渉いたしておりまして、なるべく公正な費用の分担が行われるように、交渉をしておる次第でございます。  議題につきましては、三つの議題がございます。第一は賃金政策に関するもの、第二は労働者の住宅に関するもの、第三は年少労働者の保護に関するもの、この三つの議題からなつておりまして、さらにILOの事務局長報告というのがございますが、これに対しての討議が行われることになつております。  会場につきましては、目下どこがいいだろうかということで、調査、研究をしておるのでございます。なるべくあまり費用のいらないように、しかしながらILOとしても、お客様に対しまして、なるべく御満足が与えられるようにということで、あるいは東京会館を使用するようになるのではないかとも考えられております。  参加国は、今日の段階の情報によりますと、二十箇国でございます。アフガニスタンからこちらの東南アジアの国、そうして濠州も、ニュージーランドも、もちろん入ります。それから領土の関係もありまして、フランス、オランダが正式に入り、英国も入ることになつております。オブザーヴアーといたしましては、米国と、あるいはカナダが参加するというような場合も考えられるのであります。
  74. 並木芳雄

    並木委員 参加人員は合計何名くらいになる見込みですか。それから日本側の予算として計上されているのは、どのくらいでしようか。
  75. 橘善四郎

    ○橘説明員 二百名内外の外国からの参加者があるという見込みでございます。それから予算の関係につきましては、最初に申し上げましたように、外務省の方の予算として計上されておのでございますが、分担金と申し上げましたのが約一千七百万円になつております。それからわが国の方として、お宿を申し上げる関係において、必要なる費用といたしまして、約四百万円くらい計上されておるように存じております。
  76. 上塚司

    上塚委員長 労働三条約に対する質疑はほかにございませんか。——ほかにございませんでしたら、三条約に対する質疑はこれにて終了することといたします。
  77. 田中稔男

    田中(稔)委員 先ほど労働大臣に質問いたしました件につきまして、国際協力局次長がお見えしなつたので、お尋ねいたします。  御存じだと思いますが、極東海軍に勤務しておりました日本労務者の松岡一郎君外四百五十三名の者が、昨年十一月中旬から十二月中旬にかけまして、全員不当解雇を受けたのであります、これにつきましては、極東海軍の側及びこれらの労務者の雇用主であります特別調達庁の措置が不法であるということは、東京労働基準局長が認定したのであります。これは労働基準法の第二十条の違反であるという認定であります。それで解雇予告手当として、概算七百四十万円ほどのものを支払わなければならないということになつたのであります。特別調達庁といたしましては、米軍の方との話合いがうまくつかない。つまりサインをしてくれないので、支払うことができないと言つておるのであります。しかし、極東海軍の方との話合いがどうでありましようとも、雇用の責任を持つておりますところの特別調達庁としましては、そういう無責任なことでは困るのでありまして、これらの諸君は、もう解雇以来半年以上になるので、失業保険の受給期間も終りまして、約半数の人はまつたく路頭に迷つておるというような状態でありまして、一刻も早く手当の支給されるのを待つております。ことに最近はお盆になつて、そういう要求が非常に強いのであります。今まで衆議院の労働委員会でも、たびたびこのことを質問されましたし、それから特調に対し、関係方面に対し、それぞれ陳情も行われておるのでありますか、もうすぐ出る、一週間待つてくれ、十日待つてくれということで、今日まで事態が解決を見ないで、遷延しておるのであります。最近は、これを何か、日米合同委員会に持ち込んで、アメリカ側と話合いをすることになつておるということであります。現在のところ、一体どういうふうな状況になつておりますか、關次長にお尋ねいたしたいのであります。御答弁を待つて、重ねて質問をいたします。
  78. 關守三郎

    ○關説明員 お答え申し上げます。この問題は、松岡さんその他からも支援話を聞いておりまして、私もたいへん御同情申し上げて、何とかしたいと思つております。なぜ遅れたか、この点を御説明申し上げたいと思います。  もともとこれが起りましたときに、若干、解釈の問題と、感情の問題から、米軍の方も非常に興奮いたしまして、こじれて参つたのでありますが、調達庁の方で、米軍とこのような問題をまとめるのが筋なのであります。それがどうしてもらちが明かないで、私どもの方へやつて来たのが、二、三箇月前だつたのであります。そのときに私どもは、これとちようどひつからまして、LSO全般に関しまして、米軍から、そういう訴訟その他が起きたとか、または不当なる労働行為によつて賠償またはクレームを支払わなければならぬというようなことがあつた場合には、米軍は、まず調達庁が入つておるから、米軍が払いもどしをするということにつきまして、総括的な話合いを月下やつておる最中なのであります。その交渉におきまして、将来のことだけでなくて、遡及して、過去のそういうふうなクレームも払うということについて、口頭と申しますか、会議の席上では、大体において原則的な同意をとりつけたのでございますが、これをサインさせますれば、この問題も一挙に片づくわけになつております。そのサインをさせるのは、この問題だけでなくて、全般的にこの労務基本契約というものに関連いたしまして、その他のいろいろな問題もございますが、債務関係の償還をどうするか、証拠書類をどうするかというような問題を全部ひつくるめまして、交渉をやつております。この点だけを抜き離してサインすることができないので、この一月ばかり遷延いたしまして、たいへん申訳ないと思つているわけであります。  それで、今後はどうするかという御質問でございますが、これは私どもも、当事者の労務者の方にも申し上げてあるのでありますが、もうちよつと待つてくださいということを言つておつたのでありますけれども、ちよつと待つたが大分になりましたから、もしこの一週間ぐらいでらちが明かなければ、どうしても、これは別個に解決するような交渉をしなければならないだろう。ただ私が、そうすることはまずいと思いますのは、この問題を別個に取上げげますと、全般の問題についても、こういう問題まで、みんなお前の方はひつくるめて来るのかということになりますと、この問題自体が、法律の解釈の点におきましても、手続の点におきましても、日本側に若干の弱みがあるのでございまして、必ずしもわれわれが一方的にいつて、向うから金を取立て得るような性質のものではないと、私は思うのでございます。その点におきまして、当事者の方にはたいへんお気の毒ではありますが、なるべくならば全般の大きな網をかぶせて取つてしまつて、それからこの話に持つて行きたい。こういうふうに思つておるわけであります。
  79. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の御答弁を伺つておりましても、こういうクレームが、このケースだけでなくて、たくさんあるようであります。アメリカというのは、こういう労働条件などについては、私は非常に公正に考えてくれるかと思つたのですが、なかなかそうでもないようです。しかし、そういうことで困るのは、とにかく労務者であります。しかもこのケースにおきましては、昨年解雇がありまして、もう半年以上も経過しておりまして、労務者は別に財産もないのでありますから、とにかくその日暮しであります。こういう解雇手当などというものが、半年以上も遅れるということになりますと、非常に困るのでありますから、今おつしやつたように、全般的に問題を解決して、それから個々にというお考えも、筋としては通るのでありますけれども、現実の問題として、一週間待つてくれ、十日待つてくれが大分延びております。今のお言葉では、もう一週間ぐらいというお話がありましたが、もう一週間というと、きようが十七日ですから、二十二、三日までには何とかできるということでしようが、一週間を経過してできない場合には、どうなるのでありましようか。これはひとつ御相談なのでありますが、何か便法を講じていただいて、合同委員会における交渉交渉として、一方、解雇手当の概算払いでも、別途お考え願うというような方法はないでしようか、このことをひとつお伺いしたい。
  80. 關守三郎

    ○關説明員 現在そういう支払いをするにつきましては、やはり米軍とはつきり話をつけてから支払う、とこういう種類の問題になつておるのであります。これは先ほど非常にたくさんあるようなことをおつしやいましたけれども、そうたくさんはないのでございます。こういうふうな若干ともいわくつきの問題になつておる金につきましては、やはり正式に米軍と話合いをつけてからでないと、支払いにくいと思います。それは原則でございます。しかしながら、今おつしやいました通り、労務者の方は——実はごく最近までは、労務者の方にお話をしまして、その了解を得て延ばして来たのであります。この点は、はつきり明らかにしておきます。私がかつてに延ばしたわけではなくて、労務者の方においでいただいて、よくお話をいたして、こういう事情だから、たいへんお気の毒だけれども、待つていただきたいということで、この二週間くらい前までは待つていただいた。しかしながら、その後予期に反しまして、話がつきませんので、これは特殊の問題として別個に取上げて、あとはクレームとしてまわすということにしまして、この問題だけは、何とか概算払いを認めていただくように交渉したいと存じております。
  81. 田中稔男

    田中(稔)委員 別に、今の御答弁の善意を疑うわけではないのであります。また労務者の諸君も、善処するという誠意を信頼して、おそらく今日までがまんしたと思いますが、おそらくそのがまんの限度がもう過ぎたと思う。それで、今何とかひとつ考えたいというようなお話もあつたのですが、雇用の責任は、特別調達庁、政府にあるということは、はつきりしておると思いますから、どうかひとつ雇用責任者として、もつと誠意を持つて善処してもらえば、何とかそこに便法もないことはなかろうと思いますから、どうぞこれはひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
  82. 上塚司

    上塚委員長 次に日仏文化協定に関する質疑を許します。並木芳雄君。
  83. 並木芳雄

    並木委員 日本国フランスとの間の文化協定でありますが、この中を見ますと、「文化的性質」とか、あるいは「文化的資料」とか、この文化という意味において、私ども一応定義をつけておかないと、協定である以上、困るのではないかと思います。そこでここにいう文化は、いわゆる狭い意味の文化と思いますが、文化という意味について、どういうふうに定義を持つておられるか、お尋ねしておきたいと思います。
  84. 下田武三

    下田政府委員 文化という言葉に定義をつけたらどうかというお話でございますが、文化——カルチュアということに定義をつけるということは、これは非常にむずかしい仕事だと思いますし、かえつて協定の建前から申しますと、漠然と広く考えておつた方が、文化交流の促進の上に都合がいいのではないかと存じます。しからば具体的にある事項をやることが、はたして文化の範疇に属するかどうかという疑問が起りました際は、この協定によつて設置されます両国の混合委員会で、具体的に個々の問題についてきめたらいいのではないか、そういうふうに考えております。
  85. 並木芳雄

    並木委員 第一条の(b)のところに「文化的性質を有する展示会への出品を目的とする作品又は物品の送付及び展示」というのがあります。これについてはどういうふうな展示会を予定しておられますか、お尋ねをしておきたいと思います。
  86. 下田武三

    下田政府委員 これも限定いたしておりませんで、「文化的性質を有する展示会」でございますから、絵画ももちろんございますでしようし、彫刻もございますでしよう。さらに小学校の生徒の作品もありますでしようし、教科書の展示会もありますでしようし、きわめて広く解しまして、具体的のことはやはり混合委員会できめて行くことになると存じます。
  87. 並木芳雄

    並木委員 その(f)のところですけれども「給費留学生その他の留学生の滞在」というのがあります。これはやはり混合委員会できめて行くということになるのですか。具体的に計画ができておるならばお尋ねをしておきたいと思います。
  88. 下田武三

    下田政府委員 これは現在実はフランス側が協定締結前からすでに一方的に言つておる事項でございまして、フランスは終戦後、初めは六名か七名程度でございましたが、本年には十八人を給費留学生として招致してくれることになつております。これはフランス語でいうブルシェという範疇に属する留学生でございますが、「その他の留学生」というところはエチユデイアン・パトロネという範疇がございまして、これは旅費等本人がやつて来るのは本人負担であるが、やつて来たならばいろいろな便宜を加えてやろう、そういうブルシエ以外の別の留学生も考慮されておるわけでございます。日本側の現在の既定予算にはフランスから留学生を招致するという予算は組んでおりませんが、将来はこの予算を組みまして、多少でもやはり対応した試みをいたさなければならないと考えております。
  89. 並木芳雄

    並木委員 その次の(g)の項目、「文化的性質を有するラジオ放送の交換」というものに対する計画はどうなつているでございましよう。
  90. 下田武三

    下田政府委員 これも混合委員会でいろいろ相談してとりきめることでございますが、どういうことかと申しますと、本人が相手国に行つてラジオの放送をすることもございましようし、先日ダミアというフランスの歌歌いが参りましたが、そういうこともありましよう。また本人フランスにおつて電波で日本に放送をするというようなこともあると存じます。
  91. 並木芳雄

    並木委員 これはだだそういう放送だけの項目ですか。それとも放送局というものに対する条項になつて現われて来るのじやないですか。
  92. 下田武三

    下田政府委員 むろんそういう場合もあろうと存じます。たとえば日本の放送局でフランスのタベというのを催しまして放送局と放送局とが提携してやる場合もあると存じます。
  93. 並木芳雄

    並木委員 それではこういうふうにお尋ねしましよう。この条約加盟して向うと一箇年政府としては具体的にどういうことを考えておるか。そう聞いた方が写そうなんですが、この条約目的に沿うために、政府としては、日仏文化に貢献するためにどういう計画を立てておるか。その予算などをともに詳しくお尋ねをしておきます。
  94. 小滝彬

    小滝政府委員 政府としては今何ら予算を持つておりません。すべてこれからのことは、この第七条にあるところの混合委員会で協議してきめられることになつておると考えております。
  95. 並木芳雄

    並木委員 ずいぶん情けない答弁です。混合委員会で初めて議題にするというのじやなくて、こういうかおり高い文化協定なのですから、少くとも外務省としては抱負を持つた計画がなければ、われわれは承認できないと思うのです。予算は自由党と改進党の協定によつてはとうていまかない切れないような予算を計上して、文化の交流に資するという構想がなければならぬ。この混合委員会という名前はおもしろくないと思うのです。何かほかの言葉がありそうですが……。何か最近はやりの混血児みたいなものを連想させるような気がして、混合委員会という名前はおもしろくないのです。そこで初めて協議するというのじやちよつと足りないと思うのです。具体的の構想があつてしかるべきだと思うのですが、それをはつきり説明してもらいたいと思います。
  96. 小滝彬

    小滝政府委員 これは末段の問題でありますが、この混合委員会はヨーロッパなどではやつておりまして、フランスにすでに設置せられているのもあります。そこでコミスイオン・ミックストというのを混合委員会というふうに釈したわけであります。
  97. 並木芳雄

    並木委員 外国語を聞いているのではなくて、日本語を聞いているのです。
  98. 小滝彬

    小滝政府委員 その精神は、民間の方で自発的に話合いをして、政府から強制してやるのではなく、こういう意味でこの委員会を設けているのであります。留学生費などにつきましても、来年度はぜひ計上いたした行きたいと考えておりますが、現に日仏間には文化の交流が行われており、歴史的にもフランスとの関係は深いわけでありますから、できればそうした自発的な民間の発意によつて行われるものを、政府の方で援助するというやり方をいたして行きたいと考えております。
  99. 上塚司

    上塚委員長 次は岡良一君。
  100. 岡良一

    ○岡委員 この協定は、今お聞きすれば予算が伴つてないということはまことにナンセンスと思われます。一応条文をそれぞれについて見れば、われわれもわからぬことはないと思うのでありますが、この機会に確かめておきたいのは、たとえば先般浅間山が在日米軍の用に供されました。これは申すまでもなく日本が自然科学の分野において国際的に杜絶されておつた間も——しかも一昨年のオスローの国際地震学会で、この浅間山の火山観測の研究実績が高い評価を得ました。従つて世界の権威者も次々にその実地を見に訪れているという状態であります。いわば日本世界に誇り得る高い文化財というものが、在日米軍によつて、その観測が不可能になるだろうということは、いかに日本政府あるいは外務省が文化政策を呼号されようとも、みずからの手でそれをほごにしたものと私は考えます。また先般参考人の陳述を聞きますと、日本の民族が誇る古代文化財をゆたかに集められておる奈良の文化的環境が、RRセンターの設定によつて著しくそこなわれる。ということは、単に文化財が個々に損壊をされ、破損を受けないまでも、文化財を保存している上ではたいへんなことだと思う。しかも昨年のユネスコの総会において、日本の外務省みずからが、戦時中における保護指定地域として奈良を指定してもらいたいということさえも言つておる。それが一方においてはRRセンターとなつて、古いとうとい民族的文化財が集められておる奈良の文化的都市環境、雰囲気というものがまつたく無視されるような結果となり、これでは他の国々といかに文化協定を結ばれてみたところで——日本の外交方針の中において一体文化政策というものをどの程度のウエートで持とうとしておられるか。私は今後の日本政策特に外交方針においては、文化政策というものは非常に大きな問題だと思うのであります。ローマやパリが戦禍から免れたものは、やはり民族共通の古代の文化を守ろうとするかおり高いその大きな情熱の結果であると思うのであります。日本が平和国家として、文化国家として行こうとするならば、文化を守ろう、文化の誇りという気持というものは、日本の将来の外交方針における非常に大きなウエートを持つものと思うのでありますが、政府は外交方針において今後文化政策をいかに発展させようとする心構えであるのか。具体的な点は別としても、その心構えをこの機会にはつきりと確かめておきたいと思います。
  101. 小滝彬

    小滝政府委員 岡委員が申されました通り、私どもも文化政策の重要性を十分認識しておるつもりでございまして、今度のこの日仏文化協定の御承認をお願いしておるような次第でございます。なお今後もこれに類似しますような協定ができ上ると考えております。  なお例として浅間山の地震研究所並びに奈良の関係をお述べになりましたが、浅間山につきましては、この地震研究所の重要性を考えまして、いろいろ調査いたしました。結局あそこにアメリカの登山演習場を設けるのは好ましくないというので、これはとりやめることにいたしたような次第でありまして、こうした点については常に留意しておる次第であります。  また奈良につきましては、すでに他の委員会でも岡委員からお話がありまして、一応御答弁いたしたつもりでありますが、RRセンターなるものは、もともと兵隊の休養の場所であつて、それ唇の問題が起るとはわれわれは予期していなかつたのみならず、奈良の市長さんも、この間はどういうように公聴会でお話になつたか知りませんが、あそこに置くことを希望せられておつたかに私は承知いたしております。あそこへ置きますと、五十数億円の相当の収入もあるというような点も現地で考えておつたようであります。また一方あそこは古代文化財があるからして、善良な若いアメリカ人たちが来て、これを見たならば、かえつて相互に文化の交流を促進するゆえんにもなるであろうというふうに考えておつたのでありまして、奈良が文化都市として非常に重要な所で、これを保護しなければならないというものと矛盾しない。むしろかえつてその方がいいのじやないかというような考えさえもあつたわけであります。しかし先般来の参考人のお話もありましたので、さらに検討いたしまして、もしこれがほんとうに奈良の文化財に対しておもしろくない影響を与えるというようなことがあれば、当然考え直さなければならないものであろうと考えております。
  102. 岡良一

    ○岡委員 ただいまの次官のお言葉ではありますが、ただ問題は、これは別に私ども責任を追究するという意味で申し上げておるのではないのですが、たとえば浅間山の問題にいたしましても、日本地震学会がまずその総会において反対の決議をし、それが他の諸国にも及んで、諸国の科学者も立ち上つて日本の文化財浅間山を守れという声が、やはり日米合同委員会の反省を促すようになつた。こういう事実は、やはり日本の日米合同委員会と申しましようか、今日のそうした渉外方面において、駐留軍に土地を提供するという場合に、日本の文化財というものをあまり気にとめておらなかつたという手落ちが私は感ぜられる。奈良にいたしましても、現にあの松井という参考人の陳述を聞けば、月に三十件から四十件に近い犯罪がこのためにふえておる、あるいは奈良の人口の千人に三十人の売春婦がいるということが、風紀上、教育上非常に悪い影響を与えておるということで、やはり奈良の住民として、しかも古い文化財をゆたかに蔵しておる奈良の市民としては、苦悶しておる姿をはつきり彼らは描いておる。従つて今次官のお話の、一時的にお金が入るから、その文化的な都市としての雰囲気や環境を阻害してもいいという考え方が、私どもにはどうしても納得できない。そういう点はこれは解釈の相違といえば解釈の相違でありますが、われわれはもつと本質的に掘り下げて、日本の文化を守り、また文化を通じて世界の平和を守る、こういう高い角度から文化財保護というものを推進していただきたいということを、私は心から希望いたしまして私の質問を終りたいと思います。
  103. 上塚司

    上塚委員長 次は戸叶里子君。
  104. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の二、三の質問並木委員がお聞きなりましたから、私は省略いたしますが、ただ二点だけ伺いたいのは、日本フランスとの文化協定と同じような文化協定が、どこかの国と結ばれているかどうかということと、もう一つは、こういうふうな文化協定が、どこかほかの国と結ばれるような計画がおありになるかどうかを伺いたいのであります。
  105. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま考えておりますのは、イタリア及びスペインとでありまして、目下交渉中でございます。なおインドやタイ等の東南アジアの諸国との協定締結いたしたい意向を持つておりますが、まだこれは交渉の段階に至つておりません。  それからこれまでの協定は、戦前タイ、ブラジル、それからイタリア、ドイツ、ハンガリー、こういうふうな国にございましたけれども、当時は政治的に非常に親密関係があるのを、この文化協定に盛つたというようなものでございまして、現在の文化協定よりはよほど簡単なものであつて、親善関係をシンボライズしたというような協定であつたと思います。
  106. 戸叶里子

    ○戸叶委員 戦前のものにも、やはり給費留学生やその他の留学生の滞在等、今度の日仏文化協定に示されておるのと同じようなものがあつたのでしようか。
  107. 小滝彬

    小滝政府委員 戦前のは非常に簡単な抽象的なものでありまして、そうした具体的な規定は全然入つておらなかつたのであります。
  108. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点伺いたいのは、この日仏混合委員会のことですが、この委員を選任するにあたつては、どういう形をもつてなされるのでしようか。
  109. 林馨

    ○林説明員 お答え申し上げます。委員はまだ決定いたしておりません。この協定批准をまちまして政府が任命することになつております。ここにもございます通り、東京におきましては日本側から三名、フランス側から三名、それからパリにおきましては、日本側からやはり三名、フランス側から三名出ることになつております。
  110. 戸叶里子

    ○戸叶委員 まだ決定はなすつていらつしやらないでしようけれども、大体どういうふうな方をお選びになろうとしておるか、その基準を伺わせていただきたいと思います。
  111. 林馨

    ○林説明員 今のところまだ確定はいたしておりません。なるべくこの協定趣旨を生かしますように、その点考慮いたして行こうと思つております。
  112. 小滝彬

    小滝政府委員 戸叶委員に御参考までに申し上げますと、フランスなどの今までの例を考えますならば、フランスでは外務省の文化総局長、同文化総局顧問、文部省の大学関係の渉外局長、パリ大学の理学部長、近代美術博物館長というようなのが出ております。オランダでは、大学の教授が三名、アムステルダムの博物館総務部長、それから文部省の渉外局長、こういうのが向うの実例でありますが、日本としては日本の立場から別個に考えなければならないだろうと思います。
  113. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、外務省側からどなたかお入りになるとか、大学関係などからどなたがお入りになるという腹案は全然お持ちになつていらつしやらないのですね。
  114. 小滝彬

    小滝政府委員 目下慎重に研究中でございます。
  115. 上塚司

    上塚委員長 日仏文化協定に関しましては、別に御質疑はございませんか——なければ本件に関する質疑は、これにて終了することといたします。     —————————————
  116. 上塚司

    上塚委員長 次に日比沈船引揚に関する中間賠償協定に関する質疑を行います。岡田勢一君。
  117. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 日本フィリピンとの賠償問題に関連するこの種作業の着手につきましては、前に私が本委員会で岡崎大臣に質問をいたしましたように、今日の日比関係の友好回復の過程における情勢、並びに日本としまして東南アジアにおける資源の開発及びわが日本の過剰人口を海外に進出せしめるというような見地から、むしろこの種の作業は早く着手さるべきである。同時にまた私はそのときも申しましたように、この中間協定の国会の承認の提出が遅れているのではないかと考えております。ところでたまたまフイリピンにおける沈船作業がまず最初に取上げられまして、実行に移されるということになつたのでありますが、御承知のように陸上の作業などとは全然趣をかえまして、サルベージの作業は、いわゆる自然の猛威と闘わなければならぬ非常な危険作業でもありますし、現に外務省の方々も御承知でありましようが、国際関係におきましていろいろと違う法規と民情の異境に遠く進出をしてやる作業でございますから、あるいは風土病に冒されるとか——現に御承知のヴェトナムに出張しておりますサルベージ業者は、これは出発点も違うのでありますけれども、非常に困つているわけでございます。そこでフィリピンにおきましても、従来数十年の昔から世界において相当技術的に優秀であるという名を博しておりますわれわれ日本のサルベージ業者が、今回公式に日本の技術役務の進出として初めて派遣せられることになります。これは一箇月や三箇月の問題ではございませず、おそらく数年間の苦心努力によつて実を結ぶわけになるのでございますが、たまたまこの第一回と申しますか、初頭に進出をいたします作業技術隊が成功いたしますかいなや、これはあとの仏印三国の賠償問題並びにインドネシアその他の地域にも相当に影響をいたしますし、日本人の今後の海外進出に対する信用あるいは技術の一つの標準にもなるのではないかと思われますので、私たちはどの業者が進出をしたといたしましても、この特殊の作業に対して政府が十分の理解を持たれまして、まずこの特殊性を持つ作業を成功せしめるという親心をお持ちになつて、この仕事に対処せられるということが必要であると存じます。そういう点につきまして、去る三月下旬から四月だと思いますが、この中間協定に対する細目の協定に、政府の代表が御出張になつて来られたことを聞いておりますが、その当時に、それらの問題を加味いたしました細目協定が詳細に結ばれておりますのかどうか、つまり今申し上げましたこの派遣に対する根本的の考え方いかんということと、細目協定がどのように具体的に協定をされておりますかということを、まず最初にお尋ねしたいと思います。
  118. 小滝彬

    小滝政府委員 仰せの通りこの細目は非常に大事なものでありまして、先般行つて大体話合いはついておりますけれどもフィリピン側の希望もありまして、交換公文が済んだ上で発表してもらいたいということでございます。内容は大体われわれとしては満足なものだと考えておりますが、発表を差控えてもらいたいということでありまして、細目についてはここで申し上げることはちよつといかがかと思います。
  119. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 今小瀧さんがおつしやつたのは、私の第二の質問でありますが、第一の質問である根本的の心構えということについて御答弁を願いたいと思います。
  120. 小滝彬

    小滝政府委員 その点はまことに同感でございまして、これからいよいよ実施するということになりますれば、関係官庁としてよく話合いをいたしまして十分間違いのないようにして、ほんとうに模範的なサルベージが行われるように配意いたしたいと考えております。
  121. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 細目協定はこの批准後に発表してもらいたいという向うの希望のように今次官から承りました。外交問題のことでございますから、しいて今それを発表してくださいとは申しませんが、フィリピン日本とはまだ正常の外交関係が結ばれていない、いわゆる大きく申しますと交戦状態と申せますので、向うに行きまして、これらの困難な波の上の仕事をするにあたつて、ことに向うの官憲に対しまして、あるいは陸上の居住施設でありますとか、または水あるいは食糧等の供給を受けなければならぬとか、また作業面におきましては港湾内における暴風時における避難でありますとか、作業船の通行用の航路でありますとか、あるいはまた向うは税関などが非常にいばつて見識ぶつていろいろなセクシヨンを強調するところでありますが、一々向うの官憲の海陸ともにまた交通問題におきましも、いろいろな許可を受けなければ動かれない、そういう点に対しまして万遺憾のないような、協定が御発表になれずとも、われわれ日本人を、今国交回復しておりません、国情、民情、風俗が違いますフイリピンに派遣して、安心できるかどうか、その自信をお持ちになつておりますかどうか。
  122. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいまの岡田さんの御意見並びに御質問に対しましてお答え申し上げますが、沈船引揚げの業務というものは非常に危険が伴うし、人知れない苦労があるということはごもつともでございまして、われわれといたしましては、もちろんそれらの苦労をできるだけ少からしめるように、フィリピン政府とかなりこまかい点まで交渉をいたして参りました。従いまして先ほど政務次官からお答え申し上げましたように、こまかい点の打合せの結果できました了解事項あるいは事項の細目というものにつきましては、先方の希望もありますので、ただいまのところ公表を差控えておるわけでございますが、いずれの日かこれは公表する時期があるものと思つております。但しそれは先方との打合せの後でなければいけないと思つておるのでありますが、ただ御質問がございますれば、個々の問題につきましてさしつかえない限り、お答え申し上げる用意はございますから、どうぞ後ほどでも御質問いただきたいと思つておるわけでございます。
  123. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 熱帯地でございますので、まず第一に居住施設それから飲料水、生鮮食料品、もう一つは氷でございます。氷がなければ作業はできません。そういうものの供給についてはスムースに行けるようになつておりましようか。
  124. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。それらの点につきましては非常にこまかい点まで了解に到達いたしております。
  125. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 各作業船が避難港に出入りあるいは定繋場から出入りをいたします点、それからその航路筋並びに引揚物の陸揚場、それらについての許可につきましては、派遣される業者が向うの官憲に折衝して許可をとるというのでございますか、あるいは現在派遣されております在外事務所とかがこの手続をやつてくださるのですか、実際問題として作業に着手してからです。またはそれとは別に賠償関係の作業を管理する政府の管理機関ができて、向うへ派遣されて、それが担当してくださるのか、その点をお伺いしたい。
  126. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。港へ入つてから作業したり、外へ出たり、それから引揚げました船体をどういうところに集積するかというふうなこと、それから作業に従事いたします人員の方々のための生活居住施設、あるいは作業をするに必要な器材の置場その他こまかい問題が多々あるのでございますが、それらの問題につきましては先ほどお答え申し上げましたように、大体日本側の要望を先方はいれておりまして、作業を実施する上において困難が生じないようになつているわけでございます。  それから第二の御質問は、これから運営して行く上におきまして、先方の中央政府ないしは地方官憲あるいは税関の官憲等と現場で仕事をされる方々との連絡をどうするか、また運営して行く上において円滑に処理して行くための措置を考えて行くかという御趣旨でございましたが、この点に関しましても実は今度の中間協定を結びます前に専門家を現場にやりまして、一々数十隻の船につきまして一船ごとに精密な調査をいたしましたその際に、先方政府の役人あるいは海軍の人たち等が、日本側の調査船に対し供与しました便宜あるいは協力というものは、非常に満足すべき状態であつたのでございます。その点から推しましても、実際に沈船引揚げの作業を行うにつきましても、われわれといたましては、フイリピンの中央政府並びに地方官憲から十分の協力援助を期待してさしつかえないという感じを持つておる次第であります。  なお日比両国間でこの引揚げ作業を円滑に運営するために、何らかの管理機関を設けるかどうかという点でございましたが、この点も非常に重要な点でございまして、政府は目下具体的に考究中でございます。場合によりましてはマニラにあります在外事務所特定の公務員を派遣いたしまして、もつぱらそのための連絡に当らしめることをも考慮しておる次第でございます。
  127. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 民間の作業員などは、ことに外国に参りまして毛色の違う役人にいじめられることになりますと、さつぱり作業が進みません。それでこれは希望的の話になるかもしれませんが、この作業が安心して進められるように、その点については親切なお考えで、しかもまたそれが迅速に運ばれませんといけないと思いますから、そのような御考慮を願つてそういう機構をおつくりにならんことを希望いたします。  それからまた出張員の衛生あるいは病気になつたときの手当等の件でございますが、それも今の大野参事官のお話からすれば、私は蛇足ではないかと思いますが、それらの点につきましても、病院の利用とか医療地の選定とかいうような点について、十分御配慮を願つておきたいと思います。  それからその次に今対象になつております君島丸調査いたしました地域は、マニラ湾とセブ港その他、大体マニラとセブとが対象になつておるように思うのでございます。そのほかまだたくさんの地域にございますが、それは調査は未済になつておりますが、これはどういう時期に調査をして、どういうふうに進めて行くとか、あるいはたとえば今年度はもうマニラとセブ港だけであつて、そのうち作業をやつている間にサンフエルナンドとかレイテとかいう方面に調査団を進める予定になつておるのかどうか、その接続の関係をお伺いしたい。
  128. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げますが、仰せの通りマニラ湾とセブ港か一番たくさん船舶が沈んでいる地域でございまして、第一着手といたしましてこの二つの箇所について、精密な一船別の調査をいたしたわけでございますが、その他の地域につきましても、数箇所につきまして引揚げをしてほしいという希望が、先方政府からこちらに申出があつたのでございます。但しそれにつきましては場所がたいへん飛んでおりますものですから、経済的に調査船を次から次へうまくまわせるように、順序と時期を確かめなければならないわけでございましたが、その間に中間協定ができましたので、その問題につきましては先方もただいまのところはそのままになつております。どういうふうにこれからやつて行くかということでございますが、ただいま御承認を得るために本日提案されたこの沈船引揚に関する中間賠償協定が幸いにして御承認を得まして、そうして政府承認によつて効力を発生するようになりましたならば、これと並行いたしまして他の地域につきましてもだんだん着手して行くことになろうと思つております。但しその場合にはあらかじめ先方とさらに具体的に、次にはどこ、次はどこというふうに話合いをいたしまして、合意に達した上でやりたいと思つておるわけでございますが、マニラ湾並びにセブ港の場合のように調査だけを切り離して先にやりますか、それとも実際に見当のついておる地域につきましては、引揚げをする両前に引揚げ作業の一部として、調査をもあわせて行うようにとりはからいますかにつきましては、ただいまのところまだ決定を見ておりません。
  129. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 私の見解では、引揚げ作業の実行をする場になつて、それに含めて調査もやるということは、これは技術的には不可能でありまして、まずこの種の作業は精密な一隻々々の調査を完成してからでなければ、作業方法並びにそれに用います設備等が決定いたしません。でありますから、円滑にこの作業の遂行を期待いたしますならば、別になるべく早い機会に調査を精密にいたしてから計画を立てるというふうにならなければいけないと思います。  それから、日本は御承知の通り鉄鋼資源が内地で得られません。鋼材の原料はほとんど全部が外国から輸入をいたしております。そこでスクラップ、鉄鋼のみならず非鉄金属にいたしましても日本は今後必要でございますが、しかるところこれが沈船引揚げの所有権はマニラ政府にあるわけでございますが、この引揚げたスクラップの一部あるいはまた全部、そういうようなものを日本にくれれば、有償でもらうべきが私は非常に望ましいと思います。そこで政府は今までの交渉過程におかれまして、そのスクラップの一部または全部を、日本に供給がせられないかいうことについて、お話合いになつたことがございますか、どうですか。
  130. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げますが、引揚げられた船舶から生じますスクラップの処分に関しましては、フイリピン側にいろいろな案があるとと思つておりますが、正式にわが方にまだ連絡を受けておりません。但しただいま岡田委員の御指摘になりましたそのスクラップの一部あるいは全部を、日本で有償で取得してはどうか、あるいはそれに関して何らかの話合いが進んでおるかというお話でございましたが、引揚げられてスクラップにさるべきものにつきましては、その一部分を有償で日本にも売つてもらえるように話合いがついております。但しこの点は、これ以上詳しく申し上げられない次第でございます。ただそういうことになつておることだけ御了承願いたいと思います。
  131. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 私は先ほども申しましたように、日本フィリピンとの国交の回復、現在またモンテインルパの戦犯の特赦減刑等にも関連いたしまして、フイリピン国民の対日感情が非常に好転しつつあると存じます。またわれわれの側から申しましても、東南アジアの資源の開発並びに開発銀行の進出ということが急がれるわけでございます。全般的の外交交渉の問題はなかなか複雑でございまして、総額の問題などについては、これは容易に解決ができない問題とは思いますが、まずこの機会に、この種の沈船引揚げ作業をできるだけ早く着手するということが最も望ましいと思います。政府におかれましては、この批准ができましたならば、実際にいつごろから着手をなさるか、大体の見当でよろしゆうございます。そうしてまた急ぐ方がいいとお考えになりますかどうですか、そのことをちよつとお伺いいたします。
  132. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。御説のように、いつごろから始めるかという問題は、非常に重要な問題でございまして、幸いに本協定が国会において御承認を得まして効力を発生するようになりましたならば、できるだけ早く実行に着手するのが、この協定をこの段階において——非常な困難を冒して実は妥結したのでございますが、その意味をますます大きくするゆえんだと思うのであります。そういう意味におきまして、時期は早ければ早いほどよろしいというふうに政府としては考えておるわけでございますが、ただモンスーンの時期に入りますと、起重機を載せました船などを現場まで回航いたしますのに、いくらか危険があるというような点もございまして、やはり時期的にはそういう気象的な点を十分考慮に入れまして、なおかつ比較的早い時期を選びまして実行いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  133. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 大体わかりましたが、私は技術的に考えまして、フローテイング・クレーンなどの回航の時期は、台風時期はもちろん行けませんし、冬季のモンスーンの時期も行けませんが、台風時期とモンスーン時期の中間の、十月から十二月の末までの間には多少航洋性を持たせました船などを用意いたしますならば、回航は可能であると私は考えます。でありますからお役所仕事でなしに、こういう現実の事実に即応して、この効果をなるたけ大ならしめますために早く着手していただきたい、こういうふうに私は考えております。  もう一つ、ついでにお伺いいたしたい。フィリピンの問題とは違いますが、御承知のヴエエトナムに出張いたしておりますある業者が、この契約の蹉跌で非常に困難をいたして、莫大な損失を出そうとしております。これはまことに気の毒なことでありますと同時に、先にも申しましたように、日本の対外信用というものに非常に影響しはしないか。そうしてまた日本と仏印三国との国文にも、相当な影響がありはしないかを憂慮いたしておるものでありますが、それの解決に対しての見通しについて、外務省はどういうふうにお考えになつておりますか。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕
  134. 卜部敏男

    ○卜部説明員 お答え申し上げます。ヴエトナムに参りました業者は、これは相手方がヴェトナム政府でございますが、全然プライヴエートの、私契約の形で参つておりますので、その間実際に向うに参りましたときの事情を調べてみますと、多少手抜かりもあつたように聞いております。これはまつたく純粋に私契約の問題でございますので、なかなかうまく行かないというのも、そういうふうな契約関係がはつきりしませんために、うまく行つておらないわけでございまして、従いまして日本のサルベージ事業の信用云々ということには関係がないように考えております。
  135. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 フイリピンヘの回航着手の見通しはどうですか。
  136. 大野勝巳

    ○大野政府委員 先ほど岡田さんの御質問のうちお答え漏れがございましたから、ここでお答えしておきますが、岡田さんはその道の権威者でいらつしやいますので、その御意見政府といたしましてとくと拝聴いたしておきます。ただクレーン船を現場に回航できなくとも、現場でやれる仕事はむろん台風その他にあまり直接影響されずに回航して行きたいというふうに思つておるくらいであります。
  137. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 大体よく了承いたしました。なるべく私としての希望意見につきまして、お取上げになれるような点がありましたならばお取上げ願いたい。この仕事は国際監視の中で行われることでございますから、先ほど申しましたように政府におきましては、外務省と限らず、各省ともに親心をもつて、親切に派遣したものたちの成功を援護してやるというようなおつもりで、御努力くださらんことを希望
  138. 熊谷憲一

    ○熊谷委員長代理 並木
  139. 並木芳雄

    並木委員 ただいま専門的のことにつきましては、岡田さんから質問がありましたから、私は総括的な点を少し質問しておきたいと思うのです。それは今度の沈船引揚げは、明かに賠償の一部であるという了解ははつきりしておりますかどうか、まずその点を。
  140. 大野勝巳

    ○大野政府委員 その点は、きわめてはつきりいたしております。協定の前文に、そのことをはつきりうたつておきました。
  141. 並木芳雄

    並木委員 そうすると大体フイリピンに対する賠償は、役務に限定するというように了解できますかどうか。今までの交渉の経過から見て、大野さんがどういうふうにそれを見ておるか。
  142. 大野勝巳

    ○大野政府委員 中間協定そのものは、実はこの条文の中にございますように、将来フィリピン日本との間に到達さるべき賠償に関する一般的な最終とりきめの一部をなすもの、そういうつもりでこの協定ができておる次第でありますからして、中間協定そのものからまず入つたのでありますが、やがて最終的に両国間の賠償問題が、友好裡に解決されることを期待してつくられておるわけでございます。
  143. 並木芳雄

    並木委員 大野さんの感じたところでは、フィリピンとしては、この役務以外に、やはり何か申出をして来ることが予想されますかどうか。それから役務として、沈船のほかにいろいろあると思いますが、そういうことについても必ずお話が出たことと思います。つまり沈船に着手したら、今度はどういう役務の仕事にかかろう、たとえば鉱山の問題とかいろいろあると思いますが、要するにそういうフィリピンに対する賠償一般の問題について、御返答願いたいと思います。
  144. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。沈船を引揚げるという役務を提供することでございますから、この協定が問題になります限りにおいては、申すまでもなく役務の問題でございます。並木さんの御質問は、それ以外に何か今まで言つて来ておつたかどうかということでございましたが、ただいまのところ、こういうはつきりした形で了解に到達いたしましたのは、沈船引揚げの役務を提供するという点に関してだけでございまして、その他の点につきましては、まだ何ら到達いたしておりません。従いましてこれからの問題になるわけでございます。ただ今までのところは、沈船引揚げの役務以外に、たとえば原料とか材料を提供してもらつて、それを加工いたしまして、完成品にして先方へ供給する役務、すなわちこれを製造加工役務と称しておりますが、そういう製造加工役務問題も、どういう製造加工役務について日本がしてやれるかという点につきましては、日本側は先方の側に意思表示をしたことはございます。しかしその一一の具体的の項目につきまして、何をどれだけ原料を提供するから、どういうものをつくつてほしいというふうな具体的な問題につきましては、まだ何ら話合いになつていないのであります。実は本年の二月には、先方から専門家が参りまして、それらの点について生産加工役務を具体的に討議して行くための会議を予定しておつたのでございます。予備会談と称しておりますが、予備会談がいろいろな都合で開催されずに、今日に至つておるような次第であります。
  145. 並木芳雄

    並木委員 その予備会談は近く開催されますかどうか。それから今までの交渉の途中において、実際フィリピンが現金賠償ということを考えておるかどうか。大野さんが感受した感覚でいいわけです。実際に向うが現金賠償を考えておるかどうか。私は考えておらないだろうと思いますが、その点を……。
  146. 大野勝巳

    ○大野政府委員 並木さんにお答え申し上げます。ただいま私からお答え申し上げました中で、先方から専門家が東京へ参りまして、予備会議をやるという構想が、両国の間にあつたということに関連しての御質問であつたわけでございます。近い将来においてそういう会談なり会議が行われるかどうかということでございますが、ただいまのところ何とも申し上げかねますが、政府といたしましては、いつでもその予備会議に応ずるということを、正式に先方に申入れをしております。  それからもう一つの御質問は、役務あるいは製造加工役務以外に、何か現金その他について意思表示があつたかということでございますが、私の承知しておる限りにおきましては、そういう要望は正式にはかつて出されていなかつたということを、お答え申し上げたいと存じます。
  147. 並木芳雄

    並木委員 それから今後現金についての話が出るけはいが見えるかどうかという点は、いかがですか。
  148. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。はなはだ機微な外交交渉の内容にわたりますので、残念でございますが、ここでお答え申し上げることはできないわけでございます。御了承願います。
  149. 並木芳雄

    並木委員 沈船の所有権の問題ですが。さつきも岡田さんから、スクラップの問題についてこれに関した御質問があつたと思います。いろいろの船が沈んでおると思いますが、引揚げてみて、フィリピンの船ばかりでなく、ほかの国の船も出て来ると思う。実際沈船の引揚げをやつた場合に、その所有権というものはどうなりますか。と申しますのは、最近、旧南洋委任統治で日本の沈んだ船について、アメリカ側で国際入札を行うというような通告を出しております。これは明らかに国際法の違反になるのですか、とりきめの違反になるのですか、御答弁いただきたいと思います。これについても、その所有権ということがやはり問題になると思います。従つてフィリピンにおける沈船の所有権と、ただいま別に問題になつております旧南洋委任統治における沈船の国際入札の問題と、両方あわせて御答弁願いたいと思います。
  150. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。フィリピンの領海内に沈没しておる船舶の問題について、私からお答え申し上げたいと思います。フイリピンの領海内に沈んでおる船の国籍は、いろいろだろうと思います。日本のものが大多数であり、フィリピンのものも若干ありますし、第三国のものもないとは限らない、ごく若干あると思います。しかしもう圧倒的に多数なのは、日本の船舶でございます。そういう場合に、戦争中いろいろ捕獲審検所を経まして没収したり、あるいはそうでないままの状態の船があつたり、かなり錯綜した法律関係がそこにあると思います。正当に捕獲審検所で判定された結果、没収されたものにつきましては、これは日本の国籍に属するわけでございます。そういうことの前に沈没した船につきまして、法律関係が残るわけでございます。その場合につきましては、その船がもと属していた国とフイリピン政府との間の問題になると思うのでありまして、日本政府はその場合引揚げることはいたしますが、その引揚げたあとの所有権の法律上のいろいろな諸関係には触れないわけでございます。  それから南洋委任統治の方の今の御質問につきましては、別な政府委員からお答え申し上げます。
  151. 下田武三

    下田政府委員 南洋委任統治の沈船でございますが、これは実はまだ国際法ではつきりきまつておりません。ただ比較的多数説の認めるところは、艦船のみならず、兵器——タンク、車両を含む兵器でございますが、それが敵対行為の結果破壊せられ、あるいは歯獲せられた場合に、これはそれをとつた国、破壊した国が没収し得るのが、国際法原則でございます。従いまして戦時中、敵対行為の結果、沈没いたしました日本船が、再び米国の治政権下に入りまして、米側が現実にそれを支配する地位に立ちましたら、これはあたかも戦利品と同じく向うに帰属する。従つて米側が国際入札に付そうとどうしようと、自由に処分し得るというのが、大体国際法の固まりつつある説ではないかと思うのであります。しかしながらこれを日本側から言うのは、実は愚な話でありまして、従来の米側の態度にかんがみまして、何らか好意的の取扱いができないものかという見地から、交渉する余地のある問題だと考えております。
  152. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、ただいまの条約局長の答弁に対する質問を先にいたしますが、私たちが了解していたところでは、平和条約で別途に協定が成立するまでは云々ということは、ただいまの答弁では了解が違つて来るわけです。つまり平和条約で別段のとりきめがなされなくても、今言つたような解釈でこれは処理されて行く。日本としてはあまり強い抗議というものはできないとお考えになるのですか。そして外務省としてもしそれに抗議を申し込むならば、どういうふうに抗議を申し込むのか。あるいはすでに申し込んでおるのかもしれませんけれども、その辺のところを御答弁を願いたい。
  153. 下田武三

    下田政府委員 平和条約の第四条に、かつて日本の領土であつたところに残された財産は、特別とりきめの対象とするという規定がございます。しかしこれは国際法先方に帰属することが明らかなものはむろん別問題でございます。南洋庁の家屋であるとか、南洋庁の自動車が残つておるとか、そういう一般の財産につきましては特別とりきめにすることができるでありましようが、沈まない船だつたら当然向うが持つて行つたでありましよう、たまたま沈没したから遺棄したまでであつて、再びやつて来て現実に向うが支配する。沈まない船は取上げられ、沈んだ船は依然として日本のものだということは成り立たないと思います。従いまして、先ほど申し上げましたように、これは日本側が平和条約上の権利として要求し得ることではなくて、米側の好意に頼んで何か特別なとりきめの話合いができやしないかというだけの問題であります。
  154. 並木芳雄

    並木委員 そうしますと、最初の大野さんに対する私の質問の、フィリピンの領海内における沈船の所有権の関係はどうなるか。今条約局長の答弁は、フィリピンの領海内における沈船にも適用されるのですか。適用されるとなると、沈没したものも当然向うに属するというふうに、私しろうとで、今ちよつと聞いただけでは判断がつきかねるのですが、その間にもし差があればはつきり違いを説明していただきたい。
  155. 下田武三

    下田政府委員 フイリピン領海に沈んでおる船舶に三種類あるのでありますが、ずつと日本の船であつた軍艦並びに船舶、これは敵対行為の対象となつてあるいは破壊せられ、あるいは沈没しておるもの、しかも敵の圏内に陥つたものであります。敵の圏内に陥つた艦船、兵器に対しては敵が歯獲し、これを没収することができるものであります。でございますから、これは明白に申しましてフィリピンの所有権に属しておる。第二のカテゴリーは、もともと外国船だつたが、日本が戦時中捕獲権を行使いたしましてこれを捕獲して、日本船にしたというものであります。これも取扱いは結局第一のカテゴリーと同じでありまして、捕獲の結果日本が没収いたしまして、日本船として比島近辺に出かけて行つて沈められたというだけのことで、第一と同じであります。問題となるのは、日本のあずかり知らない第三国船でたまたまフィリピン領海にあつてこれが爆撃で沈没した、それを今度日比間の協定日本引揚げて、その所有権はどうなるのか。これは第三国側としてはあるいはフィリピン政府に文句を言うかもしれません。しかしこれは日本はただ役務の供給者でありまして、その間の問題はよろしくフイリピンと第三国の間で話し合つてくださいというまでの話であります。
  156. 並木芳雄

    並木委員 きよう突然の問答ですから見当違いの質問になつて来るかしれませんが、ただいまの条約局長の答弁を聞いておると、フイリピンの領海内に沈んで引揚げられた日本船の今後の所属については、日本とフイリピン政府との間で交渉の余地がないように聞いたのですが、その通りでしようか。さつきの大野さんの答弁では、所属については今後の残された問題であるというふうに私は聞いたのですが、その点をもう一度はつきりさせてもらいたい。
  157. 下田武三

    下田政府委員 それは法律的にはきわめて明白な問題でありまして、日本船が沈められたが、沈められた自分の国の船のスクラップを買うばかがあるかという御疑念だろうと思いますが、これは沈められて敵の領海内に陥つたものでありますから敵のものであります。それを入札でもつて売ろうというときに、日本商業的見地で公正な立場から、幾分なりとも買うことができるかできないかという交渉をいたすわけであります。
  158. 並木芳雄

    並木委員 私がお聞きしたのは、スクラップにして売つてくれ、あるいは処分してくれというのではなくて、引揚げ日本船の所属は、どうかということだつたのです。今の条約局長の答弁は相当はつきり割切つてしまつたわけなんだが、そうするとさつきの大野さんの答弁は、私の聞き違いかもしれないが、その所属についてはいろいろ問題もあるので、そこまでは今度の中間賠償協定では触れておりませんということだつた。従つて引揚けられた日本船は、日本に属すればけつこうだし、日本に持つて来られると思つて聞いておつたのですが、そこのところをもう一度はつきり答弁願いたい。
  159. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。何かお聞き違いだろうと思いますが、将来に問題が残されるといつたようなことは申し上げませんでしたし、そういう趣旨ではなくて、やはり条約局長の解釈しておられる通りだと思います。こまかい幾種類かのカテゴリーに属する船舶があると思います。しかしこまかい点は抜きにいたしましても、フィリピンの領海の中に沈没しておりますから、その領海を現実に支配しておるのはフィリピンでありまして、これは今のところいかんともすることができないはずであります。
  160. 並木芳雄

    並木委員 まつたく私のしろうと考えかもしれませんが、沈められた日本船は引揚げてくればこちらのものになる、ましてやこちらが役務を提供するのだから、そういう希望は確かに私は非常に持つていた。しかし今の答弁で残念ながらはつきりしたわけなんです。そこでさつきの旧南洋委任統治領の船舶の問題ですが、平和条約で将来協力することあるべき云々というのは沈船の問題でははつきりしておる。そのほかにどんなことを協定することを予定されておりますか。
  161. 下田武三

    下田政府委員 実は南洋の旧委任統治領につきましては大した問題はないのではないかと思います。朝鮮等は実は問題となるのでありまして、朝鮮におつた日本の師団のタンクとか車両等で破壊されて向うの手に入つたものは、これは没収されていまさら請求の問題にもなりません。しかし朝鮮総督府の財産あるいは朝鮮銀行の財産というものは、平和条約の予測する請求権の問題としてただいま取上げて日韓会談の交渉になつております。ところが委任統治領におきましては、大部分は軍関係の装備、車両、タンク、艦船でありまして、南洋庁の一部財産もあるかと思いますが、大きな問題として取上げるほどのことは比較的少いと存ずるのであります。
  162. 並木芳雄

    並木委員 旧南洋委任統治領の問題で、予算委員会において吉田総理だつたか岡崎外務大臣だつたか、先方に抗議を申し込むという言葉を使つたかどうか知りませんが、とにかく国際入札の通告をもらつたのは不当だという意味の答弁をされたことは、これは間違つておつたということになるのですか。この問題については今後外務省としては何らステップをとらないでこのまま見過して行くのですか。
  163. 下田武三

    下田政府委員 予算委員会の答弁ではやはり特別とりきめのことをお話になつたのだと思いますが、平和条約の特別とりきめという意味でお聞きになりましたかどうか。私その場におりませんでしたので知りませんが、先ほど申しましたように、従来の米側の好意的態度にかんがみまして、何らかの好意的とりきめができはしないか。その趣旨の話をしておるように了解いたします。     〔「そこははつきりしてください   よ」と呼ぶ者あり〕
  164. 並木芳雄

    並木委員 吉田さんにしても一岡崎さんにしても、私と同じように、あそこに沈んでおつた船は口日本のものだという観念があつたのじやないでしようか。(「そこははつきりしてください」と呼ぶ者あり)きようの条約局長の答弁では、悲観的に非常にはつきりしてしまつた。条約局長のさつきの解釈は絶対的のものですか。それともなお今後の協定にまつ、あるいは吉田さんや岡崎さんが言うように、交渉の余地というものはある、さらに強く抗議を申し込むことの余地もあるのかどうか。うしろの方からはつきりしてくれという声もかかつていますから……。
  165. 下田武三

    下田政府委員 速記をおとめ願えませんか。
  166. 熊谷憲一

    ○熊谷委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  167. 熊谷憲一

    ○熊谷委員長代理 速記を始めて。
  168. 並木芳雄

    並木委員 今の局長の答弁でそういうふうに含みがあるならば了承いたします。今後は外務省はうまく交渉してもらいたい。  もう一点日比平和条約批准の見通しと、それについて一昨日のアリソン大使の演説の中にあつた一項目でちよつと気になるところが関連してございますから、まずフィリピン側の批准の見通しをお聞きしたいと思います。最近戦犯者の減刑、免刑、こういうものが行われて、非常に感情がよくなつて来ておると思いますが、この沈船引揚げが中間賠償として緒について来ますし、批准も早いのじやないかと思います。この点見通しはいかがですか。
  169. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。非常に微妙な問題でございまして、批准を得るためには、フィリピンの議会が開かれなければならないわけであります。御承知のように上院で三分の二の多数をもつて通過しなければ、批准に至る手続が完了しないのであります。ところが、御存じのように今年の十一月に大統領選挙その他総選挙を控えておりまして、フィリピンの内政事情は非常に繁忙をきわめておるかのようであります。ただ並木さんが今御言及になりましたように、ここ両三箇月間日比間の関係が急速に好転の緒を示しておりますので、私どもはできれば秋の選挙までに先方の臨時議会でも開かれれば、はなはだ好都合だというふうに希望いたしておるのであります。臨時議会は先方の事情でございますからして、われわれの予断を許さないのでございますが、一ころは、この夏くらいに若干の他の問題とともに臨時議会が開かれて、平和条約批准案が付議されるかもしれないという情報はございました。これは単なる新聞情報程度でございますが、そういう動きがいくらかあつたことは事実であるようであります。しかしながら、その後杳としてその情報を裏づけるような事実が起つてつておりません。従いまして、ただいまのところではやはり秋の選挙後まで待たなければいけないのじやないかというふうにも実は考えておるのであります。もちろん政府といたしましては、この秋の先方の大統領選挙の行われるまでの期間につきましても、あらゆる手段を打ちまして平和条約批准を促進してもらうように交渉を絶えずいたしております。今日もなおいたしておるのであります。しかしながら、これは先方の国内情勢とも深い関連を持つておる問題でもございますので、何ともここで御満足の行くような答弁を申し上げることができないのであります。ただ誠意を尽してこういう沈船引揚協定などについても、これを実際に実行に移して行くということを言葉ではなくして、ほんとうに実行によつて先方にわかつてもらいますれば、私どもが今期待しておるようないい面がますます助長されて来ることは疑いない、こんなふうに考えておるわけでございます。
  170. 並木芳雄

    並木委員 それに関連して、平和条約が成立しないのにかかわらず、その中に含まれている賠償条項がこうやつて切り離されて行われるということに対して、法的には問題ないと思うのですけれども、一応疑問は持つわけなんです。それとともに本日も今まで審議されたもろもろの国連の機構についての問題も私は前から多少疑問を持つております。その疑問がどうしてきよう出て来たかというと、先ほどもらいました一昨日のMSAに関する日米交渉第一回の会合におけるアリソン大使の演説の中の一項目を読んだときであります。その中にこういうのがございます。「日本が引受ける義務とは果して何でありましようか。此等の義務は相互安全保障法第五百十一条A項に明文があります。実質的にはそれらの義務は、日本国連の参加国となつた際には引受けるところの義務であります。」これなんです。今まで成規の手続を経ずして、いわゆるなしくずしというような言葉も使われましたが、そういうふうにして行われた国連機構への参加、ただいま審議中のフィリピン中間賠償にしても、平和条約が調印されていないのに、これが先走つて出て来たというような点で、法律関係からいうと、私たちはその点疑問が出て来たわけです。今度引受けようとするMSAの五百十一条(a)項の規定は、日本国際連合加盟しておろうとおるまいと、かわらないのではないかというふうに考えておりました。ところがアリソン大使は、はつきりここに、「日本国連の参加国となつた際には引受けるところの義務であります。」と言つております。この場合に、どういう意味でアリソン大使はこういう表現を用いられたのであるが、こういう解釈が立つならば、今までわれわれが国際連合加盟しないでおいていろいろな機構に入つて、これに協力しておる、これも実際資格のないことをやつておるんじやないかという反対解釈が出て来るのであります。どうかこの点をはつきりしておいていただきたいと思うのです。もし国連に参加したら、この五百十一条(a)項のもろもろの義務がてきぱきと容赦なく日本適用されるものかどうか。私はそういうものじやないと思うのです。今政府交渉している日米安全保障条約による義務とか、そのほかの経済上の義務、いずれにしても、国連加盟のときをもつて、きつぱりとそこで線が引かれるようなものではないというふうに了解しておつたのでありますけれども、その通りではないのかどうか、この機会に関連しているから質問しておきたいと思います。
  171. 下田武三

    下田政府委員 このアリソンのメツセージは、一昨日第一回の顔合せのときに渡されまして、それ以来まだ交渉をやつておりませんので、正確に問いただしてみる機会がなかつたわけでありますが、私どもの推測いたしておるところでは、日本はすでに国連への加盟申請いたしております。また平和条約の第五条では国連憲章の第二条の義務をすでに負つております。また安保条約の条文の中には、やはり国連憲章で使つておる文字がそのまま載つておりまして、集団的及び個別的の自衛の権利云々ということを言つております。この五百十一条の義務というものは日本にとつて何も新しい義務ではない、目新しい義務ではないのだということを言おうとしたのが、アリソンのメッセージのこの部分の趣旨だろうと思います。もとより法律的に正確に申しますと、日本国連加盟を認められましたあかつきにおきましては、この第二条の義務のみならず、百数十条にわたつた国連憲章の全部分について義務を負つておるわけでありますが、アリソンが取上げられておりますのは、この平和条約や安保条約にメンシヨンされて、日本国民がよく知つておるその義務、つまり目新しいものではないということを言おうと思つたのだ、そういうように推測しておる次第でございます。
  172. 並木芳雄

    並木委員 そうするとこれを受取る感じというものは、政府は軽いものだという感じでなくて、五百十一条(a)項というものの義務は、やはり義務として負つて行くのだ、そういう印象を受けたと思うのですけれども、その通りでよろしゆうございますか。
  173. 下田武三

    下田政府委員 それは米国の相互安全保障法による援助を与えるに先だつて協定締結しなければならない、そしてまた援助を受ける国は次の義務を引受けなければならないといたしておりますので、日本MSA協定を結べば、これらの義務を引受けることになることは明確でございます。
  174. 並木芳雄

    並木委員 そういうふうに明確ならいいのですけれども、このアリソンさんの書き方を見ると「若し日本MSA援助をうけるとすれば日本として引受けねばならない義務について多くの疑念が表明されていることを聞いています。」さつき引用されましたように「日本が引受ける義務」云々と書いてありますから、これは今までのいきさつから見ると、アメリカはどつちかというと日本政府を楽にさせてやる、肩の荷を軽くして、何とかこのMSA交渉を成立させるように持つて行きたいという傾向が見えますから、私が聞いておるわけであります。そこに突然場日本国連の参加国となつた際には引受けるところの義務であります。」と書いてありますから、では参加するまでは全然こういうものは軽く取扱つていいのかどうか、あるいは政府はそういうふうに了解しているのではないかという点で、はつきりしなかつたからお尋ねしたわけです。くどいようですけれども、もう一度アリソン氏がここに引用しておることは大した意味ではないのだ、それから私が最初にお聞きしたように、国連加盟しておろうとおるまいと、差異がないのだというふうに了解してよろしゆうございますか。
  175. 下田武三

    下田政府委員 並木さんのおつしやる通りの趣旨だろうと思います。つまりいろいろな疑惑が日本国内に発生しておるけれども、何もとんでもない義務を引受けるわけではないのだ、目新しい義務は何らないのだということを言わんとしてこれは用いたのだろうと存じます。
  176. 大野勝巳

    ○大野政府委員 さつきの並木さんの御質問の中で、MSAの点につきましては下田条約局長からお答えいたしましたが、この沈船引揚中間協定は、実は平和条約批准されておれば、むろん一つの問題としてそれに基礎を置いた協定ということになつて出て来るのですが、まだ批准されていないので、そのためになしくずしということになつたわけなのですが、唐突に出て来たわけでもないので、今までフィリピン日本との間の非常に困難な諸関係をよくするために、こういう形で出て来たわけでありまして、この中間協定そのものは、少くとも平和条約十四条の範囲内でできておるということだけここで明らかにいたしておきます。
  177. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 ちよつと関連して。今条約局長は南洋の沈船はアメリカのものである、従つてこつちからクレームはない、フィリピンについても同様だ、これはスリー・マイル・リミットの中にあるやつでしよう。スリー・マイル・リミツトの外にあるやつはそういうような議論が立たぬでしよう。それからさらにこの問題はなかなかデリケートな問題でありまして、よほどよく研究してから発言されませんと日本の立場を非常に不利にしますが、これはよく研究されての上の発言ですか、あるいはここで思いついての発言ですか、その点を伺いたい。
  178. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通り、あまりに態度を明確にしましても、日本の立場に不利の影響を与える問題であることは確かでございます。そこで外務省といたしましては、部内の研究のみならず、国際法学者、ことに海軍関係の専門の国際法学者の意見も徴した上で、先ほど申し上げましたような意見を申し上げた次第でございます。
  179. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 スリー・マイル・リミツトの外にあるやつは関係ないでしよう。これはそういう船も相当あるでしよう。
  180. 下田武三

    下田政府委員 公海にある沈船につきましては、これは別問題でございまして、これにつきましては領海の沈船以上に国際法の説がきまつておりません。あるものは無主物先占の船であつて、どこの国の船であろうと先に見つけてとつた国のものだ、無主物先占の理論を援用して理論を立てている学者もあるそうであります。しかしこれにつきましてやはりこれは元の船舶の国籍の所有国、それに第一の優先権を与えるべきではないかという見解であります。
  181. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 いま一つお伺いしますが、日本から役務を提供しての代償、それが最終の賠償の中に入るわけでしよう。その計算の方法など細目協定で大体きまつておりますか。どういうふうな計算をするのか、おさしつかえなかつたらお答え願います。
  182. 大野勝巳

    ○大野政府委員 大橋委員の御質問にお答えいたしますが、この沈船引揚げに関しましては、先ほど並木委員と岡田委員からの御質問の際にお答えいたしましたように、この協定だけでは実は動かないので、こまかいことは両国政府の間で相談するということになつている。その細目の打合せがほぼできておりますので、その中でいろいろなことが取扱われて参りますから、それではほぼセツツルすると思うのです。いま一つの大橋委員の御質問の重点は、おそらくは原料を提供してもらつて、それを製造加工して完成品にして出してやる。その役務の遂行の場合の経費をどつちでどこまで負担するかという問題だと思います。
  183. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 経費でない、サービスに対する代償をどういうふうに見積るものか。
  184. 大野勝巳

    ○大野政府委員 その問題に関しましては、まだ両国間に何ら話合いがついておりません。また交渉もそこまで行つておりません。
  185. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 それではまことに困る。一番それが要点だろうと思うのですが、やつてしまつてそのあとでひどく踏み倒されてしまつてどうにもならぬということになつては、それは将来非常な紛争のもとになるだろうと思う。大体の計算の方法でもきめておかないことには、非常にこの協定審議するのに困難だと思うのですが、どうですか。
  186. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答えいたしますが、ただいまの御質問は、つまり沈船引揚げのサービスを提供した場合に、それをどういうふうに評価するかという問題でございましよう。これはむろんどういうふうに評価するかということにつきましては、ある種の了解がございます。
  187. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そのことは秘密会か何かででもわれわれに話していただくことはできませんか、その点が一番かんじんで、それがわからぬとその協定審議することはできぬのではないかとぼくは思うのですが。
  188. 大野勝巳

    ○大野政府委員 いずれにいたしましても、日本政府が負担する財政負担というもののめどは、引揚げる客体が両国政府間の打合せの結果きまつて参りますと、自然きまつて来る問題であることは事実であります。従つて評価という場合、それが現実に日本が出した金よりも、どのくらい多く向うがのんでくれるかということについてまで詳しく話がつかなければ、この中間協定自体も審議ができないというのでは、ちよつときびし過ぎるのではないかという気がいたしますが……。
  189. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 議事進行について。今大橋委員がお尋ねになつておられることと、大野参事官の御答弁とは少しポイントが違つておるように思う。大橋委員のお尋ねになつておりますことは、沈船引揚げに要した役務提供の費用なるものが、対フィリピン日本賠償の総額の問題で最終的に決定されるであろう賠償金の総額の中に加えられるやいなやという御質問ではないかと思うのです。それは私らの考えでは、フィリピンに対する賠償総額の決定というものはまだなかなか微妙な点があつて協定はそう早急にはできないであろうと私も観測しておる。しかしながらこの賠償総額の金額の最終的決定ができた場合には、この沈船引揚げに要した日本側の役務提供の費用は、当然ここに加えられるべきものであると私は了解するのですが、食い違つておるのではないかと思うのです。
  190. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 計算の仕方を大体きめておかないと楽しみがないですよ。踏み倒されてしまつては……。
  191. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいま岡田さんのお述べになりました通りでございます。
  192. 熊谷憲一

    ○熊谷委員長代理 戸叶里子君。
  193. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私案は先ほどNATO協定に対しての緊急質問を申し込んでおいたのですか、それをします前に先ほどの並木委員質問に関連して一点確かめておきたいと思います。  日本国連加入を希望いたしますにあたりまして、当然今の憲法のままで国連加盟を希望していると思いますが、今後においてもそのままであるか。その意味はMSA援助を受けるにあたりまして、先ほども並木委員が御指摘になりましたように、アリソン氏が、「日本国連の参加国となつた際には引受けるところの義務であります。」というふうに、わざわざ引用しておられますけれども、しかしこれは当然今の憲法のままで日本国連加盟することを予想していられるのかどうかを承りたいと思います。
  194. 下田武三

    下田政府委員 国連加盟申請をいたしましたときは、当然今の憲法のままでは加入できるという前提のもとに申請いたしておる次第であります。
  195. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういたしますと、大体日本といたしましては国連軍などが出入りしておりますけれども国連加盟していなくても、すでに国連加盟に準ずるような義務を負つているのでありまして、特に国連加盟したときに負うべき義務というようなものは特筆するものがないように思いますけれども、具体的にはどんなものがあるのでしよう。
  196. 下田武三

    下田政府委員 具体的に一番大きなことは、朝鮮動乱のときに国連の勧告によりまして、侵略者に対抗する国連側にあらゆる援助を与えなくてはいかぬ、また侵略者側に対していかなる援助も与えてはならぬという決議をいたしまして、それで軍隊のある国のあるものは、十六箇国は兵を出して協力しておるわけであります。でございますから軍隊を持つてつても兵力を出さなかつた加盟国の方が多数なわけでございます。日本国連加盟をいたしておりませんので、国連の決議に従う義務は何らないわけであります。ところが安保条約と同時に、吉田総理とアチソンの間の交換公文におきまして、朝鮮の作戦に従事する国連軍に対して、日本国並びに日本国の近傍でサポートを与えることを容認するという特別の約束をいたしております。従いまして国連憲章から直接引受けた義務ではございませんで、吉田・アチソンの特別の約束で引受けた義務でございます。
  197. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうに考えて参りましても、結局日本国連加盟しておりませんでも、吉田・アチソン交換公文等によりまして、結局国連加盟したと同じような義務を負つている思うのです。ここでわざわざこの国連の参加国になつた際に引受ける義務と言われました理由は、日本軍隊がないけれども国連加盟するには、当然国連規定している軍事的な義務を負うというようなことが、暗々のうちに含まれているのではないかということを承りたいと思います。
  198. 下田武三

    下田政府委員 軍事力または兵力の行使の義務というようなものは全然含まれていないと思います。問題となりますのは、直接、間接侵略に対する自衛力を増強する義務、これは安保条約で米側の期待となつておつたわけでありますが、MSA協定を結びますと、これがはつきり法律的の義務になるわけであります。日本の自衛力漸増が、従来期待であつたところが義務になるわけであります。
  199. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、結局日本は自衛力の漸増ということは義務として受けて行くということを、これによつて証明されたと理解するわけでしようか。
  200. 下田武三

    下田政府委員 この自衛力の問題と国連憲章の問題は直接には関係はないと思います。しかしながらそのすぐあとに言つておりますように、国際間の理解、親善を増進させますとか、国際間の緊迫の原因を除去するためである、そういう義務MSA法で規定しておりまして、そういう面はまさに国連憲章の定めるところと一致しておるわけであります。
  201. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、結局自衛という意味が、今まで解釈しておりました自衛力というものと、それから国連側においての解釈の自衛力というものが違つて来るように私は思うのですが。
  202. 下田武三

    下田政府委員 違つて来ないと思うのでありますが、自衛力を漸増するということは従来安保条約の前文におきまして、アメリカ側の期待にすぎなかつたものが、日本の法律的義務になるであろうという点は明白な違いであります。しかしながらその自衛力の行使の態様はどうかといいますと、これはもともと国連憲章の集団的及び個別的の自衛の措置、安保条約でも集団的及び個別的の自衛の措置によつて日本の安全が確保されたならばアメリカ側は兵力を引揚げて、そうして日本側がみずから責任をとることを期待するという精神はすでに言つておるわけでありますから、結局考え方としては何らかわることはないと存ずるのであります。
  203. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると日本の集団的な自衛の措置が確保されるということと同時に、ほかの自由諸国の集団的な自衛の措置ということも、当然考えられると思うのですけれども、それに日本も当然関係して来ることになりはしないでしようか。
  204. 下田武三

    下田政府委員 これは日本憲法の制約がある間はできない相談であります。しかしながら日本のように交戦権を行使せず、また軍備を保有しない国というものは、世界における例外であります。国連憲章のような一般条約におきましては、少数の例外のために規定をかえることはいたしません。結局それを適用する場合に、個々の国の憲法その他の法制によつて、現実にいかなる義務を負担するかという点を判断するほかはないと存じます。
  205. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではこういうような日本の国の例外であるという点をもう一度確かめつつ、MSA交渉に当られるかどうかを承りたいと思います。
  206. 下田武三

    下田政府委員 先般発表いたされました日米往復文書で、アメリカ側は日本国民の疑惑を解くために、相当はつきり言つたつもりでおります。また一昨日のアリソンのメッセージでも、前の文書で不十分だと思つたところをはつきり言つたつもりでおるのだろうと存ずるのであります。これらの点は協定の際には十分に考慮をいたすことはもちろんでございます。
  207. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと関連して伺いたいと思います。私はさつき国連加盟しておつてもおらなくても同じだという意味で了解して引下つたのですけれども、今の戸叶さんの質問に対する条約局長の答えを聞いておりますと、国連加盟していなければ義務を負うことがない。たとえば朝鮮の動乱の場合に、吉田・アチソン交換公文があるから初めて朝鮮動乱協力する義務が生ずるのだという答弁だつたのですが、そうすると私の了解と違つて参ります。そういうことが、アリソン大使の日本国連の参加国となつた際には引受けるところの義務であるといつたところではないかと思うのです。だから国連加盟はしておらなくても、これからはMSA援助を受ければ、当然国連加盟しておるものと同じように取扱われますぞというだめ押しではないですか、従つて朝鮮動乱のような場合が起つたら、今度は吉田・アチソン交換公文などはなくとも、当然日本国連加盟国の一員とみなされて、義務を負うようになるのではないかと思うのですけれども局長の御答弁を伺いたいと思います。
  208. 下田武三

    下田政府委員 MSA協定締結いたしました場合に、ただちに国連加盟国と同じ地歩を獲得するということは、とうてい考えられないことであります。ただアリソンが言つておりますのは、先ほども申しましたように、すでに平和条約第五条で引用される国連憲章規定、また安保条約の前文でも引用されておる憲章規定従つて日本にとつて決して目新しいものでないところの憲章規定を引用して、日本の疑惑を解くというところに主眼があるのだろうと思います。
  209. 並木芳雄

    並木委員 それでは念のためにお尋ねしますけれども、これからいろいろの場合に国連協力義務というものが出て来ると思います。朝鮮動乱のような場合に、その都度日本政府としてはこれに協力するという承諾を与えなければ、義務が生じないと了解していいかどうか、こういう点でございます。それともアリソン氏の言葉によると、そういう意思表示を一々しなくても、当然包括的に協力義務が出るのだというふうな解釈が成り立つのかどうか、その点お伺いいたします。
  210. 下田武三

    下田政府委員 これは平和条約にも書いてありますように、集団的自衛の固有の権利を有することを確認し、同時に集団的安全保障とりきめを結ぶ場合も、これは自発的にすることができると書いてあります。従いまして、一国の場合に日本側の自発的意思が動かない以上は、いかに憲章なり、あるいはMSA法で規定をしておりましても、自発的に日本が引受けるということがない以上は、日本意思に反して一定の義務を押しつけられることはないと存じます。
  211. 並木芳雄

    並木委員 それはそうだと思いますが、その点は両方の見解にもし行き違いがあるとたいへんですから、さつきも戸叶さんの言われたように、この次の会議ではつきり確かめてもらいたいと思います。ましてや今度の自衛力漸増の期待というものは法律的の義務になるということでありますから、私どもの見解では、どうしても防衛計画をつくつて、これを提示するとか、保安隊の増員というようなものを出さなければ、私は今度のMSA問題は、デッド・ロックにぶつかるのじやないかというふうに考えておるのです。ことにアリソン大使の話合い等に引用されたダレス書簡の言葉を見ると、その感を深くします。「日本保安隊に関する、そして特に何らかの増強に関するすべての決定は、勿論、日本政府及び国民により、その政府の手続を経て決定されるべきものである。ひとたび決定が行われれば、決定の如何に拘らず、われわれは自由世界の集団的安全保障のために、これらの部隊に装備を与える用意がある。」この点でございます。なるほど保安隊の増員とか、増強というものは、日本政府がきめることではあるけれども、きめなければMSAによる装備、それらの部隊に装備を与えることはしません、こういうふうに読めるわけなのです。匠つて何らかの決定というものを日本がやらないならば、MSA援助もできないかもしれません、こういうふうに私はこれを読んでいるわけなのです。もしそうでないというならば御説明を願いたいのですけれども、私はそんな感じがしている。だからなるほど日本政府の自由ではあるけれども、この際防衛計画とか、保安隊の増員、そういうものを計画して出さなければ、今度のMSA協定に入つても、援助を受けることができないのじやないか、そういう懸念が出て来るわけです。その点いかがでしようか。
  212. 下田武三

    下田政府委員 ダレス長官の言明は、並木さんの御解釈になりましたように、日本が決定しなければ、援助が受けられないのだという趣旨とは非常に違うと思います。これは日本が、どの程度の自衛力の漸増をしようとするか、従つてどの程度の援助を受けんと欲するかということは、これは日本政府及び日本国民が、かつて自由意思できめるべきことである。日本政府がどういう決定を自由意思でなされようと、その決定せられたところに従つて、米國側は援助を与える用意がありますという趣旨でございます。
  213. 並木芳雄

    並木委員 「ひとたび決定が行われれば」ということは、現在及び将来のことだと思います。今までの保安隊のことについては、アメリカは百も承知であります。今度のMSA援助に関してはそのことには全然触れていない。この文面から見ると、「何らかの増強に関するすべての決定は、」ということでありますから、「ひとたび決定が行われれば、決定の如何に拘らず」ということは、その程度のいかんにかかわらずという意味だろうと思うのです。従つて今あるよりも何らかそこにプラスというものが出て来ることは予見されるので、増強という意味におけるプラスが出て来なければならないと思う。ですからそういうプラスがここへ出て来なければ、今度の援助は受けられないのではないかと私は解しているわけなのです。
  214. 下田武三

    下田政府委員 これは日本側としても、先ほど申しましたアメリカの期待に沿つて、自衛力を増強したいという念願を有することは明らかでございます。そこで増強の程度でございますが、人間はふやさないで、さしあたり質的の強化で行きたいという決定をいたします、あるいは直接侵略に対するような自衛装備はとてもできない相談だから、間接侵略に対する防衛装備だけにしたいという決定をいたしたといたします。それらの決定は、日本側の自由意志で決定をなさい、どういう決定をされようと、アメリカ側は援助を与える用意があります。そういう趣旨でございます。
  215. 並木芳雄

    並木委員 ですからそういう趣旨ならば、私はこの際、思い切つて相当大がかりな増強増員計画といもうのを出された方が、MSA援助というものは、よけい受けられるのではないかと考えます。その点はいかがでしようか。
  216. 下田武三

    下田政府委員 そういう急激な自衛力の増強は、日本の経済安定、政治的安定をそこなうことなくして、急激にやるということは、ちよつと考えられません。これはアメリカ側もその点を心配いたしておりまして、自由主義諸国の考え方として、少しばかり増強するよりも、大事なのは経済的不安から来る思想の悪化という方が、はるかに危険であるということは先方もよく言つておりますから、おのずから増強の速度なり程度なりは、政治的、経済的条件に左右される次第でありまして、その点は向うもよくわかつておるだろうと思います。
  217. 戸叶里子

    ○戸叶委員 委員長、一点だけ。私はさつき申し込んでおきましたNATO協定に関しての緊急質問をごく簡単にこの際いたしたいと思います。新聞によりますと、アメリカ上院の本会議で、七十二対十五でNATO協定が通過したということが報道されました。ここでやつと日本の行政協定の改訂ということも望まれるわけでございます。その際に裁判管轄権の問題が一番大きくなつて参りますが、政府のお考えとしては、裁判管轄権の問題だけの改正を行われようとするのか、ほかの点はどうなのですか、これを承りたいと思います。
  218. 下田武三

    下田政府委員 NATO協定批准されまして、これはたしか四箇国だろうと思いますが、批准が四つそろいましてから三十日後に発効するということになると思いますので、その発効のなるべく直後に行政協定を改訂いたしたいと思います。その際に、従来問題にしておりました刑事裁判管轄権の問題以外のものをずらずらつと便乗して扱うことにいたしますと、これはちよつと遅延するおそれがありますので、さしあたりは刑事裁判管轄権の規定の改正一本で早くやりたいというのがただいまの考え方であります。
  219. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうするとそのほかの経済関係の、たとえば関税とか消費税の免除とか、その他いろいろな問題があると思いますけれども、そういうようなものはいつごろなさるおつもりでしようか。
  220. 下田武三

    下田政府委員 これはまだ関係省において研究しておる段階でありまして、必ずしも関係省間でどう直すかということについて、一致した意見がまだ出ておらない問題でありますから、刑事裁判管轄権の改訂ができましたら、引続いてそれらの点をまず日本部内で検討いたしまして、成案ができましたら協議するということになると思います。
  221. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、直したいという御意思があるのですか、それが一点。それからもう一つは、そういうふうな改訂案ができましたときには、国会におかけになるかどうか、それが第二点。それだけ承つておきます。
  222. 下田武三

    下田政府委員 行政協定自体が実は、安保条約の米軍を配備する条件は政府間でとりきめるというその委任条項によつて、国会の承認を経ずに締結されておるのであります。従いまして元のとりきめが細目とりきめと申しますか、実施とりきめでありますので、その実施とりきめを改訂いたしますときもやはり実施とりきめでありますから、国会にはもちろんできたものを御報告するのみならず、できる前の過程におきましても御報告は申し上げますが、これを国会の御承認を求めてしかる後締結するという必要はないのではないかと考えております。
  223. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この行政協定には幾多の問題がございますし、そしてまた日本の国にとつて重要な協定でありますから、たとい政府間のとりきめの委任条項であつて最初の親案が別に国会の審議を経なかつたからというような理由だけで、国会に諮らずにそのまま提出されるならば、また結局私どもの好ましからざる点がたくさん出て来るのではないかと思いますので、この協定だけは、ぜひ国会にかけていただきたいことを要望する次第でございますが、いかがなものでございましようか。
  224. 下田武三

    下田政府委員 ごもつともでありますが、かりに現在の行政協定よりも大きな義務を引受けるとか、あるいは新たな義務を引受けるというような場合でございましたら、仰せの通りするという考えも成り立ちますが、今問題になつております改訂は、逆に日本の権利を伸張し、こちらの義務を減らすと申しますか、今までの協定のわく内でそれを日本に有利に直そうということで、何ら新たな義務を引受けることも、別個の義務の程度を拡大することもございませんので、やはり先ほど申しましたように、実施とりきめといたしまして十分御報告いたしまして、国会の御意見を拝聴いたしました上で締結いたしますれば、これを憲法七十三条による条約として御承認を求めることは必要ないのではないかと思います。
  225. 戸叶里子

    ○戸叶委員 有利なように直すのであるからというお言葉でございましたが、そちらで有利とお考えになつてもまだ気のつかない点もたくさんあると思いますので、なおもう一度お考えいただくことを希望いたします。
  226. 岡田勢一

    ○岡田(勢)委員 ちよつと関連して。先ほど大橋さんの御質問に対して、下田条約局長からお答えになつた点でありますが、私からもう一度当局の御意見を伺いたいと思います。それは今アメリカの信託統治下にある南洋諸島の地域内にあります沈船の所有権返還の問題であります。これについては最近ある国際法学者が研究された結果、これは日本政府の所有権として返還さるべきが至当であるというような結論を発表されたということを聞いておるのでありますが、先ほどから局長のお話にもありましたように、戦争行為によつて拿捕したとか占領したとかいうことによつて所有権を確保する、これはもつともでしよう。それからまたフイリピンのごとき、領海内にあつて戦争の結果起つたものとしての船舶並びに兵器の所有権の没収、これもいいと思うのでありますが、あそこは、私専門家でないからよくわかりませんけれども日本の委任統治領でありまして、今度の戦争の結果何国の領土にも決定しておらない。相かわらずアメリカの信託統治領になつておる。でありますからトラック、パラオその他南洋の島島にあります日本の艦船の所有権が、ほんとうに最終的な決定を見たとは言われないのではないかと思われる。その事実は、今度ハワイのハイ・コミツシヨナーからオープン・ビッドの通告を受けたということを、先ほど並木君が質問されておりましたが、その前にすでに一昨年ごろだつたかと思います。やはりハワイのハイ・コミツシヨナーからオープン・ビッドの通告を受けましてビッドしたのです。ビツドしたのですけれども、そのときのビッドは、どういう故障があつたのか知りませんが、これはキャンセルされてしまいました。そのときの話としては、何でもその条件に書いてありました項目の中に、信託統治領内の原住民の福利厚生の費用に使うために、この物件を売却するという一項があつたそうであります。そこでこの戦争によつて沈没いたしました日本の船舶などは、御承知の通り一〇〇%課税になつてつて、軍事補償の打切りで一文ももらえない。しかも戦争中には陸海軍から強制的な徴用を受けましたのみならず、これに対して戦時保険をみな五割までかけておつたのが全部棒引きになつてしまつて、そして一〇〇%課税されておるような状態であります。そこで軍事補償打切りの問題はすでに決定された問題であつて、一〇〇%課税なるがゆえにこれを復活するというようなことはできませんし、またそのようなことは考えませんけれども日本の所有であつた船舶が、政府の努力によつて日本政府に所有権が返還されるということは、これはその価額は少いものでありましようとも、国民感情に与える影響はたいへん大きなものであろうと思います。そこで、大橋さんに対してあなたから御答弁がありましたように、これは国際法上からの研究も十分した上で請求できる点があれば請求するというお考えは、もう一度しつかりお考えになるように私からも希望しておきます。そういうケースになる限りは、これは所有権の返還交渉をやつてもらいたい。少くとも政府国際法上並びにいろいろな角度から研究してもらつて、いつかの機会にこの委員会でその経過の発表をお願いしたいと思います。
  227. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 その問題ですが、私は敵性のない、たとえばあそこにある南洋拓殖あるいは南興水産、それから何とかいう大きな砂糖会社の財産がずいぶんあるのです。あなたは非常に少いと言われたけれども、ずいぶんある。それからまた漁船のごとき、全然敵性のないものであそこに沈められたようなものはどこのものであるかということは、これは私は両方で協議して決定すべき問題であろうと思う。しかもこの国会における論議が反映して、ホノルルから国際入札は取消すというような電報が、きのうでしたか新聞に出ておつたのですから、これをないがしろにするような言動は少しどうかと思うのですが、この点をもう少し研究しますというふうに訂正をしていただきたいと思う。  それからいま一つは、岡崎外務大臣MSAを受けることによる援助は、安保条約の範囲内のものである、それ以上の義務は負わぬということをしよつちゆう言つておる。ところがMSAを受けると今までは自衛力漸増が期待であつたが、今度は義務であるということになつて、安保条約以上の新しい義務を負うことになる。少しその点が岡崎外相の言明と矛盾するように思うのですが、その点もはつきりしてもらいたいと思う。私はこれだけで終ります。
  228. 下田武三

    下田政府委員 岡崎外務大臣も昨日の参議院の外務委員会におきまして、安保条約の自衛力漸増の従来の米側の期待が、期待であつた間は、道義的には日本は責任があつたが、法律的の義務ではなかつた、しかるにMSA協定を結べばこれが法律的に義務となるということをはつきり昨日明言されております。  なお前の沈船の問題でございますが、これは御追究を受けますとますます日本側に不利な純粋法律的意見を持つことになりますので、ただいま差控えたいと思いますが、なおよく研究いたしたいと思います。先ほどの電報の取消しも、これも日本側のいろいろ折衝をやつております一つの現われであるということを御了承願いたいと思います。
  229. 熊谷憲一

    ○熊谷委員長代理 本件につきましては次回に引続き質疑を行うことにいたします。なお世界気象機関条約に関する質疑は次会に延期することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時四分散会