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穗積委員 実は私は
安保条約が批准されますときの
国会に議席を持
つておりませんでしたので、その間の問題について、どういう理解と討議のもとにこれが一部の議員によ
つて批准され、
承認されたかよく存じませんが、
日本の
憲法制定当時並びに
——今の
憲法はいまだかわ
つておりませんが、それによりますと、今おつしやつたような外敵が
日本に入
つて参りましたときに、大衆の自然発生的な抵抗、これはむろん国権の発動ではございません。しかしながら国家の実力組織といたしましての
保安隊が、外敵に対しまして国家の命令、指揮すなわち国権の発動によりまして抵抗をし、事実上の戦闘行為を行うということになりますと、明らかに
憲法第九条に反するものだとわれわれは理解いたします。
岡崎さんはこの問題については、私は実はもつと詳しく当時の
憲法を提案されました責任者であります吉田さん、当時の閣僚でありました木村さんに重ねてお尋ねをしたいつもりでありますが、
岡崎さんといえども、当時
政府部内におきまして高級官吏の位置におられたわけでありまして、
アメリカとの
交渉についても、よく御存じだと思います。当時私もその
憲法審議に参加いたしましたが、われわれが第九条を歓迎しながら、それを守るには、
一つは
自衛権がどうな
つておるかということ、もう
一つは米ソを含めます国際連合諸国による安全保障の確約が必要ではないか。そういう
政治的な機構なくしてはこの
憲法第九条は守れないのではないかということを、将来をおもんばかりまして、今日あるを予期いたしまして申し上げたのでありますが、それに対しまして吉田さんははつきり言
つておられます。私も同様の趣旨のことをお尋ねして同様の趣旨の御
答弁をいただいておりますが、
自分のことを申すのはいかがかと思いますので、野坂參三さんが二十一年六月二十六日の
議会におきまして、その
自衛権の問題と
自衛権を行使するための実力行為の問題について区別すべきではないかということを主張されたに対して、吉田さんはこういうことを言
つておられます。「次ニ衛権二付テノ御尋ネデアリマス、戦争抛棄二関スル本案ノ規定ハ、直接二八
自衛権ヲ否定ハシテ居りマセヌ」これは
岡崎さんも御
承知の
通り、
アメリカの当時の意向といたしましては、
自衛権をすら放棄させる意向であつたのであります。条章にははつきりそのことをうたわれておりませんが、その
通りであつた。それがそういうことを言
つてる。すなわちこの言葉の裏には、
自衛権は放棄をするとは直接には書いてない、書いてはないが、しかし次に「第九条第二項二於テ一切ノ軍備ト国ノ交戦権ヲ認メナイ結果、
自衛権ノ発動トシテノ戦争」ー戦争というのは
保安隊であろうと何であろうと、武器を持つた国家の部隊の実力行為と言わなければなりませんが、「戦争モ、又交戦権モ抛棄シタモノデアリマス、従来近年ノ戦争ハ多ク
自衛権ノ名二於テ戦ハレタノデアリマス、」そういう
意味においてわれわれは
自衛戦争すら放棄しなければいけないということを言
つておる。さらに当時文部大臣であり、今日
憲法を守らなければならないところの最高裁判所の長官でありまする
田中耕太郎さんが、このことについてさらに言
つております。「不正義ノ戦争ヲ仕掛ケテ来タ場合二於テ、之二対シテ抵抗シナイデ不正義ヲ許スノデハナイカト云フ」お尋ねであるが「詰り正シイ戦争ト正シカラザル戦争ノ区別モ全然無視シテ単二不正ナルカニ負ケテシマフト云フヤウナコトニナリハシナイカサウスルト詰り国際
政治二於キマシテ、不正義ヲ此ノ儘認容スルト云フ風ナ、道義的ノ感覚ヲ
日本人が失フト云フコトニナツテモ困ルデハナイカト云フヤウナコトモ考ヘラレマス、併シナガラ決シテソレハサウデハナイ、不正義ハ世ノ中二永ク続クモノデハナイ、剣ヲ以テ立ツ者八剣ニナ滅ブト云フ千古ノ真理二付テ、我々ハ確信ヲ抱クモノデアリマス、サウ云フ場合二於テハ、輿論ノカガ」いいですか、実力とは書いてありません。実力とは書いてありませんが「今後ハ国際
政治二於キマシテモ益々盛ンニナルコトデアリマスシ、又或ハ仮二
日本が不正義ノカニ依ツテ侵害サレルヤウナ場合ガアツテモ、併シソレニ対シテ抵抗スルコトニ依ツテ、我々が被ムル所ノ莫大ナル損失ヲ考ヘテ見マスルト、マダマダ
日本ノ将来ノ為二此ノ方ヲ選ブベキデハナイカ、」と明言しております。そこで実は私がその後の情勢を憂いますと、二十六年の正月であつたと記憶いたしますが、マッカーサーが年頭の談話発表の中におきまして、
日本の
憲法は
自衛権を放棄してないということを言い出した。これが始まりであります。実はマッカーサーは
自衛権すらないということを
憲法制定の場合におきまするあれにおいては言
つておるわけであります。しかもあなたにしても、吉田さんにされましても、当時の司法大臣であつた木村さんにしても、この間
自衛権の問題については否定しないし、
自衛権を行使する
軍隊を持つことすら違憲ではないという
考え方について興味を持
つておるというように、だんだんとそういう話にな
つて来ておる。そしてきのう発表になりました
MSAに対しまする
アメリカからの回答書、この中では
安保条約以外のミリタリー・オブリゲーションは持たなくてもいい。それから
経済的の
援助はうんとやるということだけ打出して、その援護を借りて
政府は
MSAを受諾することをジヤステイフアイしようとして輿論に訴えておる。まつたく、こまかしであります。これだけによ
つてわれわれは
MSA協定をするのではない。
MSAが法律そのものであります。法律そのものはどこまでも否定されておりません。でありますから第一の問いに対する
向うからの
答えの中で、「自発的な個別的または
集団的自衛の
固有の
権利を一層有効に行使する」と書いてあります。これは御
承知の
通り、われわれが申すまでもなく釈迦に説法でありますが、今までたとえば北大西洋同盟のような軍事同盟がまだ
日本にはありません。それからまた、なくても国連の
理事会におきまして決定するならば、これは強制行為として、たとえば
朝鮮戦争がそれでありますがこれに発動することができる。しかしこれには拒否権がついておる。そこで抜け道といたしまして、この中でちやんと言
つております
平和条約第五条(C)項、つまり国連憲章第五十一条でありますが、これによりますと、たとえば
日本が韓国あるいはフィリピン、
台湾政権等と、
アメリカが今望んでおりますような、太平洋
防衛機構を持たないといたしましても、
日本が
自衛の名において、これを認めますならば、つまり集団
自衛であります。吉田さんも今度の
議会におきまして盛んに集団
自衛という言葉を使い出しておる。そして今度の回答の第一項の中でもそのことを忘れずに明記されております。
従つて最初に私のお尋ねしたいのは、それは
日本国の
憲法に反するのじやないか、
自衛の名のもとに今日ですから
保安隊の実力行為が国権の発動として認められるかどうか、その法律的根拠を伺いたいのであります。