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田中(稔)委員 倭島
アジア局長に対しまして、在日華僑の帰国問題について質問いたしたいと思いますが、御質問申し上げます
気持は
政治問題というのでなく、人道上の問題としてお尋ねしたいと思います。
皆さんも新聞紙上ですでに御承知の通りでありますが、
日本におります華僑の諸君の中で六百三十一名、その中には九十五名の学生を含んでおるのでありますが、これらの諸君が帰国船の往航を利用して中国に帰りたい、これはもつともな考えでありますが、この件につきまして先般北京において帰国打合せのために参りました日赤その他の代表の諸君が中国の紅十字会の代表と、これは正式というのではなく、非公式だと思うのですが、相談をして、大体約束して帰
つて来ておることであり、また外務省においても——これも非公式だと思いますが、返すように努力しようというお話もあつたと聞いておる。ところが台湾
政府の方の横やりが入りまして今日まで帰国が実現していない。学生の諸君は学資にも困
つております。また卒業しましても内地では外国人のゆえをも
つてなかなか就職は困難である。また一般の人は戦時中徴用工その他として内地に強制的に連れて来られた人が多いのでありまして、そういう人は
日本が負けて街頭にほうり出されてめんどうを見てくれないので、やみ商売その他でしのいで来ましたが、今日生活に非常に困つた不幸な人々がほとんど全部であります。しかもまた帰国のために時間を空費しますと、その間食
つて行くことができず、これは深刻な問題である。われわれは三万人の在華同胞の引揚げに対しまして、中国
政府それから中国の紅十字会がきわめて懇切な態度で
協力してくれた。すでにその約半数は帰国したのであります。そういう際にわずか六百数十名の今日生活に悩んでおる在日華僑を一日も早く、しかも親切に母国に送り届けるということは、これは
政治の問題ではない。国際信義の問題である。今日こそ国交が開かれておりませんけれ
ども、いずれは国交が再開される。その場合には中国五億の
国民に信を失うということにな
つてたいへんなことになる。
外務当局ももちろん返したい御意向はあると思いますが、どうも台湾
政府に対する交渉を見ましても弱腰である。台湾にある
蒋介石政権、私はもちろん認めはしません。また
日本政府が台湾政権とこの間
平和条約みたいなものを結びましたが、その場合にも台湾における
蒋介石政権の支配の
範囲は、台湾島と澎湖島その他あの付近にちやんと限定して
承認しておる、だから中国本土に
日本にいる中国人が帰りたいというのは、台湾
政府の干渉を許さない問題であると思うのでありますが、こういうふうなものに対する
政府の態度はきわめて臆病である、卑屈である。こういうことでは、今後
日本の
外交というものは、とてもこれは今の
政府に託するわけには行かぬのでありますが、それは余談としまして、私は人道上の問題として、これはもう超党派的にぜひすみやかに実現させたいと思うのであります。それが私の念願でありますが、今日までの経過をひとつ懇切に御
説明願いたい。実はもしこの帰国が実現しない場合においては、第四次の帰国船の向うに出航しますことにつきましても支障が起る、ひいてはまだ残
つておりますところの多数の在華同胞の帰国が不可能になり、あるいはそこまで行かぬでも遅延するということになりますので、そういう同胞の父兄の方やあるいは親類の方が非常に心配している、だからこれは単に中国の方々に対する人道上のわれわれの
気持の問題であるだけじやなく、またその帰国を待
つている
日本の多数の
国民の関心事なんでありますから、どうかひとつそういう不幸な事態に立ち至らないように、そこに
外交上いろいろ打つ手はあると思うのでありますが、今日までの経過をひとつ詳細に御
説明願
つて、
関係者の心配をこの際解消していただきたいと思います。