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1953-05-28 第16回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年五月二十七日       熊谷 憲一君    灘尾 弘吉君       福田 篤泰君    並木 芳雄君       田中 稔男君    戸叶 里子君       池田正之輔君理事に当選した。     ————————————— 昭和二十八年五月二十八日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 熊谷 憲一君 理事 並木 芳雄君    理事 田中 稔男君 理事 戸叶 里子君    理事 池田正之輔君       今村 忠助君    増田甲子七君       喜多壯一郎君    須磨彌吉郎君       帆足  計君    武藤運十郎君       穗積 七郎君    加藤 勘十君       西尾 末廣君    大橋 忠一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 五月二十五日  国際航空運送についてのある規則統一に関す  る条約批准について承認を求めるの件(条約  第一号)  戦争犠牲者保護に関する千九百四十九年八月  十二日のジユネーヴ条約への加入について承  認を求めるの件(条約第二号)  千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百  二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三  十四年六月二日にロンドンで修正された貨物の  原産地虚偽表示防止に関する千八百九十一年  四月十四日のマドリツド協定への加入について  承認を求めるの件(条約第三号)  千九百五十二年七月十一日にブラツセル締結  された万国郵便条約及び関係約定批准につ  いて承認を求めるの件(条約第四号)  航空業務に関する日本国オランダ王国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第五号)  航空業務に関する日本国スウエーデンとの間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第六号)  航空業務に関する日本国ノールウエーとの間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第七号)  航空業務に関する日本国デンマークとの間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  八号) 同月二十七日  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海  条約批准について承認を求めるの件(条約第  九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国政調査承認要求に関する件  国際航空運送についてのある規則統一に関す  る条約批准について承認を求めるの件(条約  第一号)  戦争犠牲者保護に関する千九百四十九年八月  十二日のジユネーヴ条約への加入について承  認を求めるの件(条約第二号)  千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百  二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三  十四年六月二日にロンドンで修正された貨物の  原産地虚偽表示防止に関する千八百九十一年  四月十四日のマドリツド協定への加入について  承認を求めるの件(条約第三号)  千九百五十二年七月十一日にブラツセル締結  された万国郵便条約及び関係約定批准につ  いて承認を求めるの件(条約第四号)  航空業務に関する日本国オランダ王国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第五号)  航空業務に関する日本国スウエーデンとの間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第六号)  航空業務に関する日本国ノールウエーとの間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第七号)  航空業務に関する日本国デンマークとの間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  八号)  国際情勢に関する説明聴取に関する件     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  本日外務大臣アリソン大使信任状奉呈等に立ち会うために出席ができません。政務次官、各局長が参つておりますから、かわつて説明を申し上げることになります。  まず昨日の理事会で申合せいたしました国政調査承認要求の件についてお諮りを申します。本委員会といたしましては、衆議院規則第九十四条によりまして、国政調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じます。調査事項は、まず国際政治及び外交に関する事項、次に国際情勢に関する事項、第三に移民に関する事項、第四には行政協定実施に関する事項といたしたいと思います。  また調査目的は、第一に、国際政治及び経済の現状並びに動向を調査し、わが国外交と国策の樹立に資すること。第二に、国際情勢の推移を注視し、わが国政治及び経済に及ぼす影響等を検討すること。第三に、わが国の人口問題にかんがみ移民対策の確立に資すること。第四に、行政協定夫施に関する状況を調査し、国民生活に及ぼす影響等を検討すること等であります。  なお調査の方法は、関係各方面より意見聴取及び資料の要求調査期間は、今会期中といたしたいと思います。  ただいま申し上げました国政調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めましてさようとりはからいます。     —————————————
  4. 上塚司

    上塚委員長 次に、国際航空連送についてのある規則統一に関する条約批准について承認を求めるの件、戦争犠牲者保護に関する千九百四十九年八月十二日のジユネーヴ条約への加入について承認を求めるの件、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三十四年六月二日にロンドンで修正された貨物原産地虚偽表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリツド協定への加入について承認を求めるの件、千九百五十二年七月十一日にブラツセル締結された万国郵便条約及び関係約定批准について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国オランダ王国との間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国スウエーデンとの間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国ノールウエーとの間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本司デンマークとの間の協定締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。政府側より逐次提案理由説明を求めます。小瀧政務次官。     —————————————     —————————————
  5. 小滝彬

    小滝政府委員 私は今般外務政務次官に任命を受けました参議院の小瀧であります。何分就任いたしましたばかりで、しかももともと浅学菲才、何もわかりませんが、一生懸命勉強してでき得る限り皆様の御期待に沿いたいと存じますので、どうぞ御同情をもつて御指導くださいますようお願いいたします。  それではただいまから、先ほど委員長から申されました順序によりまして提案理由を御説明申し上げたいと存じます。  ただいま議題となりました国際航空運送についてのある規則統一に関する条約批准について承認を求めるの件につきましてまず提案理由を御説明いたします。  国際航空運送についてのある規則統一に関する条約は、一九二九年十月十二日にワルソーで作成され、一九三三年二月十三日に効力を生じたのであります。この条約は、国際航空運送の条件を、その運送のために使用する証券及び運送人責任に関し、統一的に規制することにより、国際航空運送の円滑な発展を促進しようとするものであります。  戦後のわが国がいよいよ近く国際航空運送を開始しようとするときにあたり、この条約に基く国際協力に参加いたしますことは、わが国航空運送国際信用を高めるのみならず、わが国自身の利益と合致するゆえんであると存ずるのであります。  わが国は、日本国との平和条約署名に際し、サンフランシスコ行つた宣言において、同条約最初効力発生後一年以内にこの条約批准する意思を明らかにしておりますので、政府は、第十五特別国会にこの条約批准について承認を求めたのでありますが、審議半ばにして衆議院が解散されたのであります。従つて前記宣言に掲げた期間内に批准について国会承認を得ることができないこととなりましたので、政府は、その責任において本年三月二十四日付でこれを批准し、その批准書寄託のために必要な手続をとり、国会に対しましては、憲法第七十三条第三号但書規定に従い、その御承認を求めることとした次第でございます。  右の事情を了承せられまして、御審議の上、本件についてすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に戦争犠牲者保護に関する千九百四十九年八月十二日のジユネーヴヅ諸条約、すなわち、(一)戦地にある軍隊傷者及び病者状態改善に関する条約、(二二)海上にある軍隊傷者病者及び難船者状態改善に関する条約、(三)捕虜の待遇に関する条約並びに(四)戦時における文民保護に関する条約への加入について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  これらの条約は、第二次大戦の経験にかんがみまして、赤十字国際会議行つた研究を基礎として、一九四九年四月二十一日から同年八月十二日までジユネーヴで開催されました外交会議において作成されたものでございまして、一九五〇年十月二十一日に効力を生じ、その締約国は、本年四月二十日現在で、二十三箇国に上つております。  これらの条約目的は、戦争またはその他の武力紛争の場合におきまして、戦争犠牲者、すなわち、傷者病者難船者捕虜及び文民戦争の危険から保護し、もつて戦争の惨禍を国際的協力によつてでき得る限り軽減しようとするものでございます。わが国本件条約加入することは、不幸にして国際紛争が発生した場合、わが国民の保護に資し、かつ、積極的に国際的人道主義の立場から他国の戦争犠牲者保護のための活動を容易ならしめるゆえんであると存ずるのであります。  わが国は、一昨年九月八日にサンフランシスコにおいて平和条約署名に際し、平和条約最初効力発生の後一年以内にこれらの条約加入する意思を宣言しておりますので、政府は、これらの条約への加入について事前国会承認を求めるため第十五特別国会に提出する準備を進めておつたのでありますが、これらの条約国会に提出する直前に衆議院が解散されたのであります。従つて右加入について事前国会承認を得ることができなかつたので、政府責任において、平和条約附属宣言期間内にこれらの条約への加入手続をとり、国会に対しましては、憲法第七十三条第三号但書規定に従いまして、事後にその御承認を求めることといたした次第であります。  右の事情を御了承くださいまして、慎重御審議の上、本件についてすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、原産地虚偽表示防止に関するマドリツド協定への加入について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、一八九一年六月十四日にマドリツド最初に成立し、その後三回修正され今日に至つております。今回わが国加入いたしますロンドン最後に修正されたマドリツド協定は、一九三八年八月一日に効力を生じ、現在その締約国は、十六に上つております。  この協定は、締約国の一またはその中にある場所を原産地として虚偽に表示した生産物をその輸入に際して差押え、輸入を禁止しまたは国内において差押える等の措置によつて小正競争防止することを目的としたものであります。すなわち、この協定は、すでに公私の貿易及び通商において国際的に承認された公正な慣行を取入れたものにほかならないのでありまして、わが国がこの協定加入することは、わが国国際信用を高め、国際通商におけるわが国の地位を向上せしめるゆえんであると存ずるのであります。  わが国は、一昨年九月八日にサンフランシスコにおいて平和条約署名に際し、平和条約最初効力発生の後一年以内にこの協定加入する意思を宣言しておりますので、政府は、この協定を第十五特別国会に提出し、加入について承認を求めたのでありますが、審議半ばにして衆議院が解散されました。従つて右加入について事前国会承認を得ることができませんでしたので、政府責任において、平和条約附属宣言期間内にこの協定への加入手続をとり、国会に対しましては憲法第七十三条第三号但書規定に従い、事後にその御承認を求めることといたした次第であります。  右の事情を了承せられ、慎重御審議の上、本件についてすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、万国郵便条約及び関係約定批准について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は、一八七七年以来万国郵便連合加盟国となつておりますが、現行万国郵便条約及び関係約定を改正するため昨年五月からブラツセルで開かれました万国郵便連合の大会議にも代表者を参加せしめ、同会議で採択されたこの万国郵便条約及び関係約定署名いたさせたのであります。  この条約は、現行条約同様万国郵便連合の組織及び構成を規定するとともに通常郵便業務を規律し、また、関係約定はその他の特殊業務を規律したものでありますが、五年前のパリ会議で採択された現行条約及び約定実施経験にかんがみまして、今日の事態に適応した改善を加えたものであります。  この条約及び関係約定は本年七月一日から実施されることになつておりますが、わが国国際社会復帰以来海外との郵便物の交換が日々増加の跡をたどりつつある現在、これら条約及び約定批准し、郵便連合を通じての国際協力維持、増進することは、わが国にとつてきわめて有意義な措置と認められるのであります。  よつて、この条約及び関係約定批准について御承認を求める次第であります。右の事情を了承せられまして慎重御審議の上、本件についてもすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  最後に、航空業務に関する日本国オランダ王国間、日本国スウエーデン間、日本国ノールウエー聞及び日本国デンマーク間の四協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、かねて、オランダスウエーデンノールウエー及びデンマークの各国との間に航空業務に関する協定締結の希望を持つておりましたが、昨年十二月に専門家をへーグ及びストツクホルムに派遣し、協定締結予備交渉を行わしめましたところ、当事国関係者意見がまとまりましたので、その結果に基いて、それぞれの政府との間に正式交渉が行われまして、本年二月十七日にオランダとの間の協定がへーグにおいて、また二月二十日にスウエーデンとの間の協定ストツクホルムにおいて、二月二十三日にノールウエーとの間の協定がオスローにおいて、また二月二十六日にデンマークとの間の協定がコペンハーゲンにおいてそれぞれ署名されたのであります。  これらの協定は、第十五回国会でその締結につき承認を得ました日米間の民間航空運送協定及び航空業務に関する日英間の協定と同一の目的及び意義を有しておりまして、その内容も大差はございません。  よつて、これらの協定締結につき第十五国会承認を求めましたところ、衆議院の解散のため審議未了となりましたが、スウエーデン及びデンマーク航空企業に対する暫定的免許期限も本年七月十四日には満了することになりますので、この際これらの四つの協定を一括して御審議を願いまして、なるべくすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
  6. 上塚司

    上塚委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。以上の各件に対する質疑は、審議の都合上あとに譲ることといたします。     —————————————
  7. 上塚司

    上塚委員長 次に国際情勢に関する説明聴取の件に移ります。本件につきましては、外務当局より別に説明もないようでありますから、ただちに質疑を行うことといたします。通告順によりまして質疑を許します。並木芳雄君。
  8. 並木芳雄

    並木委員 私は最近問題になつておりますMSA援助の件について質問いたしたいと思います。昨日改定一九五一年相互安全保障法という記録を欧米局第一課からもらいました。大体これについて検討してみたのでございますが、これで見るとMSA援助の終局的の目的というものは、アメリカの安全を維持するということになつております。この点を特に政府に対して私は確かめておきたいのでありますけれども、最近その的をはずされて、アメリカ安全維持ということがぼやかされておる傾向があります。そこであらためて、あくまでもMSAアメリカのための法律である、その援助であるというふうに私たちは考えて行かなければいけないと思うのです。そういたしますと、日本自衛軍すらないのでございます。今アメリカに頼んで守つてもらつておるという状態である。しかるにどうしてアメリカ安全維持に寄与できるか、こういう問題が起るのであります。政府はこの点いかようにしてこの安全保障法目的に沿えると思えるかどうか、まずその点を伺いたいと思います。
  9. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま並木委員のおつしやいました通り、アメリカMSA援助というものは、最終的にはもちろんアメリカの安全を確保するということを目的としたものであるということは、私どもも同様に了解しておるのでありますが、しかし現在の自由民主諸国いずれといえども、一国だけでは安全を全うすることはできない。そこでこの認識のもとに、自由諸国の全体の強化を目的とするものと考えますので、日本としては日本実力の許す範囲内において、そうした自由諸国の安全に貢献いたしたい、すべきではなかろうかというように考えておるわけであります。
  10. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、現在でも国際連合協力の線で日本はいろいろの協力をしております。それで十分カバーできるのではありませんか。特にMSAによるところの日米相互援助条約ですか、それを結ばなくても、国連協力の線でアメリカの安全に寄与できるという解釈が成り立つのではないかと思うのです。それならばそれでわれわれはいいわけなんです。今の小瀧次官答弁ですと、日本実力の許す限りでやる、こういうことですから、従つてMSAに盛られてある、例の五百十一条の第一項の第三にございます軍事義務というものは、つまり実力の許す範囲でやればいいということになりますけれども、そう解釈してよろしゆうございますか。
  11. 小滝彬

    小滝政府委員 現在日本の直接の問題として、MSA援助を受けるかどうかということは、まだ具体的な問題として出しておらないのでありまして、私が先ほど申しましたのは、大体の考え方を申し上げたのであります。
  12. 並木芳雄

    並木委員 それはもちろんそうです。しかし今われわれも、一緒に研究しているのですから、これはむしろ原則論的な質問になつていると思うのです。従つて今おつしやるような答弁MSAの要望に希うことができるとするならば、国際連合協力の線ですでに間に合つているのじやないか。と同時に軍事義務を負うという例の五百十一条第一項の第三というものは、実力の許す範囲内でよろしいのだ、何もそこに軍事行動を伴わないのだというふうに解釈ができるのだ、そうおつしやればいいのです。もし御答弁できなければ、条約局長でもけつこうです。
  13. 下田武三

    下田政府委員 先ほど政務次官のおつしやいましたように、MSA援助というものは自由世界全体の安全の保持の力を増進するために行われておるものでありますが、現在いかなる自由主義国家といえども、ハンか大砲かという問題があるわけであります。そこで両方を満足することは、おのおのの経済力でできないので、その足らないところを援助しようというのが、MSA根本精神だと思うのであります。並木さんのおつしやいます国連協力の線というのは、これは全然別問題でありまして、国連協力というのは、朝鮮事変つて国連協力でありまして、日本平和条約及び安保条約におきまして、国連決議に従いまして、朝鮮事変に対しても国連決議の趣旨に従つてできるだけの援助をする、そういう問題がいわゆる国連協力という言葉で表わされている内容でありまして、世界全般の問題であるMSAの問題と、現実の日本国連協力関係とは、別個の問題であるというふうに了解します。
  14. 並木芳雄

    並木委員 私が考えている考え方というものは、MSA精神並びに終局目的が、アメリカの安全であるということに重点を置いておるから、そこに局長との間の考え方に違いが出て来ると思うのです。そこへ重点を置いて行くと、勢い現存する日米安全保障条約というものでは、日本軍事的義務を負つておりませんから、MSAに盛られている軍事義務を果すことができない。従つて日米安全保障条約は発展的に解消をして、これを日本アメリカとの間の相互防衛協定——仮の名前をそう申しますれば、相互防衛協定というようなものに切りかえて行く。そして相互に守り合う権利義務を持つような形に持つて行つて、初めてMSAが発動できるのだ、こういうふうに考えておるのです。従つて先般の特別委員会における岡崎外務大臣答弁は、見当違いではないかと思うのです。現在の日米安全保障条約と、今度のMSAによる相互援助条約というものは並行し得るという大臣考え方は、違つておるのじやないかと思うのです。私は相互に守り合うという権利義務の形がそこに確立して、その上に初めてMSA援助というものが発動できるものというふうに解釈しているのでありますけれども、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  15. 下田武三

    下田政府委員 並木さんは、MSA援助というものは、その前提相互的の義務を伴う軍事協力というものがなければ考えられないことだとおつしやるのでございますが、私ども研究では必ずしもそういう結論を出しておりません。沿革的に考えますと、MSAというものは、一九四七年のギリシヤ、トルコに対する援助、あるいはマーシヤル・プラン、あるいは蒋介石政権に対する中国援助、韓国の援助というように、初めばらばらの目的アメリカが与えておりましたものを、第一次には一九四九年の相互安全防護法、その次には一九五一年の、先ほど並木さんの御指摘なさいましたMSA法によつて一まとめにしたわけであります。そこでたとえて言いますと、ユーゴスラビアでありますとか、イランでありますとか、タイというように、何ら軍事的の相互援助前提としない援助もあるのであります。もちろんNATO諸国でありますとか、汎米相互援助条約というような、多数国間の相互援助の上に立つておるMSAもございますが、そうでないMSAの例もあるのでございます。
  16. 並木芳雄

    並木委員 それならば、私たちはよほど考え方をかえて行かなければならぬと思うのです。あまり神経質になる必要はないということにもなるでしよう。それからまた、そういう援助ならば、気安な気持で、無条件ならば受けてもいいということになるのですけれども、このMSA援助というものは、そんななまやさしいものなのですか。今のお話を聞いておると、今の形であつさり受けて、そして要するに日本経済的に苦しいだろうから、それをお助けしてやりましようという程度にこちらでは受取つても、アメリカの方ではたしてそういう気持でいるかどうかということは問題だと思うのです。そうすると局長の今の答弁では、MSA援助というものは非常に幅がある。五百十一条の第一項の三に、軍事的義務を履行するということが書いてあるけれども、これは必要条件ではないということになるわけですか。その点くどいようですが、もう一度確かめておきたいと思います。
  17. 下田武三

    下田政府委員 御承知のように、MSA法——アメリカの国内法によりますと、この援助を受けるためには、まずその国とアメリカの間に協定締結しなければならないという条件がございます。それからMSA法規定するいろいろな義務を被援助国が受認しなければならないという要件も、ただいま並木さんのおつしやいました軍事的義務という要件もあるのでございます。ところで現在日本は厳密な意味においての相互援助協定は、いかなる国とも結んでおりません。安保条約は御承知のように、積極的な軍事義務アメリカのみが負うものであります。日本が同条約によつて負う義務といたしましては、米軍の駐留を認める義務、あるいは日本にある基地を米国と相談することなしに第三国に供与してはいかぬ、いずれも消極的な義務であります。その消極的義務も軍事的な義務であるには違いないのでありますが、アメリカがその安保条約の消極的な義務の履行のみをもつて足りるという見解であるならば、一向さしつかえないわけで、一にアメリカ側の解釈による次第だと思うのであります。
  18. 並木芳雄

    並木委員 そういうふうになるならば、私どももやや安心したという感じが当つているかもしれません。しかしそうだとすると、今までいろいろの形で受けておる援助があります。現に保安隊で武器を無料で借りておる。またこの間の海上警備隊のフリゲート艦も無償であります。それからアメリカでは防衛分担金を負担しておる。こういうことを考えますと、先般報道された一億五千万ドルという金額は、円に直しても大した金額ではございません。六百何十億円くらいのものでしよう。ちようど今防衛分担金でアメリカが負担しておる金額にやや似てもおりますし、保安隊とか警備隊の武器など今まで無料で借りていたものの財源をアメリカの方で振りかえるにすぎないのじやないか、こういうような感じもいたすのです。今までどういう財源から保安隊の武器やフリゲート艦というものが支出されたかは私知りませんけれども、わかつていたらお知らせ願いたいのですが、そういうものを今度のMSA一本の形で振りかえて行く、それをかつこうづけるための問題が今取上げられておるMSA援助ではないか、こんなふうにも受取れるのですが、その点いかがですが。
  19. 土屋隼

    ○土屋政府委員 今まで日本の保安隊に対して援助になりました問題について、ただいまの委員からの御質問は、結果的に言いますと、今後日本がかりにMSA援助を受けるということになりますと、おつしやつたような趣旨に振りかえることになります。その意味においては、つまりMSAというものは、今まで保安隊などにしたアメリカ側の援助を、ただ形の上でMSAに振りかえたものにすぎないということが結果的には申されます。しかしながらMSAが単に武器の無償貸与ということだけを規定しておるものでないことは御存じの通りで、技術的、経済的の面もあるわけであります。従つてMSA援助を今後日本が受けるということになりますと、そういつた経済的、技術的面における部面も出て来ますので、今までの保安隊に対する武器援助をただ振りかえたという結果だけにはならなくなります。  それから従来保安隊その他に貸与されましたアメリカの武器その他の経費はどこから出たかという御質問に対しましては、これは現地つまり日本における在日米軍の軍事費の中から支出されて来たものだとわれわれは了解しております。従つて昭和二十八年の七月一日から始まりますアメリカの新会計年度におきましては、軍事予算の削減あるいは重点主義というものがとられます結果、こうした費目について、在日米軍の費用はおそろしく苦しくなつて来るということが予想されますので、その点からMSAというものにかわつた援助という形で、従来の武器あるいは今後同趣旨の武器の援助を、日本にもし必要とするならばするのが、まず妥当な考え方だというので、アメリカとしてはそういう点を考慮しているように考えます。
  20. 並木芳雄

    並木委員 比較的明快な答弁で、だんだん何かわかつて来るような気がいたします。何しろこれは大問題で、別に私は攻撃的な質問でも何でもなく、私の方でも研究しておるのですから、それで聞いておる点に対して、割にわかつて来るような感じがいたすのです。そこで、もう一、二点だけ質問して、あとは明日に延ばしておきたいと思います。  そうすると日本政府としては、このMSA援助が出た場合に、だんだん計画を進めておると思いますが、どういうふうに使つて行くか。特にこういうふうに使いたいという希望がありましたら、この際明らかにしていただきたいと思います。
  21. 土屋隼

    ○土屋政府委員 せつかくの御質問ですが、いろいろ使いたい点は考えて行けばあるのではないかというふうに考えるのでありますが、いかんせん、まだアメリカ側から直接本件についての話合いを受けたわけでもございません。従つてアメリカの方の意向がどこにあるかということは、まだ実際のところわからないと申し上げるのが実情であります。ただMSAアメリカがここ数年間各国に対して実施して来た法律であります。その結果かりに将来日本がこのMSA援助を受けるという決心をいたしまして、それについてアメリカ側と交渉するという段階になりますと、当然日本側では希望はどこにあるか、またどういう形であるかということを考えなければならなくなろうと思います。そういう点から事務当局の私どもといたしましては、従来アメリカが各国に実施いたして参りましたMSA援助が、どういう内容とどういう金額とを持ち、どういう権利義務を負うものかということにつきまして、目下研究をようやく始めましたというのが実際でございます。従つて日本政府としてどういう希望があり、どういう計画があるかということについては、御返事いたすのには少々まだ早いかと思います。
  22. 並木芳雄

    並木委員 こういうMSAによる援助の返還の問題ということが起ると思います。冒頭にアメリカ安全維持のためということが書いてあるくらいですから、おそらくそれによつて受けた援助というものは返済する必要がないものと思つておりますが、これは別にわれわれがこじき根性だとか、そういうものでなく、事の性質上全然返済の義務を負うものでないと思つておりますけれども、今までとりきめられた前例はどうなつておりますでしようか。また日本にこれから適用されるであろうという場合の見通しなどについてこの際伺つておきたいと思います。
  23. 下田武三

    下田政府委員 MSAによる武器等の援助は、有償の援助と無償の援助とがあります。有償の場合には金を出して買うわけですから、所有権もその国に移るわけであります。無償の場合には金を出さないでただでもらうわけでありますから、アメリカの国内法によりますと、その場合に将来アメリカの要請に応じて返還するという条件が入ると思います。しかしこの返還請求権は、その国とアメリカとの間に重大な国際政策の意見の相違が発生するとか、あるいはせつかく援助を与えたのに、一向援助目的に沿わないように使われておるというような事態が発生した場合に、それでは困るから返せという権利を留保するための予防的措置でありまして、実際問題としてはどこにも返還請求を行つたという事例はないと承知しております。
  24. 並木芳雄

    並木委員 現金で今まで援助したという例はありませんか。
  25. 下田武三

    下田政府委員 たとえばオーストラリアなんかは有償援助の国ですが、これはつまりアメリカでできるようなものが自国ではできないから、それで金を出してもらうというわけであります。金はそう困らないけれども技術がないというような場合に、援助を受けるわけであります。
  26. 並木芳雄

    並木委員 MSAに関する交渉はいつごろから始められる予定ですか。そうしてこの交渉には日本政府としてはだれが当る予定であるか。アリソン大使が着任されましたけれどもアリソン大使との間で話が進められるのか、それともアメリカ本国で話が進められるのか。この点はどういうふうになつておりますか。
  27. 土屋隼

    ○土屋政府委員 話がはたして始められるようになるかどうか、それからどこで始められるかという今後の問題につきましては、遺憾ながら今のところ何も承知しておりません。
  28. 上塚司

    上塚委員長 次に田中稔男君。
  29. 田中稔男

    田中(稔)委員 私は在日華橋の帰国問題につきまして、アジア局長にお尋ねしたいと思いますが、局長はまだ見えておられないので、これは局長が見えてからお尋ねいたしますが、その前にちよつと政務次官にお尋ね虚し上げます。  私ども日米安全保障条約につきましては、これは日本の安全を保障するのではなく、むしろ片務的に日本アメリカの安全を保障する国際的とりきめだと考えておるのであります。ただいまの並木委員の質問に対しまして政務次官MSA援助は結局アメリカの安全を保障するために行われるものであるということを肯定された。これは私は重大な発言だと思います。この援助相互安全保障法というアメリカ国内法で行われるものであります。相互と書いてある。ミユーチユアル・セキュリティと書いてある。しかし私はこの政務次官の御答弁は事態の本質をついておると思います。これは結局アメリカの安全を保障するためにこういう援助をいたすわけであります。一歩を進めて、こういう援助を受けた場合に、日本アメリカの安全を保障するその具体的な形は一体どういうものであるか、具体的な姿はどういうものであるか、たとえば朝鮮で今日休戦協定が成立するという見込みがあるのでありますが、もしそれが失敗し、再び朝鮮に戦乱の火の手が上るというような場合、日本軍隊を朝鮮にでも送らなければならぬ、あるいは台湾に、あるいは中国本土に日本が出兵しなければならぬというような、そういう形でのアメリカの安全を保障する方法もあるのでありますが、そういう点につきまして、アメリカの安全を保障するということが、一体具体的にはどういう姿をとるか、御質問申し上げたいと思います。
  30. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま私の答弁に関連して御質問がありましたが、自由主義諸国相互は、アメリカの場合においては協力しておる諸国が安全になるということが自分の国の安全になる。また日本側からいえば、日本の立場において日本を安全なものにして行く上において協力することが有利であると考えたときに、こうした協力関係に入り、あるいはMASの援助を受けるという決定を下すことになりますから、日本としてはあくまで日本の安全ということを主として考えるべきものであることは申し上げるまでもないところであります。そうしてたとえば出兵の義務を負うのではないか——かりにそういう話が進むといたしましても、もちろんアメリカ日本の実情を十二分に承知しておるはずでありますし、日本軍隊がないということもわかつておるわけでありますから、そうした要求が来るというようなことは想像できないのではないかというふうに考えております。結局平たく言えば、日本に足りないものを米国側から支給を受け、日本としては日本においてできる限度のことで相互に満足行くような話合いがつく場合において、初めてこうしたとりきめが成立するものではないかと考えております。
  31. 田中稔男

    田中(稔)委員 ただいまの御答弁で少しかわつたのでありますが、そういう御答弁なら、今まで吉田首相や岡崎外相がたびたび述べられたお話と筋は同じでありますが、ただいま政務次官がとつさのうちに並木委員の質問に答えられたお言葉に問題の本質が露呈されておると思います。これはやはりアメリカの安全を一方的に保障するためのものであると思うのであります。  それは私の見解といたしまして、次に条約局長にお尋ねいたしますが、MSA援助を受けるためには大箇条の条件を満たさなければならぬということになつておるのであります。その中の第何箇条かに軍事的義務の問題がありますが、その軍事的義務解釈について、アメリカがどう考えるかによつてかわつて来るというお話がありました。私がお聞きしたいのは、日米安全保障条約というのがすでにありますが、これと別個な新しい協定なり条約というものを結ぶことが、この援助を受けるために絶対に必要なことであるかどうか。日米間の話合いで、日米安全保障条約という既存のこの協定でもつて援助を受けるに十分であるか、この御見当をちよつとお聞きしたい。
  32. 下田武三

    下田政府委員 MSA援助を受けますために、相互的な軍事的義務を負う協定締結が絶対に必要であるかどうかという御質問でございますが、これは絶対に必要なことは決してない。先ほど並木委員の質問にお答えいたしましたように、現に何らそういう軍事的義務を負つていない国に対しても、MSA援助を与えているのでありまして、結局そうした義務は絶対に必要なものだとは了解していないのであります。
  33. 田中稔男

    田中(稔)委員 それで政務次官にお尋ねしますが、政府の大体方針としてはどうでございますか。そういういわばほおかむりだと思いますが、日米安全保障条約があるからこれでごまかして、軍事的義務というようなことを表面引受けることを避けて、そうして援助は実質的に受けたいという御方針であるか、あるいはそうでないか、その辺ひとつ……。
  34. 小滝彬

    小滝政府委員 日本としては軍事的義務を負うべく、そうした軍隊を持つていない現状でありますので、そうした義務を負うにも負うだけの力がない。そういうことが条件になるというようには私どもは想定しておらないのであります。
  35. 田中稔男

    田中(稔)委員 MSA援助内容でありますが、私どもの理解しておるところによりますと、これは軍事援助、しかも狭い意味の軍事援助に大体限られると思うのであります。そのほか経済援助、技術援助その他考えられるという土屋欧米局長のお話もありましたが、その援助内容、性格といいますか、そういうようなものにつきまして、条約局長の御答弁をいただきたいと思います。
  36. 下田武三

    下田政府委員 先ほど欧米局長の言われましたように、MSA援助経済援助、技術援助、軍事援助と、大体三種類の援助を予想しておりますが、現在日米間に何ら話合いが行われておらないのでありますから、いかなる援助が与えられることになるかというような点についても、明確な見通しを立てることは不可能でございます。
  37. 田中稔男

    田中(稔)委員 私はあと華僑の帰国問題についての質問を留保しておきます。
  38. 上塚司

    上塚委員長 次に須磨彌吉郎君に発言を許します。——通告してありますが発言はありませんか。
  39. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ありません。
  40. 並木芳雄

    並木委員 須磨君のかわりにちよつと一点……。さつきの有償の場合、これは日本としても相当重要な問題になるのでありますが、今までの例で詳しくわかつている点をこの際示してもらいたいと思うのであります。有償の場合、どこでどういうふうな形で行われているか。私たちは当然無償であり、返済の義務などというものはないし、支払いの義務もないということを前提としておつたのでありますが、有償の場合を具体的に示していただきたいと思います。
  41. 下田武三

    下田政府委員 今月の十九日現在の調べによりますと、世界でMSA援助を受けている国が四十八箇国ございます。その四十八箇国のうち二十三箇国は有償援助を受けているという状態になつております。ところがこのラインバーサブル・ニイドと申しておりますが、このラインバースの仕方は、各国の協定の表面にはむしろ出ないので、協定に基いて行われる細目の実施とりきめあるいは細目の話合いできまつているものと見えまして、文書になりました資料では有償は現金で払うのか、どういう方法でラインバースするのかというこまかい方法は私どもにはよくわからないのであります。しかしながらアメリカ側で分類しました区別では有償援助が二十三箇国、無償援助が二十五箇国、計四十八箇国となつているのであります。多数の有償援助の事例があるということだけは明確にわかつているのであります。
  42. 並木芳雄

    並木委員 有償援助内容は全然わからないのですか。何か一つか二つくらいわかつたのありませんか。話合いで行われているにしても何かわかつたものを—有償だとなると大事な問題になりますから、特にお伺いしておきます。
  43. 下田武三

    下田政府委員 現在現実の有償の行われ方がよくわかりませんが、なお調べまして後刻御報告いたしたいと思います。なお日本MSAが与えられると仮定いたしました場合に、おそらく日本には有償援助ではない、無償援助になるものと想像しております。
  44. 並木芳雄

    並木委員 それから資料ですが、きのうもらつたのは一九五一年の相互安全保障法ですが、今アメリカの議会に提案されているのはきつと新しいのが出ていると思います。一年あとのが外務省の手に入つているはずですが、委員に至急新しいのを配付してもらいたいと思います。日本のあれも入つている。いかがですか。
  45. 土屋隼

    ○土屋政府委員 きよう五三年のができたのがございますので、あとで委員に御配付申し上げます。
  46. 上塚司

    上塚委員長 並木君、よろしゆうございますか。
  47. 並木芳雄

    並木委員 よろしゆうございます。
  48. 上塚司

    上塚委員長 池田正之輔君にお諮りいたしますが、あなたの要求しておられる政府委員は保安庁長官になつておりますか……。
  49. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 外務大臣と保安庁長官の二人です。
  50. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣は先ほどお話いたしました通りに、アリソン大使の信任状奉呈に立ち会われるので、時間がございません。保安庁長官はまだ見えておりませんが、あるいは今しばらくすると次長が見えると思いますから、しばらくお待ちくださつて、次の質疑者に発言を許してよろしゆうございますか。——それでは戸叶里子君。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 私はMSAの問題がまだ政府で御研究中のようでございますから、多くお伺いいたしませんが、ただ一点だけ伺いたいことは、たしか米国の新予算年度というのが七月から始められると思います。当然このMSA援助予算というものもそこに計上されると思いますけれども、その場合に日本がそれまでにMSA援助を受けるとか受けないとかいうはつきりとした態度を示すことを要求されやしないかどうかということを懸念いたしますが、その点はどうなのでありましようか。
  52. 土屋隼

    ○土屋政府委員 MSA援助は御存じの通り、特別にどの国に対して幾らという援助方法をきめておりませんで、東南アジア方面に対して幾ら、ヨーロツパに対して幾ら、しかもその項目の中におきましては、本部長官の考えによりまして、多少金額を動かし得る余地をつくつておることは明らかであると思います。従つて将来の仮定の問題でありますが、かりに日本援助を受けるという際には、六月三十日までにどういう意思表示をする必要があるかということが、ただいま御質問の趣旨と了解いたします。少くとも六月三十日の本会計年度が終りますまでの間に、日本MSA法による援助を受けてもいいという意向があるという表示をすることが、日本としては必要ではないかと思います。そうでございませんと、七月一日からの新会計年度に本部長官が新しく日本援助をするということについて、議会の承認を得ることも困難になりますので、日本意思表示があれば七月一日からの援助法の適用を日本にする。こまかいことはそれから先日本と話してもいいということになると思います。従つて最小限度もし受けるとすれば、日本側でもMSA援助を話合いで受けて七いいんだという意思表示をすることが必要かと存じます。
  53. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは政府として受けてもいいんだという意思表示をするということに、もう御決定になつていらつしやるのでしようか。
  54. 土屋隼

    ○土屋政府委員 そういう政府の決定をしたように私どもは指示を受けておりません。従つて政府がどういう考えを持ちますか、今のところ私には政府としての考えを御返答できません。
  55. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、これから政府でもつてお考えになつて、六月三十日までにその意思表示を御決定になるわけなんですか。
  56. 土屋隼

    ○土屋政府委員 研究をいたしました結果、またアメリカ側と話合いをしてみました結果、日本側がはたして受けられるか受けられないかということをその節決定することになります。従つてこれから先であります。
  57. 戸叶里子

    戸叶委員 私は日米行政協定のことでちよつと伺いたいのでございますけれども、新しく小瀧政務次官がここに御就任になりまして、きつと何か新しい外交方針に対してのいろいろな御抱負をお持ちになつていらつしやると思います。その基本となさるところは、自主独立の外交方針というようなお考え方のもとに今後の外交を進めようとしていらつしやると思いますけれども、その点はいかがかをまず伺いたいと思います。
  58. 小滝彬

    小滝政府委員 従来とも政府の方では自主独立の外交を推進して来たものでありまして、それにおいてはかわるところはございません。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 政府が今まで自主独立の外交方針をとつていらしたなんということは、だれもこれは信じられないことでありまして、今後においても今まで通りとおつしやるならば、まことに今後の外交も怪しいものだと私どもは疑わざるを得ないと思うのであります。  そこでまず私ここで伺いたいことは、日本が独立国になつたとは申しながら、まだまだいろいろ主権が回復しておらない面がございます。その一つに日米行政協定がありまして、この中の治外法権に関する条項を見るときに、外部から日本の主権に制限を加えて来たということは、米国の当局でも認めていると思うのです。ところが、たしか四月の初めごろだつたと思いますが、ちようど選挙中に政府日米行政協定内の刑事裁判権は対等のものに改められ、さらにこの刑事裁判権問題で行き詰まつていた在日国連軍との協定も、円満解決が予想されると発表せられたことを私は記憶しております。そのときは選挙中でごたごたしておりましたけれども、ほつとした感じを持つたのは、きつと私だけではなかつたと思います。ところがその後政府はこれに対して何もその問題に関する発表を行つておりませんけれども、一体このことに対しましては、どのような交渉をお続けになつていらつしやるかを伺いたい。
  60. 下田武三

    下田政府委員 戸叶さんの御指摘のように確かに政府は発表いたしました。四月十四日だつたと記憶しておりますが、日米行政協定の第十七条によりますと、同協定が一年後にもしNATO協定——北大西洋協定が米国によつて批准され、発効しておるならば、日本行政協定規定をNATOとの協定通りに改訂する選択権を行使することができるという規定がございますので、日本はその選択権を行使してNATOの協定通りにしたいという申入れをいたしました。当時の情勢におきましては、米国は御承知のように条約は上院の承認だけを求めればいいのでありますが、米国の上院の外交委員会で満場一致でNATOの協定承認されたのであります。そして残るのは上院の本会議だけという情勢になつたのであります。でございますから、日本政府のみならず、アメリカ政府も当然このNATO協定は、米国上院によつて承認されるものと見通しをつけておつたのであります。私どももほつといたしたのでありますが、突然、これはNATO協定自体とは違う問題でありますが、アメリカの大統領の条約締結権の問題に関連して、ブリツカーという上院議員が、大統領の条約締結権を非常に制限しようという憲法の修正案を出した。その問題に巻き込まれまして、NATOの協定批准が、いまだ上院本会議承認せられるに至つておりません。そこで、しからばどういう措置が残されておるかと申しますと、御承知のように行政協定の第十七条の五項に、もしNATO協定が一年後に発効しないならば、日本政府はリコンシダーすることを米国政府に求めることができるという規定がありまして、このリコンシダーに対する申入れを実は四月十四日に行つておるのであります。アメリカは近々NATO協定承認する思うが、もしなかなか承認しないようならば、リコンシダーしてくれという申入れをしておるのであります。そこでこの際NATO協定の米国による批准は、見込みなしと認めるかどうかというせとぎわにはまだ来ていないと思うのであります。米国の議会の会期は、まだしばらく続いておりますので、その期間にすでに上院外交委員会で満場一致で承認されたNATO協定案が、本会議承認されるという公算もあり得るのであります。従いましてこのNATO協定の採用をあきらめて、NATO協定と異なつた案を日本から持ち出す手はないと今存じておるのであります。姑息な修正を少しばかり早くするよりは、日本としてはNATO協定通りで行きたいというのが、ただいまの政府当局の考えであります。
  61. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、NATO協定が本会議をパスするまでは、そのままにしておかれるお考えのようでございますが、もしもNATO協定承認が今後もつと長引くようなことがあつたときは、一体どのような態度をおとりになるのでありますか。
  62. 下田武三

    下田政府委員 まだその悪い場合の仮定をいたしたくないのでありますが、かりにそうなりましても、日本の米国に対する再考慮を求める際、NATO協定からあまり離れたものに改訂を求めることはできない、ごくNATO協定に近いものに改訂してくれというこを申し込まざるを得ないと思います。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 今局長のおつしやいましたように、行政協定の中にリコンシダーという言葉があるとおつしやいましたが、そうであるならば、日米行政協定の中の裁判管轄権が、日本との関係において非常に不平等であるために、日本がいろいろ多くの問題やら、迷惑をこうむつておりますので、そういう点を解決する意味におきましても、また政府が向米一辺倒外交ということを言われないような立場から行きましても、また日本のほんとうの主権を確立するという意味から行きましても、一日も早く私はそういつた不平等なものを改訂する必要があると思うのですけれども、そういう熱意を、もう一度それこそお考え直しになつて、改訂を急いでいただけないかどうかを伺いたいと思います。
  64. 下田武三

    下田政府委員 ただいまの事態は、アメリカの上院の本会議がいつこれを採決するかというところにかかつておりますので、アメリカ政府もわれわれと同様に早く米国の議会が採決してくれることを望んでおるような状態であります。その際にアメリカ政府にわいわい言いましても効果がない。戸叶委員は日本だけが屈辱外交を甘受しておるとおつしやいますが、実は日本だけでなくて、御存じのように、英国におきましても、一九四二年の交換公文におきましても、アメリカが専属的裁判権を持つというような状態になりまして、フランスもやはり、同じような状態にあるのであります。だからアメリカに対して、早くNATO協定批准をしてくれというふうにせつついているのは、日本政府だけではないのでありまして、フランス政府のごときはことにせつついておるようであります。カナダにいたしましても、批准承諾書までつくつてアメリカ批准したらすぐ寄託するぞと言わんばかりに用意はしておるのでありますが、日本だけではなくて、ヨーロツパの諸国も同じような気持で、アメリカ議会のNATO協定の一日もすみやかなる採択を今見詰めておるわけであります。でございますから、この際に姑息的なことでせつつくよりも、いましばらくアメリカ議会の成行きを見るのがよいのではないかと思つております。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 なぜそれほどNATO協定に縛られなければならないかということが私わからないのですが、説明していただけないでしようか。
  66. 下田武三

    下田政府委員 NATO協定の刑事裁判管轄権に関する規定は、現在の確立された一般国際法の原則に最も近いという意味で、私どもも非常に合理的な協定だと思つております。ヨーロツパ諸国もやはりその見地からNATO協定規定を歓迎する気持にあるのではないかと思つております。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 国際法に規定された標準に近いというのでしたら、別にそれにこだわる必要はないと思うのです。さつさと日本の方で理想的なものにしてしまつていいと思うのですけれども、その点はどうなんでしようか。
  68. 下田武三

    下田政府委員 すでに行政協定で一年たつたときに、NATO協定が発効していたら、その通りにするという約束を両方ともしております。そこでそれが一年たつても発効してないのでありますから、リコンシダーの問題になる。結局リコンシダーによつて、どういうものをつくるかといつた場合には、やはり一般国際法に近いもの——一般国際法に近いものといいますと、文句はかえましても、実質はNATO協定と同じようなものになるのではないか、そう存じます。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 今お答えになつたことを伺いましても、私はどうしてもふに落ちないのです。もう一年以上たつておるわけなんです。それでそうなつている以上は、一年以上たつているのですから、その新しくリコンシダーしたならば、結局国際法に近いものをつくるのたとおつしやるのでしたら、一箇月も過ぎておるのですから、なぜそれを積極的につくろうとなさらないか、何かしらそこにアメリカに縛られているとか、あるいは向米一辺倒の外交政策というものがうかがわれるような気がするのですけれども、もうちよつと納得の行くように御説明願いたいと思います。  それからもう一点は、私非常に気にしておりますのは、国連軍の協定もまたその後進捗していないというように聞いておりますが、結局この日米行政協定の問題が解決されなければ、国連軍との間の協定の裁判管轄権の問題なども解決されないのではないかと思うのであります。そういうような点から考えましても、日本政府が積極的にリコンシダーのその条項をどんどん勇敢にお使いになつていただきたいと思うのですが、その御意見をもう一度政務次官と両方に伺いたいと思います。
  70. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど条約局長からも説明申し上げました通り、まだ上院の会期もありますので、でき得ればNATO協定にのつとつたものが有利であるという見地で、しばらく待つた方がこちらに都合がいいという考えを持つておるものでありまして、もしそれができないということになれば、当然仰せの通りこの第五項によりまして、向うに再考慮を促して、皆様の御期待に沿うようなものを協定したいということに努力いたす考えでございます。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 もう少しわかるように、局長から説明していただきたい。
  72. 下田武三

    下田政府委員 戸叶委員の御意見まことにごもつともだと思うのですが、実はアメリカ国会内の情勢を見ますと、今非常にデリケートな段階ではないかと思います。憲法改正問題の趣旨は、米国の国内法至上主義と申しますか、アメリカの国内法が優先すべきである。アメリカの大統領はアメリカの国内法に背馳するような条約を結んではいかぬ、つまりアメリカの国内法の方が大事なんだという根本思想に立つているのであります。そうしますと、大統領はもう手を縛られて、いかなる国とも融通性のある交渉をいたしまして、条約を結ぶことができなくなるというので、政府側は非常に反対をしているのであります。米国の兵士は世界中いかなるところにあつても、米国の軍律によつて処断されるべきだというのがアメリカの伝統的な政策であり、かつアメリカの伝統的な法律的観念であります。そうしてアメリカがそれを主張するかわりに、よその国の兵隊がアメリカ国内に来たら、やはりよその国の軍事裁判所に裁判さしてやつてもいいじやないか。その犠牲を忍んでも、アメリカは外国に対して軍事裁判権の権利行使を確保すべきだというのが反対論の骨子であります。そこでイギリス、フランスを初め日本もそうでありますが、わいわい早くNATO協定の採決を迫るということは、そういう米国内の一部議員をかえつて刺激し、それ見たことか、そういうことを迫られるのだから、大統領は外国に対して強い立場をとるためには、米国の国内法なり、米国の伝統的な法的観念はこうなつているのだということで、大統領を縛るほかないじやないかということになつて、ますます強硬派に油を注ぐことになるのではないか。最近米国の国会内の情勢を調べてみますと、そういう情勢が見えるのでございます。それで米国政府も私どもとまつたく同じように、早くNATO協定承認されることを望んでおるのでありますから、両方からせつついて板ばさみにするということは、しばらく控えた方がいいのではないか、そういうように存じております。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 もう幾ら質問しても同じことだと思いますから、いたしませんけれども、ただ一つ伺つておりまして感じられますことは、一体政府アメリカ国会に付属しているのか、日本国会を重要視しているのか疑わざるを得ないと思うのです。そういう点でもう一度確かめておきたいことは、たいへん失礼な言い分かもしれませんけれどもアメリカ国会よりも日本国会を重要視しているのだということを、はつきりおつしやつていただきたい。そうであるならば、一日も早くこの不平等な条約の改訂されることを要望したいと思います。
  74. 上塚司

    上塚委員長 倭島アジア局長が見えましたから、通告順によつて田中君に発言を許します。
  75. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 関連質問、簡単だから……。
  76. 上塚司

    上塚委員長 それでは池田君、簡単に願います。
  77. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 今の戸叶君の質問に対するお答えの中で、七月から新予算に組みかえられるその前に、日本意思をあらかじめ通告する必要があるという御答弁があつたと思いますが、日本意思を通告する場合に、これはきようお見えの外務省政府委員——私は尊敬しているのだけれども、総理から見ればつまらぬやつだというのだが、こういう人たちにお尋ねして、はたして明快な答弁を得られるかどうか、はなはだ疑問でありますが、これは新しい協定を必要とするのでありますから、その協定内容日本の議会に持ち込んで、われわれの協賛を得る意思があるかどうかということを基本として、その意思を一体どういうような形でアメリカに通じて行くか。その前に議会に対してどういう処置をとられるか。御無理ならあとでもいいですが、できたらこれに対する外務当局意思を承りたい。
  78. 小滝彬

    小滝政府委員 もちろん協定をつくるということになりますれば、議会の御承認を得た上でやると考えております。
  79. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 これは重大な問題ですから、今の関連でもう一つだけ……。今政務次官から、議会の協賛を得るつもりだという明確な御答弁で、私は満足であります。但し日本意思を七月以前に通告する必要があるということをさつき明確に答弁された。その場合に、日本国家としての意思表示をする前に一体どういう措置をするか。
  80. 下田武三

    下田政府委員 七月の米国会計年度の始まります前に、日本として何らかの意思表示をする必要があるということを申されましたが、もちろんこれは政府当局の問題でありませんで、政府全体の問題、さらに政府の背後にあられます各党のお話合いできまりました態度によりまして、初めて私どもが話をするという地位にあるわけでありまして、私どもといたしましては、根本的な態度の決定は政府並びに国会でおきめ願つて、むしろ私どもに御指示を願うべき筋合いだと思います。
  81. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 関連して。今の条約局長答弁は、答弁としてなつていない。ここにあなた方が出ておいでになるのは、ただ一個の条約局長として出ておいでになるのか、また政府の代表として出ておいでになるのか、どちらなのか。政府を代表して出席しておられるなら、政府意思国会が尋ねておるわけだ。それを国会の相談ですとか、それに基いてどうこうという。それではMSA協定を結ぶときに、国会承認を受けるのか、事前政府意思を通告するのか。一体政府意思を通告されるのか、政府を除外した国民意思を通告されるのか、一体どちらなのか、その点を明確にされなければ国民は困る。
  82. 下田武三

    下田政府委員 明確にしていただきたいと存じます。私どもは単なる事務当局でありまして、政策決定の衝に当るべきものではございません。政策の決定はハイヤー・レベルでいたされるべきものでありまして、ただハイヤー・レベルが政策の御決定をいたします際におきまして、MSAの問題につきましては、アメリカの政策がどうなつておるか、各国のMSA援助がどうなつておるかということを調べて、御報告申し上げない上では御決定ができないと思うのであります。それで私どもが先ほど来御説明いたしましたのは、まさに政策の決定に資するための私ども調査の結果をお話申し上げておる次第であります。
  83. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 それならば条約局長答弁はきわめて明快なんです。そうすると爾今政策上に関する関係については、政府委員というものが答弁することができない。答弁する資格がない。ただ関連する事務上の政策について答弁をされるという補助機関にすぎない。こういうことになるですね。はつきりしておいてもらわないと困る。
  84. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま御質問になりました点は、今までのMSA援助に関する経緯とか、今までの研究した結果を申し上げたのでありまして、その意味で事務当局としてお話をしたのでありますが、もちろん政府として決定した点について政府委員が出席いたしますときは、政府意思を代表して発言するものであるというふうに御了承を願いたいと思います。
  85. 上塚司

  86. 田中稔男

    田中(稔)委員 倭島アジア局長に対しまして、在日華僑の帰国問題について質問いたしたいと思いますが、御質問申し上げます気持政治問題というのでなく、人道上の問題としてお尋ねしたいと思います。  皆さんも新聞紙上ですでに御承知の通りでありますが、日本におります華僑の諸君の中で六百三十一名、その中には九十五名の学生を含んでおるのでありますが、これらの諸君が帰国船の往航を利用して中国に帰りたい、これはもつともな考えでありますが、この件につきまして先般北京において帰国打合せのために参りました日赤その他の代表の諸君が中国の紅十字会の代表と、これは正式というのではなく、非公式だと思うのですが、相談をして、大体約束して帰つて来ておることであり、また外務省においても——これも非公式だと思いますが、返すように努力しようというお話もあつたと聞いておる。ところが台湾政府の方の横やりが入りまして今日まで帰国が実現していない。学生の諸君は学資にも困つております。また卒業しましても内地では外国人のゆえをもつてなかなか就職は困難である。また一般の人は戦時中徴用工その他として内地に強制的に連れて来られた人が多いのでありまして、そういう人は日本が負けて街頭にほうり出されてめんどうを見てくれないので、やみ商売その他でしのいで来ましたが、今日生活に非常に困つた不幸な人々がほとんど全部であります。しかもまた帰国のために時間を空費しますと、その間食つて行くことができず、これは深刻な問題である。われわれは三万人の在華同胞の引揚げに対しまして、中国政府それから中国の紅十字会がきわめて懇切な態度で協力してくれた。すでにその約半数は帰国したのであります。そういう際にわずか六百数十名の今日生活に悩んでおる在日華僑を一日も早く、しかも親切に母国に送り届けるということは、これは政治の問題ではない。国際信義の問題である。今日こそ国交が開かれておりませんけれども、いずれは国交が再開される。その場合には中国五億の国民に信を失うということになつてたいへんなことになる。外務当局ももちろん返したい御意向はあると思いますが、どうも台湾政府に対する交渉を見ましても弱腰である。台湾にある蒋介石政権、私はもちろん認めはしません。また日本政府が台湾政権とこの間平和条約みたいなものを結びましたが、その場合にも台湾における蒋介石政権の支配の範囲は、台湾島と澎湖島その他あの付近にちやんと限定して承認しておる、だから中国本土に日本にいる中国人が帰りたいというのは、台湾政府の干渉を許さない問題であると思うのでありますが、こういうふうなものに対する政府の態度はきわめて臆病である、卑屈である。こういうことでは、今後日本外交というものは、とてもこれは今の政府に託するわけには行かぬのでありますが、それは余談としまして、私は人道上の問題として、これはもう超党派的にぜひすみやかに実現させたいと思うのであります。それが私の念願でありますが、今日までの経過をひとつ懇切に御説明願いたい。実はもしこの帰国が実現しない場合においては、第四次の帰国船の向うに出航しますことにつきましても支障が起る、ひいてはまだ残つておりますところの多数の在華同胞の帰国が不可能になり、あるいはそこまで行かぬでも遅延するということになりますので、そういう同胞の父兄の方やあるいは親類の方が非常に心配している、だからこれは単に中国の方々に対する人道上のわれわれの気持の問題であるだけじやなく、またその帰国を待つている日本の多数の国民の関心事なんでありますから、どうかひとつそういう不幸な事態に立ち至らないように、そこに外交上いろいろ打つ手はあると思うのでありますが、今日までの経過をひとつ詳細に御説明つて関係者の心配をこの際解消していただきたいと思います。
  87. 倭島英二

    ○倭島政府委員 お答え申し上げます。この問題につきましては、大体新聞その他で大分報道せられておりますので、よく御存じかと思いますので、あまり詳しい点は省略いたしますが、日本に在留しておられる中国の方々の一部の方が大陸の方へ帰りたい、当初は大陸から来られた人が大陸へ帰りたいという問題が主であつたようにわれわれは聞いておりました。それはもつともの話だということで、日本から大陸に渡つたものを向うから返してもらう、ついてはまた日本に在留しておられる中国の方で、大陸から来られた方が大陸へ帰られるという点については、それはもつともな御希望だということでありまして、中国からわれわれの同胞が帰るという問題について交渉が行われました前後からこの問題が出ておりまして、今御指摘のように、北京でもこの問題が取上げられたわけであります。しかしながらこの問題の実施にあたりましては、やはりいろいろな建前や困難がございますことも、先ほどから御指摘の点に現われておると思いますが、その先ほど申されました中で、台北にある中華民国政府との間の条約の問題にお触れになりました点につきまして、平和条約が中華民国政府とできておるわけでありますが、その条約国会承認を得て正式に締結されたものでありまして、これは日本としましては正式の条約であり、われわれ政府の者も、この条約の建前というものは、当然の前提になるという点を申し上げておきたいと存じます。従つて現在の台北にあります中華民国政府との関係の建前、日本条約上持つておる建前は、われわれ政府としましては、当然尊重すべき立場にあります。従つてそういうことから、現在大陸から来られた中国の方で大陸に帰りたいという方々の御希望を、今度の引揚船を利用して実施するという問題につきましても、そういう一つの建前があるわけであります。しかしながら最初意見がございましたように、この問題は建前だけではやはり行かないということもわれわれ承知しておりまして、建前はできるだけ尊重するのが当然でありますし、したいと思いますけれども、問題は現実の事態というものが、ことに中国との関係において必ずしも割切つたかつこうでは進みにくいという現実の事態を考えまして、大陸へ帰りたいと希望される中国の方々の引揚船の利用の問題についても、むしろ人道的な点に重きを置いて、何とかその希望が達せられるようにしたらどうかという意見が相当ありまして、われわれもその人道的な立場に立つて、何とかその希望の実現されるように持つて行きたいというふうに考えております。しかしながら現在まで台北にある中華民国政府と交渉をしました結果によれば、最後的な回答はまだ来ておりません。最後的な回答が来ておりませんから、最後的なといいますか、その意味においての御返答はまだ申し上げかねるわけでありますけれども、何とか御希望に沿えるように、たとえば全部一どきに関係の方が船に乗れなくても、その一部なりあるいは漸を追うて御希望が達せられるようになりと持つて行きたいと思つて、せつかく今交渉しておるところであります。
  88. 田中稔男

    田中(稔)委員 どうも御答弁があまり具体的でないのでありますが、新聞に書いてあつたことですが、台湾の方からは面子もあつて一応正式にはこれを拒否する。しかしながら実際においては黙認するというような態度を示しておると、こういうふうなことが書いてあります。そしてまた日本政府日本の外務省が芳沢大使に訓令を発して、そういうふうな便法をひとつ何とか講ずるようにというようなことまで指示されたということも書いてあつたのでありますが、そういう点はどうですか。
  89. 倭島英二

    ○倭島政府委員 具体的に御説明ができない点のありますのは私自身も遺憾に思いますが、何しろ本件につきましては目下交渉中の問題でありますので、その点具体的に御返答申し上げにくい点をはなはだ私も残念に思いますが、この点御了解願いたいと思います。芳沢大使に対しては、政府としてはいろいろな場合を想定したり、あらゆる努力をするように言つておりますので、現地においてもいろいろな努力はせられておると思いますが、必ずしも新聞に伝えられておるところはそのまま事実でないと思います。
  90. 田中稔男

    田中(稔)委員 これも秘密でなく、すでに新聞に発表してあることですが、三団体の対策としては、帰国船に赤十字のマークをつけて、これを赤十字の船として一応用船することによつて便法を講じよう、つまり航行の安全をこれによつて守ろうというような話も出ておるようですが、これはどうですか。
  91. 倭島英二

    ○倭島政府委員 私もそういう一つの案があることは聞いております。しかしながらまだその案についてのはつきりした最後的の結論は出ておらぬように承知いたしております。
  92. 田中稔男

    田中(稔)委員 そこでさつき局長から、全部を一時に返さなくて、それを何回かにわけて返すとかいうことも考えられるというようなお話もありましたが、その点をもう少し具体的に、その船は一体どの船を考えておるのか。帰国船を考えておられるのか、あるいはこの帰国船以外の船を利用することをお考えになつておるのか。その点をお伺いいたします。
  93. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先ほど、大陸へ帰りたいということを希望される人の数として六百幾らの数字を御指摘になりましたが、われわれは約千人ぐらいあるという話も聞いております。実は最初は四百幾らという話もあり、その後だんだんと調査が進んでおる状況だと思います。従つてどのくらいあるのかわからない、まだ調査中の趣であります。従つて私がさつき申し上げましたのは調査中のものであつて、さつき御指摘の六百幾らで全部済むのかどうか、私まだよく知りません。その中でもまたいろいろ建前があるようでありまして、結局いろいろな建前や困難があるならば、また調査関係等があるならば、全部一ときにということには行かなくても、具体的に調査が進行中でありますから、調査が全部できたあとで一括して——一括と言つては失礼ですが、全部一ときに帰れるようにしたらどうかという案もあるようです。しかしながら私なんかの考えとしては、話のつくところから、企画のできたところから、少しも早くお帰りになつたらいいのではないかという気持で先ほど申し上げたのであります。
  94. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の局長気持はよくわかります。それなら私も同感です。六百三十一名というのは、要するに昨日現在で帰国を希望している者の数字でありますから、帰国がいよいよできるということになりますならば、ほぼ同様の事情にある華僑の諸君で、帰りたいという人はどんどんふえると思いますので、全部これでおしまいというところまで集計しないで、希望する者がたまつたときに便船のあり次第返すという御方針は、私もぜひそうお願いしたいと思いますし、ぜひそういうようにお願いします。  それからもう一つ先ほど局長からのお話の中に、中国本土から来ている人は中国本土に返すというお話があつたようでありますが、実は在日華僑の諸君の中には、中国本土でなく台湾出身の方が相当おられる。しかもこれが先ほど申しましたように、戦時中徴用工その他として連れて来られて、日本の敗戦とともに非常な不幸な事態に陥つた方でありますが、台湾政府の方では、台湾出身者を中国本土に返すことに反対するという考えも、非常に強いということを聞いておりますが、この点につきましては、日本人で九州出身の人が日本に帰る場合、北海道に帰ろうと、東京に帰ろうと自由であると同じように、台湾も中国の一部分でありまして、政治的な事情が若干違つているだけで、中国の一部であることは間違いないのでありますから、たとい台湾出身の方でありましても、それが自分の好むところに従つて中国本土に帰りたいというならば、その望みをかなえていただくようにひとつ外務省として御配慮願いたいと思う。  その次に御質問申し上げたいのは、今度在華同胞が日本に帰国するにあたりましては、何でも多額のせんべつ金をいただいた、それから働いている職場の中国人の同僚がいろいろな品物を贈つたというようなことを聞いておる。在日華僑の諸君、特にまた貧困な人が多いのでありますが、そうした人がいよいよ便船ができて帰るということにきまりました際に、大した数ではありませんから、これにやはり若干のせんべつ金とかしたく金とかいうようなものでも与えて、こちらも中国の厚意に報いるというようなことは、お考えになつていないかもしれませんが、ぜひひとつお考え願いたいと思いますが、これについての御所見を承りたいと思います。
  95. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今の御意見の中に二つの点があつたと思います。第一の台湾籍の方々の中国渡航の問題でありますが、この点ははつきり申し上げて現在困難だと思います。というのは、結論は先ほど申し上げましたようにまだはつきり出ておりませんから、これはまだわかりませんが、しかしながら従来台湾籍の方々で日本に来ておられる方々は、みな家が台湾にあるわけであります。そして台湾との間には幾らでも帰れるようになつておりますし、また台北にある中華民国政府はその人たち保護に任じておるという建前であるとわれわれ承知しております。従つて大陸から来られた方々が、大陸にお父さん、お母さんその他がおありになつて大陸に帰りたいと言われる問題と、それから台湾に籍はあるけれども、台湾に帰らないで大陸の方へ行きたいと言われる問題とは、おのずから問題が多少違うという点が従来も指摘されておりました。その点はわれわれとしては、そのいずれの方へお行きになつても何ら異存はありませんけれども、台湾の中華民国政府といろいろ交渉しております点をざつくばらんに申し上げますと、そういう点は建前の問題として一つあるようです。この建前の問題ということと、さらに先ほど申し上げました人道問題というような点とのかみ合せをどうするかというのは、また次の別の考慮だと存じますけれども、むしろ従来の交渉の点をざつくばらんに申し上げますと、その第一の点につきましては相当困難がある。それから台湾の方へは幾らでも帰れるようでありますし、また必要ならば中華民国政府の方で必要な保護を加えるという意向もあるようであります。  それから第二の点でありますが、この点は実はまだ考えておりませんでした。御指摘のような点もありますから、今後研究をいたしてみないと、何とも申し上げられないのでありますけれども、ただ今御意見を伺いながらちよつと頭に浮ぶ点は、中国に従来在留といいますか、抑留せられておつて今度帰つて来ます同胞は、いろいろな事情で、在留ではなくして抑留せられておつた人が多いわけでありまして、それぞれの勤め場所あるいは働いておられた所から、いろいろな送別なり従来の報酬を持つて帰られたというふうに聞いております。ところが日本に在留しておられる従来の中国人の方々は、それと事情が異なつておるというふうな気がするのであります。しかしながらさきの御指摘の点もありますから、その点はまた研究してみたいと存じます。
  96. 田中稔男

    田中(稔)委員 そこで台湾出身者が台湾に帰るならいいけれども、中国本土に帰ることは認めないという台湾政府の態度に対しまして、外務省はどうもあきらめているようでありますが、家がかりに台湾に残つてつても、おれは北京に帰りたいというのは自由なんですから、これは世界人権宣言の趣旨から考えましても、人類の基本的人権の問題なんですから、そういう点はひとつ強く交渉していただきたいと思います。  それから最後に一つ、花岡事件その他戦時中国内で起つたいろいろな不幸な事態のためになくなつた中国人の遺骨の問題でありますが、この遺骨の返還の問題は、従来関係団体からしばしば外務省にお願いしており、それからまたこれも帰国打合せの代表が中国においても話合いをしていることであります。この遺骨の送還の問題につきましては、外務当局としてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  97. 倭島英二

    ○倭島政府委員 この問題も、結論から先に申し上げますと、まだ最後的の決定はなされておりません。従つてその問題についてまだ考慮中だと思います。  遺骨の問題につきましては、外務省も一つの担当官庁として一部の担当はしておりますけれども、ほかの官庁の担当部面もございまして、まだ関係各省との話、それから政府としての方針はきまつておりません。
  98. 田中稔男

    田中(稔)委員 この最後の問題はやはり人道上の問題だと思います。これはなくなつた人であります。どうかこれもぜひ返していただくように外務当局でお骨折り願いたいと思います。
  99. 上塚司

    上塚委員長 次会は明二十九日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十四分散会