○
木村(忠)
政府委員 中共地域からの
引揚げにつきましては、御
承知の
通りの
経過によりまして、
中共の北京におきまする十二月一日の放送が
基礎になりまして、
日本側から
日本赤十字社、
日中友好協会、
平和連絡会、この
三つの
団体が
代表を
先方に
派遣いたしまして、こちらに帰すにつきましての
手続等について
打合せをいたしました。これを
基礎といたしまして三月から
帰還が始ま
つたのであります。
引揚援護庁といたしましては、
中共地域からの
引揚者のありますることにつきましては、従来から一日千秋の思いをもつて待つてお
つたわけでありまして、これに対しまする
受入れにつきまして万全を期したい、かように
考えまして、
受入れ援護の
業務を進めて参りました。御
承知の
通りの
情勢で、
舞鶴の
引揚援護局は、その後の
引揚げがストップとなりましたために、逐次人が減員されまして、現在では常置の
職員が百八十数名、二百名足らずの
状況と
なつておる際でありますので、これに対しまする
臨時職員を入れまして、そうしてこの
受入れについての態勢を強化する、また
設備等につきましても、これの補修をいたしまして、これによりまして、
受入れに対して遺憾ないように処置いたしたい、かように
考えまして、話がきまりましてから急速にその
準備をいたしたのであります。
なお、こちらに
帰つて参りました
人人の
援護の問題につきましても、従来の
引揚者に対しまするよりは手厚い
援護をいたさなければならない、——これは大体の
考え方といたしましては、従来の終戦直後の
状態と今日とは、国外におきまする
情勢も違いまするし、国内の
情勢も違つておりますので、こういうような
情勢から見まして、できるだけ手厚い
援護をいたしたい、かように
考えまして、
受入れ援護の
対策を立てたわけであります。この
援護の
対策としましては、
帰還輸送船内、
——先方に船を
派遣いたしまして、この船の中での
援護、それから
援護局におきまして入国の
手続、その他
援護に対しまする
諸般の
手続をいたしまする、その期間内におきまする
援護局内の
援護、それから
援護局からそれぞれのおちつき先の
郷里まで
帰りまする
陸上輸送機関内の
援護、それから
定着いたしました先におきまする
援護、大体こういうようにわけまして、この間の
援護に遺憾なきを期するようにいたしたいと
考えたのであります。
帰還輸送船内におきましては、従来の
船内における
給養とはさらにその
内容をよくするということを考慮いたしまして、
船内の寝具の
準備もいたしまするし、また船中の
食事につきましては、一人一日百七十円という単価で、三千カロリーを確保するということにいたしまして、主食は六百グラム、副食が八百四十グラム、
調味料若干をその
内容とする
給食を行う。これは従来の
引揚船におきまする
食事の
内容と比べますれば、質において大体副食物は二倍以上の質を持つことに相な
つたのであります。それから
船内の
医療につきましても、
帰還輸送船内に
医療のための人として、医師、
看護婦を乗せるのでございますが、これも従来の
引揚船と違いまして、婦女子、それから
未成年者、
子供が多いというような
状況にかんがみまして、そういう
人たちの数も多くいたしたのであります。さらに、これにつきましては、第一次の
引揚の
状況にかんがみまして、
中共からの
帰還者には
予想外に
病人が多い、こういう
情勢から見まして、その
内容をさらに強化いたしたのであります。また
引揚者の
世話をいたしまするために、普通の船員だけでは不十分であると
考えまして、船側にこれに必要なる
世話人を存置させることにいたしまして、そのためにその経費を特に
政府において負担することにいたしたのであります。
それから、
舞鶴援護局に着きましてからは、まず検疫を行い、
入国査証を行いまして、さらに
税関検査を行うのであります。大体三泊四日ここに置くのでございますが、その間の
給養につきましては、大体
船内と同様の
給養をいたすことにいたしたのであります。そのほかに、
留守宅に対する
通信、これは
留守宅に
電報を一回だけ打つことができるようにいたしております。これは無料でやるようにいたしております。それから、
留守宅からの
通信がございますれば、これを
引揚者の方に
交付する、またここで入浴をさせるとい
つたようなことをいたしております。なお、諸種の問題につきまして
身の上相談をいたす必要がありますので、これに必要なる人を局の中に置きまして、
関係各省からの係官の
派遣を請い、あるいは問題によりましては、それに適当なる人を置きまして、それらの
相談に応じさせておるのであります。
就職につきましては、
労働省及び京都府の
職業安定関係の
職員、
戸籍関係の問題その他の法務問題につきましては、
家庭裁判所の
方々に来ていただきまして、また
教育関係の問題につきましても文部省の方に来ていただいて、御
相談を受けております。その他、
先方にありましたところの
各種の事業についておりました
人々の便宜をはかりまするために、これらの
方面に経験のありまする方を
当局の
臨時職員として採用いたしまして、これにその
相談に応じさせておるのであります。それから、
引揚げて参りまして
定着いたしました
あとにおきまするところの
食糧の配給その他
援護物資の
交付、そういうようないろいろな
援護の万全を期するために、この人方が
引揚者であるということを明らかにいたしまする必要があります。そのために
引揚証明書をここで
交付いたします。それから、元
軍人軍属でありました人につきましては、この際に復員の
手続をここでいたします。それから、被服その他若干の
日用品をここで
援護物資として
交付することにいたしております。なお、ここから
帰りまして郷土におちつきまする間の雑費といたしまして、
応急援護金を一人当り千円ないし三千円、
子供につきましてはその半額を
交付いたします。また、今回の新しい
措置といたしましては、
引揚者のおちつきましてから後の生活の
援護並びに
就職のための
準備とい
つたようなことを考慮いたしまして、一律に一人当り、おとな一万円、
子供五千円の
帰還手当を
交付するのであります。これは、当初におきましては、
帰還者であつて
向うから
持帰り金のたくさんない
人々にこれを
交付するという
考えだ
つたのでありまするけれ
ども、実際にその
手続におきましても非常にめんどうでありまするし、また
荷物と
持帰り金との
関係もございますので、第二回船から、これを全員一律に
交付することといたしまして、さらに第一次船の
人々につきましても追給するようにいたしたのであります。なお、病気の
人々に対しましては、入院を要する
人々は
舞鶴の
国立病院に収容いたしまして、そこで
医療を行い、大体
本人が
希望いたしまして帰郷し得る
状態になりました
人々につきましては、これをそれぞれの適当な地の病院に移送するというようにいたしたのであります。なお、
帰りました
あとのいろいろな
国内事情というものを明らかにしまするほかに、
郷里に
帰りました上でいろいろな
郷里の
府県との
連絡ということも
考えまして、局内に
郷土室を設けて、そこに
都道府県から
援護員の
派遣を求めまして、そこで
郷里の
実情についての紹介あるいは
定着についての手引とい
つたようなことをさせるようにいたしておるのであります。さらに、第一次
帰還船の
実情にかんがみまして、
子供が相当大勢おりまして、しかも割合小さい
子供がおりますので、
引揚げに関する
業務を円滑にいたしまするために、
舞鶴援護局内に
引揚げ幼児を
世話をするために
託児施設を設けまして、ここに保母を置いて、
託児事業も行うようにいたしておるのであります。
三泊四日の
滞在期間の
引揚げ業務が終りまして
郷里まで
帰りまする
陸上輸送につきましては、従来
通り乗車券を
援護局におきまして
交付いたしまして、そうして
東舞鶴駅から
帰郷地までの
鉄道輸送を
本人並びに
荷物につきましてやるようにいたしてございます。これは
東舞鶴を出ましてから
郷里に着くまでの
汽車賃をこちらで支払うということにいたしておるのでございます。なお、車中の
食糧につきましては、途中の駅におきまして、適当な
場所において車中
食糧を弁当をもつて
交付するようにいたしております。その他、帰郷の途中におきましては、主要なる駅におきまして湯茶の接待、あるいは
休養所、
相談所というものを設けまして、中間の
援護を各
府県をして行わしめております。
病人につきましては、担送を要する
人々のために先般来
患者専用車を特にとりつけまして、患者の
輸送に遺憾なきを期しておるのであります。
定着地につきましてからは、親戚あるいは
知人等のところに参りますことのできる人は、そちらに一応おちついてもらうのでありますが、そういうおちつき先のない
人々につきましては、先ほど申しました
郷土室において
連絡をとりまして、これらの
引揚者がただちにおちつき先がなくて困ることのないようにいたしまするために、各
府県の主要の
場所に一時
収容所を設けまして、そこへそれらの
方々を
定着するまでの間応急収容することにいたしておるのであります。これらの
方々の中で
住宅の得られないという
人々のために、今回三千四百六十戸ばかりの
建物を全国につくることにいたしました。この
建物につきましては、すでに四百六十戸ばかりが二十七年度中につくられまして、さらに二十八年度におきましては、千戸を今建築いたしまして、さらに次の千戸に手をつけておるのであります。
引揚者の
住宅につきましては、帰られた
方々の
定着地がいまだ明らかでないのでありますから、帰られて
定着いたしました上で適当な
場所にこれを設置するように手配いたしたのであります。
定着地におきましては、
日用品、特に
厨房用品を持つてない
人人のために、
応急家財を支給することにしておるのであります。これにつきましては、
都道府県をしてこの
交付をなさしめております。それから、
帰つて参りました
人々が、こちらに帰られてただちに入院いたしました場合の
医療の問題でありますが、これについては、
入院費を二十五日
分国庫において負担いたしております。それから、
引揚者で生業のために資金を必要とする者に対しましては、
国民金融公庫に二億円のわくを設けまして、
更生資金の
貸付を行わせております。その第一次の
貸付につきましては、現在
手続中であります。貸しつけたものが若干あるようであります。それから、職業のあつ
せん、あるいは教育の問題、戸籍に関する問題、これは、先ほど申しました
通り、それぞれの省におきまして特別な
措置を講ずることにいたしまして、各省において特に努力いたしております。特に
就職の問題につきましては、これは最も重要であることは申し上げるまでもないのでありまして、
労働省におきましては、その
就職のあつ
せんのために特別なる
措置を講じておるのでありまして、現在までの
就職状況は、
一般の
就職状況よりははるかに良好な成績をあげておりまして、なお
一般の
民間諾団体に対しましても、この
就職あつ
せんにつきまして御協力をいただきますように、各
方面に御
連絡をいたしまして、お願いしておるようなわけであります。
以上のような
状況でありまして、現在まで帰られました
方々は、第一次から第三次までの間に一万四千五百五十名であります。これらの
方々の
定着状況につきましては、先ほど申しましたように、現在なお
就職のあつ
せんその他について努力いたしておりますし、
住宅につきましても、東京都におきましては、すでに第一次、第二次に帰られた
方々につきましては、家族を持つておる
人々は大体
住宅に収容できておるのであります。第三次につきましては、現在建築を進めておりますので、そのうちに帰られた家のない
方々も収容できるだろうと
考えております。
次に、第四次の
配船でございますが、これにつきましては、
中共側におきまして、こちらに
配船の
通告がしばらくとだえたのであります。従来の例によりますると、こちらの船が
帰つて来まする以前に、次の
配船の計画が
通告にな
つたのでありまするが、第四次につきましては、これが来ま
せんで、
在日華僑で
先方に
帰還したいという
希望の者についての
向うへの
送還がどうなるかという点についての
連絡をして参りました。それについての
返事のあ
つた上で
先方からこちらに通報するということがございましたので、これにつきましては、三
団体、特に
赤十字社の申入れに従いまして、
当局といたしましては、
在日華僑のうちで
先方に
帰還したいという者についての
向うへの
帰還の
援護ということについての
措置を考慮いたしまして、これに対する各般の
手続を終えまして、これができましたので、先般、その
やり方等につきまして、
日本赤十字社と
連絡をと
つた上で、これが決定したものによりまして、三
団体におきまして
先方に、こちらからの
配船の
日程の
希望を申し入れました。これに対しまする
向うの
通告に従いまして、本月の二十三日ないし二十八日の間に
中共に船がつくように船を出す
準備をいたしたのであります。この
準備をいたしまして、船の出帆ができるようにいたしますと同時に、
在日華僑のうちの第一陣の五百数十名、六百名ばかりの人を
先方に
帰還させる
諸般の
手続を急速に進めましてそうして、これをそのうちの
最終船の
興安丸に乗せまして
向うに帰ることができるように
手続を今進めておるわけでございます。これによりまして、
興安丸に乗りまする、
在日華僑のうちで
先方に
帰還することを
希望いたしまする
人々は、十九日の晩こちらを立ちまして、
舞鶴に着きました。途中いろいろなごたごたがあ
つたようであります。けれ
ども、現在
舞鶴援護局に入りました。これから出国についての
各種の
業務を行うように相
なつております。
なお、現在のところ、
先方に参りまする
帰還輸送船の
高砂丸、
白山丸、
白龍丸の
三つの船につきましては、
高砂丸は、先般
門司に参りまして、予定の
出港日に二
団体の
代表者が乗らないということのために、出港できない
状態に
なつておりまして、現在これが乗船されるのを待つております。白山、
白龍丸につきましては、現在
舞鶴から
門司に向つて行きつつあるのでありまして、これにつきましては、
門司から
あとの
団体がお乗りになるかどうかということによりまして、この
帰還が円滑に行くかどうかということがきまるのではないかというふうに
考えております。