○国安
政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。ただいま御指摘がありました通り、
昭和二十六年に米軍によりまして
東京湾の入口に防潜網が設置されました。これによりましてわが海運
業者がこうむる影響につきまして、概略御説明申し上げたいと思います。
防潜網の通過口は、四十トン以上の船舶用のものと、四十トン未満の船舶用のもの及び小型漁船のためのものの三
箇所でございます。四十トン以上の船舶用の通過口は、幅が約二百メートルでございまして、同時に二つの船がすれ違うことができないようにな
つております。従いまして開口付近におきまして、通航待ちによる時間のロスが相当ある
ということにな
つております。また四十トン未満の船舶用の通過口は、神奈川県の旗山崎付近にあるために、千葉県下の大貫、湊、竹岡、金谷、富津等におきます小型船舶による海上運送
業者は、遠くこの通過口に迂回いたしまして、遠まわりをいたしている次第であります。これに基く損害額は、
関係業者の陳情書によりますれば、四十トン以上の船舶の運航阻害によるもの並びに通過待ちの日本船舶、これが一日平均三十四隻でございまして、一隻平均三時間の遅延となりまして、これがための滞船料は約八十三万円、年額にいたしますとこれが三億円くらいに達しているのであります。また四十トン未満の船舶に与える影響
といたしましては、千葉県下の小型船舶の迂回航行等によります損失は、対象船舶が六十九隻でございまして、航海数及び積載量の減少のために受ける運賃収入減が、年間約五千万円くらい想定いたしております。その他船体及び
機関の消耗、迂回航行による燃料の損失、沖合い航行による乗組員の航海手当等約千七百万円くらい、合計いたしまして約六千七百万円くらいがその損害の額に達している
というのが、陳情書の内容にな
つているのであります。
以上申し上げました中で、特に小型船舶によります海運
業者につきましては、同じ土地におります小さい漁船による漁
業者には、すでに防潜網によるところの漁業被害に対する見舞金が支給されているのであります。なおこれから問題になると思われます
特別損失の補償に関する
法律によりましても、あらためて損害補償の
措置が講ぜられることになるかと思いますので、これに比べますと、小型船舶による海上運送
業者は、その被害状況が漁業の場合と同様であるにかかわらず、見舞金ももらうことができない、なおまた今後の
法律に基く補償も受けられない
ということになりますと、漁
業者との間の均衡がいかがかと考えられるのでございます。こういう点につきまして
運輸省といたしましても、従来から何らかの
措置を必要とすると考えまして、新しく
法律を立法する必要があるのではないかと考えておりましたけれども、たまたま漁業、林業、農業
関係法律が立案される
ということを聞きましたので、その中に一枚加わ
つて海運業
というものもその恩典に浴したらどうかと考えまして、
関係官庁ともしばしば交渉いたしているのでございますが、いろいろな
関係でまだ話合いがついておらないのであります。その間一方すでにその
法案は上程される運びにな
つているような次第で、われわれとしてもこの点いたく心配いたしている次第でございます。