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1952-12-03 第15回国会 参議院 労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月三日(水曜日)    午前十一時十分開会   —————————————   委員の異動 十一月二十六日委員高橋龍太郎君及び 上原正吉辞任につき、その補欠とし て山内卓郎君及び愛知揆一君を議長に おいて指名した。 十一月二十八日委員堀木鎌三君辞任に つき、その補欠として一松定吉君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉田 法晴君    理事            安井  謙君            波多野林一君    委員            野田 卯一君            重盛 壽治君            片岡 文重君            一松 定吉君            堀  眞琴君   委員外議員            木下 源吾君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   参考人    日本電気産業労    働組合中央執行    委員長     藤田  進君    同中央執行委員 小林 武志君    電気事業連合会    事務局長    平井寛一郎君    東京電力株式会    社社長     高井亮太郎君    中部電力株式会    社社長     井上 五郎君    日本炭鉱労働組    合中央執行委員    長       田中  章君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働情勢一般に関する調査の件 ○賃金問題に関する調査の件  (電産及び炭労ストに関する件)   —————————————
  2. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは只今から労働委員会を開会いたします。  本日の議題は労働情勢に関する調査及び賃金問題に関する調査でありますが、その一項目として電産及び炭労ストに関する件となつております。午前中電産関係参考人意見を聴取するのでありますが、先ず電産側の意見を聴取し委員諸氏のこれに関連する御質疑お願いし、そののちに経営者側意見を聴取することにいたしたいと存じております。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは先ず電産側の意見を聴取するのでありますが、お忙しい中に御出席願つて有難うございました。今申上げましたような順序で電産側からその要求主張、それから組合側から見られました支払能力等について御陳述をお願いいたしたいと思います。先ず藤田委員長お願いをいたします。
  4. 藤田進

    参考人藤田進君) 電産の委員長藤田でございます。今次争議が深刻且つ長期に亘りましたことについて若干その経過を申上げてみたいと思います。  今度の争議が極めて長期且つ深刻になりましたその主な理由として私どもは次のようなことが言えると思つております。第一の点は、従来にもまして経営者の陣営が日経連とそうして政府の権力と、これら三位一体となつて日本組織労働者を不当に圧迫抑圧してそうして組合分裂を図り、更には御用化によつて資本家の優位な態勢を作つて行こうという方針が非常に強く現われて参りまして、問題の解決中心に誠意と熱意をもつてこれが円満なる妥結に取運ぶという努力が、先ほど申上げた別の方向に向けられて来ているという点が挙げられると思います。  第二の点といたしましては、やはり現在の電気事業がおかれている経理内容が極めて特段改善がなされて、相当長期にこれを見ましても黒字を生じております。本来ならばそういう状態にあつて解決が円滑に行くはずでありますが、第一の理由と関連し、更に電気料金の値上はさような状態下にあつては不可能である、同時に我々も電気料金値上に待つことなく問題の解決ができるということでありまするので、勢い経営者においてはその利潤全体を会社に留保して資本蓄積と株主への奉仕に専念するという、いわゆる持つているものを出したくない、こういう点にかかつていると思います。こういう大きな二つの点を挙げるについて若干の事例を申上げてみたいと思います。  組合はすでに七カ月も前から本賃金問題、更に若干遅れて労働協約の問題、これらを会社要求いたしたのでありますが、当初団体交渉におきまして会社は全然賃金改訂をしない、この理由には会社負担能力の点は挙げられてはいないと、育つてよろしいのであります。要するに電産の問題の賃金一般会社水準に比べて低いものでない、或いは物価の値上りが横ばいであるという状態、これらを挙げて現行賃金を釘ずけにするというのが主たる理由であります。ところが過去電気事業において他産業に比較して極めて有利な、相当大きな割合をもつて賃金が上位にあると言われておりましたが、これは過去の印象であつて、現在ではあらゆる資料を取出して頂けばわかりますように極めて低位にあるのであります。更に過去いろいろ要求解決いたしましたものは、すべて経理負担能力に応じられない、能力に堪えないということで中央労働委員会等を経て、その当時の会社経理が低いという、こういう唯一の理由をもつて次第に実質賃金は切下げられて来たと言つても過言でないと思います。従つて今度組合要求いたしました根本の精神は、過去のそういつた悪条件において、一般水準からも曾つて言われたほどいいものでない、水準すれすれかそれ以下という状態であるに加えて会社経理特段の前進を示して参りました。過去において総収入に対する人件費割合は五〇%或いはそれ以上を占めていたものが、現在ではすでに一八・八%程度になつて参りました。他の産業に比較して材料その他の消耗品も余り要しない。大きいウエイトを占めるのは何といつて電気事業においては人件費或いは石炭費であります。それが一八・八%を占めるに至りましてすでに会社は四倍の増資をし、一つ無償交付、そうして更に上期だけを見ましても一二%の自然増収を見ております。或いは石炭自身を考えてみましても八百六十万トンが計上されておるのであります。現有設備をしてこれをフルにたきましても六百万トンしかたけない状態であります。この二百六十万トンの石炭を見ましてもおよそ百五十億の金が浮いて来る。こういうふうに考えて来ますと、一%の自然増、更に石炭費ぼう大な節減可能、この中にあつて人件費の増加というものは僅かに四%ということに過ぎないのであります。私どもはマーケット・バスケットの方式によつて二万五十五円、これは電産の年齢構成平均三四才、他の四〇社は三〇・七七才、約三〇才であります、更に勤務年齢他社四〇社を平均いたしますと七年に対して電産は一〇年、扶養家族数は他の四〇社平均が一・六八人、それに対して二・四三人、更に男女の人員勤務員構成でありますが、他社の比較は約七一%が男子で二九%が婦人労務者、これに対して電産は男子が九二・三%、婦人割合が七・七%こういう人員構成を持つております。この構成を先ず頭におきまして、これに対する更に電気事業特殊性、危険度或いは知能疲労度その他を勘案いたしまして、マーケツト・バスケツトによつてそれぞれ物量に対する単価を掛合せ平均二万五十五円というものが出て参ります。  次に団体交渉を数次行いましたが、一文も出さないという会社側主張賃金改訂をしろという組合主張で決裂いたしまして、組合があくまで平和的にこれを解決して行きたいという方針中央労働委員会調停申請をいたしました。調停過程は優に三カ月を余つて、九月六日に調停が提示されましたが、この間組合要求に対しては現在速記録を持つておりますが、中央労働委員会自体としても決して組合要求のそれぞれを検討してみて決して不当とは思わない、けれども一般の公務員その他の関連もありましようし、そういつたいわゆる日本の毎月勤労統計等資料から行つて約一九・七%、このべース・アツプということで一万五千四百円の調停案が出て参りました。この調停案に対しては金額のみならず他に私どもとしては了解のできないものも含んでおりましたので、これを受諾することができませんでしたし、会社側もこれを拒否いたしました。この上に立つて更に団体交渉等を持込みましたが、遂に会社は全く新しい問題として調停案が提示されるまで、電気事業経営者会議九社を一本にした一つ団体と電産の単一組合中央本部との交渉を進めて参りましたが、調停案が提示されるや各社別交渉組合とする、組合地方本部と各会社別交渉を進めて行きたい、こういう新たな交渉方式、窓口の重大な問題を提起するに至りました。最終的には遂に一方的に交渉に応じないという態度を示して参りました。こういう中にあつて遂に半年をけみするに至りまして、忍びがたきを忍んで参つた組合といたしましては、遂に九月の六日を皮切りに、事務ストに入り、更に九月の二十四日電源ストという第一波に相成つて参りました。その後かかる事態の上に立つて中央労働委員会から調停案基礎斡旋を進めるという勧告がありましたので、組合は即刻これを了解いたしました。調停案基礎斡旋を進めることに我々も乗つて行く用意がある。更に組合としては、解決するための要求は二万五十五円ではあるけれどもこの上に立つてぎりぎりの線を打ち出して調停案基礎解決案を具体的に提示したいということで、中山斡旋者にその具体案を十月の十五日に提示いたしました。そこでこの斡旋に対する組合態度でありますが、二万五十五円と申しましてもやはり事態解決を急がなければ、公益事業というこの性格も十二分に了解いたしておりますので、組合調停案基礎にする以上、要求いたしておりまする金額等は将来に努力し実現を図るといたしましても、当面調停案言つておる十月以降一万五千四百円、要求は四月以降でありましたがこの十月以降は認めようと、そうして一万五千四百円と全く考え方は同じでありますが、調停案に示されておるのは、基準外つまり時間以外の賃金を二五%程度に切りつめろという調停案でありますので、組合はこれを一更に約五%組合努力によつて切りつめよう、そういたしますと、これによつて約八百円余りの金額が生み出し得るのであります。会社経理に、関係なく組合努力によつて五%の時間外を節減する、これは会社の腹の痛まない金額であるからこれを調停案の一万五千四百円に加えてもらいたい、そういたしますと一万六千二百円、税込みであります、これは無論会社幹部を含む、四万円もそれ以上もとつておる人たちも含んだ金額であります。この一万六千二百円はさような意味でこれを一つ解決金額にしたい、更に若干の労働条件についてもこれを合理化いたしましようということで具体的に斡旋者にもこれを持ち出しました。ところが会社側は終始統一交渉をはばみ、更に調停案基礎にした交渉に応じることなく先ず統一賃金では困るという点、更に勤務時間をこの際延長したいという点、その他休日、有給休暇等を削減し従来団体交渉で出して来なかつて諸般既得権をことごとく剥奪する会社案を出して最後までがん張つて参りました。そもそも統一賃金の問題でありますが、これは現在の電気料金の中にも統一賃金は織込まれておりまするし、更に従来過去統一賃金でずつと業者間に円満に妥結を見て来ていたのであります。その統一賃金といえども東京のこの都市労働者と、そして仮に四国の電産の労働者、こういうものが同じ賃金をよこせという統一賃金組合言つているのではない。人事院その他公務院にも示されているごとく物価差地域給、これは当然我々も了解して従来もおりますし、今度もいるのであります。従つて仮に調停案によつて考えてみますと関西の全体の平均四国の全体の電気労働者に比較いたしますと、四国は千五百七十円関西に比べて低い。或いは東京と比べますると千三十円四国が低い。こういう全国をならしてみて調停案も一万五千四百円であり、我々の言う五%の切りつめをして賃金に廻すという一万六千二百円、こういう格差は含んでいるのであります。これにもかかわらず更にこれよりももつと四国については賃金の差を設けると、ぎりぎり一ぱいの生活賃金であるにかかわらず、これを更に四国についてもその他若干の会社についても賃金の差等をつけようという主張が出て来て、これが了解できない。  又労働条件にいたしましても過去の会社経営状態が今日に比較いたしますと相当経営が赤字というか困離な状態においても、勤務時間に電産が日本一だなんだと言われているが、我々の資料ではここに持つてつておりますが、他の産業に比べて決して飛び抜けていい労働条件ではありません。これを今日会社経理がすでに資本も四倍増資になり、資産の再評価、減価償却も十分にでき、更に利益も数十億今日挙げているという状態下にあつて、過去円満に調停して来たものをこの際なぜ我々が譲らなければならないか。労働組合としての生命は、労組法を引用するまでもなく労働条件維持改善にあるにかかわらずだんだんと切り下げられて来る、こういうことにどうしても我慢ができない。それのみかその結果は人員配置転換或いは首切りを伴うことさえ予想され、労働条件勤務時間の延長になるのであります。従つてこういう点について強く斡旋者にも持込みそれに代るべき妥協案も我々は提示いたしまして、遂に会社最後まで統一賃金を否定し、労働時間の延長主張いたしまして、この会社二つ主張斡旋案に出て参りましたものを見ると、そのまま入れられている。統一賃金ではない、労働時間は延長する、来月一日からこれを実施する、恐らく一日だつたと思います。来年一月から実施する、こういうものが出て来て、我々としてはいずれも妥協案を出してみたがこれが容れられない。仮に一万六千二百円の内容として以上申上げた調停案と本質的には変らないのでありますけれども、これは専売その他の裁定或いは民間産業に比較してみてこれとひとしいか、やや我々の今度の妥協案のほうが低いのであります。中央労働委員会自体が昨年六月に調停いたしました調停案でさえ一万八千円のべース調停しております。その組合では本年六月になりまして更に二万円を余る労働委員会調停斡旋の結果解決をみております。こういうことであり、その他にみましても二万円を越している産業は多々あります。而もお盆或いは越年、これらについては二万円或いは四万円というものを臨時に出している状態であります。我々電気産業についてはさような臨時的なものは大したものはないのであります。こういう状態でありますので、いわば斡旋案が出て参りましたが、これでもつて斡旋解決したいという我々の希望を余り持ち過ぎたために却つて弱みにつけ込まれたような今日振り返つてみると気持もいたします。ごねてごねて横車を押した会社のほうが遂に通つたという状態は甚だ遺憾だと思います。  これは取りも直さず調停案を曲げている。調停案基礎に進めると言いながら、調停案によりますと勤務時間は延長することにはなつておりません。勤務時間の延長をするということになつているならば基準外を二五%にするという計算が出て来ないのであります。基準外は二五%にするということは、勤務時間は現行通りであるからこそそういうふうにできるのであつて、このことは調停を出された労働委員会も十分承知いたしているはずでございます。これが同時的に勤務時間を延長する、ノルマをふやしてそうして労働力を売つているけれどもその労働力実質的に切り下げる、会社主張いたしておりまするもの、そうして斡旋案に出て来た労働条件をそのまま入れますと、現行より三千円マイナスになります。べースが今日約一万二千九百円でありますが、会社では現行税込が一万二千八百円だと言つておりますが、そういたしますと一万五千四百円に斡旋はなつておりますので、この一万五千四百円から事実上三千円労働条件を切り下げられることによつて引かれるのでありますから、一万二千四百円のペース実質上なります。一万二千四百円になるということは、現在一万二千八百円であるのに、会社言つている公称数字です、とするならば、四百円切り下がる結果になります。何のためにこんな解決をしなければならんかということはおわかり願えると思います。こういうことで、何といつてもあの斡旋案を呑んで解決することができなかつた。非常に斡旋案が出たことによつて我々は失望いたしました。斡旋案を出すからこれを蹴つて下さいというような話もありましたが、労働委員会のほうから。私どもは、と言いながら何とか解決するものが出るだろうと予想いたしましたが、どうしても呑めるものが以上のように出て来なかつたということであります。私どもといたしましてはこの上に立つてもやはり統一賃金であることと、そうして労働条件を切り下げないというこのことはあくまでも我々は譲ることができません。この二つをやはり堅持いたしまして、この上とも要求要求であるが、以上申上げたようにこの際譲り合つて双方解決する以外にはない、こういうふうに考えております。  組合分裂御用化についての若干の事例を申上げますと、新聞等にも或いは過大にも宣伝されております面もありますけれども会社は厖大な資金を注入して中部電力の一角においては非組合員会社役附、職制が中心となつて会社出張旅費の形で各地にオルグに出て、そうして組合の切崩しをやつている。こういう信義にもとることが、却つて紛争議を深刻化さしている結果を招いでいる点も否定できないと思います。私共は当該中部電力に対してはストライキをやる半面特に組織確立維持に重点をおいてやり、他の完全な強力な地域においては我々は会社に直接圧力を加えるストライキを続けております。このことは不当労働行為で今日申立をすでにいたしておりますが、このことはやはり問題の解決を却つて阻害していることになつているかと思います。その他いろいろ申上げたい点もありますが、以上私共の考えております特徴的な今度の争議の実態をここに申上げて御質疑によつて明かにいたしたいと思います。
  5. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 委員諸氏の御質疑がございましたらお願いをいたします。
  6. 片岡文重

    片岡文重君 中座をいたしましたために或いは御説明があつたと思いますので、若し御説明があつたことであるならばのちほどのちほど速記を拝見さして頂きますから結構ですが、電力再編成に当つて会社が九つに分断された際に組合としてはどういう態度をとつておられたのか。どういう態度というのは労働条件についてどういう希望を出されておつたのか。それから会社側は何らかそれに対する意思表示があつたことと思うが、そういう点について九分断の当時における組合の諸情勢、考え、要求並びにこれに対する会社との折衝の結果、そういう点について一つ説明頂きたいと思います。
  7. 藤田進

    参考人藤田進君) お答えいたします。九分断ポツ勅でもつて遂に強行いたしましたがこれに対しては反対をいたしました。これはすでにあのポツ勅電気事業分断するというあの声が顕著に一昨年の暮から出て来た当時以前に、今日から言いますと約七年前から電気事業がこのままではいけないという主張を具体的な案をもつて関係各省にも提示し国会にも働きかけて来たのでありまして、これは今日の結果を見て頂ければわかると思いますが、電力料金政策が今のままでいいかどうか、非常に地域差のついた四国、九州或いは中国、北海道、これに比べて東京或いは中部電力或いは関西電力、こういつたこの電気料金の差というものは極めて大きなものがあります。然らばといつて安い電気料金の所に化学工場その他セメント工場などを持つて来ればいいようなものですが、原料その他からそう簡単には参りません。私鉄事業を取上げてみても電気の安い所だけ電車をつければよろしい、今四国にある電車を全部東京に持つて来るというわけには参りません。いわば日本産業の復興と発展を非常に大きく阻害しているのが現在の電力料金政策から生れたものであり、更に根本的には電力行政の失敗がここに出て来ていると思います。  渇水期が来るたびに言われていることでありますが、或る会社では雨が降つて水があふれていても、或る会社ではどんどん貴重な石炭をたいてそうして賄わなければならない、送電線が一本に繋つておりながら需給調整がうまく行かない、弱肉強食の姿が今の電気事業であります。こういう点からもやはり電力需給調整、融通を円滑にしなければならん。そうして資金の面からも、電源開発の面からもこれを考えてみますと、結局これは最終的には国有国営化されなければならんでありましようが、そこへ行かないまでも企業形態としては財布は別々で、電源開発一つにいたしましても、御承知の通り労働問題については賃金値上しないという全く経営者は一致した態度で来るけれども事会社経営については御案内のように、東京電力と東北電力は遂に裁判沙汰までして利権争いを現在やつている。或いは需給調整がうまく行つていない。更に電源の帰属につききましてもいろいろな暗躍を続けなければならん。北陸関西に取られたり、又北陸へ返してくれというようなことで、すべてがここに電気事業の健全な発展、ひいては産業の健全なる発展が阻害されているという、このことから我々電気事業に長年従事してそういつた事情をよく知つておる立場から具体案を作つて端的に申上げますれば一社化すべきだ、そうして社会公衆のためになる電気事業にすべきだ、こういう主張をやつて参りました。これは遂に相当な世論、国会の中でも支持は得たのでありましたが、遂にポツ勅分断されて今日のごとく極めて目に見えない不利な状態になつているのが実情であります。従いまして私どもはこういう事態本国会におきましても根本的にやはり検討をして頂きたいと思います。  然らばといつてこれで今度のストライキ解決しようなどと思つておりませんが、電気事業の根本的な政策をここに確立しなければ、そうして企業形態を検討しなければ電気事業は行詰つてしまう、すでに行詰りつつあります。電源開発会社は、これ又我々もああいう方式には反対いたしましたが、遂にこれ又実際うまく行つていない。既存の会社に仕事をやらせ、或いは半々にやるという、実にロスの多い不合理な行き方に遂になつて参りました。これは附け加えて申上げたのでありますが、おわかりになつたかどうかわかりませんが。
  8. 片岡文重

    片岡文重君 九分断されたことによつて当然この労働条件賃金等企業別に違つて来るであろうというようなことは当時想像されたと思うのですが、それに対して組合側はどういうふうに会社側と折衝されたのか、或いはどういうふうに交渉を進められたのか、約束でもされたのか、こういう点についてもう少し詳しく教えて頂きたい。
  9. 藤田進

    参考人藤田進君) 分断によつて労働条件の低下は、全部会社が解散して新らしい会社ができたのであつて、或いは日発が解体されて当時の配電会社に吸収したというものではなかつたわけであります。従いまして当時後見契約というか、一応そのように解散をいたしまして新らしい会社ができ、従つてその法人も変つて参るので名前もすべて変つて来ました。配電会社電力会社になり日発電力会社になつて合体したのでありますから、従つて当時私ども後見契約というか、新らしい会社になつても従来の合理的な慣行や労働条件は低下しないという点は約束をいたしております。同時に更に附加えて申上げますと、約束をするまでもなく、労働条件殊賃金各社別アンバランスを生ずるということは理論的にはあり得ないのであります。現在でもそうであります。なぜならば労働条件賃金を画一にしてそうして過去十カ年の雨の降り工合従つて石炭たき工合ですね、こういう諸般の要素を加味して原価計算をして電気料金をはじき出しているのです。つまり会社経営を一定の状態に維持して、そのもとにおいて経営の難易を平均化してアンバランスのないようにして参りますと、四国では幾らキロワット当り電気料金をしなければならないか、東京ではキロワット当り幾らにしなければならないか、こういうことであるから電気料金に差等が付いておるのであります。電気料金の高い所は余計にもうけさせようというわけでもなし、低い所は損をさせようという料金でもありません。経営を同一条件において同じこの難易の度合によるアンバランスをなくしようというのが電気料金のしわ寄せで、地域差の料金になつておる。こういうことが言えるのでありますから、決してこの労働条件などに差等を付けるべきものではないのであります。今度の上期を見ましても各社ともぼう大な利益を上げております。これは通産省に会社側が出しただけを見てもおわかりになると思います。更に私どもはそのまま会社が作つておる資料を我々が確認して間違いないものと証明するわけには参りません。組合員が営々積上げて作つた資料で最終的なまとめがどこにどういうものをコレクトされておるかということは更に検討する必要があると私どもは思つております。二、三点この四国などについてもやりとりいたしてみましても明らかに我々は了解のできないものがあります。曾て日発において三十六億の含み資産があつて未払処理の形がなされていることは皆様も御承知の通りであります。こういうようなことが全然ないかどうかは我々も確信をもつて言えない状態であります。とにもかくにも労働条件の格差を付けなくても料金そのものがそういうアイデマにあるし、同時に仮に雨の降り工合が違う、上期なら上期で違う、下期は予想しがたい、又その次の上期は予想しがたい、これは測候所といえどもそう長期間の予想はできないはずであります。それが一時的に三カ月とか、六カ月ちよつと違うからすぐ賃金も違えるということは我々は了解できないのでありまして、そういう意味から統一賃金という点をどうしてもがん張らざるを得ないということを付け加えておきます。
  10. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) まだ御質問ございますと思いますが、あと経営者側が待つておられますのでこの程度にいたしたいと思いますが、先ほどお話のありました労働条件を切下げると三千円ほどの切下げになるというお話がございました。その点はあとでメモその他で結構ですからお出しを願いたいと思います。  それから一つ簡単に御答弁を願いたいのですが、渇水準備金というものについて、労組側としてどういう工合に考えておられますか、その点をお聞きしたいのでございます。
  11. 藤田進

    参考人藤田進君) 今度の一万五千四百円は、中山先生の御調査の結論を借りて見ますと渇水準備金に手を附けなくても支払えるということが今度の斡旋なんかでも明確に言われております。併し私どもの渇水準備金に対する考え方をまあ申上げてみたいと思うのであります。まあ賃金が渇水準備金に手を附けなくても賄えるという斡旋者の御調査でもあるし、渇水準備金はどうでもいいようなものですが、私どもといたしましては渇水準備金なるものは将来あれほどの金額を使うことはない、累年これを貯蓄して行くという結果になるというふうに結論的には思つております。なぜならば、先ほども申上げたように、余りにも多くのものを、利益の何割ということですが、利益が多ければ多いほど積立は多い、今度も資料をもちだと思いますから数字は省きますけれども各社とも多い。これは通産省の公益事業局の意見を借りてみましても、渇水期にこれは水が足りないから石炭をたくというやつはもう当然見込んであるやつですが、今の渇水準備金を使い果すためには、降水期にも及ぶよほどの渇水でない以上これを使うことがない。先ほども申上げたように現在の電気料金の中には重油換算を含めて八百四十万トンの石炭が計上されております。ところが現在の火力設備、いくら誰がやせ我慢を張つてみましても現有設備で六百万トンしかたけない、これは会社も認めている、二百四十万トンこれは文字通り余るわけですね。現在賃金は上りませんけれども石炭はどんどん値上りしております。大体平均六千円と見ればいいと思います。六千円を二百四十万倍して頂けば幾ら出てくるかわかるわけですね、これに更に上期などを見ると一二%の売上増があります。こういう状態でありますからこの渇水準備金なるものは今問題になつて通産省に強く出て来ている。政府当局から聞きまするころによると、これもう要らん金だから一つ需用者に返してくれというような運動が出て来ていると言われております。そういう性格であつて、税金をかけないで社内に留保してこれをうまく使つて行くというからくりになつていると私は思つております。
  12. 小林武志

    参考人(小林武志君) ちよつと補足いたしますが、それでは今度組合斡旋案を拒否いたしましてやつておるところの基本的な考えですね。これは先ほど藤田委員長から申上げましたように、あくまでも過般出されました中労委の調停案基礎斡旋の勧告に応じたわけでありますので、その面から考えますると、組合が今要求しておるところの原資はどのくらいになるかと申しますると、これは半期三十二億、年間約六十五億、これはすべての賃金基準外或いは退職金、その他厚生年金とかいろんな社会保険等の一切を含んで年間約六十五億、今年度については十月以降のべース・アップでありますので、三十二億とこれだけの原資でございます。これに対しまして会社側経理分析を組合でいたしまするならば、只今藤田委員長の言つたような財源が出て来ると、こういうことになるわけであります。それから先ほどの労働条件の切下げの問題でありますが、今度会社側のほうが、非常に中労委で強力に主張いたしまして、斡旋案にも出て参りまして、一番はつきりいたしておりますのは労働時間を一カ月十五時間延長しろというのであります。なおそのほかに労使間の協議において、而もこれは争議状態じやなく平和状態において労使間で協議しろと任されておる問題に、即ち休暇の削減の問題或いは休日の一部廃止の問題等があるわけであります。これを若し会社が今まで主張いたしておりまするような考えの下に妥結をいたすならば、一カ月当り約二十時間の時間延長になるわけであります。そうしますると私たちは労働者といたしまして労働力を売つておるわけでありまするから、そのような観点からいたしますると、例えば労働時間の延長十五応問は千四百三十四円、休暇の削減は二百七十七円、休日の廃止が二百二十円、そのほか基準外の削減を一割程度というように見ましても三百八十五円、家族給の削減、それから社会保険の負担分の増加その他の手当を合算いたしまして約三千円程度実質的な切下げになる、こういうことになるわけであります。
  13. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それじや有難うございました。引続いて経営者側の……。
  14. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 ちよつと一言だけ。小林さんで結構ですが、これは僕らが昨日実はちよつと関係のかたからお聞きしたんですが、そういうことと、いろいろ斡旋案を見ますると、最初の会社の考えかたは、まああなたがたの御説明のように賃金要求に対して逆に労働時間の強化を強要して来たと、従つてその中には話合つて今度の問題の解決を図ろうという誠意が見られないように思うのです。これが私の解釈なんです。  それからもう一つは例えば一緒になつて統一的に引上げをするというなれば九百何がしの程度は上げられるけれども、それも賃金の引上ということになつて労働時間の延長になつて、今のあなたの御説明のように労働時間の延長によつて九百何がしの引上になつて実質には引上にも何もなつておらんと、むしろ居残り時間で取るべき労働賃金を普通賃金で支払うような形になつて来るというように見受けられるのですが、それでいいのか。それからもう一つ労働時間が何年ぐらい、いつ頃から今のような時間で実施しておられたのか、これをちよつとお聞きしたいと思うのです。
  15. 小林武志

    参考人(小林武志君) 労働時間のほうは過去七年ほど現在のものを実施しておるわけであります。それから先のほうの御質問ですが、会社側のほうの言う九百五十円というのは、先ほど申上げました労働時間の延長或いは休日、休暇の削減、廃止、その他若干の我々の労働条件に関する問題の合理化と、もう一つ職階制賃金の問題があるわけです。只今申上げましたような労働条件の合理化、会社の言うところの合理化、これによつての原資がそこから七百五十円出るという会社主張であります。そうしてそのほかに職階制賃金を今度の組合賃金要求とからんでどうしても実施をするんだと、そのことによると現在の電産の組合員の中から一割程度のものが現在の賃金よりも下るという現実が出て来るわけであります、その面の穴埋めをしなければならないというような点から臨時的に二百円のものを出すと結局合計いたしまして九百五十円、これを統一的に出して労働時間と引替の賃金の値上では、只今御指摘のように逆に言うならば時間延長によつて今までの時間外をなくすことによつて、そういうものが浮いて来るというのが会社側主張であります。
  16. 藤田進

    参考人藤田進君) 今の御質問に関連してですが、現在の労働条件は先ほどお答えした通りです。併しその後ずつと戦前からいつて更に一昨年あたりまでは夏季半休というのがあつたのですが、これはやはり合理化するというのでその後夏季半休も返上して現在いるのです。
  17. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは大変お待たせいたしましたが、高井東電社長初め御出席を頂いたかたに電産の賃金問題について意見を聴取するのでありますが、今までの経過は余りお述べ頂かなくても結構であります。これは大体政府なり或いは事前に委員諸君も承知をいたしております。そこで主として組合側要求に対する会社側主張とその根拠。それから一応組合側からも説明が今お聞きのように簡単にありましたが、九百五十円は出せるというお話でありますが、その九百五十円の支払可能の根拠。それから調停案に基く斡旋案についての御見解と申しますか或いは御主張の根拠。そういうものを承ることができたら大変結構だと思います。そういう意味で二十分程度お話願つて、あと委員諸氏質疑にお答え頂きたいと思います。平井事務局長から先ずお話願つてあと質疑に答えて頂きたいと思います。
  18. 平井寛一郎

    参考人平井寛一郎君) 経過につきましてはそれでは御説明は省略さして頂くことにいたします。  先ず組合側の今回の賃上問題に対しまする基本的な見解は大体四つの点からお話申上げればいいのじやないかと思うのでありまするが、その第一の点でありまするが、これは先ず電産の現行賃金が他の産業に比べて決して安くない、こういう事実をやはり私どもは考慮の一つとして持つておるわけであります。現行賃金は御承知のように基準賃金において一万二千八百円であり、実際の総賃金としては基準外を入れまして一万六千六、七百円の現状にあるわけでありますが、これは全産業平均からいたしますると四割以上上廻つております。それから又五百人以上の大工場の平均から比べましても相当に上位にあるわけであります。特に実働一時間当りの賃金にこれを換算してみますると、電算の現行は九十六円七十銭となるのでございまして、五百人以上の工場の平均が七十四円見当でありまするのに比べましても、相当に時間当りの賃率は高いということを申上げなければならないと思います。電産の要求では若しこの要求通りいたしますと、時間当りは百五十円見当になるわけであります。こういうふうな点を考えますと組合要求は他産業から比べて安くない。従つて組合要求を呑むということにはそういう面から困難があるということを考えたのでありまして、組合の気持は健康にして文化的な生活を営めるようにといういわゆるマーケット・バスケットの理論に基いた主張に根拠をおいたわけでありすが、そういうできるだけ楽な生活ができるようにという気持はよくわかるのでありますけれども、我が国の経済の現状としてはそこまでは到底困難で考えられないと、こういうふうに考えているわけであります。第二の点といたしましては、賃上げの問題はやはりその企業経理の枠内で考えるべきものであろうと、こういう見解を持つているのであります。不用意な扱い方をいたしましたために、直ちにそれが電気料金の値上げを招来するというふうな賃上げに応ずるという態度は避けなければならない、こう考えておるわけなのであります。御承知のように電気料金は政府の非常に厳重な監督の下にございまして、聴聞会その他の手続を経て政府の認可によつて決定されるのでございまして、現行料金の原価の中には賃金といたしまして支払うべき限度は現行賃金しか計上されておらないのであります。で組合要求を入れますると年に二百億円の経費がふえるのでございまして、調停案金額でも六十数億円の支払増加となるのでございまして、到底この電気料金経理の枠内では吸収し得ない大きな額なのであります。従いましてそこまで参りますると、どうしてもその相当の部分をば電気料金の値上げの形によらざるを得なくなる形に追込まれるようなわけなのでありまして、会社といたしましてはこのことば極力避けたいと考えているのでございます。それから組合のほうでは今年の夏が非常に豊水であつたという点から、会社の収入が相当大きく現れているではないかという点を強く指摘しているのでありまするけれども電気事業経理は短期間の一時的な現象だけでもつて判断することは非常に危険なのでございまして、冬期の渇水期を考慮に入れたいわゆる年間の収支の均衡の上に立つて問題を扱わざるを得ないのであります。特に豊、渇水によります収支の予想に対する増減というものは、その大部分をば法令の定めるところによりまして強制積立金させられるような扱いかたになつているのでありまして、これをば賃金その他の費目に流用することにはできないような制度下におかれているのであります。従いまして今期、この上期に若干豊水による利益はあつたのでありまするけれども、これを以て直ちに恒久的な賃上げの原資にこれを考えるということはいたしかねる次第なのであります。又会社電源開発資金調達の一つの方策としまして、この上期には終戦後初めての一割五分という配当を実は今実施しようとしているのでありまするが、更に下期以降において増資計画をも進めているのでありまするが、若しこの面の配当の金をば廻すということにいたしましても、実は配当に所要な額はこの賃上げの大きな金額に比べますると非常に金額が小さいのでありまして、全部吐き出しても到底足りない数字なんであります。従つて若しそういうことをいたしますれば、やはり現在約九電力会社で以て二百万キロワットに近い水力、火力の工事を進めておりまするが、そうした電源開発の工事資金すら又調達困難に至るというふうな面も考えざるを得ないのであります。こういうふうな事情からいたしまして、私どもといたしましてはこの企業経理の枠を外してまで賃上げの問題に応じかねるという建前を取らざるを得なかつたわけであります。  第三の点といたしましては、電産の労働条件が他産業水準に比べて非常によろしいのであります。例えば電産の所定労働時間は週三十七時間半なんであります。一般産業平均は週四十三時間程度になつているのでありまして、現在では四十二時間未満の会社というのは殆んどないと言つてもいいくらいの状態にあるのであります。で、会社組合に対しまして、職階制の実施と合せて、労働時間、休日、休暇その他の越した労働諸条件は、社会水準化までしてもらいたいということを強く要望しておりまするのも、そうした面と合せて、この賃金問題を解決したいという気持にあるからであります。第四の点は、電気事業は昨年の五月再編成をいたしましたので、これによりまして独立採算制の建前になつて、企業経理の実態には順次格差ができている実情にあるのであります。で、電産自体は御承知のように、全国単一の組合なんでありまするが、会社のほうはこういうふうに再編成いたしましたので、いわゆる従来のようなプール計算することができなくなつておりまして、自然その経理内容が違つているために、当初の段階においては、統一賃金としては九百五十円という線を出したのでありまするが、更にこれから飛躍して、上の賃上げに応ずるということになりますると、どうしてもいわゆる各社別賃金主張せざるを得ないような立場に至つたのでございます。会社組合に対しまして、企業別賃金或いは各社別交渉ということを強く主張いたしましたのも、こうした点から生じているのであります。大体以上申上げましたような四つの点が、会社の今回の賃上問題に対する基本的な考え方であつたのでありまするが、丁度この十一月の十四日以降になりまして、中山会長が再び斡旋をして頂くことになりまして、そうして前後、団体交渉その他で八回の御斡旋過程を経まして、非常な御苦労の多い御斡旋であつたのでありまするが、漸く十一月二十六日になりまして、斡旋案の提示を会長から受けるに立ち至つたのでありますが、この斡旋案の骨子と申しますると、これは前回の九月に出ました調停案を大体基礎としまして、そして調停案の当時においては、労使双方の良識ある協議に任されておりましたような、いろいろな具体的な内容をば明確に具体化されたものなんであります。言い換えれば、そういつた形でぼやつとしていると、はつきりしないために、話がどうしても歩み寄りができないというので、具体化されて出されたものなのでございます。それを見まするというと、労働条件の社会水準化という点につきましては、概して会社側主張が入れられていると言い得るのでありまするが、それでも、例えばその実施時期等につきましては、相当月数……三カ月からのずれもあるとか、その他いろいろとなお我々としましては相当困難な面はあるのでありますが、とにかく労働条件の社会水準化という点については、おおむね会社側主張通つたと申上げられるのじやないかと思います。併しながら一面統一賃金或いは労働協約というふうな面からいたしますると、おおむね組合側主張が貫かれていると言い得るのでございまして、中山先生のお言葉をかりますと、いわゆるこれは双方刺し違えであるとおつしやつているのでありますが、そういう形になつたものと解されるのでございます。で、会社側といたしましては、実はこの旋案を頂きました上に立つては、やはり何分にも経営の格差から来る格差賃金主張の面、或いは労働条件の合理化のいろんな具体的内容等につきましても、いろいろとまだ会社主張と隔りがありまするために、大きな不満と不安の念があるわけであります。不安と言いますのは、特に見通しに対する不安であります。そういう離点がありまするけれども、何分にも今次の争議が国民経済の運行並びに需用家各位の日常生活に与えます影響が非常に重大な点を考慮いたしまして、いろいろ苦慮いたしました結果、話合をまとめまして、二十八目の晩に至りまして、ついにこの斡旋案を受諾するということを決意をいたした次第であります。ところが組合のほうはこの斡旋案を実は即日拒否いたしております。そしてなおストを続けているというふうな事態なんであります。私どもといたしましては、折角ここまで来たのでありまするので、何とか組合のほうでもこの幹旋案を中心にして、公益事業に従事するものの立場という点から、もう一遍再考慮してもらいたいということを期待しているのであります。そうした形を通じてこの争議が収束することを念願いたしているというのが現在の実情でございます。
  19. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 平井事務局長から御説明ございましたが、御質問に移りたいと思うのでありますが、委員諸氏から御質問ございましたら、逐次お願いいたします。
  20. 片岡文重

    片岡文重君 最初に委員長に伺いますが、この進め方は、経営者側の三人のかたに、後にそれぞれ又説明を求めるのですか。それとも大体平井さんが代表して、質問に答えるのですか。
  21. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 事務局においでを願いましたけれども、これは統一的なまあ合同陳述と申しますか、総括的なものをお話願つて会社側のほうでは各社別という御主張もあるわけですから、実際に経理の実情或いは主張等も各会社別になされる可能性のほうが強いのじやないか、まあそういう点も考え合せて、全部出て頂くわけに参りまんから、代表としてお二人に出て頂くことになつたのであります。その辺をお含みおきの上、それぞれお名指の上御質問を願うことにすれば結構だと思いますが。
  22. 片岡文重

    片岡文重君 では只今の御説明の中から二、三御質問いたしたいのですが、独算制をとつて以来、企業別経理内容が違つて来たから、賃金を統一でやることは困るというよりも、むしろ不合理であるというような意味に伺つたのですが、独算制をとるということは九分断した、つまり分断されて新らしくスタートしてからのことで勿論ありましようが、そのスタートをするときには今の従事員がやはりやつておられて、而もそのときには統一賃金でやつておられたと思うのですが、それらのことを基準として、この経理内容が整えられて、その上に立つて今日まで経理が進められて来たと、こう思うのですが、その点はどうなつておりますか。
  23. 平井寛一郎

    参考人平井寛一郎君) 御承知のように、この再編制前の姿においては、発送電も日発という会社が全国内に一社ございまして、それと配電会社九つとの繋りにおいて事業の経営が行われておりましたが、卸売料金という操作を通じまして、各社間の経理は事実上行われておりました。ところが再編成いたしました結果は、いわゆる独立採算という建前がそれぞれ出まして、地区的に発送、配電部門が一貫的に経営されるようになつて参りました。御質問の要点は、恐らく電気料金の決定の中には統一賃金が入つてつたのではないか、従つてその線で経営がなされておつたのではないかという面からの御質問ではないかと伺つたのでございするが、実はその通りには違いないのでございまするが、御承知のように料金というのは、或る時期におけるいろいろな物価、その他のものを原価として妥当なる額だけを計上いたしまして、そしてその上に立つて総括して価格というものが出ておるわけであります。又その上に立つてそれぞれの料金単価というものが決定されておるのでありまして、経営は政府の認可を得ました料金単価で以て営業を続けておるのであります。現在の料金原価の中には、確かに現行の電産賃金がそのまま入つておるのでありまして、それ以上のゆとりは別にないわけであります。従いまして、現行賃金を払う面においては、統一賃金の現状においては払うことに何ら問題はないのでございますが、今電気料金の現状の上に立つたまままで、更に賃上げに応じようといたしますと、どうしてもその原資の捻出の面において、事実経営上の格差が出ざるを得ないということなのであります。実際の経営の面では、倒えば需用構成が、その後の時間、日時の経過と共に、料金の建前のときよりは、原価をきめましたときの予想とはどうしても出入があるのであります。需用構成にしましても、或いは水の出方にいたしましても、或いは石炭の値段にいたしましても、いろいろなものが当然変化があるわけでありまするが、会社といたしましては、それはやはりその会社経営責任の上に、そうした変動に善処して行かざるを得ないのであります。そうした間にあつて、九つの会社がそれぞれの経理内容というものに若干のでこぼこができているのであります。これがどうしても実際の運営面で自然発生的に出ざるを得ないのでありますが、或る程度の賃上げというのならば、大体統一的な賃金ースで何とか乗切れるわけなんでありまするが、それをどうしても押して、もう少し金額を払おうといたしますると、それぞれの経営画で余裕のあるところと、それから余裕の非常にないというところと、各社まちまちなものでございますので、そこに我々として料金の枠内で問題を処理するという建前上、賃金差を出さざるを得なかつた、こういう事情でございます。
  24. 片岡文重

    片岡文重君 そうしますと、組合側に先ほど伺つたところによると、九分断されることについては極力反対しておつたのにもかかわらず、且つ又国会でも分断することについては反対の意思が強かつたにかかわらず、ポ勅で強行された、そうしてこういう事態になつて来たのだということもお話があつたわけですが、今日まで今御説明なされたような情勢統一賃金でやつて来た。そうして会社別経理内容が違つたために大分でこぼこもできて来た。従つてこれ以上に統一賃金ではやつて行けないということになりますと、何かその点に相当会社側としては議論がおありでしようけれども会社の側の経営の責任といいますか、経営の条件によつて起る不利益、それを従業員に転嫁して行くという結果になつて来やしないかと考えられるのですね。つまり今までは統一賃金でやつて来た。そうしてそれを土台としてやつて来たにもかかわらず、経理内容の違いから、分断されたために経理内容が違つて来て、その違つたために今後はやつて行けないのだということになると、天然現象によるいろいろな条件も勿論おありでしようし、それもよくわかります。併しながら、そればかりでは経理内容が違つて来るとは考えられません。やはりいろいろな人為的な条件もあつて、初めて経理内容というものに差がついて来ると思うのですが、そういう人為的、自然的なもろもろの条件によつて会社経営が違つて来る。その違つたところがプラスになつてしまつた場合にはいいでしようが、そういうプラスが比較的少なかつた場合には、その責任というものは、殊にマイナスになつた場合には、なお更その責任が経理経営者側には問われないで、従業員のほうにその始末が負わされて来るというふうに、今の御説明から私には考えられるのですが、その点如何でしようか。
  25. 平井寛一郎

    参考人平井寛一郎君) これは独立採算の会社でございますから、どうしても同じように経営の合理化とか、いろいろなものが出るといたしましても、その成果が同じように伸びるというわけには、いろいろな要素があるので行きかねるのは現実なのでございまして、例えばほかの企業の例を見ましても、どうしても会社が別でありますると、いろいろな営業地盤の関係とか、或いは出水の関係とか、いろいろな事情がありまして、現実に例えば人件費の総経費に占める割合等においても、現状でやはり各社違つております。そういうふうな関係もありまするので、同じ程度の間の経営の合理化によつてプラスが出たとしましても、賃上の率は、そういうふうに人件費構成比率の相違等もありまして、やつぱり一率に行かない。これも一つの例でございます。そういうふうにいろいろな事情がございまするので、決して御懸念のように経営の巧拙の責任を賃金の面に振りかけるという気持は持つておらないのでありまするが、現在の枠内で更に賃上に応じようといたしますると、自然その差が或る程度はやはり出るものはどうにもならないというふうに御解釈を頂きたいと思うのであります。  で、もう一言補足いたしますると、現在の電気料金に織込んでありまする人件費の額が、そのままではすでにないのであります。相当にこれに含めております。これは期末の手当だとか或いは越年資金とか、その他基準外とかいうようなものは予想以上に、やはり実際には出しております。相当に含めておるのでありまするが、これらもやはり経営のそうした努力の面で、どうにかそうした形まで出ているのでありまして、その上に今回の更に賃上という問題が起つて来るという点も併せてお考えを頂きたいと問います。
  26. 高井亮太郎

    参考人高井亮太郎君) 先ほどからの片岡さんのお話でありますが、要領を申上げますれば、御説のように、只今の料金にはいわゆる現行統一賃金が入つておりますので、各会社ともそれは払えるし、又払わなければなるまいと思いますけれども、ここで非常な、支出の中の、最も重要な、大きな人件費を二割なら二割上げるということになりますると、何かからしぼり出した余裕とか、偶発的な余裕とかを使わなければならないわけでありますので、さような場合に、調節する分もやはり全会社同一率になるとまでは揃い切れぬ、実態からいたしまして……ということなのであります。  それから業績のしわを従業員に転嫁することになるではないか、これはなかなか由々しき御質問だと思うのでありますが、さような気持はありませんので、それをつきつめますと、そんなら業績が少し不振になつたら、配当とか、そういうほうは維持しても、賃金を詰めるかというようなことが、本当に従業員に転嫁することになりますと、さようなことになると思いますが、常識といたしましても、今きまつております賃金を、やたらに下げるというようなことは、それは勿論できないのでありまして、それはやはり非常な場合にどうなるか、これは別でありますけれども、普通の議論といたしましては、やはり賃金は払つて配当は減るとかということになろうと思います。従いまして経営者といたしまして、今ここで賃金を上げます場合に、偶発的にこの上期に収入が多かつたというようなことですぐ上げますと、これは基準賃金の問題でありまして、一時的の給与の問題でありませんので、恒常的な事業の姿を見当をつけまして、それによつてやりませんと責任が持てん。やたらに賃金を上げたり下げたりということはできませんから、やはりちやんと払つて行かなければならない。よほど異常な場合でないと……従つて今の現行賃金は皆入つておりますから、これを払つて行く。それを二割なら二割上げるという場合に、そこには全社揃つて必ず二割上げらるべきではないかという、当然の帰結は出ておりません、ということを申上げておきます。
  27. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ちよつと関連して、先ほど最初に御陳述を願つたのですが、その辺に関連して十分述べられなかつたのですが、九百五十円は統一的に上げられる、これは会社の今までのお話、併し調停案金額は、これは困難だという、統一的には困難だという御説明があつたと思うのであります。その辺がもう少し御説明にならんと、九百五十円案程度のものならばできるけれども調停がそのままの二割の増は、統一的にはできない、この辺については十分の御説明がなかつたかのように思うのです。その辺もう少し御説明が頂ければ、今の質問に或る程度お答えを願えるのではないか……。
  28. 平井寛一郎

    参考人平井寛一郎君) 九百五十円という金額を打出しましたのは、確かにおつしやるように一応統一的賃金の線で打出すわけであります。これは九月の調停の過程においても、それを会社側に持出しておりまするし、又調停案が出ましたあとでの団体交渉の席でも、当初はそれを打出したのでありますが、何分にもそれでは事態がまとまらないのであります。そうすると、何とかやりくりがつく限り出そうといたしますと、どうしても肩を揃えて出られなくなつちやつたのです。それで斡旋の過程におきましても、ぎりぎり出せる金額、基準賃金として出せる金額としてのものは、中山会長に我々いろいろ申出ておりますが、これがやはり肩が揃つていないのであります。おおむね四社はいろいろこういう労働条件その他是正という面が、同時に実施されるならばという条件ではありますが、おおむね四社は調停案金額程度まで、どうにかそれを尊重してやつて行けるというところまでは行つたのでありますが、あとの五社につきましては、この金額より皆下廻つておるのであります。そういうような事情で、各社の経理実態で伸び得る程度に差があつたのであります。
  29. 片岡文重

    片岡文重君 時間がないようですからこの一つで……。私今日は御説明を伺うのですから自分の意見はあまり申上げません。断つておきます。  ただ現在の労働条件が他と比較してというお話があつたのですけれども、これはやはりこれをおきめになつた当時、労使双方で妥当な線としておきめになつたものだと考えられるのに、今ここでこれを引下げる、労働条件としては引下がると思うのですが、そういうことにすることは、労働条件を低下せしめることによつて、九百五十円というものを上げるということであると、それは賃上げということにもならないようにも考えられまするが、こういう点はどういうふうにお考えになつておられるか。特にこの現行労働条件が妥当でないと考えられる理由について、いま一言御説明を頂きたいと思います。  それからもう一つは先ほど今年の夏は豊水であつたために、組合側でもこれを強く主張しておるが、併し電気事業特殊性からいつて、年間の平均を見なければならない。これは一応御尤もだと思います。が、そうすると、この豊水等によつて得られた利潤と申しますか、プラスになつた分は、この冬も又大体平年通り或いはそれ以上の好調を以て行くとしても、なおこれを恒久的な支出の基礎にすることはできないというようなお話であつたようですけれども、そういうことであるならば、この得られた利潤は臨時支出としてボーナスなり或いは勤勉手当なり、とにかくそういう臨時的な支出として従業員にその恩典を分けるということについ、ては考えられないのか、どうなのか、その二点について……。なおほかにもありますが、ほかの委員もおられますから……。
  30. 高井亮太郎

    参考人高井亮太郎君) 最初の御質問の只今の労働条件、これはお説の通りやはりいろいろな争議もありましたし、いろいろな経過を経まして、結局は労使双方が協定をいたした形であるということは事実でございます。ただだんだん賃金自体も上がりまして、或る水準には達しておるという状態でありますので、やはりその労働条件のほうも、只今の日本状態といたしましての社会水準をおおむね目途といたしまして規制をしたいというふうに考えておるわけであります。  それから上期の豊水のお話でありますが、お話のように只今規定がございまして、特に予定よりも石炭を焚かなかつた分というようなものは、そのおおむね七割見当を渇水準備金として金縛りに取扱うという規定がございます。これはやはり非常な渇水がありまして、官庁の承認を得なければ、それを解けないという規定がありまして、豊水のあつた分が全部自由になる金ではありません。併し豊水のほうが渇水よりは幾分よろしいということは、これは事実でございます。従いまして電気料金の只今のものの中には、いわゆる期末手当なる名前で、年基準賃金の二カ月分の手当が算入されておりますことは、御承知でありまするが、期末手当なり或いは賞与というような名前にいたしますかどうですか、とにかくそういうようなものが、若干一般的に申しまして出るということは事実でありまして、その場合に会社が楽であつたほうが窮屈であつたときよりも、とにもかくにも幾分は余裕をもつて考えるということは事実だろうと思いまするが、ただ一方におきまして、甚だ窮屈のような場合にも、或る程度のものを、まあ今までの実積と言いましようか、実は出す余裕がないにもかかわらず、期末手当というようなものを、或る程度のものを出しておりますものですから、そのようなこととも睨み合せまして、成績がいいからといつて、それをすぐに額の相違を付け得るかどうか。これは楽なときのほうが窮屈なときよりは幾分楽に考えられるという程度でありまして、どの程度できるかということは、これはやはり経営者のほうでよほど考えなければならない問題だと思います。ただ一度出すと、実績である、成績の如何にかかわらず、これは実績だというような態度に出られるとせば、これは迂濶なことはできんということになります。その辺もよく考えて事を処理しなければならんと私は考えます。
  31. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 先ほど平井さんから会社側の基本的な考え方四点をお伺いしたのですが、その四点について疑問になる点を一、二お伺いいたしますから、御答弁を願いたいと思います。  先ず第一に電産の現行賃金は決して安いものではないというお話がありました。一万二千八百円、基準外賃金を入れて一万六千六百円、そうして一般産業に比べて四割以上上廻つておる、それから又実働時間あたりについても、いろいろ数字を挙げて御説明になつているわけです。併しこの労働賃金というものは、私どもは非常に疑問に思うのですが、一般産業はこれこれの労働賃金だからして、電産のほうの労働賃金もころこれでなければならんと、これはあとのほうの社会水準化という問題にも関連すると思いますが、併し労働そのものの内容によつてかなり違つて来ると思うのです。従つて労働賃金が、現行賃金がほかの産業より上廻つているから安いものではないということは、必ずしもそう言えないのじやないか。労働の質の如何によつて一般産業を上廻ることも当然あり得るし、又それが私は至当なものではないかと思うのですが、その点が第一点です。  それから第二の基本的な考え方、賃上げは経理枠内でやらなければいかん、電気料金の借上げを伴うようなものは、会社としては望ましいものではないと考えている、こういうお話でありましたが、経理の枠内ということになりますると、一体労働賃金その他の給料、手当というものが、経理の全体の枠内においてどのくらいの割合を占めるのが最も健全な経営かという問題になつて来ると思うのです。昨日、私ども頂きました資料によりまして、今ちよつと計算してみたのですが、総体を平均しますと、大体二二%です。給料、手当が二二%になつております。東京割合に多いのです。二四%。これは今ここで計算したのですから、計算が違つているかも知れませんが、二四%になつている。ところが四国辺りは二二%、九州は一七%になつているのです。大まかにみて大体二二%。ほかの産業に比べると人件費というものの占める割合というものが非常に低いのじやないかという感じがするのです。私は専門家でないですから、その点について、電気産業だけに、特に人件費が二割二分前後が妥当であるという根拠をお示し願いたいと思います。それから第三の問題は、労働条件は電産の場合には非常にいいのだ、これも一般産業と比較して労働時間の御比較があつたわけですが、会社としては職階制と併せて労働条件の社会水準化ということを目標に労働時間を延長したい、こういうお話でありましたが、これは又さつきの労働の質の問題と関連して労働の量の問題になつて来ると思うのです。これ又必ずしも全部の産業に通じての労働の質、量というものが同じだと、私どもは考えることはできないんじやないかと思うのです。特殊の産業によつて労働時間は、実働時間は少くとも、それがために一般産業に比較して、これは労働時間が少いから多くせいということの理由にはならないと思うのです。労働時間を社会水準化の線まで持ち上げるという根拠を量と質の両面からお示しを願いたいと思います。最後会社側の基本的な考え方として、再編成後の独立採算制のお話がありました。ところで電気料金自身がすでに統一的な基礎の上に立つて、コストその他が計算されて割出されているわけです。それから賃金そのものも、一万二千八百円という賃金が、従来ともこれ又統一的な根拠の上に私は立つていると思うのです。独立採算制といいましても、それから又会社のそれぞれの経営には格差があるというお話がありますが、その格差にもかかわらず、一応統一賃金としてこれまで出されておつたと思うのです。それをなぜ、ここで特に格差を設けて、そうして統一賃金というものを否定しなければならないかということの根拠がわからないのです。これは人件費が総体の経費の中に占める割合の上から言いましても大体低い所は一七%くらいであり、高い所で二四%くらいというような実情から見まして、その根拠をお示し願いたい。  以上四点だけお答え願いたいと思います。
  32. 高井亮太郎

    参考人高井亮太郎君) ちよつとお許しを願いまして片岡さんのさつきの御質問に一こと附加さして頂きたいと思います。豊水の場合には賞与とかさようなものをあげられるかというお話に関連しまして、只今なおストライキ続行中でありまして決まりませんけれども、或る妥結を若し見たとしまする場合には、殊に今期におきましては、十月に遡りまして基準賃金の増額をやることになるのじやないかと思います。まとまればでございますが。その場合には今期としては、その増加支払ですね、十月に遡つて十月以後賃金が増すということがありますれば、その支出分だけは、当然には予期し得なかつた非常な大きな支出が出ますのですから、若し今期の場合に対して申上げますならば、やはりその他の支出である賞与とか、さようなものには相当窮屈に、その方面の、圧迫が大いにあるということだけ、ちよつと附け足さして頂きたい思います。  それから堀さんの御質問でございまするが、電産の賃金について、ほかとの質の問題、量の問題、第一問と第三問とが一緒になると思うのでありまするが、これにつきましては電気産業が非常に特別な労働、特別な働きを要求しておるということは事実でありまするし、種類が非常に特別である。併しながら、これを総括いたしまして、特殊の技術は必要でありまするが、割合に一定の時間そこにおりますれば、しよつちゆう非常な、つまり労働なり或いは非常なことをやり続けなければならないという仕事は、先ず比較的少いのでありまして、そこについておればよろしいというような仕事も又ほかの産業よりはずつと多い。製作工場などでは全部がその瞬間瞬間を動いているわけでありまするが、電気事業では割合に番をしておればよろしいというような種類の仕事も又非常に多いのでありまして、平均いたしましたならば、非常な、特別に平均よりは高い賃金なり或いは非常に短い労働時間でなければいかんというようなことはやはり出て来ないと私ども考えておるのであります。  それから第二問の人件費の比率の問題でございますが、これは数字をチエツクなすつたのは恐らく正しいと思うのでありまするが、大体総支出の中に人件費幾らあるのが妥当であるかという通則はないと思うのでありまして、前に電鉄の争議に関する調停案か何かに五〇%以内にとどめるとかいうようなものが出たことがあつたように記憶いたしておりまするが、その比率は電気事業におきましては、石炭が非常に値上りをいたしまして、各会社とも水力がこれからはできるでしようが、暫らく水力の新らしいのができないということで、石炭火力の設備を非常にフルに運用することが要求せられまして、おまけに石炭の価格が上つたということから、石炭費が非常な大きな支出のフアクターになりまして東北のほうには殆ど火力のない所もありまするけれども東京のような水力を主にする場所におきもしても、今度の料金改正の中の最大費目は、人件費石炭費で、いずれも年に六十何億だと思いますが、非常に大きなフアクターになつて参りまして、九州のごときは一番全体の中の石炭費割合が多くなりまするし、関西は又その次に絶対値は多うございます。従いまして石炭費のフアクターが非常に高い所では、人件費は下るのでございまするし、なおよそからの購入電力でもたくさんいたして商売をいたしますると、前の配電会社のように非常にたくさんの電気日発から買うものは、全部日発から買うという場合には、それは購入電力費となつて、一々人件費となつて出て来ない。従つて購入電力費が割合に多くかかる場合には、自分の会社人件費として支出する部分が少い。そういうような、いろいろなフアクターがありまして、その通則は出て来ないと思いまするし、二十何パーセントが低いとおつしやるのは、前よりは低くなつておる、その意味はおおむね石炭と思いますが、なおそのほかの修繕費、さような材料は人件費以上に値上りをいたしますると、そのほうのフアクターが高くなつて人件費の比率が下るというのであつて、必ずしも二十何パーセント、だから低いという結果にならんのでありまして、やはり九州のように火力の多い所の比率が下つておるというふうにお考え願いたいと思うのでございます。  それから第四問の電気料金が統一というか、賃金の或る種の統一性のものが入つた電気料金であることは事実でありますが、格差があるにもかかわらず、同じ賃金を払つているということはないのでありまして、同じ賃金は払うように算入されております。同じ賃金は今払つているのであります。絶対値は同じであり、或るシステムによる統一賃金は払つているのでありまして、その上につまりどこの会社も同じく二割なら二割上げるということは、予定しなかつたものを附加えることです。併し格差が又いずれも二割にぴつたりなるというところまでは、当然にはいろいろなアフクターがあつてなりません。従いまして一率に二割なら二割当然上るべきだという値は出て参らんです。そのような場合には、格差がつくということを申上げているのです。只今の賃金は或る統一形態によつてつて行つているわけです。
  33. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 重ねて一、二お尋ねいたしますが、先ず第一点の電産の賃金が非常にいいものだというお話で、労働時間に関連してのお話ですが、そうしてその理由として特殊な技術が必要なことは必要だが、併し必ずしもその技術というものが六時間とか八時間を通して常にその技術によつて働くということではなくて、番をしている者が番をしておればよろしいというお話を承つたのですが、そうなりますと、電産の或る従業員というものは、これは極めて労働の技術士から、技術水準の上から言いますと、あなたのお話では極めて低いものである。低いもので結構間に合う、一定の修養というか、習練時間を経過すれば、あとは誰でもやれるものであるというように私ども聞いたのですが、実際そうなんでしようか。その点が第一点。  それから次にこの経理内容の点が、どうもどのくらいの比率の人件費が妥当かどうか、基準はないというお話でありますが、結局現在では石炭費が高い、或いは材料費が高くなつた。だから人件費のほうには到底出せないというお話でありますが、これは当然前以て、この材料の値上りとか或いは石炭の値上りということは、予算を組む場合にはすでに見通しはついているだろうと思う。石炭や材料が値上りすれば、当然又労働賃金もそれに応じて高くしなければならないということは、経営者としては当然お考えになるだろうと思う。そういうことについてはお考えにならなかつたのでしようかということを、第二点にお伺いしたいわけです。それから第三に、その格差の問題ですが、いろいろのフアクターによつて統一的な要素は含んでいるが、併し賃金としては必ずしもそうではないというようなお話であるが、併し基準としての賃金は統一的な要素を含んでいるということは、これはあなたのお話からも私は想像できると思う。そうしますと、この経理の面で更に詳細に検討して行くならば、これは労働賃金に対して、会社側としても組合側要求する線まではとはかくとして、一応とにかく或る賃金の値上げということがはじき出せるのではないかというように思うのですが、その点もう一度、以上三点を重ねてお伺いいたします。
  34. 高井亮太郎

    参考人高井亮太郎君) 第一の労働の質と量でありますが、電気事業には非常に特殊な技術と高級な頭の働きが必要であるということは事実でございます。ですから職種を皆分けて申上げなければならんわけでありますが、今それだけの御用意はございませんけれども、決してほかに比してたやすい、勉強の要らんものであるということを申上げているのでなくて、中にはいろいろな、算盤もありますし、店の番をしておる人もあります。いろいろなものがあるわけです。そのような場合には、非常に高級な学問が必要なのが勿論相当多数いるわけであります。それから中くらいな人もおり、その中くらいな人が発電所のところを番をしておると言えば悪いですが、運転をしているわけでありまして、中には、分ければ、割合まあぼんやりしていると言つちや悪いですが、ぼんやりしてもらつちや困りますが、非常にひどくないものもありまするし、しよつちゆう注意して緊張していなければならん場合もあるわけであります。それから又非常な頭の働きで、企画をやつたりする人もある。そういうわけであります。それを総覧いたしまして、非常に高級な技術も必要である。高級な技術が必要であるその父上に、各瞬間々々をその技術を発揮して、瞬間々々もう何の一瞬の油断もないというようなものもありましようし、非常に立派な素養が必要だけれども、まあ非常な緊張が必要だけれども、その瞬間々々に全力を発揮してしまうというほどでない仕事もまじつておるということを申上げているのです。決してこれが非常な、一番楽なものばかりであるということを申上げているのじやないのです。  第二番目に、材料や石炭が上がれば、賃金も又上げるということを考えておるかということをおつしやいますが、これは賃金とは全支出のうち何%あるべきものである、故に上げるというようなことではなくて、只今入つておりますのは、当時と申しましても、昨年の十二月に妥結をいたしました賃金そのままのものを五月から実行いたしました料金の中へ算入をいたしましたので、やはりその又前の十二月に上つたのですけれども賃金としては妥結のできましたものが入つてつたわけでありまして、賃金だけをずつと据え置きとか、低くしたのでなくて、当時の実際のものを算入いたしておるわけであります。それから第三番目の経理、面をもつと詳細に検討したら何か出せるはずだとおつしやるのですが、これは実は非常な誤解があるようですが、経営者側は一文も出せんということを申上げているのでなくて、すでに斡旋案に対して、これもまあ非常な、まとめ上げようという努力斡旋者側がしておられますので、経営者側といたしましては、いろいろ不安なことがありましたけれども斡旋案を受諾いたしたのであります。只今その内容は算入されておらなかつた賃金ではあるけれども東京関西、東北、中部の四社においては調停案通り約二割の増額をいたしましようということなんであります。それから北海道、北陸、中国、九州の四社は、初め平均では二千五百円くらいのあがりになるけれども調停案通りになるのです。そのうち或いは千三百円しかしげられんとか、或いは千八百八十円までなら上げられるとか、千四百円ならいいとかいうふうにばらばらで、恒久的な支出になるものでありますから非常な責任を感じて、各会社ともいろいろ勘定をせられて、さような中間的な数字をお出しになつておる。但し労働条件のほうは勿論これは是非改めてもらうのでありますが…。それから四国は更に激しいというお話があつた、それをとにかく賞与なり臨時の手当を削つても、基準賃金は認めてくれんかというお話が再三あつたのでありますが、非常な経営者側も難色を示しまして、もつと不安を除くために、もつといろいろお願いしたいことはあつたのでありますが、結局このたびは斡旋案がああいうふうに出たものでありますから、そこのところは我慢をいたしまして、早期にストライキを収拾させるために、その中間の四社も基準賃金約二割の増額に応じましよう、そのための臨時給与等が幾分下る、全部じやありませんが、幾分下らなければ勘定が合わん、さような紛議は中労委が斡旋をしようと斡旋案には書いてありますので、その辺を信頼いたしまして、特に経営者側としては呑んだのでありまして、九社中の八社が労働条件その他のことは勿論、これは斡旋案通りにしてもらわなければならないのでありますが、すでに算盤をはじいた、而もはじいた以上のことを或る種の不安を忍んで呑んだ、四国においてはなお協議するというのが斡旋案なんでありますから、四国電力さんはその通りにして行こうという心構えにしておられるというのが実情であります。
  35. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 今日私どものおいで願つたのは、御承知のように、電産争議が相当長びいておつて、刻下、あらゆる産業面でも、国民全般も非常に危惧しておる、できればそれの内容を教えて頂きたいということと、更にこの争議の根本的な解決方策を、こうした中から見出したいというようなつもりでおいでを願つたので、或いは失礼な言葉になるか知れませんが、どうか一つあしからず御了解を願います。  そこでお聞き申上げることは、今堀さんからもお聞き申上げたようでありまするが、私どもが外から見ておる場合には、電気産業の従業員の諸君の給料は特別いいというようなことは、今考えられないように思います。今実際、技術産業ではないかということを言われたのだが、技術産業のそれほどでないという極めて安易な例だけをお挙げになりましたけれども、技術産業ばかりでなくて、更に進んで危険産業である、こう私ども通念として電気労働者は危険産業であると思つておる。例えば戦時中だつたと存じますが、あなたがた自身も先に立つて運動なされたと思いますが、配給物資を獲得するときにも、電気産業は危険産業だから、一つゴム手袋はどうしても出せ、どこになくてもゴム手袋とゴム靴のほうはおれのほうに寄越さなければならんという運動をなされた御記憶があろりと存じますが、私どももそうした運動をさせられた記憶がある。こういうような技術産業であり、危険産業である今の電気事業としては、これが若干ほかより一割や二割、四割というようなことを申しておるようでありますが、私はどうしても四割という数字が出ないのでありますが、二割そこらの給与が一般よりいいように感じましても当然のことではないか、こういうように考えられる。  それともう一つ第二点は、いわゆる労働時間の問題でございますが、労働時間もやはりこうした技術産業、危険産業という面から短縮しなければならんというふうなことが一つであるのでありまして、このことばかりでなくて、先ほどの労働組合の幹部の話によると、過去六、七年間、いわゆる終戦以来こうした時間で大体やつて来た、ここに来て何故三十八時間を四十二時間になさらなければならんか、それがそういうふうにしなければならんというのは、経営内容が九分断されたことによつて、そういうふうに推し進められて来たのか。或いは又九分断ということにこだわりなく、先ほどの石炭の値上げの問題とか、いろいろの条件があつて、ここに協力してもらわなければならんということで、そこに現われて来たのか。そうだといたしましても、労働組合の一番大きな守つて行かなければならんということは、やはり賃金でもありますと同時に、より大切なものは労働時間ではないかというように私どもは考えております。ここに余り制肘をなさり、ここのところを強く主張することによつて問題が解決しないのではないか。私が申上げるまでもなく、喧嘩をしておるうちは、ストライキ中は敵味方だけれども、併し一たび解決がつけば、一緒になつて労使協力して電気産業の維持発展のために努力しなければならん、こういうような建前は当然おありのことと存じますので、そういう観点からいつても、いま一歩、大変御苦心をなすつて、無理なところをこの斡旋案を呑んだようにおつしやいますが、私どもが見ておりますと、何かあなたがたの言われるのは、一貫性がないように考えまするが、ということは例えば当初のうちは統一賃金統一交渉これを非常に嫌つておられたようです。併しいろいろお話を聞いてみますと、同一労働に対して統一賃金を払うという、この基本的な態度はそう崩しておらないようです。それは当然のことである。併し経理内容から行くとおつしやつておられますが、この原則は今でも認められておられるかどうか。そたから何故に時間を短縮しなければならないか、こういう点から一応お聞きして、あとは又……私は何か一貫性がないように考えますが、そういう点を御説明を簡単に願つて、あとの御質問は又いたします。
  36. 井上五郎

    参考人(井上五郎君) 高井さんがお答えしたことの中に、すでに我々の考えを申上げてある点があると思うのでありますが、技術産業であると同時に危険産業である、その通りなんであります。併しそうした危険な状態に置かれる若干の従業員があるということは我々認めますし、又それに対しては、それだけの施設をするのは当然だと考えております。併し先ほど高井社長からもお話がありましたように、これはやはり構成の一部分なんであります。銀行と同じような料金の計算をする女子従業員も相当数おります。それを全部を引つくるめて考えておるわけでありまして、そのすべてを考えて、現在の賃金が決して不当ではない、社会水準からいつてむしろ上廻つておる。ただ社会水準であるべきではない、戦前の賃金水準に置き替えられるべきであるという一つの別な理念でお考え下さるなら、これは別であります。私どもは社会水準から考えて、而もそのことは労働の質と量を併せ考えて決して不当ではない、こう考えておるというわけであります。  それから、今まで五年も六年も我慢をして来た労働時間を、この際何か切下げることは非常に労働組合側の立場から言えば困るじやないか、だからそれを譲つたらどうかという御発言であるかと思うのでありますが、御質問の労働条件の切下げが、九分割と何か関係があるのかということは、別に関係はないと思います。併しすべて賃金をこめての労働条件というものが、社会水準、高い目で見ての常識範囲から正当化されるものであるべきであるというのは、私どもの公共事業の性質からいつて当然そうあるべきであり、それに努力することは私どもの責任でもあると考えておるのであります。そのことが非常に苛酷な条件を強いるということであれば、当然これは別個に考えらるべきでありますが、私どもは先ほど高井社長からも縷々お話したように、決して電気産業に従事する諸君に苛酷な労働条件を強いておるとは考えない、せめて世間並にお働きを願いたいということを申上げておるのでありまして、このことを申しげていいかどうか知りませんが、この問題は調停委員会でもしばしば取上げられた。そのときにあるかたの御発言で、労働条件といつたつて、これは天から降つたものである、天から降つたものであるということが、どういうものであるか、いろいろ御論議もありましようが、そうしたことはすべて正当なる形にして頂きたいということを申上げているわけであります。それを総括しまして、何か経営者側主張が一貫性を欠いておるじやないか、その点は御尤もなのでありますが、すべてこの紛争は、片つ方の主張だけを遮二無二通すことをいつておれば解決をしないのであります。賃金問題のごときは極端に申しまして窮極は妥協であると思います。妥協である限り一貫性が通らないということは当然なのでありまして、先ほどから私ども縷々申上げておるように、私ども主張としては或る主張を持つてつたのであります。併しこの争議がこれだけ長引き、一般の御迷惑は何としても一日も早く片付けなければならないという観点に立ちまして、いろいろ私ども主張を譲歩、そうして最も公正なる第三者である中山会長の斡旋案を私どもは受諾した、この上は是非とも組合側でもこの線で折合つて頂きたいということを考えておるわけであります。
  37. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 これは先ほどから失礼な質問と言いますか、お尋ねのように考えますけれども労働時間というようなものは五、六年間も従来据置いたということは、労働組合としてはいわゆる一種の既得権ということとになる、これを崩すということは、これは非常な何か変とでも言いますか、変つた状態が生まれない限りは崩しがたい条件であろう。あなたがたの今のお考えを聞いておると、一般の迷惑を考えて忍ぶべからざるを忍んで解決しようとおつしやるが、若しそうだとするならば、一体労働組合はどこのところにこだわらなければならんだろうか、どこを呑んでやつたならばきまりがつくのだろうか、というところへ御着眼をなさるべきではないかと思う。勿論私は中山さんの出した御苦心のほどはわかるが、出したあの斡旋案なるものを正しいものだという……私どもはちよつと失敗したのではないかとむしろ考えている。若しそういうお考えから、それはそれとしても、今あなたがたが言われたように、今は紛争しておる、ところが併し将来は同じ労働組合資本家ということで、労資協力で電気産業発展を図らなければならないという方向に進んで行こうとするならば、労働組合は一体どこにこだわつているのかということを見て頂いて、始末を付けなければならん。私が一貫性をお欠きになつておるのじやないかということは、そこにあろうかと思います。私の記憶では、当初は何か各社別賃金を非常に主張しておつた。これにはいろいろ議論があります。ありますけれども、あなたがたと議論をすることではないのでありますから、これは一応留保いたしますけれども、政府の方針が悪く、九分断されたことから来ておるのであります。あなたがたにいろいろ私は申上げることはないと思います。それにしても、その会社内容に応じた交渉をしたいということを強く主張した、こうした方針が私はいいということは考えませんが、それを主張した上で、中途で今度は逆に労働条件に変つて来て、労働条件維持改善、あなたのほうで言う改善をしない限りは、賃金改善はしないということで、非常に労働条件に重点を置いて、最後に今度は斡旋案をやむなく呑んだ、呑んだことは、率直に言いますると、成るほど賃金の一部を上げたかに見えますけれども労働条件はあなたがたの主張するのを全部中労委が呑んだ形になつておる。労働組合としては呑み難いものを呑んだ意味の斡旋案になつて来た。これには御賛意を表しておる。こういう点から行きますると、私はどこに一体あなたがたのお考えをきめて、こういう斡旋案を了承したのか。この点を一つお聞きしたいのです。そうして決してこれは悪口を申上げておるわけではありませんけれども、あれだけ時間にこだわり、そうして労働条件にこだわつたとするならば、その条件が整わない限りは、一銭も賃金を出せないというのが主張のように今まで聞いておつたのですが、そうすると、賃金のほうは十月から上げて、労働条件のほうは一月からやつてくれという、こういう斡旋案に対しては、若し同時なら承知しよう、併しこれでは承知できないということがありまして、どうも一貫性がない。それについてお聞きしたいと思います。それからもう一つは、今の電気産業労働組合、いわゆる電産に対しまして、どういうこれははつきりとしたお考え方を持つておるか。この組合の進み方及びあり方でいいのか悪いのか。これに対する御見解をお伺いしておきたいと思います。
  38. 井上五郎

    参考人(井上五郎君) 只今の御質問には、いわば、甚だ失礼なことになるかも知れませんが、御意見というものが多分にあるかと思います。と申しますのは、例えば中山会長の案は失敗だつたと思う、これは失敗であるかどうかは私は批判を避けたいと思うのでありますが、いやしくも当事者の間に問題が解決をしなかつたから、第三者に公正な斡旋お願いしたのでありますから、私どもはその斡旋案には、私ども主張とは必ずしも一致しないことがあるということは、先ほどから申上げておるのであります。例えば只今御指摘がありました賃金は十月から上がるが、労働条件は一月から変るということは、それ自体斡旋案は私ども主張とは違つておるということであります。併し争議をいつまでも続けないために、何とかしてこれをまとめたいが故に、これを受諾いたすわけでありまして、そこに主張の一貫性がないことはもう御指摘の通りでありますし、私どもも一貫性はないのであります。併し一貫性を持たせるがために争議を長引かせるということは、断じて許さるべきでない。私はそういう意味で、御意見としては、あの斡旋案が失敗であるかどうかはお答えいたしかねますが、少くとも斡旋案を受諾したい、こう考えておる次第であります。この点は何か一貫性がないかということでありますが、私ども争議をまとめたいという点で、是非妥協をして行きたい、こう考えるわけであります。それならば、どうせ一貫性を放棄したのならば、時間の点も放棄したらいいではないかというのが、或いは御意見であるかと思いますが、この点は先ほども申上げておりますように、それは労働組合のお立場としては呑みにくいとおつしやることは、私どももそういう組合の立場というものを全部承認しなければならないとするならば、そういう立場があり得ると考えますが、これは世間の水準から言つて、非常に世間の水準とほど遠い条件が、たまたま天から降つたかどうか知りませんが、或るチヤンスにそうしたことが獲得されておつたということについては、是非この際是正をして頂きたいということを申上げた。併しその是正をするにしても、何か経過的に会社側主張が一貫しておらなかつたのではないかということで、経過的なことを若干お話になつた。併しこのこのは最初に委員長からお話がありましたが、十分経過は知つておるから余り経過のことを繰返して言うなと言われたから、私は申上げませんが、私どもは必ずしもそうした時間の主張をあとからだけ降つてわいたように申上げておるつもりはないのであります。これは時間の関係上省略はいたしますが、私どもがその点で主張が一貫性を欠いたとは考えておりません。  最後の御質問でありますが、電産のあり方についてどう思うかということは、私どもが申上げる筋ではないと思います。ただ若しそれに関連して、言い得べくんば、公共事業の組合のあり方に対する法律上の考え方と言いますか、現行法そのものが果してこれでいいかどうかということについては、私は若干の疑問を持つております。
  39. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 もう一点だけ。
  40. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 簡単に願います。
  41. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 大体わかりましたが、そうすると、早く解決をつけて下さるということのために、これは私の若干意見になるかも知れませんが、無理なものを呑んだ。そうであるならば、もう一歩進んで御考慮願えれば、早く解決がつけられるのではないかと思いますから、御考慮願いたい。  それから現状を、基本賃金として労働条件として、先ほど御説明があつたのでありますが、石炭の値上りだとか、いろいろな事情から値上りがあつてできないというようなことを言われましたが、若し将来の問題として純益がどんどん得られ儲かつたというような場合には、それは株の配当にするということでなくて、自発的に労働組合のほうにも、諸君の協力によつて利潤を得たからお分けしようじやないかということで、何か年末手当とか夏季手当とかでやつて行こうという御意思があるかどうか、そういう点を一点お伺いしておきたいのであります。
  42. 井上五郎

    参考人(井上五郎君) 会社が相当な利潤を得た場合に、株式の配当にだけ偏重するという考えはございません。
  43. 野田卯一

    ○野田卯一君 議事進行。
  44. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  45. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 速記を始めて。  一点私お伺いをしますが、簡単でいいですから御説明頂きたい。一万五千四百円を受諾せられたわけでありますが、それはどういうところからお出しになるというか、そういう計算といいますか、計算をなさいましたのか。その点、一点だけ伺つておきたいと思います。
  46. 高井亮太郎

    参考人高井亮太郎君) それは会社によつていろいろ事情が違うと思いまするが、大体のお話は、先づ時間延長その他労働条件の是正からも一部分は捻出をしたい。それから会社の中でいろいろな合理化をやりまして、それはロスの軽減もありましようし、擅用の防止もありましようし、いろいろな購入費の節約もありましようし、場合によれば、筆墨費の節約も必要であると思います。徹底的に合理化をいたしまして、何とか捻出をしたい。幸いにして売上げが割合に余計あるというようなことがあれば、そのほうも又或いは幾分振当てなければなるまいというふうに、いろいろな点から捻出をいたしまして、何とかしてやつて行こう。これにはどの会社もその数学的にぴつたりした振合いはできかねると思うのでありますが、要するに組合側の協力を得まして、幾分、今懐ろ勘定ではむずかしくても、これは一つ労使協力の形において、今申上げたようないろいろな面から捻出をして、そうしてこれだけ折角の調停案の数字が出ておるのですから、これを達成して行こうというように考えておるわけであります。相当困難なことと思います。
  47. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) なおまだ御質疑もあるかと思いますが、時間が時間でございまするので、この程度で終りたいと思います。大変遅くまで有難うございました。  それでは休憩いたします。    午後一時三十一分休憩    —————・—————    午後二時二十三分開会
  48. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは午前に引続いて労働委員会を再開いたします。  本日の委員会の議題は労働情勢一般に関する調査及び賃金問題に関する調査、電産及び炭労ストに関する件でございますが、炭労ストに関する参考人意見を聴取するのでありますが、会社側の代表として御出席を願う予定でありました三井鉱山社長山川良一君、住友石炭常務取締役村木武夫君、石炭連盟専務理事早川勝君は都合により御出席が願えません、他日に譲りまして、日本炭鉱労働組合中央執行委員長田中章君、同副執行委員長原茂君の御出席を頂いておりますので、両君より意見を聴取いたします。先ず田中君なり原君の御陳述を願つて質疑をあとで頂きたいとかように考えております。田中君の御陳述をお願いいたします。
  49. 田中章

    参考人(田中章君) 炭労の田中です。  最初にこの賃金の今までの交渉経過というものを若干申上げますが、八月の十五日に第一回の団体交渉を開催いたしまして、両者交渉委員の名簿交換その他の事務手続を終り、九月の二十日過ぎにそれを確認して第二回目の団体交渉が九月の一日に開かれたわけでありますが、従来の慣行から参りますと、一応どういう要求案を出しましても、その組合要求案の内容に基いて経営者側からこういう要求書の根本的な考え方は何か、或いは又その内容における各項についてそれぞれ質疑が行われ、而して連盟の考え方の意見の開陳が行われる、こういう手はずに従来の慣行がなつておるわけでありますが、今回の場合はこの第二回の団体交渉において組合要求案の内容を聞く必要はない、又組合側の考え方も聞く必要はない、こういう冒頭における陳述に始まりまして、いわゆる連盟のこれに対する解決案が出て参つたわけであります。  その内容はすでに御承知かと思いますが、現行賃金の切下げを骨子といたしました名目賃金の現状維持と、裏付けになつておりまする標準作業量の一〇〇%を超える部分の八〇%増を従来の標準作業量に附加すると、これを金額に換算いたしますと、大体従来の基準ペースの一六%から二〇%に相成るわけでありますが、これを金額にいたしますと、大体二百円近くの金額になるわけであります。そういたしますと現行ベースは、坑内夫が五百六十円、坑外夫が三百四十円、その中から二百円近くの金額が切下げられるということになりますと、どういう状態に相成るかということは皆様方の御想像にお任せいたしますが、そういう内容を含む連盟の対案があつたわけであります。その理由といたしまして、現状の企業形態が、企業の実績が必ずしも良好でないということと、それから将来の見通しについて経営者は自信が持てない、以上の大要二つ理由によりまするところの理由を示しましてこの賃金の切下案を提示して参つたわけであります。これは言い換えまするならば、先ほども申しましたように従来の慣行から申しましても、更に両者が道義的に団体交渉を統一してやるという両組織の信義上の問題からいたしましても、当然これは両者の言い分はそれぞれ十分に述べ合う機会を得るべきでありまして、組合要求案の内容は聞く必要もないし、その考え方も聞く必要はない、要するに連盟の考え方はこれである、こういう状態であつたわけでありますが、このことを逆に考えてみますと、要するに組合側の考え方は聞く必要がないのだ、私どもの思つている通りにお前たちは従えばよろしいのだ、組合の存立の基本的な否定でありまして、この態度は到底基本的に我々の了承するところとならなかつたのであります。  更に又その内容につきましてもこれは非常に労働者を侮辱した案でありまして、こういうことを以つてして到底組合側は納得することができない。併し従来とかく批判のありましたごとく炭鉱の従来の過去の数年間に亘る団体交渉のいきさつの中で、特に対外的に指摘されまする点は、いわゆるこの炭鉱の団体交渉というものは実に簡単だ、ろくに交渉もしもしないで、ちよつと考え方がぶつかると、それを解きほごす努力もしないで直ちにストライキに入つてしまう。非常に態度が軽率であるという非難を我々は第三者から受けておつたのであります。そこで我々としましても、こういう点と更に又自分たちの考え方を十分に述べて、それでもなお且つわかつてもらえないならば、その場合には止むを得ないとしても一応努力する。そういう過去の非難と相待つて茂たはやるべきじやないか。こういう観点に立ちまして相手が聞こうが聞くまいが、とにかく九月一日から一カ月有余に亘り、各項目について組合側はその考え方を述べて参つたのであります。そうして十月の四日に至るまで一カ月と三日間の間組合側は、組合側要求案に対する考え方を縷々述べたわけであります。併しながら冒頭に申上げましたごとく連盟の態度がそのようなものでありますから、幾ら説明をしてもこれは馬耳東風という形で、一カ月間に亘る団体交渉の過程において両者の意見の一致を見たものは何らございません。ただ一つ協定期間を組合側は一年とするということに対しまして会社側は半年ということを主張しておつたのでありますが、その点だけがこの一カ月間に亘る団体交渉の過程において一致を見たたつた一つの点でございまして、これは勿論この賃金要求闘争の主たる内容ではないのでありまして、そういう形で十月の四日まで静観したのであります。このことは勿論組合側石炭産業の対外的に対する責任の重大性、それから先ほど申しました過去の第三者の非難ということも率直に受入れて、その中で最善のベストを尽すという態度で参つたのでありますが、連盟の態度は九月一日のあの代案を一歩も出でていない。こういう状態で十月の四日を迎えたわけであります。従つて客観的に申しましても団体交渉を開始して、すでに先ほど申しましたごとく八月の十五日に団体交渉が再開されておりますから、二カ月近い日にちがこの団体交渉に費やされている。而もその間組合側が誠心誠意説明したことに対しても、何らこれを真剣に聞こうとする努力さえ示さなかつた。こういう経営者態度と、この組合を根本的に否定しようとする経営者側態度というものを総合的に考えた場合には、炭労中闘としてもこの段階においては最終的な決意をせざるを得ないという段階に至つたことを確認せざるを得なかつたのであります。併しながらただ単にその一方的な判断のみでストライキ行動を発動するということは、これも又軽率であろうということで、更に十月九日付の日限を切りましてもう一回連盟は考えてもらいたい。こういう意味を含んだ最後回答を組合側は迫つたのであります。  この九月に出た連盟の第二次案なるものは、先ほど申し上げましたようにこの金額には何ら触れず、ただ前回出しました一〇〇%を超える八〇%の標準作業量に対して、これを六〇%に抑えるという内容を示して参つたわけであります。八〇%が六〇%になりましても、これは当然ぼう大な額の賃金の切下げになりますので、べース・アツプを要求して立上つた我々としては、どうしてもこれを了解することはできないという観点から、私どもは遂に実力の発動を、十月の九日に至り決意せざるを得なかつたのであります。従つて我々は十月九日におきまして、連盟が若しこの段階においてもなお且つ誠意があるとするならば、十三日までに回答を更にせよ、十三日、十四日の四十八時間ストライキというものは、これは多分に警告的な意味を含んだ警告ストライキである、それでもなお且つ組合側要求に対して一顧をも与えないという態度を示すならば、我々は十月十七日以降無期限ストライキに突入するであろうという通告を連盟に対して行なつたのであります。従つて我々は一方闘争態勢の確立に主力を注ぐと共に、更に連盟の出方を静観して待つたのでありますが、その希望も空しく消えまして十三日、十四日の警告四十八時間ストライキは既定方針通り行われ、更に十七日からの無期限ストライキ突入も、既定方針通り突入せざるを得なかつたのであります。このストライキが現在に至るまで、本日で丁度五十日を迎えるわけでありますが、続いております炭鉱争議の発端になつたのであります。そこで今までのとの争議状態の本質を見極めるために今までの炭鉱べースというものがどういう実態にあり、更に又終戦後今日までの炭鉱ベースのあり方というものはどういう内容であつたかということを御理解願いませんと、この争議の本質的なものを見極めることには相成らんと考えますので、一応概略的に申上げます。昭和二十一年から二十三年のこの三年の間は、御承知かと存じますが、坑内作業という、坑内労働という特殊の地下作業の条件も十分に加味され、勿論これには当時の石炭の増産の非常に強い要請の裏附けもあつたこととは思いますが、一応ベースは公務員並びに一般産業の二割を上廻つてつたわけであります。これが二十四年に至りまして御承知のごとく国管の廃止と共に配炭公団が廃止され、いわゆるアメリカから参りましたドツジさんの政策による三原則、十一原則、七原則、いろいろな形で言われておりますが、この経済原則に基く方針によりまして配炭公団が廃止された。御承知のように当時は非常に経済の状態が行詰りの形にありまして、特にその影響を石炭産業は強く受けておつたわけであります。加えて申しまするならば、国家が保障してこの石炭企業を管理しておつたにかかわらず、結果的に申しまするならば、その管理した形の中で生れた最も大きな欠陥を、何ら政府の手で克服することなく、この矛盾のしわ寄せを全部民間に移してしまつた。こういう形の中で石炭産業の一大混乱が、あの当時起つたことは御承知の通りであります。そういう形の中で中小炭鉱はばたばた閉炭して行き、同時に又いろいろな悪条件がこれに伴いまして、遂に当時まで二割公務員や他産業に比べて上廻つてつたベースは、この二十四年に至りますと、大体公務員や他産業のベースと同一に据置かれたのであります。  その後二十五年秋におきましても、べース闘争に倒年のごとく繰返されましたが、これもやはり炭鉱労働者が考えておりましたベースの獲得ということは、二十四年に至つてから立直つておらんという経済の状態に参りまして、やはりベースの状態はそのままに据置かれた。このことから公務員或いは一般産業が、やや石炭産業を上廻るべースを獲得するようになつてつたのであります。昨年十月に締結いたしましたべースに至りましてはやや上昇は見ましたが、今日の階段におきましては本年八月現在の状態を申しますと、現在はいろいろな形でベース・アツプ闘争が繰返されておりますが、非常に情勢判断は困難であります。すでに妥結されたところもあり、そうでない部分もあるというので困難でありますが、八月の状態から判断いたしますと、炭鉱ベースは逆に一般産業並びに公務員の二割を下廻つているという状態に落ちついてしまつたのであります。こういう歴史を辿りまして炭鉱のべースが今日まで持続されているわけでありますが、それで端的に申しまして現在の状態を数字に現わして若干申上げますと、八月現在の坑外夫の賃金は七千二百三十八円、これは八千五百円べースに対する坑外夫の平均八月の実収賃金は七千二百三十八円、それから基準外賃金が三千七百二十四円、計一万九百六十二円、こういう数字に相成つております。それでこの三千七百二十四円という基準外賃金を獲得するために、全国平均一時間四十分の残業を毎日いたしているのであります。言い換えますならば、日本の現状において、八時間労働というものが実際においては労働基準法その他において保障されているにもかかわらず、炭鉱夫は一時間四十分即ち九時間四十分労働をやらなければ一万円の賃金が獲得できないというのが現在の賃金ベースの状態であります。而も先ほど申しましたように、三百四十円を二十五でかけますと八千五百円という数字が出て参りますが、これが表面的な炭鉱のべースでありますが、併しこのベースの中にも更に他産業並びに公務員に比して著しく異つている点があるのであります。その点を一、二申上げますと、先ず御承知のごとく公務員、それから一般産業のベースの中には、十八才未満の年少労務者並びに婦人のべースも全部これに平均して含まつているのでありますが、炭鉱の場合は年少者並びに婦人を坑内に入れることもできない、或いは坑外で使う場合でもいろいろな危険な状態から制約があるとか、そういう観点から十八才未満の年少労務者とそれからいわゆる婦人は一切このべースの適用を受けておらんのであります。即ち別途協議の形になりまして、それぞれ各社でこれより下廻つた線で協定されている。甚だしいところは八千五百円ベースの八〇%という程度が現状じやなかろうか。若干いいところもありますが……。そういうことで若しこれを概念的に考えまして、一般産業並みに或いは公務員並みにこれを引伸ばしますと、八千五百円のベースは実質的には七千五百円ベースということに相成るのであります。こういう比較の仕方をしないと、今の一般産業、それから公務員のべースとの本当の意味での対照はできないわけであります。こういう状態を見ましても、八月当時においても或いは現在においても恐らく七千二百三十八円というベースをとつているところはないと思います。これは明らかに先ほど申しましたように二割を下廻つている。只今申しました数字は組合側の一方的な数字と言われては困りますので、これは相手方の鉱業連盟の数字を、そのまま我々が調査もしないで鵜呑みにいたしましてもこのような数字に相成つているのであります。今の数字は鉱業連盟の資料であります。我々の資料は若干違いますが、一応相手方の資料をとつて見ても、こういう状態になつているということを申上げたいのであります。  それから更にここで特に一言附加えたいことは、我々が今度の賃金要求をするに当りまして、マーケツト・バスケツト方式を採用いたしております。巷間よくマーケツト・バスケツト方式は政治闘争であるという批判を聞くのでありますが、そういう人に限つて一体マーケツト・バスケツト方式とは何であるかということを十分知らないで論議している傾向があるやに私ども見受けられるのであります。特に先日であつたと思いますが、国会におきましても労働省の相当の地位にある人が、日経連の言うのと同じような形で国会の答弁にマーケツト・バスケツト方式は政治闘争であるということを答弁している内容を新聞記事等で読みましたが、これは全くサービス機関たる労働省の本来の任務を忘れて、日経連の、経営者団体の言うそのままの言をかりて議会において答弁を行なつている無責任な態度に我々は非常に痛憤を感じているわけでありますが、若し労働省のそういう係官がそういう疑義があるならば、当然組合側の意向も十分に参酌されて、聞かれてこういう答弁をされることは主観的な判断ですから止むを得ないが、そういう努力が何らなされないでただ一方的な見解を日経連の言うままに国会に反映しておる。こういうことに対して私は国会にも注意を喚起いたしたいと思うのであります。  そのことはともかくといたしまして、我々は何故マーケツト・バスケツトというものを採用しなければならないか、こういう理由の第一として問題になりますのは、従来我々が採用しておつたCPSから発するCPIこれは御承知のように総理府統計局の出してある資料でありますが、これは成るほど私どもはこの生活内容を表示したCPSという方式を全面的に否定するものではありませんが、併しCPSはいわゆるこの過去の現象を現わす、簡単に申しますと、過去の現象を現わすということには役立つておる。つまり私なら私が先月に一万円という給料をもらつた、そしてその一万円から米を何キロ何ぼで買つた、それから魚を何百匁何ぼで買つたと、こういうのを消費単位をきめて調査をして集計したものがCPIでありCPSの根幹を流れておる精神であります。従つてこれは現状においては、少くとも先月なら先月の生活状態が今月になつてわかる、一応の現在の生活水活がどういうふうになつておるか、更にそのもらつた給料はどういうふうに使われておるかという内容の説明、つまり現状と過去の一つの実体の御説明には相成つているが、本質的に申して企業の経営者が絶えず企業を合理化して、そして企業の改善の努力を行なつて利潤というものを大きくして行こうという努力と同じように、労働者もまたいつまでも麦飯を食つていていいという、或いは又魚をいつまでも本当は一匹食いたいのだが半分で我慢しよう、こういう状態でいつまでもこれでいいということはない。これは企業の経営者が利潤を追求して行くのと同じように、労働者が絶えず生活向上を求め、文化的生活水準の確保について、人間である限りどなたも同じであるが、当然そういう生活の向上を絶えず求めている。でこのCPSの現状、つまり今のこのデーターを現わすということになれば、これを資料に使つて行けばいつまで経つてもこれでいいということになるのでありまして、逆に我々はこのCPSの内容にもう少し人間としての本能を附加えた、即ち人間として生活を向上せしめるという欲望を加えた内容が即ちマーケツト・バスケツト方式である。言い換えれば、CPS、CPIは将来の人間の生活がこうあるべきである、将来のいわゆるカロリーはこうあるべきであるという目標に対しては何らの指示も示唆も与えていない。今までの過去、現在の状態を一応現わしておるに過ぎない。こういうことでありまして、これは本質的に一つの過去のデーターを集める参考としてはこれは有意義であろうと思いますが、少くともこれからどうあるべきかということについては何ら明確の指示を与えない。こういう点から組合側としてはいろいろ判断してこのマーケツト・バスケツト方式を採用したのであります。言い換えるならば、極端に言うと、総理府統計局の資料は将来の生活がどうあるべきかということについて何らの目標も定めていない。現在までの消費単位の取り方についても非常に矛盾しており、信用することができなくなつたということに問題があるのでありまして、官庁の統計をこういうふうにくさして恐縮ですが、実はそういうことになつておる。本来労使ともに、或いは国民からも尊敬され非常に重要視さるべき総理府統計局の資料日本の殆んどの組合からこういうふうに否定されつつある傾向については、国会も十分なる注意を大いに向けなければならない、こういうふうに考えております。その可否は別としてマーケツト・バスケツト方式がCPSと同じように、先ほど申上げたように、生活内容を提示するということについては同じであるが、その内容におきまして一つの人間的な欲望とか希望というものをその中に織込んでおる、これが即ちマーケツト・バスケツト方式である。それが一体どうして政治闘争になるかどうかということになると、我々としては到底これについては納得することができない。即ち賃金というものはどうあらねばならないかという考え方を組合のほうのいろいろな資料その他によつて作り上げたものが即ちそのものが政治闘争であつて、極論を申上げると、例えば私なら私がただカール・マルクスの資本論を読んだ、こういうことだけでお前は共産主義者であると断定することと、何ら本質的には変らんと思うのであります。こういう批判については我々の見解は明確でありますので、くどくどしく申上げませんが、このマーケツト・バスケツト方式はそういう希望を盛り込んだが故に、若干その物量については量は殖えるかも知れません。先ほど申しましたように、今まで米を一合食べておつたけれども、二合食べたい、或いは又魚が半分だつたのが、今日は一匹の頭付の魚を食べたい、こういう観点から具体的に、一日の生活には豆腐がどれくらい、味増が何十匁、醤油が何リツター要るという具体的な物量を示しておるのであります。我々は団体交渉でも先ほど申しましたような、連盟が主張しておつたのであります。僕らのほうはそういうことでなく、具体的な数字によつて交渉に入つた。つまり魚は一匹だという数字が出ておつたが、一日に魚は一匹も食わないでもいいじやないか、じや一体どれくらい食つたらいいかという論議をしたのでありますが、とにかくお前たちの言うことは気に入らないから、言う必要も聞く必要もないということだつたのであります。具体的にはマーケツト・バスケツト方式に対する理論的な反駁はできなかつたのであります。よしんば技葉末節的にしたといたしましても、その内容は極めて理論的ではなく、貧弱な裏付の内容であつたのであります。従つて我々は現状においても、このマーケツト・バスケツト方式というものは飽くまでも正しい、或いはいろいろな形の中で従来同じマケツト・バスケツト方式というものの方針を採用しながら、どうして各産業賃金要求をしておるものが違うのか、こういう矛盾についてたびたび質問があるわけでありますが、この点は極めてマーケツト・バスケツトの本来の行き方から言えば、違うのは当然であります。即ち例えば炭鉱の場合ですと、本当に自分の体が自分の仕事に耐えて行くというカロリーをとる必要に迫られ、且つその体力の保持と、その生活環境における状態の向上を意味しておるのでありますから、日本労働者の生活水準が全く同じでない限り、これは違うのは当然であります。例えば炭鉱の坑内夫の場合ですと、どうしても脂肪分を余計とらなければならないということで、或いは公務員よりも脂肪分が二十グラムなり三十グラム余計入つていなければならない。逆にこちらは都会でありますから、嗜好品やその他が高いから、そのほうに金額が殖えて行く。従つてそういう電産なら電産の労働者、炭鉱なら炭鉱の労働者は、自分の持つておる仕事の度合い、環境というものから判断いたしますから、どうしてもその数字が本来の内容から言つてつて来るのは当然なんです。同じものをはめたら、これはむしろマーケツト・バスケツトの本旨を超えてしまうことになる。東京にいる公務員の生活の状態と、炭鉱の労働者の現地における生活の状態が違うと同じように、当然このマーケツト・バスケツトの本旨から言えば、違うのは当然である、こういうふうに考えている、こういうことであります。そういうことでこの方針を採用いたしまして、私ども賃金要求に入つたわけでありますが、この方針に対するいろいろな批判がありますので、この機会に若干私どもの立場を、考え方を表明いたした次第であります。そこでベースの状態は、先ほど申しましたように非常に悪い、而も低い、而もそれが一時間四十分という全国平均のこの労働強化によつてやられておる、こういう状態と、更に附加えまして、御承知だと思いますが、炭鉱におきましては、こんな実例は余り他の産業にはないと思いますが、年間を通じて十二万人、つまり月一万人の人間が死んだり、傷ついたりして行つているわけであります。これは鉱山保安局の事例その他を見てもおわかりだと思いますが、そうして月一万人の死傷者のうち、死者、死んで行く人、つまり仕事で倒れて死んで歿くなつて行くという人が、毎日二人であります。つまり月六十人のものが必ず死んで行つておる。その他の人間が重傷、軽傷を負つておるのでありますが、こういう状態は到底これは他産業には見られない状態であります。勿論地下産業特殊性と申しましようか、非常に不幸なことであります。現在の状態がこういう状態にあるということは御承知の通りであります。体一つしか持たない労働者は毎日少くとも、負傷者の場合は抜きにいたしましても二人死んでおる。結局その家族が毎日泣きの涙で二家族ずつが必ず出て行く。こういう状態は非常に遺憾でありますが、現実の日本の炭鉱の実態として把握しなければならないと考えるのであります。こういう悪条件下にある労働者、而も更に通常の場合、労働者労働年限というものは三十年というふうに常識的に見られております。それで三十年労働に耐え得るという常識に相成つておることも御承知の通りでありますが、併し炭鉱の場合は坑内作業という特殊性と申しますか、硅肺病という特殊の職業病があり、更に又肺病にかかる率も非常に多い。そういう点と、更に又空気の悪いところで働くというせいもありましようが、いろいろな悪条件に伴いまして、どうしても老衰の度合いが早い。ですから一般産業労働者や公務員のように三十年も働くということはできない。よくて二十年、坑内夫の場合は通常十三年乃至十五年しか坑内で働けないということに常識的になつておりますが、そういう状態を見ても、炭鉱の労働条件労働環境というものが如何に悪いかということは、十分御承知が頂けると思うのでありますが、こういう悪い環境にある労働者がどうして、一般産業に比べて二割も安いというベースの水準で、而も一日に一時間四十分も残業をしなければ、二割低いベースすら取れない、という状態を我々は納得しなければならないか。こういうことは炭鉱労働者ならずとも、よくよく内部に立入つて判断したならば、現在闘つおる炭鉱労働者がなぜこれだけねばらなければならないかという気持は、十分御承知頂けるのではないかと判断しておるのであります。政治闘争云々の問題につきましては、昨日衆議院の労働委員会におきましても、中労委の中山会長ですら、経営者のそういう一方的な考え方は当らない、少くとも現状ではそうならないということを言つておりますので、この点については余りくどくどしく触れませんが、そういう観点で我々はこの闘いを現在まで続けて参りました。従つて言い換えますならば、他産業と異なりまして、何ぼ上りたからもう少し何ぼ上げろという闘いでなくて、今までの我々の五十日の闘いは、ほかの人より二割低い賃金ベースを更に一日百円か百五十円になるか、数字は細かいことになりますが、下げるぞという闘いに対して、他産業より二割安いベースを守ろうとする闘いであつたのであります。このことは十分御理解願いたいと思うのであります。そうして五十日間の闘いを通じて漸く今日、ほかの産業より二〇%低いそのベースをそのまま横辷りしましようというところまで来たのが、この五十日間の闘争の歴史であつたのであります。御承知の通り今日最近におきまして一般産業、公務員におきましても、ベース・アツプ闘争が繰返されております。果して石炭鉱業連盟のごとく、賃下げをする産業がありましようか。少くとも公務員におきましても、二割、三割のベース・アツプというものは、一つの今年秋における常識ともなつておるような現状下において、昨年の長者番附を見ましても、全国の二十人の長者番附の内容を見ても、頭から十三人は石炭業者である。あとの七人は別の人でありますが、この日本の多額納税者の二十人のベストテンをずつと一覧表を見ますと、この中の十三人が石炭業者である。而も最近から今年に至るまで、石炭業界の好況というものは、これはもう誰もが否定しない事実であります。こういう状態にある石炭企業者が、なぜこのような傲慢な態度を以て、この一般の常識さえ裏切つて、強硬な態度に出ておるかということを判断いたしますと、彼らは今まで占領軍の蔭に隠れて、みずから都合のいいことは、労働者に対してもこれは我々がやつたのである、こういう顔をいたしまして、そうしてみずからの都合の悪いことは、占領軍を介入せしめて、これは我我は本当は労働者に対してそういう冷たい気持は持つておらんのだが、占領軍という絶対的な権力があるのだから止むを得ないというので、占領軍の権力を盛んに利用して、労働者を懐柔してしまつた。とにかく我々は現在の日本状態に満足いたしておりませんけれども、今日独立いたしまして、一応占領軍というものがなくなり、この段階において、完全に組合を死物化して、労使関係において完全な主導権を獲得しなければならないという非常に強固な決意に基いておることは、皆さんも御承知かと思います。  従つて今日のベース闘争の最も困難な状態にありまする裏付の一つといたしまして、経営者組合無視に対する基本的な考え方、いわゆる内部にあらゆる手を使つて組合を分裂せしめ、弱体せしめるという破壊工作、そういう誤つた考え方が是正されませんと、たとえ今日の争議は一時的に、表面的に解決いたしましても、このような形に類似いたしました争議は今後においては続々と続発するものと見なければなりません。我々はこの賃金では食えないという現状に立つて、而も他産業よりも最も悪い労働条件の中にあつて、この低いベースに置かれているこの現状の打破ということについても勿論大きな関心を持ち、絶対的にこれはやり貫かなければならないという覚悟を持つておりますが、これに附け加えて、どちらにも比重がおけないほど重要視して考えているのは経営者のこの組合破壊工作であります。このことをやはり我々は国会の皆さんがたが、十分な関心を持つて我々を注視をして頂きたい、こういうふうに訴えたいと思うのであります。このことは電産におきましても、中部の一部に厖大な金を注ぎ込んで分裂工作を図り、今日の炭労争議におきましても御承知のごとく中央におきましては労働者が飽くまでも自主的に十七社交渉をやりましようという協定書を取交して、両者が正々堂々と東京において団体交渉を続行しているにかかわらず、十七社炭鉱の交渉をよそに九州連盟とタイアツプして猛烈な切崩しをやつたのであります。その結果組合の幹部を罐詰にして無理やりに暴力を以つて調印をさせ、その結果組合に対しては組合の幹部が納得したのであるから、炭労連盟の影響に拘束されることなく直ちに明日から従業せよ、こういう指令を出して組合を異常な混乱に陥れたのであります。勿論これには相当こちらも対抗いたしまして、今日までピケラインを張つて絶対に相手側の攻撃に対して下部態勢を守つておりますが、併しそういう形で意思表示会社がいたしましたにかかわらず、組合員はそのことを信ぜず、炭労本部の指示のない限りはそういうことは絶対に信ずることはできない。こういうことで会社の申出を拒否いたしました。ところがそのへんの暴力団等を狩つて、そうして軍歌の歌声も更しくこのストライキに対して圧力を加えて、坑内に他の人を入れて作業を開始しよう、こういうことで入坑しようとしたことがありますので、これに対して組合側はピケを張つて抵抗したために小競合がすでに二十日になんなんとして続いているのであります。このことは連盟は東京においては炭労の態度を是認しておきながら、現地においてはこういう悪辣な切崩しをやる。全国組織の信義の問題から見てもやるべきことでないことをこのような形でやつているのが現状であります。常磐に対しても如何ほどかその裏において悪辣な切崩しをされたかということを我々も聞いておりますし、想像してもその範囲が了解ができるのであります。そういうふうにして一方では東京交渉をやるという態度に出でながら、根本的には組合の破壊工作を着たと準備をしている。この経営者態度は、これは勿論日経連の態度と判断してもよろしいと思います。要するにこの秋の賃金闘争に立上つた電産、炭労というものを、こういうふうにして骨抜きにすることによつて日本労働運動というものは非常におとなしくなるだろう。このことは非常に重要であるということで、戦略的に日経連でこういう指示を流していることも一応私どもは承知をいたしております。  従つて我々は今回の賃金ベース闘争はこの低いベースのアツプの闘争であると同時に、この経営者の不遜な考え方に対する挑戦である、反撃である、こういうふうに理解をして頂きませんと、ベース・アツプの考え方だけでこの問題を重視されますと、問題の見かたに本質的な誤りが結果的には出て来るのではないかと考えている次第であります。従つて現状においては経営者のこの考え方の放棄がなければ、何回交渉を繰返しても、現状の状態は私は打破できないのではないか、こういうふうに考えているわけであります。  それで私どもは先月の二十四日に至りまして、連盟から、四十日を越える状態になりまして、ようやく団体交渉の申出がありまして、我々はこういう連盟に対して非常に果敢に闘つている。非常な憎しみを持つているのでありますが、併し結果的にこの争議が四十数日間続くことによつて列車の削減が行われ、ガスの制限が行われるという状態が明らかになつて来たこの段階において、我々も又連盟に対する憎しみとか或いはベース・アツプの要求とかいう問題は別にいたしまして、対第三者に対する影響という意味も、少くとも我々は自分が好きでストライキをやつているとは思つておりません。我々の考えるベースが或る程度取れれば今日でもすぐやめます。併しながらそういう不遜な態度で臨んでいる経営者に対して挑でんいるのでありまするが、結果的に先ほど申しましたような状態が出ている。従つて我々はやはり責任のなすり合はどつちに比重が……。使用者にあるか、組合側にあるかということは別にいたしまして、とにもかくにもこの状態を起している当事者に間違いはない。従つて我々も又この問題に対する解決努力はやはり当事者として一生懸命やらなければならん、こういうでどうせろくなものは出て来ないとは思いましたが、一応私どもはこの状態を打破するために、幹事会の代表者会議の設置にも承服いたしました。そうして二十四日から漸く団体交渉を、準備が終つて団体交渉を再開したわけであります。ところが四十数日間の後において出て参りました連盟の案というものは、能率の一〇〇%以上、上昇分の六〇%を、今度四〇%に下げている。依然として賃金切下案という考えについては変りはない、こういう状態であつたのであります。そこで四十数日間続いたストライキの後でそういう案が出て参つたのでありますから、当然組合員の憤激というものは頂点に達したのでありますが、ただこれは放りつぱなしではいけない。これは先ほど申しましたように好むことではないが、第三者に対する影響が大きくなつて来ている。腹を立てないで少し団体交渉を見つめて行とう。こういうことで団体交渉を繰返し繰り返しして、漸く二十八日の晩になりまして出て参つたのが、先ほど申しました一応の現行賃金の横辷り、そうすると現行賃金の横辷りで参りますと、今でさえ二割他産業や公務員より下廻つておるのでありますから、今度はべースの改善により一般産業や公務員が二割上がると、そこに四割の開きが出て来るということに相成るのであります。而も御承知の通り、来年の一月からは汽車賃も上り米代も上がるということがすでに明らかになつておる。こういう状態を勘案いたしますと、我々のべースというものは今までより四割他の水準と比較して低くなるという状態が明らかになつたのであります。従いまして組合としては、当然このことについて納得することはできないのであります。併しなお且つ我々は代表者会議、その他を通じてこういう状態になりますのに、而も四十数日間一銭ももらわないで、このストライキをやつて来た我々たに対して、こういうことで一体どうするのか、再考しろ、こういうことで代表者会議やその他の機会を通じまして連盟の反省を二日間に亘つて求めたのでありますが、これが最後案であつて、一銭もこれから引けない、こういう状態を彼等は宣言するに至りました。従いまして、御承知の通り一日に至りましては、私どもは非常事態宣言を発せざるを得ない状態に追い込まれたのであります。即ち御承知のごとくまる五十日近いストライキで、本来この低いベースで生活をしておるでありますから、炭坑労働者に余分な蓄えがあろうはずはありません。我々の生活は日に日に破壊の方向へ行きつつあるということは明確であります。二カ月間に近いストライキをやつておるのでありますから、我々の生活は全く近いうちに破壊されてしまうであろう。この段階においてもなお且つ連盟がこういう不遜な態度を示しておる、それに対して我々の生活が具体的に、こういうふうに経営者側の圧力によつて破壊されるという段階において、なぜ我々はこの経営者の資産を守らなければならないのか、こういう反間が下部から猛烈に上がつて来たのであります。中闘は、若し許可をしないならば、下部から放棄をするぞ、全面的な保安要員の放棄をするぞ、こういう要請が下部から強く中闘に対して要請される状態に相成つたのであります。御承知のごとく保安要員は別に私ども法律的には出さなければならないという考えを持つておりません。労調法の三十六条におきましても、これは明らかに人命保護を主体にいたしました条文でありまして、そのことは勿論問題ではない。更に鉱山保宏法の本質を流れているものは、飽くまでもこれは会社企業の資産の維持ということでこの法律を作られたものと私どもは判断いたしておりません。これは飽くまでも坑内産業という、地下産業という特殊な権業の中にありまして、非常に危険な状態が多い。従つてこういうところに働かせるためには、こういう設備をしなければいかん。或いはガスが何コンマ何パーセントある場合には、その現場には労働者は入れてはいけない、こういう本来保護法的な性格を持つているのでありまして、この法律が果してストライキの期間中においてこれが全面的に適用されるかどうかということにつきましては、日本の法学者の中でもその意見は二通りあるようであります。即ちその一つは、切羽やその他まで手を入れなくてもいいが、主要構造や主要配置まで守ればいいのではないか。こういう見解と、保護法であるから人間が一人も入らないという前提ならば、何にも保安を確保しなければならんという法的な根拠はないという、こういう見解を持つ学者、こういう二つがあるようであります。全面的に保安を確保しなければならんという法学者は一人もおりません。併しながら坑内で働いている人、坑外で働いている人にいたしましても、その山に永く住みついた人が非常に炭鉱には多いのでありまして、自分の職場を愛し、山を愛するという気持、自分のふるさとが、如何にみじめな想い出に満ちていましても、何らかの郷愁を呼ぶのと同じように、自分の職場というものに対する愛着は他の産業労働者に比べてちよつと違う状態があるのでありまして、そういう状態も考慮いたしまして、私どもも今日まで保安の最少限度の確保は指令を出しまして、今日まで守つてつたわけであります。併し先ほど申しましたように、組合員の生活というものがこのように破壊の方向に、どん底の段階に追い込まれて、而もその段階においても経営者は何らの誠意も示さない。こういうことでありますれば、ここにおいて我々は最後の決意をぜざるを得ない。こういう段階に立ち至つたことを中闘委は確認せざるを得なかつたのであります。従つて我々は別にいつからこれを実施するという期日はきめておりませんが、従つて我々は最悪の場合には全面的に撤収も又止むを得ないという内容を加えた非常事態宣言を発し、組合員の一層の強固な協力を要望すると共に、対外的にこの連盟の現在に至るまでの不遜な考え方を明らかに訴えた次第であります。これが大体概略申上げました今日までの状態でありまするけれども、昨日は労働大臣にも呼ばれましたし、衆参労働委員会、或いは又中労委会長等に呼ばれまして、いろいろ我々が先ほど申しました懸念いたしておりました第三次ストに対する影響が非常に重大なる段階に立至つている。従つて両当事者は事態の収拾のために万全の努力を払つてもらいたいという趣旨の勧告をそれぞれの立場から出されました。組合側といたしましても、この第三次ストに対する影響が、先ほど申しましたように現在組合側はそれを望んでいるものではない。我々は我々の或る程度の常識で納得できる状態が来れば少しでも早くこの状態を打開したいというふうに考えている熱意におきましては、決して当事者であるだけに我々は強いのであります。併しながら現状の段階を以て組合側は納得せい、ただストライキをやめよ、こういうことについては今日まで何のために一体五十数日間の犠牲を払つてこれまでやつて来たか、それから考えましても我々は到底それを納得することはできない。一にかかつて局面の打開は経営者にある、こういうことを意思表示をした次第であります。  併しながら最後に私見になりますが、私の個人的な見通しといたしまして申上げますと、すでに先月の半ばにおけるこの東京都内の一般需要者、この石炭の配炭価格は千円ほど上つております。ストライキに当然入るということが予知されておつたにかかわらず、資金の関係でこういう余分な石炭を買込むことのできなかつた中小企業、或いは一般国民、特に北海道における暖房用炭、これらのいろいろの状態を考えますと、それらの人の立場が我々に近いだけに、我々と同じような状態にあるだけに誠に遺憾であると思つております。品物がないばかりか、買うにいたしましてもそれだけ経済的負担をすでに余儀なくされているということ、こういう状態は返す返すも我々といたしましては遺憾であります。併しながら結果的にこの結果がどういうことになるだろうということを考えて見ますると、御承知のように、このストライキに入る前に日本の市場貯炭は二百数十万トン、それから電気、国鉄その他が持つておりました大口需用者の貯炭が四百数十万トン、合わせて約七百万に近い貯炭がございます。先ほど申しましたように、組合側団体交渉を持つたとたんに連盟の賃金切下げ案が出た。このことは言葉を換えて申しますと、早く組合側ストライキをやつてくれんか、こういう態度なのであります。即ち御承知のごとく、日本の現状の石炭界においての常識は、いわめる市場操作炭というものは二百万トンが常識に相成つております。ところが明らかに五百万トンを上廻つているのでありまして、その当時の状態では、従つて若しこの状態を続けて参りますると、経営者は来年の夏場、或いは今回のこの冬の需用期にかけて非常に石炭の値段が下るのではないか。賃金交渉が始まる前に電気、或いは国鉄でも七月分、八月分の石炭代の値引き交渉が行われておつたことは御承知の通りでありまして、こういう観点から経営者組合側ストライキを意識的にやらせることによつて、将来の炭価政策に有利な体制を築き、これによつて利潤の確保というものを確実なものにしたかつたという傾向があつたことを我々は最近においてはつきり確認することができたのであります。とにもかくにも今日までストライキが続きまして四百数十万トン、五百万トン近い減炭が行なわれ而も現在の市場貯炭は二百万トン云々といわれております。これは勿論市場貯炭はありませんし、大口需用者が持つている貯炭でありますが、併しながらその二百万トンの貯炭の内容は明らかに低品位炭が多いのでありまして、この五千カロリー未満の低品位炭は、この一般産業に持つて来ても、ガス会社に持つて来ても使いものにならない。従つて本当に、一般産業で使える炭というものは、日本中にあるだけの工場から集めても、百万トンは切れるだろう。そういう状態から現在のこのガスの状態、それから国鉄の状態、或いは又ガラス工場、発生炉を持つた工場の状態というものが現われておるのであります。従つてこの調子で参りますると、現在すでに二三日前の新聞にも出ておりましたが、発生炉炭でさえもすでに千円近くの値上りを示しており、更に又そのほかの高級炭に至つては更に厖大な値上りを示しております。このストライキ解決の問題等と関連して、現在の市場貯炭或いは大口需要者の貯炭というものを考えますと、この少い貯炭をめぐつて更に激烈なる需要者の闘争、競合いというものが行われる可能性は十分にある。  而もストライキが非常に長期に亘りましたたために、今日ストライキが解除されましても十二月の十日乃至十五日までは、石炭は恐らく普通の生産量の半分も出ないということは明らかであります。従つてそういたしますると、その少く出た石炭は今までのお得意さんの関係でどうしても大口需要者に優先的に配給される。そうなりますと、一般の国民の暖房用炭或いは中小企業用炭その他の炭はまだまだ月末にならなければ手に入らない状態にある。そういたしますとこの少い炭をめぐつての葛藤は、更に激化して来るものと判断しなければならない。激化して来ることは同時に値段を釣上げて来る結果になると思います。そういたしますと、結果的にはここで連盟が多少のベース・アツプを炭労に対して認めて、そうして妥結をしたにいたしましても、連盟はこの状態即ちこの五十日に亘るストライキの損害は、経営者側は来年の三月乃至四月までには全部回収できるという見通しが明らかになつて参りました。而もこの少い炭の状態から考えますと、来年の夏場において、今年の夏より非常に有利な態勢で石炭価格の維持が可能になつて来るという見通しが明らかに今日の段階ではなされるのではないかというふうに考えるのであります。結果的には、我々はまあ当事者として、ともかくといたしまして、一般の需用者、中小企業そのものが、今回のストライキ、連盟の不遜な態度によるすべての痛手のしわ寄せをそこに持つて来られる可能性がはつきりいたして参ります。即ち連盟はこのストライキによつて受けた打撃は、先ほど申しましたように、来年の春までに全部回収は可能であります。而も夏の価格を十分に有利な態勢ができて、この協定期剛の一年間の期間を通じまして、今までよりもつと厖大な利潤を上げることができるということが明らになつて参りました。従つて損をするのは、結局今まで非常に苦しい、我々若干ここでべース・アツプをして参つたにしても、この五十日間の痛手から立直るためには、相当の犠牲を必要とするということも十分考えなければなりません。而も又そういう中小企業等、一般国民に全部このしわ寄せが、損害が被さつて来るという形の結果にこの争議の顛末が行くのではないか、こういうことを考えた場合に、我々にはやはり絶対に今後に起り得る石炭の値上げに対して我々はこの会社経理を或る程度握つておりますから、現在我々の如何ほどなるべースを認めても、決してそれは石炭の値上げをしなければならんという状態ではないのであります。御承知のごとく、本年三月の決算におきしても、三菱、三井その他が儲けました金額というものは、非常に尨大な数字になつております。三井だけでも三十五億、三菱二十五億、住友十億、北炭十九億、常磐五億、宇部十億というような形で、この途徹もない資本金の率から行くと矛盾なんです。ですから私どもは、このストライキが終つて、若しそれを理由にして公然と経営者が……、今まで申し上げました値上りの状態は、これは潜在的な事業者が勝手にしておる値上りでありますが、若し公然と石炭企業経営者が、石炭単価を、ベースを上げましたから我々は石炭代を上げなければなりませんと、こういうことを若し公然と社会に対して申すような段階に来たならば、我々は一般国民とタイアツプして、徹底したこの経営者経営状態の暴露と、併せて国民と共に闘うという気がまえを現状においても持つておる次第であります。  非常に抽象的な説明でありますが、概略要点を申し上げましたが、なお不十分な点につきましては、これから御質疑により残してお答えをいたしたいと思います。以上であります。
  50. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 有難うございました。御質疑ございましたら……。
  51. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 適当な機会に、委員外発言をお許しを願いたいのです。お諮りしてどうぞお願いします。
  52. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 木下議員から適当な機会に委員外発言を許してもらいたいという御要望であります。委員のかたの御質問が済みまして許したいと思います。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 委員の方ございませんか。
  54. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 ちよつとお伺いしますがね。経営者側は、御承知のように今の我々は外から見て炭鉱労働者諸君の賃金が非常に劣悪だということがはつきりわかつたのですがね。これに対して経営者側は、非常に人件費の比率を言つて経営内容から行く人件費が四九・七%だとか何とか言つている。これも勿論我々はわかります。で炭鉱の実態から言つて、普通の製造業などの数字を引張り出して来て、それと比較対照して、こんな大きな人件費を出しておるのだというようなことを言つておるので、この矛盾はわかるのですけれども、今四九・七という数字が、これは本当の数字であるか、労働組合から見た場合に、本当の数字であるかどうかということ、それから従来の比率は、過去二年でも三年でも結構ですが、どういうパーセンテージが現われておるか、そういう点をちよつとお聞かせを、教えて頂きたいと思うのです。
  55. 田中章

    参考人(田中章君) 現状における人件費の企業内に占めるウエイトは、大体おつしやる通りかと思います。ただ終戦直後における人件費のウエイトは大体六五%ですね、それから七〇%近いところもありましたが、まあそんなところまで行つていなかつた。大体最高六五%、それから五五%の間の各社の状態じやなかつたか。それがだんだん企業が合理化されて、人間が減つて参りまして、この状態が大体現在は今おつしやられたような数字になつておると思いますが、これは若干各社によりまして上下はありますが、大体その程度ではないか、こういうふうに考えております。
  56. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 これは何ですね、やはりその後或る程度企業の態が合理化されて、いわゆる機械化されたといいますか、そういう面からパーセンテージが減つて来た。六五%くらいであつたものが四九%くらいになつて来たのだということに了解していいわけでございますね。
  57. 田中章

    参考人(田中章君) まあそういうことを経営者は随分言うのですが、日本の今の石炭産業状態は、これは機械化というのは、これは調査団でも派遣して御覧になればよくわかると思いますが、殆んど見るべきものはありません。でこれはやはり機械化の根本的な……、あれは日本のは多く傾斜坑道なんです。全部殆んどの炭坑が、これは外国式、又アメリカ式や、イギリス式に、竪坑に切り替えないと、機械なんて入れたつて、使い途がない。外国の機械、外国の今使つておる機械というのは殆んど今使いものにならない。そういうのが日本の今の炭坑の実態じやないか。勿論一部には今新らしい機械を入れておりますが、殆んど試験期の域を脱しておりません。例えば三井鉱山なら三井鉱山という形で、ドイツや、アメリカから一台の機械を入れる。それをどこかの炭坑へ、最も条件の当てはまつた炭坑にやつて、そして一定期間試験をしてみる。そういう状態のところはちよつとありますが、機械化によつて厖大な出炭をもたらした、こういう著しい現象は余り見られません。特に最近巷間問題になつておりまするカツペ採炭等につきましては、これはこの間或る会社がドイツから専門家の博士を呼びまして、全国の炭坑を見せたのですが、そのカツペ、これはアメリカや、その他ドイツからのそのままの直輸入なのですが、そういうのをそのまま当てはめて使つておるのですが、ところがその博士も言つてつたそうですが、とにかく体重にして平均二十貫、身長にして五尺八寸から九寸、こういう体格の人間が操作するものを、そのまま五尺一寸か二寸しかない、十五、六貫しかない日本人のやつておる仕事に使つておる。これは非常に矛盾じやないか、こういう指摘があつたことも私は承わつております。従つて今最も機械化云々の中で、一つの典型的な形で示されたものがこのカツペでありまして、そういう観点で非常に今の日本人の体力からして無理が伴つておる。この面における災害率の上昇というものは、非常に甚しい。こういう点から言つて機械化が、今外国で非常に使われている機械がそのまま日本に輸入されても、それが坑内の立地条件というものが外国並みになりませんと、これは殆んど見るべき効果を上げない。而も日本の現状の炭坑の状態は、殆んど傾斜坑道が多い。従つて堅坑を主にして外国の機械というものを入れるにしても、日本の全炭坑の何%かの程度であつて、これが三割になり、四割になりという状態には、到底ここ五年や十年の間では参らない。経営者はたびたび機械化によつて能率が上つたのだということを言つておりますが、併しそれにしても御承知のように、炭価はもう上昇に上昇を続けて、現在は物すごい値段になつておるわけですが、そういう状態と、それから従業員の一人当りの能率は……、まあそのまま石炭の量が出ておつても、これだけ炭価が上つておれば、相当儲かつているはずです。而も従業員の一人当りの能率は、昭和二十三年十二月調停当時から比べまして、大体倍の数字に相成つております。当時は炭坑夫一人当りの平均が〇・二五入という数字になつてつたのでありますが、現在は〇・四二二という数字になつております。これは本年の十月の数字でありますが、〇・四二二、それから採炭夫一人当りの能率にいたしましても、昭和二十三年十二月当時の調停における全国平均は、一トン四分七厘、これが現在は二トン一分五厘、こういうふうに大体能率は倍になつておる。その上に石炭の値段は何倍になつたか知らんが、大体一昨年の暮あたりから四回くらい値段を変えていますから、恐らく昭和二十三年から比べると、倍をちよつと越えていますな。そういう状態です。ですから当時四千円ぐらいしておつた石炭が、八千円くらいになつておる。それから能率はそのときの倍になつている。まあ二重に儲かつているわけですが、そういうことになつておりますので、機械化の状態は、専門家に御不審でしたら聞いて頂ければわかりますが、日本の現状は十分わかりますが、殆んど見るべきものがない。全然影響がないとは申しませんが、併しそのパーセンテージというものは、決してそう経営者が申しているような厖大なものではないということで、端的に申しまして勤労者の努力というものが与かつてこの増産というものに対しては力があつた、こういうふうに私どもは判断いたしております。
  58. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 そういたしますと、まあ結局能率の上昇を図つて増産したということであつて、機械化によつてこういうふうになつたのだということではないということですね。そういう解釈をしてよろしいわけですね。それから私遅かつたものですから或いは御説明つたかも知れませんが、嘉穂炭鉱のような場合、私ちよつと行つて見さして頂きましたが、あそこでの不当労働行為の実態は、現実に見て参りましたから知つておりますが、そのほかに不当労働行為の具体的な例がありましたらお教え頂きたいと思います。それから要求賃金の、いわゆるマーケツト方式に対する簡単な説明で結構ですが、特に炭鉱の場合、坑内の皆さんの作業というものは特別作業であると思うので、基準になるのは結局坑外が基準になるのじやないかと思つております。坑外が基準になるとすれば、一万四千円という要求が実働二十五日くらいにして一万四千円になるわけですね。こういう要求は決して他産業に比べて高いものではない、むしろまだ低いのではないか。それで仮に今の状態が、勿論会社側はやつていないが、仮に呑んだとしてもそれで実際の生活ができるかどうか、こういう点を教えて頂きたい。もう一つ最後には、今の斡旋に対するあなたがたのお考えは、私大体今までのお答えでわかつておりますけれども、この斡旋というものに対しては、労働組合というものは当然呑めないだろうけれども、併しそれに対する社会的な事態というのは、相当急迫しているので、それに対する田中さんの御見解はお伺いしたのだが、いま一歩突込んだお考えがあればお話して頂きたいと思います。と同時に資本家は一体これに対してどういうふうに考えているかそれを教えて頂ければ大変幸いだと思います。その三点についてお伺いしたいと思います。
  59. 田中章

    参考人(田中章君) 失礼いたしました。第二点の質問の内容がよくわかりませんが、一点と三点を先にお答えいたしまして、二点をもう一回言つて頂きたいと思います。一点は嘉穂以外にこういうところがあるかどうかということにつきましては、常磐地方にややこれに似た例があるかと思いますが、まだここではつきりと申上げるまでの段階に至つておりません。それ以外には余りそういう例はまだないようです。併しまあ個人的に組合幹部を恐喝したり、或いはいろんな手段を弄しているということは、これはもう全国的にある傾向でありまして、非常に遺憾であると思いますが、法律的に取上げてこれは闘うまでの段階に至つている状態はまだそれ以外には、常磐の一部に調査中でありますが、その以外にはありません。第三点の斡旋に対する態度について、第三者の影響に対しても非常に考えなければならん段階に来たのじやないかということで、そこでどういうふうな態度を持つているか、こういう御質問かと思いますが、組合側といたしましては、中央労働委員会というのは、これは何も組合が作つた機関でも、それから経営者が作つた機関でもない、これは明らかに公的な機関であるから、この公的な機関を介入せよとか介入するなという権限はこれは労使ともないと思います。従つて法律に基いてこれらの機関が何らかの行動をした場合に或いは我々に対して何らかの意思表示をした場合に、我々はその都度そのときの情勢と客観的な戦力の判断と相手の出方というものを総合的に判断して、これに対応する態度をきめざるを得ない。現状における我我の中労委に対する態度は、その考え方が基本的になつております。従つて昨夜中山会長とも会いましたし、労働代表とも会いましたが、結局我々の態度は、基本的にはそういうところから発展せざるを得ない。そこで現実に起きている社会不安というものは、我々が責任を感じた場合は、少なくともこれらの機関の求める資料の提供や或いは参考意見の開陳というものまでも拒むような非協力的な態度をとつてはいかんだろう、そういうような考えは持つております。現状において乗出すぞと言われただけで、一体どういう形で乗出すのか、而もそれがどういう内容を持つているか、これらが明確になつていない見段階にいて、突きつめた考えを持つということは私たちはできない。こういう状態なのでありますので、その点を御了解願いたいと思います。それから第二点のをちよつと……。
  60. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 第二のやつは、簡単に言いますと要求賃金内容説明ですが、いわゆるマーケツト・バスケツト方式といいますか、そういう方式によつて取上げられていると思うのですけれども、坑内労働者の千六十円ですか、これは実働二十二日か二十三日か知りませんがその程度で二万三千何がしになる、こう思いますが、坑外の場合ですと五百六十円が基準で、実働が二十五日で一万四千円ぐらいだとすれば、これは他産業よりも非常に低いのだ、そういう点はそれで生活ができるのだろうかどうかということをお聞きしたのです。
  61. 田中章

    参考人(田中章君) 確かにおつしやる通り、大体坑外夫の金額は一万五千円をちよつと超える程度だと思います。それで一応一つのフアクターを示すという意味で、他産業のことを申上げましたが、やはり既成事実というものはまだ全面的に否定するわけには参らんと思います。そういう観点から我我は現状はこれだけあれば大体食つて行けるのではないか、そういう判断をいたしております。確かに低い憾みがある、坑外夫の一部からもそういう強い面の批判がございます。併し何と申しましてもまあ命をいつ奪われるかわからないという最悪の労働条件のほうに少し余計廻そうと、その代り坑外夫は少し犠牲になろう。こういう考え方があの賃金要求書の中に非常に濃厚であります。そういう点を加味しますと、坑外夫がこれだけで我慢して、坑内夫がこれだけ取れるならばという意味も含めております。決して坑外夫もこれで満足をいたしているわけではないのであります。
  62. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 他に委員のかた御質問ありませんか。
  63. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 今度の争議について、炭労はいわゆる正々堂々と遂行しておられる。この点については国民がひとしく敬意を表していると思うのであります。且つ我々も又限りない信頼と敬意を表するものであります。曾つて過去の争議について往々見られたような、ややもすると破壊的なことが同時にストライキだということと結びつけられる観念が一掃されて、極めて今回の争議においては正々堂々たるものであつた、かように考えております。ところでいろいろの今御説明を承わつたのでありますが、なお私が参りません前に説明があつたかも知れませんけれども、この一点だけはお聞きしておきたいと思うのです。現在国会の関与する国家公務員の給与、炭鉱における労働者はこれに比較すればどういう程度労働をやつているので、そうして現在はどのくらいのベースになつているかということの一点を先ずお伺いしたい。
  64. 田中章

    参考人(田中章君) これは先ほどちよつと説明をいたしましたが、概略をもう一回申上げますと、二十一年から二十三年の間の炭鉱ベースというのは公務員、一般産業より約二割上廻つてつた。これが二十四年から二十五年の初めに至つて大体一般に追いつかれてしまつた。それから二十五年の春以降今日に至る間に大体二割下廻つた。つまり今年八月の状態において一般公務員、それから一般産業、こういうベースに約二割下廻つておる。簡単に申しますとそういうことであります。現状の状態をもう少し詳しく申しますと、一般の他産業と比較すると、坑外夫ベースは現在八千五百円であります。一万円以下のベースのところは余りないと思います。私の記憶では。而もこの八千五百円ベースというのは十八才未満の年少労務者と婦人というものを除外しておる。ですからこれを一般産業並みに、或いは公務員並みに平均ースにしますと七千五百円という標準ベースより非常に下廻つた数字が出ております。この七千五百円というベースが現在の炭鉱のベースであります。ですから二割以上、最低で見積つても二割は下廻つておる。でその八千五百万円という数字から発展したべースの実績が、八月に至りましては七千二百三十八円、全国平均基準外賃金が三千七百三十四円、計一万九百六十二円、この三千七百三十四円という基準外賃を取るためには、坑外夫の全国平均一日一時間四十二分という残業をしておる。時間外労働をしておる。つまり一日に国内法によつて明らかに八時間労働が保障されておるのですが、実際はそれでは食えなくて一日に九時間四十二分の労働をやらなければ他産業がもらつておる一万円、最低でも一万円だと思いますが、そのベースを取れない。つまり九時間四十二分働いて漸く一万円の金をもらつておる。こういうのが炭鉱ベースの現状の状態であります。
  65. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 今日まで経営者との交渉が行われたようでありますが、この交渉において労働者資本家と対等の地位が保たれて交渉が行われたと考えておられるかどうか、こういう点を一つ御感想を洩らしてもらいたい。
  66. 田中章

    参考人(田中章君) この点につきましても先ほどちよつと申上げたのでありますが、交渉は連盟の一方的な高圧的な態度に終始しております。そのことは先ほども申しましたが従来の慣例から申しましても、組合要求説明を聞き、その疑義、解釈を各項目ごとに連盟が行なつて、そのあとで、各項目に対する連盟の考え方というものが提示される、それをめぐつて更に論議をして行く、こういうのが過去の七年間に亘る団体交渉一つの恰好ということになつております。ところが今回の場合は、先ほども詳細に説明したのでありますが、団体交渉を始めて第一回の団体交渉では交渉員の名簿の交換とか、そういう事務的な交渉に終つて、第二回の団体交渉にも連盟の曰くには、組合側要求案の内容を聞く必要はない、説明の必要もない、あなたがたの考え方も聞く必要はない、我が方の考え方はとにかくこれであるということを第二回の団体交渉で示して参つた。このことは言葉を換えて申しますと、文句を言わずに俺の言うことを聞けばいいのだ、こういうことだと思うのであります。こういう観点から団体交渉が出発いたしましてから一カ月に亘る団体交渉の過程では、終始その態度を連盟は捨てなかつたのであります。そういうことで日経連を中心としたこの一般経営者態度というものが非常に強圧的になり、反動的な方向に進んでいることは御承知だと思うのであります。要するに経営者以外に何ものもない。倒えば本日の例をとつてみましても、私どもは少くとも連盟よりも多忙な場合はあつつても決して暇ではありません。今日参考人に呼ばれた連盟が本委員会に出席しないということ自体の不遜な態度を見ても、現在の経営者の考え方の一端が私は窺えるのではないか。忙しさの点においては私も原君も同様でありますが、まとめなければならん立場にある。相手もその立場は同じである。中労委から勧告されたことも同じである。労働大臣から勧告されたのも同じである。これに対する我々の考え方、態度を統一しなければならん、こういう状態にあることは同一である。併し我々は少くとも国会の存在というものを十分認識して本日参りましたが、併し経営者は来ない。こういう非常に何と言いますか、一つの国の制度、或いは第三者の意見、或いは又その他の点につきましても非常に傍若無人な態度をあらゆる面でとりつつあるということは、これは否定できんのであります。従つて今回の賃金交渉も、ただ単に額だけの問題でなく、組合の存在に対する全面的な否定態度に対する反撃の意味も相当この長期の闘争の中には加わつておる。この基本的な態度を変えない限り、額の問題はなんぼ交渉しても出て来ない。だから私は第三者の輿論に愬えても、或いは又我々の闘争力に愬えても、先ずこの態度の打破こそが我々を守るであろう。対外的にもこの問題は重要かと思いますが、将来本当に日本の民主主義が確立されるかどうか、国内立法において認められた労働組合の存在が維持できるかどうか、こういうことに重大な関連があるものと考えておる次第であります。
  67. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 今日いわゆる争議をやつておる労働者の生活の状態について簡単でよろしいですから一つ
  68. 田中章

    参考人(田中章君) 極端に申しましても、生活は破壊の一歩手前であります。先ほど申しましたように、生活の基礎になるべきべースが本来ずつと他の産業やその他に比べて低い、而も災害の状態は多い、休む日数は必然的に多くなる。こういう状態で働いて来た炭鉱労働者に何カ月間のストライキ資金を準備する余裕なんてあるはずがないし、金が残るはずもない。だから必然的に我々はただ粥を啜つてつておる。こういう状態が闘争の当初からのこれは状態であります。従つて今日で丁度五十日を迎えた今日の段階においては当然どの程度生活の状態が窮迫しておるかということは誰でもその想像がつくのではないか。而もその生活の面をカバーするという形でいろいろアルバイトその他もやりましたが、これは失業者が巷に溢れておるという状態で如何ほどかこの臨時的な坑夫がこのアルバイトの道を見つけるかということにもおのずから限度があろうかと思います。同町に北海道等におきましてはすでに積雪一尺を越えまして今はアルバイトも締出されて、アルバイトもなくなつて来ておる。こういう状態で我々の生活は非常に窮迫のどん底に来ておるということは遺憾ながら認めざるを得ません。従つて我々は一日の非常事態宣言というものの内容とも更に関連して考えてみたいと思うのであります。即ち我々は相手方に一顧だに誠意を認められないということで、我我は今日この状態に追い詰められてなお且つ我々はいわゆる保安法の保安ということをなぜ確保しなければならないか、なぜ経営者の財産というものを確保しなければならないか、こういう声が各方面から澎湃として下部から起りつつあるということは、組合員の生活状態を暗に物語つておるものと私は考えておるわけであります。
  69. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) ストライキをやつておる当事者は別といたしまして、老人又子供と、こういう多数の人たが非常に困窮しておるという実情に対しては、国としても十分に考えなければならない点があろうと思うのですが、それはさておいて、国会に対して何かこの際御要請文は御期待等がありましたら、この機会に聞かして頂きたい。
  70. 田中章

    参考人(田中章君) 国会議員の皆さんがたも非常に御多忙であろうと思いますし、更にこの専門的な問題に突つ込んで行くためには、相当炭鉱の状態が複雑でありますので、相当期間、これは失礼な言い方でありますが、勉強して頂かないと、飛び込んで見ても結果的には何らわからなかつたという形が相当な経験者であつてもあるのであります。亡くなりました末弘博士も、二十三年度における賃金闘争において……私どもの闘いは当時のマツカーサー指令によりまして、中止を食いまして、末弘博士が中労委会長という立場でこれに介入して来られたわけでありますが、その調停が終つたあとで我々につくづく言われたことは、炭鉱の内容は非常にむずかしい、この問題にかかるならば、自分も二カ月ぐらい十分みつちり勉強してかからないと駄目だ、それで不十分な点が多かつたので非常に済まなかつた。こういうことを私どもに申されたことがありますが、差当り私ども国会としてできることは二つあると思うのであります。その一つは、先ず一体何といいますか、給与は苦しい。だがベース・アツプは認めることができない、若しあなたがたが強いてベース・アツプを認めようとするならば、あえて炭価は上げざるを得ませんよ。こういう連盟の見方は当つているかいないかという根本的な問題は、これは調査する必要がある。国会等で調査議員団等を設けられまして、どの会社のモデルケースをとるもよろしうございますから、会社経理面へちよつとメスを入れて頂くと、それが嘘であるか本当であるかということが直ちにわかる。両者の言い分のどちらが当つておるかということを国会がはつきり判断する意味において、そのことができるならば早急にやつて頂きたい、決して私どもの味方をしてくれというのではなく、客観的に皆さんがたが国会議員という立場でその問題を、そういう委員会等を作られて実行されたならば、どちらの言うことが当つておるかということが私どもは直ちにわかつて頂ける。なぜ連盟が今日まで外部に対して偽装しながら、第三者の介入というものを極力回避して来たか。中労委の先月の十五日の勧告に対しても絶対に拒否するという強い態度を示している。一片の誠意もない。労働省に対してもその通り態度をとつて来ている。このことは経理内容に触れられることを極度に恐れているからであります。従つてこの間に我々は一つ希望は持つているわけであります。  第二は、先ほど申しましたように、生活の状態がこれほど逼迫しております。従つてできるならば私はやはり国会等においてストライキ期間中に貸出してくれということになると、これは或いは又逆な見方によりますと、ストライキ資金国会が議決して出してしまつた。こういう形はいいのか悪いのかということで、喧々囂々という状態が生れるかもわかりません。併し私どもはそういうことでなくても、やはりこのストライキが終つてならば、この立上りに対する融資という面について、国会が十分な関心を持つて頂きたいと思うのであります。若しその面の保障が従業員に対して十分でありませんと、これは本来経営者がやるべきものでありますが、こう長い間の闘いの間の感情問題その他を考えた場合に直ちにストライキが終つて、その面で私は十分な話合がつくということは考えられません。従つて我々の立上りに対する資金の融資という形を以て、できておりまする労働金庫に国家預金を預託するとか、或いはその他のあらゆる方法をとつて、この面に対する対策を国会が考えて頂ければ非常に幸いと思つておる次第であります。  なお最後に申上げますが、実は本委員会の形式を私ども存じなかつたのでありますが、そういう形になつてつたのでありますが、従来の炭鉱のベース・アツプ闘争のイニシアを握つてつたのは、大体労務部長クラス、一応社長やその他の決裁を得るにしましても、会社の労務部長その他のクラスが大体イニシアをとつてつて来ておつた。ところが最近になつて一番頑固なのは社長会議というのがありまして、えらい現場の事情に接していないだけに頑迷な態度がありまして、この社長グループというものの存在が非常に賃金闘争を長引かせる一つの原因になつている。新らしい時代感覚を与え、更に又第三者の批判を聞かせ、事態の収拾に対する責任を痛感せしめる意味からも蛇足でありまするが、本委員会が企画した社長クラスの喚問ということは是非やつて頂いて結構だと、そういうふうに考えているわけであります。
  71. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 最後にでありますが、政府が今いろいろ乗出したようでありますが、いわゆる緊急調整、この問題に関する御意見がありましたらばこの機会にお話願いたい。
  72. 田中章

    参考人(田中章君) 日本状態は勿論そうでありますが、労働組合というものが法的に認められているという国において、本来争議行為に対する制限条項を設けるという考え方は、これは誤りであります。そういうことであれば、むしろ労働組合というものを否定するという考え方のほうにどうしても行くのであります。日本資本主義形態をとつておりまする現状において、これは一応止むを得ないとしても、本質的には労働組合が、組合運動というものが許されるということは、同時に労働組合だけに一つの制限条項というものが持たれるべきでない。差別されるべきでない、こういうことを第一義に考えております。そういう考えでありますが、遺憾ながら現行日本労働関係法には、今仰せられました緊急調整云々の非常に大きな制限行為が規定されております。そこで本来労使間の紛争状態というものは、労使間の自主的な解決を前提とするのが、これはもう常道であります。併し最悪の場合に至つても、飽くまでもこれは第三者の当事者に対する注意の喚起という程度によつて当事者の自主的判断を待つべきことが、私はやはり本来の労使関係をより一歩ずつ正常な形にして行くという面であずかつて力があるという言うに考えるのであります。権力やその他の力によつて一時的に抑えてみましても、人間の気持の中に若し不満が残れば、どうしてもこれば反抗心というものになつて、根強く人間の体内に残るのでありますから、いつかは爆発する。そういうことが力によつて抑えつけられた場合には当然反撥が起るのであります。そういう観点から申しましても、緊急調整というものに対する発動に対しては、私どもは絶対的に納得はできませんし、現在の状態が緊急調整を発動しなければ事態の収拾ができない、こういうふうにも考えておりません。更には若し今後事態発展いたしまして政府権力が介入し、組合の言い分は何ら容れられず、一方的に緊急調整が発動されて、その中で組合が壊滅的な敗北をしなければならないという見通が明かになつた場合には、私どもこの緊急調整に対する考え方を更に一段と強化せざるを得ません。即ち現行の緊急調整の中には、私ども幾らでも抜け道はあると思つております。戦術のとり方如何によつてはこの緊急調整はなきに等しい状態にすることができます。それは国が力を以て我々に対して我々の行為を何ら生活の裏付をなさずして一方的に力のみによつてこれを抑えようとした場合に我々がとるべき戦術はあります。これはその内容を具体的に申上げることができませんが十分にあります。併し私どもはそこまで事態の推移を現状の社会的な影響等から判断いたしましても考えておりませんので、できるだけ努力をしてこの問題の解決をしたい。而してとの緊急調整というものは一時的に、昨日衆議院の労働委員会で中山会長も申されておりましたが、これは麻酔的な内容しか意味がない、つまり一時癇が高ぶつているのを麻酔薬をかけて眠らせておくだけだ、その麻酔薬が醒めると又元の状態に返つてしまう、こういうことであります。私はその表現は当つておると思います。従つてこういう条項はありましても私は何ら意味がない、だから一つの無言の強圧にしかならない。強圧に対する反撥は当然起きて来るのでありますから、あれば癇が立つ、でありますからこの点は早急に労働法でも改正して、なくしてもらいたい、こういうのが結論であります。
  73. 木下源吾

    委員外議員(木下源吾君) 終りました。
  74. 安井謙

    ○安井謙君 今いろいろお話伺つて事情誠によくわかるところもあるのですが、今度の要求自体も相当大幅なものだと第三者としても考えられるのですね。従つて両方で非常に強く突張り合つている結果がこの第三者が非常に困るという状態なので、今のお話じや連盟側が非常に頑迷固陋だという、その点もあるのでしよう。同時に今組合要求されている態度というものもこれは余地はないのですか。もつと今のここまで来た社会情勢というものを考えて。
  75. 田中章

    参考人(田中章君) 私ども今でも私ども出した要求書というものが、一つの現状の国内の物価状態、それから自分の生活状態、働くために摂るカロリーの状態その他を考えて、決して不当に高いものだとは思いません。併し国会等におきましても御承知かと思いますが、労働省なら労働省、厚生省なら厚生省というものがそれぞれ必要と思われる金額を出して、それが大蔵省で篩いにかかつて、更に専門委員会或いは本会議で篩いにかかつて、結局最終的のものがきまる、こういう過程は私は当然にあり得ると思う。然らば私ども過去にマーケツト・バスケツト方式によらない要求書を出しましたが、それが全額取れたためしがあつたかというと、これも必ずしもそうでない。私どもはやはり良識で判断でき得る線がどこに出て来るか、こういうことによつて最終的な判断をしようと思つております。従つて考え方としてはあくまで現状においても間違つたとは思いませんが、やはり今後の連盟の出方そのものによつて事態を、今仰せられました第三者に対する影響等というものも十分考えまして、自分自身も、又組合員の生活の状態というものも考えざるを得ませんから十分に考えますが、連盟が今のような態度をとつておる、つまり切下げます、これはもう私どものほうは現行を一応標準にして、これだけ上げてくれという要求に対して、切下げますというので、これは一応この切下げるというのにぶつかつて来た。一応それは撤回して来た、今後その問題が問題になつて来ると思うのですが、そういう問題につきましては、先ほど申しますように十分我々も責任を感じておりますので、私どもの納得できる線、そういう状態がどの程度かということは今申上げられませんが、十分客観的に判断してできるだけ解決への努力をいたしたい、このように考えております。
  76. 安井謙

    ○安井謙君 それで今のそういう関係で第三者の影響を考慮されるということで、こういう具体的対策は連盟も一応折れるものもあるし、回答も二、三やつておるというようなことに対して組合測としての態度はどういうことですか。
  77. 田中章

    参考人(田中章君) 連盟が折れておると言われますが、何も折れているところはないのです。例えば一時金を五千円出しましようと、これは但しそのうちの一部は貸付だと、なおあとの一部は何らかの形で支給する方法も考えてもいいといつておりますが、併し現行通りにしましようと言つて来た内容は、中央の大手交渉に含まれておる全部を指しておるわけではないのであります。例えば宇部に対してはやはり切下げざるを得ません。その他の二、三の特殊な山についても更に今の線は下げざるを得ません、こういう意思表示をしておるわけです。これやあれやキャンセルしてみると、やはりまだ切下げるという考えのほうが強いので、別に連盟が現在の段階に譲つておるというふうに全然考えておらないわけでありますが、実情はまだそうでありますから……。
  78. 安井謙

    ○安井謙君 それはわれわれ見方もあると思うのですが、マーケツト・バスケツト方式にしましても、それから今度の何というのですか、今の能率増進に対する組合側の見方にしても、これはまあ能率増進の問題についてはあんた方というか、勤労者の努力によつてこれはなつておるのだという一方的な断定の仕方、或いはマーケツト・バスケツト方式にしても、これはまあ日本じやまだ敷かれたこともない。外国じや一遍やろうとして廃止された例もあるというふうなかなり不安定な計算方式であるとも言われておる。こういうものを相変らず依然として根拠に強くとられて、一歩も引かないという主張の仕方が果して妥当かどうかというような点についてはどうでしようね、考える余地はありませんか。
  79. 田中章

    参考人(田中章君) まあ逆な形で別の観点から申しますと、どういう様式で出しても、どうしても連盟はこれは上げるという意思はないのだから、とにかく金を出しませんよ、今の状態ではね。ですから、殊更にマーケツト・バスケツトというものが不当であるように見せかけて出したくないのをカムフラージユしておると、こういうふうな端的な見方もあるわけですが、それでマーケツト・バスケツトが実情に副わないと言われますが、じやあ何が一体現状の段階においてそういう完全なフアクターであるかというと、ないのです。それで一応の基準になつております総理府の統計局がやつておりますCPSにいたしましても、これはやはり私どもが今とつておりますマーケツト・バスケツト方式というものの正しさを或る程度立証したと思うし、ということは最近になつてCPAの統計資料の消費単位のとり方をやはり一部分改正しました。最近になつて改正したのです。その改正した方向は果して組合が今とつておるマーケツト・バスケツト方式と逆行するものかどうかというと近付いておる。それから最近やつております人事院の勧告の内容にとりましてもその物量のとり方その他が非常にマーケツト・バスケツトに近い。完璧なものでないものにいたしましても、そういう国内の事態から判断しても、我々のはちよつととことんまではつきり結論を出し過ぎたと、そういう憂いはあるかも知れませんが、とにかく考え方、進め方については間違つておらない、今を論じて将来どうすべきかという結論のない統計というものは意味はないのです。ですからそういう点では、最近やはり、我々が今非難しておりますように、総理府の統計局も一部の物量のとり方も改正した、これは御調査になればすぐおわかりだと思いますから…。それから人事院の勧告の額だけを見ないで内容の実際の方式はどうなつておるかということを、この組合側言つておるマーケツト・バスケツト方式をあれして比較して頂ければ、前の人事院の勧告と今回の人事院勧告の内容が果してマーケツト・バスケツトというこの方法から離れておるか、逆行しておるか、近付いておるかということを判断した場合に、我々はずつと近付いて来ておる、こういうふうに判断をいたしておりますので、マーケツト・バスケツト方式に対する額の算出、物量の方式、その内容において魚が一匹多いではないか、おしんこは一日に二切れだというふうに書いてある、これは一切れでいいのじやないか、こういう内容の論議如何によつてはこれは金額が上つたり下つたりすることはあるでしよう。併し方式そのものが、考え方そのものが、私どもは間違つておるというふうには今なお考えておらないわけです。若しそういうことであればこれに代るべき権威あるそれじや何があるか、日本には遺憾ながらそういうものは余り私ないと思います。ですから根本的には連盟が今言つておりまする実際生計費というもの、まあ大体CPSを基準にするのですが、まあ生活内容を示すという点では同じなんです。でもCPSのようにあなたのところは先月何万円もらいましたか、その何万円を一体どういうように使いましたか、そういうものをずつととつて参ります。魚が何グラムで何ぼになつておるからこの魚の値段は何ぼである、それで何ぼであると、そういうもので生活の内容を表示しておる。そういう結果的なものが現れるわけですね。一カ月一万円もらつた人の生活の内容が現れておる。我々はCPSというものの内容そのものから判断して、我々はとの魚一匹というふうに言つておるのだが、この人はこういう所に働いておる。この一匹の魚でいいのか悪いのかということを、自分の度合と、それからやはりこれももう少し食べたいという慾望を若干加味した形でとの方式を作つたわけですが、方式内容について、お互いの意見の相違はあると思う。併し方式そのものが間違つておるというふうには考えんのであります。ですからそういう点については、先ほども申しましたのです。この点で御了解を願いたい。
  80. 安井謙

    ○安井謙君 バスケツト方式がいい、悪いということになれば、これはまあ議論になるので、今議論をするつもりもないですが、さつき緊急調整の話も出ましたが。これはまあ今が緊急調整の段階かどうかは別として、相当第三者的に、社会的経済的に非常に混乱しておる事態にある。まあこの際一つそういう意味で、まあある程度態度を留保するといいますか、ストを避けた方式でこれを解決されるというような気持なり、余地はありませんか。
  81. 田中章

    参考人(田中章君) 主体的の問題が結論的に申しますと解決されないうちは、ストライキを解くということにはならんと思うのです。ただ、これは一体今後主体的な問題の範囲がどの程度の問題であり、あとに残つた問題は余り重要でない。これは十分話合いでできるという形の中で、そのときの状態を見ませんと、これはなかなか将来の戦術にも関連する問題ですから、なかなか申上げかねるのですが、これはやはり今後の第三者の動きとか、経営者の動き、その示して来る内容によつて組合側が判断する以外にはない。ですから前提をつけて、只今の御質疑にお答えをすることは、現状の私の立場上は許されないと思います。
  82. 野田卯一

    ○野田卯一君 ちよつと質問しますが、先ほど一番初めの事の起りですね。組合側要求提出が八月十三日ですか。
  83. 田中章

    参考人(田中章君) そうです。
  84. 野田卯一

    ○野田卯一君 例の標準作業量の問題、是正の問題を連盟側が先に切出して、それから組合のほうから八月の申出でが起つたのですか。それらの事の順序、前後の関係、ちよつとはつきりしないのですが……。
  85. 田中章

    参考人(田中章君) それは私ども要求書は確かに八月の十三日に出てるわけです。これに基いて確かに八月の十五日だと記憶しておりますが、第一回の団交が持たれて、これは何もやつておりません。ただ交渉委員の名簿を交換しただけであります。私ども要求内容には、この現行の作業量にはちよつと矛盾がある。だからこれにすぐメスを加えてみようじやないかという内容になつております。つまり、時間修正を一時間四十二分で作業量というものと標準作業量というものをどういうふうに勘案して割切るかという問題について論議をしたいという考え方から、若干これに触れております。併しそれは八月十五日の交渉委員団の名簿交換のときにも別に詳しく触れておりませんし、一応アウトラインの案をべらべら読み上げただけで、その日は別れておる。ところが次の団交で、もう論議無様ということに相成つて、それからすぐ連盟の、先ほど申しました考え方が出て来たわけです。
  86. 野田卯一

    ○野田卯一君 そのときに八割案が出て来たのですか。
  87. 田中章

    参考人(田中章君) そうです。八割というのは今までの標準作業量というものを一〇〇といたしますと、当然これは坑内夫の採炭夫でさえ五十分残業しておるのですから、坑外夫は一時間四十二分残業しておる。採炭夫でない坑外夫は恐らく採炭夫より残業が多くなつているわけですね。ですからこういう状態をどう見るかという問題について、実は触れたかつたわけです。それがそういうふうに、一方的に行つてしまつたので、十分な議論もできないで、団体交渉というものは、てんやわんやになつてしまつたという状態が当つておると思うのですが、そのほかにどういう……。
  88. 野田卯一

    ○野田卯一君 私は何か組合側に対して連盟側から、初め積極的に出て、それを組合側が受けて立つている形になつておるのか、組合側が……。
  89. 田中章

    参考人(田中章君) それは連盟側ですよ。こちらは明らかに受けて……。
  90. 野田卯一

    ○野田卯一君 時間的関係がわかつたら、それをはつきりしてもらいたい。
  91. 田中章

    参考人(田中章君) それは九月の一日から組合の具体的な要求説明内容に入ろうとしたところが、組合側の案は検討する余地がない。我が方の考え方はこうであるということで、向うは切出したのですから、こちらは当然それを受けて立つた形です。
  92. 野田卯一

    ○野田卯一君 出したのが八月十三日ですから、時間の関係、よくわかりました。
  93. 田中章

    参考人(田中章君) それから連盟が言つておる八〇%というものが、今までの操作が一〇〇%であれば、当然こういうふうに残業しておるのですから、能率が一一五%は上つておるわけですね。この上つた一五%を一〇〇%に足してくれ、そうしなければ今までの金額はもらえない、そういうわけなんです。
  94. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 ちよつと一つ最後にお聞きしておきたいのですが、電産の場合でもそういうことが言われたのですが、今度の炭労の場合でも、あなたがたの説明しておるように、又私どもも一部知つておるように、儲かつておる炭坑がある。ところが、労働者の建前から、人道的な建前から行くならば、一定の労働量において同一賃金を支払つて行くのが当然の方式でなければならんのであるけれども、ややもすると経営者の中には労働量というものを無視して、経営の実態から労働賃金を割出して行くという行き方が多分にあるわけですね。そういう場合にそういうようなことが中心になつて、電産のような場合は地方交渉にしてくれということを言つておるのだが、炭労のような場合でも、一部の癌となつているものにそういう面がありはしないかということ、休業中の炭坑であるとか、或いは弱小炭坑は、実際には金を払つて行きたい。併しうちの経営状態では、これは払えないと、我々の曾つて主張して来たように、こうした日本の基幹産業は国営にすべしという建前からいつて、国家経営にでもなつて行くならば、そういうものがプール計算になつていいのだが、今の炭坑の実態からいつて、そういう要求には勿論まだ応じて来ないが、応じた場合でも払えんというような弱小炭坑、これに対して経営者はどういう手を打つておるか、例えば政府に補助金の要求をしておるのかどうか。或いは労働組合としては、そういうような炭坑に働いておる諸君としては、どういうような手を打つておるのか、その点何か御見解があつたら聞かして頂きたい。
  95. 田中章

    参考人(田中章君) その点は今の闘争形態を説明するのを忘れましたが、今言われました弱小炭坑ですね、これはもう私ども十分……苦しいのもあるし、中には企業は小さいけれども利潤率はよい、こういうのもあります。これは個々まちまちであります。併しこれは中央大手の十七社と画一的にやるということは非常にこれは危険だ。我々もまあ……、私も北海道のほうに三年ばかりおりましたが、自分みずから出かけて行つて、融資の斡旋をしてやらなければ労働者賃金を払えない、こういう山もありましたことを自分は承知しております。従つて今回の場合には、地方に散在するそれらの中小炭坑は、十分にその中小炭坑の中で機動性を持つて物事を処理できるように、これらの問題は一切中央本部にこの指導調整を任しておく。別にこの炭坑は今まで五十何日間もストライキつたわけでなく、若干はやりましたが……、その企業の実態と、中小企業の持つ矛盾の解決というものを十分我々は勘案してやつております。現在私が申しました五十日間のストライキを繰返しておるのは大手十七社、これが二十四万五千ばかりでありますが、これがやつておる。それで大手十七社の状態で今の組合側の立場から或る程度行なつているのですが、一顧だに与えないという状態である。こちらはどうかというと、これは全然そういう状態でない。そういう我々データを持つておる、そういう確信を持つておるわけです。それでどういう……、融資その他の点についての経済がやられておるかということは、これは経営者に聞いて頂けばそれぞれわかるわけですが、まあそれぞれやつておるわけです。例えば大手十七社の構成石炭協会というものができておる、そのほかに、鉱業協会というものがありまして、これは武内禮藏さんなんかやつておるのですが、この十七社のあれにしてもたしか今度の補正予算で三十一億だつたと記憶しております。要求は四十億だつたと思いますが、それから明年度予算のほうはまだ明確になつていない、そういう点と、それからこれは昨日握りました情報ですが、大体年末の賞与或いはベースその他のいろいろな点を考えて市中銀行から九十億円の金の借入れの予約はもう済んでおる。併も一般に苦しい、何といいますか、状態にあるところ、或いは又相当経理に余裕がありましても相当今の開発銀行というやつは利用しておるわけです。併し大手十九社の中でこれも調査して頂けばわかりますが、開発銀行から融資を受けておるという炭鉱は一社くらいしかないのですよ。殆んど借りておりません。殆んど適当にやり得る楽な状態にある、現在電産のように非常に企業形態が楽になつて来ておるところでも、電源開発その他については外資導入とかその他のいろいろな方法によつてやらなければならないという現在の状態にもかかわらず、石炭の業者はそういうものはない。そういう状態を見ましても私どもは、会社経営状態がそう苦しいというふうには判断できないわけであります。それで今の要求案というものは結果的にどういうふうに落ちつくかわかりませんが、払えないという状態ではない。まあ電産の場合のようにそういう企業別経理状態が違う。そういうことで企業別交渉をやつて来るのは、先ほど申しましたように統一組織の破壊というものを、むしろその根抵に根強く考えている。こういう考え方が経理状態如何にかかわらず、そういうものを意識的に表面に持ち出して来る傾向が、最近特に強く顕著になつて来ている。こういう点が非常に私どもの関心を最近集めておるわけでありますが、そういう戦略的な要素が多分にあるにおいがいたしますので、私どもはそのように判断しておるわけであります。
  96. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは以上を以ちまて炭労しストに関する参考人意見聴取を終ります。長い間御苦労様でございました。  なおこの際労働省から若干の経緯の説明を聞きたいと考えましたけれども労働省の都合もございまして、この点は不可能になりましたので、後日改めて聴取いたしたいと思います。  委員会にこれを以て散会いたします。    午後四時二十三分散会