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1953-03-10 第15回国会 参議院 予算委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ———————————————— 昭和二十八年三月十日(火曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩沢 忠恭君    理事            高橋進太郎君            左藤 義詮君            内村 清次君            永井純一郎君            西田 隆男君            岩木 哲夫君            岩間 正男君    委員            石川 榮一君            石坂 豊一君            石原幹市郎君           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大矢半次郎君            川村 松助君            郡  祐一君            駒井 藤平君            杉原 荒太君            鈴木 恭一君            山本 米治君            石黒 忠篤君            片柳 眞吉君            荒木正三郎君            羽生 三七君            三輪 貞治君            曾祢  益君            棚橋 小虎君            堂森 芳夫君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            千田  正君   国務大臣    大 蔵 大 臣 向井 忠晴君   政府委員    大蔵政務次官  愛知 揆一君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局総    務課長     佐藤 一郎君    大蔵省理財局長 石田  正君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   公述人    経済同友会事務    局長      郷司 浩平君    国民経済研究協    会理事     藤井 米三君   千代田銀行頭取 千金良宗三郎君    東京大学経済学    部教授     武田 隆夫君    日本労働組合総    評議会常任幹事 野本 正三君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これより公聴会を開きます。  御出席公述人各位に御挨拶を申上げます。本日は御多忙中のところわざわざ御出席を頂きまして厚く御礼を申上げます。問題は昭和二十八年度予算について公述を願うのでありますが、時間は大体三十分程度でお願いを申します。経済同友会事務局長郷司浩平君。
  3. 郷司浩平

    公述人郷司浩平君) 経済同友会郷司でございます。二十八年度予算案につきましては、すでに衆議院公聴会初め各言論機関におきましても相当取上げておりますので、私は本日は主として資本蓄積の面から見た本年度予算ということについて二、三所見を申上げて見たいと思います。今度の予算総額につきまして、これがインフレ予算かどうかというような問題が起つておりますが、この点につきましては私どもは少しも心配しておらない。第一に本年度予算、本年、二十八年度でございますが、特別一般会計を含めまして主計局長の発表によりますと、千三百二十一億の撒布超過がある、こういう数字が示されておりますが、この中で資金運用部短期公債日銀に売却すること、これは元来は流動資金でありまして自動的にいつか戻つて来るものなんで、これはインフレ要因にはならんと見て差支えないわけであります。ついでに申上げますと、戦前はこの短期国債、即ち大蔵省証券というものはこれは日銀に売却して、日銀がこれを金融の調整に使う、資金がダブつくときはこれを市場から買上げて締める、市中資金が枯渇した場合は売出して締める、こういう操作をやつて来たものでありますが、今日経済界根本事情は必ずしも権衡にはなつておりませんが、併し一応中間的な安定と言いますか、特に金融の面ではそういう安定の様相が現われて来ておる、こういう場合にはこの短期国債というものは、そういう金融操作に使うべきじやないか、こういうふうに私どもは考えるのであります。殊に政府予算国民所得の大きな部分を占めるという時期には、政府の支払、それから吸揚げの時期が非常にずれるわけであります。それが金融界延いては一般経済界に非常に大きな影響を与える。そういうときに政府資金操作を調節する意味においても短期国債金融に利用するということは望ましい、こういう点を、これは直接の予算の問題ではございませんがお考え願いたい。こういうふうに思います。  それから更に千三百二十一億のうちには外国為替が四千五百ドル殖えるという見通しをしております。これはいうまでもなく貿易尻がよくなる、輸出なり或いは特需が去年よりも殖え、そうして外貨の蓄積が殖えるという見通しでありますが、まあこの見通しも相当問題がある。現在のような輸出状況特需状況も含めまして、これは輸出のほうは去年よりも減るんじやないかという見通しが強いと思います。一方輸入のほうはそれは必需品が大部分でありますからこれは減らない。そういうことになりますと、逆に一面から撒布超過よりも引揚超過が来るのじやないかという懸念すらある。ただ金融の面から申しますと、仮にそうなつてもこれは政府撒布超過がそれだけ減るわけでありますから、インフレ要素というものはそれだけ緩和されて来る。いずれにしましても全体として見まして日本の現在の経済界は一種の不況期にあるわけです。生産設備労働人口も余つている、こういう時期に千三百億程度のものが余分に支払われてもそのためにインフレを起すということはあり得ない。こういうふうに私どもは考えておるわけであります。  次にこの予算内容につきまして、二、三の点を申上げて見たいと思いますが、第一には今度御承知のように投資特別会計が設置されることになるわけでありますが、その予算が三千五十五億と見積られております。これは昨年の投資会計会計じやありませんが、投資に比べまして二百五十六億増加するわけであります。その内訳を見ますと、電力とか、鉄道、通信、地方債、こういうこの政府機関投資が昨年に比べて三百九十億殖える。ところがその半面いわばまあ民間投資の範疇に属すると言つてもいいでありましようが、開発銀行輸出入銀行、それから金融債、こういうこの民間投資される、まあ無論政府投資もこれは究極においては民間投資されるわけでありますが、そういう開銀輸出入銀行金融債、これらのものは逆に昨年よりも百六十億減つておる。ここに問題があると思うのであります。無論この政府投資ということは、これは反対すべき理由は勿論ないのでありますが、そのためにこの民間投資が犠牲になるということは、この際日本経済現状から見て好ましくない、こういうように私どもは考えるのであります。御承知のように日本の現在当面しておる最も大きな経済的な問題は、輸出を振興しなきやならん。然るに輸出はむしろじり貧の状況にある。これを何とか打開しなければ、日本国民経済はやつて行けない、こういう状況にあるわけであります。輸出振興についてはあとでも多少触れますけれども、殆んど手を打つておらない。而も現在の市況の状況を見ますと、普通の商品輸出はこれはなかなか困難な事情が多い。併しプラント輸出ならばこれは相当見込がある。こういう報告を受けますが、その金融をつける輸出入銀行、これなどはもつと多量に政府が出資して、どしどしプラント輸出をやらせる、ドイツなどはそういう方式でやつているようでありますが、こういうことが必要である。いま一つの問題は、輸出を妨げておる大きな原因日本のこの産業コストが高い。つまり値段の上で競争ができない、こういう点であります。これにはまあいろいろな方策がありますが、やはり機械老朽化ということが大きな問題になつている。これを合理化するには外国から新らしい機械を輸入するなり、或いは国内で設備の更新をするなり、そういうことをやる以外にない。ただこれは自己資金では現在なかなか進まないという状況にあるのであります。これらの点について開発銀行への出資ということはもつと殖やすべきである。それが逆に減つているということはこれは甚だ遺憾なことである。再検討を要するのではないかと、こういうふうに考える次第でございます。  それから次に公共事業及び食糧増産費の問題でありますが、これは御承知のように二十八年度には公共事業関係で千二十一億、食糧増産費が四百九十二億、合計して千五百十三億が計上されております。昨年に比べて二百七十二億の増加でありますが、これは勿論公共事業も必要であれば、食糧増産も必要なことはこれはわかりきつたことで、国民の誰一人反対するものはないと思います。問題はこれだけ大きな予算をとるからには、その運用について従来のような行き方でいいかどうか、こういう点に再検討を要するのではないか、こういうふうに考えるのであります。私もこの使い方について詳しく調べたわけじやありませんが、伝えられるところによると、これらの費用のうちに大体中間で消える費用が四〇%或いは五〇%以上というようなことも場合によつては言われておりますが、要するに最終的にこれが建設費になつて来るというネットの金額は、大体予算の半分程度と見ていいのじやないか、こういうことも一般的に言われておるようであります。その上にいろいろなまあスキャンダルが伝えられておる。一昨年でありましたか、北陸の或る地方で中学生が吊橋の上に乗つて、それが落ちて負傷者を出したことがあります。あれも原因を調べて見ると、公共事業費をとるために故意に橋を傷めた、こういうようなことが新聞に伝わつておりますが、昨年は台風がなくて、日本にとつて非常に仕合せだつたわけでありますが、或る県では台風がなければ災害復旧費がとれないということで、雨乞いをしたということまでも、私真偽保証の限りではありませんが、国の富を予算をとるために破壊するというようなことすら行われておる。最近の会計検査院報告を見ましても、部分的な調査でありますけれども、その結果だけでも我々国民としては目に余るものがある。こういうふうな使い方でいいかどうか。国民血税を又国民のために還元する事業でありますから、それが中間で相当部分消える、而もそれが官吏なり政党なりの汚職の温床になつている、腐敗原因になつているということは、これは誠に戒心すべきことで、この厖大な公共事業費なり食糧増産費使途については、この際思い切つた措置が必要ではないか、ただ会計検査院がサンプル的に事後の経理調査だけやるのでは、これはいけないので、やはり予算とつたら、その金がどう流れておるか、金の使途を追究するような強力な組織が必要ではないか、こういうふうに考えるのであります。現在の金の使い方は、御承知のように、予算をとるまではいろいろな問題を起しますが、一遍予算をとつてしまえば、それがそれらを担当する人たちの全く自由になる、外からは干渉はない、せいぜいあとで会計検査院の検査があるだけ、こういうふうな行き方では誠に困つたものであり、これが百億か二百億程度金額ならばまだしもでありますが、すでに千五百億を突破するという大きな金額になつておりますので、これは是非一つ何らかの形で、これらの金が十分有効に利用されて、資本の効率を十二分に発揮し得るような、而も一面そういうことが原因になつて腐敗をもたらさんような仕組一つ考えて頂きたい、こういうふうに思うわけであります。  それから次に歳入の面から、主として税制の問題でございますが、これも一つどもの考えている資本蓄積関係から、一、二の問題を取上げて見たいと、こう思うのであります。今度の二十八年度予算を見ますと、税制改正所得税が大幅に減税されておる。これもちよつと我々に解しかねる点は、所得税減税恒久財源が減ることでありますが、それに見合つて恒久支出も減らなければならん、これは一方においてはそういう措置がない、従来までの余つている金を使うというような臨時的な措置をやつているのであります。これも税制上の矛盾ではないかと思うのでありますが、それはとにかくとしまして所得税の軽減と共に法人税関係も、或る程度減税が計上されております。第一に法人特別償却の範囲を殖やす、これによつて二十一億政府が税源を失うわけであります。それから更に貸倒れ準備金とか、価格変動準備金というような、企業内部保留に対してこれも約八十億程度減税ということになるわけであります。それから第三次再評価、この実行に関する税の喪失が十六億、それから貿易商社関係これが五億、合計法人関係内部蓄積を促進するために百二十億というものが計上されておる。これは非常に方針としてはこの際時宜を得たととであると思いますが、ただ余りに金額が少い、更にその半面交際費否認で、会社交際費三五%、私は交際費そのもの否認を反対するわけではありませんが、会社経理全体から見ますと、これが相殺される。その上申三次再評価で一方において税金収入が減りますけれども、一方において再評価税の六%というものが収入になりて来る、それが十五億、合計五十億こいうものが法人関係から新たに取上られるということになるわけでありますから、百二十億から五十億を引きますと、正味法人資産内容を充実するために操作される税金、軽減される税金というものは僅かに七十億程度一般会計予算の一%にも当らんという程度で、誠に雀の涙というほかはないのでありますが、この点につきましても我々としては非常に不満を持つております。現在日本企業は表面は成るほど生産戦前に比べて一三〇数%まで戦前を上廻つておりますが、併し企業内容はどうかというと、これは、まあことごとくぼろ会社で、先だつてアメリカの或る一流会社の社長が日本に見えましたときに日本一流会社の考課状を示しますと、それを一覧して、これは全部破産会社だと言われたそうであります。それほど企業内容は不健全だ、何と言つて民間企業というものが国民生産力の基礎をなしておるわけでありますから、これが不健全であるということは延いては国民全体が不健全であるということになるわけでありますから、何とかこれを健全にする努力を払わなければならん。無論これは企業家自身でやるべき面が多々あるわけでありますが、同時にこれについては政府もこれを健全化すという方向に進めて行かなければ困る。殊に日本におきましては、戦争から戦後に当りまして、日本企業資産内容を空つぽにするような方法をとつて来ておる。例えば戦時補償の問題、これなどはもう全部ふんだくつた、これはまあその当時の情勢としては一応止むを得ないといたしましても、それからインフレーシヨンの時代におきまして、これはインフレーシヨンによつてみんな会社利益は出ております、併しこれは仮想利益であつて、実態は赤字なんでありますから、その仮想利益差益金に対する課税で以て殆んど政府が取上げてしまつた、当然社内に保留すべき財源政府が召し上げてしまう、自然、会社側が如何に努力しても企業内容というものは健全にならない。これが従来の簡単に言いますと経過でございます。これがまあ国際競争日本が出て行く上において非常に大きな競争力の減殺となつておる。例えば船の問題など最もそれを端的に物語つておりますが、イギリス日本と同じように戦時中は商船を多く失いました。併しそれに対して政府戦時補償をやつたのである。日本違つてそれだけの余裕があつたことなんでありますが、その結果、現在ではどうなつておるかというと、日本船会社造船を、船を造るのに全部借金してやつておる、まあ多少増資をやつておりますが、これは雀の涙で、開銀を初め市中銀行から金を借りてやつておる。ところがイギリスでは造船資金というものは大半社内保留であつて自己資金で以てやつておる。これは一文も利子は払わないで済むが、その結果運航費に占める金利負担というのはイギリスにおいては、これは正確なところは記憶しておりませんが、大体二%ぐらいだつたと思います。日本がそれが開銀の七分五厘、利子も含めて九分九厘ぐらいに当つておる。船では固定設備が多いのでありますから金利負担運航費の五割くらいに相当しますが、これは、金利負担にこれだけの差があるのではこれでは到底競争にならない。これは船の例であります。一般産業におきましても大体同様でありまして、戦前自己資金が七に対して借入資本が三というのがノーマルな割合でありましたが、現在では自己資金が殆んど逆になつておる。三・五から、借入資本が六・五くらいになつておる。それだけ企業は不健全になつておる。何といつて国民経済の本はこういう民間企業にあるのであるからこの企業内容健全化するためには例えば低金利政策も必要で、殊に税金の面において社内保留を極力推進するという政策をとつて欲しい。その半面には無論配当制限をすることも結構であるが、社外にそれが出ることを防止する方法も無論やるべきことであるが、同時に幾ら会社で以て利益を挙げてもその大半税金にとられて行く、こういう従来のやり方は非常にいかない。やはり社内にこれを相当部分保留できるような仕組にしなければ、これは経営者経営意欲も減殺されまして経営内容の不健全ということはこれは改善されない。こういうふうに私は思いますので、この点につきましてはもつと思い切つた措置が必要である。勿論現在この非常に苦しい財政ありますからその企業内部を健全にするためにばかり税金を軽くしたり、その他の方法をとることは困難でありますが、併し一面においては相当不急不要の費用もある。行政整理も掛声ばかりで殆んどやられておらない。そういう無駄もあるわけでありますから、そういうものを思い切つて強行してそのできた余裕を以て、これは国民経済全体の健全化に充てる、健康回復に充てる、こういう措置予算面においても税制上においても望ましい、こういうふうに考える次第であります。  大体我々の印象から言いますと、今度の予算はよく世間で重点がないというようなことを言われておりますが、変つた言葉で申しますと、総花主義で、どうも腕力の強い部分がたくさんとつておく、腕力のないところは如何に国民経済全体から言つて重要であつても、そのほうは軽く扱われておる。こういう印象を受けるのであります。国民血税から成立つこの日本予算というものがそういう形で以て編成されるということは非常に残念なことであります。もうすでに、電力を初め農業の増産でも、その他の計画産業政策にしても、五カ年計画なり三年計画というものがそろそろ基幹的な産業については出ておる。自由党の諸君も、或いは政府も或る意味計画経済総合性のある計画経済というものはこれは必至と、必ずやらなければならないということを認めておるわけであります。それは現在のところはまだ経済審議庁でやられておる程度で、これが政策の面にはなかなか出て来ないように思われますが、特に予算の面においてはそういうものと合致した組方がされておらないように思います。依然として従来のこの「勢力」の関係から予算が編成されておる、こういう印象を率直に言いますと受けるのであります。これは根本の問題でありますが、まあ私は今日は財界の一人として今度の予算の中でいわゆる資本蓄積の面が欠けておるという点を申上げて、皆様の御参考に供したいと思います。
  4. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 御質疑はございませんか。
  5. 左藤義詮

    左藤義詮君 只今伺いましたお話の中で、輸出品コストを引下げるためにも、或いは企業内容の不健全を是正するためにも、ちよつとお話がありましたが、現在非常に金融資本オーバーローンその他で産業資本を圧迫している。これはやはり金利を引下げるということが非常に大事だと思うのですが、これに対するお考え、又それ具体化するためには実際の経済の衝にお当りになつている現状から、どういうような方策をお持ちになり、それを又どういうふうに予算その他を通じて、或いは税制その他いろいろな方面からお考えになつているか伺いたいと思います。
  6. 郷司浩平

    公述人郷司浩平君) 金利の問題につきましては、例えば政府資金金利を安くする。開発銀行なり輸出入銀行、これは無論必要ではあると思いますが、これはそういうことで金利が、全体の市中金利が下るとは思えない。むしろ現在の根本に遡つて金融需給関係を調整して行く、これ以外に根本策はないと思うのでありますが、この需給関係につきまして、一般では日本資本蓄積が少いから、金利が高いのだ、こういう議論が一般的でありますが、我々は必ずしもそう思わないのであります。無論資本絶体量は少いのでありますが、その少い中から政府は従来超均衡予算によつて引揚げた金、これが市中を非常に圧迫しておるのであります。これが市中に還元されれば、恐らく今の金利というものは二厘或いは三厘くらいは下るのではないか、こういうふうに考える。そのやり方としましては、例えば今日のインベントリー・フアイナンスで引揚げた金、これが大体千二、三百億に上るかと思いますが、これは正確に調べておりませんが、そのくらいあるように聞いておりますが、仮にその民間から引揚じたそれだけの金を民間に還元する、例えば開発銀行にこれを出資するなり融資するなりして、その金を以て銀行オーバーローンを解消するという方法、これは細かいことは技術的になりますから触れませんが、それをやれば従来の引揚げられたその政府資金民間還元によつて金融は緩み、金利は相当下るだろう。そのほかに貯蓄の問題、こういう問題も、現在貯蓄しなければならんということは、これは誰しも考えておることでありますが、それに対して租税上思い切つた措置をとる、こういうことも考えられるわけでありますが、併しそれは比較的小さい問題であります。私は先ほど申上げましたように——資金の量を不足さしておる原因を、全般的に不足させておる原因を鮮消する、これが一番効果的な方法じやないか、こういうように考えます。
  7. 内村清次

    内村清次君 只今インフレに対して心配要らないというような断定がされておつたようでありますが、今回のこの予算計画によりまして、前年度に比べて、いわゆる外国為替食糧管理特別会計の剰余の問題がありましよう。それから又繰越金の剰余問題もあるし、それから貿易関係費の余りが相当ある、こういうような面からいたしましても、それから国債発行もやつておる、部分的なインフレ要因というものが各所に起つて来やしないか、こういう懸念もあるわけですが、こういう対民間撒布超過に対しましての関係からいたしましても、どういうところで吸収をして、どういう原因でこのインフレは起らないという断定がされ」たか、この点を一つ
  8. 郷司浩平

    公述人郷司浩平君) これはインフレが起るか起らんかということは、これは断定するわけには行かないので、やはり見通しの問題でありますが、根本は、やはり現在の日本は数年前のこのインフレが高進して、超均衡予算が必要であつたときと比べまして、全く現在では逆に生産活動は余り振わない。設備は余つておる。特に労働人口などというものは余つておる。こういう場合に政府資金がここに若干投資されて、投入されてもその他に物価が上るとか、そういうインフレ的な要素は出て来ない。むしろそれよりも現在日本インフレを心配しなければならんという最も大きな点としては、この際労働賃金というものが無暗に上つて行く。国民消費生活というものが日本経済力を超えて向上する、そういうような場合がこれは一番懸念される。昨年の国民の消費水準もたしか安本の計算では四から六くらいに見積つてあるのですが、これは逆に二三%というふうに予想以上に殖えている。これは勿論結構なことであります。国民生活がそれだけ向上するのでありますから……。併しこれが経済力の限界を超えて向上する、これは又インフレになつて労働者の生活を脅やかし、逆効果になりますから、そういう点から、これは予算と直接関係ないことでありますが、心配になる点はそういう点だろうと思います。こういうふうに思います。それから政府撒布超過資金をどうやつて吸上げるかという問題、これはやはり紐を付けるわけに行きませんから、国民全体が貯蓄しやすいような税制その他の点で、そういうルートを拡げて行く、これ以外に方法はないんじやないか、こういうふうに考えております。
  9. 内村清次

    内村清次君 少し不的確な点もあるようですが、併しここは議論の場所じやないのでございますから、この点は差控えますが、ただ問題は、本年度予算におきまして、前年度から消費面に対する金額の差額ですね。これは確かに八百億程度ばかりあるように私は考えております。この問題だけでなくして、ほかの撒布超過関係から来るのと、それから輸出の停頓から来るので、この面から幾らか吸収いたしましても、やはりその物価というものは漸騰の傾向にある。その点に対しましてはどういう考えですかね。この点を先ず併せてお願いいたしまして、と同時に漸騰の関係と、それから部分的なインフレというのがやはり要因というものはたくさん残つておりはしないか、こういう点に対しまして私たちは懸念しているわけですが、もう少し一つ詳しく……。
  10. 郷司浩平

    公述人郷司浩平君) 漸騰の傾向というのは、どういうふうな……。
  11. 内村清次

    内村清次君 物価が少しずつ高くなる……。
  12. 郷司浩平

    公述人郷司浩平君) その原因は……。
  13. 内村清次

    内村清次君 消費関係からして……。
  14. 郷司浩平

    公述人郷司浩平君) まあ私どもは必ずしも漸騰の傾向とは見ておらないんですがね。それは消費面から言いましても、成るほど消費の購買力というものは殖えておりましよう、併し同時に食糧を別にすれば特にまあ消費の大宗を占める被服類、こういうものは現在生産過剰になつている、相当余つているという状況ですから、多少そこに消費が殖えても、そのために物価が高くなるということは考えられない。食糧の問題は、これだけはまあ購買力が殖えたからといつて、そのために食糧の量が殖えるわけでもありませんから、そのために食糧がうんと上るということも考えられない。まあ衣食住の国民の消費の問題で一番今不足しているのは住宅だろうと思いますが、これも極く限られた範囲でしか住宅問題は問題にならない。そこでその面からインフレが起るということも考えられない。私どもはむしろこの消費の面から言うと、物価は横這い乃至は多少は下りはしないか、こういうふうに思います。生産財のほうは、これはまあ従来相当投資が行われましたが、現在は財界の不況で以て各企業とも極力設備の拡張を手控える、例外はありますけれども、そういう傾向でありますから、これ又その方面の需給関係から生産財の物価が上るということは考えられない。ただ海外から来る影響は別ですけれども、この海外の物価もむしろ今後は若干下るのじやないかという傾向にあるように思われますがね。上るというふうには考えない。
  15. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 御質問がなければ、次に、国民経済研究協会理事藤井米三君。
  16. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) 地方財政の見地から今年の予算について何か述べてもらいたいという御依頼でありましたので、問題をその範囲に限つて申上げたいと思います。  初めに、昭和二十六年度の決算見込というのが自治庁のほうでできておりますので、それと、それから今度の二十八年度の国の予算と関連しての地方、財政計画との数字を若干の部分について比較してみたいと思います。二十六年度を取りましたのは、これは決算見込のできている一番最近の年であるからでありまするが、又、二十七年の三月、御承知のように即ち二十六会計年度のうちに、先ほども郷司さんからお話がありましたように、日本経済というものは一応頭打ちになつて、それまで戦後の日本経済の復興ということは相当目覚しいものがありましたけれども、あそこで大体頭打ちになりまして、それ以後貿易も振わず、経済が沈滞しているということで、これより以上どういうふうに伸ばしたらいいかということはなかなか今いい名案がないというのが実情だと思うのであります。そういう実情でありまするから、一応我々は戦後日本経済力の到達し得た限度というものが二十六年度であるということを一つの目標において考えるということが私はいいのじやないかと思うのであります。その意味におきまして、やはり二十六年を見ることが必要じやないかと思います。  二十六年度地方財政の規模は六千六百八十七億でありまして、二十八年度地方財政計画は八千四百十八億で、千七百三十一億、二六%増加しておるのでありまするが、経済審議庁国民所得の予想を立てておるのでは、二十六年度に比して二十八年度は一七%の増加であり、国の一般会計の財政規模は七千九百億から九千五百億ですか、二一%の増加であります。即ち国民所得の伸び方より国の財政はより膨脹し、その国の財政より地方財政は又より膨脹しているという恰好になつております。而も国民所得が二十八年度において、審議庁の予想まで伸び得るかどうかについてはかなり疑問が持たれており、又曾つてラジオの放送討論会において水田自由党の政調会長、今度の経済審議庁の長官ですが、このかたは、二十八年度の国の予算は限度一ぱいの予算で、もう補正予算を組む余地がないのだ、若し補正予算を又例年の通り組まなくてはならないとしたら、明らかに我々自由党の負けだということを言われたように私は聞きました。ですけれども、補正予算なしで国の今年の予算が済まし得られるかどうかというのもかなり今までの例から見ましても疑問であり、地方財政につきましては、あとでもだんだん申しまするけれども、各地方とも今年はひどく無理をしておりますので、恐らくこの金額だけでは済ますことはむずかしい  のではないかと思つております。では何で地方財政はこのように膨脹したかと申しますると、主なるものは人件費と公共事業費と公債費と、この三つであります。人件費はベース・アップの関係でありまするが、二十六年度より八千四十億、三八%の増加になつております。公共事業費は六百三十八億、四〇%の増加であり、公債費は百三十三億二六%、つまり二十六年度の二倍以上になつておるのであります。これに対し物件費その他の消耗的な費用は僅かに百十億、五%の増加であり、地方が単独にやることのできる投資的な事業、いわゆる単独事業費というものに至つては、二十六年度は六百五十九億、二十八年度が六百六十四億で、僅かに五%の増加にとどまつているのであります。こういう費目がすべて公共事業費と人件費と公債費のために圧迫されているという、ここに非常に無理をしているということで、即ち全く国の政策に基くところの給与の一般的な引上げと公共事業費と過去の任務の元利支払のために地方の財政はこのように膨らんでいるので、地方固有の事情によつて膨らんでいるのではないのであります。  次に、今度歳入のほうを見ますると、地方税は二千七百十九億から三千八十七億へと三百六十八億増加したにとどまつており、その他手数料、使用料或いは財産の売却等その他のいわゆる自由財源は却つて三百二十四億減じて、地方税と合せていわゆる自主財源地方が申している自主財源というものは僅かに四十四億の増加にとどまつております。平街交付金は五百二十億、それから国庫支出金は五百四十二億、合せて千六十二億国のほうから余計参ることになつておるのでありまするけれども、人件費と公共事業費の増加額を合せるとそれを超えて千四百八十四億になつておりまして、四百二十二億なお足りないということになります。この及ばないところを地方債を二十六年には五百三十三億から今度は九百十二億へ、即ち三百七十九億増加さして大体勘定を合せているという姿になつております。なお二十六年には歳出に対して歳入が超過して二百四十六億を剰余金として残しておりまするけれども、二十八年度はむしろ赤字で決算を了えなくちやならないと予想されております。地方債の激増ということは主として公共事業費の激増に基くのであります。公共事業は積極的な地方開発の事業でありますから、地方債によつて支弁されても差支えないということは確かに言えるのでありますけれども公共事業の三分の一は連年災害復旧のためであります。又公共事業以外に六三制その他の学校だとか、又病院だとかの整備費にも地方債は発行されており、それのみでなく、二十六年度は人件費との関連におきまして、同年末に八十億のいわゆる特別融資というものをやり、又先ほども二十七年度末の〇・二五カ月分の手当の支給と関連して五十億の二十七年度地方債の追加が行われたというふうな実情であつて、人件費の膨脹が地方債激増の原因ともなつているということは、これは非常に重大な事実なんでありまして、財政措置としては、誠に糊塗的な憂うべき傾向だと言わなければならないと思います。又二十八年度の財政計画では、国の直轄公共事業に関する地方負担分九十二億を地方が国に対して地方債を交付するということで措置されておるのであります。なぜそうしたかと言えば、従来この部分負担金には滞納が多かつたから延べ払を制度化したのだというふうに聞いておりまするが、これなども極めて問題でありまして交付公債ということになつても、結局地方は払わないじやないかと私は思います。つまりこういうことになつたのはどういうことかと申しますと、国の一般会計において赤字を出さぬでやつて行こうということの尻が結局こういうふうに地方財政のほうへ大きく尻を出すということになつているのではないだろうかと私は思います。そういうことをするよりは、私はむしろもつと平衡交付金をちやんと増額し、公共事業の国の直轄分の地方負担部分というものは制度的にやめて、むしろ国が全額持つて、そうしてなお公共事業でも地方の団体への補助率を増すというふうにして、地方の財政能力を考えて、公共事業の規模そのものを国のほうでやたらに膨脹さして地方がなかなかそれで消化し切れぬということではこれはいけないので、同じ赤字を出すのなら、国のほうで赤字を出したほうがいいのだと思います。地方債の発行ということになりますと、地方議会も直接のなんにはなりませんですから、簡単にこれを可決するという傾きがどこでも見られておりますけれども国債の発行となりますると、一般の注意がこのことに集中いたしますから、論議がやかましくなりまして、従つてそれだけ慎重を期するということになります。ですから同じ発行し、或いは増額しなければならないとしたら、むしろ国債を増加したほうがいいのじやないか、こういうふうに存じます。  まあ以上申上げたことは、地方財政一般のことでありまするが、地方財政といつてもいろいろありまして、市町村の財政もあれば、富裕団体の財政もあれば貧弱団体の財政もあるということでありまして、シヤウプ税制というものは御承知のように府県の立場に比して市町村の立場を財政的に税制のほうで強化しましたので、市町村財政にもいろいろ問題がありますけれども、概して言えば市町村のほうには問題は少くて都道府県のほうにあるのですけれども、府県のうちで東京、大阪などの大都市府県と農業県或いは貧弱県の対照というものは、これは非常に財政的に見て顕著なのでありまして、問題はむしろ農業県或いは財政力の貧弱な貧乏県というところにあるのであります。シヤウプ税制というものは事業税、入場税、遊興税というふうに都市的な種類の税のみを府県税といたしましたので、特にこういう傾向が強くなつておるのであります。東京と神奈川と愛知と京都と大阪と兵庫と福岡と、これを七大都市府県といたしますが、これは人口において丁度二十六年度では全国の三一%になつております。その税の収入においては七百六十億で、丁度全国府県税の五七%に及んでおります。又二十七年度の平衡交付金の仮算定におきましては、東京の基準財政収入は、丁度東北六県と東京と神奈川を除いた関東の五県と、北陸四県と長野と山梨と岐阜の東山三県に三重県を加えたものと丁度同じになつている。又二十七年度の同じ仮算定におきまして、東京と大阪は平衡交付金は交付されず、却つて基準財政収入のほうが基準財政需要を上廻り、その超過額は二つの都府を合せて百十億に上つておる。これは丁度福島県を除いた東北大県の平衡交付金総計と同じ数字であります。又大阪では二十六年度では二十九億の剰余金を出しておる。大都市ほと事業税でも遊興飲食税でも税の徴収は緩やかであります。農業県、豊かでない県ほど税は厳しく熱心に取つておる。それでもこれほどの開きがあるわけであります。二十八年度において都道府県税の収入は千二百七十七億と見られておりますが、このうちで七大都市府県の分を差引くと、恐らく五百五十億程度でありましようが、今度は府県債はどうなつたかというと、全体としては六百三十二億でありますけれども、このうちで七大都市分を除いて差引きますと、恐らく五百億くらいである。つまり府県税が、あとの三十九県におきましては税金が五百五十億人つて、そうして今度は地方債のほうも又五百億、大体税金と同じほど地方債を募集しなくちやならん、そういうような事情であります。  これを今度はもう少し個々の県について、若干の県について申上げますと、丁度今頃各地方で二十八年良の予算が審議中でありまするが、岩手県は財政の規模が七十八億です。明年度はどんなにいろいろ経費の節約を見込みましても、一億の赤字が今から予想されるので、これをどうやつて補填するかというので、事業税の税率を二割増して一四・四%にして一億二千万円、それから県有の模範林がありまして、これから七万三千石の木材を売つて六千万円、その他法定外の県税として岩手県では家畜税を課しておりますが、これを五判増徴して一千万円増収をやろうということで県の当局ではやつておりますけれども、商工会議所その他からかなり強い反対を受けておるやに聞いております。又長野県はすでに昭和二十六年度の決算において二億五千万円の赤字を出しておる。二十七年度の赤字は恐らく十億に止るだろうと言われておる次第で、二十八年度予算の編成には著しく困難を感じております。それで県庁の職制を現在の八部のところを七部か六部まで整理し、職員を四%減らし、それから需用費、物件費を一割減らし、市町村やその他の団体への各種の補助金が約一億円以上でありましたのを五千万円に減らし、各種の手数料なども二倍乃至二倍半に増額しようというようなことをやつております。又高知県は予算の規模が四十三億で、県税が五億五千万円に対し、県債も丁度同じほど五億五百万円を予定しております。そうして予算議会の当初において川村高知県知事は、本年度末の県債総額は二十億九千万円の巨額に達し、明年度の元利償還額は二億二千七百万円となり、県税収入の四一%を占めておる。このまま推移すると県財政は将来破綻する虞れがあるので、諸君の協力を得て真剣に対策を協議したいと申しております。それから又佐賀県知事は東京の知事会議から佐賀に帰つての新聞記者への談話として、二十七年度予算の締めくくりには各県とも困つており、各県の赤字見込を集計すると三百四十億に達する現状だ。本県も約六億要求しているが、政府の確答は得られなかつた。考えられる対策は、赤字融資、国家予算の繰上充用か、県予算を繰上げるか、三つしかない。二十八年度予算についても当初から各県赤字で自治庁の地方財政計画でもベース・アップ後は地方公務員は国家公務員より平均七百九十円高いとし、交付額を落しているので、それだけ純県費で充用しなければならない。手数料、授業料収入政府は実際より高く見積つている。政府の義務教育学校職員法案は財源は国費で責任を以てみるわけでなく、赤字のしわ寄せは県に持つて来ており、又中央集権化になつているので、知事会議では警察法と同様に反対している。法案内容は今になつてもあいまいなところが多く、知事が現実に処理する場合困ると申しております。  以上地方財政には極めて問題が多いので、今は静かによく反省整理してみるべきときだと存じます。先ほども申しました通り、我が国の戦後経済の回復と経済力というものは、一応二十六年度で限度に来ましたので、財政は経済を基盤とし経済に制約される性質のものでありますので、第一に、中央と地方を通じて財政規模をもうこれ以上膨らまさない。少くとも二八年度以上に増加しないことが必要だろうと存じます。それから第二に、先ほど郷司さんからもお話がありましたけれども、現在の経費内容と支出内容というものをよく整理してみることが必要であります。近来行政各省のセクシヨナリズム、繩張り争いと各政党の党略的な要求が近年頻りに財政規模を膨脹させ、地方財政の見地においてとても消化しきれないものとなつておりますので、このことはどうしても必要だと存じます。で、経費の内容をよく吟味し、成るべく生産費用を多くし、消費的経費を少くして、財政の規模はそのままにしておいて、而もそういうふうによく整理して予算の審議と同じくらいに決算の検討に熱意と努力を注ぐこと、経費支出がどういう効果をもたらし得ているかをよく反省、研究することが必要だと思います。第三に、只今地方制度調査会が設けられてはおりますが、地方財政の見地から、特に制度的によく研究して必要な改正はいたすべきときと存じます。私はシヤウプ税制は大綱において賛成であり、あの筋を崩すべきではないという意見でありますが、先ほども申しましたように、特に県の財政、殊に後進県、農業県の財政という点において考慮が払われることが少なかつたということはすでにあの税制当時からいろいろな学者からよく指摘されていたことでありまして、それが今ますますそういうことになつておることは先ほども申上げるような事情でありまして、ですからそういう点におきまして税制の改革やら、或いは平衡交付金制度の改善或いは各種の補助金の補助率の改訂などの点においてもう少し後進県或いは財政力の豊かでない県に対する措置を講ずる必要があると思います。そういうことに関連して全般の制度を一つ考え直して行く。それから第四番目に、そういう次第にて、今は全般に亘つていま一度よく研究反省してみるときであり、そういうことと関連して義務教育の問題も警察の問題も取上げなくちやいけないところを、政府がなぜ義務教育と警察を急いでこの議会に提出したかということは、私ども少しもその理由がわからないのでありまして、やはり政府としては一年この問題は延期して、その間慎重に審議をしてそうして各府県の意見もよく聞いてやることが私はいいのじやないかと思う。  で、私自身としては、義務教育費は従来の制度のままがいい。やはり平衡交付金の中に入れて、そうして平衡交付金制度というものを地方財政の中核といたしまして、各省の補助金の中でもな整理して、そうして平衡交付金の中に入れなくちやならないものか入れることのできるものがいろいろありまして、そういうところで各地方の財政需要と収入工合を按配して、そうして全体均衡の法則を貫いて行くということが必要だと思います。平衡交付金の制度は、日本人はどこにおりましても、どの地方団体に所属しても標準的な地方団体のサービスを受けることができる。又どういう地方団体に所属してもその所得と比例して特にほかの地方団体に所属するよりはより重い負担をさしてはいけないというような考え方で、極めて大事な制度だと思うのであります。それで義務教育費が平衡交付金の制度から外れることによりましていろいろな又各省自身は成るべく外したいと考えておるのでありますから、そうやつて平衡交付金制度というものが全般的に崩れる傾向があるということは、先ほども申しましたように、各府県地方団体と申しましても、財政力は極めてアンバランスが、ひどい状態のときに、私は甚だ遺憾なことであると思います。そういう意味におきまして、私自身は、依然続けて義務教育費は今までの制度のままで、むしろ平衡交付金の制度の中核とすると  いうことがいいという意見であります。  以上であります。
  17. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 御質疑はございませんか。別に御発言はありませんから、午前中はこれを以て暫時休憩いたしまして午後一時から再開いたします。    午前十一時四十三分休憩   —————————————    午後一時二十二分開会
  18. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これより午前に引続き公聴会を開きます。千代田銀行頭取千金良宗三郎君。
  19. 千金良宗三郎

    公述人(千金良宗三郎君) この二十八年度予算もすでに衆議院を通過いたしましたものでありまするからして、もう相当いろいろな論議は尽されたものと存じております。本院におきましてはまだ別な観点から御審議をなさることと存じますので、一通り私の考えておりますことを申上げることにいたします。  この来年度予算、これは例のドツジ・ラインが大幅に修正された。どういう点で修正されたかと申しますと、新たに国債を発行するということを認めた。又外為特別会計に対するインベントリー・フアイナンスを廃止する。なお又財政資金蓄積されたものを放出する。主として見返資金であるとか、或いは運用部の資金等で手持をしておりました国債日銀に売却する等によりまして資金が放出される、これがまあ大体千三百億円くらいだろうと、こう我々見ております。このようにドツジ・ラインのいわゆる超均衡財政が打ち破られたことは必ずしも悪いことじやない。ただこれを如何に使うかということが問題でありまするが、要するに資金の放出される場合にその使い方、これを私たち注意しておるのであります。予算を見ますると大体において消費性の支出が多いようでございます。例えば旧軍人の恩給を復活するとか、或いは給与ベースを上げるとか、又は義務教育の費用を全額国庫で負担するとか、まあいろいろそのほかにまだ細かい支出がありまするが、大体を通じまして消費性の支出が多い、こう考えます。それが結局時を得ませんとインフレの危険をうん醸するといわれるゆえんであります。それじや生産性の財政資金の支出はどうか。この方面をみますると、先ず財政投資、又は貿易振興のために必要な重要産業に対する長期資金、こういうものが必要なんでありまするが、この方面では開発銀行に対する支出が約五十一億円減つております。又運用資金金融債を引受けるこの資金が六十億円減つておるというような工合で、長期資金計画に支障を来す虞れが非常に懸念されておるのであります。従つてこの不生産的な支出をできるだけ削ることに努力して、重点的な産業資金の放出ということをもう少し図るべきではないか、こう考えております。又一方におきましてさように消費的な支出が多ければこれを金融の面で掬わなければならん。金融の面でこれを掬い取つて貯蓄の増強を努めるということに力を尽さなければならんのであります。この面におきましては、やはり税制の面でもう少し資本蓄積を優遇するという措置があつていいのだろう。これは最後に申述べまするが、ここに関連しておりますから申上げますが結局今の預金の利息、これに対して源泉徴収をする場合、今四〇%の課税がかかつております。これをもう少し減率しなければならん。又国民貯蓄組合の非課税限度は十万円でありますが、これもやはり倍額くらいに増額する必要があるだろうというふうに考えます。  一方歳入の面について見ますると本年は非常に切りつめた歳入に見受けられます。即ち一方では千九億円の税法上の減税を行なつております。それでもなお且つ九千六百五億円という本年度の税収を見込んでおる。即ち二百八十億円の増収を見込んでおるのであります。徴税はすでにぎりぎりのところまで行つておると思います。従つて一般経済界見通しも余り楽観できない1現状から見ますると、これ以上にいわゆる自然増収ということが見込まれるかどうかということは疑わしいのであります。殊に最近は法人収益の減退の傾向があります。又資本蓄積のために減税措置をとつております。いろいろかような税の減収の要素が多い現在におきまして、勿論給与ペースの引上げ等のための増収面もありますが、結局これが一杯に行くだろうというふうに考えられますので、この自然増収を見込まれないという現状におきまして、何か必要な経費が不意に起つた場合には、従来のような剰余金で賄うということはできない。従つてやはり新らしい歳入の措置が必要であるということは覚悟しなければならない、こう思われます。税収面で税法上の減税を行なつて国民負担を軽減するということは結構であります。現在この税の負担が最も重くかかつているのは、やはり勤労所得税を払う階級並びに法人であります。従つて減税を行うとしましても、この勤労所得階級に対する減税を多くし、又法人税を軽減するということは、結局国民貯蓄を増強する上において必要なのであります。従つて酒の税を減ずるとか、或いは物品税を減ずるとかいうようなことは、これは非常に後廻しにしていい問題だろうと思います。今日の我が国の租税の収入におきまして、直接税の割合が税収の六三%、間接桃でとれるのが三一%、その他が六%となつておりますが、かような税制はまあアメリカのごとき国では、或いは全体の経済程度が高いのでありますからしてよろしいだろうと思いまするが、日本のごとき国ではもう少し間接税の万で税収を上げることに考えたらどうか。我が国におきまして戦前経済状態がノーマルのときにおきましては、まあそのときを仮に昭和十一年頃としますると、大体税収の割合は直接税が四に対して間接税が六というような割でありました。やはり現在においては特にかようなふうに税収の構成を変える必要があるんではないか、こう思われます。殊に我が国のごとき物資の非常に不足しておる所におきましては、できるだけみんなが物資の消費を節約することが必要なのであります。従つて私たちの考え方としましては、セールス・タツクスのようなもの、取引税でありますが、これはもとより昔の取引税とは違う、最終段階の消費者から取るという意味で取引税のごときものが必要なんじやないか。もとより生活必需品であるとか、そういう物を買うときに取るんじやないのでありまして、そのほかのもので一人の人がたくさん金を使うという場合には税金を払う、これが一番必要なんじやないかしらん、こう思われます。このセールス・タツクスはイタリアでも、西ドイツでも、フランスでも、やはり国税としてやつております。相当な税収を上げております。又地方税としてはアメリカでもやつております。スイスでもやつております。さような富裕な国でもやつておるのであります。我が国におきましては、できるだけ金を使わない、物を使わない、使う人は税金を払う、それが必要なんだろうと思います。  最後に国債の発行について申上げますると、これは今度は本当の、ドツジ・ラインをはつきりと壊したものであります。併しこれは大蔵大臣もやはりそう好ましくないようなことを述べておられるようであります。やむを得ずやるのでありましようが、併し全くこれは一遍この安易な歳入の方法を考え出しますと、ついこれがだんだん深入りをするものであります。従つてできるだけ国債の発行ということは制限するということがいいじやないかと思います。なお又この発行条件を見ますると、今度のこの特別減税国債というようなものは、表向きな利廻りはともかくとしまして、実際の利廻りは個人で一割二分以上、法人で一割以上というような相当な高利なものであります。これは一部利息を払う代りに税金をまけてやるということでありますからして結局同じであります。かように高いものを今ここで発行するということは、金利体系からいつてもおかしなことであります。国庫の経済からいつても誠に不利益なことであります。まあかようなものはできるだけ制限するのがいいんじやないか、こう思われます。私の考えておりますことはざつとこれだけでございます。
  20. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 御質疑ございませんか。
  21. 岩間正男

    ○岩間正男君 さつきの、これはちよつとお話の中の言葉尻のようなことになるとまずいのでありますけれども、そういう意味ではなくて教育費ですね、教育費を何か消費的なもの、それから非生産的なものだというふうにお考えのようですけれども、この点如何でしようか。
  22. 千金良宗三郎

    公述人(千金良宗三郎君) 私の申上げたのは、つまり直接な消費という意味であつて生産に直接寄与しない、間接には勿論寄与するものであります。そういう意味であります。
  23. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあこの点、それは大体わかりますけれどもね、お説にそう言われているのですが、教育費の考え方というのは、従来そういう、ふうに消費的に考えられて来たのですが、併しこれは今度のまあアメリカ使節団第一回勧告、使節団が来まして勧告書の中にも教育費は少くともまあ長期に亘るこれは生産費である、投資だと、こういうようなことを述べております。更に新らしい態勢の中で考えますと、この教育費の投資というやつは、これはまあ産業的に見ても、一つの優秀な労働力を生産するというような観点から見ましても、消費じやなくて生産的な素質を非常に持つているのであります。ところが従来の考え方は、ともすると教育費というやつは、これは消費だ、殆んどこれは生産面には直接関係はないのだ、こういうふうに考えられて来たところに、今まで教育予算というものが国家予算の中でこの重要なパーセンテージを占めることができなかつた大きな原因じやないかと思うのであります。これは私見でありますが、少くとも植林なんかよりもつと短い期間に回収のできるところの生産費だというように教育を考えなければ、今後教育予算というものは非常に性格から考えまして、今までのような考え方ではやはり一つの立遅れになるんじやないかというように考えられるのですが、この点如何でしよう。
  24. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 岩間君の私見に対する批判を願うのですか。
  25. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは議論のあるところだと思うのです。実際国家財政の中で、教育予算というのは、実際消費的に扱われて来た、そういうところが非常に大きな問題だと考えるのですが。
  26. 内村清次

    内村清次君 二十八年度予算の中に、財政の支出総額が三千五百億ばかりあるわけですが、このために起債市場関係からいたしまして、民間産業設備資金この問題に対しまして相当圧迫するというようなことも考えられますが、その点はどうお考えですか。
  27. 千金良宗三郎

    公述人(千金良宗三郎君) 甚だ失礼でございますが、ちよつとはつきり……。
  28. 内村清次

    内村清次君 財政の投資資金というのが三千五百億組んであるわけです。そのために設備資金ですな、民間設備資金が相当銀行の窓口からいたしましても、それから起債方面の引受その他からいたしましても、この方に影響して相当圧迫されはしないか、こういう関係があるのです。
  29. 千金良宗三郎

    公述人(千金良宗三郎君) つまり財政資金投資をする、勿論これは我が国のごとき経済の規模が小さい国で、財政が直接経済といいますか金融に影響します。又金融の方でないと財政の方で出してもらうより仕方ない。こういうふうなことになるのでありますけれども、今の財政資金でも三千五百億という投資をする、それは一応一般会計の歳入から賄われるのであります。全体の財政規模が金融にどう影響するかということの問題だろうと思うのであります。財政投資そのものが直ぐと金融に影響するということじやないだろうと思いますが、もとより財政投資でそれだけ出してくれれば金融の面がそれだけ助かる、まあこういうわけであります。財政投資が減るということと金融でそれの補いをしなければならない。そういうことかと思います。
  30. 内村清次

    内村清次君 ちよつと問題点がまだ明確でないようですが、それではこれは前年の一月から十一月という関係の貯蓄高ですね、それから又本年の同期との比較がこれは確かに約三千億くらいの増加にはなつておるようですね。六三%かですね。そうすると今回の二十八年度関係にいたしましても、国民の貯蓄力と申しますか、この点に対しましてはどういうふうにお考えであるかどうか。それと関連いたしましてオーバーローンは相当やかましかつた問題ですが、これが幾らか解消したというような感じがするのですが、この点に対する見通し、その点を一つお伺いしたい。
  31. 千金良宗三郎

    公述人(千金良宗三郎君) 国民の貯蓄力と申しますと、これは結局何といいますか国富、ナシヨナル・インカムですね、これが殖える、そうするとそれに相応して貯蓄も殖える、現在までそうなつておるわけであります。従つてお説の通り本年度はやはり前年よりも普通ならば貯蓄も殖えるだろう、こう思われます。これは国民所得が殖えると同時に釣合つて殖えて行く、こういうことに考えられます。従つてそれだけ貯蓄されれば、本当の貯蓄としてそれが残れば、オーバーローンも徐除に解消されるというように思われます。
  32. 内村清次

    内村清次君 そこでこの産業設備資金の問題の貸出関係になつて来るのですが、この面が起債と関係をいたしまして、起債の償還その他と関係しましても圧迫するようなことにはならないかどうかということが第一点。それからもう一つ併せて時間の関係もありますが、今回の政府の考えておりまするこの貯蓄国債とそれから国鉄及び電信に関係する公債関係、公社の債券関係、こういうものが約八百億前後になるわけですが、これが銀行引受、こういう点に対しまして銀行関係ではどういうふうなこの債券の発行に対しましてのお考えがあるか、これも一つ併せて。
  33. 千金良宗三郎

    公述人(千金良宗三郎君) 国債はもとより今度はいわゆる減税国債というのでありますから全部が市中消化、市中と申しますか法人並びに個人によつて消化される。それからして公社債、これは二百二十億くらいでありましたか、これはまだはつきりと私たちの頭には知識が入つて来ないのでありますが、市中或いは特殊金融機関で引受けるのではないかと思います。それだけのものはもとより社債市場等に影響はしますけれども、これはその募債が時期等を調節してやることによつて消化できるのだろうと思う。もとより公社債のごときものは条件如何によつて普通の社債市場に大きな影響があると思います。
  34. 千田正

    ○千田正君 二十七年度予算においては、海外貿易を当初においては政府が或る程度楽観しておつた組み方をしておつたようでありますが、二十七年度の下半期から二十八年度に向つての貿易という問題に対しては相当政府が考えているような楽観的な態度を持てないように我々は考えるのであります。そういう点につきましては金融業の立場からどういうふうにお考えになつておりますかお伺いしたいと思います。
  35. 千金良宗三郎

    公述人(千金良宗三郎君) 私の私見でございますから金融機関全体を代表するということはどうも申上げかねるかと思います。結局貿易の不振というのは我が国の物価が高いこと、いろいろそのほかに貿易障害はいろいろございます。ガットの問題とか、そのほか支払超過の問題とかいろいろありましようが、根本的にはそういうようなものが仮に全部ガットに加盟できたとしても、一時の貿易障害が関税の面であるとかその他の面によつて緩和されるだけであつて、結局我が国の生産コストが海外よりも高ければ売れないと思います。その面で今年も余ほど物価の面を締めてかかりませんと貿易は相変らず不振であろう、こう思われます。
  36. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 酒税と物品税の減税は後廻しにした方がよいというお言葉でございましたが、物品税の方はさておくといたしまして、酒税の方は私の記憶ではお酒の税を下げますとたくさん飲んでくれますので結局税としての収入が殖えるというのが狙いであつたかと存じますけれども、これは間違つておりますでしようか。それからもう一つは実際問題といたしましては、やはり先生がお考えなさつていらつしやいますように、昨年でしたか地方税を改正いたしますときに入場税や飲食税は税率を下げますと、たくさん食べたり見たりしてくれまして、結局税としての収入が殖えるからというようなお言葉がございましたが、実際は地方財政の計算を聞いてみますと減収になつているようでございます。そうしてみますと、或いはお酒の場合も税率を下げたからといつて、必ずしも増収の結果が生まれてこないかも知れませんが、この結果のお見通しは如何でしよう。
  37. 千金良宗三郎

    公述人(千金良宗三郎君) 私実はその問題は専門外でありまして、お答えはようできないかと思いますけれども、常識で申しますと、お説の通り或る程度減税減税というよりも、むしろお酒ならお酒の場合に値段を下げれば消費が増すということは我々も考えられますが、或る程度限度があるのだろうと思います。
  38. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 次に東京大学経済学部教授武田隆夫君。
  39. 武田隆夫

    公述人(武田隆夫君) 只今御紹介に与りました東京大学の武田でございます。私が公述を求められましたところの御趣旨は、特定の利害を代表する者としてではなく、財政学をいささか専攻しております者といたしまして、この予算案につきまして大局的な或いは総合的な意見を言えという点にあつたというふうに理解しております。そこで私は成るべくいわゆる価値判断をまじえませんで、この予算が含んでおりますところの問題点を若干指摘いたしますと共に、それが日本経済にどういうような影響を及ぼすであろうかということについて、成るべく客観的な見通しを申述べてみたいと思います。でこの点におきまして、ほかの公述人のかたと若干異るところがあるかも知れません。併しながらその問題点をどういうふうに処理するか、或いはその客観的な見通しが若し正しいといたしますならば、それにつきましてどういうような態度をおとりになるかということは、いろいろな利害とか、いろいろな立場とか、或いはいろいろな階級とかを代表しておられますところの議員各位において、おのずから定まるであろうというふうに思われるのでありまして、私としては特に批判とか意見とか要望とかいうようなものはここでは申上げないつもりでございます。  さてこの予算が含んでいる問題点を指摘いたして、その影響についての見通しを述べるということになりますというと、どうしてもこの予算の背景をなしておりますところの日本経済状況、及びその経済をそうあらしめている点について、財政がどういうような関係を持つているかということについて、簡単に申述べなければならないわけでございます。戦争と、それから敗戦によりまして、日本資本主義、日本経済が非常に打撃を受けまして崩壊に瀕しておつた、それを復興し再建して来まする上におきまして、いろいろな方策がとられましたが、その中で財政が非常に大きな役割を演じておつたということは御承知の通りであります。それを私は、財政が、国民所得国民大衆のほうからインフレーシヨン或いは租税というような形で相当の資金を吸上げまして、それを資本蓄積という方向へ廻すという形で、日本の復興、再建ということが成し遂げられて来たのであろうというふうに理解しております。併しそういうふうにして再建されましたところの日本経済日本資本主義は、そういう手段の当然の結果といたしまして、忽ち国内市場の狭い枠に衝突するというような結果になつたのであると考えております。国民の生活水準はなお低い、それから又、私もそうでありますが、ほしいものも十分に買えないという現状におきまして、すでにこの過剰生産或いは操業短縮というような事実がありますのは、そういうようなことが一つの大きな原因になつているのではなかろうかと思うのであります。併しそういうのが現実でありますから、そのような矛盾を解決いたしますために、ここに早くから我が国は輸出貿易、即ち海外市場への進出ということが重要な問題となつてつているのでありますが、この海外市場への進出、或いは輸出貿易の伸張ということもなかなか容易でないということは御承知の通りであります。これはいわゆる中国とかそれからその他の国々と貿易ができなくなつたというような政治的な原因もありますけれども、或いは又後進諸国におきまして、いわゆる民族資本が勃興期に達しまして、我が国と競争するような産業がぼつぼつ勃興して来ているというような点もありますが、そのほかに我が国のいわゆる資本生産性と申しますか、商品のコストと申しますか、それが高い、そのために価格競争の点において十分太刀打することができないというような状態にあるということも御承知の通りであります。そこでそういうふうに日本資本主義は財政を有力なてこにいたしまして今日まで復興して来たのでありますが、そのことの故に、今日相当いろいろな面で矛盾と申しますか困難な点が生じて来ている。その点を再び財政に依存しながら解決して行くべく、いろいろな要求がある。そういうような要求を背景に持ちながら、この昭和二十八年度予算が編成され、目下審議をされているという状態ではなかろうかというふうに私は理解いたすのであります。こういうようなことを頭におきながら、二十八年度予算を考えてみて行きたいと思います。  先ず歳入予算の方から見て行きたいと存じます。今申しましたように、日本資本主義が今日当面している問題は、国内におけるところの消費力、或いは国内市場が狭いということでありまして、そうしてそれは低賃金或いは低米価ということにもよりますが、一つは租税負担が重いということが大きな原因をなしていると言わなければならないと思うのであります。これは例えば所得税の基礎控除というようなもの一つをとつてみましても、今回の改正後におきましても、昭和九——十一年の平均に比べまして、大体五十倍くらいに引上げられている。これに対しまして、資産の再評価の方であるとか、或いは物価の方であるとかいうものは、その五十倍の更に数倍の大きさにも達しているというようなことをとつて考えてみましても、租税負担が重いということがその原因であるということは明らかであろうと思います。そういうような重い租税を今年度はどういうふうに改正されているかということが問題になるわけであります。この点はいわゆる税法上の減税と申しますものが千九億円計上されているのでありますが、私はこの税法上の減税額というもの、その算出の基礎につきましても、いろいろの計算が示されているのでありますが、これはどうも少し、これは感じでありますが、この自然増収、いわゆる税法上の減税の基礎になります現行法によつたらば、どれだけ税収入が上るかという見積りは、少し甘いのではないかというふうな感じを持つております。この点を御究明頂くことが一つの問題点ではないかと私は考えているのであります。  それからそういうようなこの減税の中心をなしますものは所得税、それから法人税、それから相続税というようなものでありますが、この減税の方向と申しますか、結果と申しますかが国民大衆の租税負担を軽減するほうに向いておるか。或いは又それは国民大衆の租税負担を軽減し、消費力を殖やすということになりますと、国民市場が広くなるというような点にもかかる問題でありますが、そういう方向に向いておるか。或いは又より多く、そういう国内市場の行詰りと狭い枠というものは放棄しておいて、国際市場或いは海外市場に進出する、このためには企業を合理化したり或いはコストを引下げることが必要である、そのためには資本蓄積ということが必要である、その資本蓄積を図るという方向へより多く向いておるかという点が、第二の問題点になるかと思うのでありますが、この点につきましては、私は成るほど税法上の減税を最も大きく受けておりますのは、所得税の中の源泉徴収分の所得税でありますが、それにもかかわらず、実際上の減収額はこの源泉所得税分において最も少い、税法上の減税額は七百三億というようになつておりますが、実際勤労所得を受ける者、主としてまあそうでありますが、そこからそれが全体として今年度支払うべき租税が、昨年に比べてどれだけ減つておるかというと、十一億余りしか減つておらないというような状態になつております。これに対しまして、申告納税分の所得税及び法人税のほうの、これはまあ法人税というものは、或る意味ではシヤウプ博士が言つておりますように、法人の株主の支払所得税のまあ源泉徴収分である。つまり株主になるような階層の人々のまあ支払所得税であるというように、大ざつぱに考えて差支えないというふうに言つておりますが、それを合計いたしますというと、百九十億円ぐらい、実際にそういう人々の支払う所得税は減るということになつております。  更にこういう減税が行われました総体の結果を考えてみまするというと、本年度におきましては、所得税その他を含めますところの直接税と間接税との比率は、二十七年度は補正予算まで含めまして、直接税と間接税との割合が五十七対四十二というような形になつておりましたのが、五十二対四十六というふうに直接税の比重は軽くなつて、間接税の比重が重くなつておる。或いは又直接税においては相当減税されておるが或いは減収になつておるが、間接税におきましては相当の増収が見込まれておるというような状況、今申しましたいろいろなことを考えてみまするというと、この減税の方向というものは、国民の消費力或いは国内市場を大きくして日本資本主義が、先に申しましたような困難に逢着しておるのを打開して行こうというようなほうへは向いておらないというふうに考えるわけでありまして、むしろこういう減税の力点は海外市場における競争力を強化するため合理化によるコストの引下げのため、それに必要な資本蓄積という点に向けられておるというふうに考えることができるのではないかと思うのであります。そのことは先ほど申しました所得税申告分或いは法人税におけるところの減税或いは減収、それから今年度からいわゆる株式の譲渡所得税を、これを正確に捕捉することは困難でありますが、捕捉すれば私は非常に大きな税源になると思うのでありますが、これをやめまして、そういう捕捉の努力というものを断念いたしまして、すつぱりとあきらめまして、新たに有価証券移転税を新設した、これをいいか悪いかということは申しませんが、そういうようなことを考えてみまするならば、減税の力点というのは資本蓄積を税法上妨げない、或いはそれを奨励するという方向へ向いておるということは、ほぼ明らかではないかと思うのであります。そういう点におきましては、第三次の資産の再評価を行うということも又同様であります。これはすでに一次、二次と行われました再評価に続いて、戦前戦後物価が騰貴した現実に即応いたしまして、資産の評価をやり直して、従つて利益として課税されるところの部分を減らそう、減らしてやろうという考え方でありますが、同じ考え方は労働力と申しますか、労働者と申しますか、それの生活費についても言い得るのではないか。それはまあ、何も道義的とか倫理的な意味においてでなく、資本主義が市場とか需要とかいうことも考えて、スムースに発展するためには、どうしても考えざるを得ないという意味において、労働者の生活費或いは労働力の再生産費ということについても考えなければならないと思うのでありますが、それについては、先ほど申しましたように、物価が数百倍騰貴しておるにもかかわらず、五十倍程度の再評価しか行われておらないというようなことを考えてみますると、この全体としてみた減税措置というものの力点は、資本蓄積を妨げない、或いは資本蓄積を助長して行くという方向にあるのではなかろうかと考えるわけであります。  そうしてみまするというと、一般会計の歳入の面、特に租税について考えまず限りは、日本資本主義の当面しておるところの矛盾を解決するために、国内市場を大きくするという方向への大きな手は打たれておらない。又国際市場に進出して、国内市場の狭さを補うために国際市場に進出して行く、その場合におけるところの競争力を増大するという方向に、役立つような方向に減税がなされているけれども、それも、二十七年度或いは二十六年度にとられたのと、そう大きく変つた手は打たれておらないということが言えると思うのであります。即ち、歳入の面だけにおきましては、日本資本主義の困難を新らしく打開して行くというような方向はとられておらない。むしろ、言うならば、国民所得に対するところの租税収入、或いは国民の租税負担の大きさというものを、ほぼ前年度並に据置くということに一番重点が置かれまして、その範囲内で、どちらかと言えば、無論いろいろな方面で減税が行われている、つまり国民大衆のほうにも少し税を減らしてやる、それから資本蓄積を妨げない、或いは資本蓄積を助長するという方面にも配慮をする。併し、どちらかと言えば、資本蓄積を助長する方向により大きな配慮が払われておるというような形で、歳入が考えられているというふうに言うことができるのではなかろうかと思うのであります。  歳入のほうがこういうふうな状況になつておりますのに対しまして、歳出のほうはどうかということを見て見たいと思いますが、ここにおきましても、私は非常に日本資本主義の矛盾を打開するための大きな手というものは打たれていないように思われるのであります。先ず、歳出は、いろいろな項目に分けられておりますが、これを若干取りまとめまして、防衛関係費、それから国際関係の処理費、治安行刑費、それから国土保全、産業振興費、それから社会労働費、文教対策費、出資及び投資地方財政補助、財務費、国債費、価格安定費、その他の内政費というように、自己流でありますが、整理して見ました。大体この名目によりまして内容がおわかりかと存じまするが、軍人恩給のための費用というのは、防衛関係費の中に私は概括したわけであります。それから、国土保全、産業振興費というのは、公共事業費、それから食糧増産対策費、農業保険費、そんなものを一括したわけであります。それから、地方財政補助という中には、いわゆる義務教育の国庫負担費というものは、別にそうしたからといつて地方財政の上に及ぼす影響とか、或いは教育そのものに及ぼす影響というものにつきましては、問題が非常にあるかと思いますが、予算の上では同じものであると考えまして、地方財政補助費という中に入れております。そのほかのものはおよそ御想像がおつきになる通りであります。こういうふうに、いくつかに括りまして、これを二十七年度予算と、二十八年度予算と比べて見まするというと、何れも少しずつ増加しております。減少しておりますものは、国際関係処理費、それから出資及び投資、それから財務費、価格安定費、これだけでありまして、そのほかは何れも大体数%から一〇数%ぐらい増大しておるというふうな関係になつております。増大率が一番大きなものは、国債費でありますが、これは本年度外債の利子を支払うということになつておりますので、そういうような原因によるわけでありますが、そのほかの数%乃至一〇数%の増大というのが、二十七年度、二十八年度間におけるところの公務員の給与の引上げ、それから運賃その他の増額によるところの旅費その他の増大というようなことを考えてみまするというと、殆んど殖えておらないと言つてもいいような状態になつておると考えるわけであります。言い換えまするならば、大部分の経費につきましては、大体昭和二十七年度と余り変らないような額の予算が組まれておるということが言えるのではなかろうかと思うのであります。これはどういうような計算によりますものか、つまり政府の考え、重点がどこにあるのかということがはつきりしておらないためであるのか、或いは又いろいろな費用を出しますために或る費用を削るというようなことがいろいろな関係で不可能であるのか、よくわかりませんが、大部分の経費については、殆んど前年度と大差ないような形で経費が組まれておる。そうして又減少しておるほうを言いましても、大体その減少率は国際関係処理費とか、それから財務費とかにおきましてはそう減少しておりません。ただ一つ非常に減少しておりますのは、御承知のように出資及び投資というのが減少しておるわけでありますが、そのことは言い換えますならば、大部分の経費を二十七年度とほぼ大差ないボリユームで出すための、或いはそれよりも若干ずつ、少しずつ、よく使われる言葉でありますが、総花的に殖やすために、何を犠牲にしたかと申しますというと、出資投資という項目を犠牲にして、その他の経費を若干ずつ殖やす、或いは二十七年度に比べて、公務員の給与を初めいろいろ上つた分をこめて、ほぼ大差ない仕事をするための経費を組んでおるというような形になつておるのではなかろうかと思うのであります。そこでそういう点を考えてみまするならば、この一般会計の範囲内におきましては、昨年度に比べまして出資投資が非常に減る、と申しますことは、国内の市場、そういう投資生産財に対するところの需要もそれだけ減るということである。その意味では国内市場を広くするというよりは、むしろ国内の需要力を小さくするという働きをするものであり、又そういう出資投資を通じまして資本蓄積或いは設備の改善というようなことを図り、国内市場を打開して行くようなほうにおきましても十分消極的な作用をするような形で、予算が組まれておるというふうに言うことができるかと思うのであります。  歳入と歳出を通じまして言い得ますことは、以上のようなことでありまして、それは最初に考えました問題に焦点を合せますというと、日本資本主義が財政を有力なてこにして復興して来たが故に、国内市場は狭い、それから又国外市場に進出を望んでおるが、そこへ進出して行くのはなかなか困難である、そのために今資本蓄積とか、企業の合理化とかいうことが言われておるわけでありますが、そういう点の解決を二十八年度予算においては大きく解決して行くような手は打たれておらない、歳入の面におきましては、先ほど申しました通りでありますが、歳出の面においてはむしろマイナスになる虞れが非常に大きいというふうに考えられるわけであります。そこでまあそういう点を補います、と申しますか、この歳出予算、租税負担国民所得に対してほぼ前年並に据置く、その中で而も歳出のほうでは、いずれも前年度と同じくらいか、或いは前年度より若干ずつ総体的に、総花的に殖やした経費を賄うために、そのしわを出資及び投資という項目に寄せる。その点を解決いたしますために、産業投資特別会計というようなものが設けられ、或いは又そのほかの資金運用部特別会計資金運用の面というようなもので、これを解決して行こうというふうに考えておるように思われるのでありますので、そのしわが寄つてつたところの、この点について若干考察いたして見まするならば、御承知のようにこの産業投資特別会計資金を賄いますために、産業投資特別会計というのは、日本開発銀行とか、日本輸出入銀行或いは電源開発会社というのに資金を貸付ける。その意味では、いわゆる資本蓄積、それから企業の合理化というようなために、支出される資金であると考えていいのでありますが、そのほかの資金運用部資金運用計画というようなものを通観いたしますというと、どうも本年度におきましては、昨年に比べまして、開発銀行の貸付とか、それから金融債の引受、それから輸出銀行への貸付とかいうような点が減つているというような点、これは無論電源のために相当大きな資金が出されておりますが、それを考えましても、この政府の建設資計画全体を通じまして、資本生産力を大きくするためになされる配慮というものも、昨年に比べて若干落ちるのではないかというような感じがいたすわけであります。そしてむしろこの消費的と申しましてはあれでありますが、地方債の引受分であるとか、或いは中小企業の、或いは農業のための貸付というようなものが殖えておるというような形になつておるような気がいたします。而もそういうような、この資金を賄いますために、御承知のように特別減税公債、いわゆる貯蓄公債を発行する、或いは又政府が手持ちをしておりますところの既発の公債を日本銀行に売却することによつて資金を獲得する。それから又国鉄とか、それから電電公社において、いわゆる公社債を募集するというような形、公債によつてその資金を補うというようなことを考えておるわけであります。それからもう一つ口は、そういうようないろいろな資金蓄積資金の来年への繰越分というようなものを減らすことによつて、つまり食い消すことによつて、そういうような政府の需要或いは投資を作り出して行こうというようなことが考えられておるわけであります。そこでそれを言い換えますならば、日本資本主義が、国内市場、国外市場共に狭い。その狭さを補うために政府需要、政府の需要というか、或いは政府資金を今日では千億以上の散超になるというふうに言われておりますが、そういう需要を増大することによつて、その行詰りを打開して行こう、こういう方向へ漸く向きつつある、そういう方向によつてこの日本資本主義の行詰りを打開しようというふうに考えておるということが言えると思うのであります。而もその政府需要を作り出しますために、そう大したあれでもないというふうに考える向きもあるかも知れませんが、ともかくも三百億の貯蓄公債を発行する、或いは又政府手持公債を合計三百八億億ぐらいに日本銀行へ売却する、更に公社債を二百二十億くらい募集するというような、公債に依存してそういう政府需要を作り出す。その政府需要によつて、国内市場、国外市場共に大きくして行くことが困難である。その点を解決して行こうという方向に向いて来ている。この点が昭和二十八年度予算において最も我々の注目に値する点ではないかと思うのであります。  無論この公債の消化の関係とかその他いろいろ考えなければなりませんが、ここでは申上げませんが、そういうような考え方は、曾つて日本経済が同じような問題に逢着した場合にとられたところの方策と非常に似ているのであります。即ち曾つて高橋是清大蔵大臣は、いわゆる公債の日本銀行引受発行というものを開始したのでありますが、その場合に、これは財政上の必要を充たすと同時に、日本銀行資金の注入によつて購買力を増加する、萎靡せる産業に刺戟を与える、そうしてそのことによつて国民経済力の増大を図り、増大した場合、これを租税で取つて返すという一時的な措置であると考えて始めたのでありますが、その公債政策というものは、御承知のように一回始めますというとなかなかやめられん。或いはそういう政府需要という形で日本資本主義の困難を打開して行こうという努力は、直ぐその政府需要を大きくするものとしての再軍備を考える、更に強力に伸展して行くというような要求に連なるものであり、高橋蔵相の政策が辿つたと同じ途を歩むというような危険がある。そういう展開点をこの予算は孕んでおる。歳入歳出予算のしわがそういうところに寄せられており、その政策はまさに一つの財政上のエアポツクを画するものであるというような点が一番この予算で大きく問題になる点ではないかというふうに私は考えておるわけであります。  最初にも申上げましたように、客観的な見通しを述べますためには、もつと詳しくいろいろな点を問題にして行かなければならないと思いますが、これは一つのの客観的な見通しであるつもりであります。意見というものは別に申上げないつもりでございます。
  40. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 御質疑ございませんか。
  41. 永井純一郎

    永井純一郎君 一点お尋ねをしたいと思いますが、私が今度の予算を見ていろいろ考えますことは、全体の規模について、私個人としてはいろいろ心配しておるわけなのですが、今のお話の中にありましたように、生活安定と言いますか、歳入の面におきまして、国民生活安定の方向から或いは資本蓄積というふうな方向かというような立場ら、いろいろお話がありましたが、この国民生活安定或いは資本蓄積の方向といつたような点を両々考え合せて、そして今日の日本産業或いは経済をバツクとして予算の適正な規模と言いまするか、どういうものが、学問的にというか、総合的に一つの結論を私は出したいと、こう思うのですが、我々にはなかなかそれができないわけなのです。自分の立つ立場に立つて一つの意見というものは出て来ますけれども、非常に客観性のある、理論的なものをなかなか持ち得ない、政党としまして、それを究明して行くと、結局国民生活の安定か資本蓄積か、そういつたいずれかに重点をおくということが、結局もう一つ問題になつて来ますが、それらを総合勘案して、それから財政の後になつておる日本経済のことを総合勘案して、私は財政の規模というものを、概観して一兆九千六百億では非常に大き過ぎると思うのです。いろいろの点から考えて、私は大体自分で八千億程度のものが適当じやないかということが考えられるわけですが、こういう点で学問的に何か研究されたものがあつて、その理由はこう、こうだというものがあつたら御説明願いたいと思います。
  42. 武田隆夫

    公述人(武田隆夫君) その点は、実際アメリカあたりにはいろいろの研究がなされておるようでありますが、いずれも学問的とは私は言えないではないかと思つております。いずれも意識的、無意識的に何かの立場を設定いたしまして、その立場から予算の適正な大きさというものを考えておると言わざるを得ないのであります。ただ申すまでもないことでありますが、その予算の規模を、歳出がどういう方向に使われるかとか、それから例えば国民の生活安定のために使われる費用が多いかどうか、或いは資本蓄積のために取られる費用が多いかどうかというような点において、その前提の動かし方如何によつては、いろいろのことが言えるわけでありまして、これはいずれもその点について何らかの立場を設定し、政策があつて、その上で幾らくというふうにいつておるのでありまして、私はどうもそれを客観的にきめる途というのはなかなかないのではないか、ただ言い得ることは、今日この財政的な介入がなければ、資本蓄積でも国民生活安定がなかなか図られない。そしてその場合でも数年或いは十年以上にも亘るような一つの大きな計画がありまして、その計画内部でどういう方向へ持つて行くかということが大きな見通しとして与えられておつて、その内部で年々のいろんなデーターの変化によつて予算の規模が今年はどれくらいあるべきだというような議論がされるというような方向に行けば、その大きな枠の中では若干客観的にその点計算できるのではないかというふうに思つておりますが、これを学問的にはじき出せと言われてもちよつとお答えできないわけでございます。
  43. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 別に御質疑がなければ次に参ります。武田さんどうも有難うございました。  日本労働組合総評議会常任幹事野本正三君。
  44. 野本正三

    公述人(野本正三君) 只今御紹介を頂きました日本労働組合総評議会の常任幹事の野本であります。私に公述人として意見を述べよということは、私個人の意見を述べるということよりも、労働組合の組織の代表として、労働者階級の立場に立つて意見を述べることのほうが適当であると判断いたします。従つて私は日本労働組合総評議会の常任幹事として、日本の労働者階級の立場に立つて昭和二十八年度予算についての意見を申述べたいと思います。  我々日本労働組合総評議会に結集する四百万の労働者及びこれと方針を同じくする多くの勤労者は、殆んどすべてが吉田内閣予算支出面の一貫した再軍備予算、大資本第一主義の予算に反対の立場をとり、国民の犠牲の上に組まれた大衆収奪と、犠牲において賄われようとしておるこの予算案には絶対的に反対であります。従つて我々は予算の全面的な組替えを要求いたします。  先ず、基本的な方針とでも申すものから申述べて見ますと、第一に吉田政府は二十八年度経済運営の基本方針を基礎的生産力の強化というような表現でいろいろ説明もされておりますが、そのためにドツジ・ラインを修正して、財政と金融を通じ弾力ある運用を図るべきであるとして、財政資金引揚超過政策をやめて、二十八年度には千三百億の撒布超過に転換しようとしているように私たちは判断をしております。これは明白なインフレ政策への転換ではないかというふうに考えます。これは日本経済を急速に軍事経済に再編成しようとするものであり、二十八年度予算案において三百億円の赤字公債を出してまで財政上の投資、融資を増加して、電力、石炭、鉄鋼、艦船を増産し、基礎的生産力を強化してみても、それは再軍備のための兵器生産のほうに向けられてしまりて、我我国民の生活水準の向上には殆んど役に立たないというふうに考えます。すでに、再軍備はしないというふうなことをおつしやつていますが、工場では兵器生産がどんどん行われておるような状態で、貴重な基礎資源が兵器生産のために非常にたくさん使われておることを私たちは職場で見ております。我々は物心両面から再軍備の基礎を固める基本方針そのものに先ず反対をするわけであります。  第二に、財政規模の関係から私たちの意見を述べますと、今回政府が二十八年度予算において投資特別会計を新設して、この会計において二百億の貯蓄公債を発行し、更に国鉄、電々公社で二百二十億円の公社債を公募することは、二十八年度予算が五百二十億の赤字予算であるのを実はそうでないというふうにごまかしておるのではないかというふうに考えるわけなんです。同時に財政規模が、只今お話があつたように非常に一兆にも近い、或いは一兆を超えるというふうな何か非常に大きな額になつておる。そのための一つの手段としてこういうごまかしがやられたのではないかというふうにも考えられます。これは特別会計制度を濫用して財政の民主化の精神に百反しておるのではないか。これが発展いたしますと、只今武田教授もおつしやられたのですが、曾つての臨時軍事費特別会計のごとく、国債が濫発される危険があるというふうに考えます。こうしてみると貯蓄公債三百億及び国鉄、電々公社債二百二十億、計五百二十億は当然一般会計に加えて一般会計予算額をみるべきであつて、その結果として、一般会計予算額は一兆百二十五億というような数字になるのじやないか、或いは国民所得五兆六千七百四十億というふうな一応の数字に対して比率は一九・六%となつて政府の計算による比率が一六・九%というふうな資料を承知しておりますが、それよりも二・七%くらい上廻つてしまつて、その結果は昭和二十七年度の比率が一七・三%であつたというふうに記憶しておりますが、それよりも二・三%くらい大きくなるのではないかというふうに考えております。  第二に財政規模をみる場合には、私たち労働者としては、ただ国家予算だけではなくて、地方財政のことも考えてもらわなければ困るわけなんです。御承知のように国民は国税のほかに非常に多額の地方税をしぼりとられておるわけであります。その辺を考えてみますと、細かい数字は省略するとして、政府の説明とは反対に、昭和二十八年度の財政規模は二十七年度より大きくなつておるということは疑う余地がないのではないか。  第三に、国民所得の推計に問題があるのじやないかというふうに考えます。二十八年度国民所得を五兆六千七百四十億と推計されておりますが、これは国民所得に対する二十八年度の財政の比率が二十七年度より小さくなるように作意的に操作してふくらましたのじやないかというふうに考えられます。只今申上げましたように、三十八年度の財政支出は、戦前に比べて絶対的に過大であり、一人当り国民所得戦前より低いのに、一人当りの財政支出のほうは戦前よりも著しく大きくなつております。昭和二十八年度において国民生活の安定を考えるならば、昭和二十八年度の財政規模は、少くとも防衛費を含む約三千億の不生産的な支出分だけ絶対的に過大であるというふうに考えます。そのしわ寄せは結局労働者の、或いは国民全体の生活水準の圧縮となつて、特に労働者階級にこれがしわ寄せされるということは明らかでありまして、こういう労働者階級の生活にしわ寄せをされる予算に反対をするわけであります。  次に、減税ということを一つの旗印にして、政府は御説明をなさつているようでありますが、二十八年度予算案編成の第二の重点になつておるように聞いておりますが、二十八年度予算案の基礎となつている税制改正を少し見ますと、大分見せかけの減税策ではないかと考えるばかりでなく、税の負担を勤労者に対して著しく不利にして、資本蓄積の名目の下に高額所得者に有利にし、税負担の衡平の原則に反しているというふうに考えます。殆んど大部分の税を大衆に課して、大所得者には合法的脱税の範囲をますます拡張しているのではないかというふうに考えます。  四番目に、蓄積資金の活用と特別減税国債発行との関係について私たちが考えますと、二十八年度予算案の、これはまあ第三の特徴ではないかと思うのですが、日本経済の軍事的な再編成のために、過去に蓄積しました政府資金を動員して使用すると共に、それでも足りないのか、国債及び公社債を発行して政府資金を調達しようとしているのではないか。例えば昭和二十四年以来のインベントリー・フアイナンスの結果は、税金が非常に重くなり、民間資金政府引揚げられ、超均衡のデフレ財政の実現となつたわけでありますが、この蓄積資金二千数百億が、まあ再軍備のために、今度の予算では特に書いてありませんが、将来使われる虞れがあるわけであります。見返資金蓄積資金については大蔵省理財局の調査によりますと、手持国債百九十七億と余裕金八十七億、計二百八十四億以外の資金はすでに貸付け及び出資済みというふうに存じております。この二十八年度には二百八十四億の蓄積資金を使うことにして百九十七億の手持国債日本銀行に売却することになつているようでありますが、見返資金のうち資産から消えてしまつた金額一千四十九億のうち六百二十五億は償還期限の来ない銀行手持ちの国債を償還してやり、銀行に対して国債利廻りより遥かに高い金利で貸付けができるようにして、多額に儲けさせてやる金ではないか。五分程度の安い利子国債を期限が来ないのに銀行に償還しておきながら、今度は一割以上の高利廻りの貯蓄国債を発行するということは、これ又国民に大きな損失を与えるものであつて、我々の側からすると矛盾も甚だしいというふうに考えます。  なお資金運用部蓄積資金については、十二月三十一日現在の資産が四千四百七十四億というふうに存じておりますが、日本産業の軍事的再編成のために動員使用し得る形にある蓄積資金、長期国債四百八十四億、短期国債二百七十二億がある。そして二十八年度予算案では長期国債のうち百八十一億円を日本銀行に売却し、更に余裕金として短期国債運用している二百八十七億のうちから百二十六億を割いて再軍備金融の不足資金を補うこととなつておる。計三百七億が経済蓄積を食うことになつているのではないか。以上三つの財政蓄積のうち、二十八年度予算はインベントリー・フアイナンスとして蓄積された資金が今後の利用のために残され、見返資金の三百七億、資金運用部資金の二百八十四億、計五百九十一億の過去の財政蓄積が再軍備金融に動員されるという状態にある。これは我々労働階級にとつて重大問題でございます。而も見返資金資金運用部の過去の蓄積資金五百九十一億円を動員してもまだ日本産業の軍事再編成資金が足りないというふうにお考えなのであろうと思いますが、二十八年度貯蓄国債三百億と二百二十億の公社債を新らしく公募する計画になつており、合計五百二十億の公社債公募はそれだけ二十八年度一般会計が赤字になつたことを意味している。このようなからくりに我々は全面的に反対をいたします。  五番目に、経費の配分、特に社会保障費との関係では政府の表面的なごまかしにもかかわらず、実質的に防衛費は増加し民生費は低下しているというふうに考えます。更に間接的な防衛費についても考えに入れますと、三〇%を超える防衛費を支出しているのが今度の予算案ではないか。米価の引上げと鉄道運賃の値上げだけでも四百五十億の負担増加となつているのに、二十八年度の社会保障費は二十七年度に比し九十六億しか増加していないのであるから、ますます問題であります。イギリスは一九五一年乃至五十二年度には予算の三一・八%、西ドイツでは一九五 ○年乃至五十一年度には予算の五〇・四%が社会保障費のほうに廻されているわけです。日本の場合、予算に対し一六%に過ぎないということは、如何に外国と比べて非厚生的な国家予算であるかがわかるわけです。社会保障費は殆んど考えないで、保安隊の費用や警察力増強費や、そういうふうなものを大巾に増額していることは、まさに我々労働階級としては政府政策が逆立ちをしているのではないかというふうに考えるわけであります。社会保障費が不十分で民生が安定しないから社会不安が起り、社会治安が繁れるのでありますが、社会保障費を十分に殖やさないで、治安対策費即ち弾圧費のほうを大巾に殖やしておりますが、我々はむしろ治安費の削減をして社会保障費に充てるほうが社会不安はなくなるというふうに考えております。  六番目に、一番重要なことを申上げたいと思います。岡崎外務大臣とラスク氏との取極めによれば、日本の防衛費、保安庁費が増加した場合には、防衛支出金の減額に考慮が払われるということになつているはずのように伺つおります。まあそもそもこのような防衛支出を負担するような条約や行政協定を結んだことに根本の問題があるわけでありますが、保安庁費は二十八年度に一挙に二百二十八億にも増加しているのでありますから、防衛支出金もそれに応じて減額されるべき筋合のものであるというふうに考えます。それにもかかわらず僅か三十億しか減少しておりません。この点について政府は当然アメリカ側に交渉すべきであつたにもかかわらず、何らその形跡も見えないというのは怠慢無責任であると考えます。従つて防衛費が幾ら殖えたら防衛費支出金はどの程度減るかというふうなことについての折衝が行われないために、その具体的結論が国民の前に明らかにされなかつたことは重大な失態であると考えております。  最後に労働者階級としてこの予算によつて受ける影響を考えながら政府のやろうとしていることを考えますと、向井蔵相の言う、いわゆる底の浅い日本経済において、そしてまだ基礎の強固でない我が国の経済が両条約、行政協定によつて米国軍隊の基地経済となり、そのために防衛支出金六百二十億を分担させられるばかりでなく、保安隊の強化を要請されて、保安庁費八百三十億の不生産的な支出を計上し、再軍備の宣伝費として四百五十億も軍人恩給復活費としての計上を行い、不生産支出は前に述べたように一般会計予算の三〇%にも達している状態にあるし、第二に、アメリカの駐留軍や保安隊、海上警備隊のために基地演習場として広汎な農地や山林が接収されつつある。第三に、国連協力の下に中国やソビエトとの貿易が制限されて、石炭、鉄鉱石、塩などの原材料を高い値段でアメリカやカナダや地中海方面から輸入させられております。そうした高い原材料を基にして、安い値段でアメリカの軍需品を作らせられ、ここにいわゆる出血受注の問題が生じ、不平等交換が行われて、低賃金と労働強化と首切りが生まれ、大衆購買力が減退をしております。  特需発注に当つては、直接調達によりアメリカの公契約法に基く軍需調達規則が適用され、日本の商習慣や労働法規が無視され、そのしわ寄せは下請中小業者、労働者に寄せられております。こういう状態の下で資本蓄積を強行するために、大法人、高額所得者に対して広汎な合理的脱税を認めている結果として、税金は大衆にしわ寄せられて大衆購買力が減退をして行くというふうに考えます。  輸出貿易は、原料高とバトル法による貿易制限とによつて減退をしております。  日本経済の置かれておるこの実情は、両条約、行政協定によつて日本の国内市場及び海外市場が行詰り状況になつているところへ、世界景気の後退の影響をしわ寄せられておるのであり、この点に眼をふさいで日本経済の行詰りの原因を世界景気の後退に求めて、その対策として国民に耐乏を、企業の合理化を要請し、その上に立つて資本蓄積を強行するというのでは、我々にとつて本末顛倒であります。で余りに大資本本位の考え方ではないかというふうに考えます。この向井蔵相の消極財政に対して、自由党では中小業者や産業資本家或いは勤労者などの不景気打開を望む声に押されて、積極財政を主張して、貯蓄国債の発行や建設及び農林省予算の増加を要求したように新聞を通して聞いておりますが、その内容国民大衆の景気対策を求める声に便乗して、選挙目当や利権獲得を中心としたものである、こういうふうに考えます。不生産的な防衛関係費用をそのまま大巾に認めておいて、その上に新らしい要求を積上げるというのでありますから、その結果として二十八年度予算が大きなインフレ要因を持つた一層不健全な放漫財政になつているというふうに判断される原因がそこにあるのではないかというふうに考えます。  本来ならば自由党の予算増額の要求を、インフレを起さずに実行し、更に輸出を増進せしめる方策は、防衛費を中心とする不生産的支出を削除すると共に、中国その他の貿易制限を自由にすることにおかれなくてはならないというふうに考えます。ところが不生産的防衛費はそのままであり、中国との貿易も制限されたままの状態で予算を膨脹させておいて、インフレを起させないようにしようというのであるから、そのインフレ防止策は、結局耐乏生活と合理化に落ちつかざるを得ないだろう。即ち向井財政下のインフレ防止対策は、具体的に我々は次のような方向を迫るもとの判断されます。  第一に、財政上の支払超過による通貨膨脹を防ぐために、金融面からの引締め政策がとられるのではないか。従つて日本銀行金融政策は百八十度の転換を示すことになる。ドツジ・ラインに基く超均衡財政の下では、政府の財政上の引揚げ超過が大きかつたので、日本銀行はこれによる民間資金不足を補うために貸出を増加し、ここにオーバーローンの問題を生じたのでありますが、ドツジ・ラインを修正した向井財政の下では、政府資金撒布超過が大きくなるので、日本銀行は今度は貸出を抑えて或いは貸付金の回収、金融を引締め通貨の膨脹を防ぐ政策に転換せざるを得なくなるのではないか。ところが財政支出や財政投資の行われる方面は、軍需産業及びその基礎産業などであるのに対して、日銀資金を引上げる方面は財政投資、融資の行われない平和産業、中小企業などであるから、この政策が強行されると、平和産業、中小企業金融難は一層深酷となり、倒産、整理強行が訪れる虞れがあるというふうに考えます。  第二に、生産費切下げのために合理化政策が強行され、その一環として資金の固定化乃至切下げ政策、人員整理、労働強化策が強く推し進められるということは、これはもう思いますどころか、明らかであると思います。  それから第三には、こういうふうなやり方から起る労働者の反対闘争を抑えるために、すでに今度の国会へ出されているわけですが、スト制限法をはじめとして弾圧政策が強化されて、基本的人権まで奪うというとんでもないことまでやらざるを得なくなるのではないか。  第四に、更に失業、生活難から起る社会不安を弾圧するために、警察力を強化しようとして来るのではないか。このようにして見て来ると、結論的に言うならば、二十八年度予算案は、日本国憲法の基本である平和の問題と、健康で文化的な最低限度の生活の保障という二大目標から見て、あらゆる点で憲法に違反をしているというふうに私たちは断定をいたします。日本を米国の基地化する予算、これは防衛支出金の六百二十億円を計上し、再軍備予算、保安庁費八百三十億円を計上し、日本経済を軍事的に再編成し、殺人用の兵器の生産を育成するための巨額の財政投資、貯蓄国債三百億円その他を計上している。或いは旧軍人恩給復活費四百五十億円もその一環であります。これによつても明らかなように、この予算の基本的性格は再軍備の準備予算であり、戦争準備予算であるというふうに考えます。そのために一切の日本国民が健康な文化的な最低限度の生活を営むところの予算が犠牲に供されております。従つて我々は平和を愛し生活を向上させるという立場に立つても、この予算案に絶対に反対であります。同時に私たちは平和的な予算案に組替えられますことは要求いたします。このため私たちは私たちなりに、アジア人に対してはアジア人をして戦わしめよというダレスの巻き返し政策に乗ぜられて、日本人を朝鮮に送ることに反対の運動もやつて行きましよう。或いは軍事基地をなくして保安隊もなくして行く方向について要望もして行きます。或いは破防法を初めとする、圧法規を廃棄し、警察のフアツシヨ化を考えないで民主化を図つて参りたいための闘い、或いは義務教育学校職員法案に見られる、国民負担の上に中央集権化を図り、教員の基本権を剥奪するような法案も撤回してもらう、或いはストライキ規制法案についても政府がこれを通過させるようなことだつたら、我々は組織を挙げて実力を以てこれと闘う決意を持つているわけでありますが、我々はこの予算に現れている軍事的、植民地的な状態の中から、日本の独立と平和のために闘いを進めたいと願つているのであります。政府国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むために、先ず労働者には最低賃金法を制定して頂きたいと思います。  第二に、農民には農業の再生産を確保し、適正な米価の設定と農業に対する積極的な財政投資をして頂きたいと思います。  第三に、漁民には演習や防潜網による漁区の接収や被害をなくしてその十分な補償を行い、やがてその解除に努力をして頂く、更に日本、アメリカ、カナダの漁業協定の改訂、或いは李承晩ラインの撤回、漁業金庫の確保などについても努力をして頂きたいというふうに考えるわけです。  第四に、貿易の行詰りを打開して、中国やソ同盟との貿易の再開を図り、大資本本位の再軍備金融をやめて、長期の中小企業金融の枠を拡大して、金利の低下をして中小企業を救い、独禁法の改悪などは思いとどまつてもらいたい。そうして法人税の大企業、中小企業一般課税をやめて、中小企業法人の税率を引下ぐべきであるというふうに考えます。  第五、一般国民の社会福祉、社会保障、公衆衛生の支出を増額して頂きたいというふうに考えます。  こういうふうに労働者階級でなくて国民全体が考えているわけでありますが、この国民大衆の諸要求が充たされないのは、一般会計予算だけでも三千億円に達するような非生産的浪費を国が行なつているごとと、国民所得の分配が著しく不均衡である上に課税が非常に不公平で、大規模の脱税が行われていることになるのではないかというふうに考えます。客観的な物質的条件が妨げになつているのではなくて、政治に、そうして政策原因があると考えています。逆コース、特に反動政策の強行と共に、このようなとんでもない予算衆議院で通過させた吉田内閣及び衆議院は直ちに退陣をし或いは解散をすべきであると考えますし、参議院の予算委員会がこの再軍備予算の不成立のために闘われることを要望いたしまして、私の意見を終ります。
  45. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 御質疑ございませんか。
  46. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 お言葉の中に軍事基地をやめてもらつて、保安隊もなくしろというお言葉でございましたが、そうしますと日本は永久にどこからも攻めて来られるような心配は絶対にないという保障をして頂ける根拠がどこにかあるのか。それとも万一攻めて来られるようなときがございましたら、少しも抵抗しないで征服されて日本の国を共産主義の政治に改めてもらつてよいとお考えなのか、それとも何かもつとほかに便法がおありなのでございましようか。
  47. 野本正三

    公述人(野本正三君) 私たちは、どこかの国からすぐにでも誰かが攻めて来るというふうには考えていないわけであります。将来それでは何もなくてもいいのかというような問題については、これは国民全体でどういうふうにして国を平和に維持して行くかということをきめて行かなければならないというふうに考えているわけであります。
  48. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 別に御質疑がなければ、本日はこれを以て散会いたします。    午後三時十七分散会