○
政府委員(徳永久次君) 繊維局
関係といたしましては、
予算に関連します
事項はさしてございませんですが、最近の繊維の概況をかいつまんで御
説明申上げまして御参考に供したいと思うわけであります。
繊維も御
承知のようにいろいろございまして、綿
関係なり生糸、絹
関係なり、或いは人絹、スフ
関係、或いは毛糸
関係、まあめぼしいものを拾いましてさようなことに相成つているわけでありまするが、まあ一口に申しまして、繊維
関係は一、二の例外もございますけれ
ども、
相当輸出に対する依存度が大きいという
事情と、それからそれのうらはらになりますけれ
ども、さような
関係から
輸出が思うように伸びない場合には、最終的な安定がないというようなまあ性格を持つている産業でございます。又同時に半面から繊維産業は、我が国の産業の中で比較的国際的な競争力というものを兼ね備えている産業でございまして、業界内部の問題には
輸出振興のために打つべき手は比較的少い。が併しむしろ
輸出振興のために、いわゆる通商外交とか、或いは
相手国の為替
事情とか、或いは
日本の
貿易商社の力を強めるとか、さようなふうの問題が問題になるような品物でございます。
そこで品目ごとに最近の
輸出なり生産の概況を申上げますと、綿
関係につきましては、御
承知のように、昨年の三月に大きな暴落があ
つたのであります。爾来通産省といたしましては、生産調節を業者に勧告いたして参つているわけであります。この数字は月によつてその
需要の時期等によりまして若干の変化がございますが、最近の数字といたしましては、この二月十五万梱、それから三月以降三カ月に亙りまして十六万梱というようなことにいたしているわけであります。そのうち
輸出は、これは昨年の一カ年の数字を見て参りますと、一カ年に綿織物の総生産量が二十二億ヤールほどに
なつておりますが、その約三分の一の七億五千万ヤールが
輸出だということに相成つているわけでございます。私
どもとしましてはこの約三割の
輸出をもつと引上げたいということを考えているわけでございます。滞貨の数字につきましては、現実には最近横這いの
状況を呈しておりまして、そう殖えるという現象は現われているわけじやありません。併しながら昨年の三月なり十一月のような暴落というものは、或る
程度の滞貨を前提といたしまして、何らかのきつかけでさような事態というものも起つて参りまするので、そういうことを或る
程度予防し、そういう場合に対処しますために調節する機関というものを考えたほうがよろしいのではなかろうかと考えまして、
関係業者と相談の上、公取とも御相談いたしまして、綿製品につきましては
輸出価格の不当な暴騰、暴落の場合、いわば昨年の三月とか十一月とかいうような事態には必要に応じて綿製品を買上げる機関というようなものを作るということにきまりまして、近くその設立の
準備に入るということに相成つているわけでございます。まあこれによりまして今後は三月、十一月のような事態が少しは
緩和できるのではなかろうかというふうに考えているわけであります。
その次に生糸、絹織物
関係でございますが、これは御
承知のように、戦後の
日本の桑園の復旧というものが、復元がまだ十分に行われておりません。かような結果といたしまして、昨年の生産で申しまして、生糸が二十五万俵
程度にとどまつているわけでございますが、その数字は、戦後の国民生活の或る
程度の安定に関連して起りました内需の旺盛ということから見ますると、供給不足というような現象を呈しておりまして、その結果国内の生糸というものは、
相当の高値に
なつておりまして、これを或る
程度抑制するような
意味におきまして、蚕糸価格の最高価格が決定されたことは皆様も御
承知の
通りでございますが、そういう環境でございまするので、
輸出は数量的に十分に出て参つておりませんが、昨年一カ年で七万俵、二十五万の生産のうちに七万俵が
輸出というような
状況に相成つているわけであります。併しながら生糸の増産は逐次行われているわけでございまして、今後の
増加分は、
相当部分が
輸出に向くんではなかろうかということを私
ども推測いたしておりますし、又他面海外の生糸の
需要というものも順調に回復いたして参つておりますし、又外国におきます合成繊維の発達等から、それとの混織用としても生糸の
需要が喚起されているというようなことを考えますと、今後生糸はまだまだ伸ばせば伸ばせるし、
日本の増産が十分にそれに応え得ないというのが一口に言えば今の
段階、が併し今海外の
需要に対しまして
相当の宣伝啓蒙というものを怠たらずに繋いでおくならば、今後の増産分が比較的容易に順調にはけて行く希望が持てるというふうなふうに私
どもは考えているわけでございます。
それからスフ人絹
関係の、いわゆる再生繊維と申しておりますが、これにつきましては、昨年の秋に或る
程度の価格暴落がございまして、それが一つの業界にシヨツクを与えたわけでございますが、その後比較的落着を示しておりまして、むしろ若干の増産、少しづつではございますけれ
ども、増産
傾向を辿つておりますし、滞貨につきましても格別の
増加というものは認められない。むしろ
月別に見ますと、若干の数字の上下はございますけれ
ども、正常な在庫で推移いたしているというふうに判断して差支えないんではなかろうかと考えるわけであります。而してその中の
輸出の割合でございまするが、人絹につきましては、この半額以上というものが
輸出でございます。それからスフにつきましては、
輸出の割合がやや劣りまして、全生産量の約二割が
輸出であるというふうに御了解頂ければ大過ない数字に
なつているわけでございます。スフにつきましては、人絹よりも若干の国内
需要等の好調を呈しているような
状況でございます。人絹は或る
意味におきましては、
輸出としても半分以上を実は
輸出にしているということでもあり、又
相当程度発達をした品物でございまするが、今度若干の品質改良というようなことを考えて行かなければ繊維の種類も新らしい繊維というか、或いは繊維の加工というものが技術的に進歩いたしました
関係から見まして、再び将来の発展のためにはさようなこの事態としても技術の改善、それによる品質的な工夫というものを必要とする要因が残されておるかと考えるわけであります。又
輸出につきましても、これは私
ども詳細な
事情というものを調査中でございますが、イタリア、
日本の大きな競争国といたしましてのイタリアにおきまする海外
市場に対する進出ぶりというものが、この価格の競争
状況というものが、通常想像し得るよりもはるかに低い値段で出されているような事例がございまして、業界といたしましてもこの問題に非常な注意を払つておりますし、又私
どももその正確な実情の調査に、在外公館に調査を依頼し、或いは海外渡航者に依頼し、或いは通産省の官吏で海外に参ります者にその調査を依嘱しているというような
状況で、目下まだ正確な実態というものを把握いたしていないのでありますが、一口に申しますると、国内価格を非常に高くして
輸出を一手販売でダンピング的に割安の価格を出していると認められるふしが濃厚に感ぜられますので、さような
意味において私
ども非常に問題にいたしているわけでありますが、併しイタリア人絹と
日本の人絹とは、品質的には従来
日本の品物のほうがすぐれているということで、主要な
市場でございまするインドにおきましても、過去の好評は依然として未だ残つておりまして、その魅力は
相当にあるわけでございますが、先ほど来申上げました意想外の割安価格というものが一つの脅威に
なつているわけでございます。
なお、毛織
関係につきましては、これは繊維産業の中におきまして或る
意味の例外、と申すとさしさわりがあると思いますけれ
ども、
輸出に対する競争力の弱いという
意味におきましては例外をなすものでございますが、殆んど大部分というものが内需に依存して発達しているという
状況でございまして、この原料も同じく
輸入品でございまするので、その面からも極力
輸出振興ということに私
ども努力をいたしたいと考えているわけであります。内需の戦後の国民生活の回復に伴いまする順調な成長から業界は比較的安定もし、又海外の原料価格もやや強目でございますので、その面からも順調に推移いたしているわけでございますけれ
ども、国民経済的な立場から見ますると、もつと
輸出を伸ばさなければならないという
事情がございまして、私
ども只今この
輸出振興のために昨年から大幅のリンクというものをいたしておりまするが、その
効果が最近になりまして着々と
増加いたしているというふうに見られるのでございますけれ
ども、まだまだ数量的には非常に少い
状況に停滞いたしているわけでございます。
この本日繊維の
輸出と生産及び滞貨処理という見出しにつきまして、主な繊維につきまして概況を申上げたわけでございますが、なお繊維のうち一つ補足して申上げますると、御
承知のように合成繊維が戦後の新らしいその利用価格の高さ、或いはその原料的な
日本としてのすぐれた
事情ということ、それから
日本の繊維全般が
輸入に原料を依存しているというような
状況から見まして、それを少しでも改善する
意味合等から考えまして伸ばすべき産業であるということで、従来税制、国家
資金の投資その他あらゆる面におきまして最大限の
努力を払つて来ている次第でございますが、着々その実を結びつつありまして、まあ私
ども本年、来
年度が一つの山と申しますか、来
年度を順調に越しますならば、それなりに自己の力、これまでに築き上げました力で順調に成長して行くというところまで来たのではなかろうかというふうに判断して、まあ本年がいわば国家の力を貸します、大きく力を貸す最後の年であるというよう
なつもりで援助いたしているわけでございます。
以上簡単でございますが概況を申上げまして御参考に供します。