○
政府委員(
岡田秀男君)
中小企業庁といたしまして、現在のところ
中小企業の問題の
対策といたしましていろいろや
つておりますことを概略申述べさして頂きます。
昨年一時
朝鮮ブームによりまして一時景気が好くな
つておりましたが、去年以来の景気の沈滞によりまして、
中小企業が非常に困
つていることは申すまでもないことであります。その関連におきまして、
中小企業問題が最近非常に重大に成相
つて来ているのであります。その当面の問題もさることでございますが、
中小企業庁といたしまして、過去並びに現在において、ずつとや
つて来て参りますことも合せて申述べさして頂きたいと存ずるのであります。
私
どもといたしまして、
中小企業対策の大きな旗印といたしておりますものが、先ず第一には
組織化の問題、第二といたしましては
中小企業の
合理化、
内部を健全にする問題、第三といたしましては
中小企業の
金融、
信用力の確保の問題を合せました
金融の問題、その他
一般問題といたしまして税の
関係をどうするかという問題、或いは
中小企業の人々は
経済情勢の資料が入手しにくいから、その点を我々のほうで極カニュースを流すという問題、或いは見本市をやりますとか、その他
市場開拓の問題を坂上げるというふうな、いろいろの一連のその他の問題、四つに分け得るかと存ずるのであります。
中小企業の
組織化の問題といたしましてまは、
中小企業はそれ自体として
中小企業者が全身、全財産を投げ打
つて仕事をされておりまする
関係上、いわゆる会社の経営よりは身が入
つた仕事をされているという特徴もございまするけれ
ども、その財力が非常に弱く、
販売力も弱いというふうな
関係から、どうしても
経済変動が参りますと、そのあふりを直接に受けやすい、さような
意味合から、特に又戦後
親工場の力が弱
つており、或いは問屋の力が弱
つているというふうな
関係も併せまして、我々といたしましては
相互扶助の精神に基きまするところの
協同組合の結成ということを強く推進して参
つているのであります。丁度
中小企業等協同組合法が制定されまして、すでに三年を経過いたしているのでございまするが、その間、
組合の
結成数から申上げますと、概ね二万八千
組合ができているのでございます。それによりまして
関係しておりますところの
中小企業の数は、大体全
中小企業の数をどう抑えるかによ
つて多少違うかとも存じまするが、概ね六割
見当のかたがたが
中小企業の
協同組合に
関係しておられるようにまあ推測いたしておるのであります。ところがこの
組織化の問題で一番我々が今後努力いたさねばならんと考えておりますのは、数の点では月に二百くらいの
組合が今でも増加しつつあるのでございますけれ
ども、その中身におきまして、本当に
組合員のために役に立つような
活動を堅実にや
つておりますところの
組合が何ぼあるか。過去の
統制時代におきまして設立されましたところの
統制組合の看板を掛け直しただけで、ただ名前は
協同組合でございますけれ
ども、殆んど休眠しているような
組合がどのくらいあるか、その点を把握いたしまして、若し
組合員の数が余りに大き過ぎて、
活動がしにくいというふうなことがございますれば、むしろこれを分断いたしまして、同志的な結合にふさわしい姿に改組するというようなことも考えられる次第でありまして、最近
大阪等におきましてもさような事例が多々ありまして、改組いたしました結果、中金の
金融ベースにも乗つたというような事例もございます。そういうような
意味合におきまして、今後は
組合の
内部を強化いたしまして、
組合員のために役に立つ
組合に育
つて行くという
方向に努力を傾注いたしたいと存じまして、新たに
組合診断制度というものを設けまして、従来一
企業の
診断でありますとか或いは産地の
診断でありますとか、又縦の
系列の
診断等をや
つておりましたのと加えまして、
組合内部の
診断制度というものを強力に推進いたしまして、そうして先ほど申しましたように、
中小企業のために本当に役に立つ
組合を育
つて行くという
方向に努力いたしたいと存ずるのであります。そうして
協同組合が本当にその
組合のために役に立つ
活動をするところの
一つのよすがといたしまして、
共同施設を作るということが考えられるのであります。一人一人の
組合員によりましては買うことができない
機械設備或いは
運送機関というようなものを備えることによりまして、非常に利益を受けるということが考えられるのでありまして、私
どもといたしましては、過去二十二年以来
共同施設に対する
補助金の
制度を設けまして、本
年度までにおおむね五百数千万円の
補助金を約七百八十ぐらいの
組合に出しておるのであります。本
年度の
予算が二億円でございます。これは甚だ御自慢にならん数字
でありまして、私
どもといたしましては来
年度におきましてはこれを相当増額いたしたいという気持を持ちまして
大蔵省等と
目下交渉中でございます。
第二の
企業の
合理化の問題につきましては、従来から
企業の
診断制度というものを設けまして、そうして今年からはその
診断員の
登録制度も設け、有能なる
診断員を動員いたしまして、それによ
つて企業の
診断をやる、そうしてその欠点の所在をはつきりと掴みまして、
改善方策を
勧告いたすということを従来からや
つて参
つておるのでありまして、すでに
工業関係におきましては八千件
程度の
診断をやり、商業につきましては三万件
程度の
診断をや
つて来ておるのであります。この
診断制度を振返
つて見ますると、やはり従来
診断員の素質において不十分な点があつた。殊に東京、
大阪等の大都市におきましては有能なる
診断員を得ることが比較的容易でありますけれ
ども、地方の
府県に参りますると、これがなかなか十分でないのであります。又県庁の
職員等を
短期養成をいたしましても、養成を受けました県庁の職員が短期間に他の職務に転ずるというような欠陥もございます。大都会におきますところの有能な
診断員を
プール制度によ
つて地方の
診断員と結付けるというようなことも今後是非やりたい。それから
診断の結果かようなふうにやつたらよろしいでしようという
改善方策を
勧告いたしまするのでありますが、その
勧告した
あとにおけるところの
指導が完璧を得ておらないように思うのであります。保健所における
巡回看護婦のような
制度がございまして、自宅療養しておるところの患者を巡回して
看護婦が廻る。そうして医師が
勧告しました
療養方法を実際にや
つておるかどうかというようなことを見廻り、更に親切に
指導しておるわけでありまするが、私
どもといたしましても、
勧告をやつた
あとにおいて
中小企業者がその
勧告を
如何ように採用しておるか、又その
勧告に従おうとして果して順調にや
つておられるかどうか、非常な困難な事態に遭遇することはないか、例えば
金融の問題にいたしましても、事後の
指導によりまして
診断と
金融とを結付けるということも可能になる場合が多かろうと思うのであります。さような
意味合におきまして私
どもの
希望といたしましては、
巡回指導員のごとき
制度を各
府県に設けまして、この
勧告の結果を活かすような
指導をやりたいというのが私
どもの
希望でありまして、これもいろいろとまあ折衝中に相成
つておる次第であります。
なおこの
診断の
一つのやり方といたしまして、
企業に
系列の
診断ということをいたしておるのでありまするが、これが丁度
親工場と
下請との間におきますところの
下請代金の
支払遅延の問題の解決にも或る
程度の役に立
つておるように存じまするので、今後は更にこの
系列診断に大いに力を入れて参りたい、かように考えるのであります。又
あとで申上げたいと存じまするが、
金融の問題にいたしましても、
中小企業が資力が弱いという点から
金融がつきにくい面が多いことはもとよりでありますけれ
ども、その帳簿その他の
経理関係が非常に不備であるために、そのために金が動かないという場面も非常に多いと存じまするので、経理の
指導、簡単な帳簿によりまして経営の内容がそこに記帳される、それによりまして
金融も
改善し、税の
関係も円滑に行くというふうな
方向に
指導したい、着々や
つておる次第でございます。
なお
設備の
改善、つまり
中小企業者の弱みの
一つといたしましては、持
つておりますところの
設備が非常に古い、陳腐化した
機械を非常な無理な
状態で動かしている、
労働強化によ
つて機械の悪い点を補おうというふうな苦しい
状態も見受けられるのでありまして、何とかしてこの
設備の
改善を図りたい。かような考えから先般の議会において、成立いたしました
賠償指定の
国有財産の解除に伴いまするところの
賠償機械の
交換制度というものを今動かしておるのであります。これは
賠償指定にな
つておりました
機械のうちから、おおむね五万弱の
機械を
中小企業の持
つておりますところの旧式な
機械と交換をしてやろうという
制度であります。目下各
府県別に枠の割当ができた
状態であります。これによりまして或る
程度中小企業の
機械の
近代化ということに役に立とうかと存じておるのでございます。なお
全国の
府県の中におきましては、
府県で
機械を自分が買いまして、これを
中小企業に貸しておる
府県があるのであります我我といたしましてはこういうふうな点も若しできますることならば大いに促進をして行きたいというふうな
希望を持
つておるのであります。
金融の問題が、
中小企業問題と申しますと、どちらかと申しますれば、さような今概略申述べましたようなこともさることながら、
金融の問題が中心であるように現在はな
つております。特に年末を控えましてさような点が多いのでございまするが、私
どもの
金融対策といたしましては、先ず第一に
市中金融一般銀行、
金融機関に対しまして
中小企業に対する
金融を極力や
つてもらうようにこれを進めて行く、更に
中小企業の
専門の
金融機関に
資金源を供与いたす、それによ
つてこれを大いに育成して参る。更に
中小企業者の
信用の足りません点を補充して参るために
信用保険をや
つて行くというふうなことが一応の中心をなしているのでありまして、最近の
中小企業者が金に困
つておりますという点を、私
どもでも非常に心配をいたしているのでありまするが、私
どもの調べましたところによりまする
手形不渡の
状況をちよつと見ましても、昨年におまましては
全国で
月平均が約二千五百件ぐらいでありましたのが、本
年度に入りまして四月から九月までで平均三千六百件
程度、四割強の増加を示しているようでありまして、而もその
平均金額が約十万円
程度であるということから推して見ますると、
中小企業の不渡が非常に多い。
従つて中小企業の
金融状態が悪化しているというふうなことの
一つの現れではないかとも考えているのであります。そうして
金融機関の
状態を見ますると、全
金融機関の
貸出額が本年の、これは少し古いので恐縮でございますが、七月で二兆四千六百億ぐらいでありまするが、
中小企業向けが七千四百二十二億、約三%に相成
つているのであります。
全国銀行の
状態を見ますると、本年の七月
貸出総額が一兆八千五百十七億、そのうち
中小企業向けが四千五百五十三億あるのでありますが、昨年の、ちよつと月が食い違いますが、六月におきまして
貸出額が一兆二千十二億、
中小向けが三千三百九十五億、そうしますと
貸出総額におきましては六千五百億、約五割四分殖えておるのに対して、
中小向けの
貸出は千百五十八億、約三四%の増ということに相成
つておりまして、
全国銀行における
中小向けの
貸出がだんだん圧縮されておる
状況が分るのであります。それに対しまして
中小企業専門の
銀行におきましては、二十六年の六月に千三百五十六億であつたものが、今年は二千八百六十九億
中小企業向けに
貸出されまして、全
金融機関の
残高のうち、二十六年におきましては約二七%を
中小企業専門機関が取扱
つておりましたものが、本年の七月では約三九%に伸びておるというふうな
状態でありまして、どうしてもこの全体の趨勢を考えますると、大
銀行に対しまして
中小企業専門店舗等の設立を慫慂する、いろいろと
お願いをいたすことの努力を今後も当然継続せねばなりませんと同時に、やはりこの
中小企業専門の
金融機関を大いに育成鞭撻することをいたしませねば、
中小企業の
金融というものは解決できないということが、そういう数字からも分るかと思うのであります。それによりまして、又年末がいよいよ迫
つて参りまして、特に年末
金融という問題も別な観点から取上げて
対策を講じなくちやならんというふうなことと相待ちまして、最近私
どものほうで
大蔵省に
お願いいたしましたりいたしまして打ちました手は、先ず
国民金融公庫に対しまして
政府出資を三十億と
資金運用部からの
借入を二十億この
補正予算で
お願いをする、而もその
資金運用部からの
借入は、仮に
予算の
国会通過が遅れましても別途
法律を
お願いいたしまして、その
法律が通ればすぐ見合いの
借入ができるような
方法も講じておられるのであります。又商工
組合中央金庫、つまり従来は
協同組合又は
組合員だけの
専門の
金融機関でございますが、これに対しまして国庫から二十億の貸付を行うということが
補正で盛られたのであります。私
どもといたしましてはこの二十億を単なる二十億ならしめず、これを最も有効に活用する方途につきまして目下
大蔵省と鋭意折衝中でございます。又
預託金につきましても、本年の十一月に年末
金融の繁忙を予想いたしまして、特に
中小企業専門の
機関に五十億の
預託の増をやる、そうして従来の
預託残、
中小企業向
金融機関、つまり商工中金、
相互銀行、
信用金庫等に対しまして
預託にな
つておりました百八十億のものと合計いたしまして、これでまあ
中小企業の
金融の金の余裕をつけるということをいたしたのであります。なお
信用保険の
特別会計におきまして、当初
予算におきましては
金融機関との間におきますところの
保険契約の枠が七十二億、それから
信用保証協会を相手といたしますところの
保険の枠が二百四十億と相成
つてお
つたのでありますが、
金融機関との
関係におきまする
保険契約が随分伸長いたしまして、七十二億大むね使い果すような恰好になりましたので、これを倍に殖やしまして、
中小企業向けの
金融機関関係の
保険の充実を図つたような次第でございます。先般の第十三国会で通過いたしました
特定中小企業の安定に関しまするところの
臨時措置法の、その後の
状況でございまするが、現在綿、
スフ織物の
関係で、
地区別の
調整組合が二十六設立されておりまして、更に
全国一本の
連合会と、それからその他の
地区の
調整組合四つが
認可申請中でございます。なお絹、
人絹織物の
関係におきましては石川、福井、富山、桐生の四
地区において
輸出向けの絹、
人絹織物の
調整組合が設立されておるのでありますが、このほかに石川におきましては
内地向けの
織物の
調整組合が
認可申請の準備に相成
つておるのであります。その他
繊維雑品につきましては五
組合ができておりますほか、
編みレース等で
全国一本の
調整組合が設立されておるのであります。
マツチその他全部で数十の
調整組合ができておるのでありますが、実際
調整規定を発動いたしまして動いておりますのは
マツチの
調整組合と
輸出入絹の
染織関係の
組合との二つのようにな
つております。その他につきましてはまだ本当に
調整をやるという段階までは至
つておらないように存ずるのであります。
以上概略を申上げたのでございまするが、足りませんところは御質問によりまして補なわせて頂きだいと思います。