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1953-03-04 第15回国会 参議院 本会議 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月四日(水曜日)    午後零時二十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十九号   昭和二十八年三月四日    午前十時開議  第一 私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明)  第二 国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律の一部を改正する法律案(河井彌八君外二十名発議)(委員長報告)  第三 旧外貨債処理法による借換済外貨債の証券の一部の有効化等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第四 保険業法の一部を改正する法律条(内閣提出)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程に追加して、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。本院において指名する湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員は三名でございます。
  5. 木村守江

    木村守江君 只今湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員選挙は、成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  6. 高橋道男

    高橋道男君 私は只今木村守江君の動議に賛成いたします。
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木村守江君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長は、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員に、徳川宗敬君、岩男仁藏君、鈴木強午君を指名いたします。      ——————————
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案。(趣旨説明)  本案につきましては、特に本会議において内閣よりその趣旨説明を聴取する必要がある旨の議院運営委員会決定がございました。これより国務大臣趣旨説明を求めます。緒方国務大臣。    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  10. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 只今上程されました私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由説明いたします。  昭和二十二年七月に独占禁止法施行されましてから、早くも五カ年を経過いたしたのでありまするが、その施行の経験に徴しまして、本法の諸規定のうちには我が国経済特質実態に副わないものがあり、これがため経済発展却つて支障を来たす虞れがあることが感ぜられたのであります。もとより、国民経済の民主的で健全な発達を促進するため、私企業による市場独占のもたらす諸弊害を除去し、公正且つ自由な競争を促進しようとする独占禁止法根本精神は飽くまで尊重すべきものでありますが、この際、内外情勢推移に鑑みて、独占禁止法に適当な調整を加える必要があると考え、本法律案を提出するに至つた次第であります。  本法案改正の項目は多岐に亘つておりますが、その主要なものは、特定の場合、即ち不況に対処するため必要がある場合及び合理化の遂行上特に必要がある場合における事業者共同行為を、一定の条件の下に認容したこと、企業の健全な結合に資するため、株式の保有、役員の兼任等制限を緩和したこと、不公正且つ不健全な競争乃至取引方法を抑制するため、不公正競争方法に関する現行法規定を整備したこと、事業者団体法廃止して必要な事項を独占禁止法中に収めたこと等であります。  以上が本法律案提案目的及び要旨であります。何とぞ御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。(拍手
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今国務大臣趣旨説明に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。波多野鼎君。    〔波多野鼎講登壇拍手
  12. 波多野鼎

    波多野鼎君 只今上程されました独占禁止法改正法律案は、日本経済のあり方を根本的に変革しようとする重要な法案であります。政府はこの重要な法案を本日この議場に提案したにつきましては、相当の決意を以てなされたことであると信じております。然るに、過日吉田首相は、我が国憲政史上のみならず、世界の憲政史上にも類例のない未曾有の事態を惹起いたしました。首相法的責任はとにかく、政治道義上の責任をとるべしという声は巷に満てる有様であります。道義の問題は政治運営上特に重要なることは多言を要しません。殊に、国民道義の高揚と、これを説く吉田首相といたしましては、恐らく深刻なる自己矛盾を感じておいでになると思うのであります。(拍手首相の心境をこの際はつきりとお伺いいたしたいのであります。(拍手)  第二に、独禁法改正を必要とする理由といたしまして、只今提案理由説明を聞いておりますと、独禁法我が国経済特質実態に副わないということが指摘されておりますが、それは如何なる意味でありましようか。明確に御答弁が願いたい。  第三に、独禁法経済発展却つて支障を来たすと、こう言つておられますが、経済発展とはそもそも何でありましようか。政府は、独禁法改正して生産制限をやらせたり価格引上げを認めることが経済発展であると考えおいでになるかどうか。明確に御答弁を願いたい。  第四、「内外情勢推移に鑑みて」と、こう説明されておりますが、内外の諸情勢のうち、我々がすべて注目いたしております点は、外国物価に比較いたしまして、日本物価が割高であるということ、これが最も重要な情勢一つであるのに、価格カルテルを認め、物価引上げを認めるような措置を講ずることが、果して適当な措置と言えるでありましようか。政府はど考えておるか。この点を御答弁を願いたい。  第五に、政府独禁法根本精神は飽くまで尊重すると説明いたしておりますが、我が国経済特質実態に副わないと政府考えるその独禁法精神をなぜ尊重するか。私はその理由を明確にして頂きたいと思うのであります。  第六、生産カルテルを認めることは日本経済の基盤を更に弱くするものではないか。事業家が易きにつき、温室の中に閉じこもることによつて国際競争力を弱めることになりはしないか。この点についての政府の御答弁を願いたい。  第七、消費者利益を一体どうするつもりであるか。生産力不足のときには売手市場で、消費者たる国民大衆は収奪されて参りました。今、生産力がやつと回復いたしました今日、再び生産制限を合法化することによつて売手市場を形成させ、かくして再び消費者を収奪することを認めんとしようといたしております。消費者たる国民大衆は如何なるときも浮ぶ瀬がないというようにするのが政府の意図であるかどうか。これも明確にして頂きたい。  第八、関連産業消費者と同様に利益を侵害されます。例えば先般行いました紡績の勧告操短によりまして、原糸高製品安のため、織布専業者メリヤス業者も非常な圧迫を受けておる。この事実を政府は御存じであるかどうか。この点についても御答弁が願いたい。改正法律案の第二十四条の三の規定消費者並びに中小企業者利益擁護目的を果し得るものではないと私は信じております。あのような微温的な規定では到底消費者中小企業者利益は擁護できません。別に手段を講ずる必要があると思いますが、政府はどう考えておるか。  最後にアウトサイダーを認めるかどうかの問題であります。アウトサイダーを認めればカルテルの効果は失われると思います。最近の新聞によりますと、輸出入取引法案におきましては、アウトサイダーに対する強制命令を発し得ることにして、事実上アウトサイダーを認めない方針をきめたようでありますが、この独占禁止法改正法律案においてはアウトサイダー取扱はどうなつておりますか。この点も明確にして頂きたい。  私は以上質問の要点だけを申上げまして、答弁によりましては再質問をする時間を留保いたしておきます。(拍手)    〔「答弁々々」「重大な関連質問じやないか」「第一の質問答弁しろ」「大体緊急質問を禁ずるからだよ」「進行々々」「総理答弁答弁を阻止したら問題はあとに残るぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の予算委員会におけを言葉が問題を惹き起したことは、誠に遺憾と存じます。併しながら、問題は簡単でありますから、私から一身上の弁明その他はいたしません。静かに懲罰委員会決定を待つております。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答え申上げます。  現行独禁法は、企業者間の競争を余りにも重視し過ぎ、殆んど一切の協定或いは共同行為禁止しておりまするので、日本のような、資本の細分化し、底の浅い経済機構では、却つてこのため不況時には必要以上の激甚な競争が行われまして、いわゆる共倒れとなる混乱さえ惹き起す虞れがあるのであります。こうなりますと、大企業中小企業の別なく、却つて不安定の事態に苦しむことになり、健全なる経済発展支障とも相成りまするので、不況時等特定の場合に共同行為を認めて、かような行過ぎを是正せんとする趣旨でございます。  最近の貿易状況に鑑みまして、政府といたしましては輸出の増進にあらゆる努力を傾注する決意でございまするが、輸出価格を国際的に競争可能な水準に安定せしむることが輸出振興の大道でありますることは御承知通りでございます。従いまして、輸出産業につきまして不況カルテルを認める際には、特に輸出可能な価格水準の安定、このことを目途として慎重な取扱をいたしたいと考えております。  独禁法根本精神を尊重するというのは、公正な競争、この公正な競争を維持せしむることを基調といたしますることを、それを何も否認しないということを言うのでございまして、不況切抜けのため、或いは例外的にカルテル等共同行為を認め、或いは又無謀な競争による共倒れの危険を回避し、自主的な対策を講ずる途を開く等のことは、日本経済安定のために必要且つ有利であると考える次第でございます。輸出産業につきましては、不況カルテルを認める際には、特に幅出可能な価格水準の安定を目標といたしまして、慎重な取扱をいたしたい考えでございまするが、そのために企業者合理化努力が弱まることになつては相成りませんので、政府といたしましては、一方において設備の近代化等合理化を従来通り促進いたしますると共に、合理化によりまして乗り切り得る程度の不況の場合には、先ず合理化による原価の引下げ努力を促し、みだりに協定を認めない方針でございます。  なお、本改正案と関連いたしまして近く提案を予定いたしておりまする輸出取引法改正法案も、輸出入貿易振興及び合理化を図るため現行法改正を加えんとするものでございます。カルテル認可不況克服のために必要最小限度限つて中小企業の立場も十分考慮の上に、公正取引委員会とも打合せの上、慎重を期する所存でございます。又カルテルの必要がなくなりました場合は速かに認可を取消しまして、消費者大衆利益を擁護すると共に、公正な中小企業者等利益を阻害しないよう措置する考えでございます。  アウトサイダーの問題につきましては、今回の独禁法改正ではアウトサイダーの活動を規制する何らの規定を設けておりません。従いまして、アウトサイダー同士で別のカルテル結成することもできる建前にはなつております。これではカルテルが無意味になるではないかというような見方も出て来るわけでございますが、現実の運用考えますると、真に不況切抜けのために必要限度カルテルならば、大多数の企業の参加があると思われまするので、カルテルの実効を収めると思います。従いまして、この際は、本改正案の線で運用をすることといたしたい所存でございます。運用施行の結果を見まして、アウトサイダー不当競争による弊害を生じた場合等におきましてほ、法の改正、或いは別個の立法等措置を考究する用意がございます。(拍手)    〔波多野鼎発言許可を求む〕
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 波多野鼎君。
  16. 波多野鼎

    波多野鼎君 再質問を願います。
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) どうぞ。    〔波多野鼎登壇
  18. 波多野鼎

    波多野鼎君 只今小笠原通産大臣の私の質問に対する御答弁を伺いましたが、私が八つ挙げて質問した点については直接に触れておいでにならないで、何か作文を御朗読なつたような恰好で、甚だ遺憾であります。で、私は重ねて次の点だけを明確にして頂きたいと思う。  二つでありますが、一つは、不況を切抜けるためにカルテルを認めるということは、不況の場合には物価が下つて行く。これは業者としては困るでしよう。併し消費者としてはそれは喜ばしいことであります。その不況切抜けのためにカルテルを作ることによつて下りました物価引上げる、そうして不況を切抜けて行くということは、要するに、業者不況切抜けの負担消費者に転嫁して、消費者の犠牲において不況を切抜けるという途を政府が合法化しようとするものであると私は信じますが、その点は如何でしよう。それから第二の点は、カルテルを取結ぶことによつて、私は国際競争力を弱体化するものであると信じております。その点について先ほど質問を申上げましたが、小笠原通産大臣は一方において合理化を促進するからいいということを答弁されております。併し、一旦カルテルを結んで、そのカルテルの内部において安住することになりますれば、合理化への熱意合理化への努力というものは、それだけ鈍るのであります。それだけ国際競争力を弱体化することにならざるを得ぬと私は思うのでありますが、小笠原通産大臣は如何に考えおいでになるわけでありますか。  もう一つ輸出可能の価格水準に安定させると言つておられますが、今日輸出不振であるゆえんは、日本物価が割高である、これが根本理由であります。割高である物価を下げることこそ政府政策でなければならん。(拍手輸出振興ということを考えるならば……。然るにカルテルを結ばせることによつて価格の吊上げを行なつて行く、これは輸出振興政策とは逆行することであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この点についての明確な御答弁を重ねてお願いいたします。  以上三点であります。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇
  19. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 不況を切抜けるためのカルテルは、業者が、その結成によつて、その負担消費者に転嫁するものではないかというお話でございまするが、さようなふうには考えておりません。つまり、不況で以て財界が混乱するということは、延いて消費者にも大きな迷惑をかけます。生産制限等が直ぐ起つて参ります。生産制限等の結果、その結果は必ずや物価が騰貴する、反騰的になるということは、これはもう蔽いがたい事実でございますので、私どもはこれが消費者に転嫁するとは考えておりません。  なお、カルテル結成によつて合理化への熱意が鈍るではないかというようなお話でございましたが、これは合理化に対することは十分やるのでございまして、又それで鈍るような場合には、これは取消す等の措置もできるのでございますから、さような懸念はございません。  なお、貿易等についてそういう或いは価格引上げ等が行われるということになるじやないか——併し、一番貿易振興させるのは価格を安定さすことでありまして、価格に動揺がないということが貿易振興することであります。従いまして、私どもはあらゆる政策をその価格の安定に注いでおる次第でございます。良質廉価ということ、あらゆる今日の中小産業政策は良質廉価に向つて進んでおる次第でございます。    〔波多野鼎発言許可を求む〕
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 波多野鼎君。    〔波多野鼎登壇
  21. 波多野鼎

    波多野鼎君 今の御答弁から更に疑問がだんだん起きて参ります。一つは、私が、カルテル結成を法的に認めることは業者合理化努力を鈍らせる結果になるということを質問いたしたのに対しまして、若し合理化努力業者がしない場合には、そのカルテルを取消したつていいじやないかという御答弁でありますが、そのような規定改正法律案のどこにありますか。又如何なる標準によりまして、合理化努力を怠つておる、鈍つておるということを判定なさいますか。私は改正法律案を熟読いたしましたが、合理化努力をしない場合にはカルテルを取消すというような規定を不幸にして発見はできなかつたのであります。  それからもう一つの点は、物価が下れば消費者が結局又困るようになる、生産制限などをやられて困るようになる、こうおつしやいましたこと自体が、すでに独禁法改正法律案趣旨反対であることを、あなたは言つておいでになる。なぜならば、独禁法改正法において、物価が下つた場合にカルテルを認めて、生産制限をやつて物価引上げることを前提にしておいでになるじやないか。それを提案しておいでになるじやないか。放つておけばそういうことになるとおつしやるが、放つておかない、これを法律によつて認めて、物価引上げさせて、そうして消費者負担の重荷を負わせることをこの改正法律案狙つておいでになるのでしよう。  この二点についての御答弁をお願いいたします。    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  22. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答え申上げます。  企業合理化によつて事態を克服し得る場合にはこれを適用しないということが、第二十四粂の三にあるのでございまして、それはそういうことではつきり御答弁にこれは代えておきます。(「違う、合理化しないことじやないか」と呼ぶ者あり)  なお今の……、私ども必ずしも価格引上げを予期しておるのではない、価格の安定を予期しておるのでありまして、若し価格が不当に上れば、これを阻止するのは当然でありまして、こういうことはできるのでありますから、価格の安定によつてこの目的を達成しようと考えておる次第でございます。(「駄目だ、この法律は」と呼ぶ者あり、拍手
  23. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 栗山良夫君。    〔栗山良夫登壇拍手
  24. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は日本経済民主化という考え方からいたしまして、私的独占禁止法改正に関する法律案につきまして、首相並びに各閣僚所信を質すものでございます。特に通産大臣は、私の首相及び他の閣僚への質疑に対しまして、重ねて通産大臣としての所信を表明されたいことを要請申上げておきます。  先ず第一に首相にお尋ねいたしたいことは、この法律占領政策の行過ぎ是正のために改正が必要であると考えておられるかどうかということであります。現行私的独占禁止法は、申すまでもなく米国の反トラスト法継承法でございます。米国は、自由人権宣言によつて国を建てまして以来、自由主義的資本主義経済によつて驚異的な発展を遂げて参りました。併しながら、古く一八七〇年には漸く私的独占弊害が現われました。その圧力は厳しく中小企業者一般消費者大衆利益を侵害し、遂に一入七三年に大恐慌が起つたことは、周知の通りであります。そこで大衆の間に期せずしてトラスト征伐の運動が起り、一八九〇年、世論の圧倒的支持の下にシヤーマン法が国会を通過成立して今日に至つておるのであります。反トラスト法資本主義経済横暴をたしなめるために必要欠くべからざる経済民主化の憲法なのであります。  我が国独占禁止法占領軍当局によつて与えられたものではございまするけれども日本戦争責任の追及ということよりは、これこそ米国が、その長い体験からして、日本経済民主化のために必要欠くべからざるものとしたからであります。然るに政府は、占領政策行過ぎ是正重要政策の中に本問題を取上げまして、経済民主化に弓を引こうとしておるのであります。まさに占領政策の行過ぎに名をかりて、旧財閥の復活巨大資本カルテル化を通じて、戦前の軍国主義的資本主体対制の確立を考えておると申さなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)本改正案はまさに経済民主化を阻もうとするところの巻き返し政策であり、又封建的資本主義復活のために経済界における警察予備隊たらしめんとするものであると申して差支えないと思うのであります。米国の反トラスト法成立の経過を顧みつつ、経済民主化に関する根本理念を明かにせられたいと思うのであります。  次に、この改正案によりますると、経済団体連合会などの意見を容れた全面的な廃止根本思想とする通商産業省と、反トラスト法精神を堅持しつつも、経済団体連合会などの意見を尊重し、若干の条件附緩和にとどめようとするところの公正取引委員会との間に、根本的な思想対立があるのであります。然るに本改正案は、この根本的対立を解決することを怠り、実質的にはその重要な行政的決定権通商産業大臣がこれを行使することとなつておるのであります。従つて、一たび本改正案施行された場合には、先に警察予備隊保安隊に、更には名実共に軍隊へと発展しつつある状況と全く同様に、全面的廃止根本思想とする経済団体連合会等の強い要請を容れまして、経済的逆コースに進む独占資本横暴化に対しましては、戦慄を覚えるものであります。首相は、公正取引委員会思想を支持して、公正取引委員会を更に強化し、これにあらゆる行政権を認める意思はないか。重ねて経済民主化基本精神則つて所信をお尋ねする次第であります。  本法律改正国際貿易に与える影響につきまして、外務大臣にお尋ねをいたします。御承知通り目下我が国貿易は極めて不振に喘いでいるのであります。その主要な原因我が国輸出品コストの割高にあるわけであります。従つて政府は、この原因を除去するために企業合理化を提唱し、コスト引下げを指導しているのであります。然るにカルテル独立企業間の協定でありますから、カルテルが企画しているところの安定価格は最も能率の悪い企業コストを償うものでなくてはなりません。従つて安定価格の設定はその業界の他の優位な企業合理化を停滞せしめることになる。であります。即ち、安易なカルテルの容認は企業合理化を鈍らせ、国際競争力を弱め、輸出力をみずから減殺することとなるのであります。又こうした科学的合理化によるコスト引下げを怠りつつ、なお国際競争に臨みますためには、今日硫安で問題になつておりまするごとく、輸出向け国内向けとの二重価格制をとり、輸出価格国内価格より引下げるよりほかはないのであります。これはまさに国内に向つて価格の吊上げであり、海外に向つてはダンピングであります。このような国際的にも問題のある私的独占禁止法改正を、諸外国の動きを度外視して大幅に改正するとすれば、国際的信用を失墜し、今後、各国との通商協定の締結その他貿易上不測の支障を生ずるものと考えられるのであります。かくて貿易振興を唱える政府がおよそ貿易阻害政策をとられることは、何といたしましても理解ができないのであります。岡崎外務大臣所信を伺うゆえんであります。  次に私は、経済団体連合会に結集している大企業に片寄るのでなく、中小企業を含めた総合的な経済界の積極的な安定について、大蔵大臣所信を伺うものであります。このたびの私的独占禁止法改正の特徴的な政策は、通商産業省公正取引委員会との対立生産者消費者との対立、大企業中小企業との対立であります。そうして最も激しいのは中小企業者反対の声であります。中小企業は現在でも組織力は弱く、到底カルテル結成など思いも及ばないところでありまして、常に大企業から圧迫を受け続けておるのであります。然るに今度政府は更にその政策を通じて中小企業圧迫に乗り出して来たのであります。たまりかねた全日本各種中小企業団体は、昨三日、神田共立講堂におきまして全国大会を開いて、中小企業圧迫法であるところの独占禁止法改正反対と、中小企業組織破壊法であるところの所得税法の一部を改正する法律案、これに対しまして反対の意思を決定し、強烈な反対運動を展開することになつているのであります。大企業に対してはカルテルを認めて大企業の業界支配権の確立を許しつつ、一方において永年培つた信用と努力によつて法人組織の確立を急いでいる中小企業者に対し、法人組織の否認を一税法を塚て強行しようとしているのであります。まさに政府の産業政策は完全に大企業への一辺倒的サービス政策に堕しつつあるのであります。大蔵大臣は全国的に巻き起りつつあるこの中小企業者反対運動をどう考えられるか。この反対を容れて中小企業に関係する部分の税法の改正を撤回するお考えがないかどうかを伺いたいのであります。  次に、通産大臣はしばしば、私的独占禁止法改正経済安定に役立ちこそすれ、経済界に害毒を流すものではないと強弁をせられております。この大臣の言うところの経済安定とは大企業の安定のことを意味するのか、御所信を伺いたいのであります。今日只今独占禁止法施行されているにもかかわらず、すでにカルテル行為すれすれのことが中小企業者及び消費者大衆圧迫の上に行われているのであります。例えば昨年暮あたりから上向きに転じて参りました卸売物価のごときは、業界のカルテル的な人為的吊上げであると経済審議庁では発表しております。即ち、綿糸は行政勧告という抜け道で操短を行い、鋼材関係では八幡製鉄の引上げに対し他の鋼材メーカーが暗黙の了解を与えているというのであります。又、人絹糸は業界が出荷調整を行うなど、独占禁止法すれすれのところで価格引上げを行なつているのであります。又、化繊、石油の価格協定独占禁止法違反の疑いで調査中であり、硫安価格の建値決定では、横田公正取引委員長が衆議院農林委員会において、独占禁止法及び事業者団体法違反であると思うと言明しているのであります。大臣は、これらの事実、及びこの事実が中小企業者圧迫し又消費者大衆に不利益を与えたことをお認めになるかどうか。又、今日ですら、すでに今申上げたような状況にありまするときに、更に本法が改正をされまして、カルテル結成が常々と許されるといたしますると、その理由の如何を問わず、一業界から他の業界へと漸次広範囲に波及し、遂に大企業が完全な共同行為に入ることは必至でありましよう。そうしてカルテル行為の行いがたい中小企業者、農民、労働者の受ける不利益は測り知れないものがあります。日本のごとき経済の底の浅い国では、一八九〇年頃の米国に発生した恐るべき社会的恐慌を誘発する虞れはないかどうか。以上二点をお伺いいたしますと同時に、私が首相、外相、蔵相に行なつ質問に対しましても、改めて通産大臣としての御所信をお伺いするものであります。  最後に、公正取引委員長に率直な御所信の表明を希望するものでございます。本法の改正案の立案に当つて、通産省と公正取引委員会対立をしている、カルテル認可権の争奪戦をやつている、役所の縄張り争いである、こう一部の世論がこれを批評いたしましたけれども、私はこの問題をそうは見ていないのであります。公正取引委員会の、カルテル禁止を原則とし、例外的に、例えばコスト割れとなり、現に倒産休業の止むなき事態に立ち至つた場合に限るとの主張と、通産省の、全面的廃止を原則とし、濫用防止規定を作り、倒産休業の事前予防措置まで許そうとするところの、根本思想対立であつた考えます。これは公益に奉仕するか私益に奉仕するかの考え方の分れでありまして、カルテル認可権を公正取引委員会と通産省のいずれが持つかは、カルテル認可基準の解釈に大きな差を生ずるものでありまして、本法改正案の実質的な内容を左右するほどの大問題であると思うのであります。公正取引委員会は、早く改正案要綱を公けにし、又その解説資料を発表せられて、殊にその結びの言葉におきましては、「カルテルの容認は限定方針をとる。カルテルを無制限に容認し、弊害が生じたとき規制を加えるという方策は、独占禁止法根本的性格を変更することとなり、その弊害の除去は困難であろう」と言つておるのであります。そこで、この説と立場を支持して参りまして横田公正取引委員会委員長としては、一消費者、一中小企業者の立場に立ち、只今提案されておる改正案で以て、あなたの説を責任を以て実行し得るものであるとお考えになつているかどうかを、率直に勇敢にお答えを願いたいのであります。経済民主化の憲法が骨抜きになろうとしておるときであります。勇気を以て本議場を通じ国民にお答え願いたいことを申上げまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 独禁法改正趣旨は、独禁法を我が経済の実情に合致せしめんとするものであります。特に、本法制定当時の内外経済事情と現下の経済事情とは相当に相違があるので、我が国の産業を国際市場の現状に対応せしめ、又我が国経済の現状から言つて必要な資本の蓄積又は企業者共同行為を一定の場合に認め得るよう、これが調整を行うということであります。金融資本家一部の者のためにこの改正を行うのではございません。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  26. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今回の改正法案は、産業の合理化を促進してコストの切下げを助長すると共に、国際貿易におけるダンピングなどのことを防ぎ、互いに自制させるという趣旨でありますので、これが我が国貿易発展に阻害になるとは考えておりません。又諸外国における独占禁止規定我が国ほどに厳重ではないのでありまするから、この程度の改正が問題になる虞れはなく、外国側もこれを十分理解するものと信じております。    〔国務大臣向井忠晴君登壇拍手
  27. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 改正案趣旨は、特定の産業が不況等によりまして事業の継続が困難になる、そういう場合、これを放置しておきますと、その影響がほかに波及して国民経済全般の利益を害することになる、そういう虞れがありますので、そのようなときに企業共同行為を認める趣旨でございます。中小企業利益を害するような場合には認可を与えない方針でございます。この趣旨から、認可し得る場合の条件も厳格に定められておりまして、又主務大臣の認可とは申しましても、主務大臣が単独で認可できるわけでなく、公正取引委員会の認定を経なければならないとしております。又場合によりては公正取引委員会はこの認可の変更又は取消を請求することができ、一カ月後には自動的にその効力が発生する、そういう規定でございますから、企業に対する一般国民の利益も十分擁護されるのでございます。従つて企業中小企業利益を著しく害するような共同行為も認められないのでございまして、御質問のような懸念は必要ないものと考えます。  税法改正案の撤回ということは只今考えておりません。(拍手)    〔政府委員横田正俊君登壇
  28. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 只今、今回の改正によつてカルテル等が無制限に認められ、中小企業或いは消費者に非常な損害を及ぼすことはないかという御質疑でございました。この点につきましては、先ほど申されましたように、多少の立場の相違からいたしまして、政府部内においてもいろいろな考え方がございましたが、幸いに大体私どもがこの線は守らなければならないといたしました線にほぼ一致した結論を得たことは、私として非常に嬉しく思つている次第でございます。  カルテル認可権は形式的には主務大臣においてこれを行うという形にはなつておりますが、御承知のように、改正法をよく御覧頂きますれば、実質的には、カルテルを認める要件が備わつているかどうかにつきましては、前提といたしましては公正取引委員会の認定が必要になつておりますし、なお、認可後におきましても、いろいろ消費者圧迫し、或いは中小企業に迷惑をかけるという事態が生じましたような場合には、これを主務大臣みずからも取消すことができますし、公正取引委員会から主務大臣に向いましてその変更又は取消を請求でき、只今大蔵大臣が申しましたように、この請求がありました後一カ月を経ちますと独占禁止法が発動できるという形になつております。なおカルテルを認めます要件が極めて限定的になつておりますことは御承知通りでございます。  要は、こういう法律ができました後に、果してこれが諸般の弊害を伴わないように運用ざれるかどうかにあると存じます。この点はどうぞ私どもを御信頼頂きまして、法律精神がこの線に沿つて立派に運用されますよう我々といたしましても十分の努力をいたしまするし、又一般の方々も我々のいたしますことをよく見ていて頂きまして、或いは足らないところ、或いは行過ぎであつたところ、いろいろあるかと存じまするが、それらに対して鋭い御批判を頂き、その上に立ちまして私どもは公正な果断な処置をとりたいと考えております。    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  29. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 現行独禁法は、私ども考えまして世界で最も行過ぎている法だと思います。どの世界のものを見ましても、日本独禁法ほど峻厳なものは一つもございません。特にイギリス等のごときは、これは商務省の中にあつて届出主義で立つているのでありまして、日本のものは非常に峻厳なものであります。峻厳なものであるだけに実は実情に副わないのでありまして、その実情に副わぬ行過ぎの点を改めているのでございまして、何もそれが弊害を生ずる虞れは万ないと、かように私どもは固く信じている次第でございます。  それから、不況の切抜けのためにカルテルを認める場合にいたしましても、これは企業合理化が弱くなりますれば国際競争力に堪えないのは当然でございます。そこで、企業合理化についてそういう措置を怠つている場合には、これは許さないことに相成つておりまするし、私どもは、不況対策の場合においても、又合理化の場合でも、できるだけ原価を引下げ努力を促すことにいたしたい、かように考えております。  又、現在程度の改正ならば、先刻外務大臣から話がありました通り、まだ日本がこれでも恐らく強いうちの二番目でありましよう。従つてアメリカに次いでのものであります。とても、イギリス、西ドイツよりもなお強いのでありますから、中には全然こういう立法措置をとらぬヨーロッパ諸国もたくさんあるのでありまするから、私どもはこれが何ら貿易に妨げあるとは考えておりません。  なお、本法に認めるカルテルというのは、大企業利益を擁護することになるのじやないか、こう申されましたが、そういうことを実は目的としたものではなくて、勿論さようなことを目的とするはずもございません。つまり大企業というものを、これに関連する中小企業も、すべて経済不況が深刻になつて来ると余波を受けまするので、根本的には実際両者が対立関係にあると見るのは間違つてつて根本的には実は一体となつておるという点があるのでありまするから、さような場合に措置したいというのでありまして、私どもはそういう場合にカルテルを認めることは皆の利益であつて、何ら行過ぎでない。かように考えておるものでございます。但し中小企業消費者への影響が若し悪いような場合には、これはよく公正取引委員会と打合せまして万全を期するつもりでございます。又産業の不況を打開するため、或いは合理化のためにこれを認可するというのは、何と言つても産業行政を把握しておる責任に立つておる主務大臣がこれを認可するのが当然でございます。但し、その間に公正取引委員会によく意見を聞き、その認定に基いてやる、これだけの手続を尽すのでございまして、この点、私どもは万遺憾なきものと考えております。  なお御指摘になりましたように、その話の途上におきましては事務的には若干の意見の違いがありましたが、最後には完全に意見の一致をみてこの提案となつておる次第でございます。  更に物価その他についての問題、税法等についての問題もございましたが、これは大蔵大臣より御答弁通りでございます。     —————————————
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  31. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は波多野議員が通産大臣に、この私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正した場合に、こういう弊害が起るじやないか、そういう質問に対して、通産大臣は、そういう弊害は起らない、こういう答弁をしているのですが、私は実に奇異に感じたのです。現在すでに、紡績、鉄鋼、石炭、硫安、或いは過燐酸、砂糖等について、カルテル、トラストが行われております。そうして非常な弊害をもたらしております。例えば、昨年三月、紡績においては綿糸が暴落いたしましたときに、十七万梱の生産を十五万梱に制限し、而も私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律があるにもかかわらず、通商産業省は操短を奨励しまして、十七万梱を十五万梱に抑えて、そうして当時八万円乃至八万五千円程度の綿糸を十万円に吊上げているじやありませんか。そうして紡績業者が非常に儲かつているじやありませんか。そうして機械屋業者は非常に不況に陥つた、中小業者は。更に硫安につきましても、昨年の暮四十万トンの硫安滞貨があつた。農家の春肥のこの仕入時期に当りまして、四十万トンの滞貨のうち二十七八万トンを南鮮向けに出血輸出をいたしまして、そうして一吹八百四五十円の硫安を八百九十五円程度に吊上げておる。そうして肥料業者を儲けさしておる。こういう実例がすでに現われている。紡績、鋳鋼、石炭、砂糖、硫安、過燐酸等、もうすでに現われておる。更に、今度のこの私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部改正、これを通したならばますますそういう弊害を助長するのだ。全く私は通産大臣は実情に副わない答弁をされておると思うのです。この法律は一部の改正と、こうなつておりますが、実は私はそうではないと思うのです。これは全面的改正であり基本的改正です。この法律によつてトラスト及びカルテルが認められるのでありまして、その点においては、このいわゆる独占禁止法を骨抜きにするものだと、私はそう思うのです。言うまでもなく日本経済民主化の基本は経済民主化にあるわけでありまして、この経済民主化が逆転しますれば、経済の基礎の上に立つておるところの政治も文化も教育も、そういうもの全部がこれは反民主的になるのでありまして、それで、この経済民主化規定しました私的独占禁止及び公差取引の確保に関する法律は、経済の憲法とでも言うべきものであります。経済憲法なのです。この経済憲法とも言うべき法律案改正するに当りまして、これが慎重なる考慮が要されなければならん。私は、政府が二十八年度予算の裏付けとして今回国会に提出されて来ました一連の反動立法、ストの制限法、或いは義務教育学校職員法とか、その他の反動立法の中でも、この独占禁止法のこの緩和の法律こそ一番私は民主化に逆行するものだ。一番重大なことだと思う。民主主義の一番基盤を構成するところの経済民主化を逆転せしめるものだ。私は、従つて極めて重大なる改正法律案だと思うのです。で、これに対してもつとこの問題は重要視さるべきであり、各方面の意見を慎重に徴して、憲法改正と少くとも同じ程度の慎重さを以てこの改正に臨むへきだと私は信じておる。  そういう意味で私は総理大臣にお伺い申上げたいのでありますが、  第一に、総理大臣は経済民主化ということをどういうふうにお考えになつているか。私は、経済民主化は、封建的所有、私的独占経済的支配を排除する、それから一般消費者利益を守る、こういうところにあると思うのですが、総理大臣は経済民主化というものをどういうふうに御解釈になつておりますか。  第二には、独禁法根本精神その目的はどういうところにあるとお考えか。その独禁法根本精神目的。  第三は、この改正案は憲法二十五条に違反しないか。憲法二十五条二項においては、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定してあることは御承知通りでありますが、この社会福祉の増進、社会保障、そういう観点から、私はこの改正案は憲法二十五条第二項に違反すると思うのでありますが、総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。  第四に、この改正は、やがては独禁法廃止にまで行くのではないかと危惧される。すでに重要産業安定法というものを通産省は計画いたしました。それの片鱗が現われている。将来、強制カルテル、これができて参り、そうして重要産業統制法、こういうふうに行く危険があるのじやないか、そうしていわゆる再軍備経済体制の基礎をここに作つて行く、そういう含みが持たれているのではないかと私は思うのですが、その点について将来独禁法廃止する方向に行く前提になるのではないかと思うのですが、総理大臣はどういうふうにこれをお考えか。  第五には、農業協同組合、中小企業連盟、主婦連合会等々、中小業者、農民及び一般主婦のかたは、みんな反対決議をしておられます。このように輿論が反対しておるのです。その手続においてもそういう輿論に聞く手続を一体とつたのであるか。十分に私に輿論を反映すべきであると思うが、とつておらないと思うのでありますが、総理大臣はどうお考えか。  第六番目に、私は、これは一般消費者、中小業者圧迫される、そうして占領行政是正の域を遙かに逸脱しておると思うのです。私はそう思いますが、総理はどういう根拠でこれは逸脱してないとお考えですか。根拠を承わりたい。  第七には、この法律案通りますと、日本経済の弾力性がなくなります。動脈硬化になつて来る。昔、日本が対外侵略に向つたのは、結局、私的独占或いは封建的経済の結果として、日本経済の弾力性がなくなつた、そうして対外侵略に行かざるを得ない方向に向いたと思うのです。これは対外侵略のやがては温床を形成するに至ると思う。私的独占というものを強化しますと財閥というものが又出て来るのでありまして、そういう意味において私はこれは非常に重大だと思う。日本が過去において犯した過ちを再び繰返す基礎を作つて行くのじやないか、そう思うのですが、総理はこの点についてはどうか。  それから総理に対しては最後に、先ほど栗山氏も触れましたが、カルテル、トラストの認可の主務官庁を何故通産省にしたか。独禁法運用主体である公正取引委員会になぜしなかつたか。通産省は大資本の代弁者であります。大資本の代弁者、その大資本の代弁者にこの認可権を与えるということは、この弊害をますます助長するのみです。通産省が大資本の代弁者であるという例証は幾らでもございます。この点お伺いいたしたい。なぜ大資本の代弁者である連産省に与えたか。消費者利益を守るところの公正取引委員会になぜこの認可権を与えなかつたか。先ほど横田委員長は政府側と意見が一致したと言いますが、横田委員長は、昨年三月の紡績操短の場合、余りに弊害が大きいので、通産省に対して警告を発したではありませんか。それが無視されているのです。通産省で頬冠りされておる。そういうふうな弱体的な公正取引委員会に、一応認可を与える場合に意見を徴すると言つても、実質的には通産省に押されてしまう。今のような弱体の公正取引委員会では。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて私は、公正取引委員会を強化して、そうしてこれは認可権をどうしても公正取引委員会に与えるべきだと思う。この点如何ですか。  それから次に通産大臣にお伺いいたしますが、原則としてカルテル、トラストを認めて、例外的に取締るのか、或いは、カルテル、トラストを有害として一応否定いたしまして、例外的に認めるのか、その原則論について第一に伺いたい。  それから、これまで独禁法違反を何故指導して参つたか。独禁法があるのに通産省が操短を指導し価格を吊上げるような政策を何故業者に勧奨して来たか。これは私は重大な責任問題であると思う。  それから、もうすでに、カルテル、トラストの弊害は出ている。原料高、製品安輸出の減退、国内消費の圧迫、そうして合理化を怠り、設備の過剰な投資を非常に誘致しておる。この結果、日本経済の正常的循環を妨げている。だのに何故このカルテル、トラストをここで合法的に認めて、更にこれを助長しようとしておるのか。  更に又、大企業の私的統制団体復活して中小業者圧迫するが、聞くところによると、中小業者に対してこの共同行為制限を行わんとしておるようであるが、そういう事実があるかどうか。中小業者への影響、対策如何。  次に、綿紡の輸出調整組合を認めて約十億の出資をして、日銀から百億の金を出して相場の操作に当らせるというが、そういうことを通産相は適当と考えておるか。又公正取引委員会ではこれは妥当と考えておるか。横田委員長にも伺います。  更に、農林大臣に簡単に伺いたいのですが、この硫安、過燐酸において、非常な価格カルテル弊害が生じて参る。生産カルテル弊害もすでに生じておる。農林大臣はこれに対してどう考えておるか。農業協同組合もこの改正案反対しておる。従つて農林大臣は、肥料会社の利益を守るか、或いは農民一般の消費者利益を守るのか、この点について、この改正案についてのお考えを伺いたい。  それから大蔵大臣に対しましては、今度この改正案によつて、金融業者は、従来五%であつた株式保有を一〇%まで認められる。認可があれば一割以上も持てる。一〇%以上も持てる。すでにオーバー・ローンを通じて金融の産業支配というものが非常に強化されている。この改正法律案が通つたならば金融カルテルを通じて金融の産業支配が強化されるのではないか。この点について大蔵大臣はどう考えるか。更にこの結果、金融が独占資本本位になつて中小企業者圧迫するのではないか。この二点について大蔵大臣にお伺いいたします。  最後に公取委員長にお尋ねしたいのですが、公取委員長が今度のこの改正案について政府意見が一致したということは、これは公取委員会の自殺的行為ではないかと思う。今までのすべてに、独禁法があるにかかわらず、カルテル、トラストが実行されて弊害が生じておる。実際に調査すればするほど大きな弊害が出ておる。従いまして、公正取引委員会がこの点を認めることは自殺的行為である。なぜこれに対して、もつとはつきりした態度をとらないか。何かそこに政治的圧迫があつたんではないか。政治的考慮がなされたのではないか。これまで申上げました紡績、鉄鋼、石炭、過燐酸或いは硫安、砂糖などの部面において、カルテル或いはトラスト、こういうものが実際に行われて弊害を生じておるが、これは独禁法及び私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の違反ではないか。何故これまでそれを取締らなかつたか、こういう点について私は最後にお伺いいたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  経済民主化の基本観念如何というお尋ねでありますが、政府として考えておりますことは、自由な私企業の創意と工夫を尊重して、その間の公正な競争確保することによつて国民経済の健全なる発展を期待する、経済民主化の基本観念はこれであると私は考えるのであります。  又このたびの改正案根本的な精神目的は如何。これは先ほど申上げました通り独禁法を我が経済の実情に合致せしめんとするものであります。即ち、独禁法制定当時の内外経済事情と今日の経済事情とは相当違つておりますので、我が国の産業を国際市場の現状に対応せしめ、又我が国経済の現状から言つて資本の蓄積又は事業者共同行為を一定の場合に認め得るようにしたい、こういう趣旨でございます。その他の問題に関しては主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  33. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 最初に、綿糸、硫安等についての問題が出ておりましたが、これは御承知のごとく、もうこの綿糸につきましては、私のほうで操業短縮を言いましたのは、あの時分非常に綿業界が混乱しまして、価格があのままで行きますると、その一角から産業界の破綻を来たすような虞れ等もありましたので、それで私どもといたしましては産業界安定のために勧奨をしたのでありまして、何もこれは法律的の根拠がないのでありまするから、それをお勧めをした、こういうだけのことであります。なお、これが中小企業に対する圧迫を認めるかということでございましたが、これは私どもは別に中小企業をこれで圧迫したものとは認めませんが、あの時分の綿糸界その他の混乱状況をお考えになれば、この点はよくおわかりだと思うのであります。  それから、原則としてカルテルを認めるか、或は例外的に認めるかというような意味のお尋ねがございましたが、これは私どもは、今回の独禁法改正というものは、いわゆる行過ぎを是正する、そうして不況の切抜けと合理化、この二つの場合にこれを適用しようとするのでございまするので、いわば例外的であります。而も事業者間の自主的共同行為を認めるのでございまして、而も書いてある通り不況が解消いたしましたり合理化が行われますれば、これはもう認可を取消す等のことをやるのでありますから、又変更する権限も持つておるのでありまするから、私どもは、あなたが仰せになる公正なる競争を守るという根本精神については何ら変りはありません。又何らこの法律で認めておりません。ただ、カルテル認可運用について、今申上げました通り例外的にこれをやつておる。而もこれは慎重を期するために、公正取引委員会へ相談して、公正取引委員会の判定を待つてやると、こういう次第でございます。  それから、今のお話の中に、今独禁法があるのになぜカルテルを奨励するかということでございますが、カルテルを別に奨励するのではないので、不況の切抜け、又日本合理化をやるということのために、カルテル結成を認めなければ、これがために日本のような経済の底の浅い経済界におきましては、又資本の蓄積の足らぬところにおきましては、いわゆる共倒れになつてしまつて、それが経済界の混乱を来たす因になるのでありますから、これを例外的に認めよう、こういうことであります。この点はよくおわかり願えることと思うのであります。  更に、大企業のみに偏重するではないか、こういうことでございましたが、さつき申しました通り企業というものは大体において一体であります。大企業、中企業、こういうふうに完全に判別することはできない。特に不況時などにおきましては、これが一体となつておるのでございます。大企業のみにどうこうというのではなくて、又これが消費者に影響等がありまするならば、これは認可しないのでありまするから、この点はよく一つ承知を頂きたいと思うのであります。如何なる場合におきましても、私どもはこの法の精神というものは飽くまでも尊重するのでありまするが、さつき申しました通り日本独禁法というものは、占領下に行われた世界で最も行過ぎた法律であります。どこにもこんな厳格な独禁法はありません。イギリスのごときも、御覧になれば、如何に日本独禁法と天地雲泥の相違があるか、これはよく木村さん御承知のことと思います。(拍手)従いまして、この程度に緩和すれば、どこにも、いい影響こそあれ、悪い影響なしと考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣田子一民君登壇拍手
  34. 田子一民

    国務大臣(田子一民君) お答えいたします。硫安、週燐酸等の需給につきましては、生産担当の官庁でありまする通産省と協議の上に、国内需要の充足を第一義と考え、又輸出数量り決定、燐礦石の輸入割当の決定等を行なつておりますが、これは、貿易管理令による輸出許可、為替管理によりまする輸入許可等であります。これらは国民経済の安定を図るためであります。なお、最近の硫安の価格の問題は、現在公取委員会で調査中でございます。(拍手、「答弁落第、総理大臣になれない」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣向井忠晴君登壇拍手
  35. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 独占禁止法におきましては、従来金融機関の株式保有限度を五分と押えて参りましたが、今般、企業の資産構成の正常化を促進する等の見地から、独占禁止法精神に反しません程度に、その保有限度を一割に引上げ、又例外を認めんといたしたのでございますが、なお、その限度につきましては、すでに保険会社において認められておりまして、その経験に徴しましても、金融機関の過度の支配を招来することはないと考えております。(拍手)    〔政府委員横田正俊君登壇拍手
  36. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 只今、今回の改正は何か特別な圧迫によつて公正取引委員会が心ならずもこれに応じたのではないか、こういう御質疑でございまするが、この独禁法改正問題は、先般の事業者団体法改正問題と殆んど同時に、大分前から取上げておる問題でございまして、事業者団体法につきましては、御承知通り先般の国会におきまして相当の改正が加えられました。独禁法につきましては、なお当時総司令部のいろいろな関係がございまして、そのままになつて今日に及んだわけでございます。我々といたしましては、他からの圧迫等の問題とは全然別に、独自に適当な改正をここに加えることを相当長きに亘つて研究して参りまして、昨年の暮に至りまして、内閣とも御相談の上、公正取引委員会において独自の改正案を作り、それを基礎に政府改正案決定し、これを国会におかけするという基本の話がきまりまして、昨年にかけまして鋭意研究いたしました結果、二月の三日に公正取引委員会の要綱案ができた次第でございます。これに基きまして、その後多少の出入りはございまするが、大体この要網の線に沿いまして今回の改正ができておるわけでございまして、只今御疑念のございますような点は全然ないのでございます。  なお、現行法の適用につきまして、例えば綿紡問題、或いは鉄鋼の問題、或いは硫安の問題等につきまして、公正取引委員会がその任務を怠つておるではないかという御質疑でございますが、綿紡につきましては、当時すでに公正取引委員会の見解を発表いたしました通り、あれは政府の指導に基きまする行為でございまして、一般の業者が単に話し合つて操短をしておるものではないという認定に基きまして、綿紡の場合は一種の協定に対して通産省に警告を発するという程度にとどめまして、化繊につきましては、先ほど、どなたか申されました通り、そういう指導の関係が非常に薄うございましたので、これは違反事件として審判に付して現に取調をいたしておる次第でございます。なお、鉄鋼につきましても大分以前から調査は進めておりまして、時々面白くない傾向に対しましては警告を発しておりまするが、併しなお今後といえども、この鉄鋼関係の動きについては厳格にこれを監視して参りたいと考えております。硫安につきましては、昨年の暮にいささか問題がございましたが、そのときは、問題が輸出の問題でございまするし、なお競争相手の外国にいろいろな事情もございましたので、これを一応不問に付しましたが、今回、最近の二月の問題につきましては、先ほどほかのほうから申上げましたように、すでに当委員会において調査を開始している次第でございます。  なお、今後独占禁止法の適用につきましては、甚だ公正取引委員会の機構は貧弱でございますが、この機構を挙げまして一段の努力をいたしたいと考えております。
  37. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  38. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表して質問を試みるものであります。  如何なる口実を設けようが、独禁法はすでに今日では事実上空文に等しくなつているのであります。政府は、これまで大会社の数々の独禁法違反を見逃して来ただけでなく、先に通産省は操短勧告を行なつて政府みずからが独禁法違反をあえてしたのであります。今回の独禁法改正は、これらの非合法を合理化しようとするものにほかならないのであります。特にここ一年来公然と行われて来た数々の独禁法違反が、労働者、農民、市民、中小企業者など、国民の大多数にどんな影響を与えたか。政府はよもやこれを知らないと言い逃れることはできないであろうし、又今回の独禁法改正によつてこれらの事実が一層公々然と行われるであろうことを否定することはできないはずであります。  先ず最初に戸塚労働大臣に伺いたい。例を紡績の操短にとつて見れば、昨年三月以来の操短によつて、約四万人の女工さんが首を切られ、働く途のない農村に帰されているのであります。併し今更村へ帰つても食えないというので、首を切られたすぐその足でパンパンに身を落している娘さんさえ出ているのであります。これは最近各地で聞かされるところであります。一方、首切りを免れて工場に残つた者は、二〇%、三〇%の賃下げを強いられ、第二の操短首切りでおどかされているのであります。こうした労働条件の悪化で、再び大正、昭和初頭のあの女工哀史が繰返されようとしているのであります。このような労働者の一方的犠牲によつて、綿糸は暴落から回復し、大紡績資本の利潤は保証されたのでありますが、戸塚労働大臣はこのように労働者の生活に重大な脅威を及ぼす独禁法改正になぜ賛成されたのか。又労働者のために如何なる保護対策を有するか、伺いたいところであります。  次に、田子新農林大臣にお聞きしたいのであります。現在においても大肥料会社は、輸出には原価を遙かに割つた安い値段でダンピングし、その「しわ」を国内の農民に寄せて高く売り付けるという価格操作を行なつているのであります。廣川前農林大臣は、先月二十五日の衆議院農林委員会におきまして、硫安協会が今回発表した建値一俵八百九十五円は、独禁法違反の疑いもあるから、調査の上、違反の事実があれば厳重に警告すると言明しているが、新農相は、独禁法が改悪されれば、硫安協会がたとえ高い肥料を農民に押し付けても法的には違反しないという結果が生れて来るのである。これに対し如何なる見解を有するか伺いたいと思うのであります。廣川君は政策を離れた議場の掛引のみに没頭して今日罷免されてしまつたのでありますが、新農林行政をあずかる田子農林大臣は、五百万農家の立場に立つて、この独禁法改正案に反対し、この悪法の国会通過を阻止するために職を賭して闘う決意があるかどうかを、この際、併せてその所信を承わつておきたいと思います。  更に、独禁法改正によつて直接最もひどい目に会うのは、我が国三百二十万企業の約九八%を占める従業員三十名以下の中小企業家と、又その下に働くところの約千万の労働者であります。昨年春以来の紡績の操業短縮によつて綿糸の価格は維持されましたが、織物業者、機屋は、原材料の割高と製品安の挟み打ちに会つて、ひどい赤字操業、いわゆる自転車操業をずつと続けているのであります。中小企業連盟の調べによりますと、一月末の大阪綿織物相場は一ヤード五十四円五十銭であるのに対し、線糸相場は五十三円九十二銭で、これに加工賃八円を加えると、織物業者は一ヤード織ることに約七円の赤字を稼いでいるという結果になるのであります。而もペタルを踏まねば自転車は倒れる。みすみす赤字と知つてなお操業を続けなければならない。このような血の出るようなのが自転車操業の実態であります。それにもかかわらず、石炭の大手筋十数社が秘密カルテルを作つて炭価を吊上げ、この高炭価が、或いは鉄鋼に、或いは肥料に、或いはガスに、すべての加工工業に転嫁され、更に最終的には消費者大衆に負わされ、他方では、輸出製品の割高となつて輸出不振に一層拍車をかけていることは、周知の事実であります。小笠原通産相は提案理由説明で、本改正案不況対策としてカルテルを許すものであるように言つておるが、労働者には首切り、賃下げ、低賃金を、農民には高い肥料を、中小企業には赤字を与え、倒産を引起させるのが、何の一体不況対策であるか。而も通産大臣が常々唱えておる輸出振興は、これでは一体どうなるのか。あやぶまれるのであります。国内の独占価格を吊上げて、国外には出血輸出を強行する結果、すでに旧日本帝国主義時代のダンピングが復活し、メイド・イン・ジヤパンの恐怖が再現し、これが諸外国のごとくたる非難の的となつているのであります。その結果、却つて相手国をして輸入防壁を築かしめ、貿易不振に一層拍車をかける結果になることは、火を見るよりも明かなことであります。小笠原通産大臣は、このような矛盾を如何にして解決するか、はつきりしたその対策が承わりたいところであります。  又、今回の独禁法改正によるカルテル結成、株式の保有、役員の兼任、合併などの制限緩和の結果、資本の独占と集中は一層促進されるが、小笠原通産相は、中小企業を見殺しにして、前任者池田君のあとを追うの愚をあえてするつもりであるかどうか。併せてその所信を承わりたいところであります。  これに対し、全国の中小企業家を代表する日本中小企業団体連盟、全日本中小企業協議会など五団体は、戦後初めて大同団結し、昨日現に全国大会を開いて独禁法改正絶対反対を決議しておりますが、中小企業家は、昨年の中小企業安定法の経験を通して、たとえ安定法を多少改正したところで中小企業の安定は絶対にあり得ないことを知り、抜本的、革命的な解決を要求しているのであります。真の不況対策は、一方では、労働者に最低賃金を、農民に引合う農産物価を保証し、防衛費を削減して税金を軽くし、以て国内市場を拡大することであり、他方、中国、ソ同盟など、不景気を知らぬ国々と互恵の貿易を再開し、アメリカの政治的経済的支配から来る圧迫を排して、独立経済を打立てる以外に途はないのであります。然るに政府は、これらの施策は全く捨てて顧みず、今回の独禁法改正においても、不況を一層拡げ、日本経済を特需と兵器生産に頼るのほかに途がない袋小路に追込めようとしておるのであります。小笠原通産相は、平和な経済を捨てて戦争経済日本を導き入れようと努力するのであるかどうか、承わりたい。  私は更に外務大臣に重大な問題を質したい。目下交渉が進行中の日米通商航海条約において、政府は、アメリカ資本が、新株の取得のみでなく、旧株の所有を要求して来ているのに応じようとして来ておると聞くが、その結果はどういうことになるか。独禁法改正によつて集中される我が国独占資本を、アメリカの大資本は少数会社の株式所有によつて自由自在に支配する途を開くものにほかならないのであります。口に占領制度の是正を唱えながら、政府はここでも却つて、アメリカの日本支配、占領制度の強化に協力の手を差伸べ、売国吉田内閣の正体を余すところなく暴露しておるのであります。これに対する岡崎外務大臣答弁を伺いたいのであります。  以上各大臣に対してそれぞれ質したのでありますが、最後に吉田総理に質したいのであります。本改正法案は、アメリカ占領経済の下に生じた諸矛盾に対し何ら抜本的打開の途を講ずることなく、世界的不況の影響を国民大衆に転嫁し、その結果、アメリカ帝国主義に対する従属をますます深め、その鉄鎖の下に戦争協力経済に追込めるものであり、本改正法案こそは、これらの挺子として、今幾我が国の産業経済を大きく支配するものであると断じなければならないのであります。これは又、今問題となつておりますところのスト規制法、義務教育職員法、警察法などと共に、現下の国際情勢の中で、アメリカの巻き返し戦術、その巻き返し戦術の政策を受入れる、それに即応する態勢を打開する、そのための経済的な一つの下準備であると、こう断ぜざるを得ないのでありますが、これに対する吉田総理の見解をはつきり伺いたいと思うのであります。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 本改正案は、先ほども申しました通り我が国経済の事情に対応するように独禁法を調和させたいという以外に何らの考えを持つておらないのであります。従つて御指摘のような意義はないのであります。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇
  40. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申上げます。  昨年の紡績の操短について女工が非常に不利益を受けたというお話でありましたが、紡績の操短は、これは国際乃至国内経済上止むを得ざる措置であつたと存じますが、それにつきましても、各工場におきましては労働基準法の定めるところ以上の休業手当を支給いたしておるようであります。又失職した労働者に対しても、失業保険の適用、或いは職業安定機関による斡旋等によつて、他の業種への転職は順調に行われておると思つております。  只今なお、この改正案に対して私がどうして賛成したかということでありましたが、本改正案によりまして、事業者私的独占又は不当な取引制限禁止されており、又主務大臣の認可及び公正取引委員会の認定など、それぞれ監督規定があるのでありまして、今回の改正によつて犠牲を労働者に強いるものとは考えておりません。(拍手)    〔国務大臣田子一民君登壇拍手
  41. 田子一民

    国務大臣(田子一民君) お答えいたします。  先般硫安協会が硫安の建値を発表いたしまして、先ほど申上げました通り、これは只今公正取引委員会で調査中でございます。硫安の国内価格輸出価格の調整につきましては、肥料対策委員会におきまして検討中であります。なお、硫安を輸出産業一つとして認めている以上は、国内価格輸出価格の差のありますることは、これは認めなければならんと思うのであります。併し国内価格につきまして法的に生産費を調査いたし、適正なるか否かを政府において認める必要があると思うのであります。従つて只今これが立法措置を検討中でございます。  以上お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  42. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 不況切抜けのためのカルテルを認めるにいたしましても、これがために決して企業合理化によるコスト引下げを怠らすものではございません。又さようなことはさせないつもりであります  それから輸出産業の場合は、私どもは、組合の結成によりまして輸出価格が安定をする、従つてむしろ信用を加えて、ダンピング等の懸念を一掃して、輸出振興に資するところが多いのじやないか、かように考えておるのであります。  又、カルテル認可に際しましては、関連産業中小企業その他に不利益を与えませんように、更に又、農民、労働者等の消費者にも不利益を与えぬように、公取とも十分打合せの上で慎重を期するつもりであります。更に、今後の経済について平和経済か戦争経済かというお尋ねでございましたが、勿論平和経済発展を企図している次第でございます。    〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  43. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 日米通商航海条約の交渉に当りましては、政府は、我が国経済の自立と発展を図り、又外資の導入を助長せんといたしておりますが、同時に、我が国経済や産業が外国資本の不当な圧迫を受けないように、株式の収得その他について適当な制限措置を講ずる方針でおります。従いまして御質問のようなことはないと確信いたしております。(拍手
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑ば終了したものと認めます。      ——————————
  45. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律の一部を改正する法律案(河井彌八君外二十名発議)  日程第三、旧外貨債処理法による借換済外貨債の証券の一部の有効化等に関する法律の一部を改正する法律案、  日程第四、保険業法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出)  以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長中川以良君。    〔中川以良君登壇拍手
  47. 中川以良

    ○中川以良君 只今議題となりました三法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告を申上げます。  先ず国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律の一部を改正する法律案について申上げます。  本案は河井彌八君外二十名の発議にかかわるものであります。国有林野の立木の売払におきましては、それが大量である場合又は搬出設備のない奥地林のものである場合には、立木の買受人が搬出設備を設け、伐採し、搬出し、売払いまして、その代金を回収いたしますまでに、相当長期間を要する実情にありまするが、現行法によりますると、他の一般物品と同列の最長半年の延納期間を認められるに過ぎないので、これを是正して実情に即応した取扱ができるように、売払代金の延納期間を一年を改めようとするものであります。  本案の審議に当りましては熱心な質疑応答が交わされたのでございまするが、その詳細は速記録によつて承知を願いたいと存じます。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定をいたした次第であります。  次に、旧外貨債処理法による借換済外貨債の証券の一部の有効化等に関する法律の一部を改正する法律案について申上げます。  本案は、旧外貨債処理法により邦貨債に借換えられ無効なものとされた我が国の外貨債の一部を有効化するため、一昨年末現行法の制定をいたしたのであります。併し現行法の下において未だ有効化されていない外貨債の証券又は証券から切離された利札の中には、海外の証券市場において取引され、現在においては借換当時の所有者以外の者によつて善意で所有されているものもある状態であります。よつて、これらの善意の取得者の権利を保護し、又我が国の対外信用保持の見地から改正をいたそうとするものであります。その改正の第一は、無効とされた外貨債で現在善意の取得者によつて所有されているつもりを有効化し得る途を開こうとするものであります。改正の第二は、利札だけが単独に取引されているときは、親証券の有効化を待たないで、その利札だけを単独に有効化し得る途を開こうとするものであります。  本案の審議の詳細なる内容は速記録によつて承知を願いたいと存じます。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に保険業法の一部を改正する法律案について申上げます。  本案の要点を申上げますると、第一点は、航空保険事業は国際性が強く、且つ引受物件の価額が巨額に上ることが多いので、料金協定、再保険プール協定等の共同行為が必要とされるので、今回私的独占禁止法等の適用を除外いたそうとするものであります。第二点は、保険会社はその決算の完了に特に日数を要する事情にありますので、定時総会の場合に限り、その株主名簿を閉鎖することができる期間を、商法の規定にもかかわらず九十日間といたそうとするものであります。第三点は、保険会社の責任準備金の計算に関し必要な事項を命令で定めようとするほか、若干の規定を整備いたそうとするものであります。  本案の審議の内容は速記録により御承知を願いたいと存じます。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定をいたした次第であります。以上御報告を申上げます(拍手
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  49. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて三案は全会一致を以て可決せられました。  本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時十七分散会 ○本日の会議に付した事件  一、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員選挙  一、日程第一 私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律案趣旨説明)  一、日程第二 国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律案  一、日程第三 旧外貨債処理法による借換済外貨債の証券の一部の有効化等に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第四 保険業法の一部を改正する法律案