○岩崎正三郎君 私は
日本社会党第二控室を
代表いたしまして、過日行われました
政府の施政方針に対して若干の質問をいたしたいと存ずる次第であります。
二十八
年度の
予算の編成に当りまして、吉田
政府は何か新らしい
政策でも打ち出すだろうと思
つておつたところが、この重大なる国内、国際情勢の時代におきまして、全く何らの新らしい方針を示すことなく、相変らず無理想、無
性格の
政策を羅列しておることは、これは
国民と共に誠に遺憾に堪えない次第でございます。
先ず私は外交問題について少しく御質問をしたいと存ずるわけでありすす。アイゼンハワー大統領の新教言路表によりまして、我が吉田岡崎外歩も、いよいよ「その都度外交」をやめなければならん羽目に相成
つて来たと思うのであります。私は、
アメリカ大統領の新教書発表によ
つて、我が吉田・岡崎外交もいよいよその
態度を
はつきりするために、何らかの手を打たなけばならん羽目に陥れられて来ることは当然だと
思います。アイゼンハワーは、アジアのことはアジア人によ
つてやれと、アジアの防衛はアジア人によ
つてという
見解を発表しておりまするが、この今回の台湾の中立化が解除され、朝鮮戦乱の
解決が全アジアの
地域に延び拡げられて来たこの様相に対しまして、恐らく
我が国にも朝鮮戦乱
解決に何かの積極的
態度を慫慂して来ると
思いまするが、総理大臣はこのことに関しまして何か
思い当ることはございませんでしようか。どういうお
考えを持たれるでありましようか。先ずこの一点をお伺いしたいのであります。私は、朝鮮戦乱の終結は、北鮮の金日成政権が朝鮮全半島の革命達成の意図を放棄するまではやまないと思
つておりまするが、さような場合において、アジア全域に亘る冷たい戦争が、朝鮮、台湾、インドシナ、マレーを結ぶ一連の極東戦争に発展することを懸念されるのであります。
首相はこういう懸念に対してどういうお
考えを持
つておられますか。そして又かような場合に、
我が国の安全と世界平和のために、アジア
諸国との善隣
関係、殊にアジアの平和を愛好するところの社会主義的な諸勢力と何らふ提携を図
つて、その問題を
解決するというようなお
考えはいか。私
どもは今、この社会主義勢力こそが、真に世界の平和を確保する新らしき勢力であると
考えておるが故に、この点に関しまして非常にこの重大性を痛感するのであります。たとえ総理は、かような新勢力が大したものでないというようなお
考えを持たれるでありましようかも知れませんけれ
ども、さように簡単に問題を見ないで、将来の世界の発展性が社会主義的勢力によ
つて解決されねばならんというこの命題に対して、虚心坦懐にお
考えを願いまして、かような問題に対しても、一つの御研究、お
考えを発表されたいと存ずる次第であります、そのためには、私
どもは、先ずフィリピン、インドネシア等々の賠償問題をできるだけ早く
解決して、一日も早く
日本が第二次
世界大戦からの繋がりから解放される必要があると思うのであります。目下これらの賠償
関係の経過につきまして、これがいつ頃
解決されるか、その
見通しのほ
どもお伺いしたい次第であります。
第二点は、インドは常に米ソ両陣営から独立したところの世界平和の勢力たらんことを努めておりますが、世界平和を守るためには、又
日本の国の安全を守るためには、
政府は、インド
政府或いは又ネール個人の代弁者と、何かかような問題について話合つたことはございませんでしようか。又話合おうとするようなお
考えは持
つておられませんでしようか。この点を伺
つておきたい次第であります。
第三点、アジアから戦争を防止するためには、このアジアの後進性、アジアの貧困性を除去しなければ相成らんわけであります。そのためには、今回行われましたところのアジア社会党
会議において我が党が提唱いたしましたところのアジア
経済会議の開催という問題があります。社会主義勢力がこのアジアの困難性を根本的にその
経済的な問題から
解決しようとするところの大きな抱負を持
つておりまするが、総理大臣はかような問題に対してどういうお
考えを持
つておるか。これもお伺いしたい次第であります。
次に内政問題について少しく質問を展開したいと存ずる次第であります。
日本の
経済自立の方途は、
一体如何なる
計画の下に如何なる
見通しを持
つておるかということであります。
外国貿易に依存して
日本経済の再建を図るのか。或いは
食糧自給の基盤の上に
我が国の商工業の発展を図るところの、この新らしい産業構造を作らるることによ
つてその
解決を図らんとするのか。或いは又その中間にさまよいまして、そり日暮しのやりつ放しの
政策を続け、世界の軍需景気に便乗して一応ごまかして行こうとするようなお
考えであるのか。この点は恐らく
国民全体が
日本の将来を思うときに是非聞きたい点であると
思いますので、この点につきまして
経済審議庁長官でも総理大臣でもよろしいから御
答弁をお願いしたいのであります。
食糧増産の問題に関しましては、先ほど千葉君から質問がありましたので、簡単に御質問申上げます。先ほど千葉君が触れましたところの五カ年
計画の
食糧自給体制の問題は、これは二十六
年度より十カ年
計画を以て行われて来たところの
食糧増産計画を小刻みにしたところの問題でありまするが、かような
食糧自給確保の長期
計画が相当成案を得て、ここに
日程に上
つて参つたということは、その日暮しの買食いに、毎年三百万トン、四億ドルの米麦輸入に依存して参つたところの従来の
食糧政策に一定の結論的方向を与えたものとして、その意義は率直に認めてよいと思うのであります。然るにこの
計画の中核をなすところの土地改良及び開墾開拓等の
関係において、二十八
年度の
予算においては僅かに二百九十六億円を計上しておるだけであります。これに
食糧増産に直接
関係のある公共事業費
関係のものを加えましても、五カ年
計画の一カ年平均の半分にも満たないものであります。これは
政府が
食糧自給の
計画を立てる必要を認めないのか。
食糧問題、農村問題は後廻しにしようとするのか。
大蔵大臣、
経済審議庁長官並びに
農林大臣の明白なる御
答弁をお願いする次第であります。更に又、かような内容を持つところの
食糧自給促進法案を今
国会に提出するお
考えはあるかどうか、お伺いしたい次第であります。
不
生産的なる
防衛費に三千億円を投げ出し、三百億の
公債を
発行して、
インフレは絶対に起きませんと自信のほどを見せておる向井
大蔵大臣が、
食糧自給体制を確立すべきところのこの重大なる意図を持つところの問題に対して五カ年間に三千五百億くらいの金が出せないというのは、我々誠に解しかねる問題であります。向井さんにしつかりした御
答弁をお願いする次第であります。
さて、吉田総理の施政
演説と言い、
外務大臣の外交
演説と言い、我々はその露骨なる反動振りに、実は内心憤慨を禁じ得ないのであります。
占領政策を是正するという美名の下に、敗戦の血潮の中から、かち得ましたところのこの
民主主義を是正し、或いは
改悪して、再び吉田ワンマン好みの独裁独善主義に逆行せしめんというお
考えがおありなんでしようか。私は
日本の
民主主義を守るために、以下数項の質問をしたいと存ずる次第であります。
政府は、電産、炭労ストの行過ぎを理由に、
労働法を改正して基幹産業のストライキを
制限しようとしておるようでありますが、この度、かような電産、炭労ストが深刻に闘われたことの主な要因がどこにあるのか御存じでありますか。私
どもは、こからのストが
政治的傾向を強めて来たことに一応の批判はいたしますが、併しながらこのストの本質的な原因が、非民主的か独善主義的な諸条約の締結、電気事業九分断等、一連の
吉田内閣の非民主的横暴に対するところの反撃の一つの現れであることをお
考え願いたいと思うのであります。この反撃に多少の行過ぎがあつたと言
つて、それを口実にして、労働者の基本的人権たるスト権を
制限しようとするがごときは、むしろそちらのほうに行過ぎが大いにあるということを申上げざるを得ないのであります。このスト
制限、
労働法改悪問題については、すでにいろいろ質問がふつたと
思いますので、私は次の一点についてお伺いしたいと思わけであります
西ドイツにおいては、今回労働組合の幹部を大企業の経営に参加させることをきめだところの経営組織法、共同議決法等に基きまして、労組
代表と株主
代表とが対等に経営に参加する方式を実行に移しましてから、ストライキが非常に減少したということが
報告されております。
政府はこの西ドイツにおけるがごとき進歩的な方法を以て労働組合の発展を期待し、又
日本民主化に貢献する
考えが全くないのでありまするか。労働者の基本的人権を蹂躪するような
スト禁止の
労働法改正を引込めて、その人権を伸張することによ
つて問題の
解決を図ろうとすることこそ、
民主主義の要諦であるとお
考えになられませんか。総理大臣及び労働大臣のお
考えを承わりたい次第であります。
なおこの際、もう一つ労働大臣にお尋ねいたしておきたいことがございます。それは例の珪肺病対策についてでございます。すでに珪肺審議会が
設置されまして、われわれ当局で研究されておることでございましようけれ
ども、一度この病にかかつたときは、一生不治の病であると言われております。この鉱山労働者の上に襲いかかるところの恐るべき職業病には、人道上十分なる対策をしてやらなければならないと存ずる次第でございます。従来一応は労災法等によりまして救済の
手段が講ぜられておりまするけれ
ども、この気の毒な職業病患者を真に救済するためには、これでは全く不十分でございます。
政府は近く珪肺病法力作成いたしまして万全の救済方法を講ずるお
考えがあるかどうか。労働大店の親切なる御
答弁をお願いする次第であります。
次に
政府は、農村の
民主化を促進するために近頃どんな方策を持
つておられますか、伺いたいのであります。農林省は、農業団体再編成案を作りまして、これを農業団体に押付けようとしておりますけれ
ども、果してこれは真の農村の
民主化を促進するでございましようか。農協と農業委員会とを分立せしめて、その間に、各府県に農業
会議所を
設置して、農林官僚がこれらを支配せんとする、このボス的再編成案には、私
どもは断じて反対するものであります。少くとも農村団体の民主的再編成を
考える場合には、先ず農協法を改正し、農業協同組合を
整備拡充すると共に、速かに農民組合法を制定しまして、農民組合を以て農政活動の円体たらしめることであります。
農林大臣は、農協法の改正、農民組合法の制定につきまして如何なるお
考えを持
つておりますか、お伺いいたす次第であります。
民主主義の発展は
教育からと言われておりますけれ
ども、果して現内閣は文字
通りこのことを理解しておられるや否や。吉田総理が
道義の
高揚は
教育にありなどと言われておりながら、未熟な
義務教育費全額国庫負担法を強行いたしまして、
教育そのものの
民主化を阻害せんとしておることは、誠に寒心に堪えない次第でございます。この問題につきましては、すでに幾多の質問があり、又文相からも縷々
説明があつたのでありますけれ
ども、この問題の重要さに鑑みまして、あえて
文部大臣並びに
自治庁長官に御
答弁をお願いする次第でございます。
先ず岡野
文部大臣にお尋ねいたします。第一点、先に行われましたところの地方
教育委員の選挙に際しまして、当時
政府は、
教育の
中央集権化を排し、地方分権の実を挙げ、かくすることによ
つて教育は進展すると
説明しておつたのであります。然るにこのたびの
義務教育費全額国庫負担法と教職員の
国家公務員化は、完全にこれと逆行するものであるが、
地方教育委員会と本法との関連を如何ように
考えているのか承わりたい。第二点、地方制度審議会は
決議をなして、審議会が結論を出すまで、本法の提案を見合せるように要望しておりますが、これを無視して、飽くまでかような法案を、かような未熟な法案を提出するということは、どういう理由によ
つてや
つておるのか、この点も、しかと御
答弁を願いたいのであります。第三点、教職員の
国家公務員化は日教組対策であると世上言われておりますけれ
ども、文相は従来の日教組の
政治活動に対して如何なる
見解を持
つているか。即ち、教職員の
政治活動を
制限することは、基本的人権の侵害を意味し、ひいては
教育効果の削減とな
つて現われておりますけれ
ども、
文部大臣は如何にお
考えになりますか。又定員定額制の実施の結果、教職員の首切りが行われるだろうと
思いまするけれ
ども、果してこれは如何ように相成りまするか、お伺いしたい次第であります。第五点は、先に半額国庫
負担法が本院において成立いたしましたが、これは半額とはいうものの、教材費をも含んだものであります。そうして今回二十八
年度予算の計上に当りましては、当初は半額国庫
負担さえ無理であると言いながら、
最後には急変いたしまして、全額
負担法の美称を冠して本法を提出に及んだものであります。これは全く私
どもの了解に苦しむところでございます。而もそのためには当然千三百億
程度のものが必要であることがわか
つておりながらも、その一部分だけを
予算に計上いたし、中途半端な不完全
予算を提出したことは、
国会を軽視し、
民主政治の精神を踏みにじるものであると
思いますけれ
ども、これに対して如何なるお
考えであるか、
道義高揚の本家であるところの
文部大臣の、筋の通つた御
答弁をお願いする次第であります。
次に本多
自治庁長官にお尋ねいたします。
義務教育費全額国庫負担法によ
つて、富裕なる都府県にまで
教育費が配賦されることに相成るわけでございましようが、これはどういうふうにして実施するつもりでございますか、或いは又これらの富裕府県には配賦しないとも言われておりますけれ
ども、それでは誠に筋が通らんのであります。当然地方税法或いは
平衡交付金法を改正いたしましても配賦すべきことが筋合いであると
思いまするが、
平衡交付金法並びに地方税法を、いつ頃如何ようにして改正する用意があるか。御
答弁を願いたいのであります。
次にお聞きしたいことは教職員の任免に関してでございます。先の閣議了解事項といたしまして、教職員の任免に関しては、委任
事務として
地方教育委員会に任せるだけではなく、
市町村長にまで
発言権を与える予定であるとか聞き及びまするが、この点、如何でありまするか、以上明確なる御
答弁をお願いする次第であります。
最後に、駐留軍労務者と
行政協定の問題について、岡崎外相、戸塚労働大臣にお伺いいたします。昨年四月、講和条約、日米安全保障条約の発効に伴いまして、連合軍
関係の二十数万の労働者は駐留軍労務に切替えられ、
法律第百七十四号の制定によりまして、従来の
国家公務員特別職から除外されまして、一般労務者と同様の取扱を受けることに相成りました。そうして労働三法の適用を受けるに至つたことはすでに御承知の
通りであります。而して昨年八月に至りまして、全駐留軍労働組合は、調達庁長官に対して一万八千八百七十四円のベース改訂を要求して、争議が発生したのであります。そうして遂に組合は、中労委に調停を申請し、去る十二月十六日に至りまして、中労委は一万七千九百七十六円の調停案を提示して、妥結を求めて参つたのであります。勿論、組合側は、この公正なる第三者の提示した調停案を受諾して、円満
解決に同意したのであります。然るに在日
米軍は、この調停案を一顧だもせずに、
日本の
法律を全く無視した
態度に出たことは誠に遺憾千万であります。この在日
米軍の、
日本の
法律を一片の紙屑のごとくにみなすところの原因は
一体どこにあるのか。
日本の一角に
アメリカの租界が設けられたということは、未だ私
ども全く寡聞にして存じないのであります。私
どもは従来から、安全保障条約及び日米
行政協定の実施につきましてはいろいろ不安と疑惑とを持
つておりまして、しばしば本議場においてこれを指摘して参つたところでありまするが、今ここにこの事実を見まして、
安保条約、
行政協定の締結に当つた総理大臣並びに
岡崎外務大臣に対して強硬なる抗議を申上げざるを得ない次第でございます。今こそ
外務大臣は、
日本国内において、
アメリカの
法律或いは駐日
米軍の
政策と
日本の
法律、これがどちらが優先するのか、
はつきりさせる必要がございます。向米一辺倒を以て正差であると
演説する岡崎外相は、この実相を前にして何と御
答弁なさるのか。しつかりした御返事を承わりたい。又かような占領下と同じような取扱を受けておるところの駐留軍労務者に対して、
外務大臣、労働大臣は、如何なる
措置をと
つて今後その対策を講ずるつもりであるか、
責任ある御
答弁をお願いしてやまない次第であります。
以上を以ちまして私の質問を終る次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕