○千田正君
昭和二十八年度における吉田内閣の
施政方針に対しまして、
吉田首相並びに各閣僚に対しその所信をお伺いいたしたいのであります。一昨日以来、同僚議員から大
部分の私が伺おうという点につきましては、すでに御答弁があ
つたようでありますので、重点的に、端折
つてお伺いいたします。
吉田首相、岡崎外務
大臣の御
説明を待つまでもなく、
世界平和を求むることは全
国民の願いであり、要求であります。然るに現今の
世界情勢は、自由民主主義国家と
共産主義陣営国家との冷戦であり、何人も第三次の衝突を避け得るということを明言し得る者は恐らくないだろうと思うのでありますが、併しながら、この二つの相異なる代表国、アメリカとソ連との中に立
つて、アメリカもソ連も戦一なかれ、ソ連もアメリカも手を引けと言い得る者は、恐らくアジア八億の民以外にはないだろうと私は確信するものであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)更に、第二次
世界大戦に悲惨なる敗戦をこうむり、原子爆弾という科学新兵器の犠牲と
なつた我が
日本民族こそは、
世界に向
つて平和を要望し、否、要求する権利を持つところのただ一つの民族であるということを我々は自覚せざるを得ないのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)この悲願を達成するための
国際連合への参加であるならば、一方に偏することなく、広く如何なる国とも手を結んで、堂々とこの血の洗礼を受けた我が民族の悲願を達成することを念願として参加しなければならないと思うのでありまするが、
首相の
国際連合参加への
信念を率直にお伺いいたしたいのであります。
次に、アメリカ前大統領トルーマン氏が一九五〇年六月台湾
政府に対して中立化を指令して以来約三年にして、このたびアイゼンハワー新大統領によ
つて中立解除を指令され、台湾海峡の自由行動はやがてアジア大陸に大なる旋風を巻き起そうとしておる今日、台湾中国
政府と友好条約を結んだ
我が国としては容易ならないところの
事態に直面したと思うのでありますが、(「そうだ」と呼ぶ者あり)
日本政府といたしましては如何なる態度を以てこの今旋風が起きんとするところの極東の
事態に処せられようとするのでありまするか。吉田総理
大臣の御所信を承わりたいのであります。(「
はつきり答えろ」と呼ぶ者あり)吉田総理
大臣はしばしばこの席上で再軍備も
憲法改正もせぬと明言されましたが、
吉田首相の
施政方針の中にありましたように、アイゼンハワー・アメリカ大統領の極東
政策に基いて、
自由国家群の一環として
日本が協力するならば、「極東の風雲ただならざる今日、恐らくアメリカ及びその他の
自由国家群より、当然、この極東の現在の情勢に対応するための防衛準備を要請されるということは、何人も首肯し得るところの問題であると思うのであります。その場合において、果して最大限度どの
程度の一体防衛人員を増そうとするのか。全然増さないとするのか。先般
大蔵大臣は、このたびの防衛費においては相当削減したから人員を増さない、設備のほうにおいてこれを充当して行くというふうなことを仰せられておりますが、現実の姿はそう簡単な問題ではない。昨日今日の外国電報の報ずるごとく、今や極東の風雲が嵐をはらんでおる今日において、果して、我々は、現在の
自衛体制のみにおいて
世界各国が
満足して
日本の現状をこのままにさせるかどうかということに対しましては、非常な疑念を存するのであります。かるが故に、私は、果してこのままの
自衛体制のみで
日本は暮せるかどうか。この
自衛漸増の、或いは人員において、設備において、今後増すという
考えを持
つておられるかどうかという点を、吉田総理
大臣並びに木村保安庁長官にお伺いいたしたいのであります。
次に、終戦時の在外公館借入金につきまして、
昭和二十六年、国の債務として当然支払うべきものとして決定されたことは御
承知の
通りであります。
昭和二十七年三月三十一日法律第四十四号を以て返済を開始したのでありましたが、当時の
予算八億五千万円を計上され、そのまま今日に至
つても完済をまだ見ないのであります。吉田総理
大臣は曾
つて外務
大臣として、この終戦時に海外にお
つた居留民から国が金を借りて、そうして引揚民を完全に
日本に帰しつつあ
つたこの当時の
事態に鑑みたならば、当然この引揚民から借りたところの三十五億になんなんとするところの金は、国の財政は十分でないからと言うて五万円で打切
つてあとを払わないというようなことは、道義の高揚を常に口にするところの総理
大臣といたしましては、みずから以てこれを完済するだけの御意思を持たなければならないと思いますが、総理
大臣といたしましてはどういうふうにお
考えになられますか。その点を明確にお答えを願いたいと思うのであります。
次に、在外資産問題につきましては先ほど鬼丸議員からもお尋ねがありましたが、在外資産問題についてお尋ねいたしたいと思います。簡単にお尋ねいたします。戦勝国の請求権に戦敗国の在外資産が充当された場合、損害を受けた
国民に対し戦敗国
政府が補償を行うということは従来の常識であります。ヴエルサイユ条約の第二百九十七条及びイタリア平和条約の第七十四条は、自
国民に対するところの在外資産補償を規定しておるのでありますが、又我が在外資産、この終戦時におけるところの約七兆と称せられるところの厖大なところの在外資産は、今後如何なる
方法において各国との講和が結ばれた後において
国民に対して支払われるか。こういう点につきまして十分なる用意があるかどうか。この点もお伺い申上げたいのであります。
先ほど又鬼丸議員が
最後でお尋ねが十分じやなか
つたようでありますが、補足して私からお尋ねいたします。それは戦犯の軍人として
只今刑務所に繋がれている人たちについては、法務総裁から丁寧な御答弁があ
つたのであります。私は更にそれに附随しましてこのたび軍人恩給
制度が復活され、遺家族或いは傷痍軍人の人たちに対しては、五百億という厖大なところのいわゆる軍人恩給を復活するところの準備がされておる。ところが遠く比島のモンテンルパの牢獄の中にすでに八年、或いは巣鴨刑務所の中にこれ又数年を今後暮さなければならないところのその留守家族に対しては、如何なる方策をとられておるのか、果してこのたびの恩給復活の中に含まれているのかどうかということを、吉田総理
大臣並びに
大蔵大臣にお伺いしたいのであります。
大蔵大臣になおお伺いしたいのは、
日本人口八千五百万の所得総額四兆六千億に対し、二十八年度
予算は、各省の要求一兆六千億を圧縮しまして、一応九千六百五億円に抑えてインフレ防止に必死の気がまえを示したのでありますけれども、一方において三百億の国債の発行の止むなきに至
つたことは、頭隠して尻隠さずの類にして、現在の状況を見ればインフレヘの突入必至と思わざるを得ないのであります。昨今の
株式市場の暴騰、盛況等を見ましても、これを如実に物語
つているのでありますが、歳出面において二十七年度に比し三百五十億円の減少とな
つておると蔵相は
説明しておりまするけれども、二十七年度の防衛費のうちから約九百億円繰越されるために、実質的には二十八年度の防衛
関係費の総支出は二十七年度よりも
増加することになるのでありまして、決してインフレ抑止の原因とはならないのであります。三百億円の国債と四百億円の見返
資金を繰入れまして投資特別会計を作
つて開発銀行、輸出入銀行、電源
開発への間接投資、更に一般会計二百八十億、簡保
資金の百八十五億、
資金運部の一千六百七十億、公社債公募分二百二十億等、総額三千五十五億円で、二百五十六億の
増加でありますが、かかる方策を以てインフレの防止に確信があるかどうかということをお伺いしたいのであります。
一方、歳入の見積りは限度一ぱいの
状態でありまして、更に今後アメリカやその他自由国家の共同体の下に防衛態勢の
増強等を要請された場合においては、歳入の増額を予期されぬとすれば、当然、財源として
公債発行、蓄積
資金の食い潰しとなる虞れがありますが、若しさような場合においてはこれに対応するところの如何なる財源を持
つておられるか。この点を明らかにされたいと思うのであります。
一昨日の
説明によるというと、東南アジアヘの
貿易を促進すると
言つておられますが、これに対する
金融政策が十分でないと思うのであります。例えば東南アジア向けの輸出品の大
部分は
中小企業の製品でありますが故に、現在
程度の
中小企業対策では到底輸出の振興は予期されません。特にコスト高になるところのこの方面に対して、特別の融資又は助成の方策をとられる
考えがあるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。
次に
食糧増産対策及び公共事業費としましては、本年度に比しまして二百七十二億円を
増加したと称しておりますけれども、
物価高等を現実に
考えるときは、事業量の
増加は大したことではないのであります。試みに、数度に及ぶところの風水害或いは地震等の復旧の状況を見ましても、未だ以て二十五年度災害、二十六年度災害等は復旧が完成しておりません。殊に、基礎産業であるところの農業の耕地の復旧、或いは漁港の整備復旧等に関しましては、当初
計画に副うためには、なお数年を要する状況であります。この
状態では、吉田
自由党内閣が
国民に公約したところの
増産対策としての
政策は十分に果し得ないと思われるのでありますが、如何なる
方法を以て
国民との約束を実行するお
考えでありますか。
大蔵大臣にお伺いしたいのであります。
岡崎外務
大臣にお伺いいたしたいのでありますが、アメリカのアイゼンハワー大統領が
就任早々発表した九原則に基くところの
自由国家群への
政策は、対外援助
資金より通商へと移行さるるということは、すでに御
承知の
通りでありますが、通商に重点を置かれた場合において、
日本の従来の立場から
考える場合に、
経済占領政策のような観さえも我々は感ずるのであります。殆んど一方的な輸入
政策のごとき行き方は、外相の言うような自主
経済の確立であるとは言えないのであります。輸入の見返りの輸出に関しましても殆んど見るべきものはなく、たまたまアメリカ向けに輸出しましても、向うさまでは保護関税等をかけて、到底我々の予定のような輸出はあり得ない、輸出入のバランスは望み得ない今日の状況においてこれを今後の通商へと移行された場合に、どういう方向に向
つてこの
経済自主独立の精神を以て、かかる方向を是正する
考えがあられるかどうかという点につきまして通商条約をまさに結ばんとする現在におきまして外務
大臣の御意向を伺いたいのであります。
次に、ソ連、
中共、韓国等に、戦後拿捕抑留されましたところの漁船その他の船舶は、今年一月三十日現在で四百九十四隻 乗組人員が四千九百九十七名の多数に及び、船舶の損害を金額に直せば数百億円に達するのであります。その家族のこうむ
つた物質的且つ又精神的な損害は甚大であり、
我が国水産業といたしましても又漁民の生活が根抵から脅かされておるところの
状態であります。昨年平和条約発効後においても、ソ連
関係拿捕船舶四十七隻、抑留人員が四十八人、
中共関係が拿捕船舶二十七隻、抑留人員が三百七名、中国台湾
関係は拿捕船舶五隻、抑留人員二十二名、韓国
関係は拿捕船舶は二十二隻、抑留人員が四名という
状態で、独立後の
日本は、公海自由の原則を確立して、安全に操業をなし得べきはずであるにもかかわらず、未だ以てかかる状況にあるということは、我々は如何なる国に対しましても、アメリカと言わず、ソ連と言わず、
中共と言わず、台湾
政府と言わず、如何なる国に対しても平和裡にこれを解決するような
努力と熱意を持たなければ、この問題は解決されません。これに対しまして如何なる方策を外務
大臣はお持ちであるか。この点を伺いたいのであります。
日韓
関係におきましては、本年当初、李承晩大統領の来訪によ
つて、会談再開を予想されておりますが、在韓国の在外資産処置及び李承晩ラインと称せらるるところの一方宣言によ
つて強調さるるところの海域問題に対しては、どういう処置を今後と
つて会談を進めらるるところの御意向であるか。この点を外務
大臣の御答弁を頂きたいのであります。
更に又、台湾中国
政府の台湾海峡における自由活動は、大陸反攻への重大なる基点と思われるのでありますが、極東の風雲まさに急転したる今日、
中共よりの引揚が果して完全に実行さるるという見込が立つかどうか。この点を外務
大臣にお伺いいたしたいのであります。
小笠原
経済審議庁長官のお
考えを抗いておい伺いいたしますが、
貿易の振興
方針として、重要物資輸入の相当
部分をドル地域から東南アジアに転換するという
方針のようでありますけれども、現在輸入制限を行われておるポンド地域をも含む東南アジアからの輸入は、果して所期の成果を得らるるかどうか。当然、輸入と同時にガツト
加入が先決問題であります。本日は恐らくゼネバにおいてガツト
加入参加国の大会が開かれておるわけでありますが、未だ
日本はガツトヘの
加入ができない状況において、果して東南アジアヘかけての市場を開拓できるかどうか。ガツトヘの
加入は如何なる方策を以て進められ、
加入できるかという点を、長官からお伺いしたいのであります。
農林
大臣にお伺いいたしたいのは、独立
日本とか、或いは自由
経済とか、
政府の御
説明は誠に勇ましい議論でありますけれども、一体八千五百万の
人口を抱えてのその主要
食糧は、依然として国外よりの輸入に待たなければなりません。
食糧はそれぞれの国々において
国民の生命にかかわるところの重大な問題であるは言を待たないのであります。
食糧を政治外交の
手段として使用された場合には、まさに武器以上の決定的なものであるということを、我々は
考えなければならないのであります。
国連食糧農業機構、即ちF・A・〇は、アジア地域におけるところの米の供給不足を重大なる課題として取上げまして、今秋の予想に対しても誠に悲観的な警告を発しております。
世界の米の取引の約半分を占める
日本に対しましては、少からず不安を覚えざるを得ません。この
日本の国土よりあらゆる
努力を払
つて食糧生産を
考えなければならないのでありますけれども、如何なる方策がありましようか。傾斜十五度以下の土地が五百万町歩も捨てて置かれている現状において、既耕地の
土地改良、未開地の開拓等に対しては、真剣に
食糧政策を
政府も
国民も一体として
考えねばならないのであります。毎年四億ドル以上の外貨を払い、二千万石に亘る輸入
食糧を思うとき、
国内の
増産対策に対しまして、この四億以上の金を振向ける
方法を
考えなければならない。然るに現在の
農村の子弟の次三男は故郷の農地を捨てて都会へと憧がれ、昨年一カ年でも各
都市べの流入は約百八十万と称せられます。就職就労は僅かにその四分の一にも過ぎない。他は失
業者群に投じて行く姿を見てこのまま放置しておくことは、誠に政治の貧困の極と言わざるを得ません。このたびの
大蔵大臣、小笠原国務相の
説明においても、この深刻なる
食糧問題並びに開拓農民の
苦難の現状に対する十分なる対策を見出すことはでき得ないのでありますが、農林
大臣はこの重大なる問題に対して如何に
考えられますか。殊に二十五年、二十六年等の暴風災害さえも復旧は完了せず、更に電灯もなく、家畜もなく、なお営営としておるところの開拓農民の姿を見て御覧なさい。吉田総理
大臣の
考えからは、東京から大阪まで弾丸道路を作
つて、何十メートルという大幅な道路、坦々たるコンクリートの道路を作ろうとしておる。一方、燈火もなく、行くべき途もない開拓農民のあの姿に、我々はそれに
増産を望もうとすることは、誠に私は政治のいわゆるアンバランスであるということを衝かざるを得ないのであります。(
拍手、「その
通り」と呼ぶ者あり)
次に運輸
大臣並びに小笠原長官にお伺いいたしますが、
政府は
貿易外収支の
改善に資するために海運
政策として外国航路船腹の
増強を図ると声明しておられますけれども、最近の状況は各社手一杯の配船をしております。その結果、海外におきまして積荷の競争をやる、積荷の競争をや
つた結果は低運賃競争へと移行しておるのであります。最近の状況から見ましても、アメリカからは、そういうふうに
日本の国の船舶がや
つて来て積荷の競争をや
つて、やがてはいわゆる船賃の低運賃の競争をや
つて行く、これでは我々は国際信義を疑うという抗議が来ておるということは、私が言うまでもないのでありまするが、かような状況にして、一貫したいわゆる配船
計画もなく、又各社の自由競争に放任した結果、
日本の海運界の将来というものは誠に国際信義を失う状況に立至るのではないだろうか。更に
政府が企図しておるような、いわゆる
貿易外収入というものは、むしろ逆に、各社とも赤字財政で悩み、且つ逆に大蔵省から助成金でも出さなければ、この海運
政策が完成しないというような状況に陥る慮れがあるのでありますが、この点につきましては石井運輸
大臣は如何なる方策をとられるか、お伺いしたいのであります。
法務
大臣にお伺いいたしますのは、
政府は
占領政策是正の一端として警察
制度の
改正を企図しておられるが、民主化を理想とし、
国民生活の中に親しまれる警察として育成さるべきはずの
制度が、逆に、曾
つて戦前のごとく、おいこら的の畏怖の的に逆行する
制度になりはしないかと、
国民はすこぶる不安の念を持
つておるのであります。更に各方面から要望されておるところの能率化との調整並びに公安
委員の存在は、単に名目的な存在に過ぎない
状態に置かれる虞れがありますが、これでは折角の
改善は改悪になりはしないかと思われますので、その
改善して
国民の要望に副う真の骨子を明確にお答え願いたいと思うのであります。
文部
大臣及び本多
国務大臣にお伺いいたしたいのであります。文教
政策として、このたび地方財政平衡交付金千七百二十億円のうちから教職員給与分として約一千億円を国庫に編入させ、富裕八府県を除いた各県の教職員給与の支払に充当して、更に又将来は、この富裕府県に対しても国から支払うために、入場税、遊興税を各府県から取上げて国の財源に移そうとしておる。これは地方財政の非常なる縮小であります。地方側では、財源が不足のため、住民税や固定資産税の評価額の引上をやらざるを得ない現在の貧困なる地方財政に対してかかる
制度は果して民意に副うゆえんであるかどうか。本多
国務大臣にお伺いしたいのであります。同時に岡野文部
大臣に、この
義務教育費全額国庫負担を以て教員の政治活動を封鎖するという一石二鳥を狙
つた政策のように世間は
言つておりますが、この点を明確にして頂きたい。更に最高学府であるところの各大学の研究部門の
費用は、誠に九牛の一毛に過ぎないのであります。先般も大学教授で辞めたかたがある。最高学府のこの研究
費用をもう少し強力に推し進めて行く
方法はないか。この点、文相のお答えを頂きたいのであります。
厚生大臣にお伺いしたいのは、在外同胞の留守家族に対してはいろいろな援護対策をや
つておられますが、未復員者給与法、特別未帰還者給与法は、今後の恩給
制度のどの
部分に充てられるのか。
改正する意思があるかどうか。更に
日本へ外国軍隊の駐留によ
つて落されて行
つたところの温血児、いわゆる「あいのこ」の将来はどうなるか。「あれも人の子樽拾い」ということが曾
つての江戸の川柳にありましたが、彼らとしても、
日本の
国民として生を
日本の国土にうけた以上、これを何とかしなければ、将来の重大なる社会問題に転化する虞れがあるのであります。この数が一体どれだけあるのか。どういうような
方法によ
つて今後の
政策を実行されるのか。現在においては、宗教団体或いは巷の慈善家の手に委ねて、そうして十分なる手を尽していない。この状況に対してどういう
政策を今後盛られるか。
厚生大臣の御所信を伺いたいのであります。
最後に労働
大臣にお伺いいたしたいのは、このたび
中共引揚が開始されることにな
つて、誠に喜ぶべき状況でありまするが、帰
つて来るところの引揚民が約三万と称されております。我々は、過去の引揚の実績に見ても、船を配置され、住宅も当てがわれた、併しながら
最後に永住すべきところの我が祖国において、職もなく働くべきすべもないのが現実の姿であります。これから引揚げて来るところのこの人たちに、どういう職業を、どういう労働を与えようとするのか。そういう面におけるところの
政策を
はつきりと、この際、明言して頂きたいと思うのであります。
このたびの吉田内閣の
施政方針を全面的に見ましたときに、
占領政策の是正、成るほど独占禁止法の
改正、或いは警察
制度の
改正、或いは労働三法の
改正というようなことが盛られているけれども、むしろ資本主義への、或いは曾
つての戦前の姿への逆コースであ
つて、新らしいいわゆる文化的国家への施策は十分に認められないのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)若しそれ、再びここに防衛問題が起きて、我が
日本の
国民が何かしらの態度をとらなければならないとするならば、それは資本家の子弟でもなければ、
大臣のあなた方の子弟でもない。働く農民の子であり、労働者の子であり、勤労大衆の子であるということを(「その
通り」と呼ぶ者あり)十分に認識されて、明確なる御答弁をお願いしたいと思う次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕