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1953-02-02 第15回国会 参議院 本会議 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二日(月曜日)    午前十時十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十九号   昭和二十八年二月二日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  只今皇太子殿下が傍聴のため御臨席になりました。      ——————————
  4. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。(第三日)  一昨日に引続き、これより順次質疑を許します。竹中七郎君。    〔竹中七郎登壇拍手
  5. 竹中七郎

    竹中七郎君 私は民主クラブを代表いたしまして、政府に対しまして以下若干の質問をいたしたいと存じます。  先ず吉田首相にお伺いいたします。首相は二つの点を強調されまして施政演説に申されております。一は占領政策の是正、次は綱紀粛正或いは自立経済のことを申されております。七年間に亘りまする占領政策と四年間の自由党内閣のいろいろな行動は、潔癖でありますところの首相の下におきましてもいろいろ問題が起つておると思うのであります。これをすつきりした姿として、占領後のこの新らしい二十八年度から如何なるふうに国民を指導して行かれるか、政策をとつて行かれるか、その具体的の方策が、あの施政演説におきましては、はつきりいたしておりません。もう少し具体的に、こういうふうにやろうということをはつきりお示しが願いたいと思うのでございます。我々民主クラブといたしましては、占領後の日本の諸政策は、この二十八年、九年、この二年というものは最も重大時期である。この時期を誤まりますれば悔を千載に残すのではないかということを思うのであります。衆議院選挙におきまして多数をとられました現政府は、国民の期待と信頼に報いるために、私が只今から申上げまする問題に対しまして、国民に対する親切なる答弁が願いたい。  先ず外交問題についてお尋ね申上げます。今回の施政演説で、首相並びに外相は、独立後も引続き、自由国家群一員として、アメリカを中心とする国際連合に協力し、世界の平和と繁栄とに貢献するものであると声明されておるのであります。口に平和を唱え、傘下の諸国を動員して、世界制覇を目途としまするいわゆる共産主義陣営とは、明らかに一線を劃するのであるということを表明されま幸したことに対しましては、我々は全く同感であります。併し現政府は、具体的に、一旦国の大事が起つた場合の国民としての心がまえがどうであるべきかという点についての信念を周知徹底させられる熱意に欠けておるではないかということに対しまして、甚だ遺憾に堪えないのであります。(「そんなことは余計なことだよ」と呼ぶ者あり)かの朝鮮動乱勃発当時を振返つてみますときにおきまして、四面環海の我が日本におきましては、よもや朝鮮の二の舞を踏むようなことは万あるまいと高をくくつているべき段階であるでありましようか。動乱の当初において我々が胆を冷やしましたのは、国連軍が釜山まで退却、いま一息において対島海峡に追い落されんとしたことであります。言うまでもなく、国連軍は、当時朝鮮動乱に対する基地といたしまして、我が日本を足溜りといたしておつたということは事実であります。若し朝鮮全体が共産陣営の手に落ちたら日本はどうなつてつたであろうか。恐らく国内において時の政府のとつておりまする資本主義政策に対し、共産主義陣営は、あらゆる産業、交通、通信等破壊的妨害によりまして、国内を収拾すべからざる混乱に陥れたのに相違なかつたと思うのであります。当時幸い国連軍が徹底的に共産陣営を押し返すことができたので、(「何を言わんとしておるのか」と呼ぶ者あり)日本といたしましては一応の危機が去つたのであります。併しながら、今日といえども四囲の状況は楽観を許しません。熱い戦争は遠ざかつたと言つてはおりますが、台湾より第七艦隊が撤退するといち報道があります。(「それは誰がやるのだ」と呼ぶ者あり)中共政府国民政府との間は又重大になつております。占領当時同様、日本国連軍軍事基地であります。今以て国連軍朝鮮において幾多いの苦難を嘗めておることは周知の事実であります。この苦難に堪え得られないて国連軍万が一にも朝鮮から手を引いた場合、好むと好まざるとにかかわらず、日本資本主義自由国家群共産主義国家群とのアジアにおきまする熱い戦いの最前線を承わることになるのであります。従いまして、若しも日本国内において他民族間との争いが起きたような場合、国民としての確固不動心がまえが必要と相成つて参るのでありますが、かかる際、政府は何らの根本的方針を示しておらないのであります。血で血を洗うような悲惨な状態にこの日本が陥るようなことは絶対に防がなければならないと思うのでありまするが、首相といたされましては、国民に対し如何なる態度を示すべき万全の策がありますかどうか。この際、明確にして頂きたい。即ち、万が一の場合、自衛体制として保安隊駐留軍のみに一任して十分なりや否や、特に最後手段ありや否やということであります。国連加盟も近きにあると思いますが、(「政府に賛成しているじやないか」と呼ぶ者あり)この際、現在の保安隊との関係も問題になることと存じますが、どうでありますか。即ち権利と義務の問題であります。日本は或る程度自衛戦力を持たなければ国連一員としての義務が果せない、その義務範囲は現在の程度でよいか悪いか、より以上でなければならないとすれば、どれだけの増強をすべきか、その増強のときは戦力となり、憲法改正をしなければならないか否かという点であります。通産省におきましては兵器製造法案を今国会に出されるそうでありますが、その際、保安隊増強計画とマツチしなければ、業者といたしましても設備充実計画が立たない。これは政府のほうにおきましてやられるのでありますれば問題はないのでありますが、民間をしてやられますというときにおきましては、どういうふうにやるか。そのときにおきまする計画、いわゆる増強計画というものをどういうふうにお定めになりますか。これを伺いたいのであります。  次に、安保条約或いは行政協定によりまして駐留軍が現在日本の各所におられるのであります。そのために爆弾その他におきまして民間に被害を与え、或いは特には人命にまで及ぼしておるのであります。これらの損害に対しまして、毎国会問題になつておりすするが、この補償方法は如何なる方法をとつておられますか、お伺い申上げます。  次に、食糧対策につきましてお伺いをいたします。人口問題は我が国の根本問題でありまして、これが解決いたしますれば日本経済その他が全部解決する。併しなかなかこれは解決しないのでございます。前におきまして優生保護法改正があり、このたび移民問題が取上げられまして、政府において実施に移されたことは、誠に慶賀に堪えないのであります。併しこれは消極政策である。積極政策といたしましては貿易の振興或いは食糧増産がなければならないのであります。廣川農林大臣食糧増産五カ年計画を樹立されましたが、どうも大蔵省との予算関係におきまして、これが満足に行かなかつた。併し、或いは土地改良公共事業費等によられまして相当の部分満足になりかけ、或いは七〇%、或いは八〇%くらいの達成はできるかと思います。そのほかに私が考えますときにおきまして、食糧増産と同じような効果のある方法が一つあるのであります。それは、いわゆる国民米食偏重を、いわゆる粒食より粉食に、或いは何と申しますか、混食に転換する方法、この方法があります。即ち、二十八年度の外米買予定額九十六万一千トンと、前年度と大差のない予算を組んでいるのであります。この金額は実に五百四十五億余円であります。而もこれを麦に代えますならば百五十億円見当の節約ができるはずであります。併し日本人といたしまして、その習慣並びにいろいろの大食癖と申しますか、そういう問題が、ございまして、大人或いは農家といたしまして、こういう粉食をすぐにせよと言いましても、これはなかなか困難である。先ず少年少女より一日一食以上の粉食習慣を付けることが最も必要である。そのためには、政府におかれまして、数年前より大都市或いは中都市或いは農村にまでいわゆる学校給食を指導実施されておつたのでありまするが、昨年この問題が中止のような状態に相成りまして問題を起しておるのであります。現在東京都におきましては、準生活保護家庭に対しまして二十八年度から五千万円、夜間定時制高校給食といたしまして千五百万円を計上しておる。政府は今回の予算におきましては、僅かにこの食生活改善費といたしまして十六億五千二百余万円しか計上しておりません。義務教育を受けております学童全部千五六百万人に週五回の粉食給食を以ていたしますれば、実に六十三万三千六百トンの白米が節約されまして、給食に必要でありまする費用全部に比較しましても、輸入米の代りに、小麦粉、脱脂粉乳を以て充てますれば、国庫負担金におきましても約百八十七億六千八百余万円の余裕を生じ得ることになるのであります。又、父兄といたしましても、学童に対する負担額も僅か一食六円程度で済むことになり、体位向上と共に一石二鳥であります。この際、食生活改善費の増額なり、他の支出による給食費を増額する意思ありや否やをお伺いいたします。  次に、農林行政一貫性が欠けておるではないかということにつきましてお伺い申上げます。食糧増産に対しまして、食糧不足時代計画のため、需給にアンバランスが出ておるのであります。これが転換その他の政策があつていいと思いますが、廣川農林大臣は、豊富な政治力実行力により、この禍根を断絶せられる意思ありや否や。その一例といたしまして、澱粉の原料でありまする「いも」の増産であります。戦時中或いは戦後数年の間、主食代用として特に尊重されました「いも」類も、最近一般国民から代用品としての存在価値はなくなり、その製品たる澱粉過剰生産によつて価格は下落の一方となつたために、政府買上の法案が作られたのであります。更に甜菜の買入、一飼料の買入と、増産させては買入れる方式がとられ、予算面を見ましても、前年度の計三十六億三千万円余に比べまして実に九十六億九千六百余万円の増加を来たして、百三十三億二千七百万余円の国費を投ずることになつておるのであります。農家を保護してその生産費を十分にする親心に対しましては敬意を表するのでありますが、必ずしも農家の救済ではなく、中間業者救済になつておるように聞いておりますが、その真相を承わりたいのであります。  次に、地方自治団体の問題は最も重大なる問題であります。占領政策によりまして民主化されましたことはいい一面でありますが、漸く悪い面が抬頭して参つておりまして、政府におきましては地方制度調査会を設置されまして種々諮問中であります。併しながら現在この問題は特市の問題であり、県市町村は並立のものでありながら、県は上位にあると考え、県には政府出先機関が幾多ある。よつて県はこの出先機関をおれのほうによこせ。市町村は、特に中小都市におきましては、県は調整機関でよい、県の権限を大幅に市に委譲せよ、政府と直結せよとの希望のようであります。且つ社会主義的感覚と、非社会主義的感覚との相違において、各委員意見がありまして、この一致はなかなかむずかしいのであります。行政財政両面に亘る小委員会ができまして、現在進行中でありますけれども、政府といたしまして、この委員会がただ答申すればいい、政府考えはない、白紙であるというお考えであるか、どういうふうであるか。これは岡本委員質問にもありました通り、ただ委員会諮問機関であるから、ただ答申すればそれでよいというのか。或る一つの信念政府は持つておるかどうか。この点をお伺い申上げたいのであります。  次に向井大蔵大臣に対してお伺い申上げます。いわゆるドツジ方式を金科玉条とされました池田大蔵大臣当時と異なりまして、その手腕力量をお振い願うことのできる立場にありまするところの向井大蔵大臣は、定めし我が国経済界発展のためにいろいろ金融その他に対しまして御努力に相成つておることと思うのであります。然るに、経済界自身には余り変化を来たさないにかかわらず、大臣就任以来、この頃の有価証券値上りが非常に著しくあつて、御就任当時の平均二百六十円見当から、今日では四百五十円と、僅か四カ月間に七割以上の値上りを示しておるのであります。このために世は挙げて株式熱に浮かされて、大衆の資金も又株式界に動員されておることは御承知通りであります。昭和二十五年から二十六年あたりにかけてり株式不況時代とは全く隔世の観があると言つてもいいのであります。いい方面といたしましては会社自己資本増強、戦前六五%もありましたのが三五%ぐらいに転落しました現在、薄弱資本をこの株式好況時におきまして増資することは誠にいい機会であります。併し半面、株価の急激な値上りによりまして得た所得は、恐らく健全な建設面に使用される部分が少く、大部分消費面に使用され、貨幣に対する尊重の念が薄れて参つたのではないかと懸念するのであります。大蔵大臣としては、この傾向がいいか悪いか、御意見が承わりたい。これに関連いたしまして、最近金融機関まがいの名称を持つて資金高利に運転することを看板といたしまして、時には何々金庫と称して多額の資金を集めるものが非常に増加しておりますが、これらの資金は一方において株式思惑買となり、他方において日歩二十銭、三十銭という途方もない高利を以て貸出しを行なつているという有様であります。一旦株式が暴落でもいたしましたならば、善良なる多数少額出資者迷惑困憊は想像するだに恐ろしいことであります。これに対し政府の対質は如何。又かような金融機関から中小企業者が多数借入金をしなければならないところに、我が国中小企業に対する金融対策が薄弱であると申さなければならないのであります。政府の今回とられんといたしておりまする中小企業金融公庫も、これらの打開策の一環として我々は多年熱望しておりましたもので、この実現に対して喜びに堪えません。併しこの金庫も、余りに手続その他が複雑多岐になりますというと、かような、何と申しますか、高利金融のほうに走らざるを得ない。こういうことに相成りまするので、これは開発銀行貸与方式その他を御承知のことと思いますけれども、このたびのこの金庫に対しましては簡略なる貸与方式をおとりになりますかどうか。この点につきまして、大蔵大臣通産大臣にお伺い申上げます。  次に、政府の今とられました公債政策に言及したいと思います。向井大蔵大臣は、飽くまで健全財政を堅持する意味において、公債発行は絶対行わない方針であると言明されていたのが、いつの間にか三百億の国債を発行することとなりまして、公債発行政策を認められておるのであります。而も政府保有公債を売却して蓄積資本の活用をしたいと言われておるが、オーバー・ローンにあえぐ一般金融機関が、この公債引受の能力があるか否か。又保有公債の売却は、結局発行公債日銀引受と同様になるのは理の当然と思うが、大蔵大臣は、これがインフレを起さず、民間消化可能なりとお考えになるや否や、お伺い申上げます。  次に物価問題についてお伺い申上げます。向井大蔵大臣小笠原経審長官共に、我が国経済国際経済と歩調を合せて景気後退説を言われて、国民の着実なる努力と貯蓄に言及せられまして、国民の反省を促しておられます。併し政府機関でありまする国鉄、電通の値上げを初めといたしまして、電力、ガス、米価、すべて値上げを見ておるのであります。景気後退は、恐らくそのしわ寄せば一般中小企業者のみではないかと見られるのであります。成るほど我が国貿易中小企業は大いに役立つておりますが、中小企業だけが国際水準に鞘寄せしたのでは意味がありません。大企業国家機関自体も、経営の合理化によりまして一般物価水準引下げを図るのでなければ、激烈なる国際経済の競争に堪え得るものではありません。小笠原通産大臣は、炭価引下げによりまして物価引下げをする云々、そのためにいろいろの手を打つと申されておりますが、これだけで可能でありますか。鉄鋼を例にとつてみましても、外国と申しますか、いわゆる中共貿易鉄鉱石或いは粘結炭、この問題があるのでございますが、さようになりますというと運賃問題がからんで参ります。この運賃問題に対しまして補助政策をとらなければならない段階に相成つておると思うのでございますが、補助政策をせられて運賃の値下げをし、そうして(「中共からどんどん入れたらいいじやないか、そんなことを心配しないで……何を心配しているのだ」と呼ぶ者あり)はつきりした政策をとつて、即ち補助政策をとる、ただ日本だけの炭価政策をとるか、その点をお伺い申上げます。次に電源開発問題であります。我が国経済進展電力開発によらなければならないことは今更論を待たないのであります。文化国家のかけ声ばかりで、一般家庭までも停電停電では、文化国家が泣きます。今回の施政方針小笠原通産大臣は、五カ年計画で五百五十万キロの出力増加を図る旨のお話を承わりまして、甚だ心強くは感じた次第でございますが、もつと具体的な説明が願いたい。先ず第一に、電源開発会社発足経過、第二に、各電力会社地方公共団体国鉄その他の二十八年度発電予定、第三といたしましては、これに伴いまして二十八年度の渇水期におきまする停電との関係を承わりたい。第四におきまして、天龍川発電のその後の経過、第五に、只見川のその後の処置につきまして簡単に御説明を願いたいと思うのであります。  最後厚生大臣にお伺いいたしたいのであります。社会保険問題に対しまして、大臣は非常なる関心を以て努力せられ、国民保険に対し政府資金を出されること、健康保険に対しまして資格の引上げ、自由労働者保険など、社会福祉努力に相成つた点は感謝をいたしておりますが、その保険医療担当者に対する、何と申しますか、親心がないではないかということであるのであります。この問題は点数問題或いは単価の問題といたしまして、昨年、一昨年来いろいろ問題でありました。現在、税問題におきましてやや緩和しておりますが、この問題に対しましてどういうふうにお取扱いに相成つておるかどうか、これをお伺いいたしまして、私の質問演説を終りたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 竹中君にお答えいたします。  朝鮮事態、殊に朝鮮戦線状態から日本のほうに及ぼす影響は重大であるというお考えは、私も同感であります。朝鮮事態は決して容易なりとは考えておりません。併しながら、国連軍朝鮮からして手を引くということは、今日考えられておらないと思います。又最近の動きから考えてみまして、特に新大統領のアイゼンハワー元帥がわざわざ戦線まで出張せられて視察をせられた、その他の軍の動きその他から考えてみまして、この朝鮮問題がやがて何らかの方法で以て解決に、少くとも米国政府は全力を尽しておるというこは明らかな事実であります。又米国の輿論から考えてみましても、朝鮮問題は何らかの帰結に達するために政府に要望しておるという事実から考えてみましても、何らかの発展を見ることと私は確信いたします。  従つて朝鮮戦線からして若し国連軍が手を引いた場合に、日本の治安といいますか、自衛体制はこれで満足なりやという第二のお尋ねでありますが、今日の自衛体制は、御承知のごとく日米安全保障条約及び保安隊によつて安全を保護する手段をとつており、この手段で一応現在の事態において何らの懸念はないと私は確信いたします。従つて朝鮮戦線から国連軍が手を引いた場合を想像して、現在の自衛体制に何らかの変更を加える必要ありとは私は考えないのであります。  又、国連加入ということ、これは政府の切望しておるところでありますが、その場合において現在の自衛体制と言いますか、防備の状態では、国連加入がむずかしいと言われますが、ともかく国連の要望に副わないだろうというお考えのようでありますが、国連加入について如何なる条件を以て日本に対するかということは、何ら政府承知いたしておらないのみならず、国際連合自身において具体的にこういう要求をするという話は聞いておりません。又、国連日本加入を許す場合に、日本制度或いは憲法が許さざるものまでも要求してということは万々ないと私は確信いたすのであります。いずれにしても国連加入条件については何ら定まるところはないのであります。故に、そのために現在の自衛体制を変更する必要は私は認めないのであります。  その他の問題については各大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇拍手
  7. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 人口増加に連れて食糧の問題が非常に我々といたして重大に考えておることは、あなたの御指摘通りでございます。この食糧増産につきましては、これは土地改良主体として考えて行くほうが一番確実であるのでございまするが、御指摘のように国家財政の枠内におきましてこれをやりまするので、我々の希望のような予算を取れないことは、これも御承知通りであります。そこで我々といたしましては、単に土地改良のみならず、その他の問題で食糧増産を極力進めて行く考えでおるのであります。即ち、種子の改良なり、或いは又農薬を適当にこれを使いまして、この食糧増産に資しまして、毎年殖えて行く日本人口と、それから毎年道路や或いは工場、家屋等によつて潰れて参りまする潰れ地を補給するために努力をいたすと同時に、さようにいたしましてこの農薬等その他のことに、ついて十分努力いたして、食糧増産努力する次第であります。  併しこれと、一方又、食生活改善からいたして、この食糧問題を解決するものも非常に我々として要請されておる大きな問題であると思うのであります。即ち米を主体とする粒食から粉食に切替えて行き、或いは又、米のみに依存せずに、蛋白質脂肪等にだんだんこれを移行いたしまして、食生活改善によつて食糧問題を解決したい、かような見地からいたしまして、昨年から食生活改善費用農林省において計上し、文部省と相談いたしまして学童給食の問題を考えておるのでありますが、これは御指摘通りに、この児童の間からいたしまして食生活の慣習を変えて行くことが一番大事なのであります。併し、これも要望されるような予算を組めばよろしいのでありますが、これも国家財政の枠内でやりまするので思うに任せませんが、併し与えられた財源において文部省と相談いたしまして十分効果を挙げるように努力いたしたいと思う次第であります。  なお、農村行政の面についての一貫した考えがないじやないかということで、この農産物の買上げについてのお話がございましたが、農産物物価を安定させることは、これは食糧増産の上において非常に重大であります。そこで政府といたしましては、農家経済影響を及ぼすことを考慮いたしまして、先年来、澱粉ビート等農産物を買いまして、そして価格の安定に貧しておつたのでありますが、なお又我々はもう少し範囲を広くいたしまして、この政府買入れの方途を考えまして、農産物のいわゆる総合的な食糧増産計画を阻害しないようにいたす考えでおるのであります。(拍手)    〔国務大臣岡野清豪登壇拍手
  8. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。只今農林大臣からお答え申上げました通り学童給食農林省並び文部省意見が一致しておりまして、来年度も僅かではございますが、食生活改善、殊に教育上非常に必要なことでございますので、十七億ほど予算が計上してございます。(「貧困家庭は」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)併し私どもといたしましては、今後、学校給食につきましてはまだ法制化しておらないのでありまして、できますならばこれを立派に法制化しまして、そうして拡充して行きたい。こう考えております。    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  9. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 地方行財政の強化策についてでございますが、これにつきましては、行政と財政というものは不可分のような状態にございますので、財政を強化する点から考えましても、地方団体の事務の分量と総合して考えなければならないことでございますから、国の行政事務と地方公共団体の行政事務との問に事務再配分ということの検討が必要でございます。更に又府県の性格について御質問もあつたのでございますが、この行財政確立という点から考えましても、地方団体の性格、更に規模というものを併せて検討いたしまして、如何なる事務は地方に担当さして適当であるかという点から研究を進めて行かなければならないと思います。この財政の確立という点から考えまして、何とかしていま少しく地方団体に自主的な財源を付与するということが必要ではないかと考えておるのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)ただ困難なのは、その税の取上げ方によりましては、府県市町村間の財政の偏在性と申しますか、それを却つて多くする傾向もございますので、何とかして偏在性の少い財源、税源というものを附与するということを考えて行かなければならないと考えております。これらにつきまして、結局根本的な問題になりますので、地方制度調査会に御審議を煩わしておりますので、その審議を待つて政府方針も決定いたしたいと考えておるのでございます。  更に又もう一点、民主化はされたが能率が落ちておるという観点からの御質問でございましたが、地方制度もまさにその一つでございまして、これには今申上げました地方制度の性格等が誠に重要な問題となつて参ります。これにつきまして政府としては、中央と地方がいま少しく有機的に連絡を密にするという趣旨に基きまして、地方制度調査会に御審議を願つておるのでございます。この地方制度調査会政府との関係につきましては、勿論政府といたしましても、地方制度調査会の御答申というものに絶対拘束されるという建前はとるべきではないと考えておりまするが、権威ある方々の御研究の結果、我が国の国情、国力にふさわしい立派な御答申がなされることと考えておりますので、これを十分に尊重いたしたい考えでございます。(拍手)    〔国務大臣向井忠晴君登壇拍手
  10. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 今回政府金融情熱等を睨み合せまして、市中消化可能な範囲内で公債を発行することにいたしておりますので、財政の健全性をそこなうものではないと考えております。株式が上りましたことは相当根拠があるものもございまするが、中には行過ぎておるものがあると思われます。こういう場合に、株式を発行している会社が便宜を得ることは多少はありますが、むしろ会社自体はさほどの恩沢はこうむらずに、竹中さんのおつしやつたように儲けた人が浪費する、濫費するということがありがちでございますが、これは別に取締の方法はございませんので、株式の投資者が良識を持つてその資金の運用を行われたいということを希望する次第でございます。  政府金融機関の公共性に鑑みまして経営の適正化、健全化を図るため、従来からも監督指導をして来たのでございますが、金融法規の違反に対しては厳重な態度を以て臨む方針であります。  中小企業金融公庫の運用は、十分意を用いて利用者の便宜を図ることに考えておりますから、そのつもりで……。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  11. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 竹中さんにお答えいたします。  武器等製造法案がすでに当国会に提出済みでございまして、現在製造せる武器の九九%は外国の注文でもありますので、輸出産業の一つとして取扱つておるのでありますが、その性質上これが必要な監督取締をなすこととし、それによつて設備の濫設乃至不当競争によるいわゆる出血受注などを避けさせたい方針であります。日本物価が国際的に商いからこれを引下げるということについて、今あらゆる措置をとつておるのでございますが、政府といたしましては、設備の近代化のため、財政資金の重点的な投入、税制の改革、安定した原材料の入手等によりまして、企業合理化の徹底を図り、国内物価水準を引下げまして、国際競争力を強化することを目標として努力をいたしておる次第でございます。  電源開発についてのお尋ねがございましたが、電源開発所要資金千五百億円の内訳は、大体二十八年度におきまして電力会社に千百五十億円、公営企葉に約百億円、自家発電に七十五億円、電源開発会社に二百億円を予定しておる次第であります。この結果二十八年度の電力開発は総計百二十万キロワツトを超ゆる予定でございまして、そういうふうなことで進行いたしております。従いまして今後の渇水期におきましては、制限の程度は需要の増加を考慮いたしまして或る程度本年よりも緩和されるものと見込んでおります。  天龍川については目下開発会社で鋭意工事準備中でございまして、近く請負者を決定いたしまして本格的に工事に着手する段階に相成つております。只見川の開発方式につきましては、いわゆる本流、分流の二方式が問題でありますが、目下政府部内及び開発会社におきまして検討中で、これも遠くない時期に結論を出しまして、二十八年度中には是非とも着工いたしたいと考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣山縣勝見君登壇拍手
  12. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答え申上げます。  先ず第一点の国民栄養の問題でありまするが、先ほど農林大臣より御答弁がございましたが、国民体位の問題或いは国民栄養の問題につきましては、終戦後政府といたしましては毎年調査をいたして参つておるのであります。未だ戦前の域に達しませんが、大分に向上いたして参つております。但し先に国民栄養審議会の答申いたしました二千百五十カロリーにはまだ遠いのであります。従つて食糧政策の見地から申しましても、或いは栄養の見地から申しましても、或いは粉食を奨励いたしますとか、殊に先ほど農林大臣お話にございましたが、脂肪或いは動物性蛋白質或いはビタミン等の摂取につきまして最善の考慮をいたしたいと考えるのであります。従つて、昨年本国会を通過いたしました栄養改善法によつて、現在保健所を中心にいたしまして栄養の指導、殊にこの集団給食に対しまして政府は鋭意努力をいたしておるのであります。学校給食に関しましては、先ほど所管大臣から御答弁がありましたから省略いたしまするが、国民栄養の点につきましては各般の施策を講じまして最善の努力をいたしたいと考えております。  第二の点でありますが、社会保険の診療報酬に対して課税上の考慮をいたす考えはないかというお話であります。今般国民健康保険或いは健康保険範囲拡大等の措置をとりまして、昨年度算定をいたしました医療単価は未だにそのままでございまするが、国民健康保険の今回の国庫負担の意図は、国民健康保険等を中心にいたします保険財政の財政難を改善いたすのが一つの趣旨でありまするが、間接には、医療診療等に対して、医者等に対しても、必ずこれは適当のと言いまするか考慮が払われるものと思うのであります。なお又昨年は単価の算定に当りまして診療報酬に対して所得の標準率を決定いたすにつきまして、大体三〇%、場合によりましては二五%をその課税の標準額と決定いたしたような次第であります。つきましては、本年度におきましても同様の措置がとられますよう只今大蔵省と折角折衝中でございまするから、これらの点において、只今の御質問の点につきましては適当の考慮が払われるものと考えておるのであります。(拍手)     —————————————
  13. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 鬼丸義齊君。    〔鬼丸義齊君登壇拍手
  14. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 私は憲法の全面的改正の問題に関しまして吉田総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。  近来、新聞、ラジオそのほか各方面に亘つて、再軍備の問題について盛んに論議が行われております。而してこの憲法改正と言いますると、あたかも再軍備の別名のごとくに考えられておりますようであります。もとより憲法第九条の戦争放棄の問題につきましては、極めて重要なる問題でありますることは言うまでもありませんが、これは憲法改正の一部の問題でありまして、私がここにお伺いをいたしたいと思いますることは、しかく憲法第九条の問題には限らず、憲法全体の改正に関する問題であります。御承知通り現行の憲法は、我が国が連合国のために占領せられておりまする間に、マツカーサー司令官の命令によりまして、アメリカの民政局員が僅々二週間の間にその草案を作り上げられまして、これを基礎としてでき上つたものであつて日本人の手によりまして日本人のために作られたる憲法ではありません。従つてこの憲法の下におきまして独立日本の政治を行おうといたしますることは、あらゆる方面において矛盾と抵触を生じて参るのであります。国本の最高法でありまする憲法を被覆延引いたしまして、飴の棒のごとく無理な解釈をして行かなければならないようなことになるのであります。かくのごときことは、ただに害あつて益がないのみならず、国民の向うところを妨げまして、法治国において最も大切なる国民の遵法精神を撹乱し、法を軽侮して、収拾すべからざることに陥る虞れがあるのであります。昨年講和条約の締結によりまして、六年間の占領軍の桎梏の手を離れましていよいよ独立国家として祖国再建の壮図に向つてスタートを切ることになつたのであります。吉田総理は、独立の国家となつた以上は、占領下における諸制度の凹凸を調整するように申されておるのでありますが、然るに一昨日衆議院におきまして、松村謙三議員に対しまして、吉田総理は、憲法は国の基本法であるから容易に改正すべきでないと思われるから、今のところ改正する考てはないとのお話がありました。(「当り前じやないか」と呼ぶ者あり)その意味は、戦後日が浅いがために、国民の一部におきまして再軍備の反対の声がありますることにおびえて、憲法改正をしないと言われるのではないか。それとも又憲法全体の改正をも、せないと言うのでありまするか。この点に対しまして吉田総理のはつきりとしたお考えを伺いたいと思います。  現行の憲法について世上各方面に亘りまして論議がされておりまするが、これをざつと拾つてみますると、大体私の知る範囲におきましても七十数点に及んでおります。その主なるものを二、三申上げますると、第一、天皇及び摂政の地位並びに権限に関しまする問題、第二、戦争放棄に関する問題、第三、国民の基本的人権に関しまする数項目に亘りまする問題、第四、衆参両院に関しまする問題、第五、内閣総理大臣の権限に関しまする問題、第六、国務大臣その他軍要任務につく官吏の任免に関しまする問題、第七、最高裁判所国民審査及び同裁判官の任免軸渉に関しまする問題、第八、家族制度に関しまする問題等々、いずれも我が国の運命を決しまするような重要なる問題であつて、これをアメリカ式の敗戦型借物の憲法の下におきまして日本の政治の全きを期するということは、到底でき得ないのではなかろうか。(「逆コースこそ危い」と呼ぶ者あり)従つて、世上論議の的となつておりまする再軍備の問題のごときは、新たに作られんとする日本憲法を作る際、内外の情勢、或いは財政的国力の関係等を勘案いたしまして、その存否を決すべき問題であるにもかかわりませず、如何にも憲法改正即再軍備の可否の問題のごとくに扱われておりますことは、甚だ不可解千万なことであると思います。(「一番大きな狙いはそこにあるのじやないか」と呼ぶ者あり)要しまするに、国が講和条約の締結によりまして独立いたしました以上は、速かに連合国の占領政策遂行を目途として作られましたる仮設の憲法はこれを一働して純然たる日本憲法を制定し、(「あれが仮設の憲法か」と呼ぶ者あり)厳たる威厳を持つ基本法を確立して、万民ひとしくこれを確遵し、以て祖国の回復を期さなければならないと思うのであります。もとよりその改正に当つては、慎重なる調査研究の上に、民主的方法によりあらゆる階層から委員を選び、憲法改正の審議会ともいうべき権威のある大調査機関を設けるお考えはないかどうか。吉田総理の御所見を伺いたいと思います。(「仮設の憲法を取消せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)やかましい……。  なおこの問題に関連いたしまして私は念のためにお断わりを申上げておきまするが、近来どこから放送されるのでありますか、誰がどんな一体企てを持つておるのでありますか、私は知りませんが、自由党の内紛から政局不安に関連をいたしまして保守新党とか或いは保守政党による合同とか、さまざまなる臆測を逞しくされておりますけれども、私がここに憲法改正審議会を作ろうと主張いたしますることは、かような不純な意味はいささかでも含んでおるものではありません。専ら憂国慨世の下に、かような卑見を申述べたわけであります。(「それはおかしいよ」と呼ぶ者あり)ちなみに、今日の保安隊がアメリカから十数隻の軍艦を借り受け、これに大砲その他の戦備を整え、堂々海を遊弋し、飛行機とか戦車或いは大砲等、ともかく小なりといえども、あらゆる施設を施しながら、これを軍備にあらずと強弁を振い、政府みずから憲法を被覆延引して、その責任を糊塗して悟として恥じざる態度は、法律の専門家を以て任じておられまする木村長官初め、政府といたしましても、良心的に定めてお苦しみになつておることだと私は想像いたします。(拍手)もとより政府は勿論でありまするが、我々国会議員といたしましても、憲法の規定によりまして、憲法を尊重し擁護するの義務は課せられておるのでありますが、殊に政府におきましては、国民に対しみずからその水先案内者となつて、遵法精神の高揚を指導しなければならない立場にありまする政府みずからが、憲法を蹂躪するがごときことがありといたしますならば、その罪まさに万死に値いするものであると申しても過言ではないと思うのであります。(「仮設の憲法」「最も大きな冒涜だな」と呼ぶ者あり)  第二に、戦犯者の問題について、吉田総理、犬養法務、岡崎外務の各大臣にお尋ねいたします。戦争犯罪者は、講和条約第十一条によりまして日本にある戦犯者の刑の執行を委ねられ、現にその実行に当つておるのであります。これら戦犯の人たちは、国の至上命令によりまして、戦場に向つて一命を賭して戦つて来たのであります。若しも勝敗その所を異にいたしておるといたしまするならば、彼らは愛国者として、或いは凱旋者として、国家的に大いなる優遇を受けておらるべきはずであります。従つて日本の法律より見ましたときには断じて戦犯者ではありません。即ち、罪なくして罪に問われ、咎めらるべき何ものもなくして身体の拘束を受けておるのであります。併しながら、占領治下におきましては、(「戦争の謳歌だ」と呼ぶ者あり)何分、日本法律に優先してマツカーサー司令官の命令に服さなければならないことは、ポツダム宣言受諾の結果といたしまして誠に止むを得ないことであります。併しながら、すでに講和条約が締結せられまして独立国家となつて国民ひとしく現行憲法によつてその権利義務が確立されております以上は、(「仮設じやなくなつた」と呼ぶ者あり)国法上罪なくして罪に問われておる者を、国の権力によつてその自由を拘束するというようなことは、憲法の第三十一条の自由人権に対しまする規定に背反する不法なる処置ではないかと私は思います。この戦犯者と憲法第三十一条との関係につきまして私は多大なる疑問を持つものであります。条約第十一条によりまして、国は連合国に対しましては戦犯者の刑の執行を委ねられておるのでありますけれども、この委任は連合国と国との間だけによつて取極められたのであります。その結果は、直ちに国法上罪なき国民の自由を奪つて拘束することは、個人たる国民の基本的自由人権を侵害するものではなかろうか。この点に対しまする吉田総理の法的見解を明確にして頂きたいと思います。  更に、戦犯者問題については、私は、曾つて講和条約の締結前、当院において吉田総理大臣に対しまして、講和条約が締結されたならば、戦犯者問題は当然解消せらるべきであろうということをお尋ねしたのであります。これに対して総理は、全面的に私と同様なる見解を持つておられたのでありますが、遂にその結果を見るに至らなかつたことは誠に遺憾なことであります。すでに講和条約が締結せられ、国交まさに回復したる国と国との間におきましては、憲法上その刑の執行が誠に不自然なる苦しき立場にあることを十分に理解してもらい、私は一日も早くこれらの戦犯者全部を釈放してもらうように、政府としても一段の努力希望するものであります。当参議院法務委員会におきましては、曾つて講和条約締結と同時に、いち早くこの問題に対しまして特別委員会を組織いたしまして、私みずから委員長となつて、連合国の司令部にしばしば係官を訪問、釈放の要求をいたしますると同時に、巣鴨の拘置所の戦犯者の調査をいたしまして、あらゆる角度から釈放促進に関しまして努力をして参つたのであります。当時は毎月数十人ずつの釈放を許されておりました。然るに昨年四月、条約がその効力を発生いたしまして、司令部が解散をして引揚げました後は、逆に殆んど見るべき釈放者が絶えてしまつたのであります。おいおいと刑期の三分の一を経過いたしまして仮釈放の有資格者が殖えまするにかかわりませず、釈放の許可に至りますると殆んど皆無の状態になつております。誠に不可解千万なことと思います。過般フイリピンのオシアス上院議員が賠償問題につきまして日本に来朝されましたる際に、同氏の夫人が参議院の議長サロンに我が国の婦人議員初め各団体の代表婦人を三十数名招かれまして、日比両国の国交問題について意見の交換をいたしたのであります。その際、その席上において同夫人は、フイリピンにおる日本戦犯者はすでに審理を終り、釈放したい心がまえでおるにかかわらず、なぜか日本政府からは何らの正式申出がない、恐らくは日本政府は、賠償問題未だ済まないときに、かようなことを申出ずべきものでないその段階ではないと遠慮されておることと思われるが、そんなことは我々としては全く考えていないのであるから、速かに日本政府から公式に申出てもらいたいと述べられたそうであります。御承知通りにオシアス上院議員はフイリピンにおける政界の有力なる人であると聞いております。勿論、議員本人の言葉ではありませんけれども、同伴の夫人の言葉でありまして、或る程度信憑力のあるものと私は思います。その言葉はともかくといたしまして、この問題に対しまする政府努力は私は甚だ不十分なものではないかと思うのであります。如何なる事情及び経過になつておりまするか。この際、外務大臣並びに法務大臣から詳細なる御説明を願いたいと思います。  更に本年の一月の二十二日公布実施せられましたる戦犯者処遇法の一部改正の法律でありまするが、この実施に対しまして、アメリカ政府から異議の申立があつたということが新聞に報ぜられております。若しそれ、これが真実であるといたしましたならば、実に由々しき重大なる問題であると私は思います。同法の改正法律案は、昨年の十二月の休会前日に突如として衆議院議員のほうから議員提出法律案として提案せられて参つたのであります。当院の法務委員会におきましては、提案者に対しましては勿論でありまするが、政府に対しましても、同法律案制定に関しまする連合各国に及ぼしまする影響、殊にフイリピン並びにオーストラリアの両国におきましては、未だ三百名に近い死刑の宣告を受けたる戦犯者五十二名を初めといたしまして、無期その他長期の重刑を科せられましたる者が、帰心矢のごときものがあるにもかかわりませず、未だその結果を見るに至らないときに、かかる法律の制定が果して妥当であるかどうか。誠に懸念に堪えませんために、政府に対しましても、その取扱について慎重を期せられるべきことを注意をいたしたのであります。若しそれ、その法律の公布実施によりまして関係国を刺激いたしまして、悪影響を受けるようなことになるといたしましたならば、政府の責任又軽からざるものがあると私は思うのであります。この点に対しまする経過並びに政府の所見を伺いたいと思います。  第三、戦時占領下における我が国の諸制度は、連合国の指示によりまして全く一変してしまつたのであります。その内容は、若干は改善せられたようなこともございまするが、おおむね我が国の国情に副わぬ、殆んど改悪というふうに終つておりまするものがその大部分であつたと思います。このことは、占領目的が、日本の帝国主義或いは侵略主義を根抵から粉砕せんといたしまする誤まれる基礎の下に立たれましたことが一段と拍車をかけたのであろうと思いまするけれども、アメリカと日本とは、その歴史におきまして、又風俗、習慣におきまして文化の程度乃至環境等におきましても、著しき相違のあるのにもかかわりませず、これを無視して、一方においては国防の施設を根抵から破壊し、警察並びに諸団体を寸断をして、独禁法、農地法、民法等の改正によりまして財産の分散を企図いたしまする等、挙げ来たりまするならば、まさに枚挙にいとまがないくらいであります。私がここに特に政府の所信を伺つて同調を願いたいと思いますることは、農地法の改正によりまする旧農地の所有者の援助に関しまする問題であります。占領軍が我が国において幾多の諸制度の改革をいたして参つたのでありまするが、そのうちの最悪なるものは農地法の制定であつたと私は言うことができると思うのであります。戦いに敗れたりといえども、国民の所有権は厳として存する以上は、祖先伝来の宝とした農家の田畑を、一反数万円或いは十数万円の価格を有しまするものを、僅々その百分の一にも足らない一反九百五十円という価格政府がこれを強制買上げをして小作人に反七百五十円で分配をして而もその買上代金は現金によらずして農地証券を与えて、又たまたま若干の土地を旧地主が保有して小作人に貸し与えたといたしましても、その土地の小作料は現穀物にあらずして、公定価格に換算したる極めて少額の金納であつたのであります。かくのごとく見来たりますれば、実にこれほど極端なる暴政は、私は共産主義国といえどもあえてこれをなさなかつた最大の悪政であるということができると思います。併しながら、翻つてこれを今日から顧みまするときは、この暴政は又その半面において善政の第一号であるということができると思うのであります。何となれば、通常の場合に農家の所有しまする田畑は、農家の宝として一坪たりといえどもその意に反してこれを他に移転するがごときことは容易な業ではありません。然るに戦争の完敗によりまして国民一般が敗戦の悪夢から未だ覚めざるときに、疾風迅雷時を移さずしてこれを断行いたしましてこれがためにこの大至難事も無血の間に易々として実行せられたのであります。誠に神業と言うほかはないと思います。若しそれ、一歩を誤まりまするならば、このこと自体によりまして国内は一大混乱に陥るべき問題であつたと思われるのであります。今若し従来の貧富その所を異にして、地主と小作人というような昔のままの状態に置かれてあつたといたしましたならば、滔々として襲い来たりまするところの共産主義の魔風は、国民の六割を占める農業労働者を真赤に塗り潰したのではなかろうかと思いまするとき、私は思わず戦慄を覚えざるを得ません。然るにこれらの被徴収者の旧地主は、従来専ら小作料によつて、極めて平穏に、又比較的高級なる生活を営み、労働者の荒仕事には不適当な人が多いようであります。即ち所有財産の果実によつて生活を営み、額上の汗による勤労所得によつて生活を営むクラスのものではありませんがために、すでに六年間に亙る竹の子生活を続けて、今や本末顛倒して社会の落伍者の最前線に放り出されておるのであります。これがために幾多の悲劇を演じつつありまする状態であります。かくのごときは、ただに憲法第二十五条による最低限度の生活を営む権利を侵害するのみならず、罪なくしてかかる窮地に追い込まれましたるものであります。今や軍人に対しまする恩給制度の復活或いは文官恩給に対しまする増額等の措置を施しておりまするとき、これらの人々は無言の犠牲者として黙々として不遇に忍び泣いておるものであります。私はこの際、如何に声なしといえども、この実情を察せられまして、すでに交付してありまするところの農地証券を飛躍的に増額いたしまして、或いはその他の方途によりまして何とか援助の手を伸ばしてやりますることは、社会正義の上からいたしましても当然なることであると思うのであります。この点に対しまする農林大臣の御意見を伺いたいと思います。  終りに、与えられたる時間が少いために、以下ただその要点だけを指摘いたしまして、各関係大臣からお答えを願いたいと存じます。  第一番は、家族制度を復活する考えはないか。  第二は、国民の指紋採取を徹底的に励行する、或いは警察の戸口調査をこれ又徹底的にいたしまして、以て不良者の住み家のないような措置をとる考えはないか。(「夢よもう一度」と呼ぶ者あり)  第三、労働基準法の改正をする考えはないか。  第四、在外個人資産喪失者に対しまして国家としての補償をなす考えはないか。  以上であります。(拍手、「老人の夢だな、これは」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  第一の質問は、憲法を全面的に改正する考えがないか。私の聞き違いかも知れませんが、現憲法は二週間の間にでき上つたというようなふうに私は聞きましたが、これは間違いであろうと思います。(「間違いじやない」と呼ぶ者あり)いずれにしても、現憲法は相当の時間の間研究もし、慎重に審議もせられて、両院を通過いたした根本法であります。この根本法には、この憲法には、御指摘のごとく幾多の欠点があるかも知れませんが、併し憲法である以上は、この改正にはよほど慎重な態度を以てこれを考うべきであつて、或る点がいけないとか、或る点に反対があるとかいうようなことで、直ちに憲法改正に着手することは、私は差控うべきであると考えるのであります。又この憲法は、仮に国民の全面的反対、或いは国論が沸騰したというようなことがありましてこれによつて国民が、現憲法、新憲法の間にこういう改正をいたすべきである。或いはその改正はこういう意味であるということが、国民の理解の上に、十分の理解の上において改正せられるものでなければ、でき上つた憲法も再び改正をするというような機運になりまして、国の根本法が幾度も改まるというようなことは、国家のために決して喜ばしいことではないと考えるのであります。故に、憲法改正は、政府としても、又国民としても慎重に考うべきものであると私は確信いたしまするので、現在私はこれを改正をするという考えは持つておりません。従つて又、憲法改正審議会、これは仮の名前であるとしても、かくのごときものを置く考えがないかということでありますが、憲法改正が必要であり、国論もここに一致するということになりましたならば、新憲法を慎重に審議する上から、憲法改正審議会というような性質のものを設けて慎重に審議することは当然であろうと考えますが、現在政府憲法改正考えを持つておりませんから、従つてかくのごとき審議会を設ける考えはございません。  その他の問題は主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  16. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 戦争裁判受刑者の問題についてのお話でございますが、平和条約にありますような仮釈放や赦免等の点につきましては、政府としては、過去においてずつと各国とも話合つて努力して参つております。特に昨年の十一月十日の立太子礼の際には、各国に改めて全面的に釈放のことを申入れておるのでありまして、これに対しましてインドの政府と中国の政府からは賛意を表して参つておりまするが、まだほかの国からは賛意は表して参つておりません。但し、アメリカ政府からは、すでに委員会を設けてBC級等の問題を研究し、仮釈放等を行なつておりますが、同時に、この委員会でA級の戦争裁判受刑者に対しても考慮をするということであります。又、イギリスやオランダにおきましても、BC級に対しましてはアメリカと同様な委員会を設けて個別的に研究するということであります。又、フランスにおきましては、極く最近にフランス大統領がわざわざ我が西村大使を引見いたしまして、本問題についで好意的な考慮を加えるというお話がありました。又個別的審査を早速にも始める、こういうことでありました。又濠州やフイリピンにつきましても、先般在外公館が設置されまして以来、両国政府との間の連絡も非常に敏活に行くようになりましたので、漸次相互の理解が進み、事態は好転し得るように考えております。フイリピンにつきましてオシアス氏の夫人のお話がありましたが、これは若しそういうお話がありましたとすれば、オシアス夫人の何かの誤解でありまして、政府としては一度ならず正式に先方に申入れをいたしてあります。  それから昨年末国会を通過しました議員提出の改正法案でありますが、これにつきましては、先般、米国側から或る疑義を質して参りましたが、これは抗議ではないのであります。併しながらこの本法の運用につきましては、法務大臣の訓令もありまして、慎重且つ適切であるべきことは申すまでもないのでありまして、この点を十分米国等に説明をいたしております。併しながら、幸いにして最近漸次好転をいたしておりまする各国の態度等にも鑑みまして、この際不要の疑義や懸念を生ぜしめるようなことがないことを最も必要といたしますので、今後とも十分に注意し慎重に措置いたしたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  17. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えをいたします。  最初に戦犯者の拘禁と憲法関係につきまして申上げたいと思いますが、これは総理大臣への御質問でございましたが、総理大臣のお答えがございませんでしたので、私がお答えをいたすのでございます。  事情の如何にかかわらず、日本人が日本人の戦犯者を引続き拘禁するということは決して晴々しいことでなく、一つの不幸事だと考えております。併し憲法論といたしまして、平和条約締結後も裁判が引続き行われておるということでありますならば、これは問題でございますけれども、平和条約十一条のように、何と申しますか、過去のいわば超憲法的な法秩序の下において、もうすでに成立確定いたしました判決を、その効果を引続き認めておるという限りにおきましては、法理論としては憲法違反ではないという解釈をとつている次第でございます。  それから戦犯者の処遇と赦免についてアメリカから文書が参りました経緯につきましては、外務大臣からお答えを申上げた次第でありますが、アメリカではこういうふうに、若しやそうあつてはならないかという意味で問合せて来たのであります。それは、一時出所の運用というものを不当に且つ過度に行なつて、戦犯者を事実上関係国の同意なくして、何と言いますか、釈放同様なことをするのじやないか、こういう問題について問合せがあつたのでありまして、決してそうではないという回答をいたしまして、大体一部了解を得たように聞いております。  法務省といたしましては、一番懸念いたしますのは、日本の国は、平和条約でも何でもあとでどうでもいいという態度をとる国だと思われることが、一番国際信義上これは重大なことでございますので、戦犯者の処遇につきましても、国際的な嘘つきにならないという点に重点を置きまして、法の運用、そして戦犯者の扱いについては運用を公正適切にする、こういう通牒を各関係係官に出している次第でございます。こういうふうに御了承を願いたいと思います。  それから家族制度の問題でございますが、御承知のように旧民法におきましては、戸主の法律上の特別の地位というものが非常に強くございまして、且つ家族に対する支配権が非常に強かつた、これを改めたのでありますが、鬼丸さんの御心配の意味もよくわかるのであります。この過渡期におきまして、急に人権の平等と尊厳を得た若い人たちが、行過ぎの行動をするということはあると思います。併し只今日本の国は、一つの絆が解けたあとの、何と言いますか、反射作用が行われている時代でありまして、これはどこでもそういう状態に置かれた民族というものはそういうふうになるのでありますが、私ども政府当局といたしましては、この反射作用の行われています過渡期というものの物差を何年間という長い物差にしまして、慎重に見て、そうして初めて改正しなければならぬところは改正するというような、多少慎重過ぎるかも知れませんが、そういう態度をとりたいと思います。さもないと、善意な改正をやつても、その改正そのものが、又歴史の眼から見れば行過ぎであるというようなことを心配いたすのでございます。そういうトかうに御了解願いたいと思います。(「老人の繰言は慎まなければならない」と呼ぶ者あり)  それから戸口調査でございますが、これは昭和二十五年四月に、昔の形の戸口調査は廃止いたしました。率直に申上げまして私どもの印象としては、これはどうも半強制的な感じを国民に与えていたと存じます。只今は、昭和・二十五年五月以降は、巡回連絡というような方法におきまして、案内簿を備え付けて防犯その他のことをやつているわけでございます。そういう意味で、どうも昔の戸口調査に廃るということは、それこそ、この頃国会でよく御質問がありますように、警察国家みたいになつて行くという印象を与えては如何かと思いまして、この点は非常に今慎重に研究をいたしております。  又国民の指紋を取るということでございますが、これは政治的と事務的に分けてお答えいたしますが、政治的には、どうも国民全体を犯罪容疑者のように扱うような感じを受けやすいことでありまして慎重に考えなければならんと思いますし、事務的には、これは十数億の金が要るのでありまして、今のようなインフレ財政というような御質問のある折柄そんな金をこういうことに使うことが果してバランスを得ておるかどうか、これも慎重に考えたいと存じます。  以上お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇拍手
  18. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 旧農地所有者の援助に関する御質問でございましたが、これは農地証券を増額する意思がないかというお話でありますが、これは只今のところ増額する意思を持つておりません。ただ当時におきましては、昭和二十年の十一月二十三日現在の事実に基いて適正にきめられましたので、その当時に遡つて考えるというようなことはなかなか困難だろうと思うのであります。ただ併し、この農地がなくなつて以来、旧農地の所有者が、その農地を失つたがために直接転落いたしまして、非常な生活の困窮を来たしておる実例、又その人たちからの陳情等は、たびたび私は聞いておりますので、これは別途に考える方途を講ずべきではないかと思います。直接農地証券を増額する意思は持つておりません。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇拍手
  19. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答えいたします。  労働基準法を改正する意思はないかというお話でございましたが、御承知のごとく昨年基準法並びにこれに基く諸規則につきましては、中央労働基準審議会の答申に基きまして、手続の簡素化、なお実情に副わなかつた点について当面必要な所を改正いたしまして、九月一日から実施をいたしておりまするので、目下政府としてはその実施の状況を注視しておるような次第であります。勿論申上げるまでもなく、労働基準法というものにつきましてはいろいろ御意見のあるところもありまするし、又法の性質そのものが、時の社会情勢といろいろ関連をしなければならんものであるというこことも承知いたしておりますので、政府といたしましては、労働条件の国際的水準ということも考慮に入れつつ、常にこれが運営については検討を怠らないでおる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣向井忠晴君登壇拍手
  20. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 在外個人資産が返還されません場合に、これを国家で補償いたすということは、現在の財政状況から見まして非常に困難なことでございますが、なお検討中でございます。(拍手
  21. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 千田正君。    〔千田正君登壇拍手
  22. 千田正

    ○千田正君 昭和二十八年度における吉田内閣の施政方針に対しまして、吉田首相並びに各閣僚に対しその所信をお伺いいたしたいのであります。一昨日以来、同僚議員から大部分の私が伺おうという点につきましては、すでに御答弁があつたようでありますので、重点的に、端折つてお伺いいたします。  吉田首相、岡崎外務大臣の御説明を待つまでもなく、世界平和を求むることは全国民の願いであり、要求であります。然るに現今の世界情勢は、自由民主主義国家と共産主義陣営国家との冷戦であり、何人も第三次の衝突を避け得るということを明言し得る者は恐らくないだろうと思うのでありますが、併しながら、この二つの相異なる代表国、アメリカとソ連との中に立つて、アメリカもソ連も戦一なかれ、ソ連もアメリカも手を引けと言い得る者は、恐らくアジア八億の民以外にはないだろうと私は確信するものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)更に、第二次世界大戦に悲惨なる敗戦をこうむり、原子爆弾という科学新兵器の犠牲となつた我が日本民族こそは、世界に向つて平和を要望し、否、要求する権利を持つところのただ一つの民族であるということを我々は自覚せざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この悲願を達成するための国際連合への参加であるならば、一方に偏することなく、広く如何なる国とも手を結んで、堂々とこの血の洗礼を受けた我が民族の悲願を達成することを念願として参加しなければならないと思うのでありまするが、首相国際連合参加への信念を率直にお伺いいたしたいのであります。  次に、アメリカ前大統領トルーマン氏が一九五〇年六月台湾政府に対して中立化を指令して以来約三年にして、このたびアイゼンハワー新大統領によつて中立解除を指令され、台湾海峡の自由行動はやがてアジア大陸に大なる旋風を巻き起そうとしておる今日、台湾中国政府と友好条約を結んだ我が国としては容易ならないところの事態に直面したと思うのでありますが、(「そうだ」と呼ぶ者あり)日本政府といたしましては如何なる態度を以てこの今旋風が起きんとするところの極東の事態に処せられようとするのでありまするか。吉田総理大臣の御所信を承わりたいのであります。(「はつきり答えろ」と呼ぶ者あり)吉田総理大臣はしばしばこの席上で再軍備も憲法改正もせぬと明言されましたが、吉田首相施政方針の中にありましたように、アイゼンハワー・アメリカ大統領の極東政策に基いて、自由国家群の一環として日本が協力するならば、「極東の風雲ただならざる今日、恐らくアメリカ及びその他の自由国家群より、当然、この極東の現在の情勢に対応するための防衛準備を要請されるということは、何人も首肯し得るところの問題であると思うのであります。その場合において、果して最大限度どの程度の一体防衛人員を増そうとするのか。全然増さないとするのか。先般大蔵大臣は、このたびの防衛費においては相当削減したから人員を増さない、設備のほうにおいてこれを充当して行くというふうなことを仰せられておりますが、現実の姿はそう簡単な問題ではない。昨日今日の外国電報の報ずるごとく、今や極東の風雲が嵐をはらんでおる今日において、果して、我々は、現在の自衛体制のみにおいて世界各国が満足して日本の現状をこのままにさせるかどうかということに対しましては、非常な疑念を存するのであります。かるが故に、私は、果してこのままの自衛体制のみで日本は暮せるかどうか。この自衛漸増の、或いは人員において、設備において、今後増すという考えを持つておられるかどうかという点を、吉田総理大臣並びに木村保安庁長官にお伺いいたしたいのであります。  次に、終戦時の在外公館借入金につきまして、昭和二十六年、国の債務として当然支払うべきものとして決定されたことは御承知通りであります。昭和二十七年三月三十一日法律第四十四号を以て返済を開始したのでありましたが、当時の予算八億五千万円を計上され、そのまま今日に至つても完済をまだ見ないのであります。吉田総理大臣は曾つて外務大臣として、この終戦時に海外におつた居留民から国が金を借りて、そうして引揚民を完全に日本に帰しつつあつたこの当時の事態に鑑みたならば、当然この引揚民から借りたところの三十五億になんなんとするところの金は、国の財政は十分でないからと言うて五万円で打切つてあとを払わないというようなことは、道義の高揚を常に口にするところの総理大臣といたしましては、みずから以てこれを完済するだけの御意思を持たなければならないと思いますが、総理大臣といたしましてはどういうふうにお考えになられますか。その点を明確にお答えを願いたいと思うのであります。  次に、在外資産問題につきましては先ほど鬼丸議員からもお尋ねがありましたが、在外資産問題についてお尋ねいたしたいと思います。簡単にお尋ねいたします。戦勝国の請求権に戦敗国の在外資産が充当された場合、損害を受けた国民に対し戦敗国政府が補償を行うということは従来の常識であります。ヴエルサイユ条約の第二百九十七条及びイタリア平和条約の第七十四条は、自国民に対するところの在外資産補償を規定しておるのでありますが、又我が在外資産、この終戦時におけるところの約七兆と称せられるところの厖大なところの在外資産は、今後如何なる方法において各国との講和が結ばれた後において国民に対して支払われるか。こういう点につきまして十分なる用意があるかどうか。この点もお伺い申上げたいのであります。  先ほど又鬼丸議員が最後でお尋ねが十分じやなかつたようでありますが、補足して私からお尋ねいたします。それは戦犯の軍人として只今刑務所に繋がれている人たちについては、法務総裁から丁寧な御答弁があつたのであります。私は更にそれに附随しましてこのたび軍人恩給制度が復活され、遺家族或いは傷痍軍人の人たちに対しては、五百億という厖大なところのいわゆる軍人恩給を復活するところの準備がされておる。ところが遠く比島のモンテンルパの牢獄の中にすでに八年、或いは巣鴨刑務所の中にこれ又数年を今後暮さなければならないところのその留守家族に対しては、如何なる方策をとられておるのか、果してこのたびの恩給復活の中に含まれているのかどうかということを、吉田総理大臣並びに大蔵大臣にお伺いしたいのであります。  大蔵大臣になおお伺いしたいのは、日本人口八千五百万の所得総額四兆六千億に対し、二十八年度予算は、各省の要求一兆六千億を圧縮しまして、一応九千六百五億円に抑えてインフレ防止に必死の気がまえを示したのでありますけれども、一方において三百億の国債の発行の止むなきに至つたことは、頭隠して尻隠さずの類にして、現在の状況を見ればインフレヘの突入必至と思わざるを得ないのであります。昨今の株式市場の暴騰、盛況等を見ましても、これを如実に物語つているのでありますが、歳出面において二十七年度に比し三百五十億円の減少となつておると蔵相は説明しておりまするけれども、二十七年度の防衛費のうちから約九百億円繰越されるために、実質的には二十八年度の防衛関係費の総支出は二十七年度よりも増加することになるのでありまして、決してインフレ抑止の原因とはならないのであります。三百億円の国債と四百億円の見返資金を繰入れまして投資特別会計を作つて開発銀行、輸出入銀行、電源開発への間接投資、更に一般会計二百八十億、簡保資金の百八十五億、資金運部の一千六百七十億、公社債公募分二百二十億等、総額三千五十五億円で、二百五十六億の増加でありますが、かかる方策を以てインフレの防止に確信があるかどうかということをお伺いしたいのであります。  一方、歳入の見積りは限度一ぱいの状態でありまして、更に今後アメリカやその他自由国家の共同体の下に防衛態勢の増強等を要請された場合においては、歳入の増額を予期されぬとすれば、当然、財源として公債発行、蓄積資金の食い潰しとなる虞れがありますが、若しさような場合においてはこれに対応するところの如何なる財源を持つておられるか。この点を明らかにされたいと思うのであります。  一昨日の説明によるというと、東南アジアヘの貿易を促進すると言つておられますが、これに対する金融政策が十分でないと思うのであります。例えば東南アジア向けの輸出品の大部分中小企業の製品でありますが故に、現在程度中小企業対策では到底輸出の振興は予期されません。特にコスト高になるところのこの方面に対して、特別の融資又は助成の方策をとられる考えがあるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。  次に食糧増産対策及び公共事業費としましては、本年度に比しまして二百七十二億円を増加したと称しておりますけれども、物価高等を現実に考えるときは、事業量の増加は大したことではないのであります。試みに、数度に及ぶところの風水害或いは地震等の復旧の状況を見ましても、未だ以て二十五年度災害、二十六年度災害等は復旧が完成しておりません。殊に、基礎産業であるところの農業の耕地の復旧、或いは漁港の整備復旧等に関しましては、当初計画に副うためには、なお数年を要する状況であります。この状態では、吉田自由党内閣国民に公約したところの増産対策としての政策は十分に果し得ないと思われるのでありますが、如何なる方法を以て国民との約束を実行するお考えでありますか。大蔵大臣にお伺いしたいのであります。  岡崎外務大臣にお伺いいたしたいのでありますが、アメリカのアイゼンハワー大統領が就任早々発表した九原則に基くところの自由国家群への政策は、対外援助資金より通商へと移行さるるということは、すでに御承知通りでありますが、通商に重点を置かれた場合において、日本の従来の立場から考える場合に、経済占領政策のような観さえも我々は感ずるのであります。殆んど一方的な輸入政策のごとき行き方は、外相の言うような自主経済の確立であるとは言えないのであります。輸入の見返りの輸出に関しましても殆んど見るべきものはなく、たまたまアメリカ向けに輸出しましても、向うさまでは保護関税等をかけて、到底我々の予定のような輸出はあり得ない、輸出入のバランスは望み得ない今日の状況においてこれを今後の通商へと移行された場合に、どういう方向に向つてこの経済自主独立の精神を以て、かかる方向を是正する考えがあられるかどうかという点につきまして通商条約をまさに結ばんとする現在におきまして外務大臣の御意向を伺いたいのであります。  次に、ソ連、中共、韓国等に、戦後拿捕抑留されましたところの漁船その他の船舶は、今年一月三十日現在で四百九十四隻 乗組人員が四千九百九十七名の多数に及び、船舶の損害を金額に直せば数百億円に達するのであります。その家族のこうむつた物質的且つ又精神的な損害は甚大であり、我が国水産業といたしましても又漁民の生活が根抵から脅かされておるところの状態であります。昨年平和条約発効後においても、ソ連関係拿捕船舶四十七隻、抑留人員が四十八人、中共関係が拿捕船舶二十七隻、抑留人員が三百七名、中国台湾関係は拿捕船舶五隻、抑留人員二十二名、韓国関係は拿捕船舶は二十二隻、抑留人員が四名という状態で、独立後の日本は、公海自由の原則を確立して、安全に操業をなし得べきはずであるにもかかわらず、未だ以てかかる状況にあるということは、我々は如何なる国に対しましても、アメリカと言わず、ソ連と言わず、中共と言わず、台湾政府と言わず、如何なる国に対しても平和裡にこれを解決するような努力と熱意を持たなければ、この問題は解決されません。これに対しまして如何なる方策を外務大臣はお持ちであるか。この点を伺いたいのであります。  日韓関係におきましては、本年当初、李承晩大統領の来訪によつて、会談再開を予想されておりますが、在韓国の在外資産処置及び李承晩ラインと称せらるるところの一方宣言によつて強調さるるところの海域問題に対しては、どういう処置を今後とつて会談を進めらるるところの御意向であるか。この点を外務大臣の御答弁を頂きたいのであります。  更に又、台湾中国政府の台湾海峡における自由活動は、大陸反攻への重大なる基点と思われるのでありますが、極東の風雲まさに急転したる今日、中共よりの引揚が果して完全に実行さるるという見込が立つかどうか。この点を外務大臣にお伺いいたしたいのであります。  小笠原経済審議庁長官のお考えを抗いておい伺いいたしますが、貿易の振興方針として、重要物資輸入の相当部分をドル地域から東南アジアに転換するという方針のようでありますけれども、現在輸入制限を行われておるポンド地域をも含む東南アジアからの輸入は、果して所期の成果を得らるるかどうか。当然、輸入と同時にガツト加入が先決問題であります。本日は恐らくゼネバにおいてガツト加入参加国の大会が開かれておるわけでありますが、未だ日本はガツトヘの加入ができない状況において、果して東南アジアヘかけての市場を開拓できるかどうか。ガツトヘの加入は如何なる方策を以て進められ、加入できるかという点を、長官からお伺いしたいのであります。  農林大臣にお伺いいたしたいのは、独立日本とか、或いは自由経済とか、政府の御説明は誠に勇ましい議論でありますけれども、一体八千五百万の人口を抱えてのその主要食糧は、依然として国外よりの輸入に待たなければなりません。食糧はそれぞれの国々において国民の生命にかかわるところの重大な問題であるは言を待たないのであります。食糧を政治外交の手段として使用された場合には、まさに武器以上の決定的なものであるということを、我々は考えなければならないのであります。国連食糧農業機構、即ちF・A・〇は、アジア地域におけるところの米の供給不足を重大なる課題として取上げまして、今秋の予想に対しても誠に悲観的な警告を発しております。世界の米の取引の約半分を占める日本に対しましては、少からず不安を覚えざるを得ません。この日本の国土よりあらゆる努力を払つて食糧生産を考えなければならないのでありますけれども、如何なる方策がありましようか。傾斜十五度以下の土地が五百万町歩も捨てて置かれている現状において、既耕地の土地改良、未開地の開拓等に対しては、真剣に食糧政策政府国民も一体として考えねばならないのであります。毎年四億ドル以上の外貨を払い、二千万石に亘る輸入食糧を思うとき、国内増産対策に対しまして、この四億以上の金を振向ける方法考えなければならない。然るに現在の農村の子弟の次三男は故郷の農地を捨てて都会へと憧がれ、昨年一カ年でも各都市べの流入は約百八十万と称せられます。就職就労は僅かにその四分の一にも過ぎない。他は失業者群に投じて行く姿を見てこのまま放置しておくことは、誠に政治の貧困の極と言わざるを得ません。このたびの大蔵大臣、小笠原国務相の説明においても、この深刻なる食糧問題並びに開拓農民の苦難の現状に対する十分なる対策を見出すことはでき得ないのでありますが、農林大臣はこの重大なる問題に対して如何に考えられますか。殊に二十五年、二十六年等の暴風災害さえも復旧は完了せず、更に電灯もなく、家畜もなく、なお営営としておるところの開拓農民の姿を見て御覧なさい。吉田総理大臣考えからは、東京から大阪まで弾丸道路を作つて、何十メートルという大幅な道路、坦々たるコンクリートの道路を作ろうとしておる。一方、燈火もなく、行くべき途もない開拓農民のあの姿に、我々はそれに増産を望もうとすることは、誠に私は政治のいわゆるアンバランスであるということを衝かざるを得ないのであります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)  次に運輸大臣並びに小笠原長官にお伺いいたしますが、政府貿易外収支の改善に資するために海運政策として外国航路船腹の増強を図ると声明しておられますけれども、最近の状況は各社手一杯の配船をしております。その結果、海外におきまして積荷の競争をやる、積荷の競争をやつた結果は低運賃競争へと移行しておるのであります。最近の状況から見ましても、アメリカからは、そういうふうに日本の国の船舶がやつて来て積荷の競争をやつて、やがてはいわゆる船賃の低運賃の競争をやつて行く、これでは我々は国際信義を疑うという抗議が来ておるということは、私が言うまでもないのでありまするが、かような状況にして、一貫したいわゆる配船計画もなく、又各社の自由競争に放任した結果、日本の海運界の将来というものは誠に国際信義を失う状況に立至るのではないだろうか。更に政府が企図しておるような、いわゆる貿易外収入というものは、むしろ逆に、各社とも赤字財政で悩み、且つ逆に大蔵省から助成金でも出さなければ、この海運政策が完成しないというような状況に陥る慮れがあるのでありますが、この点につきましては石井運輸大臣は如何なる方策をとられるか、お伺いしたいのであります。  法務大臣にお伺いいたしますのは、政府占領政策是正の一端として警察制度改正を企図しておられるが、民主化を理想とし、国民生活の中に親しまれる警察として育成さるべきはずの制度が、逆に、曾つて戦前のごとく、おいこら的の畏怖の的に逆行する制度になりはしないかと、国民はすこぶる不安の念を持つておるのであります。更に各方面から要望されておるところの能率化との調整並びに公安委員の存在は、単に名目的な存在に過ぎない状態に置かれる虞れがありますが、これでは折角の改善は改悪になりはしないかと思われますので、その改善して国民の要望に副う真の骨子を明確にお答え願いたいと思うのであります。  文部大臣及び本多国務大臣にお伺いいたしたいのであります。文教政策として、このたび地方財政平衡交付金千七百二十億円のうちから教職員給与分として約一千億円を国庫に編入させ、富裕八府県を除いた各県の教職員給与の支払に充当して、更に又将来は、この富裕府県に対しても国から支払うために、入場税、遊興税を各府県から取上げて国の財源に移そうとしておる。これは地方財政の非常なる縮小であります。地方側では、財源が不足のため、住民税や固定資産税の評価額の引上をやらざるを得ない現在の貧困なる地方財政に対してかかる制度は果して民意に副うゆえんであるかどうか。本多国務大臣にお伺いしたいのであります。同時に岡野文部大臣に、この義務教育費全額国庫負担を以て教員の政治活動を封鎖するという一石二鳥を狙つた政策のように世間は言つておりますが、この点を明確にして頂きたい。更に最高学府であるところの各大学の研究部門の費用は、誠に九牛の一毛に過ぎないのであります。先般も大学教授で辞めたかたがある。最高学府のこの研究費用をもう少し強力に推し進めて行く方法はないか。この点、文相のお答えを頂きたいのであります。  厚生大臣にお伺いしたいのは、在外同胞の留守家族に対してはいろいろな援護対策をやつておられますが、未復員者給与法、特別未帰還者給与法は、今後の恩給制度のどの部分に充てられるのか。改正する意思があるかどうか。更に日本へ外国軍隊の駐留によつて落されて行つたところの温血児、いわゆる「あいのこ」の将来はどうなるか。「あれも人の子樽拾い」ということが曾つての江戸の川柳にありましたが、彼らとしても、日本国民として生を日本の国土にうけた以上、これを何とかしなければ、将来の重大なる社会問題に転化する虞れがあるのであります。この数が一体どれだけあるのか。どういうような方法によつて今後の政策を実行されるのか。現在においては、宗教団体或いは巷の慈善家の手に委ねて、そうして十分なる手を尽していない。この状況に対してどういう政策を今後盛られるか。厚生大臣の御所信を伺いたいのであります。  最後に労働大臣にお伺いいたしたいのは、このたび中共引揚が開始されることになつて、誠に喜ぶべき状況でありまするが、帰つて来るところの引揚民が約三万と称されております。我々は、過去の引揚の実績に見ても、船を配置され、住宅も当てがわれた、併しながら最後に永住すべきところの我が祖国において、職もなく働くべきすべもないのが現実の姿であります。これから引揚げて来るところのこの人たちに、どういう職業を、どういう労働を与えようとするのか。そういう面におけるところの政策はつきりと、この際、明言して頂きたいと思うのであります。  このたびの吉田内閣の施政方針を全面的に見ましたときに、占領政策の是正、成るほど独占禁止法の改正、或いは警察制度改正、或いは労働三法の改正というようなことが盛られているけれども、むしろ資本主義への、或いは曾つての戦前の姿への逆コースであつて、新らしいいわゆる文化的国家への施策は十分に認められないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)若しそれ、再びここに防衛問題が起きて、我が日本国民が何かしらの態度をとらなければならないとするならば、それは資本家の子弟でもなければ、大臣のあなた方の子弟でもない。働く農民の子であり、労働者の子であり、勤労大衆の子であるということを(「その通り」と呼ぶ者あり)十分に認識されて、明確なる御答弁をお願いしたいと思う次第であります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  原子爆弾禁止を以て国連加入条件にすべきであるという御意見のようでありますが、原子爆弾は、如何にこれを管理するかということは、現に国連の問題になつて研究されておるのであります。又日本が現在原子爆弾の危険の下にさらされておるのならばとにかく、現在、これが日本としてはその危険にさらされておるという現状でもない今日、国連加入にこれを一つの条件とするということはどうであろうかと、私は直ちに賛意を表することはできません。  台湾の中立云々ということは、これは国民政府がみずから決定すべきことであつて日本の干渉をするということは、これも又如何かと考えますから、直ちに私は賛成するわけに参りません。  防衛力の増加についてお話がありましたが、新アメリカ政府日本に対してこの要求をするであろう、その場合に如何に処置するかというお尋ねのようでありますが、日本の防衛力の範囲自衛力の範囲は、これは米国政府は、常に日本国みずからがきめるべきものであると言つておるのであります。又日本といたしましても、独立国である以上は、自主的に考えるべきものであつて、その交渉の場合に、必ずこれに応じなければならないという義務を持つておるわけではございませんから、この点は特に今日からして要求に応ずるとか応じないとかいうようなことを言う必要もなく、又そういう要求をまだ政府は得ておりません。  その他の問題は所管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  24. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 保安隊を増員するの意思ありや否やという御質問でありまするが、只今段階では保安隊の増員をする意思はありません。又その計画もありません。ただ現在の保安隊を内容を整備し充実して、国内の治安確保に万全を期したいと考えております。(「次の段階はどうです」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣向井忠晴君登壇拍手
  25. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 在外公館借入金の返済のことがございましたが、その特殊性に鑑みまして、さきに在外公館等借入金の返済の実施に関する法律を定めたのでございますが、これで法律に定められました金額を改正するつもにりは只今つておりません。在外個人財産の補償のことは、先ほど鬼丸さんに御返答いたしましたが、この在外資産の返還がありません場合に、補償は非常に巨額に上るので、国家財政の現状からしましては困難と思いますが、なお研究をいたします。  それから戦犯の留守家族に対する待遇ということを御質問つたと思うのでございますが、こういう方々には、現在特別未帰還者給与法というのが適用されておりまして、御本人に対する俸給月額千円、扶養手当月額六百円又は四百円が支給されておるのですが、今回この法律を廃止しまして、留守家族援護法を制定して、留守家族に対する墓表給二千百円、扶養加給月額四百円に増額することにしまして、留守家族等援護費二十一億円中に計上いたしました。  東南アジアとの貿易振興のことについて中小企業金融の御質問でございましたが、これは従来からも深甚な考慮を払つておるのでございまして、今般も国民金融公庫に八十億円の資金供給をするほかに、新たに中小企業金融公庫を設置して、八十五億円の財政資金の活用によつて一段と中小企業金融の積極化を図る。それから中小企業信用保険制度改善、信用保証協会の法制化等につきましても、近くこれを実施する考えでございます。  食糧増産対策、公共事業費等が足りないという御質問でございますが、来年度の予算編成上には大きな重点として考えましたので、財源の許す限り多額に計上はいたしておるつもりでございます。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  26. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) アメリカの新らしい方針として、援助よりは通商ということについての御質問でございましたが、これは主義上は結構なことでありまして、日本としても、ほかの国もそうでありましようけれども、独立国がいつまでも援助に頼つて行くということは好ましくないことであろうと考えます。但し通商発展ということは、これは御指摘のように非常にむずかしいのでありまして只今アメリカとの間の通商航海条約の交渉は専ら互恵平等という立場で話をいたしております。アメリカのみならず、ドル地域の諸国との間には、今後貿易発展のために、関税の緩和であるとか或いはその他の交易条件の緩和等に、できるだけ努力するつもりでおります。  その次に、拿捕船舶とか船員の問題でありますが、これは不当な行為であることは申すまでもないのでありまして、若し国交が回復しておりますれば、話はなお更やさしくなりまするけれども、元来は、理論上国交回復の如何に関係なく、これは先方の不法行為と認めなければならないわけであります。台湾とか韓国とかとは直接話合いができるのでありますが、中共とか或いはソ連等は間接にしか折衝する方法がありませんのでありますが、(「本末顛倒だ」と呼ぶ者あり)漸次これも解決されて行くものと考え得べきふしがあると思います。  それから日韓関係につきましては、従来とも会談の障害となりましたのは、御指摘の財産の請求権と李承晩ラインに関する漁業の問題であります。政府としては只今これらの点について慎重に研究中でありますが、殊にこの漁業につきましては、現に民間業者の代表も先方に行つて、直接李承晩大統領にも会見いたしておるのでありますので、(「うまく行きますか」と呼ぶ者あり)この報告を受けまして更に実際上の措置を考えたいと考えております。  中共の引揚につきまして、台湾海峡が困難になりはせぬかというお話でありますが、これは先ほども申しました通り、政治的の意味を難れた純然たる人道問題として取扱いたいと考えておるのであります。例は別でありますが、例えば戦争のさなかに、つまり戦火の真中におきましても、その土地におる難民の救済等は、しばしば停戦を行なつて実行するようなこともありましてこういう人道問題につきましては、仮に何か非常な困難大事態が仮に起つたといたしましても、その引揚のほうは何とか、実相が仮にそういう問題があつても、できるものと考えますが、今別にそういう困難が起るというような気配はまだ見えておりませんので、引揚のほうは円滑に行くと考えでおるわけであります。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  27. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答え申上げます。  ポンド地域及び東南アジアに対する輸出促進策といたしましては、これら地域より輸入の促進による貿易規模の拡大、為替売買手数料の大幅引下げを図りましたほか、なおプラント輸出を中心とした市場の開拓を図る必要もありますので、輸出入銀行法及び設備輸出、為替損失補償法の改正、重機械技術相談室の新設、使節団の派遣、貿易商社の強化、輸出組合の育成等、諸施策を強力に進めて行きたく、今度法案をこの国会に提出いたしておるものもございます。なお、目下日英通商会談等を開催いたしましてこのポンド地域との間の局面打開に努力いたしております。  ガツト加入については、従来から各種の機会をとらえて誠意を披瀝し、我が国の実情を訴えて熱心に努力いたして来たところでありまして、漸次我が国に対する認識も好転して参つておりますので、近く個別交渉に入り得る機会にあるものと期待いたしております。基本的な輸出対策といたしましては、私どもは直接輸出業者に補助金を出すことは、恒久的な輸出振興対策として望ましいことではございませんし、又国際貿易憲章の本旨にも反しますので、主として業界の積極的な活動に待つとして、国家はこれを刺激し、促進し、又はその障害を除去する体制を整備することといたしまして、こういつた考え方から、各種の施策は過日来すでに詳しくここで申上げましたから省きますが、さような措置をとつておる次第であります。  更に貿易外収入の増加につきましては、いわゆる特需、観光者収入等に努めまするほかに、我が国輸出入貨物運搬を外国船より自国船に代えまして、運賃並びに保険料の増収を図ることにいたしておるのでございますが、仰せになりました海運政策の問題につきましては、これは運輸大臣より御答弁があることと存じ上げます。(拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇拍手
  28. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) この日本食糧を非常にたくさん外国から買つておるということは、日本自立経済の上から行つて歎わしいことであります。併し現実に足りないのでありまするから買わなければ相成らないのでありまするが、(「高いじやないか」と呼ぶ者あり)我々といたしましては、これを内地において全部生産でき得るような計画を立てて着々進めておるのでありまするが、(「何年ぐらい」「いつです」と呼ぶ者あり)まだ目的には大分時間がかかるのであります。(「二十年か」と呼ぶ者あり)併しこれは我々の民族に与えられた大問題でありまするので、万難を排してやる覚悟でおるのであります。  第一に食糧増産の基本は、御指摘のように未開地を開拓することが、これは無論第一であります。でありまするから、来年度、二十八年度予算におきましては、この開拓、干拓、そういう方面にも少しではありまするが予算を殖やしておるわけであります。(「御奇特ですね」と呼ぶ者あり、笑声)併し又この基本的な土地改良のほかに、単に土地改良のみでなく、今まで日本の農業においてこれを革命と言われておりまするのは、温泉苗代と、いわゆるホリドールを使用した農業であります。この農業によつて、すでに米の二期作が可能とされておるわけでありまして、これを本年度は予算にも計上いたしておりまするが、温暖地の方面におきましてはこの二期作を極力奨励するつもりであります。又寒冷地帯のほうにおきましては、特に寒冷地帯に対する立法が国会においてきめられたのでありまするが、それに基きまして、寒冷地の方面においてはいわゆる二毛作を奨励いたし、十分この方面に生産を増強いたして行きたいと思うのであります。なお又食糧を(「予算がなくしてどうする」と呼ぶ者あり)総合的に考えなければなりませんので、水産或いは又畜産等をもどしどし奨励いたしまして、これの総合的な食糧において自給度を確立するようにして行きたいと思う次第であります。  なお、二三男対策等についてのお話でございましたが、二三男に対しましては、土地の高度利用等について、これを十分その方面に吸収し、なお又酪農等も奨励いたしまして二三男を吸収すると同時に、又農業の開発事業等にも二三男に手伝いを願つて、特に技術を修得して、将来その職業を持つてつて行かれるように目下考えておるようなわけであります。(拍手)    〔国務大臣石井光次郎君登壇拍手
  29. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。  海運は私は自由競争に任すべき企業の一つだと思うておりますので、徒らに政府が干渉いたしますることは、その仕事の発展を阻害すると考えて、すべての対策を立てておるのであります。自由に任しておきますために不正競争が起つて日本海運の発展に大きな弊害を起したと認めるような場合には、政府は勿論、厳に業者を戒めまして、自主的にその弊を正さしめるということが一番いい方法だと思つております。  さつきお尋ねのありました、或る航路におきまして日本船が積荷競争をし、そのため低賃金の問題が起つて、信を外国に失うたような問題があつたのではないかという御質疑でありましたが、確かに私どもそういう声を聞きました。これに対しまして政府は厳に戒告をいたしまして、業者諸君に自粛を求めました。同時に、業者諸君は自粛の線に沿いまして、直ちにそういうことのないようにいたしましたので、今日ではその声はあとを絶つておるのであります。  お答えといたします。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  30. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えいたします。  警察法の改正という美名の下に、おいこら警察というようなものを作るのじやないか。私もそういう警察は大反対でございます。国の内外が騒がしゆうございますから、警察の能率化ということをいたすべき時期だと、又輿論もそうであると考えておるのでございますが、警察官の能力を上げるということは、つまりほかの言葉で言えば、或る意味で力が増すことでございまして、とかく力を増しますと、ともすれば謙虚な心持を失いやすいのが人間の弱点でございますので、別に警察官の素質を平生監査し、警察官の違法行為のありましたときは訴追が行われるような、何かのはつきりした別の処置をとる考えでおります。  もう一つ、公安委員会というものを有名無実にするのではないかという御質疑でございましたが、これは人選のやり方にもよりますけれども、私はますます公安委員というものの任務は重要になると思います。公安委員会は御承知のように民主警察の重要な制度でありまして、これはますます活用いたしたいと存じております。この点について有名無実にならないように、飾り物にならないように十分今研究をいたしております。(拍手)    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  31. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 国と地方財政調整の問題につきましては、先刻もお答えいたしました通り、行政事務の分量に対応する財政でございますので、この行政事務の再配分を検討いたしますと、勢い関連して地方団体の性格、規模というものの検討を要することになつて来るのでございます。この財政調整の問題について、一つの税を取上げて、それをどう処理するかということだけで解決できる問題ではなく、総合的に行政財政を通じて検討を要する問題でございますので、最前もお答えをいたしました通り地方制度調査会の審議を待ちまして方針を決定いたしたい所存でございます。(拍手)    〔国務大臣岡野清豪登壇拍手
  32. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 千田さんにお答え申上げます。  第一点、大学教授の待遇が悪い。これは私も就任以来いろいろ研究しておりまするが、今の俸給でほ研究もできない。こういうようなことを気付いておりますが、何さま、ほかとの振合いもございますので、もう少し研究さして頂きたいと思います。研究費につきましても、二十八年度予算には幾らか国家財政の許す限り増してございまして、将来はもう少しやはり研究費を出さなければならんと、こう思つております。  第二点の義務教育の教員の問題でございますが、これは憲法の精神を私もう少し明確にして、義務教育というものは国の責任であるということをはつきりいたしたい。こう存じまして、そうして一にその義務教育に従事される職員各位が、身分の安定ということを先ずしてもらつて、そうして安心して大事な義務教育をやつて行くという、こういう狙いを以て私は国家公務員にしたい。こう思つております。と申しますのは、山間僻地において、又非常な貧弱な県において十分なる待遇もできない。地方財政の現状から見ましてもそれができない。こういうような点がございますが、併しこれは国家公務員にしまして、全国一律に、東京で勤めておろうと僻地で勤めておろうが、その人の身分は安定して行つてもらいたいと、こういう意味から今度国家公務員にすることにきめた次第でございます。(拍手)    〔国務大臣山縣勝見君登壇拍手
  33. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 御質問の二点についてお答え申し上げます。  先ず第一点の、今回の軍人恩給の復活に伴つて、未復員者給与注或いは特別未帰還者給与法の対象となつておる方方の留守家族に対する援護の問題でありまするが、この問題については、先ほど大蔵大臣から一部お答えになりましたから、重複を避けまして申上げますが、未復員者給与法の対象となつておる方々の留守家族、殊に特別未帰還者給与法の対象となつておる方々の留守家族につきましては、現在におきましてはソ連等において軍に強制的に徴用されておるということが確証のありまする方々の留守家族のみについて適用があるのであります。併し、終戦後すでに七、八年を経過いたしました現在におきましては、留守家族という見地から申上げますれば、それらの困難な方々に対して、何らか国家がこれに援護の手を差し伸べますることは当然でございますので、今回先ほど大蔵大臣お話のありました通り、来復貧者給与法並びに特別未帰還者給与法を廃しまして、両者その他を合体いたしまして、新たに未帰還者留守家族援護法を制定いたしまして、いわゆる先ほど申しました現在確証のありまするソ連軍等において徴用されておる方々以外の一般邦人にも、この国家の温かい援護の手を差し伸べようという趣旨の下に、適当な予算を取りまして、只今法律の立案中であります。  なお第二点の混血児の問題でありまするが、我が国といたしましては、歴史上におきましても曾つてない重要な特異の現象でありまして、只今お話の二十万人もあるのじやないかというお話でありまするが、実はこの数字につきましては、政府といたしましても値重に調査をいたしておるのであります。昨年の九月以降年末にかけまして、全国の保健所を中心にいたしまして、或いは助産婦或いは医師等を動員いたしまして、折角慎重なる調査を遂げましたのであります。その結果、公式には只今これらの混血児は五千十三人ということに相成つておるのであります。そのうち白色系につきましては四千二百五人、黒色系は七百十四人、その他九十四人が、いわゆる雑種と申しますと語弊がありますが、(笑声)そういうような数字になつておるのであります。ただこの数字につきましては、実は外国病院におきます関係、或いは外国のほうに養子縁組をいたしたり、里親その他の関係で外国にこれらの混血児が参りましたものにつきましては、調査が届かないのであります。従つてこの五千余人という数字は的確な数字でございませんが、少くとも二十万というような厖大な数字でないことは確かであります。  只今のお尋ねのこれに対する対策でありますが、政府といたしましては、主として三点について万全の措置を講じておるのであります。先ず第一のこの保護の問題でありますが、これに対しましては……、その前に申上げたいことは、政府がこれらの混血児に対する対策の根幹として考えておりますのは、やはり憲法第十四条の無差別平等の原則に基いて、できれば日本の家庭並びに社会に溶け込ましめて、温かい手で以てこれらの混血児を日本国民として導いて行こう、又養育して行こう、又社会人として大成せしめようということが根本の問題でありまするが、併しそれだけでは参りませんので、先ず保護の面につきましては、児童福祉関係の諸機関を動員いたし、或いはいろいろな社会事業関係にも呼びかけまして、何とはこれらの困難な者に対しては生活保護法を適用いたし、或いは又その他児童福祉法を適用いたしまして、万全の措置を講じております。殊に一番大事な問題は教育の問題でございますが、これは文部省とも連絡をいたしまして、殊に本年あたりは、そろそろ学校に入学をいたす適齢になつておりますので、一番心配いたしておりますのは、学校に参りました際に、さような特殊の児童でありますので、これが虐待を受ける、或いは人種的な偏見で以ていろいろなかわいそうな目に会わされまする懸念もありまするので、これに対しましては、文部省とも連絡をとつて万全を期したいと考えております。第三の点でありますが、最近外国から養子縁組等の申込があるのでありますが、できますれば、かような方法は、一番今後の将来の問題といたしましても適当でありますので、移民法にも関係がございましようし、或いは又外国におきまするプライベート法の関係もありますが、これらの点につきましては外務省と連絡をとつて、できればかような方法によつてでも、これらの混血児の救済の途を講じたい。いろいろかような点について、政府は万全の措置を講じて参りたいと思つております次第であります。    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇拍手
  34. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申上げます。  中共からの引揚邦人でございますが、約三万と報ぜられております。そのうち、実際にこの家族等の関係もありますから、就業就職を希望する向きがどの程度ありましようか。これらは正確にわかりませんが、とにかく労働省といたしましては、厚生省、外務省と連絡をとりまして、取りあえず引揚港である舞鶴に係員を派遣いたしまして、国内の雇用状況、或いは国の職業安定施設等について、十分周知いたさせたいというふうに考えておるのであります。なお同時に、全国都道府県の職業安定所に、そうした人たちの取扱について懇切丁寧、なおその人たちの過去の経歴或いは能力等に応じて、十分斡旋の上に万全の手配をするようにしたいと思います。
  35. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 国務大臣演説に対する質疑はなおございますが、これを次会に譲り、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十七分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 國務大臣演説に関する件(第三日)