○島清君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、
我が国の金鉱山に対する産金
政策を質してみたいと思うのであります。
本問題に対しましては、第十二
国会以来、通産委員会のほうでしばしば問題になりまして取上げられた問題なのでございまするが、
政府の怠慢と申しましようか、それとも又無能と言いましようか、結論を見ずに今日に至
つているのであります。従いまして、その
政府の怠慢と言いまするか、更に無能と言いまするか、それから起
つて参
つておりまするところの
我が国の金鉱山は、今や閉鎖の寸前に追込まれているのであります。私はその根柢に頗る重大なる問題が伏在していると思いまするので、あえて今日
緊急質問を行う次第でございます。
政府は、
昭和二十五年二月二十四日の閣議で、金鉱業の健全な復興を図るという方針を出して、金の買上げ価格を一グラム四百一円に
引上げる等の
処置を講じ、又本年八月より産金量の三分の一を加工用金として五百十五円の公定価格で配給することを認めたのでございますが、本
施策が決定いたしますると同時に、有名な佐渡金山の休止を始め、有名無名の多くの金山が、或いは休廃し、或いは採鉱の中止をするに至
つているのであります。大蔵省の一部官僚の中には、産金を無視又は軽視する意見があるやに聞き及んでおりまするが、若しそれが事実であり、その意見によ
つて政府の産金
政策が歪められ、鉱山の今日の窮状を招来したといたしまするならば、
我が国自主的経済再建を誤まるものなりと指摘せざるを得ないのであります。私は経済の自主的再建上、産金
政策はおろそかにすべきでないという観点より、左の諸点について、通産、大蔵両大臣にお尋ねするものでございます。
最近における金山の休廃止並びに整理縮小の状況を承わりたいのであるが、特に貴金属管理法の
改正、金管理法の制定による加工用金の価格引上前後とを比較して
説明を願い、これに伴う産金量の減少について伺いたいのであります。実際に休廃や操業短縮にまで立至らなくとも、高品位鉱石の抜掘りにより、金山全体の寿命が著しく短縮されていると伝えられておりまするが、抜掘りによる鉱山への影響を具体的にお示しを願いたい。かような
状態で推移いたしました場合の
我が国産金並びに産金業に対する見通し、これらの事態が如何なる
原因に基くものであるか。かかる好ましからないところの事態の招来に対して、事態回避のため、如何なる対策を講じて来たか。その対策が如何なる
効果をもたらしたか。併せて今後の対策をお示し願いたいのであります。
次に、
政府は今以て、国内産業の強制買上げを引続いて行な
つているのでありますが、如何なる意図の下に強制買上を行な
つているのであるか。自由経済を謳歌して、それを
政策の
目標としておられますところの自由党
政府が、依然、金に対する統制経済的
施策を行な
つている以上は、十分な根拠がなければならないと考えられるのでございまするが、その根拠をお示し頂きたいのであります。
政府の金に対する
施策の故に生じた金山の赤字に対しては、
政府が当然補償の責任に任じなければならないと思われるのでございまするが、それに対して如何ような対策を、お考えを持
つておられるか、承わ
つておきたいのであります。加工用金価格の
引上げによ
つて、産金業者の平均販売価格は幾らにな
つているのであるか。又現在の金山における平均生産原価は幾らぐらいと査定しているのであるか。この際はつきりして頂きたいと思うのであります。通産省の査定によりますと、金一グラム当りの平均生産価格は六百四十円、産金に従事する
関係者としては、
努力目標として六百円まで販売価格が
引上げられなければ採算がとれないとしているのであります。現在の平均販売価格とのギャップをどうするおつもりであるのか。御答弁によ
つては、
政府が業者の損失を補償しなければならないという結論が生れるのか、或いは金の全面的統制を解除をすべきであるとの結論が生れるものと思われまするので、ここは非常に
重点でございまするから、慎重に御答弁を煩わしたいと思います。
次に、
政府の産金対策は、産金業者の財産権の侵害というような憲法違反の疑いがあると言うて指摘をされておるのでございまするが、これに対して如何なる見解を持
つておられるのであるか、承わ
つておきたい。
次に、現在の
政府保有金並びにその他貴金属について、戦前戦後別に、数量と金額、これは帳簿価格若しくは、入手価格で結構でございまするが、その概数で結構でございまするからお示し頂きたい。
次に、戦前において百トンを越す金が貯蓄され、これが現在に引継がれていることは、大きな
国家的資産であり、戦前の産金奨励のたまものとして感謝しなければならないと思います。この資産は恐らく時価に換算すると五百億円前後の再評価益が出るものと推定をされております。かかる資産は
全国民に潤おうよう、特に勤労大衆の生活向上のために使用すべきであると私は信じておりまするが、今行き悩んでいる社会保障の増進とか勤労所得税の軽減などにこれを活用すべきであると思いまするが、
政府はどう考えておられるのであるか承わ
つておきたいのであります。私が最も恐れますることは、この含み利益を温存しておいて、客観的な情勢の成熟を待
つて、これを再軍備費とか軍需産業などの
国民の好まない方向に使用される懸念があるので、この際、
政府保有金に関する
政府の意図を明確に表明されたいと思うのであります。
次に、最近の英連邦首相
会議においては、一オンス三十五米ドルのアメリカ公定相場を五十二ドル台に
引上げるようアメリカに働きかけるとの決定を行
なつた旨、新聞は報じておるのであります。英連邦諸国を初め、フランス、ベルギーなどは強力に金価格の
引上げをアメリカに迫
つておるのでありまするが、日本
政府の
態度は、民族産業を犠牲にして顧みないという隷属外交のように見受けられるのであります。この際、各国と同調いたしまして、金価格の値上を要求する意図はないかどうかを承わ
つておきたいのでございまするが、昨日の日本経済新聞の報ずるところによりますると、「カナダ・モントリオール、十三日発UP共同」といたしまして、「スウェーデンの元供給相で現在アトラス・ディーゼル会社社長、ストックホルム商業
会議所の理事を勤めているワルター・ウエーチェ氏は、十三日、金価格の引上を予想して次のように語つた」と報じておるのであります。その要点は、「国際通貨基金が来年初め、
苦境にある世界の産金業を助けるため、金価格を一フアイン・一オンス当り五十米ドルに
引上げることは確実だ。私は英連邦首相
会議が米国および国際通貨基金に対し、金価格引上を要請するある種の方針をたてたものと信じている」と、こういう工合に報じておるのでございまして、今や金
政策の
重要性は、十三日の朝日新聞の社説にもそれを取上げておるのでございまして、これを要約いたしまするならば、自由党内閣はいわゆる金の強制買上をや
つておりながら、而も生産コストを割るようなことで統制をしておる。池田さんは、
只今の
中小企業の
金融対策決議案にもございました
通り、いわゆる
中小企業に冷淡にして、死ぬなら死ねと、こういう表現をいたしたのでございまするけれ
ども、金
政策に関しまする限り、
政府は自由放任じやなくして、首を押えておいて、これでもまだお前生きておるのかというような
態度をと
つておるのでございます。従いまして
只今申上げたような金山の休廃止というような結果になりまして、まさに労働問題といたしましても重大な
様相を呈しておるのでございまして、どうか
一つ、
政府はこの際、私の
緊急質問に対しまして、誠意あるところの御答弁を願いまして、
関係するところ非常に広汎でございまするので、
政府の温かい誠意をこの壇上より明示を願いたいということをお願い申上げまして、私の
緊急質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔国務大臣向井忠晴君
登壇、
拍手〕