○栗山良夫君 私は、いよいよ師走を控えまして苦悶をいたしておりまする中小企業者の立場を代表いたしまして、年末金融に対する
政府の積極的且つ具体的な施策が奈辺にありやをお伺いたしたいと思うのであります。
私は一昨日名古屋へ旅行をいたしたのでありますが、そのときガラス工業を営む一中小商工業者の社長が、十一月三十日を以てどうしても炉の火を落さなければならん窮境に追い込められて、四十名の従業員
諸君の一斉餓首を断行せざるを得ないという窮境に立つた場面を拝見いたしたのであります。幸いにいたしまして、この企業は、部分品を供給いたしまする殆んど同程度の相手の中小企業者の社長の心からなる同情と努力によりまして、三カ月に亘る賃金不払の金額のみをやつと緊急調達いたしまして、百万円を若干超す
ところの金額の調達をいたしまして、細々ながら炉の火を落さないで経営を続けることに
なつたのであります。こういうような誠に従業員
諸君が涙を以て、その百数十万円の手当をしてくれました相手の社長を擁して泣いておりましたが、こういう事態が全国の随所に私は現われておるのではないかと思うのであります。実は昨日、全国商工団体連合会全国拡大理事会の代表の
諸君三十名が、自由党の民主化同盟の
諸君にお会いになられまして、池田通産
大臣の首をよく切
つてくれた。衷心感謝に堪えないという感謝状を出されたということであります。(
拍手)
国会は最近陳情が甚だ多いのでありまするけれども、かような感謝状の
意思表示せられた例は、私未だ曾
つて耳にしないのであります。(
拍手)池田通産
大臣が、この中小企業者の意向と全く相反する言明を行いまして、みずから墓穴を掘
つて退陣をせられたのでありまするが、このことは直ちに通商産業
大臣の退陣と、私ども軽く見逃すわけには行かないのであります。これこそ、まさに自由党の中小企業政策の退陣でなければならんのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)
吉田首相は施政方針演説におきまして、中小企業の金融制度を強化をいたし、更に財政資金の積極的な投下を行いまして、企業の育成に努めると。こう言明せられたのであります。又大蔵
大臣は、更にこれを具体化せられまして、
国民金融公庫或いは商工中金への資金の供給を確保いたします。更に中小企業信用保険制度り強化或いは又信用保証協会の育成強化等をいたしまして、中小企業を守ろうと施政演説をせられたのでありまするけれども、その施設演説の
内容たる尺如何に貧困なものであつたかは、この池田通産
大臣の言明によ
つて証明せられておるのであります。そしてかような
考え方、かような状態を以ていたしましては、恐らく年末を控えまして、全国各地に中小企業の倒産相継ぐものと見なければならないのであります。私は間もなく本院におきましても、中小企業に対する相当具体的な、積極的な超党派の決議がなされるであろうことを想像いたすのでありますけれども、これを待つことができなくして、
政府の所信を質すゆえんのものは、ここにあるわけであります。
大体中小企業という概念がはつきりいたさないのであります。特に私どもあ持
つておる資料を以ちますると、
昭和二十二年に一応完成されました資料によ
つて、中小企業のことをいろいろ論じて参つたのでありますが、最近の調査によりますと、
昭和二十六年度におきましては、中小企業者といたしまして二百人に満たない百九十九人までの従業員を擁しておる
ところの中小事業は、八一・五%にな
つておるのでありまして、従
つて大企業は一八・五%とな
つております。これは
昭和二十二年の二百人以上の大企業が二五・二形であつたことを
考えますというと、更に企業が零細化しておることを示すのであります。
昭和二十二年には二五・二%が大企業でありましたのが、
昭和二十六年になりますと、一八・五%に低下をいたしておるのであります。それだけ企業が零細化をいたし、そうして企業力が低下しておることを示すわけであります。
かような状況にありまして、更に私どもの一番心配いたしておりますることは、東京の手形交換所の不渡手形の実情を調べてみまするというと、今年十月におきまして、一万七千三百五十二枚、平均五百六十枚を数えておるのであります。昨年の十月は四百四十枚で、ございまし有昨年の十二月は一方六千四百八十六枚、一日平均五百三十枚でございましたから、昨年の十二月よりも、今年の十月のほうが不渡手形が多いということを示しておるのであります。更に月を越えまして、十一月になりますというと、一日平均七百七十五件、昨年は十一月五百六十六件でございましたから、まさに五割も増加をいたしておるのであります。十二月になりまして、果してどのようなことになりまするか。この一事を以ていたしましても、如何に中小企業の
諸君が困難を極めておるかがわかるわけであります。
そこでかような困難な状態がどこから出ておるか。私は第一に挙げなければならんことは、貿易市場の減退であろうと思うのであります。本年度十一億ドルに及ばないであろうと言われておる
ところの輸出の状況を
考えてみまするときに、如何に中小企業者が一生懸命に合理化に努め、そうして生産の増強をいたしましても、今日のような状況を以ていたしますならば、中小企業の前途は誠に暗港たるものであると言わなければならないのでございます。
従いまして、今日の年末金融の問題とは別個ございますから、いずれ又地日の
機会に貿易政策につきましては、
政府の所信を質して行かなければならんと思うのであります…
更に国内の方面に目を転じます場合には、賦質力の減退でございます。私は
只今繊維品の小売市場が非常に混乱をいたしておりまするが、終戦後今日まで、まだ冬物の小売最盛期でありまする十一月の途中におきまして、その衣類の小売販売値段の価格札が、途中で投売りのようにして書き変えられた例を見たことがないのであります。今日関西方面の市場へおいでになればわかりますが、洋服の生地等はすでにヤールにおきまして二割、二割五分ぐらいの値引の正札に書き変えられておるのであります。こういう工合にいたしまして最盛期にもかかわらず換金運動が行われ、投売りが行われておるということは誠に由々しい例であります。こういうようなことを放置いたしまして、中小企業の安定はない。併しこれらの購買力の減退は、最も中小企業の購買力の源泉である勤労者の
諸君の賃金の引上げを
政府みずからが拒否し、そうして労働争議におきましても、電産、炭労を中心とする大企業の争議もいつ解決するかわからないのに、漫然としてこれを見送
つておる
ところの
政府の責任に帰さなければならんと思うのであります。
かようにいたしまして国内の購買力も一様に伸びていない。そうして而も企業を
考えまするときには、大企業がどんどん中小企業を
圧迫いたしおるのであります。その例を
一つ挙げまするならば、今日軍需生産等を中心にいたしまして、大企業への注文が出されておるのでありまするが、試みに
一つの例をとりまするならば、単価の切下げが強力に中小企業を
圧迫いたしております。
昭和十四年に十七銭ぐらいでできました品物が、今日八円十銭ぐらいの単価で下請をせられておるのでありまするが、これ適正に見まするならば、五十一円程度の価格でなければならないのであります。更に順送り生産と申しまするか、過日百五十五ミリの榴弾砲が二十四ドル程度で注文を受けておるのでありますけれども、かような出血受注をいたしまするために、その大企業がみずから引合わないような部分品の製造に当りましては、第一次の下請にこれを廻し、第一次の下請は、更にそのうちの引合わない部分を第二次の下請に廻す等々いたしましてここに漸次弱小企業に大企業の圧力が加わ
つて参
つておるのであります。従
つて自由労働者は、一日二百四十円の単価にな
つておりまするけれども、中小企業の最も悪い部面に至りますると、十七歳で、弁当持ちで一カ月二千円程度の収入よりないことは、これは少い例では、ございません。かような工合に中小商工業というものは極めて
圧迫をせられておるのであります。更にこれらの問題を解決いたしまするためには、畢竟する
ところ、金の問題に
関係をいたして来るのでありますが、金融棲関は大企業中心であり、大企業に対しまして大銀行は快く融資に応じておるのでありまするけれども、中小企業に対しましては殆んど見向きもされないような状況にあるわけであります。従いまして中小企業を専門とする
ところの金融
機関に対しまして、
政府は積極的な助成をしなければならないわけであります。銀行の中小金融を促進することが必要でありまして、なかなか困難でありまするけれども、どうしてもこれを行わなければならないわけであります。今日預金は、殆んど全部が大銀行に集中しておるのでありまして、而もそうして集められた大銀行の預金というものは、中小企業には信用が薄いためなかなか貸出されない。現在の預金の残高は、大体三百十億円ぐらいに達しておるのでありますか、これによる中小企業に対する貸出は、僅かに百二十三億円、預金の三分り二は、これを本店に移しまして、中小企業でなく、大企業へ流しておるというような実情にあるわけでありまし、従いましてこれらの問題等を
考えましたときにも、どうしても中小企業に対する
ところの積極的な金融対策を講じなければならないと思うのであります。
そこで私は、以上の観点からいたしまして
政府に対してお伺いをいたしますることは、年末資金といたしまして中小企業向けに、少くとも百億円程度の
政府の指定預金をする必要があろうかと思うのであります。而もこの指定預金は、全国各地に公平に配分をせられ、又各業種に対しましても極めて厳正に配分をせられなければならない。従来の例によりますると、こういうような預託金は、ややもいたしますると末端の中小企業まで及ばずいたしまして、途中でトンネルをされて、鞘稼ぎに利用せられた例が多いのでありまするから、本年こそはさようなことのないように、具体的な
政府の
意思を表明せられたいということであります。
更に第二といたしましては、先ほど申上げましたように、今日の中小企業の相当の部分が金融で困
つておりますことは、大企業から中小企業への下請系統による支払が非常に悪いことでございます。注文を受けましてから、納品検査を終りまして納品をいたしますのに三カ月、更に百日以上の手形をもらいまするのでありまするから、決済をするまでに六カ月以上を要する。そういうような金のしわが、年末を控えて殺到して来るわけでありますから、ここで
政府といたしましては、大企業の中小企業向けの支払を促進いたしまするために、日銀より低利の別枠資金を市中銀行に貸付ける必要があると思うのであります。これらにつきまして、
政府はさような
考えを持
つておいでになるかどうか、又断行せられる用意があるかどうかを承わりたいのであります。
第三には、
国民金融公庫の年末貸出しを促進いたしますために、同金庫の財政資金を大幅に放出せられたいということであります。私どもの聞く
ところによりますと、三十億円が一応
補正予算に予定せられておるようでありますが、更に七十億円程度を増加いたしまして、この際、是非とも百億円程度の財政投資をせられたいのでありますが、これに対するお
考えは如何でありますか。
第四といたしましては、商工中金に対しまして、これと同様に百五十億程度の私どもは出資を是非とも願わなければならん。今日の商工中金ば債券を主といたしておりますために、資金源が少いと同時に金利が非常に高いために、中小企業を真に救う途とはならない面があるのであります。従いまして
政府みずから郵便貯金等によ
つて集めました
ところの金を投入せられまして、そうして是非ともこれを行われたいと思うのであります。
第五には、地方自治体の財政余裕金等々を併せまして、是非とも各地方における信用保証協会を通じ、商工中金、
国民金融公庫と同じように相当な資金を預託せられまして、各地方において県或いは市の信用保証協会の責任におきまして、地方の中小企業家が十分にその恩恵にあずかるような施策をせられたいと思うのでございます。
以上の点につきまして
政府の所信を伺いたいのでありますが、
最後に一言だけ申上げておきます。今日一番問題にな
つておる、私どもが財政資金を中小企業に投入しろというその
考え方の根拠というものは、
政府で集めました
ところの金、即ち資金運用部資金を中小企業向けの資金といたしまして活用する必要があるのでありますが、これは現在金融債引受の形で産業に放出されておりますが、その領は本年六月末におきまして六百九億円、全資金の一五%に過ぎないのであります。これはもともと、個人又は零細企業の預金の集積であります郵便貯金でありまするから、もつと中小企業にこれは勇敢に振り向けてもいいということを私は信念として
考えております。資金運用部資金は、是非とも中小企業にもつと大幅に洗さなければならんということを
考えておるのであります。更に国家の強権を以て集めました資金の活用でありますが、強権を以て集めました資金というものは税金或いはこれに準ずるものでありまして、財政余裕金も、一時中小企業資金としてどうしても活用しなければならんものであります。然るに本年十月末現在の資料によりますると、商工中金へ五十三億、農林中金へ七十五億、信用金庫へ七十億、相互銀行無尽等へ百十億、銀行べ二百二十五億でありますが、信用金庫への額は極めて少いのであります。二百億に達しておりません。にもかかわらず相互銀行、銀行等へは三百三十億を超えておるのであります。こういうような中途半端な不公平な出し方ではいけない。特に信用協同組合に対しましては預託がされていないのであります。年末におきましては、民間資金が非常に苦しいのでありますから、今申上げましたような事情からいたしまして、どうしても
政府は勇敢に、あと二十日ばかりしかないのでございますから、是非とも万般の手を講ぜられまして、緊急に中小企業の金融難を打開せられるようにお願いをすると共に、私の
質問の要点について具体的にお答えを願いたいと思うのであります。(
拍手)
〔
国務大臣小笠原三九郎君
登壇、
拍手〕