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1952-11-28 第15回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月二十八日(金曜日)    午前十時十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六号   昭和二十七年十一月二十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件   (第四日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。(第四日)  昨日の木村禧八郎君の質疑に対し答弁がございます。順次発言を許します。吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 木村君にお答えをいたします。  国連協力の限度はどこにあるかというお尋ねについては、すでに外務大臣から答弁をいたした通りであります。  次に、保安隊朝鮮派遣ということは、条約上の義務はないのみならず、政府としては実現いたさしめない考えであります。ヒツキー書簡なるものはありません。  防衛費についてお尋ねがありましたが、憲法第九条違反にあらざることは、通産大臣お答えをいたした通りであります。  その他の点については法制局長官からお答えをいたします。(拍手
  5. 佐藤尚武

  6. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お答えをいたします。  昨日臨時工の問題につきましてお尋ねで、ございましたが、労働省といたしましては、常に関心を持つて調査もいたしております。ただ臨時工と申しましてもいろいろありまして、一概に状況を判定することは困難でございます。又基準法の盲点というようなことでお話がございましたが、基準法最低労働条件保障するという意味のものでありましてこの問題を取扱うことはちよつと性格的にも技術的にも困難ではないかと考えます。
  7. 佐藤尚武

  8. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 老齢軍人等の年末給与、それから兵器生産憲法との関係につきまして、私から補足的にお答えいたします。  先ず老齢軍人等の年末給与憲法第十四条の平等の原則との関係についてのお尋ねでございましたが、申すまでもなく、憲法第十四条は、決して形式的、機械的な平等を保障しておるものではないのでございまして、昨日厚生大臣お答えいたしました通り、むしろそれは、いわれなき差別を禁じたものと言わなければならないと存ずるのでございます。卑近な例で恐縮でございますが、例えば国有鉄道において婦人子供或いは老人専用の車を設くるというようなことも同じことでありまして、この差別にはならないと考えておるのであります。で、今回の老齢者に対する給与は、これも昨日厚生大臣から御説明いたしましたような趣旨に基くものでありまして且つその支給につきましては、公正な基準を公示してこれを実施するものであります。従いましていずれの点から見ましても、いわれなき差別ということにはなりませんので、憲法上の御心配はないと考えております。  第二は、兵器生産憲法第九条との関係でございます。憲法第九条第二項に「戦力」とございますのは、この条文の趣旨から当然導き出されまするように、人的物的に装備編成された総合力によつてこれは判定せらるべきものでありまして且つそれを国が保持することを否定しておるものと考えておるのであります。従いまして国内民間工場において兵器生産が行われておるということだけでは、憲法第九条の問題には乗つて来ないと考えております。(「おかしいね」「詭弁だ」と呼ぶ者あり)  なお、御指摘の兵器航空機等生産制限に関するポツダム命令、これにつきましては、今日これに相当する取締規定はございません。ただ憲法論といたしましては、今申述べました通りに、是非この取締規定を設けないと憲法に違反するというような筋合いの事柄ではないわけでございます。  簡単でございますが以上お答えいたします。(拍手
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 昨日に引続き、これより順次質疑を許します。岩間正男君。    〔岩間正男登壇拍手
  10. 岩間正男

    岩間正男君 私はここに日本共産党を代表して、吉田総理並びに関係閣僚諸君に質問を試みるものであります。  先ず第一に私の聞かんと欲することは、現下の国際情勢に対する政府の見解についてであります。岡崎外相はこの問題に関し、極めて一方的に、社会主義陣営の態度を非難すると共に、資本主義陣営態度強化を口を極めて讃美しておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)果して然らば、事実はどうか。中近東東南アジア朝鮮問題等をめぐつて米英仏ことごとに対立し、帝国主義相互間の内部矛盾が日に日に拡大されている、この事実を何と見るのでありましようか。又、これを西欧における再軍備の問題について見ましても、全く同じような事実を指摘することができるのであります。かのリスボン会議以来、アメリカ軍拡計画は、アメリカの圧制と、これに対する英仏等の反感から、失敗に失敗を軍ね、殊に西欧軍編成の鍵を握つておると言われておる西ドイツにおきましては、最近米英仏に対する平和取極め並びに欧州統一軍条約の批准が国会で否決されている現状であります。又、中近東における中東防衛軍司令部の設置につきましても、エジプト、イラン等民族解放闘争が下から火のように燃え上り、米英の意図を挫いている現状であります。これはアメリカ世界政策にとつて大きな打撃であると思うがどうか。今更東條時代の苦い経験に求めるまでもなく、誤まつた判断に基くところの外交方針は、日本を破滅に導くところの最大の原因であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)吉田総理並びに岡崎外相の見解が伺いたいと思うのであります。(「日本を考えておるのか、お前は」と呼ぶ者あり)  又、政府は今度新たな情報機関を作るとのことであつて、一昨日の衆議院本会議において、吉田総理は重光氏の質問に対し、再軍備は国民の盛り上る力でやらなければならない。このため国民の啓発が必要である。内外ニュースを集める機関を考える。そのためにそういう機関を考えるということを答えておるのでありますが、これでは全く戦争と再軍備のための情報宣伝機関ではないかと思うのであります。(「そうだよ」「本質を露呈しておるよ」と呼ぶ者あり)そのため又々東條時代のような情報局の復活が恐れられ、あの時代のニュース言論統制を心配する輿論が国内に圧倒的であります。(「ソ連の言論統制はどうだ」と呼ぶ者あり)これに対するところの総理並びに緒方官房長官の答弁を求めるものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり。)  第二に私の質したいことは、朝鮮戦局の見通しと、その我が国に対する影響であります。前に述べた西欧、中近東における連続的失敗があつたればこそ、アメリカはこれをアジアにおいて取返そうと焦つて吉田政府奴隷的態度を挺子として執拗に日本を鞭撻しておるのであります。最近アメリカ側朝鮮において行なつた秋季攻勢も全くその現れにほかならないのであります。而もこの攻勢は完全に失敗している。過去三カ月間の国連軍の損害は六万七千といわれ、米兵並びに韓国兵死傷者数は飛躍的に増大しているのであります。こうした損害の急速な補充のために、韓国政府はこの九月から徴丘令を布き、六十万の兵員の募集に狂奔している有様であります。最近ではトラックを以て強制徴集に乗り出したが、青年の多くは山に逃亡して、つかまらない。つかまるのは病人、老人といつた類ばかりであります。而もこれらの逃亡した青少年は、一方で敵国闘争同盟を作つて頑強に国連軍に抵抗しているのである。最近これらのゲリラ活動が活溌化して釜山の中心部にもしばしば現われているという実情であります。こうして京城—釜山間鉄道幹線が切断されて不通となり、飲料水さえ安心できないで、わざわざ、日本から運んでいるといつた状態であります。これこそは、ソ連の副首相マレンコフが、「今やアメリカ帝国主義侵略者であるだけでなく、できさえすれば到るところで自由を抑圧し、フアシズムを植え付けようとしている世界の憲兵である。この世界の憲兵に抑圧されている諸民族は、もはや今日ではその憲兵に対し憎悪と抵抗の波を起している」と指摘しているように、アメリカの残虐なるフアシスムが招いた当然の帰結であると言わなければならないのであります。而もこのような民衆の反撃に反省するどころか、ますます狂気のようになつたアメリカ戦争屋どもは、捕虜の虐殺や細菌戦等、これはヴアン・フリー上司令官も認めているのでありますが、このような非人道的な手段を用い、一方、原爆を使用するぞと絶えずおどかし続けているのであります。これが日本召使いどもの讃美してやまないアメリカ民主主義の正体であります。吉田総理は、このような人道の敵を承認し、なお三拝九拝の礼をとろうとするのであるか。この決意のほどが伺いたいものであります。(拍手)  殊に、ここで、はつきりさせてもらいたいのは、国連協力の問題であります。吉田政府は、昨年の単独講和及び吉田アチソン交換文書によつて前古未曾有な非人道的殺戮戦争への協力を約束し、朝鮮爆撃の基地、補給、輸送、慰安等、あらゆる便宜を提供しているのであります。今日ではあまねくコーレアン・ジヤパン・エーリア、つまり朝鮮日本戦域という言葉が使われている始末であります。その結果、強制労働による労務者の疾病傷害、米兵の暴行事件伝染病の蔓延、パンパンの跋扈等日本国内到るところに戦争の害毒が流れ込み、正にコーレアン・ジヤパン・エーリアの名にふさわしい基地特有の様相を呈しているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)なぜこのように平和憲法を無視し、民族の最大犠牲払つて、他国の戦争に協力せねばならぬのであるか。日本国民は一人としてこのような犠牲を承認しない。又、朝鮮日本戦域なるものを承認しない。日本人の、今、心から求めているものは、朝鮮戦争平和的解決米軍完全撤退であります。吉田総理並びに岡崎外相は、これら国民の心からの要求に従うべきである。然るに巷間、吉田総理アイゼンハワーとの秘密会談が伝えられているが、このような予定があるかどうか。又その目的が何であるかを明らかにせられたい。無論アイゼンハワーの訪鮮は、朝鮮戦争平和的解決はおろか、却つてアジアの犠牲による戦争拡大がその目的であることは、今や明らかな事実でありましよう。現にアイゼンハワーは、その選挙戦の最中において、アジアのためアジア人を戦わせる以外に、アジアを確保する途はないと述べているが、当然そこに起ることは、日本軍出兵までの繋ぎとしての国府蒋介石軍或いはフイリピン軍等朝鮮派兵、更にこれに続いて日本軍の出兵が当然のコースとして予定されて来るはずであります。(「はずとは何だ」と呼ぶ者あり)外電によれば、アメリカ陸海軍連盟会長ジヨセフ・ステーリンは、七十五万から百万の日本兵朝鮮アメリカ身替りに使うべきだ、と言つているのであります。この事実をどう見るか。曾つて国連総会において何のためにアメリカ日本国連加盟に最大の努力を尽したかが窺えるのであります。(「何で反対した」と呼ぶ者あり)今にして思えば、国連安保理事会においてソ連のマリク代表日本の加盟に反対して拒否権の一票を投じたことは、日本の数十万の青少年朝鮮出動を食いとめ、その生命を救つたのであります。(拍手)今後如何なる事態が起つても、これらのアメリカ要路者が言うように、保安隊或いは日本軍隊、名前はどうでもいいけれども、これらのものを朝鮮又は他のアジア諸国に出兵するようなことは決してないと断言できるかどうか。(「できるよ」と呼ぶ者あり)断言できるとしたら、その保障は一体どこにあるのか。(「保障がなきや駄目だよ」と呼ぶ者あり)国連協力は出兵を含まないと明瞭に言い切れるかどうか。吉田総理の確信ある答弁を望むものであります。(「嘘ばつかり言つている内閣だ」と呼ぶ者あり)  私は第三に、日本の再軍備問題について総理の責任を追及したい。保安隊は軍隊であり、而も米軍指揮下にあるアメリカ予備隊であることは、今や紛れもない事実であります。吉田総理は国会において極力これを否定しながら、第十三国会が終るや否や、予備隊幹部を激励して諸君は新国軍の基礎であると訓示したのであります。又、木村保安庁長官は、過日の定例閣議で、再軍備の線を明確にすべきであると発言して注目を引いたのであります。而も、再び総選挙が始まるや、自由党国民の総反撃に押されて、再軍備はしないと公言した。一昨日以来の総理の両院における答弁も又同じことを繰返しているのであります。(「どれもこれも嘘ばかりだ」と呼ぶ者あり)これは総理並びに自由党国民に対する重大な詐欺行為である。国民と国会を愚弄するも甚だしいと言わなければならないのであります。これに対し、吉田総理は一体どんな申し開きができるか、はつきり答弁されたいものであります。(「どんな嘘を言うか、もう一遍一つ聞きたいもんだ」と呼ぶ者あり)又ジエツト機原子爆弾を持つても、それを使わなければ戦力でないと強弁して、世の失笑を買つた曾つて法務総裁、現保安庁長官の木村氏の弁明を求めるものであります。吉田総理が、日本の再軍備をひた隠しに隠しながら、一方、如何に私生児のような新国軍の建設に狂奔しているかは、今次の補正予算について見ても、その証拠歴然たるものがあります。総領七百九十八億の補正に対し、昨年度の剰余金四百五十億、安全保障費使用分五百二十八億、計一千億になんなんとする予算の隠匿は一体何事であるか。それが予算の表面に現われていないのは、アメリカ側から示された総額三兆数千億、六カ年計画の日本軍備案が、目下日米両政府間で検討中で、結論を得ないためであると言われておるが、このような事実について総理のはつきりした答弁を求めるものであります。  第四に、外交問題について総理並びに岡崎外相の意見を質したい。刑事裁判権に関する国連側との交渉については、国民挙つて民族的憤激を巻き起しております。「国連協力の限界はどこまでか、朝鮮出兵も含めてか」と、主婦までが新聞に投書している有様である。一昨日来の両院の論議を聞いていても、治外法権は、両条約、行政協定並び吉田アチソン交換文書の当然の帰結であるという国連側の主張に対し、政府の主張はまるで三百代言の言い草であり、今になつて国民にその責任をすべて転嫁しようとしておるのである。又艦船貸与協定について見ても、これは全くアメリカの一方的な押付けである。外相の演説ではフリゲート艦を船舶という名で謙遜しておるが、一体どこに大砲を備えた船舶があるか。又、上陸用支援艇言つておるが、海岸を守るはずの海上保安隊日本の一体どこに上陸する必要があるのか、私はわからない。御教示願いたいものであります。而もこのようにアメリカのための艦船を一方的に押付けられながら、貸与協定とは一体何のための言であるか。而も同協定によれば、フリゲート艦十八隻、上陸用支援艇五十隻のうち、協定附表に載せられたものは、フリゲート艦七隻に過ぎず、あとは前文によつて将来幾らでも追加されることになつておるのであります。これでは白紙委任状と何ら変りはない。このような欺瞞的外交は、もはや許されないのであります。次に、先般来日したアリソン国務次官補が、フィリピンインドネシア等の諸国に対して賠償支払の促進を要求しております。その真の狙いは、これら諸国民日本に対する反感を緩和して、太平洋軍事同盟を締結させ、朝鮮、中国その他のアジア諸国に侵略を推し進めようとする意図にほかならないのであります。政府隣外交のための賠償などと、ごまかさずに、太平洋軍事同盟に対する見解をこそ国民の前に公表すべきであります。本年八月、アメリカは、英仏の強硬な反対を押切つて太平洋軍事同盟の下準備とも言うべきアンザス会議を強行したのであります。併し、濠洲、ニュージーランドは、日本軍国主義の復活を恐れて、会議は不成功に終つてしまつた。東南アジア諸国を歴訪したアリソン国務次官補も、到る所で日本軍国主義復活に対する底強い反感に突き当つた。韓国と日本の間においてさえも、防衛水域の問題、九州大村における強制送還朝鮮人の虐待問題、釜山の収容所に収容されておる日本人日本入国拒否問題等々、険悪な懸案が山積しておるのであります。韓国政府の要人は、「若し日本が韓国に出兵するようなことがあれば、韓国人共産軍と戦うよりも、むしろ日本人と戦うであろう。」と言明しておるほどであります。このように、日本軍国主義復活に対する憎悪は今やアジアの隅々にまで充満しておる。従つて、反共太平洋軍事同盟なるものは、米日帝国主義のあせりが生んだ妄想に過ぎないのであります。首相、外相は集団安全保障の必要を口を極めて力説しておるのでありますが、この欺瞞と妄想を唯一の指針とする吉田外交の前途は、日本国民を全く破滅に陥れる無責任極まるものと断ぜざるを得ないのであります。以上述べたように、吉田外交日本民族の総反撃とアジア諸国の反感によつて全く行詰つております。これに対して如何なる打開策があるか。総理並びに外相の具体的な方策が聞きたいものであります。  第五に、私は貿易政策について尋ねたい。以上述べたような吉田内閣奴隷外交によつて、我が国民は経済の面でも重大な破局に当面しておるのであります。本年春、本院の高良議員らは、国民を代表して、中国政府との間に総額六千万ボンドに上る貿易協定を取結んだことは、すでに御承知の通りであります。若しこれが着実に実行されていたならば、この年末の惨憺たる不景気も避けられたであろうし、平和産業の前途も明るくなつていたに違いないのでございます。英国、インド、その他の諸国が中国と自由な貿易関係を結んでおるのに、日本フィリピン、台湾同様、貿易を禁止しておるのは、全く理由のないと品ころであります。我々は中日貿易協定即時実行に移すことを全国民と共に強くこれを要求するものであります。(拍手)然るに、米国の鼻息を窺つて貿易業者の中国向旅券発行をさえ拒否しておる政府の態度は、全く自主性を喪失した奴隷の態度と言わなければならない。([恥を知れ」と呼ぶ者あり)而も一方、米英仏との間には外債支払協定を結んで、旧満洲や台湾時代の外債まで返済することを許しておるのである。又政府は世界銀行の債券を一千万ドルも引受けて、サービスにこれ努めておる。これほどまでにアメリカの御機嫌を窺いながら、而も日本が得たものは、ガットの加入は完全に拒否され、又日本の商品に対する高い関税の障壁であります。こうして輸出は月々減少の一路を迫るのみであります。而もなおアメリカでは「まぐろ」の罐詰、絹、レースなどの関税が再び引上げられようとしているのであります。現在政府アメリカと交渉中の通商航海条約は、中米のコロンビアただ一国だけしか受諾しなかつたという苛酷極まるもので、その内容は日本アメリカの無制限に自由な市場として提供し、その結果は日本の産業を完全にアメリカ資本に隷属させるものであります。中小企業は勿論のこと、産業資本家といわず、労働者といわず、日本の全国民は、今、政府のこのような卑屈極まる態度に憤激しているのであります。吉田、岡崎、池田各大臣は飽くまで国民を敵とするつもりかどうかその覚悟のほどが承わりたいものであります。  私は第六に、国内政策、特に労働者農漁民対策について質したい。先ず労働者の状態についてこれを見れば、企業合理化出血受注の結果、首切り、労働強化、低賃金政策はますます強化され、職制の圧迫と相待つて大きく労働者の首を締めている。この最も顕著な現われが軍管理工場であります。私はこの選挙中、日本製鋼赤羽工場行つたのでありますが、ここでは昼休み時間であるにもかかわらず一切選挙演説を聞くことが許されず、米兵はあからさまに機関銃の空砲を放つて我々の演説を妨害したのであります。この有様は一体何であるか。一国の公然たるところの選挙活動がこのようにして外国兵のために不当に妨害され、労働者候補者の演説さえ聞く自由を奪われているのであります。これは誠に重大である。而もこれは単に日鋼赤羽労働者の今置かれている姿であるにとどまらず、全日本労働者の姿であり、日本民族そのものの姿であると言つても過言ではないのであります。部厚いコンクリートの塀の中では七重八重の職制が張りめぐらされ、用便に立つにも一々監督者の許可を受けなければならないという、監獄労働さながらの酷使がここでは行われでいるのであります。この原因は何であるか。日鋼赤羽工場の場合、その戦車修理契約価格アメリカ本国におけるそれの約三分の一である。この話にならない押付け契約のため、目下出血生産を強いられているところの業者は、その「しわ」を全部下請の中小工場労働者に転嫁して来ているのであります。このようにして今まで八時間労働でどうにか生計を保つて来た労働者は、十二時間、十四時間の重労働、夜業、残業をしなければ食えない状態で、病人、怪我人が続出している有様であります。  このように、単一の世界市場の崩壊と帝国主義国相互間の内部矛盾によつて今や完全に行詰つた内外独占資本は、戦争とこれを土台とする軍需生産以外にその捌け口がなくなり、これを日本労働者の低賃金に向けて来ているのであります。こうして日本労働者の骨の髄までもしやぶらずにおかないのがアメリカ戦争屋どもの魂胆であります。今、政府によつて公然と企らまれているところの兵器生産こそは、このような世界史的背景を持つた世紀の鬼子と言わなければならないのであります。一体、池田通産大臣はこのような生臭い犠牲を伴う出血生産を認めるつもりかどうか。昨日も木村君の質問に対し、外国からの兵器の注文に応ずるのがなぜ悪いと答えているが、これこそは儲かれば何でもやるといつたところの残忍無残な極道資本家の態度であります。昨日の衆議院本会議における五人や十人死んでも仕方がないという放言を再び繰返しているようでありますが、その結果、大波瀾を招いているようであるが、これは決して偶然ではないのである。人殺しの兵器を作つて栄えて一体何の喜びがあるか。而も人道を無視したこのような不道義に立脚したところの兵器生産は、日本産業の将来を暗黒に落し、ますます崩壊と破滅への速度を速めるに過ぎないのであります。(「ソヴィエトはどうした」「ソヴイエトは兵器を作らんのか」と呼ぶ者あり)この点、池田通産大臣は、はつきりと答弁をせられたい。又戸塚労相は目下危殆に瀕している日本労働者基本的権利を如何に守らんとする覚悟があるか、伺いたいのであります。(「儲かれば人殺しの道具でも何でもいいのだろう」と呼ぶ者あり)軍管理工場におけるこれらの低賃金は、民間産業公務員の賃金とも、実に密接な、不可分な関係を持つているのであります。今度のベース改訂は、国鉄、専売裁定や、人事院勧告を無視して、一方的に押付けられ、殊にも職階制強化のための職階賃金が、上に厚く下に薄い形をとり、上下の差は今までの十四倍から十七倍に拡大している。このために青年、婦人、下級公務員らは、目下ベース・アツプで生活がますます苦しくなると叫びをあげているほどである。向井蔵相はこのたびの予算はベース・アツプに重点をおいたように説明しているが、二階から目薬程度で事態をごまかし、而も重税と職階制強化による戦時体制編成に役立たせようとしているのであります。而も収奪はこれにとどまらず、ベース・アツプを口実として運賃、電気、ガス料金等独占物価値上げを断行しようとしている。これはベースアップごと却つて労働者の生活が苦しくなるのは当然であります。我々はこのような欺瞞に富んだ予算措置に絶対反対し、一千億の隠匿した再軍備費をやめてこれを公務員給与改善社会保障教育文化等に廻すことを要求するものであります。向井蔵相の責任ある答弁を私は要求するものであります。  農漁民の問題について見ましても、このたびの米価値上げで農民は満足していないのであります。政府は選挙前の票稼ぎのため供出価格を引上げたが、超過供出の余裕のない大部分の農民は、七千五百円の米価では引合わない、少くとも生産費を償う一万円を出せと要求しているのであります。一体このたびの米価引上げの真の狙いは何であるか。政府は生産者価格の引上げを口実として消費者価格を不当に釣り上げ、その差額は年間実に六百七十五億に及んでおります。この利潤を一体何に使うのか。中間諸雑費を引いてもその差額は余りにも多額である。一方において政府はここ二、三年間に約五百万石の食糧を備蓄していると聞いている。国民朝鮮前線の食糧及び戦争に備えた備蓄がひそかに行われているのではないかと疑つているのであります。この間の事情を小笠原農林大臣は明らかにすべきであります。漁民について見ても、北洋、東支那海等の締め出しによる漁獲高の減少、更に米軍の戦闘訓練による沿岸漁業の破滅は深刻であります。東京湾の防潜網施設により沿岸の漁民が莫大な損害をこうむつていることは、第十三回国会でもここで問題になりましたが、この対策は何ら未だに講ぜられていないのであります。岡崎外相はこのとき本院の答弁におきまして、魚の通る道を何とか作るように研究したいということでありましたが、防潜網は東京湾だけのことでなくて、九州の大村湾、佐世保湾も同様の事情にあると聞くのであります。あれから五カ月たつているのであるが、研究の結果がどうなつたか。外相の答弁を要求するものであります。(拍手)岡崎外相の出身地である神奈川の辻堂、茅ヶ崎附近でも、漁場破壊の問題は大きく繰り拡げられておるのであります。現に砂浜に乾燥中の地曳網が米軍のジープでずたずたに引裂かれ、附近の姥島は砲撃と急降下爆撃のため殆んど原形をとどめぬまでに荒されている。このため、岡崎腰抜け外交に大いに憤慨した漁民たちは、選挙に当つて一票も入れるなと叫んだことが伝えられているのですが、これら米軍の不当行為に対する交渉を一体どうするつもりか。又これらの損害補償をどうするか。外相、農相の対策が伺いたいのであります。  最後に私の質したいことは、政府の弾圧政策についてであります。  第一に、政令三百二十五号は講和発効後当然無効になつたはずである。政府は極東裁判によつて厳重な判決を受けたA級戦犯をさえ釈放する手続をとつているのに、一方では、ポ宣言違反の占領政策に真向から反対し、日本の今日の惨状を来たさないために生命を賭けて闘つて来た幾多の愛国者が、未だに獄に繋がれているのであります。占領法規がすでに消滅してしまつた今日、これは甚だ奇怪至極のことであります。だが、京都、横浜その他では、政令三百二十五号は憲法違反であるとして免訴にしているのであります。曾つて米軍の指揮によつて多数の愛国者を投獄した京都地裁の小田春雄判事でさえ、免訴の判決理由の中で、「国内法上可罰性のない行為に対し、軽卒に有罪の判決を宣告するならば、ひとり日本の法的独立性と裁判の威信を失うのみならず、世界史上に拭うことのできない国辱を残すに至るであろう」と述べている。政府はすでに時効にかかつた占領法規によつて捕えられている愛国者を即時釈放すべきであろうと思うがどうか。なお小菅に収容されているメーデー事件、五・三〇事件の被告らは、いずれも人間として堪えがたい暴行と虐待を受けている現状であります。小菅では、無期徒刑囚をそそのかしてメーデー被告に傷害を加えようとした事件が発覚して、大騒ぎを起しております。このような人権蹂躙をあえてする一方、治安に名をかりてスパイと弾圧機構を拡大し、恐怖と暗黒の警察国家を強化しようとしている。吉田総理は再軍備についてちよつぴり演説したが、弾圧政策については口を極めてこのことを強調している。これこそは、戦争を企み、民族と国家をアメリカに売り渡した者の不安と動揺の何よりの証拠と言わなければならないと思うのであります。このような天人共に許すまじき不法をあえてして、一体何の道義高揚であるか。政府は道義の高揚を口にする前に、すべからく、みずからの不当を率直に認め、メーデー事件等の無実の政治犯人を即刻釈放すべきである。法務大臣の答弁を求めるのであります。  以上述べましたように、これら国民各階各層の生活の破壊は、すべてアメリカ一辺倒の戦争協力政策の明らかな結果であります。日本国民大衆は、目下これらの政策に反対し、飽くまで平和と民族の解放独立のために闘つている。目下、電産労働者、炭鉱労働者の頑強なストライキを中心に、全国的な歳末闘争が激化しているが、これこそは、産業の軍事化を無謀にも推し進めんとする経営者、又内外独占資本家に対する反戦平和の抵抗闘争であります。今や闘う者のみが平和を守り、民族の独立をみずからの手によつて確保することができるのであります。十月、北京に開かれたアジア太平洋地域平和会議は、アメリカ、メキシコ、南米等を含めて三十七カ国の代表を集めて開催され二つのアッピールと九つの決議を採決したのであります。この中で、朝鮮戦争の即時停止、対日全面講和締結、この二つの条項こそは我が国にとつて最も重要な関連を持つているのであります。又これらの成果は、来たるべきウイーンの諸国民平和会議によつてますます拡大強化されようとしているのであります。我々はこれら澎湃として起りつつある世界の平和勢力と緊密に提携し、民族解放のために結集した力こそが、第三次大戦を戦争屋の手から守り抜き、新らしい世界の進展を推し進めるところの原動力であることを確信して、私の質問を終る次第であります。(拍手)    〔「お経だ」「共産党のお経」「有難いだろう」と呼ぶ者あり〕    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
  11. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えします。  現下の国際情勢については、しばしばお答えをいたしておりますからして、お答えをいたしません。(「できんだろう」「答えられんだろう」と呼ぶ者あり)又朝鮮動乱について云々ということでありますが、これは共産軍朝鮮を引揚げましたならば、直ちに朝鮮動乱は片付くのであります。共産軍朝鮮からの引揚げは国民の要望するところであります。(「その通り」「恥を知れ」「アジアアメリカが行く必要ないじやないか」と呼ぶ者あり)新大統領の朝鮮訪問について、私との間に秘密会談をする約束はありません。「(「わかつたか」と呼ぶ者あり)私は日本保安隊朝鮮に出ないということはしばしば申しております。何が保障であるか——私の言う声明が即ち保障であります。(「嘘ばかり言つてるぞ」と呼ぶ者あり)再軍備に関することは、私がしばしば申している通り、只今考えておりません。(「嘘だよ」「今考えないで、明日考える」と呼ぶ者あり)  それから情報機関云々というのでありますが、政府としては情報機関を設けるのではなくて、広報機関を設けるつもりであります。(「どこが違う」と呼ぶ者あり)その趣意とするところは、しばしば申しておりますが、言論の統制とか圧迫を考えているのではないのであります。国民が事実の真相を知ることが民主政治の基本であるから、政府としては事実なりとして事実の真相を伝えることを目的としてこの機関を設けるのであります。(「タス通信どうした」と呼ぶ者あり)その他いろいろ御質問がありましたが、要するに、私の申したいことは、国民が共産党諸君を何と考えているか。このたびの総選挙において一人の議員も出なかつたことは、(拍手国民が、諸君の言うことこそ虚偽であり、信用ができない、国民諸君を信用しないよ。共産党こそが恥を知れと言わざるを得ない。(拍手)    〔「自由党、何だ」「選挙違反じやないか」「感情でものを言うな」と呼ぶ者あり〕    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手〕    〔「そら選挙違反が出た」「大変な御成績でした、選挙で」と呼ぶ者あり〕
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 岩間君にお答えしますが、岩間君のように、ソ連や中共のことだと神のように礼讃して、民主主義のほうは口を極めてさげすむような国民を惑わす侵略的な謀略宣伝がしばしば行われますので、私は強い決意と勇気を以てこの現状に対処しなければならんと思つたのであります。  朝鮮募兵についていろいろ批評をされましたが、北鮮や中共の模様はどうでありますか、共産主義を嫌つて逃亡兵が踵を次いで出ております。死んでも共産国家には帰らないというのは捕虜送還問題の一番の中心点であります。  船舶と言いますのは、この船舶協定につきましてこれは前に何であろうと日本では船舶として使うからであります。(「三百代言みたいなことを言うな」と呼ぶ者あり)共産党は民主主義国家の強固なる提携を最も恐れるために、「すすき」を見ても幽霊のように見えられるようであります。(笑声)  太平洋同盟というものはまだできておりません。  通商条約等につきましては只今交渉中であります。全国民政府態度に憤激しているということを言われますが、何の根拠があるか、これはわかりません。私は今総理の言われたように、総選挙の結果が最も明らかに国民態度を示していると思います。  防潜網につきましては只今水産庁で研究中であります。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  13. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 岩間君にお答えいたしますが、昨日も私が申上げた通り保安隊は、我が国の平和と治安を維持し、国民の生命と身体財産を保護することを目的とした部隊である。決して軍隊ではありません。又断じて米軍指揮下にあるものでもございません。(「嘘だ嘘だ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣池田勇人君登壇
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中共貿易関係につきましては、たびたび申上げている通りでございまして、中国側の事情もありますし、又国連協力の基本方針もありますので、その線に沿つてつているのであります。而して最近では染料或いは紡織機等の輸出はいたしているのであります。又兵器生産につきましては、先ほど来、申上げている通りでありまして、注文がありました場合に、商業的立場からこれを作るということは、経済的にも又法的にも何ら差支えないと考えております。(「人殺しのものでもね」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  15. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 軍管理工場のお話がありましたが、これは完全に国内法を適用いたしております。なお低賃金云々のお話がありましたが、賃金は現在におきましては、統計の示すところでは、戦前を上廻つておる状態になつております。(拍手)    〔国務大臣向井忠晴君登壇拍手
  16. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 前年度の剰余金は来年度の歳入に繰入れる予定でございます。又安全保障諸費は、それぞれ使用いたします予定がございますので、隠匿はしておりません。  現在の米の生産者価格は決して低いものとは考えません。又賃金につきましても、実質賃金指数は最近相当向上しておりまして、必ずしも低賃金ではありません。(「ストライキはどうする」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  17. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 米の生産者価格は生産費を償つていないではないかというお話でございましたが、これは先にお答えいたしました通り、米の生産者価格は、パリテイ米価に、物的資本投下量の増加と、都市と農村の実質的消費水準の均衡を図るための調整比率によつて算定される加算領を加えたものでありまして、農林省調査の米の生産費と比較いたしましても、米の生産費は十分償えるものと考えております。消費者価格に織込まれておる中間経費が多いではないか、こういうお話でございましたが、成るほど生産者価格は七千五百円、消費者価格は九千五百円だから、一見多いように見えるかもわかりませんが、併し、このうちには、早期供出奨励金、超過供出奨励金、包装費等のごとくに、生産者に対して価格として支払われる部分も含まれておりますので、石当りその差額は千三百五十一円にしか過ぎません。従いまして消費者価格に対する中間経費の比率は一四%程度でありまして、過大とは申しにくいのであります。  更に、政府は相当備蓄をしておるではないかというお話でありまするが、御承知のごとく、政府が手持ちしております米麦は、主要食糧の需給操作のために通常必要とせられる分量でありまして何ら過大に持つておることではありません。(「どれだけ持つているのか」「防潜網防潜網」「魚の網よ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  18. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えをいたします。  ポツダム宣言受諾に伴います政令三百二十四号が無効ではないか、こういう御質問でございます。これは最高裁判所に提訴になつておる事件が数件ありまして、最終的には最高裁判所の判決を待つということになりますが、では政府態度はどうかと申しますと、本年の五月に政令三百二十五号に入れ代りましてポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律が出ておりましてその第三条に、罰則は平和発効後も有効だという条文がありまして、政府はこれを根拠にいたしまして釈放ということは考えておりません。  もう一つ、小菅刑務所や大阪の刑務所で人権蹂躙の事件があるのではないかこれは一昨日陳情もありましたので、早速調べております。岩間君のおつしやるように看守が使嗾したということはないようでありますが、いずれにしても、刑務所に入つておる人がほかの人をなぐつたということはあるようでありまして、いずれにしても、なぐるということは余りいいことではございませんので、早速調べております。(「余りいいことではないですか、えらい法務大臣だね」と呼ぶ者あり、拍手
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 柏木庫治君。    〔柏木庫治君登壇拍手
  20. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 八月二十八日からベルリンで開かれました列国議会同盟会議に、本院から代表として御派遣頂いたことを先ず厚くお礼申上げます。  それから帰りがけ、国会の事情その他を視察のため欧洲十カ国、米国を廻つて帰つたのでありますが、ドイツに参りますときに、あのひどい戦禍を(「旅行談ですか」と呼ぶ者あり)受けて、さだめし疲弊困憊の中にあると存じたのでありまするが、日本におりますときは、破壊された焼跡がまだ散らばつているとまで聞いておりましたけれども、ベルリンに七つの山ができたというのでありますが、こういうものはきれいに取り片付けられ、あとは立派に復興がぼつぼつできておりまして、国民の士気は非常に盛んでありまして、その繁栄に驚いたのであります。その繁栄の一番大きな原因は、ドイツには五百万の組織労働者があります。然るに戦争が終りましてから今日まで、一回もストライキがないそうであります。(「経営参加をしているからだよ」と呼ぶ者あり)このストライキの一つもないということが、ドイツの産業を発達さした一番大きな原因であります。これはもとより経営者も素晴らしいし、政府のあり方もよろしきを得ておりましようし、労働者も組合を作つたその目的に忠実でありまして、決して自分たちひとりのために他に不幸を与えるような争議をいたさないのであります。(「昔やつたのだ」「近頃だよ」と呼ぶ者あり)  私はもう一つの事実を見て参りましたが、ハワイのライナ島は全く労働者の天国であると聞いておりました。然るに昨年、ラナイ島の労働者でない、上のほうから命令を受けまして労働争議をやつたのであります。一ドル六十セントの最低賃金を十五セント値上げをしようという争議でありまして八セントは会社側で上げたのであります。もとよりラナイ島の労働者はそれを受容れようといたしましたが、指導者が承知をいたしませんので、遂に争議は続きました。そうして争議は争議団のほうが勝ちまして、十五セントという目的は達したのであります。然るに、この間に使いました費用その他によりまして、ライナ島における日本労働者は、年をとつた者は、私の一生においてもう希望も何もなくなつた、生活も困難になつたと、闘い勝つて泣いておるという事実も見て参つたのであります。これなんかは、私は指導する者が労働者の幸福を考えておるのか、自分たちの思いを遂げるのか、疑わざるを得なかつたのであります。(拍手)  この二つの事実を見まして、私は日本に踊りましてから、労組の指導者、或る委員長であります。それから新聞記者にもいろいろ聞いてみたのでありますが、或る委員長は、君がたはこの頃用事がなくて楽でしようねと私が言いましたら、とんでもないことだ、秋の争議と年末の争議を考えて準備をしておるので忙しいんだと、こう聞きましたが、ドイツの組織労働者は争議をすることを計画に組んでその準備をしておるのではなくて、必要に応じたら五百万が一遍に立つ準備はできておると承わつたのであります。このことを私が新聞記者五人の人に申しましたら、一人の人が、それは、されるほうからでも考えなければいけないのだ、池田さんの名前を出して甚だ苦しいのでありますが、(「苦しうない、苦しうない」と呼ぶ者あり)曾つて池田さんは、金持は米を食つてよろしい、貧乏人が麦飯を食うのはしようがないじやないか——言葉はどうか存じません。私が聞きましたその新聞記者が言うたのでありますが……、というような言葉、それから選挙地で、貧乏人が麦を食うのは止むを得ないと言うたのが何が悪い、「いも」さえ十分食えなかつたじやないかというようなことを言われた。上に立つ者がそういう考え方を持つておる政府に政権を任しておいたならば、金持と貧乏人の開きが非常に多くなるので、少しは行き過ぎもあるか知らんけれども、労働争議も又止むを得ないなと肩を持つ者もあつたのであります。私は池田さんがそういう思いでおつしやつたのではないだろうと、聞いてみませんからわかりませんが、想像をいたします。けれども、知識人である、而も公平である新聞記者から、そういうことを思われるような、言い方は違うておつても、思われるような言辞を、上に立つ者が出すということは、慎しむべきであると考えます。(「政治が悪いからだよ」と呼ぶ者あり)  それから、今日の電産スト、石炭労働者のストを見ますと、これから生れて来たところの国民大衆、それから中小工業者でありますが、不景気にならなくても、電算ストがたびたび続きましたならば、中小工業者は倒れてしまうと承わつたのであります。主婦連合でいろいろと主婦たちの、これによつて受ける不幸な姿を書いて何でも電燈料を払わないという運動をしておるそうでありますが、あの中に書いてあるぐらいの項目ではなくて人命にも関する場合が甚だ多いのであります。今日の新聞を見ますと、炭坑ストによつて汽車も減るし、年末年始に向つて国民全体が非常に困難をし、産業も被害をこうむる。こういうものを計算に入れましたならば、驚くべきものではないか。ドイツの五百万の組織労働者が、あの困難の中から産業に励んで、今日は輸出超過になつておる。このときに私は政府当局に一つお願いをしたいことは、こういう大きなストライキによりまして、どういう被害があるかということを調査して、これを国民大衆に率直にそのままを知らせたいと思うのであります。個人々々の被害が少いと、案外平気でありますけれども、国民全体といたしたならば、電力に関係しておる人が僅かの賃金問題でどんな国家に大きな禍いを与えておるかと心配をするものであります。  只今岩間君が政府に向つて政府日本労働者の言うことを、権利は厳に守るべしと、あの言葉を私は賛成いたします。日本政府労働者の権利は厳に守るべしであります。併し、権利を濫用し、乗り越えて産業を破壊するような行為に出たときには、政府は力強くこれに善処して行くべきであるとも私は考えるのであります。(「経営者が悪いのだ」「吉田内閣は喜んでおります、そういう議論を」と呼ぶ者あり、拍手)経営者は反省すべし、労働者も反省すべし、特に指導者は反省すべきであります。(「君も反省すべし」と呼ぶ者あり)さよう。(笑声)  それからイタリア及びドイツでありますが、日本の街頭には今日もなお戦傷者が街頭に立ちまして物乞いをいたしておる姿を随所に見受けます。私はこの問題について黒川厚生大臣のときに、一時も早くあれをなくせねばと質問いたしましたところが、善処すると申しましたが、今日世界を廻つてみまして、戦傷者があの姿で街頭に立つて物乞いをしておるのは日本のみであります。私は日本政府のやり方が、こうした哀れな者を処置するのにおろそかではないかという感じを強くいたしたのでありますが、この問題について、厚生大臣でなく、吉田首相は思いを深くして頂きたいと存じます。  それから岡崎外務大臣は戦犯者の問題について非常に親切にお尽しになつておることを感謝いたしますが、私はBC級の戦犯者と会つてその事情をよく聞いてみますと、どう考えてみてもBC級の戦犯者は戦犯ではなくて、これこそ本当のお気の毒な被害者であると存ずるのであります。と申しますのは、上の者から、あのときに、戦時中命ぜられて、これを拒めば銃殺されるのでありましよう。例えて申しますとタイとビルマの間のあの道路を作りましたときに、日本軍からはよくやつたという感状をもらつておる。それが終戦の結果は戦犯として今もなお巣鴨に暗い生活をいたしておるのでありますが、私は曾つて山下将軍が絞首刑になつた後においてマッカーサー元帥の声明を記憶いたしておりますが、「武人最高の栄誉は弱者を守るということだ。然るに山下は、戦争がああいう状態になつて、真に弱者を守る武人の心掛けがあるならば、あそこで処置すべきであつた。それをやらなかつたところに、歴史あるマニラが破壊され、無辜の民が死に、米軍人、日本軍人が多く死んだのだ。弱者を守るという武人最高の栄誉を汚したが故に。」ということが絞首刑の趣旨であつたと記憶いたしております。であるならば、恐らくBC級の戦犯者として今巣鴨に拘置されておる人ほど、本人が好くと好かざるとにかかわらず、どんなにいやであつても絶対にやらせられたこと、やらなかつたならば銃殺をされること、これほど弱者として最弱者である立場はないのでありますが、その弱者を守ることがマッカーサーのいわゆる武人の最高の栄誉であり、同時にアメリカの栄誉であると存ずるのであります。私はこの点を大いに岡崎外相主張されてBC級戦犯者の即時解放こそ望ましいと存じますが、外相は非常な努力をいたしておりますが、一段と御努力を願いたいと存ずるのであります。それから、私がしばしば主張して来ておるのでありますが、農家の方々が折角作りましたところの作物が年々歳々病気と害虫のために失われて参ります。小笠原農相のお膝元である秋田の大曲には、この害虫から稲を救う研究が、早期に処置をして行つたならば、少しも、どんなときもこの被害から逃がれるのみならず、処置をせない作物よりも多くできることを、大曲農事試験場で十分の試験済みに立証されておるのでありますが、廣川素人農相と違つて、農政においては玄人であらせられる小笠原農相は、御自分が責任の位置に立つてから、日本の作物を害虫から守るこの方策を立てられたか否か。立て得るか否か。立てたとすればどういう方法であるかと、これを小笠原農政において解決をして頂きたいと存ずるのであります。  軍人の恩給についてでありますが、日本国で軍人に恩給をやることはあの時の法であります。アメリカから占領されてアメリカの占領下にあつた時は、これは絶対服従でありますから、どうもできませんが、友好と和解と信頼の独立講和をいたし、独立国家になつた日本は、国としてその時の法を守り、最も気の毒な弱い者を今にそのままに放つておくということは、いや、いろいろと力はいたしているのでありましようけれども、金があるとか、ないとかということでありますが、そのときに同じく総力戦としてあの戦争には皆参加をいたしたのであります。大蔵省は金を集めることに力を入れましたろう。文部省は必勝信念の高揚、戦時生活の確立、挺身奉公の実践というスローガンを掲げて国民を駆り立てた。そういう連中は恩給を同じくもらつて、のほほんとしているのに、ひとり軍人だけが取残されていることは、この敗戦の苦痛を公平に嘗める意味において甚だ片手落ちでありますので、こうした根本的な考えに立ち返つて、自分たちを犠牲にしても、最も憐れな軍人に、至急にその措置をとることが政治家の正しいあり方と存ずるのであります。これに対して総理大臣のお考えを承わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  お尋ねのいろいろな問題については、所管大臣からそれぞれお答えをいたしますが、口今の軍人恩給については、口今折角審議中であります。成案を得次第、国会に提出するつもりでおります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 敗戦の痛手はまだ十分癒えておりませんので、国民全体が耐乏生活をして、復興発展に進まなければならないのであります。私はこの耐乏生活に耐えつつ日本の経済力を上げるために、国民と共に努力して参つておるのであります。何と申しましても、政治の根本は、国をよくし、国民生活をその日その日楽にすることにあると思います。而してそれにもなお遅れるかたにつきましては、極力、社会保障制度で救つて行かなければならんと思います。繰返して申上げますが、国民全体がその日に安んじて行くように、努力して行きたいと考えております。(「説教しているのか、それは」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  23. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お答えいたします。  ドイツの労働運動等についてのお話がございましたが、沿革、経験等も長い間のものでありまして、それらと事情が異なりまする我が国における実情は、大いに反省を要する点もあると存ずるのでございまして、今後我が国の施政並びに労働運動について、一層、運動のあり方の確立に努力をいたして参りたいと存ずる次第であります。なお、現在の電産スト、炭鉱ストにつきましては、御指摘の通り中小商工業者その他各方面に相当の被害が生じておるのでありまして、誠に遺憾に堪えない次第でございます。ただ昨日も申上げましたように、この争議の解決は、やはり自主的に、乃至は公正なる第三者の斡旋調停によつて解決せらるることが根本の行き方でなければならんと存じておるのでございます。但し、倉のごとく被害もだんだん多くなつて、世上を騒がすようになつておりますることにつきましては、私も頻りに心配はいたしておるのでございます。なお内閣におきましてもそれぞれの関係省もあり、いずれもの閣僚が総理はじめ御心配になつておるのでありまして私もその責任を痛感いたして、何とか早く中山会長の斡旋の線を通じて解決がせらるるように期待をいたしておるのでありまするが、なお政府といたしましても、できる限り善処いたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣山縣勝見君登壇拍手
  24. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) 只今の御質問お答えをいたします。  乞食浮浪者をできるだけ早く絶滅をいたすようにというお話でございまするが、(「作つておるじやないか、あなた方」と呼ぶ者あり)これに対しましては、政府はかねて最も意を用いまして参りましたのであります。この乞食、浮浪者と申しましても、本質的のものもありまするし、なお又環境によるものもあるのであります。政府といたしましては、先ず以てこの環境によつてかような境地にありまする方々に対しては、できるだけの措置を講じたいと思いまして、先ず以てこれに対しましては、さような環境から引き出して、これに自立更生の途を与えますることが最も肝要と考えまして、先ず以て生活保護法によつてその最低生活を確保し、更に又疾病等にかかつておりまする者に対しましては、国民医療の面からこれを扶助し、なお又、政府といたしましては予算を取りまして、本年の年末には大体九十八カ所、一万二千人余を厚生施設に収容いたしてそれに対して自立更生をいたし、或いは生業の訓練をいたし、或いは職業の斡旋をいたして参つておるのであります。なお又、浮浪児に対しましては、これは終戦直後から現在は相当減つてつておりまするけれども、なお街にはさような不幸な者がおりまするので、これに対しましては児童福祉法を中心にいたしまして、関係機関或いは警察当局と協力をいたしまして、その絶滅を期しておりまする次第であります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  25. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 戦争裁判受刑者についてのお話でありますが、殊にBC級の人たちについて誠に御尤もと考えております。私もできるだけ御趣旨に副つて努力するつもりでございますが、なお御意見等は是非伺つて、相共に一つ善処したいと考えております。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  26. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 柏木議員にお答え申上げます。病虫害を早期に発見し、適切なる対策をとるべきことについては、誠にお示しの通りであると存じます。農林省におきましては、平常起つて参りまする発生防除のために、稲麦に対しましては、農薬だとか或いは動力防除機具の買入れ等につきましても補助金をやるとか、或いはホリドールを本年は約一万町歩をやつて相当効果を挙げましたので、今後は更にこの実施面積を拡大して参りたい所存でございます。なお異常に起つて参りまする病虫害の防除に対しましては、或いは農薬を全購連等に購入さして、ここで整備して必要な場合にそれを分けるとか、或いは又防除機具が現在たしか二千十五台ほど全国九ヶ所にあると存じまするが、更にこれを充実いたしまして効果を挙げまするように、いずれにいたしましても農作物が病虫害によつて減収いたしますることは非常に遺憾でございまするので、これに対しては万全の措置をとりたいと考えております。(拍手
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 椿繁夫君。    〔椿繁夫君登壇拍手
  28. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、過日来、政府との間に繰返されております質疑応答と成るべく重複を避けて、主として民生安定に関する数項について政府の所信を質したいと存じます。  先ず失業問題について政府の施策を伺いたいのでありすまが、我が国総人口のうち一割に近い厖大な数の失業者を抱えている国の政府が、民生の安定を高唱しながら、これが対策について過日も首相の施政方針演説の中で二責も触れられなかつたことに対して、国民は大きな失望を感じているのであります。思うに、世界軍拡経済に依存した政府の場当り的な一時凌ぎの経済政策は、大企業の擁護を中心として、設備の拡張、滞貨の融資等を行なつて参りましたが、昨年秋以降、世界景気の後退が本格化するに連れて、我が国経済にも深刻なる影響を与えておりましたが、最近この傾向は全産業的に拡大し、今や日本経済は重大な段階に当面いたしております。政府はこの経済政策の失敗に目を蔽い、これの切抜け策としての再軍備の急ピツチな進行を目ざして兵器生産の助成を行い、日本産業の本格的な軍需産業への転換を企図しておるために、中小企業の倒壊するもの多く、或いは平和産業より軍需産業に転換を企図する企業がとみに増加し、この過程において多くの失業者を出すに至つております。従来まで労働省の調査によつて見ても、本年一月以降七百三十万乃至は七百五十万の失業者があり、これに農村の潜在失業者を加えますならば、実に厖大な数に上ることは明らかであります。而も今後当分、世界景気好転の見通しは極めて困難でありますので、経済不況が恒常化しようとしておる現段階においては、失業者前途は実に暗擔たるものがあるのであります。昨日も論及されましたが、このような事態の中で、新らしい学校卒業者の就職率も極めて悪く、又職場における労働者は、低賃金労働強化を押し付けられ、文字通り苦難労働によつてみずからの生命を縮めているばかりでなく、日雇労働者の就労日数は一カ月に僅か十九日に過ぎず、而も極めて低い賃金であり、その上健康保険などの適用からも除外され、日雇労務者の非痛な叫びが再び強力な行動になつて現われようとしており、一家心中、自殺の増加、強窃盗の横行となり、(「大臣よく聞け」と呼ぶ者あり)社会不安は、いやが上にも増大しつつあります。然るに政府はこのような事態に当面しながら、上程されておりますところの補正予算で僅かに四億を計上しておるに過ぎません。防衛力や警察力を増加するだけで国内の治安対策は全しというふうに、国民は安心するわけには参りません。十一月十四日、失業対策審議会は総理大臣に答申をいたしております。特にこのうちで、地方財政の窮迫のため、国庫補助率の引上げが行われない場合には、国庫補助額の増加を行なつても事業を現在以上に拡大して失業者の吸収を行うことが困難な地方が多いので、事業に要する経費の国庫補助率を、労力費及び事務費については現行の三分の二を五分の四とし、資材費については、国庫補助率は現行の二分の一をそのままとするも、補助の対象とする額は現行の一人一日当り二十円を現在実際に要している九十円程度に引上げると共に、事業の運営管理に要する職員費、工事雑費の補助を行うこと等、三項に亘つて総理大臣に答申をいたしておりますが、これらを含めまして、政府は至急にこれを予算化するの意図を持つておられるかどうかを、私はこの機会に伺いたいのであります。又失業保険の整備拡充は文化国家として最も望まわいことがあつて、是非これは行われなければならんのでありますが、当面する失業恒常化を契機として、現行の失業保険給付期間の延期、増額等、改善する意思があるかどうかも承わりたいのであります。  次に、昨日来、池田通産大臣によつて無慈悲に取扱われておりますところの中小企業に対する対策を伺いたいのでありますが、(「よく聞け」と呼ぶ者あり)中小企業は全く政府産業政策の犠牲の下に置かれております。大企業に対しましては産業開発銀行の設置を見、農業、漁業等の融資につきましては、近くこれが法的措置がとられようとしておりまするが、ひとり中小企業は放置されております。補正予算によりますると、年末金融の枠を拡大するの意味を以て二十億が計上されておりまするが、これは年末調整の呼び水の役割しか果さない程度のものであります(拍手)今日まで報告されておるところによりますると、中小企業にして市中銀行に借入申込を行なつて、殆んど半数以上に近いものが原資がないという理由を以て断わられておりますこの状態中小企業を放置しておきますことは、我が産業構造上の機構を全く根底から破壊するの結果になるのではないかと恐れまするが故に、政府は多年我が党が主張して参つておりまするように、中小企業に対する特別金融措置を、年間一千億、少くとも六百億程度の特別会計を設置せられまして、速かに中小企業の当面の危機打開のために善処されたい熱望を持つのでありますが、これに対する政府の所信を承わりたいと存じます。  更に、中小企業の根本的な危機打開のために中共を含む東南アジア貿易が重大であることは、先日来しばしば繰返されております。池田通産大臣は、相手が相手であるだけに、取引の条件、決済の方法などが、つまびらかでないから、中共との貿易再開については困難があるのだと言つて、少しも努力されようとするの熱意を示されておりません。私どもは今春来、政府を督励いたしまして、繊維機械、紙、羊毛製品、染料等、四品目を輸出制限品目から除外する交渉をワシントン当局と進めるよう要請をして参りましたが、その結果、八月三日、その四品目は中共向け輸出制限から解除されることになつたのであります。然るに、政府はこの解除された品目の取引及び決済の方法等について、一体その後如何ような対策等を講じておられるのか、明らかにせられたい。中国の……(「忘れたか」「ページが違う」と呼ぶ者あり)貿易促進協議会の代表者である南漢宸氏から、これら解除された四品目を中心として具体的な取極を行いたいから至急代表者を派遣せられたいという招請がございまして業者及び労働組合の代表者から中国に参りまするところの旅券下付の申請をいたしておるのでありまするけれども、今日まで政府は何らこれに対する対策を講ぜず、向うから呼びかけがあるにかかわらず、これをそのまま放置して、積極的に中共貿易の打開の方法をとられないということは、一体如何なる理由に基くものでございましようか。私はこの機会に通産大臣の所見を承わりたいのであります。更に、只今も同僚柏木議員から問題の提起されております電産と炭労の争議について(「徹底的にやれ」と呼ぶ者あり)政府の所信を承わりたいのであります。先ず電産の事業者団体は、公然と労組法上認められておる電気産業労働組合との間に統一交渉を拒否する態度を一貫してとつております。このことは明らかに、労働組合法第十六条、第七条の二号に違反することは明瞭であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)然るにこれに対して政府は何らの対策を今日まで講じていない。これに対する戸塚労働大臣の所見を伺いたいのであります。(拍手)  更に私どもは、中央労働委員会の奮闘によつて、深刻な影響を与えつつある国民経済に損害を少なからしめるため、争議の早期解決を熱望いたしておつたのでありまするが、頑冥な電気産業業者団体は、この切実なる電産労組の要求を拒否いたしまするために、遂に中労委は、当初斡旋案を提示しておりましたものを引込めて、経営者団体の頑強なる主張に屈して、その要望に近い斡旋案を最近提示するに至りました。電産労組はこれを拒否して、大きな社会不安がいつ果てるとも知れない状況にございまするが、中労委のかくのごとき、どちらか一方かが頑強に突張れば、折角作つた斡旋案でも、いずれかの側の有利になるように、更に斡旋案の内容を変えるというようなことは、輿論の集積、中立的な公正妥当な存在としての中労委の権威に大きな不安を社会は抱くことに相成るのであります。(拍手)これに対する戸塚労働大臣の所見を伺いたいのであります。(「所見はないのだ」と呼ぶ者あり)  更に炭鉱の争議についてでありまするが、すでに御承知のごとく、炭労の賃金は、坑外労働者は八千二百円、坑内の労働者は一万二千円の低賃金の下に置かれています。国鉄、専売、或いは一般公務員のべースも、吉田内閣の下においてでさえ二割の引上げを必要とするような最近の世情に鑑み、にもかかわらず、炭鉱の経営者はこれを拒否するのみか、時間の延長を要求して賃金値上を拒否するの態度に出でておるのであります。(「値下げをやつておるのだ」と呼ぶ者あり)然るに一方、或る炭鉱会社のごときは、六千万円の資本で以て十二億の利益を挙げ、株主配当は三五%を行なつておる事実がございます。(「発表しろ」と呼ぶ者あり)五十円株で市価において三百七十円の高値を呼び、低いところでも百五十円を割つておるところを見ないのであります。これほど厖大な利益を取りつつある炭鉱経営者が、炭鉱労働組合の最低要求であるこの賃金領を認められないはずは、企業採算の上から言つても断じて私ども認めることができないのであります。(拍手政府一体この炭労の賃金要求に対してどのような見解を持つて、今日まで静観の態度をとつて来られたのであろうか。伝え聞くところによりますと、全国の中小炭鉱の業者は、大手七社の圧迫のために、速かに解決をしたいのであるけれども、これに睨まれては将来の経営が困るというので、止むを得ず争議に引きずられておる状況が私どもの所にしばしば情報として入つております。(拍手)このような事態一体政府はどのようにお考えになつておるのであろうか。只今も御答弁がございました中央労働委員会の公正なる斡旋による解決を希望するということでございましたが、労働大臣は、事情によつて政府もこれをいつまでも静観することはできないのだということを、言外に労働大臣はほのめかされました。一体如何ような方法で、いつ頃政府はこれが円満妥結のために解決の措置をとられんとするのであるか、この機会にお伺いいたしたいのであります。(拍手)  更に経営者団体は、このような炭の逼迫しておる状況、即ちストライキ前には、山、港頭、市場、大口工場等の貯炭は七百万トン台でございました。それが今日では三百万トン台に減少をいたし、二十数日間すれば、日本産業は全く麻痺状態になんなんとする、実に驚異に値いすべき貯炭の状況に相成つておりまするが、経営者団体は、この逼迫を機会に炭価の引上げを行うための理由にいたしたいと策しておるようでございまするが、争議中若しくは本争議解決の直後に、かような事態が起りました場合にとられようとする政府態度についても、この機会に明らかにして頂きたいと存ずるのであります。(「首を吊らすのだよ」と呼ぶ者あり)  以上私は三点をお伺いいたしまして、再質問の権利を留保いたしたいと存じます。御清聴を感謝いたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お尋ねの問題については、主管大臣から詳細お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  30. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 最初に失業問題その他について施政方針演説中に含まれなかつたという点でございますが、これは施政方針には、新しいという点で特に必要なるものを挙げられた趣旨と、私は考えておるのでありまして、失業問題等に対することは従前通りの方針で参りたいと、かように考えておりましたので、施政演説には入れなかつたのでございます。(「そんなことはないでしよう」と呼ぶ者あり)  失業対策、失業者が非常に多いというような意味のお話でございましたが、政府の見るところでは、(「自力でやれ」「勉強して来い」と呼ぶ者あり)本年当初は五十万前後でありましたが、最近は四十二万程度になつております。(「どういう根拠ですか、それは」と呼ぶ者あり)これは内閣の統計であります。(「潜在失業者をどうするのだ」「読み違えじやないですか」と呼ぶ者あり)潜在失業者というものは、正確に言えば、とり得ないのでありまするが、まあ不完全失業者と申しましようか、そういう点でやや同数のように承知いたしております。(「何言つておるんだ」と呼ぶ者あり)只今申上げました四十二万と同数のように承知いたしております。  それから失業対策審議会の答申についてどういうふうにするかというお話がありましたが、これは十分尊重いたしまして、勿論今後の予算のことでありまするので、只今ここでお約束はできませんが、十分尊重して参りたいと思つております。  なお日傭労働者の年末の件でありますが、四億の計上によりまして、補正予算に四億の増によりまして、多分数日……二十四、五日くらいにはやれるように考えております。(「何人に対してですか」「いつの二十四五日だ」「今日は二十八日じやないか」と呼ぶ者あり)現在の登録は三十万ぐらいでありまして、そのうち十五六万がこの対象になるように承知いたしております。(二人当りで幾らになりますか」「明瞭明瞭と呼ぶ者あり)  それから電産争議についてでありますが、統一交渉が違法であるかどうかというような点のお話でありました。これは両者いずれも主張はあつたのでありまするが、その後、中山中労委会長の調停によつて話が順次進められておりましたし、又その後今日までこの斡旋は抗いておるのでありまして、政府としては違法とは考えておりません。(「調停案に対する考え方はどうですか」と呼ぶ者あり)それから中労委の調停案が、今回の斡旋案が調停案と変つておるようにお話がありましたが、中山会長は、調停案の枠の中で更にこの斡旋に努めておられることと私は承知いたしております。(「違うんだよ」と呼ぶ者あり)  それから炭鉱の問題は、先ほども申上げましたように、努めて自主的な交渉に待つておるのでございますので、只今のところ、こちらからいろいろ介入するようには考えておらないのであります。(「ちつとも答えていないじやないか」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手〕    〔「人殺し大臣」「今度誰の首を吊らすんだ」と呼ぶ者あり〕
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中小企業の対策でございますが、従来いろいろ努力して参りました。先ず金融方面につきましては、商工中金の資力拡充、又相互銀行、信用金庫等の業務の拡充、又金融以外につきましても、中小企業者の組織化、又合理化に対しましての中小企業等の育成、いろいろな手をやつて参つたのであります。併しそれにもかかわらず、まだ十分でございませんので、今までのやり方をもつと拡充強化いたそうといたしておるのであります。今回一般会計から中小企業対策といたしまして二十億円の貸付をいたしましたことも、これは初めてでございまして、画期的のものでございます。従いまして従来農林漁業金庫におきましては一般会計から出しておりましたが、今回は中小企業につきましても一般会計から出し、今後これを殖やして行く。而して又資金運用部の資金を、これとタイアップさして増加さとて行きたいと考えているのであります。そこで特別会計のお話がございましたが、私は新たに特別会計を作るよりも、今の商工中金の業務を拡充すると同時に、長期信用銀行につきまして中小企業方面べの仕事をさすように仕向けて行つたらどうかというので、研究いたしておるのであります。  次に中共との貿易でございましたが、たびたび申上げております通りに、我々はこれを禁止するという気持はないのであります。国連軍のあの考え方に則りまして、できるだけそれに反しないように貿易を拡充して行きたいという考えでおるのであります。従いまして、お話の通りに、八月に品目を殖やしました。今後も殖やして行きたいという考えでいたしているのであります。併し何分にも、貿易機構、或いは取引の方法、船舶の出入等、いろいろ厄介な問題がございますので、順次この問題を解決するように努力はいたしておるのであります。(拍手)    〔椿繁夫君発言の許可を求む〕
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 椿君再質問ですか……許可いたします。御登壇願います。    〔椿繁夫君登壇拍手
  33. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 只今労働大臣から私の指摘いたしました七百三十万乃至七百四十万の失業者のことについて一言も触れないで、五十万そこそこの失業者のことについてお話がございました。(「四十万に減つたそうですよ」と呼ぶ者あり)これは職業安定所に登録をされておる日傭労働者だけを失業対策の対象にしておられるのではないかと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは非常な間違いでございまして、(「知らないんだよ」と呼ぶ者あり)農村における五百万の失業者を加えますならば、明らかに一千万を越す厖大な大群になるであろうことを、労働省の労働市場統計が我々に報告をいたしておるのであります。どうか大臣にはその方面のことを十分御勉強頂きまして、誤まちのない失業対策を確立されるように心から望んでやみません。失業対策の万全を失しまするならば、どんなに防衛力を漸増いたしましても、どんなに警察力を増加いたしましても、国内治安の全きを期待することは断じてできないという見地から、政府の恒久的な失業対策に対する方針を重ねて闡明せられたいと思います。  更に炭鉱の争議に関して政府はすでに貯炭の状況は七百万トン台から三百万トン台に減少し、本日只今争議が解決することになつたといたしましても、一体、何日先に市場に炭が出るようになるのかというお考えを持たれて、僅か二十数日しか賄うことのできない貯炭のない現状に対し、一体我が国の産業に対して責任が持てるのかということを、私はここに重ねて伺いたいのであります。(拍手)戦後、政府は貧しい国家財政の中から炭鉱企業育成のために相当な補助と便宜を与えて参つたのであります。然るに、先ほども指摘いたしまするように、厖大な利潤を上げ、而も三割五分の配当をし、五十円株が三百七十円も今日株式市場でいたしておりますようなこの状況を、(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)労働争議であるから黙つてこの状態を見ておられるつもりであるか。電産の賃金要求に対する考えは一体妥当なものとお考えになるかどうか。政府でさえもすでにそのことを認められて二〇%の賃上げをされようとしておるこのときに、ひとり炭鉱経営者だけが賃下げと労働強化を以て回答して、そのために起つておる労働争議にわれ関せずえんの態度が、果して日本国民経済をあずかる政府のとらるべき態度であろうかどうかということに、私は衷心から遺憾の意をここに表するものであります。重ねて当局の所見を伺いたいと存じます。(「答弁々々」「答弁無用」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  34. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 重ねての御尋にお答えを申上げます。  先ほど私が四十数万と申上げましたのは、これは、(「間違い」と呼ぶ者あり)いや間違いじやありません。(笑声)これは内閣の失業者の統計でありまして、御指摘になりました職業安定のほうの登録数は三十万くらいと心得ております。  それから貯炭の状況でありますが、(「恒久的失業対策」と呼ぶ者あり)これは通産省その他と始終連絡をとつておりまして、勿論おいおい危険な状態になつておることは承知いたしておりまするが、常に注意を怠らないでおるつもりであります。なほ賃金の要求について、これを適当と思うかというようなお話でありましたが、これは自主的に交渉が進行中でありまして、私が只今ここでこれについて、とやこう申上げることは差控えたいと思うのであります。(拍手、「その通り」「恒久失業対策はどうした」「通産大臣答弁」「答弁漏れ」「答弁が残つておるじやないか」と呼ぶ者あり)    〔椿繁夫君発言の許可を求む〕
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 椿君、何ですか。
  36. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 答弁漏れがございます。通産大臣から、最近の貯炭状況において責任が持てるかどうかということについての御答弁がありません。更に労働大臣の失業対策についての恒久対策の闡明がございません。これを重ねて要求いたします。    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  今回の争議の発生いたしましたときは、貯炭は七百二十万トンほどございました。前回の争議のときには四百数十万トンであつたのであります。而して只今では四十日間の争議によりまして三百万トン余りの貯炭しかなくなつたのであります。で、我々といたしましては、できるだけ早く争議の解決を望んでおります。ただ御質問の、今の場合では立ち行かないじやないかと、こういうお話でございまするが、望んではおりませんが、前には貯炭が百数十万トンというときもあつたのであります。今困つておりますのは特殊の原料用炭、又発生炉炭であるのであります。従いましてガス会社等におきましても時間制限をしております関係上、念いでこの特殊の石炭につきましては絵入を図つております。十二月の下旬には原料用炭大体二十五万トンが入つて参りますし、発生炉炭も八万トン入つて来る見込でおるのであります。而して片一方では、できるだけ早く争議が解決するように、又他方では、産業に非常な悪影響を及ぼさないように準備はいたしておるのであります。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  38. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 失業者の対策につきまして、先ほど失業対策審議会の答申は十分尊重してもらえるということを申上げたのでありますが、なお恒久策と言いますと、結局産業の発展によつて雇用数が増大するという施設を、国政の上で各方面からこれをやつて参らなければならんと思うのでありまして、当然政府としてはさように心掛けて参る次第であります。     —————————————
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 島清君。    〔島清君登壇拍手
  40. 島清

    ○島清君 質問陣のしんがりを承わりまして、私は第二控室日本社会党を代表いたしまして、今般行われました施政方針に対し、自立経済の再建に伴いまする貿易の振興、外交問題中の領土問題等について、若干の質問をせんとするものでございます。  今般行われました演説で、吉田総理岡崎外務大臣も領土の問題に言及をされて、北緯二十九度以南の南西諸島の住民の熱烈なる祖国復帰の要望に応えるべく最善を尽し、その実現に努力せんと、固い決意を表明されたのであります。そのことは遅きに過ぎるのであつて、当然過ぎるほど当然のことではございまするが、併し内閣の方針として聞くとき、民族的な感激を覚えるものであり、今般この演説を聞いた国民の感激はもとよりでありまするが、現地住民百万の同胞は感謝感激をいたしまして、感涙にむせんでいることと私は思つているのであります。私も国民の代表といたしまして、発表された方針に対し、全幅の賛意を表し、その実現の速かならんことを念願するものでございます。南西諸島の祖国への早期完全復帰は、単に我々日本国民のみの熱望であるばかりではなく、世界人類の良心的希望でもあることは、サンフランシスコの平和条約締結前後、同地域と日本不分割論を強調したインドの態度より見まして、十分に確認できると二ろでございます。講和条約の生みの親であり、次期アイゼンハワー内閣の国務長官に内定を報ぜられておりまするダレス氏は、サンフランシスコの平和会議の席上において、南西諸島の主権は日本に存することを明瞭にしたのであります。併しそれにもかかわらず、同地域の住民は、今以て国際的にも国内的にも、その法律的身分関係が明瞭になつてない憾みが深いのでございます。    〔議長退席、副議長着席〕  祖国への早期完全復帰の実現は、日本民族の切願であることは只今申上げた通りでございまするが、併しその前に急速に解決を図つてやらなければならないところの不合理極わまる種々の問題が横たわつておるのでございます。それらの問題につきまして以下お尋ねを申上げるのでございます。  南西諸島地域は米国の権力が只今支配をしているのでございまするが、米国が支配をしている権力の行使は、一体講和条約三条によるものであるのか、又は軍事占領の継続であるのか。この支配的な性格が甚だ不明確なために、種々の問題が解決されぬままに住民の物心両面の生活を甚だしく脅かしておるのでございます。(「国連憲章違反ですよ」と呼ぶ者あり)後ほど申上げます。このことについては、現地の立法院、日本で言いますと県議会みたようなものでございますが、立法院が、同地駐留軍の、即ち米軍政府の長官か副長官をやつておる人でありまするが、このルイスという人に質しておるのであります。准将でございまするが、即ちその性格を質しましたときに、同氏は、法律専門家ではないからわからないかという前提の下に、実際は占領の継続であると思うと答弁をしておるのでございます。占領の抵抗という認識に立つて米軍の使つている軍用地の使用料は払われてない。住民の生活等も戦時国際法の範囲で問題が処理されるのかされないのか、ここらも非常に明確を欠いておるのであります。即ち、繰返して申上げますると、軍事占領であるという認識に立ちまするならば、即ち戦時国際法の範囲内において問題が処理されるでございましようし、更に講和条約第三条によるということになりまするど、その観点に立つて問題は処理されるということに相成ろうかと思います。ルイス氏の答弁にも明瞭のように、現地米軍は占領意識で行政等その他各般の支配をやつておるのでありまするから、住民はその堪えがたい不当な圧迫を訴えておるのでございます。  只今その一、二の例証の一つといたしまして使用地の問題を申上げたのでございまするが、もう一つは、去る十月の二十日に、現地立法院は満場一致を以て二度目の日本復帰決議案を可決し、復帰請願として、米国大統領、米国上下両院議長、その他日本両院議長、平和条約調印国、駐日米国大使宛に書類の送達手続を依頼したもののようでございますが、そういうことすら米軍政府はそれを断わつておると、現地の新聞は報じておるのであります。現地米軍のやり方は真に遺憾であり、人権宣言の精神にもとるものであるとのそしりを免れないと思います。なお現地よりの報道は、軍用地でない沖縄本島の景勝の地において立札を立てまして、国務省のものにつきみだりに立入るべからずというところの英文和文の立札を米軍の手によつて立てておるということをも報道しておるのであります。我が国土の一部において国際法を無視した無法地帯の存するのに一驚を禁じ得ない次第でございます。  そこで私は、この際、米国軍隊が支配をしておる南西諸島は、占領の継続であるのか、講和条約三条による権利の行使であるのか、国際法上の観点よりその性格を明確にして頂きたいことを希望するものでございます。なお、只今申上げたように、土地の使用料等も適正に支払われてない現状であるといたしまするならば、それを是正させるために、米国政府に対しまして、現地百万の住民の生活の面から、これを是正させるために、米国政府交渉する意図があるかどうかを承わりたいのであります。ここに私の贅言を待つまでもなく、南西諸島というところは、古来より我が国の一部であつて、有史以来我が国以外のどこの国にも所属したことのない純然たる日本であります。ポツダム宣言条項を受諾した我々日本人の考えの中には、米英世界に宣言した領土不拡大の大西洋憲章を信じて、よもや今日講和条約三条となつて分離されるとは夢にも想像しなかつたことでございます。米国の言い分を聞きますると、戦略基地として必要だと言つておるようでございまするが、私たちが、又全勤労大衆が反対したのにもかかわらず、今日では安保条約に基く行政協定も存在することであるし、米国軍隊が諸種の特権を与えられて日本に駐留している限り、南西諸島においても、米国が欲するならば、行政協定によろうと、はた又租借をしようと、使用することは可能なはずであります。然るに何故に現状のごとくあえて分割占領するのか、私にはその米国の真意が奈辺にあるか、甚だ了解に苦しむものであります。  米国は一朝有事の際、日本防衛の至難なることを悟つてその場合には日本を放棄して、沖縄の線まで後退するのだという、極東に対するアメリカの二重政策の現われなのか。そうでないといたしまするならば、領土拡大の侵略主義の偽装か、そのいずれかの一でございましよう。前者の場合、勤労大衆の反対を押し切つて、安保条約、行政協定等を取極めた吉田内閣の信頼を裏切るものであると言わなければなりません。後者であるといたしまするならば、大西洋憲章をみずから踏みにじつたそしりは免れないと思います。政府は只今申上げた私の解釈及び私と同様な気持を持つている大多数の国民の気持を率直に米国に伝えて、講和条約三条後段に規定しております「合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」という条文を、最終的領土復帰の可能なときまで、或いはその全部又はその一部を日本に行使せしむるように、その実現に最善を尽すべきだと思いますが、政府にその熱意があるかどうか、承わつておきたい。なお又、同地域に国際法の光と日本政府の親心とを示して、日本との自由な交流、即ち教育、今は外国以上の扱いをされておりまするが、出入国、送金、物資の移出入、恩給、参政権等々、数多くの不合理な問題を早急に解決して、日本並みの扱いをすべきだと思いまするが、これ又その実現に対する考え方を承わりたいのでございます。沖縄には日本の国有地がございまして、その賃貸料はかなりの額に上つておると思うのでございますが、それはどういう形で保管されておるのか。その保管をされておりまするところの国有地の賃貸料を沖縄の教育費の援助資金として贈与する御意思はないかどうか、承わつておきたい。  なお、遺家族の援護金は、九月一日から日本内地におきましては支給を開始されておるのでございまするが、沖縄におきましては、支給をいたしまするその基礎的な調査費にすら困窮をいたしまして、且つそれが完全に完了いたしておりません。従つていつ何時この遺家族援護費というものが支給されるかわからないという状態でございます。そこで現地住民は、日本政府の連絡機関でございまするところの南方連絡事務局にその調査までも依頼しておるという状態でございまするが、南方連絡事務局の現地職員では手が足りません。そこで、この住民の期待を満足させてやるために、遺家族の援助資金を、政府の親心を素直に流してやる意味においても、南方連絡事務局の現地職員をもつと増員し、沖繩住民の要求を満足に間に合せるように機構を拡充強化し、日本的問題の処理に万遺憾なきを期すべきだと思いますが、それに対する所見を承わりたい。  吉田内閣ソ連の代表部を認めなかつたのでありまして、今日ソ連の代表部はおりません。従つて国際法律的にはソ連とは戦争状態がまだ終結してないという状態でございまするが、その状態の中におきまして、吉田内閣は、今般、千島、歯舞、色丹というような島は日本のものであるということを、返して欲しいということを宣言しておられ、それを実際的に具体的に実現するために一体如何なる方法と如何なる手段を以て実現せんとするのか、承わつておきたいと思うのであります。  それから小笠原の問題でございますが、小笠原の七千住民は、日本に疎開して参りまして、その後、帰れないでおるのでございますが、これは如何なる場合においても、戦後七カ年、講和発効後七カ月を経過しておりますところの今日、小笠原の住民が帰還すらできないということは、これは政府の責めらるべきところの責任であると私は思います。ですから、政府はその責任を顧みて、速かに帰還が実現をいたしまするよう最善の努力を払われんことを希望いたしておきます。  次に、貿易振興政策についてお尋ねをいたしまするが、我が国は国土が狭小にして人口は過剰である。あまつさえ資源に恵まれずして、外国より原材料を輸入して、これを外国のほうに輸出をなすという貿易立国の策を進めて参つたのでございまするが、敗戦によつて、さなきだに狭い国土の四割五分を失い、人口は一千数百万もの増加を見て客観的には戦前よりもなお一層貿易に対する依存度が高くなつておるのであります。然るに近年我が国の貿易は頗る不振を極め、二十五年度、二十六年度の輸出入の状況は、昭和九年、十年、十一年の三カ年平均を一〇〇とするとき、僅かに輸入三、四割、輸出五割足らずという驚くべき低い数字を示しておるのであります。二十七年度も、前年度や前々年度に比して悪化はしても、改善振興する条件と兆候は発見できないのであります。申すまでもなく貿易の不振は、工業生産の速度を緩め、操業の短縮を招き、或いは労働者の馘首となつて現われて幾多の重大なる労働問題を提起し、或いは工業製品の滞貨となつて現われて、金詰り、金融難を招来し、金詰りのために親工場である大企業は、下請工場である中小企業に対しまして支払遅延とか又は不払等となつて現われて、そのため中小企業は倒産の危機に瀕し、不況の様相は社会の各方面に深刻なる影響を与えつつあるのでありますが、この責任は挙げて第三次吉田内閣にありと、私は何ら躊躇することなく断ずるものでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)昨日の衆議院の本会議におきまして、通産大臣は我が党加藤勘十氏の代表質問演説に対しまして、いわゆる池田放言として伝えられておりまするところの、中小企業は倒産をしても止むを得ないと、そのために或いは自殺する者が現われても、これはいたし方がないということを再度おつしやつたようでございまするが、私は池田さんを非常に重要な存在だと思つておる。むしろ国宝的な存在だと思つておる。(笑声)なぜならば、私どもは学生時代にアダム・スミスという十九世紀の自由放任経済政策というものを習つて参つたのでありますが、残念ながらその実際のアダム・スミスの自由放任経済というものを見たことはなかつたのであります。従つてこの実績を見ようとするには上野の図書館まで行かなければならなかつたのでありますが、実際に池田さんがそういうふうなことをお示しになつているのでございますから、我々は図書館まで行く必要はない。(笑声)図書館まで行く必要のないところの古典的な存在でございまするが、併しながら、これは池田さんがレーニンみたようになつて皆様に見せ物になるというのならわかりまするけれども、そういう精神によつて政治をやられるということは国民が承知をしないのでございまして、いわゆる政治には涙があり血がなければなりませんし、又政治というものはそれが要諦であります。ところが通産大臣は、或いは通産省の行政長官としては、その答弁はよろしいかも知れませんが、国務大臣であるはずの池田大臣としては、これは落第と言わざるを得ません。(「やれ」「しつかり」「やれやれ」「国宝、やりなさい」と呼ぶ者あり、笑声)従いまして、私は池田さんがよもやそういうような考えを持つて、言葉のあやではなかろうかと信じておりますので、この際でき得ることでございまするならば、中小企業はこれ又、池田さんが放言した吉田内閣は我々を殺す内閣であるというふうな印象を与えますると、まさに深刻な様相をたたえておりまするところの我が中小企業者の諸君は仕事も手に着かぬというような状態になろうかと存じまするので、あえて要求するわけではございません。衆議院の出来事でございまするから要求するわけではございませんが、若し心境に変化がございまするならば、又その弁明をも聞く雅量を持つておるということだけは表明をしておきましよう。(笑声)  更に私は、吉田内閣は幾多の貿易振興政策を掲げておるのでございまするが、私は貿易の不振というものは吉田内閣のいわゆる失政にあると思つておるのでございます。それは第三次吉田内閣のときでございまするが、僅かばかりのポンドの手持ちにおびえて、そうしてポンド対策を忘れてその適正を欠いておる間に、外国のほうではドルの不足を解消して、そうしてそのドル不足を解消するために輸出入の制限をやつてしまつて日本の輸出品が出なくなつてしまつて、向うのポンド地域においてはシャットアウトを食らつてしまつた。そこで今になつて一億足らずのボンドがあるそうでございますが、来年あたりはポンド不足に悩むであろうということが憂慮されておるのであります。従いまして、私はこういう問題に対して吉田内閣は如何に対処せんとするかということを承わつておきたいのであります。  更に、我が国の貿易を正常に発展をさせてそうして経済自立を図ろうとするのには「貿易の国際収支を均衡なものに保たなければならないと思うのでございますが、我が国の国際収支というものは頗る不均衡でございまして、貿易の収支は赤字だらけであります。その赤字を貿易外収入で埋めておるのでございまするが、併しその貿易外収入たるや正常なるところの貿易外収入ではないのであります。即ち駐留軍様の落しますると一考のいわゆるドル、その他のドルと申上げますれば御想像が付くと思いますので申上げませんが、(「はつきり言え」と呼ぶ者あり)そういうようなドルによつて、一応は赤字を埋めておりますが、併しながら、この貿易外収入こそ、我々日本民族が反対をして忌むべきところの、好ましくないところの貿易外収入なんでございましてその事自体は戦争に通ずるところの貿易外収入でございます。従いまして、私たちはこれを排除しなければならないと考えておりまするが、それに対する所感を承わつておきたい。なお貿易の不振の理由はいろいろございまするけれども、先ず向米一辺倒のドル依存の貿易でございます。    〔副議長退席、議長着席〕  ドル一辺倒の貿易一辺倒をやつておるのでございますからして、只今申上げたように繊維製品のいわゆるアジア向けのシャットアウト、それから鉄鋼品のシャットアウト、こういうような貿易輸出の大宗を成しておりましたところのすべての製品がシャットアウトを食つておるのでありますから、只今申上げましたような非常な不均衡な、不健全な貿易の形になつて現われた。  そこで私は吉田内閣にお聞きしたいことは、その不況打開のために、第三次吉田内閣のときに、即ち鉄鋼品に対しましては補助金を出してやるというような政策を一時発表したように記憶をいたしておりますが、今以てこの輸出振興のために鉄鋼製品に対しまして補助金を出す考えであるかどうかを承わりたいのであります。  更にその次に一番日本の輸出を妨げておりますのは、日本社会党左派、共産党の諸君から御指摘があつたのでございまするが、バトル法のあの制限のきついことであります。このバトル法の制限をあの線まで、バトル法の線まで緩和しないことには、日本貿易は振興いたしませんが、これに対しまするところの緩和方の交渉の事実と更にその見通しについて承わつておきたいのであります。  日本海運に対して制限せんとするところの主張は、マグナソン氏の提唱以来にわかに具体的な協定締結の形をとつて表面化をしておるのであります。それに対して何らかの具体策を講じておるかどうか、承わりたいのでございますが、更に海運の問題は貿易と唇歯の関係に立つものでございまするが、吉田総理も又外航船舶の増強を強調されており、私らもその限りにおいては同感であります。併し二十八年度より向う四カ年間に亘る年間三十万トン計画を進められておると承知しておる建造計画の資金調達に対しては、如何なる対策を講じておられるのであるか。更に本年度計画の残りの五万トンに対しては、いわゆる資金手当が貧困であるために、その建造計画が遅々として進まないと承わつておるのでございますが、これに対しては如何なる対策の用意をしておられるか、お聞きをいたしたいのでございます。貿易を健全に発展させ、振興を図らんとするためには、原料を多くドルで買い、製品をポンド地域に売るという、この輸出貿易を中心とすることに再検討を加えて、産業貿易の構造それ自体を変更することでなければならないと思いまするが、貿易及び産業構造を重化学二業中心に転換を図り、恒久的貿易対策を講ずるところの積極的な政策があるかどうか承わつておきたいのであります。  アジアとの貿易の不振の一因は、先般吉田総理保安隊演説をした中に、保安隊国軍の基礎である云々と、更に又、日本アジアを率いて云々ということをおつしやつたので、往年の東條内閣に見るような演説内容が報道されたので、さなきだに日本の再武装を警戒をいたしておりますところのアジア国民反感を買つたためにもよるのであります。従つて正常なる貿易振興も、日本の民主化が前提であり、重要な要素だと信ずるのでありまするが、吉田総理日本民主化と貿易振興とが深い関連を持つことを認め、且つ只今申上げたアジア諸国民の反感を緩和する対策を考究する意思はないかどうかを承わつておきたい。  国交の調整、賠償問題の処理が貿易振興の前提条件であることを考えまするときに、外務大臣は、外債の処理は我が国の立場を好転せしめたと述べられたのでございまするが、ややその通りでございます。(笑声)ところが吉田内閣は、米英への債務ならば、南満洲鉄道の社債、それから東洋拓殖の社債、台湾電力等の社債までも引受けて、米英に対してはよくその本領であるところの媚態外交を発揮して、日本外務大臣なのか理解に苦しむような外債の処理をしたのでありまするが、アジア諸国に対しましては、誠に以て非なる性格を発揮するという印象を世界に与えておるのであります。西ドイツ政府は、東西ドイツに分離されておる事実を理由に、外債も半減すべきであるという交渉をしておるということを我々は聞いておるのでございまするが、我が国も領土は半減をしておるのでありまするからして、米英に対する外債処理に当つてはそのことに思いをいたすべきであつたと思います。私たち日本国民は、アジアの繁栄という共同の理想を達成する途こそが日本の今後の生きる道であることに思いを深くし、アジア諸国に対してサービスする精神を忘れてはならないと考えまするが、賠償問題に関する東南アジア諸国との交渉の経過と、アジアに多角的決済同盟を提唱をして貿易を容易にするところの考えがあるかないかを承わつておきたいのでございます。  更に私は議会民主化の立場におきまして、吉田総理に対して一言お聞きいたしたいことは、いわゆる道義の高揚ということをおつしやつておられますが、道義の高揚に対しましては国論が統一いたしまして、国民の向う途がはつきり一致しなければ、道義の高揚ということは期待できないのでございます。吉田総理は先般行われましたるところの皇太子の立太子式の式場に臨まれまして、その祝辞といたしまして、「臣茂は」ということをおつしやつておられますが、(拍手、「時間々々」と呼ぶ者あり)その国民道義の高揚というものは臣茂的なものであるか、若し臣茂的なものでありまするならば、およそ時代逆行であるということを私は御指摘申上げたいのであります。(「時間頑張れ」「もつとやれ」「まだ十分あるよ」「やれやれ」「時間々々」と呼ぶ者あり)  更に私は日本の民主化の健全なる議会運営の建前から、いわゆる今日保守合同というものが叫ばれておるのでございまするが、先般の選挙におきましても、吉田総理は民主党の切崩しをいたしましてそうして政界の孤児と言われました犬養さんを引つ張つて来まして、漸く衆議院におきまして絶対過半数を擁して只今申上げましたような安保条約、行政協定を押しまくつたのでございまするが、このたびの衆議院の議会対策のいわゆる数の不足からいたしまして、更に改進党の切崩しを企図いたしまするところの保守合同を考、えておられるように報道されておりまするし、あなたの閣僚でございまするところの林屋亀次郎氏は、堂々と石川に帰省をいたしましたところの車中談といたしまして記者団に発表いたしておるのでございまするが、今でも保守合同の考え方をしておられるかどうかを承わつておきたい。更に新聞記事に対して総理大臣責任を負わんとおつしやるかも知れませんが、政治はここでだけやるものではございません。政府の考え方、議会の演説等は、新聞に報道されて、日本国民の支持を得て行われるものでございます。この新聞は知らんというようなことは政治の妙諦を知ぬらものであり、自分一人が政治をやつておるというような印象を(拍手)与えるものであるということを御指摘をしたい。(「議長、時間々々」と呼ぶ者あり)更にどうする……(「時間の五分や十分は何でもない」「議長注意」「時間」「やれやれ」「頑張れ」と呼ぶ者あり)  更にもう一点だけお聞きいたしたいことは、いわゆる再軍備の問題に関しましてアメリカの要求している再軍備は絶対にやらん、そういうことを要求しようと、それはしないと、そう言つておりますが、誠に決意のほど見事なものでございまして、我々はその限りにおきましては賛成でございまするが、アイゼンハワー大統領になりますると、とにかく日本軍備を要求することは必然でございまするが、その場合にもあなたは内閣の存廃を賭けて再軍備を断わる決意をこの議会を通じて発表する決意があるかどうかを承わつておきたい。更に行政協定の問題について、(「議長注意」「時間」「やれやれ」と呼ぶ者あり)
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 島君に申上げますが、予定の時間が参りましたから……。
  42. 島清

    ○島清君(続) では忠告に従いまして、もつとあるのでございまするけれども、この程度で質問を終らして頂きたいと思います。(拍手、「よくやつた」と呼ぶ者あり、笑声)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  南西諸島に対する行政権の法律的性質については外務大臣からお答えをいたします。南西諸島の復帰若しくは住民の熱烈なる要望、殊に内国民待遇のお話であろうと思いますが、これらの要望に対しては政府は絶えずその要望の達するように尽力いたしております。又小笠原島住民の復帰、千島の回復等については、政府は機会あるごとにその目的を達するようにいたしております。  只今再軍備についてお尋ねがありましたが、これは絶えず申しておるように、政府はその考えはございません。  それから改進党を切崩して保守合同ということのお尋ねがありましたが、我々は常に申しておるように、我々は志を共にする政党政派は一緒になりたい。合同もあえて辞せないが、併し切崩しのごとき手段はいたしません。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 南西諸島につきましては、平和条約の第三条によつておるのであります。右によれば、南西諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権限がアメリカに認められておるのであります。従いまして、初めにお話のような占領の継続ではなくして、平和条約規定に基くものであります。なお同島及びその地方の人々に対しましては、例えば渡航上の取扱、交易上の手続等の簡易化とか、郵便為替送金、或いは現地からの学生の進転学、研究教員の受入、その他公務員に対する恩給の支払、或いは遺家族の援護等につきまして、南方連絡事務局を通じましていろいろ今折衝をいたしております。  更に南方事務局の拡充等につきましては、たれは総理府にあるのでありまするが、いずれも適当に考えておられると了解しております。(「土地の使用料はどうだ」と呼ぶ者あり)小笠原島につきましては、住民の事情は誠に同情するものがあるのでありまして、できるだけその希望を達成するように努力をいたしております。千島、歯舞、色丹につきましては、只今総理お答えされた通りでありまして(「何も答えていないじやないか」と呼ぶ者あり)歯舞、色丹につきましては、演説にもありましたように、これは現に明らかに日本の領土であります。この事情を世界に広めましてその世論を喚起いたしたいと思つております。千島につきましては、平和条約の第二条にありますが、千島とは何であるかという定義についてはまだわかつておりません。この点についても、政府見解は機会あるごとに列国に知らせる努力をいたしております。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  45. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  貿易の振興につきましては、従来以上にいろいろな対策を講じましてやつて行きたいと考えております。そのお話のうちで、ポンドの不足を来たすのではないかというお話でございましたが、只今のところ、ポンドは英蘭銀行に預けました二千万ポンド以外に、なお九千数百万ボンド持つておるのであります。而して私は、ポンド地域との貿易を振興さすためにできるだけこのポンドを使つて行きたい。こういう考えを持つておるのであります。私は普通にやつて行きましてポンドが減るということは貿易の振興に益があると考えておるのであります。なおポンドとドルとの不均衡のために産業構造を変えたらどうかというお話でございます。御承知の通り日本はドル地域からの輸入をやつてポンド地域へ輸出するということは明治時代からのやり方でございます。併し今のようにポンドとドルとコンバートできない場合におきましての対策としましては、ドル地域への輸出を奨励し、先ほど申上げましたようにポンド地域からの輸入を図る。こういうことで行きたいと考えております。今政府が特にこういう点から産業構造を変えて行こうという考え方は持つていないのであります。おのずから経済というものは適当な方向に向つて行くことを私は期待しておるのであります。  なお鉄鋼につきまして補給金を出すという考えは、前の内閣でも決定いたしておりません。私は通産大臣といたしまして、今直ちに鉄鋼の補給金を出して輸出振興をしようとは思いません。今業者の間で、例えば造船等につきましては、三大メーカーが特殊の価格で鉄鋼を供給しておりまして、こういうふうに業者間で、できるだけ輸出振興になるように価格をきめて行つてもらうよう指導する考えでおるのであります。  次にバトル法の問題でございまするが、我々は国連協力という考えの下に立ちましても、できるだけ中共への輸出制限品目は少くしたいというので努力をいたしております。(「中小企業の問題はどうした」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣向井忠晴君登壇拍手
  46. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) お答えいたします。  造船事業に対しまして、その重要性は十分存じておりますが、建造資金の供給につきましていつも最優先の場配慮をいたしておるのでございます。財政資金による融資もできる限り努力しております。更に日本開発銀行においてその貸出利率を年七分五厘に引下げるようにいたしております。船主の金利負担を軽減するために、今後着工します外航船について市中融資分の金利が七分五厘程度になるように利子補給の制度を設けます。これに必要な予算的措置を今回の補正予算中に織込んでおります。なお貨物船五万トンの建造計画というお話が、ございましたが、これは資金調達面でなかなか骨が折れると存じますが、来年度の造船計画との関連をも考慮しまして、格段の配慮を加えたいと思つております。(拍手)    〔国務大臣石井光次郎君登壇拍手
  47. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) お答えします。  マグナソン氏が日本に見えたときに、同氏の私見として日米間に海運の制限に関する協定を結ぶようなことになるかもわからんというような二とが言われたのが問題になつておるようであります。これは昨年日本に見えたときに、そういう話が同氏から出たのでありますが、ただこれは私見でありまして、米国本国でもまだこれは大した大きな問題にもなつていないようであります。又こういう相談がありましても、恐らくこれは実現不可能であると思います。  それから第二に、外航船建造に対する質問……外航船建造に対する財政資金の対策、又本年度の追加五万トンの建造をどうするかということであります。これは外航船建造は、来年度もなお三十万トン外航船を建造したいという考えを持つております。この所要の財政資金については今打合せ中でありまするが、大体今の造船界の市況その他海運界の情勢から見まして、財政資金を多く出してもらいたいという線で話しております。又本年度の船舶建造計画中の貨物船を五万総トン造ることが載つておるのでありますが、これは今日の海運の市況から見ますると、相当財政資金も出してやつて造り易くしなければなるまいと思うのであります。それで、今まで四割見当の財政資金の融資を受けておりましたが、今度は七割くらいな融資をしたいと考えて相談をいたしております。こういうことをいたしまして、この五万総トンが造られるようになりますると、明年の一月以降から各造船所が少し船台が空いて来るのであります。一月、二月からこれが造船台に上ることになれば大変結構だと思います。(拍手
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。国務大臣演説に対する質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  49. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際お諮りいたします。地方行政委員長から、去る八日決定いたしました今次総選挙の実施状況等に関する実地調査のための議員派遣中、第二班の派遣議員、中田吉雄君を小笠原二三男君に、派遣期間十一月中を十二月十五日までに変更いたされたい旨の要求書が提出されております。委員長要求の通り議員派遣の変更をすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求の通り変更することに決しました。  次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時八分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第四日)  一、議員派遣変更の件