○山本勇造君 今日は
予算について
大臣に
質問することにな
つてお
つたんでありますが、
矢嶋委員のほかにも大分
質問のかたがおありの
ようでありましたが、
只今おいででない
ようでありまするが、私は実は
予算に直接
関係を持
つておらないのでありますけれども、
委員会のお許しを得まして御
質問を申上げたいと思います。まあ
質問というものは、
質問することによ
つて、そして又それに
答弁することによ
つてその
質疑応答の間でそれが建設的にな
つて行くのが、僕は議会本来のあり方だと思うんです。ところがこの頃はともすると
質疑応答で破壊的にな
つて行く傾向が見られるんで、私はこの議会のあれとして甚だ残念に思
つておるのであります。併し私は今の
ようなあり方が議会の本来のあり方だと思うんで、御
質問申上げることは、その
質疑応答によ
つてその議がだんだんによくな
つて来るというふうにあることを望んでおるものであります。まあそういうつもりで
大臣の御
答弁を願いたいと思うのであります。
或る
意味におきますと、私の今日の
質問はここでふさわしくないかも知れないのでありますが、併し僕は
教育の面から見て大変に犬事なことだと思いますので御
質問いたすのでありますが、
小学校の国語の
教授の仕方におきまして、片仮名を先に教えるか、平仮名を先に教えるかという問題です。現在では平仮名を一年級で教える、片仮名は二年にな
つて初めて教えるというやり方でありまして、戦前のつまり片仮名で始ま
つて、平仮名をだんだん覚えて行くというのとは逆にな
つております。なぜそういうふうに
なつたかといいますと、これはもう憲法が片仮名であ
つたのが平仮名に
なつた。又世の中も新聞にしろ、雑誌にしろ或いは日記を書くにしろみんな平仮名だ。平仮名がまあ日本の国としては主たる仮名にな
つている。だからして
小学校においても先ず平仮名を教えて、そうしてその本筋の仮名を教えてるんだ。こういうふうな建前から、恐らく今までと変
つて平仮名を先ず一年級から教えるというふうにな
つたのではないかと私は思うのでありますが、これについて私は疑問を持
つているわけであります。実は戦後憲法の改正がありますときに、私は民間人でありましたけれども、これから法律の文章も今までの
ように片仮名でなくて平仮名にしたほうがいいのではないかという
ようなこと等を建議した一人なんでありまして、そういう上から
言つて、この国語の
教授の上で、平仮名を尊重されることは私は或る
意味で有難いのでありますが、併しながらものを教えるのには順序がありますんで、実際に今や
つているのは平仮名がずつと使われているのでありまして、片仮名は電報とか一外国語にしか使われないのでありますからなんでありますけれども、併し私は学習という上からいうと、世の中で使
つているのは平仮名なんだから、何でも最初から平仮名を教えなく
ちやいけないというのは少し
考え違いではないか。例えば大人が今食べている御飯は何かというとこれは白米である。それなら赤ん坊も大人が食べているのだから白米を真先に食べさせるのが当然ではないかという議論に似ているのでありまして、赤ん坊のときはお乳をやるとか、おまじりをやるというのが順序だと思う。ところがその順序を取違えて、大人が皆それをや
つてるんだから、
小学校へ入
つて来た字を知らないものに教えるものは、真先に大人の食べている白米を食べさせるということは、これは正しいことかどうか、私は非常に疑問に思うのであります。本来仮名というものは、今平仮名とか片仮名とか
言つておりますけれども、仮名の発生当時におきましては、片仮名も平仮名もない、そういう名前もありません。古い点本等を見ますと、平仮名も片仮名も混
つて書かれているのでありまして、その区別はない。ところがだんだんに発達して来まして、そうして学者の間、或いは坊さんの間で点本のほうから片仮名を漢字の横に書き出した。それが片仮名の発生みたいなものであります。それから平仮名のほうは、今平仮名と
言つておりますけれども、平仮名という言葉も、実は後世の言葉でありまして、昔は、少くとも平安朝におきましては女手と
言つて女が書くものである。というのは非常に優美な形、まあ歌を書く、男でも歌の場合は平仮名で書きますが、優美な形なんで、見た上から言うと、平仮名は確かに優美で美しいのです。
従つて私は憲法等のときでも、平仮名を使えと言
つた点は、その点にあるのでありますが、併しながら、平仮名のほうは曲
つた曲線が入
つておりますから、優美ではありますけれども、初めてこれを学ぶという上からすると大変むずかしい。片仮名のほうは、御
承知の
通り点とか線で以てでき上
つて、非常に簡略な形ですからね、
小学校の一年に入
つたときでも、点を打つとか、横に棒引くとか縦に棒引くとか、或いは画をつけるとかいうことは、これは非常に楽にできるのです。ところがそのいろはのいの字を書かせる、あいうえおのあの字を書かせるということになると、形を真似るだけでも容易でない。事実、これは私は
小学校の先生に大分会
つておるのですが、実に
小学校の一年にこれを教えるのは困る。子供もおぼえにくいし、教えるほうも非常に困るというわけなんです。ところが今言う
通り片仮名ですと線でありますから、大変覚えいいので、これだと入
つて来たてでも覚える。のみならず入
つて来たてどころか、幼稚園ですでにおぼえてしまえる性質のものなんです。
それからもう
一つ片仮名のほうのあれは、点と線でありまするから、今度は漢字を書いて行くときに、これができておると漢字を覚えるときに大変に都合がいい。ところが今平仮名で先に教わつ
ちやつているものですから、漢字を覚えるときにでも、どうも字がくずれてしま
つて、きちんとした字を書いていかない。これが一方で漢字の当用漢字等の問題があ
つて、漢字をだんだん覚えなく
なつたという
ように言われるのですけれども、
一つは初めから平仮名でやりますから、もう崩した書体を初めから教わるので、どうも本当の漢字のきちんとした画や何かがうまく行かないわけです。ところが片仮名で最初にやりますと、書きやすいばかりでなしに、漢字の問題も点や線を含むものが非常に最初から呑み込めて来るわけです。ウという字を知
つているから、ウ冠りのときにはすでにや
つているので、ウ冠りというのがぴつと入
つて来るという
ようなわけでありまして、片仮名のほうから行くと学習の上からも又後々に漢字を学ぶ上からも非常にいいので、実際に教えておる
立場の先生たちから聞きまするというと、片仮名で始めてもらいたいということを非常に
言つておるのであります。のみならずこの問題は、これは昔のことでありますけれども、あなたの御
所管の
文部省におきまして、明治三十七年だ
つたと思いますが、「平仮名片仮名読み書きの難易に関する実験報告」というのを、
文部省の中に設けられた国語調査
委員会で出しておるのです。これはどういうふうな人が調査したかと言いますと、この当時最も有名な心理学者の元良博士と、それから松本亦太郎氏と、この二人がこの仕事をやりまして、そうしてもう
文部省からこういうものがすでに出ておるのです。そうしてこの研究の結果からすれば、片仮名のほうが読みやすくて書きやすい。平仮名のほうがそれに書くという上から行くと書く速度は遅くなる、或いは読む上から行
つても、読む字数が少くな
つて読みにくいということが、このもうすでに実験報告で、これだけの有名な心理学者が、而も
文部省の中から出ているのです。終戦後においてこういう、ふうにしてしま
つたというのは実は僕は非常に不満なんです。勿論あなたの
時代じやない、ずつと前の
時代の
文部大臣のときにや
つたわけですけれども、これは国語
審議会に諮
つたとか、或いは私ども相談を受けてお
つたらば、こんなところに持
つて行くわけないと思うのですけれども、無論私は相談を受けておりませんし、又国語
審議会にも、実は先ほど念のために電話をかけたのでありますが、
審議会でも正式に諮問を受けていないらしい。省内でや
つた仕事らしいのですが、先ほども言う
通り、今の世の中は原稿ばかりでなしに、新聞でも雑誌でもみんな平仮名だから平仮名でや
つたほうがいいのだという趣意は一応わかりますけれども、丁度私が一例にと
つたように、赤ん坊にすぐ、大人がみんな白米を食
つているのだから、赤ん坊も白米で育てろというのは無理だと同じ
ように、このやり方には非常に疑問を持
つておるのです。そういう上からあなたのお
考えがどうであるか。国語国字の問題は、
教育の上から非常に大事なんで、これが又非常にやさしくおぼえて行く
ようにな
つて行けば
教育の実は非常に上
つて行くのですから、その上で実は国語国字の問題を非常に昔から熱心に
考えておるのですが、問題がどうもこのままにな
つておるのは、如何にも僕は疑問に思いますので、あなたのおやりに
なつた事柄じやありませんけれども、併し現在今ここに行われておるので、これはあなたとしてどうお
考えになるか。又今後どういうふうにそれならば進まれて行かれるか、それらの点についてお
考えを
一つ伺いたいと思うわけです。